JP6044932B2 - 幹細胞の安定的維持、複製を制御するためのペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の利用 - Google Patents

幹細胞の安定的維持、複製を制御するためのペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の利用 Download PDF

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Description

本発明は、幹細胞の安定的維持、複製を制御するためのペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の利用に関する。
近年、幹細胞を用いた再生医療が期待され、その実用化に向けた研究開発が世界中で実施されている。多能性幹細胞を利用した技術としては、胚性幹(ES)細胞を用いた再生医療研究が中心に行われていたが、ES細胞は生命の起源となる胚細胞から分離されるものであるため、その臨床利用上、倫理的な問題が生じる。 最近山中らは、4つの転写因子(Oct3/4、Sox2、Klf-4、c-Myc)の形質導入による線維芽細胞の人工多能性幹(iPS)細胞への直接再プログラミング化に成功した(非特許文献1)。しかしながら、現在の方法では作成された幹細胞(iPS細胞)の安定性が低い上に、その脱分化の効率がきわめて低いことが問題となっている。 また、レトロウィルスベクターなどによる遺伝子導入法を用いると、細胞のゲノム中に遺伝子がランダムに導入され、その結果、遺伝子の挿入により内在性癌遺伝子の活性化などの遺伝子変異が生じることで細胞が悪性化する可能性が指摘されている。これらの問題を克服するには、幹細胞の維持や増殖を効果的に制御する方法や、癌化した細胞を効率的に取り除く方法の開発が極めて重要であると考えられる。
Takahashi K, et al, Cell. 2006 126, 663-676
従来の方法で作成された幹細胞(iPS細胞)は、未分化性を維持したままで複製することが困難な上に、その初期化や脱分化の効率がきわめて低いことが問題となっている。
本発明は、高い効率で安定的なiPS細胞の樹立、維持・複製が可能となる手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来の方法で用いられる4つの転写因子(Oct3/4、Sox2、Klf-4、c-Myc)に加えペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を共発現させることで、飛躍的にiPS細胞の樹立の効率を上げることに成功した。iPS細胞において、Pin1特異的阻害剤によってPin1の発現を抑えるとiPSコロニーの形成能が抑制され、またiPSコロニーに対してPin1阻害剤処理を行うと、異常な分化が認められた。さらに、Oct4がPin1の基質であり、Pin1がOct4のセリン12プロリン部位に結合し、Oct4タンパク質の安定性を増加させることによって、Oct4の転写因子としての機能を亢進させることを見い出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。本発明の要旨は以下の通りである。
(1)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、体細胞から人工多能性幹細胞を作製する方法。
(2)体細胞にペプチジルプロリルイソメラーゼPin1遺伝子を導入することによって、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる(1)記載の方法。
(3)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、体細胞リプログラミング促進剤。
(4)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質がPin1遺伝子である(3)記載の体細胞リプログラミング促進剤。
(5)Pin1遺伝子がベクターに組み込まれている(4)記載の体細胞リプログラミング促進剤。
(6)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、多能性幹細胞の自己複製を活性化する薬剤。
(7)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、多能性幹細胞の多能性を維持する薬剤。
(8)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞の自己複製を抑制する薬剤。
(9)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞の多能性を破壊する薬剤。
(10)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる薬剤。
(11)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の安定化剤。
(12)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の転写活性亢進剤。
(13)(1)記載の方法により作製された、人工多能性幹細胞。
(14)分化処理した多能性幹細胞から未分化細胞を除去する方法であって、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を抑制する工程を含む前記方法。
(15)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1に対する阻害活性を指標として、下記の少なくとも1つに効果のある物質をスクリーニングする方法。
1)多能性幹細胞の自己複製を抑制する。
2)多能性幹細胞の多能性を破壊する。
3)多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる。
(16)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、体細胞のリプログラミングを促進する方法。
(17)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、多能性幹細胞の自己複製を活性化する方法。
(18)体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、多能性幹細胞の多能性を維持する方法。
(19)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞の自己複製を抑制する方法。
(20)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞の多能性を破壊する方法。
(21)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる方法。
(22)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質を安定化する方法。
(23)ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質の転写活性を亢進する方法。
本発明により、未分化状態を維持したまま、幹細胞を安定かつ容易に大量培養することが可能となった。また、本発明は、従来効率がきわめて低かった体細胞の脱分化(iPS細胞化)におけるリプログラミング促進剤を提供するものであり、従来よりも効率よく幹細胞を調製することができるようになった。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2010‐238548の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
Pin1はヒトiPS細胞において高発現している。A、 MRC5およびMRC5由来iPS細胞におけるOct4、SOX2 および Pin1の免疫ブロット解析。Actinはコントロールとして用いた。B、 ヒトiPS細胞における Pin1およびSOX2 の免疫蛍光染色解析。位相差顕微鏡によりSOX2 (赤)または Pin1 (緑)に対する免疫蛍光染色を示す。核は4',6-diamidino-2-phenylindole (DAPI) で染色した(青)。 Pin1が SOX2陽性細胞で高発現していることに注目。C、D、Pin1の発現は リプログラミング4因子 (4F; Oct4, SOX2, Klf4 およびc-Myc)によるiPS 細胞への誘導を促進する。 アルカリフォスファターゼ染色をした代表的なコロニーの写真を示す (C)。アルカリフォスファターゼ染色陽性コロニー数は3回の独立した実験を行い計測した(D)。Pin1と4Fとの共誘導によってiPSコロニー形成頻度が増加することに注目。E、4FとPin1によって誘導されたヒトiPS由来のテラトーマ組織。細胞は NOD-SCIDマウス皮下に注入した。ヘマトキシリンおよびエオジン染色した腫瘍の代表的な写真を示す。 Pin1阻害によるヒトiPS細胞の自己複製能の喪失。A-C、ヒトiPS細胞をアキターゼで解離し、各種濃度のJugloneを加えたフィーダー細胞上に単離された濃度で播種した。コロニー形成は位相差顕微鏡にて確認した(A)。コロニー数はJuglone処理をして3日後に計測した(B)。コロニーあたりの細胞数はDAPI染色した細胞数を計測した(C)。 データは平均値 ±SEMで示す。D、ヒトiPS細胞を各種濃度のJuglone存在下に単離された濃度で播種し、アルカリフォスファターゼ染色を行った。E、F、ヒトiPS細胞をアキターゼで解離し、50 mg/ml のPin1阻害リン酸化ペプチドPINTIDE(RRRRRRRRRWFYpSPR)(配列番号5)または非リン酸化ペプチド(RRRRRRRRRWFYAPR) (配列番号6) 存在下に単離された濃度でフィーダーフリーのディッシュに播種した(E)。アルカリフォスファターゼ陽性コロニー数を計測した (F)。データは平均値 ±SEMで示す。 マウスES細胞におけるPin1阻害はコロニー形成を抑制する。A、2種のマウスES細胞株(BDF2 and R1)をゼラチンコートしたディッシュに播種し、DMSO または Juglone (10 μM)を処理した。コロニーはアルカリフォスファターゼで染色した(赤)。B-D、マウスES細胞 (R1) にGFP またはGFP-dominant negative (dn)-Pin1 (3000 viral particles/cell)をコードするアデノウイルスベクターを感染させた。細胞をアルカリフォスファターゼ (赤) およびDAPI(青)で染色し、免疫蛍光染色にて観察した。全コロニー数およびコロニーあたりの細胞数を計測した。データは平均値 ±SEMで示す。 Pin1の阻害はヒトiPS細胞の異常な分化を引き起こす。A、ヒトiPS細胞をコロニーが形成されるまで5日間培養し、DMSO またはJuglone (10 μM) で3日間処理した。その後、細胞をアルカリフォスファターゼで染色した (赤)。位相差顕微鏡および免疫蛍光染色解析の代表的な画像を示す。B、ヒトiPS細胞をコロニーが形成されるまで5日間培養し、GFP またはGFP-dominant negative (dn)-Pin1 (3000 viral particles/cell)をコードするアデノウイルスベクターを感染させた。細胞をアルカリフォスファターゼ (赤) およびDAPI(青)で染色し、免疫蛍光染色にて観察した。 ヒトiPS細胞におけるPin1結合タンパク質の同定。A、B、ヒトiPS 細胞ライセートを、非免疫コントロールマウスIgG(IgG)またはマウス抗Pin1モノクローナル抗体を用いて免疫沈降した。protein A/Gアガロースビーズに結合したタンパク質をSDS-PAGEに供し、銀染色を行った(A)。「M」はタンパク質マーカーを示す。切り出したゲルバンドはトリプシン消化し、linear ion trap (LTQ) Orbitrap hybrid mass spectrometerによる解析後、peptide mass fingerprinting (PMF) および Mascot、Aldente search algorithmsによってタンパク質の同定を行った(B)。 Pin1はリン酸化Oct4と相互作用し、その転写活性を促進する。A、脱リン酸化(CIP)処理または未処理のヒトiPS細胞ライセートをGST またはGST-Pin1を用いたGST pull-down解析に供し、抗Oct4抗体による免疫ブロット解析を行った(上パネル)。このアッセイに用いたGST またはGST-Pin1 のクマシー染色を下パネルに示す。B、ヒトiPS細胞を4% パラホルムアルデヒドで固定し、抗Oct4モノクローナル抗体(緑)および抗Pin1ポリクローナル抗体(赤)を用いて重染色した。その後、共焦点顕微鏡により解析した。C、HeLa細胞に、図示したベクターおよびHA-LacZ をトランスフェクションし、cycloheximide (CHX)処理後、図示した時間に回収した。抗Oct4、抗Pin1および抗HA抗体を用いて免疫ブロット解析を行った(左パネル)。定量データを右パネルに示す。D、HeLa細胞にOct4, SOX2 または Pin1と共に Oct-SOXレポーター遺伝子およびpRL-CMVを一過性に発現させた。トランスフェクションから24時間後に細胞を回収し、遺伝子レポーターアッセイを行った。E、HeLa細胞にOct-SOXレポーター遺伝子および野生株Pin1またはW34AあるいはK63A変異株をOct4 およびSOX2と共に一過性に共発現させた。トランスフェクションから24時間後に細胞を回収し、遺伝子レポーターアッセイを行った。 Pin1はOct4のSer12-Proモチーフと相互作用する。A、この研究で作製したOct4欠損変異株の模式図(左パネル)。HeLa細胞に、図示したOct4欠損変異株を24時間トランスフェクションした。 細胞ライセートをGSTまたはGST-Pin1を用いた GST pull-down解析に供し、Oct4抗体を用いて免疫ブロット解析を行った(右パネル)。B、ヒト、ウサギ、マウスおよびラットOct4タンパク質のアミノ酸配列アライメント。保存されている Ser12-Pro モチーフを囲んで示す。C、HeLa細胞にOct4部位特異的変異株Oct4-S12Aをトランスフェクションし、 GST pull-down解析を行った。D、HeLa細胞にPin1と野生株Oct4またはS12A変異株あるいはPin1を加えずに野生株Oct4またはS12A変異株をトランスフェクションした。 24時間後、抗Oct4抗体を用いて免疫ブロット解析を行った。 Pin1はヒト乳癌組織中のがん幹細胞中で高い発現を示す。ヒト乳癌患者組織のパラフィン切片を抗Pin1抗体を用いて免疫染色した。Pin1は茶色、がん幹細胞マーカーであるCD44は青色、細胞の輪郭は薄い緑で発色した。CD44陽性のがん幹細胞では茶色く染まったPin1の高い発現がみられる。 A、Pin1阻害はがん幹細胞の細胞死を誘導する。乳腺上皮細胞株MCF-10Aおよび当細胞由来のがん幹細胞株(CSC10A)にそれぞれJugloneを10μMで処理し、24時間後にTerminal deoxynucleotidyl transferase dUTP nick end labeling (TUNEL)法にてアポトーシスを検出した(茶色)。CSC10Aにおいて顕著にアポトーシス細胞の増加が認められる。B、Aと同様な実験を各濃度のJugloneまたはDMSOを用いて行った。24時間後にTUNEL陽性細胞(茶色)の割合を光学顕微鏡を用いて計測した。 乳癌幹細胞(CSC10A)、MCF-10A-Ras細胞、MCF-7細胞にJugloneを5μMまたは10μMで投与し72時間後にCell Counting Kit-8(同仁化学研究所、#CK07)を用いて細胞生存を確認した。CSCでは他の2つの細胞と比較し、Jugloneによる細胞死が認められる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、体細胞から人工多能性幹(iPS)細胞を作製する方法を提供する。
体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる方法としては、以下の手法を例示することができる。
・体細胞にペプチジルプロリルイソメラーゼPin1遺伝子を導入する。
・体細胞にペプチジルプロリルイソメラーゼPin1タンパク質を導入する。
・体細胞にペプチジルプロリルイソメラーゼPin1 mRNAを導入する。
・体細胞をProtein kinase C阻害剤またはProtein kinase A阻害剤を処理することで、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の機能を活性化する。Protein kinase C阻害剤としては、Calphostin C, Polymixin B、Rottlerin、Y-27632、PD 173074、GF 109203Xなどを例示することができる。Protein kinase A阻害剤としては、Staurosporine、 SP600125、 Apigenin、 LY 294002、 KT 5823、 KT5720などを例示することができる。
・細胞増殖因子を投与することで、Pin1の発現を誘導する。細胞増殖因子としては、epidermal growth factor、fibroblast growth factor、vascular endothelial growth factorなどを例示することができる。
・転写因子E2Fを発現させることで、Pin1の発現を誘導する。
体細胞の種類は、特に限定されず、いかなる年齢(例えば、胎児、新生児、成体など)のいかなる動物種(例えば、ヒト及びマウス、ラット、ウサギ、豚、ネコ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、トリなどの非ヒト動物)のいかなる組織(例えば、神経、造血、歯髄、皮膚、肝臓、胃、腸、脾臓、膵臓、脳、肺、腎臓など)由来のいかなる細胞(例えば、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、血液細胞、筋肉細胞、中皮細胞など)であってもよい。体細胞は、分化細胞であっても、幹細胞や前駆細胞などの未分化細胞であってもよい。また、初代培養細胞、継代細胞、株化細胞のいずれであってもよい。
体細胞から人工多能性幹細胞を作製するには、体細胞への転写因子(Oct3/4、Sox2、Klf-4、c-Myc)の形質導入による再プログラミング化の方法((#1 Takahashi K. Cell, 2006; #2 Takahashi K. Cell, 2007; #3 Yu J. Science, 2007; #4 Park I.H. Nature, 2008) 「ヒトiPS細胞の樹立方法」Ver. 1 京都大学 物質−細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター、CiRA M& M 2008年7月4日)を用いるとよいが、この方法に限定されるわけではない。本発明の方法においては、体細胞の再プログラミング化に必要な因子(初期化因子)に加えPin1を共発現させるとよい。すなわち、体細胞の再プログラミング化に必要な因子の形質導入と同時又はその前後にPin1を体細胞に形質導入するとよい。あるいはまた、体細胞の再プログラミング化に必要な因子の形質導入と同時又はその前後にPin1タンパク質を体細胞に導入してもよい。
ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1はリン酸化されたSer/Thr-Pro というモチーフに結合し、そのペプチド結合を介してタンパク質の構造をシス・トランスに異性化させることにより、リン酸化タンパク質の機能を調節する新しいタイプのレギュレータである。この 新規の"リン酸化後"調節機構は標的タンパク質の活性、タンパク質-タンパク質結合、細胞内局在、さらには安定性等を変化させ、リン酸化タンパク質の機能発現に重要な役割を果たすことが知られている。また、Pin1がリン酸化タンパク質に結合して構造が変化することで、ユビキチン化やSUMO化などの、他の翻訳後修飾のスイッチのON/OFFが調節されている。Pin1はがん、免疫疾患および神経変性疾患等の難治性疾患の病態形成に極めて重要な役割を果たすことが明らかになっている。Pin1の標的となるリン酸化タンパク質は多岐に渡り、細胞や組織の違いによって異なる。また、同一細胞/組織であっても、正常時と疾患時では、基質のリン酸化状態が異なることで、そのレパートリーが大きく変わる。今回我々は、Pin1が多能性幹細胞においてOct4を基質とすることで、幹細胞の自己複製や多能性維持を制御することを見いだした。
体細胞の再プログラミング化に必要な因子に加えPin1を共発現させるには、例えば、体細胞の再プログラミング化に必要な因子をコードするDNAを発現できるベクターに該DNAを組み込んで体細胞に導入し、それと同時またはその前後に、Pin1をコードするDNAを発現できるベクターに該DNAを組み込んだものを前記体細胞に導入するとよい。体細胞の再プログラミング化に必要な因子をコードするDNAのすべてを一つのベクターに組み込んで体細胞に導入してもよいし、体細胞の再プログラミング化に必要な因子の各々をコードするDNAを別のベクターに組み込んで体細胞に導入してもよい。また、Pin1をコードするDNAは、体細胞の再プログラミング化に必要な因子をコードするDNAを組み込んだベクターに組み込んで体細胞に導入してもよいし、体細胞の再プログラミング化に必要な因子をコードするDNAを組み込んだベクターとは別のベクターに組み込んで体細胞に導入してもよい。体細胞の再プログラミング化に必要な因子をコードするDNAを発現できるベクター及びPin1をコードするDNAを発現できるベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミド、人工染色体などを挙げることができるが、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなど)が好ましく、レトロウイルスベクターがより好ましい。レトロウイルスベクターとしては、pMXsレトロウイルスベクター、pBabeレトロウイルスベクター、pRetroレトロウイルスベクターなどを使用することができる。ベクターには、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン、スプライシングシグナル、ポリアデニル化部位、ストップコドンなどの遺伝子発現調節配列、クローニング部位、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子などの要素が含まれていてもよい。
Pin1のDNA配列及びアミノ酸配列情報は、データベースGenBankのアセッション番号 ヒトPin1 NM006221、マウスPin1 NM023371、ラットPin1 NM00110670から得られる。ヒトのPin1のDNA配列及びアミノ酸配列を配列番号1及び2に示す。Pin1は、本発明の目的を達成するものであれば、天然型又は変異体のいずれであってもよい。
体細胞の再プログラミング化に必要な因子やPin1を体細胞に形質導入するには、マイクロインジェクション法、リポソーム、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法、ウイルス感染などの公知の手法を用いることができる。体細胞の再プログラミング化に必要な因子やPin1を体細胞に形質導入した後、その細胞を回収し、フィーダー細胞上に再播種して、培養するとよい。フィーダー細胞としては、マウス線維芽細胞、SNL76/7、ヒト間葉系細胞などを用いることができる。
げっ歯類以外の体細胞(例えば、ヒト体細胞)を用いる場合には、遺伝子の導入効率と実験者の安全性を高めるために、げっ歯類のみに感染するエコトロピック受容体を標的細胞(例えば、ヒト体細胞)に導入しておき、エコトロピックレトロウイルスを使って、体細胞の再プログラミング化に必要な因子やPin1を導入するとよい。また、レトロウイルスベクターをPLAT-E細胞(エコトロピックウイルス由来のエンベロープ糖タンパク質(env)を発現するように設計されている)などのパッケージング細胞にトランスフェクションすることにより、標的細胞への感染効率を高めることができる。
体細胞の再プログラミング化に必要な因子の形質導入と同時又はその前後にPin1タンパク質を体細胞に導入するには、細胞膜透過性シグナルを付加する方法、リポフェクション試薬を用いる方法、エレクトロポレーション法、Pin1タンパク質の直接導入, Pin1タンパク質の活性化、Pinの発現誘導などを利用するとよい。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の同定には、ES細胞特異的マーカー遺伝子(Oct3/4, Nanog, Lin28, PH34, Dnmt3b, Noda1, SSEA3, SSEA4, Tra-1-60, Tra-1-81, アルカリフォスファターゼなど)の発現、半永久的細胞増殖、分化多能性(三胚葉の形成)などの特性を調べるとよい(Cell 131:861-872(2007))。
iPS細胞を培養、継代及び凍結するには、ES細胞に用いられる方法を適用すればよい。
本発明は、上記の方法により作製された人工多能性幹細胞も提供する。
Pin1を体細胞の再プログラミング化に必要な因子と共に発現させると、iPS細胞の誘導効率が増加する。
従って、本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、体細胞リプログラミング促進剤を提供する。また、本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、体細胞のリプログラミングを促進する方法を提供する。
体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質は、Pin1遺伝子であるとよい。Pin1遺伝子はベクターに組み込まれているとよい。ベクターは、Pin1をコードするDNAを発現できるベクターであるとよく、このようなベクターについては上述した。
また、Pin1は多能性幹細胞(例えば、iPS細胞、ES細胞(Embryonic Stem Cell)、胚幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞および癌幹細胞)の自己複製や多能性維持に重要な役割を果たすことがわかった。
従って、本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、多能性幹細胞の自己複製を活性化する薬剤も提供する。本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、多能性幹細胞の自己複製を活性化する方法も提供する。また、本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる物質及び/又はペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を含む、多能性幹細胞の多能性を維持する薬剤を提供する。本発明は、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む、多能性幹細胞の多能性を維持する方法も提供する。
また、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を抑制することで分化誘導後に不必要になった多能性幹細胞を死滅させることができる。すなわち、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞の自己複製を抑制したり、多能性幹細胞の多能性を破壊することで、多能性幹細胞を特異的に死滅させることができる。Pin1阻害剤は癌幹細胞を死滅させることもできる。
従って、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞の自己複製を抑制する薬剤を提供する。本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞の自己複製を抑制する方法も提供する。また、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞の多能性を破壊する薬剤も提供する。本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞の多能性を破壊する方法も提供する。さらに、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を含む、多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる薬剤を提供する。本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を阻害する物質を用いて、多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる方法も提供する。Pin1を阻害する物質としては、Juglone(5-Hydroxy-1,4-naphthlenedione; 5-Hydroxy-p-naphthoquinone)、PPIase-Parvulin Inhibitor (Diethyl-1,3,6,8-tetrahydro-1,3,6,8-tetraoxobenzo[lmn][3,8]phenanthroline-2,7-diacetate; PiB)、Pin1阻害ペプチド(例えば、PINTIDE)、細胞内在性のPin1を抑える働きのあるドミナントネガティブPin1を組み込んだベクター、抗Pin1抗体、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムなどが挙げられる。Pin1を阻害する物質は、公知の方法で、多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞に添加、導入あるいは形質導入するとよい。
また、本発明は、分化処理した多能性幹細胞から未分化細胞を除去する方法であって、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を抑制する工程を含む前記方法を提供する。多能性幹細胞の分化処理は公知の方法で行うことができる。ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を抑制するには、分化処理した多能性幹細胞にPin1を阻害する物質を接触させればよく、例えば、Pin1を阻害する物質を多能性幹細胞に添加、導入あるいは形質導入する。Pin1を抑制することにより、多能性幹細胞は死滅し、除去されることになる。
さらに、本発明者らは、Pin1がOct4に結合し、Oct4タンパク質の安定化に寄与したり、Oct4タンパク質の転写活性を亢進することを見出した。
従って、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の安定化剤を提供する。本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質を安定化する方法も提供する。また、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の転写活性亢進剤も提供する。本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質の転写活性を亢進する方法も提供する。Pin1及び/又はPin1遺伝子は、Oct4タンパク質を安定化したり、Oct4タンパク質の転写活性を亢進する目的で、Oct4タンパク質、Oct4タンパク質を発現する細胞などと接触させるとよい。Oct4タンパク質を発現する細胞は、いかなる組織(例えば、神経、造血、歯髄、皮膚、肝臓、胃、腸、脾臓、膵臓、脳、肺、腎臓など)由来のいかなる細胞(例えば、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、血液細胞,筋肉細胞、内分泌細胞、皮膚ケラチノサイト)であってもよい。また、Oct4タンパク質を発現する細胞は、分化細胞であっても、幹細胞や前駆細胞などの未分化細胞であってもよい。また、初代培養細胞、継代細胞、株化細胞のいずれであってもよい。
さらにまた、本発明は、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1に対する阻害活性を指標として、下記の少なくとも1つに効果のある物質をスクリーニングする方法を提供する。
1)多能性幹細胞の自己複製を抑制する。
2)多能性幹細胞の多能性を破壊する。
3)多能性幹細胞及び/又は癌幹細胞を死滅させる。
本発明のスクリーニング方法において指標とする「ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1に対する阻害活性」は、Pin1遺伝子の発現を抑制する効果、Pin1タンパク質の発現を抑制する効果、Pin1の酵素活性を阻害する効果のいずれであってもよい。
本発明のスクリーニング方法は、培養細胞を用いて行うことができる。
例えば、細胞を被検物質の存在下又は不存在下で培養し、Pin1遺伝子又はPin1タンパク質の発現量を測定する。被検物質の不存在下で培養した細胞と比較して、被検物質の存在下で培養した細胞におけるPin1遺伝子又はPin1タンパク質の発現量が減少していれば、被検物質は上記の1)〜3)の少なくとも1つに効果があると判定できる。Pin1遺伝子の発現量は、核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、クロスハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット・ハイブリダイゼーション法、RNAプロテクション法などによって測定することができる。Pin1タンパク質の発現量は、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、RIA法、質量分析法, 二次元電気泳動法などによって測定することができる。
あるいは、細胞を被検物質の存在下又は不存在下で培養し、Pin1の酵素活性を測定してもよい。被検物質の不存在下で培養した細胞と比較して、被検物質の存在下で培養した細胞におけるPin1の酵素活性が減少していれば、被検物質は上記の1)〜3)の少なくとも1つに効果があると判定できる。Pin1の酵素活性は、Zhang Y, Fussel S, Reimer U, Schutkowski M, Fischer G. Substrate-based design of reversible Pin1 inhibitors. Biochemistry. 2002 Oct 1;41(39):11868-77. PubMed PMID: 12269831.に記載の方法で測定することができる(#5 Zhang Y. Biochemistry 2002)。
本発明のスクリーニング方法で用いる細胞は、Pin1を発現する細胞であればよく、HeLa, 293T, COS-7, HOS, U2OS, MCF-7, PC3, LNCaP, MCF-10Aなどを例示することができる。
また、本発明のスクリーニング方法は、Pin1タンパク質を用いて行うこともできる。
例えば、被検物質の存在下又は不存在下で、Pin1タンパク質の酵素活性を測定する。被検物質の不存在下での酵素活性と比較して、被検物質の存在下でのPin1の酵素活性が減少していれば、被検物質は上記の1)〜3)の少なくとも1つに効果があると判定できる。Pin1の酵素活性の測定法は上述した。
被験物質は、いかなる物質であってもよく、例えば、タンパク質、ペプチド、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、低分子化合物、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド等)などを挙げることができる。これらの物質は、天然物であっても、化学的又は生化学的に合成された物であってもよく、また、遺伝子工学的に生産された物であってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(要約)
幹細胞の重要な特徴として、自己複製能と多分化能の2つがある。今回われわれは、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1が多能性幹細胞の自己複製と多能性維持に重要であるということを明らかにした。Pin1が、転写因子であるOct4と他の基質に関与するということもまたプロテオミクス解析によって明らかにした。iPS細胞の誘導と共にPin1の発現が上昇すること、またPin1を山中4因子と共に発現させるとiPS細胞の誘導効率が増加することがわかった。iPS細胞において、Pin1特異的阻害剤によってPin1の発現を抑えるとiPSコロニーの形成能が抑制され、またiPSコロニーに対してPin1阻害剤処理を行うと、異常な分化が認められた。さらに、Oct4がPin1の基質であり、Pin1がOct4のセリン12プロリン部位に結合し、Oct4タンパク質の安定性を増加させることによって、Oct4の転写因子としての機能を亢進させることを見い出した。今回の発見は、Pin1が多能性幹細胞の維持や誘導に重要な役割を果たしているということを示すとともに、Pin1を分子スイッチとして、多能性幹細胞の増殖や細胞死をコントロールするツールとしての応用も期待される。
(序文)
幹細胞は自己複製能をもつことで特徴づけられており、その自己複製は細胞分裂に伴って起こる。また、幹細胞は様々な細胞に分化することができる多分化能をもっている。多能性幹細胞の増殖は、細胞をリプログラミングさせる機能をもつc-Myc、Klf4、Oct4、SOX2など、いくつかの転写因子の活性化によって起こるが、増殖因子であるbFGF存在下のみによって起こることが知られている。bFGFの細胞内シグナルは多能性維持にとって必須であるということが示されており、この因子を除くと細胞の増殖が阻害され、異常な細胞の分化が見られたり細胞死が起こることが知られている。bFGFは細胞分裂を引き起こす効果を持っており、それは標的細胞における細胞膜上のチロシンキナーゼに端を発する細胞内シグナルを活性化する。これらのチロシンキナーゼは、細胞内の様々なリン酸化pathwayを活性化させるが、そのリン酸化は主にセリンースレオニンのリン酸化であることが知られている。この細胞内のリン酸化シグナルが多能性幹細胞の自己複製や、多能性維持に重要であるということはすでに知られているが、リン酸化されたタンパク質がどのように制御されてシグナルが伝わるかということに関してはわかっていない。タンパク質のリン酸化とは、細胞内のシグナル伝達系において非常に重要な基礎的な方法であることが知られており、細胞増殖や分化、形態形成などにおいて重要であることが知られている。リン酸化タンパク質の機能を調節する重要なシグナルメカニズムとして、リン酸化タンパク質に結合し、その構造をシスートランスに異性化する酵素であるPin1による制御が知られている。このペプチジルプロリルイソメライゼーションというタンパク質の翻訳後修飾は様々な細胞内シグナルに重要で、ErbB2/Ras,やwnt/beta-catenin 、 NF-kappaBなど重要なシグナルpathwayで役割を果たしていることが知られている。さらにそれらがアルツハイマー病など免疫病やガンの発生に重要な役割を果たしていることもまた知られている。しかしながら、Pin1が多能性幹細胞の維持や誘導にどのような役割を果たしているかということについては十分に検討されていない。われわれは今回、Pin1が多能性幹細胞の自己複製や多能性に重要であることを示した。iPS細胞の誘導と共にPin1の発現が誘導され、Pin1を阻害すると多能性幹細胞の多能性や自己複製が阻害されるということをヒトiPS細胞およびmES細胞を用いて調べた。また、プロテオミクス解析を行い、Pin1がリプログラミングや転写因子として重要であるOct4のセリン12プロリンモチーフに結合し、その安定性と転写活性を亢進させるということがわかった。今回のデータはPin1が多能性幹細胞の自己複製や増殖に重要であるということを示しただけでなく、Pin1の活性や機能を制御することによって多能性幹細胞の増殖や維持を亢進させることができるのではないかということを提起している。
(実験手順)
コロニー形成解析
iPS細胞は理研バイオ資源センターより入手した(クローン番号 201B7)。iPS細胞はhESC培養培地(KNOCKOUT Dulbecco’s modified Eagle’s medium (Invitrogen) supplemented with 20% KNOCKOUT SR (Invitrogen), 1% GlutaMAX (Invitrogen), 100 μM Non-essential amino acids (Invitrogen), 50 μM β-mercaptoethanol and 10 ng/ml basic FGF)で培養した{Takahashi, 2007 #58}。マウスES細胞はmESC培養培地(KNOCOUT Dulbecco’s modified Eagle’s medium supplemented with 15% KNOCKOUT SR, 1% GlutaMAX (Invitrogen), 100 μM Non-essential amino acids, 50 μβ-mercaptoethanol and 1000 U/ml rhLIF)で培養した(#6 Yamada M. Hum Mol Genet 2010)。コロニー形成は、以前に記載されたように(#7 Liu Y. Stem cells 2008)アルカリフォスファターゼ(AP)染色陽性コロニー数を計測することによってスコア化した。コロニーあたりの細胞数はDAPI染色細胞を計測した(#7 Liu Y. Stem cells 2008)。
細胞リプログラミング
MRC5線維芽細胞(理研バイオバンクから供与)を、Takahashiらにより記載された方法を用いてiPS化した。(#2 Takahashi K. Cell 2007) 簡潔に、山中4因子がそれぞれに組み込まれているレトロウイルスベクター(pMXs-hOct4, pMXs-hSOX2, pMXs-hKLF4, pMXs-hcMYC (Addgene))およびPin1を組み込んだレトロウイルスベクターpMXx-Pin1または空ベクターpMXxをVSV-G遺伝子とともにEffectene transfection reagent (Qiagen社;http://www.qiagen.com/products/transfection/transfectionreagents/effectenetransfectionreagent.aspx)を用いてレトロウイルス作製細胞であるPLAT-E細胞に導入した。48時間後、ウイルスを含む細胞上清を回収し、0.45 μmフィルターで濾過した後、10 μg/ml のhexadimethrine bromide (polybrene)を添加してウイルス液とした。標的細胞であるMRC5細胞を100mm ディッシュに6×105個播種し、ウイルス/ポリブレンを含むウイルス液と16時間インキュベーションして感染させた。24時間後にウイルス液をDMEM細胞培地と交換し、さらに培養を続けた。6日後にMRC5細胞をマウス線維芽細胞(MEF; フィーダー細胞)上にまき、24時間後DMEM培地をhESC培地に交換した。細胞を37℃ 、 5% CO2 で 30日間培養したところ、iPS細胞コロニーが複数出現した。これらをアルカリフォスファターゼ染色(http://www.funakoshi.co.jp/node/15683;フナコシ社)し、赤く染色された陽性コロニー数をカウントした。
発現ベクターの構築
Oct4 cDNAはpcDNA3-HA 発現ベクター (Invitrogen)にサブクローニングした。Oct4の発現コンストラクトは下記に示す:pcDNA-HA-Oct4野生株: aa 1-360, pcDNA-HA-Oct4 ΔC: aa 1-297, pcDNA-HA-Oct4 ΔN1: aa 138-360, pcDNA-HA-Oct4 ΔN2: aa 113-360, pcDNA-HA-Oct4 ΔN3: aa 34-360. pcDNA-HA-Oct4-S12A は 操作手順に従ってKOD-Plus Mutagenesis Kit (TOYOBO, Osaka, Japan) を用いて行った。 使用したプライマーは下記に示す; Forward: 5’-CGCCCCCTCCAGGTGGT-3’(配列番号3); Reverse: 5’-CGAAGGCAAAATCTGAAGCC-3’(配列番号4).
遺伝子レポーター解析
OCT-SOX 結合カセットを含むpGL3-fgf4 レポータープラスミドおよびホタルルシフェラーゼ遺伝子を50 ng のpRL-CMV と共にトランスフェクションした(#8 Masui S. Natl Cell boil 2007)。24時間後、細胞を passive lysis buffer (Promega) に溶解し、室温で15分インキュベーションした。ルシフェラーゼ活性は、操作手順に従ってDual-Luciferase reporter assay system (Promega) により測定した。
GSTプルダウン解析および免疫沈降解析
HeLa細胞を GST pull-down buffer (50 mM HEPES [pH 7.4], 150 mM NaCl, 10% glycerol, 1% Triton-X100, 1.5 mM MgCl2, 1 mM EGTA, 100 mM NaF, 1 mM Na3VO4, 1 mM DTT, 0.5 ug/ml leupeptin, 1.0 ug/ml pepstatin and 0.2mM PMSF) に溶解し、GST-Pin1またはGST を含む30ulのグルタチオンアガロースビーズと共に 4℃ で2 時間インキュベートした。その後、回収したタンパク質をlysis bufferで3回洗い、SDS-PAGEに供した。免疫沈降では、細胞をNP-40 lysis buffer (10 mM Tris HCl [pH 7.5], 100 mM NaCl, 0.5% NP-40, 1 mM Na3VO4, 100 mM NaF, 0.5 ug/ml leupeptin, 1.0 ug/ml pepstatin and 0.2 mM PMSF)に溶解した。細胞ライセートをProtein A/G セファロース/非免疫 IgG 複合体と共に1時間インキュベートした。上清を5ugのHA抗体およびProtein A/G セファロースで免疫沈降した。Lysis bufferで3回洗った後、SDS-PAGE ゲルに供し、プロテオミクス解析を行った。
プロテオミクス解析
Pin1結合パートナーを同定するためにマススペクトロメトリー (MS) を使用した。ヒトiPS 細胞を、モノクローナ抗Pin1抗体 (Clone 257417, R&D Systems) を用いて4 oC で3 時間免疫沈降した後、SDS-PAGEに供した。約30 kDa から150 kDa に一致する領域から連続的にゲルを切り出し、ゲル片をアルキル化、トリプシン処理して還元した。ペプチドはlinear ion trap (LTQ) Orbitrap hybrid mass spectrometer (Thermo Scientific)を用いて解析した。peptide mass fingerprinting (PMF) および Mascot、Aldente search algorithmsによってタンパク質の同定を行った。.
テラトーマ形成
細胞はアキターゼを用いて解離し、チューブに回収し、遠心した。沈殿した細胞をヒトESC培養培地に懸濁した。NOD-SCIDマウス(CREA, Tokyo, Japan) 皮下に 2×106 個の細胞と等量のマトリゲル (BD Biosciences)を混ぜて注入した。9週間後に腫瘍を摘出した。凍結腫瘍組織をoptimum cutting temperature compound (OCT) で包埋後、凍結切片にしてヘマトキシリンおよびエオジンで染色した。
Double immunohistochemical staining;2重免疫組織化学染色
パラフィン組織切片をキシレンおよびエタノールを用いて脱パラフィン化した後、10mM クエン酸バッファー(pH6.0), 中でオートクレーブした(121℃ for15min)。その後、0.3% 過酸化水素(hydrogen peroxidase)中で30分浸した。ブロッキングは 10% 正常やぎ血清(normal goat serum、DAKO社)を用いて室温で30分行った。次に抗Pin1抗体(anti-PIN1 polyclonal antibody (Santa Cruz Biotechnology, diluted to 100-fold) を 4 oC で overnight反応させた。Pin1抗体で標識されたPin1タンパク質はHistofine キット-PO (Nichirei, Tokyo, Japan) と AEC plus reaction (AECplus; DAKO, Campinteria, CA)を用いて茶色に発色させた。次に mouse anti-CD44 monoclonal antibody (Cell Signaling, diluted to 100-fold) を4 oC で overnight反応させたのち、 Histofine kit-AP (Nichirei) と BCIP/NBT system (Dako)を用いて青く発色させた. 次に、細胞をメチルグリーンで緑に輪郭を染めて、光学顕微鏡で観察した。
TUNEL法
(図9A) 1X105個の細胞を12ウェル細胞培養プレートに播種し、Juglon(5μM)またはDMSO (negative control)の処理を行った。24時間後にプロメガ社のDeadEndTM Colorimetric TUNEL Systemを用いて、アポトーシス細胞を検出した。代表的なアポトーシス細胞の写真を提示する。
(図9B) Aと同様な方法により、各濃度のJugloneまたはDMSO(コントロール)を細胞に処理し、24時間後に全細胞中のアポトーシス細胞の割合を、光学顕微鏡を用いて計測した。
(結果)
Pin1は細胞のリプログラミングに伴って誘導され、iPS細胞の誘導を促進する
まず、われわれはPin1が細胞のリプログラミングや多能性に関与しているかどうか調べるために、ヒトiPS細胞におけるPin1の発現レベルを調べた。対象として、ヒト線維芽細胞であるMRC5を山中4因子を用いて誘導し、iPS細胞を作製した。元のMRC5と比較して、誘導されたiPS細胞においてPin1の発現が優位に増加していることがわかった(図1A)。蛍光免疫染色による解析でもまた、Pin1はiPS細胞マーカーであるSOX2陽性細胞において優位に発現が増加していることがわかった。またSOX2陰性の分化した部分においてはPin1の発現も低下していた(図1B)。このことはPin1がリプログラミングしたiPS細胞において発現が増加するということを示唆している。次に、Pin1が体細胞のiPS細胞への誘導に関与するかどうかを調べた。通常は、山中4因子として知られるc-Myc、Klf4、Oct4、SOX2によってiPS細胞が誘導されるが、4因子にPin1を追加発現させることによって顕著にiPS細胞の誘導が亢進することがわかった(図1C、1D)。これはアルカリフォスファターゼ染色陽性となるコロニー数をカウントすることで調べた。次に、山中4因子とPin1を発現させることによって作られたiPS細胞が多能性を維持しているかを確認した。iPS細胞を免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)の皮下に注入し、9週間後にできた腫瘍を切除し、HE染色した。組織学的に調べたところテラトーマであることがわかった。腸管様の上皮細胞(内胚葉)、紡錘状の筋肉細胞(中胚葉)、軟骨組織(中胚葉)、神経組織(外胚葉)、皮膚の上皮(外胚葉)などが観察された(図1E)。これらの結果から、Pin1を山中4因子と共に発現させることによってiPS細胞の形成効率とリプログラミングが亢進するということがわかった。
Pin1はiPS細胞の自己複製やコロニー形成に必要である
次に、Pin1が自己複製とコロニー形成において重要であるか調べた。先の結果から、Pin1がiPS細胞の形成を正に制御することがわかった。そこで、Pin1が機能的にどのような役割をしているかについてiPS細胞やES細胞を用いて調べた。まず、自己複製能にPin1が関わるかを見た。iPSコロニーを個々の細胞状にし、それぞれがコロニーを形成するかをみることによって自己複製能を調べた。ヒトiPS細胞を、酵素アキターゼを用いて個々の細胞状にしてフィーダー細胞上に播種し、Pin1阻害剤であるJugloneを各濃度で添加した。その結果、Juglone濃度依存的に優位にコロニー形成が阻害されることがわかった(図2A、2B)。フィーダー細胞はほとんど死んでいなかったことから、非特異的な細胞毒性によるものではないことが示唆された。また、コロニーあたりの細胞数についてもJuglone濃度依存的に減少することがわかった(図2C)。アルカリフォスファターゼ染色することによって未分化コロニー数を計測した(図2D)。次に、他のPin1阻害剤として、Pin1阻害ペプチドであるPINTIDEを細胞に処理したところ、Jugloneと同様にコロニー形成が阻害された。コントロールとして用いたPin1と結合できない非リン酸化型コントロールペプチドではコロニー形成は阻害されなかった(図2E、2F)。
次に、Pin1の阻害がマウスES細胞におけるコロニー形成、自己複製に関係するかを調べた。マウス由来のES細胞であるBDF2およびR1に対してJuglone で処理したところ、アルカリフォスファターゼ陽性のコロニー形成が顕著に阻害された(図3A)。また、細胞内在性のPin1を抑える働きのあるドミナントネガティブPin1をアデノウイルスベクターに組み込んでR1に感染させたところ、コントロールに比べてR1のコロニー形成能が顕著に阻害された(図3B、3C)。コロニーあたりの細胞数についてもまた減少していた(図3D)。これらのことから、多能性幹細胞においてPin1が細胞の自己複製や増殖に重要な役割を果たしていることが示された。
多能性維持におけるPin1の機能
次に、Pin1が多能性維持に関わるかについて調べた。ヒトiPS細胞を5日間培養し、コロニーを形成させた状態でJugloneを添加し、Pin1を阻害した。その結果、アルカリフォスファターゼ陰性の分化した細胞がモザイク状に出現した(図4A)。同様に、ドミナントネガティブPin1をアデノウイルスベクターを用いて感染させPin1を阻害したところ、アルカリフォスファターゼ陰性の分化細胞が増加した(図4B)。これらはPin1がiPS細胞の多能性維持に重要であることを示している。
ヒトiPS細胞におけるPin1結合タンパク質の同定
先の結果から、Pin1が多能性維持や自己複製に重要であることが示された。次に、Pin1がiPS細胞内でどのような基質タンパク質を標的としているかをプロテオーム解析によって調べた。iPS細胞内においてPin1と結合しているタンパク質を免疫沈降法によって回収し、1次元SDS-PAGEで展開後、30kDaから150kDaの領域のバンドを連続的に切り出し、質量分析計を用いて同定した(図5A)。その結果、iPS細胞内においてPin1と結合するタンパク質を新たに23個同定することができた(図5B)。その中にOct4が含まれていたことから、Pin1とOct4の結合についてさらに調べた。
Pin1はOct4に結合し、Oct4タンパク質の安定化に寄与する
Pin1とOct4の相互作用について調べるために、まずGSTプルダウンを行った。ヒトiPS細胞ライセートとリコンビナントのGSTまたはGST-Pin1タンパクを混ぜ、グルタチオンビーズで集め、Oct4抗体を用いた免疫ブロット解析を行ったところ、Oct4はGSTには結合しないがGST-Pin1には結合することがわかった(図6A)。またその結合は、予めiPS細胞ライセートを脱リン酸化酵素であるCIPで処理すると見られなくなることから、Pin1がOct4のリン酸化部位に結合することが示唆された。次にiPS細胞を蛍光免疫染色し、Pin1とOct4の細胞内局在を調べたところ、共にiPS細胞の核内で共局在していた(図6B)。Pin1は基質タンパク質の安定性に関わることが知られている。そこで、Pin1がOct4の安定性に関わるかを調べた。HeLa細胞にOct4およびPin1または空ベクターをトランスフェクションした後、サイクロヘキシミドで処理することによってタンパク質の合成を一時的に止め、それまでに合成されたOct4タンパク質の半減期を経時的に見た。コントロール細胞に比べ、Pin1を強制発現させた細胞では顕著にOct4タンパク質の分解が阻害され、安定化がみられた(図6C)。次に細胞内におけるOct4の転写活性について調べるために、ルシフェラーゼアッセイを行った。HeLa細胞にOct4、SOX2、Pin1と共にOct4とSOX2が結合するカセットをもつFGF4という標的遺伝子の遺伝子プロモーター領域のルシフェラーゼコンストラクトを用いた。Pin1単独ではFGF4の転写活性の上昇は見られなかったが、Pin1とFGF4を共発現させると、Pin1の量依存的にOct4の転写活性が上昇することがわかった(図6D)。次に、Pin1の結合ドメインであるWWドメイン変異体または酵素活性化ドメインであるPPIaseドメイン変異体を用いて同様のルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、両変異体は共に野生型と比較してOct4の転写活性を上げる効果が低いことがわかった(図6E)。このことから、結合ドメインおよび酵素活性化ドメインの両方がPin1のOct4に対する機能に重要であることがわかった。
Pin1はOct4のセリン12プロリンに結合する
Pin1がOct4タンパク質のどの部位に結合するかを調べた。Pin1はセリンープロリンまたはスレオニンープロリン部位にしか結合しないことが知られている。そこで、Oct4内に6カ所存在するセリンープロリンまたはスレオニンープロニン部位を削った変異体を作製し、GSTプルダウンを行った。その結果、Oct4タンパク質のC末端を削った変異体でもPin1と結合するのに対してN末端を削ると結合しないことがわかった(図7A)。N末端の3つのPin1結合部位を削った変異体でPin1が結合しなかったことから、アミノ酸1から34のいずれかに結合することが示唆された。1から34の間では、Pin1が結合し得るのはセリン12プロリン部位しか存在しないこと、またセリン12プロリンはヒトだけでなく、ラビット、マウス、ラットにおいても保存されている配列であることから、この部位にPin1が結合すると考えられた(図7B)。セリンをアラニンに置換したS12A変異体を作製し、GSTプルダウンを行ったところ、作製されたOct4-S12A変異体はPin1と結合しなかった(図7C)。次に、Pin1がOct4-S12A変異体に対して機能するかについて調べた。Pin1とOct4を共発現させたところ、野生型Oct4ではタンパク量が増えるのに対してOct4-S12A変異体では変化が見られず、Pin1に対して反応性がないことがわかった(図7D)。
Pin1はヒト乳癌組織中のがん幹細胞中で高い発現を示した(図8)。
Pin1阻害のがん幹細胞の増殖抑制効果について検討を行った。MCF-10A乳腺上皮細胞株および、当細胞由来のがん幹細胞株CSC10Aを細胞培養ディッシュに播種し、Pin1阻害剤であるJugloneを処理し24時間後にTUNEL法により細胞死を検出した(図9)。図9に示す通り、がん幹細胞であるCSC10AではMCF-10Aと比較して、Pin1阻害剤の感受性が高く、各濃度においてアポトーシス細胞数が有意に増加していた。これらの結果はPin1阻害剤は正常細胞に影響しない濃度でがん幹細胞を死滅させることを示唆するものである。
乳癌幹細胞(CSC)、MCF-10A-Ras細胞、MCF-7細胞にJugloneを5uMまたは10uMで投与し72時間後にCell Counting Kit-8(同仁化学研究所、#CK07)を用いて細胞生存を確認した(図10)。CSCでは他の2つの細胞と比較し、Jugloneによる感受性が高いことが示唆される。
(考察)
今回の研究で、我々はPin1が多能性幹細胞の維持と幹細胞性において必須であるということを報告する。1)Pin1はヒトiPS細胞の誘導に伴って誘導される。2)リプログラミング4因子とPin1を共発現することによりiPS細胞の誘導効率が顕著に促進される。3)特異的Pin1阻害剤としてJuglone、AdV-dnPin1、PINTIDEを用いたPin1阻害により、ヒトiPS細胞およびマウスES細胞のコロニー形成が顕著に阻害される。4)Pin1阻害により、コロニー形成後のヒトiPS細胞において異常な分化が誘導される。5)プロテオミクス解析により、ヒトiPS細胞においてOct4がPin1の推定基質であることを明らかにした。6)Pin1はOct4のセリン12プロリンモチーフと相互作用し、安定性および転写活性を促進する。我々の発見は、多能性幹細胞におけるOct4の機能を介した自己複製や生存の制御因子としてPin1の新しい働きを明らかにした。
我々の今回の結果は、Pin1が細胞周期やアポトーシスなど多岐にわたる細胞プロセスを含む様々なリン酸化タンパク質を触媒する多機能なタンパク質であるという既知の発見に追加されうる。様々な細胞性の機能に沿った多くのリン酸化タンパク質に対するPin1の多岐にわたる機構的な働きは、異なる細胞種や環境に依存する複数のシグナル経路における修飾因子として示すことができる。今回の研究においてPin1をOct4の制御を介して多能性幹細胞の自己複製や幹細胞性を支配する転写因子ネットワークにおける重要な制御因子として位置づけた。実際に、Oct4、SOX2、Klf4およびc-Mycの発現により誘導されたiPS細胞は、Pin1の高発現レベルを誘導し、そしてこれらの細胞はPin1の機能に依存している。このことは、Pin1がリプログラミング転写因子と協調して体細胞からiPS細胞を誘導する重要な執行因子の一つであることを示唆している。
我々の今回の発見は、Pin1がOct4や他の基質のリン酸化依存性プロリル異性化を介して細胞増殖や多能性維持に関与していることを示した。このことに関して、最近のMoretto-Zitaらによる報告では、マウスES細胞においてPin1が多能性転写因子であるNanogと結合し、自己複製を維持し、免疫不全マウスにおいてテラトーマ形成をすることを示した。幹細胞におけるPin1機能のさらなる研究により、多能性幹細胞の自己複製や生存を制御する基礎をなす分子経路や因子に光が当たるかもしれない。
Pin1ノックアウトマウスは正常に成長するが、体重減少、網膜退化および乳腺発達障害を含むいくつかの発達異常が見受けられる。Pin1ノックアウトマウスは、始原生殖細胞(PGC)の顕著な増殖障害に伴い精巣萎縮症や進行性の精子形成細胞の減少もまた現れる。これらの表現型は、Pin1機能の喪失による生殖系幹細胞の維持や増殖障害に原因がある。
多くの場合、Pin1は基質タンパク質分解の抑制因子として、あるいは促進因子として働く。我々の今回のデータは、Pin1がOct4のタンパク質の半減期を延長し、それによってその転写活性を促進することを示した。Oct4はSUMO化などのような翻訳後修飾によって制御されることがわかっている。今回の発見では、Oct4がリン酸化とそれに続くプロリル異性化によって制御されることもまた示した。Pin1とOct4の結合に働く結合キナーゼの同定により、多能性の誘導中や誘導後を調節する制御経路に対する理解が進められるだろう。
iPS細胞などのような多能性幹細胞を将来の再生医療に利用できることが望まれている。しかしながら、iPS細胞は腫瘍を形成する可能性があるせいで臨床治療への利用が懸念されている。今回の研究で、Pin1阻害が未分化段階にあるiPS細胞の増殖を効果的に阻害することができるということを提唱している。Pin1はこのように、iPS細胞の増殖や生存を可逆的に制御できる分子スイッチになり得、これによって細胞の形質転換や腫瘍形成のリスクを軽減することができる。
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本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明は、再生医療への応用、幹細胞工学への応用、遺伝子治療への応用、Pin1を利用した新たな制御因子の探索への利用が可能である。
<配列番号1>
配列番号1は、ヒトPin1のcDNA配列(492bp; 下線部:終止コドン)を示す。
atggcgga cgaggagaag ctgccgcccg gctgggagaagcgcatgagc cgcagctcag gccgagtgta ctacttcaac cacatcacta acgccagccagtgggagcgg cccagcggca acagcagcag tggtggcaaa aacgggcagg gggagcctgc cagggtccgc tgctcgcacc tgctggtgaa gcacagccag tcacggcggc cctcgtcctg gcggcaggag aagatcaccc ggaccaagga ggaggccctg gagctgatca acggctacat ccagaagatc aagtcgggag aggaggactt tgagtctctg gcctcacagt tcagcgactg cagctcagcc aaggccaggg gagacctggg tgccttcagc agaggtcaga tgcagaagcc atttgaagac gcctcgtttg cgctgcggac gggggagatg agcgggcccg tgttcacgga ttccggcatc cacatcatcc tccgcactga gtag
<配列番号2>
配列番号2は、ヒトPin1のアミノ酸配列(163アミノ酸)を示す。
madeeklppg wekrmsrssg rvyyfnhitn asqwerpsgn sssggkngqg eparvrcshllvkhsqsrrp sswrqekitr tkeealelin gyiqkiksge edfeslasqf sdcssakargdlgafsrgqm qkpfedasfa lrtgemsgpv ftdsgihiil rte
<配列番号3>
配列番号3は、プライマーの配列を示す。
5’-CGCCCCCTCCAGGTGGT-3’
<配列番号4>
配列番号4は、プライマーの配列を示す。
5’-CGAAGGCAAAATCTGAAGCC-3’
<配列番号5>
Pin1阻害リン酸化ペプチドPINTIDEのアミノ酸配列を示す。
RRRRRRRRRWFYpSPR
<配列番号6>
非リン酸化コントロールペプチドのアミノ酸配列を示す。
RRRRRRRRRWFYAPR

Claims (9)

  1. Oct4、Sox2、Klf4及びc-Mycを含む初期化因子を体細胞に形質導入することにより、体細胞から人工多能性幹細胞を作製する方法であって、体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる工程を含む前記方法。
  2. 体細胞にペプチジルプロリルイソメラーゼPin1遺伝子を導入することによって、ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させる請求項1記載の方法。
  3. ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の安定化剤。
  4. ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を含む、Oct4タンパク質の転写活性亢進剤。
  5. 請求項2記載の方法により作製され、Oct4、Sox2、Klf4及びc-Mycを含む初期化因子とペプチジルプロリルイソメラーゼPin1遺伝子が導入された人工多能性幹細胞。
  6. ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質を安定化する方法。
  7. ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1及び/又はPin1遺伝子を用いて、Oct4タンパク質の転写活性を亢進する方法。
  8. 体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させることにより、体細胞における、Oct4タンパク質が安定化する、及び/又は、Oct4タンパク質の転写活性が亢進する請求項1又は2に記載の方法。
  9. 体細胞におけるペプチジルプロリルイソメラーゼPin1の発現を亢進させることにより、体細胞における、Oct4タンパク質が安定化している、及び/又は、Oct4タンパク質の転写活性が亢進している請求項5記載の人工多能性幹細胞。
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