JP6160716B2 - セレンテラジン類縁体 - Google Patents

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Description

本発明は、セレンテラジン類縁体、その使用方法などに関する。
生物発光は、ルシフェリン(発光基質)−ルシフェラーゼ(発光を触媒する酵素)反応
と呼ばれる生体内における化学反応にもとづく現象である。国内外で古くからルシフェリ
ンやルシフェラーゼの同定研究をはじめ、分子レベルでの発光メカニズムの解明など、数
多くの研究が行われてきた。
生物発光反応で使用される発光基質の中で、イミダゾピラジノン骨格を有する化合物を
利用する海洋性生物が多く知られている。
中でもセレンテラジン(coelenterazine: CTZ)は、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ
、オプロフォーラス(Oplophorus)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ
等の発光基質、またはオワンクラゲ由来の発光タンパク質イクオリンの発光源としても知
られている。種々のルシフェラーゼ及び発光タンパク質の発光基質として利用されている
共通の化合物であり、CTZについてこれまでに多くの研究成果が蓄積している(非特許文献
1〜9)。
Figure 0006160716
セレンテラジンを発光基質とする発光反応系は、発光基質と酸素のみで発光反応が進む
ため、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイが汎用されている。
これまでに50種類程度のセレンテラジン類縁体(CTZアナログ)が合成され、それらを
基質として、各種ルシフェラーゼについてその発光特性が検討されてきた(非特許文献6〜
10)。
さらに、セレンテラジン自身は水溶液中において、容易に酸化分解することもと示され
ている(非特許文献9)。
オプロフォーラスルシフェラーゼは分子量35kDaの蛋白質と19kDaの蛋白質より構成され
ている。発光を触媒するドメインは、19kDa蛋白質にあり、近年、19kDa蛋白質へのアミノ
酸の変異導入により、天然19kDa蛋白質より高い活性を示す19kDa発光触媒ドメインが開示
されている (非特許文献10)。
特に、オプロフォーラスルシフェラーゼおよび発光を触媒する19 kD蛋白質は、他のセ
レンテラジン系ルシフェラーゼに比べて、基質特性が広く、セレンテラジンに比べ5倍以
上高い発光活性を示すセレンテラジン類縁体を見出すことは容易ではない(非特許文献6〜
10)。さらに、生物発光イメージング等に使用する場合、発光反応液である水溶液中で酸
化分解しにくいセレンテラジンも所望されている。
Teranishi K. (2007) Bioorg. Chem. 35, 82−111. Shimomura O. et al. (1990) Biochem. J. 270, 309−312. Shimomura O. et al. (1988) Biochem. J. 251, 405−410. Shimomura O. et al. (1989) Biochem. J. 261, 913−920. Inouye S.& Shimomura O. (1997) Biochem. Biophys. Res. Commun. 233, 349−353 Nakamura H. et al. (1997)Tetrahedron Lett. 38, 6405−6406. Wu C. et al. (2001) Tetrahedron Lett. 42, 2997−3000. Inouye S. & Sasaki S. (2007) Protein Express. Purif. 56, 261−268. Inouye S. et al. (2013) Protein Express. Purif. 88, 150−156. Hall M.P. et al. ACS Chem. Biol. 2012; 7: 1848−1857.
セレンテラジンは数多くの海洋性発光生物由来ルシフェラーゼ共通の発光基質となるが
、これらルシフェラーゼ間の一次構造に顕著な相同性は見られず、触媒部位も明らかにな
っていない。そのため、発光基質やルシフェラーゼ蛋白質を精密分子設計しルシフェラー
ゼ蛋白質に最適なルシフェリンを予測することは不可能であり、個々のルシフェラーゼに
ついて適した基質を見つけるには、セレンテラジン類縁体の中よりスクリーニングする必
要がある。
上記状況に下、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光
特性を示すセレンテラジン類縁体などが求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セレンテラジンの2
位のベンゼン環上の水酸基の代りにフッ素及び6位のベンゼン環より水酸基を脱離した新
規セレンテラジン類縁体が、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と
異なる発光特性を有することなどを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す、セレンテラジン類縁体、セレンテラジン類縁体の製
造方法、キット、発光方法などを提供する。
[1] 下記一般式(1)
Figure 0006160716
で表わされる化合物
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキ
ル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていても
よいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;
または複素環基である)。
[2] 一般式(1)において、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p
−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロペンチル、シクロペン
チルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、
エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチルま
たはチオフェン−2−イルである、上記[1]に記載の化合物。
[3] 一般式(1)において、R1はベンジル、α−ヒドロキシベンジルまたはp−ヒド
ロキシベンジルである、上記[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(1)において、R1はベンジルである、上記[3]に記載の化合物。
[5] 下記一般式(1)
Figure 0006160716
で表わされる化合物
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキ
ル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていても
よいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;
または複素環基である)
の製造方法であって、
下記一般式(2)
Figure 0006160716
で表わされる化合物(式中、R1は水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは
非置換のアリールアルキル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基に
よって置換されていてもよいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアル
ケニル;脂肪族環式基;または複素環基である)を、
下記一般式(3)
Figure 0006160716
で表わされる化合物と反応させて、一般式(1)で表わされる化合物を得ることを含む方
法。
[6] 一般式(1)において、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p
−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロペンチル、シクロペン
チルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、
エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチルま
たはチオフェン−2−イルである、上記[5]に記載の方法。
[7] 一般式(1)において、R1はベンジル、α−ヒドロキシベンジルまたはp−ヒド
ロキシベンジルである、上記[6]に記載の方法。
[8] 一般式(1)において、R1はベンジルである、上記[7]に記載の方法。
[9] (i) 上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物;ならびに
(ii) ルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリ
ヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転
換体から選択される少なくとも1つ;
を含む、キット。
[10] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19
kDa蛋白質である、上記[9]に記載のキット。
[11] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/
または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を
有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有
し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[9]に記載のキット。
[12] 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる
群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または
付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白
質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、
ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェ
ントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有す
る蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、上記[9]に記載のキット。
[13] 上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物とルシフェラーゼとを接触させ
ることを含む、発光反応を行う方法。
[14] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19
kDa蛋白質である、上記[13]に記載の方法。
[15] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/
または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を
有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有
し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[13]に記載の方法。
[16] ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドをレポーター遺伝子として用い、
発光基質として、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を用いることを含む、
プロモーター制御に関与する配列の活性を測定する方法。
[17] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19
kDa蛋白質である、上記[16]に記載の方法。
[18] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/
または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を
有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有
し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[16]に記載の方法。
[19] 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる
群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または
付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白
質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、
ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェ
ントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有す
る蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、上記[16]に記載の方法。
本発明は、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光特性
を示すセレンテラジン類縁体を提供する。本発明の好ましい態様のセレンテラジン類縁体
は、基質特異性の広い天然オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質より高い活性
を示す変異19kDa蛋白質に適した基質となる。また、本発明の好ましい態様のセレンテラ
ジン類縁体は、セレンテラジンと比較して水溶液中での安定性が高い。
ガウシアルシフェラーゼの分泌配列を有する発現べクター pcDNA3−GLspのプラスミドマップを示す図である。 pcDNA3−GLsp−nanoKazのプラスミドマップを示す図である。 セレンテラジン類による組換えnanoKAZの発光パターンの比較を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。

1.本発明のセレンテラジン類縁体
本発明は、次の下記一般式(1)で表わされる化合物(本明細書中において「本発明の
セレンテラジン類縁体」という場合がある)を提供する。
Figure 0006160716
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキ
ル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていても
よいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;
または複素環基である)
1の「置換若しくは非置換のアリール」は、例えば、1〜5個の置換基を有するアリ
ール、又は非置換のアリールである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素
、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキ
シル、アミノ、及び炭素数1〜6個のジアルキルアミノからなる群から選択される少なく
とも1つが挙げられる。本発明のいくつかの態様では、置換基は水酸基である。「置換若
しくは非置換のアリール」は、具体的には、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、p−ア
ミノフェニル、p−ジメチルアミノフェニルなどであり、好ましくは、フェニル、又はp
−ヒドロキシフェニルである。本発明のいくつかの態様では、「置換若しくは非置換のア
リール」は、非置換のアリールであり、例えば、フェニルである。
1の「置換若しくは非置換のアリールアルキル」は、例えば1〜5個の置換基を有す
る炭素数7〜10個のアリールアルキル、又は非置換の炭素数7〜10個のアリールアル
キルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、
水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、及び炭素
数1〜6個のジアルキルアミノが挙げられる。「置換若しくは非置換のアリールアルキル
」は、例えば、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、p−ジメチ
ルアミノベンジル、又はフェニルエチルであり、好ましくは、ベンジル、α−ヒドロキシ
ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、又はフェニルエチルである。本発明のいくつかの態
様では、「置換若しくは非置換のアリールアルキル」は、ベンジルである。
1の「置換若しくは非置換のアリールアルケニル」は、例えば、1〜5個の置換基を
有する炭素数8〜10個のアリールアルケニル、又は非置換の炭素数8〜10個のアリー
ルアルケニルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素
など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、
及び炭素数1〜6個のジアルキルアミノが挙げられる。「置換若しくは非置換のアリール
アルケニル」は、例えば、フェニルビニル、p−ヒドロキシフェニルビニル、又はp−ジメ
チルアミノフェニルビニルである。本発明のいくつかの態様では、「置換若しくは非置換
のアリールアルケニル」は、非置換のアリールアルケニルであり、例えば、フェニルビニ
ルである。
1の「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、非置換の
直鎖若しくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキル、又は例えば1〜10個の脂肪族環式基
によって置換された直鎖若しくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキルである。脂肪族環式
基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、
又はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シクロヘキシル、シク
ロペンチル、又はアダマンチルである。「脂肪族環式基によって置換されていてもよいア
ルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメ
チル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロブ
チルメチル、又はシクロプロピルメチルであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル
、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメ
チル、又はシクロヘキシルエチルである。本発明のいくつかの態様では、「脂肪族環式基
によって置換されていてもよいアルキル」は、脂肪族環式基によって置換されていてもよ
い直鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シ
クロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、又はシクロヘキシルエチルである。
1の「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル」は、非置換の直鎖若
しくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニル、又は例えば1〜10個の脂肪族環式基によ
って置換された直鎖若しくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニルである。脂肪族環式基
としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、又
はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シクロヘキシル、シクロ
ペンチル、又はアダマンチルである。「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアル
ケニル」は、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブ
テニル、3−ブテニル、又は2−メチルプロペニルであり、好ましくは、2−メチルプロ
ペニルである。
1の「脂肪族環式基」は、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル
、シクロブチル、又はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シク
ロペンチル、又はシクロヘキシルである。
1の「複素環基」は、環を構成する原子として炭素以外にN、O、及びSからなる群
から選択される1〜3個の原子を含む例えば5〜7員環であって炭素を介して結合する基
、又は2つ以上のそのような環が縮環したものであって炭素を介して結合する基、若しく
はそのような環とベンゼン環が縮環したものであって炭素を介して結合する基である。「
複素環基」は、例えば、チオフェン−2−イル、2-フラニル、又は4-ピリジルである。
本発明のいくつかの態様では、「複素環基」は、硫黄を含む複素環基であり、例えば、チ
オフェン−2−イルである。
本発明の好ましい態様によれば、R1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジ
ル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニ
ル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、
シクロヘキシルエチル、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプ
ロペニル、アダマンチルメチルまたはチオフェン−2−イルである。
本発明のさらに好ましい態様によれば、R1は、ベンジルである。一般式(1)で表わ
される化合物のうちR1がベンジルであるものは、下記式で表わされる化合物(本明細書
中で、「C6d−f−セレンテラジン」または「C6d−f−CTZ」という場合がある。)である
Figure 0006160716
本発明のある態様のセレンテラジン類縁体は、公知のセレンテラジン類縁体と異なる発
光特性を示す。
2.本発明のセレンテラジン類縁体の製造方法
一般式(1)で表わされる化合物(「本発明のセレンテラジン類縁体」)は、次のよう
にして製造することができる。
すなわち、下記一般式(2)
Figure 0006160716
で表わされる化合物を、
(式中、Rは前記の通りである)
下記一般式(3)
Figure 0006160716
で表わされる化合物と反応させることにより、一般式(1)で表わされる化合物を得るこ
とができる。
一般式(2)で表わされる化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、一
般式(2)で表わされる化合物は、Kishi, Y. et al., Tetrahedron Lett., 13, 2747-27
48 (1972)、又はAdamczyk, M. et al., Org. Prep. Proced. Int., 33, 477-485 (2001)
に記載の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。より具体的には、次のよう
にして、一般式(2)で表わされる化合物を製造することができる。すなわち、まず、ル
イス酸触媒を用いて置換フェニルグリオキサールアルドキシムとグリシノニトリル誘導体
との環化反応を行い、ピラジンオキシドを形成した後、Raney Ni等を触媒として用いた接
触水素還元により製造するか、又は2−アミノ−5−ブロモピラジン誘導体と置換フェニ
ルホウ酸或は置換フェニルホウ酸ピナコールエステルとの鈴木-宮浦カップリング反応を
行うことで、一般式(2)で表わされる化合物を製造できる。
一般式(3)で表わされる化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、一
般式(3)で表わされる化合物は、Adamczyk, M. et al., Synth. Commun., 32, 3199-32
05 (2002)、又はBaganz, H. & May, H.−J. Chem. Ber., 99, 3766−3770 (1966) 及びBa
ganz, H. & May, H.−J. Angew. Chem., Int. Ed. Eng., 5, 420 (1966)に記載の方法又
はそれに準ずる方法で製造することができる。より具体的には、次のようにして、一般式
(3)で表わされる化合物を製造することができる。すなわち、置換ベンジルGrignard反
応剤をジエトキシ酢酸エチルと低温(−78 ℃)で反応させるか、又はエタノール中でα
−ジアゾ−α‘−置換フェニルケトンに次亜塩素酸tert−ブチルを作用させることで、一
般式(3)で表わされる化合物を製造することができる。
ここで、本発明の一般式(1)で表わされる化合物の製造方法において使用される溶媒
は、特に限定されず、種々のものを使用できる。例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラ
ン、エーテル、メタノール、エタノール、又は水であり、これらは単独で又は混合して使
用することができる。
また、本発明の一般式(1)で表わされる化合物の製造方法において、反応温度及び反
応時間は、特に限定されないが、例えば、0℃〜200℃で1時間〜96時間、室温〜1
50℃で3時間〜72時間、又は60℃〜120℃で6時間〜24時間である。
3.本発明の蛋白質
本発明の蛋白質は、天然オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質の変異蛋白質
であり、配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するポ
リペプチドのアミノ酸配列を含有する蛋白質である。
「配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性」とは、例えば
、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性(本明細書中で、単に「発光活性」という場合
がある。)、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化され
てオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒するようになる活性を意味する。
なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
このような活性もしくは機能は、例えば、Inouye, S. & Shimomura, O. (1977) Bioche
m. Biophys. Res. Commun. 233,349−353に記載の方法によって測定することができる。
具体的には、本発明の蛋白質をルシフェリンと混合することにより発光反応を開始させ、
発光測定装置を用いて発光触媒活性を測定することができる。発光測定装置としては、市
販されている装置、例えばLuminescencer−PSN AB2200(アトー社製)、またはCentro 960
luminometer (ベルトール社製)を使用することができる。
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の蛋白質の基質となるルシフェリン
であればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはイミダゾピラジノ
ン環を主骨格とするセレンテラジン類が挙げられる。
セレンテラジン類は、セレンテラジンまたはその類縁体(例えば、本発明のセレンテラ
ジン類縁体)のことを意味する。セレンテラジン類は、公知の方法で合成してもよく、あ
るいは、市販のものを入手することもできる。本発明のセレンテラジン類縁体の製造方法
は、前述の通りである。
「ルシフェリンを基質とする発光触媒活性」は、好ましくは、セレンテラジン類を基質
とする発光触媒活性である。「セレンテラジン類を基質とする発光触媒活性」は、好まし
くは、本発明のセレンテラジン類縁体を基質とする発光触媒活性である。「本発明のセレ
ンテラジン類縁体を基質とする発光触媒活性」は、さらに好ましくは、本発明のセレンテ
ラジン類縁体を基質としたときにセレンテラジンと比較して5倍以上高い相対最大発光強
度を示す発光触媒活性であり、特に好ましくは、本発明のセレンテラジン類縁体を基質と
したときにセレンテラジンと比較して5倍以上高い相対最大発光強度を示し、かつ、連続
的に発光する発光触媒活性である。相対最大発光強度における「5倍以上」は、例えば、5
〜20倍、5〜15倍、5〜14倍、5〜13倍、5〜12倍、または5〜11倍である。「連続的に発光
」における連続発光時間は、例えば、1分〜120分、1分〜60分、1分〜30分、1分〜15分、1
分〜10分、1分〜5分または1分〜3分である。
「配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するポリペ
プチドのアミノ酸配列を含有する蛋白質」は、例えば、下記(a)〜(c)からなる群から選択
される蛋白質である。
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/
または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を
有する蛋白質、および
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有
し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質。
本願明細書において「1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは
、同一配列中の任意かつ1〜8個のアミノ酸配列中の位置において、1〜8個のアミノ酸残基
の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
「1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」におけ
る「1〜8個」の範囲は、例えば、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1
〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的
に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上
が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning:
A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)
”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1
〜38, John Wiley and Sons (1987−1997) ”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”
、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“N
uc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)
”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は
相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−ア
ミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン
、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−ア
ミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロ
ピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/ま
たは付加したアミノ酸配列において、配列番号:1のアミノ酸配列の6番目のGlu、13番目
のArg、20番目のLeu、29番目のLeu、35番目のAsn、45番目のArg、46番目のIle、56番目の
Ile、70番目のAsp、74番目のGln、77番目のLys、92番目のVal、117番目のGlu、126番目の
Lys、140番目のIle、および168番目のArgの全てのアミノ酸が欠失または置換されていな
いのが好ましい。
本願明細書において、「95%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「95%以上
」の範囲は、例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以
上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上
、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい
。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J
. Mol. Biol. 215, 403 (1990)参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用
いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
また、本発明の蛋白質は、後述の本発明のポリヌクレオチドにコードされる蛋白質であ
ってもよい。
好ましくは、本発明の蛋白質は、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質である

(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜4個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/
または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を
有する蛋白質、および
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有
し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質。
さらに好ましくは、本発明の蛋白質は、配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリぺプ
チドを含有する蛋白質である。
本発明の蛋白質は、さらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくは
N末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプ
チド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の蛋白質を可
溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、および抗体認識可能なエピトープ配列か
らなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプ
チド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチ
ド配列である。本発明の別の好ましい態様では、他のペプチド配列は、精製のためのペプ
チド配列、分泌シグナルペプチド配列、および本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現
するための配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列である。
本発明の蛋白質は、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列が含まれていてもよい。
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド
配列を使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、例えば、TEE配
列が挙げられる。
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列
を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基
が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、
グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、
プロテインAのアミノ酸配列、およびアビジンタグ配列が挙げられる。
分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質を、細胞膜
透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミ
ノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告され
ている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heiji
ne G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201参照)。分泌シグナルペプチドとしては、よ
り具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghraye
b, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌
シグナルペプチド、および後述の実施例で用いたガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル
ペプチドが挙げられる。
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列としては、例えば式
(Z)nで表わされるポリペプチド(特にはZZドメイン)を挙げることができる。式(Z)nで表
わされるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列としては、特開20
08−99669号に記載したものなどが挙げられる。
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられているペプチド
配列を使用することができる。
本発明のいくつかの態様の蛋白質は、配列番号:6または配列番号7のアミノ酸配列か
らなるポリペプチドを含有する蛋白質である。
本発明の蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の蛋白質としては、化学
合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により調製した組換え蛋白質で
あってもよい。本発明の蛋白質を化学合成する場合には、Fmoc法(フルオレニルメチルオ
キシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができ
る。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プ
ロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ
社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明
の蛋白質を遺伝子組換え技術により調製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により調
製することができる。より具体的には、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(
例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の蛋白質を調製することがで
きる。
4.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明
のポリヌクレオチドとしては、本発明の蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであ
ればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、
ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、
合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バク
テリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また
、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse
Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅
することもできる。
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、以下の(a)〜(d)からなる群から選択
されるいずれかのポリヌクレオチドが挙げられる。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または
付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白
質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、
ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェ
ントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有す
る蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
ここで、「ルシフェリンを基質とする発光触媒活性」は、前述の通りである。
「1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列」とは、同一
配列中の任意かつ1〜複数個の塩基配列中の位置において、1〜複数個の塩基の欠失、置換
、挿入および/または付加があることを意味する。
「1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列」における「1
〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1
〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、又は1個である。欠失、置換、挿入
もしくは付加した塩基の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記塩基の欠失、置換、挿
入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. e
t al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor
Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecula
r Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997) ”、“Nuc. Acids.
Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene
, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. S
ci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することが
できる。
ある塩基配列に対して、1もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付
加したポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 15
2, 271−275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468−500
(1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456 (1984)、Kramer W, a
nd Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350−367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl.
Acad. Sci. USA. 82, 488−492 (1985)、およびKunkel, Methods Enzymol. 85, 2763−27
66 (1988)参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acid
s Res. 12, 9441−9456 (1984)参照)などを用いることにより得ることができる。
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5
’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)
参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その
蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の調製したい部分断片をコードする領域の5’端
の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的
な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードする
ポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
「90%以上の同一性を有する塩基配列」における「90%以上」の範囲は、例えば、90%
以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%
以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上
、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上である。上記同一性の数値
は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例
えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)参照)等の解析プログラ
ムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーター
を用いる。
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号
:2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプロー
ブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法また
はサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(
例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを
固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼー
ションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液
の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、
65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげること
ができる。
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory
Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M.
et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and
Sons (1987−1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques
, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書
に記載されている方法に準じて行うことができる。
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条
件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、
例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の
条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト
溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェン
トな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルム
アミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高
くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有
するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハ
イブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度
、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であれ
ばこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能であ
る。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct
Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は
、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを
一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで
洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラ
ムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2の塩基配列か
らなるポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以
上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以
上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9
%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列の同一性は、前述し
た方法を用いて決定できる。
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(d)からなる群から選択され
るポリヌクレオチドである。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付
加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、
ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジ
ェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有
する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
本発明のさらに好ましい態様のポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(c)からなる群から選
択されるポリヌクレオチドである。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付
加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して98%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、
ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
含有するポリヌクレオチド。
本発明の特に好ましい態様のポリヌクレオチドとして、配列番号:2の塩基配列からな
るポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、他のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有
するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促
進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発
明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、および抗体認識可能
なエピトープ配列からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げること
ができる。
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポ
リヌクレオチドを含んでいてもよい。
翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオ
チドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのペプチド配列をコー
ドするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進
のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野におい
て用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレ
オチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなど
が挙げられる。
分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知
られている分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使
用することができる。分泌シグナルペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列をコードするポリヌ
クレオチドとしては、当記述分野において知られている可溶性タンパク質として発現する
ためのペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができ
る。本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチドとしては、前記したも
のなどが挙げられる。
制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野に
おいて用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌ
クレオチドを使用することができる。
本発明のいくつかの態様のポリヌクレオチドは、配列番号:5の塩基配列からなるポリ
ヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。
5.カルシウム結合型発光蛋白質の製造方法
本発明のカルシウム結合型発光蛋白質は、本発明のセレンテラジン類縁体と、カルシウ
ム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを接触させて、カルシウム結合型発光蛋白質を得るこ
とにより、製造又は再生することができる。
ここで、「接触」とは、本発明のセレンテラジン類縁体とカルシウム結合型発光蛋白質
のアポ蛋白質とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、本発明のセレンテラ
ジン類縁体を収容した容器にカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を添加すること、
カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を収容した容器に本発明のセレンテラジン類縁
体を添加すること、又は本発明のセレンテラジン類縁体とカルシウム結合型発光蛋白質の
アポ蛋白質とを混合することが含まれる。本発明の1つの態様によれば、接触は、還元剤
(例えば、メルカプトエタノール、又はジチオスレイトール)及び酸素の存在下、低温で
行う。より具体的には、本発明の発光蛋白質は、例えば、Shimomura, O. et al. Biochem
. J. 251, 405−410 (1988)、及び Shimomura, O. et al. Biochem. J. 261, 913−920(1
989)に記載の方法によって製造又は再生することができる。本発明のカルシウム結合型発
光蛋白質は、酸素存在下において、本発明のセレンテラジン類縁体と分子状酸素から生成
するセレンテラジン類縁体のペルオキシドと、アポ蛋白質とが複合体を形成した状態で存
在する。前記複合体にカルシウムイオンが結合すると、瞬間的な発光を示し、セレンテラ
ジン類縁体の酸化物であるセレンテラミド類縁体と二酸化炭素を生成する。前記複合体を
「本発明のカルシウム結合型発光蛋白質」と称することがある。
本発明のカルシウム結合型発光蛋白質を製造するのに用いるアポ蛋白質は、天然から採
取したものであっても、遺伝子工学的に製造したものであってよい。さらに、アポ蛋白質
は、カルシウム結合型発光蛋白質を製造できるものであれば、そのアミノ酸配列を天然の
ものから遺伝子組換え技術によって変異させたものであってもよい。アポ蛋白質は、具体
的には、アポイクオリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、アポオベリ
ン、アポマイトロコミン、アポミネオプシン、又はアポベルボイン、それらの変異蛋白質
等である。本発明のいくつかの態様では、アポ蛋白質は、アポイクオリン、アポオベリン
、アポクライティン−I、アポクライティン−II、もしくはマイトロコミン、またはそ
れらの変異蛋白質等であり、好ましくは、アポイクオリンまたはその変異蛋白質である。
これらのアポ蛋白質は、公知の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。或い
は、JNC株式会社等から各種市販されているので、これらの市販のものを用いてもよい。
6.本発明のセレンテラジン類縁体の利用
発光による検出マーカーの発光基質としての利用
本発明のセレンテラジン類縁体は、発光による検出マーカーの発光基質として利用する
ことができる。本発明のセレンテラジン類縁体は、検出マーカーの発光基質として、イム
ノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用するこ
とができる。
例えば、ルシフェラーゼまたはカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質(以下、「ル
シフェラーゼ等」という場合がある)を、目的蛋白質との融合蛋白質として発現させ、マ
イクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、当該細胞に本発明のセレン
テラジン類縁体を接触させることによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用
することもできる。ここで、「接触」とは、細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを同
一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、細胞の培養容器に本発明のセレ
ンテラジン類縁体を添加すること、細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを混合するこ
と、細胞を本発明のセレンテラジン類縁体の存在下で培養することが含まれる。このよう
な目的タンパク質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行う
こともできる。なお、ルシフェラーゼ等は、マイクロインジェクション法などの手法によ
り細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
ルシフェラーゼは、天然から採取したものであっても、遺伝子工学的に製造したもので
あってよい。さらに、ルシフェラーゼは、そのアミノ酸配列を天然のものから遺伝子組換
え技術によって変異させたものであってもよい。また、ルシフェラーゼは、天然のルシフ
ェラーゼの発光を触媒するドメインまたはその変異蛋白質であってもよい。ルシフェラー
ゼは、例えば、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)(例えばOplophorus gracilorostr
is)由来のルシフェラーゼ(オプロフォーラスルシフェラーゼ)、オプロフォーラスルシ
フェラーゼの発光を触媒するドメイン(19kDa蛋白質)、レニラ(Renilla sp.)(例えば、
Renilla reniformis、若しくはRenilla muelleri )由来のルシフェラーゼ(レニラルシ
フェラーゼ)およびそれらの変異蛋白質である。これらのルシフェラーゼおよびその変異
蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)は、例えば、Shimomura et al. (1988) Biochem.J. 2
51, 405−410、Shimomura et al. (1989) Biochem. J. 261, 913−920、またはShimomura
et al. (1990) Biochem. J. 270,309−312に記載の方法又はそれに準ずる方法で製造す
ることができる。或いは、JNC株式会社、和光純薬工業株式会社及びプロメガ株式会社等
から各種市販されているので、これらの市販のものを用いてもよい。本発明の蛋白質の製
造方法は、前述の通りである。
アポ蛋白質は、前述の通りである。
用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびそ
の変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるの
が特に好ましい。
ここで、オプロフォーラスルシフェラーゼのうち、Oplophorus gracilorostrisルシフ
ェラーゼの19kDa蛋白質の塩基配列を配列番号:8に、アミノ酸配列を配列番号:9に示す。
レポーター蛋白質の発光基質としての利用
本発明のセレンテラジン類縁体は、レポーター蛋白質の発光基質として、プロモーター
制御に関与する配列の活性(転写活性)の測定に利用することもできる。ルシフェラーゼ
等をコードするポリヌクレオチドを、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例え
ば、エンハンサー)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、
本発明のセレンテラジン類縁体と宿主細胞を接触させ、ルシフェリン等に由来する発光を
検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定すること
ができる。ここで、「接触」とは、宿主細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを同一の
培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、宿主細胞の培養容器に本発明のセレ
ンテラジン類縁体を添加すること、宿主細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを混合す
ること、宿主細胞を本発明のセレンテラジン類縁体の存在下で培養することなどが含まれ
る。
ルシフェリン等は、「発光による検出マーカーの発光基質としての利用」の項で説明し
た通りである。
用いるルシフェリンは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変
異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特
に好ましい。
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として好ましく利
用することができる。
アミューズメント用品の材料
本発明のセレンテラジン類縁体は、アミューズメント用品の材料の発光基材としてルシ
フェラーゼ等を用いたときの発光基質として好適に使用することができる。アミューズメ
ント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があ
げられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる

用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびそ
の変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるの
が特に好ましい。
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明のセレンテラジン類縁体は、ルシフェラーゼ等の発光基質として、生物発光共鳴
エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活
性の測定等の分析方法に利用することができる。
例えば、ルシフェラーゼ等および本発明のセレンテラジン類縁体をドナーとして使用し
、蛍光物質(例えば、有機化合物、および蛍光蛋白質)をアクセプターとして使用して、両
者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことによりドナーとアクセプターと
の間の相互作用を検出することができる。
本発明のある態様では、アクセプターとして使用する有機化合物は、Hoechist3342、In
do−1、DAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプターとして使用する蛍光蛋白
質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリン
などである。
本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質
共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発
明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸
化酵素などである。
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J.
2005, 385, 625−637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541−556に記載の方
法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、
例えば、Nature Methods 2006, 3:165−174、またはBiotechnol. J. 2008, 3:311−324に
記載の方法に準じて行うことができる。
用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびそ
の変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるの
が特に好ましい。
7.本発明のキット
本発明は、(i)本発明のセレンテラジン類縁体、ならびに(ii)ルシフェラーゼ等、前記
ルシフェラーゼ等をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換
えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくと
も1つを含むキットも提供する。本発明の好ましい態様は、(i)本発明のセレンテラジン
類縁体、ならびに(ii)ルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチ
ド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含
有する形質転換体から選択される少なくとも1つを含むキットも提供する。
用いるルシフェラーゼは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその
変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが
特に好ましい。
本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明の
キットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、
バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。
本発明のキットには、さらに、ハロゲン化物イオンを含む塩などを含んでいてもよい。
本発明のキットは、上述したレポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定
、発光による検出マーカー、BRET法による生理機能の解析または酵素活性の測定などに利
用することができる。また、後述の発光反応方法に用いることもできる。
8.発光反応方法
発光反応
本発明のセレンテラジン類縁体を基質とする発光反応は、本発明のセレンテラジン類縁
体とルシフェラーゼとを接触させることにより行うことができる。ここで、「接触」とは
、本発明のセレンテラジン類縁体とルシフェラーゼとを同一の反応系に存在させることを
意味し、例えば、ルシフェラーゼを収容した容器に本発明のセレンテラジン類縁体を添加
すること、本発明のセレンテラジン類縁体を収容した容器にルシフェラーゼを添加するこ
と、本発明のセレンテラジン類縁体とルシフェラーゼとを混合することが含まれる。反応
条件としては、オプロフォーラスルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件
またはそれに準じた条件で行うことができる。
具体的には、反応溶媒としては、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩
衝液、水、などが用いられる。
反応温度は、通常約4℃〜約40℃、好ましくは約4℃〜約25℃である。
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特
に好ましくは約7.5である。
用いるルシフェラーゼは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその
変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが
特に好ましい。
本発明のセレンテラジン類縁体は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等
の極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールの溶液として反応系
に加えてもよい。
発光活性の活性化
本発明の蛋白質の、ルシフェリンを基質とする発光活性は、ハロゲン化物イオン、非イ
オン性界面活性剤などにより活性化される。
ハロゲン化物イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン
などがあげられ、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましい。
ハロゲン化物イオンの濃度は、通常約10μM〜約100mM、好ましくは約100μM〜約50mM、
特に好ましくは約1mM〜約20mMである。
反応系にハロゲン化物イオンを添加する方法としては、塩として添加する方法などがあ
げられる。用いられる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カ
ルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などがあげられる。
より具体的には、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2
、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2などがあげられる。
非イオン性界面活性剤の市販品(商品名)としては、Tween20(ポリオキシエチレンソル
ビタンモノラウレート)、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、Trit
onX−100(ポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル)、Briji−58 (
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)、Nonidet P−40 (エチルフェノールポリ(エ
チレングリコールエーテル)n)などがあげられ、Tween20、TritonX−100などが好ましい

非イオン性界面活性剤の濃度は、通常約0.0002%(w/v)〜約0.2%(w/v)、好ましくは約0.0
01%(w/v)〜約0.1%(w/v)、特に好ましくは約0.05%(w/v)〜約0.02%(w/v)である。
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照により
その全体を本明細書に組み込むものとする。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T.
Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Sprin
g Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R.
E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current P
rotocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール
集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬
キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコール
を用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業
者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる
発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すもので
あり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するもので
はない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基
づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1:C6d−f−セレンテラジンの合成
1)1,1−Diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−oneの合成
Figure 0006160716
アルゴン雰囲気下、ジエトキシ酢酸エチル(890 μL, 5.00 mmol)のテトラヒドロフラ
ン(THF)溶液(50 mL)に−78 ℃にて、(4−fluorobenzyl)magnesium chlorideのジエチル
エーテル溶液(0.25 M, 20.0 mL, 5.0 mmol)をゆっくりと滴下した。−78 ℃にて2時間
撹拌した後、徐々に室温まで昇温し、12時間撹拌した。これに20%塩化アンモニウム水溶
液(10 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(
×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリ
カゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=19/1→4/1)に
て精製し、1,1−diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−oneを無色油状物質として
得た(622 mg, 2.59 mmol, 51.7%)。
TLC Rf= 0.24(n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1);
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.25 (t, 6H, J = 7.0 Hz), 3.55 (dq, 2H, J = 7.5, 9.5
Hz), 3.68 (dq, 2H, J = 7.5, 9.5 Hz), 3.86 (s, 2H), 4.62 (s, 1H), 6.97−7.02 (m,
2H), 7.15−7.19 (m, 2H)。
2)C6d−f−coelenterazine (C6d−f−CTZ) の合成
Figure 0006160716
アルゴン雰囲気下、1,1−diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−one(333 mg, 1
.39 mmol)を1,4−ジオキサン(2.0 mL)及び水(0.4 mL)に溶解した。これに2−amino
−3−benzyl−5−phenylpyrazine(261 mg, 1.00 mmol)を加え、0 ℃に冷却した後、さ
らに濃塩酸(0.20 mL)を加え、100 ℃で一晩(12時間)攪拌した。室温まで放冷後、減
圧濃縮し、残渣をアルゴン気流下でシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキ
サン/酢酸エチル=5/1→1/1→酢酸エチル→酢酸エチル/メタノール=50/1→20/1)で精製
し、C6d−f−CTZを主として含む粗生成物(264 mg, <0.645 mmol)を得た。得られた固
体をさらに再沈殿(n−ヘキサン/メタノール)することで、C6d−f−CTZを薄茶色粉末と
して得た(49.2 mg, 120 μmol, 12.0%)。
TLC Rf= 0.35(酢酸エチル);
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ4.29 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 7.05−7.09 (m, 2H), 7.24−
7.28 (m, 1H), 7.31−7.34 (m, 4H), 7.42 (d, 2H, J = 7.0 Hz), 7.49−7.56 (m, 3H),
7.93 (br d, 2H, J = 7.0 Hz), 8.54 (s, 1H)。
実施例2:コドン最適化核酸の設計および化学合成
天然型オプロフォーラスルシフェラーゼの触媒19kDaドメイン(「KAZ」と略することも
ある)より変異導入して創出されたプロメガ社の変異オプロフォーラスルシフェラーゼの
触媒19kDaドメイン(「nanoLuc」と略することもある)のアミノ酸配列(配列番号:1)
をもとに、コドン最適化オプロフォーラスルシフェラーゼの触媒変異19kDaドメイン(「n
anoKAZ」と略することもある)の遺伝子設計を行った。具体的には、nanoLucのアミノ酸
配列(配列番号:1)を変えることなく、ヒトにおける高頻度使用のアミノ酸コドンのみ
を使用し、nanoKAZの塩基配列の設計を行った(配列番号:2)。最適化設計したコドン
最適化nanoKAZドメイン遺伝子を、常法により化学合成法により合成した。
実施例3:動物培養細胞でガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル配列を使用してコドン
最適化nanoKAZドメイン蛋白質を分泌発現するベクターの構築
コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質発現ベクターの構築は以下の通りである。
先ず、動物培養細胞での新規発現ベクターpcDNA3−GLspを構築した(図1)。具体的に
は、pcDNA3−GLucベクター(プロルミ社製)よりガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル
配列をプライマーGLsp−1R/EcoRI (配列番号:3:5' ggc GAA TTC GGT GGG CTT GGC CT
C GGC CAC 3'、アンダーラインEcoRI 配列)とT7プライマー(配列番号:4:5' TAATAC
G ACTCACTATAGGG 3')を用いPCR法により取得し、それをHindIII/EcoRIで消化後、得られ
た断片を、pcDNA3ベクター(インビトロジェン社製)の制限酵素部位であるHindIII/EcoRI
部位に挿入することにより、新規発現ベクターpcDNA3−GLspを構築した。すなわち、新規
発現ベクターは、CMVのプロモーターに制御され、その下流にコザック配列、ガウシアル
シフェラーゼの分泌シグナル配列、マルチクローニングサイト配列を有する。
次に、新規発現ベクターpcDNA3−GLspを用いたコドン最適化nanoKAZドメインタンパク
質発現ベクターpcDNA3−GLsp-nanoKAZ(図2)の構築は以下の通りである。
コドン最適化nanoKAZドメイン遺伝子配列フラグメントを常法により制限酵素EcoRI/Xb
aIにて消化した後、pcDNA3−GLspのEcoRI−XbaI 部位に連結することによって、図2に示
す発現ベクターpcDNA3−GLsp−nanoKAZを構築した。なお、DNA シークエンサー(ABI社製
)により塩基配列を決定することにより、インサート遺伝子配列の確認を行った。
発現ベクターpcDNA3−GLsp-nanoKAZがコードするGLsp-nanoKAZの塩基配列を配列番号:
5に示し、そのアミノ酸配列を配列番号:6に示す。また、その分泌後のアミノ酸配列を
、配列番号:7に示す。
実施例4:動物培養細胞へのベクターの導入および測定用酵素の調製法
(1)発現プラスミドの精製
実施例3にて得られたpcDNA3−GLsp−nanoKAZプラスミドを用いて以下の実験を行った。
pcDNA3−GLsp−nanoKAZ プラスミドは大腸菌JM83より、プラスミド精製キット(QIAGEN社
製)を用いて精製し、1μg/μLの濃度になるよう滅菌水に溶解した。
(2)トランスフェクションおよび測定用酵素の調製法
チャイニーズハムスター卵巣由来の細胞株CHO−KI株を、10%(v/v)牛胎児血清(バイオ
ウエスト社製)を含むHam’s F−12培地(和光純薬社製)にて培養し、10%(v/v)牛胎児
血清(バイオウエスト社製)を含むDMEM(和光純薬社製)で培養した。それぞれの細胞を
1 x 10細胞/ウエル/2 mL培地にて6 ウエルプレートに播種し(n = 2)、インキュベータ
ー中37 ℃、5 % CO2にて培養した。24時間後、精製pcDNA3−GLsp−nanoKAZプラスミドをF
uGene HD(プロメガ社製)トランスフェクションキットを用いて、CHO細胞にトランスフ
ェクションし、次の実験に用いた。具体的には、100μL の培地に、pcDNA3−GLsp−nanoK
AZ発現ベクター1μgと、FuGene HD 3μLを加え、室温で15分間放置した。100μLのDNA−F
uGene 複合体溶液を、6ウエルの細胞に添加した。48時間培養後、培養液を回収して、測
定用分泌nanoKAZ酵素溶液とした。
実施例5:動物培養細胞発現コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質での発光活性測法
実施例4(2)で得られた測定用酵素溶液5μLを、1μg の各種セレンテラジン類縁体を含
む100μLの50mM Tris−HCl (pH 7.6)−10 mM EDTA(和光純薬)に加え、発光反応を開
始させた。発光活性は、発光測定装置(アトー社製:AB2200)で、60秒間で測定し、最
大発光強度(Imax)と60秒間の積算値を相対発光強度(rlu)で表記した。
実施例6:コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質の基質特異性および発光パターンの比較
基質特異性実験に使用したセレンテラジン類縁体は、実施例1記載のもの以外のセレン
テラジン類縁体は、それぞれ論文記載の方法で合成した。具体的には、bis−セレンテラ
ジン はNakamura et al. (1997) Tetrahedron Lett. 38:6405−6406, フリマジン(Furima
zine:(論文記載化合物番号3939))およびC6d-セレンテラジン(論文記載化合物番号38
40)は、Hall et al. (2012) ACS Chem. Biol. 16; 848−1857, C2−セレンテラジン類縁
体は、Inouye et al (2010) Anal. Biochem. 407: 247−252に記載の方法で合成した。実
施例4(2)記載の方法でnanoKAZを分泌させた培養液をセレンテラジンまたはその類縁体の
酵素液として用いて、発光活性を測定した。その結果、nanoKAZによる基質特異性は表1
に示す通りであった。セレンテラジン類縁体の中で、相対最大発光強度でセレンテラジン
より5倍以上高い化合物は、h−、bis−、f−、C6d−f−セレンテラジンおよびフリマジ
ンあり、1分間の相対積算発光量で5倍以上のものはh−、f−、C6d−f−セレンテラジン
である。一方、それらの発光パターンを、図3に示す。図3に示されている通り、発光パタ
ーンが急激に減衰しないものは、bis−セレンテラジン、フリマジンおよびC6d−f−セレ
ンテラジンである。その結果、発光強度および積算発光量でフリマジンより発光強度が著
しく改善され、且つ発光が減衰せずに連続的発光する組合せが可能である発光基質はbis
−セレンテラジンおよびC6d−f−セレンテラジンである。
表1 コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質の基質特異性
Figure 0006160716
実施例7:各種ルシフェラーゼの基質特異性
各種発光酵素類の調製法および発光活性測定法は、既報を方法に従って行なった。オプ
ロフォーラスルシフェアーゼ触媒19KDaドメインの調製法は、Inouye S. & Sasaki S. (20
07) Protein Express. Purif. 56, 261−268に記載の方法、ガウシアルシフェラーゼは、
Inouye S & Sahara Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 368, 600−605に記載の
方法、レニラルシフェラーゼおよびレニラルシフェラーゼ547は、Inouye S. et al. (201
3) Protein Express. Purif. 88, 150−156に記載の方法、エクオリンは、Inouye S et a
l. (2010) Anal. Biochem. 407, 247−252に記載の方法で、それぞれ調製し使用した。測
定結果を表2に示した。特に新規C6d−f−セレンテラジンは、オプロフォーラスルシフェ
ラーゼ触媒19kDaドメインの良い基質となることが明らかとなった。
表2 セレンテラジン系ルシフェラーゼ及び発光蛋白質に対する基質特異性。
Figure 0006160716
実施例8:セレンテラジン類縁体の水溶液中での安定性評価
セレンテラジ類縁体の水溶液での安定性の評価は、10 μg のセレンテラジン類縁体を0
.5 mLの30 mM Tris−HCl (pH7.6)緩衝液に溶解し、37 ℃で、22時間放置し、セレンテラ
ジン類縁体の分解をHPLC分析により確認した。具体的なHPLC分析法は、Inouye S. et al.
(2013) Protein Express. Purif. 88, 150−156記載の方法に準じた。
その結果を表3にまとめた。セレンテラジンおよびフリマジンは、非常に不安定で22時
間後に未分解で残った量がそれぞれ2%及び3%であったのに対して、bis−セレンテラ
ジンとC6d−f−セレンテラジンはそれぞれ38%と49%でった。すなわち、C6d−f−
セレンテラジンが最も安定なセレンテラジン類縁体であり、天然型セレンテラジンに比べ
、安定性が著しく改善された。
表3 セレンテラジン類縁体の水溶液中での安定性の比較
Figure 0006160716
[配列番号:1]nanoLucおよびnanoKAZのアミノ酸配列である。
[配列番号:2]nanoKAZをコードするポリヌクレオチドの塩基配列である。
[配列番号:3]実施例3で用いたプライマーの塩基配列である。
[配列番号:4]実施例3で用いたプライマーの塩基配列である。
[配列番号:5]GLsp-nanoKAZをコードするポリヌクレオチドの塩基配列である。
[配列番号:6]GLsp-nanoKAZのアミノ酸配列である。
[配列番号:7]GLsp-nanoKAZの分泌後のアミノ酸配列である。
[配列番号:8]Oplophorus gracilorostrisルシフェラーゼの発光触媒機能を有する19
kDa蛋白質をコードする塩基配列である。
[配列番号:9]Oplophorus gracilorostrisルシフェラーゼの発光触媒機能を有する19
kDa蛋白質のアミノ酸配列である。

Claims (10)

  1. (i) f−セレンテラジン
    (ii) 下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
    であるルシフェラーゼ
    を接触させることを含む、発光反応を行う方法。
  2. 前記ルシフェラーゼが配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質である、請求項1に記載の方法。
  3. 下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
    であるルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドをレポーター遺伝子として用い、発光基質として、f−セレンテラジン用いることを含む、プロモーター制御に関与する配列の活性を測定する方法。
  4. 前記ルシフェラーゼが配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質からなるものである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(c)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
    (a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:2の塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
    (c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    ある、請求項3に記載の方法。
  6. 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである、請求項3に記載の方法。
  7. (i) f−セレンテラジン
    (ii) 下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
    であるルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくとも1つ;
    を含む、発光反応で用いられるキット。
  8. 前記ルシフェラーゼが配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質からなるものである、請求項7に記載のキット。
  9. 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(c)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
    (a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:2の塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
    (c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    ある、請求項7に記載のキット。
  10. 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである、請求項7に記載のキット。
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