以下、図面に基づいて、本願の開示する情報処理装置および情報処理方法の実施例を詳細に説明する。なお、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下の実施例は、矛盾しない範囲で適宜組みあわせてもよい。
図1は、実施例の端末装置の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す端末装置100は、検出部110と、算出部120と、解析部130と、監視部140と、スケール記憶部150と、推定部160と、調整部170とを有する。なお、端末装置100は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、PHS(Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant、または、Personal Data Assistance)等を用いることができる。
検出部110は、被験者の心拍信号を検出する。例えば、検出部110は、被験者に接触する電極に対して電圧を印加し、被験者の心拍信号を各電極の電位差から取得する。なお、検出部110によって用いられる電極は、例えば、胸ベルトタイプのものや腕時計型の小型機器に埋め込まれた電極(両手が必要になる)に対応する。脈波取得であれば、光学式となり、腕時計タイプやリストバンドタイプ(反射型)、イヤクリップ型(反射型、透過型)等がある。
図2は、検出部により検出される心拍信号の一例を示す図である。図2の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。図2に示すように、健常者の心電信号は、一般的に4つの波形を有し、時系列順にP波、QRS波、T波、U波と呼ばれる。特に、QRS波は、鋭角なピークとして検出され、ピーク開始点であるQ波、ピーク頂点であるR波、ピーク終了点であるS波を含む。P波からU波までの各波形一回分は、心拍一回分に対応する。R波から次のR波までの間隔として算出されるRRI2aは、心拍の時間間隔を示す心拍間隔に対応する。検出部110は、検出した心拍信号のデータを心拍信号データとして算出部120に出力する。
また、検出部110は、例えば、被験者の耳たぶ等の血流を光で計測し、脈波を取得するようにしてもよい。図3は、正常な脈波の一例を示す説明図である。検出部110は、脈波を検出する場合は、振幅のピークから次の振幅のピークまでの間隔をAAIとして算出する。算出されたAAIは、RRIと同様に心拍信号として用いることができ、以下の説明ではRRIを用いるがAAIを用いてもよい。図4は、異常な脈波の一例を示す説明図である。ここで、検出部110は、図4に示すように、脈波の波形が歪んでAAIが正しく算出できない場合には、時間的に前後のAAIから補完してAAIを算出する。
算出部120は、被験者の心拍信号から心拍間隔(RRI)および心拍間隔の変動値(差分)を算出する。そして、算出部120は、算出したRRIおよび心拍間隔の変動値を心拍間隔情報として解析部130と監視部140とに出力する。以下では、算出部120の処理を詳細に説明する。
例えば、算出部120は、検出部110により入力された心拍信号データから心拍間隔を算出する。図5は、心拍間隔を算出する処理を説明する説明図である。図5の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。図5に示すように、算出部120は、心拍信号の振幅が閾値以上となる振幅ピークをR波として検出する。そして、算出部120は、R波を検出するごとに、検出した各R波の出現時間から心拍間隔3aを算出する。なお、振幅ピークの検出方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、算出部120は、心拍信号の微分係数が正から負に変わるゼロクロス点を用いる方法や、パターンマッチングを行って振幅ピークを検出する方法などを用いても良い。
例えば、算出部120は、算出した心拍間隔の時間経過による変動を示す心拍間隔データを生成する。図6は、心拍間隔データの一例を示す図である。図6の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心拍間隔を示す。図6に示すように、例えば、算出部120は、算出した心拍間隔とR波の検出時間とを対応づけて心拍間隔データを生成する。また、算出部120は、監視部140から心拍間隔(RRI)の補完を行うように指示を受けた場合には心拍間隔の補完を行う。
例えば、算出部120は、生成した心拍間隔データから心拍間隔の変動値を算出する。なお、算出部120が算出する心拍間隔の変動値は、例えば、RSA(Respiratory Sinus Arrhythmia:呼吸性洞性不整脈)値に対応する。
図7、8を用いて、呼吸性洞性不整脈(RSA)について説明する。図7は、呼吸性洞性不整脈について説明する説明図である。図7の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。RSAは、吸気時に頻拍となり、呼気時に徐拍となる生理的な不整脈である。つまり、RSAは、図7に示すように、吸気時5aには心拍間隔が短縮して心拍間隔5bとなり、呼気時5cには心拍間隔が延長して心拍間隔5dとなる心拍間隔の変動として検出される。心拍間隔5dと心拍間隔5bとの差分はRSA値を示し、RSAの程度を定量的に評価する指標となる。
RSA値は、覚醒時と非覚醒時とで変化することが知られている。RSA値は、被験者の状態が覚醒状態から非覚醒状態に変化すると大きくなる。RSA値が変化するのは、非特許文献(生体リズムの加齢変化、早野順一郎、95CLINICIAN、94No.429)などに開示されているように、種々の生理的メカニズムによる制御を受けるからである。図8は、呼吸性洞性不整脈の生理的メカニズムを説明する説明図である。図8に示すように、RSA9aは、心臓迷走神経活動9bの活動レベルに応じて現れる。心臓迷走神経活動9bの活動レベルは、呼吸中枢からの干渉9cと、圧受容体および化学受容体反射による興奮性刺激9dと、中枢性迷走神経興奮性刺激9eとの3種類の制御を受ける。このうち、呼吸中枢からの干渉9cは、吸気時の抑制性刺激と呼気時の興奮性刺激とを含む。覚醒時には、RSA9aは、圧受容体及び化学受容体反射による興奮性刺激9dおよび中枢性迷走神経興奮性刺激9eによる制御を受けにくく、呼吸中枢からの干渉9cの制御のみを強く受ける。
図1の説明に戻って、解析部130は、算出部120から入力された心拍間隔情報に対して周波数解析を行うことで、周波数ごとのスペクトル密度を算出する。解析部130は、例えば、自己回帰(AR:Auto Regressive)モデルを用いてスペクトル密度を算出する。ARモデルは、非特許文献(佐藤俊輔、吉川昭、木竜徹、“生体信号処理の基礎”、コロナ社)などに開示されているように、ある時点の状態を過去の時系列データの線形和で表すモデルである。ARモデルは、フーリエ変換と比較して少ないデータ数でも明瞭な極大点が得られるという特徴がある。
時系列x(s)のp次のARモデルは、過去の値に対する重みであるAR係数a(m)及び誤差項e(s)を用いて、
によって表される。なお、理想的には、e(s)は、ホワイトノイズである。
そして、pを同定次数、f
sをサンプリング周波数、ε
pを同定誤差とし、
をk次のAR係数とすると、スペクトル密度P
AR(f)は、
によって表される。解析部130は、式(3)及び心拍間隔情報に基づいて、スペクトル密度を算出する。なお、スペクトル密度の算出方法は、上述の方法に限定されるものではない。
解析部130は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成する。図9は、スペクトル密度データの一例を示す説明図である。図9の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。例えば、0.05〜0.15Hz近辺の領域に現れるスペクトル密度の成分は、交感神経の活動状態を反映するLow Frequency(LF)成分である。また、例えば、0.15〜0.4Hz近辺の領域に現れるスペクトル密度の成分は、副交感神経の活動状態を反映するHigh Frequency(HF)成分である。LF領域を代表する成分としては、血圧性変動に関係することが知られているMWSA(Mayer Wave Sinus Arrhythmia)がある。また、HF領域を代表する成分としては、呼吸性洞性不整脈(RSA)がある。
解析部130は、スペクトル密度データのスペクトル密度が極大となる極大点を取得する。例えば、解析部130は、
となる周波数fを極大点の周波数として算出し、この極大点の周波数を式(3)に代入することによって極大点のスペクトル密度を算出する。図9に示す例では、解析部130は、2つの極大点51、52を取得する。なお、極大点の周波数を「極大周波数」と表記し、極大点のスペクトル密度を「極大スペクトル密度」と表記する。
解析部130は、取得した極大点51、52のうち、HF成分に含まれる極大点を1つ選択する。図9に示すように、HF成分に極大点52が1つ含まれる場合には、解析部130は、該当極大点52を選択する。また、HF成分に極大点が複数含まれる場合には、解析部130は、最も周波数が低い極大点を選択する。これは、HF成分に含まれる極大点のうち低周波側の極大点を選択することで、被験者の眠気をより正確に判定できるからである。なお、HF成分に極大点が含まれない場合には、解析部130は、0.4Hzより高周波側の領域から最も周波数が低い極大点を1つ選択する。
解析部130は、取得した極大点における極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。図10は、極大周波数を時系列で表した説明図である。図10の横軸は時間の経過を示し、縦軸は周波数を示す。図11は、極大スペクトル密度を時系列で表した説明図である。図11の横軸は時間の経過を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。解析部130が10秒間隔でスペクトル密度データを算出する場合には、図10および図11に示す時系列方向の点の間隔は10秒間隔である。図10および図11に示すように、解析部130は、一定時間ごとに極大周波数および極大スペクトル密度を算出する。解析部130は、算出された極大周波数および極大スペクトル密度を、推定部160と調整部170とに出力する。また、解析部130は、ARモデルの予測誤差を監視部140に出力する。
図1の説明に戻って、監視部140は、算出部120から入力された心拍間隔情報に対して周波数解析を行うことで、周波数ごとのスペクトル密度を算出する。監視部140は、例えば、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いてスペクトル密度を算出する。
監視部140は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成する。図12は、FFTでRSA領域にピークがある場合の一例を示す説明図である。図12の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。監視部140は、スペクトル密度データのスペクトル密度が極大となる極大点を取得する。図12に示す例では、監視部140は、HF成分に含まれる極大点53を取得する。監視部140は、取得した極大点53における極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。監視部140は、一定時間ごとに極大周波数および極大スペクトル密度を算出する。監視部140は、算出された極大周波数および極大スペクトル密度を、推定部160と調整部170とに出力する。
監視部140は、解析結果のピーク値である極大周波数が所定範囲、つまり、所定の周波数範囲の下限値であるか否かを監視する。監視部140は、所定の周波数範囲として、例えば、HF領域(0.15Hz〜0.40Hz)とすることができる。つまり、所定の周波数範囲の下限値は、0.15Hzとなる。
ここで、極大周波数が所定の周波数範囲の下限値である場合について説明する。図13は、FFTでRSA領域にピークがない場合の一例を示す説明図である。図13の例では、スペクトル密度データのHF領域において、目立ったピークがなく、HF領域の下限値である0.15Hzがピーク54となっている。監視部140は、スペクトル密度データがHF領域の下限値に、所定の時間継続して張り付いているか否かを監視する。周波数スペクトルは、1/f揺らぎ特性を持っており、FFTにおいてスペクトル密度データのピークが周波数範囲の下限値となるということは、ARモデルにおいて擬似ピークがあることを示す。
擬似ピークの判定について、図9、12、13を用いて説明する。図9に示すスペクトル密度データは、解析部130が、ある心拍間隔情報についてARモデルを用いて解析を行ったものとする。ここで、同じ心拍間隔情報について、監視部140がFFTを用いて解析を行う。監視部140は、図12に示すように、解析結果について周波数範囲の下限値以外に極大点(ピーク)53が存在する場合は、図9の極大点(ピーク)52は所望の心拍間隔(RRI)に基づくものであり、解析部130の解析結果は有効であると判定する。
監視部140は、図13に示すように、解析結果について周波数範囲の下限値に極大点(ピーク)54が存在する場合は、図9の極大点(ピーク)52はノイズに基づく擬似ピークであると判定する。監視部140は、所定時間内における擬似ピークの率、つまりピークが周波数範囲の下限値である率を算出する。監視部140は、算出した下限値である率が所定の率、例えば、10秒間のうち50%を超えると、解析部130の解析結果は無効であると判定する。監視部140は、解析部130の解析結果が無効である場合には、無効情報を推定部160に出力する。
また、監視部140は、心拍間隔情報の各間隔のずれ率、および、ARモデルの予測誤差が所定の閾値を超えるか監視する。監視部140は、算出部120から心拍間隔情報が入力され、解析部130からARモデルの予測誤差が入力される。監視部140は、心拍間隔情報の各間隔のずれ率を算出する。監視部140は、ずれ率を算出するために、心拍間隔の差分を算出する。当該差分は、例えば、ある心拍間隔(RRI)が950msであり、他のRRIが1000msであったとすると、50msとなる。監視部140は、差分からずれ率を算出すると、50/950=0.053=5.3%となる。ここで、ずれ率の算出タイミングは、例えば、10秒間とすることができ、ずれ率の算出タイミング間のRRIを平均して、新たに入力されたRRIの当該平均値に対するずれ率を算出してもよい。監視部140は、ずれ率が予め設定された所定の閾値、例えば、±20%を超えるかを監視する。監視部140は、ずれ率が所定の閾値を超えた場合には、無効情報を推定部160に出力する。また、監視部140は、隣り合う心拍間隔(RRI)が所定の閾値を超えた場合、つまり、隣り合う心拍間隔のずれ率が所定の閾値を超えた場合、算出部120に対してRRIの補完を指示する。
監視部140は、ARモデルの予測誤差を所定の期間で蓄積する。ARモデルの予測誤差は、式(1)のe(s)項であり、ARモデルがあわない場合は、このe(s)項が急激に変化するので、この項を見ることによってノイズを判定できる。監視部140は、所定期間、例えば、10秒間、予測誤差を蓄積し、蓄積した予測誤差が所定の閾値を超えるか監視する。監視部140は、蓄積した予測誤差が所定の閾値を超えた場合には、無効情報を推定部160に出力する。なお、ずれ率およびARモデルの予測誤差における所定の閾値および算出タイミングは、調整部170から入力される調整情報に基づいて調整できる。例えば、ずれ率の所定の閾値は±20%から±15%に下げる、算出タイミングは10秒間隔から5秒間隔に短くするように調整できる。
図1の説明に戻って、スケール記憶部150は、推定部160で覚醒度を推定するためのスケールを記憶する。スケールは、予め覚醒時および非覚醒時における極大周波数および極大スペクトル密度を用いて、周波数およびスペクトル密度が変化しうる範囲を、覚醒度の指標として生成する。
図14は、スケールの一例を示す説明図である。図14の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。図14に示す例では、スケール16aは、眠気方向16bに示すように、右上ほど眠気がなく、左下ほど眠気が強くなるように設定される。この場合、スケール16aは、右上から左下へと5つの領域に分割され、5つの領域それぞれに5段階の眠気レベルが割り当てられる。つまり、スケール16aにより判定される眠気レベルは、レベル1からレベル5の順に眠気が強くなり、覚醒度が低くなる。スケール記憶部150は、図14に示すように、正規化されたスケール16aを記憶する。スケール記憶部150に記憶されるスケールのデータは、例えば、スケール内の各領域の境界を示す式と眠気レベル値とを含むデータである。なお、図14では、正規化されたスケール16aの各領域の幅が等間隔である場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、正規化されたスケール16aの各領域の幅は、眠気レベルが高くなるほど狭くなるように調整されてもよい。また、スケールのデータは、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、覚醒時データの周波数及びスペクトル密度と、非覚醒時データの周波数及びスペクトル密度とで構成されてもよい。
図1の説明に戻って、推定部160は、被験者の覚醒度を推定する。推定部160は、解析部130および監視部140から、それぞれ極大周波数および極大スペクトル密度が入力される。また、推定部160は、監視部140から無効情報が入力される。推定部160は、監視部140から無効情報が入力されると、無効情報が周波数領域の処理に基づくものであるか否かを判定する。推定部160は、無効情報が周波数領域の処理に基づくものである場合は、調整部170に対して設定値の調整を行うように設定情報を出力する。ここで、設定値は、ずれ率、ずれ率の算出タイミング、および、ARモデルの予測誤差の設定値である。
推定部160は、解析部130から入力された極大周波数および極大スペクトル密度と、スケール記憶部150に記憶された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を推定する。例えば、推定部160は、被験者による識別情報の入力を受け付けて、識別情報に対応するスケールをスケール記憶部150から読み出す。推定部160は、解析部130により算出された極大点と読み出したスケールとを比較することで、被験者の覚醒度を推定する。具体的には、例えば、推定部160は、スケールの各領域を表す式に極大点の極大周波数及び極大スペクトル密度を代入することで、算出された極大点が含まれる領域を判定する。推定部160は、極大点が含まれると判定された領域に応じて、被験者の眠気レベルを推定する。そして、推定部160は、推定結果を出力する。推定部160は、例えば、図示しないモニタやスピーカを用いて、推定結果として被験者の覚醒度が低下した旨の情報を、被験者や被験者の周囲の者などに報知する。なお、識別情報の受け付け方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、推定部160は、現在の被験者を撮影したカメラ画像から識別情報を取得する方法や、心拍信号のうち個人に特徴的な領域を用いて判定する方法などを利用しても良い。
調整部170は、解析部130および監視部140から極大周波数および極大スペクトル密度が入力される。調整部170は、推定部160から設定情報が入力されると、入力された極大周波数および極大スペクトル密度に基づいて、心拍間隔のずれ率およびARモデルの予測誤差の所定の閾値を調整する調整情報を生成する。調整部170は、例えば、心拍間隔のずれ率について、所定の閾値を±20%から±15%に下げる調整情報を生成し、ずれ率の算出タイミングについて、10秒間隔から5秒間隔に短くする調整情報を生成する。また、調整部170は、例えば、ARモデルの予測誤差について、所定の閾値を5×10−7から4×10−7に下げる調整情報を生成する。調整部170は、生成した調整情報を監視部140に出力する。
次に、実施例の端末装置100の動作について説明する。
図15は、端末装置の覚醒度推定処理の一例を示すフローチャートである。端末装置100は、まず初期設定として、監視部140に対して、心拍間隔情報の各間隔のずれ率、算出タイミング、および、ARモデルの予測誤差について、所定の閾値を設定する(ステップS1)。所定の閾値は、例えば、ずれ率は±20%、算出タイミングは10秒間隔、ARモデルの予測誤差は5×10−7と設定する。
端末装置100は、初期設定が完了すると、心拍データの取得を開始する(ステップS2)。検出部110は、取得した心拍信号データを算出部120に出力する。算出部120は、被験者の心拍信号から心拍間隔(RRI)および心拍間隔の変動値を算出する(ステップS3)。算出部120は、RRIおよび算出した心拍間隔の変動値を心拍間隔情報として解析部130と監視部140とに出力する。
監視部140は、入力された心拍間隔情報に基づいて、時間領域処理を実行する(ステップS4)。図16は、時間領域処理の一例を示すフローチャートである。監視部140は、心拍間隔情報のRRIに基づいて、隣り合う心拍間隔(RRI)の差分を算出する(ステップS41)。なお、監視部140は、RRIの差分として、心拍間隔情報の心拍間隔の変動値を用いてもよい。監視部140は、所定期間内、つまり算出タイミング間において、隣り合う心拍間隔の差分からずれ率を算出する(ステップS42)。すなわち、監視部140は、ある心拍間隔とその1つ前の心拍間隔との差分に基づいてずれ率を算出し、新たに心拍間隔が入力されると、新たな心拍間隔とある心拍間隔との差分に基づいてずれ率を算出する。このため、監視部140は、心拍間隔ごとにずれ率を算出することになる。
図17は、AAIドロップレートの一例を示す説明図である。図17は、心拍間隔としてAAIを用いた場合の、ずれ率(ドロップレート)の時間の経過による変化を表したグラフである。図17の例では、ずれ率は650秒まではほぼ0%であり、650秒から900秒までは数%となっている。また、所定の閾値55は、20%に設定されており、ずれ率は所定の閾値55以下となっている。
図16の説明に戻って、監視部140は、ずれ率が規定値内、つまり所定の閾値内であるか否かを判定する(ステップS43)。監視部140は、ずれ率が規定値内であれば(ステップS43:肯定)、時間領域処理を終了し、元の処理に戻る。監視部140は、ずれ率が規定値内でなければ(ステップS43:否定)、アウトオブサービス、つまり無効情報を推定部160に出力し、元の処理に戻る(ステップS44)。
図15の説明に戻って、監視部140は、入力された心拍間隔情報に基づいて、第1の周波数領域処理を実行する(ステップS5)。図18は、第1の周波数領域処理の一例を示すフローチャートである。監視部140は、FFTを用いて心拍間隔情報を解析し、スペクトル密度を算出する(ステップS51)。監視部140は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成する。
監視部140は、所定時間内におけるスペクトル密度(PSD)の擬似ピークの率、つまりスペクトル密度のピークが、周波数範囲の下限値である率を算出する(ステップS52)。図19は、FFTによる最大PSDを持つ周波数の一例を示す説明図である。図19は、FFTによってスペクトル密度のピークを持つ周波数の時間の経過による変化を表したグラフである。図19の例では、ピークの周波数は概ね0.3Hz程度で推移しているが、300秒および500秒付近で約0.18Hzとなっている。スペクトル密度のピークは、当該約0.18Hzとなっている時間について、例えば、周波数範囲の下限値56が0.18Hzであったとすると、周波数範囲の下限値56に張り付いていることになる。監視部140は、例えば、スペクトル密度のピークが0.18Hzにある時間が1秒、所定時間を10秒とすると、所定時間内におけるスペクトル密度のピークが周波数範囲の下限値である率は10%と算出する。
図18の説明に戻って、監視部140は、算出した所定時間内におけるスペクトル密度のピークが周波数範囲の下限値である率が規定値内であるか否かを判定する(ステップS53)。監視部140は、算出した下限値である率が規定値内でない場合は(ステップS53:否定)、解析部130の解析結果は無効であるとして、アウトオブサービス、つまり無効情報を推定部160に出力し、元の処理に戻る(ステップS54)。監視部140は、算出した下限値である率が規定値内である場合は(ステップS53:肯定)、第1の周波数領域処理を終了し、元の処理に戻る。
図15の説明に戻って、解析部130は、入力された心拍間隔情報に基づいて、第2の周波数領域処理を実行する(ステップS6)。図20は、第2の周波数領域処理の一例を示すフローチャートである。解析部130は、ARモデルを用いて心拍間隔情報を解析し、スペクトル密度を算出する(ステップS61)。解析部130は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成する。また、解析部130は、スペクトル密度データのスペクトル密度が極大となる極大点を取得し、一定時間ごとに取得した極大点における極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。解析部130は、算出された極大周波数および極大スペクトル密度を、推定部160と調整部170とに出力する。また、解析部130は、ARモデルの予測誤差を監視部140に出力する。
監視部140は、入力されたARモデルの予測誤差を所定期間、例えば10秒間蓄積する(ステップS62)。図21は、ARモデルの予測誤差の一例を示す説明図である。図21は、ARモデルの予測誤差の時間の経過による変化を表したグラフである。図21の例では、予測誤差の所定の閾値57、つまり規定値を5×10−7とすると、750秒付近以降は予測誤差が所定の閾値を超えている。
図20の説明に戻って、監視部140は、蓄積したARモデルの予測誤差が所定の閾値を超えるか監視する。つまり、監視部140は、蓄積したARモデルの予測誤差が規定値内であるか否かを判定する(ステップS63)。監視部140は、蓄積したARモデルの予測誤差が規定値内でない場合には(ステップS63:否定)、解析部130の解析結果は無効であるとして、アウトオブサービス、つまり無効情報を推定部160に出力し、元の処理に戻る(ステップS64)。監視部140は、蓄積したARモデルの予測誤差が規定値内である場合には(ステップS63:肯定)、第2の周波数領域処理を終了し、元の処理に戻る。
図15の説明に戻って、推定部160は、監視部140からアウトオブサービス、つまり無効情報が入力されたか否かを判定する(ステップS7)。推定部160は、無効情報が入力された場合は(ステップS7:肯定)、無効情報(アウトオブサービス)が第1の周波数領域処理または第2の周波数領域処理に基づくものであるか否かを判定する(ステップS8)。推定部160は、無効情報が第1の周波数領域処理または第2の周波数領域処理に基づくものである場合は(ステップS8:肯定)、調整部170に対して設定値の調整を行うように設定情報を出力する。ここで、設定情報は、心拍間隔のずれ率およびARモデルの予測誤差の所定の閾値を調整するように指示する情報である。
調整部170は、推定部160から設定情報が入力されると、解析部130および監視部140から入力された極大周波数および極大スペクトル密度に基づいて、心拍間隔のずれ率およびARモデルの予測誤差の所定の閾値を調整する調整情報を生成する。調整部170は、生成した調整情報を監視部140に出力する。監視部140は、調整情報に基づいて、ずれ率およびARモデルの予測誤差における所定の閾値および算出タイミングを調整する(ステップS9)。また、推定部160は、設定情報を出力すると、推定結果の代わりにアウトオブサービスであることを被験者に通知し(ステップS10)、ステップS2へと戻る。
推定部160は、無効情報が第1の周波数領域処理または第2の周波数領域処理に基づくものでない場合は(ステップS8:否定)、推定結果の代わりにアウトオブサービスであることを被験者に通知し(ステップS10)、ステップS2へと戻る。なお、端末装置100は、アウトオブサービスであることを被験者に通知後も、ステップS2からステップS10の処理を繰り返し、ステップS4〜S6の処理でアウトオブサービスとならなくなった場合は、引き続き覚醒度の推定を行うことができる。
推定部160は、無効情報が入力されない場合(ステップS7:否定)、解析部130から入力された極大周波数および極大スペクトル密度と、スケール記憶部150に記憶された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を推定する(ステップS11)。推定部160は、例えば、図示しないモニタやスピーカを用いて、推定結果として被験者の覚醒度が低下した旨の情報を、被験者や被験者の周囲の者などに通知する(ステップS12)。推定部160は、覚醒度の推定が終了したか否かを判定する(ステップS13)。推定部160は、覚醒度の推定が終了していない場合は(ステップS13:否定)、ステップS2に戻り、引き続き覚醒度推定処理を行う。推定部160は、覚醒度の推定が終了した場合は(ステップS13:肯定)、覚醒度推定処理を終了する。
このように、端末装置100は、自己回帰モデルを用いて心拍間隔情報を周波数領域で解析し、フーリエ変換を用いて心拍間隔情報を周波数領域で解析し、当該解析の解析結果のピーク値が所定範囲であるか否かを監視する。端末装置100は、自己回帰モデルを用いた解析結果およびフーリエ変換を用いた解析結果に基づいて、被験者の覚醒度を推定する。その結果、精度良く覚醒度を推定できる。
また、端末装置100は、所定範囲として周波数範囲を用い、ピーク値が解析を行った周波数範囲の下限値にあるか監視し、ピーク値が解析を行った周波数範囲の下限値にある場合に、自己回帰モデルを用いた解析結果を無効とする。その結果、自己回帰モデルの擬似ピークによる誤判定を防止して覚醒度の推定精度を向上できる。
また、端末装置100は、さらに、心拍間隔情報の各間隔のずれ率を算出し、ずれ率および自己回帰モデルの予測誤差のうち1つ以上が所定の閾値を超えるか監視する。端末装置100は、ずれ率および自己回帰モデルの予測誤差のうち1つ以上が所定の閾値を超える場合に、自己回帰モデルを用いた解析結果を無効とする。その結果、脈波のように不連続になりやすい信号や、自己回帰モデルが実際の心拍間隔とあわない場合に覚醒度の推定を停止して、覚醒度の信頼性を向上させることができる。また、誤報を減らすことで車両の運転者の煩わしさを減らすことができる。
また、端末装置100は、さらに、自己回帰モデルを用いた解析結果およびフーリエ変換を用いた解析結果のうち1つ以上に基づいて、所定の閾値を下げる、および、ずれ率の算出タイミングを短くすることのうち1つ以上を行うように調整する。その結果、解析を行う条件を厳しくしてノイズの影響を減らすことができる。また、誤報を減らすことで車両の運転者の煩わしさを減らすことができる。
また、上記実施例では、情報処理装置として端末装置100を例示したが、これに限定されない。情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーションを用いてもよい。また、情報処理装置は、例えば、車両に搭載する場合に車両の制御装置を用いてもよいし、カーナビゲーション装置を用いてもよいし、運行記録計(デジタルタコグラフ)を用いてもよい。
上記実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、図15に示した端末装置100の一連の処理は、端末装置100を搭載した車両のシステムが起動した後に、運転者による指示を受け付けることを契機として実行されても良い。
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、監視部140は、FFTによる解析処理と、心拍間隔、解析結果等の監視を行う処理とを分けて構成してもよい。
図22は、本実施例にかかる情報処理プログラムを実行するコンピュータの一例を示す説明図である。図22に示すように、コンピュータ300は、ユーザからデータの入力を受け付ける入力装置301と、モニタ302と、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読み取り装置303と、他の装置とデータの授受を行うインターフェース装置304とを有する。また、コンピュータ300は、各種演算処理を実行するCPU305と、各種情報を一時記憶するRAM306と、ハードディスク装置307とを有する。また、各装置301〜307は、バス308に接続される。また、コンピュータ300は、被験者の心拍信号を検出する心拍センサ310と、スピーカ320と、インターフェース装置304を介して接続される。
ハードディスク装置307は、図1に示した、算出部120、解析部130、監視部140、推定部160および調整部170の各処理部と同様の機能を有する各種プログラムを記憶する。また、ハードディスク装置307は、スケール記憶部150として、被験者のスケールを、被験者を識別する識別情報に対応付けて記憶する。
CPU305が各種プログラムをハードディスク装置307から読み出してRAM306に展開して実行することにより、各種プログラムは、各種プロセスとして機能する。すなわち、各種プログラムは、算出部120、解析部130、監視部140、推定部160および調整部170の各処理部と同様のプロセスとして機能する。
なお、上記の各種プログラムは、必ずしもハードディスク装置307に記憶されている必要はない。例えば、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されたプログラムを、コンピュータ300が読み出して実行するようにしても良い。コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、例えば、CD−ROMやDVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、Local Area Network(LAN)、Wide Area Network(WAN)等に接続された装置にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしても良い。
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)自己回帰モデルを用いて心拍間隔情報を周波数領域で解析する解析部と、
フーリエ変換を用いて前記心拍間隔情報を周波数領域で解析し、当該解析の解析結果のピーク値が所定範囲であるか否かを監視する監視部と、
前記解析部の解析結果および前記監視部の解析結果に基づいて、被験者の覚醒度を推定する推定部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
(付記2)前記監視部は、前記所定範囲として周波数範囲を用い、前記ピーク値が解析を行った前記周波数範囲の下限値にあるか監視し、
前記推定部は、前記ピーク値が解析を行った前記周波数範囲の下限値にある場合に、前記解析部の解析結果を無効とすることを特徴とする付記1に記載の情報処理装置。
(付記3)前記監視部は、さらに、前記心拍間隔情報の各間隔のずれ率を算出し、前記ずれ率および前記自己回帰モデルの予測誤差のうち1つ以上が所定の閾値を超えるか監視し、
前記推定部は、前記ずれ率および前記自己回帰モデルの予測誤差のうち1つ以上が所定の閾値を超える場合に、前記解析部の解析結果を無効とすることを特徴とする付記2に記載の情報処理装置。
(付記4)さらに、前記解析部の解析結果および前記監視部の解析結果のうち1つ以上に基づいて、前記所定の閾値を下げる、および、前記ずれ率の算出タイミングを短くすることのうち1つ以上を行うように調整する調整部
を有することを特徴とする付記3に記載の情報処理装置。
(付記5)コンピュータが、
自己回帰モデルを用いて心拍間隔情報を周波数領域で解析し、
フーリエ変換を用いて前記心拍間隔情報を周波数領域で解析し、当該解析の解析結果のピーク値が所定範囲であるか否かを監視し、
前記自己回帰モデルを用いた解析結果および前記フーリエ変換を用いた解析結果に基づいて、被験者の覚醒度を推定する
処理を実行することを特徴とする情報処理方法。
(付記6)コンピュータに、
自己回帰モデルを用いて心拍間隔情報を周波数領域で解析し、
フーリエ変換を用いて前記心拍間隔情報を周波数領域で解析し、当該解析の解析結果のピーク値が所定範囲であるか否かを監視し、
前記自己回帰モデルを用いた解析結果および前記フーリエ変換を用いた解析結果に基づいて、被験者の覚醒度を推定する
処理を実行させることを特徴とする情報処理プログラム。