JP6086131B2 - 有機電子デバイス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
有機EL素子の素子構造は、陰極/発光層/陽極から構成される。有機EL素子においては、高い発光効率を得るために、発光中心となる発光材料に電荷(正孔、電子)を効率的かつ速やかに供給することが必要であるが、陽極あるいは陰極と発光層などの有機機能層との間にはエネルギー障壁が大きく、電荷を容易に注入できない。そのため、従来は、電荷輸送材料を発光層中に含有させたり、陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けたり、陰極と発光層との間に電子輸送層を設けたり、陽極あるいは陰極の仕事関数を最適化することで電極と有機機能層とのエネルギー障壁を小さくすることが行われている。したがって、発光層を含む有機機能層は、初期の有機EL素子においては発光層と正孔注入層とからなる2層構造、又は、電子輸送層と発光層と正孔輸送層とからなる3層構造が一般的であった。
これら電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの発光層以外の層には、電荷を発光層へ注入・輸送しやすくする効果、あるいはブロックすることにより電子電流と正孔電流のバランスを保持する効果や、光エネルギー励起子の拡散を抑制するなどの効果があるといわれている。
有機太陽電池は、最も基本的な構成は有機EL素子と同様の2層構造の有機薄膜を電極で挟んだ構造である。光をその有機薄膜に吸収させることによって生じる光電流を利用し、起電力を得ることができる。このとき流れる電流は、光によって生じたキャリアが有機材料のキャリア移動度を利用して流れるものと考えてよい。有機材料と電極との電荷注入障壁が低減すれば、より効率的に起電力を得ることができる。いわば、有機EL素子と逆の機構を利用するものである。
と有機半導体膜の界面の電荷量を制御し、ソース電極及びドレイン電極間の電流値を変化させてスイッチングを行なう。
しかし、この有機トランジスタで使われる有機半導体材料を用いた場合には、ソース電極又はドレイン電極との電荷注入障壁が大きく、素子駆動に問題があった。また、有機半導体層とソース電極又はドレイン電極との電荷注入障壁を低減すれば、有機トランジスタのオン電流値が向上し、かつ素子特性が安定化することが期待される。
有機電子デバイスの製造方法として溶媒を用いて又は用いないで基材に塗布する塗布法は、真空蒸着法などの蒸着法に比べて大掛かりな蒸着装置が不要で、作製プロセス工程の簡便化が期待でき、材料の利用効率も高く、コストが安価で、基材の大面積化が可能というメリットがある。また、例えば有機EL素子におけるRGBなど、材料を並列に塗り分けることも容易に行えるというメリットがあることから、塗布法により有機電子デバイスを形成することの意味は大きい。
の低分子化合物(NPD)との共蒸着により混合膜を形成(特許文献5、6)して正孔注入層としたもの、さらには、三酸化モリブデンを粉砕して作成した微粒子を溶液に分散させてスラリーを作製し、塗工して正孔注入層を形成(特許文献7)したものなどが挙げられる。
このように金属酸化物の蒸着膜を正孔注入層に適用すると比較的長寿命な有機EL素子などの有機電子デバイスを作製できるが、寿命特性は十分ではなく更なる改善の必要があった。
特許文献7に塗布法で20nm程度のモリブデンの微粒子を作製して正孔注入層に適用したとの記述はあるが、MoO3粉末を粉砕する方法だと、例えば10nm以下の長さス
ケールで径のそろった微粒子を作製することは、実際的には困難であり、その微粒子を凝集させることなく溶液中に安定的に分散させることはさらに困難である。微粒子の溶液化が不安定であると、塗布膜作製の際に凹凸の大きな平滑性が悪い膜しか形成できず、デバイスの短絡の原因となる。
の、溶媒に不溶であり塗布法を用いることができないという課題があった。蒸着法でしか薄膜形成できないと、発光層をインクジェット法などの塗布法で塗り分けて形成しても、結局、塗布法の利点を活かすことができないという問題があった。すなわち、親液性となるMoO3によって各発光層の間の隔壁(バンク)の撥液性を損なわないために、MoO3を含有する正孔注入層あるいは正孔輸送層を高精細マスクを用いて蒸着する必要があり、結局コストや歩留まりの点から、塗布法の利点を活かすことができなかった。
の安定な価数をもち、かつ酸化化合物に限定される。これらMoO3は特にMoO3の揮発性を利用して真空プロセスでのみ使用が可能であり、適用の範囲が限られる。価数の小さなモリブデン酸化物やモリブデン金属は、一般的に空気中で容易に酸化されやすく、取り扱いが困難なため有機電子デバイスの構成材料としてほとんど適用されていなかった。
この有機電子デバイス素子構造を製造する方法は、MoO3が水や溶媒に不溶であるた
め蒸着法に限られるが、蒸着法はシャドウマスクが必要で高コストであるため、塗布法のような安価に形成する方法が望まれていた。
製膜性や薄膜の安定性は素子の寿命特性と大きく関係する。一般的に有機EL素子の寿命とは、一定電流駆動などで連続駆動させたときの輝度半減時間とし、輝度半減時間が長い素子ほど長寿命である。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来にない正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する正孔注入・輸送材料として優れた材料を提供するとともに、塗布法により正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成することが可能で製造プロセスが容易でありながら、長寿命を達成可能な有機電子デバイスを提供することを目的とする。
このモリブデンなどの金属酸化物クラスターは化学的に合成されたポリオキソメタレートからなる巨大クラスター分子であるため、大きさと重量は分子量で規定され、一つ一つのクラスター分子の大きさや形状は同じである。また、電気的性質はアニオンで、どのクラスターも等価という特徴がある。例えば、今回実施例で使用したNa1[MoVI 126MoV 28O462H14(H2O)70]0.5[MoVI 124MoV 28O457H14(H2O)68]0.5・400H2Oクラスター(Mo154)の
場合には、分子はドーナツ形状をしていて個数平均粒子径の直径は約4nmである。さらに、このモリブデン酸化物クラスターは1つ1つの分子が6価(MoVI)と5価のモリブデン(MoV)が分子内に共存する混合原子価ポリオキソメタレートである。
しかし、モリブデンは4価や5価よりも6価がより安定な価数であり、不安定な5価が6価に変化してそのバランスが崩れると、有機電子デバイスの正孔輸送性や正孔注入性が変化し、駆動安定性が劣化して寿命特性に悪影響を及ぼすと考えられる。
したがって、長寿命化の目的のためには価数の異なる原子を5価と6価を安定的に共存させることが重要であり、正孔注入材料としては基本的に価数の異なるものが安定的に存在することができる金属元素が優れているという予測の上で、このような原子価の価数の異なる金属元素が共存する金属酸化物に着目し、特に、モリブデンを含有するアニオン性の金属酸化物クラスターにおいて、この異なる価数のもの、すなわち5価及び6価が一定の比率で安定的に存在し得ると考えられるモリブデン酸化物クラスターに着目し、少なくとも正孔注入層に適用することにより、駆動寿命が向上することを見出した。
そこで、このような異なる価数状態の共存した金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレートについて、特に「混合原子価ポリオキソメタレート」と表記した。この「混合原子価」について説明すると、原子価の価数の異なる同一の金属元素が共存する状態、原子価の価数が異なる同族の複数の金属元素が共存する状態、又は、異なる原子価の価数の複数の金属元素が共存する状態を意味するものである。例えば、上記モリブデン酸化物クラスターは、5価と6価の異なる価数のものが共存する状態の酸化物であり、混合原子価ポリオキソメタレートということができる。また、金属酸化物クラスターはナノメートルオーダーの巨大分子で、化学的に合成されているので、その一次粒子径は10nm以下の大きさがそろった微粒子であり、それぞれの微粒子の組成は同じであるという特徴がある。
本発明では、この金属酸化物クラスターを正孔注入層及び/又は正孔輸送層に用いることで、塗布法により正孔注入層及び/又は正孔輸送層が形成でき、製造プロセスが容易でありながら、電荷輸送性材料として、通常のMoO3などのモリブデン酸化物よりも正孔
注入特性が向上し、且つ、隣接する電極や有機機能層との密着性にも優れた、安定性の高い正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成できることを見出し、発明を完成させるに至った。
液中での安定な分散や、再現良い製膜は非常に困難である。したがって、本発明の有機酸化物クラスターを有機電子デバイスに適用することにより、安定に薄膜形成が可能であることから、製造プロセス上のメリットが大きい。
また、撥液性バンクを持つ基板に正孔注入層及び/又は正孔輸送層から発光層までを順次塗布プロセスのみで形成することもできる。それ故、三酸化モリブデン(MoO3)の
場合のように正孔注入層を高精細なマスク蒸着などで蒸着した後に、正孔輸送層や発光層を塗布法で形成し、さらに第2電極を蒸着するようなプロセスと比較して、単純であり、低コストでデバイスを作製できる利点がある。
性材料を、例えば、本発明の芳香族アミン系化合物であれば、分子中に有する官能基の種類を選択すること、官能基で修飾することなどにより、親水性・疎水性、電荷輸送性あるいは密着性などの機能を付与するなど多機能化することで金属酸化物クラスターの物性に合わせた正孔輸送性材料としたものを用いることができ、優れた機能を有する正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成することができる。
あるいは均一に分散又は混合した流動性材料を層状に形成する工程を含むことにより製造プロセスが容易でありながら、長寿命化が可能な有機電子デバイスを提供することができる。
なお、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、有機半導体等のその他の有機デバイス、正孔注入輸送層を有する量子ドット発光素子、酸化物系化合物太陽電池等についても、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を上記本発明に係る正孔注入輸送層とすれば、その他の構成は特に限定されず、適宜公知の構成と同じであってよい。
また、本発明の有機電子デバイスにおいては、金属酸化物クラスターは金属元素の価数が一般的に安定とされる価数状態の1種類のみではなく、異なる価数の不安定とされる価数状態の金属元素が安定的に共存し、かつ金属酸化物クラスターに有機系の正孔注入・輸送性の化合物を添加することにより、親水性・疎水性、正孔輸送性、あるいは塗膜の製膜性及び膜質、膜強度及び柔軟性が向上し、密着性などの機能性を付与するなど、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を多機能化することが容易であり、素子の性能を向上することができる。
は均一に分散又は混合して均一な流動性材料を形成可能なものであるので、塗布法によって薄膜形成が可能であることから、製造プロセスが容易である。
まず、本発明に係る有機電子デバイスについてその層構成の一例を例示して図面を用いて説明すると、図1は、本発明に係る有機電子デバイスの概略的断面図である。
本発明の有機電子デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、2つの電極間に配置され少なくとも正孔注入層及び/又は正孔輸送層を含む有機機能層を有する有機電子デバイスにおいて、正孔注入層及び/又は正孔輸送層が、周期律表の第5族、第6族又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物クラスターであって、化学的に合成されたポリオキソメタレートであるアニオン性の金属酸化物クラスターを含有することを特徴とする。
そして素子の正孔注入層として用いられる場合には、金属元素の異なる価数の共存状態である混合原子価(例えば、モリブデンの場合は5価と6価)のバランスによって正孔注入性や正孔輸送性が適度に制御されていて低電圧駆動が実現し、その酸化還元性が安定化するため正孔注入特性が向上し、且つ、隣接する電極や有機機能層との密着性にも優れた、安定性の高い膜となるため、素子の長寿命化を図ることが可能である。
また、本発明の有機電子デバイスにおいては、金属酸化物クラスターとともに用いる芳香族アミン系などの有機化合物の選択、あるいは芳香族アミン系化合物などの有機化合物を化学的に修飾することにより、芳香族アミン系化合物に親水性・疎水性、電荷輸送性あるいは密着性などの機能を付与するなど多機能化することにより、均一な溶解性、均一な分散性あるいは混合性が向上し、均一な流動性材料として適用でき、正孔注入特性の優れた、安定性の高い膜を形成することが容易である。
また、本発明のポリオキソメタレートである金属酸化物クラスターは、無機化合物の単なる金属酸化物の粒子と異なり、化学的に合成されたナノ微粒子の凝集状態のものからなり、有機物である正孔輸送性材料との均一な相溶性が可能となり、平滑な塗膜を形成することができ、且つ、隣接する有機機能層との界面の密着性も良好となる。そのため、金属酸化物クラスターを含有する正孔注入層及び/又は正孔輸送層を備えた本発明の有機電子デバイスは、低電圧駆動が可能で、高電力効率の、特に駆動寿命が向上したデバイスを実現できると考えられる。
どで蒸着した後に、正孔輸送層や発光層を塗布法で形成し、さらに第2電極を蒸着するようなプロセスと比較して、単純であり、低コストで有機電子デバイスを作製できる利点がある。
図1は本発明に係る有機電子デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。本発明の有機電子デバイスの基本的な層構成は、基板7上に対向する2つの電極(1及び6)と、その2つの電極(1及び6)間に配置され少なくとも正孔注入層2及び/又は正孔輸送層を含む有機機能層3を有する。
基板7は、有機電子デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも電極1の表面に設けられる必要はなく、有機電子デバイスの最も外側の面に設けられていればよい。
正孔注入層2及び/又は正孔輸送層は、少なくとも化学的に合成した金属酸化物クラスターを含有し、電極1から有機機能層3への正孔の注入及び/又は輸送を担う層である。
有機機能層3は、正孔が注入され輸送されることにより、デバイスの種類によって様々な機能を発揮する層であり、単層からなる場合と多層からなる場合がある。有機機能層が多層からなる場合は、有機機能層は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の他に、さらに、有機電子デバイスの機能の中心となる層(以下、「機能層」と称呼する)や、当該機能層の補助的な層(以下、「補助層」と称呼する)を含んでいる。例えば、有機EL素子の場合、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の表面に、さらに積層される正孔輸送層が補助層に該当し、当該正孔輸送層の表面に積層される発光層が機能層に該当する。
電極6は、対向する電極1との間に正孔注入層2及び/又は正孔輸送層を含む有機機能層3が存在する場所に設けられる。また、必要に応じて、図示しない第3の電極を有していてもよい。これらの電極間に電場を印加することにより、有機電子デバイスの機能を発現させることができる。
本発明の有機EL素子は、電極1の表面に正孔注入層2が積層され、当該正孔注入層2の表面に補助層として正孔輸送層4a、機能層として発光層5が積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な金属酸化物クラスターを正孔注入層の位置で用いる場合には、導電率の向上に加え、正孔注入層を積層する際に塗布法を適用することが可能である。さらに、電極との密着性の向上も期待できる。
本発明の有機EL素子は、電極1の表面に本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔注入層2が形成され、本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔注入層2の表面にαNPDからなる正孔輸送層を形成した後、さらに本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔輸送層4b、機能層として発光層5が積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な金属酸化物クラスターを正孔注入層及び正孔輸送層の位置で用いる場合には、導電率の向上に加え、各正孔注入層、正孔輸送層を塗布法で形成するだけでなく、上層の発光層を積層する際にも塗布法を適用することが可能である。
なお、上記図2〜図4においては、本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔注入層2、正孔輸送層4a、本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔輸送層4bのそれぞれが、単層ではなく複数層から構成されていてもよい。
素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。また、発光層と電極6(陰極)の間には、必要に応じて電子輸送層及び/又は電子注入層が設けられていてもよい(図示せず)。
この有機トランジスタは、基板7上に、電極9(ゲート電極)と、対向する電極1(ソース電極)及び電極6(ドレイン電極)と、電極9、電極1、及び電極6間に配置された有機機能層としての有機トランジスタ層8と、電極9と電極1の間及び電極9と電極6の間に介在する絶縁層10を有し、電極1と電極6の表面に、本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔注入輸送層2が形成されている。
上記、有機トランジスタは、ゲート電極における電荷の蓄積を制御することにより、ソース電極−ドレイン電極間の電流を制御する機能を有する。
この有機トランジスタは、基板7上に、電極9(ゲート電極)と、対向する電極1(ソース電極)及び電極6(ドレイン電極)と、電極9、電極1、及び電極6間に配置された有機機能層として本発明に係る金属酸化物クラスターを含有する正孔注入輸送層2を形成して有機トランジスタ層8とし、電極9と電極1の間、及び電極9と電極6の間に介在する絶縁層10を有している。この例においては、正孔注入輸送層2が有機トランジスタ層8となっている。
以下、本発明に係る有機電子デバイスの各層について詳細に説明する。
本発明の有機電子デバイスに含まれる有機機能層は、少なくとも正孔注入層及び/又は正孔輸送層を含み、上述のように、有機機能層が多層の場合には、有機機能層は正孔注入層及び/又は正孔輸送層の他に、さらに有機電子デバイスの機能の中心となる層や当該機能層を補助する役割を担う補助層を含んでいるが、それらの機能層や補助層は後述する有機電子デバイスの具体例において詳細に述べる。
本発明で用いられる金属酸化物クラスターは、周期律表の第5族、第6又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物クラスターであって、
ポリオキソメタレート(POM)であるアニオン性の金属酸化物クラスターであり、その一つ一つのクラスターは化学的に合成された巨大クラスター分子である。
ここで、POMとはオキソ酸からなるポリ酸構造である。ポリオキソメタレートは、一般的には下記式で表すことができる。
[XxMyOz]n-
x=0は、イソポリ酸であり、x=1、2、3、・・・は、ヘテロポリ酸である。Xは、主として、第13〜15族から選ばれる少なくとも1種の元素かコバルトあるいは希土
類から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mは、主として第5〜11族から選ばれる少なくとも1種の元素(y=1、2、3、・・・)であり、他にもランタノイド系、アクチノイド系のものも含まれる。例えば、MはMo、W、Cr、V、Nb、Fe、Ta、Alなどが挙げられ、XはP、As、Si、B、Co、Alなどが挙げられ、X、Mは、主として例示した金属元素から選ばれる。nは、ポリオキソメタレートでは自然数をとるといわれている。
イソポリ酸の具体例は、[Mo6O19]2-、[Mo10O32]4-、ヘテロポリ酸としては、[PMo12O40]3-、[BW12O40]5-、[SbW6O24]8- 、[SiV2W10O40]6-、[V18O44N3]n-、[PWnMomO40]3-(n+
m=12、n,mは0,1,2,3・・・)、[SiWnMomO40]4-(n+m=12n,m=0,1,2,3・・・,[PVnWmO40]r-(n+m=1, n=1,2,3,4, r-n=3)、[PVnMomO40]r-(n+m=12、n=1,2,3,4,r-n=3)などが挙げられる。通常のMoO3などのモリブデン酸化物の組成式がMoVI nO3nに対し、[MoVI 6O19]2-などのポリ酸はMonO3n+mと(m=1,2,3,…)同じ6価でも酸素が多く、アニオン状態に寄与している。これらのアニオンクラスターは通常対カチオンと共に水和物として存在しており、例えば、[BW12O40]5-の場合は、K5[BW12O40]・13H2Oとして存在することが知られている。
また、金属酸化物クラスターとして、どのPOMでも還元反応により容易に混合原子価状態をとることができる。例えば、共存する有機物や無機物を酸化しながら、[PMoVI 12O40]3-は[PMoVI 11MoVO40]3-や[PMoVI 10MoV 2O40]4-のように還元でき、分子内に異なる原子
価を持つ構造をとることができる。例えば、ドナー性ゲスト分子(π電子化合物、2重結
合や3重結合など不飽和結合をもつ有機分子、アミン、芳香族アミン、ピリジン誘導体、
フェロセン、ヒドロキノンななど)により還元することができる。還元されたアニオンは一電子ごと安定に還元されるという特徴がある。
金属酸化物クラスターの構造として、本発明で用いることができるものには、ケギン型、ドーソン型、アンダーソン型などのものがある。また、本発明の金属酸化物クラスターとしては、上記の構造を組み合わせた、還元された混合原子価ポリオキソメタレートを用いることができる。還元されたアニオンは一電子ごと安定に還元されるという特徴があり、例えば、モリブデンであれば、モリブデン酸化物クラスターは通常のMoO3などのモ
リブデン酸化物とは異なり、5価及び6価の価数状態のものが共存しているもので、混合
原子価の状態をとることができる。
いられる。その他の本発明に適用できる金属酸化物クラスターとして、球形状の{Mo132
}、リング形状{Mo142}、{Mo154}、{Mo176}、ホイール形状の{Mo248}、レモン形状の{Mo368}が好適に用いられる。また、異なる金属元素からなる{Mo57V6}、{Mo57Fe6}も用いることができる。これらは前記の小さなMo金属酸化物クラスターを化学反応で還元して合成し、5価と6価のMoを導入して結合させているので、構造的に安定で、取り込まれた5価のMoも安定に存在できる。異なる価数が安定に存在し、安定したアニオン状態を維持できるので寿命特性に優れた正孔注入層を形成することができる。
一方で、通常のMoO3のなどのモリブデン酸化物の場合はほとんどがMoVIであり、組
成式MonO3nとなる。しかし、MoO3の蒸着時やMoO3を粉砕したスラリーによる層
に5価のMo蒸着時の酸素欠損やスラリー形成時の物理的な粉砕により生じた粒子表面などに存在する酸素欠陥などによりMonO3n-mになりMoVも多少存在するかもしれない。しか
し、MoO3で導入されるMoVは酸素欠陥により生じるので、不均一であり不安定である。
本発明に適用できる金属酸化物クラスターとして、具体的には、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)又は鉄(Fe)から選択される少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物クラスターであり、球形状の{Mo132}、リング形状{Mo142}、{Mo154}、{Mo176}、ホイール形状の{Mo248}、レモン形状の{Mo368}、又は{Mo11}、{Mo12}、{W10}、{W12}などの低分子の金属酸化物クラスターが好適に用いられる。また異なる原子からなる{Mo57V6}、{Mo57Fe6}、{PMo12}、{SiMo12}、{PVMo11]、{PW12}、{PV2W10}なども用いることができる。
本発明で用いられる金属酸化物クラスターのように多くのクラスターは対カチオンを含有することができ、対カチオンとしてはH+、Na+、K+を好適に用いられ、この他に、
カチオン性有機物あるいはイオン性液体を用いることもできる。
正孔輸送性材料としては、例えば、後述するように、例えば、芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、アニリン誘導体などが挙げられる。
本発明では、金属酸化物クラスターは溶媒に均一に溶解し、あるいは均一に分散又は混合して均一な流動性材料を形成可能なものであるので、正孔輸送性材料も同様に金属酸化物クラスターとともに、安定して均一に溶解あるいは均一に分散又は混合して流動性材料を形成するものを選択する又は均一な流動性材料を形成するように修飾したものを使用することが好ましい。例えば、金属酸化物クラスターがモリブデン酸化物クラスターの場合、水性溶媒に溶解することから、正孔輸送性材料も水性溶媒に溶解するようなものが特に好ましく、具体的には、N,N−ビス−[4’−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミンや、ポリアニリンやポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、スタルク社製、商
品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販)なども使用することができる。
nm〜20nmの範囲内、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。一方、平均粒子径が大きすぎると、単位重量当たりの表面積(比表面積)が小さくなり、所望のデバイスの効果が得られない可能性があるとともに、さらに形成した薄膜の表面粗さにも影響し、ショートが多発する恐れがある。
平均粒子径を表す方法としては、多くの表記方法があるが、本発明で用いられる巨大分子の金属酸化物クラスターの平均粒子径は、凝集することもあり、体積平均や重量平均による表記では、凝集状態の影響を受け、大きく変動する可能性があることから、個数平均粒子径を用いて表記することとした。
正孔輸送性材料としては、特に限定されることなく、低分子化合物としては、例えばアリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物などを挙げることができる。
また、高分子化合物としては、例えばアリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、アニリン誘導体、スピロ化合物などを繰り返し単位に含む重合体を挙げることができる。
これらの正孔輸送性高分子化合物は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
正孔輸送性高分子化合物としては、中でも、隣接する有機機能層との密着安定性が良好になりやすく、HOMOエネルギー値が陽極基板と発光層材料の間である材料を選択することが好ましい。
本発明の正孔輸送性材料としては、低分子化合物の他、高分子化合物も好適に用いることができるが、本発明の正孔注入層及び/又は正孔輸送層においては、塗布法により安定な膜を形成することを目的として、正孔輸送性材料としては有機溶媒、水あるいは水性溶媒に溶解しやすく且つ化合物が凝集し難い、安定な塗膜が形成できるポリチオフェン系化合物、ポリアニリン系、芳香族アミン系化合物を用いることが好ましい。
には、正孔輸送性材料の含有量は、金属酸化物クラスター100重量部に対して、1〜1
0000重量部であることが、正孔注入・輸送性を高くし、且つ、形成される膜の安定性が高く、長寿命を達成することができることから好ましい。
正孔注入層及び/又は正孔輸送層において、正孔輸送性材料の含有量が少なすぎると、正孔輸送性材料を混合した相乗効果が得られ難い。一方、正孔輸送性材料の含有量が多すぎると、金属酸化物クラスターを用いる効果が得られ難くなる。
本発明の正孔注入層及び/又は正孔輸送層は、本発明の効果を損なわない限り、バインダー樹脂や硬化性樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエステルなどが挙げられる。また、熱又は光などにより硬化するバインダー樹脂を含有していてもよい。熱又は光などにより硬化する材料としては、上記正孔輸送性材料において分子内に硬化性の官能基が導入されたもの、あるいは、硬化性樹脂などを使用することができる。具体的に、硬化性の官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基などのアクリル系の官能基、又はビニレン基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても光硬化性樹脂であってもよく、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、シランカップリング剤などを挙げることができる。
さらにバインダーとして、従来有機EL素子で用いられてきた正孔注入材料あるいは正孔輸送性材料を用いることもできる。これらのバインダーを添加することにより製膜性が向上し、インキの粘度を調整できるようになる。具体的にはポリアニリンやポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、スタルク社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販)なども使用することができる。
また、上記正孔注入層及び/又は正孔輸送層の仕事関数は5.0〜6.0eV、さらに5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
また、正孔輸送性材料が含まれる正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する場合、金属酸化物クラスターと正孔輸送性材料を、双方が均一に溶解、あるいは均一に分散又は混合することからなる流動性材料を調製して、塗布法により形成する。
この場合、金属酸化物クラスターと正孔輸送性材料の双方が溶媒に均一に溶解、あるいは均一に分散又は混合することからなる流動性材料とすることで金属酸化物クラスターと正孔輸送性材料が正孔注入層及び/又は正孔輸送層中に安定でかつ均一に存在しやすくなるため、正孔輸送性及び膜の経時安定性に優れた正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成できる。このような正孔注入層及び/又は正孔輸送層は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する際に用いた溶媒に不溶になる傾向があり、当該正孔注入層及び/又は正孔輸送層の上層に該当する有機機能層を形成する場合も、当該正孔注入層及び/又は正孔輸送層を溶出させることなく塗布法を用いることができる可能性が広がる。なお、塗布法及び蒸着法は、下記、有機電子デバイスの製造方法において説明する。
基板は、本発明の有機電子デバイスの支持体になるものであり、例えば、フレキシブル
な材質であっても硬質な材質であってもよい。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネートなどを挙げることができる。これらのうち、合成樹脂製の基板を使用する場合には、ガスバリア性を有することが望ましい。基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0mm程度である。
本発明の有機電子デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極を有する。
本発明の有機電子デバイスにおいて、電極は、金属又は金属酸化物で形成されることが好ましく、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金などの金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物により形成することができる。
陰極電極6は、有機電子デバイスにおいて、例えば、有機EL素子では、発光層5に電子を注入するよう作用する上記電極材料を用いることができ、更には仕事関数が4.2e
V以上の安定な金属を用いることができるが、発光層5で発光した光を陰極側から取り出す場合には、陰極電極6を透明な材料で形成する必要がある。
有機太陽電池では、導電性材料であれば特に限定されないことから、有機EL素子における陰極と同様の導電性材料を用いることができる。基板を受光面とした場合には、上記第1電極が透明電極となり、このような場合には、第2電極は透明でなくてもよい。第1電極を仕事関数が高い電極を用いた場合、従来、第2電極は、仕事関数が低い材料を用いられている。
有機トランジスタでも、導電性材料であれば特に限定されないことから、有機EL素子における陰極と同様の導電性材料を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、In−Sn−O(ITO)及び炭素が好ましい。
陽極電極1は、有機電子デバイスにおいて、例えば、有機EL素子では、基板7の発光層側に設けられている場合は、発光層5に正孔を注入するよう作用する電極材料を用いることができ、更には仕事関数の大きい導電性材料を用いるのが好ましく、特に、仕事関数が4.2eV以上の金属の少なくとも1種、又はこれらの金属の合金、又は導電性無機酸
化物からなる群に含まれる物質の少なくとも1種により陽極電極1が形成されることが好ましい。
発光層5で発光した光を陰極側から取り出す場合には、陽極電極1を透明な材料で形成する必要がある。例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Moなどの金属、又はこれらの酸化物や合金など、或いは、これら金属材料の積層構造を挙げることができる。さらに、ITO、In−Zn−O、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−Oなどの導電性無機酸化物、α−Si、α−SiCなどを用いることができる。更に、前述の陰極に好適に用いられるような、湿式製膜法を用いて形成可能な溶融金属や金属微粒子、導電性高分子を用いることもできる。
有機トランジスタでも、導電性材料であれば特に限定されないことから、有機EL素子における陰極と同様の導電性材料を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、ア
ルミニウム、インジウム、ITO及び炭素が好ましい。
電極の厚さは、各々の電極に要求される透明性などにより異なる。透明性が必要な場合には、電極の可視光波長領域の光透過率が、通常、60%以上、好ましくは80%以上となることが望ましく、この場合の厚さは、通常10〜1000nm、好ましくは20〜500nm程度である。
通常、有機EL素子では、電極を形成するのに用いられる金属又は金属酸化物、さらには仕事関数が4.2eV以上の安定な金属を用いて真空蒸着法により形成してもよいが、
塗布法により好適に形成することが可能である。陰極電極6を塗布法により形成する場合には、真空蒸着法に比べて大掛かりな蒸着装置が不要で、作製プロセスの簡便化が期待でき、材料の利用効率も高く、コストが安価で基材の大面積化が可能になり、好ましい。
陽極電極は、前述の陰極に好適に用いられるような、塗布法を用いて形成可能な溶融金属や金属微粒子、導電性高分子を用いる場合には、塗布法を用いて形成することができる。それ以外の金属などを用いる場合には、陽極電極1は、スパッタリング法、真空加熱蒸着法、EB蒸着法、イオンプレーティング法などのドライプロセスを用いて形成することができる。
本発明の有機電子デバイスは、必要に応じて、電子注入電極と有機機能層の間に、従来公知の電子注入層及び/又は電子輸送層を有していてもよい。
本発明の有機電子デバイスの一実施形態として、有機機能層が少なくとも本発明の正孔注入層及び/又は正孔輸送層及び発光層を含む、有機EL素子が挙げられる。
以下、有機EL素子を構成する各層について、図2〜4を用いて順に説明する。
基板7は、有機EL素子の支持体になるものであり、例えば、フレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、例えば、上記有機電子デバイスの基板の説明において挙げたものを用いることができる。
発光層5で発光した光が基板7側を透過して取り出される場合においては、少なくともその基板7が透明な材質である必要がある。
電極1及び電極6は、発光層5で発光した光の取り出し方向により、どちらの電極に透明性が要求されるかが決まり、基板7側から光を取り出す場合は、電極1を透明な材料で形成する必要があり、また電極6側から光を取り出す場合は、電極6を透明な材料で形成
する必要がある。基板7の発光層側に設けられている電極1は、発光層に正孔を注入する陽極として作用し、基板7の発光層側に設けられている電極6は、発光層5に電子を注入する陰極として作用する。
本発明において、陽極及び陰極は、上記有機電子デバイスの電極の説明において列挙した金属又は金属酸化物を用いて形成することができる。有機EL素子の光を取り出す側の電極は透明電極であることが求められることから、ITOが通常用いられている。
本発明に係る正孔注入層において説明した金属酸化物クラスターが正孔輸送性材料とともに用いられる場合は、同じ正孔輸送性材料を正孔輸送層4aに用いることが好ましい。隣接する本発明に係る正孔注入層2に用いられている正孔輸送性材料と同じ材料を用いることにより、正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
正孔輸送層4aは、通常使用されている正孔輸送性材料を用いて、後述の発光層と同様な方法で形成することができる。正孔輸送層4aの膜厚は、通常0.1〜1μm、好まし
くは1〜500nmである。
正孔輸送層4bは、本発明に係る金属酸化物クラスターを含む正孔注入層と同様に金属酸化物クラスターと正孔輸送性材料を用いて、正孔注入層と同様な方法で形成することができる。この正孔輸送層は、陽極電極から正孔の注入を安定化するか、注入された正孔を発光層内に安定的に輸送することができる層である。正孔輸送層4bの膜厚は、正孔注入効率の点から、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
具体的には、例えば、電極1にITO(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)を
用い、発光層5にCBP(HOMO5.9eV)を用いた場合、電極1(UVオゾン洗浄
直後の仕事関数5.0eV)と発光層5(例えばHOMO5.9eV)の間の正孔注入の大きなエネルギー障壁を、HOMOの値が階段状になるように補完可能で、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を構成する材料としてTFB(仕事関数5.4eV)と金属酸化物クラ
スター(仕事関数5.0〜5.7eV)の混合物というように選択して、電極1側から発光層5に向かって各層の仕事関数の値が順に大きくなるような層構成をとるように配置することが好ましく、そうすることにより正孔注入効率に非常に優れた正孔注入層及び/又は正孔輸送層が得られる。
なお、上記仕事関数又はHOMOの値は、光電子分光装置AC−1(理研計器製)を使用した光電子分光法の測定値より引用したものである。
発光層5は、図2〜図4に示すように、電極1が形成された基板7と電極6との間に、発光材料により形成される。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料及びリン光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料などの材料を挙げることができる。特に、本発明の目的である製造方法の簡易化、コストの低減などの観点を考慮して塗布法を採用できる発光材料を選択することが好ましい。
色素系発光材料としては、有機色素系化合物誘導体を通常に用いることができる。例えば、トリフェニルアミン誘導体としてはN,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、アリールアミン類としてはビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)、オキサジアゾール誘導体としては(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、アントラセン誘導体としては9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、カルバゾール誘導体としては4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)フェナントロリン類の具体例としては、バソキュプロイン、バソフェナントロリンなどが挙げられる。これらの2量体、3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
金属錯体系発光材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体など、あるいは中心金属にAl、Zn、Beなど又は、Tb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造などを有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−
メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体及びデンドリマーなどを使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体などを挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいてもよい。このようなドーピング材料としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)などを挙げることができる。これらの材料は単独又は2種以上を併用してもよい。
また、リン光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(pp
y)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT
)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEPなどを用いることができる。これらの材料は単独又は2種以上を併用
してもよい。
塗布法は、後述の有機電子デバイスの製造方法において説明するのと同様の方法を用いることができる。
蒸着法は、例えば、真空蒸着法の場合には、発光層の材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、発光層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板7、電極1、正孔注入層2及び/又は正孔輸送層、及び正孔輸送層4aの積層体の上に発光層5を形成させる。
転写法は、例えば、予めフィルム上に塗布法又は蒸着法で形成した発光層を電極上に設けた正孔注入層2及び/又は正孔輸送層に貼り合わせ、加熱により発光層5を正孔注入層2及び/又は正孔輸送層上に転写することにより形成される。また、フィルム、発光層5、正孔注入層2及び/又は正孔輸送層の順に積層された積層体の正孔注入層及び/又は正孔輸送層側を、電極上に転写してもよい。
本発明は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を塗布法で形成することが好適であるため、発光層も塗布法で形成することは、さらにプロセスコストを下げることができるという利点がある。
発光層の膜厚は、電子と正孔の再結合の歯を提供して発光する機能を発現することができる厚さであれば特に限定されず、通常、1〜500nm、好ましくは20〜200nm程度とすることができる。
本発明に係る有機電子デバイスの別の実施形態として、有機トランジスタが挙げられる。以下、有機トランジスタを構成する各層について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示されるような本発明の有機トランジスタは、電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2が形成されているため、それぞれの電極と有機トランジスタ層との間の正孔注入輸送能力が高くなり、且つ本発明の正孔注入輸送層の膜安定性が高いため、長駆動寿命化に寄与する。
本発明の有機トランジスタは、図6に示されるような、本発明の正孔注入輸送層2が有機トランジスタ層8として機能するものであってもよい。
また、本発明の有機トランジスタは、図5に示されるように電極1(ソース電極)と電
極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2を形成し、さらに、有機トランジスタ層8として電極表面に形成した正孔注入輸送層とは材料が異なる本発明の正孔注入輸送層2を形成してもよい。
上記有機トランジスタ材料としては、通常、有機トランジスタに用いられている有機材料、例えば、ポルフィリン誘導体としては、例えば、フタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができ、アリールアミン誘導体としては、例えば、m−TDATAを用いることができ、ポリアセン誘導体としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセンを用いることができる。また、その他、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、コロネン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、などの多くの誘導体も用いることができる。また、これらポルフィリン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などにルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、導電性を高くした層を用いることもできる。
トランジスタに対しては10-3cm/Vs以上であることが、トランジスタ特性の点から
好ましい。
また、有機トランジスタ層は、上記有機EL素子の発光層と同様に、塗布法又はドライプロセスにより形成することが可能である。
基板7は、本発明の有機電子デバイスの支持体になるものであり、例えば、フレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、上記有機EL素子の基板と同様のものを用いることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されないが、本発明に係る電荷輸送材料を用いて金属イオンが配位している化合物が吸着してなる正孔注入輸送層2を形成する点からは、金属又は金属酸化物であることが好ましい。具体的には、上述の有機EL素子における電極と同様の金属又は金属酸化物を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO及び炭素が好ましい。
ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物などを用いることができる。
本発明の有機電子デバイスの製造方法は、基板上に対向する2つ以上の電極と、2つの電極間に配置され、少なくとも正孔注入層を含む有機機能層を有する有機電子デバイスの製造方法であって、電極上のいずれかの層上に、化学的に合成された周期律表の第5族、第6族又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物クラスターを含有し、その金属酸化物クラスターがポリオキソメタレートである材料を用いて正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する工程、すなわち、周期律表の第5族、第6族又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1種類の金属元素を含む、ポリオキソメタレートからなる金属酸化物クラスターを含有する正孔注入層及び/又は正孔輸送層を、前記金属酸化物クラスター単独、又はさらに芳香族アミン系化合物などの正孔輸送性材料を均一混合した流動性材料を層状に形成する工程を含むことを特徴とする。
正孔注入層及び/又は正孔輸送層の形成の際に、蒸着装置が不要でマスク蒸着などを用いることなく蒸着以外の手段で層形成ができ、生産性が高く、また、電極と正孔注入層及び/又は正孔輸送層の界面、及び正孔注入層及び/又は正孔輸送層と有機機能層界面の密着安定性が高い有機電子デバイスを形成できる。
正孔注入層及び/又は正孔輸送層を塗布法により形成することにより、塗布法のメリットを享受することができる。すなわち、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の形成の際に、蒸着装置が不要でマスク蒸着などを用いることなく、塗り分けが可能であり、生産性が高く、また、電極と正孔注入層及び/又は正孔輸送層の界面、及び正孔注入層及び/又は正孔輸送層と有機機能層界面の密着安定性が高い有機電子デバイスを形成できる。
本発明の正孔注入層及び/又は正孔輸送層の形成においては、スピンコート法、インクジェット法を用いることが好ましい。
ここで、流動性材料とは、通常の液体、固体の材料を包括する材料であり、より具体的には、溶融物、溶液、分散液などの液状材料の単一材料又は混合材料、及び粉体、流体、微粒子又は凝集体などの粒状材料の単一材料又は混合材料を含むものである。
本発明の流動性材料としては、溶媒に溶解したものが好ましく用いられ、水性媒体に溶解した水性溶液が好ましい。
本発明では、周期律表の第5族、第6族又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物クラスターは、溶媒に溶解する化学的に合成した金属酸化物クラスターを好適に用いることから、金属酸化物クラスターを含む流動性材料を調製するため用いる溶媒としては、環境に悪い影響を及ぼすことのない水又は/及びアルコール系媒体のような水性媒体を用いることが、特に好ましい。
正孔注入・輸送材料として用いられる本発明の金属酸化物クラスターの優れた性質である水性媒体を含む溶媒への溶解性を活用し、かつ金属酸化物クラスターの正孔注入・輸送性を維持又は向上させるため、正孔輸送性材料として用いられる芳香族アミン系化合物は、水性媒体に溶解可能なもの又は水酸基、カルボキシル基といた官能基を修飾することにより水性媒体に溶解可能に変性したものなど、金属酸化物クラスターとともに溶媒に均一に溶解、あるいは均一に分散されることにより、均一な流動性材料が調製可能となり、簡易な層形成手段である塗布法を用いて本発明の金属酸化物クラスターを含有する均一な層を形成することを可能とした。
また、周期律表の第5族、第6族又は第8〜10族の中から選ばれる少なくとも1つ以上の金属原子を含むポリオキソメタレートである金属酸化物クラスター及び水性媒体などの溶媒に金属酸化物クラスターとともに可溶な芳香族アミン系化合物を含有する正孔注入層及び/又は正孔輸送層とすることにより、隣接する有機機能層との密着性を保持し、適宜正孔注入・輸送性を改善させることも、膜強度を向上させることも可能である。
のバナジウム元素を含む金属酸化物クラスターを正孔注入層に用いた実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
実施例及び比較例において作製した有機EL素子、有機ダイオードについて、膜厚、クラスターの粒径及び金属元素の価数、電流効率と駆動電圧特性、(交流−直流変換特性、)寿命特性、及びIR分析の測定・評価を下記の方法により行った。
(1)膜厚の測定
本発明の有機電子デバイスを構成する各層の膜厚は、実際に製造した有機電子デバイスを分解して実測したのではなく、特に記載がない限り、各有機電子デバイスを構成する各層を形成するために用いた薄膜形成条件と同じ条件で、洗浄済みのITO付きガラス基板(三容真空社製)上へ各層を単独で形成し、作製した薄膜とITO表面との段差を測定することによって有機電子デバイスの各構成層の膜厚とした。
膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics 1000)を採用した。
本発明の金属酸化物クラスターの粒子径は、動的光散乱法により体積平均粒子径及び個数平均粒子径を測定した。測定には動的光散乱測定装置(日機装(株)製、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いた。測定試料として、酸化モリブデンクラスターを蒸留水に溶解させた溶液(濃度:4.6mg/ml)を用いた。試料は蒸留水に0.4重量%溶解させ、超音波で1時間溶解させた後に80度水浴で10分、さらに超音波で1時間溶解させ、0.2μmフィルターでろ過した溶液を測定した。
金属錯体から合成された有機−無機複合酸化物中の金属の異なる酸化数の比率を調べるために、XPS(X線光電子分光法)で測定して比較した。測定には、X線光電子分光測定装置(Theta−Probe、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を用い、X線源:Monochromated Al Kα(単色化X線)、X線照射領域(=測定領域):400μmφ、X線出力:100W、レンズモード:Standard、光電子取り込み角度:53°(但し、試料法線を0°とした場合)、帯電中和:電子中和銃(+6V、0.05mA)、低加速A
r+イオン照射条件で測定した。
実施例において作製された有機EL素子の電流効率と駆動電圧を評価した。一定の電流密度10mA/cm2で有機EL素子を駆動させたときの駆動電圧を測定し、発光時の輝
度はトプコン社製分光放射計SR−2を用いて測定した。得られた結果をもとに、発光効率(cd/A)を発光面積と電流密度と輝度から算出した。
実施例において作製された有機EL素子の輝度半減時間を測定した。初期輝度20,000(cd/m2)で駆動させた時の電流密度を一定に保持して輝度の減衰を記録し、輝
度が半減する時間を測定した。
金属酸化物クラスターが合成できていることについては、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)とラマン分光法により確認した。
FT−IR法による分析には、VARIAN社製FT−IR装置(FTS6000)を用い、KBr法で測定した。FT−IR法にて、各波長における強度分布を測定することにより金属酸化物クラスターを構成する元素の種類と結合状態(原子団;部分構造)及びその量を分析した。
ラマン分光法には、HORIBA社製レーザラマン分光装置LabRAM HR−800Lを用いた。514nmレーザーを用い、グレーティングが1800本、積算回数10回の条件で測定し、吸収波数を観察し、構成する金属元素の種類、金属元素と酸素の結合を分析した。
本発明の正孔注入層の仕事関数については、光電子分光装置AC−1を用いて光電子が放出されるエネルギー値を測定し、仕事関数を決定した。
[水溶性Mo154クラスター1の合成方法]
100mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物(3.04g)、蒸留水(25mL)、35%塩酸(2.47mL)を加えた。ついで亜ジチオン酸ナトリウム(0.15g)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、5日
間静置し、析出した濃青色の固体をろ過し、冷水で洗浄した。濃青色油状物をサンプル瓶に移し、デシケーター内で乾燥させ濃青色固体の水溶性のモリブデン酸化物クラスター(以下、簡略化して「Moクラスター1」という)(1.46g)を得た。
Moクラスター1が合成できていることは、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)とラマン分光法により確認した。
FT−IR法には、VARIAN社製FT−IR装置(FTS6000)を用い、KBr法で測定した。FT−IR法にて、各波長における強度分布を測定することによりモリブデン酸化物クラスターを構成する元素の種類と結合状態(原子団;部分構造)及びその量を分析した。
その結果、波数:νcm-1,1617、974、912、820、747、632、557に吸収が観測された。吸収のある波数の値は非特許文献1に示されている水溶性Mo154クラスターに特徴的な吸収波数と一致した。
ラマン分光法には、HORIBA社製レーザラマン分光装置LabRAM HR−800Lを用いた。514nmレーザーを用い、グレーティングが1800本、積算回数10回の条件で測定した。
その結果、下記の波数に吸収が観察され、モリブデンと酸素の結合があることが確認された。resonance Raman bands(solid;λe= 514nm):ν(cm-1)=997,824,666,465,379,339,290,242,216,199,154,129,119.
[水溶性Mo146クラスター2の合成方法]
100mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物(3.04g)、蒸留水(25mL)、35%塩酸(2.47mL)、ギ酸(1mL)を加えた。ついで亜ジチオン酸ナトリウム(0.15g)を加え、室温で24時間撹拌し
た。その後、5日間静置し、析出した濃青色の固体をろ過し、冷水で洗浄した。濃青色油状物をサンプル瓶に移し、デシケーター内で乾燥させ濃青色固体の水溶性のモリブデン酸化物クラスター(以下、簡略化して「Moクラスター2」という)(0.43g)を得た
。吸収のある波数:νcm-1,1617、974、912、820、747、632、557。
[MoO3スラリーの作製]
MoO3粉末0.3gをトルエン溶媒30gと直径3mmのジルコニアビーズ30gを入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いて6時間物理的に粉砕し、MoO3の1
次トルエン分散液を得た。次に、上澄みの分散液に直径0.3mmのジルコニアビーズを
加え24時間分散させた。その後、上澄みの分散液を0.2μmのフィルターでろ過して
MoO3スラリーを作製した。スラリー中に含まれるMoO3粒子の粒子径について確認したところ、体積平均粒子径が53.2nm、個数平均粒子径が25.0nmであった。
上記合成例において、モリブデン錯体から合成された有機−無機複合酸化物中のモリブデンの酸化数+6と酸化数+5の比率を調べるために、X線光電子分光法(XPS)で合成例1及び比較合成例の2つサンプルについて測定し、比較した。
測定結果を表1に示す。表1においては、モリブデン6価とモリブデン5価のピークに対して、ピーク分離を行い、モリブデン6価を100と規格化した場合のモリブデン5価のピーク強度を示した。
Moクラスター1:上記合成法1により化学的に合成された水性のポリオキソメタレートであるNa15[MoVI 126MoV 28O462H14(H2O)70]0.5[MoVI 124MoV 28O457H14(H2O)68]0.5・400H2Oクラスター0.05gを蒸留水5グラムに溶解させて正孔注入層形成用塗布溶液である
塗布用インキを調製した。その塗布用インキを用いて洗浄されたガラス基板上に、乾燥後の正孔注入層の膜厚が40nmになるように塗布し、薄膜をカッターで削り、サンプル1の粉末とした。
MoO3蒸着膜:抵抗加熱法により真空中で蒸着してガラス基板上に形成したMoO3膜(100nm)をカッターで削り、サンプル2の粉末とした。
Moクラスター1の薄膜(サンプル1)中のモリブデンの価数は、5価と6価が検出され、モリブデンの5価の比率は17であり、一方、分子構造から期待されるモリブデン5価の比率は22であった。2つの値に若干の違いがあり、測定誤差や結晶性などの膜質の影響を受けていると考えられるが、5価のモリブデンが大量に存在していることがわかる。
一方、MoO3蒸着膜では、モリブデンの5価は検出限界以下で6価のみ検出された。
また、光電子分光装置AC−1を用いて上記サンプル1とサンプル2の仕事関数を決定した。測定条件としては、モリブデンクラスターは50nWの光量で、MoO3は200
nWの光量で、それぞれ0.05eV刻みで測定を行った。
その結果、合成例1のモリブデンクラスターの仕事関数は5.75eVであり、MoO3は5.63eVであった。MoO3の測定結果は、文献値と±0.05eV以内の精度でほ
ぼ一致した。
合成したMoクラスター1の平均粒子径を測定するためMoクラスター1(Mo154)を蒸留水に0.4重量%溶解させ、超音波で1時間溶解させた後に80度水浴で10分
、さらに超音波で1時間溶解させ、0.2μmフィルターでろ過した溶液を測定した。
測定強度L.I. 0.045の時に、体積平均粒子径MV(Mean Volume Diameter)は123nm、個数平均粒子径MN(Mean Number Diameter)は4nmであった。Mo154はドーナツ型をしていて直径が約4nmといわれており、個数平均の4nmの測定結果とほぼ一致している。
無水ジクロロメタン、トリエチルアミン、無水硫酸マグネシウム、無水キシレン、トリス t−ブチルホスフィン、酢酸パラジウム、ナトリウム t−ブトキシド、アニリン、ヘキサン、クロロホルム、4’−ブロモ−4−ヒドロキシビフェニル、塩化 t−ブチルジ
メチルシラン、フッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液などは市販品をそのまま使用した。
合成した化合物の構造は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製 JNM-LA400WB)を用いて
構造を確認した。
反応容器にアルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した後、無水ジクロロメタン(70mL)、4’−ブロモ−4−ヒドロキシビフェニル(10g、40mmol)、トリエチルアミン (11mL、80mmol)を入れ、反応系内を0℃に冷却し、塩化t−ブチ
ルジメチルシラン (6.6g、44mmol)を30分かけて加えた。室温にゆっくり戻し、13時間攪拌した。得られた茶色懸濁の反応混合物にジクロロメタン (200mL)を
加え、水 (300mL×1)、飽和食塩水 (300mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物を得た。この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 250g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=9/1)に供し、無色固体の中間体1(13g、36mmol; 90% yield )を得た。
反応容器にアルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した後、無水キシレン(10
0mL)、トリスt−ブチルホスフィン (0.37mL、 1.6mmol)、酢酸パラジウ
ム (0.093g、0.41mmol)、ナトリウム t−ブトキシド (1.9g、20mm
ol)を入れ、室温で10分間攪拌した後、中間体1(6g、16.5mmol)を加え、10分間攪拌した。その後、アニリン (0.9g、9.7mmol)を加え、6時間加熱還流
し、室温に戻し、クロロホルム (100mL)を加え、水 (200mL×1)、飽和食塩水
(200mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物を得た。この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel、溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム=1/1)に供し、無色固体の中間体2(3.3g
、5mmol;60% yield)を得た。
温で2時間攪拌した。酢酸エチル (30mL)を加え、水 (30mL×3)、飽和食塩水 (100mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶
白色固体の粗生成物を得た。この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel、溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム=10/1)に供し、無色固体の式Iの化合物(0.9g、2.1mmol; 91% yield)を得た。得られた化合物のNMRチャート図によれば、1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.46 (m, 8H, ArH), 7.28 (m, 2H, ArH), 7.15 (m, 6H, ArH), 7.02 (t, 1H, ArH), 6.84 (d, 4H, ArH), 4.80 (brs, 2H, ArOH)にピークが表れ、式Iが生成できたことを確認した。
基材として、ITO付ガラス基板(三容真空社製、ITO膜厚:150nm)のITO陽極上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストリップ状にパターン形成し、パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。
次に、上記合成例1により化学的に合成された水性のポリオキソメタレートであるNa15[MoVI 126MoV 28O462H14(H2O)70]0.5[MoVI 124MoV 28O457H14(H2O)68]0.5・400H2Oクラスター(「Mo154クラスター」又は「Moクラスター1」ということがある)0.04gを蒸留水10gに溶解させて正孔注入層形成用塗布溶液である塗布用インキを調製した。その塗布用インキを用いて洗浄された陽極の上にスピンコート法により乾燥後の正孔注入層
の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、薄膜中の水分を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃で10分間加熱乾燥した。なお、製造プロセスが容易な上、ショートが発生しにくいため製造上の歩留まりが高く、長寿命を達成する正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
上記正孔注入層の上に、正孔輸送性材料としてビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(以下、「α−NPD」という)を用い、真空中(圧力:1×10-4Pa)で抵抗加熱法により蒸着速度が0.1nm/sec.となるように温度制御し、膜厚が
100nmとなるように正孔輸送層を蒸着形成した。
次に、上記正孔輸送層の上に、発光層を蒸着形成した。発光層は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)を発光性ドーパントとして含有し、4,4’−ビス(2、2−カルバゾル−9−イル)ビフェニル(CBP)をホストとし、ホストとドーパントの体積比が20:1で含有した状態で、合計膜厚が40nmになるように、真空中(圧力:1×10-4Pa)で抵抗加熱法により共蒸着することで混合蒸着薄膜を形成した。
上記発光層の上に、正孔ブロック層を蒸着形成した。正孔ブロック層はブロック形成材料にビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)を用い、抵抗加熱法により真空中(圧力:1×10-4Pa)でBAlq蒸着膜の膜厚が15nmになるように蒸着形成した。
0-4Pa)でAlq3蒸着膜の膜厚が20nmになるように蒸着形成した。
作製した透明陽極付きガラス基板/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層の電子輸送層上に、さらに、電子注入層及び陰極を順次蒸着形成した。電子注入層は、LiF(厚み:0.5nm)を、陰極は、Al(厚み:100nm)を順次抵
抗加熱蒸着法により真空中(圧力:1×10-4Pa)で蒸着膜を形成した。
陰極形成後、低酸素、低湿度状態のグローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、幅mmのライン状にパターニングされた陽極と、この陽極に直交するように幅mmのライン状に形成された電子注入層、陰極を備える実施例1の有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入材料としてMoクラスター2を用いて下記のように正孔注入層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Na22[MoVI 118MoV 28O442H14(H2O)58]・ca.250H2O(Moクラスター2)0.04gを蒸留水10gに溶解させて塗布用インキを作製し、そのインキを用いてスピンコート法により乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように形成した。正孔注入層の塗膜を形成した後、塗膜中の水分を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥させた。なお、正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
実施例1において、正孔注入材料としてMoクラスター1とN,N−ビス−[4’−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)の芳香族アミン化合物の混合物を用いて、下記のように正孔注入層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
正孔注入材料として化学合成したMoクラスター1とN,N−ビス−[4’−(ヒドロ
キシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)の混合膜を形成するため、エチレングリコール中でMoクラスター1と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:4で混合させて、150℃、3時間加熱して溶解させ、その溶液とイソプロピルアルコールを重量比で1:1に混合させて塗布用インキを作製した。
そのインキを用いてスピンコート法により乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗膜を形成した。正孔注入層の塗膜を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を100℃、10分間加熱乾燥させた。なお、正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜の乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
実施例1において、正孔注入材料として三酸化モリブデンを用いて下記のように正孔注入層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてMoO3薄膜を蒸着形成した。MoO3膜は、蒸着材料としてMoO3を真空中(圧力:1×10-4Pa)で抵抗加熱法により蒸着膜の
膜厚が10nmになるように蒸着させて形成した。
実施例1において、正孔注入材料として三酸化モリブデンとα−NPDを用いて下記のように正孔注入層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてMoO3と、α−NPDを含有した混合薄膜
を蒸着形成した。混合薄膜は、蒸着材料として三酸化モリブデンとα−NPDの体積比が1:9の混合物を真空中(圧力:1×10-4Pa)で抵抗加熱法により蒸着膜の合計膜厚が10nmになるように共蒸着で形成した。
実施例3において、正孔注入層を化学的に合成したMoクラスター1と式Iの芳香族アミン化合物の混合膜の代わりに、式Iの芳香族アミン化合物の薄膜としたもので、正孔注入材料として式Iの芳香族アミン化合物を用いて下記のように正孔注入層を形成した以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
N,N−ビス−[4’−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)をエチレングリコール中150℃、3時間加熱して溶解させ、その溶液とイソプロピルアルコールを重量比で1:1に混合させて塗布用インキを作製した。
その塗布用インキを用いてスピンコート法により正孔注入層の乾燥後の膜厚が10nmになるように塗膜を形成した。正孔注入層の塗膜を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を100℃で10分間加熱乾燥させた。なお、正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
実施例1において、正孔注入層を形成する正孔注入材料として化学的に合成したMoクラスター1、正孔輸送層を形成する正孔輸送性材料として化学的に合成したMoクラスター1と式Iの芳香族アミン化合物を、それぞれ用いて下記のように正孔注入層と正孔輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
正孔注入層として、合成法1の化学的に合成したMoクラスター0.04gを蒸留水10gに溶解させて塗布用インキを調製し、そのインキを用いてスピンコート法により乾燥後の正孔注入層の膜厚が5nmになるように形成した。正孔注入層の塗膜を形成した後、
塗膜中の水分を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃で10分間加熱乾燥させた。なお、正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
形成した正孔注入層の上に実施例1と同様に正孔輸送層としてα−NPD薄膜を蒸着形成した後、正孔輸送層の上に正孔輸送層として化学的に合成したMoクラスター1と:N,N−ビス−[4’−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)の混合膜を形成するため、エチレングリコール中でMoクラスター1と式1の芳香族アミン化合物を重量比1:4で混合させて、150℃で3時間加熱して溶解させ、その溶液とイソプロピルアルコールを重量比で1:1に混合させて塗布用インキを作製した。
そのインキを用いてスピンコート法により乾燥後の正孔輸送層の膜厚が5nmになるように塗膜を形成した。正孔輸送層の塗膜を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を100℃で10分間加熱乾燥させた。なお、正孔輸送層の塗膜を形成する工程と形成した正孔輸送層を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
上記実施例及び比較例において作製した有機EL素子は、いずれも発光性ドーパントであるIr(ppy)3に由来する緑色に発光した。これらの有機EL素子について、電流
効率と駆動時の印加電圧及び寿命特性を、それぞれ、10mA/cm2で有機EL素子を
駆動した時の印加電圧及び発光時の輝度を測定し、得られた測定値を基に発光効率(cd/A)を算出すること及び結果を表2に示す。
また、有機EL素子の寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。ここでは初期輝度20000(cd/m2)で駆動させた時の電流密
度を一定に保持して輝度の減衰を記録し、輝度が半減するまでの時間(hr.)を寿命(半減期時間)とした。
実施例1と比較例1を比較すると、Moクラスター1の寿命がMoO3膜(10nm)
よりも1.6倍長い。この結果はMoVが膜中に安定に存在することにより駆動安定性が向上したものと考えられる。実施例2と比較例1を比較すると、Moクラスター2の寿命が
MoO3膜(10nm)よりも1.55倍長い。この結果はMoVが膜中に安定に存在する
ことにより駆動安定性が向上したものと考えられる。実施例3と比較例1及び実施例3と比較例3を比較すると、Moクラスター1と芳香族アミン化合物(式I)の混合膜を用いた素子の寿命がMoO3膜(10nm)よりも1.5倍長く、Moクラスター1と芳香族アミン化合物(式I)の混合膜を用いた素子の寿命がアミン化合物膜(10nm)よりも2.5倍長い。この結果は、Moクラスター1と芳香族アミン化合物の混合膜にすることにより、製膜性が向上し、インキ物性(表面張力、粘度など)を制御できるという利点がある。つまり性能と製膜性を兼ね備えた正孔注入材料であることがわかる。また、有機物との混合膜中でもMoVが膜中に安定に存在することにより駆動安定性が向上したものと考
えられる。
実施例4と比較例1を比較すると、Moクラスター1とアミン化合物の混合膜を正孔輸送層として挿入した素子がMoO3膜(10nm)よりも1.5倍長い。この結果は、Moクラスター1と芳香族アミン化合物の混合膜にすることにより、製膜性が向上し、インキ物性(表面張力、粘度など)を容易に調整できるという利点がある。有機電子デバイスにおける正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する材料として性能と製膜性を兼ね備えた正孔注入・輸送材料であることがわかった。また、MoVが膜中に安定に存在することに
より駆動安定性が向上したものと考えられる。
実施例1と比較例2を比較することにより、寿命は1.23倍長い。この結果はMoVが膜中に安定に存在することにより、駆動安定性が向上したものと推察される。
実施例1において、正孔輸送層と発光層を、それぞれ、下記のように、正孔輸送性材料として、α−NPDに代えてポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、発光層を形成する材料として、Ir(ppy)3を発光性ドーパントとし、
4,4’−ビス(2、2−カルバゾル−9−イル)ビフェニル(CBP)をホストとすることに代えて、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)を発光性ドーパントとし、2−メチル−9,10ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)をホストとして用いて形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔輸送層の形成)
正孔輸送層は、キシレンにポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)を0.7重量%の濃度で溶解させた溶液を、スピンコート法により乾燥後の正
孔輸送層の膜厚が30nmになるように正孔注入層上に塗膜を形成した。正孔輸送層の塗膜を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて200℃、30分加熱乾燥させた。
(発光層の形成)
次に、発光層は、トルエンに固形分として2−メチル−9,10ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)と1−tert−ブチル―ペリレン(TBPの重量比が20:1になるように、1.0重量%の固形分濃度で溶解させた溶液を、スピンコート
法により乾燥後の発光層の膜厚が40nmになるように正孔輸送層上に塗膜を形成した。発光層の塗膜を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて100℃、10分加熱乾燥させた。作製した素子は、TBPの発光を示す青に発光した。
実施例5において、正孔注入層として、下記のように、Moクラスター1に代えて、PEDOT/PSSとMoクラスター1の混合物を用いて形成した以外は、実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
正孔注入層は、PEDOT/PSSを含む薄膜であり、PEDOT/PSSとしてスタ
ルク社製のCLEVIOSTMP AI4083インキ1gと0.004gのMoクラスタ
ー1を蒸留水1gに溶解させた水溶液を混合して、2g溶液を作製し、スピンコート法により乾燥後の正孔注入層の膜厚が20nmになるように電極上に塗膜を形成した。正孔注入層を形成した後、塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて200℃、10分加熱乾燥させた。
実施例6において、正孔注入層として、PEDOT/PSSのみの薄膜(20nm)を塗布形成した以外は、実施例6と同様にして有機EL素子を作製した。
PEDOT/PSS薄膜はスタルク社製のCLEVIOSTMP AI4083インキ1gと蒸留水1gを混合して、2g溶液を作製し、スピンコート法により塗布して製膜した。溶液の塗布後、溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて200℃で10分乾燥させた。
実施例5において、正孔注入層を比較合成例で作製したMoO3スラリーを塗布形成し
た以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。比較合成例のスラリーの固形分は不明であるが、スピンコート法により塗布して製膜し、スラリーを塗布した後に膜厚を測定したところ約10nm程度であった。塗膜中の溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて100℃、10分加熱乾燥させたが少し白濁した。作製した素子は、TBPの発光を示す青に発光したが、ショートが多発した。
レン−2−イル)アントラセン(MADN)をホストとして用いており、発光性ドーパン
トであるTBPに由来する青色に発光した。これらの有機EL素子について、電流効率と駆動時の印加電圧及び寿命特性を、それぞれ、10mA/cm2で有機EL素子を駆動し
た時の印加電圧、及び発光時の輝度を測定し、得られた測定値を基に発光効率(cd/A)を算出すること及び結果を表3に示す。
また、有機EL素子の寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。ここでは初期輝度20000(cd/m2)で駆動させた時の電流密
度を一定に保持して輝度の減衰を記録し、輝度が半減するまでの時間(hr.)を寿命(半減期時間)とした。
実施例5と比較例4を比較すると、実施例5の寿命は非常に長寿命である。比較例4の
PEDOT/PSSは有機EL用の塗布用の正孔注入材料として一般的に用いられている材料であり、本発明の正孔注入材料が非常に高性能であることがわかる。
実施例6と比較例4を比較すると、実施例6の寿命は非常に長寿命である。一方、実施例5と実施例6を比較すると、実施例6は多少短いが、PEDOT/PSSとの混合膜にすることにより、製膜性が向上し、インキ物性(表面張力、粘度など)を制御できるという利点がある。つまり性能と製膜性を兼ね備えた正孔注入材料であることがわかる。
本発明のMoクラスター1は水溶性であるため、混合膜を形成できた。またPEDOT/PSSに含まれるNaイオンなどは寿命を劣化させると一般的には言われており、イオン成分を取り除くような発明が報告されているが、本発明はそのような常識に反し、あえてカチオンであるNaをカウンターとしたアニオンのMoクラスターをPEDOT/PSSと混合させることにより長寿命化を達成したという意味で、有機電子デバイスの性能向上のための材料の選択に新しい可能性を与えるものである。
実施例5と比較例5を比較すると、実施例5の素子の方が低電圧で駆動し長寿命であった。この結果は、物理的に粉砕して作製したMoO3スラリーと比較して、本発明のMo
ナノ粒子は粒子の大きさの均一性が高く、モリブデンの5価、6価が均一に膜中に分散していることが、何らかの低電圧化や長寿命化に寄与しているものと考えられる。また比較例5については、粒度分布測定では25nm程度と細かく分散している様子が確認できたが、薄膜が白濁したことから膜形成の際に凝集しやすいかあるいはインキそれ自体の分散安定性が低いものと推察される。
本発明の正孔注入層及び/又は正孔輸送層を用いると素子寿命が大きく向上した理由は、モリブデンの酸化数+5の安定性や相互作用の強さとその割合の違いではないかと推察される。
基材として、ITO付ガラス基板(三容真空社製、ITO膜厚:150nm)のITO陽極上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストリップ状にパターン形成し、パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。
次に、ITO付ガラス基板の上に正孔注入層としてポリオキソメタレートであるリンモリブデン酸水和物:H3[PMo12O40]・nH2O[n≒30](以下、「Moクラスター4」)とN,
N−ビス−[4‘−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)の芳香族アミン化合物の混合物を用いて形成した。
正孔注入層形成用塗布溶液である塗布用インキは、モリブデンクラスター4(日本無機化学製)の粉体試料0.04gとN,N−ビス−[4‘−(ヒドロキシ)[1,1’−ビフ
ェニル]−4−イル]−N−フェニルアミン(式I)の芳香族アミン化合物を重量比1:1で混合した混合物を、混合膜を形成するためイソプロピルアルコール10gに溶解させて調製した。その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に洗浄された陽極
の上にスピンコート法により、乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、薄膜中の水分を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥した。なお、正孔注入層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべて大気中で行った。
上記正孔注入層の上に、正孔輸送材料としてポリビニルカルバゾール(以下、「PVK」、分子量約6万)を用い、正孔輸送層を塗布形成した。正孔輸送層形成用塗布溶液である塗布用インキは、PVK(高砂香料製)試料0.005gを溶媒であるキシレン1gに
溶解させて調製した。その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後、洗浄さ
れた陽極の上にスピンコート法により、乾燥後の正孔輸送層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔輸送層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を150℃、10分間加熱乾燥させた。なお、正孔輸送層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべてグローブボックス中(酸素濃度<1ppm、水分濃度<1ppm)で行った。
次に、上記正孔輸送層の上に、発光層を塗布形成した。発光層はホストとしてCBP、発光性ドーパントしてトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(以下
、「Ir(mppy)3」)を含む混合塗布溶液を塗布用インキとし、発光層を塗布形成
した。上記発光層形成用混合塗布溶液である塗布用インキは、0.01gのCBP(新日
鐵化学製)と0.002gのIr(mppy)3(Lumtec製商品名、グレード品番
)を溶媒であるトルエン1gに溶解させて調製した。その塗布用インキを洗浄された陽極の上にスピンコート法により乾燥後の発光層の膜厚が40nmになるように塗布し、発光層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、薄膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を100℃、10分間加熱乾燥した。なお、発光層の塗膜を形成する工程と形成した塗膜を乾燥処理する工程はすべてグローブボックス中(酸素濃度<1ppm、水分濃度<1ppm)で行った。
上記発光層の上に、正孔ブロック層を蒸着形成した。正孔ブロック層はブロック形成材料にビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)を採用し、抵抗加熱法により真空中(圧力:1×10-4Pa)でBAlq蒸着膜の膜厚が10nmになるように蒸着形成した。
0-4Pa)でAlq3蒸着膜の膜厚が20nmになるように蒸着形成した。
作製した透明陽極付きガラス基板/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層の電子輸送層上に、さらに、電子注入層及び陰極を順次蒸着形成した。電子注入層は、LiF(厚み:0.5nm)を、陰極は、Al(厚み:100nm)を順次抵
抗加熱蒸着法により真空中(圧力:1×10-4Pa)で蒸着膜を形成した。
陰極形成後、低酸素、低湿度状態のグローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、幅2mmのライン状にパターニングされた陽極と、この陽極に直交するように幅2mmのライン状に形成された電子注入層、陰極を備える実施例7の有機EL素子を作製した。
実施例7において、正孔注入材料としてケイ素モリブデン酸水和物;H4 [SiMo12O40]・nH2O[n≒30](以下、「Moクラスター5」)と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:
4で混合した混合物を、エチレングリコール(蒸留水)に溶解させて塗布用インキとし、正孔注入層の塗膜を形成した以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Moクラスター5の粉末試料0.04gと式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:1で
混合した混合物を、イソプロピルアルコール10gに溶解させて塗布用インキを作製し、その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に陽極の上にスピンコート法に
より乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。
実施例7において、正孔注入材料としてリンバナジウムモリブデン酸水和物;H4 [PVMo11O40]・nH2O(以下、「Moクラスター6」)と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:4で混合した混合物を、エチレングリコール(蒸留水)に溶解させて塗布用インキとし、正孔注入層の塗膜を形成した以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Moクラスター6の粉末試料0.04gと式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:1で
混合した混合物を、イソプロピルアルコール10gに溶解させて塗布用インキを作製し、その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に陽極の上にスピンコート法に
より乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成
した。塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥させた。
実施例7において、正孔注入材料としてリンタングステン酸水和物;H3[PW12O40]・nH2O[n≒7](以下、「Wクラスター1」)と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:4で混
合した混合物を、イソプロピルアルコールに溶解させて塗布用インキとし、正孔注入層の塗膜を形成した以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Wクラスター1の粉末試料0.04gと式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:1で混
合した混合物を、イソプロピルアルコールに溶解させて塗布用インキを作製し、その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に陽極の上にスピンコート法により乾燥
後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥させた。
実施例7において、正孔注入材料としてケイ素タングステン酸水和物;H4 [SiW12O40]
・nH2O[n≒24](以下、「Wクラスター2」)と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:
1で混合した混合物を、イソプロピルアルコールに溶解させて塗布用インキとし、正孔注入層の塗膜を形成した以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Wクラスター2の粉末試料0.04gと式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:1で混
合した混合物を、イソプロピルアルコール10gに溶解させて塗布用インキを作製し、その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に陽極の上にスピンコート法によ
り乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥させた。
実施例7において、正孔注入材料としてリンバナジウムタングステン酸水和物;H4 [PV2W10O40]・nH2O(以下、「Wクラスター3」)と式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:4で混合した混合物を、エチレングリコール(蒸留水)に溶解させて塗布用インキとし、正孔注入層の塗膜を形成した以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
Wクラスター3の粉末試料0.04gと式Iの芳香族アミン化合物を重量比1:4で混
合した混合物を、イソプロピルアルコール10gに溶解させて塗布用インキを作製し、その塗布用インキを0.2μmのフィルターでろ過した後に陽極の上にスピンコート法によ
り乾燥後の正孔注入層の膜厚が10nmになるように塗布し、正孔注入層の塗膜を形成した。塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒を蒸発させるためにホットプレートを用いて塗膜を200℃、10分間加熱乾燥させた。
[比較例6、7、8、9]
比較例6、7、8、9の作製方法は、比較例1〜3と全く同じ方法で正孔注入層を形成した後に、実施例7と同じ方法で形成した。
バゾル−9−イル)ビフェニル(CBP)をホストとして用いて有機EL素子を作製した。発光ドーパントであるIr(mppy)3に由来する緑色に発光した。これらの有機E
L素子について、電流効率と駆動時の印加電圧及び寿命特性を、それぞれ、10mA/c
m2で有機EL素子を駆動した時の印加電圧、及び発光時の輝度を測定し、得られた測定
値を基に発光効率(cd/A)を算出すること及び結果を表4に示す。
また、有機EL素子の寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。ここでは初期輝度2000(cd/m2)で駆動させた時の電流密度
を一定に保持して輝度の減衰を記録し、輝度が半減するまでの時間(hr.)を寿命(半減期時間)とした。
実施例7〜9は、金属酸化物クラスターとしてポリオキソメタレートであって、Moクラスター系の低分子のクラスターを有機電子デバイスの正孔注入層に用いたもので、Moとリン(P)、Moとケイ素(Si)及びMoとリン及びバナジウム(V)の複合金属酸化物のクラスターを用いたものである。同様に、タングステン系の低分子のクラスターを正孔注入層に用いたものについてもその有機電子デバイスの性能についても調べたものが実施例10〜12である。
本発明のポリオキソメタレートである金属酸化物クラスターを有機電子デバイスの正孔注入層に用いたところ、比較例6〜9に挙げた従来知られていた有機電子デバイスにおける性能に比較して、モリブデン系のものでは同程度の印加電圧でありながら、全体として輝度も向上し、寿命は明らかに1.8倍以上長寿命であり、また、タングステン系のもの
では、印加電圧の点でモリブデン系のスラリー、蒸着膜のものに比較して僅かに高い印加
電圧、輝度の面で低くなっているものの、輝度半減時間の寿命の面では、従来のモリブデン蒸着膜、スラリー、及びアミン化合物単独を正孔注入層に用いたものに比較すると、タングステンクラスターとアミン化合物の混合膜が寿命の点で非常に優れている。
さらに、アミン化合物の混合膜にすると、ヘテロポリ酸単体よりも塗布した膜が平坦で均質になり、塗布用インキの物性をコントロールできる。さらに混合膜にすることにより、混合原子価状態が安定化されて通常のMo酸化物よりも駆動寿命が長くなるのではないかと推察される。
本発明の低分子の金属酸化物クラスターを正孔注入層及び/又は正孔輸送層に用いた場合も素子寿命が大きく向上させることができる。
2 正孔注入層 又は 正孔注入輸送層
3 有機機能層
4a 正孔輸送層(正孔輸送性材料のみ)
4b 正孔輸送層(Moクラスター含有)
5 発光層
6 電極(陰極電極)
7 基板
8 有機トランジスタ層
9 電極
10 絶縁層
Claims (10)
- モリブデン(Mo)を含む金属酸化物クラスターを含有するインキであり、前記Moを含む金属酸化物クラスターが、{Mo132}、{Mo142}、{Mo146}、{Mo154}、{Mo176}、{Mo248}又は{Mo368}である混合原子価ポリオキソメタレートであることを特徴とする、有機電子デバイスの正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成するための塗布用インキ。
- インキが、媒体として水性媒体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の塗布用インキ。
- インキが、正孔輸送性材料を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗布用インキ。
- インキが、正孔輸送性材料として芳香族アミン系化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
- インキが、正孔輸送性材料として芳香族アミン系化合物又は/及びチオフェン化合物又は/及びアニリン化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
- インキが、正孔輸送性材料として芳香族アミン系化合物を含み、媒体として水又はアルコール系媒体を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
- 金属酸化物クラスターが、化学的に合成されたアニオン分子であり、1分子のサイズが10nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
- インキが、金属酸化物クラスターを含有する均一に溶解あるいは均一に分散又は混合したものであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
- 有機電子デバイスが、有機機能層として発光層を含む有機EL素子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗布用インキ。
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