JP6052577B2 - 電磁界全身曝露評価人体模擬装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電波の安全性を評価するための電磁界全身曝露評価人体模擬装置に関するものである。
従来、電波は携帯電話や家電製品などの様々な分野で利用されている。これらの身の回りの電波の強度は人体に対して無害であると考えられているが、より高強度の電波に曝された人体に好ましくない影響を及ぼすことが報告されている。そこで、高強度の電波への人体曝露を防止するために、我が国には電波防護指針が示されている。この電波防護指針は人体の健康に好ましくない影響を及ぼさない電波の強さが示され、基礎指針、電磁界強度指針、および補助指針から構成されている。
基礎指針によれば、電波の吸収による熱作用が人体の健康に影響を及ぼすしきい値に対して十分な安全率を見込んだ数値がしめされている。この基礎指針は比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)で表わされており、特に、熱作用のうち人体の全身加熱による深部体温上昇に対しては、全身平均SARで指針値が表されている。この基礎指針には、例えば、全身平均SARの6分間の平均値が0.4W/kg以下であること、四肢における1g当たりのSAR(6分間の平均値)が25W/kg以下であること、などが定められている。なお、このようなSAR[W/kg]は、生体組織の導電率σ[S/m]、密度ρ[kg/m]、生体組織中の電界の実効値E[V/m]から、次式1で定義されている。
しかし、人体内部のSARを実験的に測定することは倫理的に困難である。そのため、基礎指針を満たしつつ実測できる物理量により安全性を評価することができる電磁界強度指針が示されている。
電磁界強度指針は、人体外部から入射する電磁界強度で指針値が設定されており、人体が吸収する電波が最大となるような最悪の条件を想定している。VHF帯では、人体が電磁波に曝露した場合に全身共振現象が起こり、人体が吸収する電力が他の周波数帯よりも大きくなる。そのため、過剰に厳しい値に設定されている場合が多い。特に人体が大地に接地している場合、大地との鏡像効果により足首での局所SARが最大となる。そのため、電磁界強度の指針値は、より厳しく設定されている。このような事情から電波防護指針では、VHF帯に関して補助指針が示されている。
補助指針によれば、所定の状況に基づいて電磁界強度指針の適用が緩和される。補助指針では、足首での局所SARが足首の誘導電流から算出されることを根拠に、人体が大地に接地している際の足首誘導電流に関する指針値が設定されている。なお、局所SAR[W/kg]と足首誘導電流I[A]、誘導電流が通過する等価的な断面積A[cm]の直接的な関係式は、次式2で定義されている。
米国特許第5394164号明細書
Whole-body averaged SAR measurement based on electric field distributions on external cylindrical boundary, Hikage,Kawamura,Nojima,EuCAP 2010 conference,Barcelona, 2010.
上記した補助指針を電波防護指針における強制規格として適用させるためには、足首誘導電流の測定法を確立させる必要がある。そこで、特許文献1に記載の発明が提案されている。
特許文献1に記載の人体等価アンテナは、人体の身長および抵抗値と等価な長手の抵抗部材が、長手の保持部材に固定されると共に、ベース部材に直立させられたことで形成されている。この人体等価アンテナによれば、電磁界に曝露した人体を流れる誘導電流に見立てて電流を測定することできる。しかし、この人体等価アンテナは、足首誘導電流の評価を目的としているため、全身平均SARを評価することができない。
また、非特許文献1に記載の平面波放射システムによれば、円筒状領域の走査技術に基づいて全身平均SARを測定することができる。しかし、この装置は電波無響室での使用を前提としているため、場所を変えてオンサイトで評価することが困難である。
効果的に電波利用設備を利用するためには、上記したように厳しく設定された電磁界強度の指針値よりも、基礎指針値(全身平均SAR)から安全性が評価されることが望まれる。これまでも人体の全身平均SARを測定するための手法について検討されてきたが、非特許文献1に記載の発明のようにいずれも専用の実験施設などが必用とされ、オンサイトで採用できるものがなかった。
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な全身平均SARを測定することができる電磁界全身曝露評価人体模擬装置の提供を目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明者は数値人体モデルを用いた理論検討を重ね、人体上部での誘導電流分布に関し、腕の影響が支配的であることを明らかにした。これに基づいて着想された本発明に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置は、人体の胴体部と腕部とから構成されている。胴体部および腕部は絶縁性のケースから形成され、それぞれのケースに液剤が封入されている。液剤の電気的定数と腕の長さとが最適化されることで、実人体と同様の誘導電流分布が得られる。この誘導電流分布から全身平均SARが求められる。すなわち、本発明は以下に示された構成である。
本発明に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置は、接地された金属板と、この金属板の表面に立てられた足部と、この足部に積載された胴体部と、この胴体部と並列させられた腕部と、前記足部内を満たすと共に前記金属板に電気的に接触した第一液剤と、前記胴体部内を満たすと共に前記第一液剤に電気的に接触した第二液剤と、前記腕部内を満たした第三液剤と、前記胴体部および前記腕部を連結すると共に、前記第二液剤および前記第三液剤を電気的に接続する肩部と、から構成され、前記第一液剤、前記第二液剤、および前記第三液剤のそれぞれが所定の導電率および比誘電率を有し、誘導電流分布が人体の誘導電流分布と近似している、ことを特徴としている。
また、前記腕部は、下方が空の空区域であり、上方が前記第三液剤で満たされた液剤区域である、ことを特徴としている。
また、前記足部、前記胴体部、および前記腕部のうち少なくとも一つが、複数のケースで構成され、複数の前記ケースを満たした前記各液剤同士を電気的に接続する金属具が備えられた、ことを特徴としている。
また、前記第二液剤の水位が前記人体の身長と略同じ高さであり、前記第三液剤の水位が前記人体の肩の位置と略同じ高さであると共に、深さが前記人体の腕の長さと略同じであり、前記肩部の位置が前記人体の肩の位置と略同じ高さである、ことを特徴としている。
本発明に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置は、上記した構成である。人体の誘導電流値は腕の長さから影響を受ける。そのため、本発明は腕部が備えられている。したがって、より簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。さらに、生体電磁界研究のみならず、通信・放送機器や高周波利用設備等の開発にも有効である。
また、各液剤を除けば装置の重量が減る。したがって、運搬が容易となり、実際に運用している放送施設や工場内高周波利用施設などの現場では難しかった全身平均SARの評価が可能となる。これにより効率的でかつ安全な電波利用が可能となる。
特に、腕部は、下方が空の空区域であり、上方が第三液剤で満たされた液剤区域である。この構成により、腕部において液剤区域を人体の腕の長さと見立てて調節することができる。したがって、より簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。
特に、足部、胴体部、および腕部のうち少なくとも一つが、複数のケースで構成され、複数のケースを満たした各液剤同士を電気的に接続する金属具が備えられている。この構成によれば各ケースの数を増減することによって、胴体部の高さや腕部の長さの変更が可能である。したがって、身長が低い小児などを想定して電磁界曝露評価が可能である。また、この構成によれば胴体部や腕部を各ケースに細分することができる。したがって、運搬がより容易となり、実際に運用している放送施設や工場内高周波利用施設などの現場では難しかった全身平均SARの評価が可能となる。これにより、より効率的でかつ安全な電波利用が可能となる。
特に、第二液剤の水位が人体の身長と略同じ高さであり、第三液剤の水位が人体の肩の位置と略同じ高さであると共に、深さが人体の腕の長さと略同じであり、肩部の位置が人体の肩の位置と略同じ高さである。この構成は人体の体形に近似している。したがって、より簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。
本発明の実施形態に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置の概略正面図である。 本発明の実施例と比較するための数値解析モデル(数値人体モデル)の概略を示した概略構成図である。 本発明の実施例と比較するための数値解析モデル(人体ファントムモデル)の概略を示した概略構成図である。 本発明の実施例と比較するための数値人体モデルの外観斜視図である。 本発明の実施例と比較するための人体ファントムモデルの概略正面図である。 本発明の実施例と比較するための数値解析モデル(数値人体モデルおよび人体ファントムモデル)の誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較するための複数種類の数値人体モデルを示し、(a)が肩から腕までが取り除かれたモデルA、(b)が肩を残して腕を取り除いたモデルB、(c)が肘から先を取り除いたモデルC、および(d)が腕を残したモデルDの概略図である。 本発明の実施例と比較するためのモデルAからDの誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較例との周波数30MHzにおける誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較例との周波数40MHzにおける誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較例との周波数60MHzにおける誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較例との周波数80MHzにおける誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例と比較例との周波数100MHzにおける誘導電流分布を比較した比較図である。 本発明の実施例および比較例の全身平均SARの相対誤差を比較した比較図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置の概略正面図である。
図1において、本実施形態に係る電磁界全身曝露評価人体模擬装置(以下、「人体ファントム」と記す。)1は、人体の形状および電気的定数に倣って形成され、人体の各部位に相当する部材、および導電性の液剤から構成されている。すなわち、接地された板状の金属板10、この金属板10の表面に直立させられた足部20、この足部20に積載された胴体部30、この胴体部30の両側に並列させられると共に金属板10の表面に直立させられた二本の腕部40、胴体部30と腕部40との上端近傍に接続された肩部としての金属コネクタ50、および各部20、30、40を満たす液剤から構成されている。
胴体部30は人体の身長に相当する高さに形成され、足部20は人体の足首の位置に相当する高さに形成されている。二本の腕部40は直立した人体の肩の位置に相当する高さに形成され、それぞれの間隔が人体の肩幅に相当する。金属コネクタ50は、直立した人体の肩の位置に相当する高さで胴体部30と腕部40とに接続されている。
足部20および胴体部30は四角柱であり、足ケース21、および複数の胴体ケース31が積載されて一列に連結されている。これと同様に腕部40は四角柱であり、複数の腕ケース41が積載されて一列に連結されている。腕部40は下方が空区域43であり、上方が液剤区域42である。すなわち、空区域43の腕ケース41と、液剤区域42の腕ケース41とに区別される。胴体ケース31、足ケース21、および腕ケース41はそれぞれ、例えばアクリル、プラスチックなどの絶縁性の素材により形成されている。なお、足ケース21は単一であるが、複数のケースによって構成されていてもよい。
胴体ケース31、足ケース21、および腕ケース41はそれぞれ中空の六面体である。各ケース31、21、および41の上面は着脱できる。積載された各ケース31、21、および41の底面および上面には連通孔(図示省略)が形成され、この連通孔に金属具51が取り付けられている。各ケース21、31、および41は金属具51によって連結されている。金属具51は金属板10と足ケース21との間にも取り付けられ、金属板10と足ケース21内とを繋いでいる。なお、金属具51が取り付けられた連通孔は、適当な方法でシールされている。
なお、各ケース31、21、および41は他の形状でもよく、これにより足部20、胴体部30、および腕部40の形状を多角柱や円柱に形成してもよい。また、高さや大きさを適宜変更してもよい。
各ケース31、21、および41は、人体誘電率模擬液剤(以下、「ファントム液剤」と記す。)で満たされている。このファントム液剤は、生体の導電率および比誘電率を模擬した所定の導電率および比誘電率を有した液体またはゲル状の物質である。ファントム液剤は、例えば水性の非イオン性界面活性剤、油性の非イオン性界面活性剤、芳香族カルボン酸塩、および水から構成されている。
水性の非イオン性界面活性剤は例えば、脂肪酸系界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類など)、高級アルコール系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類など)、アルキルフェノール系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類など)、脂肪酸アミド系界面活性剤(脂肪酸アルカノールアミド類など)などである。
油性の非イオン性界面活性剤は例えば、脂肪酸系界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類など)、高級アルコール系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類など)、アルキルフェノール系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類など)、脂肪酸アミド系界面活性剤(脂肪酸アルカノールアミド類など)などである。
芳香族カルボン酸塩は例えば、安息香酸、ナフトエ酸、トルイル酸、デヒドロ酢酸、クロロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸を含む)、ジヒドロキシ安息香酸、ジニトロ安息香酸、これらの位置異性体などである。また、芳香族カルボン酸の塩を形成するためのイオンは例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属のイオンである。
溶媒としての水は例えば、蒸留水、イオン交換水、脱イオン水などの精製水である。
また、ファントム液剤は所定の濃度の食塩水でもよい。所定の濃度とは、人体に倣った導電率、および比誘電率を有する塩化ナトリウム(NaCl)の割合をいい、また、所定の誘電率および比誘電率とは、人体の誘導電流分布に近似した誘導電流分布となる電気的定数をいう。
足ケース21および胴体ケース31はそれぞれ、第一液剤としての第一ファントム液剤22、第二液剤としての第二ファントム液剤32で満たされている。一方、空区域43の腕ケース41は空であり空気45で満たされている。液剤区域42の腕ケース41は第三液剤としての第三ファントム液剤44で満たされている。
第二ファントム液剤32は、胴体部30において人体の身長に相当する高さに水位が調節されている。第三ファントム液剤44は、腕部40において人体の肩までの高さに相当する高さに水位が調節されている。第一ファントム液剤22は金属具51により金属板10に電気的に接触し、また、ファントム液剤22、32、および44はそれぞれ、金属具51により電気的に接触している。
人体ファントム1の体形は適宜変更される。すなわち、人体ファントム1は、胴体ケース31の数の増減によって身長が変更され、また、腕ケース41の数の増減によって肩までの高さが変更される。人体ファントム1の体形の変更に伴い、第一ファントム液剤22および第三ファントム液剤44の水位は適宜調節される。すなわち、第一ファントム液剤22は、胴体部30の上端に配置された胴体ケース31において水量が増減され、水位が調節される。これと同様に第三ファントム液剤44は、腕部40の上端に配置された腕ケース41において水量が増減され、水位が調節される。
人体ファントム1は空区域43または液剤区域42の広狭が調節されることで腕の長さが変更される。すなわち、空区域43の腕ケース41が第三ファントム液剤44で満ちることで液剤区域42が拡がり、腕の長さが長くなる。一方、液剤区域42の腕ケース41が空となることで空区域43が拡がり、腕の長さが短くなる。
なお、液剤区域42の腕ケースを外側から絶縁性の支持具で固定して空区域43の腕ケース41を外し、腕部40を金属板10から浮かせてもよい。この構成により腕部40と金属板10との間が空気により絶縁される。
以上のようにして本実施形態に係る人体ファントム1が形成されている。
次に、本実施形態の効果について説明する。
上記したように、人体ファントム1は人体の形状および電気的定数に倣って形成され、人体の各部位に相当する部材、および導電性のファントム液剤から構成されている。特に、二本の腕部40が直立した人体の肩の位置に相当する高さに形成され、金属コネクタ50が直立した人体の肩の位置に相当する高さで胴体部30と腕部40とに接続されている。人体の誘導電流値は腕の長さから影響を受けるため、腕部40が形成されたことにより、簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。
また、各ファントム液剤22、32、および44を除けば人体ファントム1の重量が減る。したがって、運搬が容易となり、実際に運用している放送施設や工場内高周波利用施設などの現場では難しかった全身平均SARの評価が可能となる。これにより効率的でかつ安全な電波利用が可能となる。
複数の胴体ケース31および腕ケース41は、それぞれが積載されて一列に連結され、それぞれが第二ファントム液剤32、第三ファントム液剤44で満たされている。腕部40は、空区域43の腕ケース41と、液剤区域42の腕ケース41とに区別され、それぞれが空気45、第三ファントム液剤44で満たされている。この構成により、腕部40において液剤区域42を人体の腕の長さと見立てて調節することができる。人体の誘導電流値は腕の長さから影響を受けるため、腕部40の長さを調節することにより、より簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。
人体ファントム1は、胴体ケース31の数の増減によって身長が変更され、また、腕ケース41の数の増減によって肩までの高さが変更される。また、各ケース31および41の高さや大きさを変更することによっても身長および肩までの高さが変更される。人体ファントム1の体形の変更に伴い、第一ファントム液剤22および第三ファントム液剤44の水位は適宜調節される。この構成によれば、各ケース31および41の数を増減することによって、胴体部30の高さや腕部40の長さの変更が可能である。したがって、身長が低い小児などを想定して電磁界曝露評価が可能である。
また、この構成によれば胴体部30や腕部40を、それぞれ胴体ケース31、腕ケース41に細分することができる。したがって、運搬が容易となり、実際に運用している放送施設や工場内高周波利用施設などの現場では難しかった全身平均SARの評価が可能となり、より効率的でかつ安全な電波利用が可能となる。
第二ファントム液剤32は、胴体部30において人体の身長に相当する高さに水位が調節されている。第三ファントム液剤44は、腕部40において人体の肩の位置に相当する高さに水位が調節されている。各ファントム液剤22、32、および44は人体に倣った導電率および比誘電率であり、これにより誘導電流分布が人体の誘導電流分布と近似している。したがって、より簡便で、かつ、人体の特性に近い精密な電磁界曝露評価が可能となる。また、ファントム液剤を調節することで電気的定数を容易に変更することができる。
以上説明したように、人体ファントム1は、構成が簡便であること、VHF帯遠方界曝露において誘導される全身の人体誘導電流分布を模擬できること、を目的としている。この目的を達成するために、本発明者は人体の形状がどのように全身の人体誘導電流分布に影響しているのかを数値解析によって検討した。その結果をもとに人体ファントム1の誘導電流分布を推定し、この誘導電流分布と全身の人体誘導電流分布とを比較することで、人体ファントム1の形状および電気的定数を決定した。
そして、全身の人体誘導電流分布を評価することにより、上記した[式2]から局所SARを導き出すことができる。これにより、様々な電磁波環境でのあらゆる局所SAR評価が可能となる。また、人体誘導電流から吸収電力を計算することができるため、全身平均SARの評価も可能となる。
ここで、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。次に、比較例と共に、数値解析による人体の形状と誘導電流分布との関係を図面に基づいて説明する。
<実施例>
図1において、胴体部30は高さが173cm以上、断面が70mm×70mmである。足部22は高さが10cmであり、断面が70mm×70mmである。腕部40は高さが130cm以上、断面が60mm×60mmである。金属コネクタ50は、連結位置が金属板10から130cmの高さにある。
胴体部30は、金属板10から173cmの高さに第二ファントム液剤32の水位がある。腕部50は、金属板10から130cmの高さに第三ファントム液剤44の水位があり、40cmの高さまで空気45が満ちている。
ファントム液剤22、32、および44として、それぞれ食塩水を用いた。第一ファントム液剤22は、塩化ナトリウム(NaCl)の濃度が0.6%、比誘導率εrが82.7、導電率σが1.0である。第二ファントム液剤32は、塩化ナトリウム(NaCl)の濃度が1.1%、比誘導率εrが82.7、導電率σが1.8である。第三ファントム液剤44は、塩化ナトリウム(NaCl)の濃度が0.12%、比誘導率εrが82.7、導電率σが0.2である。
<比較例>
まず、人体誘導電流を調べるために、FDTD(Finite difference time domain)法を用いて数値シミュレーションを比較例に対して行った。比較例1および比較例2を、それぞれ図2および図3に示す。比較例1では完全導体100上に数値人体モデル60を直立させ、比較例2では人体ファントムモデル70を設置した。両者それぞれの誘導電流を計算し、比較した。
図2および図3において、曝露条件は入射波がE偏波平面波、入射方向が人体の正面である。正面が人体への吸収電力が最大になると考えられるためである。入射電力密度が1mW/cm、周波数が30、40、60、80、および100MHzである。FDTD法の計算条件は、セルサイズが2mm(数値人体モデル60の解析)、5mm(人体ファントムモデル70の解析)、各モデル60および70と吸収境界との距離が200mmである。吸収境界条件はPML8層である。
比較例1である数値人体モデル60を図4に示す。数値人体モデル60は、日本人男性の平均を模擬したものである。この数値人体モデル60は、日本人男性の平均身長および体重と合致する被験者のMRIデータを元に作られており、人体内部の組織構造も高精度に模擬されている。空間分解能が2mm、組織数が51である。
比較例2である人体ファントムモデル70を図5に示す。人体ファントムモデル70は、上記した実施形態に係る人体ファントム1と比較して腕部に相当する部分がない。
次に、誘導電流の計算方法について説明する。
数値人体モデル60の水平面内切断面を通過する電流I(z)は次式3で表される。
Sは数値人体モデルの断面である。これは導伝電流と変位電流を含む複素数であるところ、人体内部に流れる電流について評価するため導伝電流のみを考慮し、次式4に基づいて人体誘導電流値を算出した。
誘導電流測定系には、クランプ型の誘導電流計を使用した。クランプ型誘導電流計は、被測定物を挟んだ際に磁気回路に誘導される起電力から電流値を読み出す。クランプ型の誘導電流計で測定される電流は次式5の定義によるものであることから、人体ファントムモデル70の誘導電流は、人体ファントムモデル70の周囲にアンペアの法則を適用して算出した。
算出した結果から、数値人体モデル60の人体誘導電流分布と人体ファントムモデル70の誘導電流分布とを比較して図6に示す。図6において、実線(human)が数値人体モデル60の人体誘導電流分布を表し、破線(phantom)が人体ファントムモデル70の誘導電流分布を表している。周波数は40MHzである。人体ファントムモデル70は数値人体モデル60と比較して、140cm以下での誘導電流分布が合致しない。すなわち、人体ファントムモデル70の構成において、肩の位置(140cm(図6参照))での誘導電流値の増加を再現することが困難であるといえる。
次に、人体の体形と人体誘導電流との関係性を調べるため、腕の長さが異なる各数値人体モデルA、B、C、およびD(比較例3、4、5、および6)について数値解析を行った。数値人体モデルAからDを図7に示す。数値人体モデルAでは肩から腕までを取り除いた。同モデルBでは肩を残して腕を取り除いた。同モデルCでは肘から先を取り除いた。同モデルDでは腕を残した。
数値人体モデル60の共振周波数(40MHz)で各数値人体モデルAからDを、平面波曝露を行った場合の誘導電流分布を図8に示す。同モデルAおよび同モデルBの誘導電流分布を比較すると、ほぼ一致している。このことから、肩を含めたことによる数値人体モデルの断面積の増大は、誘導電流値の増加に影響を与えていないといえる。また、同モデルA、C、およびDの誘導電流分布を比較すると、腕が誘導電流分布に大きく関わっているといえる。このことから、肩の位置からの誘導電流値の大幅な増加は、腕の長さから大きく影響を受けているといえる。
以上の結果を踏まえて人体ファントム1を作製し、数値人体モデル60と比較した。周波数が30、40、60、80、および100MHzにおいて平面波曝露を行った場合の誘導電流分布の比較図を、図9、図10、図11、図12、および図13に示す。各図において、実線(human)が数値人体モデル60の人体誘導電流分布を表し、破線(phantom)が人体ファントム1の誘導電流分布を表している。日本人男性の平均体型の共振周波数である40MHzで人体誘導電流が最大となるため、40MHzで人体誘導電流と人体ファントム1の誘導電流とが近い値になるように、人体ファントム1を満たす3種類の食塩水の割合、およびその電気的定数を調節した。図10において、両者は良好に一致した。また、図9、図11、図12、および図13においても、誘導電流分布が一致しているため、周波数を変えても人体誘導電流分布を見積もることが可能である。最後に、本実施例および人体ファントムモデル70の全身平均SARの相対誤差を図14に示す。図14において、三角のドットを繋いだ折線(with arm phantom)が本実施例の全身平均SARの相対誤差を示し、四角のドットを繋いだ折線(no arm phantom)が人体ファントムモデル70の全身平均SARの相対誤差を表している。
上記したように、全身におけるVHF帯誘導電流評価用の人体ファントム1の設計を目的に、まず数値解析により人体誘導電流の人体形状からの影響を検討し、その数値結果をもとに人体ファントム1の設計と複数の周波数で平面波曝露を行ったときの誘導電流分布について比較検討を行った。さらに、日本人男性の平均体型と合致した数値人体モデル60と人体ファントム1との誘導電流分布を数値解析により比較検討した。
その結果、人体の腕を考慮することで人体誘導電流分布での肩の位置からの誘導電流の増加を再現することが可能となった。また、複数の周波数で平面波曝露を行い、人体誘導電流分布と人体ファントム1の誘導電流とを比較することで、VHF帯での人体誘導電流の評価も可能なことを示すことができた。
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、電波防護指針(基礎指針値)に則った電波利用設備の評価に用いられる。
1 人体ファントム(電磁界全身曝露評価人体模擬装置)
10 金属板
20 足部
21 足ケース
22 第一ファントム液剤(第一液剤)
30 胴体部
31 胴体ケース
32 第二ファントム液剤(第二液剤)
40 腕部
41 腕ケース
42 液剤区域
43 空区域
44 第三ファントム液剤(第三液剤)
45 空気
50 金属コネクタ(肩部)
51 金属具
60 数値人体モデル
70 人体ファントムモデル
100 完全導体
A、B、C、D 数値人体モデル

Claims (4)

  1. 接地された金属板と、
    この金属板の表面に立てられた足部と、
    この足部に積載された胴体部と、
    この胴体部と並列させられると共に前記金属板の表面に立てられた腕部と、
    前記足部内を満たすと共に前記金属板に電気的に接触した第一液剤と、
    前記胴体部内を満たすと共に前記第一液剤に電気的に接触した第二液剤と、
    前記腕部内を満たした第三液剤と、
    前記胴体部および前記腕部を連結すると共に、前記第二液剤および前記第三液剤を電気的に接続する肩部と、
    から構成され、
    前記第一液剤、前記第二液剤、および前記第三液剤のそれぞれが所定の導電率および比誘電率を有し、誘導電流分布が人体の誘導電流分布と近似している、
    ことを特徴とする電磁界全身曝露評価人体模擬装置。
  2. 前記腕部は、下方が空の空区域であり、
    上方が前記第三液剤で満たされた液剤区域である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電磁界全身曝露評価人体模擬装置。
  3. 前記足部、前記胴体部、および前記腕部のうち少なくとも一つが、複数のケースで構成され、
    複数の前記ケースを満たした前記各液剤同士を電気的に接続する金属具が備えられた、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁界全身曝露評価人体模擬装置。
  4. 前記第二液剤の水位が前記人体の身長と略同じ高さであり、
    前記第三液剤の水位が前記人体の肩の位置と略同じ高さであると共に、深さが前記人体の腕の長さと略同じであり、
    前記肩部の位置が前記人体の肩の位置と略同じ高さである、
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電磁界全身曝露評価人体模擬装置。
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