JP6096407B2 - 葉菜類の栽培方法 - Google Patents

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Description

本発明は、葉菜類の栽培方法に関する。
育苗とは、人工的に環境制御された条件下において植物の苗を一定期間育成させる技術である。我が国では、苗半作と言われるように、育苗技術の重要性が認識されており、既に、キャベツやレタスなどの葉菜類の苗やトマトやキュウリなどの果菜類の苗を集約的に育苗するための閉鎖型植物生産システムが実用化されている(非特許文献1)。
ここで、高品質な苗の条件としては、徒長していないこと、葉が厚くて濃緑色であること、地上部に対する根の比率が大きいことが挙げられている(非特許文献2)。一般的な育苗施設においては、高品質な苗の条件を満たすために、植物育成用の白色蛍光灯を高密度に導入して十分な光量を確保するようにしている。
ところで、植物の生育は環境ストレスによって深刻な被害を受けることが知られている。例えば、高温ストレス条件(35℃)で栽培したトマトの個体乾燥重は最適な条件(25℃)で栽培した場合の68%となること(非特許文献3)、植物体が乾燥または塩分ストレスを受けると生育量が減少すること(非特許文献4)等が報告されている。
また、環境ストレスによる植物の生育量の減少は、活性酸素種の過剰生産が原因と考えられている(非特許文献5)。実際に、環境ストレス耐性植物はストレス条件に曝されると高いレベルの抗酸化活性を持つことが報告されている(非特許文献6、7)。
古在豊樹他、最新の苗生産実用技術−閉鎖型苗生産システムの実用化が始まった−、農業電化協会、2005 小田雅行、健苗の育成と苗の高付加価値化、植物の生長調節42(2)、176−182ページ、2007 Rivero, R.M., J.M. Ruiz and L. Romero. Can grafting in tomato plants strengthen resistance to thermal stress? J. Sci. Food Agric. 83:1315-1319. 2003. Alexieva, V., I. Sergiev, S. Mapelli and E. Karanov. The effect of drought and ultraviolet radiation on growth and stress markers in pea and wheat. Plant Cell Environ. 24:1337-1344. 2001. Moran, J.F., M. Becana, I. Iturbe-Ormaetxe, S. Frechilla, R.V. Klucas and P. Aparicio-Tejo. Drought induces oxidative stress in pea plants. 194:346-352. 1994. Kasuga, M., Q. Liu, S. Miura, K. Yamaguchi -Shinozaki and K. Shinozaki. Improving plant drought, salt, and freezing tolerance by gene transfer of a single stress-inducible transcription factor. Nat. Biotechnol. 17:287-291. 1999. Roxas, V.P., S.A. Lodhi, D.K. Garrett, J.R. Mahan and R.D. Allen. Stress tolerance in transgenic tobacco seedlings that overexpress glutathione S-transferase/glutathione peroxidase. Plant Cell Physiol. 41:1229-1234. 2000.
植物の苗は、育苗環境とは異なる環境に定植されて栽培されることから、環境ストレスに曝されやすく、このことにより安定した生育が阻害される虞がある。したがって、定植後の苗の安定した生育を考慮すると、苗の抗酸化活性を高めて環境ストレス耐性を高めることが望ましいと考えられる。
しかし、従来の育苗技術においては、上記の通り、徒長していないこと、葉が厚くて濃緑色であること、地上部に対する根の比率が大きいこと等、苗の草姿の良し悪しに重点を置いて育苗が行われており、苗自体の抗酸化活性を高めるための育苗技術については検討されていない状況であった。
そこで、本発明は、食用としてポピュラーな葉菜類について、その苗の抗酸化活性を高めることのできる育苗方法を利用し、環境ストレスの影響を受けにくい葉菜類の栽培方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者が鋭意検討を行った結果、サニーレタスの定植前の苗に波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光のみを照射して育苗する期間を設けることで、苗の抗酸化活性を高められることを知見した。そして、抗酸化活性が高められた苗は、白色蛍光灯のみの照射で育苗した通常の苗と比較して矮化していることも知見した。
本願発明者は、これらの知見に基づき、葉菜類全般の定植前の苗について、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光のみを照射して育苗する期間を設けて、苗の矮化を促すことによって、苗の抗酸化活性が高められる可能性が導かれることを知見するに至り、さらに種々検討を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の葉菜類の栽培方法は、葉菜類の定植前の苗を育苗対象とし、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光のみを照射して育苗する期間を設けることにより、苗の矮化を促す育苗方法により得られた苗を、前記育苗環境とは異なる環境に定植して栽培するようにしている。
ここで、本発明の栽培方法において、青色発光ダイオードから発せられる光、又は青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの双方から発せられる光を照明光とすることが好ましい。
また、本発明の栽培方法において、照明光の照射は、昼間の時間帯に実施すること、苗の下胚軸の伸長が実質的に完了した以降に実施すること、育苗終了時まで実施することが好ましい。
本発明の栽培方法における育苗方法においては、葉菜類全般の苗を広く対象として育苗することができるが、リーフレタスの苗を対象とすることが好ましく、サニーレタスの苗を対象とすることがさらに好ましい。
例えば、本発明では、Trolox当量で500nmolmg−1DW以上の抗酸化能を有するサニーレタスの矮化苗を提供することができる。
本発明の栽培方法における育苗方法によれば、葉菜類の苗の抗酸化活性を高めることができるので、葉菜類の苗に環境ストレス耐性を付与することが可能となる。葉菜類の苗への環境ストレス耐性の付与は、定植後の苗の環境ストレスによる生育への影響を抑えることに繋がる。したがって、定植後の苗の生育、特に初期生育を安定且つ良好なものとできると共に、葉菜類の収量の増加や収穫の早期化(栽培期間の短縮)を図ることが可能となる。
また、本発明の栽培方法における育苗方法によれば、葉菜類の苗を矮化させてコンパクトな草姿としつつも、根を十分に発達させることができるので、苗を定植し易いものとできる。また、苗を矮化させてコンパクトなものとすることで、機械移植に用いる移植機に苗が収容できなかったり、移植時に苗に植え傷みが生じたりすることを防ぐことが可能となり、機械移植に対応し易いものとできる。
本発の葉菜類の栽培方法によれば、上記育苗方法により得られる苗を定植するようにしているので、矮化しつつも根が十分発達した苗を定植に供することができ、定植し易い。また、苗が矮化しているので、機械移植に用いる移植機に苗が収容できなかったり、移植時に苗に植え傷みが生じたりすることを防ぐことが可能となり、機械移植に対応し易い。しかも、抗酸化活性が高められて環境ストレス耐性が付与された苗を栽培に供することができるので、環境ストレスによる生育への影響が抑えられ、定植後の苗の生育、特に初期生育を安定且つ良好なものとできると共に、葉菜類の収量の増加や収穫の早期化(栽培期間の短縮)を図ることが可能となる。
菜類の苗の育苗施設の一例を示す図である。 菜類の苗の育苗施設の他のを示す図である。 実施例1において使用した白色蛍光灯及び各種LEDのスペクトル分布である。 播種から定植4週間後までのスキームを示す図である。 播種17日後の苗の形態を示す写真である。 播種17日後と播種45日後のS/R比を示す図である。 播種17日後と播種45日後のSLAを示す図である。 苗を定植して28日後のサニーレタスの形態を示す写真である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後の総クロロフィル含量を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後のクロロフィルa/b比を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後のアントシアニン含量を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後のクロロゲン酸含量を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後の総フェノール含量を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後のカロテノイド含量を示す図である。 播種10日後と播種17日後と播種45日後のTASを示す図である。 育苗の際に照射する照明光の光合成有効放射束密度の違いによる苗の形態の差を示す写真である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の栽培方法における育苗方法は、葉菜類の定植前の苗を育苗対象とし、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光のみを照射して苗を育苗する期間を設けることにより、苗の矮化を促すようにしている。
本発明の栽培方法における育苗方法によれば、葉菜類の苗の抗酸化活性を高めることによって苗に環境ストレス耐性を付与することができる。したがって、定植後の苗の環境ストレスによる生育への影響を抑えて、定植後の苗の生育、特に初期生育を安定且つ良好なものとできると共に、葉菜類の収量の増加や収穫の早期化(栽培期間の短縮)を図ることが可能となる。さらには、苗の形態を矮化させながらも根は十分に発達したものとできるので、定植作業が容易となる利点に加えて、苗のコンパクトな草姿によって機械移植への対応性も良好なものとできる。
本発明の栽培方法における育苗方法は、葉菜類全般の苗に適用可能であり、葉菜類の苗の中でも特にキク科の葉菜類の苗への適用が効果的であり、キク科の葉菜類の苗の中でも特にレタス(リーフレタス、ヘッドレタス、立ちレタス、カッティングレタス、ステムレタス等)の苗への適用が効果的であり、レタスの苗の中でも特にリーフレタスの苗への適用が効果的であり、リーフレタスの苗の中でも特にサニーレタスの苗への適用が効果的である。
本発明の栽培方法における育苗方法は、例えば図1に示す育苗施設により実施される。図1に示す育苗施設1は、外部と隔離され、温度と湿度が適切に管理された空間4にて葉菜類の苗2を育苗する施設である。苗2は、例えばセルトレイ5に充填された培養土に種を播種することで発芽して生じたものである。苗2は、例えばセルトレイ5ごと棚7の格段に収容され、棚7の格段の上部に設置されている人工光源3から照射される照明光が苗2に一定期間照射されて育苗が行われ、苗2の矮化が促される。
人工光源3からは、昼間の時間帯に波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光が苗2に照射される。
波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光は、実質的に波長450nm〜500nmの青色光のみからなる照明光とすることが好ましいが、波長450nm〜500nmの青色光の照射による効果を阻害しない範囲で、他の光成分を含む照明光を使用するようにしてもよい。具体的には、波長450nm〜500nmの青色光に加えて、他の光成分を光合成有効放射束密度で50%以下、好適には40%以下、より好適には30%以下、さらに好適には20%以下、さらになお好適には10%以下の割合で含む照明光を用いるようにしてもよい。
このような照明光は、例えば発光ダイオードからなる人工光源を用いて照射することが好ましい。発光ダイオードは、発光波長帯域が狭く、本発明において効果的な波長450nm〜500nmの青色光を苗に対して選択的に照射し易い利点がある。具体的には、複数の青色発光ダイオードの集合群からなる人工光源により、実質的に波長450nm〜500nmの青色光のみからなる照明光とすることが好ましいが、複数の青色発光ダイオードの集合群と他の光成分を発光する複数の発光ダイオードの集合群、波長450nm〜500nmの青色光を含む白色光を発光する白色発光ダイオードの集合群、波長450nm〜500nmの青色光を含み且つ他の色の発光成分を含む発光ダイオードの集合群、又はこれらの発光ダイオードの組み合わせからなる人工光源により、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光を照射するようにしてもよい。但し、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光を照射するための人工光源は、発光ダイオードからなるものに限定されるものではなく、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光を発光可能な発光ダイオード以外の発光体からなる人工光源、例えば有機EL素子等からなる人工光源としてもよい。
尚、青色発光ダイオードを人工光源として利用する場合には、波長460〜480nm、好適には波長465〜475nm、より好適には波長470nm付近にピーク波長を有し、半値幅が15〜25nm、好適には20nm程度である青色発光ダイオードの使用が好適である。
また、青色発光ダイオードと併用される赤色発光ダイオードは、波長650〜670nm、好適には波長655〜665nm、より好適には波長660nm付近にピーク波長を有し、半値幅が15〜25nm、好適には20nm程度である赤色発光ダイオードとすることが好適である。
ここで、波長450nm〜500nmの青色光に加えて、他の光成分を含む照明光を使用する場合には、他の光成分を赤色光とすることが好ましい。この場合、苗の抗酸化活性のさらなる向上を図ることができる。但し、赤色光の単独照射は苗の徒長を促すことから、赤色光の割合が多すぎると、苗が徒長を起こす虞があるので、赤色光の割合は、苗が徒長を起こさない範囲、好適には赤色光を光合成有効放射束密度で50%程度とすることが好適である。
人工光源3からの照明光の強度、及び照明光の照射期間は、苗2の矮化が生じる範囲で適宜設定すればよい。但し、人工光源3からの照明光の強度を大きくし過ぎた状態で長期間照明光照射を実施すると、過剰の光エネルギーを植物体内で生成された抗酸化物質で処理しきれなくなり、苗の老化現象、例えば葉の緑色が薄くなる等といった減少が生じ得る。したがって、人工光源3からの照明光の総光エネルギー量は176molm−2未満、好適には20〜150molm−2、より好適には30〜110molm−2、さらに好適には35〜105molm−2となるように人工光源3からの照明光の強度、及び照明光の照射期間を設定することが好適である。具体的には、例えば、人工光源3からの照明光の強度を50〜500μmolm−2−1程度、好適には100〜400μmolm−2−1、より好適には100〜300μmolm−2−1に設定し、人工光源3からの照明光の照射期間を48〜240時間程度、好適には48〜168時間、より好適には72〜100時間に設定する。また、照射期間は、昼間の時間帯を設定して、例えば、1日のうち8〜16時間、好適には10〜16時間、より好適には12時間〜14時間を昼間の時間帯として(残りの時間帯を夜間の時間帯として)、昼間の時間帯に照射を行うようにしてもよいが、昼間の時間帯よりも長時間、さらには一日中照射しても構わない。
ここで、人工光源3からの波長450nm〜500nmの青色光を含む照射光は、苗の下胚軸の伸長が実質的に完了した以降に実施することが好適である。これにより、下胚軸の伸長の光質による影響を抑えて、葉菜類の苗に形態異常が生じるのを防ぐことができる。したがって、苗の下胚軸が伸長している段階、即ち育苗初期段階においては、太陽光または植物育成用の白色蛍光灯等からの光を照射することが好適である。但し、葉菜類の苗の形態異常が生じない範囲で、苗の下胚軸の伸長が実質的に完了する前から、人工光源3からの照明光の照射を実施しても構わない。尚、ここでいう「実質的に」の意味は、苗の下胚軸の伸長が完全に完了する日から2〜3日程度のずれは許容され得ることを意味している。この程度のずれであれば、人工光源3からの照明光の照射による苗の形態異常が生じる危険性は低い。尚、一般的には、播種から10日間程度で葉菜類の苗の下胚軸の伸長は実質的に完了するので、播種から10日目以降から人工光源3による照明光の照射を実施し始めることが好適であると言える。
したがって、育苗初期段階においては、太陽光併用型の育苗施設における太陽光照射や、完全人工光型の育苗施設における植物育成用の白色蛍光灯等からの光の照射によって、育苗を行うことが好ましい。そして、図1に示す育苗施設1に下胚軸の伸長が実質的に完了した苗を供して、育苗後期段階における育苗を実施することが好ましい。
ここで、育苗初期段階から育苗後期段階にかけて、照明光の光質以外は同一の環境にて育苗を実施することが好適である。そこで、育苗初期段階から育苗後期段階にかけて、照明光の光質以外は同一の環境にて育苗を実施することのできる育苗施設1’を図2に示す。図2に示す育苗施設1’は、図1に示す育苗施設1における人工光源3(以下、第一の人工光源3と呼ぶこともある)に加えて、植物育成用の白色蛍光灯からなる人工光源が第二の人工光源3’としてさらに備えられたものである。これにより、育苗初期段階には第二の人工光源3’からの照明光が苗に照射され、育苗段階後期には第一の人工光源3からの照明光が苗に照射される。
本実施形態において、第一の人工光源3は、棚7の2段目と4段目の上部にそれぞれ備えられ、第二の人工光源3’は、棚7の1段目と3段目の上部にそれぞれ備えられている。そして、棚7の1段目と3段目で育苗初期段階における第二の人工光源3’からの照明光の照射を行い、この育苗段階が経過した苗2を棚の2段目と4段目にそれぞれ移動して、棚の2段目と4段目で育苗後期段階における第一の人工光源3からの照明光の照射を行うようにしている。これにより、同一施設内における育苗初期段階から育苗後期段階にかけての育苗を可能としている。但し、第一の人工光源3と第二の人工光源3’を備える形態は、上記形態に限定されるものではなく、同一の棚内にて、第一の人工光源3からの照明光の照射と第二の人工光源3’からの照射光の照射を切り換え可能に備えるようにしてもよい。また、別途棚を備えて、これを第二の人工光源3’を備える棚としてもよい。
第二の人工光源3’から照射される照明光は、光合成有効放射束密度で50〜150μmolm−2−1とすることが好適であり、75〜125μmolm−2−1とすることがより好適であり、100μmolm−2−1とすることがさらに好適である。但し、苗2の育苗初期段階における生育が良好に進行するのであれば、光合成有効放射束密度の条件は上記条件に限定されるものではない。
ここで、第一の人工光源3からの照明光の照射を始めた後は、第一の人工光源3からの照明光の照射を育苗終了時まで実施することが好適である。また、第一の人工光源3からの照明光の照射は、連続して(1日中または1日のうちの設定した時間帯において)実施することが好適である。これらによって、苗2の内部にて生成した抗酸化物質の分解が抑制され、苗2の内部にて抗酸化物質が増加することにより上昇した抗酸化活性の低下を防ぐことができ、本発明の効果がより確実に奏される。具体的には、育苗終了10日前〜育苗終了時、好適には育苗終了7日前〜育苗終了時、育苗終了3日前〜育苗終了時、または育苗終了2日前〜育苗終了時のに第一の人工光源3からの照明光の照射を実施することが好適である。
本発明の栽培方法における育苗方法によれば、苗の抗酸化活性を高めることができる。より具体的には、植物育成用の白色蛍光灯を高密度に導入して十分な光量が確保された育苗施設にて育苗された苗と比較して、苗を矮化させつつ、苗の抗酸化活性を高めることができる。
抗酸化活性は、凍結乾燥した苗をメタノール等の抽出溶媒に浸漬して得られる抽出液をTAS(Total Antioxidant Status)キット(Randox Laboratories)による抗酸化能の計測に供することで、具体的な値として(Trolox当量として)得ることができる。
例えば、本発明の栽培方法における育苗方法により得られるサニーレタスの苗の抗酸化能は、Trolox当量で500nmolmg−1DW以上の値を示すことが確認されている。特に、人工光源3を青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの組み合わせ(PPDF比で1:1)の場合には、700nmolmg−1DW以上の極めて高い抗酸化能を示す。植物育成用の白色蛍光灯のみを用いてサニーレタスの苗の育苗を行った場合の苗は、抗酸化能が300nmolmg−1DW程度であることから、本発明の栽培方法における育苗方法によれば、従来と比較して苗の抗酸化能を飛躍的に向上させることができる。
本発明の栽培方法における育苗方法において、苗の抗酸化活性を向上させる要因の一つとして、抗酸化物質の含有量の向上によるものが挙げられる。即ち、本発明の栽培方法における育苗方法によれば、苗のアントシアニン含量、クロロゲン酸含量、総フェノール含量、カロテノイド含量を従来の苗よりも増加させることができ、このことが苗の抗酸化活性を向上させる要因の一つとして機能しているものと考えられる。
特に、フェノール含量と抗酸化活性との間には高い相関があることが、以下の文献等にて報告されており(Bahorun, T., A. Luximon-Ramma, A. Crozier and O.I. Aruoma. Total phenol, flavonoid, proanthocyanidin and vitamin C levels and antioxidant activities of Mauritian vegetables. J. Sci. Food Agric. 84:1553-1561. 2004.、Gardner, P.T., T.A.C. White, D.B. McPhail and G.G. Duthie. The relative contributions of vitamin C, carotenoids and phenolics to the antioxidant potential of fruit juices. Food Chem. 68:471-474. 2000.)、本発明の栽培方法における育苗方法より奏される苗の総フェノール含量の増加効果が、苗の抗酸化活性を向上させるために大きく寄与していることが考えられる。
また、カロテノイドはクロロフィルで励起された過剰な光エネルギーの散逸と活性酸素の除去という重要な役割を担っていると考えられている(Schagerl, M. and B. Muller. Acclimation of chlorophyll a and carotenoid levels to different irradiance in four freshwater cyanobacteria. J. Plant Physiol. 163:709-716. 2006.)。本発明の栽培方法における育苗方法より奏される苗のカロテノイド含量の増加効果は、苗の抗酸化活性の向上に加えて、定植後の葉菜類の光合成能力の改善に寄与しているものと考えられる。
また、本発明の栽培方法における育苗方法により得られる苗は、植物育成用の白色蛍光灯のみを用いてサニーレタスの苗の育苗を行った場合の苗によりも、クロロフィルa/b比が増加する。ここで、光合成の光化学系2はチラコイド上に浮かぶクロロフィルとタンパク質の複合体であり、光合成の電子伝達に直接関与する反応中心と集光を行うアンテナとに大別される。アンテナは集光性クロロフィル−タンパク質複合体(LHC2、Light harvesting chlorophyll-protein complex)と呼ばれている。コアに結合するクロロフィルがクロロフィルaであるのに対して、アンテナにはクロロフィルaとクロロフィルbの両方が結合することが知られている。本発明の栽培方法における育苗方法により得られる苗におけるクロロフィルa/b比の増加は、苗が光合成系2のアンテナを減少させて、強光ストレスに順化する環境応答を起こしたことに起因するものと考えられる。
さらに、本発明の栽培方法における育苗方法により得られる苗によれば、矮化したコンパクトな草姿であるものの、根は十分に発達したものとなる。したがって、定植時に土等に苗を固定しやすく、定植作業を容易なものとできる。また、矮化したコンパクトな草姿によって、機械移植に用いる移植機に苗が大きすぎて収容できなかったり、定植時に植え傷みが生じたりすることを防ぐことができる。したがって、機械移植に対して対応性の高いものとできる。
そして、本発明の栽培方法における育苗方法により得られる苗を定植して栽培に供することによって、上記定植時の作業容易性、機械移植対応性に加えて、苗自体の持つ抗酸化活性の高さによって、環境ストレス耐性が付与され、定植後の苗の環境ストレスによる生育への影響が抑えられる。したがって、定植後の苗の生育、特に初期生育を安定且つ良好なものとできる。そして、本発明の栽培方法における育苗方法により得られる苗を定植して栽培に供することによって、従来と同じ栽培期間を設けることで、葉菜類の収量の増加を図ることができる。また、従来と同程度の収穫量を、従来よりも短い栽培期間で得ることが可能となる。つまり、栽培期間の短縮を図ることも可能となる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、第一の人工光源3からの照明光の強度や照明光の種類(光質)は、本発明の効果が奏され得る範囲内で照射期間中に変動させても構わない。このことは、第二の人工光源3’についても同様である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
(実施例1)
サニーレタスの苗を対象として光質育苗試験を実施した。
(1−1)苗の準備
リーフレタスに分類されるサニーレタスの種子(品種:晩抽レッドファイヤー、タキイ種苗)を給水させた後、1日間の発芽処理を行い、ピートモス(種まき培土、タキイ種苗)とバーミキュライト(ブイエス科工)を2:1(v/v)の比率で混合した培養土を充填した200穴セルトレイ(16mL/セル)に播種した。苗を白色蛍光灯下(FLR110H−W1A、三菱オスラム)で光合成有効放射束密度(PPFD)100μmolm−2−1 、14時間日長、気温23±2℃、相対湿度40%の環境条件で育苗した。播種7日後(7DAS)に大塚ハウス肥料A処方(大塚化学)の1/2培養液(EC:1.2dS・m−2)を施与し、播種10日後の苗を光質育苗処理に供した。尚、「DAS」とは、Days after sowing(播種後日数)を意味している。
(1−2)光源
光質育苗時の光源には、青LED、赤LED、青赤LEDの照射装置(ISL−305X302、シーシーエス)、または白色蛍光灯(FL)を用いた。光源のスペクトル分布をファイバ入力型のマルチチャンネル分光器(USB2000、Ocean Optics)にて計測した結果を図3に示す。尚、青LED、赤LED、青赤LEDの光質は、具体的には以下の通りであった。
・青LED:中心波長468nm、半値幅21nm
・赤LED:中心波長660nm、半値幅22nm
・青赤LED:中心波長467nm+655nm、半値幅21nm+20nm
(1−3)光質育苗処理
播種から定植4週間後(45DAS)までのスキームを図4に示す。
育苗段階初期(本実施例では播種9日後程度まで)は、子葉が展開して下胚軸の伸長が起こる時期である。ここで、下胚軸の伸長は光質の影響を著しく受けてサニーレタスの苗に形質異常が生じる虞があること、また、子葉にはフェノール化合物の蓄積が少ないことから、光質育苗処理は、播種10日後(10DAS)から播種17日後(17DAS)までの育苗ステージ後期の7日間に実施した。
光質育苗時の光処理条件は、PPFD100μmolm−2−1 、14時間日長とした。また、育苗環境条件は、育苗段階初期と同様、気温23±2℃、相対湿度40%とした。
播種17日後(17DAS)に苗をプラスチックポットに定植し、気温25±2℃、12時間日長(主光源は太陽光とし、白色蛍光灯(PPFD100μmolm−2−1)で16−19時まで補光)に設定したガラスハウスに移し、定植4週間後(45DAS)まで栽培した。苗には、窒素を9.2mmolL−1、リンを2.6mmolL−1、カリウムを4.4mmolL−1、カルシウムを2.2mmolL−1、マグネシウムを0.8mmolL−1含む培養液を適宜施与した。
(1−4)生育調査
10、17および45DASに処理区ごとに5〜6個体ずつサンプリングし、葉数、葉面積、新鮮重(FW)、地上部および地下部の乾物重(DW)を調べた。また、地上部/地下部比(S/R比)および比葉面積(SLA)を求めた。
(1−5)成分分析
17および45DASに処理区ごとにサンプリングしたサニーレタスを凍結乾燥し、乳鉢で微粉砕して成分分析に供した。
クロロフィル(Chl)含量およびカロテノイド含量は、Lichtenthaler・Welburnの方法(Lichtenthaler H.K. and A.R. Welburn. Determinations of total carotenoids and chlorophyll a and b of leaf extracts in different solvents. Biochem. Soc. Trans. 11:591-593. 1983.)に従って求めた。
アントシアニン含量は、凍結乾燥微粉末から1%塩酸を含むメタノールでアントシアニンを抽出し、530nmの吸光度から求めた。
クロロゲン酸含量は、100%メタノール抽出液から、電力中央研究所報告V09030の方法に従い、以下の方法で求めた。AQUITY UPLCシステム(Waters)を用い、分析カラムはUPLC BEH C18カラム(φ1.7μm、2.1×50mm、Waters)を用いた。カラム温度を40℃に、流速を0.7mLmin−1に設定した。溶離液はA液(メタノール・水・ギ酸=35:213:2(体積比))とB液(メタノール:水=13:7(体積比))を使用し、0−1.5分をA液100体積%(B液0体積%)からB液50体積%(A液50体積%)へのリニアグラジエントとし、1.5−2.0分はB液50体積%(A液50体積%)に保ち、2.0−3.0分にB液50%(A液50体積%)からB液100体積%(A液0体積%)へのリニアグラジエントを行い、総分析時間を6分間とした。PDA(フォトダイオードアレイ)eλ検出器の分析波長を310nmとし、Empower2ソフトウェア(Waters)でポリフェノール類のピーク検出と標品分析による検量線作成を行ない、定量解析した。
総ポリフェノール含量は、Johkanらの方法(Johkan, M., G. Mori, K. Mitsukuri, K. Mishiba, T. Morikawa and M. Oda. In vivo shoot regeneration promoted by shading the cut surfaces of the stem in tomato plants. HortScience 43:1-4. 2008.)に従って行い、クロロゲン酸当量として求めた。
抗酸化能(Total Antioxidant Status:TAS)は、70%メタノール抽出液からTASキット(Randox Laboratories)で求め、Trolox(6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid)当量で算出した。
統計解析は、エクセル統計Ver.6.0ソフトウェア(エスミ)を用いて実施し、Tukey多重比較検定法により平均値の有意差を5%レベル(P<0.05))で判定した。以下に説明する図と表において、異なる文字間には有意差があると判定される。
(2−1)光質育苗が苗の生長に及ぼす影響
光質育苗処理後のサニーレタスの苗の形態について図5に示す。図5に示される結果から、光質によって形態が大きく変化することが確認された。具体的には、赤LEDで育苗した場合には葉が著しく伸長して徒長したが、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合には、白色蛍光灯で育苗した場合と比較して矮化していることが認められ、コンパクトな形態となっていることが確認された。
また、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合では、葉が赤褐色であったのに対し、赤LEDで育苗した場合には、葉が鮮緑色であった。
次に、光質育苗処理後(17DAS)の苗の葉数、葉面積、新鮮重及び乾物重を測定した結果を表1に示す。尚、表1には、光質育苗処理後、苗を定植して4週間栽培(45DAS)したサニーレタスの葉数、葉面積、新鮮重及び乾物重を測定した結果も示す。
葉数については、光質による差異は認められなかったが、葉面積、新鮮重及び乾物重は光質の影響を受けていることが確認された。具体的には、白色蛍光灯(FL)で育苗した場合と比較すると、葉面積は、赤LEDで育苗した場合に増加し、青LEDで育苗した場合に減少した。新鮮重は、赤LEDで育苗した場合に増加した。乾物重は、青赤LEDで育苗した場合に地上部と地下部が共に増加した。
S/R比(地上部と地下部の比率)を図6に示す(17DAS、左から順にFL、青、赤、青赤)。S/R比については、光質による変化は認められなかった。
SLAを図7に示す(17DAS、左から順にFL、青、赤、青赤)。SLAとは、Specific Leaf Areaの略であり、SLAが大きいほど薄い葉であることを示す。SLAは、白色蛍光灯で育苗した場合、及び赤色LEDで育苗した場合に高く、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合に低かった。
以上の結果から、育苗時における赤LEDの照射は苗の葉面積の拡大と新鮮重の増加に効果がある反面、苗を徒長させてしまうことが示された。これに対し、育苗時における青LED又は青赤LEDの照射は、苗を矮化させる作用が認められるものの、苗の徒長を抑制して根の乾物重を増加させる作用があることが明らかとなった。
(2−2)光質育苗が苗の定植後の収量に及ぼす影響
光質育苗処理後、苗を定植して4週間栽培したサニーレタスの形態について図8に示す。図8に示される結果から、光質育苗処理後に見られた光質による形態的特徴は変化し、白色蛍光灯で育苗したサニーレタスの葉と同様に、青LED、赤LED及び青赤LEDで育苗したサニーレタスの葉も鮮やかな緑色と赤褐色のバランスが良い正常な形態になっていた。
また、表1に示す結果(45DAS)から、葉数については、育苗の際の光質による差異は認められなかった。しかし、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合では、白色蛍光灯で育苗した場合、及び赤LEDで育苗した場合よりも、新鮮重と地上部乾物重が増加した。新鮮重は、白色蛍光灯で育苗した場合と赤LEDで育苗した場合、及び赤LEDで育苗した場合よりも、21%増加していた。地下部の乾物重は、白色蛍光灯で育苗した場合と比較して、青赤LEDで育苗した場合、及び赤LEDで育苗した場合も大きくなった。
S/R比を図6に示す(45DAS、左から順にFL、青、赤、青赤)。S/R比については、白色蛍光灯で育苗した用いた場合に最も大きくなった。
SLAを図7に示す(45DAS、左から順にFL、青、赤、青赤)。SLAについては、育苗の際の光質による差異は認められなかった。
以上の結果から、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを光質育苗すると、定植後の収量が増加することが明らかとなった。
(2−3)光質育苗が苗の光合成色素含量に及ぼす影響
葉の総クロロフィル含量を図9に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。異なる光質は苗の葉に含まれるクロロフィル(Chl)含量に部分的に影響を及ぼすことが確認された。具体的には、光質育苗前(10DAS)の総クロロフィル含量は9.0μgmg−1DWであったのに対し、17DASにおける苗の総クロロフィル含量は7.3〜8.6μgmg−1DWを示した。総クロロフィル含量は、赤LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合には、白色蛍光灯で育苗した場合よりも少なく、赤LEDで育苗した場合に最小(7.3μgmg−1DW)であった。
一方、45DASの総クロロフィル含量は全ての光処理間で6.4〜8.4μgmg−1DWの値を示したが、有意差は認められなかった。
以上のことから、総クロロフィル含量に関しては、光質育苗の影響はあまり大きくなく、部分的であることが示された。
次に、葉のクロロフィル(Chl)a/b比を図10に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASの葉におけるクロロフィルa/b比は、白色蛍光灯で育苗した場合と赤LEDで育苗した場合で3.4であり、光処理前(10DAS)と同じ値であった。これに対し、青LEDで育苗した場合と青赤LEDで育苗した場合では、クロロフィルa/b比は大きくなり、4以上であった。
一方、45DASにおけるクロロフィルa/b比は、青LEDで育苗した場合と青赤LEDで育苗した場合のいずれにおいても3.6まで減少し、白色蛍光灯で育苗した場合(3.7)、赤LEDで育苗した場合(3.5)と同レベルであった。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗のクロロフィルa/b比が大きくなることが示された。
(2−4)光質育苗が苗の抗酸化物質の蓄積に及ぼす影響
葉のアントシアニン含量を図11に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASの葉におけるアントシアニン含量は、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合、白色蛍光灯で育苗した場合と比較して顕著に増加し、青赤LEDで育苗した場合に最大値を示した。一方、赤LEDで育苗した場合における葉のアントシアニン含量は、白色蛍光灯で育苗した場合よりも小さく、最小値を示した。
45DASの葉におけるアントシアニン含量は、光質処理区間で有意差は認められなかった。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗のアントシアニンの蓄積が顕著に促進されることが示された。
クロロゲン酸含量を図12に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASのクロロゲン酸含量は、赤LEDで育苗した場合を除き、光質育苗前(10DAS)よりも増加した。青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合のクロロゲン酸含量(14.7nmolmg−1DW以上)は、白色蛍光灯で育苗した場合(6.2nmolmg−1DW)、及び赤LEDで育苗した場合(1.9nmolmg−1DW)よりも高かった。
45DASのクロロゲン酸含量は、17DASのクロロゲン酸含量と比較すると、赤LEDで育苗した場合にのみ増加していた。光処理区間における有意差は認められなかった。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗のクロロゲン酸の蓄積が顕著に促進されることが示された。
葉の総フェノール含量を図13に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASの葉の総フェノール含量は、赤LEDで育苗した場合を除いて、10DASよりも増加していた。青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合における総フェノール含量(118.7nmolmg−1DW以上)は、白色蛍光灯で育苗した場合(75.7nmolmg−1DW)、及び赤LEDで育苗した場合(47.0nmolmg−1DW)よりも顕著に増加した。
45DASの総フェノール含量は、全ての光処理区間において120nmolmg−1DWと高い値を示したが、それぞれに有意差は認められなかった。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗のフェノール化合物の蓄積が顕著に促進されることが示された。
カロテノイド含量を図14に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASのカロテノイド含量は、白色蛍光灯で育苗した場合(263μgmg−1DW)と比較すると、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合に増加し(287μgmg−1DW)、赤LEDで育苗した場合には減少した(231μgmg−1DW)。
45DASのカロテノイド含量は全光処理区間で220〜276μgmg−1DWの値を示したが、有意差は認められなかった。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗のカロテノイドの蓄積が促進されることが示された。
抗酸化活性(TAS)を図15に示す(10DASはFL、17DASと45DASは左から順にFL、青、赤、青赤)。17DASの抗酸化活性は、白色蛍光灯で育苗した場合、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合では、光処理前(10DAS)よりも高かったが、赤LEDで育苗した場合には光処理前よりも低かった。また、17DASの抗酸化活性は、青LEDで育苗した場合、及び青赤LEDで育苗した場合(547nmolmg−1DW以上)には、白色蛍光灯で育苗した場合(332nmolmg−1DW)と比較して顕著に高かったのに対し、45DASでは白色蛍光灯で育苗した場合と同じレベルまで減少した。逆に、赤LEDで育苗した場合における17DASの抗酸化活性は、白色蛍光灯で育苗した場合よりも顕著に低かったが、45DASにおいては、他の光処理区と同レベルに上昇した。
以上のことから、青LED又は青赤LEDを用いてサニーレタスを7日間光質育苗すると、苗の抗酸化活性が高められることが示された。また、青LED及び青赤LEDの光合成有効放射束密度を100μmolm−2−1 として、昼間の時間帯(14時間)に7日間光質育苗することで、苗の矮化と抗酸化活性の向上効果が認められたことから、青LED又は青赤LEDを用いて、苗に対して照射される総光エネルギー量が35molm−2程度となるように青LED又は青赤LEDの光強度と光照射期間を設定することで、本発明の効果が奏され得るものと考えられた。
(実施例2)
実施例1と同じ青LEDを用い、光合成有効放射束密度を300μmolm−2−1 と500μmolm−2−1 に変更して、実施例1と同様の光質育苗処理を実施した。光質育苗処理後のサニーレタスの苗の形態を図16に示す。
光合成有効放射束密度を300μmolm−2−1 とすることで、光合成有効放射束密度を100μmolm−2−1 とした場合よりもさらに矮化が促進され、且つ葉色がさらに赤味を帯び、抗酸化物質であるアントシアニンの蓄積も促されることが明らかとなった。ところが、光合成有効放射束密度を500μmolm−2−1 とすると、矮化は促進されるものの、葉の緑色が薄くなる老化現象が見られた。このことから、照射される光エネルギーが過剰になると、植物体内で生成された抗酸化物質で処理しきれなくなり、老化現象が導かれ得ると考えられた。したがって、光エネルギーの総量は、176molm−2未満とすることが好ましいことが明らかとなった。また、特に35〜105molm−2となるように人工光源3からの照明光の強度、及び照明光の照射期間を設定することで、本発明の効果がより確実に奏され得ることも明らかとなった。
尚、光合成有効放射束密度を100μmolm−2−1 として、照射期間を1日中連続(24時間)で7日間とした場合には、光エネルギーの総量が60molm−2となることから、この場合には、照射期間を昼間の時間帯(14時間)で7日間とした場合よりも、矮化が促進され、且つ抗酸化活性も高まるものと考えられる。
1,1’ 育苗施設
2 苗
3 (第一の)人工光源
3’ 第二の人工光源

Claims (7)

  1. 葉菜類の定植前の苗を育苗対象とし、波長450nm〜500nmの青色光を主成分とする照明光のみを照射して育苗する期間を設けることにより、前記苗の矮化を促す育苗方法により得られた苗を、前記育苗環境とは異なる環境に定植して栽培することを特徴とする葉菜類の栽培方法。
  2. 前記育苗方法において、青色発光ダイオードから発せられる光、又は青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの双方から発せられる光を前記照明光とする請求項1に記載の栽培方法。
  3. 前記育苗方法において、前記照明光の照射は、昼間の時間帯に実施する請求項1又は2に記載の栽培方法。
  4. 前記育苗方法において、前記照明光の照射は、前記苗の下胚軸の伸長が実質的に完了した以降に実施する請求項1〜3のいずれか1項に記載の栽培方法。
  5. 前記育苗方法において、前記照明光の照射は、育苗終了時まで実施する請求項4に記載の栽培方法。
  6. 前記葉菜類はリーフレタスである請求項1〜5のいずれか1項に記載の栽培方法。
  7. 前記リーフレタスはサニーレタスである請求項6に記載の栽培方法。
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