JP6169403B2 - 鉄道車両用駆動システム及びこれを搭載した鉄道車両 - Google Patents

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Description

本発明は,エンジン発電駆動方式の鉄道車両の駆動システムに係り,特にエンジン起動時の冷却水予熱,暖機運転の技術に関する.
鉄道車両を駆動するためには動力源が不可欠であり,車両の運行中は動力源を基に車両を駆動するための動力を発生させ,かつ車輪を回転させる駆動系を健全に動作させることが重要である。
鉄道車両としては,一般的に次の2通りがある。
(1)電化路線等を走行する場合において,地上側の発電設備から架線等の給電設備を通じて電力の供給を受けて,車両を駆動する電気車。
(2)非電化路線を走行する場合等において,車両上にエンジン等を搭載して,自力で走行する気動車。
電気車は,地上側に発電設備等の動力源をもつ電化路線等を走行する場合に,架線等の給電設備より給電された電力を車両内に取り入れ,電力変換器等により電動機を駆動して車輪とレールの間に引張力を発生させて車両を駆動する(Electric Multiple Unit)。
一方,気動車は,地上側に発電設備等の動力源をもたない非電化路線等を走行する場合に,車両上のエンジンを動力源として,エンジンで発電機を駆動して発生させた電力をもとに電力変換器等を用いて電動機を駆動して車輪とレールの間に引張力を発生させて車両を駆動する(電気式気動車,Diesel Electric Multiple Unit)。または,エンジンを動力源とする車両では,エンジンの軸出力を変速機等で制御して直接,車輪を駆動し,車輪とレールの間に引張力を発生させて車両を駆動する方式もある(機械式気動車,Diesel Electric Unit)。
通常,電化区間では電気車により運行を行い,非電化区間では気動車により運行することが一般的である。電化区間での運用に気動車が充当される例もあるが,地上発電設備を備える電化区間を,別途燃料を消費して気動車を走行させることは,設備の有効利用の面から効率的とはいえない。しかし,旅客サービスの観点では,電化区間と非電化区間の区別なく,共通の編成列車にて直通運転することが望ましい場合も考えられる。電化区間と非電化区間を直通するための設備を一列車に備える構成としては,例えば特開2010-88145号公報に示されている「鉄道車両の駆動システム」がある。
ところで,気動車には電気式,機械式に関わらず,一般的にディーゼルエンジンが搭載される。ディーゼルエンジンを寒冷時に起動する場合,エンジンの着火性の向上と,摺動部品の保護等を目的として,冷却水を事前に加熱する予熱(プレヒーティング)あるいは暖機運転が必要な場合がある。特に,体格の大きい大出力対応エンジンでは,エンジンを起動する際の冷却水予熱条件,暖機運転条件が詳細に既定されることが一般的である。
冬季において,エンジンの着火性を維持するため,電気ヒータでエンジンを保温する構成としては,例えば特許文献1の気動車の制御方式に述べられている。
図7に特許文献1における図3として示されている気動車の制御方式における速度制御系統図を示す。106はエンジン制御用主幹制御器,107はトルク変換用制御器,108は統括制御装置,109は分散型制御装置,110は速度発電機,111は光ファイバーケーブル,112はエンジンセンサ,113は主回路制御用ST,114はモータコントローラ,115は動力ケーブル,116は主電動機,117は主回路制御器である。この構成によれば,動力ケーブル115が全列車に引き渡されているため,エンジンに電気ヒータを取り付け,動力ケーブル115より電力を受け,必要に応じてエンジンを保温することができ,また新たに電力ケーブルを敷設する必要がない。停車中の列車は外部電源を気動車列車の動力ケーブルに接続することにより,エンジンを凍結することなく温めておくことができ,保温のために夜間エンジンを稼動し続ける必要がなくなるとしている。
特開平8−198102号公報 「気動車の制御方法」
前述のように,大出力対応エンジンを寒冷時に起動する場合,一般的に冷却水予熱条件,暖機運転条件が詳細に既定される。
冷却水予熱は通常,エンジンの冷却系に取り付けられた専用のヒータにより行われる。また,エンジンの暖機運転は,冷却水予熱により冷却水が所定温度に達した後,外部出力しないようにアイドル運転する方法が一般的である。
気動車の場合は,冷却水予熱,暖機運転を完了した上で当日の運用に入る必要がある。このため,運用開始時間に間に合うように車両基地内で冷却水予熱や暖機運転実施する。特に寒冷地においては,冷却水予熱や暖機運転に時間を要することから,当日の運用を終了した後,翌日の運用に入るまで暖機運転を継続し,冷却水の低下を防止することが多い。このように,冷却水予熱,暖機運転は,その地の気温,冷却水の温度を考慮して,次の運用に入るまでの時間を逆算して開始する必要がある。
ところで,前述した電化区間と非電化区間を直通する列車の場合は,架線からの給電により電化区間を走行した後,非電化区間をエンジン動力により走行することが考えられる。この場合,車両基地を出庫する時点で冷却水予熱,暖機運転を完了し,その後,電化区間を走行中はアイドル運転で冷却水温度を維持し,非電化区間に入った時点でエンジン動力による運用に切り替える方式が考えられる。しかし,この方式では,電化区間を走行中,エンジンは動力を発生しないアイドル運転を継続するため,冷却水より放熱されるエネルギを補填するためだけに,余分な燃料を消費するだけでなく,エンジン騒音が問題となる可能性もある。
また,車両基地を出庫する時点で冷却水予熱を完了し,その後,電化区間を走行中は冷却水予熱用のヒータで冷却水温度を維持する方法も考えられるが,同じく,電化区間を走行中に余分なエネルギを消費するため省エネルギの観点から望ましい方式とは言い難い。
本発明は,電化区間などのようにエンジン出力を利用せずに車両を駆動する区間と,非電化区間などのようにエンジン出力を利用して車両を駆動する区間を直通する鉄道車両において,非電化区間に進入する際の冷却水温度を必要な温度まで上昇させるために利用されるエネルギの消費量を低減できる,省エネルギな鉄道車両用駆動システムを提供することを目的とする。
本発明では,エンジンと,エンジンを冷却するエンジン冷却手段と,エンジンの冷却手段を通流する冷却水を加熱する冷却水加熱手段と,エンジンの冷却手段を通流する冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段と,地上側の給電設備または車両に搭載した蓄電手段またはエンジンにより駆動される発電機からの電力を電源として車両駆動用の電動機へ交流電力を供給する電力変換手段と,を備え,エンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間から,エンジンの出力を利用して車両を駆動する区間へ走行する鉄道車両用駆動システムにおいて,鉄道車両の走行位置情報を検出する走行位置検出手段と,冷却水加熱手段による加熱開始を指令する制御手段と,エンジンが外部出力を開始する地点情報または時刻情報を路線毎に記憶する情報記憶手段と,を備え,鉄道車両が前記エンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間を走行する際に,制御手段は,冷却水加熱手段による加熱を開始し,エンジンが外部出力を開始する地点において,冷却水温度がエンジンが外部出力運転を行うことができる温度となるように,冷却水温度に応じて,冷却水加熱手段による加熱を開始する地点または時点を変更する。
本発明の効果は,エンジンが外部出力を開始する地点に鉄道車両が進行した際に冷却水の温度を必要な温度まで上昇さえることができ,かつ当該冷却水の予熱に利用されるエネルギ消費を低減できる,鉄道車両用駆動システムを提供できることにある。
本発明の鉄道車両用駆動システムにおける,一実施形態の基本構成を示す図。 本発明の一実施形態における,駆動システムと情報制御装置の機器構成を示す図。 本発明の一実施形態における,冷却水予熱曲線の一例を示す図。 本発明の一実施形態における冷却水予熱開始地点を決定する運転曲線の一例を示す図。 本発明の一実施形態における冷却水予熱指令を算出する手順を示す制御ブロック図。 本発明の第二の実施形態である冷却水温上昇加速機能の動作を示す図。 特許文献1の図3に示されている気動車の制御方式における速度制御系統図。 本発明の他の実施形態における, 駆動システムと情報制御装置の機器構成を示す図。 本発明の他の実施形態における,冷却水予熱曲線の一例を示す図。
以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明していく.
図1は,本発明の鉄道車両用駆動システムにおける,一実施形態の基本構成を示す図である.
車両1a,1b,1c,1dは,編成列車を構成する車両,またはその一部である.車両1aと車両1bは車間連結器2aで連結されている.同じく,車両1bと車両1cは車間連結器2bで,車両1cと車両1dは車間連結器2cで連結されている.
車両1aは,台車4aを介して輪軸5a,5bにより,また,台車4bを介して輪軸5c,5dにより,図示していないレール面上に支持されている.車両1bは,台車4cを介して輪軸5e,5fにより,また,台車4dを介して輪軸5g,5hにより,図示していないレール面上に支持されている.車両1cは,台車4eを介して輪軸5i,5jにより,また,台車4fを介して輪軸5k,5lにより,図示していないレール面上に支持されている.車両1dは,台車4gを介して輪軸5m,5nにより,また,台車4hを介して輪軸5o,5pにより,図示していないレール面上に支持されている.
車両1aには,情報制御装置7,外気温検出手段11,走行位置検出手段22,走行速度検出手段20が搭載されている。また,情報制御装置7は,情報伝達手段14を介して,車両1bに搭載されており後述する駆動システム6aと,車両1cに搭載されており後述する駆動システム6bと接続されている。情報制御装置7から情報伝達手段14を介して,駆動システム6aに,少なくとも冷却水予熱指令Cmd_prht_a,エンジン発電制御指令Cmd_egen_aが送信され,情報制御装置7は駆動システム6aより,少なくとも水温検出値Tcool_aを受信する。同じく,情報制御装置か7から情報伝達手段14を介して,駆動システム6bに,少なくとも冷却水予熱指令Cmd_prht_b,エンジン発電制御指令Cmd_egen_bが送信され,情報制御装置7は駆動システム6bより,少なくとも水温検出値Tcool_bを受信する。さらに,情報制御装置7は,外気温検出手段11より車両1aの周囲外気温Tairが,走行位置検出手段22より車両1aの地点通過情報Chk_positionが,走行速度検出手段20より車両1aの走行速度情報Vtrain_aが入力される。
車両1bには,駆動システム6aが搭載されている。駆動システム6aは,前述のように,車両1aに搭載される情報制御装置7と,情報伝達手段14を介して接続されている。
車両1cには,駆動システム6bが搭載されている。駆動システム6bは,前述のように,車両1aに搭載される情報制御装置7と,情報伝達手段14を介して接続されている。
ところで,本実施例では,車両1a,1b,1c,1dで構成される4両編成列車において,車両1aに情報制御装置7,外気温検出手段11,走行位置検出手段22,走行速度検出手段20,車両1bに駆動システム6a,車両1cに駆動システム6bを搭載する構成を示している。これは,編成列車を構成する車両数や,各車両に搭載される機器の内容を限定するものではない。
例えば,車両1aは,情報制御装置7,外気温検出手段11,走行位置検出手段22,走行速度検出手段20のほかに,駆動システム6を搭載することも考えられる。この場合も,駆動システム6と,情報制御装置7は,情報伝達手段14を介して接続される。また,車両1aに搭載されている情報制御装置7,外気温検出手段11,走行位置検出手段22,走行速度検出手段20は,1車両に集中して搭載する必要はなく,車両1b,1cに分割搭載する構成も考えられる。この場合も,駆動システム6a,6bと,車両1b,1cに分割配置した情報制御装置7は,それぞれ情報伝達手段14を介して各車両内で接続される。
また,走行位置検出手段22としては,ATS(Automatic Train Stop,自動列車停止装置),ATC(Automatic Train Control,自動列車制御装置),ETCS(European Train Control System,欧州統一列車制御システム)などのような保安制御システムに使用される,地上〜車上間情報伝送システムの車上側情報受信手段を利用することができ,これにより地点通過情報を取得し走行速度検出手段20により得られる車両速度を用いて,車両走行位置を補正する。また,地点通過情報を得る走行位置検出手段22の他の実現手段としては,GPS(Global Positioning System,全地球測位システム)により,車両の走行地点を定期的に取得し,情報制御装置7に記憶されている路線情報,走行速度検出手段20により得られる車両速度を用いて,車両走行位置を補正する方法も考えられる。
以上の構成により,情報制御装置7は,走行位置検出手段22により検出される地点通過情報Chk_positionと,情報制御装置内に設けられる情報記憶手段13に記憶されている路線情報を照合して,地点通過情報Chk_positionに対応する地点を特定,さらに,走行速度検出手段20により検出した走行速度Vtrainの時間積分値を加算して,現走行位置P_currentを特定できる。
また,情報制御装置7は,外気温検出手段11により検出した周囲外気温Tair,駆動システム6a,6bにより検出し,情報伝達手段14を介して伝達されるエンジン冷却水の水温検出値Tcool_a,Tcool_bをもとに,駆動システム6a,6bの各々のエンジン冷却水が,冷却水予熱手段により加熱され,所定の温度に達する冷却水予熱所要時間T_prht_a,T_prht_aを決定する。また,前述の路線情記憶手段13には,冷却水予熱を完了すべき地点が予め登録されており,前述の冷却水予熱所要時間を確保できる,冷却水予熱開始地点P_prht_a,P_prht_bを決定する。現走行位置P_currentが,冷却水予熱開始地点P_prht_a,P_prht_bに達した時点で,情報制御装置7は,駆動システム6a,6bに冷却水予熱指令Cmd_prht_a,Cmd_prht_bを出力する。これを受けて,駆動システム6a,6bは,図示していない冷却水予熱手段16a,16bを動作させる。ここで,冷却水予熱手段16a,16bとは,例えば,冷却水予熱用のヒータにより実現される。
すなわち,本発明によれば,ディーゼルエンジン発電駆動方式の鉄道車両用駆動システムにおいて,外気温,冷却水温情報より,冷却水を所定値まで予熱するのに要する時間を推定,さらに路線情報をもとに予熱の開始地点を決定,車両の開始地点通過により冷却水予熱を開始することで,冷却水予熱を完了すべき所定の地点(つまり,エンジンの外部出力が開始される地点)までに省エネルギで冷却水予熱を完了できる,鉄道車両用駆動システムを提供できる。
図2は,本発明の一実施形態における,駆動システムと情報制御装置の機器構成を示す図である。
駆動システム6は,エンジン冷却手段15,冷却水予熱手段16,エンジン発電手段17,電力変換手段18,主電動機19,冷却水温検出手段21により構成される。
情報制御装置7は,情報制御手段12,情報記憶手段13により構成される。また,情報制御手段12は,外気温検出手段11より周囲外気温Tairが,走行位置検出手段22より地点通過情報Chk_positionが,走行速度検出手段20より走行速度Vtrainが入力される。また,情報制御手段12は,冷却水予熱手段16に冷却水予熱指令Cmd_prhtを,エンジン発電手段17にエンジン発電制御指令Cmd_egenを,それぞれ情報伝達手段14を介して送信する。また,情報制御手段12は,冷却水温検出手段21より,水温検出値Tcoolを,情報伝達手段14を介して受信する。
以上の構成により,情報制御手段12は,走行位置検出手段22により検出される地点通過情報Chk_positionと,情報記憶手段13に記憶されている路線情報を照合して,地点通過情報Chk_positionに対応する地点を特定,さらに,走行速度検出手段20により検出した走行速度Vtrainの時間積分値を加算して,現走行位置P_currentを特定できる。
また,情報制御手段12は,外気温検出手段11により検出した周囲外気温Tair,駆動システム6a,6bにより検出し,情報伝達手段14を介して伝達されるエンジン冷却水の水温検出値Tcoolをもとに,駆動システム6のエンジン冷却水が,冷却水予熱手段により加熱され,所定の温度に達する冷却水予熱所要時間T_prhtを決定する。また,前述の情報記憶手段13には,冷却水予熱を完了すべき地点(または,冷却水予熱を完了すべき時刻)が予め登録されており,前述の冷却水予熱所要時間を確保できる冷却水予熱開始地点P_prhtを決定する。現走行位置P_currentが,冷却水予熱開始地点P_prhtに達した時点で,情報制御装置7は,駆動システム6に冷却水予熱指令cmd_prhtを出力する。これを受けて,駆動システム6は,冷却水予熱手段16を動作させる。
すなわち,本実施例によれば,ディーゼルエンジン発電駆動方式の鉄道車両用駆動システムにおいて,外気温,冷却水温情報より,冷却水を所定値まで予熱するのに要する時間を推定,さらに路線情報もとに予熱の開始地点を決定,車両の開始地点通過により冷却水予熱を開始することで,冷却水予熱を完了すべき所定の地点までに省エネルギで冷却水予熱を確実に完了できる,鉄道車両用駆動システムを提供できる。
本発明は,電化区間などのようにエンジン出力を利用せずに車両を駆動する区間と,非電化区間などのようにエンジン出力を利用して車両を駆動する区間とを共通の編成列車にて直通運転する場合のエンジン冷却水の温度管理に要するエネルギの抑制を課題としている。そのため,図2に示すように,電化区間では電気車として動作し,非電化区間ではエンジン発電手段17,電力変換手段18,主電動機19を利用した電気式気動車として動作する実施形態以外であっても,本発明を適用することは可能である。
つまり,非電化区間で,電気式気動車ではなく,機械式気動車として動作する鉄道車両にも適用できる。また,電化区間で,地上側の発電設備から電力の供給を受ける電気車ではなく,電気車内にバッテリなどの蓄電手段を搭載し,この蓄電手段から電力供給を受ける電気車として動作する鉄道車両にも適用できる。
図3は,本発明の一実施形態における,冷却水予熱曲線の一例を示す図である。
グラフの横軸は時間の経過(Time),縦軸は冷却水温(Temperature of Coolant)を示している。グラフ中に示している3本の曲線T_curve_1,T_curve_2,T_curve_3は,それぞれ外気温(Tair)がTa1,Ta2,Ta3の時,冷却水予熱により,冷却水温(Tcool)が時間の経過とともにTw0からTwsに上昇する様子を示す冷却水予熱曲線である。Twsは,エンジンの通常運転(外部出力運転)が許可される冷却水温である。ここで,各冷却水予熱曲線は,Ta1<Ta2<Ta3(<Tws)の条件としている。すなわち,冷却水温度が外気温度よりも高い場合には,外気温度と冷却水温度の温度差が小さいほど外気への放熱が少ないため,冷却水温がTwsに到達する時間が短い。
これらの冷却水予熱曲線は,外気温条件を設定した上で,エンジン冷却手段15の実機を用いて実測することを想定しているが,エンジン冷却手段15の冷却水循環系を数式モデルにより構築して,外気温条件をパラメータとしたシミュレーションにより算出することもできる。
ここで,冷却水温(Tcool)がTw1の場合を例に,冷却水温予測曲線をもとに,冷却水予熱の開始タイミングを決定する手順を説明する。
3本の曲線T_curve_1,T_curve_2,T_curve_3と,冷却水温Tcool = Tw1の交点は,それぞれt_11,t_21,t_31である。つまり,冷却水温Tw1の状態から冷却水温Twsに達するのに要する冷却水予熱時間t_prhtは,外気温(Tair)に応じて下記となる。ここで,時間t_0は,エンジンが冷却水予熱を完了して通常運転を開始する時点(Start of power operation)である。
エンジンは冷却水温がTwsに達することで通常運転(外部出力を伴う運転)を開始できる。冷却水温Tw1のとき,冷却水温Twsに達する冷却水予熱時間t_prhtは,数1で表現できるから,通常運転開始時点t_0で冷却水温をTwsとして通常運転を開始するためには,t_0よりもt_prhtだけ早く冷却水予熱を開始すればよい。
ここで,図3では3つの外気温Ta1,Ta2,Ta3に対応した3本の冷却水予熱曲線T_curve_1,T_curve_2,T_curve_3を示している。これは,本発明の方式を簡便に説明するための一例である。冷却水予熱曲線は,少なくとも外気温の測定精度よりも大きい間隔で複数設定する。例えば,外気温の測定精度が0.1℃のとき,冷却水温予熱曲線は,Ta1[℃],Ta2(=Ta1+0.1[℃]),Ta3(=Ta2+0.1[d℃])・・・・のように0.1℃刻みで設定すれば,その測定精度の範囲で外気温の変動に対応する冷却水予熱時間を最も高精度で求められる。また,冷却水予熱曲線は,外気温,経過時間に対する冷却水温を3次元テーブルとして設定することを想定しているが,外気温,経過時間をパラメータとした2変数関数として定義することもできる。
しかし,通常運転開始時点t_0は,走行する路線,上り/下りの走行方向,列車ダイヤにより異なるため,これら各々の条件に対応した時点データは膨大かつ煩雑となる。さらに,これらの時点データは,列車ダイヤの改正毎に更新しならず,さらに列車ダイヤに遅延が生じたときは,時点データ自体が役に立たず,手動操作により冷却水予熱を開始する等の臨時操作を必要とする。
そこで,本実施例では,エンジンが冷却水予熱を完了して通常運転を開始するタイミング(Start of power operation)を時点ではなく地点(キロ程)で定義し,その位置から冷却水予熱時間t_prhtだけ以前に通過する地点(キロ程)を冷却水予熱開始地点として,実走行位置が冷却水予熱開始地点に達したときに冷却水予熱を開始する方式を提案する。しかし,本発明は,エンジンが冷却水予熱を完了して通常運転を開始するタイミング地点(キロ程)で定義することに限定されず,エンジンの通常運転を時点により定義することも含む。
冷却水予熱開始地点は,冷却水予熱時間t_prhtと,路線情報(運転曲線)に基づいて決定する。運転曲線は,キロ程と速度の関係を定義するが,これを基にキロ程と走行位置の関係を求められる。すなわち,通常運転開始点から時間t_prhtだけ以前に通過する位置を参照することにより,冷却水予熱開始位置を決定できる。
図4は,本発明の一実施形態における冷却水予熱開始地点を決定する運転曲線の一例を示す図である。
運転曲線とは,鉄道において列車の効率的な運転を計画するため,走行位置の変化に従い経過時間と速度を継続的に計算してグラフ化したものである。一般的には,線路・設備の状況,車両性能に加え運転士の運転操作性を加味して作成される。当該運転曲線の情報は,例えば情報記憶手段13に記憶される。
図4において,横軸は走行位置(キロ程)を示しており,左端は駅A,右端は駅Bの位置を示している。ここでは,駅Bを冷却水予熱開始地点としている。横軸の走行位置に対して,図4では2本の曲線を描画している。一つは,走行位置に対する「速度曲線」(Velocity curve,細い曲線)であり,左側の縦軸に対応している。他方は,走行位置に対する「経過時間曲線」(Elapsed time curve,太い曲線)であり,右側の縦軸に対応している。
この運転曲線を用いて,冷却水予熱時間t_prhtに対応する冷却水予熱開始地点は次のように決定できる。外気温(Tair)がT_a1のとき,必要な冷却水予熱時間(t_prht)は,前述のように図3に示した冷却水予熱曲線に基づいてt_prft_1と決定できる。冷却水予熱時間がt_prht_1のとき,運転曲線の「経過時間曲線」を参照することにより,対応する冷却水予熱開始地点をd_11と決定できる。同じく,冷却水予熱時間がt_prht_1のとき冷却水予熱開始地点はd_21,冷却水予熱時間がt_prht_1のとき冷却水予熱開始地点はd_31と決定できる。
図5は,本発明の一実施形態における冷却水予熱指令を算出する手順を示す制御ブロック図である。
現在走行位置算出部33は,地点通過情報Chk_position,走行速度Vtrain,路線情報テーブルTbl_routeを入力として,現在走行位置P_currentを出力する。
走行位置検出手段22により検出される,地点通過情報Chk_positionと,情報制御装置内に設けられる情報記憶手段13に記憶されている路線情報テーブルTbl_routeを照合して,地点通過情報Chk_positionに対応する地点を特定,さらに,走行速度検出手段20により検出した走行速度Vtrainの時間積分値を加算して,現在走行位置P_currentを算出する。
冷却水予熱時間算出部31は,冷却水温度Tcool,周囲外気温Tair,冷却水予熱曲線デーブルTbl_prhtcurveを入力として,冷却水予熱時間t_prhtを出力する。
外気温検出手段11により検出した周囲外気温Tairと,冷却水温検出手段21により検出され情報伝達手段14を介して伝達されるエンジン冷却水の水温検出値Tcoolをもとに,情報記憶手段13に記憶されている冷却水予熱曲線テーブルTbl_routeを参照することにより,駆動システム6のエンジン冷却水が,冷却水予熱手段16により加熱され,所定の温度に達する冷却水予熱時間t_prhtを算出する。
冷却水予熱開始位置算出部32は,冷却水予熱時間t_prht,冷却水予熱完了地点テーブルTbl_engpower,走行位置に対する「経過時間曲線」テーブルTbl_elptimeを入力として,冷却水予熱開始地点P_prhtを出力する。
冷却水予熱を完了すべき地点を予め登録したテーブルTbl_engpowerと,走行位置に対する「経過時間曲線」テーブルTbl_elptimeは,路線情記憶手段13に備えられている。
前述のように,冷却水予熱完了地点を基点として,冷却水予熱時間t_prhtについて「経過時間曲線」を参照することにより冷却水予熱開始地点P_prhtを算出できる。
冷却水予熱指令算出部34は,現在走行位置P_current,冷却水予熱開始地点P_prht,冷却水予熱有効フラグEbl_prhtを入力として,冷却水予熱指令Cmd_prhtを出力する。
比較器35は,現走行位置P_currentと,冷却水予熱開始地点P_Prhtを比較し,現走行位置P_currentが,冷却水予熱開始地点P_Prhtに達した時点で,冷却水予熱要求Req_prhtを算出する。論理積演算回路36は,冷却水予熱要求Req_prhtと,運転台51等に備えられスイッチ操作で冷却水予熱の動作を選択する冷却水予熱有効フラグFbl_prhtとの論理積を演算して冷却水予熱指令Cmd_prhtを生成する。冷却水予熱指令Cmd_prhtは,情報伝達手段14を介して冷却水予熱手段16に入力され,冷却水予熱を開始する。
すなわち,本発明によれば,ディーゼルエンジン発電駆動方式の鉄道車両用駆動システムにおいて,外気温,冷却水温情報より,冷却水を所定値まで予熱するのに要する時間を推定,さらに路線情報もとに予熱の開始地点を決定,車両の開始地点通過により冷却水予熱を開始することで,冷却水予熱を完了すべき所定の地点までに省エネルギで冷却水予熱を完了できる,鉄道車両用駆動システムを提供できる。
図6は,本発明の第二の実施形態である冷却水温上昇加速機能の動作を示す図である。
実施例1では,周囲外気温Tairと,冷却水温Tcoolをパラメータとして冷却水予熱曲線を参照し,冷却水予熱時間t_prhtを算出し,さらに冷却水予熱時間t_prhtをパラメータとして,情報記憶手段13に蓄積された冷却水予熱完了地点テーブルTbl_engpower,走行位置に対する「経過時間曲線」テーブルTbl_elptimeを参照して,冷却水予熱開始地点P_prhtを出力した。すなわち,エンジンの通常運転開始時点t_0よりも冷却水予熱時間t_prhtだけ前に冷却水予熱を開始するか,列車の走行位置が冷却水予熱開始地点P_prhtを通過したときに冷却水予熱を開始することにより,冷却水温Tcoolは,エンジンの通常運転開始時点t_0にて,エンジンの通常運転(外部出力運転)が許可される通常運転冷却水温Twsに達することができる。
しかし,冷却水予熱時間t_prhtを算出するためのパラメータのひとつである周囲外気温Tairは,天候の急変等により,冷却水予熱を開始した後に大きく変化することも想定される。特に,冷却水予熱を開始した後に周囲外気温Tairが大きく低下すると,冷却水温Tcoolとの温度差が開くため,経過時間に対する冷却水温Tcoolの上昇は,予定した冷却水予熱曲線を下回る。すなわち,エンジンの通常運転開始時点t_0で,冷却水温Tcoolは,通常運転冷却水温Twsに達することができず,列車の運行遅延等の問題が発生することが考えられる。
このような状況を回避するため,本発明の鉄道車両用駆動システムでは,これまでに説明した冷却水予熱手段による冷却水温の加熱方式だけではなく,エンジンの暖気運転により冷却水温の上昇を補完する冷却水温上昇加速機能を備える。
図3は,この冷却水温上昇加速機能が動作したときに,冷却水温Tcoolが上昇する様子を示したタイムチャートである。横軸は経過時間(Time),縦軸は冷却水温(Tcool)を示している。また縦軸には,エンジン,冷却水予熱システムの動作状況を併せて示している。
いま,時刻t_0までに冷却水温Tcoolを,点線の曲線で示した冷却水予熱曲線T_curve_1に従い,通常運転冷却水温Twsまで上昇させるため,時刻t_11に冷却水温予熱を開始,これにより実線の曲線で示した実冷却水温が,冷却水予熱曲線T_curve_1を若干上回るように上昇を開始する。実冷却水温が冷却水予熱曲線T_curve_1を若干上回るのは,時刻t_0に冷却水温Tcoolを通常運転冷却水温Twsまで確実に到達させるため,想定される外気温等の変動要素を余裕時間として考慮して冷却水予熱曲線を設定するためである。
その後,時刻tbに達した時点で実冷却水温Tcoolが冷却水予熱曲線T_curve_1を下回っている。これは,前述のように天候の急変等により,周囲外気温Tairが大きく低下して,想定した冷却水予熱を行えない状態を示している。このままの状態では,エンジンの通常運転開始時点t_0で,冷却水温Tcoolは,通常運転冷却水温Twsに達することができない。このため,冷却水予熱曲線T_curve_1と実冷却水温Tcoolの差分が,予め設定する暖気予熱開始水温差ΔTcool_0に達した時点(図6ではtc)で,エンジンの暖機運転(アイドル運転)を開始する。冷却水予熱手段による冷却水加熱と,エンジン暖機運転による冷却水加熱効果により,冷却水温の上昇が加速される。
ここで,エンジンの暖機運転についても,エンジン保全を目的として,冷却水温が所定値Yidまで上昇するまで開始しないように取扱いが決められていることが一般的である。従って,暖気運転による冷却水温上昇加速機能は,冷却水温がTidに達した時点で開始する。暖気運転を開始できる冷却水温仕様値Tidは,通常運転を開始できる冷却水温Twsよりも小さいと考えられる。例えば,700kW級の鉄道向けエンジンの仕様例では,TwsよりTidは15℃小さい。このことから,暖気運転による冷却水温上昇加速機能は,冷却水温がTidに達した時点で開始しても,少なくともTidからTwsまでの水温上昇加速効果を得られる。
次に,エンジン暖気運転による冷却水加熱の終了タイミングの決定方法について説明する。
前述のように,エンジン暖気運転による冷却水加熱は,周囲外気温の低下により必要となる。ここで,低下後の周囲外気温において,新たな冷却水予熱曲線に従い冷却水を加熱することを考える。図6では低下後の周囲外気温により決定される冷却水予熱曲線をT_curve_Xとして一点鎖線で示している。すなわち,周囲外気温が低下した場合,冷却水予熱手段だけでは,その外気温に対応する冷却水予熱曲線T_curve_Xに従い時刻t_0で通常運転水温Twsまで加熱させることができない。エンジン暖気運転による冷却水加熱機能の目的は,この冷却水予熱曲線T_curve_Xに従い冷却水予熱手段だけで冷却水を加熱できる状態まで,冷却水温を補足的に加熱することである。
このことから,実冷却水温Tcoolと新たに現在の周囲外気温(低下後の周囲外気温)に対応して求めた冷却水予熱曲線T_curve_Xとの差分を求め,これが予め設定する暖気予熱開始水温差ΔTcool_1に達した時点(図6ではtd)で,エンジンの暖気運転を終了する。
エンジンの暖気運転を終了した後は,冷却水予熱手段のみで,実冷却水温Tcoolは,時刻t_0までに通常運転冷却水温Twsに加熱される。
以上説明したように,冷却水温上昇加速機能を備えることにより,冷却水予熱時間を変動させる要素である周囲外気温が変化した場合でも,エンジンの暖気運転による温度上昇効果を利用して,所定時点までに冷却水予熱を完了させることができる。
すなわち,本実施例によれば,ディーゼルエンジン発電駆動方式の鉄道車両用駆動システムにおいて,外気温,冷却水温情報より,冷却水を所定値まで予熱するのに要する時間を推定,さらに路線情報もとに予熱の開始地点を決定,車両の開始地点通過により冷却水予熱を開始することで,冷却水予熱を完了すべき所定の地点までに省エネルギで冷却水予熱を確実に完了できる,鉄道車両用駆動システムを提供できる。
実施例1では,冷却水予熱手段16として,冷却水予熱用のヒータによる予熱開始地点(または,時点)を制御する例を示したが,冷却水予熱用のヒータが故障した場合などには暖気運転により冷却水の温度を予熱することが考えられる。本実施例では,冷却水予熱手段16としてエンジンの暖気運転を利用する例を説明する。冷却水予熱手段16としてエンジンの暖気運転を利用した場合も,実施例1と同様の制御で実施可能である。この場合は,図3に示す冷却水温Tcoolの上昇タイムチャートを,暖気運転によるタイムチャートに置き換えて,冷却水温度がTwsまで上昇するのに要する時間を推定すれば良い。
また,冷却水温度が低温から所定温度となるまではヒータで予熱し,所定温度からエンジンの外部出力運転が許可される温度までは,エンジンの暖気運転で予熱するといったように,冷却水の予熱方法が切り替わるようにしても良い。この場合にも,図3に示す冷却水温Tcoolの上昇タイムチャートを,ヒータと暖機運転の組み合わせによるタイムチャートに置き換えて,冷却水温度がTwsまで上昇するのに要する時間を推定すれば良い。
実施例1では,冷却水温検出手段21と外気温検出手段11の双方の検出温度情報を用いて冷却水予熱手段16の予熱開始地点(または時点)を決定する実施形態について説明したが,本実施例では,より簡易な実施形態として,外気温検出手段11を用いない実施形態を説明する。
以下に,本実施例の実施例1と相違する部分について説明する。本実施例における駆動システムと情報制御装置の機器構成を図8に示す。駆動システム6は,エンジン冷却手段15,冷却水予熱手段16,エンジン発電手段17,電力変換手段18,主電動機19,冷却水温検出手段21により構成される。情報制御装置7は,情報制御手段12,情報記憶手段13により構成される。
また,情報制御手段12は,走行位置検出手段22より地点通過情報Chk_positionが,走行速度検出手段20より走行速度Vtrainが,冷却水温検出手段21より水温検出値Tcoolが入力される。また,情報制御手段12は,冷却水予熱手段16に冷却水予熱指令Cmd_prhtを,エンジン発電手段17にエンジン発電制御指令Cmd_egenを,それぞれ情報伝達手段14を介して送信する。
情報制御手段12は,駆動システム6a,6bにより検出し,情報伝達手段14を介して伝達されるエンジン冷却水の水温検出値Tcoolをもとに,駆動システム6のエンジン冷却水が,冷却水予熱手段により加熱され,所定の温度に達する冷却水予熱所要時間T_prhtを決定する。
図9は,本実施例における冷却水予熱曲線の一例を示す図である。グラフの横軸は時間の経過(Time),縦軸は冷却水温(Temperature of Coolant)を示している。当該グラフは,冷却水予熱により,冷却水温(Tcool)が時間の経過とともにTw0からTwsに上昇する様子を示す冷却水予熱曲線である。
つまり,冷却水温が比較的高くTwsに近い温度であれば,予熱に要する時間は短くなるため,エンジンが外部出力を開始する地点に近い地点で予熱が開始される。一方,冷却水温が比較的低くTwsよりも大幅に低い温度であれば,予熱に要する時間は長くなるため,エンジンが外部出力を開始する地点から比較的離れた地点から予熱が開始される。よって,冷却水温度が低くなるに従って,冷却水加熱手段による予熱を開始する地点が,エンジンが外部出力を開始する地点から離れるように設定される。
また,予熱の開始を「走行位置」ではなく「時間」で管理することもできる。この場合は,冷却水温が比較的高くTwsに近い温度であれば,予熱に要する時間は短くなるため,予熱開始時刻とエンジンが外部出力を開始する地点へ到着予定時刻の間隔を比較的短くなるように予熱開始時刻を決定し,一方,冷却水温が比較的低くTwsよりも大幅に低い温度であれば,予熱に要する時間は長くなるため,予熱開始時刻とエンジンが外部出力を開始する地点へ到着予定時刻の間隔を比較的長くなるように予熱開始時刻を決定する。つまり,冷却水温度が低くなるに従って,冷却水予熱手段による予熱を開始する時刻と,エンジンが外部出力を開始する地点への到着予定時刻との間隔が長くなるように,予熱開始時刻が設定される。
ここで,図3に示すように,冷却水の温度上昇速度は,外気温度の条件に起因して変化するため,エンジンが外部出力を開始する地点で確実に冷却水温を所定温度まで上昇させるためには,図3における低温側の曲線となるように,図9の曲線を設定しておくと良い。
本実施例では,図3に示したような外気温に応じた複数の冷却水温Tcoolの上昇タイムチャートを制御に反映させることができないため,エンジンが外部出力を開始する地点で確実に冷却水温を所定温度まで上昇させるためには,実施例1よりも早く冷却水予熱手段16の予熱を開始する必要がある。このように本実施例では,実施例1よりも省エネルギ効果は低下すると考えられるが,外気温検出手段11が不要となるため実施例1よりも安価な構成とすることができる。
1…車両,2…車間連結器,3…集電手段,4…台車,5…輪軸,6…駆動システム,7…情報制御装置,11…外気温検出手段,12…制御手段,13…情報記憶手段,14…情報伝達手段,15…エンジン冷却手段,16…冷却水予熱手段,17…エンジン発電手段,18…電力線間手段,19…主電動機,20…走行速度検出手段,21…冷却水温検出手段,22…走行位置検出手段,31…冷却水予熱時間算出部,32…冷却水予熱開始位置算出部,33…現在走行位置算出部,34…冷却水予熱指令算出部,35…比較器,36…論理積演算回路

Claims (9)

  1. 鉄道車両用ディーゼルエンジンと,
    当該鉄道車両用ディーゼルエンジンを冷却するエンジン冷却手段と,
    前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの冷却手段を通流する冷却水を加熱する冷却水加熱手段と,
    前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの冷却手段を通流する冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段と,
    地上側の給電設備または車両に搭載した蓄電手段または前記鉄道車両用ディーゼルエンジンにより駆動される発電機からの電力を電源として車両駆動用の電動機へ交流電力を供給する電力変換手段と,を備え,
    前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間から,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの出力を利用して車両を駆動する区間へ走行する鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記鉄道車両の走行位置情報を検出する走行位置検出手段と,
    前記冷却水加熱手段による加熱開始を指令する制御手段と,
    前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する地点情報または時刻情報を路線毎に記憶する情報記憶手段と,を備え,
    前記鉄道車両が前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間を走行する際に,前記制御手段は,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンを起動する前に冷却水加熱手段による加熱を開始し,
    前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する地点において,前記冷却水温度が前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力運転を行うことができる温度となるように,前記冷却水温度に応じて,前記冷却水加熱手段による加熱を開始する地点または時点を変更することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  2. 請求項1に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記鉄道車両が前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間を走行する際に,
    前記制御手段は,前記冷却水温度が低くなるに従って,前記冷却水加熱手段による加熱を開始する地点が,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する地点から離れるように,加熱開始地点を設定することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  3. 請求項1に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記鉄道車両が前記鉄道車両用ディーゼルエンジンの出力を利用せずに車両を駆動する区間を走行する際に,前記制御手段は,前記冷却水温度が低くなるに従って,前記冷却水加熱手段による加熱を開始する時刻と,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する地点への到着予定時刻との間隔が長くなるように,加熱開始時刻を設定することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  4. 請求項2または3のいずれかに記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    車両の周囲外気温を測定する外気温検出手段を備え,
    前記情報記憶手段に,複数の周囲外気温に応じた複数の冷却水加熱時の水温上昇曲線情報を備え,
    前記制御手段は,前記外気温検出手段で検出した外気温に応じた水温上昇曲線情報に基づいて,前記冷却水加熱手段による加熱を開始する地点,または前記冷却水加熱手段による加熱を開始する時刻を設定することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  5. 請求項2または請求項4に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記情報記憶手段は,冷却水加熱時の水温上昇曲線情報を備え,
    前記制御手段は,前記水温上昇曲線情報をもとに冷却水が所定温度まで上昇するのに要する時間を生成し,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する地点情報を基準として,前記冷却水加熱を開始する地点を決定することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  6. 請求項3または請求項4に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記制御手段は,前記水温上昇曲線情報をもとに冷却水が所定温度まで上昇するのに要する時間を生成し,前記情報記憶手段に記憶される前記鉄道車両用ディーゼルエンジンが外部出力を開始する時刻情報から,前記冷却水予熱上昇時間を減算することにより,前記冷却水加熱手段による加熱を開始する時刻を決定し,当該加熱を開始する時刻に達した時点で,前記冷却水加熱手段による冷却水加熱を開始することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  7. 請求項5または請求項6に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記情報記憶手段は,鉄道車両の走行位置に対する経過時間情報を備え,
    前記制御手段は,前記走行距離に対する経過時間情報に基づいて,前記冷却水が所定温度まで上昇するのに要する時間だけ走行位置を遡ることで冷却水の加熱開始地点または加熱開始時刻を決定し,
    前記走行位置情報が前記冷却水加熱開始地点に達した時点で冷却水加熱を開始することを特徴とする鉄道車両用駆動システム。
  8. 請求項4に記載の鉄道車両用駆動システムにおいて,
    前記冷却水加熱手段による冷却水の加熱を開始した時点以降に,周囲外気温が低下した場合,低下した前記周囲外気温と冷却水温をパラメータとして第二の水温上昇曲線を前記情報記憶手段から選択し,当該第二の水温上昇曲線と周囲外気温の差分が予め定める第一の閾値よりも大きく,かつ冷却水温が予め定める第二の閾値よりも大きいとき,前記制御手段は,前記鉄道車両用ディーゼルエンジンにアイドル運転を指令することを特長とする鉄道車両用駆動システム。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の鉄道車両用駆動システムを備えた鉄道車両。
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