以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における無線通信装置及び無線通信方法を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る第1の実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システムは、基地局装置100と、基地局装置100と無線パケット通信をするN個の端末局装置200(200−1〜200−N)とを備えている。基地局装置100と端末局装置200−1〜200−Nとは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance;搬送波検知多重アクセス/衝突回避)方式を用いて同一周波数チャネルを用いて無線パケット通信を行う。また、基地局装置100は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)とマルチユーザMIMO技術を用いた空間分割多元接続(SDMA)伝送とを用いて、複数の端末局装置200に対してデータを同時に送信する。
無線パケット通信において、送受信される無線パケットには、送信局、宛先局を示す識別子が含まれる。ここで、送信局は無線パケットを生成し送信した装置であり、宛先局は無線パケットの宛先となる装置である。基地局装置100は、例えば無線LANにおけるアクセスポイントなどである。端末局装置200−1〜200−Nはコンピュータや携帯型の情報電子機器などである。
図2は、第1の実施形態における基地局装置100の構成例を示すブロック図である。基地局装置100は、ネットワークインターフェース101、記憶部102、フレーム長算出部103、比較部104、送信信号生成部105、送信ウエイト算出部106、ウエイト乗算部107、送信部108−1〜108−N、アンテナ109−1〜109−N、受信部110−1〜110−N、及び、復調部111を備えている。
ネットワークインターフェース101は、外部のネットワークから受信したパケットに含まれるデータであって端末局装置200に送信すべきデータをデータ信号に変換する。ネットワークインターフェース101は、データ信号と当該データ信号の宛先局を示す宛先局情報とを送信信号生成部105に出力するとともに、宛先局を示す宛先局情報とデータ信号のデータ長とを記憶部102に記憶させる。また、ネットワークインターフェース101は、復調部111から入力されるデータ信号を、外部のネットワークにおいて用いられるパケットに変換して外部のネットワークに送信する。
記憶部102には、無線通信システムで利用可能な周波数リソース(複数のサブキャリア)と空間リソースとを各端末局装置200に割り当てる組み合わせごとに、当該組み合わせで各端末局装置200にデータ信号を送信するときに用いる変調方式と符号化率とサブキャリア数とが対応付けられた割当テーブルが予め記憶されている。また、記憶部102は、ネットワークインターフェース101から入力される宛先局情報とデータ長との組み合わせを記憶する。また、記憶部102は、復調部111から入力される伝搬チャネル情報を記憶する。
図3は、第1の実施形態における周波数リソースと空間リソースとの割り当てる際の概念を示す図である。同図に示すように、周波数リソース及び空間リソースそれぞれを端末局装置200に割り当てる際の単位ごとに分け、周波数リソースと空間リソースとの組み合わせそれぞれを端末局装置200に割り当てる。図3に示す例では、無線通信システムで利用可能な周波数リソースと空間リソースとをそれぞれを4つずつに分け、16個の周波数・空間リソースとして扱う。
図4は、第1の実施形態における周波数・空間リソースの端末局装置200に対する割り当ての組み合わせ例を示す図である。同図における例では、無線通信システムが4つの端末局装置200−1〜200−4を備える場合の割り当て例が示されている。図4(a)には、各端末局装置200−1〜200−4が周波数リソースを共有し、空間リソースを排他的に分けて利用する割り当ての例が示されている。図4(b)には、周波数リソースを端末局装置200−1と端末局装置200−3との間、及び端末局装置200−2と端末局装置200−4との間で共有し、空間リソースを端末局装置200−1と端末局装置200−2との間、及び端末局装置200−3と端末局装置200−4との間で共有するように割り当ての例が示されている。
また、図4(c)には、周波数リソースの半分を端末局装置200−1と端末局装置200−2との間で共有し、他の半分の周波数リソースを端末局装置200−3と端末局装置200−4とで排他的に分けて利用し、空間リソースの半分を端末局装置200−1、端末局装置200−3及び端末局装置200−4の間で共有し、他の半分の空間リソースを端末局装置200−2、端末局装置200−3及び端末局装置200−4の間で共有するように割り当ての例が示されている。図4(d)には、各端末局装置200−1〜200−4が空間リソースを共有し、周波数リソースを排他的に分けて利用する割り当ての例が示されている。ここでは一例を示したが、様々な割り当ての組み合わせが存在する。
図2に戻り、基地局装置100の構成の説明を続ける。フレーム長算出部103は、記憶部102に記憶されている割当テーブルに基づいて、宛先局の端末局装置200にデータ信号を送信する際の伝送速度を宛先局ごとに算出する。伝送速度Rnの算出は、例えば次式(1)を用いる。
式(1)において、nは端末局装置200を識別する番号であり(n=1,2,…,N)、Nsub,nはn番目の端末局装置200に割り当てるサブキャリア数である。Cnはn番目の端末局装置200の符号化率であり、Mnはn番目の端末局装置200の変調多値数である。Tsはデータ信号のOFDMシンボル長である。
フレーム長算出部103は、記憶部102に記憶されている宛先局情報とデータ長との組み合わせを読み出す。フレーム長算出部103は、読み出したn番目の端末局装置200に送信するデータ信号のデータ長と、算出した伝送速度Rnとに基づいて、データ・フレーム長Tframe,nを算出する。データ・フレーム長Tframe,nの算出は、例えば次式(2)を用いる。
式(2)において、Ldata,nはn番目の端末局装置200に送信するデータ信号のデータ長である。フレーム長算出部103は、上述の方法で、記憶部102に記憶されている周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとに、端末局装置200ごとのデータ・フレーム長を算出する。フレーム長算出部103は、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとの各端末局装置200のデータ・フレーム長を比較部104に出力する。
比較部104は、フレーム長算出部103から入力される周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長を比較し、最も短いフレーム長に対応する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを検出する。ここで、最も短いフレーム長は、各端末局装置200宛のデータを多重化したパケット(例えば図21)を生成した際に、生成したパケットのフレーム長において検出されるものである。比較部104は、検出した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを送信信号生成部105に出力する。
送信信号生成部105には、ネットワークインターフェース101からデータ信号と当該データ信号の宛先局を示す宛先局情報とが入力される。また、送信信号生成部105には、比較部104から周波数・空間リソース割り当ての組み合わせが入力される。送信信号生成部105は、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに基づいて、各端末局装置200に送信するデータ信号を周波数・空間領域に割り当てる。送信信号生成部105は、周波数・空間領域に割り当てたデータ信号を、無線パケット信号に変調する。送信信号生成部105は、変調により得られた無線パケット信号に、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを識別するための識別信号を加えてウエイト乗算部107に出力する。
送信ウエイト算出部106は、記憶部102に記憶されている伝搬チャネル情報を読み出し、伝搬チャネル情報に基づいて各端末局装置200に対する送信ウエイトを算出する。送信ウエイト算出部106は、算出した送信ウエイトをウエイト乗算部107に出力する。送信ウエイト算出部106が伝搬チャネル情報から送信ウエイトを算出する方法として、線形演算ではZF(Zero Forcing)法やMMSE(Minimum Mean Squared Error)法などがあり、非線形演算ではTHP(Tomlinson Harashima Precoding)法やVP(Vector Perturbation)法などがある。送信ウエイト算出部106では、上述の方法のいずれを用いても構わない。
ウエイト乗算部107は、送信信号生成部105から入力された送信パケット信号に、送信ウエイト算出部106から入力される送信ウエイトを乗算して送信信号を生成する。ウエイト乗算部107は、生成した送信信号を送信部108−1〜108−Nに出力する。
送信部108−1〜108−Nは、ウエイト乗算部107から入力される送信信号を、無線通信システムで規定されている周波数帯への変換や送信電力の調整などを行うことにより無線信号に変換する。送信部108−1〜108−Nは、変換により得られた無線信号をアンテナ109−1〜109−Nを介して送信する。
受信部110−1〜110−Nは、アンテナ109−1〜109−Nで受信した受信信号に対する周波数変換(ダウンコンバート)や受信電力の調整などを施して得られた信号を復調部111に出力する。復調部111は、受信部110−1〜110−Nから入力される信号の復調を行う。復調部111は、復調により得られたデータ信号をネットワークインターフェース101に出力し、復調により得られた伝搬チャネル情報を記憶部102に記憶させる。
図5は、第1の実施形態における端末局装置200の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、端末局装置200は、アンテナ201、受信部202、リソース割当判定部203、復調部204、ネットワークインターフェース205、伝搬チャネル情報取得部206、変調部207、及び、送信部208を備えている。
受信部202は、アンテナ201で受信した受信信号に対して、周波数変換(ダウンコンバート)や受信電力の調整などを行って得られた信号をリソース割当判定部203と復調部204とに出力する。
リソース割当判定部203は、受信部202から入力される信号に含まれている周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの識別信号を検出する。リソース割当判定部203は、検出した識別信号から自装置に対して割り当てられている周波数リソースと空間リソースとを取得する。リソース割当判定部203は、取得した自装置に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを復調部204に出力する。
復調部204は、受信部202から入力される信号に含まれるNDPを伝搬チャネル情報取得部206に出力する。また、復調部204は、リソース割当判定部203から入力される周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに基づいて、受信部202から入力される信号を復調する。復調部204は、復調して得られたデータ信号をネットワークインターフェース205に出力する。
ネットワークインターフェース205は、復調部204から入力されるデータ信号を外部のネットワークにおいて用いられるパケット形式に変換して外部のネットワークに送信する。また、ネットワークインターフェース205は、外部のネットワークから受信するパケットをデータ信号に変換して変調部207に出力する。
伝搬チャネル情報取得部206は、復調部から入力されるNDPに基づいて、自装置と基地局装置100との間の伝搬チャネルにおける伝搬チャネル情報を推定する。伝搬チャネル情報取得部206は、推定した伝搬チャネル情報を記憶するとともに、伝搬チャネル情報を変調部207に出力する。
変調部207は、ネットワークインターフェース205から入力されるデータ信号と、伝搬チャネル情報取得部206から入力される伝搬チャネル情報とを無線パケット信号に変調する。変調部207は、変調により得られた無線パケット信号を送信部208に出力する。
送信部208は、変調部207から入力される無線パケット信号に対して、無線通信システムで規定される周波数への変換(アップコンバート)や送信電力の調整などを行うことにより無線信号を生成する。送信部208は、生成した無線信号をアンテナ201から送信する。
図6は、第1の実施形態における無線通信システムにおける動作例を示すタイムチャートである。図6は、無線通信システムが2つの端末局装置200−1、200−2を備える場合の動作例を示している。他の無線局が通信を行っているかを確認するキャリアセンス(CS)と、ヌルデータパケットの送信を知らせるヌルデータパケットアナウンスメント(NDPA)と、ヌルデータで構成されるヌルデータパケット(NDP)と、NDPから推定された伝搬チャネル情報を通知するビームフォーミングレポート(BR)と、伝搬チャネル情報を要求するビームフォーミングレポートポール(BRP)と、端末局装置200−1及び端末局装置200−2に対するデータ(Data1及びData2)と、信号が正しく受信されたかを通知するブロックACK(BA)と、ブロックACKを要求するブロックACKリクエスト(BAR)との各フレームを用いた送受信が行われる。
基地局装置100において、端末局装置200−1及び端末局装置200−2に対して送信すべきパケットのデータ(送信対象データ)が発生したとする。これに応じて、基地局装置100は、ランダムな時間間隔によりCSを実行する。CSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯が使用されているビジー状態とのいずれであるかが判定される。
図6における時刻t1から時刻t2までの期間において実行したCSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置100が検出する。これに応じて、基地局装置100は、時刻t3から時刻t4までの期間においてNDPAを生成して送信する。また、基地局装置100は、時刻t5から時刻t6間での期間において伝搬チャネル推定用のNDPを生成して送信する。このとき、基地局装置100は、発生した送信対象データの宛先局である端末局装置200−1及び端末局装置200−2をNDPの宛先局として定める。
端末局装置200−1及び端末局装置200−2は、基地局装置100から送信されたNDPを受信し、NDPに基づいて自装置と基地局装置100との間の伝搬チャネル特性を測定する。端末局装置200−1及び端末局装置200−2は、測定した伝搬チャネル特性を量子化した伝搬チャネル情報を含むBRを生成する。時刻t7から時刻t8までの期間において端末局装置200−1は生成したBRを送信する。
時刻t9から時刻t10の期間において、基地局装置100は、端末局装置200−2に対してBRを要求するBRPを生成して送信する。時刻t11から時刻t12の期間において、端末局装置200−2は、基地局装置100からのBRPに応じて、生成したBRを送信する。
基地局装置100は、割当テーブルの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ及び端末局装置200−1、200−2に送信する送信対象データのデータ・フレーム長に基づいて、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとにフレーム長の算出を行う。基地局装置100は、算出したフレーム長のうち最も短いフレーム長に対応する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを選択する。基地局装置100は、選択した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに応じて、送信対象データ(Data1及びData2)を示すデータ信号を無線通信に適合したフレームに変換して無線パケット信号を生成する。また、基地局装置100は、端末局装置200−1及び端末局装置200−2から受信したBRを用いて送信ウエイトを算出する。
時刻t13から時刻t14までの期間において、基地局装置100は、算出した送信ウエイトを無線パケット信号に適用した送信信号を端末局装置200−1及び端末局装置200−2に向けて送信する。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t13から時刻t14の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが結合されたデータユニットとなる。
時刻t15から時刻t16までの期間において、基地局装置100が送信するデータの受信が時刻t14で終了したのに対応して、端末局装置200−1はBAを送信する。基地局装置100は、端末局装置200−1からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。具体的には、基地局装置100は、例えばBAの受信によりデータが正常に受信側で受信されたものと判断し、次のデータ送受信のための処理に遷移する。また、BAが受信されることなくタイムアウトした場合には、基地局装置100は、送信対象データを再送するなどの処理を実行する。
時刻t17から時刻t18までの期間において、基地局装置100は、端末局装置200−2に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t19から時刻t20までの期間において、端末局装置200−2は、基地局装置100から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置100は、端末局装置200−2からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
以上のように、第1の実施形態における無線通信システムでは、基地局装置100が複数の端末局装置200に対してデータ信号を送信する際に、データ信号を送信する対象の各端末局装置200に対して割り当てる周波数リソースと空間リソースとの組み合わせ(周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ)として、フレーム長が最も短くなる周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを選択する。基地局装置100は、選択した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを用いて、データ信号を各端末局装置200に送信することにより、フレームにおけるパディング信号の量を減らすことができ、伝送効率を改善することができる。
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システムは、基地局装置300と、基地局装置300と無線パケット通信をするN個の端末局装置200(200−1〜200−N)とを備えている。第2の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システムにおける基地局装置100を基地局装置300に代えた構成となっている。第2の実施形態における無線通信システムにおいても、基地局装置300は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)とマルチユーザMIMO技術を用いた空間分割多元接続(SDMA)伝送とを用いて、複数の端末局装置200に対してデータを同時に送信する。
第2の実施形態における基地局装置300では、送信すべきデータ信号が発生した際に当該データ信号を一回の送信で各端末局装置200へ送信せずに、データ信号の宛先局となる端末局装置200をブロックに分けてブロックごとに送信を行う。以下の説明において、集合体とは、端末局装置200が所属するブロックの全てを含む集合を意味する。
図8は、第2の実施形態において端末局装置200を分けるブロックの一例を示す図である。同図においては、無線通信システムが4つの端末局装置200−1〜200−4を備える場合のブロックの例が示されている。集合体例1は、4つの端末局装置200−1〜200−4を2つのブロックに分け、一方のブロックには端末局装置200−1、200−3が所属し、他方のブロックには端末局装置200−2、200−4が所属する集合体になっている。集合体例2は、4つの端末局装置200−1〜200−4を2つのブロックに分け、一方のブロックには端末局装置200−1、200−3、200−4が所属し、他方のブロックには端末局装置200−2が所属する集合体になっている。なお、図8では、複数の端末局装置200を2つのブロックに分ける例を示したが、1つのブロックに分けてもよいし、3つ以上のブロックに分けてもよい。
図9は、第2の実施形態における基地局装置300の構成例を示すブロック図である。基地局装置300は、ネットワークインターフェース101、記憶部121、フレーム長算出部122−1〜122−M、比較部123−1〜123−M、集合体選択部124、送信信号生成部125、送信ウエイト算出部106、ウエイト乗算部107、送信部108−1〜108−N、アンテナ109−1〜109−N、受信部110−1〜110−N、及び、復調部111を備えている。基地局装置300において、第1の実施形態における基地局装置100(図2)と同じ機能部に対しては同じ符号を付してその説明を省略する。
記憶部121には、無線通信システムで利用可能な周波数リソースと空間リソースとを各端末局装置200に割り当てる組み合わせごとに、当該組み合わせで各端末局装置200にデータ信号を送信するときに用いる変調方式と符号化率とサブキャリア数とが対応付けられた割当テーブルが予め記憶されている。また、記憶部121は、ネットワークインターフェース101から入力される、宛先局を示す宛先局情報及びデータ信号のデータ長を記憶する。記憶部121は、ネットワークインターフェース101から入力される集合体情報を記憶する。集合体情報は、データ信号の宛先局の端末局装置200をブロックに分ける際の複数の集合体の候補(以下、集合体候補という。)、すなわち宛先局の端末局装置200の異なる分け方を示す情報である。また、記憶部121は、復調部111から入力される伝搬チャネル情報を記憶する。
フレーム長算出部122−1〜122−Mは、記憶部121に記憶されている集合体情報が示す集合体候補におけるデータ・フレーム長、すなわち端末局装置200をブロックに分ける際の異なる分け方それぞれにおけるデータ・フレーム長を算出する。フレーム長算出部122−1〜122−Mは、対応する集合体候補に含まれるブロックごとにデータ・フレーム長を算出する。フレーム長算出部122−1〜122−Mは、ブロックに含まれる端末局装置200に対する周波数・空間リソースの割り当てごとに、記憶部121の割当テーブルに基づいて各端末局装置200の伝送速度を算出し、伝送速度とデータ長とからデータ・フレーム長を算出する。
このとき、伝送速度の算出とデータ・フレーム長との算出は、第1の実施形態におけるフレーム長算出部103と同様に式(1)及び式(2)を用いて行われる。また、同じブロックに含まれる端末局装置200のデータ信号は多重化して送信されるため、同じブロックに含まれる端末局装置200それぞれの式(2)で算出されるデータ・フレーム長のうち最も長いものに合わせてパディングが行われる。フレーム長算出部122−1〜122−Mは、それぞれが集合体候補のいずれかにおける各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長を算出して比較部123−1〜123−Mに出力する。
比較部123−1〜123−Mには、フレーム長算出部122−1〜122−Mから入力される各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長が入力される。比較部123−1〜123−Mは、各ブロックのフレーム長の総和が最も小さくなる各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを検出する。比較部123−1〜123−Mは、端末局装置200をブロックに分ける際の分け方(集合体候補)と、検出した各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせと、当該組み合わせにおけるフレーム長の総和とを含む組合情報を集合体選択部124に出力する。
例えば、図8に示した集合体例1と集合体例2とが集合体候補として記憶部121に記憶されている場合、フレーム長算出部122−1が集合体例1に含まれる1つ目のブロックに所属する端末局装置200−1及び端末局装置200−3に対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせにおけるフレーム長と、2つ目のブロックに所属する端末局装置200−2及び端末局装置200−4に対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせにおけるフレーム長とを算出する。また、フレーム長算出部122−2が集合体例2に含まれる1つ目のブロックに所属する端末局装置200−1、200−3、200−4に対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせにおけるフレーム長と、2つ目のブロックに所属する端末局装置200−2に対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせにおけるフレーム長とを算出する。
比較部123−1は、フレーム長算出部122−1が算出した1つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせのフレーム長と、2つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせのフレーム長との和のうち、和が最も小さくなる1つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせと2つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせとを検出する。同様に、比較部123−2は、フレーム長算出部122−2が算出した1つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせのフレーム長と、2つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての各組み合わせのフレーム長との和のうち、和が最も小さくなる1つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせと2つ目のブロックに対する周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせとを検出する。
集合体選択部124には、比較部123−1〜123−Mから集合体候補それぞれにおける組合情報が入力される。集合体選択部124は、入力される複数の組合情報のうち最もフレーム長の総和が短い組合情報を検出する。集合体選択部124は、検出した組合情報に含まれる端末局装置200をブロックに分ける際の分け方(集合体候補)と各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせとを示す情報を送信信号生成部125に出力する。
送信信号生成部125は、ネットワークインターフェース101からデータ信号と当該データ信号の宛先局を示す宛先局情報とが入力される。また、送信信号生成部125には、集合体選択部124から集合体候補と各ブロックの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせとを示す情報とが入力される。送信信号生成部125は、集合体候補におけるブロックごとに、当該ブロックにおける周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに応じて、各端末局装置200宛のデータ信号を周波数・空間領域に割り当て、無線パケット信号に変調する。
送信信号生成部125は、変調により得られた各ブロックの無線パケット信号に、ブロックにおける周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを識別するための識別信号を加えてウエイト乗算部107に出力する。ここで、集合体選択部124から入力される集合体候補に複数のブロックが含まれる場合、送信信号生成部125はブロック数分の無線パケット信号を生成することになる。ブロック数分の無線パケット信号それぞれは、異なるタイミングで当該無線パケット信号に含まれるデータ信号の宛先局に向けて送信されることになる。
図10は、第2の実施形態における無線通信システムにおける動作例を示すタイムチャートである。図10は、無線通信システムが4つの端末局装置200−1〜200−4を備える場合の動作例を示している。第2の実施形態の無線通信システムにおいても、CSと、NDPAと、NDPと、BRと、BRPと、端末局装置200−1〜200−4に対するデータ(Data1〜Data4)と、BAと、BARとの各フレームを用いた送受信が行われる。
基地局装置300において、端末局装置200−1〜200−4に対して送信すべきパケットのデータが発生したとする。これに応じて、基地局装置300は、ランダムな時間間隔によりCSを実行する。CSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯が使用されているビジー状態とのいずれであるかが判定される。
図10における時刻t1から時刻t2までの期間において実行したCSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置300が検出する。これに応じて、基地局装置300は、時刻t3から時刻t4までの期間においてNDPAを生成して送信する。また、基地局装置300は、時刻t5から時刻t6までの期間において伝搬チャネル推定用のNDPを生成して送信する。このとき、基地局装置300は、発生した送信対象データの宛先局である端末局装置200−1〜200−4をNDPの宛先局として定める。
端末局装置200−1〜200−4は、基地局装置300から送信されたNDPを受信し、NDPに基づいて自装置と基地局装置300との間の伝搬チャネル特性を測定する。端末局装置200−1〜200−4は、測定した伝搬チャネル特性を量子化した伝搬チャネル情報を含むBRを生成する。時刻t7から時刻t8までの期間において端末局装置200−1は生成したBRを送信する。
時刻t9から時刻t10までの期間において、基地局装置300は、端末局装置200−2に対してBRを要求するBRPを生成して送信する。時刻t11から時刻t12までの期間において、端末局装置200−2は、基地局装置300からのBRPに応じて、生成したBRを送信する。以降、同様に、基地局装置300は、端末局装置200−3と端末局装置200−4とにBRPを順に送信し、各BRに応じて端末局装置200−3と端末局装置200−4とからBRを受信する。
基地局装置300は、集合体候補ごとに、割当テーブルの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ及び端末局装置200−1〜200−4に送信する送信対象データのデータ長に基づいて、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとにフレーム長の算出を行う。基地局装置300は、算出したフレーム長のうち最も短いフレーム長に対応する集合体候補と当該集合体候補における周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを選択する。基地局装置100は、選択した集合体候補及び集合体候補における周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに応じて、送信対象データ(Data1〜Data4)を示すデータ信号を無線通信に適合したフレームに変換して無線パケット信号を生成する。図10に示す動作例では、端末局装置200−1〜200−4が2つのブロックに分けられ、一方のブロックに端末局装置200−1及び端末局装置200−3が所属し、他方のブロックに端末局装置200−2及び端末局装置200−4が所属する集合体候補が選択されている。また、基地局装置300は、端末局装置200−1〜200−4から受信したBRを用いて送信ウエイトを算出する。
時刻t21から時刻t22までの期間において、基地局装置300は、端末局装置200−1及び端末局装置200−3を宛先局とするデータ(Data1及びData3)を含む1つめのブロックの無線パケット信号に、算出した送信ウエイトを適用した送信信号を端末局装置200−1及び端末局装置200−3に向けて送信する。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t21から時刻t22の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが結合されたデータユニットとなる。
時刻t23から時刻t24までの期間において、基地局装置300が送信するデータの受信が時刻t22で終了したのに対応して、端末局装置200−1はBAを送信する。基地局装置300は、端末局装置200−1からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。ここで、所定の処理は、第1の実施形態において説明した基地局装置100が行う所定の処理と同じである。
時刻t25から時刻t26までの期間において、基地局装置300は、端末局装置200−3に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t27から時刻t28までの期間において、端末局装置200−3は、基地局装置300から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置100は、端末局装置200−3からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
基地局装置300は、データ信号の送信が行われていない他のブロックに所属する端末局装置200−2及び端末局装置200−4宛のデータ(Data2及びData4)を送信するために、ランダムな時間間隔によりCSを実行する。時刻t29から時刻t30までの期間において実行したCSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置300が検出する。
これに応じて、基地局装置300は、時刻t31から時刻t32までの期間において、基地局装置300は、端末局装置200−2及び端末局装置200−4を宛先局とするデータ(Data2及びData4)を含む1つめのブロックの無線パケット信号に、算出した送信ウエイトを適用した送信信号を端末局装置200−2及び端末局装置200−4に向けて送信する。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t31から時刻t32の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが結合されたデータユニットとなる。
時刻t33から時刻t34までの期間において、基地局装置300が送信するデータの受信が時刻t32で終了したのに対応して、端末局装置200−2はBAを送信する。基地局装置300は、端末局装置200−2からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた処理を実行する。
時刻t35から時刻t36までの期間において、基地局装置300は、端末局装置200−4に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t37から時刻t38までの期間において、端末局装置200−4は、基地局装置300から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置300は、端末局装置200−4からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
以上のように、第2の実施形態における無線通信システムでは、基地局装置300が複数の端末局装置200に対してデータ信号を送信する際に、データ信号を送信する対象の端末局装置200をブロックに分割してデータ信号を多重化した送信をブロックごとに分けて行う。この際に、ブロックへの分け方(集合体候補)と、データ信号を送信する対象の各端末局装置200に対して割り当てる周波数リソースと空間リソースとの組み合わせ(周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ)として、フレーム長が最も短くなる集合体候補と周波数・空間リソース割り当ての組み合わせとを選択する。基地局装置300は、選択した集合体候補と周波数・空間リソース割り当ての組み合わせとを用いて、データ信号を各端末局装置200に送信することにより、フレームにおけるパディング信号の量を減らすことができ、伝送効率を改善することができる。また、基地局装置300から各端末局装置200へのデータを一度に送信せずに複数回に分けて送信することにより、各端末局装置200へのデータ長の差によって必要となるパディング信号の量を減らすことができ、伝送効率を更に改善できる余地が高まる。
[第3の実施形態]
図11は、第3の実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システムは、2つの基地局装置400(400−1、400−2)と、基地局装置400−1と無線パケット通信をするN個の端末局装置210−1〜210−Nと、基地局装置400−2と無線パケット通信をするN個の端末局装置220−1〜220−Nとを備えている。なお、端末局装置210−1〜210−Nと端末局装置220−1〜220−Nとは、第1の実施形態における端末局装置200(図5)と同じ構成を有している。第3の実施形態における無線通信システムにおいても、基地局装置400は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)とマルチユーザMIMO技術を用いた空間分割多元接続(SDMA)伝送とを用いて、複数の端末局装置210、220に対してデータを同時に送信する。
図11では、無線通信システムが2つの基地局装置400を備える構成を示しているが、3つ以上の基地局装置400を備えてもよい。また、基地局装置400−1と通信する端末局装置210の数と、基地局装置400−2と通信する端末局装置220の数とが同じ構成を示しているが、異なっていてもよい。基地局装置400−1と端末局装置210−1〜210−Nとが通信に用いる周波数帯域と、基地局装置400−2と端末局装置220−1〜220−Nとが通信に用いる周波数帯とは同じ周波数帯である。基地局装置400−1は、他の基地局装置400−2と通信をする端末局装置220−1〜220−Nに対する干渉を抑制するために、端末局装置220−1〜220−Nにヌルを向けた送信を行う。また、基地局装置400−2は、他の基地局装置400−1と通信をする端末局装置210−1〜210−Nに対する干渉を抑制するために、端末局装置210−1〜210−Nにヌルを向けた送信を行う。
第3の実施形態における基地局装置400では、互いの無線信号が干渉信号となるような位置に配置されている他の基地局装置400との間において、それぞれの基地局装置400と通信をする端末局装置210、220に対する波数・空間リソース割り当ての組み合わせを決定することにより、各基地局装置400から送信される送信信号のフレーム長を短くして、パディング信号の量を削減して伝送効率を改善する。各基地局装置400は、互いに通信可能になっている。基地局装置400は、同期して信号の送信を行う。基地局装置400間の通信には、予め設けられた有線回線を用いてもよいし、基地局装置400と端末局装置210、220とが通信を行う周波数帯と同じもしくは異なる周波数帯を用いた無線回線を用いてもよい。
図12は、第3の実施形態における基地局装置400の構成例を示すブロック図である。基地局装置400は、ネットワークインターフェース101、記憶部102、フレーム長算出部131、比較部132、送信信号生成部105、送信ウエイト算出部133、ウエイト乗算部107、送信部108−1〜108−N、アンテナ109−1〜109−N、受信部110−1〜110−N、及び、復調部111を備えている。基地局装置400において、第1の実施形態における基地局装置100(図2)と同じ機能部に対しては同じ符号を付してその説明を省略する。
フレーム長算出部131は、第1の実施形態におけるフレーム長算出部103と同様に、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとの各端末局装置210又は各端末局装置220のデータ・フレーム長を算出して比較部132に出力する。また、フレーム長算出部131は、算出した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとの各端末局装置のデータ・フレーム長を他の基地局装置400に送信する。
比較部132には、自装置に備えられているフレーム長算出部103から周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長が入力される。また、比較部132は、他の基地局装置400に備えられているフレーム長算出部103から周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長を受信する。比較部132は、自装置及び他の基地局装置400がデータを送信する対象の端末局装置210、220に対して重複せずに周波数・空間リソースを割り当てる組み合わせにおいて、フレーム長が最も短くなる周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを検出する。周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを検出する際のフレーム長は、必要に応じてパディング信号が付加された後のフレームにおける長さである。
比較部132は、検出した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせのうち、自装置がデータを送信する対象の端末局装置210、220に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを送信信号生成部105に出力する。また、比較部132は、検出した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせのうち、他の基地局装置400がデータを送信する対象の端末局装置210、220に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを他の基地局装置400に送信する。なお、比較部132における周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの検出は、各基地局装置400で行ってもよいし、複数の基地局装置400のうちのいずれかで行い、他の基地局装置400は検出された周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを受信して送信信号生成部105に出力するようにしてもよい。
図13は、比較部132により選択された端末局装置210、220に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの一例を示す図である。同図における例では、基地局装置400−1が端末局装置210−1及び端末局装置210−2に対して送信するデータ信号を有しており、基地局装置400−2が端末局装置220−1及び端末局装置220−2に対して送信するデータ信号を有している場合である。図13(a)には、空間リソースを端末局装置210−1、210−2、220−1、220−2に排他的に割り当て、周波数リソースを各端末局装置で共有する割り当てる例が示されている。図13(b)には、空間リソースを端末局装置210−1、210−2と、端末局装置220−1、220−2とで排他的に分けて割り当て、周波数リソースを端末局装置210−1、220−1と、端末局装置210−2、端末局装置220−2とで排他的に分けて割り当てる例が示されている。
図12に戻り、基地局装置400の構成の説明を続ける。送信ウエイト算出部133は、記憶部102に記憶されている伝送チャネル情報を読み出し、伝搬チャネル情報に基づいて各端末局装置210(基地局装置400−2においては各端末局装置220)に対する送信ウエイトを算出する。なお、送信ウエイト算出部133が算出する送信ウエイトは、他の基地局装置400と通信を行う端末局装置220(基地局装置400−2においては各端末局装置210)への干渉を抑圧するためにヌルを向けた送信ウエイトであってSDMA伝送が可能な送信ウエイトである。送信ウエイト算出部133は、算出した送信ウエイトをウエイト乗算部107に出力する。送信ウエイト算出部133が送信ウエイトを算出する方法は、第1の実施形態の送信ウエイト算出部106と同様に、ZF法、MMSE法、THP法、VP法などのいずれを用いてもよい。
図14及び図15は、第3の実施形態における無線通信システムにおける動作例を示すタイムチャートである。図14及び図15は、無線通信システムが2つの基地局装置400−1、400−2と、基地局装置400−1と通信する端末局装置210−1、210−2、基地局装置400−2と通信する端末局装置220−1、220−2を備える場合の動作例を示している。第3の実施形態の無線通信システムにおいても、CSと、NDPAと、NDPと、BRと、BRPと、端末局装置210−1〜220−2に対するデータ(Data11、Data12、Data21、Data22)と、BAと、BARとの各フレームを用いた送受信が行われる。
基地局装置400−1において端末局装置210−1及び端末局装置210−2に対して送信すべきパケットのデータ(Data11、Data12)が発生し、基地局装置400−2において端末局装置220−1及び端末局装置220−2に対して送信すべきパケットのデータ(Data21、Data22)が発生したとする。これに応じて、基地局装置400−1は、ランダムな時間間隔によりCSを実行する。CSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯が使用されているビジー状態とのいずれであるかが判定される。
図14における時刻t1から時刻t2間での期間において実行したCSにより、通信周波数帯が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置400−1が検出する。これに応じて、基地局装置400−1は、時刻t3から時刻t4までの期間においてNDPAを生成して送信する。また、基地局装置400−1は、時刻t5から時刻t6までの期間において伝搬チャネル推定用のNDPを生成して送信する。このとき、基地局装置400−1は、自装置において発生した送信対象データの宛先局である端末局装置210−1及び端末局装置210−2と、他の基地局装置400−2において発生した送信対象データの宛先局である端末局装置220−1及び端末局装置220−2とをNDPの宛先局として定める。なお、基地局装置400−1は、基地局装置400−2との通信によって端末局装置220−1及び端末局装置220−2が基地局装置400−2の宛先局であることを取得する。
端末局装置210−1、210−2、220−1、220−2は、基地局装置400−1から送信されたNDPを受信し、NDPに基づいて自装置と基地局装置400−1との間の伝搬チャネル特性を測定する。各端末局装置は、測定した伝搬チャネル特性を量子化した伝搬チャネル情報を含むBRを生成する。時刻t7から時刻t8までの期間において、端末局装置210−1は生成したBRを送信する。
時刻t9から時刻t10までの期間において、基地局装置400−1は、端末局装置210−2に対してBRを要求するBRPを生成して送信する。時刻t11から時刻t12までの期間において、端末局装置210−2は、基地局装置400−1からのBRPに応じて、生成したBRを送信する。以降、同様に、基地局装置400−1は、端末局装置220−1と端末局装置220−2とにBRPを順に送信し、各BRに応じて端末局装置220−1と端末局装置220−2とからBRを受信する。
基地局装置400−1と各端末装置との間でのBRの送受信が終了すると、基地局装置400−2は、時刻t21から時刻t22までの期間においてNDPAを生成して送信する。また、基地局装置400−2は、時刻t23から時刻t24までの期間において伝搬チャネル推定用のNDPを生成して送信する。このとき、基地局装置400−2は、自装置において発生した送信対象データの宛先局である端末局装置220−1及び端末局装置220−2と、他の基地局装置400−1において発生した送信対象データの宛先局である端末局装置210−1及び端末局装置210−2とをNDPの宛先局として定める。なお、基地局装置400−2は、基地局装置400−1との通信によって端末局装置210−1及び端末局装置210−2が基地局装置400−1の宛先局であることを取得する。
端末局装置210−1、210−2、220−1、220−2は、基地局装置400−2から送信されたNDPを受信し、NDPに基づいて自装置と基地局装置400−2との間の伝搬チャネル特性を測定する。各端末局装置は、測定した伝搬チャネル特性を量子化した伝搬チャネル情報を含むBRを生成する。時刻t25から時刻t26までの期間において、端末局装置210−1は生成したBRを送信する。
時刻t27から時刻t28までの期間において、基地局装置400−2は、端末局装置210−2に対してBRを要求するBRPを生成して送信する。時刻t29から時刻t30までの期間において、端末局装置210−2は、基地局装置400−2からのBRPに応じて、生成したBRを送信する。以降、同様に、基地局装置400−2は、端末局装置220−1と端末局装置220−2とにBRPを順に送信し、各BRに応じて端末局装置220−1と端末局装置220−2とからBRを受信する。
基地局装置400−1は、割当テーブルの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ及び端末局装置210−1、210−2に送信する送信対象データのデータ長に基づいて、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとにデータ・フレーム長の算出を行う。また、基地局装置400−2は、割当テーブルの周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ及び端末局装置220−1、220−2に送信する送信対象データのデータ長に基づいて、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとにデータ・フレーム長の算出を行う。
基地局装置400−1は、自装置において算出した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長と、基地局装置400−2において算出された周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長とに基づいて、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとにフレーム長の算出を行う。基地局装置400−1は、算出したフレーム長のうち最も短いフレーム長に対応する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを選択する。基地局装置400−1は、選択した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせにおいて、端末局装置220−1、220−2に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを基地局装置400−2に送信する。基地局装置400−2も、基地局装置400−1と同様に、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの選択を行う。
基地局装置400−1は、選択した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに応じて、送信対象データ(Data11及びData12)を示すデータ信号を無線通信に適合したフレームに変換して無線パケット信号を生成する。また、基地局装置400−1は、各端末局装置から受信したBRを用いて送信ウエイトを算出する。
基地局装置400−2は、選択した周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに応じて、送信対象データ(Data21及びData22)を示すデータ信号を無線通信に適合したフレームに変換して無線パケット信号を生成する。また、基地局装置400−2は、各端末局装置から受信したBRを用いて送信ウエイトを算出する。
図15における時刻t39から時刻t41までの期間において、基地局装置400−1は、算出した送信ウエイトを無線パケット信号に適用した送信信号を端末局装置210−1及び端末局装置210−2に向けて送信する。基地局装置400−2は、基地局装置400−1に同期して、算出した送信ウエイトを無線パケット信号に適用した送信信号を端末局装置220−1及び端末局装置220−2に向けて送信する。なお、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t39から時刻t41の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが結合されたデータユニットとなる。
時刻t42から時刻t43までの期間において、各基地局装置400が送信するデータの受信が時刻t41で終了したのに対応して、端末局装置210−1はBAを基地局装置400−1宛に送信する。基地局装置400−1は、端末局装置210−1からのBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
時刻t44から時刻t45までの期間において、基地局装置400−1は、端末局装置210−2に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t46から時刻t47までの期間において、端末局装置210−2は、基地局装置400−1から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置400−1は、端末局装置210−2からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
時刻t48から時刻t49までの期間において、基地局装置400−2は、端末局装置220−1に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t50から時刻t51までの期間において、端末局装置220−1は、基地局装置400−2から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置400−2は、端末局装置220−1からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
時刻t52から時刻t53までの期間において、基地局装置400−2は、端末局装置220−2に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t54から時刻t55までの期間において、端末局装置220−2は、基地局装置400−2から受信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置400−2は、端末局装置220−2からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
以上のように、第3の実施形態における無線通信システムでは、基地局装置400が複数あり、各基地局装置400により形成される通信セル間で干渉が発生する状況であっても、基地局装置400が同期して送信を行う際に各端末局装置に対して割り当てる周波数リソースと空間リソースとの組み合わせ(周波数・空間リソース割り当ての組み合わせ)として、フレーム長が最も短くなる周波数・空間リソース割り当ての組み合わせを選択する。これにより、基地局装置400から各端末局装置へ送信するフレームにおけるパディング信号の量を減らすことができ、伝送効率を改善することができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態における無線通信システムは、第3の実施形態における無線通信システム(図11)が備える基地局装置400に代えて図16に示す基地局装置500を備える。すなわち、以下に説明する第4の実施形態における無線通信システムは、複数の基地局装置500と、複数の基地局装置500のいずれかと通信をする端末局装置200とを備える。また、第4の実施形態における基地局装置500も、他の実施形態における基地局装置と同様に、直交周波数分割多元接続(OFDMA)とマルチユーザMIMO技術を用いた空間分割多元接続(SDMA)伝送とを用いて、複数の端末局装置200に対してデータを同時に送信する。
図16は、第4の実施形態における基地局装置500の構成例を示すブロック図である。基地局装置500は、基地局装置500は、ネットワークインターフェース101、周波数リソース分割部141、記憶部102、フレーム長算出部142、比較部132、送信信号生成部105、送信ウエイト算出部133、ウエイト乗算部107、送信部108−1〜108−N、アンテナ109−1〜109−N、受信部110−1〜110−N、及び、復調部111を備えている。基地局装置400において、第3の実施形態における基地局装置400(図12)と同じ機能部に対しては同じ符号を付してその説明を省略する。
周波数リソース分割部141は、外部の装置や無線通信システムの管理者などにより予め設定された周波数リソースの割り当てが記憶されている。周波数リソース分割部141が記憶している周波数リソースの割り当ては、自装置が端末局装置200に対してデータを送信する際に用いることができる周波数リソースが示されている。周波数リソース分割部141に記憶されている周波数リソースの割り当ては、無線通信システムにおける複数の基地局装置500間において重複して割り当てられる周波数リソースがないように、排他的に割り当てられている。周波数リソース分割部141は、自装置に割り当てられている周波数リソースを示す情報をフレーム長算出部142に出力する。
図17は、第4の実施形態における周波数リソースの割り当てがされている場合の端末局装置210、220に対する周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの一例を示す図である。同図に示す例では、基地局装置500−1と基地局装置500−2とに周波数リソースが割り当てられた場合の周波数・空間リソース割り当ての組み合わせが示されている。第4の実施形態の基地局装置500では、周波数リソースを他の基地局装置500と排他的に分けて利用することになる。
図16に戻り、基地局装置500の構成の説明を続ける。フレーム長算出部142は、第1の実施形態におけるフレーム長算出部103と同様に、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとの各端末局装置200のデータ・フレーム長を算出して比較部132に出力する。ただし、フレーム長算出部142は、伝送速度を算出する際に、周波数リソース分割部141から入力される情報に含まれる周波数リソース以外の周波数リソースを含む周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに対しては伝送速度を算出せず、データ・フレーム長も算出しない。
第4の実施形態における無線通信システムにおける動作は、第3の実施形態における無線通信システムと同様であるので、その説明を省略する。
第4の実施形態における無線通信システムは、各基地局装置500において周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとのデータ・フレーム長の算出に要する演算量を削減することができ、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの選択を短時間で行いつつ、フレームにおけるパディング信号の量を減らして伝送効率を改善することができる。
[各実施形態における変形例]
上述した第1〜第4の実施形態における基地局装置がフレーム長を算出する際に、伝搬チャネル情報に含まれる推定誤差を考慮するようにしてもよい。推定誤差を考慮することによって、伝搬チャネル特性を推定する際に誤差が生じやすい環境においても、パディング信号の量を削減して伝送効率を改善することが可能になる。
具体的には、第1の実施形態におけるフレーム長算出部103、第2の実施形態におけるフレーム長算出部122−1〜122−M、第3の実施形態におけるフレーム長算出部131、及び、第4の実施形態におけるフレーム長算出部142が以下のようにフレーム長を算出する。各実施形態におけるフレーム長算出部は、記憶部に記憶されている割当テーブルにおけるサブキャリア数と伝搬チャネル特性の推定誤差とに起因する伝送速度劣化量を考慮し、調整した変調方式及び符号化率を用いて、宛先局の端末局装置200にデー信号を送信する際の伝送速度R’nを宛先局ごとに算出する。伝送速度R’nの算出は、例えば次式(3)を用いる。
式(3)において、nは、端末局装置200を識別する番号であり(n=1,2,…,N)、Nsub,nはn番目の端末局装置200に割り当てるサブキャリア数である。C’nはn番目の端末局装置200の調整後の符号化率であり、M’nはn番目の端末局装置200の調整後の変調多値数である。Tsはデータ信号のOFDMシンボル長である。
フレーム長算出部は、記憶部に記憶されている宛先局情報とデータ長との組み合わせを読み出す。フレーム長算出部は、読み出したn番目の端末局装置200に送信するデータ信号のデータ長と、算出した伝送速度R’nとに基づいて、データ・フレーム長T’frame,nを算出する。データ・フレーム長T’frame,nの算出は、例えば次式(4)を用いる。
式(4)において、Ldata,nはn番目の端末局装置200に送信するデータ信号のデータ長である。フレーム長算出部は、上述の方法で、記憶部に記憶されている周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとに、端末局装置ごとの推定誤差を考慮したデータ・フレーム長を算出する。フレーム長算出部は、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせごとの各端末局装置200のデータ・フレーム長を比較部に出力する。
ここで、調整後の符号化率とは、割当テーブルにおける周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせに対応付けられている符号化率を、伝搬路の影響を受けにくい符号化率に変更したものである。例えば、伝搬チャネル特性の推定誤差が予め定められた閾値以上の場合に、無線通信システムにおいて利用できる符号化率において、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに対応付けられている符号化率より一段階小さい符号化率が調整後の符号化率になる。
同様に、調整後の変調多値数は、割当テーブルにおける周波数・空間リソースの割り当ての組み合わせに対応付けられている変調方式を、伝搬路の影響を受けにくい変調方式に変更した際の変調多値数である。例えば、伝搬チャネル特性の推定誤差が予め定められた閾値以上の場合に、無線通信システムにおいて利用できる変調方式において、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに対応付けられている変調方式よりシンボルあたりのビット数が一段階小さい変調方式が調整後の符号化率になる。
なお、調整後の符号化率と変調多値数とに、周波数・空間リソース割り当ての組み合わせに対応付けられている符号化率と変調方式を一段階変更したものとする例を説明したが、推定誤差の大きさに応じて、二段階又は三段階変更した符号化率と変調方式を用いるようにしてもよい。また、伝搬チャネル特性の推定誤差は、公知の技術を用いて取得する。
このように、推定誤差を含めてデータ・フレーム長を算出することにより、伝搬チャネル特性の推定誤差によるデータ・フレーム長の精度の低下を抑えることができ、フレーム長が最も短くなる周波数・空間リソース割り当ての組み合わせの選択を精度よく行うことができる。その結果、伝送効率の改善を行うことができる。
なお、上述の各実施形態において、基地局装置は、無線リソースとして周波数リソースと空間リソースとを各端末局装置200に対して割り当てる構成を説明したが、周波数リソースと空間リソースとのいずれか一方のみを無線リソースとして各端末局装置200に対して割り当てる構成としてもよい。
上述した各実施形態における基地局装置をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。