JP6236016B2 - 多重反射質量分析計 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析法の分野に関し、特に、多重反射技法を利用して、イオン飛行経路を延ばす高質量分解能飛行時間質量分析法及び静電トラップ質量分析法に関する。
多重反射を利用して、質量分析計内のイオンの飛行経路を延ばす様々な構成が知られている。飛行経路の拡張は、飛行時間(TOF)質量分析計内のイオンの飛行時間分離を増大するか、又は静電トラップ(EST)質量分析計内のイオンのトラップ時間を増大させるために望ましい。それにより、両方の場合で、イオンの小さな質量差を区別する能力が向上する。
2つの平行し対向するミラーの構成が、ソビエト特許第1725289号明細書においてNazarenkoらによって記載されている。これらのミラーは、ドリフト方向において細長く、イオンはジグザグ飛行経路を辿り、ミラー間で反射され、同時に、ドリフト方向においてミラーの拡張長さに沿って比較的ゆっくりとドリフトした。各ミラーは、平行するバー電極で構成された。反射サイクル数及び達成される質量分解能は、イオン注入角を変更することによって調整可能であった。この設計は、2つのみのミラー構造を製造し、互いに位置合わせするだけでよいという点で有利に単純であった。しかし、このシステムは、ドリフト方向でのビーム広がりを対抗するいかなる手段も有さなかった。注入されるイオンの初期角度拡散に起因して、複数の反射後、ビーム幅は検出器の幅を超えることがあり、感度の損失に起因して、イオンの飛行時間の更なるいかなる増大も非現実的にする。イオンビーム広がりは特に、異なる数の反射を経るイオンの軌跡が重なり、したがって、所与の数の振動を受けたイオンのみの検出が不可能になる場合に不利である。その結果、この設計は、制限された角度許容性及び/又は制限された反射最大数を有する。さらに、イオンミラーは、折り畳まれた経路の平面にわたって拡散した初期イオンビームに関して飛行時間集束を提供せず、広い初期ビーム角度広がりの場合で飛行時間分解能が劣化した。
Wollnikは、英国特許第2080021号明細書において、平行し対向する様々な構成のグリッドレスイオンミラーを記載した。線形構成内の2行のミラー及び2つの対向するリングのミラーが記載された。ミラーのうちのいくつかは傾斜して、ビーム注入を行い得る。各ミラーは回転対称であり、空間集束特徴を生成して、各反射でのビーム広がりを制御し、それにより、低ビーム損失でより長い飛行経路を得られるように設計された。しかし、これらの構成は製造が複雑であり、互いとの精密な位置合わせを必要とする複数の許容誤差が小さいミラーで構成される。イオンが解析器を一回通る際の反射数は、ミラー数によって固定され、変更することができなかった。
Suは、International Journal of Mass Spectrometry and Ion Processes,88(1989)21−28において、ドリフト方向において細長いグリッド付き平行プレートミラー構成を記載した。対向するイオン反射器が互いに平行するように配置され、イオンは、検出器に達する前に、いくつかの反射でジグザグ飛行経路を辿った。このシステムは、ドリフト方向でのビーム広がりを制御する手段を有さず、これは、各反射でのイオン束を低減するグリッド付きミラーの使用と共に、有用な反射数を制限し、ひいては飛行経路長を制限した。
Verentchikovは、国際公開第2005/001878号パンフレット及び英国特許第2403063号明細書において、2つの平行する細長い対向ミラー間の自由野領域内に配置された周期的に離間されたレンズの使用を記載した。レンズの目的は、各反射後のドリフト方向でのビーム広がりを制御し、それにより、Nazarenkoら及びSuによって記載される細長いミラー構造よりも有利に、より長い飛行経路を得られるようにすることである。経路長を更に増大させるために、偏向器がイオン注入器からミラー構造の遠位端部に配置され、それにより、ミラー構造を通してイオンを偏向させ、飛行路長を2倍にすることが提案された。しかし、このような偏向器の使用は、ビーム収差の導入を受けやすく、最終的に、得ることができる最大分解能力を制限する。この構成では、反射数はレンズの位置によって設定され、反射数を変更する可能性はなく、それにより、イオン注入角の変更によって飛行経路長を変更する可能性はない。この構造も複雑であり、複数のレンズの精密な位置合わせを必要とする。レンズ及び端部偏向器は更に、ビーム収差を導入することが知られており、最終的にこれは、使用することができる注入装置のタイプに制限を課し、解析器の全体許容性を低減した。加えて、ビームは経路全体にわたって厳密に集束された状態を保ち、空間電荷効果をより受けやすい。
Makarovらは、国際公開第2009/081143号パンフレットにおいて、複数反射の細長いTOFミラー解析器に、ドリフト方向でのビーム集束を導入する更なる方法を記載した。ここでは、第1の細長いミラーに平行するドリフト方向に沿って横に並んで設定される、直交方向において細長い1組の個々のグリッドレスミラーが、第1の細長いグリッドレスミラーに対向した。個々のミラーは、ドリフト方向でのビーム集束を提供した。ここでも、この構成では、装置内のビーム振動数は、個々のミラーの数によって設定され、ビーム注入角を変更することによって調整することができない。Wollnik及びVerentchikovの構成よりは複雑ではないが、それにもかかわらず、この構造は、Nazarenkoら及びSuの構成よりも複雑である。
Golikovは、国際公開第2009001909号パンフレットにおいて、互いに平行に配置される2つの非対称な対向ミラーを記載した。この構成では、ミラーは、回転対称ではなく、ドリフト方向に延びず、イオン軌跡は空間的に、様々な振動で重なり、分離することができないため、質量解析器は通常狭い質量範囲を有する。イメージ電流検出の使用が提案された。
細長い平行対向ミラーを備えるシステムにおいて、ドリフト方向でのビーム集束を提供する更なる提案は、国際公開第2010/008386号パンフレットにおいてVerentchikov及びYavorによって提供された。この構成では、細長いミラー構造に知って設定された間隔で、一方又は両方のミラー内の電場を周期的に変調することによって、周期レンズが対向ミラーのうちの一方又は両方に導入された。ここでも、この構造では、ビームは一方又は両方のミラーにおいて変調と精密に位置合わせされなければならないため、ビームの振動数は、ビーム注入角を変更することによって変更することができない。各ミラーの構造は、Nazarenkoらによって提案される単純で平坦なミラーよりもいくらか複雑である。
いくらか関連する手法が、Ristrophらによって米国特許出願第2011/0168880号において提案された。対向する細長いイオンミラーはミラーユニットセルを備え、各ユニットセルは、ドリフト方向において集束を提供するとともに、ドリフト方向に関する二次飛行時間収差を部分的又は完全に補償する湾曲部を有する。他の構成と共通して、ビームはユニットセルと精密に位置合わせされなければならないため、ビームの振動数は、ビーム注入角を変更することによって変更することができない。ここでも、このミラー構造は、Nazarenkoらの構造よりも複雑である。
周期的な構造を使用して、ドリフト方向において狭いビーム内にイオンを維持する全ての構成は必然的に、イオン間の空間電荷反発の影響という欠点を有する。
Sudakovは、国際公開第2008/047891号パンフレットにおいて、イオンをドリフト長に沿って戻し、同時に、ドリフト方向においてビーム集束を誘導することにより、飛行経路長を2倍にする代替の手段を提案した。この構成では、2つの平行するグリッドレスミラーは、対向ミラーに直交する向きであり、イオン注入器から対向するミラーの遠位端部に配置される第3のミラーを更に備える。イオンは、イオン注入器から解析器を通って進む際に、ドリフト方向において広がることができるが、第3のイオンミラーはこの広がりを取り消し、第3のミラーでの反射後、イオン注入器の近傍に到着すると、イオンはもう一度ドリフト方向において集束する。これにより、有利には、イオンビームを、解析器を通る移動行程の大半を通して空間に拡散させることができ、空間電荷相互作用を低減するとともに、イオン集束のためにミラーに沿った、又はミラー間での複数の周期的な構造の使用が回避される。第3のミラーは、ドリフト方向での初期イオンエネルギーに関する空間集束も誘導する。個々のレンズ又はミラーセルはなく、反射数は注入角によって設定することができる。しかし、第3のミラーは必ず、2つの対向する細長いミラーの構造内に構築され、細長いミラーを事実上、分割する。すなわち、細長いミラーはもはや連続せず、第3のミラーも連続しない。これは、セクション間のギャップでの電場の階段状の変更に起因して、イオンに対して不連続の戻り力を誘導するという欠点の影響を有する。分断は、イオンビーム幅が最大である、ドリフト方向でのターン点近傍で生じるため、これは特に大きい。これは、1回の振動中に2つ以上のセクション内で反射するイオンの制御されないイオンの散乱及び飛行時間の差に繋がるおそれがある。
上記に鑑みて、本発明が作られた。
本発明の一態様によれば、各ミラーがドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、X方向において各ミラーが他方のミラーに対向し、X方向がYに直交する、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定距離の箇所にないことを特徴とする、多重反射質量分析計が提供される。
本発明の更なる態様によれば、各ミラーがドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、X方向において各ミラーが他方のミラーに対向し、X方向がYに直交する、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いに傾斜することを特徴とする、多重反射質量分析計が提供される。
本発明の更なる態様によれば、各ミラーがドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、X方向において各ミラーが他方のミラーに対向し、X方向がYに直交する、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いに向けて集束することを特徴とする、多重反射質量分析計が提供される。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定距離の箇所にないことを特徴とする、注入するステップと、イオンが質量分析計を通過している間又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いに傾斜することを特徴とする、注入するステップと、イオンが質量分析計を通過している間又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いに向けて集束することを特徴とする、注入するステップと、イオンが質量分析計を通過している間又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
好ましくは、本発明を使用する質量分析法は、ドリフト方向において対向するイオン光学ミラーの一端部から多重反射質量分析計内にイオンを注入することを更に含み、イオン光学ミラーは、ドリフト方向において、イオン注入位置から離れて延びるにつれて、ミラーの長さの少なくとも一部に沿ってX方向において互いに近くなる。
本明細書での集束では、ドリフト方向はY方向と呼ばれるものとし、対向するミラーは、X方向と呼ばれるものとする方向においてある距離だけ互いから離間されて設定され、X方向はY方向に直交し、この距離は、上述したように、Y方向における異なる位置で変化する。イオン飛行経路は一般に、X方向及びY方向において延びる空間のある容積を占め、イオンは対向するミラー間で反射され、同時に、ドリフト方向Yに沿って進む。ミラーは一般に、垂直Z方向においてより小さな寸法のものであり、イオン飛行経路によって占められる空間の容積は、僅かに歪んだ矩形平行六面体であり、好ましくは最小寸法がZ方向にある。本明細書での説明の便宜のために、イオンは、+X方向及び+Y方向での初期速度成分で質量分析計に注入され、まず、+X方向に配置される第1のイオン光学ミラーに向かい、+Y方向でのドリフト長さに沿って進む。Z方向での速度の平均成分は、好ましくはゼロである。
イオン光学ミラーは互いに対向する。ミラーを対向させることは、第1のミラーに向けられたイオンが第1のミラーから第2のミラーに向けて反射され、第2のミラーに入ったイオンが第2のミラーから第1のミラーに向けて反射されるように、ミラーが向けられることを意味する。したがって、対向するミラーは、一般に逆方向に向けられ、互いに面する電場成分を有する。
多重反射質量分析計は2つのイオン光学ミラーを備え、各ミラーは主に一方向において細長い。細長さは、更に説明するように、線形(すなわち、直線)であってもよく、又は非線形(例えば、湾曲するか、若しくは曲線を近似するように一連の小さな段差を含む)であってもよい。各ミラーの細長い形状は、同じであってもよく、又は異なってもよい。好ましくは、各ミラーの細長い形状は同じである。好ましくは、ミラーは一対の対称ミラーである。細長さが線形である場合、本発明のいくつかの実施形態では、ミラーは互いに平行しない。細長さが非線形である場合、本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも一方のミラーは、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って他方のミラーに向かって湾曲する。
ミラーは、任意の既知のタイプの細長いイオンミラーとし得る。一方又は両方の細長いミラーが湾曲する実施形態では、既知の細長いイオンミラーの基本設計は、要求される湾曲ミラーを製造するように構成し得る。ミラーはグリッド付きであってもよく、グリッドレスであってもよい。好ましくは、ミラーはグリッドレスである。
本明細書で説明するように、2つのミラーは、X−Y平面にあり、両ミラーの細長い寸法が概してドリフト方向にあるように互いに位置合わせされる。ミラーは、X方向において離間され、互いに対向する。しかし、いくつかの実施形態では、ミラー間の距離又はギャップは、ドリフト距離の関数として、すなわち、Yの関数として変化するように構成されるため、両ミラーの細長い寸法は、厳密にはY方向になく、このため、ミラーは、ドリフト方向Yに沿って概して細長いものとして説明される。これらの実施形態では、少なくとも一方のミラーの細長い寸法は、ミラーの長さの少なくとも一部で、Y方向に対して傾斜する。好ましくは、両ミラーの細長い寸法は、ミラーの長さの少なくとも一部で、Y方向に対して傾斜する。
したがって、本説明及び特許請求の範囲の両方において、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離は、ドリフト長Yに沿った所与の位置でのミラー内のイオンの平均ターン点間の距離を意味する。間に自由野領域を有する(該当する場合)ミラー間の有効距離Lの厳密な定義は、自由野領域での平均イオン速度と、2つの連続したターン点間の経過時間との積である。ここでは、ミラー内のイオンの平均ターンポイントは、平均運動エネルギーを有するとともに、平均初期角度発散特徴を有するイオンが達するミラー内の+/−Y方向での最大距離、すなわち、そのようなイオンが、ミラーから戻って進む前にX方向でターンするポイントを意味する。+/−X方向で所与の運動エネルギーを有するイオンは、ミラー内の等電位面でターンする。特定のミラーのドリフト方向に沿った全ての位置でのそのような点の軌跡は、そのミラーのターン点を定義し、軌跡は以下、平均反射面と呼ばれる。したがって、対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ミラーの対向する平均反射面間の距離の変化によって定義される。本説明及び特許請求の範囲の両方で、対向するイオン光学ミラー間の距離への言及は、今定義したミラーの対向する平均反射面間の距離を意味することが意図される。本発明では、イオンが、ミラーの細長い長さに沿った任意の点で、対向する各ミラーに入る直前に、+/−X方向において元々の運動エネルギーを所有する。したがって、対向するイオン光学ミラー間の距離は、公称イオン(平均運動エネルギー及び平均初期角入射を有するイオン)がX方向でターンする、対向する等電位面間の距離として定義することもでき、上記等電位面は、ミラーの細長い長さに沿って延びる。
本発明では、ミラー自体の機械的構造は、表面検査下で、平均反射面が実際にはYの関数としてXでの異なる距離離間にあり得る間、Yの関数としてXでの一定距離離間を維持するように見えることがある。例えば、対向するイオン光学ミラーのうちの一方又は両方は、絶縁形成体(プリント回路基板)に配置される導電性トラックから形成し得、1つのそのようなミラーの形成体は、形成体に配置された導電性トラックが、対向ミラー内の電極から一定距離にないことがある間、ドリフト長全体に沿って対向ミラーから離れた一定距離のところに配置し得る。両ミラーの電極が、ドリフト長全体に沿って一定距離離れたところに配置される場合、ドリフト長に沿って一方又は両方のミラー内の異なる電位でバイアスし得、ミラーの対向する平均反射面間の距離をドリフト長に沿って変更させる。したがって、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離は、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って変わる。
好ましくは、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ドリフト距離の関数として滑らかに変化する。本発明のいくつかの実施形態では、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ドリフト距離の関数として線形変化する。本発明のいくつかの実施形態では、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ドリフト距離の関数として非線形に変化する。
本発明のいくつかの実施形態では、対向するミラーは、ドリフト方向において概して線形に細長く、互いに平行せず(すなわち、ミラーの全長に沿って互いに傾斜し)、そのような実施形態では、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ドリフト距離の関数として線形変化する。好ましい実施形態では、2つのミラーは、一端部において互いから更に離れ、その端部はイオン注入器に隣接する領域にある。すなわち、細長いイオン光学ミラーは、ドリフト方向においてイオン注入器から離れて延びるにつれて、ミラーの全長の少なくとも一部に沿ってX方向において互いに近くなる。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも一方のミラー、好ましくは各ミラーは、ドリフト方向においてその長さの少なくとも一部に沿って他方のミラーに近づくか、又は離れて湾曲し、そのような実施形態では、X方向での対向するイオン光学ミラー間の距離の変化は、ドリフト距離の関数として非線形に変化する。好ましい実施形態では、両ミラーは、湾曲反射面を生成するような形状であり、その反射面は放物線形に従い、ドリフト方向においてイオン注入器の位置から離れて延びるにつれて互いに向かって湾曲する。したがって、そのような実施形態では、2つのミラーは、イオン注入器に隣接する領域では、一端部において互いから更に離れる。本発明のいくつかの実施形態は、飛行経路長の増大及びドリフト(Y)方向でのイオンの空間集束の両方が、非平行ミラーの使用によって達成されるという利点を提供する。そのような実施形態は有利には、イオンをターンさせ、ドリフト方向に沿ってイオン注入器に向けて進めさせる(すなわち、−Y方向に移動させる)ことによってドリフト長を2倍にするとともに、イオンがイオン注入器の近傍に戻る際にY方向に沿ったイオンの空間集束を誘導するために、追加の構成要素を必要としない−利用するのは、2つの対向するミラーだけでよい。更なる利点は、対向するミラーが、イオン注入器に隣接する分析計の一端部から離れて細長いため、放物線プロファイルを有して互いに向かって湾曲する一実施形態から生じ、この特定の幾何学的形状は更に、有利には、イオンに、初期ドリフト速度から独立して注入点に戻るまでに同じ時間をとらせる。
2つの細長いイオン光学ミラーは、互いに同様であってもよく、又は異なってもよい。例えば、一方のミラーはグリッドを備えてもよく、その一方で、他方のミラーは備えなくてもよく、一方のミラーが湾曲部を備えてもよく、その一方で、他方のミラーは直線であってもよい。好ましくは、両ミラーはグリッドレスであり、互いに同様である。最も好ましくは、ミラーはグリッドレスであり、対称である。
好ましくは、イオン注入器は、イオンをミラーの一端部からミラー間の空間内に、イオンが、イオン注入器から離れてドリフト方向に沿ってドリフトする間に、一方の対向ミラーから他方のミラーに複数回反射して、質量分析計内で概してジグザグ経路を辿るように、X−Y平面でのX軸に傾斜して注入する。ドリフト方向に沿ったイオンの運動は、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿ってミラーが互いから非一定の距離にあることから生じる電場成分によって対抗され、上記電場成分は、イオンの方向を逆にし、イオン注入器に向かって移動させる。イオンは、ミラー間での整数又は非整数の完全な振動を経てから、イオン注入器の近傍に戻る。好ましくは、X軸へのイオンビームの傾斜角は、イオンが注入器から離れてドリフト方向に沿って動くにつれて、ミラーでの各反射に伴って低減する。好ましくは、これは、傾斜角の方向が逆になり、イオンがドリフト方向に沿って注入器に向かって戻るまで続く。
好ましくは、本発明の実施形態は、イオン注入器に隣接する領域に配置される検出器を更に備える。好ましくは、イオン注入器は、ドリフト方向Yに平行する検出面を有するように配置される。すなわち、検出面はY軸に平行する。
多重反射質量分析計は、多重反射飛行時間質量分析計の全て又は一部を形成し得る。本発明のそのような実施形態では、好ましくは、イオン注入器に隣接する領域に配置されたイオン検出器は、ドリフト方向Yに平行する検出面を有するように配置される。すなわち、検出面はY軸に平行する。好ましくは、イオン検出器は、上述したようにドリフト方向に沿って前後に移動して、質量分析計を移動したイオンが、イオン検出面に衝突し、検出されるように配置される。イオンは、ミラー間での整数又は非整数の完全な振動を経てから、検出器に衝突し得る。m/zが異なるイオンが重複しないようイオンが2回以上、同じ経路を辿らないようにするために、イオンは、好ましくは、ドリフト方向において1回のみの振動を受け、それにより、全範囲質量解析が可能である。しかし、低質量範囲のイオンが望まれるか、又は許容可能な場合、ドリフト方向での2回以上の振動を、注入時からイオン検出時までの間に行い、飛行経路長を更に増大させ得る。
イオンビーム偏向器あり、又はなしで、追加の検出器を多重反射質量分析計内に配置することができる。追加のイオンビーム偏向器を使用して、イオンを1つ又は複数の追加の検出器に偏向させることができ、又は代替的に、追加の検出器は、ダイアフラム又はグリッド等の部分的に透過性の表面を備えて、イオンビームの一部分を検出し、残りの部分を透過させることができる。追加の検出器をビーム監視に使用して、例えば、分析計内のイオンの空間位置を検出するか、又は分析計を通過するイオンの数量を測定し得る。したがって、2つ以上の検出器を使用して、イオンが質量分析計を通過中であるか、又は通過した後に、イオンの少なくともいくつかを検出し得る。
多重反射質量分析計は、更に説明するように、多重反射静電トラップ質量分析計の全て又は部分を形成し得る。本発明のそのような実施形態では、イオン注入器に隣接する領域に配置される検出器は1つ又は複数の電極を備え、電極は、イオンビーンが通過する際にイオンビームの近傍にあるように配置されるが、イオンビームを妨げないように配置され、検出電極は高感度増幅器に接続されて、検出電極において誘導されたイメージ電流を検出できるようにする。
有利には、本発明の実施形態は、対向するイオン光学ミラー間の領域にいかなる追加のレンズ又はダイアフラムも含めずに構築し得る。しかし、追加のレンズ又はダイアフラムを本発明と併用して、質量分析計内のイオンの位相空間容積に影響を及ぼしてもよく、ミラー間の空間に配置された1つ又は複数のレンズ及びダイアフラムを備える実施形態が考えられる。
好ましくは、多重反射質量分析計は、ミラー間の空間内又はミラー間の空間に隣接して、ドリフト方向の少なくとも一部に沿って延びる補償電極を更に備える。補償電極は、特にいくつかの実施形態において、飛行時間収差を低減するという更なる利点の提供を可能にする。
本発明のいくつかの実施形態では、補償電極は、ドリフト方向に沿って概して細長い対向するイオン光学ミラーと共に使用され、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿ってミラーが互いから非一定の距離にあることを特徴とする。本発明の他の実施形態では、補償電極は、ドリフト方向に沿って概して細長い対向するイオン光学ミラーと共に使用され、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、ミラーは、ドリフト方向でのミラー長に沿って、X方向において互いから一定距離に維持される。両事例で、好ましくは、補償電極は、ドリフト方向でのイオン光学ミラー長の少なくとも一部に沿った+Y方向に沿ったイオン運動に対抗する磁場の成分を生成する。電場のこれらの成分は、好ましくは、イオンがドリフト方向に沿って動く際、イオンへの戻り力を提供するか、又はイオンへの戻り力に寄与する。
1つ又は複数の補償電極は、多重反射質量分析計のミラーに相対して任意の形状及びサイズであり得る。好ましい実施形態では、1つ又は複数の補償電極は、イオンビームに面する、X−Y平面に平行する拡張面を備え、電極はイオンビーム飛行経路から+/−Zの箇所に配置され、すなわち、1つ又は複数の電極のそれぞれは、好ましくは、X−Y平面に略平行する表面を有し、2つのそのような電極は、好ましくは、対向するミラー間に延びる空間の両側に配置される。別の好ましい実施形態では、1つ又は複数の補償電極は、ドリフト長の大部分に沿ってY方向において細長く、各電極は、対向するミラー間に延びる空間の両側に配置される。この実施形態では、好ましくは、1つ又は複数の補償電極は、大部分に沿ってY方向において細長く、その大部分はドリフト長の1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、3/4のうちの少なくとも1つ又は複数である。好ましくは、1つ又は複数の補償電極は、ドリフト長の大部分に沿ってY方向において細長い2つの補償電極を備え、その大部分はドリフト長の1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、3/4のうちの少なくとも1つ又は複数であり、一方の電極は、イオンビーム飛行経路から+Z方向に配置され、他方の電極は、イオンビーム飛行経路から−Z方向に配置され、それにより、2つの電極は、対向するミラー間に延びる空間の両側に配置される。しかし、他の幾何学的形状も予期される。好ましくは、補償電極は、使用中、イオンの総合飛行時間がイオンの入射角から実質的に独立するように電気的にバイアスされる。イオンが移動する総合ドリフト長は、イオンの入射角に依存するため、イオンの総合飛行時間は、イオンが移動する総合ドリフト長から実質的に独立する。
補償電極は、電位を用いてバイアスし得る。一対の補償電極が使用される場合、一対の各電極に同じ電位を印加してもよく、又は2つの電極に異なる電位を印加してもよい。好ましくは、2つの電極がある場合、電極は、対向するミラー間に延びる空間の両側に対称に配置され、電極は両方とも略等しい電位で電気的にバイアスされる。
いくつかの実施形態では、一対又は複数の対の補償電極はそれぞれ、対内の各電極を同じ電位でバイアスさせることができ、その電位は、本明細書では解析器基準電位と呼ばれる電位に対してゼロボルトであり得る。通常、解析器基準電位は接地電位であるが、解析器の電位を任意に上昇させ得ること、すなわち、解析器全体の電位を接地から増大又は低減し得ることが理解されるだろう。本明細書で使用される場合、ゼロ電位又はゼロボルトを使用して、解析器基準電位に対するゼロ電位差を示し、非ゼロ電位という用語を使用して、解析器基準電位に対する非ゼロ電位差を示す。通常、解析器基準電位は、例えば、ミラーの終端に使用される電極等のシールドに印加され、本明細書で定義されるように、ミラーを備える電極以外の全ての電極がない場合の対向するイオン光学ミラー間のドリフト空間内の電位である。
好ましい実施形態では、2つ以上の対の対向補償電極が提供される。そのような実施形態では、各電極がゼロボルトで電気的にバイアスされるいくつかの対の補償電極は更に、非バイアス補償電極と呼ばれ、非ゼロ電位が印加される他の対の補償電極は更に、バイアス補償電極と呼ばれる。好ましくは、各バイアス補償電極が、X−Y平面において多項式プロファイルを有する表面を有する場合、非バイアス補償電極は、バイアス補償電極を補う形状の表面を有し、その例について更に説明する。通常、非バイアス補償電極は、バイアス補償電極からの電場を終了させる。好ましい実施形態では、少なくとも一対の補償電極の表面は、X−Y平面において放物線プロファイルを有し、それにより、上記表面は、ミラーの端部のうちの一方又は両方の近傍領域では、両端部間の中央領域よりも大きな距離で、各ミラーに向かって延びる。別の好ましい実施形態では、少なくとも一対の補償電極は、X−Y平面において多項式プロファイルを有する表面を有し、好ましくは、X−Y平面において放物線プロファイルを有し、それにより、上記表面は、ミラーの端部のうちの一方又は両方の近傍領域では、両端部間の中央領域よりも小さな距離で、各ミラーに向かって延びる。そのような実施形態では、好ましくは、一対又は複数の対の補償電極は、細長いミラーの一端部において、イオン注入器に隣接する領域からドリフト方向Yに沿って延び、補償電極の長さは、ドリフト方向において拡張ミラーと略同じ長さであり、ミラー間の空間の両側に配置される。代替の実施形態では、今説明した補償電極表面は複数の離散電極で構成し得る。
他の実施形態では、補償電極は部分的又は完全に、対向するミラー間に延びる空間内に配置し得、補償電極は1組の別個の管又は区画を備える。好ましくは、管又は区画はX−Y平面にセンタリングされ、ドリフト長に沿って配置され、それにより、イオンは管又は区画を通過し、管又は区画に衝突しない。管又は区画は、好ましくは、ドリフト長に沿った異なる位置で異なる長さを有し、且つ/又はドリフト長に沿った位置の関数として異なる電位を印加し得る。
好ましくは、本発明の全ての実施形態では、補償電極は、イオンビームがドリフト方向でのイオンの運動エネルギーと少なくとも同じ大きさのポテンシャル障壁に直面するイオン光学ミラーを備えない。しかし、既に述べ、更に説明するように、補償電極は好ましくは、ドリフト方向でのイオン光学ミラー長の少なくとも一部に沿った+Y方向に沿ったイオン運動に対抗する電場の成分を生み出す。
好ましくは、1つ又は複数の補償電極は、使用中、対抗するミラーによって生成される飛行時間収差の少なくともいくらかを補償するように電気的にバイアスされる。2つ以上の補償電極がある場合、補償電極は同じ電位でバイアスしてもよく、又は異なる電位でバイアスしてもよい。2つ以上の補償電極がある場合、補償電極のうちの1つ又は複数は非ゼロ電位でバイアスすることができ、一方、他の補償電極は、非ゼロ電位であり得る別の電位に保持することができる。使用中、いくつかの補償電極は、他の補償電極の電場の空間的な範囲を制限する目的を果たし得る。好ましくは、多重反射質量分析計のミラー間のビーム飛行経路の両側に離間された第1の対の対向補償電極がある場合、第1の対の補償電極は、同じ非ゼロ電位で電気的にバイアスされ、多重反射質量分析計は、好ましくは、追加の2対の補償電極を更に備え、これらの補償電極は+/−X方向で第1の対の補償電極の両側に配置され、ゼロ電位に保持される。すなわち、非バイアス補償電極である。別の好ましい実施形態では、3対の補償電極が利用され、第1の対の非バイアス補償電極はゼロ電位に保持され、これらの補償電極の+/−X方向の両側の2つの更なる対のバイアス補償電極は、非ゼロ電位に保持される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の補償電極は、電気抵抗性材料でコーティングされたプレートを備え得、このプレートは、Y方向においてプレートの異なる端部に印加される異なる電位を有し、それにより、ドリフト方向Yの関数として電位が異なる表面を有する電極を生み出す。したがって、電気的にバイアスされる補償電極は、1つの電位に保持しなくてもよい。好ましくは、1つ又は複数の補償電極は、使用中、対向するミラーによって生成されるドリフト方向での飛行時間シフトを補償するように電気的にバイアスされて、更に説明するように、システムの総合飛行時間シフトを、初期イオンビーム軌跡入射角から実質的に独立させる。補償電極に印加される電位は、一定に保持してもよく、又は経時変化してもよい。好ましくは、補償電極に印加される電位は、イオンが多重反射質量分析計を伝搬する間、一定に保持される。補償電極に印加される電気バイアスは、そのようにバイアスされた補償電極の近傍を通過するイオンを減速又は加速させるようなものであり得、補償電極の形状はそれに従って異なり、その例について更に説明する。
本明細書で説明するように、補償電極に適用される場合、「幅」という用語は、+/−X方向でのバイアス補償電極の物理的寸法を指す。好ましくは、補償電極は、+Yドリフト方向に沿ったイオンの運動に対抗するY方向での電場成分が生成される1つ又は複数の領域を生成するように構成され、使用中にバイアスされる。それにより、補償電極は、イオンが+Y方向においてドリフト長に沿って進む際に、ドリフト方向でのイオンの速度を失わせ、補償電極の構成及び補償電極のバイアスは、イオンがミラーの端部に達し、イオン注入領域に戻る前に、ドリフト方向においてターンさせるように構成される。有利には、これは、対向するミラーを分割せずに、且つ第3のミラーを導入せずに達成される。好ましくは、イオンは、本発明の他の実施形態で説明したように、適する検出面が配置されるイオン注入器の領域で空間集束させられる。好ましくは、Y方向での電場は、更に説明するように、ドリフト方向での距離の関数として線形に、イオンの運動に対抗する力(二次対向電位)を生み出す。
好ましくは、本発明を使用する質量分析法は、ミラー間の空間であるか、又はミラー間の空間に隣接して、ドリフト方向の少なくとも一部に沿って延びる補償電極を備える多重反射分析計にイオンを注入することを更に含む。好ましくは、イオンは、対向するミラーの一端部に配置されるイオン注入器からドリフト方向において注入され、いくつかの実施形態では、イオンは、イオン注入器の近傍の領域、例えば、イオン注入器に隣接して配置される検出器に衝突することによって検出される。他の実施形態では、イオンは、上述したように、イメージ電流検出手段によって検出される。本発明の方法で使用すべき質量分析計は、上述した詳細を有する構成要素を更に備え得る。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備えるイオン光学装置を更に提供し、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、ミラーが、ドリフト方向でのミラーの長さの少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定距離の箇所にないことを特徴とする。使用中、イオンは、反射間でドリフト方向に沿ってある距離を進みながら、イオン光学ミラー間で反射され、イオンは複数回反射され、上記距離は、ドリフト方向の少なくとも部分に沿ったイオンの位置の関数として変化する。イオン光学装置は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内に配置されるか、対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、補償電極は、電位オフセットをX−Y平面において生成するように構成され、使用中に電気的にバイアスされ、電位オフセットは(i)ドリフト長の少なくとも一部に沿ったドリフト長に沿った距離の関数として変化し、且つ/又は(ii)ドリフト長の少なくとも一部に沿ったドリフト長に沿った距離の関数として、X方向において異なる程度を有する。
更に説明されるいくつかの好ましい実施形態では、イオンビーム速度は、非平行対向イオン光学ミラーによって生じる全ての飛行時間収差が補正されるように変更される。そのような実施形態では、ドリフト長に沿ったミラー間の距離が異なることから生じる振動周期の変化が、電気的にバイアスされる補償電極から生じる振動周期の変化によって完全に補償されることがわかっており、その場合、イオンは、ミラー間の距離がドリフト長に沿って変化する場合であっても、ドリフト長に沿った全ての位置で、対向するイオン光学ミラー間の各振動で略等しい振動時間を受ける。本発明の他の好ましい実施形態では、電気的にバイアスされる補償電極は、振動周期を実質的に補正し、それにより、非平行対向イオン光学ミラーによって生じる飛行時間収差は実質的に補償され、イオンは検出面に到達する場合、特定数の振動の後でのみ。これらの実施形態では、電気的にバイアスされる補償電極がない場合、対向するイオン光学ミラー間のイオン振動周期が実質的に一定ではなく、対向するミラーが互いに近くなるドリフト長の部分に沿ってイオンが移動するにつれて低減することが理解されるだろう。
したがって、本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、それにより、イオンは、Y方向においてドリフト長に沿って進む間、対向するミラー間で振動し、分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、使用中、ミラー間でのイオン振動周期がドリフト長全体に沿って略一定であるように電気的にバイアスされる、注入するステップと、イオンが質量分析計を通過している間、又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
本発明は多重反射質量分析計を更に提供し、この多重反射質量分析計は、2つのイオン光学ミラーを備え、各ミラーはドリフト方向(Y)において概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、多重反射質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各補償電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、質量分析計は、ドリフト方向においてイオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器を更に備え、イオン注入器は、イオンがY方向においてドリフト長に沿って進む間、対向するミラー間で振動するように構成され、補償電極は、使用中、ミラー間のイオン振動の周期が、ドリフト長全体に沿って略一定であるように電気的にバイアスされる。
本発明はなお、多重反射質量分析計を更に提供し、この多重反射質量分析計は、2つのイオン光学ミラーであって、各ミラーはドリフト方向(Y)において概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交する、2つのイオン光学ミラーと、ドリフト方向においてイオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器とを備え、イオン注入器は、使用中、イオンが、Y方向においてドリフト方向に沿って進む間、対向するミラー間で振動するようイオンを注入するように構成され、多重反射質量分析計は、ミラー間のイオン振動の振幅が、ドリフト長全体に沿って略一定ではないことを特徴とする。好ましくは、振幅は、イオンがイオン注入器から離れて進むにつれて、ドリフト長の少なくとも一部に沿って低減する。好ましくは、イオンはドリフト長に沿って通過した後にターンし、ドリフト長に沿ってイオン注入器に戻る。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交する、注入するステップと、イオンがドリフト方向Yに沿って進む間、各ミラー内でイオンをターンさせることにより、イオンを一方のミラーから他方のミラーに複数回、ドリフト方向に概して直交して反射するステップであって、ドリフト方向に沿ったイオンの運動の少なくとも一部の間、イオンがターンするX方向での連続点間の距離がYに伴って単調に低減することを特徴とする、反射するステップと、イオンが質量分析計を通過している間、又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
既に述べたように、好ましくは、1つ又は複数の補償電極は、+Yドリフト方向に沿ったイオンの運動に対抗するY方向での電場成分が生成される1つ又は複数の領域を生成するように構成され、使用中にバイアスされる。本明細書で説明される補償電極を使用して、ドリフト方向(Y)に沿って概して細長い2つの対向するイオン光学ミラーと併用される場合、本発明の利点の少なくともいくつかを提供することができ、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、ミラーはドリフト方向においてミラーの長さの全体に沿って互いから一定距離にあり、すなわち、ミラー間に等しいギャップを有し、対向するミラーの平均反射面は、ドリフト長の全体に沿って互いから一定距離にある。そのような実施形態では、対向するミラーは、直線であり、互いに平行して配置し得、例えばその場合、ミラーは、X方向において互いから一定距離にある。他の実施形態では、ミラーは湾曲し得るが、対向する扇形を形成するように構成し得、セクタ間に一定のギャップを有する。他の実施形態では、ミラーはより複雑な形状を形成し得るが、相補的な形状を有し、ミラー間のギャップは一定のままである。補償電極は、好ましくは、ドリフト方向の少なくとも一部に沿って延び、各電極は、対向するミラーの間に延びる空間内又は対向するミラーの間に延びる空間に隣接して配置され、補償電極は、電位オフセットをミラー間に延びる空間の少なくとも一部で生成するような形状であり、使用中に電気的にバイアスされ、電位オフセットは、(i)ドリフト長の距離の関数として変化し、且つ/又は(ii)ドリフト長に沿った距離の関数として、X方向において異なる程度を有する。これらの実施形態では、そのように構成され(すなわち、形状を有し、空間に配置され)、バイアスされる補償電極は、使用中、+Yドリフト方向に沿ったイオンの運動に対抗するY方向での電場成分が生成される1つ又は複数の領域を生成する。イオンは一方のイオン光学ミラーから他方のイオン光学ミラーに繰り返し反射され、同時に、ドリフト長に沿って進むため、イオンは各ミラー内でターンする。イオンがY方向においてターンする後続点間の距離は、ドリフト方向に沿ったイオンの運動の少なくとも一部分中、Yに伴って単調に低減し、ミラー間のイオン振動の周期は、ドリフト長の全体に沿って実質的に一定ではない。電気的にバイアスされた補償電極は、X方向(少なくとも)でのイオン速度を、ドリフト長の少なくとも一部に沿って変更させ、それにより、ミラー間のイオン振動の周期は、ドリフト長の少なくとも一部に応じて変化する。そのような実施形態では、両ミラーは、ドリフト方向に沿って細長く、X方向において等距離離間されて構成される。いくつかの実施形態では、両ミラーは、ドリフト方向に沿って非線形に細長く、他の実施形態では、両ミラーは、ドリフト方向に沿って線形に細長い。好ましくは、製造を容易にするために、両ミラーはドリフト方向に沿って線形に細長い。すなわち、両ミラーは直線である。本発明の実施形態では、イオン振動の周期は、イオンがイオン注入器から離れて進むにつれて、ドリフト長の少なくとも一部に沿って低減する。好ましくは、イオンは、ドリフト長に沿って通過した後にターンし、ドリフト長に沿ってイオン注入器に向かって戻る。本発明の実施形態では、補償電極を使用して、イオンビームが補償電極の近傍を通過する際、又はより好ましくは、一対の補償電極間を通過する際、イオンビーム速度、ひいてはイオン振動周期を変更する。それにより、補償電極は、イオンにドリフト方向での速度を失わせ、補償電極の構成及び補償電極のバイアスは、好ましくは、イオンが、ミラーの端部に達する前にドリフト方向においてターンさせ、イオン注入器領域に向かって戻すように構成される。有利には、これは、対向するミラーを分断せずに、且つ第3のミラーを導入せずに達成される。好ましくは、イオンは、本発明の他の実施形態に関して上述したように、適する検出面が配置されるイオン注入器の領域で空間的に集束する。好ましくは、Y方向での電場は、更に説明するように、ドリフト方向での距離の関数として線形に、イオンの運動に対抗する力(二次対向電位)を生み出す。
したがって、本発明の実施形態は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計を更に提供し、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、質量分析計は1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、分析計は、ドリフト方向においてイオン光学ミラーの一端部に配置されたイオン注入器を更に備え、イオン注入器は、使用中、イオンがイオン光学ミラー間で振動し、概してドリフト方向に直交して一方のミラーから他方のミラーに複数回反射し、イオンがドリフト方向Yに沿って進む間、各ミラー内でイオンをターンさせるようイオンを注入するように構成され、補償電極が、使用中、Y方向においてイオンがターンする後続点間の距離が、ドリフト方向に沿ったイオンの運動の少なくとも一部の間にYに伴った単調に変化するように電気的にバイアスされることを特徴とする。加えて、本発明の実施形態は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計も提供し、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、質量分析計は1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、補償電極は、使用中に電気的にバイアスされ、質量分析計は、ドリフト方向においてイオン光学ミラーの一端部に配置されたイオン注入器を更に備え、イオン注入器は、使用中、イオンがY方向においてドリフト長に沿って進む間、対向するミラー間で振動するようにイオンを注入するように構成され、ミラー間のイオン振動の周期が、ドリフト長の全体に沿って実質的に一定ではないことを特徴とする。本発明の実施形態は2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計も提供し、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、質量分析計は1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置され、補償電極は、ミラー間に延びる空間の少なくとも一部において、電位オフセットを生成するように構成され、使用中に電気的にバイアスされ、電位オフセットは、(i)ドリフト長の距離の関数として変化し、且つ/又は(ii)ドリフト長に沿った距離の関数として、X方向において異なる程度を有する。
本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、質量分析計は、1つ又は複数の電気バイアス補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置される、注入するステップと、イオンがドリフト方向Yに沿って進む間、各ミラー内でイオンをターンさせることにより、イオンを一方のミラーから他方のミラーに複数回、ドリフト方向に概して直交して反射するステップであって、補償電極がミラー間に延びる空間の少なくとも一部において、電位オフセットを生成することを特徴とし、電位オフセットは、(i)ドリフト長に沿った距離の関数として変化し、且つ/又は(ii)ドリフト長に沿った距離の関数として、X方向において異なる程度を有する、反射するステップと、イオンが質量分析計を通過している間、又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。本発明は、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、X方向はYに直交し、質量分析計は、1つ又は複数の電気バイアス補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置される、注入するステップと、イオンがドリフト方向Yに沿って進む間、各ミラー内でイオンをターンさせることにより、イオンを一方のミラーから他方のミラーに複数回、ドリフト方向に概して直交して反射するステップであって、イオンがY方向においてターンする後続点間の距離が、ドリフト方向に沿ったイオンの運動の少なくとも一部分中、Yに伴って単調に低減することを特徴とする、反射するステップと、イオンが質量分析計を通過している間、又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。本発明はなお、2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において互いに対向し、ミラー間にギャップを有し、X方向はYに直交し、質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、対向するミラー間に延びる空間内又は対向するミラー間に延びる空間に隣接して配置される、注入するステップと、電気バイアスをミラー及び補償電極に印加するステップであって、イオンは、イオンが、Y方向においてドリフト長に沿って進む間、対向するミラー間で振動するように、ドリフト方向においてイオン光学ミラーの一端部に配置されたイオン注入器から注入され、ミラー間のイオン振動の周期が、ドリフト長の全体に沿って実質的に一定ではないことを特徴とする、印加するステップと、イオンが質量分析計を通過している間、又は通過した後、イオンの少なくともいくつかを検出するステップとを含む、質量分析法を更に提供する。
上述したように、いくつかの好ましい実施形態では、イオン光学ミラーは、対向するミラーの平均反射面が、ドリフト長の少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定の距離にないように構成される。代替的には、他の実施形態では、イオン光学ミラーは、対向するミラーの平均反射面が、ドリフト長の全体に沿って、X方向において互いから一定の距離に維持されるように構成され、質量分析計は、上述したように電気バイアス補償電極を更に備える。最も好ましくは、イオン光学ミラーは、対向するミラーの平均反射面が、ドリフト長の少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定の距離にないように構成され、質量分析計は、上述したように、電気バイアス補償電極を更に備え、その場合、ミラー間のイオン振動の周期がドリフト長の全体に沿って略一定であるように、補償電極が電気的にバイアスされることがより好ましい。
いくつかの好ましい実施形態では、対向するイオン光学ミラー間の空間は、対向するミラーの平均反射面が、ドリフト長の少なくとも一部に沿って、X方向において互いから一定の距離にないか、対向するミラーの平均反射面がドリフト長全体に沿って、X方向において互いから一定距離に維持されるように、イオン光学ミラーが構成されるかに関係なく、ドリフト長の各端部においてX−Z平面において開口して終端する。X−Z平面において開口して終端することにより、ミラーが、ミラー間のギャップに完全又は実質的に広がるX−Z平面において電極によって跳ね返られないことが意味される。
本発明の多重反射質量分析計の実施形態は、多重反射静電トラップ質量分析計の全て又は部分を形成し得る。好ましい静電トラップ質量分析計は、各ドリフト方向が共線形になるように、X軸を中心として対称に端から端に配置される2つの多重反射質量分析計を備え、それにより、多重反射質量分析計は容積を画定し、この容積内で、使用中、イオンは閉路を辿り、ドリフト方向及びイオン飛行方向の両方で等時性を有する。
本発明の多重反射質量分析計は、多重反射飛行時間質量分析計の全て又は部分を形成し得る。
各質量分析計のX−Y平面が平行し、垂直方向Zにおいて互いから任意選択的に変位されるように位置合わせされた2つ以上の多重反射質量分析計を備える複合質量分析計を形成し得、複合質量分析計は、イオンをある多重反射質量分析計から別の多重反射質量分析計に向けるイオン光学手段を更に備える。複合質量分析計のそのような一実施形態では、1組の多重反射質量分析計がZ方向において上下に積み重ねられ、イオンは、静電電極偏向器等の偏向手段により、積層内の最初の多重反射質量分析計から積層内の更なる多重反射質量分析計に渡さされ、それにより、飛行経路を拡張した複合質量分析計を提供し、この分析計では、イオンは1回を超えて同じ経路を辿らず、イオンの重複がないため、全範囲質量TOF解析が可能である。複合質量分析計の別のそのような実施形態では、1組の多重反射質量分析計はそれぞれ、同じX−Y平面にあるように配置され、イオンは、静電電極偏向器等の変更手段により、最初の多重反射質量分析計から更なる多重反射質量分析計に渡され、それにより、飛行経路を拡張した複合質量分析計を提供し、この分析計では、イオンは1回を超えて同じ経路を辿らず、イオンの重複がないため、全範囲質量TOF解析が可能である。分析計のいくつかが同じX−Y平面にあり、他の分析計が垂直Z方向に配置され、イオン光学手段が、イオンを分析計から別の分析計に渡し、それにより、イオンが1回を超えて同じ経路を辿らない、飛行経路を拡張した複合質量分析計を提供するように構成される他の構成の多重反射質量分析計も考えられる。好ましくは、いくつかの分析計がZ方向に積み重ねられる場合、上記分析計は、交互になった向きのドリフト方向を有して、ドリフト方向での変更手段の必要性をなくす。
代替的には、イオンをターンさせ、多重反射質量分析計又は複合質量分析計に再び、1回又は複数回渡し、それにより、質量範囲を犠牲にするが、飛行経路長を増大させるように構成されるビーム偏向手段を有する本発明の実施形態を使用し得る。
本発明を使用して、多重反射質量分析計と、質量分析計の上流にイオントラップ装置を備えるイオン注入器と、パルスイオンゲートと、質量分析計の下流にある高エネルギー衝突セル及び飛行時間解析器とを備えるMS/MSの解析システムを提供し得る。さらに、衝突セルから出たイオンがイオントラップ装置に向けられるように衝突セルを構成することにより、解析の両段階又は解析のそのような複数の段階に同じ解析器を使用することができ、それにより、MSnの性能を提供する。
本発明は、ドリフト方向に沿って細長い対向するミラーと、ドリフト方向に沿ったイオン運動に対抗する戻り力を提供する手段とを備える多重反射質量分析計及び質量分析計を提供する。本発明では、戻り力は、ドリフト方向の一部に沿って、最も好ましくはドリフト方向の略全体に沿って平滑に分布し、特に、イオンビーム幅が最大であるドリフト方向でのターン点近傍での非制御イオン散乱を低減するか、又はなくす。この平滑な戻り力は、いくつかの実施形態では、ミラーに存在する、分割されない連続した電極構造の使用を通して提供され、ミラーはドリフト長の少なくとも一部、好ましくはドリフト長の大半に沿って互いに向けて傾斜するか、又は互いに向けて湾曲する。他の実施形態では、戻り力は、電気的にバイアスされる補償電極によって生成される電場成分によって提供される。特に好ましい実施形態では、戻り力は、対向するイオン光学ミラーが、一端部において互いに向けて傾斜するか、又は互いに向けて湾曲することと、バイアス補償電極の使用との両方によって提供される。特に、戻り力は、少なくとも、ドリフト方向でのイオンビーム運動エネルギーと同じ大きさのポテンシャル障壁によって生成されない。
2つの対向する細長いミラーのみのシステムでは、例えば、ドリフト長の端部でのX−Z平面での1つ又は複数の電極によるか、又はミラーの傾斜による戻り力の実施は必然的に、初期イオンビーム注入角に応じて飛行時間収差を導入する。その理由は、戻り力手段の近傍の電場は、一方はドリフト方向での電場の項(Ey)であり、他方はドリフト方向を横切る電場の項(Ex)である2項の和で単純に表すことができないためである。本発明では、そのような収差の実質的な最小化が補償電極の使用によって提供され、そのような実施形態への更なる利点を生じさせる。
本発明のいくつかの実施形態の飛行時間収差は、ドリフト方向Yに沿った長さにおいて細長く、ミラーの長さの少なくとも一部に沿ってX方向において互いの近く漸次的に傾斜する一対の対向するイオン光学ミラーに関連して、以下のように考えることができる。ミラー系に入るイオンの初期パルスは、X−Y平面においてある範囲の注入角を有するイオンを含む。より大きなY速度を有する1組のイオンは、より低いY速度を有する1組のイオンよりも、ミラー間での各振動においてわずかに遠くにドリフト長を下に進む。2組のイオンはミラー間で異なる振動時間を有し、その理由は、ミラーが、ドリフト長の関数として異なる量だけ互いに傾斜するためである。好ましい実施形態では、ミラーは、イオン注入手段からの遠位端部において互いに近い。より高いY速度を有するイオンは、ミラー傾斜を有するミラーの部分内の各振動で、より低いY速度を有するイオンよりも、間のギャップがわずかに小さい一対のミラーに直面する。これは、1つ又は複数の補償電極の使用によって補償し得る。これを示すために、イオンビームに面する拡張表面をX−Y平面に備える、ミラー間の空間に隣接してドリフト方向に沿って延びる一対の補償電極が考えられ(非限定的な例として)、各電極は、対向するミラー間に延びる空間の両側に配置される。例えば、正電位による両電極の適する電気バイアスは、陽イオンがより低速で進むミラー間の空間領域を提供する。バイアス補償電極が、X方向でのミラー間の空間領域の範囲がYの関数として変化するように構成される場合、Y速度の異なるイオンのミラー間の振動時間の差を補償し得る。(a)Yの関数として異なる量だけ+/−Y方向に延びる(すなわち、Yにおいて延びるにつれて、異なる幅を提示する)ような形状のバイアス補償電極の使用又は(b)Yの関数としてZにおいて異なる量だけ互いから離間される補償電極の使用を含め、X方向での空間領域のYの関数としての変化を提供する様々な手段を意図し得る。代替的には、速度低減量は、例えば、一定幅の補償電極の使用により、Yの関数として変化し得、各補償電極は、Yの関数として長さに沿って変化する電圧でバイアスされ、ここでも、Y速度の異なるイオンのミラー間の振動時間の差を補償し得る。勿論、これらの手段の組み合わせを使用することもでき、例えば、ドリフト長に沿って離間された、異なる電極バイアスを用いる追加の電極の使用を含む他の方法を見出すこともできる。補償電極は、その例について更に詳述するが、X−Y平面に広がるビーム注入角に関連する飛行時間収差を少なくとも部分的に補償する。好ましくは、補償電極は、X−Y平面に広がるビーム注入角に関連する飛行時間収差を一次まで、より好ましくは二次以上まで補償する。
有利には、本発明の態様では、イオン注入角を変更することにより、ミラー構造間のイオン振動数、ひいては総合飛行経路長を変更することができる。いくつかの好ましい実施形態では、補償電極のバイアスは、更に説明するように、振動数が異なる場合に飛行時間収差補正を保持するために変更可能である。本発明の実施形態では、イオンビームは、イオン注入器からミラーの遠位端部に向けて進むにつれて、ドリフト方向においてゆっくりと広がり、対向するミラー自体及び/又は補償電極が存在する場合には補償電極によって生成される−Y方向において作用する電場の成分によってゆっくりと反射され、ビームは、イオン注入器の近傍に達すると、再びゆっくりと集束する。それにより、この飛行経路の大半中、イオンビームは空間内にある程度拡散し、それにより、有利には、空間電荷相互作用が低減する。
飛行時間集束は、上述したように、適する形状の補償電極と共に、本発明のいくつかの実施形態の非平行ミラー構成によっても提供され、注入角の広がりに対する飛行時間集束は、本発明の非平行ミラー構成と、それに対応する形状の補償電極とによって提供される。X方向でのエネルギー拡散に関する飛行時間集束も、一般に従来技術から既知であり、より十分に後述される特別な構造のイオンミラーによって提供される。X方向及びY方向の両方での飛行時間集束の結果、イオンは、X方向でのミラー間の指定された振動数後、イオン注入器の近傍においてY方向において略同じ座標に到達する。それにより、検出器での空間的集束は、追加の集束要素を使用せずに達成され、質量分析計の構造は大幅に簡易化される。ミラー構造は連続することができ、すなわち、分断しなくてよく、これにより、特に、イオンビーム幅が最大のドリフト方向でのターン点近傍で、そのようなセクション間のギャップでの電場の段階的変化に関連付けられたイオンビーム散乱をなくす。はるかに単純な機械的構造及び電気的構造のミラーも可能であり、複雑性のより低い解析器を提供する。必要なのは、2つのミラーのみである。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、非平行対向ミラーに起因して生まれる飛行時間収差は大方、補償電極の使用によってなくし得、適宜配置された検出器において、高質量分解力を達成することができる。それにより、従来技術による多重反射質量分析器に関連付けられた多くの問題は、本発明によって解決される。
本発明の更なる態様では、イオンを飛行時間分析計又は静電トラップに、軸に対して第1の角度+θで注入する方法が提供され、本方法は、上記軸に対して第2の角度にある蓄積多極子から半径方向に、略平行するイオンビームを噴射するステップと、イオンを静電偏向器に通すことによって第3の角度だけイオンを偏向させるステップであって、それにより、イオンが飛行時間分析計又は静電トラップ内を移動する、偏向させるステップとを含み、第2の傾斜角及び第3の傾斜角は概ね等しい。本発明は、軸に対して第1の角度+θで飛行時間分析計又は静電トラップ内にイオンを注入するイオン注入器装置を更に提供し、この装置は、使用中、上記軸に対して第2の角度で半径方向にイオンを噴射するように構成された蓄積多極子と、上記イオンを受け取り、使用中、第3の角度を通してイオンを偏向させ、それにより、イオンが軸に対して第1の角度+θで飛行時間分析計又は静電トラップ内を通過する静電偏向器とを備え、第2の傾斜角及び第3の傾斜角は概ね等しい。したがって、第2の角度及び第3の角度は約+θ/2である。好ましくは、飛行時間分析計は質量分析計である。偏向器は、任意の既知の手段によって実施され、例えば、偏向器は一対の対向する電極を備え得る。好ましくは、一対の対向する電極は、互いから一定距離に保持される電極を備える。一対の電極は直線であってもよく、又は湾曲してもよく、好ましくは、一対の電極は直線電極を備える。好ましくは、一対の電極は、電位の双極組でバイアスされる。
イオンは、略平行するビームで蓄積多極子から噴射され、それにしたがって、蓄積多極子の一端部から噴射された第1の組のイオンは、蓄積多極子傾斜角+θ/2に起因して、蓄積多極子の他端部から同時に噴射される第2の組のイオンよりも分析計又はトラップの近傍に現れ、それにしたがって、偏向手段が蓄積多極子と分析計又はトラップとの間に実施されない場合、第1の組のイオンは、第2の組のイオン前に、飛行時間質量分析計又はトラップに達する。静電偏向器は、上記飛行時間差を補償するのと同時に、イオンビーム傾斜を2倍にする。飛行時間の補償を示すために、まず、イオンビームが陽イオンを含み、偏向器内部で実質的に重複せずに、第1の組のイオンが偏向器の第1の領域を通過し、第2の組のイオンが偏向器の第2の領域を通過すると考える。陽イオンを偏向させるために、第1の領域での電位は平均として、第2の領域内の電位よりも高く、これは、例えば、より高い電圧を、第1の領域により近い第1の偏向電極に印加するとともに、より低い電圧を、第2の領域により近い第2の偏向電極に印加することによって達成される。平均電位差は必然的に2つの効果を有する:(i)所望の偏向電場を生成し、(ii)完全なエネルギー保存の法則−飛行時間効果に起因して、偏向器を通して、第2の組のイオンよりもゆっくりと第1の組のイオンを進めさせる。この飛行時間効果は、偏向器から出た両方の組のイオンを、飛行時間分析器又は静電トラップに同時に到着させる。同じ原理が、陰イオンを含むビームにも当てはまりであった、その理由は、静電偏向器の電位がその場合に逆になるためである。
X−Y平面での従来技術による解析器を示す、ドリフト長に沿って線形に細長い2つの平行イオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計の概略図である。 X−Z平面での従来技術による解析器を示す、ドリフト長に沿って線形に細長い2つの平行イオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計の概略図である。 分断されたミラー電極を備える2つの対向するミラーと、直交の向きに第3の分断電極ミラーとを備える従来技術による多重反射質量分析計の概略図である。 ドリフト長に沿って放物線的に細長い対向するイオン光学ミラーを備える本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。 イオン光線及び電位プロットとともに、本発明の2つの好ましいイオンミラーを備える多重反射質量分析計のX−Z平面での断面の概略図である。 図4に示されるタイプのミラーに関して計算されるビームエネルギーεに対してプロットされた振動時間Tのグラフである。 ドリフト長に沿って放物線的に細長い対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、いくつかは正電圧でバイアスされる放物線形状の補償電極を更に備える、本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。 図6Aの分析計の断面の概略図である。 非対称形状のミラーを有する同様の実施形態を示す。 非対称形状のミラーを有する同様の実施形態を示す。 ドリフト長に沿って線形に細長く、互いに傾斜して配置される対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、凹放物線形状を有する補償電極を更に備える、本発明の実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。 ドリフト長に沿って線形に細長く、互いに傾斜して配置される対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、凸放物線形状を有する補償電極を更に備える、本発明の実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。 ドリフト方向に沿って線形に細長く、互いに平行に配置される対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、放物線計補償電極を更に備える、本発明の一実施形態である更なる多重反射質量分析計の概略図である。 図7A及び図7Bに示される質量分析計に関連する正規化飛行時間オフセットとターン点の正規化座標との関係のグラフである。 ドリフト長に沿って線形に細長く、互いに傾斜して配置される、対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、補償電極を更に備える、本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。 最適化された飛行時間収差を有する図9に示される実施形態に関連する主特徴的な機能を示す。 イオン注入手段及びイオン検出手段を更に備える、図9に示される分析計と同様の本発明による多重反射質量分析計の概略斜視図である。 図11Aの分析計の入射端部の概略図である。 図11A及び図11Bに示される実施形態の数値シミュレーションの結果を示す。 図11A及び図11Bに示される実施形態の数値シミュレーションの結果を示す。 イオン注入器及びイオン検出器が分析計のX−Y平面外部にある、2つの異なるイオン注入手段及びイオン検出手段を示す、図11Aの多重反射質量分析計の概略断面図である。 イオン注入器及びイオン検出器が分析計のX−Y平面外部にある、2つの異なるイオン注入手段及びイオン検出手段を示す、図11Aの多重反射質量分析計の概略断面図である。 静電トラップの形態での本発明の一実施形態を示す概略図である。 各質量分析計のX−Y平面が互いに平行し、垂直方向Zにおいて互いに変位されるように位置合わせされた、本発明の4つの多重反射質量分析計を備える複合質量分析計の一実施形態を示す概略図である。 本発明の質量分析計と、質量分析計の上流にイオントラップ装置を備えるイオン注入器と、パルスイオンゲートと、質量分析計の下流にある高エネルギー衝突セル及び飛行時間解析器とを備える解析システムを概略的に示す。 5対の補償電極を備える本発明の更なる実施形態であり、反復率を増大さされた質量解析に使用し得る多重反射質量分析計を概略的に示す。 パルスイオンゲートと、イオンが選択される断片化セルとを更に備える本発明の多重反射質量分析計の概略図であり、断片化されたイオン及び断片イオンは、多重反射質量分析計に向けられ、続けて検出され、複数の断片化段階を実行して、MSnを可能にし得る。 分析計内の代替の5つの経路を示す本発明の多重反射質量分析計の概略図である。 分析計内の代替の5つの経路を示す本発明の多重反射質量分析計の更なる例の概略図である。
これより、本発明の様々な実施形態について、以下の例及び添付の図面によって説明する。
図1A及び図1Bは、従来技術による解析器を示す、ドリフト長に沿って線形に細長い平行イオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計の概略図である。図1AはX−Y平面での解析器を示し、図1BはX−Z平面での同じ解析器を示す。対向するイオン光学ミラー11、12は、ドリフト方向Yに沿って細長く、互いに平行に配置される。イオンは、X−Y平面において、イオン注入器13から軸Xに対して角度θ及び角度広がりδθで注入される。したがって、3つのイオン飛行経路16、17、18が示される。イオンはミラー11内に移動し、ターンして、ミラー11から出てミラー12に向かって進み、ミラー12で反射され、ドリフト方向Yにおいて比較的ゆっくりとドリフトして、ジグザグイオン飛行経路を辿って再びミラー11に進む。ミラー11、12での複数の反射後、イオンは検出器14に達し、検出器14に衝突し、検出される。いくつかの従来技術による解析器では、イオン注入器及び検出器は、ミラーで区切られる容積の外部に配置される。図1Bは、断面で、すなわちX−Z平面において示されるが、明確にするために、イオン飛行経路16、17、18、イオン注入器13、及び検出器14が省かれている図1Aの多重反射質量分析器の概略図である。イオン飛行経路16、17、18は、ドリフト方向での集束がない場合の、イオンがドリフト長に沿って進む際のイオンビームの拡散を示す。上述したように、ミラー間へのレンズの提供、ミラー構造自体及び別個のミラーでの周期的な変調を含む様々な解決策が、ドリフト長に沿ったビーム広がりを制御するために提案されてきた。しかし、完全な検出に必要とされる場合、イオンをいくらか集束させることが可能な限り、イオンがドリフト長に沿って移動する際、イオンを拡散させて、空間電荷相互作用を低減することが有利である。
図2は、従来技術による多重反射質量分析計の概略図である。Sudakovは、国際公開第2008/047891号パンフレットにおいて、第3のミラー23を更に備える2つの平行グリッドレスミラー21、22の構成を提案しており、第3のミラー23は、対向するミラーに直交した向きを有し、イオン注入器から対向ミラーの遠位端部に配置される。イオンは飛行経路24に沿って入り、ドリフト長に沿って移動した後、第3のミラー23での反射によってドリフト長に沿って戻り、同時に、ビーム集束がドリフト方向で誘導される。イオンは飛行経路25に沿って出てくる。イオンミラー23は効率的に、対向ミラー21、22の両方の端部に内蔵され、それにより、セクション26は3つ全てのミラーで形成される。それにより、3つのミラーの構造は複雑になる。3つのミラーに印加される電位は、異なるセクションに分配されなければならない。セクションが多くなるほど、構造は複雑になるが、イオンが移動する領域で、電場をより平滑に分配し得る。それにもかかわらず、セクションの存在は、セクション間のギャップに隣接する領域においてより高い電場を誘導する。これらの電場の程度は、ミラーの構造が単純になるほど大きくなる。そのような電場は、上述したように、イオン散乱を生じさせがちである。イオン飛行経路16、17、18で図1Aに関連して示したように、Y方向において高速のイオンほど、Y方向に沿って第3のミラー23の深部に入る。したがって、注入時に異なるY速度を有するイオンは、ミラー23まで異なる距離を進むため、異なる数のセクションに交差する。それにより、異なるイオンは異なる散乱力及び異なる散乱力量を受けることになり、イオンビーム収差が生じる。
本発明の一目的は、平滑な戻り力が生成される細長い対向イオン光学ミラー構造を提供することである。図3は、ドリフト長Yに沿って細長く、イオン注入器33から遠位端部において互いに向けて放物線状に集束する形状を有する対向イオン光学ミラー31、32を備える、本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。注入器33は、当分野で既知の従来のイオン注入器とすることができ、その例を後に与える。イオンは、図1に関連して説明したものと同じように、加速電圧Vによって加速し、イオン注入器33から多重反射質量分析計内に、X−Y平面において角度θ及び角度広がりδθで注入される。したがって、3つのイオン飛行経路36、37、38が図3に代表的に示される。既に述べたように、イオンは、イオン注入器33から離れてドリフト方向に沿ってドリフトしながら、一方の対向ミラー31から他方の対向ミラー32に複数回反射し、質量分析計内で概してジグザグの経路を辿る。ドリフト方向に沿ったイオンの運動は、ドリフト方向でのミラー長に沿って違いからのミラー31、32の距離が非一定であることから生じる電場によって対抗され、上記電場は、イオンに方向を逆にさせ、イオン注入器33に向けて移動させる。イオン検出器34は、イオン注入器33の近傍に配置され、イオンを傍受する。イオン経路36、37、38は、図1Aに関連して上述したように、角度広がりδθでの拡散に起因して、イオン注入器から進むにつれて、ドリフト長に沿って拡散するが、イオン注入器33の近傍に戻るときには、イオン経路36、37、38は有利には、再び集束し、X軸に直交して向けられる検出器34のイオン感受性表面によって好都合に検出される。
対向イオン光学ミラー31、32を備える図3の実施形態は、放物線に細長い両ミラーが利用される本発明の一例である。既に述べたように、本発明の実施形態では、細長さは線形であってもよく(すなわち、ミラーは直線であり、可能な場合には互いに向けて傾斜して位置決めされる)、又は細長さは非線形であってもよく(すなわち、湾曲ミラーを備える)、各ミラーの細長い形状は同じであってもよく、又は異なってもよく、任意の方向の細長さの曲率は同じであってもよく、又は異なってもよい。ミラーは、ドリフト長の全体又はドリフト長の一部のみ、例えば、注入器端部からミラーのドリフト長の遠位端部に沿って互いに近づき得る。
ミラー31及び32での一対の反射後、傾斜角は値Δθ=2×Ω(Y)によって変化し、式中、Ω=L’(Y)は、ミラー間の有効距離L(Y)でのミラーの集束角である。この角度変化は、有効戻り電位Φm(Y)=2V[L(0)−L(Y)]/L(0)での2×L(0)飛行距離での傾斜角変化に等しい。放物線の細長さL(Y)=L(0)−AY2は、二次分布の戻り電位を生み出し、式中、Aは正の係数であり、二次分布の戻り電位では、イオンは有利には、Y方向での初期ドリフト速度から独立して、入射点Y=0に戻るのに同じ時間をとる。ミラー集束角Ω(Y)は有利には小さく、図4及び図5に関連して更に説明するように、X方向でのミラー31、32の等時性に影響しない。図3は、飛行経路長の増大及びドリフト(Y)方向でのイオンの空間集束の両方が、非平行ミラーの使用によって達成される本発明の一実施形態の一例である。この実施形態は、有利には、ドリフト長を2倍にするとともに、空間集束を誘導するために追加の構成要素を必要とせず、2つの対向ミラーのみが利用される。ミラーがドリフト方向においてミラー長の少なくとも一部に沿って互いから一定距離にないように、ドリフト方向Yに沿って概して細長い対向イオン光学ミラーの使用により、これらの有利な属性が生み出され、これらの属性は、例えば、ミラーが線形に細長い代替の実施形態によって達成される。この特定の実施形態では、対向ミラーは、イオン注入器に隣接する分析計の一端部から離れて長くなるため、放物線プロファイルで互いに向かって湾曲し、この特定の幾何学的形状はさらに、有利には、イオンが初期ドリフト速度から独立して、入射点に戻るのにかかる時間を同じにする。
図4は、イオン光線43、44、45、46と、電位分布曲線49と共に、本発明の好ましい2つのイオンミラー41、42を備える多重反射質量分析計の概略図である。ミラー41、42は、X−Z平面における断面で示される。各ミラーはいくつかの電極を備え、電極の寸法、位置、及び印加電圧は、ミラー間のイオンの振動時間Tが、間隔ε0+/−(Δε/2)でイオンエネルギーεから略独立するように最適化される。但し、ε0=qVは、加速電圧V及びイオン電荷qによって定義される基準エネルギーである。以下、イオン電荷は、陽イオン及び陰イオンの両方への本発明の適用可能性という一般性を失わずに、正であると仮定される。電位分布曲線49は、各ミラーが加速領域を有し、X−Z平面に平行するイオン軌跡(43、44)の、第1の反射後の点(45、46)への空間集束を達成するとともに、第2の反射後に点から平行への空間集束を達成し、X−Z平面でのイオン運動安定性を提供することを示す。イオンは、各反射でミラーの加速電位領域を2回経験する:ミラーに入るときに1回、ミラーから出るときに1回。従来技術から既知のように、このタイプの空間集束は、Z方向での位置及び角度の拡散に関するいくらかの飛行時間収差をなくすのにも役立つ。
従来技術から既知のように、この設計のミラーは、エネルギー拡散Δε/ε0>10%でイオンの高度に同時性の振動時間周期を生成することができる。図5は、図4に示されるタイプのミラーに関して計算されるビームエネルギーεに対してプロットされた振動時間Tのグラフである。高度に等時性の振動時間周期が、2000eV+/−100eVのイオンで達成されることが見て取れる。図4に示されるようなグリッドレスイオンミラーは、ワイヤ腐食、電子化学エッチング、ジェット機械加工、電鋳法等の周知の技術によって製造することができる平面電極を使用して、米国特許第7,385,187号明細書又は国際公開第2009/081143号パンフレットに記載のように実施することができる。グリッドレスイオンミラーは、プリント回路基板に実装することもできる。
図6Aは、ドリフト長に沿って放物線的に細長い対向するイオン光学ミラーを備えるとともに、補償電極を更に備える、本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図である。技術が進歩するにつれて、放物線形状は円弧で近似することができる(そしてこれは、旋盤で製造することができる)。補償電極により、特に、飛行時間収差の低減という更なる利点を提供することができる。図6Aの実施形態は図3の実施形態と同様であり、同様の検討事項が、注入器63から検出器64までの一般的なイオン運動に当てはまり、イオンはミラー61、62間で複数の振動60を受ける。一対としての65−1、65−2、別の対としての66−1、66−2、更なる対としての67−1、67−2である3対の補償電極は、イオンビームに面するX−Y平面での拡張面を構成し、電極は、イオンビーム飛行経路から+/−Zにおいて変位する。すなわち、各補償電極は、65−1、66−1、67−1、65−2、66−2、67−2は、図6Bに示されるように、対向ミラー間に延びる空間の両側に配置されるX−Y平面に略平行する表面を有する。図6Bは、図6Aの質量分析計の断面を示す概略図である。使用中、補償電極65は電気的にバイアスされ、両電極は、陽イオンの場合に印加される電圧オフセットU(Y)>0を有し、陰イオンの場合に印加される電圧オフセットU(Y)<0を有する。以下、この実施形態及び他の実施形態では、別段のことが示される場合を除き、陽イオンの場合を仮定する。電圧オフセットU(Y)は、いくつかの実施形態では、Yの関数である。すなわち、補償電極の電位はドリフト長に沿って変化するが、この実施形態では、電圧オフセットは一定である。電極66、67はバイアスされず、ゼロ電位オフセットを有する。補償電極65、66、67は、この例では、X方向において延びる複雑な形状を有し、Yの関数としての変化量を有し、X方向でのバイアス電極65の幅は関数S(Y)で表される。非バイアス電極66及び67の形状は、バイアス電極65の形状の相補形である。X方向での補償電極の広がりは、いくつかの実施形態では、ドリフト長に沿って一定の幅であるが、この実施形態では、幅はドリフト長に沿った位置の関数として変化する。関数S(Y)及びU(Y)は、更に説明するように、最も重要な飛行時間収差を最小に抑えるように選ばれる。
使用中、電気的にバイアスされる補償電極65は、対称Z=0の平面において電位分布u(X,Y)を生成し、これは、図6Bの概略電位曲線69と共に示される。電位分布69は、非バイアス補償電極66及び67の使用によって空間的に制限される。有効電位分布
Figure 0006236016
は、ミラー間の有効距離L(0)にわたって平均化されるため、戻り電場Ey=∂u/∂Yは、軌跡傾斜角の同じ変化をもたらす。Z方向での補償電極の隔たりが十分に小さい場合、最後の平等性が保持される。図6A及び図6Bに示される実施形態では、補償電極は放物線形状であり、それにより、S=BY2であり、式中、Bは正の定数であり、電圧オフセットは定数U=const〜Vsin2θ<<Vであり、式中、Vは加速電圧である。(加速電圧は解析器の基準電位に関する)。したがって、1組の補償電極は、有効戻り電位に対する二次寄与を生成し、これは、放物線形ミラーの二次寄与に対して同じ符号で加法的であり、ドリフト方向での等時性を維持する。バイアス補償電極に一定の電圧オフセットを有する実施形態では、戻り電場Eyは基本的に、ドリフト軸Yに非平行である補償電極の縁部近傍のみで非ゼロであり、したがって、イオン軌跡は、縁部に交差する都度、屈折を受ける。
図6Aでの実施形態の飛行時間収差は2つの要因に起因する:ミラーの集束及びイオンが補償電極間を移動している間のイオンの時間遅延。合算された場合、これらの2つの要因は振動時間T(Y)=T(0)×[L(Y)+S(Y)U/2V]/L(0)を与え、この振動時間はドリフト座標の関数である。有効戻り電位の成分に関して、
T(Y)−T(0)=T(0)[Φce(Y)−Φm(Y)]/2Vである。ミラー61、62の放物線形状及びそれに対応して補償電極65、66、67の放物線形状を定義する係数A及びBは、好ましくは、戻り力の成分をΦce(Y)=Φm(Y)に等しくするように特定の割合で選ばれ、それにより、振動当たりの時間T(Y)は有利には、ドリフト長全体に沿って一定であり、したがって、初期角度拡散に関する飛行時間収差をなくす。したがって、ミラー集束に起因する注入点から離れた位置での振動時間の低減は、電位を増大させて、イオンが補償電極間の領域を移動する間、イオンを減速させることによって完全に補償される。この実施形態では、有効電位の両成分は、イオンビームを注入点に戻す戻り力に等しく寄与する。
図6A及び図6Bの実施形態は、有効戻り電位成分を表す多項式
Φm=(Vsin2θ)φm及びΦce=(Vsin2θ)φce
の導入によって一般化することができ、式中、φm=m1y+m22及びφce=c0+c1y+c22+c33+c44は、無次元正規化ドリフト座標
Figure 0006236016
の無次元関数であり、
Figure 0006236016
は、平均加速電圧V及び平均注入角θを有するイオンの指定ドリフト侵入深度である。したがって、係数の和m1+m2+c1+c2+c3+c4は、定義上、1に等しい。条件φm(y0)+φce(y0)−c0=sin2 (θ+Δθ)/sin2 θ
によって定義されるイオンの入射角θ+Δθの関数であるドリフト方向Y=Y0においてターン点に達するイオンを考える。式中、
Figure 0006236016
は正規化ターン点座標である。このイオンが注入点Y=0に戻るためにかかる戻り時間は、積分
Figure 0006236016
に比例し、一方、所与の正規化ターン点座標y0を有するイオンが、ミラー間の指定数の振動後に検出器の平面X=0に衝突する瞬間の飛行時間オフセットは、積分
Figure 0006236016
に比例する。
したがって、σ(1)からの関数σ(y0)の逸脱が、注入角に関する飛行時間収差を決める。
係数m及びcの値は以下の条件から見つけられるべきである:(1)積分σはy0=1の近傍で略一定(必ずしも0である必要はない)であり、これは、間隔θ±δθ/2で注入角への低飛行時間依存性に対応し、(2)積分τは消失微分τ’(1)を有し、検出器でのイオンの少なくとも一次空間集束を保証する。放物線形ミラーと、補物線形保証電極とを有する図6Aに概略的に表される実施形態は、表1の1列目にあるような係数m及びcの値に対応する。有効戻り電位は二次式であるため、τ(y0)≡1であり、イオンビームは理想的には、検出器で空間的に集束される。同時に、σ(y0)≡0であり、これは注入角に関する飛行時間収差の完全な補償に対応する。代替の実施形態は、ミラー製造実現可能性のために、これらの理想的な属性を損なうおそれがある。ドリフト方向に沿って細長く、小さな集束角Ωで互いに向かって傾斜する直線ミラーのみを備える好ましい実施形態は、特定の場合であり、直線ミラーは湾曲ミラー(さらには円弧)よりも容易に製造される。直線ミラーを有する実施形態は、有効戻り力のΦm成分からの線形独立性を特徴とし、したがって、係数m1>0且つm2=0である。湾曲ミラーは、例えば、図6C及び図6Dに示されるように非対称であることができ、一方のミラー62は直線であり(図6C)、又は両方のミラーが同じ方向に湾曲し得る(図6D)。しかし、両事例で、遠位端部でのミラー間の隔たりは、注入器63及び検出器64に隣接する端部でのミラー間の隔たりよりも小さい。これらの例は、本発明と併せて利用し得る可能なミラー構成のうちのいくつかにすぎない。
図7Aは、本発明の一実施形態である多重反射質量分析計の概略図であり、この分析計は、ドリフト方向に沿って細長く、小さな角度Ωで互いに向けて傾斜する対向直線イオン光学ミラー71、72を備える。係数m及びcは、表1の2列目に提示されるようなものである。m1=−c1であるため、有効総合戻り電位Φ=Φm+Φceの線形部はゼロであり、Φはドリフト座標の二次関数である(c0から生じる非重要定数を除き)。したがって、注入器73から発せられるイオンビーム70の厳密な空間集束が検出器74で行われる。係数c0の値は、π2/64よりも大きな任意の正の値であり得、それにより、正バイアスされる(正電荷イオンの場合)補償電極75の幅関数S(Y)を真に、ドリフト長に沿って正にする。バイアス補償電極75の最も狭い部分は、イオン注入点から距離
Figure 0006236016
の位置に配置される。2対の非バイアス補償電極76及び77は、電極75の形状と相補的な形状を有し、バイアス補償電極75からの電場を終了させるように機能する。
Figure 0006236016
図7Bは、図7Aに示される分析計と同様の多重反射質量分析計の概略図であり、同様の構成要素は同様の識別子を有するが、バイアス補償電極75に負のオフセットU<0を有する(正電荷イオンの場合)。係数c0<π/4−1の選択により、ドリフト長全体に沿って無次元関数φce(y)<0になり、それにより、電極幅S(Y)は真に正である。この実施形態では、バイアス補償電極75は凹放物線形状を有し、幅の最も広い部分は、イオン注入点から距離
Figure 0006236016
の位置に配置される。
ミラー集束角の値は、公式
Figure 0006236016
を用いて係数m1=π/4を通して表される。ミラー間の有効距離L(0)がドリフト距離
Figure 0006236016
と同程度であり、注入角θ=50mradである場合、ミラー集束角はΩ≒1mrad<<θとして推定することができる。したがって、図7A及び図7B、図9、図11A、図11B、図13、並びに図15は、一定の縮尺ではなく、ミラー集束角及び他の特徴を示す。
図7Cは、図7Aに示される分析計と同様の多重反射質量分析計の概略図であり、同様の構成要素は同様の識別子を有するが、ゼロ集束角、すなわちΩ=0を有する。これは、ドリフト方向(Y)に沿って概して細長い2つの対向イオン光学ミラーを備え、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、ミラー間に空間を有し、X方向はYに直交し、ミラーは、ドリフト方向においてミラー長の全体に沿って、X方向において互いから一定距離にある、質量分析計の一例である。この実施形態では、対向ミラーは直線であり、互いに平行するように配置される。図6Aに関連して既に述べた補償電極と同様の補償電極が、ミラー間の空間に隣接してドリフト方向に沿って延び、各電極は、X−Y平面に略平行する表面を有し、対向ミラー間に延びる空間の両側に配置され、補償電極は、使用中、ドリフト長に沿った距離の関数として、X方向において異なる程度を有する電位オフセットを生成するように配置され、バイアスされる。この実施形態での係数c2=1並びに他の係数m及びcは消失する。バイアス補償電極は、総合有効戻り電位Φ(Y)=Φce(Y)の二次分布を生み出し、したがって、注入器73から発せられるイオンビーム70の厳密な空間集束は検出器74で行われる。係数c0の値は任意の正の値とし得る。バイアス電極75の形状と相補的な形状を有する、電極76及び77と同様の追加の2対の非バイアス補償電極は、補償電極75からの電場を終了させるように機能する。この実施形態では、補償電極75は、ドリフト方向での等時性イオン反射を実施ように電気的にバイアスされるが、注入角に関する飛行時間収差は補償されない。
同様にして、図7Bに示される分析計と同様の多重反射質量分析計を形成し得るが、ここでも、ゼロ集束角、すなわちΩ=0を有する。この実施形態では、バイアス補償電極は凸放物線形状を有し、負のオフセットU<0が印加されて、ドリフト方向での等時性イオン反射を実施する。
図6A及び図7A〜図7Cの実施形態は、検出器での理想的な空間集束を有し、これは、τ(y0)=constであり、したがって、ドリフト方向での戻り時間が注入角から完全に独立することを意味する。しかし、図7A及び図7Bの線形に細長いミラーを有する実施形態は、飛行時間収差の一次補償しか提供しない。図8は、正規化飛行時間オフセットσ(y0)と、戻り点の正規化座標との関係を示し、この関係は図7A及び図7Bの実施形態と同じである。σ=0.5、σ’=0での点y0=1でのこの関数の最小は、注入角θに関する飛行時間収差の一次補償のみを実現し、その間、二次導関数σ’’(1)>0、これは飛行時間拡散をδθ2に比例させる。
しかし、飛行時間収差のよりよい収差を達成するため、すなわち、線形に細長いミラーの場合であっても、y0=1の近傍で積分σ(y0)を可能な限り一定にするために、理想的な空間集束が損なわれることがある。図9の一実施形態は、ドリフト方向に細長く、互いに向けて傾斜する2つの直線イオンミラー71、72と、イオン注入器73と、イオン検出器74と、3対の複雑な形状の補償電極95、96、97とを備える。表1の4列目に与えられる係数c0〜c4は、図10に示されるように、ドリフト長全体に沿って負である四次多項式φceを定義する。バイアス補償電極95及び96の幅の和は−φceに比例し、これらの電極は負にバイアスされる(正電荷イオンの場合)。したがって、図9の実施形態は、ミラー71及び72に隣接して配置される2つの部分95及び96に分離されるバイアス補償電極を備え、有利には、イオン注入器73、イオン検出器74、及びミラー71と72との間に配置することができる他の要素により多くの空間を残す。補償電極95及び96の個々の幅は、いくつかの実施形態では、互いに異なってもよく、又は図9の実施形態でのように等しくてもよい。電極95、96の幅の最も広い部分は、イオン注入点から約4.75×Ymの距離に配置される。補償電極97は、電極95、96の形状と相補的な形状を有し、バイアスされない。
図10は、図9に示される実施形態での有効戻り電位の無次元成分を示す。φm(y)の分布(トレース1)は、正規化ドリフト座標の線形関数であり、直線傾斜ミラーの作用に対応する。φsの分布(トレース2)は、ドリフト長全体に沿って負であり、図9に示される負にバイアスされた補償電極95、96を用いて実現することができる。図11のトレース3は、yの関数としての上記成分の和φm+φsである。有効戻り電位が、ドリフト全長の最初の約1/3を移動する間、イオンをドリフト方向において加速し、その後でのみ、減速を開始することに注目すべきである。有効戻り電位分布は、トレース3に比例し、ドリフト方向での正規化ターン点座標y0での戻り時間、それに対応して注入角からの一次独立を保証する。これは、トレース4として示される関数τ(y0)の消失一次導関数τ’(1)=0に対応する。注入角への戻り時間の厳密な独立性が必須ではないことに留意されたい。満たすべき条件は、イオンビームが、注入点と、イオンビームが、図9のミラー71で最初に反射された後に平面X=0に戻る点との距離未満である、検出器の一部で集束されることである。この長さはL(0)sinθとして推定され、したがって、空間集束の非理想性は、注入角θに下限を課し、それに対応して、反射数に上限を課す。最終的に、反射数は、図9の実施形態の相対入射角拡散δθ/θ=20%の場合、62を超えるべきではなく、これはかなり有利である。振動の最大数は、相対注入角拡散の低減に伴って増大し得る。検出器への妥協された空間集束により、図9の実施形態での飛行時間収差をよりよく補償することができる。図10のトレース5及び6は、間隔0.9≦y0≦1.1で広いプラトーを明らかにする関数σ(y0)を示し、これは、少なくともδθ/θ=20%の相対注入角拡散の場合、飛行時間収差の略完全な補償を提供する。
ドリフト長
Figure 0006236016
及び注入角θは、イオンが発端点Y=0にドリフトして戻る前に、指定された完全な振動数
Figure 0006236016
(完全な各振動は、対向ミラーでの2つの反射を含む)を定義するように選ばれるべきである。図6A、図7A、図7Bに示される実施形態では、係数τ(1)=1であり、図9の実施形態では、τ(1)=0.783(図10のトレース4の最小に対応する)である。完全な振動数Kは、好ましくは整数である。Kを増大させ、それに対応して、有効総合飛行長を増大させるためには、基準入射角θを可能な限り小さくし、ドリフト長ymを可能な限り長くすべきである。比率δθ/θを十分に小さく(例えば、20%未満)保つために、θの値は実際には、初期イオンビーム角度拡散
Figure 0006236016
によって制限され、第1の半反射と第2の半反射でのイオン軌跡間の最小の隔たりL(0)sinθは、イオン源及び検出器を物理的に適応する必要がある。ドリフト長Ymは、実際には、真空チャンバ寸法によって制限され、真空チャンバ寸法は、好ましくは、X方向及びY方向の両方で1m未満であり、真空チャンバ及びポンプ構成要素のコストを低減する。
図11A及び図11Bは、図9に示される実施形態の好ましい注入及び検出方法を示す。図11Bは、図11Aの実施形態の入射領域のみを示す。図11A及び図11Bの実施形態は、ミラー71、72と、補償電極対95、96、97とを含む、図9の実施形態の要素を備える。同様の要素は同様の識別子を有する。この実施形態は、RF蓄積多極子111と、偏向器114と、イオン検出器117とを更に備える。イオンは、イオンガイド113(図11Aに図示せず)から図11Bの平面において、蓄積多極子111に入り、多極子111に記憶され、それと同時に、多極子111内に含まれる浴ガス(好ましくは窒素)との衝突により余剰エネルギーを失う(熱運動化される)。十分な数のイオンが蓄積された後、RFは、国際公開第2008/081334号パンフレットに記載のようにオフに切り替えられ、双極子抽出電圧が、蓄積多極子の全て又はいくつかの電極に印加され、イオン112をミラー72に向けて噴射する。例えば、電極111−1は正にパルス化され、且つ/又は電極111−2は負にパルス化される。噴射されると、イオンは、好ましくは5kV〜30kVの範囲の加速電圧Vによって加速する。
代替的には、米国特許第5117107号明細書(Guilhaus及びDawson、1992年)に記載のように、直交イオン加速器を使用して、イオンビームを質量分析計に注入することができる。
イオン束112は、ミラー72での更なる反射を受け(すなわち、ミラー71、72間の非整数の完全振動数を受け)、これにより、有利には、蓄積多極子111へのより多くの空間が可能である。レンズ系(図示せず)を使用して、蓄積多極子の放射と質量分析計の受け入れとを結び付ける。ダイアフラム115は、好ましくは、質量分析計への注入前且つ検出前に、イオンビームを整形する。ドリフト方向での初期イオン拡散に関する低飛行時間収差に起因して、長い蓄積多極子111からのイオン抽出が可能であり、これにより、有利には、空間電荷効果が低減する。
蓄積多極子111の長軸は、質量分析計の平面にあるが、ドリフト軸Yに非平行であることができ、好ましくは、この軸と角度θ/2をなす。蓄積多極子111から噴射された後、加速されると、イオンの略平行ビームが偏向器114に入り、偏向器114は軌跡114を更なる角度θ/2だけターンさせ、指定注入角θ(好ましくは10mrad〜50mrad)をなす。偏向器114は、任意の既知の手段により、例えば、図11Bに示されるように、一対の平行電極114−1及び114−2として実施し得、電極は、分析計の電位の両側で等しくバイアスされる電位を有する双極子電圧でバイアスされる、。この注入方式は、有利には、蓄積多極子111の異なる部分から発せられるイオン間の飛行時間差を補償する。イオン112−1は、同じ質量及び電荷を有するイオン112−2よりも、ミラー72の近傍の蓄積多極子から、噴射中に現れ、したがって、イオン112−1は、両グループのイオンが偏向器114に入る前、イオン112−2の先を伝搬する。偏向器内部で、イオン112−1は、正にバイアスされた電極114−1の電場によって減速する。逆に、イオン112−2は、負にバイアスされた電極114−2の近傍の偏向器114に入り、したがって、偏向器をより高速で通過する。その結果、両グループのイオンはミラー72に略同時に入る。このイオン注入方式は、従来技術の質量分析計と共に利用することができ、細長い対向ミラー構成に特に適する。このイオン注入方式は、ミラー入射角Ωに依存せず、また補償電極の存在にも依存しないため、本発明及び従来技術の平行ミラー構成と併用し得る。
イオンビームがミラー71、72の遠位端部に近づくにつれ、X−Y平面でのビームの傾斜角は、符号がターン点(図示せず)で変わるまで徐々に小さくなり、イオンビームは、検出器117に向かう戻り路を開始する。Y寸法でのイオンビーム幅は、ターン点近傍で最大に達し、異なる数の振動を経たイオンの軌跡は重複し、それにより、空間電荷効果を平均に近付けるのに役立つ。イオン116は、ミーら71と72との間での指定された整数分の完全な振動後、検出器117に戻る。必要な場合、ダイアフラム115を使用して、Yでのビームのサイズを制限し得る。検出器117の高感度表面は、好ましくは、ドリフト軸Yに平行するドリフト方向において細長い。マイクロチャネル又はマイクロボールプレート並びに補助電子乗算器を検出に使用することができる。加えて、既知のように、高質量イオンの検出効率を高めるために、検出前に事後加速(好ましくは5kV〜15kV)を実施することができる。
補償電極95、96は、+/−Z方向(イオン運動平面の上下)でX−Y平面から変位される2つの平行電極を含む。補償電極95、96には、電圧オフセットU(好ましくは約Vsin2θの大きさ)が提供され、補償電極95、96は、図9の実施形態に関連して説明されたように、係数c0、・・・、c4を有する四次多項式によって定義される形状を有する。補償電極95、96、97は、誘電体によって支持されるレーザ切断金属板として、又は適切な形状の電極を有するプリント回路基板(PCB)として実施することができる。プリント回路基板の場合には、2つ以上の電圧を使用することができる。好ましくは、補償電極95−1、96−1、97−1は、イオンが補償電極間を通る際のイオンビームの最大Z高さの数倍だけ、補償電極95−2、96−2、97−2から隔てられる。例えば、補償電極は20mmだけ隔てられ、Z寸法での最大ビーム高さは0.7mmである。これは、ビーム高さにわたる補償電極によって生成される電場の変動を低減する。
図11A及び図11Bの実施形態は数値的にシミュレートされた。質量/電荷比率m/z=200a.m.u.のイオンが蓄積多極子111に蓄積され、10mmの軸方向長さに沿って蓄積される。熱運動化されると、イオンは、電場E0≒1500V/mmで多極子軸に直交して抽出され、加速電圧V=5kVで加速される。加速されると、イオンは、完全に蓄積多極子での初期熱速度拡散に起因する注入角拡散δθ≒0.01radでミラー72に入る。主軌跡又は平均軌跡は、ドリフト方向において
Figure 0006236016
を移動し、それからターンして、イオン注入器の領域に配置される検出器に向けて移動し、その間、K=25完全振動が対向ミラー間で実行される。ドリフト方向でのイオンビーム幅は、初期幅約10mmから、ターン点近傍の最長約75mmまで増大し、それにより、ビーム内の空間電荷密度を大幅に低減する。検出器117に向かう後方ドリフト中、イオンビームは略その初期幅まで圧縮される。
最適な入射角は
Figure 0006236016
であり、式中、L(0)≒0.64mは、イオン注入器の近傍での対向ミラー間の有効距離である。この角度の半分は、蓄積多極子111の傾斜から生じ、次の半分は検出器112による偏向から生じる。有効飛行長は約(2K+1)L(0)≒32.6m(図11Bに示される追加の1反射を含む)であり、これは、約Ttotal=470μs間、イオンによって質量/電荷比率m/z=200a.m.u.に変換される。異なる質量/電荷比率を有するイオンの飛行時間分離が、飛行長中に生じ、検出器からの信号は、時間の関数として、解析されたイオンの質量スペクトルについての情報を搬送する。
上記のパラメータに関して、最適なミラー傾斜角は
Figure 0006236016
であり、式中、表1の4列目に従って、m1=1.211である。そのような傾斜角は、ドリフト領域の遠位端部における
Figure 0006236016
の量によるミラー集束に対応し、補償電極がない場合、δθ/θ≒20%だけ隔てられた注入角を有する2つの軌跡間の相対飛行差は、(δθ/θ)×ΔL/L(0)≒3×10-4として推定することができ、値0.5/3×10-4≒1600に制限される対応する分解力を有する。
バイアス補償電極95及び96の全幅は、四次多項式S(y)=W[c1y+c22+c33+c44]として本発明に従って選ばれ、式中、W=0.18mであり、
Figure 0006236016
であり、係数cは表1の4列目にあるようなものである。バイアス補償電極95及び96の最適な電圧オフセットは、U=−L0Vtan2θ/W=−37.8Vである。バイアス補償電極が存在する場合、振動の周期は、ドリフト長に沿って一定ではなく、約18.495us〜18.465μsの間で変化する。しかし、適宜選ばれたプロファイルの補償電極は、図11Cに示されるように、一次飛行収差∂TK/∂θを、全てのK=25の振動が完了した後に消失させる(ここでは、TKは、k番目の振動での平面X=0での粒子の到着時間である)。また、高次の収差ほど、小さくなる程度は大きい。
3つの初期座標及び3つの初期速度成分に関する完全な組の三次収差を計算して、質量分析計の分解力を推定した。検出器117に衝突する際の同じ質量及び電荷のイオンの飛行時間拡散δTは3つの主要要因によるものであり、これらのシミュレーション値は、抽出場E0の関数として、図11Dに別個に提示されている。トレース1は、ターン時間拡散を示し、この拡散は、多極子内の蓄積イオンの熱速度拡散に比例するとともに、E0に反比例する。トレース2は、ミラー収差からの寄与を示し、これは、振動数に比例し、イオンビーム内のエネルギー拡散と共に線形に成長し、この拡散はE0に比例する。トレース3は、蓄積多極子に沿った注入角拡散及び位置拡散に関し、本発明では最小化を受けける飛行時間収差(E0独立)の寄与を示す。上記寄与の二乗和の平方根として定義される総飛行時間拡散δTは、トレース4で示される。E0の関数として、総飛行時間拡散は、抽出場E0≒1500V/mmの最適値で最小δTmin≒1.3nsを有する。したがって、質量分析計の分解力は、Ttotal/2δTmin≒180000として推定することができる。したがって、バイアス補償電極は、分析計の質量分解力を約100倍増大させる。
蓄積多極子111及び検出器117は両方とも、ミラーの対称平面(Z=0)から隔てることができ、イオンは、既知の偏向手段を使用してこの平面内外に向けることができる。図12A及び図12Bは、図11A及び図11Bの実施形態のイオン注入及び検出の代替の変形であり、同様の識別子は同様の要素を示す。RF蓄積多極子111と、偏向器114とを備えるイオン注入手段は、解析器のX−Y平面に対して傾斜したイオン束122を生成する。双極子電圧でバイアスされる2つの電極124−1及び124−2を備える偏向器124は、質量分析計の平面において下流に位置決めされ、イオン122をミラー71に向けて偏向させる。既知の飛行時間収差が、偏向時に導入される。実際に、イオン121−1は、イオン122−2よりも長い経路を経験し、正にバイアスされた偏向電極124−1の近傍において更に減速させる。したがって、イオン122−1は、イオン122−2に関して特定の時間遅延を持ってミラー71に入り、注入されたイオンの角度拡散は状況を更に複雑にする。しかし、ミラー71、72の有利な属性は、各反射後、イオンビームを平行から点(X−Z平面での)に集束し、図4に示される2つの反射を含む完全な各反射後、座標Z及び速度成分
Figure 0006236016
の符号を逆の符号に変更する。
図12Aは、ミラー71、72間の完全振動が奇数の場合の注入/検出方法を示す。検出器124に戻ったときのZ及び
Figure 0006236016
の値は、注入中の値とは逆であり、偏向器124は逆の飛行時間シフトを、束を構成する各イオンに導入する。したがって、蓄積多極子111から噴射された、同じ質量及び電荷の全てのイオンは、検出器117にも略同時に到着する。
図12Bは、ミラー71、72間の完全振動が偶数の場合の注入/検出構成を示す。追加の偏向器125が、偏向器124に隣接する質量分析計のX−Y平面に導入される。偏向器125は、好ましくは偏向器124と同一であるが、逆の極性にバイアスされた電極を有し、イオン軌跡123を、X−Z平面での傾斜角と等しいが逆の角度で傾斜させる。完全振動数が偶数である場合、偏向器125に戻ったときのZ及び
Figure 0006236016
の値は、注入時の偏向器124の場合と略同じであり、それにより、偏向器125は偏向器124によって導入される飛行時間収差を補償する。偏向器124及び125が互いの近傍に配置されるほど、収差の補償はよくなる。代替的には、単一の偏向器のみが使用される場合、検出器117に向かうイオンビームの傾斜は、偏向器124によって達成されるが、電極124−1及び124−1の電圧バイアスは、対象となる質量範囲の全てのイオンが注入され、偏向器124を最初に通過した後間もなく、正の極性に切り替えられる。図12A及び図12Bでの注入/検出変動は、有利には、RF蓄積多極子111及び検出器117に対してより多くの空間を可能にし、この空間は、ミラー71、72を備える電極によって制限されない。
図12A及び図12Bは、注入及び検出を有利には、質量分析計によって示されるX−Y平面から出てどのように配置し得るかを示す。+X及び−Xの傾斜角の両方で、本発明の多重反射質量分析計にビームを向けるために、これら及び他の配置を利用し得る。イオンは、+X及び−Xの傾斜角の両方で、本発明の質量分析計の全ての実施形態に注入して、質量分析計を略同時に進み、それにより、有利には、分析計のスループットを2倍にし得る。この手法は、従来技術による多重反射質量分析計と共に利用することもできる。
図12A及び図12Bに概略的に示されるような本発明の実施形態は、続くイオン処理手段と併用し得る。検出器117に進む代わりに、イオンを(第1の)多重反射質量分析計から抽出するか、又は偏向させて、断片セルに進めることができ、例えば、断片セルでの断片化後、イオンを別の質量分析計に向けるか、又は同じ若しくは異なるイオン経路上の第1の多重反射質量分析計に戻すことができる。図17は、この異なるイオン経路上の第1の多重反射質量分析計に戻す構成の一例であり、更に後述する。
図13は、静電トラップの形態の本発明の好ましい一実施形態を示す概略図である。静電トラップは、2つの質量分析計130−1及び130−2を備える2つの多重反射質量分析計を備え、各質量分析計は、図9に関連して既に述べた質量分析計と同様であり、同様の構成要素には同様の識別子が与えられている。代替の実施形態では、質量分析計130−1及び130−2は異なり得るが、それぞれ略等しい注入角θを有する。質量分析計130−1及び130−2は、好ましくは、図13に示されるように同一であり、各ドリフト方向が共線形であるように、X軸を中心として端から端まで対称に配置され、多重反射質量分析計はそれにより、容積を画定し、その容積内で、使用中、イオンは、ドリフト方向及びイオン飛行方向の両方で等時性を有して閉路を辿る。静電トラップは、4つのイオン光学ミラー71、72と、2組の補償電極95、96、97とを備える。イオン注入器は、蓄積多極子111及び補償偏向器114を備え、好ましくは、偏向器124により、図12Aに関連して説明されるように静電トラップ内にイオンパルスを注入する。偏向器124は、質量分析計の対称面に配置される。代替的には、イオンビームは、解析器130−1、130−2の平面において注入され、その間、ミラー72を備える電極はゼロ電圧オフセットでバイアスされ、ミラー72は、対象となる質量範囲内の全てのイオンが注入された後、オンに切り替えられる。
双極子電圧がまず、偏向器124を備える電極対に印加され、最高質量イオンが対称面に偏向された後、且つ最軽量イオンが指定数の振動をミラー71−1及び72−1間で行い、偏向器124に戻る前にオフに切り替えられる。イオンビームは、質量分析計130−2に進み、ミラー71−2及び72−2間での指定された数(好ましくは奇数)の振動後に質量分析計130−1に戻る。したがって、イオン軌跡は空間的に近く、イオンは、質量分析計130−1、130−2のそれぞれ間で振動することができ、その間、双極子電圧は偏向器124に印加されない。イオン運動中、単極子電圧オフセットを電極124に印加して、イオンビームを集束させ、その安定性を保持することもできる。
4対のストライプ形電極131、132が、ミラー間のイオンの通過毎に誘導電流信号の読み取りに使用される。各対の電極は、Z方向において対称に離間され、補償電極97の平面又はイオンビームの近傍に配置することができる。電極対131は、差動増幅器(図示せず)の直接入力に接続され、電極対132は、差動増幅器の反転入力に接続され、したがって、差動誘導電流信号を提供し、これは有利には、雑音を低減する。質量スペクトルを得るために、誘導電流信号は、J.B.Greenwoodらにより、Rev.Sci.Instr.82、043103(2011)において記載のように、フーリエ変換アルゴリズム又は専用コームサンプリングアルゴリズムを使用して既知のように処理される。
時間が経過した後、双極子電圧を電極124に印加して、イオンが静電トラップから偏向し、検出器117に衝突するようにイオンを偏向させ得、検出器は、例えば、マイクロチャネル若しくはマイクロボールプレートであり得るか、又は補助電子乗算器であり得る。いずれか一方の検出方法又は両方の検出方法(電極131、132からの遊動電流信号及びイオンが検出器117に衝突することから生成されるイオン信号)は、有利には、イオンの同じバッチに利用することができる。
本発明の多重反射質量分析計は、有利には、複合質量分析計を形成するように構成し得る。図14は、各質量分析計のX−Y平面が平行であり、垂直方向Zにおいて互いから変位されるように位置合わせされた、本発明の4つの多重反射質量分析計を備える複合質量分析計の一実施形態の断面を示す概略図である。各多重反射質量分析計は、図9に関連して説明したものと同様のタイプのものであり、同様の構成要素は同様の識別子を有する。直線ミラー対71、72は、図面の平面に直交するドリフト方向Yにおいて細長く、角度Ω(図示せず)で集束し、それにより、ミラーの最近傍端部は、蓄積多極子111及びイオン検出器117からの遠位端部である。ミラー71−1、72−1、及び71−3、72−3はYの正の方向において細長く、一方、ミラー71−2、72−2、及び71−4、72−4はYの負の方向に細長い。したがって、1つの質量分析計から角度θで出現するイオンは、X−Y平面での偏向なしで次の質量分析計に入ることができる。各質量分析計は、明確にするために示されていない1組の補償電極も含む。
イオン141は、RF蓄積多極子111から注入され、飛行時間収差は、図11の実施形態に関連して説明したように、偏向器114を用いて補正される。イオン141は、平行偏向器板142−1間を通過し、平行偏向器板には双極子電圧が供給されて、イオンを、X−Y平面に平行する第1の多重反射質量分析計内に、X−Y平面での適切なイオン注入角θで偏向させる。イオンはミラー71−1から第2のミラー72−1に反射され、図9の実施形態に関連して説明したように、+Y方向においてドリフト長に沿って進んで戻る。いくつかの振動を第1の質量分析計で行った後、イオンは平行平面電極143−1及び142−2の間を通過し、平面電極の両方に、双極子電圧が供給され、イオンを第2の分析計に向けて偏向させ、X−Y平面での適切な注入角でミラー71−2に入射させる。イオンは、Yの負の値に向かうドリフト方向にドリフトして戻る間、ミラー71−2及び72−2の間でいくつかの振動を行う。イオンは同様にして、ある多重反射質量分析計から次の分析計に渡り、最後の分析計から出て、検出器117に衝突する。有利には、この実施形態では、ミラー電極及び補償電極は、分析計間で共有し得る。補償電極は、代替の実施形態では、分析計間で供給することもできる。
各質量分析計でのミラー71と72との間での完全な振動の数は、好ましくは奇数であり、それにより、各イオンの座標Z及び速度成分
Figure 0006236016
の符号は、一対の偏向器143及び142によってある質量分析計から別の質量分析計への2つの結果としての遷移間で逆に変化する。したがって、ある遷移によって導入される飛行時間収差は、次の遷移の過程で略補正される。
異なる数の多重反射質量分析計をこのようにして上下に積み重ねる得ることが理解されるだろう。本発明のいくつか又は全ての多重反射質量分析計が同じX−Y平面に配置され、イオン光学手段がイオンビームをある分析計から別の分析計に偏向させる代替の構成を考えることもできる。全てのそのような複合質量分析計は、容積の増大がそれほど大きくなく、飛行経路長を拡張するという利点を有する。
図15は、本発明の質量分析計と、RF蓄積多極子111を備えるイオン注入器と、質量分析計の上流にあるビーム偏向器114、124と、アルパルスイオンゲート152、質量分析計155の下流にある高エネルギー衝突セル153及び飛行時間解析器と、イオン検出器156とを備える解析システムを概略的に示す。この実施形態では、図9に関連して説明される多重反射質量分析計が、例えば、SatohらによりJ.Am.Soc.Mass Spectrom.2007、18、1318において記載されるようなタンデム質量分析計(MS/MS)に利用される。図9と同様の構成要素には同様の識別子が与えられている。この実施形態は、図12Aに関連して説明した図面の平面に直交する方向において質量分析計の平面からシフトされたイオン蓄積多極子111と、図11A、図11Bに関連して説明したように動作する補正偏向器114とを備え、同様の構成要素は同様の識別子を有する。多重反射質量分析計のミラー71、72間で指定数の振動を行った後、質量分離されたイオン束151は質量分析計を出て、短い時間間隔だけ開いて、狭い(好ましくは単一同位体)質量範囲を選択するパルスイオンゲート152に入る。選択されたイオン(前駆体イオン)は、ガス充填高エネルギー衝突電離セル153内の中性ガス(好ましくはヘリウム)の分子との衝突で断片化される。断片イオン154は、等時性イオンミラー155(好ましくはグリッドレス)及びイオン検出器156を含む補助飛行時間解析器において解析される。主質量解析器の改良された空間電荷容量により、単一同位体質量選択モードであっても、十分な数の前駆体イオンを断片化させ、更に解析することが可能である。下流質量分析計155を本発明により実施することもでき、又はイオンを同じ主質量分析計に再び向きを変更して、後述するように断面を解析することができる。
調整可能な飛行長というオプションにより、有利には、質量解析のより高い反復率が可能であるが、質量分解力が犠牲になる。しかし、本発明の質量分析計では、先に設定した収差補償条件に違反せずに、補償電極バイアス電圧及び/又は注入角の単純な調整によって振動数Kを変更することはできない。しかし、収差補償のいくらかの損失が許容可能な場合、上記手段によって限られた範囲にわたり振動数を変更し得る。大体の収差補償に必要な主幾何学的パラメータ
Figure 0006236016

Figure 0006236016
との間の依存性に基づいて、有効ミラー分離L(0)及び傾斜Ωを保持しての振動数Kの変更は必然的に、以下の割合での注入角θ及び平均ドリフト長
Figure 0006236016
の変更を伴う:
Figure 0006236016
この指定された割合での注入角の変更は偏向器161によって電気的に実現され、変更161は、様々な既知の手段によって実施され、使用中、双極子電圧を用いて電気的にバイアスされて、ミラー71と72との間での指定数の反射前後に、イオンを等しい角度Δθ=θ0−θ1だけ偏向させる、図16の2つの平行電極によって概略的に表される。しかし、必然的に補償電極の形状をドリフト方向においてスケーリングしなければならないため、指定された割合での平均ドリフト長の変更は、上述した全ての実施形態では電気手段のみによっては実施することができない。図16に示されるように、スプリットジオメトリを有する補償電極をこのために、本発明の全ての実施形態において使用することができる。図9にも示される図16のイオン光学要素は、同様の識別子を有する。バイアス補償電極対95、96は、それぞれ95−1、95−2、及び96−1、96−2に対応する2つのセクションに分割され、それらの間に分離ギャップがある。電極95−1、96−1の形状は対応する全体の電極95、96の形状と同様であるが、方向Yにおいて割合
Figure 0006236016
で、且つ可能な場合には、直交方向Xにおいて同じ又は異なり割合でスケーリングされる。高質量分解モードでは、補償電極95−1、95−2は等しくバイアスされ、補償電極96−1、96−2も等しくバイアスされて、非スプリットバイアス補償電極によって生成される電位と略同様の電位を形成する。低分解モードでは、電極95−1及び96−1のみがバイアスされ、一方、電極95−2及び96−2は、非バイアス補償電極97と同じ電位に保持される。低減イオン経路162は、高分解モードの場合よりも、ミラー71と72との間に少数の振動を含む。偏向器161は、点線163で示されるようにミラーを迂回して、イオンビームをイオン源(図示せず)からイオン検出器(図示せず)に向けることもでき、このモードは自己診断に使用することができる。
上記に提示された全ての実施形態は、いわゆるMSnモードでの複数段階での質量解析に使用することもでき、このモードでは、前駆体が、イオンゲーティング装置によって選択され、断片化され、次に、対象となる断片が再び、任意選択的に選択され、プロセスが繰り返される。一例が図17に示され、ここでは、イオンは偏向器124によって経路から、減速器装置170、RFのみ衝突セル171、及び注入装置111への戻り路172に繋がる経路に偏向される。MSnモードでの動作は、米国特許第7,829,842号明細書に記載の方式に従う。エネルギー拡散の減速及び低減は、米国特許第7,858,929号明細書に記載のようにパルスで実施することができる。例えば、米国特許出願第2009166528号明細書に記載のように、複数の注入を衝突セルに繋げることができる。そして、注入装置への戻り路は、米国特許第7,829,850号明細書又は米国特許第7,952,070号明細書に記載のように、Y接合部172を含み得る。
逆の注入角度で分析計を通る2つの異なる飛行経路の使用については、図12A及び図12Bに関連して上述してある。これらの経路に加えて、Z方向において互いから変位された異なるイオンビーム経路を使用することもできる。図18は、分析計内の代替の飛行経路を示す本発明の多重反射質量分析計の概略図である。図18の分析計構成要素は、図12A及び図12Bに示されるものと同様であることができ、同様の構成要素は同様の識別子を有する。図18では、注入及び検出は、例えば、図12Aに示されるようなものとすることができ、複数の注入器及び検出器を使用し得る。並列注入経路181−1、181−2、181−3は、イオンを分析計に向け、分析計で異なるイオン注入経路に沿って向けられたイオンは、偏向器(図示せず)によって、経路185−1、185−2、185−3を辿るように偏向され得る。対向イオン光学ミラー71、72間での複数の反射後、イオンは、異なる検出器(図示せず)への異なる平行噴射経路187−1、187−2、187−3に噴射され得る。
図19は、図9と同様のマルチチャネル質量分析計の別の実施形態を示し、同様の構成要素は同様の識別子を有する。191−1、191−3、及び191−3として示される2つ以上の注入イオンビームが、ドリフト方向に沿って、互いに略平行する異なるオフセットで質量分析計に入る。ミラー71と72との間での同数の振動後、上記イオンビームは、矢印192−1、192−2、192−3で対応して示されるように、分析計から出る。出たイオンビームは重複せず、互いに略平行し、異なる検出器(図示せず)に向け得る。
図18及び図19の実施形態では、異なる電極は、互いに同様であってもよく、又はより好ましくは、異なるダイナミックレンジ性能を有し得る。高強度のイオンビームが、過負荷なく検出可能な、適する検出器に達するように、異なるイオンビームは、異なる検出器に向けることができる。互い違いになった検出時間により、ある検出器の利得を調整する別の検出器の出力が促進される。ダイアフラム又は他の手段を使用して、所望の数の反射を受けたイオンのみが分析計を出て、検出器に達することを保証し得る。異なる検出器の経路に配置される異なるサイズのダイアフラムを使用して、イオンビームの程度を制限し得る。
本発明の多重反射質量分析計は、イメージを保持し、同時イメージ又は分析計を通るイオンの飛行時間から独立した速度でラスタ化されるイメージに使用し得る。
本発明の全ての実施形態において、例えば、直交加速器、線形イオントラップ、線形イオントラップと直交加速器との組み合わせ、国際公開第2008/081334号パンフレットに記載のような外部蓄積トラップ等の様々な既知のイオン注入器を使用し得る。
上で提示された全ての実施形態は、超高分解能TOF機器としてのみならず、低コスト中間性能解析器として実施することもできる。例えば、イオンエネルギー、ひいては印加電圧が数キロボルトを超えない場合、ミラー及び/又は保証電極の全体組立体は、互いに平行するとともに、互いに面し、好ましくは平坦であり、FR4ガラス充填エポキシ又はセラミックで作られ、金属スペーサによって離間され、合釘によって位置合わせされるプリント表面が構成された一対のプリント回路基板(PCB)として実施することができる。PCBは、より弾性の高い材料(金属、ガラス、セラミック、ポリマー)に接着又は他の様式で固定し得、それにより、システムをより剛性にする。好ましくは、各PCB上の電極は、絶縁破壊に対して十分な分離を提供し、それと同時に、内部の誘電体をあまり露出しないレーザ切断溝によって画定される。電気接続は、イオンビームに面さず、抵抗分圧器又は電源全体を集積することもできる後面を介して実施される。
実際の実施では、ドリフト方向Yでのミラーの細長さは、設計の複雑性及びコストを低減するために最小化されるべきである。これは、既知の手段によって、例えば、無限に細長いミラーの電位分布を模倣した端部電極(好ましくは、最も近いイオン軌跡からZ方向においてミラーの高さの少なくとも2〜3倍の距離に配置される)又は端部PCBを使用してフリンジ電場によって達成することができる。前者の場合、電極は、ミラー電極と同じ電圧を使用することができ、適切な形状で、ミラー電極に取り付けられる平板として実施し得る。
特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される場合、文脈により別段のことが示される場合を除き、本明細書での用語の単数形は複数形を含むものとして解釈されるべきであり、逆も同様である。例えば、文脈により別段のことが示される場合を除き、特許請求の範囲を含め、本明細書での、「a」又は「an」等の単数形の言及は、は「1つ又は複数」を意味する。
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「備える」、「含む」、「有する」、及び「包含する」という言葉並びにそれらの用語の変形、例えば、「備えている」及び「含んでいる」等は、「〜を含むが、それ(ら)に限定されない」を意味し、他の構成要素の除外を意図しない(除外しない)。
なお本発明の範囲内にありながら、本発明の上記実施形態への変形を行うことができることが理解されるだろう。本明細書に開示される各特徴は、別段のことが示される場合を除き、同じ目的、均等な目的、又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置換し得る。したがって、別段のことが示される場合を除き、開示される各特徴は、一連の均等な特徴又は同様の特徴の単なる一例である。
本明細書において提供される全ての例又は例示的な言葉(「例えば」、「等」、「例として」、及び同様の言葉)の使用は、単に本発明をよりよく例示することを意図され、別段のことが請求される場合を除き、本発明の範囲への限定を示さない。本明細書での用語は、本発明の実施に重要であるものとして、特許請求されない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。

Claims (41)

  1. 2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、ミラー間に空間を有し、前記X方向はYに直交し、
    前記質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、前記対向するミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置され、
    前記補償電極は、前記ミラー間に延びる前記空間の少なくとも一部において、電位オフセットを生成するように構成され、使用中、電気的にバイアスされ、前記電位オフセットは、
    (i)ドリフト長に沿った距離の関数として変動し、且つ/又は
    (ii)ドリフト長に沿った距離の関数として、前記X方向において異なる程度を有し、
    前記補償電極は、使用中に、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供するように構成されている、多重反射質量分析計。
  2. 前記ドリフト方向において前記イオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器を更に備え、前記イオン注入器は、使用中、前記Y方向においてドリフト長に沿って進む間、前記対向ミラー間で振動するようイオンを注入するように構成される、請求項1に記載の多重反射質量分析計。
  3. 2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、ミラー間に空間を有し、前記X方向はYに直交し、
    前記質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、前記対向するミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置され、
    前記分析計は、前記ドリフト方向において前記イオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器を更に備え、前記イオン注入器は、使用中、複数回、イオンを前記ドリフト方向に概して直交して一方のミラーから他方のミラーに反射し、イオンが前記ドリフト方向Yに沿って進む間、前記イオンを各ミラー内でターンさせ、前記イオン光学ミラー間で振動するようイオンを注入するように構成され、
    前記補償電極は、使用中に、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供するように構成されており、
    前記多重反射質量分析計は、前記補償電極が、使用中、前記イオンが前記Y方向においてターンする後続点間の距離が、前記ドリフト方向に沿った前記イオンの前記運動の少なくとも一部中にYに伴って単調に変化するように電気的にバイアスされることを特徴とする、多重反射質量分析計。
  4. 2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計であって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、ミラー間に空間を有し、前記X方向はYに直交し、
    前記質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、前記対向するミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置され、前記補償電極は、使用中に電気的にバイアスされ、
    前記質量分析計は、前記ドリフト方向において前記イオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器を更に備え、前記イオン注入器は、使用中、イオンが前記Y方向においてドリフト長に沿って進む間、前記対向ミラー間で振動するよう前記イオンを注入するように構成され、
    前記補償電極は、使用中に、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供するように構成されており、
    前記多重反射質量分析計は、前記ミラー間のイオン振動の前記周期が、前記ドリフト長の全体に沿って実質的に一定ではないことを特徴とする、請求項1に記載の多重反射質量分析計。
  5. 両ミラーは、前記ドリフト方向に沿って線形に細長く、前記X方向において等距離だけ離間されて配置される、請求項2〜4のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  6. 両ミラーは、前記ドリフト方向に沿って湾曲し、間に等しいギャップを有するように配置される、請求項2〜4のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  7. 前記イオン振動の周期は、イオンが前記イオン注入器から離れて進むにつれて、前記ドリフト長の少なくとも一部に沿って低減する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  8. 前記イオンは、前記ドリフト長に沿って渡された後、ターンして、前記ドリフト長に沿って前記イオン注入器に戻って進む、請求項2〜7のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  9. 前記1つ又は複数の補償電極は、一対の補償電極を備え、前記一対の補償電極の各補償電極は、前記ミラー間の空間の両側に配置され、表面を有し、前記表面は、前記両端部間の中央領域よりも、前記ミラーの一端部又は両端部の近傍領域においてより大きな距離で各ミラーに向けて延びるように、X−Y平面において多項式プロファイルを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  10. 前記1つ又は複数の補償電極は、一対の補償電極を備え、前記一対の補償電極の各電極は、前記ミラー間の空間の両側に配置され、表面を有し、前記表面は、前記両端部間の前記中央領域よりも、前記ミラーの一端部又は両端部の前記近傍領域においてより小さい距離で各ミラーに向かって延びるように、前記X−Y平面において多項式プロファイルを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  11. 前記補償電極は、前記対向するミラー間に延びる前記空間内に少なくとも部分的に配置される複数の管又は区画を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  12. 前記1つ又は複数の補償電極は、使用中、前記ミラー間の空間の少なくとも一部において、ドリフト長に沿った距離の関数として変動する電位オフセットを生成するように電気的にバイアスされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  13. 前記イオン注入器に隣接する領域に配置される検出器を更に備える、請求項2〜12のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  14. 前記ミラーの間の前記空間に配置され、前記質量分析計内のイオンの位相空間容積に影響する1つ又は複数のレンズ又はダイアフラムを更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  15. イオンが一方の対向ミラーから他方のミラーに、前記イオン注入器から離れて前記ドリフト方向に沿ってドリフトしながら複数回反射して、前記質量分析計内で概してジグザグ経路を辿るように、使用中、イオン注入器は、前記ミラーの一端部から前記ミラー間の前記空間内に、前記X−Y平面においてある傾斜角でイオンを注入する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  16. 前記ドリフト方向に沿ったイオンの前記運動は、前記1つ又は複数の電気的にバイアスされる補償電極から生じる電場成分によって対抗される、請求項15に記載の多重反射質量分析計。
  17. 前記電場成分は、前記イオンの方向を逆にし、前記イオン注入器に向けて移動させるように、前記イオンに作用する、請求項16に記載の多重反射質量分析計。
  18. 前記イオンのうちの少なくともいくつかは、前記イオン注入器に隣接する領域に配置される検出器に衝突する、請求項17に記載の多重反射質量分析計。
  19. 前記検出器は、前記ドリフト方向Yに対して平行に配置される検出面を有する、請求項18に記載の多重反射質量分析計。
  20. 両ミラー及び/又は補償電極は、プリント表面が互いに平行するとともに、互いに面する状態で配置される一対のプリント回路基板として組み込まれる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  21. 請求項1〜20のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計を備える多重反射飛行時間質量分析計。
  22. 請求項1〜20のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計を2つ以上備える静電トラップ質量分析計。
  23. 各ドリフト方向が共線形であるように、X軸を中心として端から端まで対象なように配置される2つの多重反射質量分析計を備え、それにより、前記多重反射質量分析計は容積を画定し、前記容積内で、使用中、イオンは、前記ドリフト方向及びイオン飛行方向の両方で等時性を有する閉路を辿る、請求項22に記載の多重反射質量分析計。
  24. 各質量分析計のX−Y平面が平行し、垂直方向Zにおいて互いから任意選択的に変位されるように位置合わせされた、請求項1〜20のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計を2つ以上備える複合質量分析計であって、イオンを一方の多重反射質量分析計から他方の多重反射質量分析計に向けるイオン光学手段を更に備える、複合質量分析計。
  25. 請求項21又は24に記載の多重反射質量分析計と、前記質量分析計の上流にイオントラップ装置を備えるイオン注入器と、パルスイオンゲートと、前記質量分析計の下流にある高エネルギー衝突セル及び飛行時間解析器とを備える解析システム。
  26. 請求項21又は24に記載の多重反射質量分析計と、前記質量分析計の上流にある、イオントラップ装置を備えるイオン注入器と、パルスイオンゲートと、前記質量分析計の下流にある高エネルギー衝突セルとを備え、前記衝突セルは、使用中、イオンを前記衝突セルから前記イオントラップ装置に向けるように構成される、解析システム。
  27. 質量分析法であって、
    2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、前記X方向はYに直交し、前記質量分析計は、1つ又は複数の電気的にバイアスされる補償電極を更に備え、各電極は、前記対向ミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置される、ステップと、
    前記イオンが前記ドリフト方向Yに沿って進む間、前記イオンを各ミラー内でターンさせることにより、複数回、前記ドリフト方向に概して直交して一方のミラーから他方のミラーに前記イオンを反射させるステップであって、前記補償電極が、前記ミラー間に延びる空間の少なくとも一部において、電位オフセットを生成し前記補償電極が、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供するように、前記電位オフセットは、(i)ドリフト長に沿った距離の関数として変動し、且つ/又は(ii)ドリフト長に沿った距離の関数として、前記X方向において異なる程度を有する、ステップと、前記質量分析計を通過する間又は通過した後、前記イオンの少なくともいくつかを検出するステップと、
    を含む、質量分析法。
  28. 質量分析法であって、
    2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、前記X方向はYに直交し、前記質量分析計は、1つ又は複数の電気的にバイアスされる補償電極を更に備え、各電極は、前記対向ミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置される、ステップと、
    前記イオンが前記ドリフト方向Yに沿って進む間、前記イオンを各ミラー内でターンさせることにより、複数回、前記ドリフト方向に概して直交して一方のミラーから他方のミラーに前記イオンを反射させるステップであって、前記イオンがターンする前記Y方向での後続点間の距離が、前記ドリフト方向に沿って前記イオンの前記運動の少なくとも一部中にYに伴って単調に変化するように、前記補償電極が、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供する、ステップと、
    前記質量分析計を通過する間又は通過した後、前記イオンの少なくともいくつかを検出するステップと、
    を含む、質量分析法。
  29. 質量分析法であって、
    2つのイオン光学ミラーを備える多重反射質量分析計にイオンを注入するステップであって、各ミラーはドリフト方向(Y)に沿って概して細長く、各ミラーはX方向において他方のミラーに対向し、ミラー間に空間を有し、前記X方向はYに直交し、前記質量分析計は、1つ又は複数の補償電極を更に備え、各電極は、前記対向ミラー間に延びる前記空間内又は前記空間に隣接して配置される、ステップと、
    電気バイアスを前記ミラー及び前記補償電極に印加するステップであって、前記イオンは、前記イオンが、前記Y方向においてドリフト長に沿って進む間、前記対向ミラー間で振動するように、ドリフト方向において前記イオン光学ミラーの一端部に配置されるイオン注入器から注入され、前記ミラー間のイオン振動の前記周期が、前記ドリフト長の全体に沿って実質的に一定ではないように、前記補償電極が、前記ドリフト方向Yに沿ったイオン運動に対抗する戻り力であって、前記ドリフト方向に沿って平滑に分布する、戻り力を提供する、ステップと、
    前記質量分析計を通過する間又は通過した後、前記イオンの少なくともいくつかを検出するステップと、
    を含む、質量分析法。
  30. 2つ以上の前記検出器を使用して、前記イオンが前記質量分析計を通過している間又は通過した後、前記イオンの少なくともいくつかを検出する、請求項27〜29のいずれか一項に記載の質量分析法。
  31. 質量解析の後続段階(MSn)は、前記質量分析計を使用して実行される、請求項27〜30のいずれか一項に記載の質量分析法。
  32. 前記イオンは、前記ドリフト長に沿って通過した後、ターンし、前記ドリフト長に沿って、イオンが注入された領域に向けて戻って進む、請求項27〜31のいずれか一項に記載の質量分析法。
  33. 両ミラーは、前記ドリフト方向に沿って線形に細長く、前記X方向において等距離だけ離間されて配置される、請求項27〜32のいずれか一項に記載の質量分析法。
  34. 両ミラーは、前記ドリフト方向に沿って湾曲し、間に等しいギャップを有するように配置される、請求項27〜32のいずれか一項に記載の質量分析法。
  35. 前記1つ又は複数の補償電極は一対の補償電極を備え、前記一対の補償電極の各電極は、前記ミラー間の前記空間の両側に配置され、前記補償電極のそれぞれは表面を有し、前記表面は、前記ミラーの前記両端部のうちの一方又は両方の近傍領域において、前記両端部間の中央領域よりも大きな距離だけ各ミラーに向かって延びるように、X−Y平面において多項式プロファイルを有する、請求項27〜34のいずれか一項に記載の質量分析法。
  36. 前記1つ又は複数の補償電極は一対の補償電極を備え、前記一対の補償電極の各電極は、前記ミラー間の前記空間の両側に配置され、前記補償電極のそれぞれは表面を有し、前記表面は、前記ミラーの前記両端部のうちの一方又は両方の近傍領域において、前記両端部間の中央領域よりも小さな距離だけ各ミラーに向かって延びるように、X−Y平面において多項式プロファイルを有する、請求項27〜34のいずれか一項に記載の質量分析法。
  37. 前記1つ又は複数の補償電極は、少なくとも部分的に、前記対向するミラー間に延びる前記空間に配置される複数の管又は区画を備える、請求項27〜34のいずれか一項に記載の質量分析法。
  38. 前記1つ又は複数の補償電極は、前記ミラー間に延びる前記空間の少なくとも一部において、ドリフト長に沿った距離の関数として変動する電位オフセットを生成するように電気的にバイアスされる、請求項28又は29に従属する請求項30〜37のいずれか一項に記載の質量分析法。
  39. 前記質量分析計は、前記ミラー間に配置される1つ又は複数のレンズ又はダイアフラムを更に備えて、前記質量分析計内のイオンの位相空間容積に影響を及ぼす、請求項27〜38のいずれか一項に記載の質量分析法。
  40. 前記イオンの少なくともいくつかは、イオンが注入された領域に隣接する領域に配置される検出器に衝突する、請求項27〜39のいずれか一項に記載の質量分析法。
  41. 前記検出器は、前記ドリフト方向Yに対して平行に配置される検出面を有する、請求項40に記載の質量分析法。
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