JP6273871B2 - 最適波形の演算方法、プログラム及び最適波形演算装置 - Google Patents

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Description

本発明は、注入同期系(周波数引き込み)に入力する入力信号の最適波形を設計するのに好適な最適波形の演算方法、プログラム及び最適波形演算装置に関する。
近年の高速無線通信や無線電力伝送の要素技術として、注入同期方式の重要性が高まりつつある。注入同期の本質は、自励発振状態にある発振器に周期的な同期信号(以下「入力信号」ということもある)を直接入力することで、発振器の発振周波数が入力された同期信号の周波数に同調する引き込み現象である。このような注入同期は、自然界の多くの例で知られている。電気回路においても,ファン・デル・ポール(van der Pol) 振動子をはじめとして、古くから多くの例が知られている。最近では,発振器の周波数安定性の向上を念頭に、無線通信信号(搬送波)の低位相雑音化や無線電力伝送の周波数変動の安定化のための要素技術として、またCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)リングオシレータの性能向上を目的として研究が盛んである。例えば、ミリ波・マイクロ波の分野において、注入同期系の解析には、これまで主として下記式(1)のアドラーの方程式が用いられてきた。
Figure 0006273871
ここで、φは発振器の発振波形と入力波形の位相差、Δωは発振器の発振信号と入力信号の周波数差(離調)、εは発振器の回路によって定まる定数である。また発振波形と入力波形の位相差φは、φ=ψ−Ωtで表される。ψは発振波形の位相、Ωは入力波形の角周波数、tは時間である。この式(1)を用いた解析手法によって、注入同期系の引き込み周波数帯(ロックレンジ)が定まるのみならず、位相差を含む発振器の過渡状態や同期の安定性解析が可能になる。アドラーの方程式が提案された以降も発振器の弱非線形性の前提のもと、基本波/分数調波/高調波に関わる同期理論の研究が着実に進められてきた。それでもなお、入力が正弦波から大きく異なる場合や、発振器の非線形性が強い場合の取り扱いが困難である。したがって、アドラーの方程式は現在のパルス入力、非線形性が強いCMOSリングオシレータなどの解析及び設計には用いることができない。そのため、現在の注入同期系の設計の方法は、シミュレーションによる試行錯誤が主となっている。
また、現実的な制約の下で、注入同期系の能力を最大化する最適設計論は存在しなかった。現実的な制約条件とは、例えば入力信号の面積(入力信号の値の絶対値の積分)、パワー、振幅のいずれかが一定であること、あるいはこれらを組み合わせた条件といったものである。
このような背景において、最適設計論のさらなる一般化が期待される中で、発明者らは、非特許文献1,2において、最適設計論の端緒を切り拓いた。さらに、発明者らは、非特許文献3〜5において、注入同期系の物理的限界(性能限界)の存在やその最適化の可能性についての基本問題を解決できることを示唆している。
T. Harada, H.-A. Tanaka, M. J. Hankins, and I. Z. Kiss, ``Optimal waveform for the entrainment of a weakly forced oscillator," Phys. Rev. Lett. vol. 105, no. 8,088301, 2010. A. Zlotnik, Y. Chen, I. Z. Kiss, H.-A. Tanaka, and J. S. Li, ``Optimal waveform for fast entrainment of weakly forced nonlinear oscillators," Phys. Rev. Lett., vol. 111, no. 2,024102, 2013. 西山英里,吉川貴博,田中久陽,「最適注入同期とその応用」,信学技報,非線形問題研究会,社団法人電子情報通信学会,平成25年3月14日 田中久陽,「注入同期の物理的限界の実現について 〜理論〜」,信学技報,マイクロ波研究会,社団法人電子情報通信学会,平成25年9月12日 田中久陽,「注入同期の物理的限界の実現について 〜応用例〜」,信学技報,マイクロ波研究会,社団法人電子情報通信学会,平成25年9月12日
しかしながら、現実的な制約の下で、注入同期系の周波数引き込み性能として重要である引き込み周波数帯(ロックレンジ)を最大化するための最適な入力信号を算出する具体的なアルゴリズムは、これまで提案されていなかった。
上記の状況から、現実的な制約の下で、注入同期系における最適な入力信号を算出する具体的なアルゴリズムが求められていた。
本発明の一態様は、発振器を有する注入同期系に注入する入力信号f(θ)の最適波形を演算する際に、
上記発振器の位相感受関数Z(θ)(ここで、θは入力信号の位相)を取得する処理と、
上記入力信号f(θ)のpノルムのpの値を取得する処理と、
上記入力信号f(θ)の1周期の平均値が一定である第1の制約条件(1/(2π)*〈f(θ)〉=0)(〈 〉は、θについての1周期にわたる積分)と、上記入力信号f(θ)のpノルムが一定である第2の制約条件(||f||=M)(Mは正の定数)の下で、上記位相感受関数Z(θ)及び上記pの値に基づいて、上記入力信号f(θ)の最適波形fopt,pを、次式を用いて計算する処理と、を実行する。
opt,p=Msig[g(θ)](|g(θ)|/||g||1/p´
ただし、g(θ)=Z(θ+Δφ)−Z(θ)+λ、Δφ=φ−φ、φは上記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、φは上記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、p−1+q−1=1、p´=p−1、λはラグランジュの未定乗数である。
本発明の少なくとも一態様によれば、現実的な制約の下で、注入同期系における最適な入力信号を算出することができる。それゆえ、注入同期系の周波数引き込み性能を最大化することが可能となる。
発振器へのパルスの注入タイミング(位相)とパルスの振幅の一例を示したグラフである。 発振器の発振位相のシフト量と発振器へのパルスの注入タイミング例を、入力信号の電圧ごとに示したグラフである。 図3は位相結合関数と引き込み可能領域との関係を示すグラフである。図3左図は注入同期が成立する離調の範囲の一例を示すグラフ(アーノルドタング)であり、図3右図はある入力信号における位相結合関数の一例を示したグラフである。 pの値とそれに対応する入力信号f(θ)のpノルムを示した表である。 本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムにおける入力と出力の関係を示した説明図である。 本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムを示すフローチャートである。 図6の1<p<∞の場合における、未知パラメータ(Δφ,λ)の最適値を算出するサブルーチン処理を示すフローチャートである。 図6のp=∞の場合における、未知パラメータ(Δφ,λ)の最適値を算出するサブルーチン処理を示すフローチャートである。 図6のp=1の場合における、未知パラメータΔφmaxの最適値を算出するサブルーチン処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態に係る最適波形演算装置の概略構成を示すブロック図である。 図10の最適波形演算装置を、注入同期型のCMOSリングオシレータに適用した場合の概略構成を示す図である。 図12Aは1周期が1.43/20πTのパルス、図12Bは1周期がπ/20πTのパルスの波形図である。 注入同期型のCMOSリングオシレータのロックレンジを示すグラフ(アーノルドタング)である。 注入同期型のCMOSリングオシレータにおけるロックレンジと正負のパルスの位相差の関係を示すグラフである。 図10の最適波形演算装置を、注入同期型のE級発振器に適用した場合の概略構成を示す図である。 注入同期型のE級発振器における位相感受関数の一例を示したグラフである。 図17Aは発振器に入力する正弦波、図17Bは矩形波、図17Cはパルス波の一例を示した波形図である。 注入同期型のE級発振器のロックレンジを示すグラフ(アーノルドタング)である。 ベクトルを利用した任意波形の生成処理についての説明図である。 GAによる評価値(ロックレンジ)の収束過程の一例を示したグラフである。 本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムより求めた厳密解とGAによる探索解の一例を示したグラフである。図21Aは1000世代探索時の結果、図21Bは10000世代探索時の結果、図21Cは150000世代探索時の結果を表している。 本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムを用いた場合とGAを用いた場合の、最適波形の算出にかかる時間を比較したグラフである。 GAによるサンプル数別の探索解の一例を示したグラフであり、図23Aはサンプル数50のときの探索解の例、図23Bはサンプル数100のときの探索解の例である。
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本発明は、背景技術とその問題点をふまえ、所与の発振器に対し、注入同期系の入力信号の波形を最適化し、注入同期性能を最大化するものである。そこで、本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムでは、次の着想点(1)と着想点(2)によって上記問題を解決している。その詳細については、後述する[具体的なアルゴリズム]において説明する。
<着想点(1)>
着想点(1)は、ロックレンジの算出のために発振器の発振位相に関する方程式を用いることである。上述したように、注入同期系の解析において従来主流であったアドラーの方程式は、その適用範囲に課題が残っていた。一方で、物理の分野でも同様の研究が進み、下記の発振位相に関する方程式が得られている。
Figure 0006273871
ここで、〈 〉はθについての1周期にわたる積分を示し、Γ(φ)は位相結合関数である。Z(θ)は位相感受関数と呼ばれる、発振器(振動子)の非線形特性を表す周期関数である。位相感受関数Z(θ)より、発振器の内部機構(発振状態)を表す特性が得られる。f(θ)は入力信号である。以降の説明において、位相結合関数Γ(φ)、位相感受関数Z(θ)及び入力信号f(θ)をそれぞれ、Γ、Z及びfと略記することもある。
位相感受関数は、インパルス感度関数(ISF:Impulse Sensitivity Function)とも呼ばれる。位相感受関数は、発振器に微小なインパルス電流が注入された際に、これにより引き起こされる発振位相の僅かなシフト量と、微小インパルス電流の注入のタイミングとの関係を示す関数である。よって、位相感受関数は、発振器の出力波形の1周期にわたって、微小なパルスの注入タイミング(位相)を少しずつ変えて、そのタイミング毎に位相シフト量を測定することで得られる。図1は、発振器へのパルスの注入タイミング(位相[rad])とパルスの振幅[V]の一例を示している。図1の例では、(2π×0.1)のパルス幅を持つパルス1に続いて、同様な波形のパルス2をタイミングをずらして発振器に入力している。同様にして、同一波形のパルスを1周期にわたり所定の位相差でタイミングをずらして発振器に入力していく。
図2は、ある発振器の発振位相のシフト量[10−2rad]と発振器へのパルスの注入タイミング(位相[rad])との関係例を、バイアス電位Vbごとに示したグラフである。ここでは、パルスを注入してから100周期を経過後の発振位相の変化量を、注入したパルスの面積で割って正規化している。図2において3つの位相感受関数3〜5を示したように、バイアス電位Vbが大きいほど、位相シフト量が大きくなることがわかる。なお、発振器の内部機構を反映した位相感受関数(インパルス感度関数)を推定する他の方法として、発明者らが提案した発振器の内部機構の推定方法(特開2010−147599号公報)を用いることもできる。
式(2)の入力信号f(θ)は正弦波のみに限定されず任意の波形としてよい。また発振器の位相感受関数Z(θ)が何らかの方法で得られるのであれば、対象とする発振器の非線形性の強さに制限はない。さらに、入力信号f(θ)=sin(θ)(あるいは位相感受関数Z(θ)=sin(θ))とすると、式(2)はアドラーの方程式である式(1)と同一の表式となる。つまり、式(2)はアドラーの方程式の自然な一般化ということができる。本発明では、この強力な方程式を、入力信号の最適波形を演算するためのアルゴリズムの土台として用いる。式(2)より、位相感受関数Z(θ)の特性を持つ発振器に対し、入力信号f(θ)を入力する場合のロックレンジを求める。位相感受関数Z(θ)と入力信号f(θ)が与えられると、位相結合関数Γ(φ)が求まる。
図3は、位相結合関数と引き込み可能領域との関係を示すグラフである。図3左図は注入同期が成立する離調の範囲の一例を示すグラフ(アーノルドタング)であり、図3右図はある入力信号における位相結合関数の一例を示したグラフである。図3左図の横軸は入力信号の強度、縦軸は発振周波数差(−Δω)であり、図3右図の横軸は発振位相差(φ)、縦軸は位相結合関数(Γ(φ))である。
注入同期が成立する必要十分条件は、『発振波形と入力波形の位相差φがdφ/dt=0かつΓ(φ)´<0(図3右図の位相結合関数6の太線部)を満たす』ことであり、位相結合関数Γ(φ)の最大値Γ(φ)と最小値Γ(φ)の範囲内に離調(−Δω)が入っていることと等価である。つまりロックレンジRは、R=Γ(φ)−Γ(φ)と求まる。位相差φは位相結合関数Γ(φ)が最大(極大)となるときの位相差であり、位相差φは位相結合関数Γ(φ)が最小(極小)となるときの位相差である。図3左図に示すような、ある入力信号の強度における注入同期が成立する離調の範囲を表すグラフはアーノルドタングと呼ばれ、注入同期の性能の評価に用いられる。
(m:n引き込み)
以上は、発振器の発振波形と入力波形の周波数比が1:1の場合であるが、同様のことがm:n引き込み(いわゆる高調波分数調波同期ないし逓倍・分周動作)の場合にも成立する。その場合には式(2)は、式(3)のようになる。
Figure 0006273871
ロックレンジを最大化する入力信号f(θ)を求める問題は、式(2)のΓ(φ)の最大値と最小値の差を最大とするような入力信号f(θ)を求める問題として考えることができる。ただし、入力信号f(θ)の振幅が大きいほどロックレンジが大きくなることは自明なので、公平のために入力信号f(θ)に対して制約条件を課したうえで最適化を行なう必要がある。現実的な制約条件としては、例えば入力信号f(θ)の面積、パワー、振幅のいずれかが一定であること、あるいはこれらの制約の2以上を組み合わせた条件などが挙げられる。
<着想点(2)>
着想点(2)は、ロックレンジの上界を導出するために不等式を用いることである。
式(2)式より、ある発振器に入力信号f(θ)を入力したときの発振器のロックレンジRは、下記式(4)で表すことができる。
Figure 0006273871
さらに、ロックレンジRを最大化する問題を厳密に解くために、極値問題としての定式化を行なう。その際、制約条件として入力信号f(θ)の1周期の平均値が一定(式(5))と、入力信号f(θ)のpノルムが一定(式(6))であるという条件を課す。ただし、p≧1であり、Mは正の定数とする。
Figure 0006273871
Figure 0006273871
以降では、簡単のため式(5)においてC=0とする。これはチャージバランス制約とも呼ばれる。また式(6)においてpの値によってMの物理的意味は異なる。代表例として、p=1,2,無限大の場合におけるMの物理的意味を、図4に示している。図4は、pの値とそれに対応する入力信号f(θ)のpノルムを示した表である。
表1より、pの値を変えることで、入力信号f(θ)の制約条件の物理的意味を様々に変えられることがわかる。式(5),(6)の制約条件のもと、下記式(7)に示す汎関数を定義することができる。ここでλは、ラグランジュの未定乗数である。
Figure 0006273871
発明者らは、式(7)の右辺をヘルダーの不等式で表せることを見出し、その等号成立条件を導くことで、汎関数J[f]の上界を与える方法を考案した。ヘルダーの不等式とは、下記式(8)で表される不等式である。
Figure 0006273871
ここで、p−1+q−1=1である。汎関数J[f]は式(4),(7)を用いて、下記式(9)のように変形できる。
Figure 0006273871
式(9)の4段目の不等式の等号が成立するならば、汎関数J[f]が最大になると言える。ヘルダーの不等式の等号成立条件より、汎関数J[f]が最大となる際の入力関数fと関数gの関係式が導かれる。関数gは、発振器の発振状態を表す情報を含む関数である。ヘルダーの不等式の等号成立条件より、式(10)が成り立つ。
Figure 0006273871
上記式(10)を、下記式(11)のように表すことができる。sig[g(θ)]は、g(θ)が正のとき“+1”の値をとり、g(θ)が負のとき“−1”の値をとる。
Figure 0006273871
ここで、下記式(12)が成り立つことから、式(11)の(s/r)1/pは、下記式(13)により与えられる。
Figure 0006273871
Figure 0006273871
そして、式(11),(13)から下記式(14)が導かれる。
Figure 0006273871
下記式(15)は、式(14)において、p´=p−1とおいたときの式である。この式(15)は、式(5),(6)を満たす制約条件の下、ロックレンジを最大にする最適波形を表す基本的な要素である。
Figure 0006273871
式(15)におけるg(θ)=Z(θ+Δφ)−Z(θ)+λは、未知パラメータであるΔφ,λを含むので、最適波形を一意に定めるためには、Δφ,λの最適値を求める必要がある。式(9)より所与のZ(θ)と最適波形fopt,p(θ)の内積は、次式となる。
Figure 0006273871
M,αが正の定数であることから、関数F[fopt,p]が最大化するためには実質<|g|α>を考えればよい。そこで、以下の式(17)を定義する。
Figure 0006273871
一方で、式(16)を式(5)に代入し、チャージバランス制約を意味する下記式(18),(19)を定義する。
(1<p<∞の場合)
Figure 0006273871
(p=∞の場合)
Figure 0006273871
以上より、関数G(Δφ,λ)=0の制約下において関数F(Δφ,λ)を最大化するために、下記式(20)が自然に定義される。ここで、μはラグランジュの未定乗数である。
Figure 0006273871
つまり、関数F(Δφ,λ)の極値を関数G(Δφ,λ)=0の制約下で求める問題を、関数H(Δφ,λ)の極値を求める問題に帰着させて考える。したがって、関数G(Δφ,λ)=0とともに下記式(21)を解けばよい。
Figure 0006273871
ここで、関数F(Δφ,λ)の偏微分をとると、pの値が1<p<∞のときは下記式(22),(23)で表される。
(1<p<∞の場合)
Figure 0006273871
Figure 0006273871
また、pの値が無限大のときは、関数F(Δφ,λ)の偏微分は下記式(24),(25)で表される。
(p=∞の場合)
Figure 0006273871
Figure 0006273871
式(22)〜(25)より、F(Δφ,λ)=0とG(Δφ,λ)=0は等価である。したがって、F(Δφ,λ)=F(Δφ,λ)=0を解けば自動的にチャージバランス制約を満たすことになる。つまり、関数H(Δφ,λ)の極値を求める問題は、最終的に関数F(Δφ,λ)の極値を求める問題に簡単化される。
(Δφ,λ)=F(Δφ,λ)=0を満たす(Δφ,λ)が、関数H(Δφ,λ)の極大又は極小のいずれに対応するかは、境界つきヘッセ行列H(H)のへシアン|H(H)|の符号により判定できる。ヘッセ行列H(H)とへシアン|H(H)|をそれぞれ式(26),(33)に示す。ヘシアンに関する式(33)を計算し、へシアン|H(H)|>0ならば、関数H(Δφ,λ)が極大をとることを意味する。一方、へシアン|H(H)|<0ならば、関数H(Δφ,λ)が極小をとることを意味する。
Figure 0006273871
以下は、1<p<∞の場合における式(26)に示したヘッセ行列の各要素である。
(1<p<∞の場合)
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
以下は、p=∞の場合における式(26)に示したヘッセ行列の各要素である。
(p=∞の場合)
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
Figure 0006273871
ここで、式(34)〜(39)のθは、g(θ)=0のi番目の根であり、根の数をnとする。また、Z(θ)≡Z(θ+Δφ)−Z(θ)である。
図5は、本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムにおける入力と出力の関係を示した説明図である。最適波形演算アルゴリズムは、後述する最適波形演算装置17(図10参照)において実行される。最適波形演算装置17については別途詳細に説明する。
まず、上記式(15)を用いる最適波形演算アルゴリズムに対し、「位相感受関数Z」と「pの値」の情報を入力する。pの値は、注入同期系の設計者又は利用者が選択するパラメータである。次に、最適波形演算アルゴリズムは、与えられた制約条件下(例えば、p=1,2,∞)で最適な入力波形を演算する。そして、最適波形演算アルゴリズムは、pの値ごとに入力信号f(θ)の最適解foptを出力する。例えば、入力信号として、p≒1の場合にはパルス波、p≒2の場合には正弦波、さらにp≒∞の場合には矩形波が得られる。
<具体的なアルゴリズム>
[最適波形の生成処理_1:1同期]
次に、本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムを、図6〜図9を参照して説明する。ここでは、1:1同期(引き込み)の場合について説明する。
図6は、本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムを示すフローチャートである。
まず、最適波形演算アルゴリズムに、パラメータとしてpの値を与える(ステップS1)。pの値については、利用者が注入同期系の特性に合わせて所望する入力信号の波形に基づいて決定する。またpの物理的意味(面積一定、パワー一定、振幅一定など)から決定してもよい。ここでは、位相感受関数Z(θ)が最適波形演算アルゴリズムに与えられているものとする。以降の処理は、与えられたpの値が(i)1<p<∞、(ii)p=∞、(iii)p=1のいずれであるかによって異なる。pの値が1<p<∞の場合にはステップS3に進み、p=∞の場合にはステップS6に進み、さらにp=1の場合にはステップS9に進む(ステップS2)。以下では、ノルムpにおける入力信号f(θ)の最適波形を、「fopt,p」のように表記する。
((i) 1<p<∞の場合)
最適波形fopt,pは、式(40)で表される。この式(40)で表される最適波形は、連続波である。ここで、関数g(θ)は式(41)で表される。
Figure 0006273871
Figure 0006273871
関数g(θ)に含まれる(Δφ,λ)は未知のパラメータであり、これらのパラメータが最適値(Δφopt,λopt)をとるとき、ロックレンジが最大となる。そこで、まず真の最適値(Δφopt,λopt)を算出する(ステップS3)。この最適値(Δφopt,λopt)は、図7のフローチャートに示した手順によって算出される。
図7は、1<p<∞の場合における、未知パラメータ(Δφ,λ)の最適値を算出するサブルーチン処理を示すフローチャートである。
まずサブルーチンは、式(22),(23)に基づく下記式(42),(43)に示す関数Sp,Tpそれぞれの解曲線の交点の座標(Δφ,λ)を全て求め、メモリ(例えば、図10のRAM23)に格納する(ステップS21)。これにより、パラメータ(Δφ,λ)の最適値の候補を大域的に漏れなく求めることができる。
Figure 0006273871
Figure 0006273871
次に、サブルーチンは、これらの交点の座標をより高精度に再取得し、メモリに格納する(ステップS22)。そのための手法としては、一例としてニュートン法が適している。ニュートン法は、方程式系を数値計算によって解くための反復法による求根アルゴリズムの1つであり、接線の性質を利用している。ニュートン法について一般化して説明すると、方程式f(x)=0に対して関数y=f(x)を考え、まず適当なxを取ってf(x)に対する接線を求める。接線がx軸の交点におけるxの値は最初のxよりも解に近いため、このxについて再び接線を求めると、そのx軸との交点はさらに解に近づく。この操作を何度も繰り返し行なっていくと、xの値は解に収束していくため、回数に応じた精度の解の近似値を得ることができる。ここでは、上記説明のxを(Δφ,λ)に置き換え、f(x)をS(Δφ,λ),T(Δφ,λ)に置き換えて解を求める。
次に、サブルーチンは、求めた各交点の座標(Δφ,λ)について、式(33)のヘシアン|H(H)|を算出する(ステップS23)。
ここで、ヘシアン|H(H)|>0であるかどうかを判断する(ステップS24)。ヘシアン|H(H)|>0ではないならば、その座標(Δφ,λ)は最適値の候補から除外する(ステップS28)。一方、ヘシアン|H(H)|>0である座標(Δφ,λ)に対しては、それぞれに対応するロックレンジRを式(2)より算出する(ステップS25)。
そして、そのうちロックレンジRが最大となる座標(Δφ,λ)を最適値と判定し、(Δφopt,λopt)とする(ステップS26)。この最適値(Δφopt,λopt)を戻り値として最適波形演算アルゴリズムのメインルーチン(図6)へ戻り(ステップS27)、処理を終了する。
図6の最適波形演算アルゴリズムのメインルーチンに戻る。
次に、これら最適値(Δφopt,λopt)を、関数g(θ)についての式(41)に代入し、関数g(θ)を計算する(ステップS4)。
さらに、この関数g(θ)を式(40)に代入し最適波形fopt,p(θ)を得る(ステップS5)。最後に、最適波形fopt,p(θ)についての情報を出力し(ステップS11)、処理を終了する。
((ii) p=∞の場合)
最適波形fopt,pは、式(44)で表される。この式(44)で表される最適波形は、矩形波である。ここで、関数g(θ)は式(41)で表される。
Figure 0006273871
1<p<∞の場合と同様に、まず関数g(θ)に含まれる未知パラメータ(Δφ,λ)の真の最適値(Δφopt,λopt)を算出する(ステップS6)。この最適値(Δφopt,λopt)は、図8のフローチャートに示した手順によって算出される。
図8は、p=∞の場合における、未知パラメータ(Δφ,λ)の最適値を算出するサブルーチン処理を示すフローチャートである。図8に示す処理の手順(ステップS31〜S37)は、1<p<∞の場合(図7のステップS21〜S27)と同様であるが、計算に用いる式は異なる。
すなわち、p=∞の場合には、ステップS31において、式(24),(25)を用いて関数Sp,Tpそれぞれの解曲線の交点の座標(Δφ,λ)を求める。また、ステップS33において、ヘッセ行列の各要素は式(34)〜(39)に示した内容である。
そして、ロックレンジRが最大となる座標(Δφ,λ)を最適値と判定し(ステップS36)、この最適値(Δφopt,λopt)を戻り値として最適波形演算アルゴリズムのメインルーチン(図6)へ戻り(ステップS37)、処理を終了する。
図6の最適波形演算アルゴリズムのメインルーチンに戻る。
次に、これら最適値(Δφopt,λopt)を、1<p<∞の場合と同様に、関数g(θ)についての式(41)に代入し関数g(θ)を計算する(ステップS7)。この関数g(θ)を式(44)に代入し最適波形fopt,∞(θ)を得る(ステップS8)。最後に、最適波形fopt,∞(θ)についての情報を出力し(ステップS11)、処理を終了する。
((iii)p=1の場合)
最適波形は、pを1に限りなく近づけた場合(p→1)の極限として得られる。(i)1<p<∞の場合の最適波形は、pを1に近づけるに従い正負一対の鋭いパルスとなる。そのため、ここでは、(i)1<p<∞の場合におけるp→1の極限として、下記式(45)に示すチャージバランス制約(すなわちλ=0)を満たす正負一対のパルスを考える。
Figure 0006273871
式(45)におけるΔ(θ)は、幅がゼロかつ高さが無限に漸近するパルスである。未知パラメータは、最大位相差Δφmax=θmax−θminのみとなる。ここで、θmax,θminはそれぞれ、関数g(θ)が最大,最小となる位相に対応する。この最大位相差Δφmaxは、図9のステップS41〜S44の手順により算出される。
図9は、p=1の場合における、未知パラメータΔφmaxの最適値を算出するステップS9のサブルーチン処理を示すフローチャートである。
まずサブルーチンは、下記式(46)に示す関数Γ(φ)の解を、Δφを変えながら算出する(ステップS41)。
Figure 0006273871
この関数Γ(φ)の最大値と最小値の差は、p=1の場合におけるロックレンジRを表す。そのため、ロックレンジRをΔφの関数R(Δφ)として得ることができる。そこで、関数R(Δφ)を算出する(ステップS42)。
次に、関数R(Δφ)より、ロックレンジRが最大となる位相差Δφ(≡Δφmax)を算出する(ステップS43)。この最大位相差Δφmaxを戻り値として最適波形演算アルゴリズムのメインルーチン(図6)へ戻り(ステップS44)、処理を終了する。
図6の最適波形演算アルゴリズムのメインルーチンに戻る。
次に、求めた最大位相差Δφmaxの値を、式(45)のΔφmaxに代入し、最適波形f*,1(θ)を得る(ステップS10)。最後に、最適波形f*,1(θ)についての情報を出力し(ステップS11)、処理を終了する。
[最適波形の生成処理_m:n同期]
以上、発振器の発振信号と入力信号の周波数比が1:1である1:1同期の場合についての最適波形の生成処理の手順を示した。以降では、m:n同期の場合について最適波形の生成処理の手順を説明する。
(i) 1<p<∞,(ii) p=∞の場合
m:n同期の場合、Z(θ)からn×j次(j:正の整数)の高調波成分のみを抽出したZ(θ)を用意し、これに上記の[最適波形の生成処理_1:1同期]を適用すればよい。その結果得られた最適波形f(θ)をf(nθ)として発振器に入力することで、ロックレンジの最大化を行うことができる。なぜなら三角関数(周期関数)の直交性より、式(3)の位相結合関数において、Z(mθ)のn×j次の高調波成分Z(mθ)と、f(nθ)のm×k次(k:正の整数)の高調波成分f(nθ)のみが互いに畳み込み積分に寄与するからである。
例外として、n=1(いわゆる逓倍動作)の場合の最適波形は存在しない。n=1ならば、式(40)の最適波形fopt,p(θ)又は式(44)の最適波形fopt,∞(θ)のm周期のうちから最初の1周期のみを抽出したクリップ波形fclip,p(θ)を生成することによって、周波数逓倍の効果を得ることができる。
Figure 0006273871
ここで、クリップ波形fclip,p(θ)は制約条件である式(5)を満たしている。さらに、クリップ波形fclip,p(θ)のpノルムMが一定であるという式(6)の制約条件を満たすように、定数C=m1/pMとする。このクリップ波形fclip,p(θ)を発振器に入力することで得られるロックレンジは、1:1同期の場合に得られるロックレンジの最大値よりも低下するものの、パラメータ(Δφopt,λopt)の最適性は維持される。すなわち、1:1同期の場合に算出した(Δφopt,λopt)をそのまま用い、クリップ波形fclip,p(θ)を生成すればよい。
(iii) p=1の場合
この場合、定数C=m1/pM=mMである。よって発振器に下記式(48)に示すクリップ波形を入力することで、1:1同期の場合と同じロックレンジを得ることができる。
Figure 0006273871
[最適波形の生成処理_線形安定性の最大化]
注入同期が成立している状態における発振器の発振信号と入力信号の位相差φをφ*とすると、Γ(φ*)´は引き込み状態の安定性を意味する。以上では、ロックレンジR(=Γ(φ)−Γ(φ))の最大化を達成するためのアルゴリズムを示したが、同様の方法で−Γ(φ*)´を最大化することで引き込み状態の(線形)安定性を最大化することも可能である。線形安定性の最大化により、注入同期系が引き込みに至る速度を最大化する効果を得ることができる。
具体的には、Z(θ)をZ´(θ)(Z(θ)の微分)に置き換えた上で以上のアルゴリズムを実行すればよい。これにより、注入同期系の線形安定性を最大化するための入力信号を得ることができる。
<本実施の形態による効果>
以上説明した本実施の形態により以下の効果が得られる。
従来の変分法を用いた最適設計論では、入力信号のパワー一定の制約条件しか課すことができなかった。しかし、本実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムによれば、入力信号に対し、面積、パワー、振幅のいずれかが一定という制約条件を課すことができる。さらに、これらの2以上を組み合わせた制約条件といった広いクラスの制約条件を課すことができる。
それゆえ、入力信号に対して種々の物理的制約が課される場合においても、注入同期系の最適設計を行うことができる。
また、入力信号の最適解としてパルス、矩形波といった非線形性の強い波形が必要な場合においても、注入同期系の最適設計を行なうことができる。
このように、本実施の形態によれば、現実的な制約条件の下で、種々の注入同期系に対し、注入同期系の引き込み性能として重要である引き込み周波数帯(ロックレンジ)を最大化するための入力信号を算出することができる。すなわち、所与の発振器に対し、入力信号の波形を最適化し、注入同期系の性能を最大化すること(物理的限界)を実現できる。
さらに、本実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムでは、計算式により網羅的に最適解の候補を挙げ、かつそれらが正しいか検証する処理を含むため(図6参照)、得られる最適解(厳密解)は、真の最適解であることが保証される。
すなわち、最適波形演算アルゴリズムは、シミュレーションやランダム性を利用した探索アルゴリズムを一切要さないので、極めて少ない計算量及び計算時間によって注入同期系の最適設計を行うことができる。
<最適波形演算装置の構成例>
次に、上述した最適波形演算アルゴリズムを実行するための最適波形演算装置の一例を説明する。
図10は、本発明の一実施の形態に係る最適波形演算装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図10は、最適波形演算装置を適用した無線通信システムの概略構成も示している。
無線通信システム10は、図10に示すように、注入同期系11と、高周波変換器15と、アンテナ16と、最適波形演算装置17とを備える。
注入同期系11は、信号源12と、入力信号生成器13と、発振器14とを備えている。信号源12は、発振器30に注入する信号(入力信号)の元になる所定周波数の交流信号を発生させるものであり、例えば電圧源が用いられる。入力信号生成器13は、デジタル/アナログ変換器又は入力信号の波形(電圧)を生成するハードウェアである。入力信号生成器13は、信号源12から供給された交流信号を用い、最適波形演算装置17より供給される制御信号及び入力データに基づいて発振器14の内部機構に合わせて最適な入力信号を生成し、発振器14に供給する。発振器14は、入力信号生成器13から供給された入力信号の周波数に同調して発振し、発振信号を高周波変換器15に供給する。
高周波変換器15は、発振器14から供給された発振信号の周波数を無線通信用の高周波数に変換し、高周波信号を生成する。そして、高周波信号に応じた無線信号がアンテナ16から空間に放射(出力)される。
最適波形演算装置17は、図10に示すように、演算部21と、制御部22と、RAM(Random Access Memory)23と、ROM(Read-Only Memory)24と、データベース25と、2つの入出力ポート26,27と、入力部28と、表示部29とを備える。そして、最適波形演算装置17を構成する各部は、制御信号、入力データ及び出力データを流す信号線17aに接続されている。RAM23、ROM24及びデータベース25は、記憶部の一例である。
なお、信号線17aは、入出力ポート26を介して出力ライン17bに接続される。出力ライン17bは、入力信号生成器13の所定位置に接続され、入力信号生成器13に制御信号及び最適波形の情報を含む入力データを出力する。また、信号線17aは、入出力ポート27を介してプローブ17cに接続される。プローブ17cは、発振器14内の所定位置に接続され、発振器14の出力信号を取得する。すなわち、発振器14の出力信号はプローブ17c及び入出力ポート27を介して信号線17aに入力される。
演算部21は、主に、入力信号生成器13から発振器14へ入力する入力信号f(θ)の波形を算出する。具体的には、演算部21は、ROM24から最適波形演算アルゴリズムが記述されたプログラムを読み出し、RAM23をワークエリアとして用いて演算を行う。そして、演算部21は、読み出したプログラムをRAM23に展開し、上述した最適波形演算アルゴリズムに従って注入同期系11に応じて入力信号の最適波形を算出する。なお、RAM23には、入力部28から入力された情報も格納される。
制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算制御装置で構成され、最適波形演算装置17を構成する各部を制御する。例えば、演算部21での演算動作等は、制御部22により制御される。なお、演算部21が、CPU(Central Processing Unit)等の演算制御装置で構成されていてもよい。
データベース25は、ROM24に接続される。また、データベース25には、例えば、最適波形の演算で用いる各種計算式などの最適波形の演算時に必要なデータがテーブルとしてまとめられ、格納される。
入力部28は、例えばキーボード、マウス、あるいはタッチパネル等が用いられる。入力部28に対するユーザの入力操作に応じた操作信号が生成され、その操作信号が制御部22に入力される。
表示部29は、算出された最適波形や発振器14からの出力信号の波形を表示する。なお、表示部29としては、例えば、液晶ディスプレイ等を用いてもよい。また、表示部29をオシロスコープ等で構成してもよい。
このように構成された最適波形演算装置17を用いて最適波形の生成処理を行う際、ユーザは、まず最適化の対象となる発振器14の位相感受関数Z(θ)をインパルス応答関数法等により取得する。次に、ユーザは入力部28を用いて、その位相感受関数Z(θ)及びパラメータpの値を最適波形演算装置17に入力し、RAM23又はデータベース25に保存する。そして、最適波形演算装置17において、位相感受関数Z(θ)及びパラメータpの値に基づいて、最適波形の演算が実行され、最適波形演算装置17から波形を生成するハードウェアである入力信号生成器13に最適波形の情報が提供される。
ここで、位相感受関数Z(θ)を、最適波形演算装置17を用いて取得してもよい。すなわち、出力ライン17bを介して、最適波形演算装置17から入力信号生成器13に対し、複数の微小インパルス電流を発振器14へタイミングを少しずつ変えて入力するよう指示する。最適波形演算装置17は、プローブ17cを介して発振器14から入力された発振信号から、複数の微小インパルス電流毎に発振位相シフト量を計算し、発振器14のインパルス応答関数(位相感受関数Z(θ))を得る。
<最適波形演算装置をCMOSリングオシレータに適用した場合>
以上、一般の発振器14について、ロックレンジが最大となる入力信号を生成する最適波形演算アルゴリズム、及びこれを実行する最適波形演算装置17を示した。すなわち、少なくとも本実施の形態により、所与の発振器及び、それに付随する入力信号を発振器に作用させるための入力段を含む注入同期系が実現しうるロックレンジの最大値を得ることができる。さらに、全体像をより明確にするため、発振器14として3段のCMOSリングオシレータを用いた場合の例を説明する。
図11は、最適波形演算装置17(図6)を、注入同期型のCMOSリングオシレータに適用した場合の概略構成を示す図である。
注入同期系11は、図11に示すように、入力信号生成器31と、CMOSリングオシレータ32とを備える。入力信号生成器31には最適波形演算装置17が接続されている。入力信号生成器31は、パルスを発生させるパルス発生回路311と、入力信号のレベルをシフトさせるバイアス回路322とを備える。バイアス回路322から出力された入力信号は、CMOSリングオシレータ32の2段目と3段目のインバータの間のA点に接続されたトランジスタ素子321に入力される。注入回路であるトランジスタ素子321は、入力信号の注入端子として機能し、CMOSリングオシレータ32の2段目と3段目のインバータをつなぐスイッチの役割を果たす。このCMOSリングオシレータ32を含む注入同期系11の回路構成は、非特許文献5の図2と同じである。
既述の非特許文献(4)では、注入同期型CMOSリングオシレータを無線通信の搬送波の生成に用いることを念頭に、入力信号としてパルスを用いることで発振波形のスプリアスの抑圧を行なっている。パルス入力がスプリアスの抑圧に有効である理由は、連続波を入力するよりもCMOSリングオシレータ32のA−B点間の電流の変動が瞬時的となり、発振波形の歪が抑えられるからである。このように、注入同期型CMOSリングオシレータの入力信号をパルスとすることは、本質的に重要な設定である。そのためロックレンジが最大となるパルス波形を設計することは、有用であると考えられる。
上述した最適波形演算アルゴリズムにおいて、チャージバランス制約及びpノルム一定の制約を満たすパルス波形のうち最もロックレンジが広くなる最適波形は、pの値として1に近い数値を指定することで得られる。ここではp=1.1とする。まず、最適波形の算出に必要となる位相感受関数Z(θ)を、回路シミュレータによりインパルス応答関数法を用いて取得した。図2に示した位相感受関数Z(θ)は、CMOSリングオシレータ32のものである。そして、最適波形演算アルゴリズムを実行した結果、未知パラメータの最適値は、(Δφopt,λopt)=(1.43,0.00)と求まった。
以上の最適波形の導出に加え、上述の[最適波形の生成処理_m:n同期]を実行し、10:1同期(10逓倍)のための波形を生成して入力信号とした。また、シミュレーションの簡単のために、入力信号は図12A,図12Bに示すように、パルス幅が1周期Tの20%の幅を持つパルスを10周期あたり1回入力する構成とした。図12Aは1周期が1.43/20π*Tであるパルス33、図12Bは1周期がπ/20π*Tであるパルス34の波形図である。入力信号のパルスの振幅Mは0.2[V]、バイアス電位Vbは2.0[V]としている。また、自励発振状態(M=0、Vb=2.0)におけるCMOSリングオシレータ32の発振周波数は、1165.5MHzである。なお、CMOSリングオシレータ32を含む注入同期系11内のすべてのMOSトランジスタのサイズは、ゲート長L=1.6/1.2μm、ゲート幅W=200μm/100μm(pMOS/nMOS)に設定している。
図13に、CMOSリングオシレータ32のロックレンジを表すグラフ(アーノルドタング)を示す。図13において、横軸は発振波形(出力)の周波数[MHz]、縦軸は入力信号の電圧[V]である。各データ点は注入同期が成立する場合と成立しない場合の境界を表しており、注入同期が成立する最大周波数と最小周波数の差がロックレンジである。ここでは、データ点35(〇印)がパルス33(図12A)の場合のデータ点であり、データ点36(□印)がパルス34(図12B)の場合のデータ点である。実線及び破線は、式(3)から求まるロックレンジの理論値であり、実線がパルス33の場合及び破線がパルス34の場合である。
図13より、正負のパルスの位相差(パルス間隔)Δφが最適値(1.43[rad],1.43/20π*T[s])であるパルス33を入力する場合の方が、位相差Δφが最適でないパルス34を入力する場合よりもロックレンジが広いことがわかる。
さらに、正負のパルスの位相差Δφがロックレンジに与える効果をより詳しく確認するために、図14にCMOSリングオシレータ32におけるロックレンジと正負のパルスの位相差Δφとの関係を表すグラフを示す。図14において、横軸は位相差[rad]、縦軸はロックレンジ[MHz]である。図14より、位相差Δφ=1.43[rad](最適値)のときに、確かにロックレンジが最大となることが確認できる。図14の破線38(シミュレーションの結果)と実線37(理論値)はよく一致しており、式(3)と本最適波形演算アルゴリズムの有効性が示されている。
<最適波形演算装置をE級発振器に適用した場合>
上記のCMOSリングオシレータ32以外の実施の形態例として、パワーエレクトロニクスの分野で用いられる注入同期型のE級発振器に対しても、上述した最適波形演算アルゴリズムの適用による最適化の効果が得られることを確認する。ここでは、それぞれ同じ振幅をもつ複数の入力信号のうち、最もロックレンジが広くなるような入力信号を設計したいという要請を想定する。この場合は、最適波形演算アルゴリズムにおいて、p=∞を指定すればよい。なぜなら、p=∞のとき入力信号のpノルムは、下記式(49)で表される。
Figure 0006273871
そのため、p=∞という条件は、入力信号f(θ)の振幅を一定値Mとする制約であると換言できる。つまり、p=∞とすれば、同じ振幅をもつ波形のうち最もロックレンジが広くなる最適波形を生成できる。
図15は、最適波形演算装置17(図6)を、注入同期型のE級発振器に適用した場合の概略構成を示す図である。
注入同期系11は、図15に示すように、入力信号生成器41と、E級発振器42とを備える。入力信号生成器41には最適波形演算装置17が接続されている。入力信号生成器41は、信号源12を備え、信号源12から出力された交流信号は、抵抗素子と容量素子を介して、E級発振器42のトランジスタ421のゲートに供給される。このE級発振器42の回路構成は、非特許文献5の図9と同じ回路構成である。本実施の形態では、E級発振器42の素子値を、自励発振周波数が2MHzとなるように設定している。また、トランジスタ421のデバイスモデルは、Vishay社により公開されているIRF530としている。
図16は、E級発振器42の位相感受関数の一例を示すグラフである。図16において、横軸は入力信号の位相[rad]、縦軸は位相シフト量[10−2rad]である。
図16の位相感受関数43及びp=∞を入力値として、最適波形演算アルゴリズムを実行した結果、未知パラメータの最適値は、(Δφopt,λopt)=(−π,0)と求まった。この値及び位相感受関数Z(θ)を、式(9)に代入すると、最適波形として図17Bに示すような矩形波45が得られる。図17Aは正弦波44、図17Cは正負一対のパルス46の一例である。
次に、以上の最適波形の導出に加え、既述の[最適波形の生成処理_m:n同期]を実行し、2逓倍動作(2:1引き込み)の場合におけるロックレンジを求める。ここで、入力信号は、図17A〜図17Cに示すように、正弦波44、矩形波45及びパルス46の基本波(1周期分)を、それぞれクリップしたものとしている。
図18は、E級発振器42のCMOSリングオシレータ32のロックレンジを表すグラフ(アーノルドタング)を示す。図18において、横軸は発振波形(出力)の周波数[MHz]、縦軸は入力信号の電圧[V]である。ここでは、データ点47(*印)が正弦波44(図17A)の場合のデータ点であり、データ点48(〇印)が矩形波45(図17B)の場合のデータ点であり、データ点49(△印)がパルス46(図17C)の場合のデータ点である。実線及び破線は、正弦波44、矩形波45及びパルス46の場合における、式(3)から求まるロックレンジの理論値である。図18のアーノルドタングより、任意の振幅において、確かに最適波形として矩形波45(図17B)を入力した場合のロックレンジが、他の正弦波44(図17A)及びパルス46(図17C)を入力した場合に比べて広いことがわかる。
<変形例…遺伝的アルゴリズムを利用してロックレンジを最大化する方法>
以上説明した本発明の一実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムは、[着想点(1)]及び[着想点(2)]に基づき、最適波形の最適性がヘルダーの不等式で裏付けられる、厳密なものである。以下では、最適波形演算アルゴリズムの変形例として、既存の探索アルゴリズムを援用し、[着想点(1)]において示した方程式(2)から得られるロックレンジを評価値として、評価値を最大化する入力信号を算出する方法を示す。この方法は、[着想点(2)]によって得られる最適性の保証はなくなるものの、もっともらしい最適波形が得られるので実用上の価値があるものと考えられる。
図19は、ベクトルを利用した任意波形の生成処理についての説明図である。任意の波形を生成する問題として、図19に示すような、2×xのマス(サンプル)51のうち1列あたり1マスを塗りつぶす組み合わせ問題を考える。マス51のうち斜線が記載されたマスは、選択されたマスである。実現しうる波形のパターンは(2=2xy通りである。波形の解像度を上げるにはパラメータ数x,yを大きくする必要があるが、それに従って波形のパターン数も膨大となる。このような膨大な組み合わせのパターンをとりうる目的関数に対し、評価関数を最大にするようなパラメータを決定する問題(組み合わせ最適化問題)の解決には、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)が利用可能である。GAは局所解に陥ることを避けるためのルーチン(突然変異)を含んでいるため、大域的な最適化の能力を持つ。つまり、上記の問題をGAで解くことにより、任意の形状の波形を大域的に探索し、評価関数(ロックレンジ)を最大化する波形を実現するパラメータを求めることができる。そのため、GAを援用する手法は、上述した最適波形演算アルゴリズムに準ずる効果を持つと考えられる。
図19に示すような縦方向に2サンプルの2値のベクトルを横方向にxサンプル分配置して構成される1セットのサンプル集合体を、GAにおける1個体とする。そして、この1固体に対し、式(2)から求まるロックレンジを評価値(適応度)としてGAによる最適解の探索を行なった。ここでは、注入同期型CMOSリングオシレータの最適化を想定し、図2の位相感受関数Z(θ)を用いp=1.1とした。このような制約をかけた上で、各個体の初期値はランダムな波形とし、波形を変えて7回の試行を独立に行なった。サンプル数xは100、ビット数yは20である。
図20は、その際の評価値(ロックレンジ)の収束過程を示したグラフである。図20において、横軸は探索解の世代数、縦軸は正規化したロックレンジである。横方向の実線52は、最適波形演算アルゴリズムから求まるロックレンジの理論値であり、その下方の破線は各試行の評価値(ロックレンジ)である。7回の試行すべてにおいて、初期値が同一の波形に対する15万世代の探索時の評価値は0.03510〜0.03513の範囲にある。つまり、15万世代において評価値のばらつきは「0.00003/(評価値の平均)×100=0.00003/0.035×100=0.1%」であり、十分に収束が得られていると考えられる。
図21は、最適波形演算アルゴリズムより求めた厳密解とGAによる探索解の一例を示したグラフである。図21Aは1000世代探索時の結果、図21Bは10000世代探索時の結果、図21Cは150000世代探索時の結果を表している。これらは、7回の試行の結果を重ねてプロットしたものである。図21A〜図21Cにおいて、横軸は入力信号の位相θ、縦軸は探索解f(θ)である。また、各図におけるデータ点はGAにより得られた探索解、実線は最適波形演算アルゴリズムより求めた厳密解である。
図21A,図21Bより、各世代数を探索時の探索解(データ点54,56)と最適波形演算アルゴリズムにより求めた(p=1.1のときの)厳密解(実線55,57)とは、ばらつきが大きく一致度が低い。ただし世代数が増えるとばらつきが減っている。図21Cより、15万世代探索時の探索解(データ点58)は各試行ごとに僅かなばらつきが見られるものの、最適波形演算アルゴリズムにより求めた厳密解(実線59)とよく一致している。すなわち、GAを利用した方法により、もっともらしく最適波形が得られていることがわかる。
[最適波形の算出に係る時間の評価]
次に、最適波形の算出にかかる時間を評価する。図22に、最適波形演算アルゴリズムを用いた場合と、GAを用いた場合の最適波形の算出にかかる時間(CPU時間)の比較を示す。また、図23に、サンプル数xが50の場合(図23A)と、サンプル数xが100の場合(図23B)の探索解の例を示す。なお、最適波形演算アルゴリズムの計算時間の内訳は、(1)解曲線の描画にかかる時間と、(2)ニュートン法の実行にかかる時間である。前者はJava(登録商標)言語で実装したプログラムをインテル社製の2.93GHz×12コアXeonプロセッサ(ただし、アップル社のMacPro X5670を使用)で実行した。また、後者は数式処理システムMapleに実装した計算ルーチンをインテル社製の2.67GHz×2コアCore i5プロセッサ(ただし、Dell社のvostroを使用)により実行した。GAの計算はすべて2.93GHz×12コアXeonプロセッサで行なった。GAの計算については、15万世代までの解探索にかかる時間を記録し、7回の試行の平均値をとった。
図22より、GAによる計算時間は、サンプル数が50の場合には約300minであり、サンプル数が100の場合には約550minである。よって、GAの計算時間は、最適波形演算アルゴリズムの計算時間と比較すると膨大となるものの、現実的な計算時間で解探索を実行できることがわかる。また、図22,図23A,図23Bより、サンプル数を減らし、波形の解像度を犠牲にして解のパターン数を低下させれば、いくらかの計算時間の短縮を図ることができることもわかる。
上述した本実施の形態に係る最適波形演算アルゴリズムを用いた最適設計論は、ミリ波、マイクロ波、パワーエレクトロニクス等で用いられる注入同期系に適用できる。さらには、マイクロエレクトロニクス(基板(チップ)間通信)、植物工場、ナノマテリアルへの応用も期待される。
なお、本発明は上記の実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施の形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・置換、削除をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1,2…パルス、 3〜5…位相感受関数、 6…位相結合関数、 10…無線通信装置、 11…注入同期系、 12…信号源、 13…入力信号生成器、 14…発振器、 15…高周波変換器、 16…アンテナ、 17…最適波形演算装置、 17a…信号線、 17b…出力ライン、17c…プローブ、 21…演算部、 22…制御部、 23…RAM、 24…ROM、 25…データベース、 26,27…入出力ポート、 28…入力部、 29…表示部

Claims (5)

  1. 発振器を有する注入同期系に注入する入力信号f(θ)の最適波形を演算する方法であって、
    前記発振器の位相感受関数Z(θ)(ここで、θは入力信号の位相)を取得する処理と、
    前記入力信号f(θ)のpノルムのpの値を取得する処理と、
    前記入力信号f(θ)の1周期の平均値が一定である第1の制約条件(1/(2π)*〈f(θ)〉=0)(〈 〉は、θについての1周期にわたる積分)と、前記入力信号f(θ)のpノルムが一定である第2の制約条件(||f||=M)(Mは正の定数)の下で、前記位相感受関数Z(θ)及び前記pの値に基づいて、前記入力信号f(θ)の最適波形fopt,pを、次式を用いて計算する処理と、
    を含む最適波形の演算方法。
    opt,p=Msig[g(θ)](|g(θ)|/||g||1/p´
    ただし、g(θ)=Z(θ+Δφ)−Z(θ)+λ、Δφ=φ−φ、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、p−1+q−1=1、p´=p−1、λはラグランジュの未定乗数。
  2. 前記pの値が1<p<∞である場合には、
    関数Sp(Δφ,λ)=〈sig[g(θ)]|g(θ)|βZ´(θ+Δφ)〉(ただしβ=1/p´)と、
    関数Tp(Δφ,λ)=〈sig[g(θ)]|g(θ)|βZ´(θ+Δφ)〉
    の各々の交点の座標をすべて求め、複数の前記交点の座標(Δφ,λ)に対しヘッセ行列のへシアン|H(H)|を算出し、|H(H)|>0を満たす前記座標(Δφ,λ)を、最適値(Δφopt,λopt)であると判断して前記g(θ)の(Δφ,λ)に代入し、前記最適波形fopt,pを計算し、
    また、前記pの値がp=∞である場合には、
    関数Sp(Δφ,λ)=〈sig[g(θ)]Z´(θ+Δφ)〉と、
    関数Tp(Δφ,λ)=〈sig[g(θ)]〉
    の各々の交点の座標をすべて求め、複数の前記交点の座標(Δφ,λ)に対しヘッセ行列のへシアン|H(H)|を算出し、|H(H)|>0を満たす前記座標(Δφ,λ)を、最適値(Δφopt,λopt)であると判断して前記g(θ)の(Δφ,λ)に代入し、前記最適波形fopt,pを計算する
    請求項1に記載の最適波形の演算方法。
  3. 前記pの値がp=1である場合には、前記入力信号f(θ)の最適波形f*,1として、次式を用い、
    *,1=−M[Δ(θ+Δφmax)−Δ(θ)]
    まず、位相結合関数Γ(φ)=M[Z(φ+Δφ)−Z(φ)]
    の最大値と最小値の差が最大となるΔφを求め、求めたΔφを前記Δφmaxに代入し、前記最適波形f*,1を計算する
    請求項1に記載の最適波形の演算方法。
  4. 発振器を有する注入同期系に注入する入力信号f(θ)の最適波形を演算する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    前記発振器の位相感受関数Z(θ)(ここで、θは入力信号の位相)を取得する処理と、
    前記入力信号f(θ)のpノルムのpの値を取得する処理と、
    前記入力信号f(θ)の1周期の平均値が一定である第1の制約条件(1/(2π)*〈f(θ)〉=0)(〈 〉は、θについての1周期にわたる積分)と、前記入力信号f(θ)のpノルムが一定である第2の制約条件(||f||=M)(Mは正の定数)の下で、前記位相感受関数Z(θ)及び前記pの値に基づいて、前記入力信号f(θ)の最適波形fopt,pを、次式を用いて計算する処理と、
    をコンピュータに実行させるプログラム。
    opt,p=Msig[g(θ)](|g(θ)|/||g||1/p´
    ただし、g(θ)=Z(θ+Δφ)−Z(θ)+λ、Δφ=φ−φ、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、p−1+q−1=1、p´=p−1、λはラグランジュの未定乗数。
  5. 発振器を有する注入同期系に注入する入力信号f(θ)の最適波形を演算する最適波形演算装置であって、
    前記発振器の位相感受関数Z(θ)(ここで、θは入力信号の位相)及び前記入力信号f(θ)のpノルムのpの値を記憶する記憶部と、
    前記入力信号f(θ)の1周期の平均値が一定である第1の制約条件(1/(2π)*〈f(θ)〉=0)(〈 〉は、θについての1周期にわたる積分)と、前記入力信号f(θ)のpノルムが一定である第2の制約条件(||f||=M)(Mは正の定数)の下で、前記記憶部に記憶された前記位相感受関数Z(θ)及び前記pの値に基づいて、前記入力信号f(θ)の最適波形fopt,pを、次式を用いて計算する演算部と、
    を備える最適波形演算装置。
    opt,p=Msig[g(θ)](|g(θ)|/||g||1/p´
    ただし、g(θ)=Z(θ+Δφ)−Z(θ)+λ、Δφ=φ−φ、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、φは前記発振器の位相結合関数が極小となるときの発振波形と入力波形の位相差、p−1+q−1=1、p´=p−1、λはラグランジュの未定乗数。
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