<1>本実施の形態の概要
本実施の形態は、無線接続可能な全てのRATから無線端末が課金ポリシーを受信し、当該課金ポリシーに基づいて無線端末から接続可能な全てのRATにおける通信コストを考慮して無線ベアラを接続すべきRATを無線端末自身が取捨選択する仕組みを実現する。例えば、無線端末を携帯するユーザが無料の無線通信サービスだけを使用して通信したい場合、移動中の無線端末が在圏する通信エリアにおいてキャリア検出可能な一つ以上のRATの中から、無料で接続できるRATだけを常に選択して無線接続するような仕組みを実現する。この際、各RATから受信した課金ポリシーは無線端末毎の装置構成や機器稼働状況に依存しないRAT毎の運用ポリシーである。従って本実施の形態においては、接続可能な各RATから課金ポリシーを受信した無線端末は、当該課金ポリシーを各無線端末の装置構成や機器稼働状況に適合するように解釈した上で、無線端末上の無線接続切り替え制御に反映させる。
以下、図面を使用して、本実施の形態について具体的に説明する。以下の説明においては、まず、本実施の形態が実現される無線通信システムのネットワーク構成と当該無線通信システム内においてユーザが使用する無線端末のハードウェア構成を図1および図2を使用して説明する。続いて、図1に示すネットワーク構成および図2に示す無線端末の装置構成を前提として本実施の形態が実現するポリシー制御の概要を、図3を参照しながら説明する。最後に、本実施の形態の詳細な動作フローを図4〜図6記載のフローチャートに沿って説明する。
<2>本実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成
以下、図1を使用して、本実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成を説明する。図1の無線通信システムは、UE10、一つ以上の無線アクセス網40A〜40C、無線アクセス網40A〜40Cとコア網ゲートウェイ61〜62を介して接続された一つ以上のコア網(CN: Core Network)51/52、コア網51/52とPDNゲートウェイ71/72を介して接続されたインターネット網80およびインターネット網80に接続されたサーバ20から構成される。
無線アクセス網40A〜40Cは、無線通信を介したコア網への無線アクセス経路をUE10に対して提供するネットワークであり、無線アクセス網40A〜40Cの各々は、互いに異なるRATに基づくことが可能である。例えば、無線アクセス網40Aは、3GPPが標準化を進めるE−UTRAN標準に基づいたLTE網とすることが出来、無線アクセス網40Bは、IEEE802.16e標準に基づいたWiMAX網とすることが出来、無線アクセス網40Cは、Wi−Fiのような無線LAN網とすることが出来る。なお、無線アクセス網40Cは、一つ以上の無線LANアクセス・ポイントとそれらを結ぶイーサネット・ハブ、ブロードバンド・ルータおよびケーブルモデム等から構成されることが可能である。
コア網51および52は、無線通信サービス提供事業者内において多数のルータ機器やネットワーク制御用サーバ機器を高速回線で接続することによって形成され、UEのインターネットへの接続(E−UTRANのコア網においてはP−GW(PDN-Gateway)の機能に相当する)、UEの端末モビリティ管理(E−UTRANのコア網においてはMMEの機能に相当する)またはUEの通信サービス認証(E−UTRANのコア網においてはHSSの機能に相当する)などの機能を実行する。例えば、コア網51は、無線アクセス網40Aおよびコア網ゲートウェイ61を介してUE10から無線アクセスが可能である。他方、コア網52は、無線アクセス網40Bおよびコア網ゲートウェイ62を介してUE10から無線アクセスが可能である。図2には示されていないが、2つ以上の異なる無線アクセス網を介して同一のコア網に無線アクセスすることも可能である。
ISP網53は、無線LAN網40Cをルータ網(PDN: Packet Data Network)54に接続するためのFTTH(Fiber-To-The-Home)回線、DSL(Digital Subscriber Line)回線、LAN間接続広域網、広域イーサネット等とすることが可能である。
PDNゲートウェイ71/72は、コア網51/52をルータ網(PDN: Packet Data Network)54にそれぞれ接続し、これにより、コア網51/52は、ルータ網(PDN: Packet Data Network)54を経由してインターネット網80との間でトラフィックを通信することが可能となる。コア網51がE−UTRAN標準に基づいて構成されている場合には、PDNゲートウェイ71は、P−GW(PDN-Gateway)とすることが可能である。
ルータ網(PDN: Packet Data Network)54は、コア網51/52とインターネット網80との間およびISP網53とインターネット網80との間に介在するパケット交換型のネットワークであり、無線通信事業者網間でのローミング・トラフィックの転送制御も提供する。
図1に示すネットワーク構成において、無線網内の通信に対するポリシー制御動作を管理するポリシー制御サーバをコア網51/52内、ルータ網(PDN: Packet Data Network)54内またはインターネット網80内に設置することが可能である。コア網51/52が3GPPリリース7の規定に従って構成されている場合、当該ポリシー制御サーバはコア網51/52内のP−GW(PDN-Gateway)の機能の一部として実装することが可能である。この場合、P−GW(PDN-Gateway)は図1のコア網51内に設置された外部接続ゲートウェイ71としても良い。なお、本実施の形態に係るポリシー制御サーバは個々のRATをそれぞれ構成する個々の無線通信事業者網に特化されたポリシー制御を実行する。そのため、当該ポリシー制御サーバは、個々の無線通信事業者網を構成するコア網51またはコア網52の中に設置されるのが好適である。代替的な実施例においては、当該ポリシー制御サーバはインターネット網80内またはルータ網54内に設置されることも可能である。この場合、当該ポリシー制御サーバは、インターネット網80またはルータ網54とコア網51/52との間でポリシー情報を交換するためにTCP/IPプロトコル層構造と互換性を有するCOPS(Common Open Policy Service)プロトコルを使用しても良い。
図1において、無線ベアラ30Aは、UE10をLTE網である無線アクセス網40Aに接続する無線接続手段である。同様に、無線ベアラ30Bは、UE10をWiMAX網である無線アクセス網40Bに接続する無線接続手段である。無線ベアラ30Cは、UE10をWi−Fi網である無線アクセス網40Cに接続する無線接続手段である。
図1において、UE10は、無線ベアラ30A〜30Cのいずれか一つ以上を使用して、無線アクセス網40A〜40Cのいずれか一つ以上と無線接続する。続いて、UE10は、無線アクセス網、コア網51/52およびインターネット網80を経由してサーバ20との間でTCP/IPに基づくエンド・ツー・エンド通信を行う。
なお、UE10から、無線ベアラ30A〜30Cのいずれか一つ以上を使用して、無線アクセス網40A〜40Cのいずれか一つ以上と無線接続するには、無線アクセス網40A〜40Cの各々の配下にある複数の基地局または無線アクセス・ポイントのいずれかを網接続ポイントとして接続する必要が有る。本明細書においては、これら複数の基地局または無線アクセス・ポイントの各々からそれらを配下に有する無線アクセス網40A〜40Cを経由してコア網51/52に至る多種多様な物理的通信経路を総称してバックホール回線と呼ぶ。すなわち、無線アクセス網40A〜40Cの各々の配下にある複数の基地局の各々は、基地局毎に専用のバックホール回線を介して無線アクセス網40A〜40Cおよびその背後にあるコア網51/52と接続されている。
<3>本実施の形態において使用されるUEのハードウェア構成
以下、図2を使用して、本実施の形態に係る無線通信システム内において使用されるUE10のハードウェア構成を説明する。
図2において、UEは、無線信号を送受信するアンテナ101、アンテナ101と接続された無線インターフェース102a〜102n、メモリ103、制御プロセッサ104、制御プロセッサ104との間で入出力データをやり取りしながらユーザとUE10との間のユーザ・インターフェースを制御するユーザ入出力装置105、およびUE10の設定パラメータなどを記憶する永続的な記憶媒体であるストレージ106およびバス107から構成される。上述したメモリ103、制御プロセッサ104、ユーザ入出力装置105、およびストレージ106は、バス107を介して相互に接続されている。
無線インターフェース102a〜102nの各々は、受信したRF信号を周波数ダウンコンバートしてデジタル化し、復調し、そして復号化することにより、デジタル情報に変換して後続の情報処理のために提供する。これとは逆に、無線インターフェース102a〜102nの各々は、UE10内で生成されたデジタル情報を、符号化し、変調し、そして周波数アップコンバートすることによりRF信号に変換して無線送信のためにアンテナ101に提供する。無線インターフェース102a〜102nの各々は、LTE、WiMAXまたは無線LANなどのような複数の異なる種類のRATに対応した信号処理を実行可能となるように構成されている。すなわち、無線インターフェース102a〜102nの各々は、n種類のRATの各々と一対一に対応する。例えば、無線インターフェース102aは、LTE網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成され、無線インターフェース102bは、WiMAX網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成され、無線インターフェース102cは、無線LAN網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成されている。
メモリ103は、無線インターフェース102a〜102nが後述する制御プロセッサ104との間でやり取りするデジタル情報やUE10全体を制御するプログラムなどを記憶する。
制御プロセッサ104は、メモリ103からプログラムを読み出してUE10全体の制御、無線インターフェース102a〜102nを介してアンテナ101から送信されるデジタル情報の生成、無線インターフェース102a〜102nを介してアンテナ101から受信したデジタル情報の更なる処理などを実行する。
制御プロセッサ104は、無線インターフェース102a〜102nの中のいずれか一つ以上を選択的にイネーブルし、バス107を介して当該イネーブルされた無線インターフェースのみを介してデジタル情報をやり取りすることにより、特定のRATを選択的に使用して通信することが出来る。また、制御プロセッサ104は、無線インターフェース102a〜102nの全てをイネーブルし、バス107を介して全ての無線インターフェース102a〜102nを介してデジタル情報をやり取りすることにより、同時利用可能な全てのRAT(無線アクセス網)を同時に使用して通信することが出来る。
ユーザ入出力装置105は、UE10上に設けられた画面表示ディスプレイやキーパッドと制御プロセッサ104との間で入出力データのやり取りを行うと同時に、ユーザとUE10の間のユーザ・インターフェースの制御を行う。加えて、ユーザ入出力装置105は、UE10上に設けられた画面表示ディスプレイやキーパッドのデバイス状態や入出力ステータスが変化した際に、バス107を介して当該変化と関係付けられた割り込み処理を制御プロセッサ104に対して指示する。このような割り込み制御を可能とするために、ユーザ入出力装置105は、自身が管理する画面表示ディスプレイやキーパッドなどの入出力デバイス状態を電気的にモニタリングする機能を備えている。
<4>無線通信システム内における従来方式の通信経路ポリシー制御の概要
ポリシー制御におけるポリシーは、運用ポリシーと機器設定ポリシーの2種類に大別される。運用ポリシーは無線網のネットワーク運用管理者が定めた網運用指針を記述するもの、無線網上で実行される個々の通信アプリケーション毎に、当該通信アプリケーションが要求する通信サービスの機能や品質を記述するもの等である。また運用ポリシーは、無線端末の通信制御機能の中でユーザが選択したい機能を記述するものであっても良い。他方、機器設定ポリシーは、運用ポリシーを無線網内の個々のネットワーク機器の動作に反映させるために、ポリシー制御の主体が運用ポリシーを解析した結果から生成するポリシーであり、ポリシー制御主体によって個々のネットワーク機器に対して設定されるポリシーである。言い換えると、機器設定ポリシーは、運用ポリシーによって規定される無線網の運用方法に関する一般原則に沿って、個々のネットワーク機器の装置構成や機器稼働状況に適合した形で生成されるポリシーである。
無線端末が無線網を経由して通信するトラフィック・フローに対してポリシーに基づく通信経路制御を行う場合、ポリシー制御動作の各々は、判断段階と施行段階とに分けられる。判断段階は、無線端末側または無線網側からの要求によって開始され、無線端末側または無線網側から受信したトラフィック・フロー記述情報や無線網内のネットワーク機器の稼動情報に基づいて、当該トラフィック・フローに適用すべきポリシーの具体的内容を判断する。施行段階は、判断段階において決定されたポリシーの具体的内容を無線端末または無線網内のいずれか一つ以上のネットワーク機器に設定し、設定されたポリシーに従ってトラフィック・フローを転送するように、当該無線端末または当該ネットワーク機器に対して指示する。
上述したポリシー制御動作を無線網内において実装するためには、(1)ポリシー制御の対象となるネットワーク機器上において、外部から受信した機器設定ポリシーにより設定されたポリシー内容に従って、トラフィック・フローを転送するためのポリシー実施機能を実装し、さらに(2)無線網内において、ポリシー制御の対象となるネットワーク機器に対して設定すべき機器設定ポリシーを運用ポリシーの解析結果と状況に応じて判断し、当該ネットワーク機器に対して当該判断した機器設定ポリシーを設定するポリシー制御機構を実装することが必要となる。3GPPリリース7の規定によれば、3GPPコア網(図1のコア網51など)内において、ポリシー制御の対象となるネットワーク機器(図1のコア網ゲートウェイ61〜63など)に対して設定すべき機器設定ポリシーを運用ポリシーと状況に応じて判断する主体は、PCRF(ポリシーおよび課金ルール機能)であり、ネットワーク機器に対して当該判断した機器設定ポリシーを設定する主体は、PCEF(ポリシーおよび課金施行機能)である。PCRFおよびPCEFは、コア網(図1のコア網51など)内においてポリシー制御機構を実装するポリシー制御サーバ(図1の外部接続ゲートウェイ71/72など)の機能として実現することが出来る。
<5>本実施の形態に係るポリシー制御の仕組み
本実施の形態に係るポリシー制御の仕組みにおいては、各RATを構成する無線アクセス網やコア網において規定されている運用ポリシーの一種である課金ポリシーを無線端末に直接通知する。これにより、本実施の形態は、通信コスト低減を図るような方法で、上記通知された課金ポリシーに基づいて、無線端末10上での接続先RATの切り替えを制御する。従って、本実施の形態に係るポリシー制御の仕組みにおいては、上述した従来方式の通信経路ポリシー制御に対して以下の改変が必要となる。すなわち、本実施の形態に係るポリシー制御においては、無線網側のポリシー制御機構から無線端末10に通知された課金ポリシーを、個々の無線端末の装置構成や機器稼働状況に適合するように解釈した上で、無線端末10上での接続先RATの切り替え制御に使用しなくてはならない。
以下、図3を参照しながら、図1に示すネットワーク構成と図2に示す無線端末の装置構成を前提として無線ベアラ接続先RATの切り替え制御を行うための第1実施例について説明する。
第1実施例におけるポリシー制御の仕組みは以下の構成(i)および(ii)を具備する。
(i)無線網側から供給されるポリシーを参照しながら、無線端末(UE)10上において異なるRATにそれぞれ接続する複数の無線ベアラの切り替えや同時並列アクセスを制御する無線端末(UE)10側の仕組み。
(ii)無線端末(UE)10に対して供給するポリシーを決定し、当該決定されたポリシーを無線網から無線端末内に設定する無線網側のポリシー制御機構。
図1に示したネットワーク構成においては、上記(ii)のポリシー制御機構は、コア網51/52内またはインターネット網80内に設置されたポリシー制御サーバが実行する機能として実装することが可能である。上述した(i)および(ii)の仕組みの詳細については後述する。
(5−1)本実施の形態に係るポリシー制御の全体構成の概観
図3において、上記(ii)で述べた無線網側のポリシー制御機構に相当するポリシー制御機構200は、個々のRATをそれぞれ構成する個々の無線通信事業者網に特化されたポリシー制御を実行する。外部ベアラ設定部210および外部情報取得部220の2つの機能モジュールから構成される。外部ベアラ設定部210および外部情報取得部220は、無線網内に設置されたポリシー制御サーバが、専用のサーバ・ソフトウェアを実行することにより実現される。図3に示すポリシー制御機構200は個々のRATをそれぞれ構成する個々の無線通信事業者網に特化されたRAT毎のポリシー制御の仕組みを提供する。すなわち、複数のRATをそれぞれ構成する複数の無線通信事業者網の個数と等しい数だけ、複数のポリシー制御機構200が個別に存在する。そのため、ポリシー制御機構200を実装するポリシー制御サーバは個々の無線通信事業者網をそれぞれ構成する個々のコア網の中に個別に設置するのが好適である。ポリシー制御サーバがインターネット網80内やルータ網54内に設置される場合は、当該ポリシー制御サーバは、各コア網内のポリシー設定対象機器との間でCOPSプロトコルなどを使用してポリシー情報のやり取りをする。
複数のRATをそれぞれ管理する複数のポリシー制御機構200の各々は、無線ベアラ1、無線ベアラ2、…、無線ベアラNを介して、無線端末(UE)10とそれぞれ接続されている。さらに、無線ベアラ1〜無線ベアラNを介したN本の無線通信経路は、それぞれN個の異なる無線アクセス網(第1のRAT〜第NのRAT)を経由し、さらにそれら無線アクセス網の背後にある一つ以上の無線コア網のいずれかを経由する。ポリシー制御機構200が特定の無線ベアラと関連したポリシーを無線端末(UE)10に設定する際には、当該特定の無線ベアラを介して当該ポリシーを配信する。図3においては、無線ベアラ1〜無線ベアラNがそれぞれ接続する無線アクセス網を、それらの背後にあるコア網とまとめた形で、無線網3001〜無線網300nとして図示している。すなわち、無線網3001〜無線網300nの各々がRAT毎の無線通信事業者網に相当する。例えば、図3の無線網3001は、LTE網などのセルラー無線網とその背後にあるコア網とを一体的に図示するものであり、図3の無線網300nは、無線LANとその背後にあるコア網とを一体的に図示するものである。無線端末10が第1のRAT〜第NのRATにそれぞれ対応する複数の異なる無線アクセス網に接続するには、各無線アクセス網の配下にあって網接続ポイントとして機能する基地局のいずれかを介して接続しなくてはならない。無線アクセス網及びその背後のコア網の配下にあって網接続ポイントとして機能する各基地局とこれらの無線アクセス網やコア網との間はバックホール回線によって接続されている。
(5−2)無線網側のポリシー制御機構200の機能モジュール構成
次に、ポリシー制御機構200の機能モジュール構成を以下のとおりに説明する。
外部ベアラ設定部210は、異なるRATに接続する複数の無線ベアラを無線端末(UE)10が選択する動作をポリシーに基づいて制御するために、当該無線端末に対して所定のポリシーを設定する。この時、当該無線端末に対するポリシーの設定は、以下のようにして達成される。まず最初に、当該ポリシー制御サーバが当該無線端末に対してCOPSプロトコルなどのポリシー伝達プロトコルを使用して設定すべきポリシーの内容を送信する。続いて、当該無線端末内のポリシー実施機構が、当該送信されたポリシーの内容に従って、自身の動作制御パラメータなどを設定変更する。
外部ベアラ設定部210は、取得情報分析部211とポリシー配信部212とから構成される。取得情報分析部211は、無線網のネットワーク運用管理者が手動で設定した運用ポリシーや無線網を構成する多数のネットワーク機器から収集したネットアーク機器情報を分析して個々の無線端末(UE)10に設定すべきポリシーの内容を決定する。同時に、取得情報分析部211は、無線網内の各無線端末について後述する課金状態を取得する。ポリシー配信部212は、無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して無線端末(UE)10と接続される。ポリシー配信部212は、取得情報分析部211が決定したポリシーをポリシー制御対象となる無線端末に設定するために、無線端末(UE)10に対して当該決定されたポリシーを、無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して無線端末10に配信する。同時に、ポリシー配信部212は、取得情報分析部211が取得した無線端末毎の課金状態を、無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して無線端末10に配信する。
外部情報取得部220は、オペレーター・ポリシー取得部222から構成される。外部情報取得部220は、無線網内の多数の無線端末の各々について、無線端末毎の課金状態を無線通信事業者網内の課金サーバから取得する。課金状態とは、課金ポリシーが定める通信料金体系の下で各無線端末が通信を行った結果、各無線端末に対してどのような課金制御が適用されているかを表す状態情報である。すなわち、無線端末10の課金状態は、所与の課金ポリシーが定める通信料金体系の下で通信中の無線端末10に関する通信履歴に基づいて、無線端末10に如何なる課金制御が適用されている状態で有るかを表す。課金状態に関する詳細な説明については、図11に関して詳しく後述する。オペレーター・ポリシー取得部222は、無線網のネットワーク運用管理者が手動で設定した運用ポリシーを取得する。この時、オペレーター・ポリシー取得部222が伝達する運用ポリシーには、ポリシー制御機構200が管理する無線通信事業者網において規定される課金ポリシーが含まれている。外部情報取得部220は、オペレーター・ポリシー取得部222が取得した運用ポリシーに含まれる課金ポリシーを、無線端末毎の課金状態と共に、取得情報分析部211に伝達する。
(5−3)無線端末(UE)10側の機能モジュール構成
次に、図3における無線端末(UE)10側の機能モジュール構成について説明する。この機能モジュール構成は、無線網側から供給されるポリシーを参照しながら、無線端末(UE)10上において異なるRATにそれぞれ接続する複数の無線ベアラの切り替えや同時並列アクセスを制御するための上記(i)の仕組みに相当する。無線端末(UE)10側の機能モジュール構成は、内部ベアラ設定部110および内部情報取得部120の2つの機能モジュールから構成される。無線端末(UE)10側の上述した機能モジュールは、無線端末(UE)10内の制御プロセッサ104が、ストレージ106からメモリ103上に読み込んだ専用のソフトウェア・プログラムを実行することによって実現される。
内部ベアラ設定部110は、無線端末(UE)10から同時利用可能な無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から無線端末(UE)10が無線網に接続するために使用する一つ以上の無線ベアラを選択する機能を実行する。この際、無線端末(UE)10が無線網に接続するために、内部ベアラ設定部110により2つ以上の無線ベアラが選択された場合には、内部ベアラ設定部110はさらに、当該2つの無線ベアラ上で通信するトラフィック量を当該2つの無線ベアラの間で最適に配分する動作を実行する。
内部ベアラ設定部110は、まず最初に、ポリシー配信部212から配信されたポリシーを受信する。続いて、同時利用可能な無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から無線端末10が通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作の実行を切替部111または同時通信処理部112のいずれか一方に実行させるため、内部ベアラ設定部110は、無線ベアラ毎に評価したトラフィック伝送の適否を切替部111または同時通信処理部112のいずれか一方に伝達する。無線ベアラを取捨選択する動作の実行を、内部ベアラ設定部110内において、切替部111または同時通信処理部112のいずれが実行すべきであるかは、後述するようにアクティベート部113によって決定される。
内部ベアラ設定部110は、切替部111、同時通信処理部112およびアクティベート部113から構成される。
切替部111は、まず最初に、無線ベアラ毎に評価した適否に基づいて、トラフィック伝送に使用すべき無線ベアラを選択する。続いて、切替部111は、当該選択された無線ベアラを介して上りリンク信号を送信する。なお、切替部111は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの一つ以上を介して下りリンク信号を無線網側から受信する場合にも、上記と同様の制御を行う。同時通信処理部112は、まず最初に、トラフィック伝送に適していると判定された複数の無線ベアラに関して、無線ベアラ毎に伝送可能な情報信号のビット数を割り当てる。続いて、同時通信処理部112は、各無線ベアラを介して、各無線ベアラに割り当てたビット数だけ上りリンク信号を送信する。なお、同時通信処理部112は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの一つ以上を介して下りリンク信号を無線網側から受信する場合にも、上記と同様の制御を行う。この時、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中で、上りリンク信号または下りリンク信号の送受信のために選択されない無線ベアラに関しては、同時通信処理部112は、伝送可能な情報信号のビット数として0ビットを割り当てることにより、当該無線ベアラを選択対象から外すことができる。以上のようにして、同時通信処理部112は、トラフィック伝送に適していると判定された複数の無線ベアラ間で上りリンクおよび下りリンクのトラフィック配分を最適化する。
アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する単一の無線ベアラを選択する機能を実行開始するタイミングを切替部111に対して指示する。代替的に、アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する一つ以上の無線ベアラの間でトラフィックの最適配分を実行開始するタイミングを同時通信処理部112に対して指示する。例えば、アクティベート部113は、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラ間の取捨選択動作の実行を一定時間間隔で周期的に指示することが可能であり、この場合、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラの取捨選択動作は一定時間間隔で周期的に起動される。また、別の実施態様として、アクティベート部113は、無線端末(UE)10内のソフトウェアまたはハードウェアにより生成される所定のイベント事象の発生を検出し、当該イベント事象の発生に応じて無線ベアラの取捨選択動作の実行を切替部111または同時通信処理部112に対して指示することが可能である。
また、アクティベート部113は、無線端末10が通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作を切替部111または同時通信処理部112のいずれに実行させるかを決定する。当該決定動作は、ユーザが無線端末10に設定した機器設定ポリシーに従って、アクティベート部113が実行してもよい。
内部情報取得部120は、無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを計測し、当該計測の結果を内部情報として内部に記憶しておき、当該記憶しておいた内部情報を内部ベアラ設定部110からの要求に応じて内部ベアラ設定部110に伝達する。内部情報取得部120が、無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを計測する動作は、以下のように実現することが出来る。例えば、無線端末10内において、内部情報取得部120を実行中の制御プロセッサ104(図2)が、メモリ103(図2)上に常駐するオペレーティング・システムによって提供される通信動作モニタリング用のAPIを呼び出して実行することにより上述した計測を行える。内部情報取得部120から内部ベアラ設定部110に伝達されたこの内部情報は、内部ベアラ設定部110がポリシー配信部212から配信されたポリシーを無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを勘案して修正するために使用される。
<6>無線端末上での無線ベアラ切り替えに対するポリシー制御の動作フロー
以下、図4〜図6を使用して、本実施の形態の全体処理フローとして、無線端末10上での無線ベアラ切り替えに対する無線網側からのポリシー制御の詳細な動作フローを説明する。本実施の形態に関して図4〜図6のフローチャートにより説明される動作フローは、無線端末10上で実行される以下の3つの処理フローから成る。
(A1)無線端末10が新たなRATのキャリア信号を検出したときに、無線端末10が備える無線インターフェースの中で、当該新たなRATに接続可能な無線インターフェースをインターフェース・テーブルに登録する。
(A2)同時接続可能な複数のRATの各々に対応する各無線通信事業者網内のポリシー制御機構200から、RAT毎の課金ポリシーと無線端末10に関するRAT毎の課金状態を受信し、受信した課金ポリシーと課金状態により、無線端末10上の課金管理情報を更新する。
(A3)上述した課金管理情報が更新されるたびに、当該課金管理情報の最新の更新内容に基づいて、無線端末10上での無線ベアラ切り替えを制御する。
(6−1)上述した(A1)の動作の詳細内容
以下、無線端末10により実行される上述した(A1)の動作の詳細内容を説明する。
移動中の無線端末10が新たなRATの通信エリアに進入した場合などに、無線端末10は新たなRATのキャリア信号を検出する。マルチモード無線端末である無線端末10内においては、無線端末10が備える複数の無線インターフェースの中で、上述したキャリア信号の受信が可能な無線インターフェースは、上述した新たなRATに無線接続が可能な無線インターフェースである。そこで、無線端末10の内部ベアラ設定部110は、上述した新たなRATに無線接続が可能な無線インターフェースを、当該RATの識別名と関連付けて図7に示すインターフェース・テーブルに登録する。
無線端末10が備える複数の無線インターフェースが物理的なインターフェース回路である場合、当該複数の無線インターフェースの各々は、図2に示す無線インターフェース回路102A〜102Nの各々と一対一に対応する。無線端末10が備える複数の無線インターフェースが論理的なインターフェース回路である場合、当該複数の無線インターフェースの各々は、特定のRATをサポートする物理的な無線インターフェース回路の上で動作する論理的な無線インターフェース・モジュールとすることが可能である。無線端末10の制御プロセッサ104が実行するOS(オペレーティング・システム)において、論理的な無線インターフェースは、対応する物理的な無線インターフェース回路をサポートするデバイス・ドライバ・ソフトウェアとして実装することが可能である。
図7に示すインターフェース・テーブル内においては、論理的な無線インターフェースであるwlan0、wlan1、rmnet0、rmnet1およびrmnet2が対応するRATの識別名であるオペレータA、オペレータB、オペレータC、オペレータDおよびオペレータEとそれぞれ関係付けられて登録されている。
(6−2)上述した(A2)の動作の詳細内容
以下、無線端末10により実行される上述した(A2)の動作の詳細内容を説明する。
無線端末10の内部ベアラ設定部110は、同時接続可能な複数のRATの各々に対応する各無線通信事業者網(無線網3001〜無線網300nの各々)内のポリシー制御機構200から、RAT毎の課金ポリシーと無線端末10に関するRAT毎の課金状態を受信する。例えば、図3に示す無線通信事業者網3001に対応するRATがLTE網である場合、無線端末10が図3の無線網3001を経由して受信する課金ポリシーは、LTE網において規定される課金ポリシーである。また例えば、図3に示す無線通信事業者網300nに対応するRATが無線LANである場合、無線端末10が図3の無線網300nを経由して受信する課金ポリシーは、無線LANにおいて規定される課金ポリシーである。
無線端末10がRAT毎のポリシー制御機構200から受信するRAT毎の課金ポリシーは、課金種別、エリア・オプションおよび例外無課金エリア・テーブルの3種類の情報を含む。
各RATに対応する課金ポリシーに含まれる課金種別は、各RATに対応する各無線通信事業者網において、どのような通信料金体系でネットワーク利用者に課金するかを記述する課金方法に対応する。各RATに対応する各無線通信事業者網において規定することが可能な課金種別の一覧を図10に示す。
図10において、1行目の「パターンA」という識別名と関係付けられている課金種別は、ネットワーク利用者に対して全く課金しない(ネットワーク利用者に無料で開放されている)課金種別である。図10において、2行目の「パターンB」という識別名と関係付けられている課金種別は、ネットワーク利用者が所定の上限数のパケットを伝送するまでは定額の通信料金のみを請求し、上限数を超えたパケットを伝送しようとすると、無線通信事業者網内での通信速度に規制をかける課金種別である。図10において、3行目の「パターンC」という識別名と関係付けられている課金種別は、ネットワーク利用者が所定の上限数のパケットを伝送するまでは定額の通信料金のみを請求し、上限数を超えたパケット伝送量に応じて従量制の課金額を追加で請求する課金種別である。図10において、4行目の「パターンD」という識別名と関係付けられている課金種別は、ネットワーク利用者が所定の上限数のパケットを伝送するまでは定額の通信料金のみを請求し、上限数を超えたパケット伝送をしようとすると、無線端末10から無線通信事業者網への接続を切断する課金種別である。
図10において、5行目の「パターンE」という識別名と関係付けられている課金種別は、無線端末10が無線通信事業者網に接続している時間が所定の上限を超えるまでは定額の通信料金のみを請求し、上限を超えて接続しようとすると、無線通信事業者網内での通信速度に規制をかける課金種別である。図10において、6行目の「パターンF」という識別名と関係付けられている課金種別は、無線端末10が無線通信事業者網に接続している時間が所定の上限を超えるまでは定額の通信料金のみを請求し、上限を超えて接続しようとすると、超過した接続時間に応じて従量制の課金額を追加で請求する課金種別である。図10において、7行目の「パターンG」という識別名と関係付けられている課金種別は、無線端末10が無線通信事業者網に接続している時間が所定の上限を超えるまでは定額の通信料金のみを請求し、上限を超えて接続しようとすると、無線端末10から無線通信事業者網への接続を切断する課金種別である。図10において、5行目の「パターンH」という識別名と関係付けられている課金種別は、ネットワーク利用者に対してパケット伝送量または無線通信事業者網への接続時間の長さに応じた従量制の課金を行う課金種別である。
各RATに対応する課金ポリシーに含まれるエリア・オプションは、各RATが地理的にカバーする多数の通信エリアの中の一部の通信エリアにおいて、各RATに対応する課金種別とは異なる例外的な通信料金体系が適用されるか否かを表す。また、各RATに対応する課金ポリシーに含まれる例外無課金エリア・テーブルは、各RATが地理的にカバーする多数の通信エリアの中のいずれの通信エリアにおいて課金が例外的に免除されるかをユーザ毎に定義するテーブルである。例外無課金エリア・テーブルの具体例を図8に示す。
図8の例外無課金エリア・テーブルにおいて、ユーザAが携帯する無線端末がセルID=100、101、102、103および104でそれぞれ表されるセルラー無線網の5つの通信エリアのいずれかに在圏している際には、当該セルラー無線網に対応するRATが規定する課金種別に基づくユーザAへの通信料金の請求が例外的に免除される。また、図8の例外無課金エリア・テーブルにおいて、ユーザBが携帯する無線端末がセルID=200および201でそれぞれ表されるセルラー無線網の2つの通信エリアのいずれかに在圏している際には、当該セルラー無線網に対応するRATが規定する課金種別に基づくユーザBへの通信料金の請求が例外的に免除される。また、図8の例外無課金エリア・テーブルにおいて、ユーザCが携帯する無線端末がセルID=102、103、201および210でそれぞれ表されるセルラー無線網の4つの通信エリアのいずれかに在圏している際には、当該セルラー無線網に対応するRATが規定する課金種別に基づくユーザCへの通信料金の請求が例外的に免除される。
なお、図8の例外無課金エリア・テーブルにおいては、課金が免除される通信エリアの識別子としてセルラー無線網内の通信セルを識別するためのセルIDを使用した。しかしながら、例外無課金エリア・テーブルにおいて、課金が免除される通信エリアが無線LANの通信エリアである場合には、通信エリアの識別子として無線LANアクセス・ポイントのMACアドレス(BSSID)を使用することが出来る。
各RATに対応するポリシー制御機構200から無線端末10が課金ポリシーと共に受信する課金状態とは、当該課金ポリシーが定める通信料金体系の下で各無線端末が通信を行った結果、各無線端末に対してどのような課金制御が適用されているかを表す状態情報である。例えば、課金状態は、図11の(a)に示す「ステートA」〜「ステートD」の4種類の状態をとることが出来る。無線端末10に配信された課金状態の配信元であるRATが採用する課金種別が図10に示す識別名「パターンB」に対応する課金種別であり、無線端末10の課金状態が、図11の(a)において「ステートA」で表される状態であると仮定する。この場合、無線端末10は、パケット伝送個数が上限値を下回っている間は、所定の定額料金を請求され、上限値を超過したパケット伝送分に対して無線通信事業者網内で通信速度が規制される。しかしながら、図11の(a)に示すとおり、「ステートA」で表される課金状態は、無線端末10によるパケット伝送個数が上限値を下回っている状態に相当するので、無線端末10のユーザは「パターンB」の課金種別が定める定額料金しか請求されないこととなる。
また、別のケースとして、無線端末10に配信された課金状態の配信元であるRATが採用する課金種別が図10に示す識別名「パターンC」に対応する課金種別であり、無線端末10の課金状態が、図11の(a)において「ステートD」で表される状態であると仮定する。この場合、無線端末10は、パケット伝送個数が上限値を下回っている間は、所定の定額料金を請求され、上限値を超過したパケット伝送分に対して従量制の通信料金が追加で課金される。この時、図11の(a)に示すとおり、「ステートD」で表される課金状態は、無線端末10によるパケット伝送個数が上限値を超過した状態に相当するので、無線端末10のユーザは「パターンC」の課金種別が定める定額料金に加えて、パケット超過分に相当する従量制の料金を課金される。
無線端末10の内部ベアラ設定部110は、同時接続可能な複数のRATの各々に対応する各ポリシー制御機構200から上述した課金種別、課金状態およびエリア・オプションを受信すると、続いて以下の処理を実行する。まず、内部ベアラ設定部110は、上述した課金種別、課金状態およびエリア・オプションを配信した配信元のRATを識別する識別名および送信元RATに接続する無線インターフェースの種別と関連付けて新たなエントリを生成し、無線端末10上のオペレータ・テーブル内の対応する古いエントリを当該新たなエントリで上書きする。具体的には、以下のとおりである。
無線端末10上に記憶されているオペレータ・テーブルの具体例を図9に示す。図9において2次元の表形式で示すオペレータ・テーブルを構成する各行は各エントリに対応する。図9の表において、各行に対応する各エントリは5つのフィールドの並びから構成される。これら5つのフィールドは、左から順に、(1)無線端末10に配信された課金状態の配信元であるRATの識別名、(2)当該配信元RATに接続する無線インターフェースの種別、(3)当該配信元RATが採用する課金種別、(4)当該配信元RATにおける無線端末10の課金状態および(5)当該配信元RATのエリア・オプションをそれぞれ記述する。例えば、図9に示すオペレータ・テーブルの2行目に対応するエントリは、(1)無線端末10に配信された課金状態の配信元であるRATの識別名が「オペレータB」であり、(2)当該配信元RATに接続する無線インターフェースの種別が無線LANであり、(3)当該配信元RATが採用する課金種別が、図10のパターンBに対応する課金種別であり、(4)当該配信元RATにおける無線端末10の課金状態が図11(a)の「ステートA」に対応する状態であり、(5)当該配信元RATのエリア・オプションが無効にされていることを表している。他方、図9に示すオペレータ・テーブルの3行目に対応するエントリは、(1)無線端末10に配信された課金状態の配信元であるRATの識別名が「オペレータC」であり、(2)当該配信元RATに接続する無線インターフェースの種別がLTE網であり、(3)当該配信元RATが採用する課金種別が、図10のパターンCに対応する課金種別であり、(4)当該配信元RATにおける無線端末10の課金状態が図11(a)の「ステートC」に対応する状態であり、(5)当該配信元RATのエリア・オプションが有効にされていることを表している。
内部ベアラ設定部110は、識別名「オペレータC」により識別されるRATに対応するポリシー制御機構200から受信した課金種別、課金状態およびエリア・オプションを元に、新たなエントリを生成したとする。すると、図9に示すオペレータ・テーブル内において、同一の識別名「オペレータC」を含む3行目のエントリが上述した新たなエントリによって上書きされる。これにより、無線端末10から同時接続可能な一つ以上のRATの各々から配信された最新の課金ポリシーと課金状態により、図9に示すオペレータ・テーブルが格納する課金管理情報が最新の内容に更新されることとなる。
なお、上述したオペレータ・テーブルの更新処理は、無線端末10が新たなRATのキャリア信号を検出したときに、上記(A1)に関して述べたインターフェース・テーブル(図7)の更新処理と併せて実行することが可能である。その場合に、無線端末10の内部ベアラ設定部110が実行する動作フローを図4のフローチャートとして示す。
(6−3)上述した(A3)の動作の詳細内容
以下、無線端末10により実行される上述した(A3)の動作の詳細内容を図5記載のフローチャートに沿って説明する。
まず、処理フローは、ステップS201から開始し、無線端末10の内部ベアラ設定部110は、無線端末10を使用するユーザが指定したプリファレンス名を取得する。プリファレンス名とは、無線端末10上での同時接続可能な複数の無線ベアラの取捨選択をどのような評価指標に従って最適化するかを記述する。このような評価指標の具体例としては、通信コスト低減を最優先する評価指標および通信コスト低減と通信性能の両立を目標とする評価指標などが挙げられる。例えば、プリファレンス名「コスト」は、通信コスト低減を最優先する評価指標に対応するプリファレンス名であり、プリファレンス名「パフォーマンス」は、通信コスト低減と通信性能の両立を目標とする評価指標に対応するプリファレンス名である。
続いて、処理フローはステップS202に進み、内部ベアラ設定部110は、プリファレンス名をキーとしてプリファレンス・テーブルを検索する。プリファレンス・テーブルとは、プリファレンス名に対応する課金パターンの一つ以上の候補を格納するテーブルである。ここで言う「課金パターン」とは、プリファレンス名が表す無線ベアラの取捨選択に関する評価指標を改善または充足する可能性が高い課金種別と課金状態の組み合わせである。具体的には、以下のとおりである。図12は、無線端末10上に記憶されているプリファレンス・テーブルの一例である。図12において表形式で示すプリファレンス・テーブルは、プリファレンス名に対応する評価指標毎に行に分割される。例えば、図12のプリファレンス・テーブルは、通信コスト低減と通信性能の両立を目標とする評価指標「パフォーマンス」に対応する行と通信コスト低減を最優先する評価指標「コスト」に対応する行に分割される。さらに、図12のプリファレンス・テーブルにおいて、評価指標「コスト」に対応する行は、ユーザへの課金がゼロでなくてはならない評価指標を表す「無課金」に対応する行と、パケット伝送量が上限以下の場合に請求される定額分までならユーザに課金することを許容する評価指標を表す「無課金+上限以下」に対応する行とに分割される。
図12に示すプリファレンス・テーブルにおける評価指標「パフォーマンス」に対応する行内に列挙された8通りの課金パターンは通信コスト低減と通信性能の両立を目標とする評価指標を改善もしくは充足する可能性が高い課金種別と課金状態との組み合わせの一つ以上の候補を表している。同様に、図12に示すプリファレンス・テーブルにおける評価指標「コスト」に対応する行内の「無課金+上限以下」の行に列挙された7通りの課金パターンは、以下の評価指標を改善もしくは充足する可能性が高い課金種別と課金状態との組み合わせの一つ以上の候補を表している。すなわち、上記7通りの課金パターンは、通信コスト低減を最優先としながらもパケット伝送量が上限以下の場合に請求される定額分までならユーザに課金することを許容する評価指標を改善もしくは充足する可能性が高い。
以上より、内部ベアラ設定部110は、ユーザが指定したプリファレンス名をキーとしてプリファレンス・テーブルを検索し、プリファレンス・テーブル内において、当該プリファレンス名と一致する評価指標に対応する行に列挙されている課金パターンの中の一つを検索結果として出力する。
なお、プリファレンス・テーブルは、無線端末10上でユーザが自分で定義することが可能である。他方、代替的な実施例においては、無線網側のポリシー制御機構200が無線網側でRAT毎に定めされる課金ポリシーを勘案してプリファレンス・テーブルを自動的に生成することができる。この場合、無線網側で生成された当該プリファレンス・テーブルは、ポリシー配信部212から各無線端末に配信されるポリシー内に埋め込まれて無線端末10に配信されることが可能である。
続いて、図5の処理フローはステップS203に進み、内部ベアラ設定部110は、ステップS202において検索結果として出力された課金パターンと一致する課金種別と課金状態の組み合わせを有するエントリを図9のオペレータ・テーブルの中から検索し、オペレータ・テーブルから検索されたエントリに含まれるRAT識別名(オペレータ名)を出力する。
続いて、図5の処理フローはステップS204に進み、内部ベアラ設定部110は、ステップS203において検索されたエントリに含まれる無線インターフェース種別を出力する。続いて、内部ベアラ設定部110は、上記出力された無線インターフェース種別とRAT識別名(オペレータ名)を検索キーとして図7のインターフェース・テーブルを検索し、検索された無線インターフェースを選択インターフェース・リストに追加する。選択インターフェース・リストとは、無線端末10が端末トラフィックを伝送し、無線網に接続するために選択することが可能な一つ以上の無線ベアラの候補を列挙するリストである。
続いて、図5の処理フローはステップS205に進み、内部ベアラ設定部110は、図9のオペレータ・テーブル内の全ての行に対応する全てのエントリにそれぞれ含まれるエリア・オプションが有効に設定されているか無効に設定されているかを判定する。
続いて、図5の処理フローはステップS206に進み、図9のオペレータ・テーブル内の各エントリを対象エントリとして取り出し、対象エントリについて以下の処理を実行する。
対象エントリについてエリア・オプションが有効に設定されているならば、当該対象エントリについての処理はステップS207に進み、そうでなければ、当該対象エントリについての処理はステップS209に進む。
ステップS207においては、内部ベアラ設定部110は、無線端末10から同時接続可能な全ての無線ベアラを図7のインターフェース・テーブルからリストアップし、これらの無線ベアラの各々について無線端末10が現在在圏中の各通信エリアの識別子を取得する。例えば、図7のインターフェース・テーブルからリストアップした一つの無線ベアラがLTE網に接続するものである場合、当該LTE網において無線端末10が在圏中の通信セルのセルIDを識別子として取得する。その後、処理フローはステップS208に進む。
ステップS208においては、内部ベアラ設定部110は、エリア・オプションが有効に設定されているRATについて、例外無課金エリア・テーブルを取得する。その後、処理フローは、ステップS209に進む。
ステップS209においては、内部ベアラ設定部110は、エリア・オプションが有効に設定されているRATについて、例外無課金エリア・テーブルを参照することにより、ステップS207において同時接続可能な無線ベアラ毎にリストアップされた通信エリア識別子(セルID)がユーザにとって例外的に課金を免除される通信エリアであるか否かを判定する。課金が免除されるならば、処理フローはステップS210に進み、そうでなければ、処理フローは、ステップS211に進む。
ステップS210においては、内部ベアラ設定部110は、在圏中の通信エリアにおいて課金が免除されると判定されたRATの識別名に対応する無線インターフェースを図7のインターフェース・テーブルの中から検索し、選択インターフェース・リストに追加する。
ステップS211においては、内部ベアラ設定部110は、ステップS210において最終的に得られた選択インターフェース・リストを切替部111または同時通信処理部112のいずれか一方に設定する。その後、処理フローは、図6のフローチャートに示すステップS212に進む。図6のステップS212においては、切替部111または同時通信処理部112は、自身に設定された選択インターフェース・リストに無線ベアラの候補として含まれる無線インターフェースの個数がゼロであるか否かを判定し、無線インターフェースの個数がゼロ個ならば、処理フローはステップS215に進み、1個以上であれば、ステップS213に進む。
ステップS213においては、切替部111または同時通信処理部112は、選択インターフェース・リスト内に候補として含まれる一つ以上の無線ベアラの中から、端末トラフィックを伝送し、無線網に接続するために使用する無線ベアラを取捨選択する処理を実行する。その後、処理フローは、ステップS214に進み、無線端末10は、取捨選択された無線ベアラを介して無線網と接続し、取捨選択された無線ベアラを介して端末トラフィックを送受信する。
ステップS215においては、選択インターフェース・リストには、候補となる無線ベアラが一つも含まれていないので、デフォルトの無線ベアラとして既定されている無線ベアラを端末トラフィック伝送に使用する無線ベアラとして割り当て、ステップS214に進む。
以上のようにして、無線端末がRAT毎に受信した課金ポリシーと課金状態により、オペレータ・テーブル内に格納された課金管理情報が更新されるたびに、本実施の形態は、当該課金管理情報の最新の更新内容に基づいて、無線端末10上での無線ベアラ切り替えを制御する。