以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による、2ホップ協力伝送を行う通信システムの構成を示す図である。図1において、無線局S1と無線局S2は、無線ネットワーク1に属する任意の1つの無線局ペアである。ここで、無線局S1と無線局S2の通信方向を限定する必要はなく、無線局S1から無線局S2への通信、無線局S2から無線局S1への通信、あるいは無線局S1と無線局S2との双方向での通信のいずれであってもよい。すなわち、以下の説明において、送信局とは、無線局S1、S2のどちらか一方であり、これに対する受信局とは、無線局S1、S2の他方であることを意味する。
次に、R1、R2、…、RNは、無線局S1と無線局S2との間の通信を協力する中継局を表し、中継局R1、R2、…、RNの集合を、無線局S1と無線局S2との間の中継局グループという。更に、符号を記していない丸2−1〜2−5は、無線局S1と無線局S2の通信に協力せず、中継局としても選択されていない無線局を示している。また、上記無線局S1、S2、R1〜RNのいずれも、AP(Access Point;アクセスポイント)、あるいはSTA(Station;端末)にも限定されない。
図2は、各無線局(無線局S1、無線局S2、無線局R1、無線局R2、・・・、無線局RP)の内部構成を示すブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみ抽出して示してある。同図に示すように、無線局10は、アンテナ11、無線通信部12、及び通信制御部13を備える。
アンテナ11は、無線信号を送受信する。同図においては、アンテナ11を複数備える場合を示しているが、1つでもよい。
無線通信部12は、無線信号の送信処理、受信処理、及び中継処理を行う。中継処理は、受信処理によってアンテナ11が受信した無線信号を復調ないし復号して得たデータを、送信処理によって符号化・変調してアンテナ11に出力してもよく、アンテナ11が受信した無線信号の増幅のみを行ってアンテナ11に出力してもよい。
通信制御部13は、無線通信部12を制御し、ルート選択部14、通信権取得部15、無線リンク情報取得部16、伝送レート算出部17、リソース割当部18、及び伝送制御部19を備える。
図3では、本第1実施形態による通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。まず、無線ネットワーク1の中で送信フレームを持つ無線局同士が媒体アクセス方式に従って通信権を競合する(ステップS1)。例えば、無線LAN(Local Area Network)の場合には、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式の送信フレームを持つ複数の無線局が通信権を競い合う。
次に、無線ネットワーク1の無線局は、競合の結果、ある無線局が媒体アクセス方式に従って無線ネットワーク1の中での通信権を獲得する(ステップS2)。例えば、図1に示す無線局S1が図示する無線ネットワーク1内での通信権を獲得する。
次に、その通信権を獲得した無線局S1は、自身が持つ送信フレームがマネジメントフレームの場合には、ネットワークマネジメントに関する通信を実施し、そのネットワークマネジメントの中で中継局グループの形成(中継局の選定と事実上同じことである)を実施する(ステップS3)。一方、その通信権を獲得した無線局S1は、自身が持つ送信フレームが制御フレーム、あるいはデータフレームの場合には、送受信局間の制御に必要な通信、あるいは送受信局間におけるデータ通信を実施する(ステップS4)。
次に、いずれの送受信局間の通信が完了した後、通信権を獲得した無線局S1は、無線ネットワーク1に通信権を解放する(ステップS5)。その後、ステップS1に戻り、無線ネットワーク1に属する送信フレームを有する複数の無線局が、媒体アクセス制御方式、例えば無線LANで使用するCSMA/CAなどの方式を用いて、再び無線通信媒体の通信権の競合いを開始する。
図4は、本第1実施形態において、マネジメントフレームの通信(図3に示すステップS3)、及び制御フレーム・データフレームの通信(図3に示すステップS4)の部分を説明するためのフローチャートである。なお、図3に対応するステップには同一の符号を付けて説明を省略する。まず、通信権を獲得した無線局(例えば、無線局S1)が、制御フレーム、あるいはデータフレームを送信する送信局であり、その送信局が自分の受信局(例えば、図1に示す無線局S2)との間に中継局グループ(例えば、図1に示す中継局R1、R2、…、RN)が存在するか否かを、いままでの中継局グループの形成の結果に基づいて判断する(ステップS10)。
次に、上記判断の結果として、送信局と受信局との間に中継局グループが存在しない場合には(ステップS10のNO)、送信局と受信局との間で、中継局グループなしのデータ伝送のための前処理制御を実施し(ステップS11)、中継グループなしのデータ伝送(必要あれば、そのデータ伝送の成否応答も含める)を実施する(ステップS12)。
一方、上記判断の結果として、送信局と受信局との間に中継局グループが存在する場合には(ステップS10のYES)、送信局と受信局との間で、中継局グループありのデータ伝送のための前処理制御を実施し(ステップS13)、中継グループありのデータ伝送(必要あれば、そのデータ伝送の成否応答も含める)を実施する(ステップS14)。
図5(a)〜(c)は、本第1実施形態による伝送手順(図3、図4)を時間軸上に置き換えたフレームシーケンス図である。図5(a)に示すように、無線ネットワーク1は、マネジメントフレームを送信する無線局と制御・データフレームを送信する無線局とによって、一定の頻度で通信媒体が占有(通信権が獲得されてから通信権が解放されるまでの間に状態)されている。無線LANでは、この通信媒体を占有する頻度、等価的にマネジメントフレームと制御・データフレームとの優先度を制御するには、EDCA(Enhanced Distributed Channel Access)という優先制御を行う方式などがある。
無線局は、優先度に対応するキュー(Queue、待ち行列)を持ち、媒体アクセス時には、フレーム間隔(Inter Frame Space)や、バックオフアルゴリズムの乱数発生範囲などを制御することにより、優先度の高い送信フレームに対してより高い確率で通信権が得られるように、統計的に優先制御を実現する。また、無線LANでは、Beaconフレームなど、さまざまなマネジメントフレームを使用することが可能である。
また、図5(b)に示すように、制御・データフレームを送信する際に、送信局と受信局との間に中継局グループが存在しない場合には、送信局と受信局との間で、中継局グループを考慮しないデータ伝送の前処理、及び中継グループを考慮しないデータ伝送(必要あれば、そのデータ伝送の成否応答も含める)を実施する。一方、判断の結果として、送信局と受信局との間に中継局グループが存在する場合には、送信局と受信局との間で、中継局グループを考慮するデータ伝送の前処理、及び中継グループを考慮するデータ伝送(必要あれば、そのデータ伝送の成否応答も含める)を実施する。
更に、図5(c)に示すように、送信局と受信局との間に中継局グループが存在する場合には、送信局と受信局との間の通信に協調伝送技術を適用することが可能となる。この場合には、中継局グループも参加する協調型データ伝送のための、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御が必要になる。以下では、その前処理制御の詳細について説明する。
中継局を導入しない従来の送信局と受信局との間の直接伝送では、送信局と受信局との間の直接無線リンクだけが存在し、この直接無線リンクに関するさまざまな情報を送信局、及び受信局が把握できれば、通信品質を高めるためのさまざまな制御が可能になる。一方、1つ、あるいは複数の中継局を導入する、送信局と中継局と受信局との間の協力伝送では、送信局と受信局との間の直接無線リンク以外に、送信局と中継局との間の中継無線リンク、及び中継局と受信局との間の中継無線リンクが存在する。それらの直接、及び中継無線リンクに関するさまざまな情報を、一か所、あるいは複数個所に集約できれば、その情報に基づいた通信品質を高めるためのさまざまな制御(例えば、中継伝送における通信リソース割当や、ビームフォーミングウェート生成など)が可能となる。
本第1実施形態による、中継局グループも参加する協調型データ伝送のための、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、送信局と受信局との間の直接無線リンク、及び送信局と中継局との間の中継無線リンク、及び中継局と受信局との間の中継無線リンクに関するさまざまな情報を、一か所、あるいは複数個所に集約する仕組みを確立する。
その結果、集約されたリンク情報に基づいた通信品質制御が可能になる。
ここでいう無線リンク情報とは、ある無線局ペア間の通信に利用できるさまざまな情報を意味する。例えば、無線リンク情報として、無線伝搬路情報(CSI:Channel State Information)、受信信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise power Ratio)情報、変調方式符号化方式(MCS:Modulation Coding Scheme)情報、トラフィック(TSI:Traffic State Information)情報などのさまざまな無線リンクに関連する情報が考えられる。無線伝搬路情報、受信信号対雑音電力比情報は、無線通信部12におけるトレーニング信号などの受信状態から間接的な情報として得ることができる。また、変調方式符号化方式は、送信元の無線局10が前処理制御フレームなどに設定した情報から直接得ることができる。また、トラフィック情報は、無線通信部12において受信した無線信号の送信元を監視することにより得ることができる。
無線リンク情報の集約後は、通信リソースの割り当て処理を実行する。
リソース割り当て情報RAI(Resource Allocation Information)をデータ伝送する前に、通信リソースの割り当て結果を制御フレーム(例えば、Extended CTS)を用いて各関連ノードに周知する。
なお、本第1実施形態において、用いるリンク情報の種類によって、その技術の適用範囲が制限されるものではない。従って、実システムへの応用の際には、ここで列挙したリンク情報に限定する必要はない。本第1実施形態による送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、通信シナリオに応じていくつものパターンに分類できる。本第1実施形態では、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間が通信可能であり、また諸リンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜N)に集約するパターンについての具体例を説明する。更に分かりやすいように、該当パターンにおいて中継局の数が1個と、4個と、任意N個とに場合分けして説明する。
(中継局1個)
まず、中継局Rの数が1個の場合について説明する。
図6は、本第1実施形態において、中継局Rが1個の場合の通信システムを示す概念図である。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S1R1、無線局S2と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S2R1で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で3個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1を中継局R1に集約することを考える。
図7は、本第1実施形態において、中継局Rが1個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。図7において、横軸は時間を示している。4つの時間軸があり、一番上部の1つの時間軸には、無線局S1、無線局S2、中継局R1が送信する送信制御フレーム(太実線枠、斜線背景のブロック)をつなげた前処理制御シーケンスの全体を記している。残り下部の3つの時間軸には、それぞれ無線局S1、中継局R1、無線局S2が送信する送信制御フレーム、及びそれらが無線リンクを通して受信する受信制御フレーム(実線枠、白い背景のブロック)を時間の順番で分解して記している。
以下では、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS(Request to Send:送信要求)制御フレーム、CTS(Clear to Send:受信準備完了)制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1は、無線局S2及び中継局R1宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTSに関する無線局S1、無線局S2、中継局R1での詳細なやりとりは、無線局S1、無線局S2、中継局R1の時間軸にそれぞれ分解して記してある。時間ステップ#1では、無線局S1がトレーニング信号を含んだ拡張RTSを送信する。無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。
時間ステップ#2では、無線局S2は、無線局S1及び中継局R1宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1で得た無線リンク情報L−S1S2を含む。中継局R1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、中継局R1は、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1S2を受け取る。無線局S1は、本第1実施形態の情報集約対象ではないため、その受信動作の説明を省略する。
このように、時間ステップ#1と時間ステップ#2のRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムの構成が有する、全て3個の無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2が中継局R1に集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#3では、中継局R1が、集約された諸リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報(RAI:Resource Allocation Information)を無線局S1と無線局S2宛に送信し、データ伝送の開始に備える。
(中継局4個)
次に、中継局Rの数が4個の場合について説明する。
図8は、本第1実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムの構成を示す概念図である。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて、全部で9個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜4)に集約することを考える。また、4個の中継局R1、R2、R3、R4の集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、R3、R4}で表す。
図9は、本第1実施形態において、中継局グループRS1S2の中の中継局R1〜R4間の無線リンクを示す概念図である。全部合わせて6個の無線リンクが存在するが、ここで説明を簡単化するために、中継局間の無線リンクの情報集約を省略する。但し、中継局R1〜R4間の無線リンクの情報集約が必要な場合には、以下の説明する単純な拡張で実現することができる。
図10は、本第1実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。図10において、横軸は時間を示している。7つの時間軸があり、一番上部の1つの時間軸には、無線局S1、S2、中継局R1、R2、R3、R4が送信する送信制御フレーム(太実線枠、斜線背景のブロック)をつなげた前処理制御シーケンスの全体を記している。残り下部の6つの時間軸には、それぞれ無線局S1、S2、中継局R1、R2、R3、R4が送信する送信制御フレーム、及びそれらが無線リンクを通して受信する受信制御フレーム(実線枠、白い背景のブロック)を時間の順番で分解して記している。
なお、本第1実施形態においても、図7と同様に、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。また、本第1実施形態においては、9個のリンク情報を中継局R4に集約することを仮定するが、リンク情報を集約する中継局を限定するものではない。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTSに関する各関連無線局での詳細なやりとりは、下部にある各無線局に関連する時間軸に分解して記している。時間ステップ#1では、無線局S1がトレーニング信号を含んだ拡張RTSを送信する。無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4を推定する。
時間ステップ#2では、無線局S2が無線局S1及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号及び時間ステップ#1で得た直接リンク情報L−S1S2を含む。中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4を推定する。更に、中継局R4は、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1S2を受け取る。
このようにして、時間ステップ#1と時間ステップ#2のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す中継局グループRS1S2={R1、R2、R3、R4}の全ての中継局が、自身に関連する中継リンク情報を自身に集約することができる。つまり、中継局R1は、無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、中継局R2は、無線リンク情報L−S1R2、L−S2R2、中継局R3は、無線リンク情報L−S1R3、L−S2R3、中継局R4は、無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4を集約することができる。
時間ステップ#3では、中継局R1が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R1に関する中継リンク情報L−S1R1と中継リンク情報L−S2R1を含む。中継局R4は、中継局R1からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R1と無線リンク情報L−S2R1を受け取る。
時間ステップ#4では、中継局R2が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R2に関する中継リンク情報L−S1R2と中継リンク情報L−S2R2を含む。中継局R4は、中継局R2からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R2と無線リンク情報L−S2R2を受け取る。
時間ステップ#5では、中継局R3が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R3に関する中継リンク情報L−S1R3と中継リンク情報L−S2R3を含む。中継局R4は、中継局R3からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R3と無線リンク情報L−S2R3を受け取る。
このようにして、時間ステップ#1から時間ステップ#5までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する、全て9個の無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3が中継局R4に集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#6では、中継局R4が集約された無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局、つまり、中継局R1、R2、R3に送信し、データ伝送の開始に備える。
(中継局N個)
次に、中継局の数が任意N個の場合について説明する。
図11は、本第1実施形態において、中継局RがN個の場合の通信システムの構成を示す概念図である。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、…、L−S1RN、及び無線局S2と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、…、L−S2RNで表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で2N+1個の無線リンクが存在する。ここでは、それらのリンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜N)に集約することを考える。なお、N個の中継局R1〜RNの集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、…、RN}で表す。
図12は、本第1実施形態において、中継局RがN個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。なお、時間ステップ#1と時間ステップ#2とは、上述した中継局Rが4個の場合と同じであるので説明を省略する。
時間ステップ#3から時間ステップ#N+1までは、中継局R1から中継局RN−1まで順番に自身に集約した中継リンク情報を、拡張CTS制御フレームを通して、中継局RNに送信する。
このようにして、無線局S1、S2、及び中継局R1〜RNとの間における、時間ステップ#1から時間ステップ#N+1までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図11に示す通信システムが有する、全て2N+1個の無線リンク情報が中継局RNに集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#N+2では、中継局RNが集約された諸リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局に送信し、データ伝送の開始に備える。
上述した第1実施形態によれば、データ転送に先立って、無線局S1、S2、及び中継局Rの間で、制御フレームを送受信し、その中のトレーニング信号を用いることで、無線局S1と無線局S2間、無線局S1と中継局R間、及び中継局Rと無線局S2間におけるリンク情報を、中継局Rに集約することができる。
(第2実施形態)
本第2実施形態において、上述した第1実施形態の図1から図5までの部分は同様であるので説明を省略する。本第2実施形態において、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、通信シナリオに応じていくつものパターンに分類できる。本第2実施形態では、送信局と受信局との間が通信可能、あるいは通信不可能の双方の可能性がある場合に、諸リンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜N)に集約するパターンについての具体例を説明する。更に分かりやすいように、該当パターンにおいて中継局の数が1個と、4個と、任意N個とに場合分けして説明する。
(中継局1個)
まず、中継局Rの数が1個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図6に示すように、中継局Rが1個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S1R1、無線局S2と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S2R1で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で3個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1を、中継局R1に集約することを考える。
図13は、本第2実施形態において、中継局Rが1個の場合の通信システムに対応する前処理制御のフレームシーケンス図である。ここで、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局R1宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間は通信可能であれば、無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。
時間ステップ#2では、中継局R1が無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。これは、無線局S1と無線局S2との間で通信できない場合に備えて、中継局R1から制御フレームを出し、無線局S2に対して無線局S1がすでに制御フレームを出していることを知らせて、無線局S2に制御フレームを出すタイミングを通知する役割を果たしている。
時間ステップ#3では、無線局S2が無線局S1及び中継局R1宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1で得たリンク情報L−S1S2(無線局S1と無線局S2が通信可能な場合のみ)を含む。中継局R1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1S2(無線局S1と無線局S2が通信可能な場合)を受け取る。
このように、時間ステップ#1から時間ステップ#3までのRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムが有する、全て3個の無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2が中継局R1に集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#4では、中継局R1が集約された諸リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報(RAI)を無線局S1と無線局S2宛に送信し、データ伝送の開始に備える。
(中継局4個)
次に、中継局Rの数が4個の場合について説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図8に示すように、中継局Rが4個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で9個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜4)に集約することを考える。また、4個の中継局R1、R2、R3、R4の集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、R3、R4}で表す。
図14は、本第2実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。上述した中継局1個の場合と同様に、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。ここで、本第2実施形態においては、9個のリンク情報を中継局R4に集約することを仮定するが、リンク情報を集約する中継局を限定するものではない。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。一方、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4を推定する。
時間ステップ#2では、中継局R4が無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。これは、無線局S1と無線局S2との間で通信できない場合に備えて、中継局R4から制御フレームを出し、無線局S2に対して無線局S1がすでに制御フレームを出していることを知らせて、無線局S2に制御フレームを出すタイミングを通知する役割を果たしている。但し、知らせの制御フレームを送信する中継局は、中継局R4に限定する必要はなく、ほかの中継局でもよい。
時間ステップ#3では、無線局S2が無線局S1及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1で得た直接リンク情報L−S1S2(無線局S1と無線局S2が通信可能な場合のみ)を含む。中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4を推定する。更に、中継局R4は、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1S2(無線局S1と無線局S2が通信可能な場合のみ)を受け取る。
このように、時間ステップ#1、#2、#3のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す中継局グループRS1S2={R1、R2、R3、R4}の全ての中継局が、自身に関連する中継リンク情報を自身に集約することができる。つまり、中継局R1は、無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、中継局R2は、無線リンク情報L−S1R2、L−S2R2、中継局R3は、無線リンク情報L−S1R3、L−S2R3、中継局R4は、無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4を集約することができる。
時間ステップ#4では、中継局R1が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R1に関する中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1を含む。中継局R4は、中継局R1からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R1とL−S2R1を受け取る。
時間ステップ#5では、中継局R2が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R2に関する中継リンク情報L−S1R2とL−S2R2を含む。中継局R4は、中継局R2からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R2とL−S2R2を受け取る。
時間ステップ#6では、中継局R3が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#2で得た中継局R3に関する中継リンク情報L−S1R3とL−S2R3を含む。中継局R4は、中継局R3からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R3とL−S2R3を受け取る。
このように、無線局S1、S2、及び中継局R1〜R4との間における、時間ステップ#1から時間ステップ#6までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する、全て9個の無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3が中継局R4に集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#7では、中継局R4が集約された無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局、つまり、中継局R1、R2、R3に送信し、データ伝送の開始に備える。
(中継局N個)
次に、中継局Rの数が任意N個の場合について説明する。
すなわち、第1実施形態と同様に、図11に示すように、中継局RがN個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、…、L−S1RN、及び無線局S2と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、…、L−S2RNで表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で2N+1個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜N)に集約することを考える。なお、N個の中継局の集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、…、RN}で表す。
図15は、本第2実施形態において、中継局RがN個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。なお、時間ステップ#1から時間ステップ#3は、上述した中継局Rが4個の場合と同じであるので説明を省略する。
時間ステップ#4から時間ステップ#N+2までは、中継局R1から中継局RN−1まで順番に自身に集約した中継リンク情報を、拡張CTS制御フレームを通して、中継局RNに送信する。
このように、無線局S1、S2、及び中継局R1〜RNとの間において、時間ステップ#1から時間ステップ#N+2までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図11に示す通信システムが有する、全て2N+1個の無線リンク情報が中継局RNに集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#N+3では、中継局RNが集約された諸リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局に送信し、データ伝送の開始に備える。
このように、本第2実施形態では、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方の可能性を考慮した制御フレームシーケンスを実現している。
上述した第2実施形態によれば、データ転送に先立って、無線局S1、S2、及び中継局Rの間で、制御フレームを送受信し、その中のトレーニング信号を用いることで、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方において、無線局S1、S2、及び中継局Rとの間の全ての無線リンク情報を、中継局Rに集約することができる。
(第3実施形態)
本第3実施形態において、上述した第1実施形態の図1から図5までの部分は同様であるので説明を省略する。本第3実施形態において、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、通信シナリオに応じていくつものパターンに分類できる。本第3実施形態では、送信局と受信局との間が通信可能である場合に、諸リンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約するパターンについての具体例を説明する。更に分かりやすいように、該当パターンにおいて、中継局の数が1個と、4個と、任意N個とに場合分けして説明する。
(中継局1個)
まず、中継局Rの数が1個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図6に示すように、中継局Rが1個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S1R1、無線局S2と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S2R1で表している。本第3実施形態では、直接リンクと中継リンクを合わせて全部で3個の無線リンクを、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2に集約することを考える。
図16は、本第3実施形態において、中継局Rが1個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。上述したように、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局R1宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。
時間ステップ#2では、無線局S2が無線局S1及び中継局R1宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。無線局S1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。
このように、時間ステップ#1、#2のRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムが有する中継局R1に関連する2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1が中継局R1に集約できたことが分かる。従って、中継局R1は、2個の中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1との差分情報を算出することができる。例えば、リンク情報が無線伝搬路の場合には、差分情報は、2個の中継リンクにおける伝搬路情報の差分を表す。また、リンク情報がSNR(Signal and Noise Ratio)の場合には、差分情報は、2個の中継リンクにおけるSNRの差分を表す。ここで、中継局R1における差分情報を次のように定義する。
D−R1=L−S2R1−L−S1R1(あるいは、D−R1=L−S1R1−L−S2R1)
最後に、時間ステップ#3では、中継局R1は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L-S1R1、L-S2R1から算出した差分情報D−R1を含む。
無線局S1は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。更に、無線局S1は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R1も算出できる。
L−S2R1=L−S1R1+D−R1(あるいは、L−S2R1=L−S1R1−D−R1)
一方、無線局S2は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、無線局S2は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R1も算出できる。
L−S1R1=L−S2R1−D−R1(あるいは、L−S1R1=L−S2R1+D−R1)
このように、時間ステップ#1、#2、#3のRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムが有する、全て3個の無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。本第3実施形態では、無線リンク情報L−S1R1や、無線リンク情報L−S2R1を、制御フレームに直接乗せて送信するのではなく、それらの差分情報を乗せて送信することで、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2の双方で、図6に示す通信システムが有する、全て3個の無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2を推定可能としている。一般的には、差分情報は、元情報よりも必要とする格納容量が少ないため、制御フレームを短縮し、通信の高効率化につなげることができる。
本第3実施形態によれば、無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全てのリンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2に基づいて通信品質を向上させるための制御が可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレーム、あるいはデータフレームに乗せて送信することで、中継局R1に周知することができる。
(中継局4個)
次に、中継局Rの数が4個の場合について説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図8に示すように、中継局Rが4個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で9個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約することを考える。
図17は、本第3実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。上述した中継局1個の場合と同様に、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4を推定する。
時間ステップ#2では、無線局S2が無線局S1及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。無線局S1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4を推定する。
このように、時間ステップ#1と時間ステップ#2のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する中継局R1に関連する2個の中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1が中継局R1に集約できたことが分かる。従って、中継局R1は、2個の中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1との差分情報を算出することができる。ここで、中継局R1、R2、R3、R4における差分情報をそれぞれ次のように定義する。
D−R1=L−S2R1−L−S1R1(あるいは、D−R1=L−S1R1−L−S2R1)
D−R2=L−S2R2−L−S1R2(あるいは、D−R2=L−S1R2−L−S2R2)
D−R3=L−S2R3−L−S1R3(あるいは、D−R3=L−S1R3−L−S2R3)
D−R4=L−S2R4−L−S1R4(あるいは、D−R4=L−S1R4−L−S2R4)
時間ステップ#3では、中継局R1は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1から算出した差分情報D−R1を含む。
無線局S1は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。更に、無線局S1は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R1も算出できる。
L−S2R1=L−S1R1+D−R1(あるいは、L−S2R1=L−S1R1−D−R1)
無線局S2は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、無線局S2は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R1も算出できる。
L−S1R1=L−S2R1−D−R1(あるいは、L−S1R1=L−S2R1+D−R1)
時間ステップ#4では、中継局R2は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R2、L-S2R2から算出した差分情報D−R2を含む。
無線局S1は、中継局R2からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R2と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R2を推定する。更に、無線局S1は、中継局R2における2個の中継リンクに関する差分情報D−R2を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R2も算出できる。
L−S2R2=L−S1R2+D−R2(あるいは、L−S2R2=L−S1R2−D−R2)
無線局S2は、中継局R2からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R2と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R2を推定する。更に、無線局S2は、中継局R2における2個の中継リンクに関する差分情報D−R2を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R2も算出できる。
L−S1R2=L−S2R2−D−R2(あるいは、L−S1R2=L−S2R2+D−R2)
時間ステップ#5では、中継局R3は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R3、L−S2R3から算出した差分情報D−R3を含む。
無線局S1は、中継局R3からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R3と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R3を推定する。更に、無線局S1は、中継局R3における2個の中継リンクに関する差分情報D−R3を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R3も算出できる。
L−S2R3=L−S1R3+D−R3(あるいは、L−S2R3=L−S1R3−D−R3)
無線局S2は、中継局R3からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R3と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R3を推定する。更に、無線局S2は、中継局R3における2個の中継リンクに関する差分情報D−R3を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R3も算出できる。
L−S1R3=L−S2R3−D−R3(あるいは、L−S1R3= L−S2R3+D−R3)
時間ステップ#6では、中継局R4は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R4、L−S2R4から算出した差分情報D−R4を含む。
無線局S1は、中継局R4からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R4と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R3を推定する。更に、無線局S1は、中継局R4における2個の中継リンクに関する差分情報D−R4を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R4も算出できる。
L−S2R4=L−S1R4+D−R4あるいは、L−S2R4=L−S1R4−D−R4)
無線局S2は、中継局R4からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R4と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R4を推定する。更に、無線局S2は、中継局R3における2個の中継リンクに関する差分情報D−R4を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R4も算出できる。
L−S1R4=L−S2R4−D−R4(あるいは、L−S1R4=L−S2R4+D−R4)
このように、時間ステップ#1から#6のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する、全て9個の無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。
無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全ての無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3に基づいて通信品質を向上させるための制御を行うことが可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレーム、あるいはデータフレームに乗せることで、中継局グループRS1S2に周知させることができる。
(中継局N個)
次に、中継局Rの数が任意N個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図11に示すように、中継局RがN個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、…、L−S1RN、及び無線局S2と中継局R1、R2、…、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、…、L−S2RNで表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で2N+1個の無線リンクが存在する。ここでは、それらのリンク情報を無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約することを考える。なお、N個の中継局R1〜RNの集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、…、RN}で表す。
図18は、本第3実施形態において、中継局RがN個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。なお、時間ステップ#1と時間ステップ#2は、上述した第2実施形態において、中継局が4個の場合と同じであるので説明を省略する。
時間ステップ#3から時間ステップ#N+2までは、中継局R1から中継局RNまで順番に自身に集約した中継リンク情報と各中継局R1〜RNが自身における中継リンクの差分情報とを、拡張CTS制御フレームに乗せて、無線局S1と無線局S2に送信する。
このように、無線局S1、S2、及び中継局R1〜RNとの間における、時間ステップ#1から時間ステップ#N+2までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図11に示す通信システムが有する、全て2N+1個の無線リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。
無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全てのリンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1に基づいて通信品質を向上させるための制御が可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレーム、あるいはデータフレームに乗せて送信することで、中継局グループRS1S2に周知させることができる。
上述した第3実施形態によれば、データ転送に先立って、無線局S1、S2、及び中継局Rの間で、制御フレームを送受信し、その中のトレーニング信号と無線リンク情報の差分情報とを用いることで、無線局S1と無線局S2間、無線局S1と中継局R間、及び中継局Rと無線局S2間における無線リンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約することができる。
(第4実施形態)
本第4実施形態において、上述した第1実施形態の図1から図5までの部分は同様であるので説明を省略する。本第4実施形態において、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、通信シナリオに応じていくつものパターンに分類できる。本第4実施形態では、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間が通信可能、あるいは通信不可能の双方の可能性があり、また諸リンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約するパターンについての具体例を説明する。更に分かりやすいように、該当パターンにおいて、中継局の数が1個と、4個と、任意N個とに場合分けして説明する。
(中継局1個)
まず、中継局Rの数が1個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図6に示すように、中継局Rが1個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S1R1、無線局S2と中継局R1との間の中継無線リンクをL−S2R1で表している。本第4実施形態では、直接リンクと中継リンクを合わせて全部で3個の無線リンク情報L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2に集約することを考える。
図19は、本第4実施形態において、中継局Rが1個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。ここで、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局R1宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。
時間ステップ#2では、中継局R1が無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。これは、無線局S1と無線局S2との間で通信できない場合に備えて、中継局R1から制御フレームを出し、無線局S2に対して無線局S1がすでに制御フレームを出していることを知らせて、無線局S2に制御フレームを出すタイミングを通知する役割を果たしている。
時間ステップ#3では、無線局S2が無線局S1及び中継局R1宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。同様に、中継局R1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。
このように、時間ステップ#1、#2、#3のRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムが有する中継局R1に関連する2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1が中継局R1に集約できたことが分かる。従って、中継局R1は、2個の中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1との差分情報を算出できる。例えば、リンク情報が無線伝搬路の場合には、差分情報は、2個の中継リンクにおける伝搬路情報の差分を表す。リンク情報がSNRの場合には、差分情報は、2個の中継リンクにおけるSNRの差分を表す。ここで、中継局R1における差分情報を次のように定義する。
D−R1=L−S2R1−L−S1R1(あるいは、D−R1=L−S1R1−L−S2R1)
最後に、時間ステップ#4では、中継局R1は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1から算出した差分情報D−R1を含む。
無線局S1は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。更に、無線局S1は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R1も算出できる。
L−S2R1=L−S1R1+D−R1(あるいは、L−S2R1=L−S1R1−D−R1)
一方、無線局S2は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、無線局S2は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R1も算出できる。
L−S1R1=L−S2R1−D−R1(あるいは、L−S1R1=L−S2R1+D−R1)
このように、時間ステップ#1、#2、#3のRTS・CTSフレーム交換を通して、図6に示す通信システムが有する、全て3個の無線リンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。本第4実施形態では、リンク情報L−S1R1や、無線リンク情報L−S2R1を、制御フレームに直接乗せて送信するのではなく、それらの差分情報を乗せて送信することで、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2の双方に、図6に示す通信システムが有する、全て3個の無線リンクの情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2を推定可能としている。一般的には、差分情報は、元情報よりも必要とする格納容量が少ないため、制御フレームを短縮し、通信の高効率化につなげることができる。
本第4実施形態によれば、無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全てのリンク情報L−S1R1、L−S2R1、L−S1S2に基づいて通信品質を向上させるための制御が可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレーム、あるいはデータフレームに乗せて送信することで、中継局R1に周知させることができる。
(中継局4個)
次に、中継局Rの数が4個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図8に示すように、中継局Rが4個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で9個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約することを考える。
図20は、本第4実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。上述した中継局1個の場合と同様に、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンクの情報L−S1S2を推定する。同様に、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1〜R4との間の無線リンクの情報L−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4を推定する。
時間ステップ#2では、中継局R4が無線局S1と無線局S2宛に拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。これは、無線局S1と無線局S2との間で通信できない場合に備えて、中継局R4から制御フレームを出し、無線局S2に対して無線局S1がすでに制御フレームを出していることを知らせて、無線局S2に制御フレームを出すタイミングを通知する役割を果たしている。
時間ステップ#3では、無線局S2が無線局S1及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S1は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンクの情報L−S1S2を推定する。同様に、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1〜R4との間の無線リンクの情報L−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4を推定する。
このように、時間ステップ#1、#2、#3のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する中継局R1に関連する2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1が中継局R1に集約できたことが分かる。従って、中継局R1は、2個の中継リンク情報L−S1R1とL−S2R1との差分情報を算出することができる。ここで、中継局R1、R2、R3、R4における差分情報を、それぞれ次のように定義する。
D−R1=L−S2R1−L−S1R1(あるいは、D−R1=L−S1R1−L−S2R1)
D−R2=L−S2R2−L−S1R2(あるいは、D−R2=L−S1R2−L−S2R2)
D−R3=L−S2R3−L−S1R3(あるいは、D−R3=L−S1R3−L−S2R3)
D−R4=L−S2R4−L−S1R4(あるいは、D−R4=L−S1R4−L−S2R4)
時間ステップ#4では、中継局R1は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R1、L−S2R1から算出した差分情報D−R1を含む。
無線局S1は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R1を推定する。更に、無線局S1は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R1も算出できる。
L−S2R1=L−S1R1+D−R1(あるいは、L−S2R1=L−S1R1−D−R1)
無線局S2は、中継局R1からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。更に、無線局S2は、中継局R1における2個の中継リンクに関する差分情報D−R1を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R1も算出できる。
L−S1R1=L−S2R1−D−R1(あるいは、L−S1R1=L−S2R1+D−R1)
時間ステップ#5では、中継局R2は、無線局S1と無線局S2宛に拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R2、L-S2R2から算出した差分情報D−R2を含んでいる。
無線局S1は、中継局R2からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R2と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R2を推定する。更に、無線局S1は、中継局R2における2個の中継リンクに関する差分情報D−R2を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R2も算出できる。
L−S2R2=L−S1R2+D−R2(あるいは、L−S2R2=L−S1R2−D−R2)
無線局S2は、中継局R2からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R2と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R2を推定する。更に、無線局S2は、中継局R2における2個の中継リンクに関する差分情報D−R2を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R2も算出できる。
L−S1R2=L−S2R2−D−R2(あるいは、L−S1R2=L−S2R2+D−R2)
時間ステップ#6では、中継局R3は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R3、L−S2R3から算出した差分情報D−R3を含む。
無線局S1は、中継局R3からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R3と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R3を推定する。更に、無線局S1は、中継局R3における2個の中継リンクに関する差分情報D−R3を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R3も算出できる。
L−S2R3=L−S1R3+D−R3(あるいは、L−S2R3=L−S1R3−D−R3)
無線局S2は、中継局R3からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R3と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R3を推定する。更に、無線局S2は、中継局R3における2個の中継リンクに関する差分情報D−R3を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R3も算出できる。
L−S1R3=L−S2R3−D−R3(あるいは、L−S1R3=L−S2R3+D−R3)
時間ステップ#7では、中継局R4は、無線局S1と無線局S2宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得た2個の中継リンク情報L−S1R4、L−S2R4から算出した差分情報D−R4を含む。
無線局S1は、中継局R4からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R4と無線局S1との間の無線リンク情報L−S1R3を推定する。更に、無線局S1は、中継局R4における2個の中継リンクに関する差分情報D−R4を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S2R4も算出できる。
L−S2R4=L−S1R4+D−R4(あるいは、L−S2R4=L−S1R4−D−R4)
無線局S2は、中継局R4からの拡張CTS制御フレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、中継局R4と無線局S2との間の無線リンク情報L−S2R4を推定する。更に、無線局S2は、中継局R4における2個の中継リンクに関する差分情報D−R4を受け取り、それを利用して、もう一方の中継リンク情報L−S1R4も算出できる。
L−S1R4=L−S2R4−D−R4(あるいは、L−S1R4=L−S2R4+D−R4)
このように、時間ステップ#1から#7のRTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する、全て9個の無線リンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。
無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全てのリンク情報L−S1R4、L−S2R4、L−S1S2、L−S1R1、L−S2R1、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3に基づいて通信品質を向上させるための制御を行うことが可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレーム、あるいはデータフレームに乗せて送信することで、中継局グループRS1S2に周知させることができる。
(中継局N個)
次に、中継局Rの数が任意N個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図11に示すように、中継局がN個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、…、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、…、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、…、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で2N+1個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2に集約することを考える。なお、N個の中継局の集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、…、RN}で表す。
図21は、本第4実施形態において、中継局がN個の場合の通信システムに対応する前処理制御のフレームシーケンス図である。なお、時間ステップ#1から時間ステップ#3は、上述した中継局が4個の場合と同じであるので説明を省略する。
時間ステップ#4から時間ステップ#N+3までは、中継局R1から中継局RNまで順番に自身に集約した中継リンク情報と各中継局R1〜RNが自身における中継リンクの差分情報と、拡張CTS制御フレームに乗せて、無線局S1と無線局S2に送信する。
このようにして、無線局S1、S2、及び中継局R1〜RNとの間において、時間ステップ#1から時間ステップ#N+3までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図11に示す通信システムが有する、全て2N+1個の無線リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1が無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約できることが分かる。
無線局S1、あるいは無線局S2は、集約された全てのリンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1に基づいて通信品質を向上させるための制御が可能になる。その制御情報、例えばリソース割当情報RAIは、新たな制御フレームあるいはデータフレームに乗せて送信することで、中継局グループRS1S2に周知させることができる。
このように、本第4実施形態では、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方の可能性を考慮した制御フレームシーケンスを実現している。
上述した第4実施形態によれば、データ転送に先立って、無線局S1、S2、及び中継局Rの間で、制御フレームを送受信し、その中のトレーニング信号とリンク情報の差分情報とを用いることで、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方において、無線局S1、S2、及び中継局Rとの間の全ての無線リンク情報を、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2とに集約することができる。
(第5実施形態)
本第5実施形態において、上述した第1実施形態の図1から図5までの部分は同様であるので説明を省略する。本第5実施形態において、送信局、受信局、中継局の三者を含めた前処理制御部分は、通信シナリオに応じていくつものパターンに分類できる。本第5実施形態では、送信局と受信局との間が通信可能、あるいは通信不可能の双方の可能性があり、また諸リンク情報をある中継局Ri(i=1〜N)に集約するパターンについての具体例を説明する。更に分かりやすいように、該当パターンにおいて、中継局の数が4個と、任意N個とに場合分けして説明する。また、上述同様に、無線LANで採用している衝突防止制御策RTS制御フレーム、CTS制御フレームの利用を想定して更に詳細に説明する。
(中継局4個)
中継局Rが1個の場合には、前述した第2実施形態と同様であるため、ここでは、中継局Rの数が4個の場合から説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図8に示すように、中継局Rが4個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4、及び無線局S2と中継局R1、R2、R3、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4で表している。本第5実施形態では、直接リンクと中継リンクを合わせて全部で9個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報を、ある中継局Ri(i=1〜4)に集約することを考える。また、4個の中継局R1、R2、R3、R4の集合は、中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、R3、R4}で表す。
図22は、本第5実施形態において、中継局Rが4個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。ここで、本第5実施形態においては、9個のリンク情報を中継局R4に集約することを仮定するが、リンク情報を集約する中継局を限定するものではない。
時間ステップ#1では、無線局S1が無線局S2及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したRTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号を含んでいる。ここで、無線局S2と無線局S1との間が通信可能であれば、無線局S2は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と無線局S2との間の無線リンク情報L−S1S2を推定する。一方、中継グループRS1S2に属する各中継局R1〜R4は、無線局S1からの拡張RTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R1〜R4との間の無線リンク情報L−S1R1、L−S1R2、L−S1R3、L−S1R4を推定する。
時間ステップ#2では、中継局R1が無線局S2及び中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended CTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1で得た直接リンク情報L−S1R1を含む。無線局S2は、中継局R1からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S2と中継局R1との間の無線リンク情報L−S2R1を推定する。中継局R4は、中継局R1からの拡張CTSフレームを受信し、その拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R1を受け取る。
時間ステップ#3では、無線局S2が無線局S1及び中継局グループRS1S2宛に対して、拡張したCTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張RTS制御フレームは、トレーニング信号、及び時間ステップ#1、#2で得たリンク情報L−S1S2、L−S2R1を含む。中継グループRS1S2に属する各中継局R2〜R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その中のトレーニング信号を利用して、無線局S1と中継局R2〜R4との間の無線リンク情報L−S2R2、L−S2R3、L−S2R4を推定する。更に、中継局R4は、無線局S2からの拡張CTSフレームを受信し、その拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1S2とL−S2R1を受け取る。
時間ステップ#4では、中継局R2が中継局R4宛に対して、拡張したCTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#3で得た中継局R2に関する中継リンク情報L−S1R2とL−S2R2を含む。中継局R4は、中継局R2からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R2とL−S2R2を受け取る。
時間ステップ#5では、中継局R3が中継局R4宛に拡張したCTS(Extended RTS)制御フレームを送信する。その拡張CTS制御フレームは、時間ステップ#1と時間ステップ#3で得た中継局R2に関する中継リンク情報L−S1R2とL−S2R2を含む。中継局R4は、中継局R2からの拡張CTSフレームを受信し、拡張CTSに含まれる無線リンク情報L−S1R3とL−S2R3を受け取る。
このように、時間ステップ#1から時間ステップ#5までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図8に示す通信システムが有する、全て9個の無線リンク情報L−S1R4、L−S1R1、L−S2R4、L−S2R1、L−S1S2、L−S1R2、L−S2R2、L−S1R3、L−S2R3が中継局R4に集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#6では、中継局R4が集約された諸リンク情報に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局、つまり、中継局R1、R2、R3に送信し、データ伝送の開始に備える。
(中継局N個)
次に、中継局Rの数が任意N個の場合を説明する。すなわち、第1実施形態と同様に、図11に示すように、中継局RがN個の通信システムを構成する。無線局S1と無線局S2との間の直接無線リンクをL−S1S2、無線局S1と中継局R1、R2、…、RNとの間の中継無線リンクをL−S1R1、L−S1R2、…、L−S1R4、及び無線局S2とR中継局1、R2、…、R4との間の中継無線リンクをL−S2R1、L−S2R2、…、L−S2R4で表している。直接リンクと中継リンクを合わせて全部で2N+1個の無線リンクが存在する。それらのリンク情報をある中継局Rに集約することを考える。なお、N個の中継局の集合を中継局グループと呼び、RS1S2={R1、R2、…、RN}で表す。
図23は、本第5実施形態において、中継局がN個の場合の通信システムに対応する前処理制御を示すフレームシーケンス図である。なお、時間ステップ#1から時間ステップ#3は、上述した中継局Rが4個の場合と同じであるので説明を省略する。
時間ステップ#4から時間ステップ#N+1までは、中継局R2から中継局RN−1まで順番に自身に集約した中継リンク情報を、拡張CTS制御フレームを通して、中継局RNに送信する。
このように、無線局S1、S2、及び中継局R1〜RNとの間において、時間ステップ#1から時間ステップ#N+1までの拡張RTS・CTSフレーム交換を通して、図11に示す通信システムが有する、全て2N+1個の無線リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1が中継局RNに集約できることが分かる。
最後に、時間ステップ#N+2では、中継局RNが集約された諸リンク情報L−S1RN、L−S2RN、L−S1S2、L−S1R1、L-S2R1、…、L−S1RN−1、L−S2RN−1に基づいて通信制御を行い、その制御情報、例えばリソース割当情報RAIを、無線局S1と無線局S2、及び自身以外の中継局グループRS1S2内の中継局に送信し、データ伝送の開始に備える。
このように、本第5実施形態では、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方の可能性を考慮した制御フレームシーケンスを実現している。
上述した第5実施形態によれば、データ転送に先立って、無線局S1、S2、及び中継局Rの間で、制御フレームを送受信し、その中のトレーニング信号を用いることで、無線局(送信局)S1と無線局(受信局)S2との間の直接通信が可能である場合、及び不可能である場合の双方において、無線局S1、S2、及び中継局Rとの間の全ての無線リンク情報を、中継局Rに集約することができる。
上述した第1〜第5実施形態によれば、直接無線リンク、及び中継無線リンクに関する無線リンク情報を集約することができ、中継無線リンクの通信リソースを有効に活用することができる。この結果、最終的に、従来の無線ネットワークに比べ、より高いシステムスループット、短い伝送遅延などの向上した通信品質を実現することができる。