JP6184350B2 - 倒立振子型車両 - Google Patents

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Description

本発明は、倒立振子型車両に関する。
床面上を全方位に移動可能な移動部と、この移動部を駆動するアクチュエータとが組み付けられた基体に、鉛直方向に対して傾動自在な乗員搭乗部が組み付けられた倒立振子型車両が従来より知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
この種の倒立振子型車両は、移動部の移動をアクチュエータを介して制御することで、乗員搭乗部の姿勢(傾斜状態)が制御される。
特許4766031号 特開2013−099972号公報
倒立振子型車両の移動中に、該車両の運動状態を検出するセンサ(傾斜センサ等)の故障等の異常が発生した場合には、基本的には、移動部の移動を強制的に停止させることが望ましいと考えられる。
従って、車両の異常が発生した場合に、移動部を速やかに減速させて停止させることが考えられる。
しかるに、乗員の搭乗中においては、移動部の移動が完全に停止する前に、該乗員が移動部の停止状態での態勢を整えるための事前準備をしておくことできるようにすることが望ましいと考えられる。
そこで、本発明は、異常が発生した場合の移動部の停止動作を適切に行うことができる倒立振子型車両を提供することを目的とする。
本発明の倒立振子型車両は、上記の目的を達成するために、床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動するアクチュエータと、前記移動部及びアクチュエータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記アクチュエータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって、
前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記アクチュエータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記アクチュエータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含むことを基本構成とする
なお、本発明では、「床」は、通常的な意味での床(屋内の床など)だけを意味するものではなく、屋外の地面又は路面を含むものとして使用する。
かかる基本構成によれば、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記異常時減速制御部により、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理が順次実行される。これにより前記移動部が減速されて、停止される。
この場合、先行側の第1減速制御処理による移動部の減速度合い(第1の減速度合)は、後行側の第2減速制御処理による移動部の減速度合(第2の減速度合)とは互いに異なり、第1の減速度合が第2の減速度合よりも相対的に小さい。逆に言えば、第2の減速度合は第1の減速度合よりも相対的に大きい。
なお、第1の減速度合が第2の減速度合よりも相対的に小さい(第2の減速度合が第1の減速度合よりも相対的に大きい)ということは、より詳しくは、移動部の任意の同一速度から、第1の減速度合と第2の減速度合とで各々減速を行ったと仮定した場合に、第1の減速度合で減速を行った場合の方が、第2の減速度合で減速を行った場合よりも移動部の移動速度がゼロに減衰するまでに要する時間が長くなる(換言すれば、第2の減速度合で減速を行った場合の方が、第1の減速度合で減速を行った場合よりも移動部の移動速度がゼロに減衰するまでに要する時間が短くなる)ことを意味する。
上記の如く先行側の第1減速制御処理での減速度合が相対的に小さいので、第1減速制御処理での移動部の減速は比較的緩やかに行われる。このため、当該車両に乗員が搭乗している場合、その乗員は、該移動部の停止前における前記第1減速制御処理の実行中に、自身の一方の脚又は両脚を床面に着地させる等、移動部の停止状態での態勢の事前準備を容易に行っておくことができる。
そして、第1減速制御処理の実行後に、前記第2減速制御処理が実行されるので、乗員が態勢の事前準備を行った上で、速やかに移動部の移動を停止させることができる。
従って、前記基本構成によれば、異常が発生した場合の移動部の停止動作を適切に行うことができる。
上記基本構成を有する発明は、その1つの態様として、前記異常時減速制御部は、前記異常の発生後の経過時間と、前記第1減速制御処理で逐次決定する前記移動部の速度指令値とのうちの少なくともいずれか一方に関する所定の条件が成立することを必要条件として、前記第1減速制御処理から第2減速制御処理への切替えを行うように構成されており、前記所定の条件は、両脚を床面に接地させずに当該車両に搭乗している乗員が、前記異常の発生後、前記所定の条件が成立するまでの期間内に、該乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させ得るように設定されていることが好ましい(参考発明A)。
これによれば、前記所定の条件を上記の如く設定しておくことによって、前記第1減速制御処理を実行する期間(第2減速制御処理への切替えまでの期間)の時間幅、あるいは、該第1減速制御処理の実行中に実現される前記移動部の移動速度が、該第1減速制御処理の実行期間内で、乗員が少なくとも1つの脚(片脚又は両脚)を床面に着地させる上で適切なものとなるようにすることができる。
例えば、第1減速制御処理を実行する期間の時間幅が短すぎたり、あるいは、該第1減速制御処理の実行中に実現される前記移動部の移動速度が大き過ぎたりすることがないようにすることができる。
従って、乗員は、第1減速制御処理の実行中に(移動部が停止される前に)、片脚又は両脚を床面に着地させて自身の態勢を整えておくことが可能となる。
本発明の第1態様では、前記所定の条件は、前記異常の発生後の経過時間と、前記移動部の速度指令値との両方に関する条件である(第1発明)。
これによれば、第1減速制御処理を実行する期間を、該期間内で乗員が少なくとも1つの脚を着地させる上で好適なものにすることができる。
また、本発明の第2の態様では、前記異常の発生後、前記第1減速制御処理の実行中に、両脚を床面に接地させずに当該車両に搭乗している乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定する着地推定部をさらに備えており、前記異常時減速制御部は、前記着地推定部による推定結果が、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたことを示す推定結果になることを必要条件として前記第1減速制御処理から前記第2減速制御処理への切替えを行うように構成されている(第2発明)。
これによれば、着地推定部によって、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたことが推定された後に、第1減速制御処理から第2減速制御処理への切替えが行われる。このため、乗員の片脚又は両脚が実際に着地されたことが推定された上で、上記切替えを行うことができる。
また、第発明を前記参考発明A又は第発明と組み合わせた場合には、乗員の片脚又は両脚の着地状態が落ち着いた状態で、上記切替えを行うことが可能となる。
上記第発明では、前記着地推定部による推定は、種々様々な手法を採用し得る。一例として、前記アクチュエータが電動モータである場合には、前記着地推定部は、例えば次のような構成を採用し得る。
すなわち、前記着地推定部は、少なくとも前記電動モータの通電電流の観測値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成される(第発明)。
ここで、乗員が両脚を床面に接地させずに、当該車両に搭乗している状態(以降、着地無し乗車状態ということがある)と、当該車両に搭乗している乗員が少なくとも1つの脚を着地させた状態(以降、着地有り乗車状態ということがある)とを比較すると、着地無し乗車状態は、乗員の体重による重力の全体が当該車両に作用する状態となる一方、着地有り乗車状態は、乗員の体重による重力の一部が当該車両に作用する状態となる。
このため、着地無し乗車状態と、着地有り乗車状態とでは、床面上での移動部の移動挙動が同じであっても、該移動部の移動を行うための実際の駆動力が相違する。また、電動モータは、その通電電流に応じた駆動力を出力する。
従って、前記着地推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否か(換言すれば、当該車両への乗員の搭乗状態が、前記着地有り乗車状態であるか、着地無し乗車状態であるか)を適切に推定することができる。また、この場合、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かの推定を、その推定のための専用的なセンサを必要とせずに行うことができる。
かかる第発明では、前記着地推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値と、前記制御部により決定される前記電動モータの通電電流の指令値である電流指令値とに基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることがより好ましい(第発明)。
これによれば、前記着地推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値に加えて、電動モータの通電電流の指令値をも加味して、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定する。これにより、前記着地推定部の推定結果の信頼性をより高めることが可能となる。
この第発明では、より具体的には、前記着地推定部は、前記電流指令値のうちの、前記電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出して、該加減速電流成分を前記通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を着地させたか否かを推定するように構成されていることが好ましい(第発明)。
これによれば、前記加減速電流成分を前記通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値は、前記通電電流の観測値から過渡的な変動成分を除去したものに相当する。
このため、上記参照電流値は、前記乗員が少なくとも1つの脚を着地させたか否か(換言すれば、当該車両への乗員の搭乗状態が、前記着地有り乗車状態であるか、着地無し乗車状態であるか)によって差異を生じやすいものとなる。
従って、該参照電流値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を着地させたか否かを推定することで、その推定結果の信頼性を適切に高めることができる。
また、本発明においては、前記移動部の駆動系は、次のような構成を採用できる。すなわち、例えば、2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成される。
このように前記移動部の駆動系が構成されている場合には、一般に、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力から、前記移動部を前記第1の方向に移動させる駆動力への変換効率と、前記移動部を前記第2の方向に移動させる駆動力への変換効率との相違等に起因して、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力のうち、前記移動部の前記第1の方向への移動に寄与する成分と、前記移動部の前記第2の方向への移動に寄与する成分とのうちの一方又は両方が、前記乗員が少なくとも1つの脚を着地させたか否かに応じて差異を生じやすい。
このため、前記第発明において、前記移動部の駆動系を上記の如く構成した場合には、前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理を実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることが好ましい(第発明)。
また、前記第発明において、前記移動部の駆動系を上記の如く構成した場合には、前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向電流値との組に変換する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの電流指令値のうちの、当該それぞれの電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの前記加減速電流成分の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向加減速電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向加減速電流値との組に変換する処理とを実行し、前記第1方向電流値から前記第1方向加減速電流値を差し引いてなる第1方向参照電流値と、前記第2方向電流値から前記第2方向加減速電流値を差し引いてなる第2方向参照電流値とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることが好ましい(第発明)。
また、前記第発明において、前記移動部の駆動系を上記の如く構成した場合には、前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれについて算出した前記参照電流値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理を実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定することが好ましい(第発明)。
上記第〜第発明によれば、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力に対応する第1方向参照電流値と、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力に対応する第2方向参照電流値とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かが推定される。
このため、前記移動部の駆動系が上記の如く構成された当該移動体における上記推定を好適に行うことが可能となり、その推定結果の信頼性を高めることができる。
特に第発明及び第発明では、前記通電電流の観測値に含まれる過渡的な変動成分の影響が、前記第1方向参照電流値と第2方向参照電流値とに生じない(もしくは生じ難い)ようにすることができるので、第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値の少なくともいずれか一方に基づく推定結果の信頼性を好適に高めることができる。
補足すると、上記第〜第発明では、前記着地推定部は、例えば、前記第1方向参照電流値を平滑化してなる第1a参照値と、前記第1方向参照電流値の大きさを表す値を平滑化してなる第1b参照値と、前記第2方向参照電流値を平滑化してなる第2a参照値と、前記第2方向参照電流値の大きさを平滑化してなる第2b参照値とのうちのいずれかの参照値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成され得る。
なお、上記平滑化は、移動平均等による平均化処理、あるいは、ローパス特性のフィルタリング処理によりなされる。
以上説明した発明(前記基本構成の発明、あるいは、参考発明A、あるいは、第1〜第8発明)では、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する乗員搭乗推定部をさらに備えており、前記異常時減速制御部は、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していることを示す推定結果となることを必要条件として、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理を順次実行し、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していないことを示す推定結果となる場合には、前記移動部を前記第1の減速度合よりも大きい第3の減速度合で減速させて停止させるように前記アクチュエータの動作を制御する第3減速制御処理を実行するように構成されていることが好ましい(参考発明B)。
これによれば、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していないことを示す推定結果となる場合には、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理を順次実行することは行われず、前記第3減速制御処理が実行される。
この場合、第3減速制御処理では、移動部を前記第1の減速度合よりも大きい第3の減速度合で減速させるので、該移動部は、異常の発生後、素早く減速して停止する。
従って、参考発明Bによれば、当該車両に乗員が搭乗していない状況での移動部の移動中に、異常が発生した場合には、該移動部の移動を素早く停止させることができる。
なお、前記第3の減速度合は、前記第2の減速度合と異なるものでよいことはもちろんであるが、第2の減速度合と同じ減速度合であってもよい。また、第3の減速度合は、前記移動部の速度指令値を、瞬時にゼロにするように前記アクチュエータを制御することによって達成させる減速度合であってもよい。
上記参考発明Bでは、前記乗員搭乗推定部による推定は、種々様々な手法を採用し得る。一例として、前記アクチュエータが電動モータである場合には、前記着地推定部は、例えば次のような構成を採用し得る。
すなわち、前記乗員搭乗推定部は、少なくとも前記電動モータの通電電流の観測値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されている参考発明C)。
ここで、当該車両に乗員が搭乗している状態(以下、乗車状態ということがある)では、乗員の体重による重力が当該車両に作用するのに対して、当該車両に乗員が搭乗していない状態(以下、空車状態ということがある)では、乗員の体重による重力は当該車両に作用しない。
このため、乗車状態と空車状態とでは、床面上での移動部の移動挙動が同じであっても、該移動部の移動を行うための実際の駆動力が相違する。また、電動モータは、その通電電流に応じた駆動力を出力する。
従って、前記第発明における着地推定部と同様の原理によって、当該車両に乗員が搭乗しているか否か(換言すれば、前記乗車状態であるか空車状態であるか)を適切に推定することができる。また、この場合、当該車両に乗員が搭乗しているか否かの推定を、その推定のための専用的なセンサを必要とせずに行うことができる。
なお、参考発明Cで、乗員搭乗推定部により推定される乗車状態(当該車両に乗員が搭乗している状態)は、乗員が前記乗員搭乗部の所定の位置に所定の姿勢で搭乗している状態に限らず、乗員の体重による重力が当該車両に作用するようにして、当該車両に乗員が搭乗している状態である。
上記参考発明Cでは、前記乗員搭乗推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値と、前記制御部により決定される前記電動モータの通電電流の指令値である電流指令値とに基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることが好ましい(参考発明D)。
この参考発明Dによれば、前記乗員搭乗推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値に加えて、電動モータの通電電流の指令値をも加味して、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する。これにより、前記乗員搭乗推定部の推定結果の信頼性をより高めることが可能となる。
この参考発明Dでは、より具体的には、前記乗員搭乗推定部は、前記電流指令値のうちの、前記電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出して、該加減速電流成分を前記通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることが好ましい(第発明)。
これによれば、前記加減速電流成分を前記通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値は、前記通電電流の観測値から過渡的な変動成分を除去したものに相当する。
このため、上記参照電流値は、当該車両に乗員が搭乗しているか否か(換言すれば、前記乗車状態であるか、前記空車状態であるか)によって差異を生じやすいものとなる。
従って、該参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定することで、その推定結果の信頼性を適切に高めることができる。
補足すると、上記参考発明C、参考発明D、第9発明は、それぞれ前記第発明、第発明、第発明と同様の構成を採用できる。
すなわち、前記参考発明Cにおいて、前記移動部の駆動系を前記第〜第発明と同じ構成とした場合には、前記乗員搭乗推定部は、前記第発明に関して説明した前記第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成され得る(第10発明)。
また、前記参考発明Dにおいて、前記移動部の駆動系を前記第〜第発明と同じ構成とした場合には、前記乗員搭乗推定部は、前記第発明に関して説明した前記第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成され得る(第11発明)。
また、前記第発明において、前記移動部の駆動系を前記第〜第発明と同じ構成とした場合には、前記乗員搭乗推定部は、前記第発明に関して説明した前記第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成され得る(第12発明)。
上記第10〜第12発明によれば、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力に対応する第1方向参照電流値と、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力に対応する第2方向参照電流値とに基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かが推定される。
このため、前記移動部の駆動系が上記の如く構成された当該移動体における上記推定を好適に行うことが可能となり、その推定結果の信頼性を高めることができる。
特に第11発明及び第12発明では、前記通電電流の観測値に含まれる過渡的な変動成分の影響が、前記第1方向参照電流値と第2方向参照電流値とに生じない(もしくは生じ難い)ようにすることができるので、第1方向参照電流値と第2方向参照電流値とに基づく推定結果の信頼性を好適に高めることができる。
また、前記第10発明を前記第発明と組み合わせた場合、あるいは、前記第11発明を前記第発明と組み合わせた場合、あるいは、前記第12発明を前記第発明と組み合わせた場合には、着地推定部と乗員搭乗推定部とで、第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値を算出する処理を同じにすることができる。従って、着地推定部及び乗員搭乗推定部の処理を各別に構築する場合に比べて、それらの処理の全体を簡略化することができる。
なお、上記第10〜第12発明では、前記乗員搭乗推定部は、より具体的な一例として、前記第1方向参照電流値を平滑化してなる第1a参照値と、前記第1方向参照電流値の大きさを表す値を平滑化してなる第1b参照値と、前記第2方向参照電流値を平滑化してなる第2a参照値と、前記第2方向参照電流値の大きさを表す値を平滑化してなる第2b参照値とに基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成され得る。
本願発明者の各種実験、検討によれば、上記第1a参照値、第1b参照値、第2a参照値、及び第2b参照値に基づいて(例えば、これらの参照値を所定値と比較することなどによって)、当該車両に乗員が搭乗しているか否かの推定を高い信頼性で行うことができる。
なお、上記平滑化は、移動平均等による平均化処理、あるいは、ローパス特性のフィルタリング処理によりなされる。
実施形態の倒立振子型車両の正面図。 実施形態の倒立振子型車両の側面図。 実施形態の倒立振子型車両の要部を拡大して示す図。 実施形態の倒立振子型車両の要部の斜視図。 実施形態の倒立振子型車両の制御に関する構成を示すブロック図。 図5に示す制御演算処理部の処理を示すブロック線図。 図6に示す異常時減速制御部の処理を示すフローチャート。 図5に示す乗車/空車推定部の処理を示すブロック線図。 図8に示す推定結果決定部において乗車/空車推定結果を決定する処理を示すフローチャート。 図8に示す推定結果決定部において着地推定結果を決定する処理を示すフローチャート。 異常時減速制御部の処理による移動部の移動速度(目標値)の減速形態の例を示すグラフ。
本発明の一実施形態を図1〜図11を参照して以下に説明する。まず、図1〜図4を参照して、本実施形態の倒立振子型車両の構造を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の倒立振子型車両1は、乗員(運転者)が搭乗する乗員搭乗部3と、床面に接地しながら該床面上を全方位に移動可能な移動部5と、この移動部5を駆動するアクチュエータ装置7と、これらの搭乗部3、移動部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた基体9とを備える。
なお、図1に示す「左右方向」及び図2に示す「前後方向」は、本実施形態の説明において便宜上、使用する方向を示している。「左右方向」は、移動部5としての後述する車輪体5の直立姿勢状態での軸心C2(車輪体5の輪転の回転軸心)の方向に相当し、「前後方向」は、車輪体5の直立姿勢状態での輪転によって該車輪体5が移動する方向に相当する。
また、本実施形態の説明では、参照符号に付する添え字「R」,「L」は、それぞれ車両1の右側、左側に対応するものという意味で使用する。
基体9は、移動部5及びアクチュエータ装置7とが組付けられた下部フレーム11と、この下部フレーム11の上端から上方に延設された支柱フレーム13とを備える。
支柱フレーム13の上部に前記乗員搭乗部3(以下、単に搭乗部3という)が組付けられている。該搭乗部3は、本実施形態では乗員が着座するシートである。この搭乗部3は、支柱フレーム13にシートフレーム15を介して固定されている。
また、搭乗部3の左右の両側には、搭乗部3に着座した乗員が必要に応じて把持するためのグリップ17R,17Lが配置されている。これらのグリップ17R,17Lがそれぞれ、ブラケット19R,19Lを介して支柱フレーム13(又はシートフレーム15)に固定されている。なお、グリップ17R,17Lは無くてもよい。
下部フレーム11は、左右方向に間隔を存して二股状に対向するように配置された一対のカバー部材21R,21Lを備える。これらのカバー部材21R,21Lの上端部(二股の分岐部分)は、前後方向の軸心を有するヒンジ軸23を介して連結されている。そして、カバー部材21R,21Lの一方が他方に対して相対的にヒンジ軸23の周りに揺動可能となっている。これらのカバー部材21R,21Lは、図示を省略するバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。
また、カバー部材21R,21Lのそれぞれの外面部には、前記搭乗部3に着座した乗員の右足を載せるステップ25Rと左足を載せるステップ25Lとが各々、右向き、左向きに張り出すように突設されている。
移動部5及びアクチュエータ装置7は、下部フレーム11のカバー部材21R,21Lの間に配置されている。これらの移動部5及びアクチュエータ装置7の構造を図3及び図4を参照して説明する。
移動部5は、ゴム状弾性材により円環状に形成された車輪体であり、ほぼ円形の横断面形状を有する。この移動部5(以下、車輪体5という)は、その弾性変形によって、円形の横断面の中心C1(より詳しくは、円形の横断面中心C1を通って、車輪体5の軸心C2と同心となる円周線)の周りに回転可能となっている。
この車輪体5は、その軸心C2(車輪体5の輪転の回転軸心)をカバー部材21R,21Lの間隔方向に向けた状態で、カバー部材21R,21Lの間に配置されている。そして、該車輪体5は、その外周面の下端部にて床面に接地する。
車輪体5は、アクチュエータ装置7による駆動(詳細は後述する)によって、車輪体5の軸心C2の周りに回転する動作(床面上を輪転する動作)と、車輪体5の横断面中心C1の周りに回転する動作とを行なうことが可能である。その結果、車輪体5は、それらの回転動作の複合動作によって、床面上を全方位に移動することが可能となっている。
アクチュエータ装置7は、車輪体5と右側のカバー部材21Rとの間に介装される回転部材27R及びフリーローラ29Rと、車輪体5と左側のカバー部材21Lとの間に介装される回転部材27L及びフリーローラ29Lと、回転部材27R及びフリーローラ29Rの上方に配置されたアクチュエータである電動モータ31Rと、回転部材27L及びフリーローラ29Lの上方に配置されたアクチュエータである電動モータ31Lとを備える。
電動モータ31R,31Lは、それぞれのハウジングがカバー部材21R,21Lに各々取付けられている。なお、図示は省略するが、電動モータ31R,31Lの電源(蓄電器)は、支柱フレーム13等、基体9の適所に搭載されている。
回転部材27Rは、左右方向の軸心を有する支軸33Rを介してカバー部材21Rに回転可能に支持されている。同様に、回転部材27Lは、左右方向の軸心を有する支軸33Lを介してカバー部材21Lに回転可能に支持されている。この場合、回転部材27Rの回転軸心(支軸33Rの軸心)と、回転部材27Lの回転軸心(支軸33Lの軸心)とは同軸心である。
回転部材27R,27Lは、それぞれ電動モータ31R,31Lの出力軸に、減速機としての機能を含む動力伝達機構を介して接続されている。各動力伝達機構は、例えばプーリ・ベルト式のものである。すなわち、図3に示す如く、回転部材27Rは、プーリ35Rとベルト37Rとを介して電動モータ31Rの出力軸に接続されている。同様に、回転部材27Lは、プーリ35Lとベルト37Lとを介して電動モータ31Lの出力軸に接続されている。これにより、回転部材27R,27Lは、電動モータ31R,31Lからそれぞれ伝達される動力(トルク)によって回転駆動される。
なお、上記動力伝達機構は、例えば、スプロケットとリンクチェーンとにより構成されるもの、あるいは、複数のギヤにより構成されるものであってもよい。また、例えば、電動モータ31R,31Lを、それぞれの出力軸が各回転部材27R,27Lと同軸心になるように各回転部材27R,27Lに対向させて配置してもよい。そして、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸を回転部材27R,27Lに各々、減速機(遊星歯車装置、波動歯車装置等)を介して連結するようにしてもよい。
各回転部材27R,27Lは、車輪体5側に向かって縮径する円錐台と同様の形状に形成されており、その外周面がテーパ外周面39R,39Lとなっている。
回転部材27Rのテーパ外周面39Rの周囲には、回転部材27Rと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数のフリーローラ29Rが配列されている。これらのフリーローラ29Rは、それぞれ、ブラケット41Rを介してテーパ外周面39Rに取付けられている。そして、各フリーローラ29Rは、ブラケット41Rに回転自在に支承されている。
同様に、回転部材27Lのテーパ外周面39Lの周囲には、回転部材27Lと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数(フリーローラ29Rと同数)のフリーローラ29Lが配列されている。これらのフリーローラ29Lは、それぞれ、ブラケット41Lを介してテーパ外周面39Lに取付けられている。そして、各フリーローラ29Lは、ブラケット41Lに回転自在に支承されている。
前記車輪体5は、回転部材27R側のフリーローラ29Rと、回転部材27L側のフリーローラ29Lとの間に挟まれるようにして、回転部材27R,27Lと同軸心に配置されている。
この場合、図1に示すように、各フリーローラ29R,29Lは、その軸心C3が車輪体5の軸心C2に対して傾斜すると共に、車輪体5の直径方向(車輪体5をその軸心C2の方向で見たときに、該軸心C2と各フリーローラ29R,29Lとを結ぶ径方向)に対して傾斜する姿勢で配置されている。そして、このような姿勢で、各フリーローラ29R,29Lのそれぞれの外周面が車輪体5の内周面に斜め方向に圧接されている。
より一般的に言えば、右側のフリーローラ29Rは、回転部材27Rが軸心C2の周りに回転駆動されたときに、車輪体5との接触面で、軸心C2周りの方向の摩擦力成分(車輪体5の内周の接線方向の摩擦力成分)と、車輪体5の前記横断面中心C1の周り方向の摩擦力成分(円形の横断面の接線方向の摩擦力成分)とを車輪体5に作用させ得るような姿勢で、車輪体5の内周面に圧接されている。左側のフリーローラ29Lについても同様である。
この場合、前記したように、カバー部材21R,21Lは、図示しないバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。このため、この付勢力によって、右側のフリーローラ29Rと左側のフリーローラ29Lとの間に車輪体5が挟持されると共に、車輪体5に対する各フリーローラ29R,29Lの圧接状態(より詳しくはフリーローラ29R,29Lと車輪体5との間で摩擦力が作用し得る圧接状態)が維持される。
補足すると、車輪体5は、例えば、PCT国際公開公報WO2008/132778号公報の図9及び図10に記載されているものと同様に、円環状の部材に回転自在に支承した複数のローラ(該円環状の部材の円周方向に回転軸心を向けた複数のローラ)を、該円環状の部材の軸心周り方向に配列させた構造のものであってよい。
以上説明した構造を有する車両1においては、電動モータ31R,31Lと、車輪体5との間の動力伝達系が、上記の如く構成されている。
このため、電動モータ31R,31Lによりそれぞれ、回転部材27R,27Lを同方向に同じ大きさの回転速度で回転駆動した場合には、車輪体5が回転部材27R,27Lと同方向に軸心C2の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5が床面上を前後方向に輪転して、車両1が前後方向に移動することとなる。
また、例えば、回転部材27R,27Lを互いに逆方向に同じ大きさの回転速度で回転駆動した場合には、車輪体5は、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5がその軸心C2の方向(すなわち左右方向)に移動することとなる。
さらに、回転部材27R,27Lを、互いに異なる回転速度(方向を含めた回転速度)で、同方向又は逆方向に回転駆動した場合には、車輪体5は、その軸心C2の周りに回転すると同時に、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。
これらの回転動作の複合動作(合成動作)によって、前後方向及び左右方向に対して傾斜した方向に車輪体5が移動することとなる。
これにより、車輪体5は床面上を全方位に移動可能となっている。
この場合、車輪体5の移動速度と、回転部材27R,27Lの回転速度(又は電動モータ31R,31Lの出力軸の回転速度)との関係は、一定の相関関係となる。具体的には、前後方向における車輪体5の移動速度は、回転部材27R,27Lの回転速度の和にほぼ比例した速度となり、左右方向における車輪体5の移動速度は、回転部材27R,27Lの回転速度の差にほぼ比例した速度となる。
従って、本実施形態の車両1では、前後方向に車輪体5を移動させる駆動力が、電動モータ31R,31Lの出力トルク(方向を含めた出力トルク)の総和に応じて発生し、左右方向に車輪体5を移動させる駆動力が、電動モータ31R,31Lの出力トルク(方向を含めた出力トルク)の差に応じて発生するように、電動モータ31R,31Lと、車輪体5との間の動力伝達系が構成されていることとなる。
なお、前後方向に車輪体5を移動させる駆動力が、電動モータ31R,31Lの出力トルクの差に応じて発生し、左右方向に車輪体5を移動させる駆動力が、電動モータ31R,31Lの出力トルクの総和に応じて発生するように、上記動力伝達系を構成することもお可能である。
上記の如く車輪体5の移動動作が行なわれるので、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転速度(回転方向を含む)を制御する(ひいては回転部材27R,27Lの回転速度を制御する)ことによって、車輪体5の移動速度及び移動方向を制御できることとなる。
また、搭乗部3及び基体9は、車輪体5の軸心C2を支点として、左右方向の軸心C2周りに(ピッチ方向に)一体に鉛直方向に対して傾動自在となっていると共に、車輪体5の接地部(下端部)を支点として、前後方向の軸周りに(ロール方向に)該車輪体5と共に鉛直方向に対して傾動自在となっている。
次に、車両1の動作制御に関する構成を説明する。
なお、本明細書において、任意の状態量(速度、角速度、通電電流等)の「観測値」は、適宜のセンサによる該状態量の検出値(計測値)、あるいは、該状態量と一定の相関関係を有する他の1つ以上の状態量の検出値(計測値)から該相関関係に基づいて推定してなる推定値、あるいは、該状態量の実際の値と一致もしくはほぼ一致すると見なせる擬似的な推定値を意味する。
この場合、「擬似的な推定値」に関しては、例えば当該状態量の実際の値が、当該状態量の目標値に対して精度よく追従することが判っている場合には、該目標値を「擬似的な推定値」として使用することができる。
図5に示すように、車両1には、電動モータ31R,31Lの運転制御(ひいては、車輪体5の移動制御)を行う制御装置50と、搭乗部3のロール方向及びピッチ方向の傾斜状態(詳しくは、ロール方向及びピッチ方向の傾斜角度及びその時間的変化率(傾斜角速度))に応じた検出信号を出力する傾斜センサ52と、車両1の基体9のヨー方向の角速度に応じた検出信号を出力するヨーレートセンサ54とが搭載されている。そして、これらのセンサ52,54の検出信号が制御装置50に入力される。
傾斜センサ52は、例えば加速度センサとジャイロセンサ等の角速度センサとにより構成される。この傾斜センサ52は、車両1の搭乗部3と一体に傾動し得る部位(例えば、基体9の支柱フレーム13、あるいは、シートフレーム15等)に搭載される。
そして、傾斜センサ52の検出信号から、制御装置50において、搭乗部3のロール方向及びピッチ方向の傾斜角度及び傾斜角速度の観測値(推定値)が取得される。この場合、傾斜センサ52の検出信号から、搭乗部3の傾斜角度及び傾斜角速度を推定する処理は、ストラップダウン演算等の公知の手法によって行うことができる。
ヨーレートセンサ54は、ジャイロセンサ等の角速度センサにより構成される。このヨーレートセンサ54は、車両1の基体9に発生するヨーレートを検出可能な部位(例えば、基体9の支柱フレーム13)に搭載される。そして、ヨーレートセンサ54の検出信号から、制御装置50において、基体9のヨーレートの観測値(検出値)が取得される。なお、ヨーレートセンサ54は、傾斜センサ52に含まれていてもよい。
また、電動モータ31R,31Lのそれぞれには、電動モータ31R,31Lの通電電流に応じた検出信号を出力する電流センサ56R,56Lと、電動モータ31R,31Lの出力軸の回転速度に応じた検出信号を出力する回転速度センサ58R,58Lとが付設されている。回転速度センサ58R,58Lは、例えば電動モータ31R,31Lにそれぞれ装着されるロータリーエンコーダ等により構成される。
これらのセンサ56R,56L,58R,58Lの検出信号も制御装置50に入力される。そして、電流センサ56R,56Lの検出信号から、制御装置50において、電動モータ31R,31Lのそれぞれの通電電流の観測値(計測値)が取得される。また、回転速度センサ58R,58Lの検出信号から、制御装置50において、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転速度の観測値(計測値)、あるいは、前記回転部材27R,27Lの回転速度の観測値(計測値)が取得される。
なお、車輪体5の移動速度は、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転速度に応じて規定されるので、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転速度の観測値(計測値)から、さらに、車輪体5の移動速度の観測値(推定値)を取得することも可能である。
また、本実施形態では、図示を省略する有線式もしくは無線式の操作器から、車両1の移動速度(方向を含む)の指令値である速度指令値を示す速度指令信号が制御装置50に入力される。
上記操作器としては、例えば、前記グリップ17R又は17L等、車両1の適宜の部位に組付けられたもの(ジョイスティック等)、あるいは、無線式リモコンもしくはスマートフォン等の携帯型の操作器を採用できる。
制御装置50は、CPU、RAM、ROM、入出力回路等を含む電子回路ユニットにより構成される。なお、制御装置50は、相互に通信可能な複数の電子回路ユニットにより構成されていてもよい。
この制御装置50は、車両1の任意の適所(基体9の支柱フレーム13等)に搭載される。そして、制御装置50は、実装されるプログラムを実行することで実現される機能又はハードウェア構成により実現される機能として、車輪体5の目標移動速度を逐次決定しつつ、電動モータ31R,31Lの運転制御を行う制御演算処理部60を備える。
この制御演算処理部60は、車輪体5の移動を停止させるべき異常が発生した場合に、車輪体5を減速させて停止させるための制御処理を実行する異常時減速制御部74を含んでいる。上記異常は、例えば傾斜センサ52あるいはヨーレートセンサ54の故障等である。なお、異常時減速制御部74の制御処理は、電動モータ31R,31Lの運転制御を行い得ることを前提とする処理であるので、上記異常には、電動モータ31R,31Lの運転制御を行うことができなくなるような異常(例えば電動モータ31R,31Lの巻線コイルの断線等)は含まれない。
さらに、制御装置50は、その機能として、車両1に乗員が搭乗しているか否かを推定する処理と、車両1に乗員が搭乗している場合に、該乗員の少なくとも1つの脚(片脚又は両脚)を着地させることが行われたか否かを推定する処理とを実行する乗車/着地推定部62を備える。
なお、車両1に搭乗している乗員は、車両1を移動させる場合、両脚を前記ステップ25R,25Lに載せる等により床面から浮かせている。このため、乗員の少なくとも1つの脚を着地させることが行われたか否かを推定する処理は、より詳しくは、両脚を床面に接地させずに車両1に搭乗している乗員の少なくともいずれか1つの脚を着地させることが行われたか否かを推定する処理である。
補足すると、制御装置50及び異常時減速制御部74は、それぞれ本発明における制御部、異常時減速制御部74に相当する。また、乗車/着地推定部62は、本発明における乗員搭乗推定部としての機能と、着地推定部としての機能とを併せ持つものである。
以降、制御装置50の制御処理の詳細を中心に、本実施形態の車両1の作動を説明する。
なお、以降の説明では、図1及び図2に示すように、XYZ直交座標系を想定し、車両1の前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向と定義する。
また、Y軸方向から見た(XZ平面に投影して見た)車両1の挙動に関する状態量等の参照符号に添え字“_x”を付し、X軸方向から見た(YZ平面に投影して見た)車両1の挙動に関する状態量等の参照符号に添え字“_y”を付する。
この場合、添え字“_x”を付する参照符号は、具体的には、X軸方向の変位量、移動速度、加速度、あるいは、Y軸周り方向(ピッチ方向)の角度、角速度、あるいは、これらの状態量に関連する係数もしくは定数等を表す参照符号を含む。
また、添え字“_y”を付する参照符号は、具体的には、Y軸方向の変位量、移動速度、加速度、あるいは、X軸周り方向(ロール方向)の角度、角速度、あるいは、これらの状態量に関連する係数もしくは定数等を表す参照符号を含む。
また、Y軸方向から見た車両1の挙動に関する参照符号の添え字“_x”と、X軸方向から見た車両1の挙動に関する参照符号の添え字“_y”とのいずれか一方を表す符号として、添え字“_#”を用いる。従って、“#”は、“x”及び“y”のいずれか一方を意味する。
まず、制御演算処理部60の処理を説明する。制御演算処理部60は、Y軸方向及びX軸方向のそれぞれの軸方向から見た車両1の挙動を制御するために、図6のブロック線図で示す処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。なお、図6において、参照符号中の“#”は、Y軸方向から見た車両1に挙動の制御に関する処理では“x”であり、X軸方向から見た車両1に挙動の制御に関する処理では“y”である。このことは、他の図においても同様である。
図6のブロック線図で示す処理は、X軸方向及びY軸方向の各軸方向における車両1の全体重心の並進移動速度(以降、重心速度という)の推定値Vb_estm_#を逐次算出する重心速度推定部70の処理と、搭乗部3の姿勢を制御するように車輪体5の並進移動速度(以降、車輪体速度という)の目標値である目標車輪体速度Vw_cmd_#を逐次決定する姿勢制御演算部72の処理とに大別される。
なお、上記全体重心は、車両1に乗員が搭乗している状態では、車両1と乗員とを合わせた全体重心を意味する。車両1に乗員が搭乗していない状態では、車両1の単独の全体重心を意味する。
また、重心速度の推定値Vb_estm_#は、重心速度の観測値に相当するものである。
制御演算処理部60は、各制御処理周期において、まず、重心速度推定部70の処理を実行する。
この処理では、制御演算処理部60は、実際の車輪体速度Vw_act_#の観測値(現在値)と、搭乗部3の実際の傾斜角速度ωb_act_#の観測値(現在値)とを取得する。
この場合、傾斜角速度ωb_act_#の観測値は、前記傾斜センサ52の検出信号に基づく計測値である。
また、車輪体速度Vw_act_#の観測値(現在値)としては、本実施形態では、前回の制御処理周期で姿勢制御演算部72により決定された目標車輪体速度Vw_cmd_#(前回値)が用いられる。ここで、電動モータ31R,31Lは、その制御の応答性が高いことから、実際の車輪体速度Vw_act_#は、一般に目標車輪体速度Vw_cmd_#に対する追従性が高い。このため、車輪体速度Vw_act_#の観測値として、目標車輪体速度Vw_cmd_#(これは擬似的な推定値に相当する)を使用することができる。
ただし、重心速度推定部70の処理で使用するVw_act_#の観測値は、計測値又はVw_act_#に関連する他の計測値に基づく推定値であってもよい。例えば、前記回転速度センサ58R,58Lの検出信号に基づいて推定されるVw_act_x,Vw_act_yの値を、重心速度推定部70の処理で使用するVw_act_#の観測値として使用してもよい。
重心速度推定部70の処理では、上記の如く取得される車輪体速度Vw_act_#の観測値(現在値)と、傾斜角速度ωb_act_#の観測値(現在値)とから、図6のブロック線図で示す演算処理によって、X軸方向及びY軸方向の各軸方向の重心速度の推定値Vb_estm_#が算出される。
すなわち、次式(1a),(1b)により、重心速度の推定値Vb_estm_x,Vb_estm_yが算出される。

Vb_estm_x=Vw_act_x+h_x・ωb_act_x ……(1a)
Vb_estm_y=Vw_act_y+h_y・ωb_act_y ……(1b)

ここで、本実施形態の車両1では、前記した如く搭乗部3及び基体9が傾動することで、車両1の全体重心は倒立振子の質点と同様の挙動を呈する。そして、上記式(1a),(1b)は、全体重心の挙動(X軸方向及びY軸方向の各軸方向から見た挙動)を、倒立振子の質点の挙動として表現したものである。
この場合、式(1a),(1b)におけるh_#は、倒立振子の質点しての全体重心の、支点からの高さに相当する。なお、高さh_x,h_yの値は、車両1の乗員が搭乗している状態と、搭乗していない状態とで異なる値に設定するようにしてもよい。
制御演算処理部60は、次に、図6のブロック線図で示す姿勢制御演算部72の処理によって、目標車輪体速度Vw_cmd_#(#=x,y)を決定する。
この処理では、制御演算処理部60は、重心速度推定部70の処理により算出された重心速度の推定値Vb_estm_#(現在値)と、該重心速度の目標値である目標重心速度Vb_cmd_#の値(現在値)と、搭乗部3の実際の傾斜角度θb_act_#の観測値(現在値)と、搭乗部3の傾斜角度の目標値である目標傾斜角度θb_cmd_#の値(現在値)と、搭乗部3の実際の傾斜角速度ωb_act_#の観測値(現在値)とを取得する。
この場合、傾斜角度θv_act_#及び傾斜角速度ωb_act_#の観測値は、前記傾斜センサ52の検出信号に基づく計測値である。
なお、本実施形態では、搭乗部3の傾斜角度θb_act_#は、全体重心が、車輪体5の接地部の直上(もしくはほぼ直上)に位置する状態(倒立振子の質点に相当する全体重心が平衡する状態)での搭乗部3の傾斜角度(これはあらかじめ設定される)を基準(ゼロの傾斜角度)とする相対傾斜角度である。そして、目標傾斜角度θb_cmd_#の値は、本実施形態ではゼロ(一定値)とされる。
また、目標重心速度Vb_cmd_#は、制御装置50に入力された前記速度指令信号等に応じて該制御装置50により決定される。例えば、速度指令信号により示されるX軸方向及びY軸方向の各軸方向の速度指令値が目標重心速度Vb_cmd_#として決定される。
あるいは、搭乗部3に乗員が搭乗した状態においては、例えば特開2013−237335号公報等に本願出願人が開示した手法等によって、乗員の上体の動きに起因する全体重心のずれ量(搭乗部3に対する基準の位置からの全体重心の変位量)を推定し、そのずれ量に応じて目標重心速度Vb_cmdを決定するようにしてもよい。
この場合、特開2013−237335号公報等に開示されている如く、全体重心のずれ量に応じて決定した重心速度の目標値と、前記速度指令信号に基づく重心速度の目標値とを合成することで、目標重心速度Vb_cmd_#を決定するようにしてもよい。
さらに、特開2013−237335号公報等に開示されている如く、全体重心のずれ量に応じて、目標重心速度Vb_cmd_#(あるいは目標傾斜角度θb_cmd_#)を補正するようにしてもよい。
目標重心速度V_cmdの決定手法は、上記に限らず、種々様々の手法を採用できる。
姿勢制御演算部72の処理では、上記の如く取得される重心速度の推定値Vb_estm_#(現在値)と、目標重心速度Vb_cmd_#の値(現在値)と、傾斜角度θb_act_#の値(現在値)と、目標傾斜角度θb_cmd_#(現在値)と、傾斜角速度ωb_act_#の値(現在値)とから、図6のブロック線図に示す処理によって、X軸方向及びY軸方向の各軸方向における車輪体5の並進加速度の目標値である目標車輪体加速度DVw_cmd_#が算出される。
すなわち、次式(2a),(2b)により目標車輪体加速度DVw_cmd_x,DVw_cmd_yが算出される。

DVw_cmd_x=Kvb_x・(Vb_cmd_x−Vb_estm_x)
+Kth_x・(θb_cmd_x−θb_act_x)
−Kw_x・ωb_act_x ……(2a)
DVw_cmd_y=Kvb_y・(Vb_cmd_y−Vb_estm_y)
+Kth_y・(θb_cmd_y−θb_act_y)
−Kw_y・ωb_act_y ……(2b)

なお、上記式(2a),(2b)の演算に必要なKvb_#、Kth_#、Kw_#(#=x,y)は、ゲイン設定部66により後述する如く決定されるゲイン値である。
上記式(2a)の右辺の第1項は、X軸方向の重心速度の推定値Vb_estm_xを目標重心速度Vb_cmd_xに収束させるように機能するフィードバック操作量成分、第2項は、搭乗部3のY軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_xを目標傾斜角度θb_cmd_xに収束させるように機能するフィードバック操作量成分、第3項は、搭乗部3のY軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_xをその目標値としてのゼロに収束させるように機能するフィードバック操作量成分である。従って、X軸方向の目標車輪体加速度DVw_cmd_xは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。
同様に、式(2b)の右辺の第1項は、Y軸方向の重心速度の推定値Vb_estm_yを目標重心速度Vb_cmd_yに収束させるように機能するフィードバック操作量成分、第2項は、搭乗部3のX軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_yを目標傾斜角度θb_cmd_yに収束させるように機能するフィードバック操作量成分、第3項は、搭乗部3のX軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_yをその目標値としてのゼロに収束させるように機能するフィードバック操作量成分である。従って、Y軸方向の目標車輪体加速度DVw_cmd_yは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。
なお、式(2a),(2b)の第2項のフィードバック操作量(あるいは、第2項のフィードバック操作量と第3項のフィードバック操作量との合成操作量)は、換言すれば、搭乗部3の傾斜角度θb_act_x,θb_act_yを、全体重心を車輪体5の接地部の直上(もしくはほぼ直上)に収束させるように機能するフィードバック操作量である。
姿勢制御演算部72の処理では、上記の如く目標車輪体加速度DVw_cmd_#を算出した後、次に、図6のブロック線図に示す積分演算部72aによって、X軸方向及びY軸方向の各軸方向の目標車輪体加速度DVw_cmd_#を積分することによって、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの目標車輪体速度Vw_cmd_#を決定する。
姿勢制御演算部72の処理は、以上の如く実行される。
制御演算処理部60は、次に、異常時減速制御部74の処理を実行することで、車輪体5の実際の移動制御に使用する目標車輪体速度Vw_cmd2_#を逐次決定する。該異常時減速制御部74の処理の詳細は後述するが、車両1の異常が発生した場合を除いて、姿勢制御演算部72の処理により算出された目標車輪体速度Vw_cmd_#がそのまま、最終的な目標車輪体速度Vw_cmd2_#として決定される。
そして、制御演算処理部60は、最終的に異常時減速制御部74の処理により決定した目標車輪体速度Vw_cmd2_#に応じて電動モータ31R,31Lを制御する。
より詳しくは、制御演算処理部60は、目標車輪体速度Vw_cmd2_x,Vw_cmd2_yの組により規定される各電動モータ31R,31Lの出力軸の回転速度の目標値に、回転速度センサ58R,58Lの検出信号により示される実際の回転速度の観測値(計測値)を追従させるように、フィードバック制御処理により各電動モータ31R,31Lの目標トルクを決定する。そして、制御演算処理部60は、各電動モータ31R,31Lの目標トルクを各電動モータ31R,31Lの電流指令値I_cmd_R、I_cmd_Lに変換し、この電流指令値I_cmd_R,I_cmd_Lに従って、各電動モータ31R,31Lの通電を行なう。
以上説明した制御演算処理部60の処理により、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの実際の車輪体速度Vw_act_#が、目標車輪体速度Vw_cmd2_#に追従するように、電動モータ31R,31Lから車輪体5に付与される駆動力が制御される。
以上説明した制御演算処理部60の処理は、車両1に乗員が搭乗している状態と、搭乗していない状態とのいずれの場合でも同様に実行される。
次に、前記異常時減速制御部74の処理を図7を参照して詳細に説明する。
異常時減速制御部74の処理では、制御演算処理部60は、各制御処理周期において、図7のフローチャートに示す処理を実行する。
具体的には、まず、STEP1において、異常時減速制御部74は、車輪体5の移動を停止させるべき異常が発生したか否かを判断する。
なお、車両1で発生する異常は、制御装置50の図示しない異常検知処理部で適宜、検知される。そして、その検知結果に基づいて、STEP1の判断処理が行われる。ただし、異常が発生してSTEP1の判断結果が肯定的になると、以後は、STEP1の判断結果は肯定的な判断結果に保持される。
STEP1の判断結果が否定的である場合(異常が発生していない場合)には、異常時減速制御部74は、STEP13において、姿勢制御演算部72で前記した如く算出された目標車輪体速度Vw_cmd_#をそのまま、車輪体5の移動制御に実際に使用する目標車輪体速度Vw_cmd2_#として設定する。さらに、STEP13では、異常時減速制御部74は、異常が発生した場合の経過時間を経時するタイマの計時値tmをゼロに初期化しておく。
STEP13の処理の実行によって、今回の制御処理周期での異常時減速制御部74の処理が終了する。
異常の発生により、STEP1の判断結果が肯定的になった場合には、異常時減速制御部74は、STEP2において、車輪体5を減速させるための制御モードである減速制御モードを決定済であるか否かを判断する。
なお、STEP1の判断結果が肯定的になると、以後の制御処理周期では、前記した如く、STEP1の判断結果が肯定的な判断結果に保持される。また、異常が発生した場合には、制御装置50は、その旨を示す報知出力を、図示しない表示器あるいはブザー等を介して発生する。これにより、車両1に搭乗している乗員は、車両1の異常が発生したことを認識できる。
ここで、本実施形態では、車輪体5の移動を停止させるべき異常が発生した場合に、該異常の発生時(又は発生直後)の制御処理周期において、異常時減速制御部74は、車両1に乗員が搭乗している場合の制御モードである乗車用モードと、車両1に乗員が搭乗していない場合の制御モードである空車用モードとの2種類の制御モードのうちのいずれか1つを、減速制御モードとして設定する処理を実行する。
このため、STEP1の判断結果が否定的から肯定的に変化した場合の最初のSTEP2の判断結果は否定的になる。
そして、この場合には、異常時減速制御部74は、STEP3からの処理を実行する。
STEP3では、異常時減速制御部74は、発生した異常の種類等に基づいて、電動モータ31R,31Lを運転可能であるか否かを判断する。この判断結果が否定的である場合には、電動モータ31R,31Lの運転制御を行うことができない。
この場合には、異常時減速制御部74は、後述するSTEP10,12の処理を実行した後、今回の制御処理周期における異常時減速制御部74の処理を終了する。そして、この場合は、以後、異常時減速制御部74の処理は実行されない。
なお、STEP3の判断結果が否定的である場合には、STEP10,12の処理を実行する必要はなく、直ちに異常時減速制御部74の処理を終了してもよい。
STEP3の判断結果が肯定的である場合には、異常時減速制御部74は、STEP4において、乗車/着地推定部62から車両1に乗員が搭乗しているか否かについての推定結果である乗車/空車推定結果を取得し、該乗車/空車推定結果が、乗員が乗車していることを示す乗車状態であるか否か(乗車状態であるか空車状態であるか)を判断する。なお、乗車/着地推定部62の処理の詳細は後述する。
そして、STEP4の判断結果が肯定的である場合(乗車/空車推定結果が乗車状態である場合)には、異常時減速制御部74は、STEP5において、減速制御モードとして乗車用モードを設定する。
また、STEP4の判断結果が否定的である場合(乗車/空車推定結果が、乗員が搭乗していないことを示す空車状態である場合)には、異常時減速制御部74は、STEP6において、減速制御モードとして空車用モードを設定する。
なお、乗車用モードは、換言すれば、車輪体5の移動速度を段階的に減速させるように減速制御処理を実行するモードであり、空車用モードは、換言すれば、車輪体5の移動速度を速やかに減速させるように減速制御処理を実行するモードある。
以上の如く、STEP1の判断結果が否定的から肯定的に変化した場合の最初の制御処理周期において、電動モータ31R,31Lを運転させることができない場合を除いて、減速制御モードが、乗車用モード及び空車用モードのいずれかに設定される。
そして、以後の制御処理周期では、STEP2の判断結果が肯定的になり、STEP3〜6の処理は省略される。
減速制御モードが、乗車用モード及び空車用モードのいずれかに設定されている状態では(STEP5又は6の処理を実行した後、あるいは、STEP2の判断結果が肯定的である場合)、異常時減速制御部74は、次に、STEP7からの処理を実行する。
STEP7では、異常時減速制御部74は、設定した減速制御モードが、乗車用モードであるか否かを判断する。
この判断結果が肯定的である場合(減速制御モード=乗車用モードである場合)には、異常時減速制御部74は、STEP8において、異常発生後の経過時間を経時するタイマの現在の計時値tmが、あらかじめ定められた所定の閾値thre_tmよりも大きく、且つ、目標車輪体速度の前回値Vw_cmd2_pre(前回の制御処理周期での値)の絶対値|Vw_cmd2_pre|が所定の閾値thre_wcmdよりも小さいという条件が成立するか否かを判断する。
なお、絶対値|Vw_cmd2_pre|は、より詳しくは、X軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_xの前回値Vw_cmd2_pre_xとY軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_yの前回値Vw_cmd2_pre_yとから構成される速度ベクトルの絶対値である。
ここで、上記閾値thre_tm及びthre_wcmdは、異常の発生後、STEP8の条件が成立することとなる時点までの期間内に、車両1に搭乗している乗員(両脚を床面に接地させていない状態の乗員)が、少なくともいずれか1つの脚(片脚又は両脚)を着地させ得るように、あらかじめ実験等に基づいて設定されている。
すなわち、thre_tmが短か過ぎたり、あるいは、thre_wcmdが大き過ぎると、異常の発生後、STEP8の条件が成立することなる時点までの期間内で、乗員がその脚を着地させることが困難となりやすい。このように当該期間内で、乗員がその脚を着地させることが困難となることが無いように、閾値thre_tm及びthre_wcmdが設定されている。
補足すると、目標車輪体速度は、本発明における速度指令値に相当する。従って、STEP8の条件は、異常の発生後の経過時間と、車輪体5(移動部)の速度指令値とに関する条件である。
また、STEP8では、車輪体5の目標車輪体速度(速度指令値)に関する条件として、X軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_xの前回値Vw_cmd2_pre_xとY軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_yの前回値Vw_cmd2_pre_yとから構成される速度ベクトルの絶対値が所定の閾値thre_wcmdが小さいという条件を用いた。ただし、これに代えて、X軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_xの前回値Vw_cmd2_pre_xの絶対値とY軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_yの前回値Vw_cmd2_pre_yの絶対値との両方が、所定の閾値よりも小さい条件を使用してもよい。
また、STEP8では、異常の発生後の経過時間に関する条件(tm<thre_tmという条件)と、車輪体5の目標車輪体速度(速度指令値)に関する条件とのうちのいずれか一方だけの条件を使用してもよい。
ただし、STEP8の条件が成立することとなる時点までの期間内で乗員の脚が着地されることの可能性をより高める上では、異常の発生後の経過時間に関する条件と、車輪体5の目標車輪体速度(速度指令値)に関する条件との両方を使用することが望ましい。
STEP8の判断結果が肯定的である場合には、異常時減速制御部74は、次にSTEP9において、乗車/着地推定部62から車両1に搭乗している乗員(床面に両脚を接地させていない乗員)の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かについての推定結果である着地推定結果を取得し、該着地推定結果が、乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたことを示す「着地有り」であるか否かを判断する。なお、乗車/着地推定部62の推定処理の詳細は後述する。
そして、STEP8,9のいずれか一方の判断結果が否定的である場合(乗員が実際に両脚とも床面に接地させていないか、もしくはその可能性が高いと予測される場合)には、異常時減速制御部74は、STEP11において、車輪体5の移動速度の減速度合を規定する減速調整パラメータtmcの値として、あらかじめ定められた所定値tmc_longを設定する。所定値tmc_longは、車輪体5の移動速度の減速を緩やかに行うための値である。
また、STEP8,9の判断結果が両方とも肯定的である場合(乗員が少なくともいずれか1つの脚を実際に着地させ、また、その着地状態が落ち着いていると推定される場合)には、異常時減速制御部74は、STEP10において、上記減速調整パラメータtmcの値として、あらかじめ定められた所定値tmc_shortを設定する。所定値tmc_shortは、車輪体5の移動速度の減速を速やかに行うための値である。また、tmc_shortとtmc_longとの大小関係は、tmc_short<tmc_longである。
上記の如く、減速調整パラメータtmcの値を設定した後、異常時減速制御部74は、次にSTEP12において、車輪体5の移動制御のために実際に使用するX軸方向及びY軸方向の各軸方向の目標車輪体速度Vw_cmd2_#を、次式(3a),(3b)により算出する。

Vw_cmd2_x=Vw_cmd2_pre_x * (tmc/(dt+tmc)) …(3a)
Vw_cmd2_y=Vw_cmd2_pre_y * (tmc/(dt+tmc)) …(3b)

すなわち、目標車輪体速度Vw_cmd2_#は、その前回値Vw_cmd2_pre_#に、(tmc/(dt+tmc))(<1)を乗じてなる値に更新される。なおdtは、1制御処理周期の時間である。
さらに、STEP12では、異常時減速制御部74は、タイマの計時値tmを更新する(1制御処理周期の時間幅dtだけ増加させる)。
以上の如く、STEP7の判断結果が肯定的である場合(減速制御モード=乗車用モードである場合)には、減速調整パラメータtmcの値が可変的に設定されつつ、目標車輪体速度Vw_cmd2_#が決定される。
一方、STEP7の判断結果が否定的である場合(減速制御モード=空車用モードである場合)には、異常時減速制御部74は、前記STEP10の処理を実行した後、STEP12で目標車輪体速度Vw_cmd2_#を決定する。従って、この場合には、減速調整パラメータtmcの値が、車輪体5の移動速度の減速を速やかに行うための所定値tmc_shortに維持された状態で、式(3a),(3b)により、目標車輪体速度Vw_cmd2_#が逐次更新される。
なお、STEP12において決定される目標車輪体速度Vw_cmd2_#は、式(3a),(3b)による算出値が十分に微小な大きさの値になると、強制的にゼロとされる。
異常時減速制御部74の処理は、以上の如く実行される。
補足すると、本実施形態では、減速制御モードとして乗車用モードが設定されている場合において、STEP8,9のいずれかの判断結果が否定的となる状況で実行されるSTEP11,12の処理が本発明における第1減速制御処理に相当し、STEP8,9の両方の判断結果が肯定的となる状況で実行されるSTEP10,12の処理が本発明における第2減速制御処理に相当する。
そして、第1減速制御処理で、減速調整パラメータtmc(=tmc_long)により規定される目標車輪体速度Vw_cmd2_#の減速度合が本発明における第1の減速度合に相当し、第2減速制御処理で、減速調整パラメータtmc(=tmc_short)により規定される目標車輪体速度Vw_cmd2_#の減速度合が本発明における第2の減速度合に相当する。
また、減速制御モードとして空車用モードが設定されている場合に実行されるSTEP10,12の処理が発明における第3減速制御処理に相当する。この場合、本実施形態では、第3減速制御処理における目標車輪体速度Vw_cmd2_#の減速度合(第3の減速度合)を規定する減速調整パラメータtmc(=tmc_short)と、上記乗車用モードでの第2減速制御処理における目標車輪体速度Vw_cmd2_#の減速度合(第2の減速度合)を規定する減速調整パラメータtmc(=tmc_short)とは同じである。従って、本実施形態では、本発明における第2の減速度合と第3の減速度合とは同じである。
ただし、空車用モードでの減速調整パラメータtmcの値を、tmc_shortと異なる値(例えば、tmc_shortよりもより小さい値)に設定してもよい。このようにした場合には、本発明における第2の減速度合と第3の減速度合とは互いに異なるものとなる。
また、本実施形態では、乗車用モードにおいて、STEP8,9の両方の条件が成立することを必要条件として、減速調整パラメータtmcの値をtmc_longからtmc_shortに切替える(換言すれば、第1減速制御処理から第2減速制御処理に切替える)ようにした。ただし、例えば、STEP8,9のいずれか一方の条件が成立した場合に、上記の切替えを行うようにしてもよい。
次に、前記乗車/着地推定部62の処理を図8〜図10を参照して詳細に説明する。
車両1に乗員が搭乗している乗車状態と、搭乗していない空車状態とでは、車両1の車輪体5に床面から作用する摩擦力が相違する。このため、車両1を所要の状態に動作させるために必要な車輪体5の駆動力が乗車状態と、空車状態とで相違する。
なお、上記乗車状態は、乗員の体重による重力が車両1に作用している状態を意味し、搭乗部3に正規の位置及び姿勢で搭乗(着座)している状態に限らない。例えば、乗員が、前記ステップ25R,25Lに両脚の足平部を載せて、搭乗部3から腰を浮かせているような状態も、乗車状態である。
さらに、車両1に搭乗している乗員の両脚が床面に接地していない状態(両脚を前記ステップ25R,25Lに載せている状態等)と、乗員の少なくともいずれか1つの脚(片脚又は両脚)を床面に着地させた状態とでは、後者の状態の方が乗員の体重により車両1に作用する重力が減少する。このため、これらの2つの状態についても、車両1の車輪体5に床面から作用する摩擦力が相違する。
ここで、電動モータ31R,31Lから出力される駆動力(出力トルク)、ひいては、電動モータ31R,31Lから車輪体5に付与される駆動力(推進力)は、電動モータ31R,31Lの通電電流に応じたものとなる。
そこで、本実施形態では、乗車/着地推定部62は、電動モータ31R,31Lの通電電流(指令値及び観測値)に基づいて、乗車状態であるか空車状態であるかの推定と、車両1に搭乗している乗員が少なくともいずれか1つの脚を着地させたか否かの推定とを行う。
具体的には、乗車/着地推定部62は、図8のブロック線図に示す処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。ただし、図8に示す推定結果決定部62gの処理は、車両1の前記異常が発生した場合に、乗車/空車推定結果又は着地推定結果が要求される場合にだけ行うようにしてもよい。
この処理では、乗車/着地推定部62は、まず、電流センサ56R,56Lの検出信号により示される電動モータ31R,31Lのそれぞれの通電電流の観測値(計測値)である電流観測値I_act_R,I_act_Lと、制御演算処理部60が電動モータ31R,31Lのそれぞれの目標出力トルクを増加又は減少さようとする状況で算出する電流指令値I_cmd_R,I_cmd_Lの変化量に相当する加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lを取得する。
加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lは、例えば次式(4a),(4b)により算出される。

ΔI_cmd_R=Jm_R・α_cmd_R/Kt_R ……(4a)
ΔI_cmd_L=Jm_L・α_cmd_L/Kt_L ……(4b)

電動モータ31Rに関する式(4a)におけるJm_Rは、電動モータ31Rの出力軸の回転に関する慣性モーメントの設定値、α_cmd_Rは、電動モータ31Rの出力軸の回転角加速度の指令値(電動モータ31Rの出力軸の実際の回転速度の観測値を目標回転速度に追従させるように決定される指令値)、Kt_Rは電動モータ31Rの単位電流当たりのトルク値を示すトルク定数である。
電動モータ31Lに関する式(4b)におけるJm_L,α_cmd_L,Kt_Lも上記と同様である。
従って、加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lは、換言すれば、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の目標とする加減速を発生させるために必要な通電電流値である。
そして、乗車/着地推定部62は、演算部62a,62bの処理を実行する。この処理では、乗車/着地推定部62は、電動モータ31Rの電流観測値I_act_Rから加減速電流成分ΔI_cmd_Rを減算してなる電流値I_base_R(=I_act_R−ΔI_cmd_R)と、電動モータ31Lの電流観測値I_act_Lから加減速電流成分ΔI_cmd_Lを減算してなる電流値I_base_L(=I_act_L−ΔI_cmd_L)とを各々算出する。
これにより、電流観測値I_act_R,I_act_Lから過渡的な変動成分を除去した電流値I_base_R,I_base_Lが求められる。この電流値I_base_R,I_base_Lが本発明における参照電流値に相当するものである。以降、I_base_R,I_base_Lを参照電流値という。
乗車/着地推定部62は、次に、変換処理部62cの処理を実行する。この処理では、乗車/着地推定部62は、参照電流値I_base_R,I_base_Lから、車輪体5をX軸方向(前後方向)に移動させる駆動力を発生させるように機能するX軸方向参照電流値I_base_xと、車輪体5をY軸方向(左右方向)に移動させる駆動力を発生させるように機能するY軸方向参照電流値I_base_yとを算出する。
ここで、本実施形態の車両1では、前記したように、車輪体5をX軸方向(前後方向)に移動させる駆動力は、電動モータ31R,31Lの出力トルクの総和に応じたものとなる。また、車輪体5をY軸方向(左右方向)に移動させる駆動力は、電動モータ31R,31Lの出力トルクの差に応じたものとなる。
また、電動モータ31R,31Lが出力する駆動力(出力トルク)のうち、車輪体5の駆動力への変換効率は、車輪体5をX軸方向(前後方向)に移動させるための駆動力への変換効率と、車輪体5をY軸方向(左右方向)に移動させるための駆動力への変換効率とで相違する(本実施形態では、後者の変換効率が前者の変換効率よりも小さい)。
そこで、本実施形態では、変換処理部62cは、次式(5a),(5b)により、参照電流値I_base_R,I_base_Lを、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yとの組に変換する。
なお、X軸方向及びY軸方向は、それぞれ本発明における第1の方向、第2の方向に相当する。そして、X軸方向参照電流値I_base_x及びY軸方向参照電流値I_base_yは、それぞれ、本発明における第1方向参照電流値、第2方向参照電流値に相当する。

I_base_x=K1*(I_base_R+I_base_L) …(5a)
I_base_y=K2*(I_base_R−I_base_L) …(5b)

なお、式(5a),(5b)におけるI_base_R,I_base_Lの極性は、電動モータ31R,31Lから車輪体5をX軸方向で前進させる向きの出力トルクを発生させている状況での電動モータ31R,31Lのそれぞれの通電電流と同じ方向の電流値を正極性とする。
式(5a)におけるK1は、あらかじめ設定された正の係数値、式(5b)におけるK2は、あらかじめ設定された正の係数値である。本実施形態の車両1では、K1>K2である。
補足すると、I_base_R=I_act_R−ΔI_cmd_R、I_base_L=I_act_L−ΔI_cmd_Lであるから、上記式(5a),(5b)は、次式(5a‘),(5b’)に書き換えることができる。

I_base_x=K1*(I_act_R+I_act_L)
−K1*(ΔI_cmd_R+ΔI_cmd_L) …(5a’)
I_base_y=K2*(I_act_R−I_act_L)
−K2*(ΔI_cmd_R−ΔI_cmd_L) …(5b’)

ここで、I_act_R,I_act_Lの組を、X軸方向の電流成分とY軸方向の電流成分との組に変換した場合における当該X軸方向の電流成分が、式(5a’)の右辺第1項(=K1*(I_act_R+I_act_L))、当該Y軸方向の電流成分が、式(5b’)の右辺第1項(=K2*(I_act_R−I_act_L))となる。
また、ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lの組を、X軸方向の電流成分とY軸方向の電流成分との組に変換した場合における当該X軸方向の電流成分が、式(5a’)の右辺第2項(=K1*(ΔI_cmd_R+ΔI_cmd_L))、当該Y軸方向の電流成分が、式(5b’)の右辺第2項(=K2*(ΔI_cmd_R−ΔI_cmd_L))となる。
従って、I_act_R,I_act_Lの組と、ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lの組とをそれぞれ各別にX軸方向の電流成分、Y軸方向の電流成分に変換した上で、I_act_R,I_act_Lの組に対応する各軸方向の電流成分を、ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lの組に対応する各軸方向の電流成分を差し引くことで、X軸方向参照電流値I_base_x及びY軸方向参照電流値I_base_yを算出するようにしてもよい。
なお、この場合には、I_act_R,I_act_Lの組に対応するX軸方向の電流成分及びY軸方向の電流成分がそれぞれ、本発明における第1方向電流値、第2方向電流値に相当する。また、ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lの組に対応するX軸方向の電流成分及びY軸方向の電流成分がそれぞれ、本発明における第1方向加減速電流値、第2方向加減速電流値に相当する。
乗車/着地推定部62は、次に、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yとのそれぞれを、ローパス特性のフィルタ62dに通すことによって、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの第1参照値C1_x,C1_yを求める。
さらに、乗車/着地推定部62は、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yとのそれぞれの大きさを表す値として、I_base_x,I_base_yのそれぞれの絶対値を演算部62eで算出する。
なお、I_base_x,I_base_yのそれぞれの大きさを表す値は、絶対値以外の指標値であってもよい。例えば、I_base_x,I_base_yのそれぞれの大きさを表す値として、I_base_x,I_base_yのそれぞれの二乗値を使用してもよい。
そして、乗車/着地推定部62は、I_base_x,I_base_yのそれぞれの大きさを表す値(本実施形態では絶対値)をローパス特性のフィルタ62fに通すことによって、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの第2参照値C2_x,C2_yを求める。これにより、I_base_x,I_base_yのそれぞれの大きさを表す値を平滑化してなる第2参照値C2_x,C2_yが求められる。
補足すると、第1参照値C1_x,C1_yを求めるために、ローパス特性フィルタ62dを使用する代わりに、I_base_x,I_base_yをそれぞれ平均化する処理(移動平均処理等)によって、第1参照値C1_x,C1_yを求めるようにしてもよい。
同様に、第2参照値C2_x,C2_yを求めるために、ローパス特性のフィルタ62fを使用する代わりに、I_base_x,I_base_yのそれぞれの大きさを表す値(絶対値又は二乗値等)を平均化する処理によって、第2参照値C2_x,C2_yを求めるようにしてもよい。例えば、I_base_x,I_base_yのそれぞれの二乗平均(現在時刻から所定時間前までの値の二乗値の平均値)を第2参照値C2_x,C2_yとして求めるようにしてもよい。
第1参照値C1_x,C1_yを求めるための平滑化処理と、第2参照値C2_x,C2_yを求めるための平滑化処理とは互いに同じ処理を使用することが望ましい。
乗車/着地推定部62は、上記の如く求めた第1参照値C1_x,C1_y、及び第2参照値C2_x,C2_yを用いて、乗車/空車推定結果を決定する処理と、着地推定結果を決定する処理とを推定結果決定部62gで実行する。
乗車/空車推定結果を決定する処理は、図9のフローチャートに示す如く実行される。
すなわち、乗車/着地推定部62は、STEP21において、X軸方向の第2参照値C2_xがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cxよりも大きく、且つ、X軸方向における第1参照値C1_xの大きさを表す値としての絶対値|C1_x|が上記閾値thre_Cxよりも大きいという条件が成立するか否かを判断する。
ここで、車両1の乗車状態であり、且つ、車輪体5がX軸方向の比較的大きな移動速度成分を有して連続的に移動している状況(以降、乗車且つX軸方向移動状況という)では、一般に、乗車且つX軸方向移動状況以外の状況に比して、C2_x及び|C1_x|がいずれも比較的大きなものとなる。
従って、閾値thre_Cxを実験等に基づいて適切に設定しておくことで、乗車且つX軸方向移動状況において、STEP21の判断結果が肯定的になり、また、乗車且つX軸方向移動状況以外の状況(空車状態を含む)では、STEP21の判断結果が否定的になる。
そこで、STEP21の判断結果が肯定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP25において、乗車/空車推定結果を乗車状態とする。
STEP21の判断結果が否定的である場合には、乗車/着地推定部62は、STEP22において、Y軸方向の第2参照値C2_yがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cy1よりも大きいという条件が成立するか否かを判断する。
ここで、STEP21の判断結果が否定的となる場合(乗車且つX軸方向移動状況以外の状況)において、車両1の乗車状態であり、且つ、該車輪体5がY軸方向の比較的大きな移動速度成分を有して連続的に移動している状況(以降、乗車且つY軸方向移動状況という)では、乗車且つY軸方向移動状況以外の状況に比して、C2_yが比較的大きなものとなる。
従って、閾値thre_Cy1を実験等に基づいて適切に設定しておくことで、乗車且つY軸方向移動状況において、STEP22の判断結果が肯定的になり、また、乗車且つY軸方向移動状況以外の状況では、STEP22の判断結果が否定的になる。
そこで、STEP22の判断結果が肯定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP5において、乗車/空車推定結果を乗車状態とする。
以上のSTEP21,22の判断処理により、車両1が乗車状態で移動(走行)している場合には、該乗車状態であることを適切に推定できる。
STEP22の判断結果が否定的である場合には、乗車/着地推定部62は、STEP23において、Y軸方向の第2参照値C2_yがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cy2よりも大きく、且つ、Y軸方向の第1参照値C1_yの大きさを表す値としての絶対値|C1_y|が、所定の正の閾値thre_Cy3よりも小さいという条件が成立するか否かを判断する。
なお、STEP23における閾値thre_Cy2は、STEP22における閾値thre_Cy1よりも小さい値に設定されている。また、閾値thre_Cy3は、本実施形態では、Y軸方向の第2参照値C2_yに応じて設定される。例えば、C2_yに“1”よりも小さい正の比例定数を乗じてなる値(<C2_y)が、閾値thre_Cy3として設定される。
ここで、STEP21及び22の判断結果が否定的となる状況(乗車且つX軸方向移動状況、及び乗車且つY軸方向移動状況のいずれでもない状況)は、車両1の乗車状態であり、且つ、車輪体5が移動停止状態もしくはそれに近い状態(ほぼ同一場所で僅かに振動的に動いている状態)となっている状況と、車両1の空車状態となっている状況とのいずれかの状況である。
そして、車両1の乗車状態であり、且つ、車両1が移動停止状態もしくはそれに近い状態となっている状況(以降、乗車且つ移動停止状況という)では、一般に、Y軸方向の第2参照値C2_yが車両1の空車状態となっている状況に比して比較的大きなものとなり、且つ、Y軸方向の第1参照値C1_yの大きさが、Y軸方向の第2参照値C2_yに比して小さい状態に保たれやすい。
これに対して車両1の空車状態では、Y軸方向の第2参照値C2_yが乗車状態の比して、小さい値に維持されるか、又はY軸方向の第1参照値C1_yの大きさが、Y軸方向の第2参照値C2_yに比して小さくなる状態が生じ難い。
従って、閾値thre_Cy2,thre_Cy3を実験等に基づいて適切に設定しておくことで、乗車且つ移動停止状況において、STEP23の判断結果が肯定的になり、また、乗車且つ移動停止状況以外の状況(すなわち空車状況)では、STEP23の判断結果が否定的になる。
そこで、STEP23の判断結果が肯定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP25において、乗車/空車推定結果を乗車状態とする。また、STEP23の判断結果が否定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP24において、乗車/空車推定結果を空車状態とする。
以上が、乗車状態であるか空車状態であるかの推定処理の詳細である。従って、STEP21〜23のいずれかの判断結果が肯定的になれば、乗車/空車推定結果が、乗車状態とされる。そして、STEP21〜23の全ての判断結果が否定的になれば、乗車/空車推定結果が空車状態とされる。
かかる乗車/着地推定部62の処理により、搭乗部3に荷重センサ等を備えずとも、車両1の乗車状態と空車状態とを適切に推定できる。そして、この場合、乗車状態では、乗員が搭乗部3に正規の位置及び姿勢で着座していない状態(腰を浮かしている状態等)であっても、乗員の体重による重力が車両1に作用している状況では、乗車状態であることを正しく推定することができる。
なお、STEP21では、X軸方向の第2参照電流値C2_xがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cxよりも大きいか否かだけを判断してもよい。あるいは、X軸方向における第1参照電流値C1_xの絶対値|C1_x|が上記閾値thre_Cxよりも大きいか否かだけを判断してもよい。あるいは、X軸方向の第2参照電流値C2_xがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cxよりも大きいという条件と、X軸方向における第1参照電流値C1_xの絶対値|C1_x|が上記閾値thre_Cxよりも大きいという条件とのいずれか一方が成立するか否かを判断するようにしてもよい。
次に、推定結果決定部62gにおいて着地推定結果を決定する処理は、図10のフローチャートに示す如く実行される。
乗車/着地推定部62は、STEP31において、X軸方向の第2参照値C2_xがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cx2よりも大きく、且つ、X軸方向における第1参照値C1_xの大きさを表す値としての絶対値|C1_x|が上記閾値thre_Cx2よりも大きいという条件が成立するか否かを判断する。
なお、STEP31における閾値thre_Cx2は、前記STEP21における閾値thre_Cxよりも小さい値に設定されている。
上記のように閾値thre_Cx2を適切に設定しておくことで、乗員の両脚が床面に接地していない場合に、STEP31の判断結果が肯定的になる。
そこで、STEP31の判断結果が肯定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP34において、着地推定結果を「着地無し」とする。
STEP31の判断結果が否定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、さらに、STEP32において、Y軸方向の第2参照値C2_yがあらかじめ定めた正の閾値thre_Cy4よりも大きく、且つ、Y軸方向における第1参照値C1_yの大きさを表す値としての絶対値|C1_y_|が所定の正の閾値thre_Cy5よりも小さいという条件が成立するか否かを判断する。
なお、STEP32における閾値thre_Cy4は、前記STEP22における閾値thre_Cy1よりも小さく、且つ、前記STEP23における閾値thre_Cy2よりも大きい値に設定されている。また、閾値thre_Cy5は、本実施形態では、STEP23における閾値thre_Cy3よりも大きい値となるように、Y軸方向の第2参照値C2_yに応じて設定される。例えば、thre_Cy3=α3*C2_yとしたとき(0<α3<1)としたとき、thre_Cy5=α5*C2_y(ただし、1>α5>α3)というように、閾値thre_Cy5が設定される。
上記のように閾値thre_Cy4,thre_Cy5を適切に設定しておくことで、乗員が少なくともいずれか1つの脚を着地させた場合に、STEP32の判断結果が否定的になり、また、乗員の両脚が床面に接地していない場合に、STEP32の判断結果が肯定的になる。
そこで、STEP32の判断結果が否定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP33において、着地推定結果を「着地有り」とする。また、STEP32の判断結果が肯定的になる場合には、乗車/着地推定部62は、STEP34において、着地推定結果を、両脚が接地していないことを示す「着地無し」とする。
かかる乗車/着地推定部62の処理により、車両1に搭乗している乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かを適切に推定することができる。
なお、STEP31における閾値thre_Cx2、あるいは、STEP32における閾値thre_Cy4,thre_Cy5を適切に設定しておくことで、STEP31及びSTEP32のいずれか一方の判断処理だけによって、乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かを推定することも可能である。
補足すると、本実施形態では、乗車状態であるか空車状態であるかの推定と、乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かの推定とを行うために、X軸方向及びY軸方向の第1参照値C1_x,C1_yの大きさを表す値として絶対値を用いたが、第1参照値C1_x,C1_yのそれぞれの二乗値、あるいは、二乗平均(現在時刻から所定時間前までの値の二乗値の平均値)を使用してもよい。第1参照値C1_x,C1_yの二乗平均を使用する場合には、I_base_x,I_base_yのそれぞれを平均化する処理によって第1参照値C1_x,C1_yを求めることが望ましい。
また、本実施形態では、電動モータ31Rの電流観測値I_act_Rから加減速電流成分ΔI_cmd_Rを減算してなる電流値I_base_Rと、電動モータ31Lの電流観測値I_act_Lから加減速電流成分ΔI_cmd_Lを減算してなる電流値I_base_Lとの組を、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yとの組に変換するようにした。
ただし、加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lの算出を省略して、電動モータ31Rの電流観測値I_act_Rと、電動モータ31Lの電流観測値I_act_Lとの組から、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yとの組を生成するようにしてもよい。すなわち、前記式(5a),(5b)の右辺I_base_R,I_base_LをI_act_R,I_act_Lに置き換えた式によって、X軸方向参照電流値I_base_xと、Y軸方向参照電流値I_base_yを算出するようにしてもよい。
ただし、前記した如く加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lを用いて、I_base_x,I_base_yを算出することで、I_base_x,I_base_yに過渡的な変動成分が含まれるのを防止できる。このため、乗車状態であるか空車状態であるかの推定結果、あるいは、乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かの推定結果の信頼性をより高める上では、加減速電流成分ΔI_cmd_R,ΔI_cmd_Lを用いることが好ましい。
以上説明した実施形態によれば、車両1に乗員が搭乗している状態で、車輪体5の移動を停止させるべき異常(傾斜センサ52の故障等、電動モータ31R,31Lの運転を行い得る異常)が発生した場合には、前記異常時減速制御部74の処理によって、該異常の発生後、前記STEP8,9の両方の条件が成立するまでの期間では、減速調整パラメータtmcの値として、長めの所定値tmc_longが設定される(STEP11)。
この場合、STEP12において、式(3a),(3b)により算出される目標車輪体速度Vw_cmd2_#は、比較的緩やかな減速度合で減衰していくこととなる。例えば、図11において、時刻t1以前の実線のグラフで例示する如く、目標車輪体速度Vw_cmd2_#が比較的緩やかな減速度合で減衰する。
なお、図11では、時刻t1は、STEP8,9の両方の条件が成立するタイミングに相当する。
そして、異常の発生後、STEP8,9の両方の条件が成立すると、以後は、減速調整パラメータtmcの値として、短めの所定値tmc_shortが設定される(STEP10)。この場合、STEP12において、式(3a),(3b)により算出される目標車輪体速度Vw_cmd2_#は、STEP8,9の両方の条件が成立する前の期間よりも、大きな減速度合で素早く減衰していくこととなる。例えば、図11において、時刻t1以後の以前の実線のグラフで例示する如く、目標車輪体速度Vw_cmd2_#が時刻t1以前よりも大きな減速度合で素早く減衰する。
このように、車両1に乗員が搭乗している乗車状態で異常が発生した場合には、STEP8,9の両方の判断結果が肯定的になるまでの期間では、比較的緩やかな減速度合で車輪体5の移動速度が減速される。このため、当該期間において、乗員は、車輪体5の最終的な停止状態での態勢を整えるための事前準備をしておくことができる。具体的には、当該期間において、乗員は、その片脚又は両脚を事前に床面に着地させることを容易に行うことができる。
そして、STEP8,9の両方の判断結果が肯定的になると、車輪体5の移動速度の減速度合がより大きな減速度合に切替えられる(第1減速制御処理から第2減速制御処理に切替えられる)。
これにより、車輪体5の移動速度は、素早くゼロまで減衰し、該車輪体5の移動が最終的に停止する。この場合、車輪体5の移動速度の素早い減衰は、乗員の片脚又は両脚が既に着地された状態(すなわち、事前準備の態勢が整えられた状態)で行われる。
また、車両1に乗員が搭乗していない空車状態で、車輪体5の移動を停止させるべき異常(傾斜センサ52の故障等、電動モータ31R,31Lの運転を行い得る異常)が発生した場合には、該異常の発生後、減速調整パラメータtmcの値は短めの所定値tmc_shortに維持される(STEP10)。
このため、STEP12において、式(3a),(3b)により算出される目標車輪体速度Vw_cmd2_#は、異常の発生直後から大きな減速度合で素早く減衰していくこととなる。例えば、図11において、破線のグラフで例示する如く、目標車輪体速度Vw_cmd2_#が異常の発生直後から大きな減速度合で素早く減衰する。このため、車輪体5を素早く停止させることができる。なお、図11の矢印付きの破線Yは後述する変形態様に関するものである。
また、本実施形態では、乗車/着地推定部62における推定処理において、電動モータ31R,31Lの通電電流の観測値及び指令値を利用することで、当該推定処理に専用的なセンサを必要とせずに、乗車状態であるか否かの推定と、乗員の少なくとも1つの脚が着地されたか否かの推定とを高い信頼性で行うことができる。
なお、以上説明した実施形態では、車両1の空車状態において、該車両1の異常が発生した場合に、減速調整パラメータtmcの値(=tmc_short)により規定される一定の減衰度合で目標車輪体速度Vw_cmd_#(#=x,y)を減少させていくようにした。
ただし、車両1の空車状態において、該車両1の異常が発生した場合には、目標車輪体速度Vw_cmd_#(#=x,y)を、図11の矢印付きの破線Yで示す如く、直ちに(瞬時に)ゼロにするようにしてもよい。換言すれば、目標車輪体速度Vw_cmd_#(#=x,y)を実質的に無限大の減衰度合でゼロまで減少させるようにしてもよい。これにより、空車状態の車両1の車輪体5の移動を最大限に素早く停止させることができる。
また、前記実施形態では、車両1の異常が発生した場合に、目標車輪体速度Vw_cmd_#(#=x,y)を指数関数状に減衰させる形態を例示した。ただし、目標車輪体速度Vw_cmd_#の減衰形態は、直線状の減衰形態であってもよく、あるいは、指数関数状以外の曲線状(凸型の二次関数状等)の減衰形態であってもよい。
また、前記実施形態では、搭乗部3がシートである車両1について説明したが、搭乗部3は、乗員が起立した状態でその両足部を載せるように構成されたものであってもよい。
また、前記実施形態では、搭乗部3が基体9と一体に傾動する車両1について説明したが、例えば、基体とこれに組み付けられた移動部とが床面に対して傾動せず、基体に対して搭乗部が傾動するように車両を構成することも可能である。
また、前記実施形態では、電動モータ31R,31Lの通電電流の観測値及び指令値を用いて乗車状態であるか否かの推定と、乗員の少なくともいずれか1つの脚が着地されたか否かの推定を行うようにしたが、適宜の荷重センサ、あるいは、車載カメラの撮像画像等を使用して、上記の推定を行うようにすることも可能である。さらに、乗員によるスイッチ操作等に基づき、上記の推定を行うようにすることも可能である。
このようにした場合、アクチュエータとして、電動モータ31R,31Lの代わりに油圧アクチュエータ等を使用することも可能である。
1…倒立振子型車両。3…乗員搭乗部、5…車輪体(移動部)、9…基体、31R,31L…電動モータ、50…制御装置(制御部)、62…乗車/着地推定部(着地推定部、乗員搭乗推定部)、74…異常時減速制御部。

Claims (12)

  1. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動するアクチュエータと、前記移動部及びアクチュエータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記アクチュエータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記アクチュエータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記アクチュエータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    前記異常時減速制御部は、前記異常の発生後の経過時間と、前記第1減速制御処理で逐次決定する前記移動部の速度指令値との両方に関する所定の条件が成立することを必要条件として、前記第1減速制御処理から第2減速制御処理への切替えを行うように構成されており、前記所定の条件は、両脚を床面に接地させずに当該車両に搭乗している乗員が、前記異常の発生後、前記所定の条件が成立するまでの期間内に、該乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させ得るように設定されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  2. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動するアクチュエータと、前記移動部及びアクチュエータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記アクチュエータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記アクチュエータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記アクチュエータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    さらに、前記異常の発生後、前記第1減速制御処理の実行中に、両脚を床面に接地させずに当該車両に搭乗している乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定する着地推定部を備えており、
    前記異常時減速制御部は、前記着地推定部による推定結果が、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたことを示す推定結果になることを必要条件として前記第1減速制御処理から前記第2減速制御処理への切替えを行うように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  3. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    前記アクチュエータは電動モータであり、
    前記着地推定部は、少なくとも前記電動モータの通電電流の観測値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  4. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    前記着地推定部は、前記電動モータの通電電流の観測値と、前記制御部により決定される前記電動モータの通電電流の指令値である電流指令値とに基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  5. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    前記着地推定部は、前記電流指令値のうちの、前記電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出して、該加減速電流成分を前記通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を着地させたか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  6. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理を実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  7. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向電流値との組に変換する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの電流指令値のうちの、当該それぞれの電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの前記加減速電流成分の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向加減速電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向加減速電流値との組に変換する処理とを実行し、前記第1方向電流値から前記第1方向加減速電流値を差し引いてなる第1方向参照電流値と、前記第2方向電流値から前記第2方向加減速電流値を差し引いてなる第2方向参照電流値とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも1つの脚を床面に着地させたか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  8. 請求項記載の倒立振子型車両において、
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータの出力トルクの総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータの出力トルクの差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記着地推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれについて算出した前記参照電流値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理を実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記乗員が少なくとも
    1つの脚を床面に着地させたか否かを推定することを特徴とする倒立振子型車両。
  9. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動する電動モータと、前記移動部及び電動モータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記電動モータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記電動モータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    さらに、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する乗員搭乗推定部を備えており、
    前記異常時減速制御部は、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していることを示す推定結果となることを必要条件として、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理を順次実行し、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していないことを示す推定結果となる場合には、前記移動部を前記第1の減速度合よりも大きい第3の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第3減速制御処理を実行するように構成されており、
    前記乗員搭乗推定部は、前記制御部により決定される前記電動モータの通電電流の指令値である電流指令値のうちの、前記電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出して、該加減速電流成分を前記電動モータの通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  10. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動する電動モータと、前記移動部及び電動モータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記電動モータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記電動モータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    さらに、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する乗員搭乗推定部を備えており、
    前記異常時減速制御部は、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していることを示す推定結果となることを必要条件として、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理を順次実行し、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していないことを示す推定結果となる場合には、前記移動部を前記第1の減速度合よりも大きい第3の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第3減速制御処理を実行するように構成されており、
    前記乗員搭乗推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理を実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  11. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動する電動モータと、前記移動部及び電動モータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記電動モータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記電動モータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    さらに、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する乗員搭乗推定部を備えており、
    前記異常時減速制御部は、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していることを示す推定結果となることを必要条件として、前記第1減速制御処理及び第2減速制御処理を順次実行し、前記異常が発生した場合に、前記乗員搭乗推定部による推定結果が、当該車両に乗員が搭乗していないことを示す推定結果となる場合には、前記移動部を前記第1の減速度合よりも大きい第3の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第3減速制御処理を実行するように構成されており、
    前記乗員搭乗推定部は、前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の観測値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向電流値との組に変換する処理と、前記制御部により決定される前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の指令値である電流指令値のうちの、当該それぞれの電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの前記加減速電流成分の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向加減速電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向加減速電流値との組に変換する処理とを実行し、前記第1方向電流値から前記第1方向加減速電流値を差し引いてなる第1方向参照電流値と、前記第2方向電流値から前記第2方向加減速電流値を差し引いてなる第2方向参照電流値とに基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  12. 床面上を全方位に移動可能な移動部と、前記移動部を駆動する電動モータと、前記移動部及び電動モータが組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部と、前記電動モータの動作を制御する制御部とを備える倒立振子型車両であって
    2つの前記電動モータを備えると共に、前記全方位に含まれる互いに直交する第1の方向及び第2の方向のうちの第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、前記2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の総和に応じて発生すると共に、前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力が、2つの電動モータがそれぞれ出力する駆動力の差に応じて発生するように、前記移動部と前記2つの電動モータとの間の動力伝達系が構成されており、
    前記制御部は、前記移動部の移動中に該移動部の移動を停止すべき異常が発生した場合に、前記移動部を互いに異なる第1の減速度合及び第2の減速度合のうちの相対的に小さい第1の減速度合で減速させるように前記電動モータの動作を制御する第1減速制御処理を実行し、次いで、前記移動部を相対的に大きい前記第2の減速度合で減速させて停止させるように前記電動モータの動作を制御する第2減速制御処理を実行するように構成された異常時減速制御部を含み、
    さらに、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定する乗員搭乗推定部を備えており、
    前記乗員搭乗推定部は、前記制御部により決定される前記2つの電動モータのそれぞれの通電電流の指令値である電流指令値のうちの、当該それぞれの電動モータが出力する駆動力の増減のための加減速電流成分を算出する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれの前記加減速電流成分を、当該それぞれの電動モータの通電電流の観測値から差し引いてなる参照電流値を算出する処理と、前記2つの電動モータのそれぞれについて算出した前記参照電流値の組を、前記第1の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第1方向参照電流値と前記第2の方向に前記移動部を移動させる駆動力を発生させる電流成分である第2方向参照電流値との組に変換する処理とを実行し、該第1方向参照電流値及び第2方向参照電流値に基づいて、当該車両に乗員が搭乗しているか否かを推定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
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