JP6205801B2 - ラジアル転がり軸受用試験装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車、各種工作機械、各種産業機械等の回転支持部に組み込むラジアル転がり軸受の耐久性評価を行う為のラジアル転がり軸受用試験装置の改良に関する。
転がり軸受の寿命は、この転がり軸受を構成する軌道輪や転動体の材質、形状、大きさ、潤滑状態、荷重等の各種因子が複雑に絡み合って変化する。従って、用途に応じた適切な耐久性を有する転がり軸受を得る為には、前記各種因子が前記転がり軸受の寿命に及ぼす影響を知る為の試験を行う必要がある。図7は、特許文献1に記載されたラジアル転がり軸受用試験装置を示している。このラジアル転がり軸受用試験装置は、固定ハウジング1の内側に回転軸2の先端部(図7の左端部)と基端寄り部分とを、それぞれが供試軸受である、1対のラジアル転がり軸受3、3により回転自在に支持している。又、前記回転軸2のうちでこれら両ラジアル転がり軸受3、3の間に位置する中間部の周囲に可動ハウジング4を、前記回転軸2と同心に配置している。この可動ハウジング4は前記固定ハウジング1の内部に、径方向の変位を可能に、回転方向の変位を阻止した状態で設けられている。そして、前記可動ハウジング4の内周面と前記回転軸2の中間部外周面との間に、サポート軸受5を設けている。そして、このサポート軸受5及び前記両ラジアル転がり軸受3、3の下半部を、前記固定ハウジング1の内側に設けられた潤滑油溜り6に貯留された潤滑油中に浸漬している。この潤滑油中には、必要に応じて、金属粉末、セラミック粉末等の異物7、7を混入する。又、油圧シリンダ等の加圧装置により、前記可動ハウジング4に、鉛直方向(図7の上下方向)に向いた所望値のラジアル荷重Fを付与自在としている。
前記両ラジアル転がり軸受3、3の寿命試験を行う場合には、前記加圧装置により前記可動ハウジング4を押圧する事で、この可動ハウジング4、前記サポート軸受5及び前記回転軸2を介し前記両ラジアル転がり軸受3、3を鉛直方向に押圧すると共に、この回転軸2を回転駆動する。この結果、所望のラジアル荷重Fを付加されつつ、所望の回転速度で回転された状態で、前記両ラジアル転がり軸受3、3の耐久性評価の為の寿命試験が行える。上述の様なラジアル転がり軸受用試験装置により、前記両ラジアル転がり軸受3、3の寿命試験を行う場合、前記潤滑油溜り6内での潤滑油の循環性を確保し、この潤滑油の油温等の性状をこの潤滑油溜り6内全体で均一にする事が重要である。
図8は、ラジアル転がり軸受用試験装置の従来構造の第2例を示している。固定ハウジング1aは、上方が開口した矩形箱状で、平板状の底板部8に、互いに平行な1対の側板部9、9と、これら両側板部9、9の端部同士を連結した1対の端板部とを、それぞれ溶接等により支持固定して造る。この様な固定ハウジング1aを備えたラジアル転がり軸受用試験装置により、ラジアル転がり軸受3aの寿命試験を行う際には、このラジアル転がり軸受3aを構成する玉10、10の回転(公転)に伴って、前記固定ハウジング1aの内側に設けられた潤滑油溜り6a内の潤滑油に、前記各玉10、10の回転方向と同じ方向の流れが惹起される。この様な従来構造の第2例の場合、前記底板部8の上面と前記両側板部9、9の内側面との連続部である隅部(図8に鎖点αで囲んだ部分)で、潤滑油の滞留が起こり易い。この結果、前記潤滑油溜り6a内で、潤滑油の性状が不均一になる可能性がある。特に、前記潤滑油中に異物7、7を混入した場合、これら異物7、7が前記隅部に滞留し、供試軸受である前記ラジアル転がり軸受3aの負荷圏に適切に送り込む事ができなくなって、信頼性の高い試験を行えない可能性がある。
特開2007−3196号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、潤滑油の循環性を確保し、信頼性が高い試験を行えるラジアル転がり軸受用試験装置を実現すべく発明したものである。
本発明のラジアル転がり軸受用試験装置は、前述した従来から知られているラジアル転がり軸受用試験装置と同様に、ラジアル転がり軸受の耐久性評価(寿命試験)を行う為に使用する。
前記寿命試験の対象となるラジアル転がり軸受は、外輪と、内輪と、複数個の転動体とを備える。
このうちの外輪は、内周面に外輪軌道を有する。
又、前記内輪は、外周面に内輪軌道を有する。
又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられている。
そして、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置は、回転軸と、潤滑油溜りと、回転駆動手段と、荷重付与手段とを備える。
このうちの回転軸は、供試軸受であるラジアル転がり軸受の内輪を外嵌する為のものである。
又、前記回転駆動手段は、前記回転軸を回転駆動する。
又、前記潤滑油溜りは、前記ラジアル転がり軸受の一部を浸漬する潤滑油を貯留する為のものである。
又、前記荷重付与手段は、前記ラジアル転がり軸受にラジアル荷重を付与する。
特に、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置に於いては、前記潤滑油溜りの底面を、前記回転軸(前記ラジアル転がり軸受)の中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面とする。更に、前記潤滑油の油温を所望の温度に保持する為のヒータを、前記潤滑油溜りの底面と前記ラジアル転がり軸受又はこのラジアル転がり軸受を内嵌した部材の外周面との間に、このヒータの上下両側面と、これら潤滑油溜りの底面及びラジアル転がり軸受又はこのラジアル転がり軸受を内嵌した部材の外周面との間に隙間を介在させた状態で設けている。
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記潤滑油溜りの底面の曲率半径を、前記ラジアル転がり軸受の外径の0.6倍以上、2倍以下(好ましくは、1倍以下)とする。
又、好ましくは請求項3に記載した発明の様に、前記回転軸を回転駆動する以前の状態で、前記潤滑油の油面(上面)を、前記回転軸の中心軸上に位置させる。
又、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置を実施する場合に好ましくは、請求項に記載した発明の様に、前記ヒータを、前記潤滑油溜りの底面に沿って湾曲させる。
又、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置を実施する場合に好ましくは、請求項に記載した発明の様に、前記潤滑油中に、金属粉末、セラミック粉末等の異物を混入する。
又、好ましくは請求項に記載した発明の様に、前記荷重付与手段を、水平方向にラジアル荷重を付与するものとする。
上述の様に構成する本発明のラジアル転がり軸受用試験装置によれば、潤滑油を貯留する潤滑油溜りの底面を、回転軸の中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面としている為、潤滑油がこの潤滑油溜り内で滞留する事を防止できる。この為、潤滑油を循環させる事ができる。従って、この潤滑油の性状をこの潤滑油溜り内全体で均一にできる。これにより、ラジアル転がり軸受の寿命に関して、信頼性の高い評価を行う事が可能になる。
本発明の実施の形態の1例を示すラジアル転がり軸受用試験装置の断面図。 図1のX−X断面に相当する模式図。 固定ハウジングを取り出して示す平面図(A)と、(A)の下方から見た状態を示す端面図(B) ラジアル荷重を鉛直方向に付与する事の問題点を説明する為の断面図。 回転軸の回転方向を規制する事による効果を説明する為の断面図。 固定ハウジングを一体に形成する事による効果を説明する為の比較例として示す図。 従来構造の第1例を示すラジアル転がり軸受用試験装置の断面図。 従来構造の第2例を示す、図7のY−Y断面に相当する図。
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の場合、回転軸2aの先端部(図1の左端部)と基端寄り部分とを固定ハウジング1bに対し、それぞれが供試軸受である、1対のラジアル転がり軸受3b、3cにより回転自在に支持している。即ち、これら両ラジアル転がり軸受3b、3cの内輪11、11を、前記回転軸2aの先端部と基端寄り部分とに外嵌している。これら両内輪11、11の内側面は、この回転軸2aの中間部に設けた段差部12、12に、ワッシャ13、13を介して突き当てている。又、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの外輪14、14を、前記固定ハウジング1bのうち、前記回転軸2aの軸方向に離隔する状態で鉛直方向に立設された1対の軸方向側壁部15、15に支持している。この為に、これら両軸方向側壁部15、15に設けた円孔16、16の内側に略円筒状の支持スリーブ17a、17bを取り付けている。そして、前記各外輪14、14を、これら両支持スリーブ17a、17bの先端部内周面に設けた円筒面状の支持部18a、18bに内嵌している。前記両ラジアル転がり軸受3b、3cのうちの一方(図1の右側)のラジアル転がり軸受3bを構成する外輪14の外側面を、前記両支持スリーブ17a、17bのうちの一方の支持スリーブ17aの支持部18aの奥端部に設けた段差面に突き当てている。これにより、前記一方のラジアル転がり軸受3bを、前記ワッシャ13の外側面と前記一方の支持スリーブ17aの支持部18aの段差面との間で軸方向に強く挟持している。これに対し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cのうちの他方(図1の左側)のラジアル転がり軸受3cを構成する外輪14の外側面は、前記両支持スリーブ17a、17bのうちの他方の支持スリーブ17bの内側に軸方向変位を可能に挿入(嵌入)したピストン部19の先端面に突き当てている。これにより、前記他方のラジアル転がり軸受3cを、前記ワッシャ13の外側面と前記ピストン部19の先端面との間で軸方向に強く挟持している。本例の場合、このピストン部19の基端面を、図示しない油圧シリンダ等の加圧装置により押圧する事で、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに所望値のアキシアル荷重Fを付与できる様にしている。
又、前記回転軸2aの中間部の周囲にこの回転軸2aと同心に、略円筒状の可動ハウジング4aを配置している。そして、この可動ハウジング4aの内周面と前記回転軸2aの中間部外周面との間に、1対のサポート軸受5a、5aを設けている。前記可動ハウジング4aは、前記固定ハウジング1bの内部に、径方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を阻止した状態で設けられている。そして、本例の場合、前記可動ハウジング4aに、水平方向に所望値のラジアル荷重Fを付与できる様にしている。即ち、前記固定ハウジング1bを構成する前記両軸方向側壁部15、15の端部同士を連続させた1対の幅方向側壁部20a、20bのうち、一方(図2の右側)の幅方向側壁部20aに水平方向に貫通する状態で設けた通孔21に、略円柱状の押圧治具22の先端部を挿通し、この押圧治具22の基端面(図2の右端面)に、前記固定ハウジング1b(幅方向側壁部20a)の外側に設置した、油圧シリンダ等の加圧装置の押圧ロッド23の先端面(図2の左端面)を、鋼球24及び押圧板25を介して突き当てて、ラジアル荷重付与手段を構成している。又、この押圧板25の外側面に振動センサ26を設け、この振動センサ26によりこの押圧板25の振動を検出する事で、前記各部材2a、5a、4a、22を介し前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの振動を検出自在としている。
又、前記回転軸2aを、直接若しくは無端ベルトを掛け渡されたプーリ及びカップリングを介して、電動モータ等の駆動源の出力軸に接続し、前記回転軸2aを所望の回転速度で回転駆動する為の回転駆動手段を構成している。
又、本例の場合、前記固定ハウジング1bは、上方が開口した略矩形箱状で、炭素鋼製の素材に鍛造加工及び切削加工を施して造る事により、全体を一体に形成している。又、前記固定ハウジング1bの内側には、潤滑油溜り6bが設けられており、この潤滑油溜り6bの底面は、前記回転軸2aと同心の部分円筒状の凹曲面としている。この潤滑油溜り6bの底面の曲率半径rは、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの外径Dの0.6倍以上、2倍以下(好ましくは、1倍以下)としている(0.6D≦r≦2D)。又、潤滑油中常に浸漬される前記潤滑油溜り6bの底部には、ヒータ27を設けている。具体的には、この潤滑油溜り6bの底面と前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ17a、17bの外周面との間に、板状のヒータ27を、このヒータ27の上下両側面と、この潤滑油溜り6bの底面、並びに、前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ17a、17bの外周面との間に隙間を介在させた状態で設けている。前記ヒータ27は、前記潤滑油溜り6bの底面に沿って湾曲している。即ち、このヒータ27の上下両側面を、前記回転軸2aの中心軸と同心の部分円筒状の曲面としている。そして、前記潤滑油溜り6bに、所望の比率で金属粉末やセラミック粉末等の異物7、7を混入した潤滑油を貯留している。この為、実験開始から実験終了までの間中、この潤滑油中の前記異物7、7の混入率が変化する事はない。そして、前記回転軸2a、延いては前記両ラジアル転がり軸受3a、3b及び前記両サポート軸受5a、5aの回転に伴って、前記潤滑油が撹拌され、前記異物7、7がこの潤滑油中で均一に分散する。尚、前記潤滑油溜り6b内に、この潤滑油溜り6b内の潤滑油の流れを適正にする為の整流手段を設ける事もできる。
上述の様に構成する、本例のラジアル転がり軸受用試験装置により、供試軸受である前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの耐久性試験(寿命試験)を行う場合には、前記回転軸2aによる撹拌効果及び負荷圏の潤滑性を考慮して、前記潤滑油溜り6b内に潤滑油を、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、この回転軸2aの下端部から上端部の範囲内に規制する事が好ましい。即ち、潤滑油の油面(上面)を、前記回転軸2aの下端部よりも下方に設定すると、この回転軸2aによる撹拌効果が得られなくなり、この回転軸2aの上端部よりも上方に設定すると、負荷圏の大部分が潤滑油中に浸漬してしまい、異物の影響が表れ難くなって、試験時間が長くなる。そこで、本例の場合には、潤滑油の油面がこの回転軸2aの中心軸上に位置する様に貯留している。そして、この回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの下半部のみを前記潤滑油中に浸漬している。これにより、寿命試験中に、前記回転軸2aの外周面のうちの少なくとも下端部が潤滑油中に浸漬し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cが径方向に関して少なくとも下端から1/3の部分が潤滑油中に浸漬した状態となる様にしている。そして、前記ヒータ27によりこの潤滑油の油温を所望の温度(例えば100℃)に保持する。本例の場合、この潤滑油の油面を、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、この回転軸2aの中心軸上に位置させている為、寿命試験中にも、この回転軸2aや前記両ラジアル転がり軸受3b、3cを所定の温度の範囲内に保持し易い。又、前記ピストン部19の基端面を押圧する事で前記回転軸2aを軸方向に押圧し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに所望のアキシアル荷重Fを付加する。更に、前記押圧ロッド23により前記可動ハウジング4aの外周面を押圧する事で前記回転軸2aを水平方向に押圧し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに所望のラジアル荷重Fを付加する。この状態で、前記回転軸2aを、これら両ラジアル転がり軸受3b、3cを構成する玉10、10の回転(公転)方向が、これら両ラジアル転がり軸受3b、3cの円周方向に関して前記ラジアル荷重Fの作用方向前方に位置する負荷圏(図2に太線で示す部分)を、下方から上方に向け通過する方向(図2の時計方向)に、所望の回転速度で回転駆動する。この結果、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cが、所望のラジアル荷重F及びアキシアル荷重Fを付加されつつ所望の回転速度で回転駆動される。この状態で、前記振動センサ26が検出する前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの振動値(振幅)が、試験開始時の初期振動値の1.5倍以上、3倍未満(例えば2倍)に設定された閾値を超えた時点をこれら両ラジアル転がり軸受3b、3cの寿命とし、試験を終了する。この閾値が初期振動値の1.5倍未満の場合、これら両ラジアル転がり軸受3b、3c以外の破損に基づく振動により試験が終了する可能性がある。又、前記閾値が3倍以上である場合は、破損が大幅に進行してしまい、破損の起点となった部位を特定できなくなる可能性がある。尚、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cを交換する際には、前記両支持スリーブ17a、17bを軸方向外方に変位させた状態で、前記回転軸2aの軸方向両側から前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの交換を行う。
上述の様な本例のラジアル転がり軸受用試験装置によれば、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの寿命試験に於いて、潤滑油が前記潤滑油溜り6b内で滞留するのを防止し、この潤滑油の性状をこの潤滑油溜り6b内全体で均一にできる。即ち、本例の場合には、前記潤滑油溜り6bの底面を、前記回転軸2aの中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面としている為、この潤滑油溜り6b内で前記潤滑油やこの潤滑油中に混入した大小様々な大きさの異物7、7が滞留(堆積)する事を防止できる。又、この潤滑油溜り6b内を洗浄する際に、これら異物7、7が隅部に付着し残留するのを防止できる。更に、本例の場合、前記潤滑油溜り6bの底面と、前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ17a、17bの外周面との間に前記ヒータ27を、これら各面とこのヒータ27の上下両側面との間にそれぞれ隙間を介在させた状態で設けている。この為、流路の絞りに基づき、このヒータ27の上下両側部分で前記潤滑油の流速を速くでき、この潤滑油や前記異物7、7がより滞留し難くできる。又、潤滑油との熱交換を効率良く行える。特に、本例の場合、前記潤滑油溜り6aの底面の曲率半径rを、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの外径Dの0.6倍以上、2倍以下としている(0.6D≦r≦2D)為、必要とする潤滑油の油量を徒に増大させる事なく、前記潤滑油の循環性を良好にできる。更に、前記曲率半径rを、前記外径Dの1倍以下(r≦D)とすれば、前記潤滑油の油量をより低減する事ができる。即ち、前記曲率半径rを、前記外径Dの2倍よりも大きくした場合、必要とする潤滑油の油量が徒に増大する。一方、前記曲率半径rを、前記外径Dの0.6倍未満とした場合、前記ヒータ27の上下両側部分の隙間が狭くなり過ぎて、前記潤滑油の循環性が低下する。又、このヒータ27の上下両側部分に隙間を設ける事で、このヒータ27の上下両側面と前記潤滑油との接触面積を広くでき、潤滑油の油温調節を効率良く行う事ができる。又、前記潤滑油溜り6bの底面を凹曲面として、この潤滑油溜り6bの表面を滑らかに連続させている為、この潤滑油溜り6bの表面が均一に熱を吸収又は放散する事ができて、油温にばらつきが生じる事を防止できる。具体的には、前記潤滑油溜り6a内に貯留した潤滑油の油温を、所望の温度±3℃の範囲内に調節可能になる。
又、本例の場合、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの下半部のみを潤滑油中に浸漬し、これら両ラジアル転がり軸受3b、3cに対し水平方向にラジアル荷重Fを付与している。更に、前記回転軸2aの回転方向を規制し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cを構成する玉10、10が、前記負荷圏を下方から上方に向け通過する方向に回転(公転)する様にしている。この為、このラジアル荷重Fの作用方向前方に位置する負荷圏の潤滑状態を適正な状態にする事ができ、この負荷圏で潤滑油が不足乃至枯渇する傾向になって、試験結果のばらつきが大きくなったり、潤滑状態が過剰になって、試験時間が徒に増大するのを防止できる。更に、前記各玉10、10の公転方向を規制している為、前記潤滑油溜り6b内に貯留した潤滑油中に混入した前記異物7、7を、前記負荷圏に適切に送り込む事ができ、この面からも試験結果を安定させられる(ばらつきを抑えられる)。
上述の点に就いて、図2に加え図4〜5を用いて説明する。図4は、前述した従来構造の場合と同様に、供試軸受であるラジアル転がり軸受3dに対し、ラジアル荷重を鉛直方向に付与する構造を示している。先ず、このラジアル転がり軸受3dの内輪11を、回転軸2aを介し鉛直方向下向きに押圧した場合、図4の(A)に示す様に、前記ラジアル転がり軸受3dの下端部{同図の(A)に太線で示した部分}が負荷圏となる(この下端部にラジアル荷重Fが付与される。)。前記ラジアル転がり軸受3dは、下半部を潤滑油中に浸漬している為、負荷圏の潤滑状態が過剰となり(良好になり過ぎて)、試験時間が増大する。一方、サポート軸受5(図7参照)は上端部が負荷圏となり、この負荷圏の潤滑油が不足乃至枯渇する傾向となる。この結果、前記サポート軸受5の寿命が短くなり、このサポート軸受5を頻繁に交換する必要がある。又、このサポート軸受5の寿命が前記ラジアル転がり軸受3dの寿命よりも短くなって、このラジアル転がり軸受3dの寿命試験を正常に行えなくなる可能性がある。これに対し、このラジアル転がり軸受3dの内輪11を、前記回転軸2aを介し鉛直方向上向きに押圧した場合、図4の(B)に示す様に、前記ラジアル転がり軸受3dの上端部{同図の(B)に太線で示した部分}が負荷圏となる(この上端部にラジアル荷重Fが付加される。)。この負荷圏となる上端部では潤滑油が不足乃至枯渇する傾向となる為、寿命試験を行った場合に、何らかの原因で前記ラジアル転がり軸受3dの上端部に潤滑油の飛沫がかかるか、かからないかによって、試験結果が大きくばらつく可能性がある。この様なばらつきは、潤滑油中に異物7、7を混入した場合に顕著となる。
これに対し、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに対し水平方向にラジアル荷重Fを付与すると共に、前記各玉10、10の公転方向を、前記負荷圏を下方から上方に向け通過する方向とした場合、図5の(A)に示す様に、前記潤滑油中に、前記潤滑油溜り6bの底部から前記負荷圏に向く流れを惹起できる。この結果、前記負荷圏のうちで、前記潤滑油中に浸漬していない部分にも、この潤滑油の一部を跳ねかける事ができる為、潤滑油を程良く行き渡らせる事ができて、安定した試験を行う事が可能になる。又、前記潤滑油中に混入した異物7、7を前記負荷圏に適切に送り込む事ができる。一方、前記各玉10、10の公転方向を、前記負荷圏を上方から下方に向け通過する方向とした場合、図5の(B)に示す様に、潤滑油中に、ラジアル転がり軸受3b(3c)の円周方向に関して前記負荷圏と反対側に向く流れが惹起される。この為、前記負荷圏のうちで、前記潤滑油中に浸漬していない部分では潤滑油が不足する。従って、この潤滑油が不足した部分(範囲)は、僅かな飛沫の影響で潤滑状態が変化し、試験結果がばらつく要因となる。又、前記負荷圏に適切な量の異物7、7を送り込めなくなる(異物7、7は潤滑油の流れにより非負荷圏側に集まってしまう)。又、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、潤滑油の油面がこの回転軸2aの中心軸上に位置する様にしている為、前記可動ハウジング4aの外周面と前記押圧治具22の先端面との当接部を潤滑して、これら両面同士の間でフレッチングが発生するのを防止できる。更に、前記回転軸2aの外周面のうちの少なくとも下端部を、潤滑油中に浸漬させられる為、前記両ラジアル転がり軸受3b、3c及び前記回転軸2a等の前記固定ハウジング1bの内側に配置された部材の温度変化を抑制する事ができる。
更に、本例の場合、前記固定ハウジング1bを、全体を一体に形成している為、前記ラジアル荷重F及び前記アキシアル荷重Fに対する剛性を高くできる。この点に就いて、図2に加え、比較例に係る構造を示した図6を用いて説明する。固定ハウジング1cは、前述した従来構造の第2例の場合と同様に、上方が開口した矩形箱状で、平板状の底板部8aに、互いに平行な1対の側板部9a、9aと、これら両側板部9a、9aの端部同士を連結した1対の端板部とを、それぞれ溶接等により支持固定する事で造られている。この為、回転軸2aに付与する水平方向のラジアル荷重Fを大きくした場合に、前記固定ハウジング1cの前記側板部9a、9aが、このラジアル荷重Fの作用方向に向け倒れる方向に変形する可能性がある。この結果、このラジアル荷重Fを前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに正常に付与できなくなって、試験結果のばらつきが大きくなる可能性がある。これに対し、本例の場合、前記固定ハウジング1bは全体を一体に形成し、前記ラジアル荷重Fに対する剛性を高くしている為、このラジアル荷重Fを前記両ラジアル転がり軸受3b、3cに正常に付与して、試験結果がばらつく事を防止できる。又、前記潤滑油溜り6bの内面に、複数の板材を組み合わせる事で形成される継ぎ目がない為、伝熱性を良好にできる。更に、前記潤滑油溜り6b内を洗浄する際に、前記異物7、7が前記継ぎ目に付着し(引っ掛かり)残留する事がない。この面からも前記潤滑油の性状を均一に保って、試験結果のばらつきを抑えられる。
更に、本例の場合、前記振動センサ26を、先端面を前記可動ハウジング4aに当接した押圧治具22の基端面と、前記押圧ロッド23により押圧された鋼球24との間に設けた押圧板25に設置している。即ち、前記振動センサ26を、前記ラジアル荷重Fの作用方向に関して直列に設けた前記押圧板25の振動を検知する様に設けている為、前記両ラジアル転がり軸受3b、3cの振動の検出精度が向上する。又、前記押圧治具22の基端面と前記押圧板25とを面接触させている。この面からも前記振動の検出精度の向上を図れる。又、前記振動センサ26は、前記固定ハウジング1bの外側に設けている為、この振動センサ26に潤滑油の飛沫がかかったり、前記ヒータ27の発生する熱によって高温になるのを防止できる。
次に、本発明の効果を確認する為に行った実験に就いて説明する。この実験は、耐久評価試験の為の寿命試験を、試験装置及び回転軸の回転方向が異なるものを対象に、それぞれ10回ずつ行い、試験結果のばらつきに就いて検証した。実施例及び比較例1に就いては本発明の実施の形態の1例に係る試験装置を使用し、比較例2に就いては図6に記載した試験装置を使用した。前記寿命試験の条件は、次の通りである。又、回転軸の回転方向は、実施例及び比較例2に就いては、供試軸受を構成する各転動体が負荷圏を下方から上方に向け通過する方向とし、比較例1に就いては、同じく上方から下方に向け通過する方向とした。
供試軸受 : 呼び番号6208(外径=80mm、内径=40mm、幅=18mm)
試験荷重 : 7300N{P/C(負荷荷重/定格荷重)=0.25}
回転速度 : 4500min−1
試験温度 : 100℃
潤滑油 : トランスミッション油
異物 : 鉄系金属粉末を所定量混入
この様な条件の下、振動センサの検出する供試軸受の振動値が初期振動値の2倍となった時点を、この供試軸受の寿命とした。そして、その時点で試験を打ち切り、内輪軌道及び外輪軌道、並びに、各転動体の転動面の剥離の有無を、目視により確認した。尚、最長試験時間は、500時間(Hr)とし、500時間経過時点で振動値が初期振動値の2倍に達しなかった供試軸受に関しては、以後の試験は打ち切りとした。この様にして行った寿命試験の結果を、次の表1に示す。
Figure 0006205801
上述の様な表1から分かる様に、実施例では、比較例1〜2と比較して、試験結果のばらつきが抑えられている。即ち、比較例1の場合、負荷圏のうちで潤滑油に浸漬されていない部分に潤滑油が不足すると共に、異物を供試軸受に十分供給できない為、寿命の最大値と最小値との差が5倍以上となり、ワイブルスロープの値も1.8と低い。更に、各供試軸受毎に、内輪、外輪及び玉の何れも破損しており、破損部位にもばらつきが生じた。又、比較例2の場合、供試軸受にラジアル荷重を正常に付与できず、又、異物を供試軸受に十分に供給できない為、各供試軸受のうちの4割の供試軸受で打ち切り時間を超えた。これに対し、実施例の場合には、寿命の最大値と最小値との差が1.6倍と小さく、ワイブルスロープの値も6.3と高くなっている。又、破損部位も、内輪或いは内外輪の何れかとなっている。
1、1a〜1c 固定ハウジング
2、2a 回転軸
3、3a〜3d ラジアル転がり軸受
4、4a 可動ハウジング
5、5a サポート軸受
6、6a、6b 潤滑油溜り
7 異物
8、8a 底板部
9、9a 側板部
10 玉
11 内輪
12 段差部
13 ワッシャ
14 外輪
15 軸方向側壁部
16 円孔
17a、17b 支持スリーブ
18a、18b 支持部
19 ピストン部
20a、20b 幅方向側壁部
21 通孔
22 押圧治具
23 押圧ロッド
24 鋼球
25 押圧板
26 振動センサ
27 ヒータ

Claims (6)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたラジアル転がり軸受の軸受寿命の試験を行う為、
    前記ラジアル転がり軸受の内輪を外嵌する回転軸と、この回転軸を回転駆動する回転駆動手段と、このラジアル転がり軸受の一部を浸漬させる潤滑油を貯留する為の潤滑油溜りと、このラジアル転がり軸受にラジアル荷重を付与する為の荷重付与手段とを備えるラジアル転がり軸受用試験装置に於いて、
    前記潤滑油溜りの底面を、回転軸の中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面としており、
    前記潤滑油の油温を所望の温度に保持する為のヒータを、前記潤滑油溜りの底面と前記ラジアル転がり軸受又はこのラジアル転がり軸受を内嵌した部材の外周面との間に、このヒータの上下両側面と、これら潤滑油溜りの底面及びラジアル転がり軸受又はこのラジアル転がり軸受を内嵌した部材の外周面との間に隙間を介在させた状態で設けている事を特徴とするラジアル転がり軸受用試験装置。
  2. 前記潤滑油溜りの底面の曲率半径が、前記ラジアル転がり軸受の外径の0.6倍以上、2倍以下である、請求項1に記載したラジアル転がり軸受用試験装置。
  3. 前記回転軸を回転駆動する以前の状態で、前記潤滑油の油面を、前記回転軸の中心軸上に位置させている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したラジアル転がり軸受用試験装置。
  4. 前記ヒータが、前記潤滑油溜りの底面に沿って湾曲している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したラジアル転がり軸受用試験装置。
  5. 前記潤滑油中に異物を混入している、請求項1〜のうちの何れか1項に記載したラジアル転がり軸受用試験装置。
  6. 前記荷重付与手段が、水平方向にラジアル荷重を付与するものである、請求項1〜のうちの何れか1項に記載したラジアル転がり軸受用試験装置。
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