図1は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例1を示す斜視図である。図1において、携帯電話1は、表示部5等を有する上部7と、テンキーなどの操作部9および操作者の口から発音される音声をひろうマイク等の送話部23を有する下部11からなり、上部7がヒンジ部3によって下部11の上に折り畳み可能に構成される。上部7には、操作者の耳に音声を伝えるイヤホン等の受話部13が設けられ、下部11の送話部23とともに電話機能部を構成している。また、上部7には、携帯電話1をテレビ電話として利用する場合において表示部5を見ている操作者の顔を写すことができるとともに、自分撮りの際にも利用されるテレビ電話用内側カメラ17が配置されている。さらに、上部7には、携帯電話1が通話のために耳に当接していることを検知するための近接センサを構成する一対の赤外光発光部19、20および耳からの赤外反射光を受光する共通の赤外光近接センサ21が設けられている。なお、図1では図示しないが、上部7の背面には背面カメラが設けられており、携帯電話1の背面側にあって表示部5でモニタされる被写体を撮影することができる。
上部7にはさらに、内側(耳に当たる側)の上部角において、耳珠の接触するための圧電バイモルフ素子等からなる右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26が設けられている。これらの右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26は、携帯電話外壁から突出してデザインを害さないよう構成されるが、携帯電話外壁の角に設けられることにより、効果的に耳珠に接触する。これによって、受話部13からの音声による受話と併せて、耳珠の軟骨からの骨伝導にて受話が可能となる。なお、上記特許文献2に開示されているように、耳珠は、耳乳様突起、外耳口後部軟骨面、耳珠およびもみ上げ部等の耳軟骨構成の中で最も大きな聴感が得られるとともに押し付け圧力を増大させたときの低音部の上昇が他の位置よりも大きくなることが知られている。この知見については特許文献2に詳述されているのでこれを参照することができる。
携帯電話1は、これを右耳に当てたとき図1において時計方向に若干回転し、図1において右下がりの状態となる。そしてこのような携帯電話耳側上端の傾斜下側角に右耳用軟骨伝導振動部24を設けることにより、振動部を携帯電話外壁から突出させることなく右耳用軟骨伝導振動部24を自然に右耳の耳珠に接触させることができる。この状態は、通常の通話状態に近い姿勢であり、通話者本人にとっても傍目にも違和感がない。なお、受話部13は右耳用軟骨伝導振動部24近傍にあるので、耳珠軟骨経由の音声情報と外耳道経由の音声情報がともに耳に伝わることになる。このとき、異なった発音体と経路により同じ音声情報が伝えられることになるので、お互いが打ち消しあうことがないよう、両者間の位相調整が行われる。
一方、携帯電話1を左耳に当てたときは、携帯電話1が図1において反時計方向に若干回転し、図1において左下がりの状態となる。そして、右耳の場合と同様にして、携帯電話耳側上端の傾斜下側角に左耳用軟骨伝導振動部26が設けられている状態となり、左耳用軟骨伝導振動部26を自然に左耳の耳珠に接触させることができる。この状態が、通常の通話状態に近い姿勢であること、および受話部13が左耳用軟骨伝導振動部26近傍にあって耳珠軟骨経由の音声情報と外耳道経由の音声情報がともに耳に伝わるので、両者間の位相調整が行われることは、右耳の場合と同様である。
なお、上記近接センサにおける一対の赤外光発光部19、20は時分割で交互に発光しているので、共通の赤外光近接センサ21はいずれの発光部からの赤外光による反射光を受光しているのか識別可能であり、これによって右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26のいずれが耳珠に当たっているのか判断可能である。これによって、携帯電話1がいずれの耳で使用されているかが判別でき、耳珠が当接している方の振動部を振動させて他方をオフとすることが可能である。しかしながら、携帯電話1の耳への当て方や耳の形の個人差にはバラツキがあるので、実施例1では、さらに後述のように加速度センサを内蔵し、この加速度センサによって検知される重力加速度によって、携帯電話1がどちらに傾いているのかを検知して、傾斜下側角にある方の振動部を振動させて他方をオフとするよう構成している。以上の右耳使用および左耳使用については、各使用状態に即した図示により再度説明する。
上部7にはさらに、環境騒音を拾うよう外側(耳に当たらない背面側)に配置され、かつ右耳用軟骨伝導振動部24と左耳用軟骨伝導振動部26の振動の伝導防止手段が施された環境騒音マイク38が設けられる。この環境騒音マイク38はさらに操作者の口から発音される音声を拾う。環境騒音マイク38が拾った環境騒音および操作者自身の声は波形反転された上で右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26にミキシングされ、受話部13経由の音声情報に含まれる環境騒音および操作者自身の声をキャンセルして通話相手の音声情報を聞き取りやすくする。この機能の詳細は後述する。
図2は、右耳用軟骨伝導振動部24と左耳用軟骨伝導振動部26の機能を示す携帯電話1の側面図であり、図2(A)は、右手に携帯電話1を持って右耳28を当てている状態を示す。一方、図2(B)は、左手に携帯電話1を持って左耳30に当てている状態を示す。なお、図2(A)は、顔の右側面から見た図であり、図2(B)は、顔の左側面から見た図なので、携帯電話1はそれぞれ背面側(図1の裏側)が見えている。なお、携帯電話1と右耳28および左耳30との関係を図示するため、携帯電話1は一点鎖線にて示している。
図2(A)に示すように、携帯電話1は、これを右耳28に当てたとき図2において反時計方向(図1と裏表の関係)に若干傾き、図2において左下がりの状態となる。そして右耳用軟骨伝導振動部24はこのような携帯電話耳側上端の傾斜下側角に設けられているので、これを自然に右耳28の耳珠32に接触させることができる。すでに述べたように、この状態は、通常の通話状態に近い姿勢であり、通話者本人にとっても傍目にも違和感がない。一方、図2(B)に示すように、携帯電話1は、これを左耳30に当てたとき図2において時計方向(図1と裏表の関係)に若干傾き、図2において右下がりの状態となる。そして左耳用軟骨伝導振動部26はこのような携帯電話耳側上端の傾斜下側角に設けられているので、これを自然に左耳30の耳珠34に接触させることができる。この状態においても、右耳28の場合と同様、通常の通話状態に近い姿勢であり、通話者本人にとっても傍目にも違和感がない。
図3は、実施例1のブロック図であり、同一部分には図1と同一番号を付し、必要のない限り、説明は省略する。携帯電話1は、記憶部37に記憶されるプログラムに従って動作する制御部39によって制御される。記憶部37はまた、制御部39の制御に必要なデータを一時記憶するとともに、種々の測定データや画像も記憶することができる。表示部5の表示は制御部39の制御に基づき表示ドライバ41の保持する表示データに基づいて行われる。表示部5は表示バックライト43を有しており、周囲の明るさに基づいて制御部39がその明るさを調節する。
受話部13および送話部23を含む電話機能部45は、制御部39の制御下にある電話通信部47により、無線電話回線に接続可能である。スピーカ51は、制御部39の制御により着信音や種々の案内を行うとともにテレビ電話時の相手の声を出力する。このスピーカ51の音声出力は、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26から出力されることはない。テレビ電話の際は、軟骨伝導振動部が耳に当てられる可能性がないからである。また、画像処理部53は、制御部39に制御されてテレビ電話用内側カメラ17および背面主カメラ55によって撮像される画像を処理し、これらの処理結果の画像を記憶部37に入力する。
上記のように、近接センサにおける一対の赤外光発光部19、20は制御部39の制御に基づき時分割で交互に発光している。従って、共通の赤外光近接センサ21によって制御部39に入力される赤外反射光は、いずれの発光部からの赤外光による反射光識別可能である。制御部39は赤外光発光部19、20の両者から反射光が検知されるときは、これらを相互比較し、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26のいずれが耳珠に当たっているのか判断する。さらに加速度センサ49は、検知される重力加速度の向きを検知する。この検知信号に基づき、制御部39は、携帯電話1が図2(A)および図2(B)のいずれの状態で傾いているのか判断し、図2で説明したように傾斜下側角にある方の振動部を振動させて他方をオフとする。
携帯電話1はさらに、制御部39からの音声情報に位相調整を行い、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26に伝達するための位相調整ミキサー部36を有する。より詳細に説明すると、この位相調整ミキサー部36は、受話部13から発生して外耳道から鼓膜経由で伝わる音声情報と右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26から発生して耳珠軟骨経由で伝わる同じ音声情報がお互い打ち消しあうことがないよう、制御部39から受話部13に伝達される音声情報を基準にして、制御部39からの音声情報に位相調整を行い、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26に伝達する。なお、この位相調整は、受話部13と右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26との間の相対調整なので、制御部39から右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26に伝達される音声情報を基準にして、制御部39から受話部13に伝達される音声情報の位相を調整するよう構成してもよい。この場合、スピーカ51への音声情報も受話部13への音声情報と同位相で調整する。
なお、位相調整ミキサー部36は上記のような受話部13からの音声情報と右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26からの同じ音声情報がお互い打ち消しあうことがないようにする第1の機能を有する他、環境騒音マイク38との協働による第2の機能を有する。この第2の機能では、環境騒音マイク38が拾う環境騒音および操作者自身の声が位相調整ミキサー部36によって波形反転された上で右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26の音声情報にミキシングされ、これによって、受話部13経由の音声情報に含まれる環境騒音および操作者自身の声をキャンセルして通話相手の音声情報を聞き取りやすくする。なお、このとき、受話部13からの音声情報と右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26からの音声情報の伝達ルートの違いにかかわらず環境騒音および操作者自身の声が効果的に打ち消されるよう、第1の機能に基づく位相調整も加味してミキシングが行われる。
図4は、図2の実施例1における制御部39の動作のフローチャートである。なお、図4のフローは主に右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示しており、一般的な携帯電話の機能等、図4のフローに表記していない制御部39の動作も存在する。図4のフローは、携帯電話1の操作部9による主電源のオンでスタートし、ステップS2で初期立上および各部機能チェックを行うとともに表示部5における画面表示を開始する。次いでステップS4では、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26の機能をオフにしてステップS6に移行する。ステップS6では、メール操作やインターネット操作、その他諸設定並びにダウンロード済のゲームなど電波を使わない操作(以下、「非通話操作」と総称する)の有無をチェックする。そしてこれらの操作があればステップS8に進んで非通話処理を実行し、ステップS10に至る。なお、非通話操作では、携帯電話1の上部7における受話部13や右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26の機能を耳に当てて行う機能を想定していない。一方、ステップS6で非通話操作が検知されないときは直接ステップS10に移行する。
ステップS10では、携帯電波による通話が着信中であるか否かのチェックを行う。そして通話着信中でなければステップS12に進み、携帯電話1からの通話発呼に対する相手からの応答が有ったか否かチェックする。そして応答が検知されるとステップS14に進む。一方、ステップS10で携帯電波による通話が着信中であることが検知されたときはステップS16に移行し、携帯電話1が開かれているかどうか、つまり上部7が下部11に重なって折り畳まれている状態から図1のように開かれた状態になっているかをチェックする。そして携帯電話1が開かれていることが検知できなければステップS10に戻り、以下、ステップS10とステップS16を繰り返して携帯電話1が開かれるのを待つ。なおこの繰り返しで携帯電話1が開かれないまま通話の着信が終了すればフローはステップS10からステップS12に移行する。一方、ステップS16で携帯電話1が開かれていることが検知されるとステップS14に進む。ステップS14では、送話部23および受話部13をオンしてステップS18に移行する。ステップS18では通話がテレビ電話か否かをチェックし、テレビ電話でなければステップS20に移行してこの時点で通話が断たれているか否か確認して通話断でなければステップS22に移行する。
ステップS22では、赤外光近接センサ21が耳の当接を検知しているか否かチェックし、当接の検知があればステップS24に進む。一方、ステップS22で、赤外光近接センサ21が耳の当接を検知しないときはステップS14に戻り、以下、ステップS14およびステップS18から22を繰り返してステップS22における近接センサの検知を待つ。ステップS24では、加速度センサ49の検知信号に基づき、図2(A)に示すような右耳通話状態の傾斜が生じているかどうかチェックする。そして該当すればステップS26に進み、右耳用軟骨伝導振動部24をオンしてステップS28に移行する。一方、ステップS24で、右耳通話状態の傾斜が生じていることが検知できないときは、加速度センサ49の検知信号が図2(B)に示すような左耳通話状態傾斜を検出していることを意味するからステップS30に進み、左耳用軟骨伝導振動部26をオンしてステップS28に移行する。
なお上記図4のフローの説明では、赤外光近接センサ21が検出する赤外反射光が赤外光発光部19によるものか20によるものかを問わずステップS24に進み、ステップS24では加速度センサ49の信号により右耳通話状態傾斜であるか否かの検知を行うよう説明した。しかしながら、赤外光近接センサ21によっても右耳通話状態傾斜であるか否かの検知が可能なので、ステップS24において加速度センサ49の信号に代え、赤外光発光部19の発光タイミングにおける赤外光近接センサ21の出力が赤外光発光部20の発光タイミングにおけるものより大きければ右耳通話状態傾斜と判断するよう構成してもよい。また、ステップS24において、加速度センサ49の信号と赤外光発光部19、20の発光タイミングにおける赤外光近接センサ21の出力比較結果とを総合して右耳通話状態傾斜であるか否かの判断をするよう構成してもよい。
ステップS28では通話状態が断たれか否かをチェックし、通話が断たれていなければステップS24に戻って、以下ステップS28で通話断が検知されるまでステップS24からステップS30を繰り返す。これによって通話中の右耳通話状態と左耳通話状態の間の携帯電話1の持ち替えに対応する。一方、ステップS28で通話断が検知されるとステップS32に移行し、オン状態にある右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26および受話部13ならびに送話部23をオフしてステップS34に移行する。一方、ステップS12で通話発呼応答が検知されないときは直ちにステップS34に移行する。また、ステップS18でテレビ電話であることが検知されたときはステップS36のテレビ電話処理に移行する。テレビ電話処理では、テレビ電話用内側カメラ17による自分の顔の撮像、スピーカ51による相手の声の出力、送話部23の感度切換、表示部5における相手の顔の表示などが行われる。そして、このようなテレビ電話処理が終了すると、ステップS38に進んでスピーカ51および受話部13ならびに送話部23をオフしてステップS34に移行する。また、ステップS20において通話断が検知されたときもステップS38に移行するがこのときは元々スピーカ51がオンされていないので受話部13と送話部23をオフしてステップS34に移行する。
ステップS34では、主電源のオフ操作の有無がチェックされ、オフ操作があればフローを終了する。一方、ステップS34で主電源オフ操作が検知されないとき、フローはステップS6に戻り、以下ステップS6からステップS38を繰り返す。以上のように、右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26は、携帯電話1が開かれていないとき、携帯電話1が通話状態にないとき、通話状態であってもテレビ電話通話であるとき、および通常通話状態であっても携帯電話1が耳に当てられていないときにおいてオンになることはない。但し、右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26が一度オン状態となったときは、右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26とのオンオフ切り換えを除き、通話断が検知されない限り、これがオフとなることはない。
図5は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例2を示す斜視図である。実施例2においてもその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例1と同一の番号を付し、説明を省略する。実施例2の携帯電話101は、上部と下部に分離された折り畳み方ではなく、可動部のない一体型のものである。従って、この場合における「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
また、実施例1では、携帯電話1が折りたたまれたとき、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26は上部7と下部11の間に挟まれたて収納された形となるのに対し、実施例2では右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26が常に携帯電話101の外壁に露出している形となる。実施例2においても、図3の内部構造および図4のフローチャートが基本的に流用可能である。但し、上記の構造の違いに関連し、図4のフローチャートのステップS16が省略され、ステップS10で通話着信中であることが確認されたときは直接ステップS14に移行する。
図6は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例3を示す斜視図である。実施例3においてもその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例1と同一の番号を付し、説明を省略する。実施例3の携帯電話201は、上部107が下部に111に対してスライド可能な構造のものである。実施例3の構造では、上部107を下部111に重ねた状態では、上下関係はなくなるが、実施例3における「上部」とは携帯電話201を伸ばした際に上に来る部分を意味するものとする。
実施例3では、図6のように上部107を伸ばして操作部9を露出させた状態でフル機能が使用可能であるとともに、上部107を下部111に重ねて操作部9が隠れる状態とした場合でも着信応答や通話などの基本機能が使用可能である。実施例3でも、図6のように携帯電話201を伸ばした状態および上部107を下部111に重ねた状態のいずれにおいても、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26が常に携帯電話201の外壁に露出している形となる。実施例3においても、図3の内部構造および図4のフローチャートが基本的に流用可能である。但し、上記のように実施例3は、上部107を下部111に重ねた状態でも通話可能であるので、実施例2と同様にして、図4のフローチャートのステップS16が省略され、ステップS10で通話着信中であることが確認されたときは直接ステップS14に移行する。
上記本発明の種々の特徴の実施は上記の実施例に限られるものではなく、他の実施形態においても実施可能である。例えば、上記実施例では、持ち替えや使用者が変わることによる右耳使用時および左耳使用時の両者に対応するため、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26を設けているが、軟骨伝導の際には右耳のみまたは左耳のみの使用を前提とする場合は軟骨伝導振動部を一つにしてもよい。
また、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26は本来右耳および左耳の耳珠にそれぞれと当接することを前提に設けられているが、特許文献2に開示されているように、耳乳様突起や外耳口後部軟骨面など耳珠以外の耳軟骨構成においても軟骨伝導は可能なので、右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26の両者を例えば右耳使用時において右耳軟骨の適当箇所を同時に押し付けて使用してもよい。この意味で、2つの軟骨伝導振動部24および26は必ずしも右耳用および左耳用に限るものではない。この場合は、実施例のように2つの軟骨伝導振動部24および26のいずれか一方のみをオンするのに代えて、両者を同時にオンする。
さらに、上記実施例では、受話部13および右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26を同時にオンするようにしているが、右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26をオンするときは受話部13をオフするよう構成してもよい。この場合、音声情報の位相調整は不要となる。
図7は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例4を示す斜視図である。実施例4においてもその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例1と同一の番号を付し、説明を省略する。実施例4の携帯電話301は、実施例2と同様にして上部と下部に分離された折り畳み方ではなく、可動部のない一体型のものである。また、GUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。実施例4においても、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。なお、実施例4においては、テンキーなどの操作部209は大画面表示部205上に表示され、大画面表示部205に対する指のタッチやスライドに応じてGUI操作される。
実施例4における軟骨伝導振動機能は、圧電バイモルフ素子等からなる軟骨伝導振動源225と振動伝導体227を有する軟骨伝導振動ユニットが担う。軟骨伝導振動源225は、振動伝導体227の下部に接触して配置され、振動伝導体227にその振動を伝える。軟骨伝導振動源225は、実施例1から3と同様にして携帯電話外壁(図7では正面)から突出してデザインを害さないよう構成されるが、軟骨伝導振動源225の振動が振動伝導体227により側方に伝達され、その両端224および226を振動させる。振動伝導体227の両端224および226は耳珠と接触する携帯電話301の上部7の内側角に位置するので、実施例1から3と同様にして携帯電話外壁から突出することなく効果的に耳珠に接触する。このように、振動伝導体227の右端部224および左端部226はそれぞれ、実施例1でいう右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26を構成する。なお、振動伝導体227はその右端224および左端226だけで振動するのではなく全体で振動しているので、実施例4では、携帯電話301の内側上端辺のどこを耳軟骨に接触させても音声情報を伝達することができる。このような軟骨伝導振動ユニットの構成は、振動伝導体227によって軟骨伝導振動源225の振動を所望の位置に導けるとともに、軟骨伝導振動源225そのものを携帯電話301の外壁に配置する必要がないので、レイアウトの自由度が高まり、スペースに余裕のない携帯電話に軟骨伝導振動ユニットを実装するのに有用である。
実施例4は、さらに2つの機能が追加されている。ただ、これらの機能は実施例4に特有のものではなく、実施例1から3にも適用可能である。追加機能の一つは、軟骨伝導振動部の誤動作を防止するためのものである。実施例1から4のいずれにおいても、赤外光発光部19および20と赤外光近接センサ21により携帯電話が耳に当てられたことを検知しているが、例えば実施例1において携帯電話1の内側を下にして机等においた場合近接センサの検知があるので、携帯電話1が耳に当てられたものと誤認し、図4のフローのS22からステップS24に進むおそれがある。そしてステップS24で検知される右耳通話状態傾斜にも該当しないので、フローがステップS30に進み左耳用軟骨伝導振動部26が誤ってオンになる可能性がある。軟骨伝導振動部の振動エネルギーは比較的大きいので、このような誤動作があると、机との間で振動騒音を生じる可能性がある。実施例4ではこれを防止するため、加速度センサ49により水平静止状態を検知し、該当すれば、軟骨伝導振動源225の振動を禁止するよう構成している。この点の詳細については後述する。
次に、実施例4における二つ目の追加機能について説明する。本発明の各実施例は、右耳用軟骨伝導振動部24または左耳用軟骨伝導振動部26(実施例4では、振動伝導体227の右端部224または左端部226)を右耳または左耳の耳珠に接触させることにより音声情報を伝えるが、接触圧を高めて耳珠で耳穴を塞ぐことによって耳栓骨導効果を生じ、さらに大きな音で音声情報を伝えることができる。さらに耳珠で耳穴を塞ぐことにより環境騒音を遮断されるので、このような状態での使用は、不要な環境騒音を減じて必要な音声情報を増加させる一挙両得の受話状況を実現し、例えば駅騒音下での通話等に好適である。耳栓骨導効果が生じているときは、声帯からの骨導による自分の声も大きくなるとともに左右の聴感覚バランスが崩れる違和感を生じる。実施例4では、このような耳栓骨導効果発生中の自分の声の違和感を緩和するため、送話部23から拾った自分の声の情報の位相を反転させて軟骨伝導振動源225に伝え、自分の声をキャンセルするよう構成している。この点の詳細についても後述する。
図8は、実施例4のブロック図であり、同一部分には図7と同一番号を付す。また、実施例1から3と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付す。そして、これら同一または共通部分については、特に必要のない限り、説明を省略する。実施例4では、電話機能部45を若干詳細に図示しているが、構成は実施例1から3と共通である。具体的に述べると、図8の受話処理部212とイヤホン213が図3の受話部13に相当し、図8の送話処理部222とマイク223が図3の送話部23に相当する。一方、図7の軟骨伝導振動源225と振動伝導体227は、図8で軟骨伝導振動ユニット228としてまとめて図示している。送話処理部222は、マイク223から拾った操作者の音声の一部をサイドトーンとして受話処理部212に伝達し、受話処理部212は電話通信部47からの通話相手の声に操作者自身のサイドトーンを重畳してイヤホン213に出力することによって、携帯電話301を耳に当てている状態の自分の声の骨導と気導のバランスを自然な状態に近くする。
送話処理部222は、さらにマイク223から拾った操作者の音声の一部を音質調整部238に出力する。音質調整部238は、軟骨伝導振動ユニット228から出力して蝸牛に伝えるべき自分の声の音質を耳栓骨導効果発生時に声帯から体内伝導で蝸牛に伝わる操作者自身の声に近似した音質に調整し、両者のキャンセルを効果的にする。そして、波形反転部240はこのようにして音質調整された自分の声を波形反転して位相調整ミキサー部236に出力する。位相調整ミキサー部236は、押圧センサ242の検知する押圧が所定以上で携帯電話301により耳穴が耳珠で塞がれている状態に該当するときは、制御部239からの指示により波形反転部240からの出力をミキシングして軟骨伝導振動ユニット228を駆動する。これによって、耳栓骨導効果発生中の過度の自分の声がキャンセルされ、違和感の緩和が図られる。このとき、サイドトーン相当分の自分の声はキャンセルせずに残すようキャンセルの程度が調節される。一方、押圧センサ242の検出する押圧が所定より低い場合は、耳穴が耳珠で塞がれておらず耳栓骨導効果が生じていない状態に該当するので、位相調整ミキサー部236は制御部239の指示に基づき、波形反転部240からの自声波形反転出力のミキシングを行わない。なお、図8において、音質調整部238と波形反転部240の位置は逆転して構成してもよい。さらに、音質調整部238および波形反転部240は、位相調整ミキサー部236内の機能として一体化してもよい。
図9は、実施例4において右の耳珠に携帯電話301が当てられている状態を示す要部概念ブロック図であり、耳栓骨導効果発生中の自分の声のキャンセルについて説明するものである。また、図9は、押圧センサ242の具体的実施例についても図示しており、軟骨伝導振動部225が圧電バイモルフ素子であることを前提に構成されている。なお、同一部分については図7および図8と同一番号を付し、特に必要のない限り、説明を省略する。
図9(A)は、耳珠32が耳穴232を塞がない程度に携帯電話301が耳珠32に当てられている状態を示す。この状態では、受話処理部212からの通話相手の音声情報に基づき位相調整ミキサー部236が軟骨伝導振動部225を駆動している。押圧センサ242は、位相調整ミキサー部236と軟骨伝導振動部225を結ぶ信号線に現れる信号をモニタしており、振動伝導体227への押圧に応じて加えられる軟骨伝導振動部(圧電バイモルフ素子)225への歪に基づく信号変化を検知するよう構成される。このように、耳珠32に接触することにより音声情報を伝える軟骨伝導振動部225を圧電バイモルフ素子で構成すると、その圧電バイモルフ素子自体を耳珠32への押圧を検出するための押圧センサとしても兼用することができる。押圧センサ242は、さらに、位相調整ミキサー部236と受話処理部212を結ぶ信号線に現れる信号をモニタしている。ここに現れる信号は、耳珠32への押圧の影響を受けないので、押圧判定のための参照信号として利用することができる。
上記のように、図9(A)では耳珠32が耳穴232を塞がない状態にあり、押圧センサ242の判定する押圧が小さいので、この判定に基づき、制御部239は波形反転部240からの波形反転自声を軟骨伝導振動部225にミキシングしないよう位相調整ミキサー部236に指示する。一方、図9(B)は、矢印302の方向に携帯電話301が耳珠32をより強く押し、耳珠32が耳穴232を塞いでいる状態を示す。そして、この状態では、耳栓骨導効果が発生している。押圧センサ242は、所定以上の押圧の増加検出に基づいて耳穴232が塞がれたものと判定し、この判定に基づいて制御部239は波形反転部240からの波形反転自声を軟骨伝導振動部225にミキシングするよう位相調整ミキサー部236に指示する。以上のようにして、耳栓骨導効果発生中の自声の違和感が緩和される。逆に、押圧センサ242によって、図9(B)の状態から所定以上の押圧の減少が検出されると、図9(A)のように耳穴232が塞がれない状態になったものと判定され、波形反転自声のミキシングが停止される。なお、押圧センサ242は、押圧の絶対量および押圧の変化方向に基づいて、図9(A)と図9(B)の間の状態遷移を判定する。なお、両者の声がない無音状態においては、押圧センサ242は耳には聞こえない押圧モニタ信号を直接骨伝導振動部225に直接印加することで、押圧を検知する。
図10は、図8の実施例4における制御部239の動作のフローチャートである。なお、図10のフローは図4における実施例1のフローと共通するところが多いので、対応部分には同一のステップ番号を付し、必要のない限り説明を省略する。図10も、主に軟骨伝導振動ユニット228の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示している。従って、図4の場合と同様、一般的な携帯電話の機能等、図10のフローに表記していない制御部239の動作も存在する。図10において図4と異なる部分は太字で示しているので、以下これらの部分を中心に説明する。
ステップS42は、図4のステップS6およびステップS8をまとめたもので、ステップS42の非通話処理の中に、非通話操作なしで次のステップに直行する場合も含めて図示しているが、その内容は図4のステップS6およびステップS8と同じである。また、ステップS44は、図4のステップS10およびステップS12をまとめたもので、相手側からの着信であるか自分からの発信であるかを問わず両者間の通話状態の有無をチェックするステップとして図示しているが、その内容は、図4のステップS6およびステップS8と同じである。なお、実施例4では携帯電話301を開閉する構成はないので、図4のステップS16に相当するステップは含まない。
ステップS46は、実施例4における一つ目の追加機能に関するもので、携帯電話301が所定時間(例えば、0.5秒)手持ち状態から離れて水平状態で静止しているかどうかをチェックする。そして、ステップS22により近接センサの検知があったときに、ステップS46でこのような水平静止状態でないことが確認された場合に初めてステップS48に移行し、軟骨伝導振動源225をオンする。一方、ステップS46で水平静止状態が検知されたときはステップS50に進み、軟骨伝導振動源225をオフしてステップS14に戻る。なお、ステップS50は後述するフローの繰り返しにおいて、軟骨伝導振動源225がオンの状態でステップS46に至り、水平静止状態が検知されたときに対応するもので、軟骨伝導振動源225がオフの状態でステップS50に至ったときはなにもせずにステップS14に戻る。
ステップS52は、実施例4における二つ目の追加機能に関するもので、携帯電話301を耳珠32に強く押し当てて耳穴232を塞ぐことによる耳栓骨導効果が生じているかどうかをチェックするものである。具体的には図9に示したように押圧センサ242による所定以上の押圧変化の有無およびその方向によりこれをチェックする。そして耳栓骨導効果が生じる状態であることが検知されたときはステップS54に進み、自分の声の波形反転信号を軟骨伝導振動源225に付加してステップS58に移行する。一方、ステップS52で耳栓骨導効果が生じない状態であることが検知されたときはステップS56に移行し、自分の声の波形反転信号の軟骨伝導振動源225への付加をなくしてステップS58に移行する。ステップS58では通話状態が断たれか否かをチェックし、通話が断たれていなければステップS22に戻って、以下ステップS58で通話断が検知されるまでステップS22およびステップS46からステップS58を繰り返す。これによって通話中の耳栓骨導効果の発生および消滅に対応する。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、図10における実施例4のフローチャートでは、図4の実施例1のフローチャートにおける右耳用軟骨伝導振動部24と左耳用軟骨伝導振動部26との切り換えの構成がないが、実施例10の軟骨伝導振動ユニット228の構成として実施例1のような右耳用軟骨伝導振動部24と左耳用軟骨伝導振動部を採用し、ステップS22およびステップS46からステップS58のループの繰り返しの中で、耳栓骨導効果の発生および消滅への対応に加え、図4のステップS24からステップS26に準じた機能による右耳通話状態と左耳通話状態の間の携帯電話の持ち替えへの対応も併せて行うよう構成してもよい。また、図10の実施例4における水平静止状態のチェックと軟骨伝導振動ユニット228のオフ機能を、実施例1から実施例3に追加することも可能である。さらに、実施例1から3において、実施例4のような軟骨伝導振動ユニット228を採用することも可能である。
図11は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例5を示す斜視図である。実施例5は図7の実施例4を基本にしており、その構造の大半は共通なので、対応する部分には同一の番号を付し、説明を省略する。また、説明を省略する部分は図示の煩雑さを避けるため番号自体の付与も省略しているが、図面上共通する部分の機能および名称は図7と共通である。なお、詳細構成については、図8および図9における実施例4のブロック図を基本的に援用する。実施例5が実施例4と異なる第1点目は、携帯電話401において、いわゆるタッチパネル機能(テンキーなどの操作部209が表示されている大画面表示部205に指で触れ、そのタッチ位置検知やスライド検知でGUI操作する機能)をオフにする設定が可能になっているとともに、このタッチパネル機能がオフ設定されているときのみ有効となるプッシュ・プッシュボタン461を備えている点である。タッチパネル機能のオフ設定は、タッチパネル自体の操作により行うことできるとともに、タッチパネル機能のオンへの復帰設定は、プッシュ・プッシュボタン461を所定時間以上長押しすることで可能である。また、プッシュ・プッシュボタン461は、これが有効になっているとき、1回目の押下で通話を開始するとともに、通話中において2回目の押下を行うことで通話を切断する機能(オンもオフもプッシュで行うオルタネートスイッチ機能)を有する。なお、上記プッシュ・プッシュボタン461の1回目の押下は、特定の相手への発呼の際、または着信への応答の際に行われ、いずれの場合も、これによって通話が開始される。
実施例5が実施例4と異なる第2点目は、実施例5が、携帯電話401と、これを収納するためのソフトカバー463との組合せにより機能するよう構成されていることである。なお、図11では、構成説明の都合上、ソフトカバー463が透明であるかのような図示をしているが、実際にはソフトカバー463は不透明であり、図11のように携帯電話401をソフトカバー463に収納した状態で携帯電話401が外から見えることはない。
上記プッシュ・プッシュボタン461の機能は、携帯電話401がソフトカバー463に収納されている状態において、ソフトカバー463の上からプッシュ・プッシュボタン461を押下することでも可能である。さらに、ソフトカバー463は、携帯電話401の軟骨伝導振動源225と振動伝導体227を有する軟骨伝導振動ユニット228と連動し、携帯電話401がソフトカバー463に収納されている状態において通話が可能なよう構成される。以下、これについて説明する。
ソフトカバー463は、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造、または、透明梱包シート材などにみられるような一層の空気泡群を合成樹脂の薄膜で分離密封した構造など)によって作られており、携帯電話401が収容されたときに軟骨伝導振動源225からの振動を伝える振動伝導体227がその内側に接触する。そして、携帯電話401を収納したままでソフトカバー463の外側を耳に当てることにより、ソフトカバー463の介在で振動伝導体227の振動が広い接触面積で耳軟骨に伝達される。さらに、振動伝導体227の振動によって共振するソフトカバー463の外面からの音が外耳道から鼓膜に伝わる。これによって、軟骨伝導振動源225からの音源情報を大きな音として聞くことができる。また、耳に当てられているソフトカバー463が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断することもできる。さらに、ソフトカバー463を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり、耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源225からの音源情報をさらに大きな音として聞くことができる。なお、ソフトカバー463を介した検知となるが、実施例4と同様にして、軟骨伝導振動源225による押圧力検知に基づき、耳栓骨導効果が生じている状態では、送話部23(マイク223)からの自声信号への波形反転信号付加が行われる。
携帯電話401がソフトカバー463に収容されたままの通話状態では、ソフトカバー463に伝えられた振動伝導体227の振動が送話部23にも伝わり、ハウリングを起こす可能性がある。その対策として振動伝導体227と送話部23の間の音響伝導を遮断するため、ソフトカバー463にはソフトカバー本体とは音響インピーダンスが異なる絶縁リング部465が両者間に設けられている。この絶縁リング部465は、ソフトカバー本体の材料と異なる材料を一体成型するかまたは接合して形成することができる。また、絶縁リング部465は、同じ材料で成型されたソフトカバー463の外側または内側に音響インピーダンスの異なる層を接合して形成してもよい。さらに、絶縁リング部465は、振動伝導体227と送話部23の間に複数介在させて絶縁効果を高めてもよい。
また、ソフトカバー463は、携帯電話401を収納したままの状態での通話を可能とするため、送話部23(マイク223)の近傍が音声の気導を妨げないマイクカバー部467として構成される。このようなマイクカバー部467は、例えばイヤホンカバーなどのようなスポンジ状構造をとる。
図12は、図11の実施例5における制御部239(図8流用)の動作のフローチャートである。なお、図12のフローにおいて、図10のフローと共通する部分には同一のステップ番号を付し、説明を省略する。図12も、主に軟骨伝導振動ユニット228の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示している。従って、図10等と同様にして、実施例5でも、一般的な携帯電話の機能等、図12のフローに表記していない制御部239の動作も存在する。
図12のフローでは、ステップS62に至るとタッチパネルが上記で説明した操作によりオフ設定となっているか否かチェックし、オフ設定でなければステップS64に移行し、プッシュ・プッシュボタン461の機能を無効にしてステップS66に移行し、ステップS34に至る。ステップS66で通常処理として示している部分は、図10のステップS14、ステップS18からステップS22、ステップS32、ステップS36、ステップS38およびステップS42からステップS58(つまり、ステップS44とステップS34の間の部分)を一括してまとめたものである。換言すればステップS62からステップS64に移行する場合、図12のフローは図10と同様の機能を実行する。
一方、ステップS62でタッチパネルオフ設定が行われていることが検知されると、フローはステップS68に移行し、プッシュ・プッシュボタン461の機能を有効にしてステップS70に進む。ステップS70では、タッチパネルの機能を無効にしてステップS72でプッシュ・プッシュボタン461の1回目の押下の有無を検知する。ここで押下の検知がない場合は直接ステップS34に移行する。一方、ステップS72でプッシュ・プッシュボタン461の1回目の押下が検知されると、ステップS74に進み、携帯電話401がソフトカバー463に収納されているか否か検知する。この検知は、例えば近接センサを構成する赤外光発光部19、20および赤外光近接センサ21の機能により可能である。
ステップS74でソフトカバー463への収納が検知されると、フローはステップS76に進み、送話部23をオンするとともに受話部13をオフする。さらにステップS78で軟骨伝導振動源225をオンしてステップS80に進み、携帯電話401を通話状態とする。また既に通話状態であればこれを継続する。一方、ステップS74でソフトカバー463への収納が検知されない場合はステップS82に移行して送話部23および受話部13をともにオンし、さらにステップS84で軟骨伝導振動源225をオフしてステップS80に進む。ステップS80に後続するステップS86では、耳栓骨導効果処理を行ってステップS88に移行する。ステップS86における耳栓骨導効果処理は、図10のステップS52からステップS56をまとめて図示したものである。
ステップS88では、プッシュ・プッシュボタン461の2回目の押下の有無を検知する。そして検知がなければフローはステップS74に戻り、以下プッシュ・プッシュボタン461の2回目の押下が検知されない限りステップS74からステップS88を繰り返す。そして通話中におけるこの繰り返しの中で携帯電話401がソフトカバー463に収納されているかどうかが常にチェックされるので、使用者は、例えば環境騒音が大きく受話部13では音が聞き取りにくいときは通話途中で携帯電話401がソフトカバー463に収納することにより、環境騒音を遮断したり、耳栓骨導効果によりさらに音を聞き取りやすくしたりする等の対応をとることができる。
一方、ステップS88でプッシュ・プッシュボタン461の2回目の押下が検知されるとフローはステップS90に移行し、通話を切断するとともにステップS92で全ての送受話機能をオフし、ステップS34に至る。ステップS34では主電源がオフかどうかチェックしているので、主電源オフ検出がなければフローはステップS62に戻り、以下ステップS62からステップS92およびステップS34を繰り返す。そしてこの繰り返しの中で、既に説明したタッチパネルの操作によるタッチパネルオフ設定またはプッシュ・プッシュボタン461の長押しによるオフ設定の解除への対応がステップS64により行われるので適宜通常処理との切り替えを行うことができる。
図13は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例6を示す斜視図である。図13(A)は図7と同様の正面斜視図であるが、後述のように実施例6は携帯電話機能を備えたデジタルカメラとして構成されているため、図7とは90度回転させ、デジタルカメラとしての使用状態の角度で図示している。図13(B)は、その背面斜視図(デジタルカメラとしてみた場合は正面斜視図)であり、図13(C)は、図13(B)におけるB−B切断面における断面図である。
実施例6も図7の実施例4を基本にしており、その構造の大半は共通なので、対応する部分には同一の番号を付し、説明を省略する。また、説明を省略する部分は図示の煩雑さを避けるため番号自体の付与も省略しているが、図面上共通する部分の機能および名称は図7と共通である。なお、詳細構成については、図8および図9における実施例4のブロック図を基本的に援用する。実施例6が実施例4と異なる第1点目は、携帯電話501が携帯電話機能を備えたデジタルカメラとして構成されることである。すなわち、図13(B)に示すように、背面主カメラの撮像レンズとして高い光学性能を備えたズームレンズ555を採用している点である。なお、ズームレンズ555は、使用時においては図13(B)に一点鎖線で示す状態に突出するが、不使用時において携帯電話501の外面と同一平面をなす位置まで後退するいわゆる沈胴式のレンズ構成をとっている。また、被写体が暗いときに補助光を投射するストロボ565およびシャッタレリーズボタン567を備えている。また、携帯電話501は右手でカメラを構えるのに適したグリップ部563を有している。
実施例6が実施例4と異なる第2点目は、このグリップ部563が、実施例5におけるソフトカバー463と同様にして、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られており、グリップ感を良好にするのに適した弾性を備えることである。そして、実施例4の配置とは異なり、グリップ部563の裏側に軟骨伝導振動源525が配置されている。図13(C)の断面から明らかなように軟骨伝導振動源525はグリップ部563の裏面に接触している。
従って、グリップ部563を耳に当てることにより、グリップ部563の介在で軟骨伝導振動源525の振動が広い接触面積で耳軟骨に伝達される。さらに、軟骨伝導振動源525の振動によって共振するグリップ部563の外面からの音が外耳道から鼓膜に伝わる。これによって、軟骨伝導振動源525からの音源情報を大きな音として聞くことができる。また、実施例5と同様にして、耳に当てられているグリップ部563が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断することもできる。さらに、実施例5と同様にして、グリップ部563を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり、耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源525からの音源情報をさらに大きな音として聞くことができる。なお、グリップ部563を介した検知となるが、実施例5と同様にして、軟骨伝導振動源525による押圧力検知に基づき、耳栓骨導効果が生じている状態では、マイク等の送話部523からの自声信号への波形反転信号付加が行われる。
また、実施例4と異なり、送話部523は、図13(B)に明らかなように、携帯電話501の正面ではなく端面に設けられている。従って、受話部13を耳に当てて通話をするときも、裏側のグリップ部563を耳に当てて通話をするときも、送話部523が共通に使用者の声を拾うことができる。なお、受話部13を有効にするか軟骨伝導振動源525を有効にするかは切換ボタン561で設定を切換えることができる。また、ズームレンズ555が図13(B)に一点鎖線で示す状態に突出している状態ではグリップ部563を耳にあてて通話をするのに不適なので、このような状態で切換ボタンが操作され、軟骨伝導振動源525を有効にする設定がなされたときは自動的にズームレンズ555を沈胴させ、この沈胴が完了するまで切換の実行を保留する。
図14は、図13の実施例6における制御部239(図8流用)の動作のフローチャートである。なお、図14のフローにおいて、図10のフローと共通する部分には同一のステップ番号を付し、説明を省略する。図14も、主に軟骨伝導振動ユニット228の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示している。従って、図10等と同様にして、実施例6でも、一般的な携帯電話の機能等、図14のフローに表記していない制御部239の動作も存在する。
図14のフローでは、ステップS104に至ると通話開始操作が行われたかどうかチェックする。そして操作がなければ直ちにステップS34に移行する。一方、通話開始操作が検知されるとステップS106に進み、切換ボタン561により軟骨伝導設定がなされているかどうかチェックする。そして軟骨伝導設定であればステップS108でズームレンズ555が突出しているかどうかチェックする。この結果ズームレンズ555の突出がなければステップS110に移行し、送話部523をオンするとともに受話部13をオフし、ステップS112で軟骨伝導振動源525をオンしてステップS46に移行する。
一方、ステップS106で軟骨伝導設定が検知されないときはステップS114に移行し、送話部523および受話部13をとともにオンし、ステップS116で軟骨伝導振動源525をオフしてステップS118に移行する。さらに、ステップS106で軟骨伝導設定が検知されたときでもステップS108でズームレンズ555が突出していることが検知された場合は、ステップS110に移行し、ズームレンズ555の沈胴を指示してステップS114に移行する。なお既に沈胴が開始されている場合は、その継続を指示する。後述のように、ステップS106からステップS116は通話状態が断たれない限り繰り返される。このようにして、ステップS106での軟骨伝導設定検知に従ってステップS110で沈胴が指示され、沈胴が開始したあとは、沈胴が完了してステップS108でズームレンズ555の突出が検知されなくなるまで、ステップS110には移行せずステップS114およびステップS116の状態が維持される。
ステップS112に後続するステップS46からステップS56は図10と共通なので説明を省略する。ステップS54またはステップS56からステップS118に移行すると通話状態が断たれたかどうかのチェックが行われ、通話断が検知されない場合はフローがステップS106に戻り、以下、ステップS106からステップS118およびステップS46からステップS56が繰り返される。これによって、使用者は、例えば環境騒音が大きく受話部13では音が聞き取りにくいとき、通話途中で切換ボタン561を操作して軟骨伝導設定に切換えることにより、環境騒音を遮断したり、耳栓骨導効果によりさらに音を聞き取りやすくしたりする等の対応をとることができる。また、このときズームレンズ555が突出状態にあれば自動的に沈胴させられる。
図15は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例7を示す斜視図である。実施例7の携帯電話601は、実施例1と同様にして上部607がヒンジ部603によって下部611の上に折り畳み可能に構成される。図15(A)は図1と同様の正面斜視図であるとともに、図15(B)は、その背面斜視図である。また、図15(C)は、図15(B)におけるB−B切断面における要部断面図である。実施例7の構造の大半は実施例1と共通なので、対応する部分には同一の番号を付し、説明を省略する。また、説明を省略する部分は図示の煩雑さを避けるため番号自体の付与も省略しているが図面上共通する部分の機能および名称は図1と共通である。なお、概観は実施例1と共通であるが内部の詳細構成については、図8および図9における実施例4のブロック図を基本的に援用する。
実施例7が実施例1と異なる第1点目は、図15(B)に示すように上部607のヒンジ近傍側において広い面積の軟骨伝導出力部663が設けられている点である。この軟骨伝導出力部663は、実施例5におけるソフトカバー463や実施例6におけるグリップ部563と同様にして、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られており、携帯電話601外壁に異物が衝突するのを保護するのに適した弾性を備えることである。そして、実施例1の配置とは異なり、軟骨伝導出力部663の裏側に軟骨伝導振動源625が配置されている。図15(C)の断面から明らかなように軟骨伝導振動源625は軟骨伝導出力部663の裏面に接触している。
従って、携帯電話601を折り畳み、軟骨伝導出力部663を耳に当てることにより、軟骨伝導出力部663の介在で軟骨伝導振動源625の振動が広い接触面積で耳軟骨に伝達される。さらに、軟骨伝導振動源625の振動によって共振する軟骨伝導出力部663の外面からの音が外耳道から鼓膜に伝わる。これによって、軟骨伝導振動源625からの音源情報を大きな音として聞くことができる。また、実施例5および実施例6と同様にして、耳に当てられている軟骨伝導出力部663が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断することもできる。さらに、実施例5および実施例6と同様にして、軟骨伝導出力部663を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり、耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源625からの音源情報をさらに大きな音として聞くことができる。なお、軟骨伝導出力部663を介した検知となるが、実施例5および実施例6と同様にして、軟骨伝導振動源625による押圧力検知に基づき、耳栓骨導効果が生じている状態では、マイク等の送話部623からの自声信号への波形反転信号付加が行われる。
実施例7が実施例1と異なる第2点目は、図15(A)に示すように、送話部623が、携帯電話601の下部611の正面ではなく下部611の下端面に設けられている点である。従って、携帯電話601を開いて受話部13を耳に当てて通話をするときも、携帯電話601を閉じて軟骨伝導出力部663を耳に当てて通話をするときも、送話部623が共通に使用者の声を拾うことができる。なお、携帯電話601を軟骨伝導切換対応設定にしておいた場合、携帯電話601を開いたとき受話部13が有効になるとともに携帯電話601を閉じたとき軟骨伝導振動源625が有効になるよう自動的に切換わる。一方、軟骨伝導切換対応設定をしない場合は、軟骨伝導振動源625が自動的に有効になることはなく、携帯電話601の開閉にかかわらず通常の送話受話が機能する。
図15(B)の背面斜視図から明らかなように、携帯電話601の背面には、背面主カメラ55、スピーカ51および背面表示部671が設けられる。さらに、携帯電話601の背面には、軟骨伝導切換対応設定が行われていて携帯電話601が閉じられているとき有効となるプッシュ・プッシュボタン661が備えられている。プッシュ・プッシュボタン661は、実施例5と同様にして1回目の押下で通話を開始するとともに、通話中において2回目の押下を行うことで通話を切断する機能を有する。なお、上記プッシュ・プッシュボタン661の1回目の押下は、特定の相手への発呼の際、または着信への応答の際に行われ、いずれの場合も、これによって通話が開始される。
図16は、図15の実施例7における制御部239(図8流用)の動作のフローチャートである。なお、図16のフローにおいて、図14のフローと共通する部分には同一のステップ番号を付し、説明を省略する。図16も、主に軟骨伝導振動ユニット228の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示している。従って、図14等と同様にして、実施例7でも、一般的な携帯電話の機能等、図16のフローに表記していない制御部239の動作も存在する。
図16のフローでは、通話が開始されてステップS122に至ると軟骨伝導切換対応設定がなされているかどうかチェックする。そしてステップS122で軟骨伝導切換対応設定が確認されるとステップS124に進み、携帯電話601が開かれているかどうか、つまり上部607が下部611に重なって折り畳まれている状態から図15のように開かれた状態になっているかどうかをチェックする。そして携帯電話601が開かれておらず上部607が下部611に重なって折り畳まれている状態であることが確認されるとステップS110に移行し、送話部623をオンするとともに受話部13をオフし、ステップS112で軟骨伝導振動源625をオンしてステップS46に移行する。このようにして、携帯電話601が折り畳まれている状態で軟骨伝導出力部663による受話が可能となる。
一方、ステップS122で軟骨伝導切換対応設定が検知されないときは携帯電話601が折り畳まれているか否かを問うことなくステップS114に移行し、送話部623および受話部13をとともにオンし、ステップS116で軟骨伝導振動源625をオフしてステップS118に移行する。さらに、ステップS106で軟骨伝導切換対応設定が検知されたときにおいてステップS124で携帯電話601が開かれていることが確認されたときも、ステップS114に移行する。
図16のフローも、ステップS118において通話状態が断たれたかどうかのチェックが行われ、通話断が検知されない場合はフローがステップS122に戻り、以下、ステップS122、ステップS124、ステップS114からステップS118およびステップS46からステップS56が繰り返される。このようにして、軟骨伝導切換対応設定を予めしておいた場合、使用者は、例えば環境騒音が大きく受話部13では音が聞き取りにくいとき、通話途中で携帯電話601を折り畳み、軟骨伝導出力部663による受話に切換えることにより、環境騒音を遮断したり、耳栓骨導効果によりさらに音を聞き取りやすくしたりする等の対応をとることができる。
以上の実施例5から6の特徴をまとめると、携帯電話は、軟骨伝導振動源と、軟骨伝導振動源の振動を耳軟骨に導く伝導体とを有し、この伝導体が弾性体として構成されるか、または、複数個所で耳軟骨に接する大きさもしくは耳軟骨に接して外耳道を塞ぐ大きさを有するか、または、少なくとも耳朶に近似する面積を有するか、または耳軟骨の音響インピーダンスに近似する音響インピーダンスを有する。そして、これらの特徴のいずれかまたはその組合せにより、軟骨伝導振動源による音情報を有効に聞くことができる。また、これらの特徴の活用は、上記の実施例に限るものではない。例えば、上記実施例に開示した材質、大きさ、面積、配置および構造の利点を活用することにより、伝導体を弾性体とせずに本発明を構成することも可能である。
図17は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例8を示す斜視図である。実施例8は、図13の実施例6と同様、携帯電話機能を備えたデジタルカメラとして構成されており、図13と同様にして、図17(A)正面斜視図、図17(B)は、背面斜視図、図17(C)は、図17(B)におけるB−B切断面における断面図である。実施例8は、図13の実施例6と構造の大半は共通なので、対応する部分には同一の番号を付し、説明を省略する。
実施例8が実施例6と異なるのは、図17(C)の断面から明らかなように軟骨伝導振動源725がグリップ部763内部に埋め込まれている点である。グリップ部763は、図13の実施例6と同様、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られており、グリップ感を良好にするのに適した弾性を備える。なお、内部の詳細構成は、実施例6と同様、図8および図9における実施例4のブロック図を基本的に援用する。
図17(C)におけるフレキシブル接続線769は、グリップ部763内部に埋め込まれている軟骨伝導振動源725と、図8の位相調整ミキサー部236などの回路部分771とを接続するものである。図17(C)断面図に示すような軟骨伝導振動源725のグリップ部763内部への埋め込み構造は、軟骨伝導振動源725およびフレキシブル接続線769をグリップ部763にインサートした一体成型によって実現可能である。また、グリップ部763をフレキシブル接続線769および軟骨伝導振動源725を境として二体に割り、グリップ部763をフレキシブル接続線769および軟骨伝導振動源725を挟んで両者を接着することによっても実現できる。
実施例8において、グリップ部763を耳に当てることによりグリップ部763の介在で軟骨伝導振動源725の振動が広い接触面積で耳軟骨に伝達されること、軟骨伝導振動源725の振動によって共振するグリップ部763の外面からの音が外耳道から鼓膜に伝わること、耳に当てられているグリップ部763が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断すること、および、グリップ部763を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源725からの音源情報をさらに大きな音として聞けることは、実施例6と同様である。また、軟骨伝導振動源625による押圧力検知に基づき、耳栓骨導効果が生じている状態では、マイク等の送話部523からの自声信号への波形反転信号付加が行われることも、実施例6と同様である。なお、実施例8では、軟骨伝導振動源725がグリップ部763に埋め込まれているので、押圧力増加によるグリップ部763の歪みに伴う軟骨伝導振動源725の歪みにより耳栓骨導効果が生じている状態が検知される。
実施例8において軟骨伝導振動源725をグリップ部763のような弾性体内部に埋め込む意義は、上記のように良好な音伝導を得ることに加え、軟骨伝導振動源725への衝撃対策とすることにある。実施例8において軟骨伝導振動源725として用いられる圧電バイモルフ素子は衝撃を嫌う性質がある。ここにおいて、実施例8のように軟骨伝導振動源725を周囲から包むように構成することにより、携帯電話701の剛構造にかかる衝撃に対する緩衝を図ることができ、常に落下等のリスクに晒される携帯電話701への実装を容易にすることができる。そして、軟骨伝導振動源725を包む弾性体は単に緩衝材として機能するだけでなく、上記のように軟骨伝導振動源725の振動をより効果的に耳に伝える構成として機能する。
図18は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例9を示す斜視図である。実施例9の携帯電話801は、実施例7と同様にして上部807がヒンジ部603によって下部611の上に折り畳み可能に構成される。そして図18において、図15と同様にして、図18(A)は正面斜視図、図18(B)は背面斜視図、図18(C)は図18(B)におけるB−B切断面における断面図である。図18の実施例8は、図15の実施例7と構造の大半は共通なので、対応する部分には同一の番号を付し、説明を省略する。
実施例9が実施例7と異なるのは、図18(C)の断面から明らかなように軟骨伝導振動源825が軟骨伝導出力部863と内部緩衝材873に挟まれている点である。この軟骨伝導出力部863は、実施例7における軟骨伝導出力部663同様、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られており、携帯電話801外壁に異物が衝突するのを保護するのに適した弾性を備える。また、内部緩衝材873は、緩衝を目的とする弾性体であれば任意の材料により構成できるが、軟骨伝導出力部863と同じ材料とすることも可能である。なお、内部の詳細構成は、実施例7と同様、図8および図9における実施例4のブロック図を基本的に援用する。
図18(C)の断面に示すように、軟骨伝導出力部863と内部緩衝材873の間には、軟骨伝導振動源825とフレキシブル接続線869が挟まれている。このフレキシブル接続線869は、実施例8と同様、軟骨伝導振動源825を図8の位相調整ミキサー部236などの回路部分871に接続するものである。これら軟骨伝導振動源825とフレキシブル接続線869を軟骨伝導出力部863と内部緩衝材873の間に挟む構造は、軟骨伝導出力ユニット875内にまとめられており、このような軟骨伝導出力ユニット875が携帯電話801の上部807にはめ込まれている。
実施例9においても、軟骨伝導出力部863を耳に当てることにより軟骨伝導出力部863の介在で軟骨伝導振動源825の振動が広い接触面積で耳軟骨に伝達されること、軟骨伝導振動源825の振動によって共振する軟骨伝導出力部863からの音が外耳道から鼓膜に伝わること、耳に当てられている軟骨伝導出力部863が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断すること、および、軟骨伝導出力部863を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源825からの音源情報をさらに大きな音として聞けることは、実施例7と同様である。また、軟骨伝導振動源825による押圧力検知に基づき、耳栓骨導効果が生じている状態では、マイク等の送話部623からの自声信号への波形反転信号付加が行われることも、実施例7と同様である。なお、実施例9では、軟骨伝導振動源825がともに弾性体である軟骨伝導出力部863と内部緩衝材873の間に挟まれているので、実施例8と同様にして、押圧力増加による軟骨伝導出力部863の歪みに伴う軟骨伝導振動源825の歪みにより耳栓骨導効果が生じている状態が検知される。
実施例9において、軟骨伝導振動源825が、ともに弾性体である軟骨伝導出力部863と内部緩衝材873の間に挟まれている構造の意義は、上記のように良好な音伝導を得ることに加え、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源825への衝撃対策とすることにある。つまり、実施例8と同様にして、軟骨伝導振動源825を周囲から弾性体で包むように構成することにより、携帯電話801の剛構造にかかる衝撃に対する緩衝を図ることができ、常に落下等のリスクに晒される携帯電話801への実装を容易にすることができる。そして、軟骨伝導振動源825を挟む弾性体は単に緩衝材として機能するだけでなく、少なくとも外側の弾性体を耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料で成型することにより、上記のようにより軟骨伝導振動源825の振動をより効果的に耳に伝える構成として機能する。
図19は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例10を示す斜視図である。実施例10の携帯電話901は、実施例4と同様にして、可動部のない一体型のものであり、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例4と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例4と同様にして実施例10でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例10が実施例4と異なるのは、圧電バイモルフ素子等からなる軟骨伝導振動源925が軟骨伝導振動源となるとともに、気導によって鼓膜に伝わる音波を発生する受話部の駆動源を兼ねている点である。具体的に述べると、実施例4と同様にして、軟骨伝導振動源925の上部に接触して携帯電話上辺に振動伝導体227が配置されている。さらに、軟骨伝導振動源925の前方には、実施例7と同様にして耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られた軟骨伝導出力部963が配置されている。また、後述のように軟骨伝導出力部963は気導によって鼓膜に伝わる音波を発生するための受話部を兼ねるので実施例10では、実施例4のような受話部13の別設はない。
以上の構成により、まず、軟骨伝導振動源925の振動は振動伝導体227により側方に伝達され、その両端224および226を振動させるので、そのいずれかをこれを耳珠に接触させることによって軟骨伝導で音を聞くことができる。また、実施例4と同様、振動伝導体227はその右端224および左端226だけで振動するのではなく全体で振動している。従って、実施例10でも、携帯電話901の内側上端辺のどこを耳軟骨に接触させても音声情報を伝達することができる。そして、通常の携帯電話と同様にして軟骨伝導出力部963の一部が外耳道入口正面にくるような形で携帯電話901を耳に当てたときには、振動伝導体227が耳軟骨の広範囲に接触するとともに、軟骨伝導出力部963が耳珠等の耳軟骨に接触する。このような接触を通じ、軟骨伝導によって音を聞くことができる。さらに、実施例5から実施例9と同様にして、軟骨伝導振動源925の振動によって共振させられる軟骨伝導出力部963の外面からの音が外耳道から音波として外耳道から鼓膜に伝わる。このようにして、通常の携帯電話使用状態において、軟骨伝導出力部963は気導による受話部として機能することができる。
軟骨伝導は、軟骨への押圧力の大小により伝導が異なり、押圧力を大きくするとより効果的な伝導状態を得ることができる。これは、受話音が聞き取りにくければ携帯電話を耳に押し当てる力を強くするという自然な行動を音量調節に利用できることを意味する。そしてこのような機能は、例えば取扱説明書によって使用者に説明しなくても、使用者が自然な行動を通じて自ずからその機能を理解することができる。実施例10において、軟骨伝導振動源925の振動を剛体である振動伝導体227と弾性体である軟骨伝導出力部963の両者が同時に耳軟骨に接触可能であるよう構成したのは、主に剛体である振動伝導体227の押圧力の調節を通じ、より効果的に音量調節を行うことを可能にするためである。
本発明の実施は、上記の実施例に限るものではなく、上記した本発明の種々の利点は、他の実施形態においても享受できる。例えば、実施例10において軟骨伝導振動源925と軟骨伝導出力部963の組合せを気導による受話部専用として機能するよう構成する場合は、軟骨伝導出力部963の配置されている位置に、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料以外のスピーカとして好適な共振体を配置することができる。この場合でも、実施例10において、圧電バイモルフ素子等からなる軟骨伝導振動源925が軟骨伝導振動源となるとともに、気導によって鼓膜に伝わる音波を発生する受話部の駆動源を兼ねるという特徴とその利点を享受できる。
図20は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例11を示す斜視図である。実施例11の携帯電話1001は、実施例4と同様にして、可動部のない一体型のものであり、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例4と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例4と同様にして実施例11でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例11が実施例4と異なるのは、右耳用振動部1024および左耳用振動部1026が、携帯電話1001の正面ではなく、それぞれ側面1007、および図示の関係で番号を省略している反対側の側面、に設けられていることである。(なお、右耳用振動部1024および左耳用振動部1026の配置が図7の実施例4に対して左右逆になっていることに注意)機能的には、実施例4と同様にして、実施例11においても右耳用振動部1024および左耳用振動部1026は、それぞれ振動伝導体1027の両端部として構成されており、振動伝導体1027の下部には圧電バイモルフ素子等からなる軟骨伝導振動源1025が接触して配置され、振動伝導体1027にその振動を伝える。これによって、軟骨伝導振動源1025の振動が振動伝導体1027により側方に伝達され、その両端1024および1026を振動させる。振動伝導体1027の両端1024および1026は、携帯電話1001の側面(例えば1007)の上端部分を耳にあてたとき耳珠と接触するよう配置されている。
また、マイク等の送話部1023は、右耳用振動部1024および左耳用振動部1026のいずれが耳珠に当てられた状態であっても使用者によって発音される音声を拾うことができるよう、携帯電話1001の下面に設けられている。なお、実施例11の携帯電話1001は、大画面表示部205を観察しながらのテレビ電話のためのスピーカ1013が設けられており、マイク等の送話部1023はテレビ電話の際には感度の切換えが行われ、大画面表示部205を観察中の使用者によって発音される音声を拾うことができる。
図21は、右耳用振動部1024と左耳用振動部1026の機能を示す携帯電話1001の側面図であり、図示の方法は図2に準じる。但し、図20で説明したように、実施例11では右耳用振動部1024および左耳用振動部1026がそれぞれ携帯電話1001の側面に設けられている。従って、実施例11において携帯電話1001を耳に当てる際には、図21に示すように携帯電話1001の側面が耳珠に当てられる。つまり、図2のように携帯電話1の表示部5の面が耳珠に当てられるのではないので、大画面表示部205が耳や頬に当たって皮脂などで汚れることがなくなる。
具体的に述べると、図21(A)は、右手に携帯電話1001を持って右耳28の耳珠32を当てている状態を示し、携帯電話1001において右耳28に当てられているのと反対側の側面が見えているとともに、断面が図示されている大画面表示部205の表面は頬とほぼ直角になって顔の下後方を向いている。この結果、上記のように大画面表示部205が耳や頬に当たって皮脂などで汚れることがなくなる。同様に、図21(B)は、左手に携帯電話1001を持って左耳30の耳珠34に当てている状態を示し、この場合でも図21(A)と同様にして、大画面表示部205が頬とほぼ直角になって顔の下後方を向いており、大画面表示部205が耳や頬に当たって皮脂などで汚れることがなくなる。
なお、図21のような使用状態は、例えば図21(A)の場合、携帯電話1001を右手で持って大画面表示部205を観察している状態からそのまま手を捻らずに携帯電話1001を移動させて右耳用振動部1024を耳珠32に当てることにより実現する。従って携帯電話1001を持ち換えたり手を捻ったりすることなく、肘と手首の角度を若干変化させるという右手の自然な動きで大画面表示部205の観察状態と右耳用振動部1024を耳珠32に当てる状態の間の遷移が可能である。なお、上記では説明の単純化のため、図21の状態は大画面表示部205が頬とほぼ直角になっているものとしたが、手の角度や携帯電話1001を耳に当てる姿勢は使用者が自由に選択することができるので、大画面表示部205が頬の角度は必ずしも直角である必要はなく、適度に傾いていてよい。しかしながら、実施例11の構成によれば、右耳用振動部1024および左耳用振動部1026がそれぞれ携帯電話1001の側面に設けられているので、どのような姿勢でこれらを耳珠32または34に当てたとしても、大画面表示部205が耳や頬に当たって皮脂などで汚れることはない。
なお、実施例11では、大画面表示部205が頬の方向を向いて隠れることがなくなる結果、通話先などの表示内容が前後の他人に見える可能性がある。従って実施例11ではプライバシー保護のため、右耳用振動部1024または左耳用振動部1026が耳に当てられている状態では通常表示からプライバシー保護表示(例えば無表示)への切換えが自動的に行われる。その詳細については後述する。
図22は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例12を示す斜視図である。図22(A)は、後述する取っ手1181が突出していない状態、図22(B)は、取っ手1181が突出している状態をそれぞれ示す。実施例12の携帯電話1101は、実施例11と同様にして、軟骨伝導用振動部1124が携帯電話1101の側面(図22で見て左側の側面であり、図示の都合上隠れた面となるので番号を付与せず)に設けられている。なお、実施例12は、携帯電話としては、実施例11と同様の可動部のない一体型のものをベースにしており、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例11と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例11と同様にして実施例12でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例12が実施例11と異なるのは、後述する取っ手1181に関する構成の他、軟骨伝導用振動部1124が携帯電話1101における図22で見て左の片側の側面に設けられている点である。また、耳に当てられるのは、左側の側面に限られるので、マイク等の送話部1123も、図22に示すように携帯電話1101の左側面寄りの下面に設けられている。なお、実施例12においても、大画面表示部205を観察しながらのテレビ電話の際には、送話部1123の切換えが行われ、大画面表示部205を観察中の使用者によって発音される音声を拾うことができる。
実施例12では、図22のように大画面表示部205が見えている状態から実施例11と同様にして軟骨伝導用振動部1124を右耳の耳珠に当てることができる。一方、軟骨伝導用振動部1124を左耳の耳珠に当てるには、携帯電話1101が裏向くように持ち換えることにより軟軟骨伝導用振動部1124が左耳に対向するようにすることができる。このような使用は図22(A)のように取っ手1181を突出させない状態でも可能である。
次に取っ手の機能について説明する。図21のように大画面表示面205が頬とほぼ直角になるような角度で軟骨伝導用振動部1124を耳に当てる際の一つの自然な持ち方は、大画面表示部205が設けられている携帯電話1101の表面および背面を親指および他の四指で挟む形であるが、このとき大画面表示部205に指がタッチする状態となるので、誤動作の可能性があるとともに通話中の比較的長時間かつ強い接触による指紋汚れのおそれがある。
そこで、実施例12では、大画面表示部205への指のタッチを防止しつつ携帯電話1101の保持を容易にするため、必要に応じ、図22(A)の状態から図22(B)の状態に取っ手1181を突出させ、この取っ手1181を保持に利用することができるよう構成している。これによって図22(B)の状態では取っ手1181および携帯電話1101の本体端部を親指および他の四指で挟むことが可能となり、大画面表示部205にタッチすることなく容易に携帯電話1101を保持することができる。また、突出量が比較的大きくなるよう構成する場合には、取っ手1181を握って携帯電話1101を保持することも可能である。なお、図22(A)の状態の場合と同様、携帯電話1101が裏向くように保持することにより、軟骨伝導用振動部1124を左耳の耳珠に当てることも可能である。
図22(A)から取っ手1181を突出させるには、突出操作ボタン1183を押すことにより、取っ手のロックが外れ、若干突出するのでこれを引き出すことにより図22(B)の状態とすることができる。図22(B)の状態ではロックがかかるので、取っ手1181を持って軟骨伝導用振動部1124を耳珠に押し付ける際にも支障がない。取っ手1181を収納するには、図22(B)の状態で突出操作ボタン1183を押せばロックが外れるので、図22(A)の状態にとなるよう取っ手1181を押し込めばロックがかかる。
図23は、図22の実施例12における制御部239(図8流用)の動作のフローチャートである。なお、図23のフローは、図14のフローと共通する部分が多いので該当部分には同一のステップ番号を付し、説明を省略する。図23も、主に軟骨伝導振動ユニット228の機能を説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示している。従って、図14等と同様にして、実施例12でも、一般的な携帯電話の機能等、図23のフローに表記していない制御部239の動作も存在する。図23において図14と異なる部分は太字で示しているので、以下これらの部分を中心に説明する。
図23のフローでは、ステップS104に至ると通話開始操作が行われたかどうかチェックする。そして操作がなければ直ちにステップS34に移行する。一方、通話開始操作が検知されるとステップS132に進み、取っ手1181が突出状態にあるかどうかチェックする。そして突出状態になければステップS134に進み、軟骨伝導用振動部1124が耳軟骨に接触している状態にあるかどうかチェックする。そして接触状態が検知されるとステップS136に進む。なお、ステップS132において取っ手1181が突出状態にあることが検知されると直ちにステップS136に移行する。
ステップS136では送話部1123をオンするとともにステップS138で軟骨伝導用振動部1124をオンする。一方、ステップS140ではスピーカ1013をオフする。次いでステップS142に進み、大画面表示部205の表示をプライバシー保護表示とする。このプライバシー保護表示は、プライバシー情報を含まない所定の表示とするかまたは無表示状態とする。なお、この時点では大画面表示部205自体をオフすることなく表示内容のみを変更する。このような表示制御を行った後、ステップS52に移行する。なお、ステップS136からステップS142において、既に目的の状態となっている場合はこれらのステップでは結果的に何もせずステップS52に至る。
一方、ステップS134で軟骨伝導用振動部1124が耳軟骨に接触している状態にあることが検知されないときは、ステップS144に移行し、送話部1123をオンするとともに、ステップS146で軟骨伝導用振動部1124をオフする。一方、ステップS148ではスピーカ1013をオンする。次いでステップS150に進み、大画面表示部205の表示を通常表示とする。このような表示制御を行った後、ステップS118に移行する。なお、ステップS144からステップS150においても、既に目的の状態となっている場合はこれらのステップでは結果的に何もせずステップS118に至る。
ステップS142に後続するステップS52からステップS56、ステップS118およびステップS34、ならびにステップS150に後続するステップS118およびステップS34は、図14と共通なので説明を省略する。なお、ステップS118に移行すると通話状態が断たれたかどうかのチェックが行われ、通話断が検知されない場合はフローがステップS132に戻り、以下、ステップS132からステップS150およびステップS52からステップS56が繰り返される。これによって、取っ手1181の出し入れまたは軟骨伝導用振動部1124の接触非接触により、軟骨伝導用振動部1124とスピーカ1013の切換えおよび表示の切換えが自動的に行われる。また、軟骨伝導用振動部1124がオンとなっている状態では、耳栓骨伝導効果の有無に基づく自声波形反転信号付加の有無の切換えが自動的に行われる。
なお、上記のステップの繰り返しにおいて、大画面表示部205の表示がステップS142において最初にプライバシー保護表示に変わってから所定時間が経過したかを判断するステップおよび所定時間経過があったときに省電力の目的で大画面表示部205自体をオフするステップをステップS142とステップS52の間に挿入してもよい。このとき、これに対応して、ステップS148とステップS150の間に大画面表示部205がオフになっているときこれをオンするステップを挿入する。また、図23のフローは、ステップS132を省略することにより、図20の実施例11にも採用することができる。
図24は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例13を示す斜視図である。図24(A)は、後述する送受話ユニット1281が携帯電話1201と一体化している状態、図24(B)は、送受話ユニット1281が分離されている状態をそれぞれ示す。実施例13の携帯電話1201は、図24(A)の状態において軟骨伝導用振動部1226が携帯電話1201の側面1007に配置された状態となっている。この点では、実施例11および実施例12と同様である。なお、実施例13は、携帯電話としては、実施例11および実施例12と同様の可動部のない一体型のものをベースにしており、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例12と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例11および実施例12と同様にして実施例13でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例13は、図24(A)の状態では、軟骨伝導用振動部1226および送話部1223が図24で見て右側に配置されていることを除き、実施例12の図22(A)と同様の構成である。但し、図24のように大画面表示部205が見えている状態からは、軟骨伝導用振動部1226は左耳の耳珠に当てられる。そして、軟骨伝導用振動部1226を右耳の耳珠に当てるには、携帯電話1201が裏向くように持ち換えることにより軟骨伝導用振動部1226が左耳に対向するようにする。
実施例13が、実施例12と異なるのは、軟骨伝導用振動部1226および送話部1223を含む送受話ユニット1281が図24(B)のように携帯電話1201から分離できる点である。送受話ユニット1281の携帯電話1201からの着脱は、着脱ロックボタン1283を操作することにより可能である。送受話ユニット1281はさらに、電源部を含む軟骨伝導用振動部1226および送話部1223のための制御部1239、および送受話操作部1209を有する。送受話ユニット1281はまた、携帯電話1201と電波1285で無線通信可能なBluetooth(登録商標)などの近距離通信部1287を有し、送話部1223から拾った使用者の音声および軟骨伝導用振動部1226の耳への接触状態の情報を携帯電話1201に送信するとともに、携帯電話1201から受信した音声情報に基づき軟骨伝導用振動部1226を振動させる。
上記のようにして分離した送受話ユニット1281は、ペンシル型送受話ユニットとして機能し、軟骨伝導用振動部1226を自由に持って右耳または左耳の耳珠に接触させることにより通話が可能である。また、耳珠への接触圧を高めることで耳栓骨導効果を得ることもできる。また、分離させた状態の送受話ユニット1281は、軟骨伝導用振動部1226の長軸周りのいずれの面または先端を耳に当てても、軟骨伝導により音を聞くことができる。さらに、送受話ユニット1281は、通常は図24(A)のようにして携帯電話1201に収納して適宜図24(B)のように分離させる使用方法の他、図24(B)のように分離させた状態で、例えば携帯電話1201は内ポケットやカバンに収納するとともに、送受話ユニット1281はペンシルのように胸の外ポケットに挿しておき、発呼および着信時の操作および通話は送受話ユニット1281のみで行うような使用法も可能である。なお、軟骨伝導用振動部1226は、着信のバイブレータとして機能させることもできる。
実施例13のようなペンシル型の送受話ユニット1281は、収納部を有する専用の携帯電話1201との組合せで構成する場合に限るものではない。例えば、Bluetooth(登録商標)などによる近距離通信機能を有する一般の携帯電話のアクセサリとして構成することも可能である。
図25は、本発明の実施の形態に係る携帯電話の実施例14を示す斜視図である。図25(A)は、後述する送受話ユニット1381が携帯電話1301に収納されている状態、図25(B)は、送受話ユニット1381が引き出されている状態をそれぞれ示す。実施例14の携帯電話1301は、図25(A)の状態において軟骨伝導用振動部1326が携帯電話1301の側面1007に配置された状態となっている。この点では、実施例11から実施例13と同様である。なお、実施例14は、携帯電話としては、実施例11から実施例13と同様の可動部のない一体型のものをベースにしており、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には実施例13と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例11から実施例13と同様にして実施例14でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例14も、図25(A)の状態では、実施例13の図24(A)と同様の構成である。実施例14が、実施例13と異なるのは、図25(B)に示すように、送受話ユニット1381が無線ではなく有線で携帯電話1301と交信する点である。送受話ユニット1381の携帯電話1301からの着脱は、実施例13と同様にして着脱ロックボタン1283を操作することにより可能である。送受話ユニット1381においては、軟骨伝導用振動部1326と送話部1323の間および送話部1323と携帯電話1301の間がそれぞれケーブル1339で接続されている。なお、図25(A)の収納状態においては、ケーブル1339の内、軟骨伝導用振動部1326と送話部1323の間の部分は側面1007の溝内に収納されるとともに、送話部1323と携帯電話1301の間の部分は送話部1323を収納する際、スプリングによって携帯電話1301内部に自動的に巻き取られる。なお、送話部1323には、発呼および着信時の操作のためのリモコン操作部が備えられている。以上のようにして、実施例14では、送話部1323から拾った使用者の音声および軟骨伝導用振動部1326の耳への接触状態の情報が有線で携帯電話1301に送信されるとともに、携帯電話1301から有線で受信した音声情報に基づき軟骨伝導用振動部1326が振動させられる。
図25(B)のように引き出された送受話ユニット1381は、軟骨伝導用振動部1326の部分が耳珠に触れるよう外耳道入口の下部軟骨に引っ掛けて使用する。そしてこの状態で送話部1323が口の近くに位置するので使用者の声を拾うことができる。また、軟骨伝導用振動部1326の部分を持って耳珠への接触圧を高めることで耳栓骨導効果を得ることもできる。さらに、送受話ユニット1381は、通常は図25(A)のようにして携帯電話1301に収納して適宜図25(B)のように引き出す使用方法の他、図25(B)のように送受話ユニット1381を引き出した状態で、例えば携帯電話1301は内ポケット等に収納するとともに、送受話ユニット1381の軟骨伝導用振動部1326を耳に引っ掛けたままとしておくような使用法も可能である。なお、軟骨伝導用振動部1326は、実施例13と同様にして、着信のバイブレータとして機能させることもできる。
実施例14のような有線イヤホン型の送受話ユニット1381は、収納部を有する専用の携帯電話1301との組合せで構成する場合に限るものではない。例えば、外部イヤホンマイク接続端子を有する一般の携帯電話のアクセサリとして構成することも可能である。
以上の各実施例に示した種々の特徴は、必ずしも個々の実施例に特有のものではなく、それぞれの実施例の特徴は、その利点が活用可能な限り、適宜、他の実施例の特徴と組み合わせたり、組み替えたりすることが可能である。
また、以上の各実施例に示した種々の特徴の実施は、上記の実施例に限るものではなく、その利点を享受できる限り、他の実施例でも実施可能である。例えば、実施例11から実施例14における表示面に対する側面への軟骨伝導用振動部の配置は、軟骨伝導により耳珠から音声情報を伝える構成であることにより、耳珠への接触を容易にし、音情報の伝導ポイントを耳珠とすることができるため、耳で聞くという従来からの電話に近似した違和感のない傾聴姿勢を実現するものである。また、軟骨伝導による音声伝達は、気導の場合のように外耳道口の前に閉空間を形成する必要がないので側面への配置に適している。さらに、軟骨伝導により音情報を伝導させるため、振動体の振動により気導を生じる割合が少なく、幅の狭い携帯電話の側面に軟骨伝導用振動部を配置しても、外部への実質的な音漏れを伴うことなしに使用者の外耳道内に音を伝えることができる。これは、軟骨伝導においては、気導音として外耳道内に音が入るのではなく、音エネルギーが軟骨に接触することによって伝達され、その後耳の組織の振動によって外耳道の内部で音が生成されるからである。従って、実施例11から実施例14における軟骨伝導用振動部の採用は、音漏れによって隣にいる人に受話音が聞こえて迷惑をかけたりプライバシーが漏れたりする恐れなしに、表示面に対する側面に音情報出力部を配置する上でも効果が大きい。
しかしながら、音声情報を聞く際の耳や頬の接触による表示面の汚れを防止することができる利点を享受するという点から見ると、表示面に対する側面への配置は、配置される音声情報出力部が軟骨伝導振動部である場合に限るものではない。例えば、音声情報出力部を気導によるイヤホンとし、これを表示面に対する側面に設けるよう構成してもよい。また、音声情報出力部を耳の前の骨(頬骨弓)または耳の後の骨(乳突部)または額にあてる骨伝導振動部とし、これを表示面に対する側面に配置するよう構成してもよい。これらの音声情報出力部の場合でも、表示面に対する側面への配置によって、音声情報を聞く際に表示面が耳や頬に接触することがなくなるのでその汚れを防止できる利点を享受可能である。そして、これらの場合においても、イヤホンや骨伝導振動部の配置が片側の側面に限る場合は、実施例12から実施例14のようにマイクについても表示面に対する側面に配置することができる。また、実施例11から実施例14と同様にして、図21のような姿勢でイヤホンを耳に当てて通話をする際、または骨伝導振動部を耳の前後の骨に当てて通話をする際において、表示面をプライバシー保護表示とすることにより、プライバシー情報を含む表示が前後または左右の他人に見えるのを防止することができる。
図26は、本発明の実施の形態に係る実施例15のシステム構成図である。実施例15は携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、携帯電話1401とともに携帯電話システムをなす。実施例15は、実施例13において図24(B)のように送受話ユニット1281が携帯電話1201から分離された状態のシステム構成と共通するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要ない限り説明を省略する。なお、携帯電話1401は、実施例13の携帯電話1201と同様にして、送受話ユニットとの組合せで用いるべく特別に構成される場合に限るものではなく、例えば、Bluetooth(登録商標)などによる近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成される場合であってもよい。この場合、送受話ユニットは、実施例13と同様にして、このような一般の携帯電話1401のアクセサリとして構成されることになる。これらの2つの場合についての詳細については後述する。
実施例15が、実施例13と異なるのは、送受話ユニットが実施例13のようなペンシル型ではなく、ヘッドセット1481として構成される点である。送受話ユニット1481が、圧電バイモルフ素子等を有する軟骨伝導用振動部1426および送話部1423を有すること、軟骨伝導用振動部1426および送話部1423のための電源部を含む制御部1439を有すること、および送受話操作部1409を有することについては、実施例13に準じる。さらに、送受話ユニット1481が、携帯電話1401と電波1285で無線通信可能なBluetooth(登録商標)などの近距離通信部1487を有し、送話部1423から拾った使用者の音声をおよび軟骨伝導用振動部1426の耳への接触状態の情報を携帯電話1401に送信するとともに、携帯電話1401から受信した音声情報に基づき軟骨伝導用振動部1426を振動させることについても、実施例13に準じる。
次に、実施例15特有の構成について説明すると、ヘッドセット1481は、耳掛け部1489により右耳28に取り付けられる。ヘッドセット1481は、弾性体1473によって保持される可動部1491を有し、軟骨伝導用振動部1426はこの可動部1491によって保持されている。そして、ヘッドセット1481が耳掛け部1489により右耳28に取り付けられた状態において、軟骨伝導用振動部1426が耳珠32に接触するよう構成される。なお、弾性体1473は、可動部1491を耳珠32の方向に屈曲させることを可能とするとともに、軟骨伝導用振動部1426への緩衝材としても機能し、ヘッドセット1481にかかる機械的衝撃から軟骨伝導用振動部1426を保護する。
図26の状態において通常の軟骨伝導による音情報の聴取が可能となるが、環境騒音で音情報が聞き取りにくい時は、可動部1491を外側から押すことによってこれを屈曲させ、軟骨伝導用振動部1426をより強く耳珠32に圧接することによって耳珠32が耳穴を塞ぐようにする。これによって、他の実施例でも説明した耳栓骨導効果が生じ、さらに大きな音で音声情報を伝えることができる。さらに耳珠32で耳穴を塞ぐことにより環境騒音を遮断することができる。また、可動部1491の屈曲状態の機械的検知に基づいて送話部1423から拾った自分の声の情報の位相を反転させて軟骨伝導用振動部1426に伝え、自分の声をキャンセルする。その効用等は他の実施例で説明したので詳細は割愛する。
図27は、本発明の実施の形態に係る実施例16のシステム構成図である。実施例16も、実施例15と同様にして携帯電話1401のための送受話ユニットをなすヘッドセット1581として構成されており、携帯電話1401とともに携帯電話システムをなす。実施例16は、実施例15と共通点が多いので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要ない限り説明を省略する。なお、携帯電話1401は、実施例15でも説明したとおり、特別に構成される場合および一般の携帯電話として構成される場合のいずれであってもよい。これら2つの場合については後述する。
実施例16が、実施例15と異なるのは、可動部1591全体が耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造)によって作られていることである。また、圧電バイモルフ素子等を有する軟骨伝導用振動部1526は、実施例8と同様にして可動部1591の内部に埋め込まれている。このような構成により、可動部1591は、それ自身の弾性により軟骨伝導用振動部1526を含んで耳珠32側に屈曲させられることが可能となっている。なお、簡単のため図示を省略しているが、軟骨伝導用振動部1526と制御部1439などの回路部分は、図17(C)におけるフレキシブル接続線769と同様の接続線により接続されている。
実施例16では、図27の状態において可動部1591が耳珠32に接触しており、軟骨伝導用振動部1526からの音情報は可動部1591の弾性材料を介した軟骨伝導により耳珠32に伝導される。この構成による効用は、実施例5から実施例10で説明したものと同様である。さらに、環境騒音で音情報が聞き取りにくい時は、可動部1591を外側から押すことによってこれを屈曲させ、軟骨伝導用振動部1526をより強く耳珠32に圧接することによって耳珠32が耳穴を塞ぐようにする。これによって、実施例15と同様にして耳栓骨導効果が生じ、さらに大きな音で音声情報を伝えることができる。耳珠32で耳穴を塞ぐことにより環境騒音を遮断することができることも実施例15と同様である。また、可動部1591の屈曲状態の機械的検知に基づいて送話部1423から拾った自分の声の情報の位相を反転させて軟骨伝導用振動部1526に伝え、自分の声をキャンセルできることも実施例15と同様である。
さらに、実施例16では、軟骨伝導用振動部1526が可動部1591の内部に埋め込まれているため、可動部1591を構成する弾性材料は、ヘッドセット1581にかかる機械的衝撃から軟骨伝導用振動部1526を保護するとともに可動部1591自体への機械的衝撃からも軟骨伝導用振動部1526を保護する緩衝材として機能する。
図28は、実施例16のブロック図であり、同一部分には図27と同一番号を付す。また、ブロック図の構成は実施例4と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付す。そして、これら同一または共通部分については、特に必要のない限り、説明を省略する。なお、実施例16において、図28の受話処理部212とイヤホン213は、図27の受話部13に相当し、図28の送話処理部222とマイク223が、図27の送話部23に相当する。実施例4と同様にして、送話処理部222は、マイク223から拾った操作者の音声の一部をサイドトーンとして受話処理部212に伝達し、受話処理部212は電話通信部47からの通話相手の声に操作者自身のサイドトーンを重畳してイヤホン213に出力することによって、携帯電話1401を耳に当てている状態の自分の声の骨導と気導のバランスを自然な状態に近くする。
図28における実施例16のブロック図が図8における実施例4のブロック図と異なるのは、図8における実施例4の携帯電話301が、図28の実施例16において携帯電話1401と送受話ユニットをなすヘッドセット1581に分けられていることである。つまり、図28は、実施例16において、携帯電話1401がヘッドセット1581との組み合わせで用いるべく特別に構成される場合のブロック図に該当する。
具体的に述べると、図28においては、位相調整ミキサー部236の出力がBluetooth(登録商標)などによる近距離通信部1446により外部に無線送信される。近距離通信部1446は、また、外部マイクから無線で受信した音声信号を送話処理部222に入力する。さらに、他の実施例では図示と説明を省略していたが、図28では携帯電話1401全体に給電する蓄電池を有する電源部1448を図示している。
一方、ヘッドセット1581の構成は、携帯電話1401の近距離通信部1446と電波1285で交信する近距離通信部1487を有するとともに、ヘッドセット1581全体に給電する電源部1548を有する。電源部1548は、交換可能な電池または内蔵の蓄電池により給電を行う。また、ヘッドセット1581の制御部1439は、送話部(マイク)1423で拾った音声を近距離通信部1487から携帯電話1401に無線送信させるとともに、近距離通信部1487で受信した音声情報に基づき、軟骨伝導振動部1526を駆動制御する。さらに、制御部1439は、操作部1409による着信受信操作または発呼操作を近距離通信部1487から携帯電話1401に伝達する。屈曲検知部1588は、可動部1591の屈曲状態を機械的に検知し、制御部1439は、この屈曲検知情報を近距離通信部1487から携帯電話1401に伝達する。屈曲検知部1588は、例えば屈曲角度が所定以上に達した時メカ的にオンとなるスイッチで構成することができる。携帯電話1401の制御部239は、近距離通信部1446で受信した屈曲検知情報に基づき位相調整ミキサー部236を制御し、送話部(マイク)1423から送話処理部222に伝達された自分の声に基づく波形反転部240の信号を受話処理部212からの音声情報に付加するか否かを決定する。
図29は、図27の実施例16において、携帯電話1401を一般の携帯電話として構成するとともに、ヘッドセット1581をそのアクセサリとして構成した場合のブロック図であり、図28との混乱を避けるため、実施例17として説明する。図29は、図28と共通する構成が多いので、同一部分には図28と同一番号を付し、特に必要のない限り、説明を省略する。
上記のように、図29における実施例17では、携帯電話1601は、Bluetooth(登録商標)などによる近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成されている。具体的には、近距離通信部1446は、マイク223から入力されるのと同様の外部マイクからの音声情報を送話処理部222に入力するとともに、イヤホン213に出力するのと同様の音声情報を外部に出力する。そしてこれら近距離通信部1446を通じて外部との間で入出力される音声情報と内部のマイク223およびイヤホン213との切換えは、制御部239によって行われている。以上のようにして、図29の実施例17では、図28の実施例16における音質調整部238、波形反転部240および位相調整ミキサー部236の機能はヘッドセット1681側に移されている。
上記に対応して、図29の実施例17におけるヘッドセット1681では、以下の点において図28における実施例16と構成が異なっている。位相調整ミキサー部1636には、ヘッドセット1681の制御部1639の制御により近距離通信部1487で受信した受話音声情報が入力されるが、さらに波形反転部1640からの音声情報も入力可能なように構成される。そして位相調整ミキサー部1636は、必要に応じ、波形反転部1640からの音声情報を受信した受話音声情報にミキシングして軟骨伝導振動部1626を駆動する。より詳細に説明すると、送話部(マイク)1423から拾った操作者の音声の一部が音質調整部1638に入力され、軟骨伝導振動部1626を含む軟骨伝導振動ユニット1628から蝸牛に伝えるべき自分の声の音質を耳栓骨導効果発生時に声帯から体内伝導で蝸牛に伝わる操作者自身の声に近似した音質に調整し、両者のキャンセルを効果的にする。そして、波形反転部1640はこのようにして音質調整された自分の声を波形反転し、必要に応じ、位相調整ミキサー部1636に出力する。
具体的なミキシング制御について説明すると、位相調整ミキサー部1636は、屈曲検知部1588の検知する可動部1591の屈曲角度が所定以上に達し、これによって押される耳珠で耳穴が塞がれる状態に該当するときは、制御部1639からの指示によって波形反転部1640からの出力をミキシングして軟骨伝導振動ユニット1628を駆動する。これによって、耳栓骨導効果発生中の過度の自分の声がキャンセルされ、違和感の緩和が図られる。このとき、サイドトーン相当分の自分の声はキャンセルせずに残すようキャンセルの程度が調節される。一方、屈曲検知部1588が所定以上の屈曲を検知しないときは、耳穴が耳珠で塞がれておらず耳栓骨導効果が生じていない状態に該当するので、位相調整ミキサー部1636は制御部1639の指示に基づき、波形反転部1640からの自声波形反転出力のミキシングを行わない。なお、実施例4と同様にして、図29の実施例17においても、音質調整部1638と波形反転部1640の位置は逆転して構成してもよい。さらに、音質調整部1638および波形反転部1640は、位相調整ミキサー部1636内の機能として一体化してもよい。なお、制御部1639が操作部1409による着信受信操作または発呼操作を近距離通信部1487から携帯電話1601に伝達する点は、実施例16と同様である。
図28および図29のブロック図は、図27のシステム図の構成だけでなく、図26の実施例15のシステム図にも適用可能である。また、屈曲検知部1588を図8におけるような押圧センサ242に読み替えれば、図24の実施例13または図25の実施例14にも適用可能である。但し、実施例13に読み替える場合、図24(A)のように送受話ユニット1281が携帯電話1201に合体させられた場合において両者を直接接続する接点部を携帯電話1201および送受話ユニット1281に設ける。図24(A)の状態においては、近距離通信部による携帯電話1201と送受話ユニット1281との間の無線通信交信は、このような接点部を介した通信に自動的に切換わる。また、実施例14に読み替える場合、近距離通信部に代えて両者を有線で接続するコネクタ接点を携帯電話1301および送受話ユニット1381に設ける。
図30は、図29の実施例17におけるヘッドセット1681の制御部1639の動作のフローチャートである。図30のフローは、操作部1409による主電源のオンでスタートし、ステップS162で初期立上および各部機能チェックを行う。次いでステップS164では、携帯電話1601との間の近距離通信接続を指示してステップS166に移行する。なお、ステップS164の指示に基づいて近距離通信が確立されると、以後主電源がオフされない限り、ヘッドセット1681は携帯電話1601と常時接続状態となる。ステップS166では、携帯電話1601との間の近距離通信が確立したかどうかチェックし、確立が確認されるとステップS168に移行する。
ステップS168では、携帯電話1601からの着信信号が近距離通信を通じて伝達されたか否かのチェックを行う。そして着信があればステップS170に進み、軟骨伝導振動部1626が着信振動するよう駆動する。この着信振動は可聴域の周波数としてもよいが、耳珠32でバイブレーションを感じることができる振幅の大きい低周波域の振動としてもよい。次いでステップS172では、電話を掛けてきた側の発呼中止操作などによって着信信号が停止したかどうかチェックし、停止がなければステップS174に進んで操作部1409による受信操作があったかどうかチェックする。そして受信操作があればステップS176に移行する。一方、ステップS174で受信操作がなければフローはステップS170に戻り、以下、軟骨伝導振動部1626の着信振動が停止するか受信操作が行われるかしない限り、ステップS170からステップS174のループが繰り返される。
一方、ステップS168で着信信号が検知されない場合はステップS178に移行し、操作部1409によって登録済みの通話先へのワンタッチでの発呼操作が行われたかどうかチェックする。そして発呼操作が検知されるとステップS180に進み、発呼操作が携帯電話1601に伝達されて発呼が行われ、これに対する相手からの応答により電話接続が成立した旨の信号が携帯電話1601から伝達されたか否かチェックする。そしてステップS180で電話接続の成立が確認されるとステップS176に移行する。
ステップS176では、軟骨伝導振動部1626を音声情報の受話のためにオンするとともに、ステップS182でマイク1423を送話のためにオンしてステップS184に移行する。ステップS184では、可動部1591の所定角度以上の屈曲が検知されたかどうかチェックする。そして、屈曲が検知されたときはステップS186に進み、自分の声の波形反転信号を軟骨伝導振動部1626に付加してステップS188に移行する。一方、ステップS184で所定角度以上の屈曲が検知されないときはステップS190に移行し、自分の声の波形反転信号の軟骨伝導振動部1626への付加をなくしてステップS188に移行する。ステップS188では通話状態が断たれた旨の信号を携帯電話1601から受信したか否かをチェックし、通話が断たれていなければステップS176に戻って、以下ステップS188で通話断が検知されるまでステップS176からステップS188を繰り返す。これによって通話中の可動部1591の屈曲に基づく耳栓骨導効果の発生および消滅に対応する。
一方、ステップS188で通話断の信号が携帯電話1601から受信されたことが検知されたときはステップS192に進み、軟骨伝導振動部1626による受話をオフするとともにマイク1423による送話をオフしてステップS194に移行する。ステップS194では、無通話状態が所定時間以上続いているかどうかチェックし、該当すればステップS196に移行する。ステップS196では、近距離通信部1487の待ち受け状態の維持に必要な最低レベルまでクロック周波数を落とすなどの省電力待機状態への移行を行うとともに携帯電話1601からの着信信号受信または操作部1409の発呼操作に応答して近距離通信部1487を通常通信状態に復帰させるための割り込みを可能にする処理を行う。そしてこのような処理の後ステップS198に移行する。一方、ステップS194で所定時間以上の無通話状態が検知されないときは直接ステップS198に移行する。なお、ステップS166で近距離通信の確立が確認できないとき、またはステップS178で発呼操作を検知しないとき、またはステップS180で電話接続の成立が確認できないときは、いずれも直接ステップS198に移行する。
ステップS198では、操作部1409により主電源がオフされたかどうかをチェックし、主電源オフが検知された場合はフローを終了する。一方、主電源オフが検知されない場合、フローはステップS166に戻り、以下主電源のオフがない限り、ステップS166からステップS198を繰り返して、ヘッドセット1681の種々の状態変化に対応する。
なお、図30のフローは、図27のシステム図の構成だけでなく、図26の実施例15のシステム図にも適用可能である。また、ステップS184の「屈曲検知」を図10のステップS52におけるような「耳栓骨導効果」発生状態の有無検知に読み替えれば、図24の実施例13または図25の実施例14にも適用可能である。
図31は、図30の実施例17において屈曲検知をメカ的なスイッチにより行っていたものに代え、これをソフト的に行うよう構成したヘッドセットの制御部のフローチャートであり、図30との混乱を避けるため、実施例18として説明する。また、図31においては、図30と共通するステップについては同一のステップ番号を付し、特に必要のない限り、説明を省略する。そして図31において異なる部分を太枠および太字で示し、これらの部分を中心に説明する。具体的に述べると、実施例18では、軟骨伝導振動部1626が圧電バイモルフ素子であることを前提とし、図9における実施例4に準じて位相調整ミキサー部1636と軟骨伝導振動部1626を結ぶ信号線に現れる信号をモニタし、可動部1591の屈曲または屈曲からの復帰の瞬間の操作衝撃に基づく歪によって軟骨伝導振動部(圧電バイモルフ素子)1626に現れる信号変化を検知するよう構成される。そしてこの信号変化をソフト的に処理することにより屈曲状態を検知するようにしている。
以上の前提に基づき、図31において図30と異なるところを説明すると、まずステップS200は、図30のステップS170からステップS174、ステップS178およびステップS180をまとめて図示したものであり、内容的には同じものである。そして着信に対する受信操作または発呼に対する相手の応答に基づいて電話接続が成立するとステップS176に移行するとともに、電話接続がなければステップS198に移行する。
ステップS202からステップS210が屈曲検知に関するステップであり、ステップS182からステップS202に至ると、まず軟骨伝導振動部1626の入力端子(位相調整ミキサー部1636と軟骨伝導振動部1626を結ぶ信号線)に現れる信号をサンプリングする。そしてステップS204では、同じタイミングで制御部1639から位相調整ミキサー部1636に向かう軟骨伝導部駆動出力を同じタイミングでサンプリングする。次いでステップS206では、これらのサンプリング値の差を演算し、ステップS208では、演算された差が所定以上かどうか検知する。この機能は、図9における押圧センサ242の機能に対応するが、図9の押圧センサ242では押圧状態が継続して検知されるのに対し、図27のシステムでは屈曲または屈曲からの復帰の瞬間の操作衝撃により屈曲状態の変化を捉える。
ステップS208で両サンプリング値に所定以上の差が発生していることが検知されるとステップS210に移行する。ステップS208の段階では、両サンプリング値に所定以上の差が屈曲によって生じたか屈曲からの復帰によって生じたかはわからない。しかしステップS210では、差の発生履歴に基づいて、軟骨伝導振動部1626がステップS176でオンされてから後、差の発生が奇数回目であったかどうかチェックする。そして奇数回目であればステップS186に移行するとともに、偶数回目であればステップS190に移行する。可動部1591の屈曲または屈曲からの復帰は必ず交互に起こるので上記のようにして操作衝撃があるたびに自声波形反転信号を付加するか否かを切換える。なお、万一誤動作により差のカウントが逆転したときは操作部1409により差の発生履歴をリセットすることができる。
ステップS212は、図30のステップS194およびステップS196をまとめて図示したものであり、内容的には同じものである。以上のようにして、実施例18では、実施例4などと同様にして、軟骨伝導振動部1626自体のセンサ機能を利用して可動部1591の屈曲検知を行うことにより、耳栓骨導効果の発生状態を判断している。なお、図31のフローは、図27のシステム図の構成だけでなく、図26の実施例15のシステム図にも適用可能である。また、実施例5から10のように軟骨伝導振動部が弾性体で保持されている場合において、耳栓骨導効果の発生状態において軟骨伝導振動部の歪が継続しない場合にも図31の耳栓骨導効果発生検知方式を採用することができる。
図32は、本発明の実施の形態に係る実施例19のシステム構成図である。実施例19も携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、携帯電話1401とともに携帯電話システムをなす。実施例19では、図32に示すように送受話ユニットが眼鏡1781として構成されている。実施例19は、実施例15と共通するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に説明を行わない場合その構成は実施例15と共通であるものとする。なお、実施例19においても、携帯電話1401は、送受話ユニットをなす眼鏡1781との組合せで用いるべく特別に構成される場合、および近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成される場合のいずれであってもよい。後者の場合、眼鏡1781は、実施例15と同様にして、携帯電話1401のアクセサリとして構成されることになる。
実施例19では、図32に示すように可動部1791が眼鏡1781のツルの部分に回転可能に取り付けられており、図示の状態において、軟骨伝導用振動部1726が右耳28の耳珠32に接触している。可動部1791は、これを使用しない場合、一点鎖線1792に示すように眼鏡1781のツルに沿う位置に回転退避させることができる。この退避状態においても、軟骨伝導用振動部1726は低周波で振動させることが可能であり、これによって眼鏡1781のツルの振動を顔で感じることで着信を知ることができる。また、眼鏡1781のツルの前方部分には、送話部1723が配置されている。また、眼鏡1781のツルの部分には電源部を含む制御部1739が配置され、軟骨伝導用振動部1726および送話部1723の制御を行っている。さらに眼鏡1781のツルの部分には、携帯電話1401と電波1285で無線通信可能なBluetooth(登録商標)などの近距離通信部1787が配置され、送話部1723から拾った使用者の音声を携帯電話1401に送信するとともに、携帯電話1401から受信した音声情報に基づき軟骨伝導用振動部1726を振動させることを可能にしている。なお、眼鏡1781のツルの後方端部には送受話操作部1709が設けられている。この位置は、眼鏡1781のツルが耳28の後の骨(乳突部)に当たる部分なのでこれに裏打ち状態で支えられることになり、眼鏡1781を変形させることなくツルの表側から押圧などの送受話操作を容易に行うことができる。なお、上記の各要素の配置は上記に限るものではなく、例えば全ての要素またはその一部を適宜可動部1791にまとめて配置してもよい。
可動部1791は、その途中において弾性体1773が介在しており、環境騒音で音情報が聞き取りにくい時において、可動部1791を外側から押してこれを屈曲させ、軟骨伝導用振動部1726をより強く耳珠32に圧接することによって耳珠32が耳穴を塞ぐようにするのを容易にしている。これによって、他の実施例でも説明した耳栓骨導効果が生じ、さらに大きな音で音声情報を伝えることができる。また、可動部1791の屈曲状態の機械的検知に基づいて送話部1723から拾った自分の声の情報の位相を反転させて軟骨伝導用振動部1726に伝え、自分の声をキャンセルする。これらは実施例15と共通である。
なお、図28および図29のブロック図は「ヘッドセット」を「眼鏡」と読み替えることにより実施例19に適用可能である。また、図30および図31のフローチャートも実施例19に適用可能である。
図33は、本発明の実施の形態に係る実施例20のシステム構成図である。実施例20も携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、携帯電話1401とともに携帯電話システムをなす。実施例20は、図32の実施例19と共通するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要がないかぎり説明省略する。なお、実施例20においても、実施例19と同様にして、携帯電話1401は、送受話ユニットをなす眼鏡1881との組合せで用いるべく特別に構成される場合、および近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成される場合のいずれであってもよい。後者の場合、眼鏡1881は、実施例19と同様にして、携帯電話1401のアクセサリとして構成されることになる。
実施例20が実施例19と異なるのは、軟骨伝導用振動部1826が眼鏡1881のツルが耳28の付け根に当たる耳掛け部1893内に設けられている点である。この結果、軟骨伝導用振動部1826の振動は耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達され、外耳道口周囲の軟骨を介して外耳道内壁から気導音を発生して鼓膜に伝達されるとともに、一部が軟骨を通じて直接内耳に伝達される。眼鏡1881のツルが当たる耳28の付け根の軟骨の外側1828は内側の外耳道口に近く、外耳道口周囲軟骨から外耳道内部への気導発生および軟骨を通じて直接内耳への伝導に好適である。
耳掛け部1893にはさらに耳朶の裏側に当たる部分に耳押検知部1888が設けられている。耳押検知部1888は、外部騒音が大きい時にこれを遮蔽するため手の平を耳28に当てることによって耳朶が押される状態を機械的に検知し、制御部1739は、この耳押検知情報を近距離通信部1787から携帯電話1401に伝達する。耳押検知部1888は、例えば耳朶裏側によって押された時メカ的にオンとなるスイッチで構成することができる。携帯電話1401の制御部239(図28の構成援用の場合)は、近距離通信部1446で受信した屈曲検知情報に基づき位相調整ミキサー部236を制御し、送話部(マイク)1723から近距離通信部1446を介して送話処理部222に伝達された自分の声に基づく波形反転部240の信号を受話処理部212からの音声情報に付加するか否かを決定する。なお、この耳栓骨導効果発生時の対策に関する構成は、実施例19と同様にして、図29を援用して構成することも可能である。
図34は、本発明の実施の形態に係る実施例21の要部側面図である。実施例21も携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、実施例20と同様にして携帯電話1401(図示省略)とともに携帯電話システムをなす。実施例21は、図33の実施例20と類似するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要がないかぎり説明を省略する。具体的に述べると、実施例20の送受話ユニットが専用眼鏡として構成されているのに対し、図34の送受話ユニットは、通常の眼鏡のツルの耳掛け部1900に取り付け可能な眼鏡アタッチメント1981として構成されている点が異なる。その他の構成は、図33の実施例20と共通である。なお、実施例21においても、実施例20と同様にして、不図示の携帯電話1401は、送受話ユニットをなす眼鏡アタッチメント1981との組合せで用いるべく特別に構成される場合、および近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成される場合のいずれであってもよい。後者の場合、眼鏡アタッチメント1981は、実施例20と同様にして、携帯電話1401のアクセサリとして構成されることになる。
眼鏡アタッチメント1981は、種々のサイズや形状の耳掛け部1900に被せることが可能なフリーサイズの弾性体カバーとして成型されており、その一端の開口から耳掛け部1900が挿入されたとき、軟骨伝導用振動部1926が耳掛け部1900の上側に接触する。この接触は直接でも良いが、眼鏡アタッチメント1981の弾性体の皮膜を介してでもよい。この目的のためには、弾性体として、その音響インピーダンスが耳軟骨のそれに近似する材質のものを選択するのが望ましい。上記のような直接または間接の接触によって、軟骨伝導用振動部1926の振動が耳掛け部1900に伝達され、その振動が耳28の付け根の軟骨の外側に伝達されるので、実施例20と同様にして、外耳道口周囲の軟骨を介して外耳道内壁から気導音を発生してこれが鼓膜に伝達されるとともに、一部が軟骨を通じて直接内耳に伝達される。
実施例20において眼鏡1881に設けられていた送話部1723、制御部1739、近距離通信部1787、送受話操作部1709および耳押検知部1888は、図34の実施例21では、それぞれ眼鏡アタッチメント1981内に配置されるが、その機能は共通なので説明を省略する。なお、図示しないが、例えば右の耳掛け部1900に眼鏡アタッチメント1981を被せた場合、左の耳掛け部用として、外形、材質および重量が同じ弾性体で成型されたダミーカバーを提供し、これを被せることで眼鏡装着時における左右のバランスを保つことを可能とする。なお、眼鏡アタッチメント1981およびダミーカバーは弾性体により成型されるので、若干の変形によりそれぞれ左右の耳掛け部のいずれにも任意に装着可能なように構成できる。例えば、上記とは逆に、眼鏡アタッチメント1981を左の耳掛け部に被せるとともに、ダミーカバーを右の耳掛け部に被せることができる。従って、右耳用および左耳用にそれぞれ眼鏡アタッチメント1981を品揃えする必要がなくなる。
図35は、本発明の実施の形態に係る実施例22の上面図である。実施例22も携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、実施例21と同様にして携帯電話1401(図示省略)とともに携帯電話システムをなす。実施例22は、図34の実施例21に類似するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要がないかぎり説明を省略する。実施例22の送受話ユニットも、実施例21と同様にして、通常の眼鏡における種々のサイズや形状の耳掛け部1900に被せることが可能なフリーサイズの弾性体カバーとして成型された眼鏡アタッチメント2081として構成される。
図35の実施例22が図34の実施例21と異なるのは、実施例21において片方の耳掛け部1900に被せられる眼鏡アタッチメント1981内に集中して配置されていた送受話ユニットの各構成要素が、左右の耳掛け部1900に分散させられていることである。具体的に述べると、実施例22の眼鏡アタッチメント2081は、右側弾性体カバー2082、左側弾性体カバー2084およびこれらを有線で通信可能に繋ぐグラスコード兼用ケーブル2039によって構成され、これらに送受話ユニットの各構成要素が、分散配置される。なお、説明の都合上、それぞれ弾性体カバー2082を右耳用、弾性体カバー2084を左耳用とするが、これら一対の弾性体カバーを左右逆にそれぞれ耳掛け部1900に被せることが可能である。
上記の基本構成において、右側弾性体カバー2082には、軟骨伝導用振動部1926、送受話操作部1709および耳押検知部1888が配置される。これによって、実施例21と同様にして軟骨伝導用振動部1926の振動が耳掛け部1900を介して外耳道口周囲の軟骨に伝達され、外耳道内壁から気導音を発生してこれが鼓膜に伝達されるとともに、一部が軟骨を通じて直接内耳に伝達される。
一方、左側弾性体カバー2084には、送話部1723、制御部1739、及び、近距離通信部1787が配置される。グラスコード兼用ケーブル2039は、デザイン的には眼鏡をはずしたときにこれを首に掛けるためのグラスコードとなり、機能的には、右側弾性体カバー2082および左側弾性体カバー2084に分散配置された送受話ユニットの各構成要素を結ぶ配線が通っている。また、グラスコード兼用ケーブル2039により右側弾性体カバー2082と左側弾性体カバー2084を繋ぐことにより、眼鏡から外した時に片方が紛失することを防止する。
図36は、本発明の実施の形態に係る実施例23のブロック図である。実施例23は、実施例19または実施例20と同様にして、携帯電話のための送受話ユニットとして構成された眼鏡2181を含み、携帯電話1401(図示省略)とともに携帯電話システムをなす。また、実施例23は、実施例22と同様にして、送受話ユニットとしての各構成要素が、右ツル部2182および左ツル部2184に分散配置される。個々の構成要素およびその機能は、図29における実施例17のブロック図および図35における実施例22の上面図におけるものに準じて理解できるので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要がないかぎり説明を省略する。実施例23も、右ツル部2182に配置された軟骨伝導振動部1826の振動が耳28の付け根の軟骨の外側に伝達され、これが外耳道口周囲の軟骨を振動させることによって外耳道内壁から発生する気導音が鼓膜に伝わるとともに、軟骨伝導の一部が軟骨を通じて直接内耳に伝達される。
図36の実施例23は、さらにレンズ部2186において携帯電話1401から受信した三次元(3D)映像を可視化するための構成を有する。眼鏡2181のレンズ部2186には眼鏡本来の右レンズ2110および左レンズ2114が設けられており、通常の眼鏡として機能する。さらに、近距離通信部1787が携帯電話1401から3D画像情報を受信すると、制御部1639は3D表示駆動部2115にその表示を指示し、3D表示駆動部2115はこれに基づいて、右表示部2118および左表示部2122にそれぞれ右目用画像および左目用画像を表示させる。これらの画像は結像レンズおよびハーフミラーなどからなる右目導光光学系2129および左目導光光学系2141によりそれぞれ右目および左目の網膜に結像させられ、3D画像の鑑賞が可能となる。この3D画像は、右レンズ2110および左レンズ2114から網膜に入る生の画像に合成または重畳された形で見えることになる。
図37は、本発明の実施の形態に係る実施例24のシステム構成図である。実施例24も携帯電話のための送受話ユニットとして構成されており、携帯電話1401とともに携帯電話システムをなす。実施例24の送受話ユニットは補聴器等に採用される耳掛けユニット2281として構成されているが、この点を除き図33の実施例20と共通するシステム構成となっているので、共通する部分には共通する番号を付し、特に必要がないかぎり説明省略する。なお、実施例24においても、実施例20と同様にして、携帯電話1401は、送受話ユニットをなす耳掛けユニット2281との組合せで用いるべく特別に構成される場合、および近距離通信機能を有する一般の携帯電話として構成される場合のいずれであってもよい。後者の場合、耳掛けユニット2281は、実施例20と同様にして、携帯電話1401のアクセサリとして構成されることになる。
実施例24では、軟骨伝導用振動部2226が耳28の付け根の軟骨の外側1828の後部に当たる位置に配置されている。この結果、実施例20と同様にして、軟骨伝導用振動部2226の振動は耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達され、外耳道口周囲の軟骨を介して外耳道内壁から気導音を発生して鼓膜に伝達されるとともに、一部が軟骨を通じて直接内耳に伝達される。耳28の付け根の軟骨の外側1828はいずれもその内側の外耳道口に近く、外耳道口周囲軟骨から外耳道内部への気導発生および軟骨を通じて直接内耳への伝導に好適である。なお、実施例24のように送受話ユニットを耳掛けユニット2281とし構成する場合は、耳28の付け根の軟骨の外側1828に接触させるための軟骨伝導用振動部2226の配置の自由度が大きいので、送受話ユニット構成上の実装レイアウトおよび振動伝達効果を勘案した最適の位置に軟骨伝導用振動部2226を配置することができる。従って、実施例24においても、実施例20と同様にして、耳28の付け根の軟骨の外側1828の上部に軟骨伝導用振動部2226が当たる配置を採用してもよい。
耳掛けユニット2281には、実施例20の眼鏡1881の場合と同様にして、送話部1723、制御部1739、近距離通信部1787、送受話操作部1709および耳押検知部1888が設けられているが、その機能は共通なので説明を省略する。なお、実施例24の耳掛けユニット2281の場合、送話部1723は耳の前方に配置される。
図38は、本発明の実施の形態に係る実施例25のブロック図である。実施例25は、眼鏡型機器のツルの耳掛け部に軟骨伝導用振動部2324及び2326を配置し、耳28の付け根の軟骨の外側に振動を伝える点では実施例20から実施例23と共通するが、携帯電話の送受話ユニットではなく、3Dテレビの観賞眼鏡2381として構成されており、3Dテレビ2301とともに3Dテレビ鑑賞システムをなす。実施例25はステレオオーディオ情報を鑑賞できるようになっており、右ツル部2382に配置された右耳用軟骨伝導振動部2324の振動が接触部2363を介して右耳の付け根の軟骨の外側に伝達され、これが外耳道口周囲の軟骨を振動させることによって外耳道内壁から発生する気導音が右鼓膜に伝わるとともに、軟骨伝導の一部が軟骨を通じて直接右内耳に伝達される。同様にして、左ツル部2384に配置された左耳用軟骨伝導振動部2326の振動が接触部2364を介して左耳の付け根の軟骨の外側に伝達され、これが外耳道口周囲の軟骨を振動させることによって外耳道内壁から発生する気導音が左鼓膜に伝わるとともに、軟骨伝導の一部が軟骨を通じて直接左内耳に伝達される。
なお、鑑賞眼鏡2381は、通常の眼鏡を掛けている人でもその上から装着できるよう構成されており、この場合、右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326の振動は接触部2363および2364を介して直接接触している左右の耳の付け根の軟骨にそれぞれ伝達されるとともに、通常の眼鏡の左右のツルの耳掛け部にもそれぞれ伝達され、この耳掛け部を介して間接的にも耳の付け根の軟骨に伝達される。接触部2363および2364は裸眼の人が直接、鑑賞眼鏡2381を装着する場合にも、通常の眼鏡の上から装着する場合にも耳の付け根の軟骨への好適な軟骨伝導を生じる形状に構成される。これについては後述する。
3Dテレビ2301は、制御部2339の制御に基づきステレオオーディオ信号部2331から音声信号を発生させ、赤外通信部2346はこの音声信号を赤外線2385により鑑賞眼鏡2381の赤外通信部2387に伝達する。鑑賞眼鏡2381の制御部2339は、受信した音声信号に基づき右オーディオ駆動部2335および左オーディオ駆動部2336から左右の音声信号を出力させ、右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326を振動させる。以上の赤外通信部2387、制御部2339、右オーディオ駆動部2335、左オーディオ駆動部2336、後述のシャッタ駆動部2357、右シャッタ2358および左シャッタ2359は、電源部2348とともに眼鏡主部2386に配置されている。
一方、3Dテレビ2301は、制御部2339の制御に基づき、ビデオ信号部2333のビデオ信号を表示ドライバ2341に送り、液晶表示部等からなる3Dスクリーン2305に3D画像を表示させる。制御部2339は、さらに3D画像表示と同期して3Dシャッタ同期信号部2350から同期信号を発生させ、赤外通信部2346はこの同期信号を赤外線2385により鑑賞眼鏡2381の赤外通信部2387に伝達する。鑑賞眼鏡2381の制御部2339は、受信した同期信号に基づいてシャッタ駆動部2357を制御し、右シャッタ2358および左シャッタ2359を交互に開く。これによって、3Dスクリーン2305に交互に表示される右目用画像2360および左目用画像2362が同期して右目および左目に入射するようになる。このように、実施例25では、軟骨伝導振動部駆動用のステレオ音声信号および3Dシャッタ同期信号が赤外通信部2346および2387間の赤外通信により伝達される。これらの両信号は時分割または合成により並行して送信される。なお、これらの通信は赤外線通信に限るものではなく、他の実施例のように近距離無線通信によってもよい。
図39は、上記実施例25の要部断面図であり、右ツル部2382の断面を、通常の眼鏡を掛けた上から鑑賞眼鏡2381を装着した状態において図示するものである。図39(A)は実施例25に関する右ツル部2382の断面であり、図39(B)はその変形例の断面を示す。まず、図39(A)について説明すると、右ツル部2382の下方の耳28に掛かる部分には、接触部2363が設けられている。この接触部2363は、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性体からなり、右耳用軟骨伝導振動部2324はその中に包まれた形で右ツル部2382に保持されている。また接触部2363の断面は、図39(A)に明らかなように通常眼鏡のツルの耳掛け部2300が嵌まり込むための溝が設けられている。これによって、鑑賞眼鏡2381の右ツル部2382と通常の眼鏡のツルの耳掛け部2300の確実な接触が図られるとともに、接触部2363の弾性により右ツル部2382と耳掛け部2300の接触部分が振動によりビリつくのを防止する。そして図39(A)の状態において、右耳用軟骨伝導振動部2324の振動は接触部2363を介して直接接触している右の耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達されるとともに、通常の眼鏡の右のツルの耳掛け部2300に伝達され、この耳掛け部2300を介して間接的にも耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達される。
一方、裸眼の人が直接、鑑賞眼鏡2381を装着する場合には、接触部2363全体が直接右の耳28の付け根の軟骨の外側1828に接触し、右耳用軟骨伝導振動部2324の振動を伝達する。接触部2363の外側は面取りされているので、この場合でも、右ツル部2382は違和感なく耳28に掛けられる。
次に、図39(B)の変形例では、その断面図から明らかなように、右ツル部2382の下方の耳28に掛かる部分には、図39(A)と同様にして接触部2363が設けられている。そして図39(A)と同様にして、接触部2363は耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性体からなり、右耳用軟骨伝導振動部2324はその中に包まれた形で右ツル部2382に保持されている。図39(B)に明らかなように。変形例では接触部2363の断面形状が異なっていて溝の代わりに凹斜面が設けられ、これによって、鑑賞眼鏡2381の右ツル部2382は通常の眼鏡のツルの耳掛け部2300の外側において耳28に掛かるようになり両者の確実な接触が図られるとともに、接触部2363の弾性により右ツル部2382と耳掛け部2300の接触部分が振動によりビリつくのを防止する。そして図39(B)の状態において、右耳用軟骨伝導振動部2324の振動は接触部2363を介して直接接触している右の耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達されるとともに、通常の眼鏡の右のツルの耳掛け部2300に伝達され、この耳掛け部2300を介して間接的にも耳28の付け根の軟骨の外側1828に伝達される。
一方、裸眼の人が直接、鑑賞眼鏡2381を装着する場合には、接触部2363全体が直接右の耳28の付け根の軟骨の外側1828に接触し、右耳用軟骨伝導振動部2324の振動を伝達する。接触部2363の外側は図39(B)の変形例の場合でも面取りされており、鑑賞眼鏡2381を直接装着する場合でも、右ツル部2382は違和感なく耳28に掛けられる。図39(B)に明らかなように、軟骨伝導では、眼鏡のツルの内側にある顔の骨ではなく、眼鏡のツルの下方または外側の耳軟骨との接触が肝要であり、接触部の形状はこの目的のために決定される。
以上のように、実施例20から実施例25は、軟骨伝導振動部2324の振動が耳の付け根の軟骨の外側に伝達され、これが外耳道口周囲の軟骨を振動させることによって外耳道内壁から発生する気導音が鼓膜に伝わるとともに、軟骨伝導の一部が軟骨を通じて直接右内耳に伝達される。従って、眼鏡を通常の状態で掛けるだけで耳軟骨外側との接触により良好な伝導が得られる。これに対し、従来の骨伝導による場合、眼鏡のツルの内側の部分で耳の前または後の骨を強く挟み込む必要があり、苦痛を伴うとともに長時間の使用に耐えないものであった。本発明ではこのような問題はなく、通常眼鏡と同様の使用感で快適に音声情報を聞くことができる。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、図34における実施例21の説明においては、他方のツルの耳掛け部にダミーカバーを被せるものとしているが、図34の構成を一対用意し、左右のツルの耳掛け部にそれぞれ被せるようにすれば、図38の実施例25のようにステレオオーディオ信号を聞くことが可能となる。このとき両者間を無線通信で結ぶことも可能であるが、図35の実施例22のようにグラスコード兼用ケーブルで結ぶことも可能である。なお、グラスコードの特徴に関しては、実施例21において図34の構成およびダミーカバーの間をグラスコードで連結して紛失を防止するようにしてもよい。また、上記ステレオ化の特徴に関しては、図36の実施例23も上記と同様にして構成要素を左右のツルに振り分けず、必要な構成要素を2組用意して左右のツル部にそれぞれは位置するよう構成すれば、映像を3Dにするだけでなく図38の実施例25のようにステレオオーディオ信号を聞くことも可能となる。このとき、実施例25を参考にして、左右の構成の一部(例えば、少なくとも制御部や電源)を適宜共通にすることができる。
上記の実施例では、携帯電話およびその送受話ユニット、または3Dテレビ鑑賞眼鏡を例にとって本発明の効用を説明しているが、本発明の利点はこれに限るものではなく、他の実施においても活用することができる。例えば、上記に説明した本発明の種々の特徴は、補聴器への実施においても有効なものである。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、その特徴の利点を享受できる限りこれを変形した種々に実施例において実施可能である。例えば、図40は、図19における実施例10の変形例を示す斜視図である。この変形例においても、図19と同様にして、圧電バイモルフ素子等からなる軟骨伝導振動源925が軟骨伝導振動源となるとともに、気導によって鼓膜に伝わる音波を発生する受話部の駆動源を兼ねる。但し、図40の変形例では、軟骨伝導振動源925自身が携帯電話901の側方に伸びており、その右端224および左端226を振動させる。従って、図19と同様にして、そのいずれかをこれを耳珠に接触させることによって軟骨伝導で音を聞くことができる。また、軟骨伝導振動源925は右端224および左端226だけで振動するのではなく全体で振動している。従って、図19と同様にして、携帯電話901の内側上端辺のどこを耳軟骨に接触させても音声情報を伝達することができる。なお、軟骨伝導振動源925の前方において、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料によって作られた軟骨伝導出力部963が配置されている点は図19と同様である。
また、図36の実施例23については、次のような変形例が可能である。すなわち、実施例23では、送話部1723を通常の気導マイクで構成しているが、これに代えて送話部1723を骨導マイク(骨導の接触型マイクまたはピックアップ)で構成すれば騒音下で雑音を拾わずに送話者の音声を選択的に拾うことが可能となる。さらに、周囲に迷惑をかけない小声で音声を送話することも可能となる。眼鏡のツルは、一般に、耳の前の骨(頬骨弓または、頬骨弓の上の側頭骨の一部)または耳の後の骨(側頭骨乳様突起)に自然に接触している。したがって、図36を援用すれば、骨導の接触型マイクで構成した送話部1723を眼鏡の左ツル部2184における上記のような骨との接触部に配置することにより、骨導で送話者の音声を拾うことが可能となる。また、図36のようにして、軟骨伝導振動部1826と骨導の接触型マイクで構成した送話部1723を左右のツル部2182及び2184に振り分けることにより、軟骨伝導振動部1826からの振動を骨導の接触型マイクが拾うことを防止することができる。
なお、図36の実施例23または上記のような変形例において、レンズ部2186から3D表示関連の構成を省略して右レンズ2110および左レンズ2114のみとした通常の眼鏡構成とすることも可能である。
一方、図38の実施例25についても、次のような変形例が可能である。すなわち、実施例25は鑑賞眼鏡2381として構成されているので、ステレオオーディオ情報の音源は3Dテレビ2301にあり、赤外通信部2387によって受信した音声信号に基づき右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326が振動させられる。しかしながら、これに代えて、ステレオオーディオ情報の音源部となるステレオオーディオ信号部およびこれにデータを提供する音声メモリを図38の眼鏡主部2386または右ツル部2382および左ツル部2384の一方または両者に振り分けて内蔵させるよう構成すれば、本発明を独立した携帯型音楽プレーヤーとして構成することができる。図38を援用してこのような変形例の構成を理解するには、上記のステレオオーディオ信号部およびこれにデータを提供する音声メモリは制御部2339に含まれるものとする。なおこの変形例の場合、3Dテレビ2301との連携は不要なので、図38において、眼鏡主部2386には右シャッタ2358、左シャッタ2359およびシャッタ駆動部2357に代えて、図36の実施例23におけるような通常眼鏡の右レンズおよび左レンズを配置する。
また、上記のように眼鏡主部2386に右レンズおよび左レンズを配して通常眼鏡とした変形例の場合、制御部、オーディオ駆動部、赤外通信部、および電源部等、図38において眼鏡主部2386に配置されている各構成要素については、図36の実施例23のように、適宜、右ツル部および左ツル部に振り分け配置することにより眼鏡主部2386の大型化を防止するようにしてもよい。なお、変形例における赤外通信部2387は、パソコンなどの外部の音源データ保持装置から音源データを入力する等の機能を担う。赤外通信部2387はまた、手元のリモコン等により、右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326による音量調節を行ったり、左右の振動出力のバランスを調節したりするための無線通信部として機能させることができる。さらに、携帯型音楽プレーヤーが携帯電話と連携するときは、携帯電話の音声情報を受信することもできる。また、この場合、携帯型音楽プレーヤーに気導マイクまたは骨導マイクを設ければ、携帯型音楽プレーヤーを携帯電話の外部送受話装置として機能させることもできる。
以上のような眼鏡主部2386と右ツル部2382および左ツル部2384への構成要素の配置の工夫は、上記の変形例に限るものではない。例えば、図38の実施例25における鑑賞眼鏡2381そのものの場合であっても、制御部2339、赤外通信部2387、電源部2348、右オーディオ駆動部2335および左オーディオ駆動部2336を右ツル部2382および左ツル部2384に適宜振り分け配置してもよい。
図41は、本発明の実施の形態に係る実施例26の斜視図であり、携帯電話として構成される。実施例26の携帯電話2401は、図40に示す実施例10の変形例と同様にして、可動部のない一体型のものであり、GUI機能を備えた大画面表示部205を有するいわゆるスマートフォンとして構成されている。そしてその構造に共通点が多いので、対応する部分には図40と同一の番号を付し、説明を省略する。なお、実施例10およびその変形例と同様にして実施例26でも、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
実施例26が図40に示す実施例10の変形例と異なるのは、軟骨伝導振動源925の振動が大画面表示部205のタッチパネル機能におけるタッチ操作のフィードバック感触を作る振動源として兼用されている点である。具体的に述べると、軟骨伝導振動源925とそれより下部にある構成(大画面表示部205)との間には、ビニール系、ウレタン系などの振動隔離材2465が設けられており、音響インピーダンスの差等により軟骨伝導による音声信号が大画面表示部205等に容易には伝わらないよう構成される。その一方で、大画面表示部205をタッチすることでそのタッチパネル機能による何らかの入力が受け付けられた時、これをタッチした指にフィードバックするため、軟骨伝導振動源925が可聴域以下の低周波で振動させられる。そしてその振動周波数は振動隔離材2465の共振周波数と実質的に一致する周波数が選択されているので、軟骨伝導振動源925の振動により振動隔離材2465が共振し、これが大画面表示部205に伝えられる。このように音声領域の振動を防止する振動隔離材2465は、フィードバック用低周波振動にとっては振動伝達材として機能する。これによって大画面表示部205をタッチしている指に低周波振動が伝わり、タッチ入力が受け付けられたことを知ることができる。なお、タッチ操作自体の衝撃とそれに応答するフィードバック振動が混同されることを防止するため、軟骨伝導振動源925はタッチの瞬間から所定の遅延を設け、タッチ衝撃が収まってからフィードバック振動させられる。
なお、実施例26では、操作ボタン2461が設けられ、大画面表示部205のタッチパネル機能をオンオフする操作等に用いられる。また、実施例26では、図示の単純化のため、図40に示す実施例10の変形例に設けられていた軟骨伝導出力部963が省略した構成としているが、これを設けることは任意である。
図42は、実施例26のブロック図であり、同一部分には図41と同一番号を付して説明を省略する。また、図42のブロック図の構成は、図8における実施例4のブロック図と共通点が多く、また図9における要部概念ブロック図の構成を援用することができるものなので、図8と共通の構成については同一の番号を付して説明を省略する。
なお、図42の大画面表示部205には、タッチパネル2468、および制御部2439に制御されてこのタッチパネル2468を駆動するタッチパネルドライバ2470が図示されているが、これは実施例26特有のものではなく、大画面表示部205がタッチパネル機能を有する他の実施例と共通であり、他の実施例では煩雑を避けるため図示を省略していただけである。なお、図42において、軟骨伝導振動源925およびタッチパネル2468の部分にそれぞれ振動隔離材2465を図示しているが、これはブロック図の図示スペースの都合でそのような描写になっているだけであって振動隔離材2465は同じものであり、これが分離されて軟骨伝導振動源925およびタッチパネル2468の位置にそれぞれ設けられるという意味ではない。つまり、図42で示しているのは、軟骨伝導振動源925の低周波振動により振動隔離材2465が共振し、これがタッチパネル2468に伝達されるという趣旨である。
図42に示すように、実施例26では、振動隔離材2465の共振周波数と実質的に一致する周波数の駆動信号を発生する低周波源2466が設けられており、制御部2439は、タッチパネルドライバ2470が指のタッチを感知して入力を受け付けた時、所定の遅延を経て低周波源2466からの低周波出力を指示する。位相部調整ミキサー部2436は、通話状態において電話機能部45からの信号に基づいて軟骨伝導振動源925を駆動するが、タッチパネル2468を操作する非通話操作状態のとき電話機能部45からの信号を遮断し、その代わりに低周波源2466からの信号に基づいて軟骨伝導振動源925を駆動する。なお、通話状態においては、位相調整ミキサー部2436は低周波源2466からの信号を遮断している。
実施例26における図42の制御部2439の機能は、図10の実施例4のフローチャートを援用できる。そして実施例26の特徴である軟骨伝導振動源925のタッチ操作フィードバック感触振動源への兼用は、図10のステップS42の詳細機能として理解できる。
図43は、上記のとおり、図10のステップS42の詳細を示すものであり、フローがスタートすると、まずステップS222で非通話操作が行われたかどうかチェックする。このステップは、図4の実施例1におけるステップS6と同様のものであって、メール操作やインターネット操作、その他諸設定並びにダウンロード済のゲームなど電波を使わない操作等の非通話操作の有無をチェックするものである。そしてこれらの操作があればステップS224に進んでタッチパネル2468が不感状態にあるか否かチェックする。そして不感状態になければステップS226で軟骨伝導振動源925を含む軟骨伝導振動部をオンする。一方、ステップS224でタッチパネル2468が不感状態にあることが検知された場合は、非通話操作が操作ボタン2461によるものであったことを意味するので、ステップS228に移行し、操作に対応するボタン設定処理を行う。次いでステップS230で、ボタン操作によりタッチパネル2468が有効設定になったかどうかをチェックし、該当すればステップS226に移行する。なお、ステップS222で非通話操作が検知されなかった場合、またはステップS230でタッチパネル2468の有効設定が検知されなかった場合はいずれも直ちにフローを終了する。
ステップS226で軟骨伝導振動部がオンとなると、フローはステップS232に進み、位相調整ミキサー部2436を制御して電話機能部45からの出力を絶つとともにステップS234で低周波源2466の出力を軟骨伝導振動源925に接続してステップS236に至る。ステップ236ではタッチパネル操作の有無をチェックし、操作があれば、ステップS238に進んで操作に従った応答処理を行う。そしてステップS240に進んで所定の遅延時間(例えば0.1秒)をおいて置き、ステップS242に移行する。ステップS242では、低周波源2466から低周波を所定時間(例えば0.5秒)出力し、操作した指に操作感触をフィードバックしてステップS244に進む。
ステップS244では、最後のタッチパネル操作後の所定時間(例えば3秒)以上タッチパネル2468が無操作状態となったかどうかチェックし、該当しなければステップS236に戻る。以下、所定時間内にタッチパネル2468の操作が続く限りステップS236からステップS244を繰り返してタッチパネル入力および軟骨伝導振動源925による操作感触フィードバックを継続する。
一方、ステップS244で所定時間以上タッチパネル2468が無操作状態となったことが検知されると、ステップS246に移行して軟骨伝導振動部をオフし、さらに ステップS248で位相調整ミキサー部2436を制御して電話機能部45からの出力を軟骨伝導振動源925に接続するとともにステップS250で低周波源2466の出力を絶ち、ひとまずフローを終了する。以下、図10に従って、フローが実行され、図10のステップS44で通話が検知されなければ直ちにステップS34に移行し、さらに主電源がオフでなければフローがステップS42に戻るので図43のフローが再開する。従って、タッチパネルの操作中に所定時間が経過してステップ244から図43のフローが終了したとしても再度速やかにステップ236に至り、タッチパネル入力および軟骨伝導振動源925による操作感触フィードバックを継続することができる。
本発明の実施は上記の実施例に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、実施例26における振動隔離材2465は、共振周波数の振動を伝えるバンドパスフィルタ的な機能を有する材質に限らず、音声信号領域にある電話機能部45からの所定周波数以上の振動を遮断するとともにこれより低い周波数領域にあるタッチ操作フィードバック用の低周波源2466の振動を伝達するローパスフィルタの機能を有する材質であってもよい。
次に、実施例26における図41から図43を援用して、本発明の実施例27について説明する。なお、この場合、図42における「タッチパネル2468」は「モーションセンサ2468」に、「タッチパネルドライバ2470」は、「モーションセンサドライバ2470」に、それぞれ読み替えるものとする。実施例27は、実施例26のように、軟骨伝導振動源925を大画面表示部205のGUI機能におけるタッチ操作に兼用する場合において、これをタッチ感触のフィードバック用の低周波出力素子として利用するだけでなく、携帯電話2401へのタッチを検知する衝撃入力素子としても利用するよう構成したものである。この目的のため、実施例27においては、軟骨伝導振動源925を圧電バイモルフ素子で構成する。圧電バイモルフ素子を衝撃入力素子として兼用するための具体的構成は、図9で説明した実施例4のブロック図、および図31で説明した実施例18のフローチャートを援用して構成することができる。
より具体的に説明すると、実施例27における大画面表示部205のGUI機能は接触型のタッチパネルではなく、上記のように大画面表示部205近傍の指の動きを非接触で検知するモーションセンサ2468を利用して構成される。そして、非接触で選択した機能の決定のための指のタッチ(マウス等の「クリック」に相当)を検知する衝撃センサとして圧電バイモルフ素子から成る軟骨伝導振動源925の衝撃検知機能が利用される。より具体的に述べると、例えば大画面表示部205上でのスクロールやアイコンの選択を非接触の指の動きの検知で行うとともに、「クリック」操作に該当する携帯電話2401へのタッチ衝撃を圧電バイモルフ素子の兼用により検知することで操作の「決定」または「エンター」を行う。なお、このときのタッチは大画面表示部205上ではなく、携帯電話外壁の任意の場所でよいので、大画面表示部205に指紋を残さず「クリック」操作を行うことができる。
なお、図41を援用する実施例27における振動隔離材2465は、音声信号領域にある電話機能部45からの振動を遮断するとともに、伝達可能なバンドパスフィルタ領域またはローパスフィルタ領域における衝撃振動成分を圧電バイモルフからなる軟骨伝導振動源925に伝達する。軟骨伝導振動源925が指のタッチ衝撃を検知したあと、所定の遅延時間を置いて低周波源2466から低周波を発生させて軟骨伝導振動源925を振動させ、タッチした指にフィードバックを行う点は実施例26と共通である。そして、この場合は圧電バイモルフ素子を入力素子としての機能と出力素子としての機能に切り換える必要があるが、この切り換えは上記の遅延時間を利用して行われる。
本発明の実施は上記の実施例に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、実施例27のような非接触型のモーションセンサにおけるクリック衝撃の検知には、圧電バイモルフ素子の衝撃検知機能に代えて図42における加速度センサ49を利用してもよい。また、加速度センサ49の機能と圧電バイモルフ素子の衝撃検知機能の両者を適宜組み合わせて併用してもよい。
また、実施例26および実施例27における軟骨伝導振動源925の低周波振動源としての兼用の特徴は、指へのタッチ感触フィードバックを目的とするものに限らず、携帯電話2401への着信を無音で通知するバイブレータへの兼用を目的とすることも可能である。この場合、当然ながら、軟骨伝導振動源925への低周波源2466の振動信号導入はタッチ検知ではなく、着信信号に応答して行われ、その際には遅延は必要でなく、振動信号の導入は比較的長時間(例えば2秒)断続的に(例えば0.5秒の振動停止期間を挟んで)繰り返される。
以上の各実施例に示した種々の特徴は、必ずしも個々の実施例に特有のものではなく、それぞれの実施例の特徴は、その利点が活用可能な限り、適宜、他の実施例の特徴と組み合わせたり、組み替えたりすることが可能である。例えば、実施例26または実施例27のような特徴を備えた携帯電話のための外部送受話ユニットとして、上記に図38の実施例25の変形例として説明した眼鏡型のステレオの携帯型音楽プレーヤーを組み合わせることが可能である。この場合、音楽プレーヤーに内蔵する音源からのステレオ再生を楽しめるとともに、携帯電話の音源からオーディオ信号を受信してステレオ再生を楽しむことができる。そして、眼鏡型携帯型音楽プレーヤーに内蔵される気導マイクまたは骨導マイクによりフリーハンドで携帯電話による通話を行うことができる。
図44は、本発明の実施の形態に係る実施例28に関するものであり、図44(A)はその上端側の一部を示す斜視図であるとともに、図44(B)は、図44(A)のB−B断面を示す断面図である。実施例28は、携帯電話2501として構成され、図7に示す実施例4と同様にして、軟骨伝導振動源2525の振動が振動伝導体2527に伝わり、その両端部がそれぞれ右耳珠または左耳珠に接触することにより軟骨伝導により音を聴取できるようになっている。なお、図44の実施例28においても、「上部」とは分離された上部を意味するものではなく、一体構造の上方の部分を意味するものとする。
図44の実施例28が図7に示す実施例4と異なるのは、軟骨伝導振動源2525と振動伝導体2527を携帯電話2501に保持するための保持構造である。軟骨伝導振動源2525に音声信号を入力するための構成等は実施例1から実施例27に準じたものを適宜採用することができるので、図示と説明を省略する。実施例28の軟骨伝導振動源2525は圧電バイモルフ素子として構成される(以下、「圧電バイモルフ素子2525」と称する)が、図44(B)のように、圧電バイモルフ素子2525は、金属板2597の両側にそれぞれ圧電セラミックス板2598、2599が貼り合わされ、その周囲を樹脂で固めた構造となっている。そしてその構造上、図44(B)に示すY−Y’方向に振動する。従って圧電バイモルフ素子2525の樹脂表面ではY−Y’方向の振動成分が大きく、X−X’方向の振動成分が小さくなっている。
上記のような圧電バイモルフ素子2525の構造を前提とし、実施例28の保持構造では、図44(B)の断面図からわかるように、保持体2516により振動成分の小さい、X−X’方向から圧電バイモルフ素子2525を挟むようにしている。なお、保持体2516と圧電バイモルフ素子2525の間は接着剤により接合されており、保持体2516は携帯電話2501に剛体的に結合されている。一方、圧電バイモルフ素子2525のY−Y’方向については、図44(B)では右側となる内面側と保持体2516の間にはギャップ2504が設けられ、圧電バイモルフ素子2525におけるY−Y’方向の自由振動を許すとともに振動成分が保持体2516に伝わりにくいようにしている。また、圧電バイモルフ素子2525のY−Y’方向における図44(B)では左側となる外面側には振動伝導体2527が剛体的に接着剤で接合されている。そして、携帯電話2501は、振動伝導体2527を露出させるための開口部2501aを有している。そして、振動伝導体2527と保持体2516および携帯電話2501の開口部2501aとの間はビニール系、ウレタン系などの弾性体からなる振動隔離材2565で埋められ、振動伝導体2527のY−Y’方向の自由振動を許すとともに圧電バイモルフ素子2525の振動成分が保持体2516および携帯電話2501に伝わりにくいようにしている。なお、上記において、ギャップ2504についても、振動隔離材2565と同様の弾性体で埋めるよう構成してもよい。
以上のような保持構造により、携帯電話2501を持つ手の力が剛体的に振動伝導体2527に加わることになり、右耳珠または左耳珠への接触およびその圧力を容易にコントロールすることができる。また、振動伝導体2527のY−Y’方向の自由振動を許す構造となっているので、振動伝導体2527が効率よく振動してその振動が耳軟骨に伝わるとともに、振動伝導体2527の振動が携帯電話2501に伝わって不要な気導を生ずるのを効果的に防止することができる。
図45は、図44の実施例28の変形例に関する断面図である。図45(A)は第1変形例の断面図であって、図44(B)に準じて図示し、共通部分には共通の番号を付している。同様にして、図45(B)には第2変形例の断面図を示す。図45(A)に示す第1変形例では、保持体2516と圧電バイモルフ素子2525との間全体にギャップ2504を広げ、両者の間にX−X’方向から圧電バイモルフ素子2525を挟むための保持補助部2506を設けたものである。保持補助部2506は保持体2516と圧電バイモルフ素子2525の両者または少なくも一方と音響インピーダンスの異なる剛体の材質を選択する。なお、保持補助部2506は、保持力の上で問題がなければ、弾性体としてもよい。また、保持補助部2506は、圧電バイモルフ素子2525におけるY−Y’方向の振動表面を避けて中央部に配置する構成としているので、保持体2516の一部として同一材料で一体成型しても、図44(B)と比較して圧電バイモルフ素子2525におけるY−Y’方向の振動を許しかつ携帯電話2501への振動伝達を少なくする効果が大きい。
図45(B)の第2変形例でも、保持体2516と圧電バイモルフ素子2525との間全体にギャップ2504を広げた構成をとるが、X−X’方向から圧電バイモルフ素子2525を挟むためには圧電バイモルフ素子2525の中央部要所に複数設けられるネジ2508が用いられる。このネジ2508は、その鋭利な先端が圧電バイモルフ素子2525の表面に若干食い込むよう螺合され、圧電バイモルフ素子2525の保持を確実とする。
図46は、図44の実施例28のさらに他の変形例に関する断面図である。図46(A)は第3変形例の断面図であって、図45と同様、図44(B)に準じて図示し、共通部分には共通の番号を付している。同様にして、図46(B)には第4変形例の断面図を示す。図46(A)に示す第3変形例では、圧電バイモルフ素子2525の表面に凹部2580が形成されるよう樹脂が成型されており、これに対応する凸部が保持体2516に一体成型されている。これらの凹凸部のかみ合いによって保持体2516による圧電バイモルフ素子2525の保持を確実とする。なお組み立てに際しては、保持体2516の若干の弾性を利用して圧電バイモルフ素子2525を嵌め込むようにしてもよいし、保持体2516を二体に分割して構成し、圧電バイモルフ素子2525を挟んだあとこれらを一体にネジ止めするよう構成してもよい。
図46(B)に示す第4変形例では、圧電バイモルフ素子2525の表面に凸部2590が形成されるよう樹脂が成型されており、これに対応する凹部が保持体2516に一体成型されている。そして、図46(A)と同様にこれらの凹凸部のかみ合いによって保持体2516による圧電バイモルフ素子2525の保持を確実とする。なお組み立てに際しては、図46(A)と同様にして保持体2516の若干の弾性を利用して圧電バイモルフ素子2525を嵌め込むか、保持体2516を二体に分割して構成し、圧電バイモルフ素子2525を挟んだあとこれらを一体にネジ止めするよう構成する。
図47は、本発明の実施の形態に係る実施例29に関するものであり、図47(A)はその上端側の一部を示す斜視図であるとともに、図47(B)は、その変形例における上端側の一部を示す斜視図である。実施例29は、図44における実施例28とほぼ同様の保持構造を有するものであるが、右耳珠または左耳珠に接触する振動伝導体を携帯電話2501の外壁に設けられた開口2501bおよび2501cから携帯電話表面に露出させる構成が異なるものである。従って、図44と共通する部分には同一の番号を付して説明を省略する。以下、図44の実施例28との相違点についてのみ説明する。
図44の実施例28では、振動伝導体2527が携帯電話2501の上端部全体に帯状に露出しており、その両端部がそれぞれ右耳珠または左耳珠に接触するとともに、耳軟骨に広い面積で接触することも可能なように構成されている。これに対し、図47(A)の実施例29では、振動伝導体が右耳用振動伝導体2524および左耳用振動伝導体2526に分離されて圧電バイモルフ素子2525の両端にそれぞれ接着される構成となっている。そして、分離された右耳用振動伝導体2524および左耳用振動伝導体2526の部分のみがそれぞれ携帯電話2501の上端の両角部の開口部2501bおよび2501cからそれぞれ露出するようになっている。このため、右耳用振動伝導体2524および左耳用振動伝導体2526と携帯電話2501の間を埋めるための振動隔離材2565も、それぞれ分離して設けられている。
一方、図47(B)に示した実施例29の変形例では、左耳用振動伝導体2526のみが圧電バイモルフ素子2525に接着される構成となっている。そして、この左耳用振動伝導体2526の部分のみが携帯電話2501の上端の角部の開口部2501bから露出するようになっている。また、左耳用振動伝導体2526と携帯電話2501の間を埋めるための振動隔離材2565は、携帯電話2501の左側角部のみに設けられている。なお、図47(B)に示した実施例29の変形例は、図47(A)の構成を簡略化して左耳専用に構成したものであるが、振動伝導体を右角部に設けた開口部から露出するよう構成して右耳専用の携帯電話として構成することも可能である。なお、図47(B)に示した実施例29の変形例のさらなる変形として、圧電バイモルフ素子の表面を携帯電話外面に適した形状に整形できる場合は、振動伝導体を介さず、圧電バイモルフ素子を開口部から直接露出させることも可能である。このような変形は図47(A)に示した実施例29および図44に示した実施例28においても可能である。
図48は、本発明の実施の形態に係る実施例30に関するものであり、図48(A)はその上端側の一部を示す斜視図であるとともに、図48(B)は、図48(A)のB−B断面を示す断面図である。実施例30は、携帯電話2601として構成され、図24に示す実施例13や図25に示す実施例14と同様にして、軟骨伝導用振動部を携帯電話側面に配置するものである。また、図48の実施例30は、図44の実施例28と同様にして圧電バイモルフ素子における耳軟骨伝導のための振動を許しかつ携帯電話への振動伝達を少なくするための保持構造を特徴としているので、実施例28と共通する部分には同一番号を付して説明を省略する。軟骨伝導振動源2525に音声信号を入力するための構成等の図示と説明を省略する点についても実施例28と同様である。
図48の実施例30では、圧電バイモルフ素子2525が携帯電話側面に嵌め込まれる構造をとるが、図48(B)に示すように嵌め込み部の奥が湾曲しており、この結果、圧電バイモルフ素子2525の稜線部2525aが携帯電話2601の湾曲部内面と接触することになる。これの接触によって、圧電バイモルフ素子2525が嵌め込みの奥行き方向に位置決めされ、圧電バイモルフ素子2525の押し込み方向に対する保持力が強化されることになる。また、上記のような接触構造によって圧電バイモルフ素子2525のY−Y’方向については三日月上のギャップ2604が生じ、自由振動が許可される。なお、実施例30でも、圧電バイモルフ素子2525の基本的な保持は、X−X’方向から行われる。図48では簡単のため携帯電話2601の一体構造の一部がその保持構造となるよう図示しているが、実施例28および実施例29の保持体2516のような構造を採用し、これを携帯電話2601に固着するよう構成してもよい。その他の構造は、図44に準じて理解されるので説明を省略する。なお、図45および図46に示した種々の変形例は図48の実施例30にも適用可能である。
図49は、本発明の実施の形態に係る実施例31に関するものであり、図49(A)はその上端側の一部を示す縦断面図である。また、図49(B)は、同一部分の横断面図であり、図48(B)と同様にして理解されるものである。実施例31は、携帯電話2701として構成され、図48に示す実施例30と同様にして、軟骨伝導用振動部を携帯電話側面に配置するものである。また、その特徴は、圧電バイモルフ素子における耳軟骨伝導のための振動を許しかつ携帯電話への振動伝達を少なくするための保持構造にあるので、図48の実施例30と共通する部分には同一番号を付して説明を省略する。軟骨伝導振動源2525に音声信号を入力するための構成等の図示と説明を省略する点についても実施例30と同様である。
図49の実施例31が、図48の実施例30と異なるのは圧電バイモルフ素子2525の保持構造にある。圧電バイモルフ素子2525は、実施例30と同様にして携帯電話2701の側面の溝に嵌め込まれる構造をとるが、図49(A)の縦断面図および図49(B)の横断面図に明らかなように、溝の内面は、凹凸面2794となっており、この結果、圧電バイモルフ素子2525は凹凸面2794の多数の頂部で保持されるとともに、両者間には多数のギャップ2704が生じることとなる。図49でも、簡単のため携帯電話2701の一体構造の一部がその保持構造となるよう図示しているが、実施例28および実施例29の保持体2516のような構造を採用し、これを携帯電話2701に固着するよう構成してもよい。これは、後述する変形例でも同様である。
図50は、実施例31の変形例を示す縦断面図であり、図49(A)に準じて理解されるものである。図50(A)は第1変形例であり、圧電バイモルフ素子2525の耳軟骨に当たる側に、振動伝導体2727(シリコン、ウレタンなど)を設けたものである。また、図50(B)は第2変形例であり、圧電バイモルフ素子2525と携帯電話2701の間に振動隔離材2765を介在させ、この振動隔離材2765が圧電バイモルフ素子2525と当たる面を凹凸面2795としたものである。なお、図50(A)の第1変形例における振動伝導体2727および図50(B)の第2変形例における振動隔離材2765を併用した変形例も可能である。
図51は、本発明の実施の形態に係る実施例32の斜視図である。実施例32は、例えば図47(A)に示した実施例29の携帯電話2501に用いるのに適した圧電バイモルフ素子2525として構成されている。図51(A)は実施例32の圧電バイモルフ素子2525の外観斜視図であり、図51(B)はその透視斜視図である。なお、図51では、図示の都合上、圧電バイモルフ素子2525を図47(A)の状態から90度回転させ、Y−Y’方向が上下となるよう作図している。
図47(A)の実施例29の保持体2516は、図44の実施例28と同様にして、図44(B)に示すX−X’方向から圧電バイモルフ素子2525を挟み、Y−Y’方向の自由振動を許すとともに振動成分が保持体2516に伝わりにくいようにしている。さらに保持体2516は右耳用振動伝導体2524および左耳用振動伝導体2526が両端にそれぞれ接着される圧電バイモルフ素子2525の中央部分を挟むよう構成される。
図51に示す圧電バイモルフ素子2525は、上記のようにしてX−X’方向から圧電バイモルフ素子2525の中央部を保持するのを可能する構成となっている。具体的には、図51(A)に示すように、実施例32の圧電バイモルフ素子2525は、駆動信号を入力するための電極2597aおよび2598aが圧電バイモルフ素子2525の中央部分に位置するよう構成している。これによって、圧電バイモルフ素子2525の両端部分は配線接続から開放され、自由振動が可能となる。さらに電極2597aおよび2598aの突出方向は、振動方向のY−Y’方向に沿った方向となるよう構成される。これによって、電極2597aおよび2598aを中央部分に配置するにもかかわらず、X−X’方向から圧電バイモルフ素子2525の中央部分を挟む際に、電極2597a及び2598aが邪魔にならず、保持体2516を特別な構成とする必要がなくなる。
上記のような電極配置を可能にするため、図51(B)に示すように圧電バイモルフ素子2525は、金属板2597の中央部から導出される電極2597aが上方に90度屈曲させられるとともに、圧電セラミックス板2598および2599からそれぞれ導出されて一つに接続された電極2598aも上方に90度屈曲させられて、それぞれ樹脂の上面から突出するよう構成される。これによって、電極がX−X’方向に突出することがなく、圧電バイモルフ素子2525の中央部分をX−X’方向から容易に挟んで支持することができる。
なお、図51の変形として、金属板2597の中央部から導出される電極2597aおよび圧電セラミックス板2598及び2599の中央部から導出される電極2598aをそれぞれ樹脂の側面から突出するよう構成することも可能である。この場合、圧電バイモルフ素子2525の中央部分をX−X’方向から挟んで支持するためには、保持体2516が電極と干渉する部分を避ける空隙を設けて信号ラインを接続するか、または、保持体2516内側にソケット構造を設けて電極と接続する。この場合も、保持体2516を特別な構成とする必要はあるが、電極2597a及び2598aが中央部に設けられていることには変わりがないので、圧電バイモルフ素子2525の両端部分を配線接続から開放して自由振動を可能とする利点は享受できる。
図52は、本発明の実施の形態に係る実施例33に関するものであり携帯電話2801として構成されている。図52(A)はその上端側の一部を裏側から見た透視斜視図であるとともに、図52(B)は、その変形例における上端側の一部を反対側の側面から見た透視斜視図である。図52(A)に示す実施例33は、図47(A)における実施例29とほぼ同様の保持構造を有するものであるが、耳軟骨に接する一対の振動伝導体2824および2826を携帯電話表面に露出させる構成が異なる。
具体的に説明すると、図47の実施例29にあっては、振動伝導体2524および2526が携帯電話2501の上部角に直接露出している。これに対し、図52の実施例33では、角部2801dおよび2801eは携帯電話2801自体の充分な強度をもつ外壁の一部となっており、振動伝導体2824および2826はそれぞれこれらにガードされる形で携帯電話2801の表示面側に露出している。この露出状態およびその意義の詳細は後述する。その他の構成は、図47の実施例29と共通なので、図52では共通する部分には同一の番号を付して説明を省略する。なお、実施例33は、実施例32に示した圧電バイモルフ素子2525の実装例ともなっており、電極2597aおよび2598aの位置を併せて図示している。
図52(B)における実施例33の変形例は、図52(A)において説明した振動部ユニットと同じ構成を、図48の実施例30や図49の実施例31におけるように携帯電話2801の側面を振動させるよう取り付けたものである。図52(B)における実施例33の変形例においても、一対の振動伝導体のうち上側の振動伝導体2824は、充分な強度を持つ携帯電話2801の角部2801dにガードされ、携帯電話2810の側面に露出している。なお、下側の振動伝導体2826は、元々角部には位置していないので自然にガードされている。
図53は、図52の実施例33およびその変形例をそれぞれ正面から見た外観斜視図であり、それぞれ、図53(A)は実施例33のもの、図53(B)はその変形例のものである。図53においても、図41の実施例26等と共通する構成が多いので、共通する部分には同一の番号を付して説明を省略する。
図53(A)から明らかなように、一対の振動伝導体2824および2826はそれぞれ携帯電話2801の角部2801dおよび2801eにガードされる形で携帯電話2801の大画面表示部205の面に露出している。なお、図47の実施例29と同様にして、図53(A)の実施例33においても一対の振動伝導体2824および2826と携帯電話2801の間はそれぞれ振動隔離材2865で埋められている。
ここで、図52および図53に示した上記の実施例33の構成の意義について説明する。携帯電話2801の角部2801dおよび2801eは、耳珠等の耳軟骨に当てるのに好適な部位であるが、同時に、落下などの際、直接衝撃が加わりやすい部位でもある。従って、例えば図47の実施例29のような構成をとる場合、振動伝導体2524および2526、並びにこれらが接着される圧電バイモルフ素子2525、さらにはその保持体2516等の振動部ユニットは衝突に強い構成とする必要がある。これに対し、図52および図53に示した実施例33の構成によれば、振動伝導体2524および2526が携帯電話2801本来の角部2801dおよび2801eによってガードされているので、実施例29の場合に比べ、衝撃対策が簡易化される。
図53(B)の変形例においても、図から明らかなように、一対の振動伝導体のうち上側の振動伝導体2824は、携帯電話2801の角部2801dにガードされ、携帯電話2801の側面に露出している。また、下側の振動伝導体2826は、直接衝撃が加わりにくい側面に位置している。なお、図53(A)の場合と同様、一対の振動伝導体2824および2826と携帯電話2801の間はそれぞれ振動隔離材2865で埋められている。
図52(B)および図53(B)に示した実施例33の変形例のように振動伝導体2824および2826が側面の二箇所(内、一箇所は上部角2801の近傍)に設けた場合、両者を縦方向において耳軟骨の二箇所に当てることが可能となる。この場合、振動伝導体2824と振動伝導体2826との間隔を2cmから5cm程度としておくと、下側の振動伝導体2826は耳珠に当てたとき上側の振動伝導体2824も耳軟骨に当てることが可能となる。もちろん、上側の振動伝導体2824を耳珠に当てて聴くような使い方をすることは任意である。同様にして、図52(A)および図53(A)に示した実施例33の場合も、振動伝導体2824および2826の両者を横方向において耳軟骨の二箇所に当てることも可能である。また、図47の実施例29のように、振動伝導体2824を右耳珠当接用、振動伝導体2826を右耳珠当接用として使い分けることも任意である。
いずれにしても、耳軟骨への二箇所当接は、同時振動している振動伝導体2824および2826のエネルギーをともに耳軟骨へ導入できるので、エネルギー上は伝達効率が良い。一方、耳栓骨導効果を得るべく、耳珠に携帯電話2801を強く押し当てる場合は、角部にある振動伝導体を一つだけ耳珠に当てるほうが容易に耳珠を押して耳を塞ぐことができる。
図54は、本発明の実施の形態に係る実施例34に関する透視斜視図であり携帯電話2901として構成されている。実施例34は、図48の実施例30や図49の実施例31におけるように携帯電話2901の側面を振動させるよう構成したものであるが、右手持ちで使用した場合および左手持ちで使用した場合のいずれでも対応できるよう、両側面が振動可能となっている。換言すれば、図54の実施例34は、図52(A)の実施例33における一対の振動伝導体2824および2826を側面配置用の一対の振動伝導体2924および2926に置き換えたものであり、振動伝導体2924および2926は側面の広範囲で耳軟骨との接触が図れるよう、縦長の形状となっている。圧電バイモルフ素子2525の保持構造は、図52(A)の実施例33と共通であるが煩雑を避けるため詳細図示を省略する。
実施例34においては、振動伝導体2924および2926の色を携帯電話2901の外壁の色と異なるようにし、側面から音を聴くよう構成されていることおよびその際に耳を当てる部分が使用者にわかるよう構成してもよい。一方、側面から音を聴くよう構成されていることおよびその際に耳を当てる部分が使用者に周知されている場合には、振動伝導体2924および2926の色を携帯電話2901の外壁の色と同色とするか、さらには携帯電話2901の外壁との境目がわからないような表面処理を施すデザインとしてもよい。実施例34のその他の構成は、例えば図41の実施例26と共通なので、共通する部分に同一の番号を付して説明を省略する。
図55は、本発明の実施の形態に係る実施例35に関する透視斜視図であり携帯電話3001として構成されている。実施例35も、図54の実施例34と同様にして、携帯電話3001の両側面を広範囲に渡って振動させるよう構成したものである。但し、図54の実施例34とは異なり、両側面がそれぞれ独立に制御可能なよう、一対の圧電バイモルフ素子3024および3026を縦長姿勢で配している。従って、図1から図6に説明した実施例1から実施例3と同様にして、使用される一方の圧電バイモルフ素子のみを自動的に振動させることが可能となる。圧電バイモルフ素子3024および3026の保持については、図44から図52等で説明した各実施例の保持構造を適宜採用することができるので、煩雑を避けるため詳細図示を省略する。
実施例35においても、圧電バイモルフ素子3024および3026を側面に配置する際、図48の実施例30における振動伝導体2527のような材質で圧電バイモルフ素子3024および3026を覆い、この振動伝導体の色を携帯電話3001の外壁の色と異なるようにして、側面から音を聴くよう構成されていることおよびその際に耳を当てる部分が使用者にわかるよう構成してもよい。一方、実施例35と同様、側面から音を聴くよう構成されていることおよびその際に耳を当てる部分が使用者に周知されている場合には、振動伝導体の色を携帯電話3001の外壁の色と同色とするか、さらには携帯電話3001の外壁における他の側面部分との境目がわからないような表面処理を施すデザインとしてもよい。実施例35のその他の構成は、例えば図41の実施例26と共通なので、共通する部分に同一の番号を付して説明を省略する。
図56は、本発明の実施の形態に係る実施例36に関する透視斜視図であり携帯電話3101および携帯電話3201として構成されている。図56の実施例36は、図55の実施例35とほぼ共通の構成であるが、携帯電話を、図56(A)に示す左手持ち用携帯電話3101および図56(B)に示す右手持ち用携帯電話3201としていずれか一方を選択可能に市場に提供するよう構成したものである。つまり、図56(A)の左手持ち用携帯電話3101では、左耳軟骨に当てるための圧電バイモルフ素子3024が、図56(B)に示す右手持ち用携帯電話3201では、左耳軟骨に当てるための圧電バイモルフ素子3026が設けられている。また、片側使用に限られることから、マイク等の送話部についても、図56(A)の左手持ち用携帯電話3101では、左側面下方に送話部(マイク)1223が、図56(B)の右手持ち用携帯電話3201では、右側面下方に送話部(マイク)1123が、それぞれ設けられている。なお、これらの送話部(マイク)1123または1223は、実施例12または実施例13と同様にして、大画面表示部205を観察しながらのテレビ電話の際には、送話部(マイク)1123及び1223の切換えが行われ、大画面表示部205を観察中の使用者によって発音される音声を拾うことができる。
図56の実施例36では、上記のように受話および送話に関する圧電バイモルフ素子やマイク等のオーディオ関連の構成が携帯電話側面にまとめられるとともに、大画面表示部205等のビジュアル関連の構成が携帯電話正面にまとめられるので、携帯電話3101または3201を耳等の顔に当てるときは側面を使用し、携帯電話3101または3201を目で眺める時は正面を使用するごとく、90度をなす携帯電話3101または3201の2面を使い分けることができ、携帯電話3101または3201の正面が顔について大画面表示部205等が汚れるのを防止することができる。
図56の実施例36では、圧電バイモルフ素子3024または3026を配置しない反対側の側面は主に携帯電話保持のために利用されるので、手で保持するのに自然なよう、側面をザラザラした感触の材質3101fまたは3201fで覆い、保持を容易にするとともに、耳に当てる側がどちらなのかを明示することができる。なお、実施例36にあっても、実施例35と同様にして、圧電バイモルフ素子3024または3026を覆う振動伝導体の色を携帯電話3101または3201の外壁の色と異なるよう構成してもよい。また、実施例36において反対側の側面を上記のようにザラザラした感触の材質3101fまたは3201fで覆った場合は、音を聴く側の側面が識別できるので振動伝導体の色を携帯電話3101または3201の外壁の色と同色とするか、さらには携帯電話3101または3201の外壁における他の側面部分との境目がわからないような表面処理を施すデザインとしてもよい。実施例35のその他の構成は、例えば図41の実施例26と共通なので、共通する部分に同一の番号を付して説明を省略する。
なお、実施例36における「右手持ち用」および「左手持ち用」は、例えば図56(A)の携帯電話3101を左手で持って大画面表示部205を見ている状態からそのまま手首を回さずに携帯電話3101の側面を耳に当てるとき圧電バイモルフ素子3024を設けた側の側面が左耳軟骨に当たる状態を想定している。しかしながら、使用者の使用法は任意であって、図56(A)の携帯電話3101を右手に持ち、耳に当てるときは手首を180度回して携帯電話3101を裏返せば、圧電バイモルフ素子3024が設けられた側の側面を右耳軟骨に当てることができる。従って、「右手持ち用」および「左手持ち用」はあくまで暫定であって、いずれを購入し、どのように使用するかは使用者が自由に選択することができる。従って、上記のように手首を回して使用する使用者にとっては、図56(A)の携帯電話3101を「右手持ち用」と認識することもできる。
図57は、本発明の実施の形態に係る実施例37に関する透視斜視図であり携帯電話3301として構成される。図57の実施例37は、図40における実施例10の変形例と共通する部分が多いので、共通する部分には同一の番号を付して説明を省略する。実施例37が実施例10の変形例と異なるのは、圧電バイモルフ素子2525が前面だけでなく、携帯電話3301の上辺における前後左右および上側が耳軟骨と音響インピーダンスが近似する材料で形成された軟骨伝導出力部3363で覆われていることである。この軟骨伝導出力部3363は、実施例10またはその変形例における軟骨伝導出力部963と同様、例えばシリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造の材料によって形成されている。
実施例37の構成によれば、携帯電話3301の上方の部位ならどこでも耳軟骨に当てることによって軟骨伝導を得ることができるので、場所を気にせず携帯電話3301の上部を耳にあてるだけで、最適の音量で音を聴くことができる。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。
図58は、本発明の実施の形態に係る実施例38に関する断面ブロック図であり携帯電話3401として構成される。図58の実施例38は、実施例26または実施例27と共通する部分が多いので、共通する部分には図42と同一の番号を付して説明を省略する。実施例38が実施例26または実施例27と異なるのは、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525が携帯電話3401の筐体構造3426に剛体的に固着され、軟骨伝導振動源2525の振動を携帯電話3401の全表面に伝達するよう構成したことである。なお、軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子の固着にあたっては、積極的にその振動を伝達するため、図44(B)におけるようなギャップ2504を設けずに筐体構造3426に密着させ、主振動方向(Y−Y’方向)の振動が筐体構造3426に伝わりやすいようにしている。これによって、携帯電話3401の全表面が振動伝導体として作用することになり、携帯電話3401の表面のどこを耳軟骨に当てても軟骨伝導を得ることができるようになる。
実施例38は、上記のように構成されるので、携帯電話3401の正面または背面の大面積部分を耳軟骨全体に当てる場合は、実施例5から実施例9と同様にして、軟骨伝導振動源2525の振動が筐体構造3426を介して携帯電話3401の表面の広い接触面積で耳軟骨に伝達される。さらに、携帯電話3401の表面の振動によって発生する気導音が外耳道から鼓膜に伝わる。これによって、軟骨伝導振動源2525からの音源情報を大きな音として聞くことができる。また、耳に当てられている携帯電話3401の表面が外耳道を塞ぐ形となるので環境騒音を遮断することもできる。さらに、携帯電話3401を耳に押し当てる力を増すと外耳道がほぼ完全に塞がれる結果となり、耳栓骨導効果によって軟骨伝導振動源2525からの音源情報をさらに大きな音として聞くことができる。
また、実施例38の側面を耳軟骨に当てる場合は、実施例11から実施例14、実施例30、実施例31、実施例33の変形例、実施例34から実施例36と同様にして、表示面等が設けられる携帯電話正面が顔との接触によって汚れるのを防止することができる。さらに、実施例38の上辺角部を耳軟骨当てる場合は、実施例1から実施例4、実施例10とその変形例、実施例26から実施例29、実施例33と同様にして耳珠などへの容易な接触が図れるとともに、耳珠を押して外耳道入口を塞ぐことで容易に耳栓骨導効果を得ることができる。なお、図57の実施例37は、携帯電話3301の上方の部位ならどこでも耳軟骨に当てることによって軟骨伝導を得ることができるよう構成したものであるが、図58の実施例38はこの特徴を拡張し、携帯電話3401表面のどこであっても場所を気にせず携帯電話3401の上部を耳に当てるだけで、最適の音量で音を聴くことができるようにしたものと言える。
なお、図58の実施例38では、圧電バイモルフ素子の主振動方向(Y−Y’方向)がGUI表示部3405(図58ではブロック図で概念化しているが、実施例26に関する図41の斜視図を援用すればタッチパネル機能を有する大画面表示部205)と直交する向きになるように軟骨伝導振動源2525が筐体構造3426に固着されている。(なお、図58では固着断面は図示されていないが、固着の様子は後述する。)これによって、GUI表示部3405が設けられた携帯電話3401の正面または背面の大面積部分が効率よく振動する。なお、軟骨伝導振動源2525の固着により圧電バイモルフ素子の非振動方向(X−X’方向)についてもエネルギーは比較的小さいが振動が発生するので携帯電話3401の側面を耳軟骨に当てても軟骨伝導により音を聴くことができる。因みに、図58のGUI表示部3405は、図42の大画面表示部205、表示ドライバ41、タッチパネルドライバ2470をまとめて図示したものである。
図58の実施例は、実施例27と同様にして、GUI表示部3405近傍の指の動きを非接触で検知するモーションセンサにより機能が選択され、選択した機能の決定のための指のタッチを検知する衝撃センサとして軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子の衝撃検知機能が利用される。図58で示す衝撃センサ3442は、図9で示した押圧センサ242と同様の機能を有するものであり、圧電バイモルフ素子の衝撃検知信号を抽出する。上記の圧電バイモルフ素子の主振動方向(Y−Y’方向)がGUI表示部3405と直交する向きとする配置は、携帯電話3401の正面または背面からのタッチを検知するのに適する。また、図58の実施例は、実施例27と同様にして、軟骨伝導振動源2525がタッチ感触のフィードバック用の低周波出力素子として兼用されるが、上記の圧電バイモルフ素子の主振動方向(Y−Y’方向)の配置は、携帯電話3401の正面または背面からのタッチに対して効率よくフィードバック振動を指に伝えるのに適する。なお、図58の実施例は、実施例26で説明したものと同様にして、軟骨伝導振動源2525が携帯電話3401への着信を無音で通知するバイブレータの振動源としても兼用される。
図58の実施例は、さらに、実施例4と同様にして、実施例27と同様にして、加速度センサ49により水平静止状態を検知し、該当すれば、軟骨伝導振動源2525の振動を禁止するよう構成している。これによって、携帯電話3401を通話中に机等に置いた場合において、相手側からの声の出力によって机との間で振動騒音を生じる可能性を防止している。なお、上記のGUI操作や着信バイブレータの機能については、携帯電話3401を机等に置いた場合においても有効にするのが適切なので、このような場合は、加速度センサ49により水平静止状態を検知しても、軟骨伝導振動源2525の振動を禁止しないよう構成する。この点の詳細については制御部3439の機能として後述する。
なお、図58の実施例では、携帯電話3401の筐体構造3426を積極的に振動させるよう構成しているため、この振動がマイク223にも伝わってハウリングを起こす可能性がある。その対策として携帯電話3401の筐体構造3426とマイク223の間の音響伝導を遮断するため、筐体構造3426と音響インピーダンスが異なる絶縁リング部3465が両者間に設けられている。なお、ハウリング防止については、電話機能部45における送話処理部222から受話処理部212への信号伝達経路によっても回路的に対策される。
図59は、図58の実施例38における携帯電話3401の筐体構造3426への軟骨伝導振動源2525の固着の様子を示す背面透視図および断面図である。図59(A)は実施例38の携帯電話3401の上端側の一部を示す背面斜視図であるとともに、図59(B)は、図59(A)のB−B断面を示す断面図である。また、図59(C)は、実施例38の変形例における上端側の一部を反対側の側面から見た透視斜視図である。圧電バイモルフ素子自体の構成は、図44(B)と同様なので、共通する部分には共通する番号を付す。
図59(A)に明らかなように、実施例38では、軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子の金属板2597が携帯電話3401の正面と平行になるよう配置され、この結果、主振動方向であるY−Y’方向がGUI表示部3405と直交する向きになるように軟骨伝導振動源2525が筐体構造3426に固着される。また、図59(B)に明らかなように、軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子はギャップなしに筐体構造3426の内側に密着固定され、主振動方向(Y−Y’方向)の振動が筐体構造3426の表面に伝わりやすいよう構成される。
図59(C)における実施例38の変形例は、軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子の金属板2597が携帯電話3401の側面と平行になるよう配置され、この結果、主振動方向であるY−Y’方向が携帯電話3401の側面と直交する向きになるように軟骨伝導振動源2525が筐体構造3426に固着される。これによって、携帯電話3401の側面を耳に当てたときに効率よく軟骨伝導を得ることができる。なお、軟骨伝導振動源2525の固着により圧電バイモルフ素子の非振動方向(X−X’方向)についてもエネルギーは比較的小さいが振動が発生するので、携帯電話3401の正面または背面を耳軟骨全体に当てても軟骨伝導により音を聴くことができる。なお、図59(C)における実施例38の変形例においても、図59(B)と同様にして、軟骨伝導振動源2525を構成する圧電バイモルフ素子がギャップなしに筐体構造3426の内側に密着固定され、主振動方向(Y−Y’方向)の振動が筐体構造3426の表面に伝わりやすいよう構成される。
図60は、図58の実施例38における制御部3439の動作のフローチャートである。なお、図60のフローは主に軟骨伝導振動源2525の制御について説明するため、関連する機能を中心に動作を抽出して図示しており、一般的な携帯電話の機能等、図60のフローに表記していない制御部3439の動作も存在する。図60のフローは、携帯電話3401の主電源のオンでスタートし、ステップS262で初期立上および各部機能チェックを行うとともにGUI表示部3405における画面表示を開始する。次いでステップS264では、軟骨伝導振動源2525の機能をオフにしてステップS266に移行する。
ステップS266では、携帯電話3401が通話中であるか否かチェックする。そして新たに回線が繋がったときは通話中となるのでステップS268に進んで送話処理部222および受話処理部212をオンし、ステップS270に移行する。なお、回線が繋がっていて既に通話中である場合もステップS266からステップS268に進み、この場合は送話処理部222および受話処理部212のオンを継続してステップS270に移行する。
ステップS270では、加速度センサ49により水平静止状態が検知されているか否かチェックし、水平静止状態でなければステップS272に移行して軟骨伝導振動源2525をオンしてステップS274に移行する。なお、軟骨伝導振動源2525が既にオンされているときはオン状態を継続する。一方、ステップS270で水平静止状態が検知されたときはステップS276に進み、送話処理部222および受話処理部212がオン状態であるか否かチェックする。そしてこの場合はオン状態であるからステップS278に進み。軟骨伝導振動源2525をオフしてステップS274に移行する。なお、軟骨伝導振動源2525が既にオフされているときはオフ状態を継続する。ステップS274では通話中であるか否かチェックし、通話中であればステップS270に戻る。以下、通話中である限りはステップS270からステップS278を繰り返す。このようにして、通話中において携帯電話3401が一時的に机等に置かれた時は、相手の声を受信してもその間は軟骨伝導振動源2525の振動を中断し、机との間の不快な振動雑音の発生を防止する。当然ながら、ステップS270で水平静止状態が検知されなくなればステップS272で軟骨伝導振動源2525がオンされ通話が復活する。
一方、通話が行われていない状態であるかまたは通話の終了により通話中でないことがステップS266で検知されたときはステップS280に進み、送話処理部222および受話処理部212をオフしてステップS282に移行する。なお、既に送話処理部222および受話処理部212がオフの場合はオフ状態を継続してステップS282に移行する。ステップS282では、着信があったかどうかチェックし、着信がなければステップS284に移行してGUIモードか否かチェックする。そしてGUIモードであればステップS286に進んで衝撃センサ検知処理を行うとともにステップS288でタッチ感フィードバック処理を行ってステップS290に移行する。ステップS286およびステップS288は、何も操作がなければ直接ステップS290に移行するとともに、操作があればその操作に基づく衝撃センサ検知とタッチ感フィードバックを実行する処理である。
ステップS290では、低周波源2436をオンして、タッチ感フィードバック信号等の入力に備える。そしてステップS270に進み、水平静止状態検知の有無をチェックする。そして水平静止状態でなければステップS272に移行して軟骨伝導振動源2525をオンし、タッチ感フィードバック信号等の入力に備える。また、ステップS270で水平静止状態が検知されたときはステップS276に進むがこの場合は送話処理部222および受話処理部212がオンではないので、やはりステップS272に移行して軟骨伝導振動源2525をオンする。このようにして低周波源2436がオンとなっているときは水平静止状態が検知されても軟骨伝導振動源2525はオンされる。また、軟骨伝導振動源2525がオンされているときはその衝撃センサ機能も維持される。
一方、ステップS282で着信が検知されたときはステップS292に進み着信報知のためのバイブ信号を出力してステップS290に移行する。この場合もステップS290で低周波源2436がオンとなりステップS272で軟骨伝導振動源2525がオンとなるが、ステップS270で水平静止が検知されたとしてもステップS272に進んで伝導振動源2525がオンとなることはGUIモードの場合と同様である。
ステップS274で通話中でないことが検知されたときはステップS296に移行し、主電源がオフされたかどうかチェックする。なお、ステップS290における低周波源2436のオンを経てステップS274に至ったときも通話中ではないのでステップS296に移行する。また、ステップS284でGUIモードであることが検知されなければ、ステップS294に進み、低周波源2436をオフしてステップ296に至る。そしてステップS296で主電源がオフされたことが検知されるとフローを終了する。一方、ステップS296で主電源のオフが検知されない場合は、ステップS266に戻り、以下、ステップS266からステップS296を繰り返して種々の状況変化に対応する。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は、上記の実施例に限ることなく、その利点が享受できる限り他の実施形態においても実施可能である。また、各実施例の種々の特徴は、個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、上記実施例38において、水平静止に関する軟骨伝導振動源2525の制御に関連し、テレビ電話モードであるか否かをチェックして該当する場合は、図60のステップS278における軟骨伝導振動源2525のオフに連動してテレビ電話用スピーカをオンするよう構成することができる。
また、実施例38において軟骨伝導振動源2525を携帯電話3401の筐体構造3426に支持する態様は、実施例38のような剛体的な直接固着に限るものではない。例えば、振動の伝達が可能な限り、他の保持構造を介した間接的な剛体的支持であってもよい。また、支持は必ずしも剛体的なものに限らず、音響インピーダンスが近似して筐体表面に振動が伝達する限りは、弾性体を介した保持であってもよい。
図61は、本発明の実施の形態に係る実施例39およびその各種変形例に関する断面図であり携帯電話3501aから3501dとして構成される。なお、実施例39は例えば圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下、例示的に圧電バイモルフ素子2525として説明する。)の配置を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図61(A)は実施例39に関するものであり、携帯電話3501aをその側面およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図である。図示から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525は、図59(C)における実施例38の変形例のように携帯電話3501aの一方の側面に沿って配置される。但し、図61の実施例39においては、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向(Y−Y’方向)が側面に垂直ではなく、側面に対し傾くよう支持されている。具体的に述べると、実施例39の側面にはその4つの側面稜線部分を面取りして設けた傾斜側面3507aが設けられており、圧電バイモルフ素子2525はこの傾斜側面3507aの一つの内側に主振動面(「金属板2597に平行な圧電バイモルフ2525の外面」を「主振動面」と定義する)を接着して支持されている。これによって、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向(Y−Y’方向であって主振動面と垂直な方向)は傾斜側面3507aに垂直となる。
このような構造により、携帯電話3501aの使用者は、GUI表示部3405の表示面が頬に接触して汚れるのを防止しつつ、容易に耳軟骨に携帯電話3501aの傾斜側面3507aを当てることができる。既に他の実施例において説明してきたようにオーディオ関連の構成を携帯電話側面にまとめるとともに、ビジュアル関連の構成を携帯電話正面にまとめた構成は、携帯電話3501aを耳等の顔に当てるときは側面を使用し、携帯電話3501aを目で眺める時は正面を使用するよう携帯電話3501aの2面を使い分けることができ、携帯電話3501aの正面が顔についてGUI表示部3405の表示面が汚れるのを防止することができる上で有意義である。しかしながら、側面使用の際に完全に側面を垂直に耳に接触させるよりも、GUI表示部3405の表示面が若干顔の方を向くようにして携帯電話3501aを耳に接触させる使用形態も考えられる。図61(A)の実施例39はこのような使用を想定して構成されたものである。
上記のように、図61(A)の実施例39は、圧電バイモルフ素子2525が内側に接着されている傾斜側面3507aにおいて矢印25aの方向が主振動方向となるが、主振動方向が傾いているため、矢印25bで示すGUI表示部3405の表示面に垂直な方向の振動成分、および矢印25cで示す側面振動成分が生じる。これによって、携帯電話3501aの正面(GUI表示部3405の表示面)または背面、さらには、携帯電話3501aの両側面のいずれかを耳軟骨に当てた場合でも音を聴くことが可能となる。従って、矢印25aの方向をベストポジションとして携帯電話3501aのいずれの位置も任意に使用することができる。なお、図61(A)の実施例39では、傾斜側面3507aがGUI表示部3405の表示面に近い傾きとなっているので、矢印25bで示す方向の振動成分の方が、矢印25cで示す方向の振動成分よりも大きくなっている。
図61(B)は実施例39の第1変形例であり、携帯電話3501bは、傾斜側面3507bの傾きをGUI表示部3405の表示面に対しほぼ45度とすることにより、矢印25bで示す方向の振動成分と矢印25cで示す方向の振動成分がほぼ均等となるよう構成されている。これに対し、図61(C)は実施例39の第2変形例であり、携帯電話3501cは、傾斜側面3507cを側面に近い傾きとすることにより、矢印25cで示す方向の振動成分の方が、矢印25bで示す方向の振動成分よりも大きくなるよう構成したものである。
なお、図61(A)から(C)は概略傾向の説明のために図示を極端にしているが、携帯電話3501a〜3501cに伝達された後の圧電バイモルフ素子2525の振動に極端な指向性が維持されることはないので、携帯電話内側に設けられる圧電バイモルフ素子2525の主振動方向の向きの微妙な変化が鋭敏に振動成分の変化を招くものではない。しかしながら、耳軟骨への接触のベストポジションを考慮して実施例39およびその変形例のように圧電バイモルフ素子2525の配置方向を調節することは意義が大きい。例えば、図61(A)から(C)のように平面状の傾斜側面を設ける場合、携帯電話3501a〜3501cの正面(GUI表示部3405の表示面)と傾斜側面3507a〜3507cの傾きを30度程度から60度程度の間とするのが実用的である。
図61(D)は、実施例39の第3変形例であり、携帯電話3501dの側面は半円柱面3507dとなっている。また、矢印25aの主振動方向はGUI表示部3405の表示面に対しほぼ45度となるよう半円柱面3507dの内側に押し付け支持されており、矢印25bで示す方向の振動成分と矢印25cで示す方向の振動成分がほぼ均等となるよう構成されている。これによって、使用者は側面の半円柱面3507dから携帯電話3501dの正面(GUI表示部3405の表示面)または背面にわたる任意の場所を耳軟骨に当てることができる。なお、図61(D)の実施例39の第3変形例においては、矢印25aの主振動方向はGUI表示部3405の表示面に対しほぼ45度の場合に限らず、図61(A)から(C)のように種々の傾きに設定することができる。さらに、保持の傾きを調節可能とし、使用者の希望に応じて傾きを変更するサービスが提供できるよう構成することも可能である。
図62は、本発明の実施の形態に係る実施例40およびその各種変形例に関する断面図および要部透視斜視図であり、携帯電話3601aから3601cとして構成される。なお、実施例40についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下、例示的に圧電バイモルフ素子2525として説明する。)の配置を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図62(A)は実施例40に関するものであり、携帯電話3601aをその側面3607およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図である。図示から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525は、図59(C)における実施例38の変形例のように携帯電話3601aの一方の側面3607に沿って配置される。但し、図62の実施例40においては、実施例39と同様にして圧電バイモルフ素子2525の主振動方向(Y−Y’方向)が側面に垂直ではなく、側面3607に対し傾くよう支持されている。また、実施例40では、圧電バイモルフ素子2525の両側の主振動面からの振動が、互いに直交する側面3607とGUI表示部3405の表示面にそれぞれ伝達されるよう構成される。
具体的に述べると、図62(A)における実施例40の携帯電話3601aの筐体には、側面3607から内側に延びる第1支持構造3600aが設けられ、圧電バイモルフ素子2525の一方の主振動面に接着されるとともに、GUI表示部3405の表示面側の筐体から内側に延びる第2支持構造3600bが設けられ、圧電バイモルフ素子2525の他方の主振動面に接着されている。これによって、矢印25aで示す方向の主振動が、矢印25dで示す振動成分およびこれと直交する方向の矢印25eで示す振動成分に分解され、それぞれ側面3607およびGUI表示部3405の表示面側の筐体面に伝達される。このようにして、圧電バイモルフ素子2525における二つの主振動面の振動が携帯電話3601aの直交する方向に分解して伝達され、携帯電話3601aの正面、背面、側面のどの部分を耳軟骨に当てても圧電バイモルフ素子2525の振動を聞くことができる。なお、図62(A)における実施例40は、圧電バイモルフ素子2525の同一部分を両側から挟むように第1支持構造3600aおよび第2支持構造3600bを設けたものである。
これに対し、図62(B)は、実施例40の第1変形例の携帯電話3601bの要部を内側から見た透視斜視図である。図62(B)から明らかなように、実施例40の第1変形例では、圧電バイモルフ素子2525の対向する主振動面が互いに食い違う位置で携帯電話3601bに接着されるよう、第1支持構造3600aおよび第2支持構造3600bを設けたものである。これによって、圧電バイモルフ素子2525の接着作業が容易になるともに、圧電バイモルフ素子2525の振動の自由度抑制が少なくなり、効率よくその振動を携帯電話3601bの筐体に伝達することができる。
図62(C)は、実施例40の第2変形例の携帯電話3601cをその側面3607aおよび上面に垂直な平面で切断して側方から見た断面図である。図62(A)の実施例40では、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向が正面および側面にそれぞれ垂直な方向の振動成分に分解されていたが、図62(C)の実施例40の第2変形例では、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向が正面および上面にそれぞれ垂直な方向の振動成分に分解される。
具体的に述べると、図62(C)に明らかなように、実施例40の第2変形例では、携帯電話3601cの筐体には、上面から内側に延びる第1支持構造3600cが設けられ、圧電バイモルフ素子2525の一方の主振動面に接着されるとともに、GUI表示部3405の表示面側の筐体から内側に延びる第2支持構造3600dが設けられ、圧電バイモルフ素子2525の他方の主振動面に接着されている。これによって、矢印25aで示す方向の主振動が、矢印25fで示す振動成分およびこれと直交する方向の矢印25eで示す振動成分に分解され、それぞれ上面およびGUI表示部3405の表示面側の筐体面に伝達される。このようにして、圧電バイモルフ素子2525における二つの主振動面の振動が携帯電話3601cの直交する方向に分解して伝達され、携帯電話3601cの正面、背面、上面、下面のどの部分を耳軟骨に当てても圧電バイモルフ素子2525の振動を聞くことができる。なお、図62(C)における実施例40の第2変形例は、図62(A)と同様にして圧電バイモルフ素子2525の同一部分を両側から挟むように第1支持構造3600cおよび第2支持構造3600dを設けた形の断面図となっているが、図62(B)のように圧電バイモルフ素子2525の両面の食い違った部分をそれぞれ接着するよう構成してもよい。
図62(C)における実施例40の第2変形例は、携帯電話3601cの正面または背面を耳軟骨につけて音を聴くのに適する他、携帯電話3601cの上面を軽く突き上げるような形で耳軟骨に当てる使用に好適であり、このような使用によっても表示面が顔に触れて汚れるのを防止できる他、上面の突き上げ力を強めることによって耳珠で外耳道を塞ぎ、耳栓骨導効果を容易に生じさせる上でも好適である。
図63は、本発明の実施の形態に係る実施例41に関する断面図であり、携帯電話3701として構成される。なお、実施例41についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下、例示的に圧電バイモルフ素子2525として説明する。)の配置を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図63(A)は、実施例41の携帯電話3701をその側面3707およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図である。図示から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525は、図59(A)における実施例38のように携帯電話3701の上面に沿って配置される。また圧電バイモルフ素子2525の主振動方向(Y−Y’方向)はGUI表示部3405の表示面に垂直な方向である。具体的には、携帯電話3701の背面から内側に延びる支持構造3700aに対して圧電バイモルフ素子2525の中央部分を接着するとともに圧電バイモルフ素子2525の両端部分をともに自由端として振動が阻害されない状態に支持する。この結果、矢印25gおよび矢印25hで示したような圧電バイモルフ素子2525の両端部分の自由振動の反作用が圧電バイモルフ素子2525の中央部分から支持構造3700aを介して携帯電話3701の筐体に伝達される。
図63(B)は、図63(A)のB−B断面を携帯電話3701の側方から見た断面図であり、圧電バイモルフ素子2525が携帯電話3701の背面から内側に延びる支持構造3700aによって圧電バイモルフ素子2525が支持されていること、および圧電バイモルフ素子2525が携帯電話3701の上面に沿って配置されていることが理解される。図63のように、圧電バイモルフ素子2525の主振動面の一部を携帯電話3701の筐体の内側に支持するとともに主振動面の一部を浮かせて自由振動を許可する構造は、圧電バイモルフ素子2525固有の音響特性に本質的な変更を加えることなく効率的にその振動を携帯電話筐体に伝達するのに好適である。なお、実施例41のような圧電バイモルフ素子2525中央での支持は、図51に示す実施例32のように端子が素子の中央に位置する圧電バイモルフ素子の場合に特に好適である。
図64は、図63の実施例41の種々の変形例を示すものであり、それぞれ、図63(A)と同様にして携帯電話3701をその側面3707およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図となっている。
図64(A)は、実施例41の第1変形例であり、特に圧電バイモルフ素子2525の端子2525bが素子端部に位置していて重心がアンバランスとなるとともに、素子への電極接続によって矢印25gで示す端子2525b側の自由振動が矢印25hで示す完全自由端の振動に比べ若干拘束される場合に適する。図64(A)の第1変形例はこれらのアンバランスを補償するため、図63の実施例41の支持構造3700aに比べ、支持構造3701bの位置を図上で左にシフトしたものである。
図64(B)は、実施例41の第2変形例であり、携帯電話3701の背面から内側に延びる一対の支持構造3700cおよび3700dに対して圧電バイモルフ素子2525の両端をそれぞれ接着して支持したものである。これによって矢印25iに示す圧電バイモルフ2525の中央部分の振動が自由となり、この振動の反作用が支持構造3700cおよび3700dを介して携帯電話3701の筐体に伝達される。
図64(C)は、実施例41の第3変形例であり、携帯電話3701の背面から内側に延びる支持構造3700eに対して端子2525b側を接着することにより圧電バイモルフ素子2525をカンチレバー構造に支持したものである。これによって矢印25hに示す圧電バイモルフ2525の自由端の振動の反作用が支持構造3700eを介して携帯電話3701の筐体に伝達される。
図64(D)は、実施例41の第4変形例であり、圧電バイモルフ素子2525を、弾性体よりなる両面接着シート3700fを介して携帯電話3701の背面の筐体内側に接着したものである。この弾性体よりなる両面接着シート3700fは、圧電バイモルフ素子2525から筐体への伝導性を有する弾性体(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造、等)等により作られている。このような弾性接着により、圧電バイモルフ素子2525の各部分が矢印25g、25hおよび25i等に示す振動の自由度を得るとともにその振動が両面接着シート3700fを介して携帯電話3701の筐体に伝達される。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、図63および図64における実施例41の圧電バイモルフ素子2525の自由振動に配慮した支持構造は、図61の実施例39および図62の実施例40における圧電バイモルフ2525の傾斜保持の場合にも採用できる。具体的に述べると図62(B)における支持構造は、圧電バイモルフ素子2525の両端を支持して中央部を自由にする意味で共通点がある。また、この例に限らず、例えば、図61の実施例39およびその変形例において、振動面全体を傾斜側面の内側に接着するのではなく、傾斜側面に図63(A)の支持構造3700aに類した突出部を設け、これに圧電バイモルフ素子2525の中央部分のみを接着して両端部は自由端とすることも可能である。あるいは、図61の実施例39およびその変形例において、圧電バイモルフ素子2525の接着の際に、図64(D)における実施例41の第4変形例のごとき弾性体を介在させることも可能である。
以上に説明した本発明の特徴の実施は上記の実施例における実施形態に限るものではなく、その利点を享受できる限り他の実施形態によっても実施可能である。たとえば図61の実施例39において、圧電バイモルフ素子2525は携帯電話内部において傾斜斜面の内側に接着して支持するものとして説明したが、支持の具体的な構造はこれに限るものではない。例えば、図49の実施例31に準じ、傾斜斜面の外側に溝を設けてこの溝に外側から圧電バイモルフ素子2525を嵌め込むごとき構造としてもよい。
図65は、本発明の実施の形態に係る実施例42に関する断面図であり、携帯電話3801として構成される。なお、実施例42についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下、例示的に圧電バイモルフ素子2525として説明する。)の配置およびその保持構造を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図65(A)は、実施例42の携帯電話3801をその側面3807およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図である。また、図65(B)は、図65(A)のB−B断面を携帯電話3801の側方から見た断面図である。図65(A)から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525は、図59(A)における実施例38または図63の実施例41等と同様にして携帯電話3801の上面に沿って配置される。また圧電バイモルフ素子2525の主振動方向は矢印25gに示すようにGUI表示部3405の表示面に垂直な方向である。このように、図65の実施例42は、基本的には図64(C)に示す実施例41の変形例と同様にして圧電バイモルフ素子2525の片側をカンチレバー構造に支持したものであり、これによって矢印25gに示す圧電バイモルフ2525の自由端の振動の反作用を携帯電話3801の筐体に伝達するものである。
図65の実施例42が図64(C)に示す実施例41の変形例と異なるのは、携帯電話3801の筐体のうち耳珠等の耳軟骨に当てるのに好適な部位である上部角3824が特に効率よく振動するようにするとともに、落下などの際、直接衝撃が加わりやすい部位でもある上部角3824が衝突に弱い構造となることを避けるよう構成した点にある。具体的には、図65(A)および図65(B)に示すように携帯電話3801の側面3807および上面3807aから内側に延びる支持構造3800aの穴に圧電バイモルフ素子2525の一端が保持端2525cとして差し込まれて保持されている。なお、保持端2525cは、端子2525bが設けられていない方の一端である。このように端子2525bが設けられていない一端を保持端2525cとすることにより、支持位置を上部角3824の近傍に寄せることができる。これに対し、端子2525bが設けられている他端は、自由端として振動させられる。なお、端子2525bは筐体に実装された回路3836とフレキシブルな配線3836aに接続されており、端子2525bが設けられている他端の自由振動が実質的に阻害されることはない。回路3836は圧電バイモルフ素子2525の駆動電圧を昇圧するためのアンプなどを含む。
以上のような構成により、矢印25gで示した圧電バイモルフ素子2525の他端の自由振動の反作用が圧電バイモルフ素子2525の保持端2525cから支持構造3800aを介して携帯電話3801の筐体に伝達される。このとき、上記のように支持構造3800aは筐体の上部角3824において携帯電話3801の側面3807および上面3807aから内側に延びるよう構成されるので、圧電バイモルフ素子2525の他端の自由振動の反作用が効率よく上部角3824に伝達される。また、上記のように、圧電バイモルフ素子2525は携帯電話3801の筐体の内側に保持されているので、直接衝撃が加わりやすい部位でもある上部角3824が衝突に弱い構造となることはない。
図65(C)は、実施例42の第1変形例であり、矢印25jに示すように主振動方向が上面3807aに垂直な方向となるよう圧電バイモルフ素子2525を保持したものである。その他の構成は、図65(A)および図65(B)の実施例42と同様なので説明を省略する。図65(C)における第1変形例は、上面3807aに垂直方向の振動成分が多いので、携帯電話3801の上部角3824の上面側を軽く突き上げるような形で耳軟骨に当てる使用に好適である。このような使用によってもGUI表示部3405の表示面が顔に触れて汚れるのを防止できる他、上面3807aの突き上げ力を強めることによって耳珠で外耳道を塞ぎ、耳栓骨導効果を容易に生じさせる上でも好適である。なお、図65(C)における第1変形例は、図65(A)および図65(B)の実施例42と同様にして、携帯電話3801の上部角3824の表示面側を耳軟骨に当てて使用することもできる。この場合も、表示面側を耳軟骨に押し当てる力を強めることによって耳珠で外耳道を塞ぎ、耳栓骨導効果を容易に生じさせることが可能である。
図65(D)は、実施例42の第2変形例であり、矢印25kに示すように主振動方向が上面3807aに対し45度傾いている。これによって、振動成分が上面3807aに垂直な方向およびこれと直交するGUI表示部3405の表示面に垂直な方向に分解され、上部角3824をいずれの方向から耳軟骨接触させても同程度の軟骨伝導を得ることができる。
図66は、本発明の実施の形態に係る実施例43に関する断面図であり、携帯電話3901として構成される。なお、実施例43についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下、例示的に圧電バイモルフ素子2525として説明する。)の配置およびその保持構造を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図66(A)は、実施例43の携帯電話3901をその上面3907aおよびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して横から見た断面図である。また、図66(B)は、図66(A)のB−B断面を携帯電話3901の上方から見た断面図である。図66の実施例43は、図65の実施例42と同様にして、圧電バイモルフ素子2525における端子2525bが設けられていない方の一端を保持端2525cとしてカンチレバー構造に支持したものである。実施例43が実施例42と異なるのは、図66(A)から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525が、図61における実施例39およびその変形例と同様にして携帯電話3901の側面に平行に配置される点である。また圧電バイモルフ素子2525の主振動方向は矢印25mに示すようにGUI表示部3405の表示面に垂直な方向である。
従って、図66の実施例43においても、携帯電話3901の筐体のうち耳珠等の耳軟骨に当てるのに好適な部位である上部角3924が特に効率よく振動するとともに、上部角3924が衝突に弱い構造となることを避けることができる。具体的には、実施例42と同様にして、図66(A)および図66(B)に示すように携帯電話3901の側面および上面から内側に延びる支持構造3900aの穴に圧電バイモルフ素子2525の一端が保持端2525cとして差し込まれて保持されている。従って、実施例43でも端子2525bが設けられていない圧電バイモルフ素子2525の一端を保持端2525cとすることにより、支持位置を上部角3924の近傍に寄せることができる。その他の点は実施例42と共通なので説明を省略する。
図66(C)は、実施例43の第1変形例であり、矢印25nに示すように主振動方向が側面3907に垂直な方向となるよう圧電バイモルフ素子2525を保持したものである。その他の構成は、図66(A)および図66(B)の実施例43と同様なので説明を省略する。図66(C)における第1変形例は、側面3907に垂直な方向の振動成分が多いので、携帯電話3901の側面3907を耳軟骨に当て、顔がGUI表示部3405の表示面に触れるのを避ける使用に好適である。なお、図66(C)における第1変形例においても、図66(A)および図66(B)の実施例43と同様にして、携帯電話3901の表示面側を耳軟骨に当てて使用することもできる。この場合も、上部角3924を耳軟骨に押し当てる場合はその力を強めることによって耳珠で外耳道を塞ぎ、耳栓骨導効果を容易に生じさせることが可能である。
図66(D)は、実施例43の第2変形例であり、矢印25pに示すように主振動方向が側面3907に対し45度傾いている。これによって、振動成分が側面3907に垂直な方向およびこれと直交するGUI表示部3405の表示面に垂直な方向に分解され、上部角3924をいずれの方向から耳軟骨接触させても同程度の軟骨伝導を得ることができる。
図67は、本発明の実施の形態に係る実施例44に関する断面図であり、携帯電話4001として構成される。なお、実施例44についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525の構造、配置およびその保持構造を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図67(A)は、実施例44の携帯電話4001をその側面およびGUI表示部3405の表示面に垂直な平面で切断して上方から見た断面図(一部概念ブロック図を含む)であり、図65(A)の実施例42と同様にして理解できる断面図である。また、図67(B1)および図67(B2)は、図67(A)のB1−B1断面およびB2−B2断面をそれぞれ携帯電話4001の側方から見た要部断面図である。さらに、図67(C)は、図67(A)の重要部詳細断面図(一部概念ブロック図を含む)である。図67(B1)、図67(B2)および図67(C)において、図67(A)に対応する部分には同一の番号を付し、必要のない限り説明を省略する。
図67の実施例44は、図65の実施例42と同様にして、圧電バイモルフ素子2525を上面に平行に支持したものであるが、端子2525bが設けられている方の一端側をカンチレバー構造に支持した点、および圧電バイモルフ素子2525を駆動する回路4036を圧電バイモルフ素子2525と一体化して振動ユニットとして構成した点が実施例42と異なる。なお、携帯電話4001の筐体のうち耳珠等の耳軟骨に当てるのに好適な部位である上部角が特に効率よく振動するとともに、この上部角が衝突に弱い構造となることを避けることができる点では、実施例42と共通である。
具体的に説明すると、図67(A)および図67(C)に示すように、圧電バイモルフ素子2525の端子2525bはワイヤ4036aにて端子2525bに載せられた回路4036に接続される。そして、圧電バイモルフ素子2525の端子2525b側と回路4036は、圧電バイモルフ素子2525をパッケージしている樹脂と音響インピーダンスが近似する樹脂パッケージ4025にて再パッケージされ、振動ユニットとして一体化される。なお、樹脂パッケージ4025を貫通して回路4036から接続ピン4036bが外部に突出し、携帯電話4001の筐体側に固定された制御部・電源部4039とコンタクトしている。
図67(C)に示すように、回路4036は圧電バイモルフ素子2525の駆動電圧を昇圧するためのアンプ4036c、および圧電バイモルフ素子2525のバラツキを電気的に補償するための調整部4036dを含む。調整部4036dは制御部・電源部4039からの給電および制御に対し圧電バイモルフ素子2525がバラツキのない動作を行うよう調整を行うもので、調整を行ってから樹脂パッケージ4025による再パッケージが行われる。なお、これに代えて、調整部4036dの調整操作部または調整回路パターンが樹脂パッケージ4025の表面に露出するよう再パッケージし、組み立て後に調整を行えるよう構成してもよい。
図67の実施例44では、実施例42と同様にして、携帯電話4001の側面および上面4007aから内側に延びる支持構造4000aが設けられ、その穴に再パッケージにより形成した振動ユニットの樹脂パッケージ4025の部分が差し込まれることにより圧電バイモルフ素子2525が保持される。なお、既に述べたように実施例44では、端子2525bが設けられている方の一端側が支持され、端子2525bが設けられていない方の一端2525cは自由振動端となる。そして一端2525cの自由振動の反作用が樹脂パッケージ4025から支持構造4000aを介して携帯電話4001の筐体に伝達される。
本発明の各実施例に示した種々の特徴はその利点を活用できるかぎり、自由に置き換えまたは組合せが可能である。例えば、図67の実施例44は、圧電バイモルフ素子2525を上面に平行に支持するとともに、その主振動方向は、矢印25hに示すように、GUI表示部3405の表示面に垂直な方向となっている。しかし、実施例44に示した圧電バイモルフ素子2525と回路4036との一体化パッケージ構造は、図67の配置に限るものではなく、図65(C)および図65(D)に示した実施例42の変形例、および、図66(A)から図66(D)に示した実施例43およびその変形例のような支持配置においても採用できるものである。その採用は、図65(A)と図67(A)との関係に準じて行えばよく、いずれの場合も、図65(A)と同様にして圧電バイモルフ素子2525における端子2525bの設けられている側の一端が支持側となる。
また、図65の実施例42から図67の実施例44における支持構造3800a、3900aおよび4000aについても、携帯電話4001の側面および上面から内側に延びるものに限らず種々の支持構造が可能である。例えば、支持構造を、側面または上面の一方のみから延びるよう構成してもよい。さらには、正面または背面のいずれかから延びるもの、正面と上面から延びるもの、裏面と上面から延びるもの、側面と正面から延びるもの、側面と裏面から延びるもの、上面と側面と正面の三方の面からの延長として角部の裏側から延びるもの、等種々の構造が可能である。いずれの場合も、圧電バイモルフ素子2525またはこれと一体の樹脂パッケージ4025の支持部を角部近傍の筐体内側に設けることにより、角部が衝突に弱い構造となることを避けつつ、他端の自由振動の反作用により角部を効率よく振動させることができる。
さらに、本発明の各実施例に示した種々の特徴は、必ずしも個々の実施例に特有のものではなく、それぞれの実施例の特徴は、その利点が活用可能な限り、適宜、変形して活用したり、組合せて活用したりすることが可能である。例えば、図1の実施例1、図5の実施例2、図6の実施例3および図55の実施例35では、それぞれ右耳用と左耳用に2つの圧電バイモルフ素子を携帯電話内に設けている。しかしながら複数方向から所望の軟骨伝導を得るために携帯電話の複数個所に複数の圧電バイモルフ素子をそれぞれ設ける例はこれらに限るものではない。一方、図61の実施例39、図62の実施例40、図65(D)における実施例42の第2変形例および図66(D)における実施例43の第2変形例では、側面と正面、上面と正面など複数の方向に軟骨伝導を生ぜしめる場合、1つの圧電バイモルフ素子の主振動方向を斜めにして振動成分を分割しているが、複数の方向に軟骨伝導を生ぜしめる構成はこれに限るものではない。
図68は、本発明の実施の形態に係る実施例45に関する断面図であり、上に述べた側面と正面、上面と正面など複数の方向に軟骨伝導を生ぜしめる構成に関する他の例を示すものである。具体的には、図68(A)に示す実施例45の携帯電話4101aおよび図68(B)に示すその変形例の携帯電話4101bでは、図62の実施例40のように1つの圧電バイモルフ素子の振動成分を分割するのに代え、図55の実施例35等に倣って2つの圧電バイモルフ素子を採用している。そして、これら圧電バイモルフ素子4124および4126の主振動方向が正面と側面、または正面と上面にそれぞれ平行となるよう互いに90度異ならせて携帯電話筐体の内側に支持している。これによって、図62の実施例40と同様にして、側面と正面、上面と正面など複数の方向に軟骨伝導を生ぜしめている。図68の実施例45は、2つの圧電バイモルフ素子を採用する点以外は図62の実施例40と構成が共通なので同一部分に同一番号を付し、残余の説明を省略する。因みに、図68(A)および図68(B)は、それぞれ図62(A)および図62(C)に対応している。
なお、図68では、2つの圧電バイモルフ素子の長手方向が平行になる配置を例示しているが、複数の圧電バイモルフ素子の配置はこれに限るものではない。例えば、一方が上面に沿い、他方が側面に沿うごとく2つの圧電バイモルフ素子の長手方向が互いに直交する配置も可能である。さらに、主振動方向を異ならしめた複数の圧電バイモルフ素子の支持は、図68のように携帯電話筐体の内側に限るものではなく、例えば図48から図50に示した実施例30、31およびその変形例のごとく、筐体外側で支持してもよい。
図69は、本発明の実施の形態に係る実施例46に関する斜視図および断面図であり、携帯電話4201として構成される。なお、実施例46についても、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525の配置およびその保持構造を除き図58から図60に示した実施例38と共通なので、説明に必要な部分以外の図示を省略するとともに図示部分については、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図69(A)は、実施例44の携帯電話4201をその正面からみた斜視図であり、携帯電話4201を誤って落下させたとき等に衝突に晒されやすい4つの角に、プロテクタとなる弾性体部4263a、4263b、4263cおよび4263dが設けられている。また上側の2つの角にある弾性体部4263a、4263bの内側は圧電バイモルフ素子の保持部を兼ねるとともに弾性体部4263a、4263bの外側は耳軟骨に接触する軟骨伝導部を兼ねている。このため、少なくとも弾性体部4263a、4263bについては、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造、または、透明梱包シート材などにみられるような一層の空気泡群を合成樹脂の薄膜で分離密封した構造など)が採用される。
図69(B)は、図69(A)のB1−B1切断面にて携帯電話4201を正面および側面に垂直な面で切断した断面図である。図69(B)から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525の両端は弾性体部4263a、4263bの内側によって支持されている。なお、弾性体部4263aは圧電バイモルフ素子2525の端子2525b側を支持しており、端子2525bと回路3836とを接続するフレキシブルな配線3836aが通っている。
弾性体部4263a、4263bは、携帯電話4201の筐体に固着支持されているが、弾性体部4263a、4263bの弾性により、圧電バイモルフ素子2525の両端には振動による動きの自由度がある程度確保され、圧電バイモルフ素子2525の振動の阻害を低減している。また、圧電バイモルフ素子2525の中央部はどこにも接触しておらず、自由振動が可能となっている。弾性体部4263a、4263bの外側は携帯電話4201の角部外壁をなし、外部との衝突のプロテクタとなるとともに耳軟骨に接触する軟骨伝導部を兼ねている。これによって、例えば図2(A)および図2(B)における実施例1の説明のように、右耳および左耳のいずれに対しても、軟骨伝導のために携帯電話4201を接触することが可能となる。さらに、携帯電話4201の筐体と弾性体部4263a、4263bは音響インピーダンスが異なるため、弾性体部4263a、4263bから携帯電話4201の筐体への伝導成分を低減でき、弾性体部4263aまたは4263bから耳軟骨への効率的な軟骨伝導を実現することができる。
図69(C)は、図69(A)または図69(B)に示すB2−B2切断面にて携帯電話4201を正面および上面に垂直な面で切断した断面図である。図69(C)からも、弾性体部4263a、4263bが圧電バイモルフ素子2525を保持して携帯電話4201の筐体に固着支持されていること、およびその外側が携帯電話4201の角部外壁をなし、外部との衝突のプロテクタとなるとともに耳軟骨に接触する軟骨伝導部を兼ねていることがわかる。なお、図69(C)から明らかなように、実施例46においては、下側の2つの角にある弾性体部4263cおよび4263dは専らプロテクタとして機能し、携帯電話4201の筐体に被せられる構造となっている。
図70は、本発明の実施の形態に係る実施例47に関するものであり、図70(A)はその上端側の一部を示す斜視図であるとともに、図70(B)は、図70(A)のB−B断面を示す断面図である。実施例70も、携帯電話4301として構成されており、圧電バイモルフ素子2525が携帯電話側面に嵌め込まれる構造をとる。この構造は、図48に示す実施例30と共通するところが多いので、共通する部分には同一番号を付して説明を省略する。なお、図70では、図48と同様にして、軟骨伝導振動源2525に音声信号を入力するための構成等の図示と説明を省略している。
図70の実施例47が図48の実施例30と異なるのは、圧電バイモルフ素子2525の振動を耳軟骨に伝達する部分の構造である。すなわち、図70の実施例47では、携帯電話4301の側面に僅少の段差(例えば0.5mm)のある凹部4301aが設けられており、この凹部4301aの底部に圧電バイモルフ素子2525の振動面が来るよう配置されている。なお、圧電バイモルフ素子2525の振動面は凹部4301aの底部に露出していてもよいが、実施例47では、薄い保護層4227で圧電バイモルフ素子2525を覆うようにしている。なお、この保護層4227は圧電バイモルフ素子2525の振動による振動面の伸縮を阻害しないようにするため、弾性を有する材質のものが貼り付けまたは塗布される。
上記の構造により、圧電バイモルフ素子2525の振動面を可能な限り直接的に耳軟骨に接触させることが可能となるとともに圧電バイモルフ素子2525を外部との衝突によって損傷するのを保護することができる。つまり、圧電バイモルフ素子2525は凹部4301aの底に配置されていて、携帯電話4301筐体の外面から段差分だけ低い位置にあり、携帯電話筐体の側面が外部と衝突しても、段差のために圧電バイモルフ素子2525が直接外部に衝突することがない。なお、図70(A)に示すように、実施例47では、角部の衝突により圧電バイモルフ素子2525が損傷することがないよう、凹部4301aは携帯電話4301の側面において角部から若干下がったところに設けられている。耳軟骨は柔らかいので、凹部4301aの底部に圧電バイモルフ素子2525の振動面が来るよう配置したとしても、僅少の段差のところで容易に変形して圧電バイモルフ素子2525の振動面またはその被覆面に接することができる。
本発明の各実施例に示した種々の特徴はその利点を活用できるかぎり、自由に変形、置き換えまたは組合せが可能である。例えば、図69の実施例46では、圧電バイモルフ素子2525の中心に対して対称となるよう弾性体部4263a、4263bを配しているが、圧電バイモルフ素子2525の支持はこのような配置に限られるものではなく、圧電バイモルフ素子2525の中心が対向する角部のいずれかに近くなるよう偏芯する配置も可能である。例えば、圧電バイモルフ素子2525はその中心に対して完全に対称ではなく、端子2525bのある側とない側で重量および振動の自由度に若干の差がある。また、端子2525b側を支持する弾性体部4263aには配線3836aが通っていて回路3836に通じている。圧電バイモルフ素子2525を両角部の間で偏芯させて支持する構成は、上記のような非対称性の補償に有効である。また弾性体部4263a、4263bのそれぞれの長さは、圧電バイモルフ素子2525の長さおよび携帯電話4201の筐体の幅によって決定する必要がある。換言すれば、弾性体部4263aおよび4263bはそれぞれ携帯電話4201の筐体の両角部外面から圧電バイモルフ素子2525の両端にまで届く長さを必要とする。圧電バイモルフ素子2525を両角部の間で偏芯させて支持する構成は、携帯電話内の実装部品のレイアウトを考慮しながら上記のような長さの調整を行う上でも有効である。なお、弾性体部4263aまたは4263bが長くなる場合は、弾性体部4263aまたは4263bを筐体内面に接しないよう内側に延長して圧電バイモルフ素子2525の端部に達するよう構成することで、圧電バイモルフ素子2525の端部の振動の自由度を増加させることも可能である。
図71は、本発明の実施の形態に係る実施例46の変形例に関する斜視図および断面図であり、上記のように弾性体部が長くなる場合の構成の実例を示すものである。つまり、図71に示すように、弾性体部4263a、4263bが長くなる場合、携帯電話4201の筐体内面に接しないよう弾性体部4263a、4263bを内側に延長した延長部4263e、4263fを設け、これら延長部4263e、4263fによって、圧電バイモルフ素子2525の両端部を保持する構成を採用する。この構成によれば、延長部4263e、4263fは携帯電話4201の筐体内面に接していないので、弾性変形が容易であり、このような延長部4263e、4263fによって、圧電バイモルフ素子2525の両端部を保持することにより、圧電バイモルフ素子2525の振動の自由度を増加させることができる。図71のその他の構成は、図69と共通なので、共通する部分に同一番号を付して説明を省略する。
本発明の各実施例に示した種々の特徴はその利点を活用できるかぎり、自由に変形、置き換えまたは組合せが可能である。例えば、上記の各実施例では、軟骨伝導振動源を圧電バイモルフ素子等からなるものとして説明してきた。しかしながら、特に圧電バイモルフ素子特有の構成に関するものとして説明している場合を除き、本発明の種々の特徴は、軟骨伝導振動源として圧電バイモルフ素子を採用する場合に限るものではなく、電磁型振動子、超磁歪素子等、他の種々の素子を軟骨伝導振動源に採用した場合においてもその利点を享受できるものである。
図72は、本発明の実施の形態に係る実施例48に関する斜視図および断面図であり、携帯電話4301として構成される。そして、実施例48は、図69の実施例46の構成において、軟骨伝導振動源として電磁型振動子を採用した場合の例となっている。図72(A)は、実施例48の携帯電話4301をその正面からみた斜視図であり、外観は、図69(A)における実施例46の斜視図と同様である。つまり、実施例48においても、携帯電話4301を誤って落下させたとき等に衝突に晒されやすい4つの角に、プロテクタとなる弾性体部4363a、4363b、4363cおよび4363dが設けられている。また上側の2つの角にある弾性体部4363a、4363bは軟骨伝導振動源の保持部を兼ねるとともに弾性体部4363a、4363bの外側が耳軟骨に接触する軟骨伝導部を兼ねている。そして、弾性体部4363a、4363bは、実施例46と同様、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造、または、透明梱包シート材などにみられるような一層の空気泡群を合成樹脂の薄膜で分離密封した構造など)が採用される。
図72(B)は、図72(A)のB−B切断面にて携帯電話4301(図72(B)では4301aと表記)を正面および側面に垂直な面で切断した断面図である。図72(B)から明らかなように、弾性体部4363a、4363bには、それぞれ、電磁型振動子4326a、4324aが埋め込まれている。またその主振動方向は、矢印25mに示すようにGUI表示部が設けられる携帯電話4301の正面に垂直な方向である。電磁型振動子4326a、4324a等の軟骨伝導振動源を弾性体部4363a、4363bに埋め込む構成は、上記のように弾性体部4363a、4363bがプロテクタ機能と軟骨伝導部機能を兼ねるとともに、図17の実施例で説明したように、軟骨伝導振動源を衝撃から守る緩衝機能をも兼ねる。
図72(B)における実施例48のように、弾性体部4363a、4363bにそれぞれ別の電磁型振動子4326a、4324aを設けた構成では、電磁型振動子4326aおよび4324aを独立に制御できる。従って、図1から図4に示した実施例1と同様にして、加速度センサによって検知される重力加速度によって、携帯電話4301の傾き方向を検知し、弾性体部4363a、4363bのいずれが耳に当てられているか(つまり、図2に示すように右耳と左耳のいずれに携帯電話の角部が当てられているか)に従って、傾斜下側角にある方の電磁型振動子を振動させて他方をオフとするような構成にすることができる。これは、後述する変形例でも同様である。
図72(C)は、実施例48の第1変形例の断面図であり、図72(B)と同様にして、図72(A)のB−B切断面にて携帯電話4301(図72(C)では4301bと表記)を正面および側面に垂直な面で切断した断面図である。第1変形例も実施例48と同様にして、弾性体部4363a、4363bには、それぞれ、電磁型振動子4326b、4324bが埋め込まれている。但しその主振動方向は、矢印25nに示すように携帯電話4301の側面に垂直な方向となっている。その他の点は、図72(B)の実施例48と同様である。
図72(D)は、実施例48の第2変形例の断面図であり、図72(B)と同様にして、図72(A)のB−B切断面にて携帯電話4301(図72(D)では4301cと表記)を裏面および側面に垂直な面で切断した断面図である。第2変形例も実施例48と同様にして、弾性体部4363a、4363bには、それぞれ、電磁型振動子4326c、4324cが埋め込まれている。但しその主振動方向は、矢印25pに示すように携帯電話4301の側面から45度傾いた方向となっている。このため、図66(D)における実施例43の第2変形例と同様にして、振動成分が側面に垂直な方向およびこれと直交する正面に垂直な方向に分解され、弾性体部4363aまたは4363bをいずれの方向から耳軟骨に接触させても同程度の軟骨伝導を得ることができる。その他の点は、図72(B)の実施例48と同様である。
図72(E)は、実施例48の第3変形例の断面図であり、図72(B)と同様にして、図72(A)のB−B切断面にて携帯電話4301(図72(E)では4301dと表記)を正面および側面に垂直な面で切断した断面図である。第3変形例では、弾性体部4363a、4363bに、それぞれ、電磁型振動子4326d、4326eおよび4324d、4324eが埋め込まれている。そしてその振動方向は、電磁型振動子4326dおよび4324dについては矢印25dで示す側面に垂直な方向であるとともに、電磁型振動子4326eおよび4324eについては矢印25eで示す正面に垂直な方向となっている。これによって、図68に示した実施例45と同様にして、複数の異なる軟骨伝導振動源から側面と正面にそれぞれ軟骨伝導を生ぜしめている。
図72(E)における実施例48の第3変形例のように、電磁型振動子4324d等から側面に垂直な方向の振動を生成するとともに電磁型振動子4324e等から正面に垂直な方向の振動を生ぜしめる構成では、振動方向の異なる電磁型振動子4324dおよび4324eを独立に制御できる。具体的には、図3に示した実施例1の加速度センサ49のごとき加速度センサによって検知される重力加速度によって、携帯電話4301の傾き方向を検知し、弾性体部4363bが側面および正面のいずれから耳に当てられているかに応じて、耳に当てられている方の電磁型振動子を振動させるとともに他方の振動をオフとするよう構成することができる。なお、このような、振動方向の異なる複数の軟骨伝導振動源の独立制御は、図72(D)における電磁型振動子の場合に限らず、例えば、図68に示した実施例45の圧電バイモルフ素子4124、4126を採用した構成の場合でも可能である。
図73は実施例48およびその変形例の要部拡大断面図である。図73(A)は、図72(B)の弾性体部4363bおよび電磁型振動子4324aの部分を拡大したものであり、特に電磁型振動子4324aの詳細を図示している。電磁型振動子4324aは、そのハウジング内部にマグネット4324fおよび中央磁極4324gを保持するヨーク4324hがコルゲーションダンパ4324iで宙吊りになっている。また、マグネット4324fおよび中央磁極4324gにはギャップを有するトッププレート4324jが固着されている。これによって、マグネット4324f、中央磁極4324g、ヨーク4324hおよびトッププレート4324jは一体として電磁型振動子4324aのハウジングと相対的に図73で見て上下方向に可動となっている。一方、電磁型振動子4324aのハウジング内部にはボイスコイルボビン4324kが固着されており、これに巻装されたボイスコイル4323mがトッププレート4324jのギャップに入り込んでいる。この構成において、ボイスコイル4323mに音声信号が入力されるとヨーク4324h等と電磁型振動子4324aのハウジングとの間に相対移動が生じ、その振動が弾性体部4363bを介してこれに接触している耳軟骨に伝導する。
図73(B)は実施例48の第4変形例を示すものであり、図73(A)に対応する部分を拡大図示している。なお、電磁型振動子4324aの内部構成は図73(A)と同様なので、煩雑を避けるため各部の番号の図示を省略するとともに、その説明も割愛する。図73(B)における第4変形例では、携帯電話4401の角部に段差部4401gが設けられ、その外側に弾性体部4463bが被せられる構成となっている。そして、段差部4401gの正面側には窓部4401fが設けられ、この窓部4401fの部分に面する弾性体部4463bの裏側に電磁型振動子4324aが接着される。また、電磁型振動子4324aの反対側には弾性体よりなる緩衝部4363fが接着される。この緩衝部4363fは通常の振動状態では、段差部4401gの裏側に接触しないようギャップが設けられているとともに、弾性体部4463bが外部との衝突等により過度に押し込まれた時には段差部4401gの裏側に接触してそれ以上の弾性体部4463bが自由に押し込まれないよう阻止する緩衝材として作用する。これによって、弾性体部4463bの変形により電磁型振動子4324aが剥離する等の不都合を防止する。また、緩衝部4363fは、通常の振動状態におけるバランサーとしても機能するもので、電磁型振動子4324aの音響特性が最適となるようその形や重さなどを調節して設計することができる。また、緩衝部4363fは、バランサーとしてのみ機能する場合は、弾性体でなく、剛体であってもよい。なお、図73(B)には図示していないが、実施例48の第4変形例における反対側の角部(図72(B)の弾性体部4363aの位置に相当)も、図73(B)と左右対称の構成となっている。
図73(B)の第4変形例は、図72(B)の向きにおける電磁型振動子の配置に基づくものである。しかしながら、第4変形例のような構成はこれに限るものではなく、図72(C)から(E)における種々の向きにおける電磁形振動子の配置に応用できるものである。
図72および図73(A)に示した実施例48では、弾性体部4363bと電磁型振動子4324aは交換可能なユニット部品として構成される。そして、弾性体部4363bの外観が外部との衝突により損傷したときは、美観上、弾性体部4363bと電磁型振動子4324aをユニットとして交換することができる。この点は、図73(B)に示した実施例48の第4変形例でも同様であり、弾性体部4463b、電磁型振動子4324aおよび緩衝部4363fは交換可能なユニット部品として構成される。弾性体部4463bの外観が美観上損傷した時は全体をユニットとして交換できる。このようなユニット部品構成は、弾性体部4463b等がプロテクタとして構成され、外部との衝突が予想される角部に位置する部品であることと符合する有用な特徴である。さらに、衝突に晒される角部は軟骨伝導のための接触に好適な場所であることとも符号する有用な特徴でもある。さらに、軟骨伝導振動部を交換可能なユニット部品として構成した特徴は、携帯電話の他の部分の構成を基本的に共通にし、使用者の年齢等に応じた最適の音響特性の軟骨伝導振動部(例えば図73(B)に示した緩衝部4363fの形や重さを調節したもの)を取り付けた商品を提供する上でも有用である。また、音響特性だけでなく、携帯電話の他の部分の構成を基本的に共通にして、使用者の好みに応じ、例えば図72(B)から(E)のいずれの軟骨伝導振動部を採用するかを注文に応じ変更して商品提供する上でも有用である。
角部の弾性体部に軟骨伝導振動源を設ける具体的な構成は、図73に図示したものに限らず、適宜、設計変更が可能である。例えば、図73(B)に示した緩衝部4363fは、電磁型振動子4324aの反対側に接着するのに代えて段差部4401gの裏側に接着してもよい。この場合、緩衝部4363fは、通常の振動状態では電磁型振動子4324aの反対側接触しないようギャップが設けられる。また、弾性体部4463bが外部との衝突等による押し込みに耐えられる場合は、緩衝部4363fを省略してもよい。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は、上記の実施例に限ることなく、その利点が享受できる限り他の実施形態においても実施可能である。また、各実施例の種々の特徴は、個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、上記実施例48およびその変形例においては、軟骨伝導振動部として電磁型振動子を採用し、異なる角の弾性体部には、独立して制御可能な別の電磁型振動子を設ける例を示した。しかし、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、既に述べたように、圧電バイモルフ素子を軟骨伝導振動部として採用した場合でも、図1の実施例1のように、異なる角に別に設けた軟骨伝導振動部を互いに独立して制御することができる。この場合、圧電バイモルフ素子を実施例48に準じて異なる角の弾性体部に設けることも可能である。逆に、軟骨伝導振動部として電磁型振動子を採用した場合であっても、図7の実施例4、図11の実施例5、図19の実施例10、図20の実施例11等のように、一つの電磁型振動子の振動を左右の角に伝達するよう構成することも可能である。この場合、軟骨伝導振動部が圧電バイモルフ素子であっても電磁型振動子であっても、実施例48に準じ、左右の角部への振動伝導体を弾性体で構成することが可能である。また、電磁型振動子の形状によっては、実施例46やその変形例に準じ、電磁型振動子の両側を左右の角部に設けた弾性体で支持するよう構成してもよい。
図74は、本発明の実施の形態に係る実施例49およびその変形例に関する斜視図および断面図であり、携帯電話4501として構成される。なお、実施例49は、後述する気導発生切換のための構成を除き図69の実施例46と共通なので、同一番号を付して説明を援用する。具体的に述べると、実施例49は、図74(A)から図74(D)に図示されており、そのうち図74(A)から図74(C)は実施例46に関する図69(A)から図69(C)に対応する。図74(D)は、図74(C)の要部拡大図である。また、図74(E)は実施例49の変形例に関する要部拡大図である。
図74(C)のB2−B2断面図から明らかなように、実施例49では、表示部3405を覆うように気導発生用の透明共鳴箱4563が設けられている。透明共鳴箱4563は中空で携帯電話4501内部側に一部に空気抜きの穴が設けられている。また、透明共鳴箱4563は極めて薄いので、使用者は透明共鳴箱4563を通して表示部3405を観察することができる。また、図74(B)および図74(C)から明らかなように圧電バイモルフ素子2525の中央部分には上下方向にスライド可能な振動伝導体4527が設けられている。そして、振動伝導体4527が図74(C)に示す実線で示す位置にあるときは圧電バイモルフ素子2525の中央部分から透明共鳴箱4563への振動伝達が断たれているとともに、振動伝導体4527が図74(C)に破線で示す位置にあって透明共鳴箱4563の上部に接しているときは、圧電バイモルフ素子2525の中央部分の振動が振動伝導体4527を介して透明共鳴箱4563に伝わることにより、透明共鳴箱4563全体から気導音が発生して透明共鳴箱4563全体が面スピーカとなる。この様子は、図74(D)の要部拡大図により明瞭に図示されている。なお、振動伝導体4527の上下は、携帯電話4501の外部の手動操作つまみ4527aを上下にスライドさせることによって行う。手動操作つまみ4527aは上下二位置を確定するためのクリック機構を有している。また、振動伝導体4527は、破線の位置にスライドさせられたとき、透明共鳴箱4563に効果的に圧接するよう、バネ性を有する。
上記のように、振動伝導体4527が図74(C)ないし(D)の破線で示す位置にある状態では、透明共鳴箱4563全体から気導音が発生するとともに弾性体部4263a、4263bから軟骨伝導が発生する。従って使用者は、弾性体部4263aまたは4263bを耳に当てて軟骨伝導により音を聞くことができるとともに、透明共鳴箱4563の設けられた表示部3405の任意の部分を耳に近づけるか当てるかして気導により音を聞くこともできる。このようにして、使用者の好みと状況に応じて多様な使用が可能となる。一方、振動伝導体4527が図74(C)ないし(D)に示す実線で示す位置にある状態では透明共鳴箱4563への振動伝達が断たれ、透明共鳴箱4563からの気導音発生を停止できるので、特に環境が静粛である状態において気導による音漏れのために周囲に迷惑をかけたりプライバシーが漏れたりすることを防止しながら、軟骨伝導により音を聞くことができる。
図74(E)における実施例49の変形例は、振動伝導体4527bを回転させることにより、圧電バイモルフ素子2525の中央部分から透明共鳴箱4563への振動伝達の断続を行うよう構成したものである。具体的には、振動伝導体4527bが図74(E)に示す実線で示す位置にあるとき振動伝導体4527bは圧電バイモルフ素子2525の中央部分および透明共鳴箱4563のいずれからも離れており、振動伝達が断たれる。一方、振動伝導体4527bが時計方向に回転させられて図74(E)に破線で示す位置にあるときは、振動伝導体4527bは圧電バイモルフ素子2525の中央部分および透明共鳴箱4563の上部のいずれにも接し、圧電バイモルフ素子2525の中央部分の振動が振動伝導体4527bを介して透明共鳴箱4563に伝わる。その他の点は、図74(A)から図74(D)の実施例49と同様である。なお、振動伝導体4527bの回転は、携帯電話4501の外部の手動操作ダイヤル4527cを回転させることによって行う。手動操作ダイヤル4527cは回転の二位置を確定するためのクリック機構を有している。また、振動伝導体4527bもバネ性を有し、破線の位置に回転させられたとき、圧電バイモルフ素子2525の中央部分および透明共鳴箱4563の上部に効果的に圧接する。
上記のような、軟骨伝導と気導の切換えは図74に示した実施例49およびその変形例に限るものではなく、種々の構成が可能である。例えば、図74では、圧電バイモルフ素子2525および透明共鳴箱4563を固定し、その間の振動伝導体4527または4527bを移動させることにより振動の断続を行っている。しかしながら、これに代えて、圧電バイモルフ素子2525および透明共鳴箱4563の少なくとも一方自体を可動とすることによって両者間の振動の断続を行うことも可能である。このとき移動させるのは、圧電バイモルフ素子2525または透明共鳴箱4563の少なくとも一部でもよい。さらには、図74では、軟骨伝導プラス気導の場合と軟骨伝導のみ(厳密には若干の気導成分も存在するが、簡単のため「軟骨伝導のみ」と称する。以下同様。)の場合との切換えの例を示しているが、これに変えて、軟骨伝導のみの場合と気導のみの場合との切換え、または軟骨伝導プラス気導の場合と気導のみの場合との切換えを行うよう構成することも可能である。また、図74では、手動切換えの例を示したが、環境が静粛か否かを判別する騒音センサを設けるとともに騒音センサの出力に基づいて振動伝導体4527または4527bを自動駆動させることにより、騒音センサの検知する騒音が所定以下であるときは、軟骨伝導プラス気導の場合を軟骨伝導のみの場合に自動切換えするよう構成することも可能である。
図75は、本発明の実施の形態に係る実施例50に関するブロック図であり、携帯電話4601として構成される。なお、実施例50は、図72(E)に断面を示す実施例48の第3変形例の構成をベースに、その電磁型振動子4326d、4326e、4324dおよび4324eを、図3における実施例1のブロック図とほぼ共通する構成によって制御するようにしたものであり、配置説明の必要上、電磁型振動子の部分については、断面図を混在させて図示している。実施例50は上記のように構成されるので、図75においては、図72(E)および図3と共通の部分に共通の番号を付し、必要のない限り説明を割愛する。なお、実施例50においては、電磁型振動子4326d、4326e、4324dおよび4324e以外に受話部が設けられないので、図75に図示される位相調整ミキサー部36、右耳用駆動部4624、左耳用駆動部4626、気導低減自動切換部4636、電磁型振動子4326d、4326e、4324dおよび4324eは、電話機能部45における受話部(図3では、受話部13)を構成する。以上のようにして構成される実施例50は、実施例49に示した軟骨伝導と気導の切換えに関する別実施例となっており、切換えを電気的かつ自動的に行うものである。以下この点を中心に説明を行う。
図72(E)でも説明したように、図75の実施例50は、複数の異なる電磁型振動子4326e、4326d、4324eおよび4324dから側面と正面にそれぞれ軟骨伝導を生ぜしめる構成となっている。そして、弾性体部4363aに埋め込まれている電磁型振動子4326d、4326eの組は左耳用駆動部4626によって制御されるとともに、弾性体部4363bに埋め込まれている電磁型振動子4324d、4324eの組は右耳用駆動部4624によって制御される。このような構成において、第1実施例と同様、弾性体部4363aおよび弾性体部4363bのいずれが耳に当てられている状態にあるかが加速度センサ49によって検知され、右耳用駆動部4624および左耳用駆動部4626のいずれかがオンされて他方はオフされる。これに伴って、電磁型振動子4326d、4326eの組および電磁型振動子4324d、4324eの組のいずれか一方が振動可能となるとともに、他方は振動不可となる。
図75の実施例50では、さらに、環境が静粛か否かを判別する環境騒音マイク4638が設けられている。そして、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以上であるときは、制御部39からの指令により気導低減自動切換部4636が機能して電磁型振動子4326dおよび4326eの双方、または電磁型振動子4324dおよび4324eの双方を振動させる。一方、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以下であると制御部39が判断した静粛状況では、気導低減自動切換部4636の機能により電磁型振動子4326dのみ、または電磁型振動子4324dのみが振動させられて、電磁型振動子4326eおよび4324eの振動は停止させられる。なお、環境騒音の大小の検知の目的のためには図75のような専用の環境騒音マイク4638を別設するのに代えて、電話機能部45の送話部23におけるマイク出力を流用して騒音成分を抽出してもよい。この抽出は、マイク出力の周波数スペクトル分析や音声が途切れているときのマイク出力の利用、等により可能である。
次に、上記構成の意義について説明する。図72(E)でも述べたように、図75の実施例50における電磁型振動子4326dおよび4324dの振動方向は側面に垂直な方向であるとともに、電磁型振動子4326eおよび4324eの振動方向は、正面に垂直な方向である。そして、電磁型振動子4326eおよび4324eは表示部5等が配置される正面に垂直な方向に振動するため、携帯電話4601において面積の大きい正面全体が共振し、電磁型振動子4326dおよび4324dによる側面の振動に比べて気導成分が大きくなる。このため、実施例49に対応させて言えば、電磁型振動子4326eおよび4326dの双方が振動する場合、または電磁型振動子4324eおよび4324dの双方が振動する場合が、「軟骨伝導プラス気導の場合」に相当する。一方、電磁型振動子4326dのみが振動する場合、または電磁型振動子4324dのみが振動する場合が、「軟骨伝導のみの場合」に相当する。なお、実施例49でも述べたように「軟骨伝導のみの場合」でも多少の気導成分が存在するので、この場合分けは、あくまで気導成分の大きさの相対比較によるものである。
以上のようにして、電磁型振動子4326eおよび4326dの双方が振動する場合、または電磁型振動子4324eおよび4324dの双方が振動する場合、使用者は、弾性体部4263aまたは4263bを耳に当てて軟骨伝導により音を聞くことができるとともに、携帯電話4601の正面の任意の部分を耳に近づけるか当てるかして気導により音を聞くこともできる。このようにして、使用者の好みと状況に応じて多様な使用が可能となる。一方、電磁型振動子4326dのみが振動する場合、または電磁型振動子4324dのみが振動する場合は、気導発生が相対的に小さくなり、特に環境が静粛である状態において気導による音漏れのために周囲に迷惑をかけたりプライバシーが漏れたりすることを防止しながら、軟骨伝導により音を聞くことができる。また、実施例50では、環境騒音マイク4638と気導低減自動切換部4636の機能により、環境が静粛である状態における気導低減が自動的に行われる。
図75の実施例50は、電磁型振動子を採用して構成されているが、軟骨伝導と気導との切換えを電気的かつ自動的に行う構成は、軟骨伝導振動源として電磁型振動子を採用した場合に限るものではない、例えば、図68の実施例45のように、独立に制御可能な圧電バイモルフ素子が互いに異なった方向に複数設けられている場合、これらの制御を実施例50に準じて自動的に行うことが可能である。また、図75の実施例50において、図74の実施例49におけるような気導発生用の透明共鳴箱4563を設け、電磁型振動子4326eおよび電磁型振動子4324eの一方または双方をこのような透明共鳴箱4563に常に接触させておくことで携帯電話4601の正面から積極的に気導を発生させるよう構成することも可能である。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は、上記の実施例に限ることなく、その利点が享受できる限り他の実施形態においても実施可能である。また、各実施例の種々の特徴は、個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、本発明では、軟骨伝導のための耳との接触部を携帯電話の角部に設けている。この特徴を、例えば図7の実施例4のようなスマートフォンとして構成された携帯電話301(以下、簡単のためスマートフォン301と称する)について考える。図7のようにスマートフォン301ではその正面にGUI機能を備えた大画面表示部205を有し、通常の受話部13がスマートフォン301の上隅に追いやられる配置となっている。しかも通常の受話部13は、スマートフォン301部の中央部分に設けられているために、スマートフォン301を耳に当てる場合、大画面表示部205が頬骨に当たって受話部13を耳に近づけ難い配置となっているとともに、相手の声を良く聞こうと通常の受話部13を耳に強く押し当てると大画面表示部205が耳や頬に接触して皮脂などで汚れる結果を招く。これに対し、図7においてスマートフォン301の角部に右耳用振動部224および左耳用振動部226を配置すると、実施例1に関する図2に示すように、スマートフォン301の角部が耳珠32近辺の外耳道口周辺の窪みに納まる。これによって、スマートフォン301の音声出力部を容易に外耳道口周辺に押し当てることが可能となり、強く押し当てる場合でも、大画面表示部205が耳や頬に接触するのを自然に避けることができる。このような、音声出力部の携帯電話角部への配置は、軟骨伝導による場合に限らず、通常の気導スピーカによる受話部の場合であっても有用である。なお、この場合、スマートフォンの上部の2つの角に右耳用と左耳用に気導スピーカをそれぞれ設けることが望ましい。
また、既に述べたように、軟骨伝導は、軟骨への押圧力の大小により伝導が異なり、押圧力を大きくするとより効果的な伝導状態を得ることができる。これは、受話音が聞き取りにくければ携帯電話を耳に押し当てる力を強くするという自然な行動を音量調節に利用できることを意味する。そして、さらに耳穴が塞がれる状態にまで押圧力を増せば、耳栓骨導効果によりさらに音量が大きくなる。このような機能は、例えば取扱説明書によって使用者に説明しなくても、使用者が自然な行動を通じて自ずからその機能を理解することができる。このような使用上の利点は、音声出力部として軟骨伝導振動部を採用せず、通常の気導スピーカによる受話部の場合であっても擬似的に実現することができ、有用な携帯電話の特徴とすることができる。
図76は、本発明の実施の形態に係る実施例51に関するブロック図であり、携帯電話4701として構成される。なお、実施例51は、上記のように音声出力部として軟骨伝導振動部を採用せず、通常の気導スピーカを採用し、自然な行動による自動音量調節を擬似的に実現することができるよう構成したものである。また、外観配置を説明する必要上、ブロック図の中に携帯電話の概観図を混在させて図示している。なお、図76のブロック図の大半は、図3の実施例1と共通し、概観の大半は図7の実施例4に共通するので、共通の部分には共通の番号を付し、必要のない限り説明を割愛する。なお、図76に図示される音量/音質自動調整部4736、右耳用駆動部4724、左耳用駆動部4726、右耳用気導スピーカ4724a、左耳用気導スピーカ4726aは、電話機能部45における受話部(図3では、受話部13)を構成する。
図76における実施例51の右耳用気導スピーカ4724aは右耳用駆動部4524によって制御されるとともに、左耳用気導スピーカ4726aは右耳用駆動部4526によって制御される。そして、実施例50と同様にして、右耳用気導スピーカ4724a、左耳用気導スピーカ4726aのいずれが耳に当てられている状態にあるかが加速度センサ49によって検知され、右耳用駆動部4524および左耳用駆動部4526のいずれかがオンされて他方はオフされる。これに伴って、右耳用気導スピーカ4724a、左耳用気導スピーカ4726aのいずれか一方がオンとなるとともに他方はオフとなる。
右耳用気導スピーカ4724aおよび左耳用気導スピーカ4726aの近傍には、それぞれ右耳用押圧センサ4742aおよび左耳用押圧センサ4742bが設けられており、右耳用気導スピーカ4724aまたは左耳用気導スピーカ4726aのうちのオンされている方の押圧を検知する。そして左右押圧センサ処理部4742は、検知された押圧の大きさを分析し、制御部39に音量/音質制御データを送る。制御部39は音量/音質制御データに基づき、音量/音質自動調整部4736に指令して右耳用駆動部4524または左耳用駆動部4526のうちのオンされている方の音量を自動調整させる。音量は、基本的には押圧が大きいほど音量が大きくなるよう調整され、受話音が聞き取りにくければ携帯電話4701を耳に押し当てる力を強くするという自然な行動への応答として適するよう設定される。
音量/音質自動調整部4736の機能の詳細について補足すると、押圧変化による不安定な音量変化を避けるため、まず、音量変化は押圧の増加にのみ応答して音量が増加方向にのみ段階変化するよう構成される。さらに、意図しない音量変化を避けるため、音量/音質自動調整部4736は、所定の押圧増加が平均的に所定時間(例えば0.5秒)以上続いた時にのみ応答して段階的に音量を増加させるよう構成される。また、音量/音質自動調整部4736は、押圧が所定以下(右耳用気導スピーカ4724aおよび左耳用気導スピーカ4726aのうちオンになっている方を耳から離した状態に相当)に下がった状態が所定時間(例えば1秒)以上続いたことを検知した場合に、音量を一気に標準状態に低下させるよう構成される。これによって使用者は、音量を増加させすぎた場合などにおいて意図的に携帯電話4701を耳から少し離し(これも、音が大きすぎれば音源を耳から離すという自然な動作に合致する)、音量を標準状態にリセットしたあと再度押圧力を増して、所望の音量とすることができる。
音量/音質自動調整部4736はさらに、音質の自動調整も可能である。この機能は、図3において実施例1に関連して説明した環境騒音マイク38に関連する。すなわち、実施例1では、環境騒音マイク38が拾った環境騒音は波形反転された上で右耳用軟骨伝導振動部24および左耳用軟骨伝導振動部26にミキシングされ、受話部13経由の音声情報に含まれる環境騒音をキャンセルして通話相手の音声情報を聞き取りやすくする。実施例51における音量/音質自動調整部4736はこの機能を利用し、押圧が所定以下のときは騒音キャンセル機能をオフするとともに、押圧が所定以上になると騒音キャンセル機能をオンする。なお、騒音キャンセル機能は単なるオンオフだけでなく、環境騒音反転信号のミキシング量を段階的に調節することにより段階的または連続的に増減することも可能である。このようにして音量/音質自動調整部4736は左右押圧センサ処理部4742の出力に基づき、音量だけでなく、音質の自動調整も可能である。なお、図76の実施例51は、スマートフォンの角部に右耳用音声出力部および左耳用音声出力部配置する際の前述の利点が、軟骨伝導を採用する場合に限らず、通常の気導スピーカによる受話部を採用する場合でも享受できることを示す実施例である。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は、上記の実施例に限ることなく、その利点が享受できる限り他の実施形態においても実施可能である。また、各実施例の種々の特徴は、個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、図76の実施例51では、加速度センサ49の出力により右耳用気導スピーカ4724aおよび左耳用気導スピーカ4726aのいずれをオンするか決定しているが、右耳用押圧センサ4742aおよび左耳用押圧センサ4742bの出力を利用し、右耳用気導スピーカ4724aおよび左耳用気導スピーカ4726aのうち押圧の大きい方に対応する方をオンするとともに他方をオフするよう構成してもよい。
また、図76の実施例51では、右耳用気導スピーカ4724aおよび左耳用気導スピーカ4726aおよびこれに対応する右耳用押圧センサ4742aおよび左耳用押圧センサ4742bを設けているが、押圧による自動音量/音質調整の目的だけのためであれば、従来どおりの気導スピーカを携帯電話上部中央に一つ設け、これに対応して一つの押圧センサを設けてもよい。さらに、図76の実施例51では、音量/音質自動調整部4736による音質の自動調整の具体的構成として波形反転による環境騒音のキャンセルを示したが、このような構成に限るものではない。例えば、音量/音質自動調整部4736に環境騒音をカットするフィルタ(例えば低周波域カットフィルタ)を設け、押圧が所定以下のときはこのフィルタをオフするとともに、押圧が所定以上になるとこのフィルタ機能をオンするように構成してもよい。また、フィルタにより低周波域等をカットするのに代えて、低周波域の増幅率を落とす(または高周波域の増幅率を上げる)よう構成してもよい。このようなフィルタ機能または周波数域選択性増幅機能についても単なるオンオフだけでなく、フィルタ機能または周波数域選択性増幅機能を段階的に調節することにより、押圧に応じて段階的または連続的に環境騒音低減能力を変化させることも可能である。
図77は、本発明の実施の形態に係る実施例52に関する断面図であり、携帯電話4801として構成される。なお、図77では、軟骨伝導振動源としての圧電バイモルフ素子2525aおよび2525bの支持構造および配置を説明するために携帯電話4801の断面を図示するとともに、その制御に関する断面図内部は実際の配置ではなくブロック図で図示している。また、このブロック図部分は図3に示す実施例1のブロック図を基本とするものであって、共通部分については相互関係の理解に必要なものを除き基本的に図示を省略しており、図示している場合も同一部分には同一番号を付し、必要のない限り説明を省略する。
なお、図77の実施例52は、図74の実施例49および図75の実施例50と同様にして、「軟骨伝導プラス気導の場合」と「軟骨伝導のみの場合」とが切換えが可能な実施例として構成される。また、図77の実施例52は、図69の実施例46と同様にして、携帯電話4801を誤って落下させたとき等に衝突に晒されやすい4つの角に、プロテクタとなる弾性体部4863a、4863b、4863cおよび4863dを設けている。但し、弾性体部4863a、4863bによる圧電バイモルフ素子2525aおよび2525bの支持は、両端支持構造ではなく、図65の実施例42および図66の実施例43と同様にして、その片側をカンチレバー構造に支持したものである。以上のように、図77の実施例52はこれまで説明してきた種々の実施例の特徴に関連しているので、個々の特徴の説明については、対応する実施例の説明によって理解できるので、必要のない限り重複説明を避ける。
まず、図77の実施例52の構造と配置について説明すると、既に述べたように、携帯電話4801の4つの角には、プロテクタとなる弾性体部4863a、4863b、4863cおよび4863dが設けられている。そして、これらの弾性部材における角の外面は耳軟骨に当てたときに実質的な痛みを伴わないよう、滑らかな凸面状に面取りが施されている。この角部の形状は、後にも詳述するが、外耳道周辺軟骨に好適にフィットして快適な軟骨伝導による聴取を可能とする。
図77の実施例52では、上記のように右耳用の圧電バイモルフ素子2525bおよび左耳用の圧電バイモルフ素子2525aが採用され、図1から図4に示す実施例1と同様にして個別に制御可能である。圧電バイモルフ素子2525bおよび2525aは好適な周波数出力特性を得るため適度の長さを有するが、これら二つを携帯電話4801内にコンパクトに配置するため、図77に示すように右耳用の圧電バイモルフ素子2525bについては、これを横にして端子が設けられていない一端を弾性体部4863bに支持させている。一方、左耳用の圧電バイモルフ素子2525aについては、これを縦にして端子が設けられていない一端を弾性体部4863aに支持させている。(なお、右耳用と左耳用の圧電バイモルフ素子の縦横配置は上記と逆にしてもよい。)圧電バイモルフ素子2525bおよび2525aの他端にはそれぞれ端子が設けられているが、柔軟なリード線で制御部39と接続されているので、支持構造上は自由端となっている。このようにして圧電バイモルフ素子2525bおよび2525aの自由端が振動することによりその反作用が弾性体部4863bおよび弾性体部4863aに現れ、これに耳軟骨を接触させることにより軟骨伝導を得ることができる。なお、圧電バイモルフ素子2525bおよび2525aの主振動方向は図77における紙面に垂直な方向である。
次に、圧電バイモルフ素子2525bおよび2525aの制御について説明する。弾性体部4863bに支持される右耳用の圧電バイモルフ素子2525bはスイッチ4824aを介して右耳用アンプ4824によって駆動される。一方、弾性体部4863aに支持される左耳用の圧電バイモルフ素子2525aはスイッチ4826aを介して左耳用アンプ4826によって駆動される。位相調整ミキサー部36からの音声信号はそれぞれ右耳用アンプ4824および左耳用アンプ4826に入力されるが、左耳用アンプ4826への音声信号はスイッチ4836aを介して波形反転部4836bで波形反転された上で入力される。この結果、図77に図示の状態では、弾性体部4863aおよび弾性体部4863bから携帯電話4801の筐体には互いに位相の反転した振動が伝導して打ち消しあい、携帯電話4801の筐体表面全体からの気導音の発生が実質的に消失する。
一方、例えば弾性体部4863bに右耳の軟骨を接触させた場合は、弾性体部4863bから耳軟骨への直接軟骨伝導が生じるのに対し、弾性体部4863aの振動については一度携帯電話4801の筐体に伝わった後で弾性体部4863bに達し、耳軟骨に軟骨伝導として伝わる。従って、位相が反転している振動の強度に差が出るので、この差分が弾性体部4863bからの軟骨伝導として打ち消されることなく耳軟骨に伝わることになる。弾性体部4863aに左耳の軟骨を接触させた場合も同様である。従って、実施例52における図77に図示の状態は、図74の実施例49および図75の実施例50における「軟骨伝導のみの場合」に相当する状態となる。気導消失用ゲイン調節部4836cは、上記のような弾性体部4863aおよび弾性体部4863bから携帯電話4801の筐体への振動の打消しにより気導音の発生が最小となるよう左耳用アンプ4826のゲインを調節するものである。なお、以上のようなスイッチ4836a、波形反転部4836bおよび気導消失用ゲイン調節部4836cは左耳用アンプ4826側に設けるのに代えて右耳用アンプ4824側に設けるようにしてもよい。または、気導消失用ゲイン調節部4836cだけを右耳用アンプ4824側に設けるようにしてもよい。
図77の実施例52では、さらに、環境が静粛か否かを判別する環境騒音マイク4638が設けられている。そして、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以上であるときは、制御部39からの指令によりスイッチ4836aを図示の下側の信号経路に切換える。これによって、位相調整ミキサー部36からの音声信号は波形反転なしに左耳用アンプ4826に伝えられる。このとき、弾性体部4863aおよび弾性体部4863bから携帯電話4801の筐体に伝導した振動は打ち消されず、逆に二倍となって携帯電話4801の筐体表面全体からの気導音を発生させる。この状態は、図74の実施例49および図75の実施例50における「軟骨伝導プラス気導の場合」に相当する状態となる。なお、この状態は、筐体表面全体からの気導音が二倍になるので、テレビ電話を行っているとき等のように携帯電話4801を耳から離して音声を聞く場合に適しており、テレビ電話モードの場合は、環境騒音マイク4638の検知にかかわらず、制御部39からの指令によりスイッチ4836aを図示の下側の信号経路に切換える。
一方、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以下であると制御部39が判断した静粛状況では、制御部39からの指令によりスイッチ4836aを図示の状態に切換える。これによって、上記のように、弾性体部4863aおよび弾性体部4863bから携帯電話4801の筐体に伝導した振動は互いに打ち消しあい、気導音の発生が実質的に消失して、「軟骨伝導のみの場合」に相当する状態となる。
また、図77の実施例52では、第1実施例と同様、弾性体部4863aおよび弾性体部4863bのいずれが耳に当てられている状態にあるかが加速度センサ49によって検知され、制御部39の制御によりスイッチ4824aおよびスイッチ4826aを制御する事が可能である。そして、操作部9によって、加速度センサ49の検知状態にかかわらずスイッチ4824aおよびスイッチ4826aをともにオンしておく常時両側オンモードと、加速度センサ49の検知状態に基づいてスイッチ4824aおよびスイッチ4826aの一方をオンし他方をオフする片側オンモードとが切換えられるようになっている。片側オンモードでは、例えば弾性体部4863bに右耳があてられていればスイッチ4824aをオンするとともにおよびスイッチ4826aをオフする。弾性体部4863aに左耳があてられていればこの逆となる。
片側オンモードはさらに 環境騒音マイク4638の機能と組み合わせられており、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以上であるときは、加速度センサ49の検知状態に基づいてスイッチ4824aおよびスイッチ4826aの一方をオンし他方をオフする。一方、環境騒音マイク4638が検知する騒音が所定以下であると制御部39が判断した静粛状況では、制御部39からの指令により加速度センサ49の検知状態にかかわらずスイッチ4824aおよびスイッチ4826aをともにオンとするとともに、スイッチ4836aを図示の状態に切換え、弾性体部4863aおよび弾性体部4863bから携帯電話4801の筐体に伝導した振動が互いに打ち消し合うようにする。
図78は、図77の実施例52に関する斜視図および断面図である。図78(A)は、実施例52の携帯電話4801を正面から見た斜視図であり、携帯電話4801の四隅にプロテクタとして設けられた弾性体部4863a、4863b、4863cおよび4863dおける角の外面が滑らかな凸面状となるよう面取りされている様子を示す。上述のように、このような携帯電話4801の角部の外面形状は、弾性部材4863aまたは4863bを耳軟骨に当てたときに実質的な痛みを伴わないようにするとともに、携帯電話4801の角部が耳介内側の外耳道入口部周辺軟骨に好適にフィットし、快適な軟骨伝導による聴取を可能とする。また面取された角部が外耳道入口部を閉鎖することによって耳栓骨導効果を生み出し、携帯電話4801からの音声信号が外耳道内で増強されるとともに、外耳道入口部が閉鎖されることにより外界の騒音を遮断することによって騒音下で音声信号を聞きやすくする。
図78(B)は、図78(A)のB1−B1切断面にて携帯電話4801を正面および側面に垂直な面で切断した断面図であり、図78(C)は、図78(A)または図78(B)に示すB2−B2切断面にて携帯電話4801を正面および上面に垂直な面で切断した断面図である。図78(B)または図78(C)からも、弾性体部4863a、4863b、4863cおよび4863dにおける角の外面が滑らかな凸面状となるよう面取りされている様子がわかる。また、図78(B)または図78(C)において矢印25gで示すように圧電バイモルフ素子2525bの主振動方向は、GUI表示部3405の表示面に垂直な方向である。さらに図78(B)において矢印25mで示すように圧電バイモルフ素子2525aの主振動方向は、GUI表示部3405の表示面に垂直な方向である。
なお、実施例52では、図77における各スイッチ4824a、4826aおよび4836aはメカ的なスイッチのシンボルで図示しているが、実際には電子スイッチで構成するのが好適である。また、実施例52におけるこれらのスイッチは、常時両側オンモードと片側オンモードとの切換えの場合を除き、加速度センサ49や環境騒音マイク4638の検知結果に基づいて自動的に切換えられる例を示したが、操作部9によって任意に手動で切換えられるよう構成してもよい。また、これらのスイッチを適宜省略することも可能である。例えば、実施例52が常に図77に図示の接続状態となるよう単純化すれば、筐体表面全体からの気導音の発生が実質的に消失しているとともに、弾性体部4863aまたは弾性体部4863bを耳軟骨に接触させたときには軟骨伝導が生じる携帯電話が得られる。
以上に説明した各実施例の種々の特徴は個々の実施例に限られるものではなく、適宜他の実施例の特徴と入れ換えたり組合せたりすることができる。例えば、図77および図78の実施例52では、軟骨伝導振動源として圧電バイモルフ素子を採用しているが、軟骨伝導振動源を図72および図73の実施例48、または図75の実施例50、または図76の実施例51におけるような電磁型振動子等の他の振動子に置き換えてもよい。
図79は、図69の実施例46に基づいて構成された携帯電話の実測データの一例を示すグラフである。図79のグラフは、実施例46の携帯電話4201(外壁の内側の振動源からの振動が外壁表面に伝達される構成)を、実施例1の説明に用いた図2(A)又は図2(B)に準じ、耳輪への接触なしに、携帯電話4201の角部の外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させたときの外耳道入口部から1cm奥の外耳道内の音圧を周波数との関係で示すものである。グラフの縦軸は音圧(dBSPL)であり、横軸は対数目盛の周波数(Hz)である。また、グラフには、携帯電話4201の角部の外壁表面と外耳道入口部周辺軟骨の接触圧の関係において、非接触状態の音圧を実線で、かすかに触れた状態(接触圧10重量グラム)における音圧を破線で、携帯電話4201を通常使用する状態(接触圧250重量グラム)における音圧を一点鎖線で、接触圧の増加により外耳道が閉鎖された状態(接触圧500重量グラム)における音圧を二点鎖線で、それぞれ図示している。図示のように、音圧は非接触状態から接触圧10重量グラムでの接触により増加し、さらに250重量グラムへの接触圧増加により増加し、この状態からさらに500重量グラムに接触圧を増加させることで、音圧がさらに増加する。
図79のグラフから明らかなように、外壁表面と、外壁表面よりも内側に配置される振動源とを有し、振動源の振動を外壁表面に伝達する構成の携帯電話4201の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させたとき、非接触状態に比べ、外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(500Hz〜2300Hz)において少なくとも10dB増加していることがわかる。(実線で示す非接触状態と、一点鎖線で示す携帯電話4201を通常使用する状態とを比較参照。)
また、図79のグラフから明らかなように、携帯電話4201の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させたとき、接触圧の変化によって外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(500Hz〜2500Hz)において少なくとも5dB変化していることがわかる。(破線で示すわずかな接触状態と一点鎖線で示す携帯電話4201を通常使用する状態での接触状態とを比較参照。)
さらに、図79のグラフから明らかなように、携帯電話4201の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させることにより外耳道入口部を閉鎖(例えば耳珠外側に携帯電話4201の外壁表面を強く押し当てることで耳珠が折り返らせて外耳道を閉鎖)したとき、非接触状態に比べ、外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(300Hz〜1800Hz)において少なくとも20dB増加していることがわかる。(実線で示す非接触状態と、二点鎖線で示す外耳道が閉鎖された状態とを比較参照。)
なお、図79における測定は、すべて振動源の出力を変化させない状態におけるものである。また 耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させる状態として、図79における測定は、外壁表面を耳珠外側から接触させる状態で行っている。また、図79における外耳道が閉鎖された状態での測定は、上記のように耳珠を外側からより強く押圧することで耳珠が折り返ることにより外耳道を閉鎖する状態を作ることにより行っている。
上記のように、図79の測定は、図69に示した実施例46の携帯電話4201における外壁角部の表面を耳珠外側に接触させる状態で行っているが、実施例46の角部はプロテクタとなる弾性体部4263a、4263bとなっており外壁の他の部分と異なる材料で構成される。そして、振動源は弾性体部4263a、4263bによって構成される外壁角部の内面側に保持される。なお、携帯電話4201の外壁角部は、外部からの衝突に晒される部分であり、弾性体部4263a、4263bによって構成される場合においても、外壁の他の部分との間の相対ずれが生じないよう強固に接合されている。
なお、図79の測定グラフは、あくまでも一例であって、細かく見れば個人差がある。また、図79の測定グラフは現象の単純化および標準化のために外壁表面を耳珠外側に限って少ない面積で接触させる状態にて測定を行っている。しかしながら接触による音圧の増加は、軟骨との接触面積にも依存し、耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨に接触させる場合、外耳道入口部周りのより広い軟骨部分に接触させれば音圧の増加はさらに高まる。以上のことを考慮すれば、図79の測定グラフに示した数値は携帯電話4201の構成を示す一般性を持つものであって、不特定多数の被験者による再現性のあるものである。さらに、図79の測定グラフは、外耳道入口部を閉鎖する際に耳珠を外側から押圧することで接触圧を増して耳珠を折り返すことによるものであるが、携帯電話4201の角部を外耳道入口部に押し入れてこれを閉鎖した場合にも同様の結果が得られる。なお、図79の測定は、図69の実施例46の携帯電話4201のように振動源を外壁角部の内側に保持するものによる測定であるが、これに限るものではなく、他の実施例においても再現性のあるものである。例えば、図72に示したように振動源をプロテクタとなる弾性体部4363a、4363bの内部に保持する構成(例えば埋め込む構成)であっても再現性がある。
換言すれば、図79の測定グラフは、外壁表面よりも内側に配置される振動源を有し、振動源の振動を外壁表面に伝達する構成の携帯電話の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させたとき、非接触状態に比べ、外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(500Hz〜2300Hz)のうち少なくとも一部(例えば1000Hz)において少なくとも10dB増加するという本発明の携帯電話自体の特徴の了解に充分なものである。
また、図79のグラフは、携帯電話の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させたとき、接触圧の増加によって外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(500Hz〜2500Hz)のうち少なくとも一部(例えば1000Hz)において少なくとも5dB増加するという本発明の携帯電話自体の特徴の了解に充分なものである。
さらに、図79のグラフは、携帯電話の外壁表面を耳輪への接触なしに外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させることにより外耳道入口部を閉鎖したとき、非接触状態に比べ、外耳道入口部から1cm奥の外耳道内における音圧が音声の主要な周波数帯域(300Hz〜1800Hz)の少なくとも一部(例えば1000Hz)において少なくとも20dB増加するという本発明の携帯電話自体の特徴の了解に充分なものである。
また、図79のグラフにおける測定によって確認された本発明の携帯電話は、次の意義を持つものである。すなわち、本発明は、外壁表面よりも内側に配置される振動源と、ボリューム調整手段とを有し、振動源の振動を外壁表面に伝達するとともに、耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させることにより音を聞く携帯電話を提供するものであるが、その特徴は下記によって定義される。すなわち、騒音レベル(A特性音圧レベル)が45dB以下の静かな部屋において外耳道入口部に近接して外壁表面を非接触で設置し、ボリュームを最小にして1000Hzの純音を振動源から発生させるとともに外耳道入口部から1m離れた位置のラウドスピーカから1000Hzの純音がマスクされて聞こえなくなる限界レベルの1000Hz狭帯域雑音(1/3オクターブバンドノイズ)を発生させる。これは、1000Hz狭帯域雑音を順次大きくし、1000Hzの純音がマスクされて聞こえなくなる大きさを求めることにより確定する。次いで、1000Hz狭帯域雑音を限界レベルから10dB上げるが、本発明の携帯電話によれば、耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させることにより、ボリューム調整手段の調整変更なしに1000Hzの純音を聞くことができる。
さらに、1000Hz狭帯域雑音を上記のようにして求めた限界レベルから20dB上げたとき、本発明の携帯電話によれば、耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させて外耳道入口部を閉鎖することにより、ボリューム調整手段の調整変更なしに1000Hzの純音を聞くことができる。
図80は、耳の側面図および断面図であって、耳の構造の詳細と本発明の携帯電話との関係を示すものである。図80(A)は左耳30の側面図であり、一点鎖線による位置4201aは、携帯電話4201の角部を耳珠外側に接触させた状態を図示している。位置4201aは図79の測定を行った状態に相当する。一方、二点鎖線による位置4201bは、携帯電話4201の角部を外耳道入口部周りのより広い軟骨部分に接触させた状態の図示である。位置4201bでは、耳軟骨への接触により図79に示したよりも大きな音圧の増加が実現できる。
図80(B)は右耳28の断面図であり、携帯電話4201の角部から発生する振動源の振動が鼓膜28aに伝わる様子を図示している。なお、図80(B)の状態における携帯電話4201は、図80(A)の位置4201bに準じて外耳道入口部周りのより広い軟骨部分に接触させられている。(なお、断面図部分だけでは明らかでないが、この状態では、外耳道入口部は閉鎖されていないものとする。)携帯電話4201の角部から発生する振動28bは接触部分から外耳道入口部周りの軟骨に伝導し、次いで軟骨部外耳道表面から外耳道28cに気導音を発生させる。そしてこの気導音は外耳道28c内を進んで鼓膜28aに達する。なお、携帯電話4201の角部からは直接気導28dも発生し、やはり外耳道28c内を進んで鼓膜28aに達する。携帯電話4201が軟骨に非接触の状態で鼓膜28aに達するのはこの直接気導28dだけである。
ここで、図69の実施例46等で用いた圧電バイモルフ素子2525の周波数特性について補足する。本発明の実施例で用いている圧電バイモルフ素子2525の直接気導発生についての周波数特性はフラットなものではなく、ほぼ1kHz程度を境に低周波側の気導発生が相対的に高周波側のそれよりも小さいものを採用している。このような圧電バイモルフ素子2525の直接気導発生についての周波数特性は、圧電バイモルフ素子2525から直接軟骨を経由して外耳道内で気導音となる場合の周波数特性とよくマッチしている。即ち、軟骨伝導経由の気導音における周波数特性に従った外耳道内での音圧は、1kHz程度を境に低周波側の方が高周波側のそれよりも大きいので、上記のような直接気導発生周波数特性の圧電バイモルフ素子2525を用いた場合、両者が相補しあって結果とし鼓膜に達する音の周波数特性がフラットに近づくのである。このように、本発明では、軟骨伝導振動源として、軟骨伝導における周波数特性と逆傾向の気導音発生周波数特性を示すものを採用している。
このことを図69の実施例46の実測データである図79を例に具体的に説明する。図79のグラフは、図69に示した構造の圧電バイモルフ素子2525に対し、周波数を変えながら同じ電圧にて正弦波を印加して音圧レベルを見たものなので、図79のグラフに実線で示す非接触での音圧は、ほぼ、圧電バイモルフ素子2525から発生する気導音発生の周波数特性を示す。つまり、図79のグラフの実線から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525による気導音発生の周波数特性はフラットなものではなく、例えば100Hzから4kHz程度の帯域に注目した時、主に低周波領域(例えば200Hzから1.5kHz)では、比較的音圧が低く、主に高周波領域(例えば1.5kHzから4kHz)では音圧が大きい。(なお、図79において測定したのは外耳道入口部から1cm奥の外耳道内の音圧なので、2.5kHzから3.5kHzでは裸耳利得による音圧増強効果の影響を受けていると見られるが、この分を差し引いて解釈しても、低周波領域よりも高周波領域の方が音圧が相対的に大きいことは明らかである。)このように、図79から見ても、図69の実施例46等で用いた圧電バイモルフ素子2525の周波数特性がフラットなものではなく、ほぼ1kHz程度を境に低周波側の気導音発生が相対的に高周波側のそれよりも小さいことがわかる。
次に、図79に一点鎖線で示す通常接触状態の250gのグラフでは、非接触状態に比べ、1kHzよりも低周波領域側の数百Hzあたりから顕著な音圧増加が認められ、この増加は少なくとも2.5kHz程度まで続いている。従って、同一の振動源である圧電バイモルフ素子2525について、外耳道内で測定した音の周波数特性は、軟骨伝導経由の気導と直接気導では明らかな差が認められる。(つまり、軟骨伝導経由気導は直接気導に比べ、特に数百Hzから2.5kHzにおける音圧増加が大きい。)この結果、図79に一点鎖線で示す通常接触状態の250gのグラフに示すように、軟骨伝導経由の気導の場合、外耳道内での音圧は、結果として鼓膜に達する音の周波数特性が、実線で示す直接気導の場合よりも相対的にフラットに近づいている。
さらに、図79に二点鎖線で示す外耳道閉鎖状態の500gでは、耳栓骨導効果によりさらに数百Hzから1kHzにおいて著しい音圧増加が認められ、同一の振動源である圧電バイモルフ素子2525について、通常接触状態の250gとも非接触状態とも明らかに異なる周波数特性の相違呈している。なお、二点鎖線で示す外耳道閉鎖状態の500gでは裸耳利得はなくなるので、外耳道開放状態で認められている2.5kHzから3.5kHzにおける音圧のピークによる影響が消失した結果が現れているものと考えられる。
図81は、本発明の実施の形態に係る実施例53のブロック図である。実施例53は、図38の実施例25と同様にして、ステレオオーディオ情報を聴くことが可能な3Dテレビの観賞眼鏡2381として構成されており、3Dテレビ2301とともに3Dテレビ鑑賞システムをなす。そして、実施例25と同様にして、右ツル部2382に配置された右耳用軟骨伝導振動部2324の振動が接触部2363を介して右耳の付け根の軟骨の外側に伝達されるとともに、左ツル部2384に配置された左耳用軟骨伝導振動部2326の振動が接触部2364を介して左耳の付け根の軟骨の外側に伝達される。実施例53は実施例25と共通するところが多いので共通する部分には共通の番号を付し、必要のない限りこれ以上の説明を省略する。なお、図81では、図示を省略しているが、3Dテレビ2301の内部構成は、図38に示したものと同じである。
なお、図81の実施例53は、図38の実施例25と同様にして、右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326として、図69の実施例46と同様の構造の圧電バイモルフ素子2525を用いている。つまり、右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326は、軟骨伝導における周波数特性と逆傾向の直接気導発生周波数特性を示すものであり、ほぼ1kHz程度を境に低周波側の気導発生が相対的に高周波側のそれよりも小さいものを採用している。具体的には図81の実施例53に採用された右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326は、500Hzから1kHzまでの平均気導出力と1kHzから2.5kHzまでの平均気導出力の差が、気導を想定して設計された平均的な通常スピーカと比較して5dB以上異なったもので、通常スピーカとしては望ましくない周波数特性を呈するものである。
図81の実施例53が図38の実施例25と異なるのは、上記のような右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326を駆動するに際し、周波数特性修正部4936を介して行う点である。周波数特性修正部4936には、軟骨伝導特有の周波数特性を考慮して外耳道内で気導音となる音圧の周波数特性がフラットに近づくよう修正する軟骨伝導イコライザ4938が設けられる。軟骨伝導イコライザ4938は基本的には右耳用軟骨伝導振動部2324および左耳用軟骨伝導振動部2326への駆動信号の周波数特性を等しく修正するが、右耳用軟骨伝導振動部2324と左耳用軟骨伝導振動部2326のバラつきを個別に修正するのにも利用できる。周波数特性修正部4936には、さらに高周波をカットするための軟骨伝導ローパスフィルタ4940(例えば10kHz以上をカット)が設けられる。これは、実施例53における右耳用軟骨伝導振動部2324と左耳用軟骨伝導振動部2326が耳を覆わない形状なので、外部への不快な気導発散を防止するためである。このローパスフィルタの特性は、軟骨伝導に有利な周波数帯域(例えば10kHz以下)についてはカットしないことも考慮して定められる。なお、オーディオ装置として、可聴域(例えば10kHzから20kHz)およびそれ以上の周波数域をカットすることは音質上不利であるので、外部への不快な気導発散を考慮しなくてもよい環境下では軟骨伝導ローパスフィルタ4940の機能を手動でオフできるよう構成する。
図82は、本発明の実施の形態に係る実施例54のブロック図である。実施例54は、図8の実施例4と同様にして、携帯電話5001として構成されている。実施例54は実施例4と共通するところが多いので共通する部分には共通の番号を付し、必要のない限り説明を省略する。なお、図82の実施例54は、図81の実施例53と同様にして、軟骨伝導振動ユニット228の振動源として図69の実施例46と同様の構造の圧電バイモルフ素子2525を用いている。つまり、軟骨伝導振動ユニット228の振動源は、軟骨伝導における周波数特性と逆傾向の直接気導発生周波数特性を示すものであり、ほぼ1kHz程度を境に低周波側の気導発生が相対的に高周波数側のそれよりも小さいものを採用している。具体的には図82の実施例54に採用された圧電バイモルフ素子は、実施例52と同様にして、500Hzから1kHzまでの平均気導出力と1kHzから2.5kHzまでの平均気導出力の差が、気導を想定して設計された平均的な携帯電話用のスピーカと比較して5dB以上異なったもので、通常スピーカとしては望ましくない周波数特性を呈するものである。
図82の実施例54が図8の実施例4と異なるのは、上記のような軟骨伝導振動ユニット228の振動源の圧電バイモルフ素子を駆動するに際し、高周波をカットするための軟骨伝導ローパスフィルタ5040(例えば2.5kHz以上をカット)および軟骨伝導イコライザ5038を介して行う点である。軟骨伝導イコライザ5038は、実施例53と同様にして、軟骨伝導特有の周波数特性を考慮して外耳道内で気導音となる音圧の周波数特性がフラットに近づくよう修正する。軟骨伝導イコライザ5038を介した音信号は、軟骨伝導特有の周波数特性を考慮した周波数特性の修正が行われているので、直接気導の発生を前提とするテレビ電話用のスピーカ51への音信号とは周波数特性が異なったものとなる。
実施例54の軟骨伝導イコライザ5038はさらに、押圧センサ242により耳穴が塞がれて耳栓骨導効果が生じている状態が検知された時、修正用周波数特性を通常接触状態の周波数特性用から耳栓骨導効果発生状態の周波数特性用に自動的に切換える。この際に切換えられる周波数特性修正の差は、例えば図79における一点鎖線(通常接触250g)と二点差線(外耳道閉鎖500g)との差に相当する。具体的には、耳栓骨導効果が生じたときに低音域が強調され過ぎることがないようにするとともに、外耳道の閉鎖による裸耳利得の消失を補償するような周波数特性の修正を行い、耳栓骨導効果の有無で音質が変化するのを緩和する。
実施例54における軟骨伝導ローパスフィルタ5040は、耳に聞こえる帯域の音が外部に漏れるのを防止して、プライバシーを保護することを目的とするものであり、特に静寂時に有用なものである。このような軟骨伝導ローパスフィルタ5040の特性は、耳軟骨への接触による音圧増強効果の著しい周波数帯域(例えば2.5kHz以下)についてはカットしないことも考慮して定められる。携帯電話の音声は元々3kHz以上がカットされているが、裸耳利得なしでも軟骨伝導による音圧増強効果が高い数百Hzから2.5kHz程度の帯域を活用し、かつ、軟骨伝導特有の効果が出る帯域外の2.5kHz以上の周波数はカットすることによって、上記のようなプライバシー保護を合理的に図ることができる。なお、上記のように軟骨伝導ローパスフィルタ5040の効果は特に静寂時に重要なので、手動でオンオフ可能とする、または、図75の実施例50における環境騒音マイク4638のようなものを設けて静寂時のみ自動的にオンするよう構成するのが望ましい。なお、手動でオンオフ可能とした構成において、軟骨伝導イコライザ5038が耳栓骨導効果発生状態の周波数特性用となっているときは、騒音が大きいことが想定されるので、軟骨伝導ローパスフィルタ5040が手動でオンされていれば強制的にオフするよう構成する。
上記各実施例に示した本発明における種々の特徴の実施は上記の実施例に限るものではない。例えば、上記の実施例53および実施例54では、軟骨伝導を経た最終的な気導音の周波数特性をフラットに近いものとするにあたり、通常の気導発生周波数特性と異なる周波数特性の気導音の発生をもたらす軟骨伝導振動源と軟骨伝導イコライザを併用したものであるが、このうちの一方を省略することも可能である。例えば、軟骨伝導振動源として軟骨伝導の周波数特性とよくマッチするものを用いたときは軟骨伝導イコライザを省略することができる。また、これとは逆に、軟骨伝導振動源としては通常の気導スピーカに準じた気導音の発生をもたらす周波数特性のものを採用し、軟骨伝導を経た最終的な気導の周波数特性をフラットに近いものとするための機能を軟骨伝導イコライザに集中させる構成も可能である。
図83は、本発明の実施の形態に係る実施例55に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5101として構成される。なお、実施例55は、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525の保持構造および後述するTコイルの付加を除き図69に示した実施例46と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
まず実施例55における軟骨伝導振動源2525の保持構造について説明する。図83(A)の斜視図に明らかなように、携帯電話5101における左右の角部には、硬質材料からなる軟骨伝導部5124および5126が設けられている。この軟骨伝導部5124および5126としては、たとえばABS樹脂、繊維強化プラスチック、靱性の高いファインセラミックスなどが好適である。軟骨伝導部5124および5126と携帯電話5101の筐体の間には、ビニール系、ウレタン系などの弾性体5165bおよび5165aが介在しており、振動隔離材および緩衝材として機能している。
さらに、図83(B)および(C)に明らかなように、軟骨伝導部5124および5126は、その内側において圧電バイモルフ素子2525を保持する構造となっている。そして圧電バイモルフ素子2525は、弾性体5165bおよび5165aの介在により携帯電話5101の筐体には直接接触しない保持構造となっている。これによって、圧電バイモルフ素子2525の振動エネルギーを軟骨伝導部5124および5126に集中させ、携帯電話5101の筐体には分散しないようにしている。
また、図83(A)に破線で示すように、実施例55における携帯電話5101の上部中央内部にはTコイル5121が配置されている。Tコイル5121は、対応するTコイルを備えた補聴器に対し電磁誘導で音情報を伝達するためのものである。Tコイルによる音情報の伝達と軟骨伝導による音情報の伝達の関係については、後述する。
図84は、図83の実施例55のブロック図であり、同一部分には図83と同一番号を付して説明を省略する。また、図84のブロック図の構成は、図82における実施例54のブロック図と共通点が多く、これらを援用することができるので共通の構成については同一の番号を付して説明を省略する。
すでに述べたように、実施例55はTコイル5121を有し、携帯電話5101の使用者がTコイルを備えた補聴器を装着している場合、Tコイル5121による電磁誘導で音情報を補聴器に伝達することができる。Tコイルを備えた補聴器は、Tコイル機能をオンオフできるとともに、Tコイルをオンさせた場合において補聴器のマイクのオンオフを選択できるよう構成されているものもある。これに対応し、実施例55の携帯電話5101では、操作部9の操作に応答してスイッチ5121aをオンオフし、Tコイル5121を機能させるかどうか選択することができる。そしてTコイル5121のオンが選択された場合には、これに連動して圧電バイモルフ素子2525を含む軟骨伝導振動ユニット228を強制的にオフさせるためのスイッチ5121bが設けられている。
すでに説明したように、軟骨伝導は耳に栓をした状態においても、耳栓骨導効果を伴って外耳道内部に気導音を発生する。この結果、補聴器によって外耳道口が塞がれている場合でも、Tコイル5121のオンなしに圧電バイモルフ素子2525を振動源とする軟骨伝導により音を聞くことができる。軟骨伝導は、基本的に軟骨伝導部5124または5126を耳軟骨に接触させることによって生じるが、軟骨伝導部5124または5126を補聴器に接触させることによりその振動が補聴器周囲の耳軟骨に伝導することによって外耳道内に気導音を発生することによっても可能である。また、軟骨伝導部5124または5126の当て方によっては、耳軟骨および補聴器の両者への接触が生じ、上記の併存状態で外耳道内に気導音を発生することもできる。このように、本発明の携帯電話5101はTコイル5121をオフした状態でも補聴器の使用者による利用が可能である。
スイッチ5121bは、スイッチ5121aのオンによりTコイル5121を機能させようとしたときに上記のような軟骨伝導が同時に生じ、通常のTコイルによる音の聴取に比べて違和感が生じるのを防止するとともに、Tコイル5121の動作時には不要な軟骨伝導による電力消費を防止するためのものである。なお、誤操作によりTコイル5121をオンしたときの軟骨伝導の連動オフが故障と混同されるのを防止するため、大画面表示部205に表示される操作部9の操作メニューに通常はTコイル5121をオンするためのメニューが現れないよう構成し、所定の手順を踏んで意図的に操作部9を操作しない限りTコイル5121がオンとならないよう構成するのが望ましい。
図85は、上記の実施例55における携帯電話5101における振動エネルギーの分布を説明するための側面図であり、図2と共通するところが多いので、共通する部分には同一番号を付し、説明を省略する。図83に示したように、圧電バイモルフ素子2525を直接保持している軟骨伝導部5124および5126は弾性体5165bおよび5165aの介在により携帯電話5101の筐体に保持されている。これによって、圧電バイモルフ素子2525の振動は、軟骨伝導部5124および5126から効果的に耳軟骨に伝導されるとともに、携帯電話5101の筐体には圧電バイモルフ素子2525が直接接触しないため、その振動が伝わりにくくなっている。つまり、圧電バイモルフ素子2525の振動エネルギーが軟骨伝導部5124および5126に集中し、携帯電話5101の筐体には分散しない構造となっている。
図85で具体的に説明すると、軟骨伝導部5124および5126に振動エネルギーが集中しているので、携帯電話5101の筐体表面における位置(1)および(2)(図中の丸付き数字1、2を参照)の振動加速度および振幅が最も大きく、携帯電話5101の筐体における軟骨伝導部5124および5126の中間の位置(3)(図中の丸付き数字3を参照)では振動加速度および振幅が若干小さくなる。そして位置(4)、位置(5)(図中の丸付き数字4、5を参照)の順に、位置(1)および(2)から離れるほど、携帯電話5101の筐体表面における振動加速度および振幅が小さくなっていく。例えば位置(1)および(2)からそれぞれ5cm以上離れた位置(5)における携帯電話5101の筐体表面における振動加速度および振幅は、軟骨伝導部5124および5126表面における振動加速度および振幅の1/4以下(25%以下)となる。図85(A)はこのような振動分布の携帯電話5101を右耳28に当てて好適な軟骨伝導を得ている状態を示し、図85(B)は携帯電話5101を左耳30に当てて同様に好適な軟骨伝導を得ている状態を示す。
上記のような軟骨伝導のための振動エネルギーが外耳道入口部の耳軟骨との接触想定部に集中する特徴は、図83から図85に示した実施例55に限るものではなく、すでに説明した他の実施例のいくつかにおいても現れているものである。例えば、実施例1〜3、11〜14、29〜33、35、36、42〜44、46〜50、52、55は、接触想定部における振動加速度または振動の振幅が、接触想定部から離れた部分における振動加速度または振動の振幅よりも大きくなっている例であり、特に後述のように実施例29、30〜33、42〜43、46〜50、52、55のような構成ではそれが顕著であり、後述する理由により、接触想定部を中心に接触想定部から離れるに従い、振動加速度、または振動の振幅が単調減少する。
なお、本発明において軟骨伝導のための振動エネルギーを集中させる接触想定部は、筐体から突出しておらず、携帯電話の使用を妨げるような形状をとらない。さらに接触想定部は、筐体の上下中心軸からも左右中心軸からも外れた位置にあり、外耳道入口部の耳軟骨との接触に好適な配置となっている。具体的には接触想定部は携帯電話の角部または角部近傍の上辺部または側面部にある。換言すれば、上記の配置構成により、耳輪への接触なしに外壁表面を外耳道入口部周辺の耳軟骨の少なくとも一部に接触させる好適な構成が得られる。
上記のように、本発明では、図83から図85の実施例55だけでなく、他の実施例でも外耳道入口部の耳軟骨との接触想定部に振動エネルギーを集中させることができる。この特徴を分類すると、まず第1に、実施例29、実施例30、実施例31の変形例2、実施例32、実施例33、および実施例55は接触想定部と携帯電話筐体の間を弾性体で隔離することによりこれを実現した例である。第2に実施例29、実施例30、実施例32、実施例33は、圧電バイモルフ素子の主振動方向を避けてこれを携帯電話筐体に支持させることにより接触想定部に振動エネルギーを集中させる例である。第3に実施例30、実施例31、および実施例47は接触想定部とこれを支持する携帯電話筐体との接触面積を減少させることにより、接触想定部に振動エネルギーを集中させる例である。第4に実施例42から実施例44、実施例46とその変形例、実施例48から実施例50、実施例52、および実施例55は、振動子の保持位置を接触部近傍に限定することにより接触想定部に振動エネルギーを集中させる例である。第5に実施例46とその変形例、実施例48から実施例50、実施例52、および実施例55は接触想定部の材質を携帯電話筐体と異なったものにすることにより接触想定部に振動エネルギーを集中させる例である。なお、上記分類において重複している実施例があることから明らかなように、上記に分類した特徴は実際には複数組み合わせて採用することが可能である。
上記本発明の種々の特徴は、上記の実施例に限るものではない。例えば、実施例55の変形例として、図83(B)に断面を示す弾性体5165bおよび5165aにそれぞれ圧電バイモルフ素子2525の断面よりも大きな穴を開け、この穴を通して圧電バイモルフ素子2525を軟骨伝導部5124および5126に保持するよう構成することも可能である。この場合は、圧電バイモルフ素子2525が弾性体5165bおよび5165aにも直接接触しない構造となり、圧電バイモルフ素子2525の振動エネルギーが弾性体5165bおよび5165aを介して携帯電話5101の筐体に分散するのを防止することが可能となる。
また、上記の実施例55は、図69に示した実施例46と同様にして一つの圧電バイモルフ素子2525の両端の振動を左右の軟骨伝導部5124および5126に伝える構造となっているが、実施例55のような特徴の実施はこれに限るものではない。例えば図65の実施例42のように圧電バイモルフ素子2525の片側をカンチレバー構造に支持する構造に図83の実施例55の保持構造を応用してもよい。さらには、図77の実施例52のように右耳用の圧電バイモルフ素子2525bおよび左耳用の圧電バイモルフ素子2525aを採用する構成において、これらをそれぞれカンチレバー構造に支持する際に、図83の実施例55の保持構造を応用してもよい。
なお、すでに述べたように、図1から図7における実施例1から実施例3および図77の実施例52のように右耳用と左耳用の軟骨伝導振動部が独立に制御できるものでは、耳軟骨に接触させていない振動部の振動を止めることができる。この場合、軟骨伝導部5124を右耳28に当てている状態を示す図85(A)において軟骨伝導部5126の振動を止めた場合の振動エネルギーの分布は、位置(1)における振動加速度および振幅が最も大きく、次いで、位置(3)、位置(2)、位置(4)そして位置(5)の順に振動加速度および振幅が小さくなっていく。これに対し、軟骨伝導部5126を左耳30に当てている状態を示す図85(B)において軟骨伝導部5124の振動を止めた場合の振動エネルギーの分布は、位置(2)における振動加速度および振幅が最も大きく、次いで、位置(3)、位置(1)、位置(4)そして位置(5)の順に振動加速度および振幅が小さくなっていく。
図86は、本発明の実施の形態に係る実施例56に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5201として構成される。なお、実施例56は、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525の保持方向を除き図83に示した実施例55と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図83の実施例55では、軟骨伝導振動源2525の金属板2597が携帯電話5101の正面と平行になるよう配置されており、主振動方向はGUI表示部3405と直交する向きである。これに対し、図86の実施例56では、軟骨伝導振動部5225の金属板2599が携帯電話5201の正面と垂直になるよう配置されており、この結果、図65(C)に示す実施例42の第1変形例等と同様にして、軟骨伝導振動部5225の主振動方向はGUI表示部3405と平行になる。実施例56の構成は、図85に示す場合と同じように携帯電話5201の角部(軟骨伝導部5124または5126)の正面側を耳軟骨に当てた上で、実施例42の第1変形例と同様にして角部の上面側を軽く突き上げるような形で耳軟骨に当てる使用に好適である。なお、軟骨伝導部5124または5126には振動が集中しているので、単に角部(軟骨伝導部5124または5126)の正面側を耳軟骨に当てるだけでも、充分な軟骨伝導を得ることができる。
また、図86の実施例56では軟骨伝導振動部5225の主振動方向が携帯電話5201の正面(GUI表示部3405を含む)と平行になっているため、携帯電話5201の外面のうちの大面積を占める正面および裏面に伝達される振動成分が小さい。この結果、これら大面積部分で発生する気導音による音漏れをさらに小さくすることができる。
なお、上記における図86の実施例56のような向きの軟骨伝導振動部5225は、実施例56に限らず、また、図69の実施例46、図71の実施例46および図74の実施例49等、他の実施例にも採用することができる。
図87は、本発明の実施の形態に係る実施例57に関するブロック図であり、携帯電話5301として構成される。実施例57は、軟骨伝導振動部を構成する圧電バイモルフ素子5325の駆動回路を携帯電話5301の各部に電源を供給するパワーマネジメント回路とともにワンチップの統合パワーマネジメントIC5303として構成したものである。
統合パワーマネジメントIC5303は、パワーマネジメント部5353を有し、バッテリー5348からの電源供給に基づいて、電話通信部を構成するデジタルベースバンド部5312、アナログベースバンド部5313およびアンテナ5345に接続されるRF回路部5322等に所定の異なる電源電圧をそれぞれ供給する。パワーマネジメント部5353は、さらに、他の実施例で示した制御部39等に該当するアプリケーションプロセッサ5339、カメラ部5317(他の実施例で示した背面主カメラおよびテレビ電話用内側カメラをまとめて図示)、表示部5305における液晶表示装置5343およびタッチパネル5368等に所定の異なる電源電圧をそれぞれ供給する。アプリケーションプロセッサ5339は、メモリ5337(プログラム保持機能およびデータ書込保持機能をまとめて図示)と連携して携帯電話5301全体を制御するとともに、メモリカード5319(スロットおよびカードをまとめて図示)およびUSB(登録商標)接続端子5320を介した外部機器と信号授受可能である。
パワーマネジメント部5353は、また、統合パワーマネジメントIC5303内部の制御部5321、アナログフロントエンド部5336、テレビ電話スピーカ5351用のアンプ5341、軟骨伝導音響処理部5338、チャージポンプ回路5354等にもそれぞれ所定の異なる電源電圧をそれぞれ電源電圧を供給する。チャージポンプ回路5354は、高電圧を要する圧電バイモルフ素子5325のために昇圧を行うためのものである。
アナログフロントエンド部5336は、統合パワーマネジメントIC5303外部のアプリケーションプロセッサ5339からアナログ音声信号を受け取り、アンプ5341を介してテレビ電話スピーカ5351に供給するとともに、イヤホンジャック5313および軟骨伝導音響処理部5338にもアナログ音声信号を供給する。また、アナログフロントエンド部5336は、マイク5323で拾った使用者のアナログ音声信号を外部のアプリケーションプロセッサ5339に伝達する。
チャージポンプ回路5354は外付け端子5355aおよび5355bを介して接続される外付けコンデンサ5355と協働して昇圧動作を行い、圧電バイモルフ素子5325の駆動に必要な電圧をアンプ5340に供給する。これによって、アナログフロントエンド部5336からの音声信号は、軟骨伝導音響処理部5338およびアンプ5340を介して圧電バイモルフ素子5325を駆動する。なお、軟骨伝導音響処理部5338の機能の例としは、図8の実施例4で示した音質調整部238および波形反転部240、図82の実施例54で示した軟骨伝導ローパスフィルタ5040、軟骨伝導イコライザ5038等が該当するが、これに限られるものではない。
制御部5321は、統合パワーマネジメントIC5303外部のアプリケーションプロセッサ5339とデジタル制御信号の授受を行い、パワーマネジメント部5353の制御を行う。また、制御部5321は、アプリケーションプロセッサ5339の指示に基づいてアナログフロントエンド部5336を制御し、アプリケーションプロセッサ5339から受け取ったアナログ音声信号をテレビ電話スピーカ5351の駆動のためにアンプ5341に送るか軟骨伝導音響処理部5338に送るかの切換え等を行う。また、アナログフロントエンド部5336は切換えに伴うボツ音がイヤホンジャック5313等に出力されない処理等も行う。
さらに、制御部5321は、統合パワーマネジメントIC5303外部のアプリケーションプロセッサ5339とデジタル制御信号の授受を行い、上記で例示した音質調整、波形反転、軟骨伝導ローパスフィルタ、軟骨伝導イコライザ等に関する軟骨伝導音響処理部の制御を行う。
上記のように、図87の実施例57では、軟骨伝導振動部の駆動回路をパワーマネジメント回路とともにワンチップの統合ICとして構成したので、軟骨伝導振動部の駆動を直接行えるとともに、携帯電話内の種々の構成要素への電源電圧供給と統括して軟骨伝導振動部への電源電圧供給を行うことができ、その制御も統括的に行うことができる。また、軟骨伝導振動部のための軟骨伝導音響処理部もパワーマネジメント部とともにワンチップの統合ICとすることにより、音響処理のための制御とパワーマネジメント部の制御も統括的に行うことができる。軟骨伝導振動部として圧電バイモルフ素子を採用する場合、その駆動には高電圧を要するが、図87の実施例57のように軟骨伝導振動部の駆動回路をパワーマネジメント部とともにワンチップの統合ICとして構成することで、昇圧回路のための別チップの追加なしに圧電バイモルフ素子の駆動が可能となる。さらに、軟骨伝導振動部の駆動に特有の軟骨伝導音響処理部もパワーマネジメント部とともにワンチップの統合ICとすることにより圧電バイモルフ素子の音声信号制御も統合することができる。従って、統合ICに通常の音声信号を入力し、統合ICに軟骨伝導振動部を接続するだけで、好適な軟骨伝導機能を携帯電話に付与することが可能となる。
さらに、アナログフロントエンド部もパワーマネジメント部とともにワンチップの統合ICとすることにより、音声信号出力の切換え調整も一括して行うことができる。具体的には、軟骨伝導振動部の機能を含めた携帯電話全体の機能に関する統合ICとアプリケーションプロセッサとの間のデジタル制御信号の授受および統合ICとアプリケーションプロセッサとの間のアナログ音声信号の授受を統合して行うことができる。
図87の実施例57のように、軟骨伝導振動部の駆動回路をパワーマネジメント部とともにワンチップの統合ICとして構成する回路構成は、これまで説明してきた種々の実施例に適用することができる。
図88は、本発明の実施の形態に係る実施例58に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5401として構成される。なお、実施例58は、後述する気導音による音漏れ対策のための構成を除き図83に示した実施例55と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図88の実施例58では、図83に示した実施例55と同様にして、軟骨伝導振動源2525を保持している硬質材料の軟骨伝導部5124および5126から弾性体5165bおよび5165aを介して携帯電話5401の筐体に若干の振動が伝わる。これによって、携帯電話5401の外面のうちの大面積を占める正面および裏面が振動し、気導音による若干の音漏れが発生する。図88の実施例58では、このような音漏れへの対策として、GUI表示部3405およびマイク23の部分を除き携帯電話5401の筐体外面を弾性体5463で被覆する。この際、弾性体5463は、携帯電話5401の筐体と一体化するよう接着する。なお、GUI表示部3405の部分は、GUI操作を妨げないよう開口部となっている。また、マイク23の部分は、図11の実施例5と同様にして音声の気導を妨げないスポンジ状構造等のマイクカバー部467として構成される。
携帯電話5401の筐体外面を被覆する弾性体5463は、弾性体5165bおよび5165aと同一またはこれに近似するビニール系、ウレタン系など振動隔離材および緩衝材とするのが望ましい。これによって、図88の実施例58では、軟骨伝導振動源2525を保持している硬質材料の軟骨伝導部5124および5126が、弾性体5165b、5165aおよび弾性体5463を介して包まれた上で携帯電話5401の筐体に接触している。従って、軟骨伝導振動源2525自身は携帯電話5401の筐体に直接接触することがない。
また、弾性体5463は、図11の実施例5のような着脱可能なカバーではなく携帯電話5401の筐体表面の大面積部分と一体化するよう接着させられているので、その重量および弾性により携帯電話5401の筐体表面の大面積部分の振動をその振幅における内外両方向にわたって抑制するとともに振動エネルギーを吸収する。さらに、空気と接する携帯電話5401の表面にも弾性が生じる。これらによって、携帯電話5401の筐体に伝わった軟骨伝導振動源2525の振動に起因する携帯電話5401の筐体表面からの気導音の発生が緩和される。一方、弾性体5463は耳軟骨と音響インピーダンスが近似しているので、軟骨伝導部5124および5126から耳軟骨への軟骨伝導は良好である。なお、弾性体5463による携帯電話5401の筐体表面の被覆は、携帯電話5401が外部と衝突する際のプロテクタとしても機能する。
図89は、本発明の実施の形態に係る実施例59に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5501として構成される。なお、実施例59は、気導音による音漏れ対策のための構成を除き図65に示した実施例42と共通なので、図89(B)および図89(C)の断面図については図65(A)および図65(B)の断面図と共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。また、図89(A)の斜視図については図88(A)の実施例58と共通するので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図89の実施例59では、携帯電話5501の側面3807および上面3807aから内側に延び、軟骨伝導振動源2525を保持している支持構造3800aの穴に圧電バイモルフ素子2525の一端が保持されている。このため、支持構造3800aから携帯電話5501の側面3807および上面3807aを介して軟骨伝導振動源2525の振動が携帯電話5501の筐体に伝わり、携帯電話5501の外面のうちの大面積を占める正面および裏面が振動する。そして、これによる気導音の発生による音漏れは、図86の実施例56の場合より大きい。しかしながら、図89の実施例59では、図88の実施例58と同様、このような音漏れへの対策として、GUI表示部3405およびマイク23の部分を除き携帯電話5501の筐体外面を弾性体5563で被覆する。この際、弾性体5563は携帯電話5501の筐体と一体化するよう接着する。なお、GUI表示部3405の部分は、GUI操作を妨げないよう開口部となっている。また、マイク23の部分は、図11の実施例5と同様にして音声の気導を妨げないスポンジ状構造等のマイクカバー部467として構成される。これらは、図88の実施例58と同様である。
携帯電話5501の筐体外面を被覆する弾性体5563は、図88の実施例58と同様にして、ビニール系、ウレタン系など振動隔離材および緩衝材とするのが望ましい。以上のような構成により、図89の実施例59においても、携帯電話5501の筐体表面の大面積部分の振動は、被覆される弾性体5563の重量および弾性によりその振幅における内外両方向にわたって抑制されるとともに、振動エネルギーが吸収される。さらに空気と接する携帯電話5501の表面にも弾性が生じる。これらによって、軟骨伝導振動源2525の振動に起因する携帯電話5501の筐体表面からの気導音の発生が緩和される。一方、弾性体5563は耳軟骨と音響インピーダンスが近似しているので、耳珠等の耳軟骨に当てるのに好適な部位である上部角3824から耳軟骨への軟骨伝導は良好である。また、弾性体5563による携帯電話5501の筐体表面の被覆が、携帯電話5501が外部と衝突する際のプロテクタとしても機能することも、図88の実施例58と同様である。
図90は、本発明の実施の形態に係る実施例60に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5601として構成される。なお、実施例60は、気導音による音漏れ対策のための構成を除き図69に示した実施例46と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図90の実施例60では、図69の実施例46と同様にして、携帯電話5601の上部2つの角にプロテクタとなる弾性体部5663aおよび、5663bが設けられる。そして、その内側は軟骨伝導振動源2525の両端の保持部を兼ねるとともに、外側は耳軟骨に接触する軟骨伝導部を兼ねている。そしてこれら弾性体部5663aおよび5663bは、耳軟骨と音響インピーダンスが近似する弾性材料(シリコーン系ゴム、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合物、天然ゴム、またはこれらに空気泡を密封した構造、または、透明梱包シート材などにみられるような一層の空気泡群を合成樹脂の薄膜で分離密封した構造など)が採用される。
図90の実施例60においても、軟骨伝導振動源2525を保持している弾性体部5663aおよび、5663bの振動のうちの若干の成分が携帯電話5601の筐体に伝わり、携帯電話5601の外面のうちの大面積を占める正面および裏面が振動して気導音が発生する。しかしながら、図90の実施例60においても、上記の気導音に起因する音漏れへの対策として、弾性体部5663aおよび、5663bから同材料の弾性体5663がシート状に延長され、この弾性体5663がGUI表示部(図88および図99の3405と同一部分)およびマイク23の部分を除く携帯電話5601の筐体外面を被覆する。図90の実施例60においても、図88の実施例58および図89の実施例59と同様にして、弾性体5663は携帯電話5601の筐体と一体化するよう接着される。なお、GUI表示部3405の部分は、GUI操作を妨げないよう開口部となっている。また、マイク23の部分は、図11の実施例5と同様にして音声の気導を妨げないスポンジ状構造等のマイクカバー部467として構成される。これらは、図88の実施例58および図89の実施例59と同様である。
以上のような構成により、図90の実施例60においても、携帯電話5601の筐体表面の大面積部分の振動は、被覆される弾性体5663の重量および弾性によりその振幅における内外両方向にわたって抑制されるとともに、振動エネルギーが吸収される。さらに空気と接する携帯電話5601の表面にも弾性が生じる。これらによって、軟骨伝導振動源2525の振動に起因する携帯電話5601の筐体表面からの気導音の発生が緩和される。なお、弾性体5663による携帯電話5601の筐体表面の被覆は、弾性体部5663aおよび、5663b以外の部分のプロテクタとしても機能する。
図91は、本発明の実施の形態に係る実施例61に関する斜視図および断面図であり、携帯電話5701として構成される。なお、実施例61は、気導音による音漏れ対策のための構成を除き図83に示した実施例55と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図91の実施例61では、図83に示した実施例55と同様にして、硬質材料の軟骨伝導部5124および5126によって軟骨伝導振動源2525の両端を保持し、弾性体5165bおよび5165aを介して携帯電話5701の筐体に支持させている。この構造では、図88の実施例58でも説明したように、携帯電話5701の筐体に若干の振動が伝わり、その正面および裏面から発生する気導音による音漏れが発生する。図91の実施例61では、このような音漏れへの対策として、電池等を含む携帯電話5701の内部構成部品5748を携帯電話5701の筐体内面に押圧固着するねじ止め金属板などの押圧固着構造5701hを有する。これによって電池等を含む内部構成5748の重量が携帯電話5701の筐体と一体化し、筐体の大面積部分の振動をその振幅における内外両方向にわたって抑制するので気導音の発生が緩和される。
図91の実施例61では、さらに、携帯電話5701の筐体内の余剰空間は、不織布等からなる吸音充填材5701iで埋められている。これによって、携帯電話5701の筐体内の余剰空間が細分化されて筐体内の空気の共鳴を防止し、気導音の発生を緩和する。図91(C)では、理解の便のため内部構成5748、押圧固着構造5701hおよび吸音充填材5701iの充填を単純化して図示しているが、これらは実際には複雑な構造をとるものであって、押圧固着構造5701hも、図示のように内部構成5748を携帯電話5701の裏面側にのみ押圧固着するものに限るものではない。なお、携帯電話5701の筐体内の余剰空間を細分化するには、吸音充填材5701iの充填に代えて、筐体内側に隔壁を設けるようにしてもよい。
上記各実施例に示した本発明における種々の特徴の実施は上記の実施例に限るものではない。例えば、上記の図88〜図90においては、携帯電話の外面のうちの大面積を占める裏面等の部分において被覆用の弾性体断面の厚さと筐体断面の厚さと同程度に図示している。しかしながら、筐体の強度を保つ限り筐体断面の厚さをできる限り薄くするとともにこれを被覆する弾性体断面の厚さをできる限り厚くし、あたかも筐体が弾性体で構成されるごとくして音漏れ防止効果をより高めてもよい。このとき、筐体内部に余剰空間細分化用の隔壁を設ける構成は強度を保持にも有利であり、筐体を薄くすることに寄与する。
また、図90に示した実施例60では、プロテクタ、軟骨伝導振動源2525の両端の保持部および軟骨伝導部を兼ねる弾性体部5663aおよび5663bと弾性体5663が同材料にて連続しているが、このような構成に限るものではない。例えば、弾性体部5663aおよび5663bと弾性体5663とは、分離された部品であってよく、必ずしも接触していなくてもよい。また、弾性体部5663aおよび5663bと弾性体5663とは、別材料で構成されていてもよい。
さらに、単純化のため、図88から図90に図示した実施例58から実施例60においては携帯電話筐体の振動を外部の弾性体で被覆抑制する構成を示し、図91の実施例61では携帯電話筐体の振動を携帯電話の内部構成の重量の押圧固着で抑制する構成を示した。しかしながら、これらは実施例のように別々に採用する場合に限らず、両者を併用して携帯電話筐体内部および外部からその振動を抑制するよう構成してもよい。
図92は、本発明の実施の形態に係る実施例62に関する斜視図および側面図であり、固定電話5800として構成される。図92(A)の斜視図に示すように、固定電話5800は電話機本体5801およびコードレス受話器5881からなる。電話機本体5801には表示部5805、テレビ電話用カメラ5817、テレビ電話用のマイク5823、テレビ電話用のスピーカ5851などが設けられている。
図92(B)は、固定電話5800の子機5881が充電器5848に立てられている状態を示す。子機5881は、図92(A)におけるコードレス受話器5881と同じものなので同一の番号で図示している。コードレス受話器または子機5881(以下、コードレス受話器5881で代表)は、図92(B)に示すように、緩やかな凸面をなす軟骨伝導部5824を有しており、この軟骨伝導部5824は、コードレス受話器5881が耳に当てられたとき、外耳道口を底とする耳の窪みに自然に納まり、広い面積で耳軟骨と接触するようになる。コードレス受話器または子機5881はまた、携帯電話の実施例で示したのと同様の送話部1423を有する。
図92(C)は、コードレス受話器または子機5881の側面を図示しており、コードレス受話器(または子機)5881が耳30に当てられたとき、緩やかな凸面をなす軟骨伝導部5824が外耳道口を底とする耳の窪みに納まり、広い面積で耳軟骨と接触している様子を示している。図92(C)の側面図に明らかなように、実施例62では、軟骨伝導部5824は球面の一部をなす形状となっている。通常の受話器における耳あて部は、耳の前に閉空間を形成するために凹面をなしているが、本発明による軟骨伝導による受話器では逆に凸面となっていて、外耳道口を底とする耳の窪みによく馴染む自然な形状とすることができる。
図93は、実施例62のブロック図であり、同一部分には図92と同一番号を付す。また、ブロック図の構成は図29の実施例17と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付す。そして、これら同一または共通部分については、特に必要のない限り、説明を省略する。さらに、同一の番号を付さなかった部分についても、例えばテレビ電話用カメラ5817は、図29の携帯電話1601におけるテレビ電話用内側カメラ17に対応しており、その機能は基本的には同じである。また、実施例62は固定電話であるので携帯電話とはシステムが異なるが、電話機能としての基本は同じなので、図93でも電話機能部5845として同様の図示をしている。電源部についても同様であり、電源は異なるが基本的な機能は同じなので同一の番号を付している。なお、図93では、電話機本体5801または充電器5848にコードレス受話器(または子機)5881を置いて充電を行うための充電用接点1448aおよび1548aを図示している。
図94は、実施例62およびその変形例におけるコードレス受話器の側断面図であり、軟骨伝導振動源をなす圧電バイモルフ素子と凸面となっている軟骨伝導部との関係を示すものである。図94(A)は実施例62のコードレス受話器5881の側断面図を示し、軟骨伝導部5824の内側に振動伝導体5827を固設し、この振動伝導体5827に圧電バイモルフ素子2525dの中央部を支持させている。圧電バイモルフ素子2525dの両端はフリーに振動でき、その反作用が振動伝導体5827を介して軟骨伝導部5824に伝達される。
図94(B)は、実施例62の第1変形例におけるコードレス受話器5881aの側断面図である。実施例62のコードレス受話器5881aにおける軟骨伝導部5824は球面の一部であったが、第1変形例における軟骨伝導部5824では、その形状が鈍角の円錐(コーン)状となっている。軟骨伝導部5824aの内側に振動伝導体5827aを固設して圧電バイモルフ素子2525eの中央部を支持させる構成は実施例62と共通である。
図94(C)は、実施例62の第2変形例におけるコードレス受話器5881bの側断面図である。第2変形例のコードレス受話器5881bにおける軟骨伝導部5824bの形状は、第1変形例と同様にして鈍角の円錐(コーン)状となっている。図94(C)における第2変形例では、軟骨伝導部5824bの内側に振動伝導体5827bを固設して圧電バイモルフ素子2525fの一端を支持させている。圧電バイモルフ素子2525fの他端はフリーに振動でき、その反作用が振動伝導体5827bを介して軟骨伝導部5824bに伝達される。
図94(D)は、実施例62の第3変形例におけるコードレス受話器5881cの側断面図である。第3変形例のコードレス受話器5881cにおける軟骨伝導部5824cの形状は、第1変形例および第2変形例と同様にして鈍角の円錐(コーン)状となっている。図94(D)における第2変形例では、低音側担当の圧電バイモルフ素子2525gおよび高音側担当の圧電バイモルフ素子2525fを、その振動面側が接するようそれぞれ軟骨伝導部5824cの内側に直接貼り付けている。これにより、圧電バイモルフ素子2525gおよび圧電バイモルフ素子2525fの振動が直接に軟骨伝導部5824cに伝達される。このように、周波数特性の異なる複数の軟骨伝導振動源を相補的に用いることにより、軟骨伝導の周波数特性を改善することができる。
図94(B)から図94(D)の各変形例では凸面の軟骨伝導部を円錐(コーン)状としているが、このように構成することにより、外耳道口の大きさの個人差にかかわらず、円錐(コーン)の側面が外耳道口にフィットし、外耳道口の全周からの軟骨伝導を実現できる。
図95は、本発明の実施の形態に係る実施例63に関する断面図であり、ステレオヘッドフォン5981として構成される。図93(A)はステレオヘッドフォン5981全体の断面図であり、右耳用軟骨伝導部5924および左耳用軟骨伝導部5926を有する。右耳用軟骨伝導部5924および左耳用軟骨伝導部5926はそれぞれ円錐(コーン)状の凸形状となっている。そして、右耳用軟骨伝導部5924の内側には、圧電バイモルフ素子2525iおよび圧電バイモルフ素子2525jがその振動面側が接するようそれぞれ貼り付けられている。この構造は、図94(D)における実施例62の第3変形例と基本的に共通である。同様にして、左耳用軟骨伝導部5926の内側にも、圧電バイモルフ素子2525kおよび圧電バイモルフ素子2525mがその振動面側が接するようそれぞれ貼り付けられている。
図95(B)および図95(C)は、軟骨伝導部5924および5926を円錐(コーン)状の凸面としたことにより、外耳道口の大きさの個人差にかかわらず軟骨伝導部が外耳道口にフィットさせることができることを説明するためのものであり、それぞれ、実施例63における右耳用軟骨伝導部5924の部分を拡大して示している。図95(B)は、外耳道口30aが比較的小さい個人がステレオヘッドフォン5981を使用した場合を示し、軟骨伝導部5924の円錐の比較的先端部分が外耳道口30aの全周に接している。これに対し、図95(C)は、外耳道口30aが比較的大きい個人がステレオヘッドフォン5891を使用した場合を示し、軟骨伝導部5924の円錐がより深く外耳道に入り込んで円錐の比較的根本の部分が外耳道口30aの全周に接している。しかしながら、図95(B)および図95(C)を考察すれば明らかなように、軟骨伝導部5924の円錐が外耳道口に入り込む深さは軟骨伝導には大きな影響はなく、軟骨伝導部5924を円錐状としたことにより、外耳道口の大きさの個人差にかかわらず軟骨伝導部が常に外耳道口全周に好適に接することがわかる。
なお、実施例63のように、円錐形状の凸面をなす軟骨伝導部と、軟骨伝導部に振動を伝達する軟骨伝導振動源とを有する音声出力装置を一対用いてステレオオーディオ出力装置を構成すれば、軟骨伝導部を左右から挟み込んでそれぞれ両耳の外耳道口に押圧できるので、円錐形状の凸面をなす軟骨伝導部と外耳道口の全周との好適な接触を図ることができる。
なお、実施例63では、軟骨伝導部5924の円錐を、図94(D)における実施例62の第3変形例と同様に鈍角で構成しているが、これを必要に応じ鋭角に構成することは差し支えない。この場合、危険がないよう先端を丸めておく。また、実施例63では、軟骨伝導部5924および5926にそれぞれ同一の圧電バイモルフ素子を二つ貼り付けているが、これを図94(D)における実施例62の第3変形例のように周波数特性の異なるものとしてもよい。また、軟骨伝導部5924および5926にそれぞれ一つの圧電バイモルフ素子を設けるよう構成してもよい。その場合、直接貼り付けの他、図94(A)から図94(C)における実施例62およびその変形例のごとく振動伝導体を介して指示するよう構成してもよい。
上記の種々の本発明の特徴は上記の実施例に限らず、他の実施例による実施が可能である。例えば、上記実施例62および実施例63において、その軟骨伝導振動源として、圧電バイモルフ素子に換え、上記他の実施例に示したごとき電磁型振動子など他の振動源を採用することも可能である。また、上記実施例62は固定電話の受話器として、上記実施例63はヘッドフォンとして、それぞれ構成したが、上記の特徴の実施はこれに限るものではない。つまり上記の実施例において示した軟骨伝導振動部を凸面とすることに関する種々の特徴は、例えばイヤホン、または上記他の実施例に示したごときヘッドセットとして構成することも可能である。なお、本発明の固定電話への実施は、上記実施例62に示した特徴に限るものではなく、他の実施例において携帯電話等を実施例として示した種々の特徴は、適宜これらを固定電話の受話器として実施することが可能である。
図96は、本発明の実施の形態に係る実施例64に関する斜視図、断面図および上面図であり、携帯電話6001として構成される。なお、実施例64は、圧電バイモルフ素子によって構成される軟骨伝導振動源2525(以下圧電バイモルフ素子2525と表記)の保持構造を除き図83に示した実施例55と共通なので、共通する部分に同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図96の実施例64は、図83の実施例55と同様にして圧電バイモルフ素子2525の主振動方向はGUI表示部3405と直交する向きであるが、その保持構造に特徴がある。図96(A)は、実施例64の携帯電話を正面から見た斜視図であるが、圧電バイモルフ素子2525を保持する構造は、右耳用軟骨伝導部6024、左耳用軟骨伝導部6026およびこれらを繋ぐ連結部6027を硬質材料によって一体成型して成る。そして、右耳用軟骨伝導部6024の内側に圧電バイモルフ素子2525が支持され、その振動を直接右耳用軟骨伝導部6024に接触する右耳軟骨に伝達することが可能となっている。さらに、右耳用軟骨伝導部6024に支持された圧電バイモルフ素子2525の振動は振動伝導体となっている連結部6027を通じて左耳用軟骨伝導部6026にも伝わるので、左耳用軟骨伝導部6026を左耳軟骨に接触させることで軟骨伝導を得ることも可能となっている。
さらに、上記の硬質の一体成型構造は、エチレン系樹脂、ウレタン系樹脂など弾性体6065を介して携帯電話6001の筐体に取り付けられており、硬質の一体成型構造が携帯電話6001の筐体に直接接触することがないようになっている。従って、弾性体6065が振動隔離材および緩衝材として機能し、圧電バイモルフ素子2525の振動が携帯電話6001の筐体に伝わるのが緩和される。これによって携帯電話6001の筐体の振動によって発生する気導音によって隣にいる人に受話音が聞こえて迷惑をかけたりプライバシーが漏れたりする恐れが防止される。なお、弾性体6065は軟骨伝導のための振動は伝えるので、弾性体の角部の正面側を耳軟骨に当てても良好な軟骨伝導を得ることができる。
図96(B)は、図96(A)のB1−B1断面(携帯電話6001を中央から切った状態の断面)における携帯電話6001の上部断面図である。図96(B)は上部中央断面の様子を示しており、一体成型構造における右耳用軟骨伝導部6024の内側に圧電バイモルフ素子2525の端子2525bが設けられている側を保持端として片持ち支持されている様子がわかる。なお、詳細構造の図示は省略するが、右耳用軟骨伝導部6024の内側は端子2525bおよびその接続スペースならびに接続線取り出し溝を確保して圧電バイモルフ素子2525を保持している。
一方、図96(B)から明らかなように、圧電バイモルフ素子2525の他端2525cは自由振動端となっているとともに、慣性ウエイト(慣性錘)6025が取り付けられている。慣性ウエイト6025は他端2525cの重量を増加させることによって、他端2525cの動きを慣性によって抑制し、その反作用として圧電バイモルフ素子2525の振動により保持端側から取り出す振動エネルギーを増加させるためのものである。言い換えると、慣性ウエイト6025側を支点として圧電バイモルフ素子2525の保持端側が硬質の一体成型構造とともに振動する成分を増加させるものである。
また、図96(B)から明らかなように、連結部6027の厚みは、右耳用軟骨伝導部6024および左耳用軟骨伝導部6026よりも薄くなっており、携帯電話6001の内部部品を迂回して天秤棒状に右耳用軟骨伝導部6024と左耳用軟骨伝導部6026を連結するようになっている。これによって、携帯電話6001の上部に配置するのが好適な内側カメラ6017等をレイアウトすることが可能となっている。このように連結部6027の厚みは、右耳用軟骨伝導部6024と左耳用軟骨伝導部6026の位置関係を剛体的に固定するのに充分であればよく、図96に示す以外の連結構造も可能である。また、振動伝導体としての機能面から見た連結部6027の断面積も比較的小さくて充分なので、この点からも連結部6027に関しては携帯電話6001内部の部品配置との関係で自由度が大きい。
図96(C)は、携帯電話6001を上面から見た外観図であり、右耳用軟骨伝導部6024、左耳用軟骨伝導部6026およびこれらを繋ぐ連結部6027からなる一体成型構造が露出している。またその両側を弾性体6065がはさむ形で露出している。図96(C)には、内部の圧電バイモルフ素子2525、慣性ウエイト6025および内側カメラ6017、並びに右耳用軟骨伝導部6024、連結部6027および左耳用軟骨伝導部6026の境目の相互関係を破線で示している。
図96(D)は、図96(A)〜(C)のB2−B2断面における携帯電話6001の上部側断面図である。側断面図においても、右耳用軟骨伝導部6024が携帯電話6001の筐体に直接接触することがないよう、振動隔離材および緩衝材としての弾性体6065を介して携帯電話6001の筐体に取り付けられているのがわかる。
図97は、本発明の実施の形態に係る実施例65に関する斜視図、断面図および上面図であり、携帯電話6101として構成される。実施例65は、右耳用軟骨伝導部6124、左耳用軟骨伝導部6126および連結部6127の形状およびこれに伴う弾性体6165の形状が異なる以外は図96の実施例64と共通なので、主に異なる部分について説明し、共通する部分には同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図97(A)の斜視図から明らかなように、実施例65においては右耳用軟骨伝導部6124、左耳用軟骨伝導部6126およびこれらを繋ぐ連結部6127が携帯電話6101の上部を覆う形状で硬質材料によって一体成型されている。これに伴って、弾性体6165は、この一体成型構造と携帯電話6101の筐体に上下から挟まれる位置に介在し、両者が直接接触することがないようにしている。
図97(B)は、図97(A)のB1−B1断面における携帯電話6001の上部断面図である。B1−B1断面は携帯電話6001を中央から切った状態の断面なので、図96(B)の実施例64との間で基本的な差はないが、B1−B1断面を携帯電話6101の正面側または背面側に近づくよう平行移動した場合の断面は、図97(A)からも明らかなように図96の実施例64とは異なったものとなる。なお、図97(B)からわかるように、実施例65では、端子が設けられていない側の端部2525cを保持端として圧電バイモルフ素子2525が右耳用軟骨伝導部6124の内側に片持ち支持されている。一方、圧電バイモルフ素子2525の端子2525bが設けられている端部は自由振動端となっていて、慣性ウエイト6125が取り付けられている。なお、詳細構造の図示は省略するが、慣性ウエイト6125の内側は、端子2525bおよびその接続スペースならびに接続線取り出し溝を確保して圧電バイモルフ素子2525に取り付けられている。このような保持端と慣性ウエイト取り付け端の選択は、実施例65に特有のものではなく、実施例64に実施例65の取り付け方を採用してもよく、またその逆も差し支えない。
図97(B)から明らかなように、実施例65においても連結部6127の厚みは、右耳用軟骨伝導部6124および左耳用軟骨伝導部6126よりも薄くなっており、携帯電話6101の内部部品を迂回して天秤棒状に右耳用軟骨伝導部6124と左耳用軟骨伝導部6126を連結するようになっている。実施例65では、連結部6127の幅が広く、上面全てを覆うようになっており、強度的にみて連結部6127の厚みをより薄くすることが可能となる。さらに、設計によっては、連結部6127が上面だけでなく正面側および背面側に回り込むよう構成してより強度を強くすることが可能であり、連結部6127の厚みをより薄くすることができる。
図97(C)は、携帯電話6101を上面から見た外観図であり、右耳用軟骨伝導部6024、左耳用軟骨伝導部6026およびこれらを繋ぐ連結部6027からなる一体成型構造だけが見えている。なお、図97(C)においても、内部の圧電バイモルフ素子2525、慣性ウエイト6125および内側カメラ6117、並びに右耳用軟骨伝導部6124、連結部6127および左耳用軟骨伝導部6126の境目の相互関係を破線で示している。
図97(D)は、図97(A)〜(C)のB2−B2断面における携帯電話6101の上部側断面図である。実施例97の側断面図においても、右耳用軟骨伝導部6124が携帯電話6101の筐体に直接接触することがないよう、振動隔離材および緩衝材としての弾性体6165を介して携帯電話6101の筐体に取り付けられているのがわかる。
図98は、本発明の実施の形態に係る実施例66に関する斜視図、断面図および上面図であり、携帯電話6201として構成される。実施例66も、右耳用軟骨伝導部6224、左耳用軟骨伝導部6226および連結部6227の形状およびこれに伴う弾性体6265の形状が異なる以外は図96の実施例64または図97の実施例65と共通なので、主に異なる部分について説明し、共通する部分には同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図98(A)の斜視図から明らかなように、実施例66においては右耳用軟骨伝導部6224、左耳用軟骨伝導部6226は外部に露出しているが、これらは筐体の内側で繋がれており外部からは見えない。これに伴って、弾性体6265も、外部からは、右耳用軟骨伝導部6224および左耳用軟骨伝導部6226を携帯電話6201の筐体から隔離する部分のみで見えているだけであるが、軟骨伝導部と筐体が直接接触しないようにしている。従って、外観に関する限り、実施例66は外観上、図83の実施例55と共通といえる。しかしながらその内部構造は以下に説明するように異なる。
図98(B)は、図98(A)のB1−B1断面における携帯電話6201の上部断面図である。図98(B)から明らかなように、実施例66では、右耳用軟骨伝導部6224および左耳用軟骨伝導部6226の間は、連結部6227によって筐体の内側で繋がれている。なお、連結部6227は筐体内部に触れることない。実施例98のように、圧電バイモルフ素子2525を支持する右耳用軟骨伝導部6224の振動を左耳用軟骨伝導部6226に伝達する機能、および、右耳用軟骨伝導部6224と左耳用軟骨伝導部6226を剛体的に一体化する機能は、筐体内側の連結部6227によっても可能である。
図98(C)は、携帯電話6201を上面から見た外観図であり、携帯電話上部の両角に、それぞれ右耳用軟骨伝導部6224と左耳用軟骨伝導部6226およびこれらの振動を筐体から遮断する弾性体6265が見えている。なお、図98(C)においても、内部の圧電バイモルフ素子2525、慣性ウエイト6225および内側カメラ6217および連結部6227の相互関係を破線で示している。
図98(D)は、図98(A)〜(C)のB2−B2断面における携帯電話6201の上部側断面図である。実施例98の側断面図は、図97(B)の実施例65との間で基本的な差はないが、B2−B2断面を携帯電話6201の側面から中央側に平行移動した場合の断面は、図98(A)からも明らかなように図96の実施例64とは異なったものとなる。
以上の図96から図98の実施例64から実施例66では、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向はGUI表示部3405と直交する向きとして説明した。しかしながら、これらの実施例において圧電バイモルフ素子を保持する向きはこれに限るものではなく、圧電バイモルフ素子2525の主振動方向をGUI表示部3405と平行な方向(携帯電話の上下方向)となるようにしてもよい。これらの圧電バイモルフ素子の主振動方向の設定については、図83の実施例55との関係において図86の実施例56で既に詳述したとおりである。
図99は、本発明の実施の形態に係る実施例67に関する斜視図および断面図であり、携帯電話6301として構成される。実施例67は、右耳用軟骨伝導部と左耳用軟骨伝導を連結部で剛体的に連結している図98の実施例66の構造を図83の実施例55に応用したものであり、その他の点においては共通なので、共通する部分には図83の実施例55と同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
実施例67は、図99(B)に明らかなように右耳用軟骨伝導部6324および左耳用軟骨伝導部6326の間が、連結部6327によって筐体の内側で剛体的に一体に繋がれている。また、連結部6327は筐体内部に触れることはない。この点では、実施例67は、図98の実施例66と共通といえる。しかしながら、機能的に見ると、図99の実施例67では、圧電バイモルフ2525の振動が右耳用軟骨伝導部6324および左耳用軟骨伝導部6326にそれぞれ直接伝えられており、その意味だけでは連結部6327による振動伝達路は冗長となっている。
しかしながら、実施例67のように右耳用軟骨伝導部6324と左耳用軟骨伝導部6326の間で振動を伝達する必要がない場合においても、連結部6327によって両者を一体化することは、筐体への取り付け安定化の上で大きな意義がある。具体的に説明すると、一般に、右耳用軟骨伝導部6324と左耳用軟骨伝導部6326から筐体への振動伝達を抑制するために両者間の弾性体6365を柔らかくしたり厚くしたりすると、その反面で、右耳用軟骨伝導部6324と左耳用軟骨伝導部6326の筐体への保持が不安定になる。これに対し、実施例67のように連結部6327によって右耳用軟骨伝導部6324と左耳用軟骨伝導部6326を剛体的に連結すると両者の相互位置が保たれ、弾性体6365を柔らかくしたり厚くしたりしても両者をより安定して筐体に取り付けることができる。
図100は、本発明の実施の形態に係る実施例68に関する断面図であり、携帯電話6401として構成される。実施例68は、右耳用軟骨伝導部と左耳用軟骨伝導を連結部で剛体的に連結する図97の実施例65の構造を図77の実施例52に応用したものであり、その他の点においては共通なので、共通する部分には図77の実施例52と同一番号を付して必要のない限り説明を省略する。
図100の実施例68では、図97の実施例65と同様にして、右耳用軟骨伝導部6424、左耳用軟骨伝導部6426およびこれらを繋ぐ連結部6427が携帯電話6401の上部を覆う形状で硬質材料によって一体成型されている。また、弾性体6465は、この一体成型構造と携帯電話6401の筐体に上下から挟まれる位置に介在し、両者が直接接触することがないようにしている。右耳用軟骨伝導部6424には右耳用圧電バイモルフ素子2525qが、左耳用軟骨伝導部6426には左耳用圧電バイモルフ素子2525pが、それぞれ素子の片側をカンチレバー構造に支持する形で取り付けられている。実施例77と同様にして、右耳用圧電バイモルフ素子2525qおよび左耳用圧電バイモルフ素子2525pは互いに独立に制御可能である。
図100の実施例68でも、図99の実施例67と同様、連結部6427の第一の意義は右耳用軟骨伝導部6424と左耳用軟骨伝導部6326を剛体的に連結することで両者の相互位置を保ち、弾性体6465を柔らかくしたり厚くしたりしても両者をより安定して筐体に取り付けることができるようにすることにある。
図100の実施例68では、さらに、連結部6427を介し、左耳用圧電バイモルフ素子2525pの振動が右耳用軟骨伝導部6424の方向に伝達されるとともに、右耳用圧電バイモルフ素子2525qの振動が左耳用軟骨伝導部6426の方向に伝達される。このようにして、実施例68では、右耳用軟骨伝導部6424、左耳用軟骨伝導部6426およびこれらを繋ぐ連結部6427の一体成型構造の中で、左耳用圧電バイモルフ素子2525pの振動と右耳用圧電バイモルフ素子2525qの振動が混合される。この結果、左耳用圧電バイモルフ素子2525pと右耳用圧電バイモルフ素子2525qに互いに波形反転した振動を発生させたとき一体成型構造の中で互いの振動が打ち消し合い、一体成型構造全体から携帯電話6401の筐体に伝わる振動に基づく気導音の発生が抑制される。なお、このような状態においても、右耳用軟骨伝導部6424および左耳用軟骨伝導部6426の一方を耳軟骨に接触させたときは、直接保持している右耳用圧電バイモルフ素子2525qまたは左耳用圧電バイモルフ素子2525pの振動の方が連結部6427を経由する振動よりも大きいのでその差分が耳軟骨に良好に伝導する。
以上の各実施例に示した種々の特徴はそれぞれの実施例による実施に限るものではなく、他の種々の実施例において実施可能である。例えば、図100の実施例68を変形して右耳用圧電バイモルフ素子2525qを省略すれば図97の実施例65に準じた実施が可能となる。換言すれば、左耳用軟骨伝導部6426に支持された圧電バイモルフ素子2525pの振動が連結部6427を通じて右耳用軟骨伝導部6424にも伝わるので、圧電バイモルフ素子を保持しない右耳用軟骨伝導部6424を右耳軟骨に接触させても、良好な軟骨伝導を得ることが可能となる。この変形例にみられるように、連結部を通じて振動を伝達する軟骨伝導振動源の保持は、図97の実施例65におけるように圧電バイモルフ素子2525を横長方向に保持するものに限らず、上記図100の実施例68の変形におけるように圧電バイモルフ素子2525pを縦長方向に保持するものも可能である。これらは一例であって、携帯電話内部の種々の部品レイアウトに従い、この他の種々の形および向きで軟骨伝導振動源を配置保持することも可能である。
図101は、本発明の実施の形態に係る実施例69のシステム構成図および使用説明図である。図101(A)に示すように実施例69は、通常の携帯電話1601と軟骨伝導
部6524を持つ超小型携帯電話6501よりなる携帯電話システムとして構成されており、両者の間はBluetooth(登録商標)などによる通信システムの電波6585により近距離通信可能である。実施例69の携帯電話システムは、図27および図28の実施例16および図29のブロック図に示す実施例17と共通するところが多い。従って、実施例69の説明は、外観については図27、内部構成については図29のブロック図をベースに行い、共通の部分には同一番号を付して必要のないかぎり、説明を省略する。
図101の実施例69が、実施例実施例16や実施例17と異なるのは、上記のように、通常の携帯電話1601と近距離通信可能な軟骨伝導出力部分が、独立に機能可能な超小型携帯電話6501として構成されている点である。超小型携帯電話6501は、操作部6509および表示部6505により通常の携帯電話の通話操作が可能であるが、その送話部および受話部に特徴がある。まず、受話部については、携帯電話上部の角に軟骨伝導部6524が設けられその内部で縦方向に圧電バイモルフ素子2525を片持ち保持している。この意味では実施例69の超小型携帯電話6501の構成は図66の実施例43と共通している。一方、送話部については、携帯電話下部の角近辺に接触型の骨導マイク6523が設けられている。そして、超小型携帯電話6501は、軟骨伝導部6524を耳珠などの耳軟骨に接触させるとともに、骨導マイク6523を頬骨または下顎骨に当てて使用する。
図101(B)は、図2(A)に示すような要領で表示部6505が頬に面する向きで軟骨伝導部6524を耳珠などの耳軟骨に接触させるとともに、骨導マイク6523を頬骨に当てている状態を示す。なお、図101(B)では、上下の位置関係を示すために軟骨伝導部6524および骨導マイク6523を図示しているが、同図のようにして使用した場合、これらは背後に位置することになるので、実際には正面からは見えない。
一方、図101(C)は、図21(A)に示すような要領で表示部6505が正面を向く向きで側面側より軟骨伝導部6524を耳珠などの耳軟骨に接触させるとともに、骨導マイク6523を頬骨に当てている状態を示す。実施例69の超小型携帯電話6501は小さいので、以上のように図101(B)または図101(C)いずれの形でも、超小型携帯電話6501を持ちやすい方向にして使用することができる。なお、図101(C)の要領で使用したときは、指が表示面6505を掴まないよう注意すれば、頬が表示面に接触して6505が汚れるのを防止することができる。なお、骨導マイク6523については超小型携帯電話6501を顔に当てる角度を変えると軟骨伝導部6524を耳珠などの耳軟骨に接触させながら下顎骨の上部に当てることもできる。
通常の携帯電話1601と超小型携帯電話6501はそれぞれ別の電話番号を持っているので互いに独立して使用可能であるが、次に、近距離通信による通常の携帯電話1601と超小型携帯電話6501の連携について説明する。通常の携帯電話1601は、その大きさのため、待ち受け状態ではバッグの中に収納されることも少なくないが、超小型携帯電話6501はワイシャツのポケット等に気軽に入れて常に肌身離さず所持することができる。
両者の連携の第一は、上記のような所持状態において、超小型携帯電話6501を通常の携帯電話1601の着信バイブレータとして使用することである。つまり、通常の携帯電話1601に着信があったとき、近距離無線システムの電波6585によりこれを超小型携帯電話6501に伝達し、超小型携帯電話6501の着信バイブレータを作動させることで、通常の携帯電話1601がバッグ等に入っていても確実に着信に気づくことができる。なお、後述のように、実施例69では超小型携帯電話6501の着信バイブレータとして偏心モータ等を用いた専用着信バイブレータを採用しているが、実施例13に示すように軟骨伝導振動部を兼用して着信バイブレータとして振動させることも可能である。
両者の連携の第二は、上記のような所持状態において、超小型携帯電話6501を通常の携帯電話1601の受話器として使用することである。つまり、通常の携帯電話1601に着信があったとき、近距離無線システムの電波6585によりこれを超小型携帯電話6501に伝達し、超小型携帯電話6501において受信操作をしたのち、その軟骨伝導部6524および骨導マイク6523により通話を行う。これによって、通常の携帯電話1601において軟骨伝導の長所を生かした通話が可能である。このとき通常の携帯電話1601をバッグ等に入れたままにしておいてよいことは言うまでもない。
両者の連携の第三は、通常の携帯電話1601によるテレビ電話の際に超小型携帯電話6501を受話器として使用することである。テレビ電話の際は通常の携帯電話1601を顔から離して通話するのでマイクが口から遠くなるとともに相手の声も耳から離れたスピーカ出力されることになり、音響面では騒音の影響やプライバシー漏洩など支障が多い。これに対し、超小型携帯電話6501を受話器として使用すれば、通常の携帯電話1601におけるテレビ電話の際に軟骨伝導の長所を生かした通話が可能となる。以上の連携の詳細は後述する。
図102は、実施例69のブロック図であり、同一部分には図101と同一番号を付す。上記のように図102のブロック図は、図29のブロック図と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付している。特に通常携帯電話1601は図29と図102では同じ構成である。但し、図102では一部の構成を省略している。なお、説明の都合上、図29において情報に配置図示されていた通常の携帯電話1601を、図102では、下方に配置図示している。
通常の携帯電話1601において着信があったとき、近距離通信部1446からの電波6585により近距離通信部6546にその旨が伝達され、制御部6539は予め設定された通常携帯電話着信報知用パターンにて着信バイブレータ6525を振動させる。また、制御部6539は表示部6505に通常の携帯電話1601への着信の旨を表示する。
操作部6509によって受信操作を行うと、その旨が近距離通信部6546からの電波6585により近距離通信部1446に伝達され、通常の携帯電話1601の制御部239は電話機能部45による通話を開始する。これによって、通常の携帯電話1601の受話処理部212から近距離通信部1446を介して超小型携帯電話6501の近距離通信部6546に受話音信号が伝達される。超小型携帯電話6501の受話処理部6501はこれに応じて軟骨伝導部6524を振動させる。一方、骨導マイク6523が拾った送話音は、超小型携帯電話6501の送話処理部6522から近距離通信部6546を介して通常の携帯電話1601の近距離通信部1446に伝達される。通常の携帯電話1601はこれに応じて電話通信部47を介して送話音信号を送信する。
一方、超小型携帯電話6501の着信があったときも、制御部6539が予め設定された超小型携帯電話着信報知用パターンにて着信バイブレータ6525を振動させる。また、制御部6539は表示部6505に超小型携帯電話6501への着信の旨を表示する。
操作部6509によって受信操作を行うと、制御部6539は電話機能部6545による通話を開始する。これによって、受話処理部6512は電話通信部が受信した受話信号に応じて軟骨伝導部6524を振動させる。一方、骨導マイク6523が拾った送話音に基づいて送話処理部6522は電話通信部6547を介して送話音信号を送信する。
以上のようにして、いずれの着信かは、着信バイブレータ6525の振動パターンを変えて設定しておくことによって識別できる。また、上記のように表示部6505においてもいずれの着信であるかが表示される。いずれの着信であっても、上記のように操作部6509の同じ操作により受信を開始することができる。なお、制御部6539は、他の実施例と同様にして記憶部6537に記憶されるプログラムに従って動作する。記憶部6537はまた、制御部6539の制御に必要なデータを一時記憶するとともに、種々の測定データや画像も記憶することができる。電源部6548は、超小型携帯電話6501の各部に必要な電源を供給する。
図103は、本発明の実施の形態に係る実施例70の斜視図であり、携帯電話6601として構成される。実施例70の携帯電話6601は、図101および図102における実施例69の携帯電話システムと共通するところが多いので、共通の部分には同一番号を付して必要のないかぎり、説明を省略する。
図103の実施例70が、実施例69と異なるのは、近距離通信可能な軟骨伝導出力部分が独立に機能可能な携帯電話として構成されるのではなく、携帯電話6601の一部をなす分離可能な送受話部として構成されている点である。この意味では実施例70の構成は図24の実施例13と共通である。以下具体的に図103に基づいて説明する。
携帯電話6601は、図103(A)に示すように携帯電話下部6601aおよび携帯電話上部6601bからなり、両者は分離可能である。なお、携帯電話下部6601aと携帯電話上部6601bの結合分離は、面ファスナーや嵌め合い構造など適宜の周知手段を活用する。携帯電話上部6601bにおいては、他の実施例と同様にして携帯電話上部の角に軟骨伝導部6626が設けられその内部で横縦方向に圧電バイモルフ素子2525を片持ち保持している。この構造は、左右の向きは逆であるが、図65の実施例42と共通している。一方、送話部については、携帯電話上部の他方の角近辺に接触型の骨導マイク6523が設けられている。上部用操作部6609は携帯電話上部6601bを分離した際に受信操作などを行うためのもので、図103(A)のように携帯電話下部6601aに結合されているときは誤動作防止のため操作が無効化されている。
携帯電話6601は、通常は図103(A)のようにして携帯電話下部6601aおよび携帯電話上部6601bが結合されている状態で使用される。このとき、圧電バイモルフ素子2525の振動および通常のマイク223が有効化されるとともに、骨導マイク6523および通常のイヤホン213は無効化される。この状態での使用は他の携帯電話の実施例と共通である。
実施例70の携帯電話6601は、さらに図103(B)のように携帯電話上部6601bを携帯電話下部6601aから分離して使用可能である。このとき、携帯電話上部6601bでは、圧電バイモルフ素子2525の振動とともに骨導マイク6523および上部用操作部6609の操作が有効化される。また、携帯電話下部6601aでも、通常のマイク223とともに通常のイヤホン213も有効化される。なお、上記の骨導マイク6523、通常のイヤホン213および上部用操作部6609における有効化と無効化との切換えは、後述するように携帯電話下部6601aと携帯電話上部6601bが結合しているか分離しているかを判断することにより自動的に行われる。このようにして、図103(B)の状態では、携帯電話下部6601aが独立した通常の携帯電話として機能するとともに、携帯電話上部6601bは携帯電話下部6601aのためのワイヤレスの送受話部として機能する。
上記のような図103(B)の状態での使用は、図101の実施例69に準じて理解できる。すなわち、分離された携帯電話上部6601bは、実施例69の超小型携帯電話と同様にして、第一に携帯電話下部6601aの着信バイブレータとして機能し、第二に携帯電話下部6601aが例えばバッグ等に入れたままでの軟骨伝導通話を可能にし、第三に携帯電話下部6601aを顔から離したテレビ電話における軟骨伝導通話を可能にする。軟骨伝導通話の際には、実施例69の超小型携帯電話と同様にして、軟骨伝導部6626を耳珠などの耳軟骨に接触させるとともに、骨導マイク6523を頬骨または下顎骨に当てて使用する。
図103(B)に示すように、携帯電話上部6601bには、衣服のポケットの口等に挟むためのクリップ6601cが設けられている。このクリップ6601cは携帯電話下部6601aとの結合状態では、収納凹部6601内に納まっていて図103(A)に示すように外部からは見えない。携帯電話上部6601bにはさらに一対の充電接点6648aが設けられており、結合状態では携帯電話下部6601aの副充電接点1448bと接触する。これは、図103(A)における結合状態において、携帯電話下部6601aに充電が行われるとき副充電接点1448bと充電接点6648aの接触を介して携帯電話上部6601bを共に充電するためである。また、副充電接点1448bと充電接点6648aの接触および非接触は、上述の携帯電話下部6601aと携帯電話上部6601bとの結合および分離の判断に利用され、骨導マイク6523、通常のイヤホン213および上部用操作部6609における有効化と無効化とを自動的に切換える。
図104は、実施例70のブロック図であり、同一部分には図102と同一番号を付す。図104は、図102における実施例69のブロック図と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付し説明を省略する。
図104の携帯電話上部6601bが図102の超小型携帯電話6501と異なる第一点は、充電接点6648aから電源部6648が充電されるようになっている点である。第二点は、上部用操作部6609が設けられていて、上記のように分離時の受信操作を制御部6639に伝える点である。なお、制御部6639は充電接点6648aの状態に基づいて接触状態か非接触状態かを判断し、接触状態と判断している状態において上部用操作部6609を操作しても制御部6639はこれを無効として受け付けない。第三点は、携帯電話上部6601bに独立して機能する電話機能部がなく携帯電話上部6601bのための送受話部6645に置換されている点である。第四点は、上記のように充電接点6648aが接触状態にあると判断している状態においては制御部6639が送受話部6645の骨導マイク6523を無効化する点である。
図104の携帯電話下部6601aが図102の通常携帯電話1601と異なる第一点は、電源部1448が主充電接点1448aを介して外部の充電器から充電されるとき、その一部を副充電接点1448bを介して携帯電話上部6601bの充電接点6648aに供給できるよう構成されている点である。第二点は、副充電接点1448bが接触状態にあると判断している状態においては制御部239が電話機能部45の通常のイヤホン213を無効化する点である。
図105は、本発明の実施の形態に係る実施例71の斜視図および断面図であり、携帯電話6701として構成される。実施例71の携帯電話6701は、図103および図104における実施例70の携帯電話6601と共通するところが多いので、共通の部分には同一番号を付して必要のないかぎり、説明を省略する。
図105の実施例71と実施例70との主な違いは、携帯電話が上部と下部に分離可能であることを活用し、両者が結合している状態において上部に設けられた軟骨伝導部の振動が下部に伝わりにくくした構造にある。以下具体的に図105に基づいて説明する。
図105(A)に示すように、実施例71の携帯電話6701は、実施例70と同様に携帯電話下部6701aおよび携帯電話上部6701bからなり、両者は分離可能である。携帯電話上部6701bにおいては、携帯電話上部の左角に硬質の左耳用軟骨伝導部6726が設けられ、その内部で横縦方向に圧電バイモルフ素子2525を片持ち保持している。さらに、携帯電話上部6701bには、携帯電話上部の右角に硬質の右耳用軟骨伝導部6724が設けられている。左耳用軟骨伝導部6726と右耳用軟骨伝導部6724の間は同一材料の硬質連結部で一体連結されており、左耳用軟骨伝導部6726で受けた圧電バイモルフ素子2525の振動を右耳用軟骨伝導部6724にも伝達している。この意味では、実施例71は、図96から図99における実施例64から実施例67と共通である。図105では煩雑を避けるため図示していないが、左耳用軟骨伝導部6726と右耳用軟骨伝導部6724を連結する連結部としては、図96から図99における連結部6027、6127、6227および6327における構造またはこれに類する構造を適宜採用することができる。なお、実施例71の携帯電話上部6701bには、骨導マイクは設けられていない。
実施例71では、図105(A)に示すように携帯電話下部6701aの上端に弾性体6765を固着することにより、携帯電話上部6701bの圧電バイモルフ素子2525の振動が携帯電話下部6701aに伝わりにくいようにしている。弾性体6765の意義は、図96から図99の実施例64から実施例67における弾性体連結部6065、6165、6265および6365と同様である。なお、実施例71の場合、結合部分の片側が弾性体であることに着目し、その弾性を利用して面ファスナーを構成することが可能である。例えば、図105(B)の部分断面図に示すように、携帯電話上部6701b側の結合面に茸状突起6701cを複数設け、対向する弾性体6765側の面のそれぞれ対応する場所に小さな孔6765aを複数設けるようにする。なお、孔6765aの径は、茸状突起6701cの頭の部分よりは小さく根本の部分より大きいように設定しておく。このような構成により、茸状突起6701cを弾性体6765の弾性に抗して孔6765aにそれぞれ嵌入させれば携帯電話上部6701bと弾性体6765を結合することができる。なお、図105(B)に示した面ファスナー構造は、弾性体6765と携帯電話下部6701aとの固着にも原理的に利用することができる。但しこの場合、携帯電話下部6701aの上面に設けるべき茸状突起の頭は105(B)のような滑らかな球状ではなく、例えば鋭利な三角錐とし、一度弾性体の孔に食い込ませれば抜けない、いわゆる「嵌め殺し」の構造とする。
図105(C)は、携帯電話上部6701bを携帯電話下部6701aから分離した状態を示す。図から明らかなように、副充電接点1448bは弾性体6765の表面に設けられている。なお、図105(C)では、煩雑を避けるため、図105(B)に示した茸状突起6701cおよび孔6765aの図示を省略している。実施例71では、携帯電話上部6701bを分離した状態のとき、受話は右耳用軟骨伝導部6724または左耳用軟骨伝導部6726のいずれかを耳軟骨に接触させるが、送話については図105(A)の結合状態と同様、携帯電話下部6701aの通常のマイク223を用いる。テレビ電話の際には、通常のマイク223をテレビ電話モードにして使用する。なお、耳用軟骨伝導部6724および左耳用軟骨伝導部6726はいずれが右耳用でも左耳用でもないので任意に耳軟骨に接触させることができる。またいずれか一方の軟骨伝導部ではなく両者を活用し、耳軟骨の二か所に接触させて使用してもよい。
図106は、実施例71のブロック図であり、同一部分には図105と同一番号を付す。図106のブロック図は、図104における実施例70のブロック図と共通する部分が多いので対応する部分にはこれらの各部と同一の番号を付し説明を省略する。図106が図104と異なるのは、送話処理部と骨導マイクが省略されている点である。
本発明の各実施例に示した種々の特徴は、必ずしも個々の実施例に特有のものではなく、それぞれの実施例の特徴は、その利点が活用可能な限り、適宜、変形して活用したり、組合せて活用したりすることが可能である。例えば、実施例69から実施例71に示した骨導マイクは、気導音を拾う通常のマイクで構成してもよい。また、実施例70において、実施例71と同様にして骨導マイクを省略してもよい。逆に、実施例71において骨導マイクを採用することも可能である。このときは右用軟骨伝導部6724と左用軟骨伝導部6726に挟まれる携帯電話上部6701の中央に骨導マイクを配置するのが好適である。この場合、軟骨伝導部と骨導マイクが近くなるので、骨導マイクを耳の後ろの骨に当て、軟骨伝導部については図33の実施例20や図37の実施例24のように耳軟骨の裏側に当てるような使用法も可能である。
また、実施例69から実施例71における軟骨伝導部は圧電バイモルフ素子を軟骨伝導振動源として構成したが、これに限るものではなく、他の実施例に示したような電磁型振動子を軟骨伝導振動源として採用してもよい。また実施例70では携帯電話上部の角部の一方に軟骨伝導振動源を支持するとともに他方に骨導マイクを配置しているが、携帯電話上部の両角部にそれぞれ右耳用および左耳用の軟骨伝導振動源を設ける場合、骨導マイクはこれら一対の軟骨伝導振動源に挟まれる携帯電話上部中央に配置するのが好適である。
さらに、実施例70または実施例71における携帯電話下部から携帯電話上部への充電手段としては、実施例に示したような電気接点によるものに限らず、例えば電磁誘導型の無接点充電によるものとして構成してもよい。
なお、実施例71においては、弾性体6765は携帯電話下部側に固着するものとし、携帯電話上部をこの弾性体6765に着脱可能としているが、このような実施に限るものではない。例えば、実施例71とは逆に、弾性体6765を携帯電話上部側に固着し、携帯電話下部の方を弾性体6765に着脱可能なものとして構成することも可能である。