JP6208131B2 - 結腸直腸ガンのニューレグリン−1に基づく予後予測及び治療層別化 - Google Patents
結腸直腸ガンのニューレグリン−1に基づく予後予測及び治療層別化 Download PDFInfo
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Description
本発明は結腸直腸ガンの予後予測及び/又は治療層別化に関する。より具体的には、本発明は、患者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルの顕著な上昇が、腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが低い患者と比較して、より不良な予後と関連することを開示する。更に、本発明は、腫瘍関連間葉幹細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1発現を利用して、結腸直腸ガン治療の間のHER1インヒビターに対する抵抗性を予測し、そして/又は患者がニューレグリン-1及び/又はHER3の活性阻止に基づく治療の利益を享受するかどうかを予測することに関する。
結腸直腸ガン(CRC)は、米国において、男性及び女性の両方において3番目に多いガンであり、全ての新たなガン症例及びガンによる死亡例の9%を占める(1)。診断に際して、CRC症例の19%が転移性であり、CRC患者の5年全生存率は65%である一方で、転移性疾患では僅か12%である(1)。腫瘍悪化には、ガン細胞と腫瘍関連間葉細胞との間の複雑なヘテロ型の多細胞相互作用が関与することを証明する証拠が出て来ている(2)。CRCは、増殖中の腫瘍における骨髄由来間葉幹細胞(BM-MSC)の遠位動員が関与する、巧妙に仕組まれた癒着性反応が付随することが多い。BM-MSCは、骨芽細胞、軟骨細胞及び脂肪細胞などの複数の細胞系統に分化する能力を有する(3)。マウスモデルにより、BM-MSCは、結腸腫瘍異種移植片に移動し(4, 5)、腫瘍関連間葉細胞の前駆体であり(6-8)、この腫瘍関連間葉細胞がその後ガン悪化を刺激する(9, 10)ことが明らかにされた。腫瘍に対するMSCの向性は、創傷治癒及び組織修復の間の創傷への移動を反復すると考えられる(11, 12)。
図1.培養CRC細胞の形態及びマトリクス浸潤に対するBM-MSCの効果。(A)CMBM-MSCで24時間処理した後のコラーゲンI型上での単一HCT-8/E11、HCT 116及びSW480 CRC細胞の形態を示す位相差画像。矢印は浸潤伸長を示す。スケールバー、20μm(上パネル)。合計10視野について、各視野で計数した細胞総数に対する浸潤伸長を有する細胞数の比である浸潤指数の算出によるコラーゲン浸潤の定量。結果は、3つの独立実験の平均及び標準誤差として表す。P値はカイ二乗検定を用いて算出した;統計学的に有意なP値を示す(下パネル)。(B)CMBM-MSCで24時間処理した後のコラーゲンI型上での代表的なファロイジン-Alexa Fluor 594染色HCT-8/E11細胞のレーザ走査共焦点画像。スケールバー、20μm(上パネル)。各条件について25のHCT-8/E11細胞の形状係数を用いた形態定量化を示す箱ひげ図。箱ひげ図にメジアン、四分位数並びに最高値及び最低値を示す。形状係数は(周長)2/(4π面積)として算出した。P値はマンホイットニー検定を用いて算出した;統計学的に有意なP値を示す(下パネル)。(C)コントロール条件下及びBM-MSC共培養条件下で種々の期間後の代表的なHCT-8/E11-GFPスフェロイドの明視野画像及びGFP-蛍光画像の組合せ。スケールバー、300μm。(D及びE)コントロール条件下及びBM-MSC共培養条件下で種々の期間後のHCT-8/E11-GFPスフェロイドの形状係数(周長2/4π面積)(D、左パネル)及び面積(E、左パネル)のImage J-支援算出。結果は、3つの独立実験からの6スフェロイドの平均及び標準誤差として表す。P値は、反復測定二元配置ANOVA検定を用いて算出した;統計学的に有意なP値を示す。コントロール条件下又はBM-MSC共培養条件下で96時間培養したファロイジン-Alexa Fluor 594染色HCT-8/E11-GFPスフェロイドの典型的な浸潤フロントの共焦点画像。スケールバー、50μm;挿入図はスフェロイド全体を示す、スケールバー、300μm(D、右パネル)。コントロール条件下又はBM-MSC共培養条件下で96時間培養したHCT-8/E11-GFPスフェロイドのパラフィン包埋切片を、増殖マーカーKi67について免疫染色した。条件あたり3スフェロイドの12画像から算出した増殖細胞の平均数及び標準誤差を示す。スケールバー、100μm;挿入図スケールバー、50μm(E、右パネル)。
図10.CRC細胞株の細胞サイクル進行に対するBM-MSCの効果。(A)24時間の血清涸渇後にCMBM-MSCで24時間処理したHCT-8/E11におけるサイクリンA、サイクリンE及びp27の発現レベルのウェスタンブロット評価。チューブリンをローディングコントロールとして使用した。(B)細胞サイクル進行に対するCMBM-MSCの効果。HCT-8/E11及びHCT 116細胞を50%コンフルーエンスまで増殖させ、続いて24時間の血清涸渇に供し、CMBM-MSCで24時間の処理した。細胞サイクルのG1、S及びG2ステージ(フローサイトメトリにより測定)にあるHCT-8/E11及びHCT 116細胞のパーセンテージを示す。
図12.tNRG-1抗体の特異性。BLM細胞を、NRG-1のIg様ドメインを標的するNRG-1 siRNAでトランスフェクトした。tNRG-1発現は、「a」型細胞質テイル(最も豊富なバリアント)に共通するNRG-1エピトープを指向するtNRG-1抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
図13.tNRG-1を発現する間葉細胞はα-SMA陽性である。初代CRC(上パネル)及び肝臓転移(下パネル)におけるtNRG-1(左パネル)及びα-SMA(右パネル) IHC染色の代表例。
図14.CMHCT-8/E11は、Matrigelメンブレンを通過するBM-MSCの浸潤を刺激する。2×104のBM-MSCを、下部コンパートメントにコントロール培地又は化学誘引剤としてのCMHCT-8/E11を有するMatrigel被覆フィルター上に播種した。メンブレン下面の細胞をDAPIで染色した。スケールバー、100μm(上段パネル)。蛍光画像を二値画像に変換し(中段パネル)、Image J分析を用いて浸潤細胞を計数した(下段パネル)。結果は、3つの独立実験の平均及び標準誤差として表す。P値はスチューデントのt検定を用いて算出した;統計学的に有意なP値を示す。
本発明は、ヒト結腸直腸ガン患者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞(α-平滑筋アクチン(α-SMA)の発現により特徴付けられる腫瘍関連線維芽細胞とも呼ばれる)における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルの顕著な上昇が、腫瘍ステージ、浸潤深度及び5年無増悪生存率に関して、より不良な予後と有意に相関することを開示する。したがって、本発明は、
− 検査対象者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 前記膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、ここで、
− 検査対象者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが前記健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、検査対象者がより不良な予後を有することを示す、検査対象者における結腸直腸ガンのインビトロ予後予測法に関する。
− 患者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 該膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、ここで
− 患者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通I型ニューレグリン-1レベルが前記健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、患者がニューレグリン-1活性及び/又はHER3のチロシンキナーゼ活性の阻止に基づく治療の利益を享受することを示す、結腸直腸ガンを有する患者がニューレグリン-1活性及び/又はHER3のチロシンキナーゼ活性の阻止に基づく治療の利益を享受するかどうかを決定する方法を開示する。
また、本明細書は、ニューレグリン-1活性インヒビター及び/又はHER3チロシンキナーゼ活性インヒビターの、患者における結腸直腸ガンを治療するための医薬の製造についての使用であって、前記患者は、該患者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルが対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較して顕著に上昇している、使用を開示する。
− 患者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 該膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、ここで
− 患者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通I型ニューレグリン-1レベルが前記健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、患者がHER1活性の阻止に基づく治療に対して抵抗性を有することを示す、結腸直腸ガンを有する患者におけるHER1活性の阻止に基づく治療に対する抵抗性を予測する方法を開示する。
用語「ニューレグリン-1」は、ヒレグリンとしても知られ、オルターナティブスプライシングの結果としての少なくとも7つの異なるイソフォームを有するI型ニューレグリン-1に関する(37, 38)。
ニューレグリン-1タンパク質は、(しばしば、膜の一部として、より具体的には膜貫通タンパク質として)細胞内で、又は分泌(可溶)形態として細胞外で検出され得ることに留意すべきである。可溶形態は、当該膜貫通タンパク質の、プロテアーゼ(例えば、腫瘍壊死因子変換酵素(TACE))により切断される細胞外部分に相当し得る。
上記のように、本発明は、膜貫通1型ニューレグリン-1が検査対象者又は結腸直腸ガンを有する患者の生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞において測定されるインビトロ法に関する。
用語「腫瘍関連間葉細胞(T-MC)」又は「腫瘍関連線維芽細胞」又は「筋線維芽細胞」とは、新生物性細管又は腺の周囲に存在し得る紡錘状間葉細胞をいう。これらは、α-平滑筋アクチン(α-SMA)の発現により特徴付けられる。これらは骨髄由来であるか、又はヒト身体内の他の区画及び組織から動員され得る。
用語「検査対象者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが健常組織のレベルと比較して上昇している」とは、どの膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを測定したか及び該レベルをどのように測定したかに依存する。用語「対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベル」とは、対象者の健常組織サンプルで測定した膜貫通1型ニューレグリン-1レベルをいい得る。
膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルは、膜貫通1型ニューレグリン-1タンパク質の発現又はニューレグリン-1の核酸(例えば、mRNA)発現を測定することにより決定し得る。タンパク質レベル及び核酸レベル(例えば、mRNAレベル)の測定は当該分野において周知であり、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫蛍光、フローサイトメトリ、免疫組織化学、核酸ハイブリダイゼーション技法、核酸逆転写法、及び核酸増幅法(例えばqPCR)を含むがこれらに限定されない当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。このような技法は、例えば、US 2007/0218512に詳述されている。具体的実施形態では、バイオマーカーの発現は、バイオマーカータンパク質を特異的に指向する抗体を用いてタンパク質レベルで検出する。これら抗体は、種々の方法、例えばウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降又は免疫組織化学で使用することができる。同様に、腫瘍組織の免疫染色は、臨床情報の評価、従来の予後予測法、及び当該分野で公知の他の分子マーカーの発現と組み合わせることができる。
更に、本発明は、具体的には、サンプル内の腫瘍関連間葉細胞の25%以上が膜貫通1型ニューレグリン-1染色を含むとき、腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが顕著に上昇しているとする上記インビトロ法に関する。用語「25%以上」は、腫瘍関連間葉細胞の25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%が膜貫通1型ニューレグリン-1について明らかに可視の特異的染色を含むことを示す。
よって、結腸直腸ガンを有する患者のサンプル中の腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを測定するアッセイを行うための試薬を含んでなるキットが、本発明の実施に有用である。このアッセイは、患者の生検、原発ガンサンプル若しくは循環性間葉前駆体細胞についてのニューレグリン-1免疫組織化学アッセイ若しくは定量RT-PCRアッセイ又は患者の生物学的流体についてのサンドイッチ型ELISAであり得る。好ましくは、アッセイは、膜貫通1型ニューレグリン-1の免疫組織化学アッセイである。用語「キット」とは、膜貫通1型ニューレグリン-1の発現を特異的に検出するアッセイを行うための少なくとも1つの試薬(例えば、抗体、核酸プローブなど)を含んでなる任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)をいう。キットには、本発明に従って用いる試薬の活性及び正確な使用を検証するために、ポジティブ及び/又はネガティブコントロールが含まれ得る。コントロールの設計及び使用は標準であり周知である。
本発明を更に説明するために、下記の非限定的実施例を示す。
実施例1
材料及び方法
細胞培養
ヒトBM-MSCは、記載(40)されたように、10人のガンを有さない患者から心臓手術前に得た胸骨BM吸引液から単離した。BM-MSCは、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を含有する低グルコース-ダルベッコ改変イーグル培地(LG-DMEM)(Invitrogen, Carlsbad, CA)で培養し、37℃にて空気中5%CO2でインキュベートした。培地は週に2回新しくした。BM-MSCは8継代まで使用した。
ヒトT-MCは、治療目的の外科的切除を受けた3人の結腸腺ガン患者のCRC組織から単離した。正常組織由来間葉細胞(N-MC)は、同じ患者において、腫瘍から少なくとも5cmの距離の近傍正常結腸直腸組織から得た。簡潔には、組織断片を小片(2〜3mm3)に切断し、6ウェルプレートに移し、抗生物質を補充した100μlのFCSを各断片の上に加えた。培養物を37℃にて空気中10%CO2で24時間インキュベートした。24時間後、10%FBSを含有するLG-DMEMを各ウェルに加えた。培地を3〜4日毎に新しくした。3〜6日後に細胞の成長を観察した。15日後、接着性細胞を、トリプシン-EDTA(0.25%−1mM)溶液(Invitrogen)でトリプシン処理して25cm2組織培養フラスコに移した。
ヒトCRC細胞株HCT-8/E11は、以前に記載(41)されたように得た。CRC細胞株HCT 116、SW480、HT-29、LoVo及びT84並びにBLMメラノーマ細胞株はATCC(Manassas, VA)から購入した。全てのガン細胞株を、10%FBS及び抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)で維持し、37℃にて空気中10%CO2でインキュベートした。緑色蛍光タンパク質(peGFP-C1;Clontech, BD Biosciences)を過剰発現するHCT-8/E11細胞(HCT-8/E11-GFP)をエレクトロポレーション(Cell line nucleofector kit V, Lonza, Basel, Switzerland)により作製し、安定細胞株をG418(1mg/ml)で選択した。HER1、HER2、HER3、AKT及びNRG-1を標的する小干渉RNA(siRNA)並びにスクランブルドRNAiネガティブコントロールは、Qiagen(Venlo, The Netherlands)から購入し、エレクトロポレーションによりトランスフェクトした。(siHER1標的=5'-TAC GAA TAT TAA ACA CTT CAA-3'及び5'-ATA GGT ATT GGT GAA TTT AAA-3'、siHER2標的=5'-CAC GTT TGA GTC CAT GCC CAA-3'、siHER3標的=5'-CTT CGT CAT GTT GAA CTA TAA-3'、siAKT標的=5'-CAC GCT TGG TCC CGA GGC CAA-3'、siNRG-1標的=5'-TCG GCT GCA GGT TCC AAA CTA-3')。
ヒトエピトープに対する以下の一次抗体を使用した:ウサギポリクローナル抗HER1、抗HER2、抗HER3、抗tNRG-1、マウスモノクローナル抗BAX、抗BCL-2(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、ウサギモノクローナル抗ホスホ-AKT(p-AKT)(S473)、抗p-BAD(S136)、抗p-HER3(Y1289)、ウサギポリクローナル抗AKT、抗BAD、抗p-HER1(Y1068)(Cell Signalling Technology, Danvers, MA)、マウスモノクローナル抗チューブリン(Sigma-Aldrich, St.-Louis, MO)、ウサギポリクローナル抗p-HER2(Y1196及びY1248)、ヤギポリクローナル抗NRG-β1 EGFドメイン、抗NRG-α1 EGFドメイン、マウスモノクローナル抗p-チロシン(p-Tyr)、抗p27(R&D Systems)、ウサギポリクローナル抗Ki67(NeoMarker, Fremint, CA)、マウスモノクローナル抗PARP(BD Biosciences)、マウスモノクローナル抗サイクリンE(Invitrogen)、マウスモノクローナル抗サイクリンA(Zymed Laboratories, San Francisco, CA)、マウスモノクローナル抗α-SMA(Biogenex, San Ramon, CA)及びマウスモノクローナル抗ビメンチン(Menarini Diagnostics, Zaventem, Belgium)。フローサイトメトリでの免疫表現型決定のため、以下のマウス及びヒトモノクローナル抗体(Ab)並びに同様に接合されたアイソタイプ適合コントロールAb(特に明記しない限り、全てBD Biosciencesから入手)を使用した:CD73-フィコエリトリン(PE)、CD90-アロフィコシアニン(APC)、CD105-フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(AbD Serotec, Oxford, UK)、CD45 ペリジニルクロロフィリン-Cy5(PerCP-Cy5)、CD34-PE-Cy7 CD19-PerpCP、CD11b-PE及びHLA-DR-APC。LY294002はTocris Bioscience(Bristol, UK)から、ワートマニンはCalbiochem(Meudon, France)から、GSK2141795はGlaxoSmithKline(Research Tringle Pek, NC)から購入した。ペルツズマブ(Omnitarg、2C4)及びトラスツズマブ(Herceptin)はGenentech Inc.(San Fransisco, CA)から、ラパチニブ(GW572016)はGlaxoSmtihKlineから、セツキシマブ(C225、Erbitux)はImClone Systems Inc.(New York, NY)から提供を受けた。セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗体及びファロイジン-TRITCはSigma-Aldrichから購入した。組換えヒトNRG-β1 EGFドメイン(rNRG-β1)はR&D Systemsから提供を受けた。
175cm2フラスコ中の1.5×106のBM-MSC、T-MC又はN-MC細胞を、10mlの無血清LG-DMEMで3回洗浄し、37℃にて20mlの無血清LG-DMEMで48時間インキュベートした。CMを採集し、1,250gで5分間4℃にて遠心分離し、0.22μmフィルターに通した。CMをセントリプレップチューブYM-3(Amicon, Millipore Corp., Bedford, MA)中で濃縮し、滅菌し、新鮮な無血清LG-DMEMで希釈した:0.5mlのCMは、5×105細胞に由来する可溶性因子を含有していた。NRG-1涸渇CMはNRG-1免疫沈降により得た:CMを2.5μg/mlの抗NRG-α1と2.5μg/mlの抗NRG-β1 EGFドメインとの組合せと4℃にて一晩インキュベートした。CMからのヘパリン結合性因子は、ヘパリン-アガロースビーズ(Pierce, Rockford, IL)での沈降により得た。ヘパリン-アガロースビーズをヘパリン平衡緩衝液(10mM Tris、50mM NaCl、pH7.0)で洗浄し、CMと一晩インキュベートした。結合タンパク質をLaemmliサンプル緩衝液(1M Tris-HCl[pH6.8]、30%グリセロール、6%SDS、3%β-メルカプトエタノール、0.005%ブロモフェノールブルー)で溶出させ、5分間95℃に加熱し、続いてスピンカラムで遠心分離した。
CMに由来するヘパリン結合性画分を、変性SDS緩衝液中NuPAGE 4%-20% Bis-Trisグラジエントゲル(Invitrogen)で泳動し、40%メタノール及び10%酢酸中0.5%クーマシーブリリアントブルー(Bio-Rad, Hercules, CA)で染色し、40%メタノール及び10%酢酸から構成される溶液中で脱染した。ゲルバンドを加工し、以前(42)に記載されたようにLC-MS/MSで分析した。生MS/MSファイルを、MASCOT DAEMONを用いるNIH MASCOT Cluster(43)に供した。データを、記載(42)されたようにUNIPROT-SPROTデータベースで検索した。各ペプチドの同定のため、MASCOTは、−10×log10(P) (式中、Pは実験データとデータベース配列との間で観察される適合がランダム事象である絶対確率である)として規定される、確率に基づくイオンスコアを知らせてくれる。各ペプチドを出力ファイルに含ませる有意性の閾値は、MASCOT同一性スコア閾値(P<.05)を充足するか又は超える個々のイオンスコアである。MASS SIEVEを使用して、MASCOTのMS/MSデータを分析し、タンパク質節約レポート(protein parsimony reports)(http://www.proteomecommons.org/dev/masssieve)を作成した。2つの別個の実験で検出されたペプチドのみを考慮した。
Laemmli溶解緩衝液(0.125M Tris-HCl(pH=6.8)、10%グリセロール、2.3%ドデシル硫酸ナトリウム[SDS])を用いて細胞を採集した。ビオチン化(Pierce)により細胞表面タンパク質を単離した。リン酸化タンパク質の検出のために、細胞を70%コンフルーエンスに増殖させ、示したように15分間処理した。NP-40溶解緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水[PBS]中、1%Nonidet P-40[NP-40][Sigma-Aldrich]、1%Triton X-100[Bio-Rad])及び以下のプロテアーゼインヒビター:アプロチニン(10μg/mL)、ロイペプチン(10μg/mL)(ICN Biomedicals, Costa Mesa, CA)、フェニルメチルスルホニル フルオリド(1.72mM)、NaF(100mM)、NaVO3(500mM)及びNa4P2O7(500mg/mL)(Sigma-Aldrich)を用いて細胞を採集した。細胞溶解物(25μg)及びCM(20μl)をLaemmliサンプル緩衝液中に懸濁し、95℃で5分間煮沸した。免疫沈降のために、NP-40溶解緩衝液及びプロテアーゼインヒビターを用いて細胞を採集した。抗ウサギ抗体をヒツジ抗ウサギIgGダイナビーズ(Invitrogen)に共有結合させた後、500μgの細胞溶解物又はネガティブコントロールとしての正常ウサギIgG抗体(R&D Systems)と4℃にて2時間インキュベートした。免疫沈降物を溶解緩衝液で5回洗浄し、100μlのLaemmli溶解緩衝液で溶出させ、95℃にて5分間煮沸した。サンプルをNuPAGE 4%-20% Bis-Trisグラジエントゲル(Invitrogen)上で泳動させ、ポリビニリデンフルオリドメンブレンに転写し、PBS中5%脱脂乳又はPBS中4%ウシ血清アルブミン(BSA)(リン酸化タンパク質については0.5%Tween-20を含む)においてブロックし、免疫染色した。Quantity One Program(Bio-Rad)を用いてスキャニングデンシトメトリーを行った。
ヒトPhospho-RTK Arrayキット(R&D Systems)を用いて、42の異なるRTK(R&D Systems)の相対チロシンリン酸化レベルを同時に検出した。
細胞サイクル分布の分析のために、DNA Reagent Kit(BD Biosciences)を製造業者の指示に従って使用した。細胞サイクルの進行は、HCT-8/E11細胞及びHCT 116細胞を50%コンフルーエンスまで増殖させ、続いて血清飢餓に24時間供し、CMBM-MSC又は無血清コントロール培地で24時間処理することにより分析した。細胞をトリプシン処理により採集し、洗浄し、分析時まで緩衝液溶液中で凍結させた。細胞DNA含量は、FACSCantoフローサイトメータ(BD Biosciences)でモニターした。装置セットアップ及び品質制御にDNA QC粒子(BD Biosciences)を用いた。有糸分裂指数(mitotic index)は、ModFit LTソフトウェア(Verity Software House)を用いて算出した。
CRC組織及び近傍正常結腸直腸組織からの間質液は、以前に記載されたように調製した(44)。簡潔には、約0.3gの新鮮な組織をPBS中に回収し、3mm3片に切断し、1.0mlのPBSを含む10ml円錐状プラスチックチューブ中に配置した。サンプルを、空気中10%CO2で37℃にて1時間インキュベートし、1,000rpmにて2分間遠心分離し、続いて上清を吸引した。サンプルを更に4℃にて3,500rpmで20分間遠心分離した。1〜4mg/mlのタンパク質濃度を有する最終上清を機能実験に用いた。
細胞数に対するrNRG-β1又はCMの効果を評価するため、合計9ウェルの播種細胞を各条件について計数した(3連サンプル×3回計数)。最初に、1×104のCRC細胞を、6ウェルプレートで10%FCSを補充したDMEM中に播種した。24時間後、細胞を、無血清条件下に、示されたように処理した;培地を3日毎に交換した。各ウェル中の生存細胞の総数を、3日毎に9日間、Countess自動細胞計数器(Invitrogen)で計数した;死細胞を排除するため、トリパンブルー染色を使用した。
単一細胞コラーゲン浸潤アッセイ
コラーゲン浸潤アッセイは、以前に記載されたように行った(45)。簡潔には、1×105のCRC細胞をI型コラーゲン被覆6ウェルプレートに播種し、10%FBS及び抗生物質を補充した5×105のBM-MSC若しくはT-MCに由来するCM又はDMEMで、示したように処理した。
形態及びコラーゲン中への浸潤は、24時間後に分析し、形状係数([周長]2/[4π面積])及び浸潤指数を用いて定量した。浸潤細胞及び非浸潤細胞の数を、倒立位相差顕微鏡(DMI 3000B; Leica, Wetzlar, Germany)で20×対物レンズ及び10×接眼レンズを用いてランダムに選択した10の顕微鏡視野において2人による盲検で計数した。浸潤指数は、各視野において、ゲルに浸潤した細胞数を計数した細胞総数で除した比として算出した。コラーゲンマトリクスを3%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、記載されたとおりにファロイジン-TRITC(Sigma-Aldrich)染色した(45)。細胞を、Zeiss 510 META共焦点レーザ走査顕微鏡(Carl Zeiss, Micro-imaging Inc., Heidelberg, Germany)で488アルゴン及び543 HeNeレーザを用いて撮像した。Plan Apochromat 63X/1.4油浸DIC又はPlan Apochromat 100x/1.4油浸DIC対物レンズを用いて画像を取得した。示した全ての画像は、z-スタックを畳み込んだものである(collapsed)。
コラーゲンI型溶液の底ゲル層(bottom gel layer)を1×106のBM-MSCと混合し、ゲル化させた。多細胞性スフェロイドを形成するため、50mlのErlenmeyerフラスコにおいて、6mlのDMEM+10%FCS中、1mlあたり2×105のHCT-8/E11 GFP細胞を、10%CO2で37℃にて72時間、70rpmの回転振盪器上で培養した。±300μmの直径を有するスフェロイドを使用した。コラーゲンI型溶液と混合したHCT-8/E11-GFPスフェロイドを、予め形成したBM-MSC含有ゲル層上に穏やかに注いだ。24時間毎に最大96時間、10のスフェロイドの明視野画像及びGFP蛍光画像をZeiss Axiovert 200M蛍光顕微鏡(Carl Zeiss MicroImaging GmbH, Gottingen, Germany)で撮像した。ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色及びKi67染色のために、コラーゲンマトリクスを4%緩衝化ホルモル中で12時間固定し、続いてPBSで洗浄した。固定したマトリクスを、使用時まで、70%エタノールに移した。マトリクスをパラフィンに包埋し、切片にして、H&E又は抗Ki67で染色した。
ポリカーボネートメンブレンフィルター(6.5mm直径、8μm孔サイズ)を備えたトランスウェルチャンバをマトリゲル(Matrigel)で被覆した。フィルターを、コントロール培地又は化学誘引剤としてのCMHCT-8/E11を含む6ウェルプレートに配置し、2×104のBM-MSCをトランスウェルチャンバの上部区画に加えた。48時間後、綿棒で孔を通って浸潤しなかった細胞を除去した。メンブレン下面の細胞をDAPI(Sigma, 0.4mg/ml)で染色した。蛍光画像(Axiovert 200M; Carl Zeiss)を二値画像に変換し、コンピュータ制御のImage J分析によりフィルターあたり10の顕微鏡視野において浸潤細胞を計数した。
動物試験は、ヘント大学医学健康科学部の学部動物実験倫理委員会(Local Ethical Committee for Animal Experiments, Faculty of Medicine and Health Sciences, Ghent University, Belgium)により認可された。4週齢の雌性スイスnu/nuマウス(1群あたり10匹)(Charles River Laboratories, Brussels, Belgium)に、100μlの滅菌PBSに懸濁した106のCRC細胞(HCT-8/E11、SW480及びHCT 116)を、単独で又は2×106のBM-MSCと組み合わせて皮下(s.c.)接種した。腫瘍形成に対する可溶性因子の効果を評価するために、マウスに、2.5×106のBM-MSCに由来する100μlの滅菌CM又はコントロール培地中の106のガン細胞をs.c.接種した。この実験のため、CM(50μl)の腫瘍内注射を3日毎に行った。BM-MSC誘導腫瘍形成に対するペルツズマブの効果を評価するため、106のHCT-8/E11細胞を、単独で又は2×106のBM-MSCと組み合わせてs.c.注射した。1週間後、マウスに、週に3回、ビヒクル(PBS)のみ又はペルツズマブ(600μg/マウス)を腹腔内(i.p.)注射した。腫瘍容積は、式:V=0.4×a×b2 (式中、Vは容積であり、aは腫瘍の長軸長であり、bは腫瘍の短軸長である)を用いて見積もった。動物は、研究に脊椎動物を使用するための規定に則って、腫瘍が約1〜1.5cm3になったとき屠殺した。原発腫瘍を摘出し、秤量し4%緩衝化ホルモル中で12時間固定し、続いてPBSで洗浄した。固定腫瘍は、使用時まで、70%エタノールに移した。腫瘍をパラフィンに包埋し、切片にして、H&Eで染色した。TUNEL、抗α-SMA(Biogenex)、抗ビメンチン及び抗Ki67抗体を用いる免疫組織化学(IHC)を、NexES自動スライド染色システム(Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)を使用してパラフィン切片で行った。細胞増殖(Ki67陽性)は、細胞株あたり2つの原発腫瘍の12画像にわたって平均した、高倍率視野あたりの陽性ガン細胞の%として定量した。
Trizol試薬(Invitrogen)を製造業者のプロトコルに従って用い、細胞のトータルRNAを単離した。RNAをDNaseキット(DNAフリー)で製造業者(Applied Biosystems, Austin, TX)のプロトコルに従って処理し、残る全てのDNAを除去した。RNAの濃度及び純度は、Nanodrop ND-1000(Nanodrop Technologies, Wilmington, DE)で測定した。高容量RNA-to-cDNAキット(Applied Biosystems)を製造業者のガイドラインに従って用いて一本鎖cDNAを合成した。定量リアルタイムPCRを、ABI PRISM 7900 HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)で、NRG1(Assay ID Hs00247620_m1)及びコントロール遺伝子B2M(Assay ID Hs00984230_m1)について100ngのcDNA、Taqman遺伝子発現マスターミックス試薬及びAssay-On-Demand(Applied Biosystems)を用いて、比較CT法(DDCT)で行った。サイクル条件は、50℃で2分間、95℃で10分間並びに40サイクルの95℃で15秒間及び60℃で60秒間であった。
原発CRC組織(n=54人の被検者;男性26人、女性28人;年齢41〜94歳)、近傍正常結腸直腸組織(n=4)、肝臓転移(n=3)及び近傍正常肝臓組織(n=3)を、1996年8月〜2000年3月の間に、アントワープ大学病院(University Hospital Antwerp)で集めた。書面によるインフォームドコンセントを大学倫理委員会の推奨に従って各患者から得た。
組織を切除直後に液体窒素で素早く凍結し、-80℃で保存した。腫瘍ステージ決定は、国際対ガン連合(UICC)に従って行った:10の腫瘍をステージI(T1-2N0M0)、15の腫瘍をステージII(T3-4、N0、M0)、21の腫瘍をステージIII(T1-4、N1-2、M0)、8つの腫瘍をステージIV(TX、NX、M1)とした。対象は手術時であった。全原発腫瘍の包括的リストを表2に示す。
全ての統計計算を、MedCalc(Version 11.0;MedCalc Software, Mariakerke, Belgium)を用いて行った。比較は、個々の時点で、反復測定二元配置分散分析(ANOVA)検定、続いてスチューデントのt検定(ヘテロタイプスフェロイドコラーゲン浸潤アッセイにおける面積及び形状係数、細胞数並びに腫瘍容積)、正規分布についてのダゴスティーノ-ピアソン検定の後の対応のない両側スチューデントt検定(マトリゲル浸潤、Ki67増殖指数及びTUNELアポトーシス指数)、カイ二乗検定(浸潤指数)又はマンホイットニー検定(単一細胞コラーゲン浸潤アッセイにおける形状係数、腫瘍重量)を用いて行った。正常組織 対 腫瘍組織のtNRG-1発現の比較及び5年PFSとのtNRG-1の関連は、カイ二乗検定を用いて行った。臨床病理学的パラメータとのtNRG-1の関連は、傾向についてのカイ二乗検定により分析した。示した全てのデータは、少なくとも3つの独立実験を代表し、平均及び標準誤差として表す。全ての統計検定は両側検定であった。.05未満のP値を統計学的に有意であると見なした。
ヒトCRC細胞の浸潤、生存及び腫瘍形成におけるBM-MSCの役割
CRC細胞に対するナイーブなBM-MSCに由来する可溶性因子の機能的効果を調べるため、コラーゲン浸潤実験を行った。HCT-8/E11細胞、SW480細胞及びHCT 116細胞をコラーゲンI型ゲル上に播種した;CMBM-MSCでの処理は、CRC細胞HCT-8/E11、SW480及びHCT 116において浸潤伸長の形成を伴う顕著な形態学的変化を誘導した(図1A、上パネル)。24時間処理後、伸長した浸潤CRC細胞の数は、CMBM-MSCでの刺激により2.4〜5.5倍高くなった(HCT-8/E11についてはP=.002、HCT 118についてはP=.008、SW480についてはP=.006、カイ二乗検定)(図1A, 下パネル)。ファロイジン-TRITCでのF-アクチン染色より、HCT-8/E11細胞について、コントロール条件下では丸みを帯びた外観、CMBM-MSCでの処理後には複数の突起を有する細長い形態が明らかになった(図1B、右パネル)。CMBM-MSC処理HCT-8/E11細胞の平均形状係数は、コントロールの1.8倍であり、統計学的に有意な拡張を示した(P=.001;マンホイットニー検定)(図1B、左パネル)。
CMBM-MSCで処理したHCT-8/E11細胞における42の一連の異なるRTKの相対的チロシンリン酸化レベルを分析した(図3A)。スクリーニングにより、2つの二連免疫反応性スポット(p-HER3)で示されるように、HER3リン酸化レベルがCMBM-MSC処理後に10倍高くなることが明らかとなった。CMBM-MSC処理後のHER3チロシンリン酸化は、HER3免疫沈降に続くHRP接合ホスホ-チロシン(p-Tyr)抗体での検出により更に確証された(図3B)。
HER3は、Y1289を含む6つのチロシンを含有する、PI3Kのp85調節サブユニットの結合部位を有する。このことにより、HER3シグナル伝達は他のHERファミリーメンバーと区別される(48)。PI3Kの最も十分に特徴付けられた標的の1つはAKTキナーゼである。HER3/PI3K/AKT経路は、生存、細胞骨格再配置及び浸潤を調節する(49)。図3Cに示すように、CMBM-MSCは3つの別個のCRC細胞株においてY1289 p-HER3を刺激した。HER3は最低限の内在性(intrinsic)チロシンキナーゼ活性のみを有するので、そのリン酸化は、主に、他のHERファミリーメンバーとの物理的関係に依存する(50)。HER2は、全てのHERレセプターの優先的なヘテロ二量体化パートナーである(51)。42のRTKのスクリーニングにより、HER1及びHER2の両方がHCT-8/E11において基本活性を示すことが明らかになった。CMBM-MSC処理はHER1リン酸化レベルを変化させなかったが、総HER2リン酸化は中程度に増大した(図3A)。一致することに、ウェスタンブロッティングにより、CMBM-MSC処理に際してY1196及びY1248 p-HER2は増加するが、Y1068 p-HER1は変化しないことが明らかとなった(図3D)。
ウェスタンブロッティングは、「a」型細胞質テイル(最も豊富なバリアント)に共通するNRG-1エピトープを指向する特異的抗tNRG-1抗体を用いて行った(図4A)。I型NRG-1(ヒレグリンとしても知られる(57-59))の分子量に相当する105kDaの免疫反応性バンドをBM-MSC(図4B、左パネル)及びポジティブコントロールBLM(37)で同定した。細胞表面での105kDa免疫反応性バンドの局在が、BM-MSCについてビオチン化により確証された(図4B、右パネル)。最も重要なことに、一連のヒトCRC細胞株(HT-29、Caco-2、LoVo、HCT 116、T84及びSW480を含む)は、イムノブロットで、tNRG-1発現についてネガティブであった(データは示さず)。一致して、qRT-PCR分析により、この(非)発現レベルはmRNAレベルで検証された(図4C)。
CMBM-MSCのヘパリン結合性タンパク質について行ったプロテオミクス分析により、40〜50kDa領域に質量分析で同定される4つの独特なNRG-1ペプチドの存在が確証された。図4Dに示されるように、これらペプチドは、NRG-1のヘパリン結合性Ig様ドメイン及び共通EGF(EGFc)ドメインに由来していた。NRG-α1及びNRG-β1 EGF様ドメインに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、予測された40〜44kDa領域に、おそらくグリコシル化の結果としての、2つの免疫反応性バンドが示された(図4E)(59, 60)。
CMBM-MSC誘導HER3及びAKT活性化を逆転させるNRG-α1/β1中和抗体とのCMBM-MSCの予備インキュベーションにより示されるように、生物学的に活性なNRG-α1及びNRG-β1は共に、BM-MSCが培養培地に放出した(図5F)。
NRG-α1/β1中和抗体によるCMBM-MSC中のNRG-1涸渇は、CMBM-MSC誘導浸潤を82%阻害した一方、マウスIgGでの処理は浸潤を阻害しなかった(P=.004、カイ二乗検定)(図6A)。HER2又はHER3 siRNAでの処理は、CMBM-MSC誘導浸潤を有意に66〜74%低下させた(siHER2についてP=.046、siHER3についてP=.02、カイ二乗検定);HER2及びHER3 siRNAの組合せは相加応答を示さなかった。HER1 siRNAはCMBM-MSC誘導浸潤を有意には低下させなかった(図6B)(P=.617、カイ二乗検定)。ラパチニブ及びペルツズマブは、形状係数により測定されるように、CMBM-MSC誘導形態学的及び機能的応答(ラパチニブについてP<.001、ペルツズマブについてP=.005、マンホイットニー検定)及び浸潤(ラパチニブ及びペルツズマブについてP=.025、カイ二乗検定)をブロックした。他のHER中和抗体及びインヒビターで、CMBM-MSC誘導機能的応答に対する有意な効果は観察されなかった(浸潤指数:セツキシマブについてP=.824、トラスツズマブについてP=.374、カイ二乗検定;形状係数:セツキシマブについてP=.333、トラスツズマブについてP=.153、マンホイットニー検定)(図6C)。次に、CMBM-MSC誘導浸潤におけるPI3K/AKTの役割を調べた。ガン細胞をPI3KインヒビターLY294002、ワートマニン、汎AKTキナーゼインヒビターGSK2141795、並びにAKT siRNAで処理した(図6D)。HCT-8/E11の基本浸潤を阻害しなかった薬剤濃度が、CMBM-MSC誘導浸潤をブロックできた(LY294002(10μM)についてP=.006、ワートマニン(10μM)についてP=.033、GSK2141795(0.1μM)についてP=.034、GSK2141795(1μM)についてP<.001、カイ二乗検定)。AKT siRNAでのHCT-8/E11細胞のトランスフェクションは、CMBM-MSC誘導浸潤を72%減少させた(P=.021、カイ二乗検定)(図6E)。
原発CRC(n=54)、近傍正常結腸直腸組織(n=4)、肝臓転移(n=3)及び近傍正常肝臓組織(n=3)におけるtNRG-1の発現をIHCで調べた(図8A及びB並びに表2)。54のCRCのうち41(76%)及び3つの肝臓転移のうち3つ(100%)が高い間質性tNRG-1発現を示した。対照的に、tNRG-1発現は、近傍正常組織の間質(0/4;0%)(P=.006;カイ二乗検定)及びほとんどのCRC標本の上皮ガン細胞(47/54、87%)で陰性であった。間質性tNRG-1発現は、新生細管及び腺の周り、特に浸潤最前部の紡錘状間葉細胞に限定された(図8A、上パネル)。間葉細胞によるtNRG-1発現の頻度は、正常組織から腫瘍組織へ顕著に増大した。更に、原発腫瘍のtNRG-1染色パターンに勾配が観察され、ガン細胞を直接取り囲む間質で顕著に発現し、腫瘍周囲間質の遠位部分で発現は僅かであるか又はなかった。対照的に、活性化腫瘍関連間葉細胞又は筋線維芽細胞のマーカーたるα-SMAは、原発腫瘍及び肝臓転移において、間質細胞のほとんど全てで発現した(図13)。浸潤深度及びUICCステージは間質性tNRG-1発現と有意に関連した(P=.04及びP=.005;傾向についてのカイ二乗検定)。更に、高い間質性tNRG-1発現は、5年PFSの減少に有意に関連した(P=.002;カイ二乗検定)(図8B)。
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Claims (7)
- − 検査対象者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 該膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、検査対象者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、検査対象者がより不良な予後を有することを示す、検査対象者における結腸直腸ガンの予後予測のためのインビトロ法。 - − 検査対象者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 該膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、検査対象者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、該検査対象者がニューレグリン-1活性の阻止又はHER3のチロシンキナーゼ活性の阻止に基づく治療の利益を享受することを示す、結腸直腸ガンを有する検査対象者がニューレグリン-1活性の阻止又はHER3のチロシンキナーゼ活性の阻止に基づく治療の利益を享受するかどうかの判定を補助するデータを取得するためのインビトロ法。 - − 検査対象者から採取した生物学的サンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1のレベルを測定すること、及び
− 該膜貫通1型ニューレグリン-1レベルを、対象者の健常組織サンプルから得た膜貫通1型ニューレグリン-1の参照レベルと比較すること
を含んでなり、検査対象者のサンプル中に存在する腫瘍関連間葉細胞における膜貫通1型ニューレグリン-1レベルが健常組織のレベルと比較して顕著に上昇していることが、該検査対象者がHER1のチロシンキナーゼ活性の阻止に基づく治療に対する抵抗性を有することを示す、結腸直腸ガンを有する検査対象者がHER1活性の阻止に基づく治療に対する抵抗性を有するか又は発症したかの判定又は決定を補助するデータを取得するためのインビトロ法。 - 前記生物学的サンプルが前記検査対象者から採取した結腸直腸ガン組織である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインビトロ法。
- 前記膜貫通1型ニューレグリン-1が凍結サンプルについての免疫組織化学により測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインビトロ法。
- 前記サンプル内の腫瘍関連間葉細胞の25%以上が膜貫通1型ニューレグリン-1染色を含むとき、膜貫通1型ニューレグリン-1レベルは顕著に上昇しているとする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインビトロ法。
- 前記より不良な予後が、国際対ガン連合に従うガンステージでより高いステージに属する見込みが顕著に上昇していること、及び/又は腫瘍浸潤深度が増大する見込みが顕著に上昇していること、及び/又は無増悪生存率が減少する見込みが顕著に上昇していることに対応する、請求項1又は請求項1に従属する場合の請求項4〜6のいずれか1項に記載のインビトロ法。
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