以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1に示されるように、第1実施形態に係る検査装置1(半導体検査装置)は、計測対象物であって被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である半導体デバイスDにおいて異常発生箇所を特定する等、半導体デバイスDを検査するための装置である。より詳細には、検査装置1は、EOP又はEOFMと称される光プロービング技術により故障位置を特定する。半導体デバイスDとしては、トランジスタ等のPNジャンクションを有する集積回路(例えば、小規模集積回路(SSI:Small Scale Integration)、中規模集積回路(MSI:Medium Scale Integration)、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)、超大規模集積回路(VLSI:Very Large Scale Integration)、超々大規模集積回路(ULSI:Ultra Large Scale Integration)、ギガ・スケール集積回路(GSI:Giga Scale Integration))、大電流用/高圧用MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ及び電力用半導体素子(パワーデバイス)等がある。また、計測対象物は半導体デバイスDだけでなく、例えばガラス面上に形成されたアモルファストランジスタ、ポリシリコントランジスタ、有機トランジスタ等のような薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)や、半導体デバイスを含むパッケージ、更には複合基板であってもよい。
半導体デバイスDには、デバイス制御ケーブルを介してテスタ11(信号印加部)が電気的に接続されている。テスタ11は、電源(図示せず)によって動作させられ、半導体デバイスDに所定のテスト信号(駆動信号)を繰り返し印加する。テスト信号は、例えば変調電流信号である。なお、テスタ11は、必ずしも変調電流信号を印加するものでなくてもよく、検出周波数に応じたパルス光を発生させるCW(continuous wave)電流信号を印加するものであってもよい。なお、テスト信号として変調電圧信号等を印加してもよい。テスタ11は、タイミング信号ケーブルにより周波数解析部12に電気的に接続されている。
検査装置1は、光源装置13を備えている。光源装置13は、電源(図示せず)によって動作させられ、半導体デバイスDに照射されるインコヒーレントな光を出力する。当該インコヒーレントな光の波長は、530nm以上であり、例えば1064nm以上である。光源装置13から出力された光は、偏向保存シングルモード光カプラ(図示せず)、及び、プローブ光用の偏光保存シングルモード光ファイバを介して、光分割光学系27に導かれる。光源装置13と光分割光学系27は光学的に結合されている。光源装置13の詳細については後述する。
光分割光学系27は、コリメータ16,19と、偏向ビームスプリッタ(以下、PBS:Polarization Beam Splitterと記載)17と、λ/4波長板18と、を含んで構成されている。これらは光学的に結合されている。光源装置13からの光が光スキャナ14(後述)を介して半導体デバイスDに照射される際には、まず、光源装置13からの光がコリメータ16を介してPBS17に入力される。PBS17は、偏向成分が0度の光を透過し90度の光を反射するように設定されている。また、PBS17は、コリメータ16からの光の偏光に合わせて設定されている。そのため、PBS17はコリメータ16からの光を透過する。PBS17を透過した偏向成分が0度の光は、λ/4波長板18を透過して光スキャナ14に入力される。当該光は、対物レンズ15(後述)を介して半導体デバイスDに照射される。光分割光学系27は光スキャナ14及び対物レンズ15とも光学的に結合されている。
半導体デバイスDからの反射光(戻り光)は、対物レンズ15及び光スキャナ14を介してλ/4波長板18に入力される。当該反射光(戻り光)はλ/4波長板18を透過することによって円偏光となり偏向成分が90度傾いている。当該偏向成分が90度の反射光はPBS17によって反射されコリメータ19を介して光センサ20に入力される。
光スキャナ14は、例えばガルバノミラーやMEMS(micro electro mechanical system)ミラー等の光走査素子によって構成される。また、対物レンズ15は、光スキャナ14によって導かれた光を半導体デバイスDに集光する。光スキャナ14及び対物レンズ15は、光源装置13から出力された光(増幅光)を半導体デバイスD上の選択領域に照射(走査)する照射光学系(光学系)である。当該選択領域は、ユーザにより選択されたスポットもしくはエリアである。ユーザにより選択領域としてエリアが選択された場合、コンピュータ23の指示を受けた制御装置22によって制御された光スキャナ14により、当該エリアが2次元的に走査される。また、ユーザにより選択領域としてスポットが選択された場合、コンピュータ23の指示を受けた制御装置22によって当該スポットに光が照射されるように制御される。対物レンズ15は、ターレット(不図示)等により、低倍率対物レンズ(例えば5倍)と高倍率対物レンズ(例えば50倍)とを切替可能に構成されている。
光センサ20は、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、又はエリアイメージセンサ等である。光センサ20は、半導体デバイスDからの反射光を受光し、検出信号を出力する。すなわち、光センサ20は、テスト信号が印加された半導体デバイスDが光スキャナ14から照射された光に応じて反射した光を検出する光検出部(光検出器)である。光センサ20から出力された検出信号は、アンプ21によって増幅され増幅信号として周波数解析部12に入力される。周波数解析部12は、検出信号を受けて、検出信号を解析する解析部(解析器)である。詳細すると、周波数解析部12は、増幅信号における計測周波数成分を抽出し、当該抽出した信号を解析信号として出力する。計測周波数は、例えば半導体デバイスDに印加される変調電流信号の変調周波数に基づいて設定される。周波数解析部12としては、ロックインアンプやスペクトラムアナライザ、デジタイザ、クロス・ドメイン・アナライザ(登録商標)等が用いられる。
周波数解析部12により出力された解析信号は、コンピュータ23に入力される。コンピュータ23は例えばPC等である。コンピュータ23には、ユーザから計測条件等が入力されるキーボードやマウス等の入力装置24と、ユーザに計測結果等を示すためのモニタ等の表示装置25とが接続されている。コンピュータ23は、プロセッサを含む。コンピュータ23は、プロセッサにより、光源装置13、制御装置22、テスタ11、光センサ20、及び周波数解析部12等を制御する機能と、周波数解析部12からの解析信号に基づく波形(解析画像)を作成する機能と、を実行する。ユーザは、当該解析画像から故障個所を探すことができる。
次に、図2〜図8を参照して、光源装置13の詳細について説明する。図2に示されるように、光源装置13は、光源131と、光増幅器132と、可変アッテネータ133(光変調手段)と、制御装置134とを備えている。光源131と、光増幅器132及び可変アッテネータ133とは、光ファイバケーブル135によって光学的に結合されており、可変アッテネータ133と制御装置134はケーブルを介して電気的に接続されている。
光源131は、インコヒーレントな光を発生させて出力する。光源131としては、インコヒーレントな光を発生する光源であればよく、例えば、SLD(Super Luminescent Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。光増幅器132は、波長毎のゲイン(増幅率、利得)を示すゲイン特性を有する。光増幅器132は、光源131によって出力されたインコヒーレントな光が入力光として入力され、当該入力光の強度を増幅して、増幅光を出力する光増幅器である。なお、光増幅器132は、例えば半導体光増幅器、光ファイバアンプ、又はブースタ光増幅器である。可変アッテネータ133は、光増幅器132から出力された光の強度を調整する光調整手段である。当該可変アッテネータ133による光の強度調整は、コンピュータ23の指示を受けた制御装置134によって制御される。可変アッテネータ133は、強度調整後の光を、光分割光学系27のコリメータ16へ出力する。
光増幅器132に入力される入力光には、光増幅器132がゲイン飽和となる強度の光が含まれている。光増幅器132のゲインは、素子(光増幅器)の特性に応じて、波長毎に特定の値が定まっている。一方で、光増幅器132から出力可能な光の強度の上限も定まっている。そのため、光増幅器132は、入力される入力光の強度がある値よりも大きくなると光増幅が抑制され、定められたゲインに応じて光を増幅することができなくなる。この場合、光増幅器132の入力光の強度が大きくなっても増幅光の強度は一定となり、光増幅器132の光増幅特性が非線形となる。このように光増幅器132の光増幅特性が非線形となっている状態が、上述した光増幅器132がゲイン飽和となっている状態である。光増幅器132がある波長においてゲイン飽和となっているとは、すなわち、当該ある波長において光の増幅に寄与することが可能な電荷が全て使い切られ、光増幅が抑制されている状態をいう。
光の増幅に寄与する電荷についてより詳細に説明をする。図3は、光増幅器132の一例である半導体光増幅器における3つのエネルギー帯の電子、すなわち、励起光(入力光)よりも高いエネルギー帯の電子、入力光と同じエネルギー帯の電子、及び入力光よりも低いエネルギー帯の電子を示している。図3の縦方向はエネルギーの高さであり、また横方向は半導体光増幅器の内部の空間方向を示し、左から右に向かって光が半導体増幅器を通過する。光が入力されると、入力光と同じエネルギー帯の電子が誘導放出し、入力光を増幅する。入力光と同じエネルギー帯の電子が誘導放出に用いられると、入力光よりも高いエネルギー帯の電子のエネルギーが低下し、当該電子が入力光と同じエネルギー帯の電子となる。このため、当該エネルギーが低下した電子も誘導放出し、入力光の増幅に用いられる。一方で、入力光よりも低いエネルギー帯の電子、すなわち入力光よりも長波長側の電子は、誘導放出することができず入力光の増幅に用いられない。このような電子は自ら発光し自然放出光となると推定される。当該自然放出光は、光の増幅とは関係のない光であり、光増幅器132におけるノイズとなり得る。なお、電子の誘電放出ではなく、正孔(ホール)の誘電放出を用いる半導体光増幅器もある。また、半導体光増幅器以外の光増幅器にも同様の現象でノイズが発生しうる。
上記に鑑み、光源131は、光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも、光増幅器132に入力される入力光の波長毎の強度分布の中心波長が長くなるように、インコヒーレントな光を発生させる。すなわち、入力光よりも長波長側の電荷が自然放出光となることが光増幅器132におけるノイズ発生の一因であるとの前提に立ち、光増幅器132に入力される入力光の強度分布の中心波長をゲイン特性の長波長側にずらして設定している。ここで、中心波長とは、強度分布やゲイン特性の半値全幅の中心値における波長のことを言う。
より詳細には、光源131は、入力光の強度分布のN値(0<N<1)の長波長側の波長が、ゲイン特性のN値の長波長側の波長よりも長くなるように、インコヒーレントな光を発生させる。上記Nは、例えば1/2とされる。この場合、図4に示されるように、入力光の振幅(強度)が1/2値(半値)となる波長のうち長波長側の波長は、ゲイン特性におけるゲインが半値となる波長のうち長波長側の波長よりも長波長である。なお、光源131は、図6に示されるように、入力光の強度の1/10値の長波長側の波長が、ゲイン特性におけるゲインの1/10値の長波長側の波長よりも長くなるように、インコヒーレントな光を発生させてもよい。
具体的に、ゲイン特性に応じた入力光の波長選択について、図5を参照して説明する。図5(a)は、ゲイン特性及び入力光の強度が1/2値となる波長幅(半値幅)を示している。また、図5(b)は、光増幅器132の入力光の波長毎の強度(振幅)を正規化した図であり、振幅の最大値が1.0として示された図である。図5(a)では、ゲイン特性が実線で示されており、ゲイン特性の半値幅が点線で示されており、ゲイン特性と中心波長が同じである入力光の半値幅が破線で示されており、半値の長波長側の波長がゲイン特性における半値の長波長側の波長よりも長波長である入力光の波長毎の強度分布が一点鎖線で示されており、当該一点鎖線で示された入力光の半値幅が二点鎖線で示されている。
図5(a)に示さるように、ゲイン特性と中心波長が同じである入力光が光増幅器132に入力された場合には、半値幅で見ると、ゲイン特性は入力光より長波長側の部分を有している。この場合、光増幅器132において入力光よりも長波長側のエネルギーの低い電荷が自然放出光となり、光増幅器132から出力される光のノイズ要因になると推定される。一方で、半値の長波長側の波長がゲイン特性における半値の長波長側の波長よりも長波長である入力光が光増幅器132に入力された場合には、半値幅で見ると、ゲイン特性は入力光より長波長側の部分を有していない。このように光増幅器132の長波長側の電荷を全て使うように励起光(入力光)の波長を選択することにより、自然放出光の発生が抑制される。その結果、光増幅器132から出力される増幅光のノイズを抑制することができる。例えば、図5(a)では、ゲイン特性の半値幅は、1245nm〜1325nmの間の約80nmとされている。この場合、図5(a)(b)に示すように、例えば入力光の半値幅を1260nm〜1375nmの約115nmとすれば、入力光の振幅の半値の長波長側の波長を、ゲイン特性のゲインの半値の長波長側の波長よりも長くすることができる。
なお、図5に示される例では、光源131は、入力光の波長幅をゲイン特性の波長幅よりも広くしているがこれに限定されない。例えば、図7に示されるように、光源131は、入力光の強度分布の中心波長がゲイン特性の中心波長よりも長く、且つ、入力光の波長幅(例えば、半値全幅)がゲイン特性の波長幅よりも狭くなるように、インコヒーレントな光を発生させてもよい。
また、増幅光における、飽和波長域は、飽和波長域ではない波長域よりも広域であってもよい。この場合、光増幅器による光増幅が飽和していない状態の強度を有する非飽和波長域に比べ、光増幅器による光増幅が飽和した状態の強度を有する飽和波長域が広域であるため、相対的に増幅光のノイズが低減された状態となる。言い換えると、光増幅器132における飽和している光の量(図8の横線)が、飽和していない光の量(図8の斜線)よりも多い状態となる。当該光の量の比は、飽和波長域の光量と非飽和波長域の光量の比が20dB以上であればよい。
次に本実施形態に係る光源装置13及び検査装置1の作用効果について説明する。
この光源装置13では、入力光に、光増幅器132がゲイン飽和となる強度の光が含まれている。図9は光増幅器132の入出力特性を示す図である。図9に示されるように、光増幅器132がゲイン飽和となる状態においては、光増幅器132の増幅特性が非線形となる。このため、ゲイン飽和とならない状態においては、入力変化に対応したノイズを含む出力の変化量が大きい。これに対し、ゲイン飽和となる状態においては、入力変化に対応したノイズを含む出力の変化量が小さくなる。これによって、入力光に含まれるノイズを低減することができる。
さらに、光源装置13では、光増幅器132の入力光の波長毎の強度分布の中心波長が、光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも長波長である。光増幅器132では、入力光の増幅に寄与しない、エネルギーの低い電荷が自然放出光となることによってノイズが発生する。すなわち、入力光の増幅に寄与しない長波長側のエネルギーの低い電荷が多いほど、光増幅器132からの増幅光のノイズが増加してしまう。この点、この光源装置13では、光増幅器132の入力光の強度分布の中心波長がゲイン特性の中心波長よりも長波長である。つまり、この光源装置13では、光増幅器132の入力光の強度分布の中心波長がゲイン特性の中心波長よりも長い(大きい)。通常、光増幅器132の入力光の強度分布の中心波長はゲイン特性の中心波長に合わせて設定される。しかし、このように、入力光の強度分布の中心波長が長波長側にずれて設定されることにより、中心波長が合わせて設定されている場合と比較して、光増幅器132における長波長側のエネルギーの低い電荷が増幅に用いられ易くなる。このことで、入力光の増幅に寄与しない長波長側の電荷を少なくすることができ、光増幅器132からの出力光のノイズを低減することができる。
図10は、本実施形態に係る光源装置13によるS/N改善効果を示す図であり、周波数に対する比較例に係るRIN(Relative Intensity Noise:相対強度雑音)を示す。RINは単位周波数あたりの光強度のゆらぎを平均光強度で割った、光強度の時間的なゆらぎを表すパラメータである。図10におけるN1はSLDのみからなる光源装置のRINを、N2はSLD及び半導体光増幅器を含んだ光源装置であって入力光の強度分布の中心波長の調整を行っていない光源装置のRINを、それぞれ示している。すなわち、入力光の強度分布の中心波長とゲイン特性の中心波長とがほぼ同じである光源装置のRINを、それぞれ示している。また、N4は、SLD及び半導体光増幅器を含んだ光源装置のRINの計測限界を示している。そして、N3は、SLD及び半導体光増幅器を含んだ光源装置であって入力光の強度分布の中心波長をゲイン特性の中心波長より長くした光源装置のRINを示している。N3は、N1と比べて5dB程度RINを低減しており、RINの計測限界であるN4に近接する程度までRINを低くすることができている。
また、入力光の強度分布のN値(0<N<1)の長波長側の波長は、ゲイン特性のN値の長波長側の波長よりも長波長である。これにより、入力光の波長域が、ゲイン特性の長波長側に、よりずれて設定されることとなるので、増幅光のノイズをより低減することができる。N値は、例えば1/2値(半値)或いは1/10値とされる。なお、一般的に、光の強度分布又はゲイン特性の1/2値における波長域の幅を半値全幅という。
また、増幅光における、光増幅器132による増幅が飽和した状態の強度を有する飽和波長域は、飽和波長域ではない波長域よりも広域である(図8参照)。これにより、光増幅器132における増幅に寄与しない電荷を少なくし、増幅光のノイズをより低減することができる。
また、光源装置13は光増幅器132から出力された増幅光の強度を調整する可変アッテネータ133(光調整手段)を備えている。これにより、光増幅器132で増幅された増幅光を、可変アッテネータ133により光の強度を自在に調整し所望の強度の光を得ることができる。
また、光増幅器132は、半導体光増幅器である。半導体光増幅器を用いることにより、確実に、入力光の強度分布の中心波長を光増幅器のゲイン特性の中心波長よりも長くすることができる。
本実施形態の検査装置1は、上述した光源装置13と、光源装置13から出力された光を半導体デバイスD上の選択領域に照射する光スキャナ14と、半導体デバイスDにテスト信号を印加するテスタ11と、テスト信号が印加された半導体デバイスDが光スキャナ14から照射された光に応じて反射した光を検出する光センサ20と、を備えている。これにより、上述した光源装置13を光プロービングにより半導体デバイスDを検査する半導体検査装置に応用することができ、プローブ光のノイズが低減することによって半導体検査の精度を向上させることができる。
図11は比較例に係る検査装置の解析画像を示す図である。比較例に係る検査装置は、SLDのみを含んだ光源装置を有している。図12は、光源装置13を含んだ検査装置1の解析画像を示す図である。図11及び12から明らかなように、光源装置13を含み、光源装置13から出力される増幅光のノイズを大きく低減している検査装置1では、解析画像が鮮明になり、故障解析等の精度が大きく向上する。
[第2実施形態]
次に、図13を参照して、第2実施形態に係る検査装置について説明する。なお、第2実施形態に係る説明では、上述した第1実施形態と異なる点について主に説明する。
第2実施形態に係る検査装置1Aは、光磁気プロービング技術により故障位置を特定する。図13に示されるように、検査装置1Aは、磁気光学結晶50を備え、また、光分割光学系27A、光センサ20a,20b、及び差動検出器52を備えている点で、第1実施形態に係る検査装置1と異なる。
磁気光学結晶50は、磁気光学効果により、半導体デバイスDで発生した磁界に応じて、入力された光の偏光状態を変化させる。これにより、例えば半導体デバイスDにおいて故障が発生している際に、当該故障に起因した通常とは異なる磁界の変化を、光の偏光状態として出力することができる。当該光の偏光状態は、光センサ20a,20b(後述)によって光の強度として取得される。磁気光学結晶50は、半導体デバイスDに対向して配置されており、例えば当接して配置される。光源装置13から出力された光は、光分割光学系27A、光スキャナ14、及び対物レンズ15を介して磁気光学結晶50の任意の箇所に照射される。また、磁気光学結晶50が反射した光は、光分割光学系27A等を介して光センサ20a,20bによって検出される。光センサ20a,20bはそれぞれ磁気光学結晶50からの光を検出し、当該検出した光の強度を差動検出器52に出力する。差動検出器52は、入力された光の差動を検出することにより反射光の強度を検出し、検出信号としてアンプ21に出力する。
光分割光学系27Aは、コリメータ16,19a,19bと、PBS17a,17bと、偏向回転素子51a,51bと、を含んで構成されている。光源装置13からの光が光スキャナ14を介して磁気光学結晶50に照射される際には、まず、光源装置13からの光がコリメータ16を介してPBS17bに入力される。PBS17bは、偏向成分が0度の光を透過し90度の光を反射するように設定されている。また、PBS17bは、コリメータ16からの光の偏光に合わせて設定されている。そのため、PBS17bはコリメータ16からの光を透過する。PBS17bを透過した偏光成分が0度の光は、入力光の偏光面を45度傾ける(回転させる)偏向回転素子51bに入力され、その偏光成分が45度となる。
偏向回転素子51bを透過した光は、PBS17aに入力される。PBS17aは、偏向成分が45度の光を透過し135度の光を反射するように設定されている。よって、偏向回転素子51を透過した光はPBS17aを透過する。PBS17aを透過した偏向成分が45度の光は、入力光の偏光面を22.5度傾ける(回転させる)偏向回転素子51aを透過して、その偏光成分が67.5度となり、光スキャナ14に入力される。当該光は、対物レンズ15を介して磁気光学結晶50に照射される。
磁気光学結晶50からの反射光(戻り光)は、対物レンズ15及び光スキャナ14を介して偏向回転素子51aに入力される。当該反射光(戻り光)は偏向回転素子51aをもう一度透過することによって偏向成分が22.5度傾き、90度となる。当該偏向成分が90度の反射光はPBS17aによって偏向成分が45度の光及び135度の光に分割される。偏向成分が135度の光は、PBS17aにて反射しコリメータ19aを介して光センサ20aに入力される。当該光からは、「戻り光(反射光)量の半分+カー効果に応じた光量」の信号を検出することができる。一方、偏向成分が45度の光は、PBS17aを透過し、偏向回転素子51によって偏光面を45度傾けられて偏光成分が90度の光となりPBS17bに入力される。当該偏向成分が90度の光は、PBS17bにて反射しコリメータ19bを介して光センサ20bに入力される。当該光からは、「戻り光(反射光)量の半分−カー効果に応じた光量」の信号を検出することができる。そして、光センサ20a,20bが検出した光の差動が差動検出器52によって検出され、反射光の強度を示す検出信号がアンプ21に出力される。これにより、カー効果(偏光の回転量)に応じた光信号を検出することができる。このことで、半導体デバイスDで発生している磁界(磁場強度)の変化を推定することができ、例えば、故障に起因した、通常とは異なる磁界の変化を検出することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、光源及び光増幅器がそれぞれ1つである例を説明したがこれに限定されず、光源(例えばSLD)が2つ設けられた構成であってもよい。すなわち、図14に示されるように、光源131a及び光源131bがそれぞれ光カプラ138に光学的に結合され、当該光カプラ138が光増幅器132に光学的に結合された構成であってもよい。この場合、図15に示されるように、例えば光源131bから出力されて光カプラ138に入力される入力光の強度分布の中心波長は光増幅器132のゲイン特性の中心波長と同じとされるのに対し、光源131aから出力されて光カプラ138に入力される入力光の強度分布の中心波長は、光増幅器132のゲイン特性の中心波長よりも長くされる。そして、光源131aから出力された光と、光源131bから出力された光とを合わせた光が入力光として光増幅器132に入力される。
また、SLD等の光源及び光増幅器に加えて、光源装置がBEF(Band Eliminator Filter)を備えていてもよい。BEFはSLD等の光源と光学的に接続されており、光出力のピーク波長の強度を抑制して半値幅(半値全幅)を広げることで、相対的に波長幅を広げるフィルタである。すなわち、BEFは選択した波長域の光を減衰させる効果を持つ。図16(a)に示されるように、BEF180には、例えば、光増幅器132によって増幅された増幅光が入力される。或いは、図16(b)に示されるように、BEF180には光源131から出力された光が入力され、BEF180は光増幅器132に向けて減衰後の光を出力する。或いは、図16(c)に示されるように、BEF180はBEF180a,180bを含んで構成されており、BEF180aに光源131から出力された光が入力され、BEF180bに光増幅器によって増幅された増幅光が入力される。
図17は、図16(b)に示した光源装置から出力される光を説明するための図である。図17(a)は光源131から出力される光の、規格化波長毎の強度を示している。図17(b)は、光源131から出力された光が入力されるBEF180の特性を示しており、入力された光の各規格化波長についての強度の低減量を示している。図17(b)に示されるように、BEF180は、光源131から出力された光の波長に対する強度分布のピーク値を低減させるように設定されている。図17(c)は、BEF180によって強度分布のピーク値が低減された光(強度分布のピークが抑制された光)であって光増幅器132に入力される入力光を示している。BEF180によるピーク値の低減が行われることにより、図17(a)に示された光源131から出力された光では強度分布の半値全幅が0.04であったが、図17(c)に示された光増幅器132に入力される光では強度分布の半値全幅が0.08となっている。図18に示されるように、入力光の波長幅が広がることにより、光増幅器132のゲイン特性の長波長側のエネルギーの低い電子が増幅に寄与し易くなる。
また、上記実施形態では、入力光の波長毎の強度を示す強度分布の中心波長を光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも長波長とするために、光源131が発生する光の波長を調整したり、光源131から出力された光をBEF180を用いて調整したりしたが、これに限らず、光増幅器132に印加する電流または電圧などの制御信号を調整することで、光増幅器132のゲイン特性を調整し、入力光の波長毎の強度を示す強度分布の中心波長を光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも長波長としてもよい。また、光増幅器132はその温度によってもゲイン特性を調整できるため、光増幅器132の温度を調整することで、入力光の波長毎の強度を示す強度分布の中心波長を光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも長波長としてもよい。
また、光増幅器132は、低温状態にて入力された入力光を増幅すると、増幅光におけるノイズの発生を抑制できる。従って、入力光の波長毎の強度を示す強度分布の中心波長を光増幅器132の波長毎のゲインを示すゲイン特性の中心波長よりも長波長とした上で、光増幅器132を低温状態とすると、よりノイズを抑制することができる。なお、低温状態とは、光増幅器132を0℃(32°F)以下とすることをいう。また、光増幅器132は、その種類や個体によっては上述のように低温状態とするだけでなく、ある一定の温度状態となるように調整することであっても、同様に増幅光におけるノイズの発生を抑制できる。光増幅器の駆動電流による発熱分を抑制するだけでもノイズを抑制する効果がある。一定の温度とは、例えば常温(20℃〜25℃(68°F〜77°F))であるが、他にも使用する光増幅器の種類や個体ごとの特性に好適な温度を一定の温度状態として適宜採用してもよい。
光源装置は温度調整部(不図示)を有することで、光増幅器の温度を調整する。例えば温度調整部として温度センサ(サーミスタ等)や温度調整素子(ペルチェ素子等)を有する光増幅器を用いることで温度を調整することができる。このような光増幅器を用いると、サーミスタからコンピュータ23へ光増幅器の温度が出力され、その温度が所望の温度となるようにペルチェ素子に電流や電圧を掛けることで、光増幅器の温度を調整することができる。なお、温度調整素子はペルチェ素子以外でもよく、水冷循環器やヒーター等を用いて構成されていてもよい。また、温度調整部は一部が光増幅器と別体となって構成されていてもよい。
また、本発明における光源装置は、複数の光増幅器を有して構成されていてもよく、複数の光調整手段(可変アッテネータ)を有して構成されていてもよい。例えば図19(a)に示される光源装置の構成のように、光源131から出力された光を2つの光増幅器132a及び光増幅器132bで増幅するように配置することで、光源装置から最終的に出力される光の高周波側のノイズをより低減することができる。また、図19(a)に示されるように、光増幅器132a及び光増幅器132bの間に可変アッテネータ133aを配置することで、光増幅器132aから出力された光を、光増幅器132bにおいてノイズを低減するための最適な光強度に調整して、光増幅器132bに入力することができる。そして、光増幅器132bから出力された光は、可変アッテネータ133bに入力される。図19(a)は光増幅器と可変アッテネータをそれぞれ2つずつ用いた光源装置を示しているが、図19(b)のようにそれぞれ3つずつ用いて光源装置を構成してもよい。すなわち、光増幅器132a,132b,132cを備える構成とし、光増幅器132a及び光増幅器132bの間に可変アッテネータ133aを配置し、光増幅器132b及び光増幅器132cの間に可変アッテネータ133bを配置し、光増幅器132cから出力された光が可変アッテネータ133cに入力される構成としてもよい。
さらに、本発明の一態様に係る光源装置13は、半導体デバイスを検査する検査装置に限らず、生体試料や工業製品を観察する顕微鏡装置など他の用途へ応用してもよい。