詳細な説明
定義
本明細書において使用されるように、以下の単語および語句は、それらが使用される文脈が別のものを示す場合を除いて、全般的に、以下に示される意味を有するものとする。
用語「アルキル」とは、本明細書において、示される数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素を指す。例えば、(C1〜C8)アルキルは、以下のものには限らないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシルおよびネオヘキシルを含むものとする。アルキル基は、非置換であっても、任意選択で、本明細書の全体にわたって記載されるような1個または複数の置換基で置換されていてもよい。
用語「置換アルキル」とは、以下を指す。
1)アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基、(いくつかの実施形態では、1、2または3つの置換基)を有する、上で定義されるアルキル基。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基が、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい;または
2)酸素、硫黄およびNRa(式中、Raは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される)から独立に選択される1〜10個の原子(例えば、1、2、3、4または5個の原子)によって中断されている、上で定義されるアルキル基。すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によってさらに置換されていてもよい;または
3)上で定義される1、2、3、4または5個の置換基を有し、かつ、上で定義されるような1〜10個の原子(例えば、1、2、3、4または5個の原子)によって中断もまたされている、上で定義されるアルキル基。
用語「アルキレン」とは、いくつかの実施形態では、1〜20個の炭素原子(例えば、1〜10個の炭素原子または1、2、3、4、5または6個の炭素原子)を有する、分枝鎖状または非分枝鎖状飽和炭化水素鎖のジラジカルを指す。この用語は、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、およびプロピレン異性体(例えば、−CH2CH2CH2−および−CH(CH3)CH2−)などといった基によって例示される。
用語「アラルキル」とは、アリールおよびアルキレンが、本明細書に定義される、アルキレン基と共有結合によって結合しているアリール基を指す。「任意選択で置換されているアラルキル」とは、任意選択で置換されているアルキレン基と共有結合によって結合している任意選択で置換されているアリール基を指す。このようなアラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、および3−(4−メトキシフェニル)プロピルなどによって例示される。
用語「アラルキルオキシ」とは、基−O−アラルキルを指す。「任意選択で置換されているアラルキルオキシ」とは、任意選択で置換されているアルキレン基と共有結合によって結合している任意選択で置換されているアラルキルを指す。このようなアラルキル基は、ベンジルオキシ、およびフェニルエチルオキシなどによって例示される。
用語「アルケニル」とは、2〜20個の炭素原子(いくつかの実施形態では、2〜10個の炭素原子、例えば、2〜6個の炭素原子)を有し、1〜6個の炭素−炭素二重結合、例えば、1、2または3個の炭素−炭素二重結合を有する、分枝鎖状または非分枝鎖状不飽和炭化水素基のモノラジカルを指す。いくつかの実施形態では、アルケニル基として、エテニル(またはビニル、すなわち、−CH=CH2)、1−プロピレン(またはアリル、すなわち、−CH2CH=CH2)、およびイソプロピレン(−C(CH3)=CH2)などが挙げられる。
用語「低級アルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有する、上で定義されるようなアルケニルを指す。
用語「置換アルケニル」とは、置換アルキルについて定義されるような1〜5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)を有する、上で定義されるようなアルケニル基を指す。
用語「アルキニル」とは、いくつかの実施形態では、2〜20個の炭素原子(いくつかの実施形態では、2〜10個の炭素原子、例えば、2〜6個の炭素原子)を有し、1〜6個の炭素−炭素三重結合、例えば、1、2または3個の炭素−炭素三重結合を有する、不飽和炭化水素のモノラジカルを指す。いくつかの実施形態では、アルキニル基として、エチニル(−C≡CH)、およびプロパルギル(またはプロピニル、すなわち、−C≡CCH3)などが挙げられる。
用語「置換アルキニル」とは、置換アルキルについて定義されるような、1〜5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)を有する、上で定義されるようなアルキニル基を指す。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、基−OHを指す。
用語「アルコキシ」とは、Rがアルキルまたは−Y−Zである(ここで、Yは、アルキレンであり、Zは、アルケニルまたはアルキニルである)基−O−Rを指し、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、本明細書において定義されるとおりである。いくつかの実施形態では、アルコキシ基は、アルキル−O−であり、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシルオキシ、および1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。
用語「シクロアルキル」とは、単環式環または多環式縮合環(multiple condensed ring)を有する3〜20個の炭素原子の環式アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基として、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどといった単環構造またはアダマンタニルおよびビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、もしくは結合点が環式アルキル基を経由するという条件で、アリール基と縮合している環式アルキル基、例えば、インダニルなどといった複数環構造が挙げられる。
用語「シクロアルケニル」とは、単環式環または多環式縮合環を有し、少なくとも1個の二重結合、いくつかの実施形態では、1〜2個の二重結合を有する、3〜20個の炭素原子の環式アルキル基を指す。
用語「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)を有する、シクロアルキルまたはシクロアルケニル基を指す。用語「置換シクロアルキル」はまた、シクロアルキル基の環状炭素原子のうち1個または複数が、オキソ基と結合しているシクロアルキル基を含む。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「シクロアルコキシ」とは、基−O−シクロアルキルを指す。
用語「シクロアルケニルオキシ」とは、基−O−シクロアルケニルを指す。
用語「アリール」とは、単一環(例えば、フェニル)または複数の環(例えば、ビフェニル)または多環式縮合(condensed)(縮合(fused))環(例えば、ナフチル、フルオレニルおよびアントリル)を有する、6〜20個の炭素原子の芳香族炭素環式基を指す。いくつかの実施形態では、アリールは、フェニル、フルオレニル、ナフチル、アントリルなどを含む。
アリール置換基について定義によって別に制約されない限り、このようなアリール基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)で置換されていてもよい。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「アリールオキシ」とは、基−O−アリールを指し、ここで、アリール基は、上で定義されるとおりであり、同様に上で定義されるような任意選択で置換されているアリール基を含む。用語「アリールチオ」とは、基R−S−を指し、ここで、Rは、アリールについて定義されるとおりである。
用語「アリーレン」とは、本明細書において、アリールからの水素原子の形式的除去によって二価となっている、上で定義されるとおりの「アリール」のジラジカルを指す。
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」または「複素環式」とは、単一環または多環式縮合環を有し、環内に1〜40個の炭素原子および窒素、硫黄、リンおよび/または酸素から選択される1〜10個のヘテロ原子、1〜4個のヘテロ原子を有するモノラジカル飽和基を指す。
複素環式置換基について、定義によって別に制約されない限り、このような複素環式基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1〜5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)で任意選択で置換されていてもよい。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。複素環式環の例として、テトラヒドロフラニル、モルホリノ、およびピペリジニルなどが挙げられる。
用語「ヘテロシクロオキシ」とは、基−O−ヘテロシクリルを指す。
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1個の環内に、1〜15個の炭素原子ならびに酸素、窒素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む単一環または複数の環を含む基を指す。用語「ヘテロアリール」は、用語「芳香族ヘテロアリール」および「部分飽和ヘテロアリール」の総称的用語である。用語「芳香族ヘテロアリール」とは、結合点に関わらず、少なくとも1個の環が、芳香族であるヘテロアリールを指す。芳香族ヘテロアリールの例として、ピロール、チオフェン、ピリジン、キノリン、プテリジンが挙げられる。用語「部分飽和ヘテロアリール」は、基本的な芳香族ヘテロアリールと同等の構造を有するヘテロアリールであって、該基本的な芳香族ヘテロアリールの芳香環中の1個または複数の二重結合が飽和しているヘテロアリールを指す。部分飽和ヘテロアリールの例として、ジヒドロピロール、ジヒドロピリジン、クロマン、および2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イルなどが挙げられる。
ヘテロアリール置換基について、定義によって別に制約されない限り、このようなヘテロアリール基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1〜5個の置換基(いくつかの実施形態では、1、2または3個の置換基)で任意選択で置換されていてもよい。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。このようなヘテロアリール基は、単一環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または多環式縮合環(例えば、インドリジニル、ベンゾチアゾールもしくはベンゾチエニル)を有し得る。窒素ヘテロシクリルおよびヘテロアリールの例として、以下のものには限らないが、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリンなどならびにN−アルコキシ−窒素含有ヘテロアリール化合物が挙げられる。
用語「ヘテロアリールオキシ」とは、基−O−ヘテロアリールを指す。
用語「アミノ」とは、基−NH2を指す。
用語「置換アミノ」とは、各Rが独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される基−NRRを指すが、ただし、両R基は、水素または基−Y−Zではなく、Yは、任意選択で置換されているアルキレンであり、Zは、アルケニル、シクロアルケニルまたはアルキニルである。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「アルキルアミン」とは、R−NH2を指し、ここで、Rは、任意選択で置換されているアルキルである。
用語「ジアルキルアミン」とは、R−NHRを指し、ここで、各Rは独立に、任意選択で置換されているアルキルである。
用語「トリアルキルアミン」とは、NR3を指し、ここで、各Rは独立に、任意選択で置換されているアルキルである。
用語「シアノ」とは、基−CNを指す。
用語「ケト」または「オキソ」とは、基=Oを指す。
用語「カルボキシ」とは、基−C(O)−OHを指す。
用語「エステル」または「カルボキシエステル」とは、Rが、任意選択で、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノまたは−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によってさらに置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルである、基−C(O)ORを指す。
用語「アシル」は、基−C(O)Rを表し、ここで、Rは、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているシクロアルキル、任意選択で置換されているシクロアルケニル、任意選択で置換されているヘテロシクリル、任意選択で置換されているアリールまたは任意選択で置換されているヘテロアリールである。
用語「カルボキシアルキル」とは、基−C(O)O−アルキルまたは−C(O)O−シクロアルキルを指し、ここで、アルキルおよびシクロアルキルは、本明細書において定義されるとおりであり、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によってさらに置換されていてもよい。
用語「アミノカルボニル」とは、基−C(O)NRRを指し、ここで、各Rは、独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルであるか、または両R基は結合して、複素環式基(例えば、モルホリノ)を形成する。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「アシルオキシ」とは、基−OC(O)−アルキル、−OC(O)−シクロアルキル、−OC(O)−アリール、−OC(O)−ヘテロアリールおよび−OC(O)−ヘテロシクリルを指す。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「アシルアミノ」とは、基−NRC(O)Rを指し、ここで、各Rは独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルである。すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF3、アミノ、置換アミノ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよび−S(O)nRa(式中、Raは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によってさらに置換されていてもよい。
用語「アルコキシカルボニルアミノ」とは、基−N(Rc)C(O)ORを指し、ここで、Rは、任意選択で置換されているアルキルであり、Rcは、水素または任意選択で置換されているアルキルである。
用語「アミノカルボニルアミノ」とは、基−NRdC(O)NRRを指し、ここで、Rdは、水素または任意選択で置換されているアルキルであり、各Rは独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「チオール」とは、基−SHを指す。
用語「チオカルボニル」とは、基=Sを指す。
用語「アルキルチオ」とは、基−S−アルキルを指す。
用語「置換アルキルチオ」とは、基−S−置換アルキルを指す。
用語「ヘテロシクリルチオ」とは、基−S−ヘテロシクリルを指す。
用語「アリールチオ」とは、基−S−アリールを指す。
用語「ヘテロアリールチオール」とは、基−S−ヘテロアリールを指し、ここで、ヘテロアリール基は、上で定義されるとおりであり、同様に上で定義されるとおりである任意選択で置換されているヘテロアリール基を含む。
用語「スルホキシド」とは、基−S(O)Rを指し、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールである。「置換スルホキシド」とは、Rが、本明細書において定義されるとおりである、置換アルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アリールまたは置換ヘテロアリールである、基−S(O)Rを指す。
用語「スルホン」とは、基−S(O)2Rを指し、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールである。「置換スルホン」とは、Rが、本明細書において定義されるとおりである、置換アルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アリールまたは置換ヘテロアリールである、基−S(O)2Rを指す。
用語「アミノスルホニル」とは、基−S(O)2NRRを指し、ここで、各Rは独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。定義によって別に制約されない限り、すべての置換基は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−シクロアルキル、−SO−ヘテロシクリル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−シクロアルキル、−SO2−ヘテロシクリル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2または3個の置換基によってさらに置換されていてもよい。
用語「ヒドロキシアミノ」とは、基−NHOHを指す。
用語「アルコキシアミノ」とは、基−NHORを指し、ここで、Rは、任意選択で置換されているアルキルである。
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フルオロ、ブロモ、クロロおよびヨードを指す。
用語「トリフレート」とは、トリフルオロメタンスルホネート基(−OSO2−CF3)を指す。
「任意選択の」または「任意選択で」とは、その後に記載される事象または状況は、起こる場合も起こらない場合もあり、当該記載は、前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むということを意味する。
「置換されている」基は、モノラジカル置換基が、置換されている基の単一原子と結合している(例えば、分枝を形成する)実施形態を含み、また、置換基が、該置換されている基の2個の隣接する原子と結合しているジラジカル架橋基であり得、それによって、該置換されている基に縮合環を形成する実施形態も含む。
所与の基(部分)が、第2の基と結合していると本明細書において記載され、結合部位は明確ではない場合には、所与の基は、所与の基の任意の利用可能な部位で、第2の基の任意の利用可能な部位と結合し得る。例えば、「アルキル置換フェニル」は、結合部位が明確ではない場合は、フェニル基の任意の利用可能な部位に、アルキル基の任意の利用可能な部位が結合していてもよい。この関連で、「利用可能な部位」は、当該基の水素が、置換基で置換され得る基の部位である。
上で定義されるすべての置換基において、さらなる置換基を有する置換基をそれ自体に対して定義することによって達せられるポリマー(例えば、置換アリール基でそれ自体が置換されている置換基として、置換アリール基を有する置換アリールなど)は、本明細書に含まれないものとするということは理解される。また、置換基が同一であろうが、異なっていようが、無数の置換基は含まれない。このような場合には、このような置換基の最大数は、3である。したがって、上記の定義の各々は、例えば、置換アリール基は、−置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに制限されるという制限によって制約される。
所与の式の化合物(例えば、式Iの化合物)は、本開示の化合物ならびにこのような化合物の塩(例えば、医薬上許容される塩)、医薬上許容されるエステル、異性体、互変異性体、溶媒和物、同位体、水和物、共結晶、共形成剤(co−former)、および/またはプロドラッグを包含するものとする。さらに、本開示の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有し得、ラセミ混合物として、または個々の鏡像異性体またはジアステレオ異性体として製造され得る。所与の式の任意の所与の化合物中に存在する立体異性体の数は、存在する不斉中心の数に応じて変わる(nが不斉中心の数である場合には、2n種の立体異性体があり得る)。個々の立体異性体は、中間体のラセミまたは非ラセミ混合物を合成のある適当な段階で分割することによって、または従来の手段で化合物を分割することによって得られ得る。個々の立体異性体(個々の鏡像異性体およびジアステレオ異性体を含む)ならびに立体異性体のラセミおよび非ラセミ混合物は、本開示の範囲内に包含され、そのすべては、別に具体的に示されない限り、本明細書の構造によって表されるものとする。
「異性体」は、同一分子式を有する異なる化合物である。異性体は、立体異性体、鏡像異性体およびジアステレオマーを含む。
「立体異性体」は、同じ結合性を含有する不斉中心原子を含有するが、原子が空間に配置される様式のみが異なる異性体である。用語「立体異性体」は、本明細書において使用する場合、「鏡像異性体」および「ジアステレオマー」の両方を包含する。
「鏡像異性体」は、互いに重ねることができない鏡像であり、対称面を含有しない立体異性体の対である。鏡像異性体対の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。用語「(±)」は、適切である場合にラセミ混合物を指すのに使用される。
「ジアステレオマー」は、少なくとも2つの不斉中心原子を有し、対称面を含有し得るが、対称面の非存在下では互いの鏡像ではない立体異性体である。
絶対立体化学は、カーン・インゴルド・プレローグRS表示法に従って特定される。化合物が、純粋な鏡像異性体である場合には、各キラル炭素での立体化学は、RまたはSのいずれかによって特定され得る。その絶対立体配置が未知である分割された化合物は、ナトリウムD線の波長で偏光面を回転させる方向(右旋型または左旋型)に応じて、(+)または(−)と示される。
表される構造とその構造に与えられる名称の間に矛盾がある場合には、表される構造が支配する。さらに、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太字、楔形または破線で示されない場合には、構造または構造の一部は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈されるべきである。
用語「溶媒和物」は、式Iまたは本明細書中に開示するような任意の他の式の化合物、および溶媒の組合せにより形成される複合体を指す。本明細書において使用する場合、用語「溶媒和物」は、水和物(すなわち、溶媒が水である場合の溶媒和物)を包含する。
用語「水和物」とは、本明細書において開示される式Iの化合物または任意の式の化合物、および水を組み合わせることによって形成される複合体を指す。
用語「共結晶」は、式Iまたは本明細書中に開示する任意の式の化合物、および1つまたは複数の共結晶形成剤(すなわち、分子、イオンまたは原子)を組み合わせることにより形成される結晶性材料を指す。ある特定の場合では、共結晶は、親形態(すなわち、遊離分子、双性イオンなど)または親化合物の塩と比較した場合に改善された特性を有し得る。改善された特性は、溶解度の増加、溶解の増加、バイオアベイラビリティーの増加、用量応答の増加、吸湿性の減少、通常は非晶質化合物の結晶性形態、塩にする(salt)のが困難な化合物または塩にすることができない(unsaltable)化合物の結晶性形態、形態多様性の減少、より望ましい形態などであり得る。共結晶を作製して、共結晶を特徴付ける方法は、当業者に公知である。
用語「共形成剤」または「共結晶形成剤」とは、式I、または本明細書において開示される任意の式の化合物と、1つまたは複数の分子、イオンまたは原子との非イオン性会合を指す。例示的な共形成剤は、化合物と、無機もしくは有機塩基および/または酸とを用いて提供され得る。
本明細書において開示される式Iまたは任意の式を含めた、本明細書において示される任意の式または構造はまた、化合物の非標識形態ならびに同位体で標識された形態も表すものとする。同位体で標識された化合物は、1個または複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子によって置換されている点を除いて、本明細書において示される式によって表される構造を有する。本開示の化合物中に組み込まれ得る同位体の例として、以下のものには限らないが、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が挙げられる。本開示の種々の同位体で標識された化合物、例えば、3H、13Cおよび14Cなどの放射性同位体で標識された化合物が考慮される。このような同位体で標識された化合物は、代謝研究、反応速度研究、薬物もしくは基質組織分布アッセイを含めた陽電子放射型断層撮影法(PET)もしくは単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)などの検出またはイメージング技法において、または患者の放射性処置において有用であり得る。
本開示はまた、炭素原子と結合している1〜「n」個の水素が、重水素によって置き換えられており、nが、分子中の水素の数である、本明細書において開示される式Iまたは任意の式の化合物を含んだ。このような化合物は、代謝に対する抵抗性の増大を示し、従って、哺乳動物に投与された場合に、式Iの任意の化合物の半減期を増大するのに有用である。例えば、Foster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol. Sci. 5巻(12号):524〜527頁(1984年)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1個または複数の水素原子が重水素によって置き換えられている出発物質を使用することによって合成される。
本開示の重水素標識されたまたは置換された治療用化合物は、分布、代謝および排泄(ADME)と関連して、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有する。重水素などのより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の増大または投薬量要件の低減に起因する特定の治療上の利点を提供し得る。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究において有用であり得る。本開示の同位体で標識された化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに、容易に入手可能な同位体標識された試薬を用いることによって、以下に記載されるスキームにおいて、または実施例および調製において開示される手順を実施することによって、調製され得る。さらに、より重い同位体、特に、重水素(すなわち、2HまたはD)での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の増大または投薬量要件の低減または治療係数の改善に起因する特定の治療上の利点を提供し得る。この文脈で重水素は、本明細書において開示される式Iまたは任意の式の化合物において置換基とみなされるということは理解される。
このようなより重い同位体、具体的には、重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義され得る。本開示の化合物では、特定の同位体として具体的に示されない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すものとする。別に記載されない限り、「H」または「水素」として、位置が具体的に示される場合には、その位置は、その天然の存在量の同位体組成で水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物では、重水素(D)として具体的に示される任意の原子は、重水素を表すものとする。
多くの場合において、本開示の化合物は、アミノおよび/もしくはカルボキシル基またはそれと同様の基の存在によって、酸性および/または塩基性塩を形成できる。
所与の化合物の用語「医薬上許容される塩」とは、所与の化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはそれ以外の点で望ましくないものではない塩を指す。P. Heinrich StahlおよびCamille G. Wermuth (編) Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (International Union of Pure and Applied Chemistry)、Wiley−VCH;改定第2版の版(2011年5月16日)を参照のこと。医薬上許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製され得る。医薬上許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製される塩であってもよく、医薬上許容される酸付加塩は、無機および有機酸から調製される塩であってもよい。
本明細書中に開示する化合物の塩は、特定の化合物上に存在する官能基の反応性に応じて、塩基付加塩または酸付加塩であり得る。塩基付加塩は、無機または有機塩基に由来し得る。無機塩基に由来する塩として、単に例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基に由来する塩として、以下のものには限らないが、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、二置換シクロアルキルアミン、三置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、二置換シクロアルケニルアミン、三置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、ヘテロ環式アミン、ジヘテロ環式アミン、トリヘテロ環式アミン、アミン上の置換基のうち少なくとも2個が異なっており、かつ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環式環などからなる群から選択される、混合ジアミンおよび混合トリアミンなどの、第一級、第二級および第三級アミンの塩が挙げられる。また、2個または3個の置換基が、アミノ窒素と一緒になって、複素環式基またはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。アミンは、一般構造N(R30)(R31)(R32)のアミンであり、ここで、一置換アミンは、窒素上の3個の置換基(R30、R31およびR32)のうち2個を水素として有し、二置換アミンは、窒素上の3個の置換基(R30、R31およびR32)のうち1個を水素として有するのに対し、三置換アミンは、窒素上の3個の置換基(R30、R31およびR32)のうち、水素として有するものはない。R30、R31およびR32は、水素、任意選択で置換されているアルキル、アリール、ヘテロアリール(heteroayl)、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクリルなどといった種々の置換基から選択される。上記のアミンは、窒素上の1、2または3個の置換基いずれかが、名称に列挙されるとおりである化合物を指す。例えば、用語「シクロアルケニルアミン」とは、シクロアルケニル−NH2を指し、ここで、「シクロアルケニル」は、本明細書に定義されるとおりである。用語「ジヘテロアリールアミン」とは、NH(ヘテロアリール)2を指し、ここで、「ヘテロアリール」は、本明細書に定義されるとおりである、などである。
適したアミンの特定の例として、単に例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソ−プロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、およびN−エチルピペリジンなどが挙げられる。
酸付加塩は、無機酸または有機酸から誘導され得る。無機酸に由来する塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などが挙げられる。有機酸に由来する塩として、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、およびサリチル酸などが挙げられる。
本明細書中で開示する塩のいずれも、任意に医薬上許容可能であり得る。
用語「アシル化反応条件」は、アシル部分が適切な基質上へ付着される反応条件を指し、ここで用語「アシル」は、本明細書で定義されるとおりである。「アシル化反応条件」は、典型的には、ハロゲン化アシルなどのアシル化剤、およびアミン塩基(例えば、N,N−ジイロプロピルエチルアミンまたは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)などの適した塩基を含む。
用語「N−アリール化反応条件」は、アミン部分が適切な芳香族基質上へ付着される反応条件を指し、ここで用語「アミン」は、本明細書で定義されるとおりである。「N−アリール化反応条件」は、本明細書中で開示する場合、典型的には、5−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1’,3’,5’−トリフェニル−1’H−[1,4’]ビピラゾール、2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)−1−フェニル−1H−ピロール、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(2−メトキシフェニル)−1H−ピロール、アセチルアセトン、アセチルシクロヘキサノン、イソブチリルシクロヘキサノン、N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、L−プロリン、BINAPまたはN,N−ジエチルサリチルアミドなどのリガンドの存在下でのパラジウム、白金または銅ベースの触媒などの触媒を含む。
用語「カルボキシル化反応条件」は、カルボキシル部分が適切な基質上へ付着される反応条件を指し、ここで用語「カルボキシル」は、本明細書で定義されるとおりである。「カルボキシル化反応条件」は、典型的には、基質の炭素原子を脱プロトン化することが可能である塩基(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジン、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、リチウムテトラメチルピペリジドまたはリチウムジイソプロピルアミド)および二酸化炭素を含む。
さらに、略語は、本明細書において、以下のとおり、それぞれの意味を有する:
方法
上記に全般的に記載されるように、本開示は、いくつかの実施形態では、式Iの化合物を作製するための方法を提供する。
一実施形態では、本開示は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン−2−カルボン酸という名称の式I:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、医薬上許容される塩もしくはエステルの調製のための方法であって、
a)(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミンという名称の式IIの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を、N−アリール化反応条件下で式Xの化合物と接触させて、
[式中、
X
2は、ハロゲン、トリフレートおよび−B(OY)
2[式中、各Yは独立に、HもしくはC
1〜4アルキルであるか、または2つのY基はそれらが結合する原子と一緒になって、5〜6員環を形成する]からなる群から選択される]
5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミノ]チオフェンという名称の式IIIの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩
を得るステップと、
b)式IIIの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を、アシル化反応条件下で式XIの化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物:
[式中、
X
1は、ハロゲン、
からなる群から選択される]
と接触させて、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェンという名称の式IVの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩
を得るステップと、
c)式IVの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を、カルボキシル化反応条件下でCO
2の存在下で塩基と接触させて、式Iの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物、医薬上許容される塩もしくはエステルを得るステップと
を含む方法を提供する。
したがって、本開示の一実施形態は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン−2−カルボン酸という名称の式I:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、医薬上許容される塩もしくはエステルを作製するための方法であって、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェンという名称の式IVの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩:
を、カルボキシル化反応条件下でCO
2の存在下で塩基と接触させて、式Iの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物、医薬上許容される塩もしくはエステルを得ることを含む方法を提供する。
一実施形態では、本開示のカルボキシル化反応条件は、約3倍当量の塩基を含む。塩基がチオフェンを脱プロトン化することが可能であれば、様々な塩基が上記反応における使用に適している。適した塩基の限定されない例として、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジン、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、リチウムテトラメチルピペリジドおよびリチウムジイソプロピルアミドが挙げられる。ある特定の実施形態では、第1の塩基は、式IVのヒドロキシル基のみを脱プロトン化するのに使用され得、続いてチオフェンを脱プロトン化することが可能なより強力な塩基を使用してもよい。例えば、一実施形態は、まず式IVの化合物を、グリニャール試薬(例えば、アルキルマグネシウムハロゲン化物またはアリールマグネシウムハロゲン化物)で、続いて上記で開示されているような塩基(例えば、リチウム塩基)で処理することを包含する。
ある特定の実施形態では、カルボキシル化温度は、約−78℃〜約45℃である。他の実施形態では、カルボキシル化反応温度は、約−20℃〜約20℃である。
いくつかの実施形態では、本開示は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェンという名称の式IV:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を作製するための方法であって、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミノ]チオフェンという名称の式IIIの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を、アシル化反応条件下で式XIの化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物と接触させて、
[式中、
X
1は、ハロゲン、
からなる群から選択される]
式IVの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を得ることを含む方法を提供する。
一実施形態では、アシル化反応条件は、塩基を含む。適した塩基として、置換または非置換の第三級アミンが挙げられ、この第三級アミンは、3つの置換基が、アミノ窒素と一緒になってヘテロアリール基を形成するアミンを包含する。さらなる実施形態では、塩基は、イミダゾール、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンまたは2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
別の実施形態では、本開示のアシル化反応条件は、約−45℃〜約100℃、もしくは約−45℃〜約45℃の温度を含み、または一実施形態では、アシル化反応条件は、約0℃〜約20℃の温度を含む。
様々なアシル化剤(例えば、カルボジイミド、N−メチルイミダゾールなど)および/または式XIの他の誘導体(例えば、活性エステル、混合酸無水物、アシルトリアジン、活性ホスフェート、有機リンエステルなど)が、アシル化反応における使用に適している。上記で開示されている方法のある特定の実施形態では、X1はハロゲンである。いくつかの実施形態では、X1はクロロである。
いくつかの実施形態では、本開示は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミノ]チオフェンという名称の式III:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を作製するための方法であって、(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミンという名称の式IIの化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を、N−アリール化反応条件下で式Xの化合物と接触させて、
[式中、
X
2は、ハロゲン、トリフレートおよび−B(OY)
2[式中、各Yは独立に、HもしくはC
1〜4アルキルであるか、または2つのY基はそれらが結合する原子と一緒になって、5〜6員環を形成する]からなる群から選択される]
式IIIの化合物またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を得ることを含む方法を提供する。
様々な他のN−アリール化剤もまた、N−アリール化反応における使用に適している。限定されない例として、ボロキシン、ボロネートなどの環状有機ホウ素化合物が挙げられる。上記で開示されている方法のある特定の実施形態では、X2はハロゲンである。いくつかの実施形態では、X2はブロモである。
一実施形態では、本開示のN−アリール化反応条件が、触媒を含む。さらなる実施形態では、触媒は、パラジウム、白金または銅ベースの触媒である。別の実施形態では、触媒は、塩化銅(I)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、チオフェン−2−カルボン酸銅(I)およびヨウ化銅(I)からなる群から選択される。
別の実施形態では、本開示のN−アリール化反応条件は、リガンドをさらに含む。さらなる実施形態では、リガンドは、5−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1’,3’,5’−トリフェニル−1’H−[1,4’]ビピラゾール、2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)−1−フェニル−1H−ピロール、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(2−メトキシフェニル)−1H−ピロール、アセチルアセトン、アセチルシクロヘキサノン、イソブチリルシクロヘキサノン、N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、L−プロリン、BINAP、およびN,N−ジエチルサリチルアミドからなる群から選択される。
別の実施形態では、本開示のN−アリール化反応条件は、塩基をさらに含む。例示的な塩基として、金属の水酸化物、炭酸塩、アルコキシドなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、tert−アミル酸ナトリウム(sodium tert−amylate)、炭酸セシウム、水酸化セシウム、三塩基性リン酸カリウム、ナトリウムtertブトキシド、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、本開示のN−アリール化反応条件は、相間移動触媒をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、相間移動触媒は、臭化セチルトリメチルアンモニウムである。
上記で開示されている方法では、式IIの化合物は、式IIの化合物を包含する任意の形態、例えば、その遊離塩基または塩であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、遊離塩基である。別の実施形態では、式IIの化合物は、塩である。式IIの塩の限定されない例として、塩酸塩または(S)−マンデル酸塩などの塩が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、その(S)−マンデル酸塩である。
式Iの合成のための方法における中間体は、精製して、または精製せずに次のステップで使用することができる。精製の従来の手段として、再結晶、クロマトグラフィー(例えば、吸着剤、イオン交換およびHPLC)などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、精製の手段は、式Iの合成のための方法における1つもしくは複数の中間体および/または式Iの鏡像異性純度を増大させるためのキラル分割を包含し得る。かかる方法としては、例えば、結晶化、キラル分割剤および/またはキラルクロマトグラフィーが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、シンコニンアルカロイドを用いた結晶化によりさらに精製することができる。
化合物
他の実施形態では、本開示は、本明細書において記載される方法において有用である中間体化合物を提供する。したがって、例えば、一実施形態は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミノ]チオフェンという名称の式III:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩である。
別の実施形態では、本開示は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェンという名称の式IV:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を提供する。
別の実施形態では、本開示は、5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン金属塩という名称の式V:
の化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物[式中、各Mは独立に、金属である]を提供する。いくつかの実施形態では、金属は、リチウム、カリウムまたはナトリウムである。ある特定の実施形態では、金属はリチウムである。ある特定の実施形態では、各Mは、同じ金属を表す。他の実施形態では、式Vを得るために式IVにおけるヒドロキシル基およびチオフェンを脱プロトン化するのに異なる塩基および/または有機金属試薬が使用され得るので、各Mは、異なる金属を表し得る。かかる場合では、適した金属の例として、リチウム、カリウム、ナトリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛などが挙げられる。
別の実施形態では、本開示は、(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミンという名称の式II:
の化合物、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩を提供する。いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、遊離塩基である。しかしながら、他の実施形態では、式IIの化合物は、塩である。式IIの塩酸塩または(S)−マンデル酸塩を包含するが、これらに限定されない各種塩が、本明細書において考慮される。ある特定の実施形態では、式IIの化合物は、(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アンモニウム(S)−マンデル酸塩という名称の式IIA:
で表されるそれらの(S)−マンデル酸塩、またはその立体異性体、立体異性体の混合物もしくは塩である。
本明細書において開示される式のいずれか1つの共形成剤および/または共結晶も提供される。例えば、いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミン(S)−マンデル酸共結晶などの共結晶を形成し得る。
本開示は、本実施例に開示される特定の実施形態による範囲に制限されず、これは、本開示のいくつかの実施形態の例示であることが意図されており、また、本開示は、本開示の範囲内で機能的に同等である任意の実施形態によって制限されない。実際、本明細書に示され、記載されたものに加え、本開示の種々の改変が、当業者には明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。この目的に対し、1個または複数の水素原子またはメチル基が、このような有機化合物の許容される簡便な表記法と一致して描かれた構造から省略され得ること、および有機化学の当業者ならば、その存在を容易に理解するであろうということは留意されたい。
本開示の化合物は、本明細書において開示される方法および本明細書中の開示を考慮して明らかであるそれらの慣用的な修飾ならびに当該技術分野で周知の方法を使用して調製され得る。従来の、かつ周知の合成方法は、本明細書中の教示に加えて使用され得る。本明細書において記載される化合物の合成は、以下の実施例で記載するように遂行され得る。利用可能である場合、試薬は、例えばSigma Aldrichまたは他の化学物質供給業者から市販で購入してもよい。別記しない限り、以下の反応に関する出発物質は、市販の供給源から入手され得る。
実施例1: 5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン−2−カルボン酸(I)の調製
I.出発物質の合成:
A.中間体6を得るためのエポキシ化、エーテル化、脱ケタール化、還元的アミノ化、および脱保護:
i.中間体2を調製するためのエポキシ化:
2を得るための1のエポキシ化は、以下の手順を使用して実施した。リチウムtert−ブトキシド(1.14kg、1.1当量)およびヨウ化トリメチルスルホキソニウム(3.12kg、1.1当量)を、ジャケット温度を23℃に設定した、不活性にさせた(inerted)70Lの反応器に入れる。DMSO(13.8kg)を入れて、20〜25℃の間で1時間、内容物を激しく混合する。1,4−シクロヘキサンジオンモノエチレンアセタール(1)(2.02kg、1.0当量)を反応器に入れる。反応が一旦完了したら、確実に反応温度が40℃を超えないような速度で、反応器にブライン(18L、15重量%)を入れる。ブラインを含有する均質な反応混合物をMTBE(3×30kg)で抽出して、生成物を含有する有機物を合わせる。周囲圧力での蒸留により、合わせた有機物を濃縮する。MTBEを5倍容量(10L)にまで留去させて、MTBE中の2の溶液を得る。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 4.02−3.91 (m, 4H), 2.67 (s, 2H), 1.95−1.83 (m, 4H), 1.81−1.72 (m, 2H), 1.60−1.53 (m, 2H)。
しかしながら、すぐ上に記載されたエポキシ化試薬および/または反応条件に対する代替物もまた、本開示において包含される。
例えば、エポキシ化試薬は、塩化トリメチルスルホキソニウム、ヨウ化トリメチルスルホニウム、もしくは塩化トリメチルスルホニウムであってもよく、塩基は、tert−アミル酸カリウム、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウムもしくは水酸化カリウムであってもよく、溶媒は、メチルtert−ブチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、ジクロロメタンもしくはDMFであってもよく、そして/または温度は、約0〜約40℃の間であってもよい。
同様に、他の実施形態によれば、ジブロモメタンなどの他のエポキシ化試薬下で、テトラヒドロフラン中でn−ブチルリチウムにより1をエポキシ化することも可能である。
ii.中間体3を調製するためのエーテル化:
3を得るための2のエーテル化は、以下の手順を使用して実施した。MTBE中の2の溶液、(S)−テトラヒドロフラン−3−オール(1.25kg、1.1当量)およびカリウムtert−ブトキシド(1.59kg、1.1当量)を、不活性にさせた70Lの反応器に入れて、内容物を55〜60℃へ加熱する。反応が完了したら、反応器内容物を周囲温度へ冷却して、MTBE中の3の溶液を得る。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 4.19−4.09 (m, 1H), 4.00−3.66 (m, 8H), 3.27 (dd, J = 20.1, 8.8Hz, 2H), 2.04−1.84 (m, 6H), 1.76−1.68 (m, 2H), 1.67−1.50 (m, 2H)。
しかしながら、すぐ上に記載されたエーテル化試薬および/または反応条件に対する代替物もまた、本開示において包含される。
他の実施形態では、tert−アミル酸カリウム、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化カリウム、金属カリウムおよび金属ナトリウムまたは炭酸セシウムなどの代替的な塩基が、上記反応で適している。テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフランなどの他の溶媒も適している。許容可能な温度は、約10〜約70℃の範囲であり得る。
iii.中間体4を調製するための脱ケタール化:
4を得るための3の脱保護は、以下の手順に従って遂行した。HCl(13.3L、1.5N)をMTBE中の3の溶液(2.4kg、11.1mmol)を含む反応器に入れる。二相性反応混合物を18〜25℃の間で混合する。反応が一旦完了したら、撹拌を止めて、二相を分離させる。水相をCH
2Cl
2(2×20L)で抽出する。反応器中で有機相を合わせる。NaHCO
3水(15L、7.5重量%)を入れて、1時間混合して、静置させて、相を分割する。有機相を反応器に戻す。有機物を5倍容量(10L)にまで濃縮する。エタノール12Lを入れて、8.5Lにまで濃縮して、EtOH中の溶液として4を得る。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 4.17 (m, 1H), 3.95−3.75 (m, 4H), 3.35 (AB, 2H), 2.74 (td, J = 13.6, 6.7Hz, 2H), 2.10−1.97 (m, 5H), 1.71 (td, J = 13.6, 6.7Hz, 2H)。
しかしながら、すぐ上に記載された試薬および/または反応条件に対する代替物もまた、本開示において包含される。例えば、脱ケタール化触媒は、塩酸のほかに、硫酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、トリフル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トシル酸ピリジニウムまたは酢酸であってもよい。さらなる溶媒および溶媒の組合せも用いることができる。これらとしては、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸およびジオキサンが挙げられる。許容可能な温度は、約10〜約45℃の範囲であり得る。
iv.中間体5を調製するための還元的アミノ化:
中間体5は、以下の還元的アミノ化試薬および反応条件下でベンジルアミンを使用して、4から調製された。4のEtOH溶液を70Lの反応器に入れて(7.84kg、30.3重量%、
1H−NMRによる)、ジャケット温度を20℃に設定する。30℃未満の反応温度を保つような速さで、Ti(OiPr)
4(4.0kg、1.25当量)を入れる。35℃未満の反応温度を保つような速度で、ベンジルアミン(1.2kg、1.0当量)を入れる。反応混合物を20℃で1時間撹拌した後、反応混合物を−4℃へ冷却する。水素化ホウ素ナトリウム(210g、0.5当量)をEtOH(5.8L)中に溶解させて、0℃以下の反応温度を維持するような速度で反応混合物に入れる。1時間後、20重量%のクエン酸三ナトリウム溶液(38L)および4−メチルペンタン−2−オン(MIBK、19.2L)を添加して、ジャケット温度を20℃に設定する。混合物を30分間激しく撹拌して、層を安定させる。水層を廃棄して、有機相を15重量%のNaCl(19L)で洗浄する。有機相を減圧下で、油状物にまで濃縮する。MIBK(7.1L、3倍容量)を入れて、混濁溶液を0.6ミクロンフィルターに通してポリッシュフィルター濾過する。濾液を70Lの反応器に移して、(S)−マンデル酸(1.7kg、1.0当量)、続いて少量の種晶を入れる。スラリーを少なくとも1時間熟成させて、続いてMTBE(9.6L、4倍容量)を15分かけて添加する。スラリーを濾過して、ケークを2/1のMIBK/MTBE 8.7Lで洗浄する。減圧オーブン中で固体を乾燥させて、白色固体として5を得る。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 7.60−7.38 (m, 7H), 7.32−7.18 (m, 3H), 4.21−4.09 (m, 3H), 3.89−3.71 (m, 4H), 3.34−3.19 (m, 2H), 3.12−2.97 (m, 1H), 2.34 (d, J = 7.1Hz, 1H), 1.96 (ddd, J = 46.9, 24.1, 3.7Hz, 2H), 1.85−1.65 (m, 4H), 1.51 (td, J = 13.7, 3.7Hz, 2H)。
しかしながら、すぐ上に記載されたものに対する代替的な還元的アミノ化試薬および/または反応条件もまた、本開示において包含される。
例えば、代替的な還元的アミノ化試薬を使用することができ、これらとしては、チタンテトラエトキシドが挙げられるが、これに限定されない。水素化ホウ素ナトリウムのほかに、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、ビス(2−メトキシエトキシ)水素化アルミニウムナトリウム、トリ−tert−ブトキシ水素化アルミニウムリチウム、トリ−メトキシ水素化ホウ素ナトリウムおよびトリ−(2−エチルヘキサノイルオキシ)水素化ホウ素ナトリウムなどの他の還元剤も用いられ得る。
他の溶媒および溶媒の組合せが、還元的アミノ化に適している。例えば、これらとしては、イソプロパノール、メタノール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、アセトニトリル、トルエンおよびジメチルアセトアミドが挙げられる。
許容可能な温度は、約−15〜約25℃の範囲であり得るが、典型的には−4〜約5℃である。
v.中間体6を調製するための水素化分解:
6を得るための5の脱保護は、以下の手順を使用して実施した。5(2.20kg、1当量)およびPd(OH)
2/C(0.12kg、20重量%(無水ベース)、0.02当量)を70Lの反応器に入れる。反応器を不活性にさせて、MeOH(25.8L、10倍容量)およびギ酸アンモニウム(1.52kg、5.0当量)を入れる。反応器内容物を正の窒素圧下で48〜50℃へ加温して、撹拌する。反応が完了したら、反応混合物を18〜25℃へ冷却して、反応混合物を濾過して、固体を除去する。減圧下での蒸留により、最終容量12L(5倍容量)を目標としてイソプロパノール(IPA)に溶媒交換する。スラリーを濾過して、ケークをIPA(4L、2倍容量)で洗浄する。固体を減圧オーブン中で40℃で乾燥させて、白色固体として6を得る。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 7.50−7.42 (m, 2H), 7.33−7.15 (m, 3H), 4.15−4.06 (m, 1H), 3.92−3.59 (m, 4H), 3.37−3.13 (m, 4H), 2.94 (td, J = 10.7, 5.6Hz, 1H), 1.97 (td, J = 7.7, 4.4Hz, 2H), 1.87−1.59 (m, 7H), 1.55−1.39 (m, 2H)。
しかしながら、すぐ上に記載されたものに対する代替的な脱保護条件もまた、本開示において包含される。例えば、任意の適したパラジウム触媒を使用することができ(例えば、炭素担持水酸化パラジウム、または炭素担持パラジウム)、任意の適した水素供給源を使用することができ(例えば、ギ酸アンモニウム、ギ酸、水素ガス、ギ酸トリエチルアンモニウム、シクロヘキセンなど)、温度は、約20〜約50℃の範囲であってもよく、溶媒は、任意の適した溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなど)であり得る。
B.中間体9の合成:
1.中間体9を得るための臭素化、脱臭素化、およびアルキニル化:
i.中間体7を調製するための臭素化:
以下の手順に従って、チオフェンを臭素化して、7を得た。反応器に、臭化水素酸水溶液(47.6%、125.0kg、5当量)を入れた。チオフェン(12.5kg、純度99%、1当量)を25〜30℃でそれに添加した。臭化テトラブチルアンモニウム(0.625kg、0.13当量)を反応塊に添加した。反応塊を50〜55℃に加熱した。50%過酸化水素水溶液(31.3kg、3.1当量)を、50〜55℃の範囲の温度を保ちながら10時間かけて反応塊に添加した。次に、反応塊を70〜75℃へ加熱した。反応が完了した後、反応塊を20〜25℃へ冷却して、20%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液(17L)、2N水酸化ナトリウム溶液(62L)で洗浄して、粗製生成物を分別蒸留に共して、2,3,5−トリブロモチオフェンを得た。この分子のスペクトル特性は、市販の材料と一致している。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および/または反応条件もまた、臭素化反応に用いられ得る。例えば、臭素、臭素酸ナトリウムおよび硫酸、またはN−ブロモスクシンイミドなどの臭素化試薬を使用してもよい。代替的な溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、酢酸、ジクロロメタンまたはDMFが挙げられ、許容可能な温度は、約−78〜75℃の範囲である。
ii.中間体8を調製するための脱臭素化:
以下の手順に従って、7の選択的脱臭素化により8が得られた。ジメチルスルホキシド(DMSO、330L)を反応器に入れた。2,3,5−トリブロモチオフェン(33kg、1.0当量)を撹拌しながら反応塊に入れた。反応塊を15〜20℃へ冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(7.8kg、2.0当量)を、温度15〜20℃を維持して2.0時間のうちに、反応塊へロット毎に入れた。反応塊を20〜25℃へ加熱して、反応が完了するまで維持した。反応塊を10〜15℃で水(660L)中でクエンチして、生成物をトルエン(5×165L)へ抽出した。合わせた有機層を水(165L)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム(8.0kg)で乾燥させて、50℃未満で減圧下で濃縮して、2,4ジブロモチオフェンを得た。この分子のスペクトル特性は、市販の材料と一致している。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および/または反応条件もまた、脱臭素化反応で用いられ得る。例えば、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、ブチルリチウム、亜鉛、マグネシウムまたは酢酸鉛(II)などの還元剤が利用され得る。脱臭素化反応に適した他の溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸、水またはジクロロメタンが挙げられる。許容可能な温度は、約−78〜約77℃の範囲であり得る。
iii.中間体9を得るためのアルキニル化:
9を得るための8のアルキニル化は、以下の手順を使用して実施した。反応器を排気して、窒素(超高純度)でフラッシュした。ジメチルホルムアミド(560L)および2,4−ジブロモチオフェン(37.5kg、1.0当量)を反応器に入れた。反応塊を20〜25℃へ冷却した。塩化パラジウムビストリフェニルホスフィン複合体(3kg、0.03当量)を、続いてヨウ化第一銅(1.6kg、0.06当量)、t−ブチルアセチレン(13.0kg、1.1当量)およびトリエチルアミン(43kg、3.0当量)を反応塊に入れた。反応器を再び窒素でフラッシュして、0.50kgの窒素(超高純度)圧で加圧した。反応塊を25〜30℃へ加熱して、反応の完了まで撹拌した(約6時間)。反応塊を濾過して、フィルターケークをジメチルホルムアミド(37.5L)で洗浄した。濾液を50℃未満の温度で減圧下で濃縮した。残渣を25〜30℃でヘプタン(187.5L)中に溶解させた。固体を濾別して、ヘプタン(3×56L)で洗浄した。濾液を5%アンモニア溶液および飽和NaCl溶液で順番に洗浄した。有機層は、無水硫酸ナトリウムでさらに乾燥させて、70℃未満の温度で減圧下で濃縮した。粗製油状物は、分別蒸留により精製して、9を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.00 (s, 1H), 6.96 (s, 1H), 1.26 (s, 9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、アルキニル化反応で用いられ得る。例えば、モルホリン、ジイソプロピルアミン、ピペリジンまたはピロリジンなどの試薬、酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィン、またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの触媒、ベンゼン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンまたはピロリジンなどの溶媒、ならびに約20〜約70℃の範囲の温度を用いてもよい。
2.中間体9を得るためのアシル化/臭素化、脱臭素化、ビニルクロリド形成、脱塩化水素:
i.中間体14を調製するためのアシル化/臭素化
以下の手順に従って、チオフェンをアシル化および臭素化して、14を得た。反応容器にAlCl
3(36.7g、275mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(DCM)(50ml、5ml/g)を入れた。得られた内容物を−5℃〜0℃へ冷却して、10℃未満の内容物温度を維持しながら、DCM(50ml、5ml/g)中の塩化3,3−ジメチルブチリル(19.1ml、138mmol、1.1当量)の溶液を添加した。15分間撹拌した後、10℃未満の内容物温度を維持しながら、DCM(50ml、5ml/g)中のチオフェン(10ml、125mmol、1.0当量)の溶液を添加した。得られた赤色混合物を、HPLCによりモニタリングする場合の反応の完了まで撹拌した。次に、臭素(14ml、275mmol、2.2当量)を2時間かけて徐々に添加した。HPLCによりモニタリングする場合の完了まで、反応混合物を周囲温度で撹拌した。反応混合物を、氷水(200ml;20ml/g)を含む容器へ移して、DCM(25ml、2.5ml/g)および水(25ml、2.5ml/g)ですすいで、1時間撹拌して、層を分離させた。有機層を1M NaOH水(100ml、10ml/g)および15%NaCl水(100ml、10ml/g)で洗浄して、MgSO
4で乾燥させた。乾燥剤を除去するための濾過後に、有機層を減圧下でおよそ100ml(およそ10ml/g)容量にまで濃縮し、減圧下でイソプロピルアルコール(IPA)(100ml)と共蒸発させて、最終容量をおよそ100ml(およそ10ml/g)に調節した。次に、ジブロミド4の種晶(10mg、1mg/g)を添加した。1時間撹拌した後、水(25ml、2.5ml/g)を15分かけて添加して、混合物を周囲温度で1時間、続いて0℃〜5℃で1時間撹拌した。固体を濾過により収集して、濾液および50%IPA水(20ml、2ml/g)ですすいで、減圧オーブン中で35℃で乾燥させて、淡黄色固体としてジブロミド14(35.4g、収率83%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.45 (s, 1H), 2.67 (s, 2H), 1.05 (S, 9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、用いられ得る。例えばアシル化反応では、ヘキサフルオロリン酸N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウム、3,3−ジメチルブタン酸無水物、塩化インジウム(III)、3,3−ジメチルブタン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、リン酸、錫(II)トリフレート、イッテルビウム(III)トリフレート、亜鉛トリフレート、トリフルオロ酢酸、ブチルリチウム、塩化錫(IV)、五酸化リン、塩化錫(II)、塩化亜鉛(II)、三フッ化ホウ素エーテラート、リチウムジイソプロピルアミドまたは塩化チタン(IV)などの試薬、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、ニトロメタン、トリフルオロ酢酸、ニトロベンゼン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ペンタンまたはテトラヒドロフランなどの溶媒、および約−20〜約115℃の範囲の温度を用いてもよい。例えば臭素化反応では、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭素酸ナトリウム、硫酸、N−ブロモスクシンイミド、三塩化アルミニウム、酢酸カリウム、臭素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化亜鉛または1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインなどの試薬、水、ジエチルエーテル、クロロホルム、エタノール、ジクロロエタン、酢酸、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素またはシクロヘキサンなどの溶媒、および約0〜約100℃の範囲の温度を用いてもよい。
ii.中間体14を調製するための脱臭素化
以下の手順に従って、中間体14を脱臭素化して、15を得た。反応容器にジブロミド14(35.0g、103mmol)、亜鉛末(7.07g、108mmol、1.05当量)および水(210ml、6ml/g)を入れた。得られた懸濁液に、AcOH(52.5ml、1.5ml/g)を添加した。HPLCによりモニタリングする場合の反応完了まで、反応混合物を80℃で撹拌した。反応混合物を周囲温度へ冷却して、ヘキサン(175ml、5ml/g)を添加した。15分間撹拌した後、層を分離して、有機層を1N NaOH水(175ml、5ml/g)および15%NaCl水(175ml、5ml/g)で洗浄して、濾過剤(17.5g、0.5g/g)に通して、ヘキサン(35ml、1ml/g)ですすいで、MgSO
4で乾燥させて、減圧下でおよそ70ml(およそ2ml/g)にまで濃縮した。得られた懸濁液に、イソプロパノール(IPA、70ml、2ml/g)を添加して、溶液を減圧下でおよそ70ml(およそ2ml/g)にまで濃縮した。得られた懸濁液を撹拌して、非常に濃厚な混合物を得た。固体を濾過により収集して、フィルターケークを液体およびIPA(35ml、1ml/g)ですすいだ。固体を減圧オーブン中で35℃で乾燥させて、オフホワイト色固体としてブロミド15(18.3g、収率68%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.55 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 2.72 (s, 2H), 1.07 (S, 9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、脱臭素化反応で用いられ得る。例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、エチルマグネシウムブロミド、ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド−塩化リチウム複合体またはイソプロピルマグネシウムブロミドなどの還元剤、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ヨウ素、酢酸パラジウム(II)またはトリフェニルホスフィンなどの還元試薬、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、テトラヒドロフランまたはエタノールなどの溶媒、および約−70〜約100℃の範囲の温度を用いてもよい。
iii.中間体16の調製:
以下の手順に従って、中間体16(式中、LG=Cl)は15から得られた。反応容器にブロミド15(2.61g、10mmol)および酢酸イソプロピル(IPAc、60ml)を入れた。得られた溶液を周囲温度で10分間撹拌した後、五塩化リン(16.7g、80mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で48時間で撹拌して、1M炭酸ナトリウム溶液(100mL)、氷(100g)およびIPAc(100mL)の強撹拌混合物へクエンチした。層を分離して、水層をIPAc(50mL)で抽出した。有機層を合わせて、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶液を減圧で濃縮して、液体(5g)を得た。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、溶離液としてヘキサン)により精製して、油状物としてビニルクロリド15(1.53g、収率55%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.12 (s, 1H), 7.07 (s, 1H), 6.19 (s, 1H), 1.26 (S, 9H)。
あるいは、以下の手順に従って、16(式中、LG=OTs)は15から得られた。反応容器に15(1.31g、5mmol)およびTHF(30ml)を入れた。得られた溶液を周囲温度で10分間撹拌した後、水素化ナトリウム(400mg、10mmol、60%オイル分散液)を添加した。反応混合物を50℃に加熱して、この温度で6時間撹拌した。反応混合物を−5℃〜0℃へ冷却して、p−トルエンスルホン酸無水物(1.80g、5.5mmol)を添加した。反応混合物をこの温度で10分間撹拌した後、周囲温度に加温した。HPLCによりモニタリングする場合の完了まで、反応混合物を撹拌して、この時点で、反応混合物を、pH4の0.25Mリン酸緩衝液(100mL)および氷(100g)の強撹拌混合物へ移して、酢酸エチル(100mL)で抽出した。層を分離して、水層を酢酸エチル(50mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧で除去して、残渣を冷ヘキサン(50mL)で摩砕した。固体を濾過により収集して、熱を加えずに減圧オーブンで一晩乾燥させて、淡黄褐色固体として4−ブロモ−2−(1−クロロ−3,3−ジメチルブタ−1−エニル)チオフェン(1.40g、収率67%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.58 (d, 2H, J = 10.8), 7.21 (d, 2H, J =10.8), 6.91 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 5.50 (s, 1H), 2.43 (s, 3H) 1.26 (S, 9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、用いられ得る。例えば、塩化アセチル、炭酸ビス(トリクロロメチル)、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化亜鉛(II)またはスカンジウム(III)トリフレートなどの試薬、ジクロロエタン、酢酸エチル、ジクロロメタンまたはジメチルホルムアミドなどの溶媒、および約20〜約180℃の範囲の温度を用いてもよい。
iv.中間体9の調製:
以下の手順に従って、中間体9は16(式中、LG=Cl)から得られた。フラスコにビニルクロリド16(1.05g、3.76mmol)およびDMF(30ml)を入れて、−5℃〜0℃へ冷却して、カリウムtert−ブトキシド(422mg、3.76mmol)を添加した。反応を0℃で2時間撹拌した後、周囲温度へ加温して、1時間撹拌した。反応の進行は、完了に関してHPLCによりモニタリングした。完了しない場合、反応内容物を冷却して、新鮮なカリウムtert−ブトキシド(422mg、3.76mmol)を添加した。HPLCによりモニタリングする場合の反応完了まで、混合物を0℃で撹拌した。反応混合物を、pH4の0.25Mリン酸緩衝液(100mL)および氷(100g)の強撹拌混合物へ移して、酢酸エチル(100mL)で抽出して、分離して、水層を酢酸エチル(50mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(3×100mL)、ブライン(100mL)で洗浄して、次に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧で除去して、液体(2g)を得た。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、溶離液としてヘキサン)により精製して、透明な液体として9(710mg、収率78%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.00 (s, 1H), 6.96 (s, 1H), 1.26 (s, 9H)。
あるいは、以下の手順に従って、9は16(式中、LG=OTs)から得られた。フラスコに4−ブロモ−2−(1−クロロ−3,3−ジメチルブタ−1−エニル)チオフェン(831mg、2mmol)およびトルエン(30ml)を入れた。溶液が形成されるまで、得られた溶液を周囲温度で撹拌した。反応混合物を−5℃〜0℃へ冷却して、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1N溶液(4mL、4mmol)を滴下により添加した。反応混合物をこの温度で10分間撹拌して、周囲温度へ加温した。HPLCによりモニタリングする場合の完了まで、反応を撹拌して、この時点で、反応混合物を、pH4の0.25Mリン酸緩衝液(100mL)および氷(100g)の強撹拌混合物へ注いで、トルエン(100mL)で抽出した。層を分離して、水層をトルエン(50mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧で除去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、溶離液としてヘキサン)により精製して、透明な液体として9(240mg、49%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.00 (s, 1H), 6.96 (s, 1H), 1.26 (s, 9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、16を9へ変換するのに用いられ得る。例えば、ナトリウムアミド、インジウム(0)、亜鉛(0)、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、n−ブチルリチウム、ヘキサメチルジシラザン、炭酸セシウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、カリウムtert−ブトキシド、リチウムヘキサメチルジシラジド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウデンカ−7−エン、フッ化カリウム、アルミナ、酢酸セシウム、18−クラウン−6、重炭酸ナトリウム、重硫酸テトラブチルアンモニウム、ナトリウムメトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、または塩化テトラブチルアンモニウムなどの試薬、アンモニア、水、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、ジオキサン、トルエン、ベンゼン、アセトニトリル、キシレン、ジメチルスルホキシド、tert−ブタノール、エタノール、ジエチルエーテル、2−プロパノールまたはピリジンなどの溶媒、および約−70〜約138℃の範囲の温度を用いてもよい。
v.中間体15からの中間体9の調製:
また、以下の手順に従って、中間体9は15から直接得られる。フラスコにブロミド15(1.31g、5mmol)およびDMF(30ml)を入れた。得られた溶液を−5℃〜0℃の間へ冷却して、フッ化ペルフルオロブタン−1−スルホニル(1.35mL、7.5mmol)をシリンジで添加した。反応混合物をこの温度で10分間撹拌して、tert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホラン(3.85mL、12.5mmol)をシリンジで添加した。次に、反応を周囲温度へ加温して、HPLCによりモニタリングする場合の完了するまで撹拌して、分液漏斗に移して、酢酸エチル(100mL)で希釈した。溶液を水(100mL)で洗浄して、層を分離した。水層を酢酸エチル(50mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(3×100mL)およびブライン(100mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮して、油状物(3g)を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、溶離液としてヘキサン)により精製して、透明な油状物として9(1.03g、収率84%)を得た。
vi.中間体9の代替的な実施形態の調製:
ブロミドのほかに、9の相当する塩化物およびヨウ化物類縁体が調製されて、本明細書において記載される反応で使用されてもよい。例えば、14の塩化物類縁体は、塩素、N−クロロスクシンイミドまたは次亜塩素酸ナトリウムなどの適した塩素化試薬を使用して調製することができるのに対して、14のヨウ化物類縁体は、ヨウ素、ヨウ素酸またはN−ヨードスクシンイミドなどの適したヨウ素化試薬を使用して調製することができる。
vii.中間体16に関する代替的な実施形態としてのビニルブロミドまたはビニルヨージドの調製:
上記で示される中間体16中のLG基のほかに、16のビニルブロミドまたはビニルヨージド類縁体が調製されて、本明細書において記載される反応で使用されてもよい。例えば、ビニルブロミドは、三臭化リン、ジブロモトリフェニルホスフィンまたはジブロモトリフェニルホスファイトなどの適した試薬を使用して得ることができる。16のビニルヨージド類縁体は、相当するヒドラゾンから得られ得る。ヒドラゾンは、1,2−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−ヒドラジン、またはヒドラジン、カルバジン酸tert−ブチルなどの適した試薬を使用して調製することができる。次に、ヒドラゾンは、ヨウ素を使用してビニルヨージドに変換することができる。
viii.中間体16に関する代替的な実施形態としてのエノールスルホン酸エステル、リン酸エステルの調製:
上記で示される中間体16中のLG基に加えて、16のエノールスルホン酸エステルおよびリン酸エステル類縁体が調製されて、本明細書において記載される反応で使用されてもよい。例えば、16のエノールスルホン酸エステルおよびリン酸エステル類縁体は、適切な塩基、続くアシル化剤を使用して得られ得る。例えば、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、トリエチルアミンまたはカリウムtert−ブトキシドなどの塩基、およびトリフル酸無水物、N−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンアミド)、塩化メタンスルホニル、クロロリン酸ジエチルなどのアシル化剤を用いてもよい。
C.中間体13を得るためのディールス・アルダー、および鹸化:
以下の手順を使用して、中間体13が得られた。(S)−ジフェニルプロリノール(1.26kg、0.0625当量)およびトリ−o−トリルボロキシン(0.59kg、0.0213当量)およびトルエン(40L)を反応器に入れる。反応器内容物を10Lのおおよその容量にまで、大気圧力で濃縮する。反応混合物を0℃へ冷却して、確実に反応温度が10℃を超えないような速度で、無水DCM(7.3L)中のトリフルイミド(1.11kg、0.05当量)の溶液を入れる。確実に温度が10℃を超えないような速度で、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(12.2kg、1.0当量)を入れる。混合物を0℃へ冷却して、0℃の反応温度を維持しておよそ4時間かけて、イソプレン(8.05kg、2.0当量)を徐々に入れる。反応が完了したら、DCMの含有量が、中間体エステルに対して20%未満になるまで、反応混合物を濃縮する。テトラヒドロフラン(THF、69L)を入れて、溶液を40℃へ加熱する。水46L中の水酸化リチウム一水和物(LiOH・H
2O、4.0kg、1.2当量)の溶液を1時間かけて入れて、TLCにより決定される場合に鹸化反応が完了するまで撹拌する。NMRにより、20mol%未満のTHFが13に対して残存するまで、反応混合物を濃縮する。メチルtert−ブチルエーテル(MTBE、50L)を入れて、水(6.1L)で洗浄する。水層をMTBE(2×50L)で逆抽出する。合わせた有機物を廃棄して、5mol%未満のMTBEが13に対して残存するまで、生成物含有水相を濃縮する。水性混合物に、ヘプタン(46L)およびDCM(2.4L)を入れる。二相性混合物を4M HCl(31kg)で洗浄する。水層をn−ヘプタン(52L)で逆抽出して、合わせた有機物を0.1M HCl(15kg)および20%ブライン(38kg)で洗浄する。DCM/ヘプタン中の13の有機溶液に、モルホリン(6.9kg、1.05当量)を20℃で2時間かけて入れる。得られたスラリーを濾過して、フィルターケークをn−ヘプタン(36L)で洗浄する。固体を35℃で減圧下で乾燥させることにより、13が得られる(98.4%ee)。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.76 (s, 2H), 5.39−5.37 (m, 1H), 3.77−3.74 (m, 4H), 2.98−2.96 (m, 4H), 2.48−2.41 (m, 1H), 2.27−2.12 (m, 2H), 2.10−1.90 (m, 3H), 1.74−1.62 (m, 1H), 1.65 (s, 3H)。
同様に、他の実施形態によれば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウムまたはトリフル酸などの活性化剤とともに(S)−ジフェニルプロリノールおよびトリ−o−トリルボロキシンに由来するディールス・アルダー触媒を使用して、エナンチオ選択的ディールス・アルダー反応を実施することも可能である。ベンゼン、キシレンまたはテトラヒドロフランなどの代替的な溶媒、および約−45〜約45℃の範囲の温度も、用いられ得る。
さらに、鹸化反応に対する代替物が用いられてもよい。例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランまたはCH2Cl2の水性混合物などの任意の適した溶媒とともに使用され得る。許容可能な温度は、周囲温度から、使用される溶媒の還流温度までの範囲であり得る。
本開示は、別の実施形態では、中間体13に対する先述の手順に対する代替物を提供する。下記スキームは、この実施形態を示す:
i.中間体10を調製するための環化
以下の手順を使用して、10を得るための(S)−リンゴ酸の環化は実施した。反応器中で、トルエン(50L)中の(S)−リンゴ酸(10.0kg、1.0当量)の撹拌溶液に、メチルアミン(EtOH中で30重量%、11.3L、1.22当量)を添加した。混合物を還流するまで加熱して、EtOHを大気圧蒸留により除去した。蒸留を続けて、反応中に形成される水を共沸的に除去した。トルエン留出物を水から分離させて、反応に戻した。反応が完了したら、混合物を冷却して、最終容量14Lにまで、減圧下で濃縮した。酢酸エチル(40L)およびシリカゲル(10kg)を反応混合物に添加して、60℃で18時間撹拌した。混合物を濾過して、固体を酢酸エチル11Lで洗浄した。合わせた有機物を10Lにまで濃縮して、得られたスラリーを0℃で3時間、撹拌しながら熟成させた。混合物を濾過して、固体をn−ヘプタン(10L)で洗浄した。減圧下でオーブン中で固体を乾燥させた後、10を単離した(88%ee)。スペクトルデータは、市販の10と一致している。
上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、環化反応で用いられ得る。例えば、水中のメチルアミン溶液またはメチルアミンガスなどの代替的な試薬、塩化アセチルまたは無水酢酸などの脱水試薬、キシレン、テトラヒドロフランまたはジクロロメタンなどの代替的な溶媒、および約0〜約110℃の範囲の温度が、本開示において包含されるべきである。
ii.中間体12を調製するためのアシル化およびディールス・アルダー:
以下の手順を使用して、11を得るための10のアシル化、続くディールス・アルダー下でのイソプレンへのその曝露により12を得た。ジクロロメタン(DCM、38L)および10(4.81kg、1当量)を70Lの反応器に入れて、スラリーを−10〜−5℃へ冷却する。トリエチルアミン(5.28kg、1.4当量)を入れて、混合物が一旦均質になったら、確実に反応温度が−5℃を超えないような速度で、塩化アクリロイル(3.7kg、1.1当量)を反応器に入れる。反応が完了したら、反応を1N HCl(20kg)で洗浄して、混合物を周囲温度へ加温させる。有機物を5%NaHCO
3(24.3kg)および5%ブライン(23.8kg)で洗浄する。得られた有機相をNa
2SO
4(5.5kg)を用いて乾燥させて、固体を濾過して、フィルターケークをヘキサン(8L)で洗浄して、溶液中に11を得る。最終容量51Lを達成するように適切な量のDCM(12L)をこの溶液に入れる。この混合物を2つの反応器に均一に分割して、これらの反応器の内容物を−10℃へ冷却する。確実に温度が−9℃を超えないような速度で、TiCl
4(DCM中1M、4.4kg、0.24当量)を各反応器に入れる。各反応器においてイソプレン(7.25kg、5.8当量)を、得られたスラリーに入れる。反応が完了するまで、混合物を−10℃で撹拌する。固体Na
2CO
3・10H
2O(2.26kg)を各反応混合物に入れて、反応器の内容物を23℃へ加温する。2時間以上撹拌して、反応混合物を別個のフィルターにおいて濾過する。2つのフィルターケークをDCM(それぞれ2L)ですすいで、各濾過からの合わせた濾液およびすすぎ液を水(それぞれ20L)で洗浄する。各有機混合物をNa
2SO
4(それぞれ2.6kg)を用いて乾燥させて、固体を濾別する。フィルターケークを適切な量のDCMですすぐ。両方の12含有DCM溶液を油状物にまで、別個に濃縮する。各濃縮油状物を、別個のきれいな反応器に戻して、7倍容量のメチルtert−ブチルエーテル(MTBE、それぞれ30.8Lおよび29.5L)を入れて、混合物を55℃へ加熱する。各溶液に対して、以下の操作を別個に実施した:4倍容量のヘプタン(それぞれ、17.6Lおよび16.5L)を入れて、混合物を55℃に戻す。
1H−NMRにより溶媒比が確実に適切であるようにして、そうでなければ調節する。得られた微細スラリーおよび粘着性固体を55℃のままで濾過して、得られた濾液を濃縮する。得られた固体を45℃で5倍容量のイソプロパノール(IPA、それぞれ23Lおよび20L)中に溶解させて、3時間かけて−3〜15℃へ冷却して、スラリーを18時間熟成させる。得られたスラリーを濾過して、最少容量の冷IPAですすぐ。得られた固体を減圧下でオーブン中で40℃で乾燥させて、12を得る(96:4dr)。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 5.46 (dd, J = 8.7, 4.7Hz, 1H), 5.36 (s, 1H), 3.16 (dd, J = 18.3, 8.7Hz, 1H), 3.05 (s, 3H), 2.64 (dd, J = 18.3, 4.7Hz, 1H), 2.54−2.64 (m, 1H), 2.24 (br. s, 2H), 2.02 (br. s, 3H), 1.69−1.82 (m, 1H), 1.65 (s, 3H)。
上記で開示されているものに対する代替的な試薬および/または反応条件は、本開示において包含されるべきである。
アシル化ステップに関する許容可能な代替物としては、テトラヒドロフラン、クロロホルムまたはジメチルホルムアミドなどの溶媒、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミノピリジンまたはイミダゾールなどの塩基、および約−48〜約35℃の範囲の温度が挙げられる。
ディールス・アルダーステップに関する許容可能な代替物としては、Et2AlCl、三塩化アルミニウムTHF複合体、四塩化錫、TiCl2(OiPr)2、ならびにTiCl4と(R,R)−ヒドロベンゾインおよび/または(S,S)−ヒドロベンゾインとの複合体などの触媒、トルエン、メシチレンまたはキシレンなどの溶媒、ならびに約−48〜約35℃の範囲の温度が挙げられる。
iii.中間体13を調製するための鹸化:
以下の手順を使用して、13を得るための12の鹸化は実施した。テトラヒドロフラン(THF、34L)中の12(3.0kg、1.0当量)溶液を70Lの反応器に入れる。反応器に水(27L)および水酸化リチウム一水和物(2.51kg、5当量)を入れて、反応が完了するまで、二相性混合物を20〜27℃で撹拌する。完了した反応を濃縮して、THFを除去して、撹拌しながら、得られた水性混合物のpHを、5N HCl(40L)を添加することにより1〜2に調節する。酸性溶液をヘキサン:ジクロロメタンの98:2の混合物(25L)で抽出する。水層をヘキサン:ジクロロメタンの98:2の混合物(12.2L)で逆抽出して、合わせた有機物を硫酸ナトリウム(1.7kg)を用いて乾燥させる。固体を濾別して、フィルターケークをヘキサン:ジクロロメタンの1:1の混合物(10L)ですすぐ。合わせた有機物を乾固するまで濃縮して、得られた固体を減圧下でオーブン中で40℃で乾燥させ続けて、13を得る(90%ee)。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 5.46−5.31 (m, 1H), 2.48−2.60 (m, 1H), 2.15−2.33 (m, 2H), 2.11−1.92 (m, 3H), 1.82−1.62 (m, 1H), 1.66 (s, 3H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および反応条件もまた、用いられ得る。例えば、ある特定の代替的な実施形態では、上記鹸化反応は、塩化アセチルもしくは無水酢酸などの脱水試薬、キシレンおよびメタノールから選択される溶媒、ならびに/または約0〜約110℃の温度を用いることができる。
13を得るための上記方法に加えて、いくつかの実施形態では、13のエナンチオ純度は、キラル分割により増大させることができる。かかる方法は、当該技術分野で周知である。
II.5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン−2−カルボン酸(I)の合成:
A.式Iを得るためのN−アリール化、アシル化およびカルボキシル化:
i.5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル)アミノ]チオフェン(III)を調製するためのN−アリール化:
以下の手順を使用して、IIIを得るためのN−アリール化反応は実施した。125mLの反応容器に、Pd
2(dba)
3(57mg、0.3mol%)、t−Bu−BippyPhos(0.63g、7mol%)およびKOH(3.5g、3.0当量)を入れる。容器を不活性にさせて、t−アミルアルコール(40mL、8倍容量)、水(2mL、0.4倍容量)、6(9.1g、1.2当量)および9(5.0g、1.0当量)を入れる。容器を不活性にさせて、反応が完了するまで、反応器内容物を90℃へ加熱する。反応混合物を23℃へ冷却して、減圧下で混合物を濃縮して、褐色固体を得る。粗製固体をEtOAc中でのシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、黄褐色固体としてIIIを得る(アキラルHPLCにより、99.9:0.1のジアステレオマー比)。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 6.60 (d, J = 2.0Hz, 1H), 5.78 (d, J = 2 .0Hz, 1H), 4.16−4.10 (m, 1H), 3.88 (dd, J = 16.6, 7.9Hz, 1H), 3.84−3.76 (m, 3H), 3.25 (dd, J = 19.2, 8.7Hz, 2H), 3.09−2.98 (m, 1H), 2.01−1.95 (m, 2H), 1.94−1.90 (m, 2H), 1.77−1.74 (m, 2H), 1.59−1.44 (m, 2H), 1.42−1.31 (m, 2H), 1.29−1.27 (m, 9H)。
上記で開示されているN−アリール化試薬および反応条件に対する代替物は、本開示において包含されるべきである。
例えば、N−アリール化触媒は、塩化銅(I)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、チオフェン−2−カルボン酸銅(I)またはヨウ化銅(I)などの任意の適したパラジウム、白金または銅ベースの触媒であり得る。5−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1’,3’,5’−トリフェニル−1’H−[1,4’]ビピラゾール、2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)−1−フェニル−1H−ピロール、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(2−メトキシフェニル)−1H−ピロール、アセチルアセトン、アセチルシクロヘキサノン、イソブチリルシクロヘキサノン、N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、L−プロリン、BINAP、またはN,N−ジエチルサリチルアミドなどの任意の適したリガンドを用いてもよい。
いくつかの実施形態では、他の適した塩基が使用される。これらとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、tert−アミル酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム、三塩基性リン酸カリウム、ナトリウムtertブトキシド、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドが挙げられる。トルエン、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノンまたは2−メチル−THFなどの任意の適した溶媒を用いてもよい。反応を実行するのに適した温度は、約50〜約110℃の範囲である。
ii.5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン(IV)を得るためのアシル化:
以下の手順を使用して、IVを得るためのIIIのアシル化は実施した。磁気撹拌子および窒素入口を装備した15mLのフラスコに、13(557mg、1.5当量)、2−メチル−THF(5mL)およびDMF一滴(約2μL)を入れた。氷浴を使用して、反応混合物を4℃へ冷却した。反応混合物に、塩化オキサリル(0.32mL、1.4当量)を1分かけて滴下により添加した。反応混合物を30分かけて19℃へ加温して、19℃で3時間熟成させた。磁気撹拌子および窒素入口を装備した50mLのフラスコに、III(1.00g、1.0当量)、2−メチル−THF(5mL)およびジイソプロピルエチルアミン(1.38mL、3当量)を添加して、氷浴を使用して、内容物を7℃へ冷却した。IIIのスラリーに、塩酸の溶液を5分かけて滴下により添加した。反応混合物を30分かけて17℃へ加温して、3時間熟成させた。反応混合物は、10重量%クエン酸水(10mL)でクエンチして、相を分離した。有機相を水(10mL)で洗浄して、減圧下で濃縮した。残渣をイソプロパノール(25mL)中に溶解して、約5mLにまで濃縮した。溶液に、水(5mL)を10分かけて添加し、IVの種晶(5mg、0.5重量%)を添加した。スラリーを室温で16時間熟成させて、濾過した。フィルターケークを、1/1 iPA/水(6mL)ですすいで、減圧オーブン中で24時間乾燥させて、IVを得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 6.86 (d, J = 1.8Hz, 1H), 6.82 (d, J = 1.8Hz, 1H), 5.30−5.25 (m, 1H), 4.55−4.45 (m, 1H), 4.15−4.03 (m, 2H), 3.89−3.72 (m, 4H), 3.32−3.20 (m, 2H), 2.30−2.18 (m, 2H), 1.99−1.67 (m, 11H), 1.56−1.36 (m, 4H), 1.34−1.30 (m, 9H)。
上記で開示されているアシル化試薬および反応条件に対する代替物もまた、用いられ得る。
例えば、ハロゲン化試薬は、塩化オキサリル、塩化チオニル、オキシ塩化リン、ヘキサフルオロリン酸クロロトリピロリジノホスホニウム、トリエチルアミン、イミダゾールまたは1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンなどの任意の適したハロゲン化試薬であり得る。さらに、13のハロゲン化は、上述するようにin situで、またはIIIと反応する前に別個の容器で実施され得る。
2−メチル−THF、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルまたはジクロロメタンなどの任意の適した溶媒を用いることができ、温度は、約−45〜約100℃の範囲であり得る。
アシル化反応条件は、イミダゾール、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、または2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの任意の適した塩基を含み得る。
さらに、13によるIIIのアシル化は、標準的なペプチドカップリング条件下で実施することができ、これらの条件は、当該技術分野で周知である。例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール、エチル2−シアノ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテート、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、またはベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのカップリング試薬を使用して、IIIと接触する前に13を活性化することができる。
iii.5−(3,3−ジメチルブチン−1−イル)−3−[(シス−4−ヒドロキシ−4−{[(3S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ]メチル}シクロヘキシル){[(1R)−4−メチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル]カルボニル}アミノ]チオフェン−2−カルボン酸(I)を得るためのカルボキシル化:
以下の手順を使用して、Iを得るためのIVのカルボキシル化は実施した。50mLのフラスコ中に、IV(1.00g、1.0当量)およびTHF(10mL)を入れて、アセトン/氷浴を使用して、溶液を−11℃へ冷却した。溶液に、−3℃未満の内部温度を維持して10分かけて、n−BuLi(2.4mL、ヘキサン中の2.5M溶液、3当量)を添加した。反応混合物を、−12℃〜−10℃の間で1時間熟成させた。二酸化炭素(圧力調整器を装備したレクチャーボトル)を、針を通じて導入し、バブリングを10分間続けた。反応混合物を−10℃で1時間熟成させて、10重量%クエン酸水(10mL)でクエンチして、19℃へ加温した。層を分離して、有機溶液を酢酸イソプロピル(50mL)で希釈した。溶液を約5mLにまで、減圧下で濃縮した。次に、溶液にベンジルアミン(0.22mL、1当量)添加した。スラリーを30分間熟成させて、濾過した。フィルターケークをiPAc(10mL)ですすいだ。50mLのフラスコ中に、Iの湿ったケーク、iPAc(10mL)および10重量%クエン酸水(10mL)を添加した。すべての固体が溶解するまで、混合物を撹拌して、相を分離させた。有機相を水(10mL)で洗浄して、iPAc(50mL)で希釈した。溶液を約5mLにまで濃縮して、Iの種晶(5mg、0.5重量%)を添加した。スラリーにヘプタン(10mL)を2時間かけて添加して、スラリーを濾過した。フィルターケークを、2/1ヘプタン/iPAc(6mL)で洗浄して、減圧オーブン中で乾燥させた。注記:NMRタイムスケールに関する2つの回転異性体間のゆっくりとした相互変換により、NMRシグナルの2つの組が生じる。
1H NMR (400MHz, DMSO−d6) δ 13.48 (br. s., 1H), 7.21, s; 7.16, s, (1H), 5.28, m; 5.24, m, (1H); 4.32 (m, 1H); 4.06 (m, 1H); 3.99 (br. s, 1H); 3.70 (dd, J = 8.0, 15.2Hz, 1H); 3.65 (ddd J = 8.0, 15.2, 3.2Hz, 1H); 3.63 (m, 2H), 3.10 (dd, J = 9.6, 1.6Hz, 1H), 3.06 (d, J = 9.6Hz, 1H), 2.20, m; 2.09, m, (1H); 2.05, m; 1.90, m, (1H); 1.86 (m, 2H); 1.86, m; 1.82, m, (1H); 1.80, m; 1.76, m, (1H); 1.70, m; 1.64, m (1H); 1.68, m; 1.63, m (1H); 1.55, m; 1.38, m (1H); 1.54, m; 1.42, m (2H); 1.52 (s, 3H); 1.48, m; 1.16, m (2H); 1.46 (m, 2H); 1.42 (m, 2H); 1.30, s, 1.29, s (9H)。
しかしながら、上記で開示されているものに対する代替的な試薬および/または反応条件もまた、カルボキシル化反応に用いられ得る。例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジン、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、リチウムテトラメチルピペリジドまたはリチウムジイソプロピルアミドなどの他の許容可能な塩基を用いることができる。また、ジエチルエーテルまたはメチルtertブチルエーテルなどの代替的な溶媒が使用されてもよく、約−78〜約45℃の範囲の任意の適した温度が、上述の方法で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、キナアルカロイドを用いた結晶化によりさらに精製することができる。