JP6118708B2 - ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法 - Google Patents

ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6118708B2
JP6118708B2 JP2013216820A JP2013216820A JP6118708B2 JP 6118708 B2 JP6118708 B2 JP 6118708B2 JP 2013216820 A JP2013216820 A JP 2013216820A JP 2013216820 A JP2013216820 A JP 2013216820A JP 6118708 B2 JP6118708 B2 JP 6118708B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
isp
ratio
billing
optimum
cps
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013216820A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015079391A (ja
Inventor
上山 憲昭
憲昭 上山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP2013216820A priority Critical patent/JP6118708B2/ja
Publication of JP2015079391A publication Critical patent/JP2015079391A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6118708B2 publication Critical patent/JP6118708B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Description

本発明は、インターネットサービスプロバイダー(以下、「ISP(Internet Service Provider)」と記す)による課金比率設定装置及び方法に係り、特に、コンテンツプロバイダ(以下、「CP(Contents Provider)」と記す)がユーザからコンテンツの配信料金を徴収する有料配信型のコンテンツ配信サービスにおいて、ISP-1とISP-2の二つのISPが存在する環境において、ISP-1がCPに対して、コンテンツ配信料金の一定の割合αを徴収するコンテンツ課金を導入し、ISP-2は転送データ量のβ乗を徴収するトランジット課金を用いる場合に、各々のISPが自由に課金比率α,βを設定できるISP間の競争環境において、各々のISPによる課金比率を設定するためのISPによる課金比率設定装置及び方法に関する。
ネットワーク(NW)上での大容量リッチコンテンツの配信が普及しつつある。CPのビジネスモデルとしては、従来、広告主から広告料を得るビジネスモデルが一般的であったが、近年はユーザから視聴料金を得る有料配信も広く用いられており、今後も普及が予想される。リッチコンテンツの配信時には、NW上に大量のトラヒックが転送される。例えば、HDTV(High Definition TV)品質の動画のコンテンツの場合、約25Mbpsのビットレートを有するが、100分の動画コンテンツであれば約19Gbyteのデータが転送される。ISPは安定した品質を維持する必要があり、リッチコンンテンツ配信の増加に伴う設備コストの増大が大きな負担となっている。ユーザとCPから得る料金で、ISPは設備コストを賄う必要があるが、価格競争の激しいNWアクセスサービスにおいて、ISPがユーザにリッチコンテンツ配信の付加料金を求めることは困難である。また、有料配信の場合、CPに対して支払うコンテンツ視聴料金に加えて、さらにISPに対しても付加サービス料金を支払うことはユーザにとって抵抗感が強いと思われる。しかし、一方、CPは有料配信によって大きな収益を得ることが可能であり、そのビジネスを支えるISPの貢献に対して、収益の一部を対価として還元する余地があると考えられる(例えば、非特許文献1参照)。
J. Crowcroft,"Net Nuetrality: The Technical Side of the Debate: A White Paper," ACM SIGCOMM CCR, Vol. 37, No.1, pp. 49-55, 2007.
現状、CPはISPに対してトランジットサービスの利用者として接続する形態が一般的であり、トランジット料金を支払っているが、5分ごとの平均データ転送レートの95%値に応じた従量制が一般的である。トランジット料金が総転送データ量に比例する場合には、リッチコンテンツ配信により総転送データ量が増加してもCPがISPに支払う料金も比例して増加するため、ISPは設備投資コストの原資を得ることが原理的には可能である。しかし多くの場合、トランジット料金の増加比率は転送データ量の増加に伴い低減し、リッチコンテンツ配信の増加に伴い急増する設備投資コストの原資をISPは十分に賄うことができない。
そこで、NWの設備投資コストのプレイヤ間の公平な負担を実現し、ISPが設備投資コストを賄う方法として、各々のコンテンツ配信に対して一定の料金を、ISPがCPから得るコンテンツ課金をトランジット課金と併用することが有効と思われる。すなわちCPがユーザから得る配信料金の一部をISPがCPから得ることにより、ISPは設備投資コストの原資を確保できる。
近年、ISPやCPのビジネス上の関係をモデル化し、適正な価格設定法やISPがコンテンツ配信サービスにおいて収益を確保する方法が広く検討されているが、ISPのCPに対するコンテンツ課金が想定されている。しかし現状では、コンテンツ課金は実現されておらず、上述したトランジット課金が用いられている。
ISPが1つしか存在しない場合には、CPはこのISPと契約する以外に選択肢がなく、ISPはコンテンツ課金の導入によって常に収益を増加させることが可能である。しかし、競合するISPはコンテンツ課金の導入によって常に収益を増加させることが可能である。しかし、競合するISPが複数存在する場合、CPはコンテンツ課金の導入による負担増を嫌って他のISPにトランジット契約を切り替える可能性があり、コンテンツ課金の導入が必ずしもISPにとって有効とは限らない。そのため、ISPのCPに対するコンテンツ課金の導入に際しては、その実現可能性や効果について分析することが重要である。
しかしこのような分析に関する報告は見られない。また、従来のISPのCPに対する課金モデルとしては、CPがISPに対してコンテンツ配信ごとに料金を支払うコンテンツ課金、もしくは総転送データ量に単純に比例する課金モデルのみを想定しており、現在トランジット課金において一般に用いられている増加比率低減型の従量制課金とコンテンツ課金の比較はなされておらず、コンテンツ課金がISPの収益に与える効果は分析されていない。
また、複数のISPが存在する環境におけるISPのコンテンツ課金導入の実現可能性を分析した研究も見られるが、コンテンツ課金の課金割合を具体的にどう定めるかについては検討されていない。
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、トランジット課金に加え、映像(コンテンツ)配信によって増大するISP側の設備投資コストの原資を確保し、CPにも配信サービス提供上で品質低下させることなく、コンテンツ課金の最適値を設定することが可能なISPによる課金比率設定装置及び方法を提供することを目的とする。
一態様によれば、CPがユーザからのコンテンツの配信料金を徴収する有料配信型のコンテンツ配信サービスにおいて、ISP-1とISP-2の二つのISPが存在する環境において、該ISP-1がCPに対して、コンテンツの配信料金の一定の割合(α)を徴収するコンテンツ課金を導入し、該ISP-2は転送データ量のβ乗を徴収するトランジット課金を用いる場合に、該ISP-1、該ISP-2が自由に課金比率α、βを設定できるISP間の競争環境において、各々のISPが自身の収益を最大化するよう課金比率を設定するISPによる課金比率設定装置であって、
前記ISPのCPとのトランジット契約の有無による通信品質の差異を表すパラメータ(γ)、各ISP-yの収容ユーザ数(uy)、コンテンツ課金料(P)、各CPのアクセス比率(εx)、各ユーザの月間の平均視聴回数(d)、CPのトランジット回線費用(F)を取得するISP情報入力手段と、
前記ISP情報入力手段により取得した情報に基づいて、前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を導出し、CP集合記憶手段に格納するCPトランジット戦略推定手段と、
前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-2が月間に得る利益R2(以下「月間収益R2」と記す)を算出し、該月間収益R2の値を最大化させる最適課金比率βを算出し、最適課金比率β記憶手段に格納するISP-2の最適課金比率導出手段と、
前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-1が月間に得る利益R1(以下「月間収益R1」と記す)を算出し、該月間収益R1の値を最大化させる最適課金比率αを算出し、最適課金比率α記憶手段に格納するISP-1の最適課金比率導出手段と、
前記最適課金比率β記憶手段及び前記最適課金比率α記憶手段の前記最適課金比率を出力する最適課金比率出力手段と、を有するISPによる課金比率設定装置が提供される。
一態様によれば、コンテンツプロバイダ(CP)がユーザからコンテンツの配信料金を徴収する有料配信型のコンテンツ配信サービスにおいて、ISP-1とISP-2の二つのISPが存在する環境において、ISP-1がCPに対して、コンテンツ配信料金の一定の割合αを徴収するコンテンツ課金を導入し、ISP-2は転送データ量のβ乗を徴収するトランジット課金を用いる場合に、各々のISPが自由に課金比率α、βを設定できるISP間の競争環境において、各々のISPが自身の収益を最大化するよう課金比率を最適設定することが可能となる。
本発明の一実施の形態における課金比率設定装置の構成図である。 本発明の一実施の形態におけるコンテンツ転送経路の例である。 本発明の一実施の形態におけるCP-xが各戦略sを用いるαとβの範囲である。 本発明の一実施の形態における各ISPと契約したときのCPの収益にCPが与える影響を示す特性図である。 本発明の一実施の形態におけるISP-1のシェアと収益を示す図である。 本発明の一実施の形態におけるISP-2のシェアと収益を示す図である。 本発明の一実施の形態における課金比率の最適設定値を示す図である。 本発明の一実施の形態における各ISPのシェアを示す図である。 本発明の一実施の形態における各プレイヤの収益と社会的余剰を示す図である。 本発明の一実施の形態における各プレイヤの収益と社会的余剰を示す図である。 本発明の一実施の形態における各プレイヤの収益差分を示す図である。
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における課金比率設定装置の構成を示す。
ISP情報入力部101、CPトランジット戦略推定部102、ISP-2の最適課金比率導出部103、ISP-1の最適課金比率導出部104、最適課金比率出力部105、CP集合記憶部106、最適課金比率β記憶部107、最適課金比率α記憶部108を有する。
ISP情報入力部101は、ISPのCPとのトランジット契約の有無による通信品質の差異を表すパラメータγ、各ISP-yの収容ユーザ数uy、コンテンツの課金料P、各CPのアクセス比率εx、各ユーザの月間の平均視聴回数d、CPのトランジット回線費用Fの入力を受け付ける。
CPトランジット戦略推定部102は、各トランジット戦略を用いるCPの集合を推定し、CP集合記憶部106に格納する。
ISP-2の最適課金比率導出部103は、ISP-2が自身の収益を最大化させる最適課金比率βを算出し、最適課金比率β記憶部107に格納する。
ISP-1の最適課金比率導出部104は、ISP-1が自身の収益を最大化させる最適課金比率αを算出し、最適課金比率α記憶部108に格納する。
最適課金比率出力部105は、最適課金比率β記憶部107、最適課金比率α記憶部108から取得した最適値αとβを出力する。
最適課金比率β記憶部107は、ISP-2最適課金比率導出部103で算出されたβを格納する、メモリやディスク等の記憶媒体である。
最適課金比率α記憶部108は、ISP-1最適課金比率導出部103で算出されたαを格納する、メモリやディスク等の記憶媒体である。
以下に、本発明の実施の形態におけるISPによる課金比率の最適設定法について詳細に説明する。
[1]プレイヤ間構造:
コンテンツ配信サービスを構成するプレイヤとして、図2に示すようなコンテンツを提供するCP、コンテンツを要求し視聴するユーザ、そして、CPからユーザにコンテンツを配信するISPの三つを考える。
u1とu2のユーザを収容する二つのISP(ISP-1とISP-2)が存在し、u 1とu 2は固定とする。また、各々が独立した主体であるN個のCPが存在し、NのCPの全集合をHとする。各CPは独立に自由意志で最大で一つのISPと契約することを想定し、ISP-yと契約するCPの集合をHyとする(y=1,2)。また、CPはISPと契約しない選択も可能であり、そのようなCPの集合をH0とする。
各CP-xは、契約ISPを経由しユーザにコンテンツを配信する。両ISPは互いにピアリング契約により接続しており、CPはどちらか一方のISPとトランジット契約を結ぶことで、二つのISPの全てのユーザに対してコンテンツ配信が可能とする。例えば、図2(a)に示すように、ISP-1と接続するCP-1は、ISP-1のユーザに対してはISP-1のみを経由してコンテンツが配信されるが、ISP-2のユーザに対してはISP-1とISP-2の両方を経由してコンテンツが配信される。一方、図2(b)に示すように、ISP-2と接続しているCP-Nは、ISP-2のユーザに対してはISP-2のみを経由してコンテンツが配信されるが、ISP-1のユーザに対してはISP-2とISP-1の両方を経由してコンテンツが配信される。
[2]発生トラヒック量:
各ユーザが1ヶ月に受けるコンテンツ配信回数の平均値をdとし、本明細書では簡単のため、全てのユーザのコンテンツの嗜好は同一であり、各CP-xのコンテンツを視聴する比率εxとする。但し、
となる。一般性を維持したまま、CPのインデックスはεxの降順に付与されていることを想定する。CPがトランジット契約を締結し、配信サーバを接続しているISPの収容ユーザと、そうでないISPの収容ユーザとでは、コンテンツ配信時のスループットや安定性等の通信品質に差異が生じることが予想される。ユーザがコンテンツ配信サービスによって得られる満足度は通信品質に依存することから、ISP-yに収容された各ユーザが月間にCP-xからコンテンツ配信サービスを受ける回数の平均値dxyは通信品質に依存する。dxyは、各NWの容量や負荷状態、ISP間の接続リンクの容量や負荷状態等、様々なものに依存するが、本明細書では、マクロな傾向を分析するため、dxyは収容先のISPのCPとのトランジット契約の有無のみに依存するとし、接続ISPに対してはdxyxdであり、非接続ISPに対してはdxy=γεxdとする。但し、γは(0:1)の値をとる実数パラメータである。すなわち、両方のISPを経由することによる品質劣化の度合いをγで表す。
CPの非トランジット契約ISPの収容ユーザに対しては、もう一方のISPを経由してコンテンツがCPから配信されるため、もう一方のISPにおいてトランジットトラヒックが発生する。そのため、DxyをISP-yとの接続リンク上を流れる月間の平均配信回数とすると、Dxyは次式で得られる。
[3]課金モデル:
CPのユーザに対する課金モデルとして、本明細書では従量制を想定し、CPはユーザから各々のコンテンツ配信に対して、コンテンツ種別とは無関係に同一の料金Pをコンテンツ量として得ることを想定する。今、ISP-1がトランジット費の代わりに、各配信に対してコンテンツ料Pの一部をコンテンツ配信費として各CP-xから徴収するコンテンツ課金を導入した場合を考える。
具体的には、(0:1)の範囲の値をとる課金パラメータαを用いて、各配信に対してαPのコンテンツ配信料をCPから徴収する。ISP-2はコンテンツ課金を導入せず、従来通りトランジット課金を用いることを想定する。なお、ISPが三つ以上存在する場合や、複数のISPがコンテンツ課金を導入する場合の分析は、今後の課題とする。
次に、トランジット課金をモデル化する。現在、多くのISPはトランジット契約をしたCPや他ISPに対してトランジット費を徴収するが、一般的には、月間にトランジットリンク上に流れた総データ量に応じた料金を課金する。2004年の米国における20の地域ISPが用いたトランジット費の分析によると、月間のトランジット費Tはデータ転送レートV(Mbps)の0.75乗に比例し、T=100V0.75で近似できる。本明細書では、Vのべき乗数を一般化して(0:1)の範囲の値をとるβで表し、
とする。
多くのISPではデータ転送レートVとして5分ごとのデータ転送レートの95%値を用いているが、95%値を平均転送レートの3倍と仮定する。コンテンツの平均サイズをL(Mbyte)とし、一ヶ月の日数を30日とすると、各ISP-yが各CP-xに対して適用するデータ転送レートVの値Vxyは、
Vxy=(3×8LDxy)/(30×24×3600)=1.08×10-5LDxy
となる。よってCP-xがISP-yに支払う月間のトランジット費Txyは、
となる。但し、nt(β)を、
と定義する。
[4]コストモデル:
次に、各CPとISPが負担するコストについてモデル化する。CPは前述の[3]で述べたトランジット費とコンテンツ配信費に加えて、契約ISPと接続点までの回線費を負担する必要がある。ここでは簡単のため、任意のCP-xが任意のISP-yと接続したときの一ヶ月当たりの回線費をFの定額で考える。本明細書では、専用線使用コストを考え、NTT東日本(登録商標)のATM(Asynchronous Transfer Mode) Mega Link Service(登録商標)の距離30km、Dual class、100Mbpsの料金を想定し、CPのトランジット回線費用F=40,000USDとする。
一方、ISPには、契約CPから配信されたコンテンツを転送するためのコストが発生する。ISP-1は、x∈H1(H1はISP-1と契約するCPの集合)のCP-xから配信された自身のユーザに向けた各配信に対して、コンテンツをCP-xとの接続点からユーザまで配信し、また、x∈H1のCP-xから配信されたISP-2のユーザに向けた各配信に対して、コンテンツをCP-xとの接続点からISP-2とのピアリング点まで配信する必要がある。さらに、x∈H2(HはISP-2と契約するCPの集合)のCP-xから配信された自身のユーザに向けた各配信に対して、ISP-2とのピアリング点からユーザまで配信する必要がある。本明細書では、これらの各コンテンツ配信によって一定の配信コストGが発生すると仮定し、月間のISP間のトランジット費をコンテンツ配信コストGに適用する。2013年の米国における1Mbpsあたりの平均トランジット価格は1.57USDであり、商用VoD(Video on Demand)サービスにおけるピーク時の需要量は平均量に対して約1.8倍である例が報告されていることから、
G=(1.57×1.8×8L)/(30×24×3600)=8.72×10-6L
で与える。ISP-2に対しても同様に一定のコンテンツ配信コストGを考える。
[5]コンテンツ課金導入に伴う影響の分析:
CPトランジット戦略推定部102では、CPとISPのトランジット契約判断における戦略を分析し、コンテンツ課金が各プレイヤの収益に与える影響を分析する。ISP-1の最適課金比率導出部104は、コンテンツ課金を用いるISP-1の課金パラメータαを、ISP-2の最適課金比率導出部103は、トランジット課金を用いるISP-2の課金パラメータβを各々自由に設定する。但し、本明細書では、新たにコンテンツ課金を導入するISP-1が先にαを決定し、ISP-2はαの設定値を知った上で、βを設定することを仮定する。そして各CPはαとβとの設定値を知った上で、契約するISPを決定する。そのため、CPとISPの行動は、ISP-1がαを決定する第1ステージと、ISP-2がβを決定する第2ステージと、各CPが契約ISPを決定する第3ステージとから構成されるCPとISP-1とISP-2とをプレイヤとする完全情報のStackelberg gameとなるため、均等解は部分ゲーム完全ナッシュ均等点(SPE: Subgame Perfect Nash equilibrium)となり、逆戻り推論法(backward induction)を用いて均等解を導出できる。すなわち、まずCPの最適戦略を求め、それを元にISP-2の最適戦略を求め、それを元に最後にISP-1の最適戦略を求めることで、完全ナッシュ均等解を得ることができる。
[6]CPのトランジット戦略:
各CPの取り得る戦略sを、
・両方のISPと契約しない(s=0)、
・ISP-1とのみ契約する(s=1)、
・ISP-2とのみ契約する(s=2)
と定義する。CP-xが戦略sを用いたときに得られる月間の収益をφx,sとすると、
となる(なお、以後、αやβの値を明示的に指定する場合を除き、単にφx,1、φx,2と表記する)。但し、φx,0=0であり、σ1=u1+γu2、σ2=γu1+u2、zxxd、κx=1.08×10-5Lzxと定義する。
課金パラメータαとβの設定可能範囲は(0:1)であり、φx,1、φx,2は各々、αとβの増加に対して単調に減少する。そのためφx,1(0)≦0のときCP-xは常にISP-1と契約せず、φx,2(0)≦0のときCP-xは常にISP-2と契約しない。本明細書では、Nの全てのCPが両ISPと契約できる可能性があることを想定し、以下を仮定する。
仮定1)
パラメータP,zN,σy,Fの間には、
がy=1,2に対して成立する。zNは全CPのzxの中で最小なので、全てのCP-xに対してPzxσy>Fとなり、全てのCPは両ISPと契約する可能性がある。
CP-xはφx,1とφx,2を比較して大きい方のISPと契約するが、φx,1x,2のときCP-xのISP選択行動は不定となる。しかし、本明細書ではCPは保守的で、φx,1x,2の場合は、従来のトランジット課金を用いるISP-2と契約することを想定する。このとき、戦略sを選択するCPの集合Hsに関して、以下の命題が成立する。
命題1)
戦略s=0,s=1,s=2を選択するCPの集合H0,H 1,H 2は各々次式で得られる。
但し、αx,0,αx,1,βx,0,βx,1を次式で定義する。
証明)
各CPの行動が合理的であれば、自身の収益が最大となる戦略を選択する。CP-xが戦略s=1を選択するのは、φx,1>φx,2とφx,1>0の両方が満たされる場合である。φx,1>φx,2 (0)、すなわちα<αx,0のとき、ISP-2のβの設定値とは無関係に常にφx,1>φx,2となる。一方、α≧αx,0の場合であってもβ>βx,0のとき、やはりφx,1>φx,2となる。但し、α≧αx,0よりPz x2−σ1+σ1α)≧100≧0であるため、βx,0は存在する。よって、φx,1>φx,2となる条件は、α<αx,0かβ>βx,0の少なくとも一方が成立することである。また、φx,1>0となるのはα<αx,1のときである。よってH1は式(7)で与えられる。
一方、CP-xが戦略s=2を選択するのは、φx,2≧φx,1とφx,2≧0の両方が満たされる場合である。φx,2≧φx,1となるのは、α≧αx,0とβ≦βx,0の両方が成立するときである。また、φx,2≧0となるのは、β≦βx,1が成立するときである。但し、式(5)によりβx,1は存在する。よって、H 2は式(8)で与えられる。また、s=1でもなく、s=2でもないCPはs=0を選択するため、H0は式(6)で与えられる。
αx,0とαx,1の大小関係と、βx,0とβx,1との大小関係には、合計で4つの組み合わせがあるが、図3に各場合においてCP-xが各戦略sを選択するαとβの範囲を示す。ISP-1のαの設定値とISP-2のβの設定値との組に対して、図3に示す戦略がCP -xによって選択される。また、各CP -xの配信比率εxとCP -xの最適戦略sとの関係に関して、次の命題が成立する。
命題2)
φx,1=0となるεxの値をε0とし、φx,1=φx,2となるεxの値をε*とするとき、0<εx≦ε0のCPは戦略s=0を、ε0<εx<ε*のCPは戦略s=1を、ε*≦εx≦1のCPは戦略s=2を、各々選択する。そのため配信比率εxが小さいCPがISP-1と契約し、εxの大きいCPがISP-2と契約する。
証明)式(3)、(4)より、CP-xが各ISP-yと契約したときの月間収益φx,yは、εx=0のときに最小値φx,1=φx,2=−Fをとり、εxの増加に対して単調に増加する。また、φx,yをεxで偏微分すると、
となることから、φx,1はεxの増加に対して線形に増加するのに対して、φx,2はεxの増加に対して下に凸な曲線で増加する。そのためφx,yをεxに対してプロットすると、図4に示すような特性図が得られる。φx,1=0となるεxの値をε0とし、φx,1=φx,2となるεxの値をε*とすると、0<εx<ε*領域において、φx,1>φx,2となり、ε*≦εx≦1の領域においてφx,2≧φx,1となる。そのため、0<εx≦ε0のCPは戦略s=0を、ε0<εx<ε*のCPは戦略s=1を、ε*≦εx≦1のCPは戦略s=2を、各々選択する。
上記の処理は、CPトランジット戦略推定部102の処理(請求項2)に対応する。
[7]ISP-2の課金パラメータ設定戦略:
ここでは、前述の[6]で導出されたCPの集合Hsの予測に基づき、ISP-2の最適課金比率導出部103において、ISP-2の課金パラメータβの最適課金比率を求める。
ISP-2が月間に得る収益R2に関して以下の命題が成立する。
命題3)
ISP-2が月間に得る収益R2は次式で与えられる。
証明)ISP-2は、[3]で述べたように契約CPからトランジット費を得て、一方で、[4]で述べたように個々の配信に対してコンテンツ配信コストGを負担する。すなわち、x∈H2のCP-xのコンテンツ配信によって、
の収益をISP-2は月間に得ることができる。x∈H1のCP-xのコンテンツ配信からはISP-2は収入を得ることができないが、一方で、ISP-2のユーザへの配信に対しては、ISP-1とのピアリング点によりユーザまでのコンテンツ配信コストGが発生するため、-Gzxγu2の収益(または、損失)が発生する。以上のことから、ISP-2が月間に得る収益R2は式(13)で得られる。
上記の処理は、ISP-2の最適課金比率導出部103の処理(請求項3)に対応する。
ISP-2は、R2が最大化するよう最適課金比率βを設定することが最適戦略となるが、R2はCPの戦略別集合Hsが変化するβの値においてのみ不連続に変化する。そのためISP-2の最適行動に関して、以下の定理が成立する。
定理1)
集合B(α)を次式で定義するとき、
B(α)={min(βx,0x,1):α≧αx,0, x∈H} (14)
ISP-2はβの設定候補としてβ∈B(α)のみを考えれば十分であり、集合B(α)の各要素点にβを設定したときの月間収益R 2を式(13)より算出し、その値が最大となる時のβを最適値β*として選択することが、ISP-1のαの設定値に対する最適応答となり、ISP-2はR 2を最大化できる。
証明)[6]で述べたように、α<αx,0のとき、CP -xはISP-2を選択することはないが、α≧αx,0のとき、β≦min(βx,0,βx,1)の場合にはC-xはISP-2と契約する。よって、α≧αx,0の各xに対してβ=min(βx,0,βx,1)において、常にHsが変化する。よってβが式(14)で定義される集合B(α)の各要素の点をとるときのみHsが変化する。B(α)の任意の連続する二つの要素b1,b2に対して、b1<β≦b2の範囲でβを変化させてもR2は一定である。βの増加に対してR2は単調に増加することから、b1<β≦b2の範囲におけるβの設定候補としては、β=b 2のみを考えれば十分である。よってISP-2はβの設定候補として、式(14)で定義されるB(α)の要素のみを考えれば十分である。
上記の処理は、ISP-2の最適課金比率導出部103の処理(請求項4)に対応する。
[8]ISP-1の課金パラメータ設定戦略:
ここでは、前述の[6]で導出されたCPの集合Hsの予測と、[7]で導出したISP-2のβ設定における最適応答に基づき、ISP-1の最適課金比率導出部104において、ISP-1の課金パラメータαの最適課金比率を求める。
ISP-1が月間に得る収益R1に関して以下の命題が成立する。
命題4)
ISP-1が月間に得る収益R1は次式で得られる。
証明)ISP-1は[3]で述べたように契約CPからコンテンツ配信費を得て、一方で、[4]で述べたように個々の配信に対してコンテンツ配信コストGを負担する。すなわち、x∈H1のCP-xのコンテンツ配信によって、(Pα−G)zxσ1の収益をISP-1は月間に得ることができる。x∈H2のCP-xのコンテンツ配信からはISP-1は収入を得ることができないが、一方で、ISP-1ユーザへの配信に対しては、ISP-2とのピアリング点よりユーザまでのコンテンツ配信コストGが発生するため、−Gzxγu1の収益(または、損失)が発生する。以上のことから、ISP-1が月間に得る収益R1は式(15)で得られる。
上記の処理は、ISP-1の最適課金比率導出部104の処理(請求項5)に対応する。
ISP-1は、R1が最大化するようにαを設定することが最適戦略となるが、αの最適値α*は、[8]で導出したISP-2のαに対する最適応答(最適課金比率)に依存する。そのためαの設定候補として連続量を考えた場合、評価すべきISP-2の最適応答の数が無限大となるため、ISP-1の最適戦略を求めることができない。そのため、αの取り得る範囲(0:1)をK個の区間に等間隔で分割した各店のみをαの設定候補とする。すなわち、任意に与えた整数Kに対して、α=k/K(k=1,2,…,K)をαの設定候補とする。これらK個の各候補に対するISP-2の最適応答を[8]で述べた方法で算出することで、各αの候補値に対するR1を式(15)より算出することができる。そして、R1の最大となるαの設定候補を選択する。
上記の処理はISP-1の最適課金比率導出部104(請求項6)に対応する。
[9]CPの収益と社会的余剰:
全CPの月間収益の総和をRcとすると、
より得られる。よって月間の社会的余剰(全プレイヤの利得の総和)Φは、式(13)、(15)、(16)
より次式で得られる。
コンテンツ課金やトランジット課金に伴うお金の流れはISP-1とCP、及びISP-2とCPとの間で相殺されるため、Φはαやβとは無関係となる。
[10]性能評価条件:
以下では、数値例を用いて、ISPによるコンテンツ課金の導入が各プレイヤに与える効果を分析する。
CPが各コンテンツ配信によってユーザから得る料金をP=1USDに設定する。定額見放題プランを用いたひかりTVの場合、月間の視聴回数の平均が10であり、この回数が、ユーザが時間的な制約等から月間にリッチコンテンツを視聴できる上限の平均値と考えられるため、各ユーザの月間平均コンテンツ視聴回数をd=10に設定する。また、複数ISPを経由する場合の品質劣化による視聴回数の低下度合いを、γ=0.3もしくはγ=0.7に設定する。CPの数をN=100とし、ユーザが各CP-xのコンテンツを視聴する比率εxをパラメータ1のZipf分布、即ち、
に設定する。総ユーザ数u=u1+u2を一定とし、(0:1)範囲の値をとる実数パラメータξを用いて、u1=ξu,u2=(1−ξ)uに設定する。ここでは、u=1.0×107に設定し、ξ=0.4もしくはξ=0.6に設定する。また、コンテンツの符号化レートとしてDVB-S2の40Mbps〜60Mbps程度を想定し、100分程度の映画コンテンツを考え、コンテンツの平均サイズをL=3×104Mbytesに設定する。
[11]ISP-1の課金戦略がISP-1の収益に与える影響:
まず、ISP-1のαの設定戦略が、ISP-1のCP契約シェアや収益に与える影響を分析する。ISP-yのCP契約シェア
をISP-yとの契約を選択(s=y)したCPの割合と定義し、ISP-yの配信シェアΩyをISP-yと契約したCPからの配信回数の全CPからの総配信回数に対する割合と定義する。すなわち|Hy|を集合Hyの要素数とすると、
となる。図5(a)〜(c)に、αの設定粒度をK=20とし、αの各設定値候補に対してISP-2が最適応答した時の、
Ω1、ISP-1の収益R1をαの設定値に対してプロットする。
αの増加に伴い、
は上に凸な曲線で減少する一方、[6]で述べたように、εxの大きなCPはISP-2と契約するため、αの増加に伴いΩ1はより早い速度で減少する。R1はαの設定値とΩ1との積で決まるが、αが小さい領域ではΩ1はαの増加に対してより遅い速度で減少するため、αの増加に伴いR1は増加する。一方、αが大きな領域ではΩ1はαの増加に対してより早い速度で減少するため、αの増加に伴いR1は減少する(αが0.9より大きな場合には、ISP-1のCP契約シェアはゼロとなるが、αの増加に伴いβx,0が増加し、ISP-2のβの最適設定値が増加する結果、両方のISPと契約しないs=0を選択するCPが増加するため、ISP-1の負担する配信コストが減少し、R1は増加する)。そのため、R1はαに対して上に凸な曲線となり、R1が最大となるαの最適値が存在する。また、R 1の極大点の付近で、R1のαに対する感度は小さく、αの変化に対して穏やかにR1は変化する。そのため、Kを小さくしてαの設定値候補の粒度を粗くしても、得られるR1の最大値への影響は小さいことが予想される。図5(d)にR1をαの設定粒度Kに対してプロットするが、Kが3程度未満の領域ではKの増加に伴い、R1は急増するが、Kが10程度以上になると、Kを変化させてもR1はほぼ一定であることが確認できる。よって、以後の評価ではK=100に設定する。
[12] ISP-2の課金戦略がISP-2の収益に与える影響:
次に、ISP-2のβの設定戦略が、ISP-2のCP契約シェアや収益に与える影響を分析する。図6にαをISP-1にとってのおよその最適値である0.63(ξ=0.4のとき)もしくは0.70(ξ=0.6のとき)に設定したときの、
Ω2、R2をβの各設定候補値(集合B(α)の各要素)に対してプロットする。βの増加に伴い、
は下に凸な曲線で減少する一方、[6]で述べたようにεxの大きなCPはISP-2と契約するため、βの増加に伴いΩ2はより遅い速度で減少する。βが小さいと配信シェアは大きいがトランジット費が減少するためISP-2は十分な収益が得られない。一方、βが大きいとISP-2の配信シェアはゼロに近づくため、やはり十分な収益が得られない。そのためISP-2にとってβの設定可能な範囲は、0.60〜0.75ほどの狭い範囲であることが確認できる。やはりβに対してR2は上に凸な曲線となり、R2が極大となるβの最適値が存在する。また、γやξが変化しても、βの最適値は0.68〜0.70ほどの範囲に存在し、ほとんどγやξの影響を受けない。
[13] 課金パラメータの最適設定値:
図7に、[7]と[8]で述べた方法で得られる、ISP-1の課金パラメータαの最適設定値α*と、ISP-2の課金パラメータβの最適設定値β*を、γとξに対してプロットする。但し、どちらか一方のISPのCP契約シェアがゼロになった場合には、α*やβ*が不定となるため、CP契約シェアが両ISPともゼロより大きくなる場合のみプロットする。
図6で見たように、βの設定可能な範囲は狭く、R2の極大値のγやξに対する感度は弱いため、γやξの変化に対してβ*は、ほぼ一定となる。一方、α*はγやξの変化に対して大きく変化する。γの増加に伴い、CPにとって、契約ISPによる配信回数の差異が低減する。そのためξが大きくISP-1のユーザ数がISP-2より多い場合には、ISP-1のISP-2に対するアドバンテージが低下するため、γの増加に伴い、α*は傾向としては緩やかに減少する。一方、ξが小さくISP-2のユーザ数がISP-1より多い場合には、ISP-2のISP-1に対するアドバンテージが低下するため、γの増加に伴いα*は傾向としては緩やかに増加する(γが大きな場合には、γの増加に伴うφx,1の増加速度がφx,2の増加速度よりも小さいため、ISP-1の競争力が低下してα*は減少する)。
γが小さいときは各ISPによって非契約CPからの配信コスト負担が小さいため、CPとの契約の有無がISPの収益に与える影響が小さく、ξの増加に伴い、CP契約シェアが低下してもISP-1にとってαを増加させた方が有利となり、α*は増加する。しかし、ξが0.5付近では両ISPの競争力の差異が小さく、αの変化に対するISP-1のCP契約シェアの感度が高くなるため、ξの増加に対してαを減少させてCP契約シェアを増やすことがISP-1にとって有効となるため、α*はξの増加に対して減少する。γが大きいな場合には、非契約CPからの配信コストが大きいが、その影響はξの増加に伴い増加するため、ξの増加に伴いCP契約シェアの増大がISP-1にとって有効となり、α*は減少する。
[14] 各ISPのCP契約シェアと配信シェア:
図8に各ISP-yのCP契約シェア(CP share)
と配信シェア(DL share)Ωyをγとξに対してプロットする。[6]で述べたように、配信数比率εxの大きなCPはISP=2と契約することから、
となる。式(3)、(4)より、γの増加に伴いφx,1は線形に増加するのに対して、φx,2は下に凸な曲線で増加するため、γが大きなほどISP-2と契約するCPの数が増加する。そのためγの増加に伴い、
とΩ1は減少し、
とΩ2は増加する。また、ξの増加に伴い、ISP-1のユーザ数u1が増加し、ISP-2のユーザ数u2が減少するが、
とΩyはuyと同様にξに対して変化する。ξが1に近い場合、βを減少させてもΩ2はあまり増加しないため、できるだけβを大きく設定して、εxが最大の唯一つのCPと契約することが、ISP-2にとっての最適戦略となるため、
で一定となる。
[15]各プレイヤの収益と社会的余剰:
図9に、ISP-1の月間収益R1、ISP-2の月間収益R2、全CPの月間収益の総和RC、そして社会的余剰Φをγとξに対してプロットする。γの増加に伴い、各ISPにとって非契約CPからの配信比率が増加するが、これら配信においては配信コストのみが発生し、収益が得られないため、R1とR2は減少する。一方、γの増加に伴い各CPの総配信回数が増加するため、RCとΦは増加する。γが1に近い場合、社会的余剰の殆どがCPに配分される。
ξの増加に伴い、ISP-1のユーザシェアが増加してISP-2に対する競争力が増大するため、ISP-1の収益は増加し、逆にISP-2の収益は減少する。ξが1に近い場合、図8(d)に示すように、各ISPの配信シェアが一定となるが、ξの増加に伴いu2が減少するため、ISP-2の非契約CPからISP-2のユーザへの配信コストが減少し、R2は増加する。各CPはユーザ数の多いISPと契約する傾向にあるが、ξが0.5付近の場合、非契約CPに対する配信回数が減少するため、CPの収益は減少する。また、配信回数の減少とISPの配信コストの増加により、ξが0.5付近で社会的余剰は減少する。
[16]コンテンツ課金導入の効果:
以下では、両方のISPがCPに対する課金方式として、トランジット課金を用いる場合(TC-TC: transit charge - transit charge)と、上記で解析した一方のISPのみがコンテンツ課金を用いる場合(CC-TC: Content charge - transit charge)とで、各プレイヤの収益を比較することで、ISPによるコンテンツ課金導入の効果を分析する。
TC-TCにおいては、各ISP-yは課金パラメータβyのトランジット課金をCPに対して適用する。このとき、CP-xがISP-yと契約したときの月間収益φx,yは、
となる。各ISP-yはβyをどのように設定するかが問題となるが、φx,y≦0のCP-xは常にISP-yと契約をしないため、βy
以上に設定すると、ISP-yはCP契約シェアがゼロとなる。また、βy
未満に設定しても、φx,y>0を満たすCPの数は増加しない。よってISP-yは、bl≦βy<buの範囲でβyを設定することが予想される。そこで(0:1)の範囲の値をとる実数パラメータvを与え、φx,y>0を満たすCPのεxの総和がvとなるよう、βyを設定する。
また、ISP-1のCP契約シェアがηとなるよう、各CPの契約ISPをランダムに設定する試行を100回反復したときの平均値で各プレイヤの月間収益を評価する。以下の評価では、v=0.9、η=0.5に設定した。
図10に、TC-TCにおけるR1,R2,RC,Φをγとξに対してプロットする。γが小さいときは配信から得られる収入はユーザシェアの大きなISPの方が大きいが、γの増加に伴い、σ1とσ2との差異が低減し、CP契約シェアをηで一定に与えているため、両ISPの収入の差異が減少する。一方で、非契約CPから自ユーザに対する配信コストは、ユーザシェアの大きなISPの方が大きくなるため、収益の大小関係が逆転する。CPの収益や社会的余剰は、γの増加に伴い増大する。
を、CC-TCにおけるR1からTC-TCにおけるR1を引いた差分と定義する。
についても同様に定義する。これらの収益差分を評価することで、コンテンツ課金の導入が各プレイヤの収益に与える影響を分析する。図11に、
をγとξに対してプロットする。
図9と図10に示すように、γやξを変化させたときのTC-TCにおける各ISPの収益の変化量は、CC-TCの場合と比較して遥かに小さいため、ISPの収益差分
は、CC-TCにおける収益R1,R2と同じ傾向を示す。γが大きな場合、R1はISP-1のコンテンツ課金導入により減少するが、γが小さい場合には増加する。このことから、コンテンツ課金はγが小さい場合にはISPにとって導入するメリットがあり、また、その効果は自身の収容するユーザ数が多いほど大きい。ISP-2のユーザ数が多い場合には、γが1に近い場合を除き、ISP-1のコンテンツ課金導入によりR2が増加するが、そうでない場合にはR2は減少する。RCはγの増加に伴い増加するが、その増加速度はCC-TCの方がTC-TCよりも大きいため、γの増加に伴いCC-TCにおけるRCはTC-TCの場合と比較して増加する。このことから、CPにとってはγが大きな方が、ISPのコンテンツ課金導入によって受けるメリットが大きい。一方、社会的余剰はCC-TCとTC-TCとで差異が小さく、その差分はゼロに近い。
ISP-1のコンテンツ課金導入によって、ユーザ数の多い方のISPの収益は増加するが、少ない方のISPの収益は減少する。このことから、ユーザ数の多いISPにとっては、自身や他ISPによるコンテンツ課金導入が有効である。また、その効果はγが小さい方が大きい。ξが0.5付近のとき、CPにとって非契約ISPのユーザに対する配信回数が減少するため、社会的余剰やCPの収益は減少する。そのためCPにとってはξが0や1に近く、二つのISP間のユーザ数の差異が大きな方が、ISPのコンテンツ課金導入によって受けるメリットが大きい。表1に、二つのISPのうち一方のみがコンテンツ課金を導入した場合の、各プレイヤが受ける恩恵をまとめる。Strong, Moderate, Poor, Negativeの順に、各プレイヤが受ける恩恵が大きく、Negativeの場合、デメリットとなる。
本発明は、図1に示す課金比率設定装置の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、課金比率設定装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
100 課金比率設定装置
101 ISP情報入力部
102 CPトランジット戦略推定部
103 ISP-2の最適課金比率導出部
104 ISP-1の最適課金比率導出部
105 最適課金比率出力部
106 CP集合記憶部
107 最適課金比率β記憶部
108 最適課金比率α記憶部

Claims (7)

  1. コンテンツプロバイダ(以下「CP」と記す)がユーザからのコンテンツの配信料金を徴収する有料配信型のコンテンツ配信サービスにおいて、ISP(Internet Service Provider)-1とISP-2の二つのISPが存在する環境において、該ISP-1がCPに対して、コンテンツの配信料金の一定の割合(α)を徴収するコンテンツ課金を導入し、該ISP-2は転送データ量のβ乗を徴収するトランジット課金を用いる場合に、該ISP-1、該ISP-2が自由に課金比率α、βを設定できるISP間の競争環境において、各々のISPが自身の収益を最大化するよう課金比率を設定するISPによる課金比率設定装置であって、
    前記ISPのCPとのトランジット契約の有無による通信品質の差異を表すパラメータ(γ)、各ISP-yの収容ユーザ数(uy)、コンテンツ課金料(P)、各CPのアクセス比率(εx)、各ユーザの月間の平均視聴回数(d)、CPのトランジット回線費用(F)を取得するISP情報入力手段と、
    前記ISP情報入力手段により取得した情報に基づいて、前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を導出し、CP集合記憶手段に格納するCPトランジット戦略推定手段と、
    前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-2が月間に得る利益R2(以下「月間収益R2」と記す)を算出し、該月間収益R2の値を最大化させる最適課金比率βを算出し、最適課金比率β記憶手段に格納するISP-2の最適課金比率導出手段と、
    前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-1が月間に得る利益R1(以下「月間収益R1」と記す)を算出し、該月間収益R1の値を最大化させる最適課金比率αを算出し、最適課金比率α記憶手段に格納するISP-1の最適課金比率導出手段と、
    前記最適課金比率β記憶手段及び前記最適課金比率α記憶手段の前記最適課金比率を出力する最適課金比率出力手段と、
    を有することを特徴とするISPによる課金比率設定装置。
  2. 前記CPトランジット戦略推定手段は、
    前記CPが自身の収益を最大化するようトランジット契約ISPを選択するという想定のもと、前記ISP-1と契約するCPの集合をH1、前記ISP-2と契約するCPの集合をH2とし、両方のISPと契約しないCPの集合をH0とするとき、
    但し、αx,0,αx,1,βx,0,βx,1を次式で定義する。
    (但し、σ1=u1+γu2、σ2=γu1+u2、zxxd、κx=1.08×10-5Lzx
    で各CPの集合を導出する手段を含む
    請求項1記載のISPによる課金比率設定装置。
  3. 前記ISP-2の最適課金比率導出手段は、
    前記月間益R2
    (但し、Gはコンテンツ配信によって一定の配信コスト)
    により推定する手段を含む
    請求項1記載のISPによる課金比率設定装置。
  4. 前記ISPの最適課金比率導出手段は、
    集合B(α)を次式で定義するとき、
    B(α)={min(βx,0x,1):α≧αx,0, x∈H}
    前記ISP-2は前記βの設定候補としてβ∈B(α)のみを考えれば十分であり、前記集合B(α)の各要素点に該βを設定したときの前記月間収益R2を算出し、該R2が最大となるときのβの最適値β*として選択することが、前記ISP-1の前記αの設定値に対する最適応答とする手段を含む
    請求項1記載のISPによる課金比率設定装置。
  5. 前記ISPの最適課金比率導出手段は、
    前記月間収益R1を、
    で推定する手段を含む
    請求項1記載のISPによる課金比率設定装置。
  6. 前記ISPの最適課金比率導出手段は、
    前記ISP-1は前記R1が最大化するαを設定することで最適戦略とするため、前記αの取り得る範囲(0:1)をK個の区間に等間隔で分割した各点のみを該αの設定候補とし、任意に与えた整数Kに対して、α=k/K(k=1,2,…,K)を該αの設定候補とし、K個の各候補に対する前記ISP-2の最適応答を算出することで、各αの候補値に対するR1を算出し、該R 1が最大となるαの設定候補を選択する手段を含む
    請求項1記載のISPによる課金比率設定装置。
  7. コンテンツプロバイダ(以下「CP」と記す)がユーザからのコンテンツの配信料金を徴収する有料配信型のコンテンツ配信サービスにおいて、ISP(Internet Service Provider)-1とISP-2の二つのISPが存在する環境において、該ISP-1がCPに対して、コンテンツの配信料金の一定の割合(α)を徴収するコンテンツ課金を導入し、該ISPは転送データ量のβ乗を徴収するトランジット課金を用いる場合に、該ISP-1、該ISP-2が自由に課金比率α、βを設定できるISP間の競争環境において、各々のISPが自身の収益を最大化するよう課金比率を設定するISPによる課金比率設定方法であって、
    ISP情報入力手段、CPトランジット戦略推定手段、ISP-2の最適課金比率導出手段、ISP-1の最適課金比率算出手段、CP集合記憶手段、最適課金比率β記憶手段、最適課金比率α記憶手段、及び最適課金比率出力手段を有する装置において、
    前記ISP情報入力手段が、前記ISPのCPとのトランジット契約の有無による通信品質の差異を表すパラメータ(γ)、各ISP-yの収容ユーザ数(uy)、コンテンツ課金料(P)、各CPのアクセス比率(εx)、各ユーザの月間の平均視聴回数(d)、CPのトランジット回線費用(F)を取得するISP情報入力ステップと、
    前記CPトランジット戦略推定手段が、前記ISP情報入力ステップで取得した情報に基づいて、前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を導出し、前記CP集合記憶手段に格納するCPトランジット戦略推定ステップと、
    前記ISP-2の最適課金比率導出手段が、前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-2が月間に得る利益R2(以下「月間収益R2」と記す)を算出し、該月間収益R2の値を最大化させる最適課金比率βを算出し、最適課金比率β記憶手段に格納するISP-2の最適課金比率導出ステップと、
    前記ISP-1の最適課金比率導出手段が、前記CP集合記憶手段の前記ISP-1と契約するCPの集合、前記ISP-2と契約するCPの集合を取得し、前記ISP-1が月間に得る利益R1(以下「月間収益R1」と記す)を算出し、該月間収益R1の値を最大化させる最適課金比率αを算出し、最適課金比率α記憶手段に格納するISP-1の最適課金比率導出ステップと、
    前記最適課金比率出力手段が、前記最適課金比率β記憶手段及び前記最適課金比率α記憶手段の前記最適課金比率を出力する最適課金比率出力ステップと、
    を行うことを特徴とするISPによる課金比率設定方法。
JP2013216820A 2013-10-17 2013-10-17 ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法 Active JP6118708B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013216820A JP6118708B2 (ja) 2013-10-17 2013-10-17 ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013216820A JP6118708B2 (ja) 2013-10-17 2013-10-17 ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015079391A JP2015079391A (ja) 2015-04-23
JP6118708B2 true JP6118708B2 (ja) 2017-04-19

Family

ID=53010756

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013216820A Active JP6118708B2 (ja) 2013-10-17 2013-10-17 ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6118708B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10307346B2 (en) 2013-07-15 2019-06-04 The Procter & Gamble Company Applied films for smoothing wrinkles and skin texture imperfections
US10441527B2 (en) 2015-04-08 2019-10-15 Dow Silicones Corporation Fluid compositions and personal care

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10307346B2 (en) 2013-07-15 2019-06-04 The Procter & Gamble Company Applied films for smoothing wrinkles and skin texture imperfections
US10682292B2 (en) 2013-07-15 2020-06-16 The Procter & Gamble Company Applied films for smoothing wrinkles and skin texture imperfections
US10441527B2 (en) 2015-04-08 2019-10-15 Dow Silicones Corporation Fluid compositions and personal care

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015079391A (ja) 2015-04-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Jalaparti et al. Dynamic pricing and traffic engineering for timely inter-datacenter transfers
Valancius et al. How many tiers? pricing in the internet transit market
Alasaad et al. Innovative schemes for resource allocation in the cloud for media streaming applications
Wang et al. Pricing network resources for adaptive applications in a differentiated services network
US20060143027A1 (en) Network usage analysis system using subscriber and pricing information to minimize customer churn and method
Semret et al. Market pricing of differentiated Internet services
Tuffin Revisited progressive second price auction for charging telecommunication networks
Zhang et al. A game-theoretic analysis for complementary and substitutable IoT services delivery with externalities
Ma Pay or perish: The economics of premium peering
Fulp et al. Bandwidth provisioning and pricing for networks with multiple classes of service
JP6118708B2 (ja) ISP(InternetServiceProvider)による課金比率設定装置及び方法
Radonjić et al. Responsive pricing modeled with Stackelberg game for next-generation networks
WO2000057323A1 (en) System and method for performing a progressive second price auction technique
Courcoubetis et al. Network neutrality [Paid peering: Pricing and adoption incentives]
JP5993808B2 (ja) ISP(InternetServicesProvider)によるコンテンツ課金比率設定装置及び方法
Fulp et al. Optimal provisioning and pricing of internet differentiated services in hierarchical markets
Kamiyama Feasibility analysis of content charge by ISPs
Kamiyama Effect of content charge by ISPs in competitive environment
Crémer et al. The pricing of critical applications in the Internet
Dewan et al. Interconnection agreements between competing Internet service providers
Sain et al. Profit maximization in multi service networks-an optimization model.
Li et al. Price competition in a duopoly iaas cloud market
Reininger et al. Market based bandwidth allocation policies for QoS control in broadband networks
Nikkhah et al. The Effect of Paid Peering Fees on Broadband Prices and Consumer Surplus
Altman et al. Regulation of off-network pricing in a nonneutral network

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161021

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161101

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170321

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170327

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6118708

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150