<実施例1>
図1は、本発明の実施例の相続関連書類作成システムの構成図である。
本実施例の相続関連書類作成システムは、コンピュータ1と、出力装置(プリンタ)11とによって構成される。コンピュータ1は、プログラムを実行するプロセッサと、プロセッサが実行するプログラムやデータを格納する記憶デバイスと、所定のプロトコルに従って、他の装置(例えば、プリンタ11)との通信を制御する通信インターフェースとを有する。
コンピュータ1は、入力インターフェース及び出力インターフェースを有する。入力インターフェースは、オペレータからの入力を受けるインターフェースであり、具体的には、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置12で構成される。出力インターフェースは、ディスプレイ装置13で構成され、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力するインターフェースである。
コンピュータ1では、相続に関する情報を処理するプログラムが実行される。具体的には、コンピュータ1では、法定相続特定プログラム6、遺産分割特定プログラム7、遺留分特定プログラム8及び書類作成プログラム9が動作する。法定相続特定プログラム6は、データベース3〜5に格納された情報を用いて、被相続人、法定相続人、代襲相続人、法定相続分及び根拠条文を特定する。遺産分割特定プログラム7は、データベース3〜5に格納された情報を用いて、被相続人、法定相続人、代襲相続人及び法定相続分を特定する。遺留分特定プログラム8は、データベース3〜5に格納された情報に基づいて、被相続人、法定相続人、代襲相続人、遺留分及び根拠条文を特定する。書類作成プログラム9は、法定相続特定プログラム6、遺産分割特定プログラム7及び遺留分特定プログラム8が特定した情報に基づいて、相続に必要な書面(例えば、相続関係説明図、遺産分割協議書、遺産分割証明書)を作成し、プリンタ11に出力する。
コンピュータ1は、相続に関する情報を格納する関係者データベース3及び財産データベース5を有し、民法条文データベース4を有する。関係者データベース3は、相続に関係する人の情報を格納するデータベースであり、その詳細は図2A、図2B、図3、図4、図5、図6を用いて後述する。民法条文データベース4は、被相続人及び相続人に適用される民法の情報を格納するデータベースであり、その詳細は図7、図8、図9、図10、図11A、図11Bを用いて後述する。財産データベース5は、相続される遺産の情報を格納するデータベースであり、その詳細は図12を用いて後述する。
コンピュータ1のプロセッサは、記憶デバイスに格納されたプログラムを実行する。記憶デバイスは、不揮発性の記憶素子であるROMと、揮発性の記憶素子であるRAMと、不揮発性記憶デバイス(例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等)とを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。不揮発性記憶デバイスは、大容量の記憶デバイスであり、サーバ12のプロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを格納する。すなわち、プログラムは、不揮発性記憶デバイスから読み出されて、RAMにロードされて、プロセッサによって実行される。
コンピュータ1のプロセッサが実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD−ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してコンピュータ1に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性記憶デバイスに格納される。このため、コンピュータ1は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
コンピュータ1は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。また、コンピュータ1の各機能部は異なる計算機上で実現されてもよい。
プリンタ11は、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で紙媒体に出力するインターフェースである。
オペレータは、相続に関する情報(被相続人、関係者、財産など)をコンピュータ1の入力インターフェースに入力し、入力された相続に関する情報の演算結果は出力インターフェース及びプリンタ11から出力される。
本実施例の相続関連書類作成システムは、子機(クライアント)と、親機(サーバ)と、出力装置(プリンタ)とによって構成してもよい。クライアントとサーバとは、ネットワークを介して接続される。この場合、クライアントは、相続に関する情報の入力を受け付け、相続に関する情報を演算処理する。サーバは、データベース(関係者データベース3、民法条文データベース4及び財産データベース5)を有し、コンピュータ1に入力された相続に関する情報や、演算処理の結果を格納する。
なお、クライアントで動作するプログラムは、サーバで動作するプログラムと連携して、相続に関する情報の演算処理を実行してもよい。また、クライアントでは、オペレータへの入出力インターフェースを提供するプログラム(例えば、ウェブブラウザ)が動作し、相続に関する情報の演算処理をサーバが実行してもよい。
次に、関係者データベース3の構成を説明する。関係者データベース3は、関係者テーブル31(図2A、図2B)、夫婦テーブル33(図3)、親子テーブル34(図4)、養子縁組テーブル35(図5)及び戸主テーブル36(図6)を含む。
図2A及び図2Bは、関係者データベース3の関係者テーブル31の構成例を説明する図である。
関係者テーブル31は、相続に関係する人の情報が記録されるテーブルであり、関係者ID311、被相続人ID312、被相続人フラグ313、関係者氏名314、性別315、生年月日316、関係者本籍317、関係者住所318、関係者登記上の住所319、開始年月日320、開始原因321、戸主ID322、家督相続フラグ323及び適用法特定フラグ324を含む。
関係者ID311は、相続の関係者を一意に識別するための識別情報である。被相続人ID312は、当該関係者の被相続人の識別情報である。被相続人フラグ313は、当該関係者が被相続人であるかを示すフラグであり、被相続人ID312が示す者の被相続人である場合は「1」、被相続人でない場合は「0」が記録される。関係者氏名314は、当該関係者の氏名である。性別315は、当該関係者の性別であり、男性であるか女性であるかを示す。生年月日316は、当該関係者が生まれた日である。関係者本籍317は、当該関係者の本籍である。関係者住所318は、当該関係者の住所である。
関係者登記上の住所319は、当該関係者が所有する不動産において所有者として登記されている住所である。開始年月日320は、当該関係者の相続が開始した日である。開始原因321は、当該関係者の相続が発生した原因である。戸主ID322は、当該関係者が戸主である場合に戸主テーブル36(図6)と関連付けるためのデータである。家督相続フラグ323は、当該関係者が家督相続によって相続をする者であるかを示すフラグである。
本実施例の相続関連書類作成システムにおいて、相続人及び相続分の特定で適用する民法は、明治23年10月6日に公布された民法(明治23年法律第98号 以下「旧々民法」と称する)、明治31年7月16日に施行された民法(明治31年法律第9号 以下「旧民法」と称する)、昭和22年5月2日に施行された「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」(以下「応急措置法」と称する)、及び昭和23年1月1日に施行された現行民法(昭和22年法律第222号 以下「現行民法」と称する)を対象とし、各法律は、適用法特定フラグ324によって区別される。また、昭和23年1月1日施行後に改正された民法を対象とする。
適用法特定フラグ324は、当該関係者の相続に適用される法律を識別するためのフラグである。例えば、「1」は、明治23年10月5日以前はいずれの民法も施行されていないので、旧々民法に準じた取り扱いをすることを示し、「2」は、明治23年10月6日から明治31年7月15日まで施行された旧々民法が適用されることを示し、「3」は、明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで施行された旧民法が適用されることを示し、「4」は、昭和22年5月3日から昭和22年12月31日まで施行された日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(応急措置法)が適用されることを示し、「5」は、昭和23年1月1日から昭和37年6月30日まで施行された民法が適用されることを示し、「6」は、昭和37年7月1日から昭和55年12月31日まで施行された現行民法が適用されることを示し、「7」は、昭和56年7月1日から平成25年9月3日まで施行された現行民法が適用されることを示し、「8」は、平成25年9月4日以後に施行されている現行民法が適用されることを示す。
図3は、関係者データベース3の夫婦テーブル33の構成例を説明する図である。
夫婦テーブル33は、相続に関係する者の夫婦関係が記録されるテーブルであり、夫婦ID331、被相続人ID332、夫ID333及び妻ID334を含む。
夫婦ID331は、夫婦を一意に識別する識別情報である。被相続人ID332は、当該夫婦の被相続人の識別情報である。夫ID333及び妻ID334は、それぞれ、当該夫婦関係における夫及び妻を識別するための識別情報であり、関係者テーブル31の関係者ID311と同じ値が記録される。
図4は、関係者データベース3の親子テーブル34の構成例を説明する図である。
親子テーブル34は、相続に関係する者の親子関係が記録されるテーブルであり、親子ID341、被相続人ID342、父ID343、母ID344、子ID345及び代襲相続フラグ346を含む。
親子ID341は、親子関係を一意に識別するための識別情報である。被相続人ID342は、当該親又は子の被相続人の識別情報である。父ID343、母ID344及び子ID345は、それぞれ、当該親子関係における父、母及び子を識別する識別情報であり、関係者テーブル31の関係者ID311と同じ値が記録される。代襲相続フラグ346は、子ID345で識別される関係者が代襲相続権を有するかを示すフラグである。
図5は、養子縁組テーブル35の構成例を説明する図である。
養子縁組テーブル35は、相続に関係する者の養子縁組関係が記録されるテーブルであり、親子ID351、被相続人ID352、普通特別養子フラグ353、養子縁組開始日354及び養子縁組解消日355を含む。
親子ID351は、親子関係の識別情報であり、親子テーブル34と関連付けられる。被相続人ID352は、当該養子縁組関係の親又は子の被相続人の識別情報である。普通特別養子フラグ353は、当該養子関係が普通養子関係か、特別養子関係かを表すフラグであり、「1」は普通養子関係を示し、「2」は特別養子関係を示す。養子縁組開始日354及び養子縁組解消日355は、それぞれ、当該養子関係が開始した及び解消した日である。なお、特別養子縁組は離縁できないので、養子縁組解消日は常にブランクである。
図6は、戸主テーブル36の構成例を説明する図である。
戸主テーブル36は、相続に関係する者が戸主であったかが記録されるテーブルであり、戸主ID361、被相続人ID362、前戸主ID363、関係者ID364、戸主開始日365、開始原因366及び戸主終了日367を含む。
戸主ID361は、戸主を一意に識別するための識別情報である。被相続人ID362は、当該戸主が関係する被相続人の識別情報である。前戸主ID363は、当該戸主の前の戸主の関係者IDである。関係者ID364は、当該戸主の関係者IDである。戸主開始日365は、当該関係者が戸主となった日である。開始原因366は、当該関係者が戸主となった原因である。戸主終了日367は、当該関係者が戸主でなくなった日である。
次に、民法条文データベース4の構成を説明する。民法条文データベース4は、順位テーブル41(図7)、適用条文テーブル42(図8)、遺留分テーブル43(図9)、相続人特定テーブル44(図10)及び相続分特定テーブル45、46(図11A、図11B)を含む。
図7は、民法条文データベース4の順位テーブル41の構成例を説明する図である。
順位テーブル41は、法定相続人及び法定相続分を定めるテーブルであり、年代411、適用法412、相続の種類413、第1順位414、第2順位415及び第3順位416を含む。
年代411は、相続開始年月日に対応する年月日の範囲である。適用法412は、当該関係者が被相続人である相続に適用される法律を識別するためのフラグである。相続の種類413は、相続の種類である。相続の種類によって法定相続の相続分が異なる。例えば、家督相続の相続人は相続すべき財産の100%を相続する。一方、遺産相続の相続人は、同一順位内の相続人で均等に相続すべき財産を相続する。第1順位414、第2順位415及び第3順位416は、それぞれ、相続人を定める順位であり、各順位の相続人の相続分が定義される。
図7に示す順位テーブル41では、平成25年9月4日改正前の民法900条1号の規定に対応して、血縁関係による法定相続分の計算は、非嫡出子(内縁の妻との間に生まれ認知された子)は嫡出子(妻、前妻との間の子)の2分の1であると定義する。ここで、非嫡出子であるかは、親子テーブル34から当該非嫡出子の父ID及び母IDを取得し、夫婦テーブル33を参照し当該父IDと母IDが婚姻関係にない場合、又は、父又は母がいない(父ID又は母IDが空欄である)場合は、非嫡出子であると判定する。
また、図7に示す順位テーブル41には、基本的な相続分しか記載しておらず、以下の内容となる。
平成25年9月4日以降
第1順位
(1)基本:配偶者が2分の1、子が2分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、子が全ての相続分を取得する。
(3)子が複数人いる場合、相続財産の2分の1を子の人数で等分する。
(4)代襲相続者が複数人いる場合、死亡している子(相続人)の相続分を代襲者の人数で等分する。
(5)非嫡出子は、嫡出子と同じ相続分とする。
第2順位
(1)基本:配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、直系尊属が全ての相続分を取得する。
(3)直系尊属が複数人いる場合、相続財産の3分の1を直系尊属の人数で等分する。
(4)被相続人が普通養子縁組の養子である場合、養親及び実親を相続人とする。
(5)被相続人が特別養子縁組の養子である場合、養親のみを相続人とし、実親は相続人としない。
第3順位
(1)基本:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、兄弟姉妹が全ての相続分を取得する。
(3)兄弟姉妹が複数人いる場合、相続財産の4分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(4)半血の子は全血の子の2分の1とする。
(5)全ての兄弟姉妹が半血である場合、相続財産の4分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(6)代襲相続人が複数人いる場合、死亡している兄弟姉妹(相続人)の相続分を代襲相続人の人数で等分する。
(7)兄弟姉妹には、親との養子縁組によって兄弟姉妹になった者も含む。
配偶者
子、直系尊属、兄弟姉妹に相続人がいない場合、配偶者が全ての相続分を取得する。
昭和56年1月1日から平成25年9月3日まで
第1順位
(1)基本:配偶者が2分の1、子が2分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、子が全ての相続分を取得する。
(3)子が複数人いる場合、相続財産の2分の1を子の人数で等分する。
(4)代襲相続者が複数人いる場合、死亡している子(相続人)の相続分を代襲者の人数で等分する。
(5)非嫡出子は嫡出子の2分の1とする。
(6)全ての子が非嫡出子である場合、相続財産の2分の1を非嫡出子の人数で等分する。
第2順位
(1)基本:配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、直系尊属が全ての相続分を取得する。
(3)直系尊属が複数人いる場合、相続財産の3分の1を直系尊属の人数で等分する。
(4)被相続人が普通養子縁組の養子である場合、養親及び実親を相続人とする。
(5)被相続人が特別養子縁組の養子である場合、養親のみを相続人とし、実親は相続人としない。
第3順位
(1)基本:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、兄弟姉妹が全ての相続分を取得する。
(3)兄弟姉妹が複数人いる場合、相続財産の4分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(4)半血の子は全血の子の2分の1とする。
(5)全ての兄弟姉妹が半血である場合、相続財産の4分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(6)代襲相続人が複数人いる場合、死亡している兄弟姉妹(相続人)の相続分を代襲相続人の人数で等分する。
配偶者
子、直系尊属、兄弟姉妹に相続人がいない場合、配偶者が全ての相続分を取得する。
昭和22年5月3日から昭和55年12月31日まで
第1順位
(1)基本:配偶者が3分の1、子が3分の2
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、子が全ての相続分を取得する。
(3)子が複数人いる場合、相続財産の3分の2を子の人数で等分する。
(4)代襲相続者が複数人いる場合、死亡している子(相続人)の相続分を代襲者の人数で等分する。
(5)非嫡出子は嫡出子の2分の1とする。
(6)全ての子が非嫡出子である場合、相続財産の3分の2を非嫡出子の人数で等分する。
第2順位
(1)基本:配偶者が2分の1、直系尊属が2分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、直系尊属が全ての相続分を取得する。
(3)直系尊属が複数人いる場合、相続財産の2分の1を直系尊属の人数で等分する。
(4)被相続人が普通養子縁組の養子である場合、養親及び実親を相続人とする。
(5)被相続人が特別養子縁組の養子である場合、養親のみを相続人とし、実親は相続人としない。
第3順位
(1)基本:配偶者が3分の2、兄弟姉妹が3分の1
(2)配偶者が死亡などで相続人とならない場合、兄弟姉妹が全ての相続分を取得する。
(3)兄弟姉妹が複数人いる場合、相続財産の3分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(4)半血の子は全血の子の2分の1とする。
(5)全ての兄弟姉妹が半血である場合、相続財産の3分の1を兄弟姉妹の人数で等分する。
(6)代襲相続人が複数人いる場合、死亡している兄弟姉妹(相続人)の相続分を代襲相続人の人数で等分する。
配偶者
子、直系尊属、兄弟姉妹に相続人がいない場合、配偶者が全ての相続分を取得する。
図8は、民法条文データベース4の適用条文テーブル42の構成例を説明する図である。
適用条文テーブル42は、相続の開始原因に対応する適用条文を定めるテーブルであり、年代421、適用法特定フラグ422、相続の種類423、相続開始原因424及び条文425を含む。
年代421、相続開始年月日に対応する年月日の範囲である。適用法特定フラグ422は、相続開始年月日が当該年代に含まれる場合に相続に適用される法律を示す。相続の種類423は、相続の種類である。相続開始原因424は、当該相続が開始される原因である。条文425は、当該相続の開始原因が規定された法律の条文の番号である。
適用条文テーブル42は、後述する処理によって参照され、適用法特定フラグ422と相続の種類423と相続開始原因424とをパラメータとして条文番号425を導出するために使用される。そして、導出した条文番号425は、図25に示す関係者一覧表示画面には表示されないが、関係者一覧表示画面において「法定関係」にマウスカーソルを位置させると、根拠条文をポップアップして表示してもよい。
図9は、民法条文データベース4の遺留分テーブル43の構成例を説明する図である。
遺留分テーブル43は、相続人毎の遺留分を定めるテーブルであり、関係者一覧表示画面(図25)に表示する相続分を特定するために使用される。遺留分テーブル43は、適用法特定フラグ431、遺留分432及び適用条文433を含む。
適用法特定フラグ431は、当該関係者の相続に適用される法律を識別するためのフラグである。旧民法では、相続開始原因(家督相続か遺産相続か)によって遺留分が異なることから、旧民法が適用される場合には相続の方法(家督相続、遺産相続)も記録される。また、現行民法では、相続開始時期によって遺留分が異なることから、現行民法が適用される場合には適用期間も記録される。遺留分432は、法律によって定められた遺留分であり、相続人の地位(続柄)によって定まる。適用条文433は、当該遺留分を定めた法律の条文の番号である。
遺留分テーブル43は、後述する処理によって参照され、適用法特定フラグ431と遺留分432の相続人の続柄とをパラメータとして条文番号433を導出する。そして、導出した遺留分432及び条文番号433は、図25に示す関係者一覧表示画面には表示されないが、関係者一覧表示画面を切り替えて、「法定相続分」及び「適用条文」の代わりに、「遺留分」及び「適用条文」を表示してもよい。
図10は、民法条文データベース4の相続人特定テーブル44の構成例を説明する図である。
相続人特定テーブル44は、適用法特定フラグ及び続柄毎に相続人を規定する法律の条文番号を定めるテーブルであり、関係者一覧表示画面(図25)に表示する相続人の根拠条文を特定するために使用される。
図11A、図11Bは、民法条文データベース4の相続分特定テーブル45、46の構成例を説明する図である。
相続分特定テーブル45、46は、相続人の地位(続柄)及び適用法特定フラグ毎に相続分を規定する民法及び応急措置法の条文番号を定めるテーブルであり、関係者一覧表示画面(図25)に表示する法定相続分の根拠条文を特定するために使用される。
図12は、財産データベース5の構成例を説明する図である。
財産データベース5は、相続される財産が登録されるデータベースであり、財産ID501、被相続人ID502、相続人ID503、財産種類フラグ504、財産名505〜506、価額507及び相続分508を含む。
財産ID501は、相続される財産を一意に識別するための識別情報である。被相続人ID502は、当該財産の被相続人の識別情報である。相続人ID503は、当該財産の相続人を識別するための識別情報である。財産種類フラグ504は、当該財産の種類を示す。財産名505〜506は、当該財産を管理するための情報である。価額507は、当該財産の価値を表す数値である。なお、価額507は、金額ではなく、数量(例えば、株式数、土地の面積)でもよい。相続分508は、当該財産を当該相続人が相続する割り合いである。
遺産分割協議、遺言、法定相続などによって定められる相続の結果が財産一覧画面(図18)に入力され、入力されたデータが財産データベース5に記録される。
図13は、本実施例において、法定相続人、法定相続分、遺留分などを特定し、各種の相続関係書類を作成する処理のフローチャートである。
まず、コンピュータ1は、被後見人等情報入力画面(図14)を表示し、オペレータに戸籍情報の入力を促す。入力された戸籍情報は、関係者データベース3に記録される(1101)。
さらに、オペレータは、被後見人等情報入力画面(図14)において、被相続人、相続開始年月日を入力する。入力された被相続人のデータ及び相続開始年月日は関係者データベース3に記録される(1102)。数世代にわたる相続関係を明らかにする場合、各相続の開始年月日を入力する。なお、ステップ1101と1102とを一連の処理とせず、戸籍情報が入力されている状態で、相続関係説明図作成機能をメニューから起動することによって、ステップ1102以後の処理を実行してもよい。
法定相続特定プログラム6は、コンピュータ1に入力された相続開始年月日を用いて、民法条文データベース4の順位テーブル41の年代411を参照し、数次にわたる各相続の適用法412を特定する(1103)。すなわち、数次にわたる相続の各々に対し、ステップ1103から1105を実行する。適用法を特定する処理は、図19を用いて後述する。
その後、法定相続特定プログラム6は、ステップ1103で特定された適用法に応じたサブプログラムを起動し、相続人となり得る者を決定し、メモリに記録する(1104)。相続人を特定する処理は、適用法によって異なり、図20、図26、図29などを用いて後述する。
さらに、法定相続特定プログラム6は、ステップ1102で特定された適用法に応じた遺産分割特定プログラム7を起動し、順位テーブル41を参照して、各相続人の相続分を決定し、メモリに記録する。なお、同一の条件の者が複数いる場合、当該相続人の中で均等に分割する。また、遺留分特定プログラム8を起動し、遺留分テーブル43を参照して、各相続人の遺留分を決定し、メモリに記録する(1105)。
その後、遺産分割特定プログラム7は、財産一覧画面(図18)を表示し、相続すべき財産の情報の入力を促す。入力された相続財産の情報は、財産データベース5に記録される(1106)。
さらに、遺産分割特定プログラム7は、各財産の相続人毎の相続分(割合)との入力を促す。財産一覧画面(図18)に入力される相続分は、法定相続分、遺産分割協議、遺言によって最終的に定められる相続の結果である。入力された相続分の情報は、財産データベース5に記録される(1107)。
その後、コンピュータ1は、書類作成プログラム9を起動し、関係者一覧表示画面(図25)をディスプレイ装置に表示し、相続人や根拠条文を表示する(1108)。また、書類作成プログラム9は、オペレータの選択によって、相続関係説明図(図30)を作成して、ディスプレイ装置に表示する(1109)。さらに、書類作成プログラム9は、オペレータの選択によって、相続に関する書類(遺産分割証明書(図31)や遺産分割協議書(図32A〜図32C))を作成して、プリンタ11に出力する(1110)。
図14は、相続の関係者の情報を入力する被相続人情報入力画面の例を説明する図の画面イメージであり、ディスプレイ装置13に表示される(図15、図16、図18、図25も、同様に画面イメージである。)。
図14に示す被相続人情報入力画面には、被相続人基本情報入力エリア及び関係者入力エリアが設けられており、本システムの利用者は、入力装置12を介して戸籍情報等を入力する。
被相続人基本情報入力エリアは、氏名、本籍、住所、登記簿上の住所、生年月日、相続開始年月日、性別、原因、相続の種類のそれぞれの入力欄を含む。
相続の種類の入力欄は、通常は非活性であるが、相続開始年月日が旧々民法適用期間又は旧民法適用期間(明治23年10月6日から昭和22年5月2日まで)の場合、図15に示すように活性化され、家督相続か遺産相続かを選択可能とする。これにより被相続人の実情に応じた相続人及び相続分を特定することができる。例えば、被相続人の死亡年月日が昭和22年5月2日(旧民法)以前であるが、昭和22年5月3日の段階で家督相続人及び遺産相続人が特定されていない場合は、被相続人の死亡年月日が旧民法適用期間であっても現行の民法で法定相続人と相続分が特定できるように切り替えることができる。
また、原因の入力欄では、相続開始年月日が旧民法適用期間(明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで)の場合、図16に示すように、現行民法にはない相続原因(例えば、国籍喪失)を選択可能とする。
関係者入力エリアは、配偶者、子、親、兄弟姉妹のそれぞれの入力欄を含む。
ステップ1101において戸籍情報を入力する場合、関係者入力エリアの「追加」ボタンを操作することによって、関係者を入力するサブ画面を表示する。このサブ画面は、被相続人基本情報入力エリアと同等な項目に加え、当該関係者の死亡年月日の入力欄を有する。死亡年月日入力欄に日が入力された場合、当該入力された日を関係者テーブル31の開始年月日320に記録し、開始原因321に「死亡」を記録する。
本実施例の相続関連書類作成システムでは、入力された相続開始年月日(例えば、被相続人の死亡年月日)から適用される民法を特定する。また、入力された被相続人と相続人との関係や、相続人同士の関係に基づいて、入力された人物の中から法定相続人、法定相続分及び遺留分などを特定する。さらに、入力された情報を用いて相続の関係性を示す図(相続関係説明図)を作成したり、法定相続人、法定相続分、遺留分など特定する根拠条文を明示することができる。また、特定した法定相続人、法定相続分、遺留分を利用して相続関連書類を作成するので、作成した書類を相続や登記に利用できる。
図17は、特別養子縁組を判定する処理のフローチャートである。この処理は、図14に示す入力画面に養子縁組に関する事項(例えば、関係者入力エリアの関係性の欄及び養子縁組年月日の欄)が入力された際に実行される。
特別養子縁組の規定は昭和56年1月1日から施行されている。このため、関係性の欄に「特別養子」が入力された場合、特別養子縁組を行った日が昭和55年12月31日以前であるかを判定する(1141)。そして、特別養子縁組を行った日が昭和55年12月31日以前であれば、特別養子縁組を行った日は施行前なので、図14に示す入力画面に注意を喚起する表示を行う(1142)。一方、特別養子縁組を行った日が昭和56年1月1日以後であれば、適法に特別養子縁組が行われていると考えられるので、入力された養子縁組に関する情報を養子縁組テーブル35に記録する。
図18は、遺産分割の内容を入力及び表示する財産一覧画面の例を説明する図である。図18に示す財産一覧画面は、ステップ1106及び1107で表示され、相続財産及び相続分の入力を受け付ける。
例えば、財産一覧画面の空白行をクリックすると、No.が自動的に採番され、新しい財産の入力が可能な状態になる。財産区分に財産の種類を入力し、財産に財産を管理するための情報を入力し、関係者と総財産の相続分を入力し、各財産の関係者毎の相続分と当該相続分を定めた方法(遺産分割、法定相続、遺言など)を入力する。
財産一覧画面に入力されたデータは、財産データベース5に記録される。なお、図12に示す財産データベース5は、各相続人の合計の相続分(相続割合)のデータを記録していないが、これを記録してもよい。
また、本実施例の相続関連書類作成システムでは、図示したように、相続財産毎に相続人及び相続分を入力することができる。このため、遺産分割を考慮して相続分を計算でき、入力された相続人及び相続分に基づいて遺産分割協議書や相続関係説明図を作成できる。
図19は、適用法を特定する処理(図13のステップ1102)の詳細を示すフローチャートである。
まず、関係者テーブル31の開始年月日320を参照して、相続開始年月日が明治23年10月5日より前かを判定する(1111)。相続開始年月日が明治23年10月5日より前である場合、根拠法となる民法がないので、適用法特定フラグを「1」に設定して、関係者テーブル31に記録する。この場合、後述する関係者一覧表示画面(図25)の根拠条文欄において注意喚起をして、旧々民法を適用法とする(1112)。相続開始年月日が明治23年10月6日から明治31年7月15日までの間であれば(1113でYES)、旧々民法を適用法とし、適用法特定フラグを「2」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1114)。
相続開始年月日が明治31年7月15日から昭和22年5月2日までの間であれば(1115でYES)、旧民法(明治31年法律第9号)を適用法とし、適用法特定フラグを「3」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1116)。相続開始年月日が昭和22年5月3日から昭和22年12月31日までの間であれば(1117でYES)、応急措置法を適用法とし、適用法特定フラグを「4」に設定して、関係者テーブル31に記録とする(1118)。
相続開始年月日が昭和23年1月1日から昭和37年6月30日までの間であれば(1119でYES)、現行民法を適用法とし、適用法特定フラグを「5」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1120)。この場合、第3順位における兄弟姉妹の相続分が3分の1となり、第3順位における兄弟姉妹の代襲者は第1順位の子と同じく代襲範囲に制限はなく、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1となる。
相続開始年月日が昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までの間であれば(1121でYES)、現行民法を適用法とし、適用法特定フラグを「6」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1122)。この場合、第3順位における兄弟姉妹の相続分が3分の1となり、第3順位における兄弟姉妹の代襲者は第1順位の子と同じく代襲範囲に制限はなく、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1となる。
相続開始年月日が昭和56年1月1日から平成25年9月3日までの間であれば(1123でYES)、現行民法を適用法とし、適用法特定フラグを「7」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1124)。この場合、第3順位における兄弟姉妹の相続分が4分の1となり、第3順位における兄弟姉妹の代襲者は兄弟姉妹の子までに制限され、再代襲を認めず、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1となる。
相続開始年月日が平成25年9月4日以後であれば(1125でYES)、現行民法を適用法とし、適用法特定フラグを「8」に設定して、関係者テーブル31に記録する(1126)。この場合、第3順位における兄弟姉妹の相続分が4分の1となり、第3順位における兄弟姉妹の代襲者は兄弟姉妹の子までに制限され、再代襲を認めず、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同じとなる。
<現行民法>
図20は、現行民法において相続人を判定する処理のフローチャートである。
まず、夫婦テーブル33を参照して、被相続人に配偶者がいるか(すなわち、生存しているか)を判定する(1201)。
被相続人に配偶者がいない場合、被相続人に子がいるかを判定する(1202)。子がいるかを判定する処理の詳細は、図21を用いて後述する。その結果、被相続人に子がいる場合、当該子を第1順位の相続人として相続分を計算する(1203)。
一方、被相続人に子がいない場合、被相続人に直系の尊属がいるかを判定する(1204)。直系尊属がいるかを判定する処理の詳細は、図23を用いて後述する。その結果、被相続人に直系尊属がいる場合、当該直系尊属を第2順位の相続人として相続分を計算する(1205)。
一方、被相続人に直系尊属がいない場合、兄弟姉妹がいるかを判定する(1206)。兄弟姉妹がいるかを判定する処理の詳細は、図24を用いて後述する。その結果、被相続人に兄弟姉妹のいずれかがいる場合、当該兄弟姉妹を第3順位の相続人として相続分を計算する(1207)。
一方、被相続人に兄弟姉妹のいずれもいない場合、相続人は存在しないと判定する(1208)。
一方、ステップ1201において、被相続人に配偶者がいると判定された場合、被相続人に子がいるかを判定する(1209)。ステップ1209の判定において、子には代襲相続人や数次相続人を含む。子がいるかは、ステップ1202と同じ処理で判定できる。
その結果、被相続人に子がいる場合、配偶者及び当該子を第1順位の相続人として相続分を計算する(1210)。一方、被相続人に子がいない場合、直系の尊属がいるかを判定する(1211)。直系尊属がいるかは、ステップ1205と同じ処理で判定できる。
その結果、被相続人に直系尊属がいる場合、配偶者及び当該直系尊属を第2順位の相続人として相続分を計算する(1212)。一方、被相続人に直系尊属がいない場合、兄弟姉妹がいるかを判定する(1213)。兄弟姉妹がいるかは、ステップ1206と同じ処理で判定できる。
その結果、被相続人に兄弟姉妹のいずれかがいる場合、配偶者及び当該兄弟姉妹を第3順位の相続人として相続分を計算する(1214)。一方、被相続人に兄弟姉妹のいずれもいない場合、配偶者のみが相続人であると判定する(1215)。
親族関係は、特定する人物と他の人物との関連で特定する。例えば、Aの兄Bを特定する場合、特定に必要な要素1が「親」であるため、親子テーブル34を参照して、Aと両親が同一である人物を特定する。そして、特定に必要な要素2が「性別」であるため、関係者テーブル31を参照して、要素1を用いて特定された人物から男性を選択する。さらに、特定に必要な要素3が「生まれた順番」であるため、要素2を用いて選択された人物からAより先に生れた人物を選択する。
図21は、現行民法において第1順位の相続人を特定する処理のフローチャートである。
まず、被相続人に子がいるかを判定する(1221)。具体的には、親子テーブル34を参照して、父ID343又は母ID344の何れかに被相続人の関係者IDが記録されていれば、子IDの人が子であると判定できる。ステップ1221の判定において、死亡(相続解消)している子や、普通養子、特別養子を含む。このため、さらに、親子テーブル34を参照して、当該子に他の親がいるかを判定する。そして、当該子に複数の親がいる場合、当該複数の親子IDを用いて養子縁組テーブル35を参照し、当該子が特別養子縁組の子であるかを判定する。その結果、当該子が特別養子縁組を成立させている場合、実方との関係が切れるので、当該実子である親子関係の子は相続人とならず、特別養子である親子関係の子のみが相続人となる子であると判定する。一方、普通養子縁組では、養子縁組後も実方との親子関係は維持されるため、養子としての相続人の地位と実子としての相続人の地位の両方を得る場合がある。
また、被相続人(相続人)との婚姻前に出生した子(いわゆる、連れ子)は、相続人ではないと判定する。ここで、連れ子であるかは、親子テーブル34から当該子の父ID及び母IDを取得し、夫婦テーブル33を参照し当該父IDと母IDとが婚姻関係にない場合、又は、父又は母がいない(父ID又は母IDが空欄である)場合は、連れ子であると判定する。
ステップ1221の判定の結果、被相続人に子がいない場合、第1順位の相続人は存在しないので、第2順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1202、1209)に戻る(1222)。なお、第1順位の相続人が一人でも存在する場合、第2順位以降の相続人を特定しない。
一方、被相続人に子がいる場合、当該子が生存しているかを判定する(1223)。子の生存は、開始年月日320及び開始原因321を参照して、開始年月日320に日付が入力されており、かつ、開始原因321が「死亡」であれば、死亡していると判定できる。
なお、子が複数いる場合、ステップ1223以後の処理を全ての子について繰り返し実行して相続人を特定する。すなわち、被相続人の全ての子について、当該子が相続人であるか、当該子の子など(すなわち、孫や曾孫)の卑属が相続人(代襲相続人、数次相続人)であるかを判定する。
その結果、当該子が生きていれば、当該子が養子であるかを判定する(1224)。具体的には、親子テーブル34における当該子の親子ID341が養子縁組テーブル35に記録されていれば、当該子は養子であると判定できる。その結果、当該子が養子でなければ、当該子は実子であるため、当該子は相続人であると判定する(1226)。一方、当該子が養子であれば、養子縁組テーブル35から養子縁組解消日355を取得し、関係者テーブル31の開始年月日320から被相続人の死亡日を取得する。被相続人の死亡日は、関係者テーブル31の開始原因321が「死亡」である場合の開始年月日320である。そして、取得した養子縁組解消日と死亡日との先後を判定する(1225)。
その結果、養子縁組解消日が当該子の親である被相続人の死亡日より前又は同日であれば、当該子は相続人ではないと判定する(1227)。このため、当該子の相続分は別の相続人が相続することになる。一方、養子縁組解消日が当該子の親である被相続人の死亡日より後であれば、当該子は実子と同じ扱いを受けるので、当該子は相続人であると判定する(1226)。
また、ステップ1223において、当該子が死んでいると判定された場合、当該子及び被相続人の死亡日を関係者テーブル31から取得し、当該子の死亡日が被相続人の死亡日より前であるかを判定する(1228)。子の死亡日が被相続人の死亡日の後であれば、当該子を被相続人として、ステップ1223に戻り、当該子の相続人を特定する(1229)。
一方、子の死亡日が被相続人の死亡日の前であれば、親子テーブル34を参照して、死亡した子に子がいるかを判定し、関係者テーブル31を参照して、当該死亡した子の子が生きているかを判定する(1230)。
その結果、当該死亡した子の子が生きていれば、養子縁組テーブル35を参照して、当該死亡した子の子が養子であるかを判定する(1232)。その結果、当該死亡した子の子が養子でなければ、当該死亡した子の子は実子であるため、当該死亡した子の子は代襲相続人であると判定する(1234)。一方、当該死亡した子の子が養子であれば、養子縁組テーブル35及び関係者テーブル31を参照して、養子縁組解消日と当該子の親である被相続人の死亡日との先後を判定する(1233)。
その結果、当該子の親である被相続人の死亡日より前であれば、当該死亡した子の子は相続人ではないと判定する(1231)。このため、当該死亡した子の相続分は他の相続人が相続することになる。一方、当該子の親である被相続人の死亡日より後であれば、当該子は実子と同じ扱いを受けるので、当該死亡した子の子は代襲相続人又は数次相続人であると判定する(1234)。そして、代襲相続と数次相続とを切り分ける処理(図22)を起動し、当該死亡した子の子が代襲相続人か数次相続人かを判定する。このように、遺産相続人が相続開始前に死亡している場合、その遺産相続人の直系卑属が代襲して相続人となる。
なお、いずれの子も相続人ではないと判定された場合、ステップ1222と同様に、第1順位の相続人は存在しないので、第2順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1202、1209)に戻る。
以上に説明したように、図21に示す第1順位の相続人を特定する処理では、特別養子縁組による養子への相続と普通養子縁組による養子への相続を区別して、法定相続人及び法定相続分を特定できる。
また、法定相続人の一部が既に死亡している場合、当該死亡者を被相続人として法定相続人を特定し、法定相続分を自動的に計算することができる。これにより、最初の被相続人の財産を相続する人及び相続の割り合いを根拠条文と共に表示できる。
第1順位において相続人が特定できない場合、第2順位の相続人を特定する。第2順位では、被相続人の直系の尊属が相続人となるかを判定する。
図22は、代襲相続と数次相続とを切り分ける処理のフローチャートである。
まず、死亡した相続人に相続人となる人がいるか(すなわち、生存しているか)を判定する(1131)。その結果、死亡した相続人に相続人となる人がいなければ、相続人は存在しないことになる(1132)。
一方、死亡した相続人に相続人となる人がいれば、相続人の死亡日と被相続人の死亡日との先後を判定する(1133)。相続人の死亡が被相続人の死亡日より後であれば、当該相続人は新たな数次相続の相続人となる(1134)。一方、相続人の死亡日が被相続人の死亡日より前又は同時であれば、当該相続人は代襲相続人となる(1135)。
このように、図22に示す処理では、被相続人の相続人のうち既に死亡している人について、被相続人の死亡日と相続人の死亡日との先後を判定することによって、代襲相続人か数次相続人かを判定することができる。
図23は、現行民法において第2順位の相続人を特定する処理のフローチャートである。
まず、親子テーブル34を参照して被相続人の父母を特定し、養子縁組テーブル35を参照して、当該被相続人の父母が特別養子縁組の養親であるかを判定する(1241)。具体的には、当該被相続人の父母の親子IDが養子縁組テーブル35に記録されており、かつ、普通特別養子フラグ353が「2」であれば、当該被相続人の父母が特別養子縁組の養親であると判定できる。
判定の結果、当該被相続人の父母が特別養子縁組の養親であれば、実方との関係が切れるので、実父母は父母とせず、養父母のみを父母としてステップ1224以後の処理を実行する(1242)。一方、被相続人の父母が特別養子縁組の養親でなければ、当該父母は実父母又は普通養子縁組の養父母なので、直系の尊属を辿って相続人と特定する。このため、実父母及び養父母を父母としてステップ1224以後の処理を実行する(1243)。
ステップ1244では、関係者テーブル31を参照して、父母が生きているかを判定する。具体的には、関係者テーブル31の開始年月日320に日付が入力されており、かつ、開始原因321が「死亡」であれば、当該関係者(父母)は死亡していると判定できる。そして、父母の一方が生きていれば、生きている父母が相続人であると判定する(1245)。一方、父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、1代遡り、関係者テーブル31を参照して、祖父母が生きているかを判定する(1246)。
例えば、養父母及び実父が死んでいる場合は、実母が相続人となる(1245)。そして、実母が相続人なので、ステップ1246以後の処理は実行されず、養方祖父母が生きていても相続人にはならない。すなわち、同一世代(父母の代、祖父母の代、曾祖父母の代)の一人が生きている場合、当該世代の相続人を特定し、尊属を辿らない。
そして、祖父母の一方が生きていれば、生きている祖父母が相続人であると判定する(1247)。一方、祖父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、さらに1代遡り、関係者テーブル31を参照して、曾祖父母が生きているかを判定する(1248)。
そして、曾祖父母の一方が生きていれば、生きている曾祖父母が相続人であると判定する(1249)。一方、曾祖父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、さらに1代遡り、関係者テーブル31を参照して、高祖父母が生きているかを判定する(1250)。
そして、高祖父母の一方が生きていれば、生きている高祖父母が相続人であると判定する(1251)。一方、高祖父母の両方が死んでいれば、第2順位の相続人は存在しないので、第3順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1204、1211)に戻る(1252)。
以上に説明したように、図23に示す第2順位の相続人を特定する処理では、特別養子縁組による実父母への相続を排除して、法定相続人を正しく特定できる。すなわち、相続人が特別養子縁組をしており養父母がいる場合、養父母のみについてステップ1244から1252の処理を実行し、養父母のみが相続人となる。一方、相続人に特別養子縁組をしていない場合、実父母又は普通養子縁組の養父母の両方についてステップ1244から1252の処理を実行し、実父母と養父母の両方が相続人となる。このように判定された父母のいずれもが相続人ではない場合、第2順位の相続人は存在しない。なお、第2順位(尊属)では、第1順位(子)の代襲相続のように、1世代飛ばして相続人を特定しない。
第1順位でも第2順位でも相続人が特定できない場合、第3順位の相続人を特定する。第3順位では、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるかを判定する。
図24は、現行民法において第3順位の相続人を特定する処理のフローチャートである。
まず、被相続人に兄弟姉妹がいるかを判定する(1261)。具体的には、親子テーブル34の父ID343及び母ID344の少なくとも一方が被相続人の父及び母と同じ人(子ID335)は、被相続人の兄弟姉妹であると判定できる。
なお、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1(民法900条3号)であると計算する。
その結果、被相続人に兄弟姉妹がいない場合、第3順位の相続人は存在しないので、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1206、1213)に戻る(1262)。一方、被相続人に兄弟姉妹のいずれかがいる場合、関係者テーブル31を参照して、兄弟姉妹の各々が生きているかを判定する(1263)。具体的には、関係者テーブル31の開始年月日320に日付が入力されており、かつ、開始原因321が「死亡」であれば、死亡していると判定できる。
その結果、生きている兄弟姉妹がいれば、当該生きている兄弟姉妹が相続人となる(1264)。一方、全ての兄弟姉妹が死んでいれば、死亡した兄弟姉妹に子がいるかを判定する(1265)。具体的には、親子テーブル34を参照して、当該兄弟姉妹が父ID343又は母ID344である子は、死亡した兄弟姉妹の子であると判定できる。
その結果、死亡した兄弟姉妹に子がいなければ、当該兄弟姉妹の相続分については相続人が存在しないと判定し(1266)、当該相続分は他の相続人が相続することとなる。一方、死亡した兄弟姉妹に子がいれば、当該兄弟姉妹の子が代襲相続人又は数次相続人であると判定する(1267)。そして、相続開始年月日が昭和55年12月31以前であれば、代襲相続と数次相続とを切り分ける処理(図22)を起動し、当該兄弟姉妹の子が代襲相続人か数次相続人かを判定する。なお、相続開始年月日が昭和56年1月1日以後であれな、兄弟姉妹に数次相続はないので、代襲相続と数次相続とを切り分ける処理(図22)は起動しない。
なお、相続開始日が昭和55年12月31日以前であれば、当該兄弟姉妹の子が死亡していても、さらに子がいるかを判定し、その子が相続人であるかを判定する。すなわち、図24に示す処理では、相続開始年月日昭和55年12月31日以前では子だけでなく孫以後の世代の人にも代襲相続や数次相続を認め、昭和56年1月1日以降は兄弟姉妹の子までが代襲相続人や数字相続人となり得るように判定することができる。
図25は、関係者一覧表示画面の例を示す図である。
本実施例の関係者一覧表示画面では、入力された関係者の中から法定相続人、法定相続分、根拠となる条文を一覧表にて表示する。表示に当たっては、続柄、相続人判定等に対するこれまでの演算結果に基づいて、表示順序等を決定する。
関係者一覧表示画面は、被相続人表示領域と関係者表示領域を含む。被相続人表示領域は、被相続人の氏名、相続開始年月日、相続原因及び被相続人の住所を表示する。
関係者表示領域は、被相続人の氏名、順位、氏名、続柄、法定関係、根拠条文、法定相続分及び根拠条文を表示する。被相続人欄には、被相続人欄に表示された被相続人の直接の相続人である関係者の氏名を表示する。氏名欄、続柄欄、法定関係欄には、それぞれ、被相続人欄に記載された者から見た相続人の氏名、続柄、法定関係が表示される。順位欄には、被相続人欄に記載された者と自明欄に表示された者との間の関係であって、相続順位を定めるパラメータ(例えば、配偶者、子、親)が表示される。法定相続分欄には、当該相続人の法定相続の割り合いを示す。根拠条文欄には、当該相続人の地位及び法定相続分を定める根拠条文が表示される。
具体的には、被相続人の氏名の筆頭には、最初の相続の被相続人である「甲野太郎」の氏名が関係者テーブル31から読み出され、表示される。そして、「甲野太郎」の相続人となりうる配偶者、子、親を特定する。配偶者は、夫婦テーブル33において「甲野太郎」と夫婦となっている相手方を特定して、当該関係者の氏名を関係者テーブル31から読み出して表示する。配偶者の続柄は、夫婦テーブル33の夫ID333又は妻ID334のいずれから配偶者を取得したかによって判定できる。
子は、親子テーブル34において「甲野太郎」の子となっている関係者を特定して、当該関係者の氏名を関係者テーブル31から読み出して表示する。子の続柄は、性別315及び生年月日316によって判定できる。すなわち、子のうち、男で最先に生まれた者が長男であり、次に生まれた男が次男である。また、女で最先に生まれた者が長女であり、次に生まれた女が次女である。このように、子の性別と生まれた順序によって続柄を判定する。
親は、親子テーブル34において「甲野太郎」の父及び母を特定して、当該関係者の氏名を関係者テーブル31から読み出して表示する。親の続柄は、親子テーブル34の父ID343又は母ID344のいずれから親を取得したかによって判定できる。
そして、法定関係は、相続人特定ステップ1104による処理の結果、相続人であると判定された者について、相続人の種類(相続人、家督相続人、代襲相続人など)が表示される。
法定関係の根拠条文は、関係者テーブル31の適用法特定フラグ324から適用法特定フラグを取得し、相続人特定ステップ1104による処理の結果、相続人であると判定された者について、相続人特定テーブル44(図10)から根拠条文を特定し、該特定された根拠条文を表示する。
また、法定相続分には、相続分・遺留分特定ステップ1105による処理によって特定された相続分を表示する。
法定相続分の根拠条文は、関係者テーブル31の適用法特定フラグ324から取得した適用法特定フラグを参照し、相続人特定ステップ1104による処理の結果、相続人であると判定された者について、相続分特定テーブル45(図11A、図11B)から根拠条文を特定し、該特定された根拠条文を表示する。
また、関係者一覧表示画面は、「追加」、「修正」、「削除」、「コピー」、「相関図作成」、「保存」及び「閉じる」の各ボタンを含む。オペレータは「追加」ボタンを操作することによって、相続関係が生じている関係者を追加することができる。また、オペレータは「修正」ボタンを操作することによって、表示されている関係者のデータを修正することができる。また、オペレータは「削除」ボタンを操作することによって、表示されている関係者を削除することができる。また、オペレータは「コピー」ボタンを操作することによって、表示されている関係者のデータを複製した新たな関係者を生成することができる。また、オペレータは「相関図作成」ボタンを操作することによって、相続関係説明図(図30)を作成することができる。また、オペレータは「保存」ボタンを操作することによって、関係者一覧表示画面に表示されている関係者のデータを関係者データベース3に格納することができる。また、オペレータは「閉じる」ボタンを操作することによって、関係者一覧表示画面を閉じることができる。
本実施例の関係者一覧表示画面では、入力された関係者の中から法定相続人、法定相続分、根拠となる条文を一覧表にて表示するので、オペレータの利便性を向上することができる。
また、本実施例の相続関連書類作成システムでは、関係者一覧表示画面(図25)において、法定相続分を遺留分に変えて表示することができる。
遺留分の計算は、相続分と同様に、被相続人の死亡年月日によって適用される民法の規定が異なる。このため、過去の民法の適用期間に死亡した被相続人の遺留分を計算する場合、現在の民法を適用しても正確な遺留分を計算できない。しかし、本実施例の相続関連書類作成システムでは、入力されたデータから判定された適用法を用いて、相続分・遺留分特定ステップ1105において、遺留分テーブル43(図9)を参照して、遺留分を正確に計算できる。
また、本実施例の相続関連書類作成システムでは、1代限りの相続ではなく数回にわたって行われた相続(数次相続)についても法定相続人、法定相続分及び遺留分を特定する。この特定は、大元の被相続人に近い親族から順次法定相続人を特定し、特定された法定相続人が死亡などによって存在していない場合は、その法定相続人を被相続人として法定相続人を特定する。この作業を繰り返すことによって、大元の被相続人の相続人のうち、現在生存している法定相続人を特定することができる。
<応急措置法>
次に、応急措置法が適用される場合の相続人の特定について説明する。応急措置法においても、現行民法と同じ処理で相続人が判定され(図20参照)、第1順位、第2順位及び第3順位の相続人が特定される(図21、図23、図24参照)。なお、応急措置法においては、相続開始年月日が昭和56年12月31日以前なので、第3順位の相続人を特定する処理(図24)において、当該兄弟姉妹の子が死亡していても、さらに子がいるかを判定し、その子が相続人であるかを判定し、子だけでなく孫以後の世代の人にも代襲相続や数次相続を認める。
<旧民法>
旧民法においては、遺産相続の他に家督相続制度が設けられている。戸主が死亡した場合、家督相続人が全ての遺産を相続し、他の親族は遺産を相続しない。具体的には、以下の条件を満たした一人の者が家督相続人となる。
第1順位
(1)被相続人の直系卑属のうち親等が近い者
第1親等 子
第2親等 孫
第3親等 曾孫
第4親等 玄孫
第5親等 来孫
第6親等 昆孫
(2)同じ親等に男性と女性がある場合は、男性が優先する。
(3)親等が同じ男性又は親等が同じ女性の間では嫡出子が優先する。
(4)嫡出子の女性と庶子の男性では、庶子の男性が優先する。
(5)上記(1)から(5)において同順位の者の間では、年長者が優先する。
第2順位
第1順位で家督相続人が定まらない場合、被相続人が家督相続人を指定する。よって、第2順位以降は、親族関係及び民法の規定によって家督相続人を特定できないため、本実施例の相続関連書類作成システムでは、第1順位まで家督相続人を特定する。
一方、旧民法では、戸主以外の者が死亡した場合、遺産相続人を特定する。
図26は、旧民法において遺産相続人を判定する処理のフローチャートである。旧民法における遺産相続人は、全ての遺産を相続するが、同順位に複数の遺産相続人がいる場合は、当該複数の遺産相続人間で均等に分割する。
まず、被相続人に直系卑属がいるかを判定する(1301)。第1順位における遺産相続人を判定する処理の詳細は、図27を用いて後述する。その結果、被相続人に直系卑属がいれば、直系卑属が第1順位の遺産相続人となる(1302)。例えば、被相続人に子がいれば子が遺産相続人となり、子が死亡している場合でも孫がいれば孫が遺産相続人となる。一方、被相続人に直系卑属がいなければ、夫婦テーブル33を参照して、被相続人に配偶者がいるかを判定する(1303)。
その結果、被相続人に配偶者がいれば、配偶者が第2順位の遺産相続人となる(1304)。一方、被相続人に配偶者がいなければ、被相続人に直系尊属がいるかを判定する(1305)。第3順位における遺産相続人を判定する処理の詳細は、図28を用いて後述する。
その結果、被相続人に直系尊属がいれば、直系尊属が第3順位の遺産相続人となる(1306)。一方、被相続人に直系尊属がいなければ、戸主テーブル36を参照して、被相続人に戸主がいるかを判定する(1307)。具体的には、関係者テーブル31の開始年月日320が、戸主テーブル36の戸主開始日365から戸主終了日367の間にある、又は、戸主テーブル36の戸主開始日365と同日である者が戸主であると判定できる。
その結果、被相続人に戸主がいれば、戸主が第4順位の遺産相続人となる(1308)。一方、被相続人に戸主がいなければ、相続人は存在しないと判定する(1309)。
図27は、旧民法において第1順位の相続人を特定する処理のフローチャートである。
まず、被相続人に子がいるかを判定する(1321)。具体的には、親子テーブル34を参照して、父ID343又は母ID344の何れかに被相続人の関係者IDが記録されていれば、子IDの人が子であると判定できる。ステップ1321の判定において、死亡(相続解消)している子や、養子、継子、庶子を含む。このため、さらに、親子テーブル34を参照して、当該子に他の親がいるかを判定する。そして、当該子に複数の親がいる場合、当該複数の親子IDを用いて養子縁組テーブル35を参照し、養子であるかを判定する。旧民法における養子縁組は養子縁組後も実方との親子関係は維持されるため、養子としての相続人の地位と実子としての相続人の地位の両方を得る場合がある。
ステップ1321の判定の結果、被相続人に子がいない場合、第1順位の相続人は存在しないので、第2順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1302)に戻る(1322)。なお、第1順位の相続人が一人でも存在する場合、第2順位以降の相続人を特定しない。
一方、被相続人に子がいる場合、当該子が生存しているかを判定する(1323)。子の生存は、開始年月日320及び開始原因321を参照して、開始年月日320に日付が入力されており、かつ、開始原因321が「死亡」であれば、死亡していると判定できる。
なお、子が複数いる場合、ステップ1323以後の処理を全ての子について繰り返し実行して相続人を特定する。すなわち、被相続人の全ての子について、当該子が相続人であるか、当該子の子、孫などの卑属が相続人(代襲相続人、数次相続人)であるかを判定する。
その結果、当該子が生きていれば、当該子が養子であるかを判定する(1324)。具体的には、親子テーブル34における当該子の親子ID341が養子縁組テーブル35に記録されていれば、当該子は養子であると判定できる。その結果、当該子が養子でなければ、当該子は実子、庶子、継子のいずれかであるため、当該子は相続人であると判定する(1326)。一方、当該子が養子であれば、養子縁組テーブル35から養子縁組解消日355を取得し、関係者テーブル31の開始年月日320から被相続人の死亡日を取得する。被相続人の死亡日は、関係者テーブル31の開始原因321が「死亡」である場合の開始年月日320である。そして、取得した養子縁組解消日と死亡日との先後を判定する(1325)。ここで、庶子は非嫡出子と同義であるが、一旦認知された庶子が認知を解消されることはないので、ステップ1325の判定を経ずに相続人であると判定する。また、継子は後妻にとっての前妻の子であるが、継子は実子として扱われるため、やはり、ステップ1325の判定を経ずに相続人であると判定する。
その結果、養子縁組解消日が当該子の親である被相続人の死亡日より前又は同日であれば、当該子は相続人ではないと判定する(1327)。このため、当該子の相続分は他の相続人が相続することになる。一方、養子縁組解消日が当該子の親である被相続人の死亡日より後であれば、当該子は実子と同じ扱いを受けるので、当該子は相続人であると判定する(1326)。
また、ステップ1323において、当該子が死んでいると判定された場合、当該子及び被相続人の死亡日を関係者テーブル31から取得し、当該子の死亡日が被相続人の死亡日より前であるかを判定する(1328)。子の死亡日が被相続人の死亡日の後であれば、当該子を被相続人として、ステップ1323に戻り、当該子の相続人を特定する(1329)。なお、この場合、当該子の死亡日の適用法に従った第1順位の相続人の特定処理(例えば、現行民法の第1順位相続人特定処理(図21))を実行する。
一方、子の死亡日が被相続人の死亡日の前であれば、親子テーブル34を参照して、死亡した子に子がいるかを判定し、関係者テーブル31を参照して、当該死亡した子の子が生きているかを判定する(1330)。
その結果、当該死亡した子の子が生きていれば、養子縁組テーブル35を参照して、当該死亡した子の子が養子、継子又は庶子であるかを判定する(1332)。その結果、当該死亡した子の子が養子、継子、庶子のいずれでもなければ、当該死亡した子の子は実子であるため、当該死亡した子の子は代襲相続人又は数次相続人であると判定する(1334)。一方、当該死亡した子の子が養子であれば、養子縁組テーブル35及び関係者テーブル31を参照して、養子縁組解消日と当該子の親である被相続人の死亡日との先後を判定する(1333)。
その結果、当該子の親である被相続人の死亡日より前であれば、当該死亡した子の子は相続人ではないと判定する(1331)。このため、当該死亡した子の相続分は他の相続人が相続することになる。一方、当該子の親である被相続人の死亡日より後であれば、当該子は実子と同じ扱いを受けるので、当該死亡した子の子は代襲相続人又は数次相続人であると判定する(1334)。そして、代襲相続と数次相続とを切り分ける処理(図22)を起動し、当該死亡した子の子が代襲相続人か数次相続人かを判定する。このように、遺産相続人が相続開始前に死亡している場合、その遺産相続人の直系卑属が代襲して相続人となる。
なお、いずれの子も相続人ではないと判定された場合、ステップ1322と同様に、第1順位の相続人は存在しないので、第2順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1302)に戻る。
以上に説明したように、図27に示す第1順位の相続人を特定する処理では、親等の近い者から順に相続人となる。被相続人の子の代が全員死亡している場合は、孫の代が相続人となる。孫の代が全員死亡している場合は、曾孫の代が相続人となる。曾孫の代が全員死亡している場合は、玄孫の代が、玄孫の代が全員死亡している場合は、来孫の代が、来孫の代が全員死亡している場合は、昆孫(こんそん)の代が相続人となる。
また、親等が同じ者は、同順位となり遺産相続人となる。
図28は、旧民法において第3順位の相続人を特定する処理のフローチャートである。
まず、関係者テーブル31を参照して、父母が生きているかを判定する(1341)。具体的には、関係者テーブル31の開始年月日320に日付が入力されており、かつ、開始原因321が「死亡」であれば、当該関係者(父母)は死亡していると判定できる。そして、父母の一方が生きていれば、生きている父母が相続人であると判定する(1342)。一方、父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、1代遡り、関係者テーブル31を参照して、祖父母が生きているかを判定する(1343)。
例えば、養父母及び実父が死んでいる場合は、実母が相続人となる(1342)。そして、実母が相続人なので、ステップ1343以後の処理は実行されず、養方祖父母が生きていても相続人にはならない。すなわち、同一世代(父母の代、祖父母の代、曾祖父母の代)で一人が生きている場合、当該世代の相続人を特定し、尊属を辿らない。
そして、祖父母の一方が生きていれば、生きている祖父母が相続人であると判定する(1344)。一方、祖父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、さらに1代遡り、関係者テーブル31を参照して、曾祖父母が生きているかを判定する(1345)。
そして、曾祖父母の一方が生きていれば、生きている曾祖父母が相続人であると判定する(1346)。一方、曾祖父母の両方が死んでいれば、親子テーブル34を参照して、さらに1代遡り、関係者テーブル31を参照して、高祖父母が生きているかを判定する(1347)。
そして、高祖父母の一方が生きていれば、生きている高祖父母が相続人であると判定する(1348)。一方、高祖父母の両方が死んでいれば、第2順位の相続人は存在しないので、第3順位の相続人を特定するため、この処理を終了し、呼出元に(例えば、ステップ1206)に戻る(1349)。
<旧々民法>
旧々民法においては、旧民法と同様に家督相続制度が設けられている。戸主が死亡した場合、家督相続人が全ての遺産を相続し、他の親族は遺産を相続しない。具体的には、以下の条件を満たした者一人が家督相続人となる。
第1順位
(1)被相続人である家族と家を同じくする卑属親
(2)親等の近い者が先順位となる。
(3)親等の同じ男子と女子あるときは男子が優先する。
(4)男子が数人いるときは先に生まれた者が優先する。ただし、嫡出子と庶子又は私生子がいるときは嫡出子を優先する。
(5)女子のみが数人いるときは先に生まれた者が優先する。ただし、嫡出子と庶子又は私生子がいるときは嫡出子を優先する。
(6)遺産相続人が被相続人に先だって死亡し、又は廃除されたときはその卑属親が代襲相続する。
第2順位
第1順位で家督相続人が定まらない場合、被相続人が家督相続人を指定する。よって、第2順位以降は、親族関係及び法律の規定によって家督相続人を特定できないため、本実施例の相続関連書類作成システムでは、第1順位まで家督相続人を特定する。
一方、旧々民法では、戸主以外の者が死亡した場合、遺産相続人を特定する。
図29は、旧々民法において遺産相続人を判定する処理のフローチャートである。
まず、被相続人に直系卑属がいるかを判定する(1401)。第1順位における遺産相続人は下記の条件に従って判定する(1402)。
(1)親等の近い者が優先する(子の代が全員死亡している場合は孫の代に、孫の代が全員死亡している場合は曾孫(甥姪も同じ親等)にというように、玄孫(姪孫も同じ親等)、来孫(曾姪孫も同じ親等)、昆孫(玄姪孫も同じ親等)と、遠い親等に進む)。
(2)親等の同じ男子と女子あるときは、男子が優先する。
(3)男子が複数人あるときは、先に生まれた者が優先する。但し、庶子、私生子より嫡出子が優先する。
(4)女子のみ複数人あるときは、先に生まれた者が優先する。但し、庶子、私生子より嫡出子が優先する。
(5)遺産相続人が被相続人より先に死亡し又は廃除された場合、その卑属親が代襲相続する。
その結果、第1順位の遺産相続人がいなければ、夫婦テーブル33を参照して、被相続人に配偶者がいるかを判定する(1403)。そして、被相続人に配偶者がいれば、配偶者が第2順位の遺産相続人となる(1404)。
一方、被相続人に配偶者がいなければ、戸主テーブル36を参照して、被相続人に戸主がいるかを判定する(1405)。具体的には、関係者テーブル31の開始年月日320が、戸主テーブル36の戸主開始日365から戸主終了日367の間にある、又は、戸主テーブル36の戸主開始日365と同日である者が戸主であると判定できる。
その結果、被相続人に戸主がいれば、戸主が第3順位の遺産相続人となる(1406)。一方、被相続人に戸主がいなければ、相続人は存在しないと判定する(1407)。
図30は、本実施例の相続関連書類作成システムから出力される相続関係説明図の例を示す。相続関係説明図は、被相続人と相続人との関係を図示したものである。図30に示す相続関係説明図は、被相続人である甲野太郎の尊属及び卑属が表される。相関関係説明図は、財産一覧画面(図18)や関係者一覧表示画面(図25)において、「相関図作成」ボタンを操作することによって、ディスプレイ画面で確認し、プリンタ11から出力することができる。
図31は、本実施例の相続関連書類作成システムから出力される遺産分割証明書の例を示す。図31(A)に示す遺産分割証明書は、相続人毎に取得する遺産を表し、図31(B)に示す遺産分割証明書は、財産毎に取得する相続人及び相続分を表す。遺産分割証明書は、財産一覧画面(図18)において、「書類作成」ボタンを操作し、サブメニューで作成する書類を選択することによって、ディスプレイ画面で確認し、プリンタ11から出力することができる。
図32Aから図32Cは、本実施例の相続関連書類作成システムから出力される遺産分割協議書の例を示す。遺産分割協議書は、被相続人である甲野太郎の各相続人が取得する遺産の一覧と、全ての相続人の署名捺印がされる書類である。遺産分割協議書は、財産一覧画面(図18)において、「書類作成」ボタンを操作し、サブメニューで作成する書類を選択することによって、ディスプレイ画面で確認し、プリンタ11から出力することができる。
以上に説明したように、本発明の実施例によると、現在及び過去の戸籍から相続関係者の続柄、生年月日、死亡年月日等を入力することによって、過去に施行されていた民法の規定に基づく相続関係を含んでも、適用法が異なる数世代にわたって法定相続人、法定相続分、遺留分を正確に特定できる。
また、旧民法の規定に準拠して、家督相続人や遺産相続人を特定することができる。
また、法定相続又は任意分割による財産毎に異なる分割割合を登録でき、財産毎に相続分が異なる場合でも、正確な相続関係書類(遺産分割証明書、遺産分割協議書)を作成できる。
また、法定相続人を判定し法定相続分を計算するために適用した民法の根拠条文を、相続人ごとに表示することができる。このため、専門家(弁護士、司法書士、税理士など)が、民法の条文を参照して、システムによる判定結果の妥当性を容易に検証することができる。
さらに、特定した法定相続人、法定相続分、遺留分などに基づいた相続関係説明図や、相続関係書類(遺産分割証明書、遺産分割協議書)を作成できる。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。