JP6043092B2 - 超音波医用装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内の温度情報を得る超音波医用装置に関する。
強力集束超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)を例えば生体に照射し、その音響エネルギーを利用して、生体組織を焼灼し、組織を穿孔し、または血管を閉塞するなどして、治療を行う技術が開発されている。このような治療では、組織の変化を監視し治療が目的通りに達成出来たことを実時間で評価することが重要である。特に治療部の温度の管理は、例えば癌組織を焼灼治療する場合に極めて重要である。例えばもし焼灼温度が目的の温度まで上昇せずに温度の低い部位が存在すると、その部位の癌細胞が死滅せずに残ってしまう可能性がある。逆に温度が高すぎて生体内で例えばセ氏100度以上に達すると、水の沸騰が起こり癌組織を周辺に吹き飛ばしてしまう恐れがある。そのため、例えば癌組織の焼灼においては、癌組織全体に亘って、セ氏70度からセ氏80度程度に温度を制御する必要があり、HIFU照射時に組織温度を実時間で観測する技術が必要とされる。
生体内の温度を計測するにあたり、核磁気共鳴イメージング(MRI)を利用する技術が知られている。例えば、生体内部組織の温度を核磁気共鳴イメージング(MRI)により計測しながら、HIFU治療を行う方法が開発されているが、この方法はMRIでの生体情報収集時間が必要であるので、必ずしも実時間ではなかった。また、温度管理にMRIを使用することは装置価格を巨額にすることや、装置の設置場所を広く用意するなど、例えば病院等における負担が多くなり、治療費の増大等につながってしまう。
そこで、超音波診断装置で使用されている微弱超音波を用いて、治療部位からのエコー信号が組織の反射係数や音速が温度により変化することを利用して組織の温度を推定する方法が開発された。しかし、音速に基づいた方法では温度の推定精度が不十分であり、予め知り得た経験的な変化量を元にHIFU治療が完了しているかどうかの目安としていたにとどまっていた。
一方において、超音波の生体内における非線形特性の温度依存性が知られている。例えば、特許文献1には、被検体組織にポンピング波を照射し、同時に非線形パラメータを計測するプローブ波を透過型で用いる方法が示されている。しかし、透過型であるために生体応用では乳房組織などへの応用と、その応用範囲が限定されてしまう欠点があった。これに対し、特許文献2には、非線形パラメータを反射法で求める方法が提案されている。すなわち、ポンピング波とプローブ波を送波する振動子を同じ方向に設置し、それらの波を同時に送信することを特徴としている。しかし、この方法では被検体組織内での音響減衰の影響は考慮されていないために、正確な非線形パラメータが得られていなかった。さらに、特許文献3には、ポンピング波を用いたときとポンピング波なしのときの2つプローブ波の情報を用い、減衰と非線形パラメータを同時に推定する方法が提案されている。しかし、観測系にポンピング波とプローブ波の2種類の超音波を用いなくてはならない点と、HIFU照射を受けて組織の反射係数や反射組織構造が大きく変化する対象物での温度推定には対応していない問題点があった。
特開昭59−55245号公報 特開昭60−119926号公報 特開平02−264647号公報
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、超音波を利用して生体内の温度情報を得る技術について研究開発を重ねてきた。特に、超音波の非線形特性を用いて生体内の温度情報を得る技術に注目した。
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波の非線形特性を用いて得られる温度情報の精度を高めることにある。
上記目的にかなう好適な超音波医用装置は、計測用超音波を送受する計測用振動子と、計測用振動子を制御することにより生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、超音波の受信信号に含まれる基本波成分と高調波成分を抽出するフィルタ処理部と、超音波の非線形特性に起因する前記高調波成分に加えて前記基本波成分を用いることにより、正規化された非線形特性を得る非線形特性処理部と、正規化された非線形特性に基づいて生体内の温度情報を得る温度情報処理部と、を有する、ことを特徴とする。
上記構成において、計測用振動子は、例えば一般的な超音波診断装置における診断用の振動子であり、診断用に送受される超音波を計測用超音波として利用することができる。生体内において伝搬する超音波には非線形特性があり、そのため、生体内から得られる超音波の受信信号には、送信時の周波数に対応した基本波成分に加え、送信時の周波数の整数倍に対応した高調波成分が含まれる。つまり、2次,3次さらにそれ以上の次数の高調波が含まれる。その高調波成分から超音波の非線形特性を解析することができ、その非線形特性に基づいて生体内の温度情報を得ることができる。ところが、高調波成分は、超音波の反射率の影響も受けており、さらにその反射率が温度に応じて変化する。そこで、上記構成においては、高調波成分に加えて基本波成分を用いることにより、正規化された非線形特性を得ている。これにより、反射率の影響が軽減され、望ましくは、反射率の影響が除去されて、温度情報の精度が高められる。
望ましい具体例において、前記非線形特性処理部は、前記高調波成分と前記基本波成分の比である正規化された非線形係数を算出し、前記温度情報処理部は、前計測と後計測のそれぞれから得られる前記非線形係数を互いに比較することにより生体内の温度情報を得る、ことを特徴とする。
望ましい具体例において、前記温度情報処理部は、前計測と後計測の両計測から得られる前記非線形係数の比である非線形係数比に基づいて、生体内の温度変化を示した超音波画像を形成する、ことを特徴とする。
望ましい具体例において、前記温度情報処理部は、前計測と後計測の両計測から得られる前記非線形係数の比である非線形係数比に基づいて、生体内における温度の推定値を得る、ことを特徴とする。
望ましい具体例において、前記プローブは、生体内の治療箇所に対して治療用超音波を送波する治療用振動子をさらに備え、前記非線形特性処理部は、前記高調波成分と前記基本波成分の比である正規化された非線形係数を算出し、前記温度情報処理部は、治療用超音波の送波前と送波後のそれぞれにおいて得られる前記非線形係数を互いに比較することにより、生体内の治療箇所における温度情報を得る、ことを特徴とする。
本発明により、超音波の非線形特性を用いて得られる温度情報の精度が高められる。
本発明の実施において好適な超音波医用装置の全体構成を示す図である。 超音波の特性と温度との関係を説明するための図である。 超音波の非線形特性を説明するための図である。 生体内における超音波の伝搬を説明するための図である。 振動子から送波されて振動子に戻る超音波の非線形特性を示す図である。 治療部における温度変化の影響を説明するための図である。 生体内における温度変化を示した超音波画像の具体例を示す図である。 非線形係数比κと組織温度との対応関係を示す図である。
図1は、本発明の実施において好適な超音波医用装置(本超音波医用装置)の全体構成図である。本超音波医用装置は、超音波プローブ10を備えており、その超音波プローブ10は、治療用振動子10Tと計測用振動子10Dで構成されている。
治療用振動子10Tは、強力集束超音波(HIFU)を送波する振動子であり、例えば二次元的に配列された複数の治療用振動素子を備えている。治療用振動子10Tは、例えば癌や腫瘍などの治療箇所Pに治療用の強力集束超音波(治療用超音波T)を送波して、その治療箇所Pを例えば焼灼するなどして治療するために利用される。
一方、計測用振動子10Dは、例えば二次元的に配列された複数の計測用振動素子を備えており、例えば治療箇所Pを有する被検体(患者)に対して、超音波画像を形成するための比較的弱い超音波を送受する。つまり、公知の一般的な超音波診断装置と同じ程度の強度(エネルギー)の超音波を送受する。また、計測用振動子10Dにおいて送受される比較的弱い超音波は、被検体内の温度情報を得るための計測用超音波として利用される。
なお、超音波プローブ10は、例えば、お椀(どんぶり)状に凹ませた内部の表面を振動子面とする。そして、例えば、お椀状に凹んだ内部の中央に位置する底の部分に計測用振動子10Dが設けられる。但し、超音波プローブ10の振動子面の形状は、お椀状に限定されず、用途等に応じた形状とされることが望ましい。また、全ての振動素子またはいくつかの振動素子が、治療用と計測用の両用途に利用されてもよい。
送信ビームフォーマ(送信BF)12は、超音波プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力して超音波プローブ10を制御する。つまり、送信ビームフォーマ12は、計測用振動子10Dの複数の振動素子を制御し、計測用の送信ビームを計測領域D内で走査する。また、送信ビームフォーマ12は、治療用振動子10Tの複数の振動素子を制御して治療用の送信ビームを形成する。
受信ビームフォーマ(受信BF)14は、計測用振動子10Dが備える複数の振動素子の各々から得られる受信信号に対して整相加算処理などを施すことにより、計測領域D内で走査される送信ビームに対応した受信ビームを形成し、受信ビームに沿って得られるエコーデータ(受信信号)を後段へ出力する。その後段の処理においては、超音波の非線形特性を用いて、被検体内の温度情報が得られる。
図2は、超音波の特性と温度との関係を説明するための図である。図2<A>は、超音波の速度(音速)の温度特性を示しており、水中における超音波の音速と温度との関係を示している。水中における音速はセ氏70度から80度程度で頂点に達し、その温度範囲の前後で音速が下がる特性である。従ってこの近辺では温度特性がフラットとなり、温度推定の精度が悪い。セ氏37度から80度までの音速変化率は1〜2パーセント程度であり、音速を高精度で計測するには技術的な課題が多く存在する。
一方、図2<B>は、超音波の非線形性の温度特性を示しており、水中を伝搬する超音波の非線形係数と温度との関係を示している。図2<B>に示すように、セ氏37度から80度までの非線形係数の変化が約7〜8パーセントと比較的大きく、また、その特性は単調増加関数となり、本超音波医用装置の温度計測において特に重要なセ氏70度から80度付近においても特性が飽和することがないので、音速に比べて非線形特性を利用する方が高精度な温度測定が可能である。そこで、非線形特性を利用した温度測定の原理について説明する。
図3は、超音波の非線形特性を説明するための図である。超音波振動子から生体組織内に正弦波を短時間継続したパルス波、いわゆるバースト波を送波する場合の、そのバースト波の波形とその各周波数スペクトラムの様子が図3に示されている。このバースト波の中心角周波数をωとすると、送波直後の超音波スペクトラムは角周波数ω付近の周波数成分を有する。ところが、この超音波パルスが非線形特性を有する音響伝播媒質中を伝搬すると、同図下に示すように波形が変形してくる。そしてこの波形のスペクトラムは同図下の右のスペクトラムのように、角周波数ωの付近のみならず、その2倍の周波数に当たる高調波成分ωを発生することになる。これは生体組織などのように音響伝搬媒質中では音圧変化に対する組織の密度変化が線形関係ではなく非線形であることによる。
生体内を伝搬する超音波は疎密波であり、音圧により組織の密度が高くなる密のところでは音速が速くなり、逆に疎のところでは音速が相対的に遅くなる現象が現れる。その結果として図3の左下の波形のように音圧が高い正弦波のプラスの位置では音速が速いので右側へ、反対に負の位置では音速が遅くなるので左側へ正弦波形が崩れて俗にN字波形と呼ばれる波形に近づき、この波形のスペクトラムでは2次高調波成分が発生することになる。なお、実際には3次以上の高調波成分も発生するが、ここでは2次の成分に比較して3次以上の高調波成分が十分に小さいので、これを省略している。
図4は、生体内における超音波の伝搬を説明するための図である。数1式で表される送信波を図4に示すように生体内にx軸方向に送波する。数1式において、pは送信時の音圧であり、ρは静圧時の媒質の密度であり、cは静圧時の音速であり、ωは基本波の角周波数である。
x=l(エル)の深さに位置する治療部位に到達した波は、その伝搬中に減衰を受けるため、数2式のように表される。αは超音波の基本波(角周波数ω)についての伝搬媒質の減衰率である。
また、目的の組織から反射して計測用振動子に戻ってきた仮想的なエコー信号は数3式のように表現される。rはHIFU照射前(温度変化前)の治療部位での超音波音圧反射率である。
数3式では、計測用振動子から治療部位までの距離をl(エル)とすると、エコー信号となる超音波は往復の距離、すなわち2lの道のりで減衰を受けることを考慮している。ここで、仮想的なエコー信号と呼んだ理由は、正確には伝播媒質の非線形特性により、波形が歪み、以下に述べる高調波成分が発生する。これにより基本波成分の信号振幅も小さくなるが、その影響は無視できると仮定したためである。
また、数3式の信号振幅を纏めると数4式のように表現でき、数4式で表現される信号振幅Aは、計測用振動子を利用して得られる超音波の受信信号の信号振幅に相当する。
一方、音響伝搬媒質が非線形性を有する場合には、超音波が治療部位に到達した時点において、数2式で示した基本角周波数を有する音波の他に、非線形特性により生じた高次高調波成分を含む波が重畳されている。この信号成分は基本角周波数の整数倍の角周波数を有することが知られているが、2次の高調波成分に比べて3次以上の高調波成分は無視できる程度に小さいため、ここでは2次の高調波成分のみを扱う。
治療部に到達した超音波のうちで、2次の角周波数成分の信号振幅は、数5式のように表現できることが知られている。αは、角周波数ωの超音波に関する伝搬媒質の減衰率である。また、βは音響伝搬媒質が一様な場合の単位長さ当たりの非線形係数である。距離lでは非線形効果が蓄積されるのでβlとなる。
なお、位置xにおける非線形係数をβ(x)とすると、距離lまでに蓄積される非線形効果はβ(x)をxについて0からlまで積分することにより得られる。そして、特に位置xによらずにβ(x)が一定値βであれば、数6式のように表現できる。
さて、数5式の2次高調波も基本波と同様に反射率rで反射して計測用振動子まで戻る。このとき復路では2次角周波数帯での減衰を受けるが、生体組織等では反射率rが1よりも十分に小さく、また、2次高調波信号成分の反射波成分は、基本角周波数のエコー信号振幅Aと比較して十分に小さいために、この2次高調波信号成分の反射波成分がエコーとして振動子に戻るまでに生じる非線形効果は無視できる。従って、エコー信号の2次高調波成分は往路のみで生じたものが、復路ではその各周波数に対応する減衰のみを受けて振動子に到達することになり、その信号振幅Aは数7式のように表現できる。
図5は、振動子から送波されて振動子に戻る超音波の非線形特性を示す図である。図5には、振幅Aで角周波数ωの送信波(数1式)が振動子TDから送波され、減衰率α(数2式)で減衰しつつ、非線形特性により角周波数ωの2次高調波を発生させ、反射率r(数3式)の媒体で反射され、振幅A(数4式)の基本波と、振幅A(数7式)の2次高調波が振動子TDに受波される様子が示されている。なお、非線形特性により発生する角周波数ωの2次高調波成分は、送信波が目的の部位に到達するまでに徐々に発生しているため、図5ではその徐々に発生する様子を破線で表している。
本超音波医用装置では、治療用振動子から送波される強力集束超音波(HIFU)により治療部位を加熱して治療を行うが、その加熱前の時間帯をT、加熱後の時間帯をTとそれぞれを表すことにする。時間帯Tでは治療部位の組織の温度がHIFUのエネルギーを受けて上昇する。これに伴って非線形係数βも変化する。そこで、温度変化前の非線形係数をβとし、温度変化後の非線形係数をβと表現する。この時に注目すべき点は、HIFU照射により変化する非線形係数の位置は治療部のみであり、逆にその他の位置での非線形係数は変化しない。したがって、HIFU照射前後で2次高調波信号が変化したとすると、その変化は治療部の非線形係数が変化したためであることが分かる。換言すると、受信信号の高調波信号は、非線形伝搬媒質中の往路全体で非線形の影響を受けているが、HIFU照射前後における変化は、治療部のみの非線形係数が変化したためであると考えることができる。
図6は、治療部における温度変化の影響を説明するための図である。図6において横方向(横軸)は深さ方向に対応している。図6(1)は、基本波成分(角周波数ω)と2次高調波成分(角周波数ω)の複数の深さにおける様子を示している。また、図6(2)は、非線形係数βと、その深さ方向に関する微分値Δβが、深さに応じて変化する様子を示している。なお、Tは加熱前(温度上昇前)における波形であり、Tは加熱後(温度上昇後)における波形である。また、微分値Δβは、例えば、互いに隣接する深さnとn−1との間における非線形係数βの差分であってもよい。
図6(2)に示すように、治療部の位置で比較的大きな温度変化があると、その治療部の位置において非線形係数の微分値Δβが局所的に大きく変化し、治療部以外の位置では微分値Δβの変化が小さい。一方、非線形係数βは、Δβが深さ方向に沿って蓄積された(積分された)値であり(数6式参照)、治療部における温度変化が治療部よりも深い位置に影響を与えている。
このように、治療部において温度変化があると、その治療部において局所的に非線形係数(特に微分値)が大きく変化する。したがって、HIFU照射前後での高調波信号の変化を観測すれば、組織(治療部)の温度変化を捉えることが可能となる。そこで、加熱前後における2次高調波成分の振幅をそれぞれA2B,A2Aと表現し、これらの比を算出すると数8式が得られる。但し、正確には加熱後の2次高調波成分A2Aについて、加熱部位の減数係数α,αがともに変化しているものの、加熱部位の範囲が超音波伝播路の距離に比較して十分に短いことと、それぞれの温度変化が非線形係数の温度変化に比較して十分に小さいことから、数8式においては変化がないと仮定している。
数8式に示すように、生体組織では、HIFU照射による組織の温度上昇により、非線形係数がβからβに変化すると同時に、音圧反射率もrからrに変化してしまう。したがって、加熱前後における2次高調波成分の振幅比では、数8式に示すように、その変化が組織の非線形係数によるものか、組織の反射係数の変化によるものかの判別ができないことになる。
そこで、本超音波医用装置では、高調波成分に加えて基本波成分を用いることにより、正規化された非線形特性を得て、反射率の影響を取り除いている。つまり、2次高調波成分の振幅A(数7式)を基本波成分の振幅A(数4式)で除して、2次高調波を基本周波数成分で正規化している。正規化により得られる比をηとすると、HIFU照射前(加熱前)におけるその比は数9式のように算出される。
生体内における減衰率は周波数に比例するため、α=2αとなり、数9式は、数10式のように簡潔に表現できる。
さらに、HIFU照射前における数10式の結果に倣って、HIFU照射後におけるηが数11式により得られる。
加熱の前後において、同じ位置にある組織からのエコー信号を使用するならば、数10式と数11式において、非線形係数βのみが変化するので、加熱後の2次高調波比を加熱前のもので除すれば、非線形係数の比の極めて単純な式になる。つまり、数12式の非線形係数比κが得られる。
ただし、数12式で得られるκは、非線形係数が一様な媒質中の深さl(エル)からの反射波から求めたものであるが、実際の生体組織では非線形効果は音波が進むに連れて蓄積されるので、前述のとおり生体の深さ方向をx軸にとり、超音波が伝搬する生体の各深さ(各位置)における非線形係数をβ(x)とすると、加熱前の非線形係数βと加熱後の非線形係数βが数13式のように表現できる。
なお、本超音波医用装置においては、データを離散値で処理するので、数13式における微分演算が、数14式に示す差分演算で扱われる。ΔTは、深さnに対応したデータと深さn−1に対応したデータの間のサンプリング間隔である。
したがって、本超音波医用装置においては、数12式における非線形係数比κも離散値となる。生体内の任意の深さ(位置)nにおける非線形係数比は数15式のように表現される。
生体内(被検体内)の各位置において非線形係数比κを得て、各位置における非線形係数比κをマッピングした画像を表示することは、ユーザ(検査者)にとって、どの部位の組織がどの程度温度の上昇を生じているかを視覚的に把握し易い点で有効である。そこで本超音波医用装置では、生体内の各位置における非線形係数比κに基づいて、生体内の各位置における温度変化を示した超音波画像を形成する。
照射前における信号処理の流れで説明すると、前述のとおり基本波成分と高調波成分の比がη(数10式)であり、この比の深さ方向での離散化された値をη(n)と表すと、この比の深さ方向の変化、つまり深さnと深さn−1との間の変化は数16式のように表現される。
また、数16式に対して対数変換を行うと数17式となり、深さn(位置n)における非線形係数値βを含む項とその他の変数の項の和に分離できる。
本超音波医用装置では、例えばHIFU照射前に被検体内で超音波ビームを走査させ、数17式により断層領域内の各位置nにおいて算出される値をメモリ等に記憶し、断層領域内の各位置nにその値に応じた輝度や色をマッピングした超音波画像を形成する。さらに、HIFU照射前における数17式の結果に倣って、HIFU照射後における各位置nの値が数18式により得られる。
図7は、生体内における温度変化を示した超音波画像の具体例を示す図である。図7において、Tは、HIFU照射前(加熱前)に断層領域内の各位置において数17式から得られる値をマッピングした画像である。また、Tは、HIFU照射後(加熱後)に断層領域内の各位置において数18式から得られる値をマッピングした画像である。そして加熱前におけるTの画像と加熱後におけるTの画像との差分により、生体内における温度変化を示した温度変化画像IMが得られる。
HIFU照射前後における数17式と数18式を比較すると、非線形係数値βを含まない項は、同一の位置nにおいて互いに同じ値となるため、数17式と数18式の差を算出することにより、数19式に示すように各位置nにおける非線形係数比κを得ることができる。
したがって、図7に示す具体例のように、照射前の画像と照射後の画像の差分である温度変化画像IMを形成することにより、各位置nにおける非線形係数比κの値を反映させた温度変化画像IMを得ることができる。なお、数19式では対数変換された非線形係数比κを得ているが、対数変換前の非線形係数比κから得られる画像を形成してもよい。
非線形係数比κ(数15式,数19式参照)は、組織温度が上昇するときの位置nでの非線形係数の変化の度合いを示しているので組織温度上昇の関数となる。この関数をT(κ)と表し,予めこの関数の曲線を実験等により得ておくことにより、非線形係数比κの値から組織の温度推定が可能となる。
非線形係数βは、液体中の縦波では、一般的に知られる非線形パラメータ(B/A)との関係が、β=1+(B/A)であることが知られている。ところで、生体内の軟部組織では水分が70〜80パーセント含まれており、この水の非線形パラメータは、図2<B>のように、温度上昇に応じて単調増加することが知られているので、生体組織の温度上昇も非線形係数比κにより単調増加するものと予想できる。従って、非線形係数比κが分かれば生体組織の温度推定が可能となる。
図8は、非線形係数比κと組織温度との対応関係を示す図である。図8には、横軸を非線形係数比κとして縦軸を組織温度としたグラフが示されている。図8のグラフは、水の非線形係数比κを利用して得られたものであり、温度変化前(例えばHIFU照射前)の温度(水温)をセ氏40度としている。セ氏40度は生体の体温(セ氏37度程度)に相当する。そして、図8のグラフは、温度変化後(例えばHIFU照射後)における温度と非線形係数比κとの対応関係を示しており、例えば、予め実験等により確認される。
図8に示す具体例において、温度に変化がなく変化後の温度がセ氏40度であれば、非線形係数比κが1となる。つまり、温度変化の計測時に得られる非線形係数比κが1であれば、その計測時における組織温度がセ氏40度であることが分かる。また、計測時に得られる非線形係数比κが1よりも大きければ、計測時における組織温度がセ氏40度よりも上昇しており、さらに、その非線形係数比κの値から、図8のグラフを利用して、上昇後の温度を推定することができる。
図1に戻り、本超音波医用装置は、上述した超音波の非線形特性と被検体内の温度との関係に基づいて、温度情報として、被検体内における温度変化を示した温度変化画像IM(図7)や被検体内の治療部位における温度の推定値などを得ている。
図1に示す本超音波医用装置内の各部は、制御部70により集中的に制御される。例えば、治療用振動子10Tから強力集束超音波(HIFU)を送波する前に、計測用振動子10Dを利用して計測領域D内で計測用の超音波ビームが走査され、受信ビームフォーマ(受信BF)14により超音波ビームに沿って受信信号が収集される。
ハイパスフィルタ処理部(HPF処理部)16は、受信信号に含まれる2次高調波成分(数7式参照)を抽出し、ローパスフィルタ処理部(LPF処理部)18は、受信信号に含まれる基本波成分(数4式参照)を抽出する。そして、正規化処理部20は、2次高調波成分の振幅Aを基本波成分の振幅Aで除して、正規化された非線形係数η(数9式参照)を算出する。正規化処理部20は、超音波ビーム上の各位置nごとに、正規化された非線形係数ηを算出する。
離散値処理部30は、正規化された非線形係数ηについて、深さnと深さn−1における値の差(数16式参照)を算出する。例えば、深さnの非線形係数η(n)が一時的に記憶(遅延)され、深さn−1の非線形係数η(n−1)が得られた時点で、非線形係数値の差η(n)−η(n−1)が算出される。そして、対数変換部40において、非線形係数値の差が対数変換される(数17式参照)。こうして、HIFU照射前に、計測領域D内の各位置nから、数17式により算出される値がメモリ42に記憶される。
また、治療用振動子10Tから、例えば治療箇所Pを焦点として強力集束超音波(HIFU)を送波し、治療箇所Pを加熱して治療する際には、例えば治療中に定期的にHIFUの照射が中断され、その中断された期間において、計測用振動子10Dを利用して計測領域D内で計測用の超音波ビームが走査され、受信ビームフォーマ(受信BF)14により超音波ビームに沿って受信信号が収集される。こうして、HIFUの照射が中断された期間を利用して、その時点におけるHIFU照射後の受信信号が収集される。
そして、HIFU照射後の受信信号についても、ハイパスフィルタ処理部(HPF処理部)16から対数変換部40までの処理が実行され、計測領域D内の各位置nにおいて数18式により算出される値がメモリ42に記憶される。
画像形成部50は、メモリ42に記憶されたデータに基づいて、HIFU照射前後における各位置nの値(数17式と数18式)の差を算出することにより、各位置nにおける非線形係数比κ(数19式参照)を得る。画像形成部50は、各位置nにおける非線形係数比κの値を反映させた温度変化画像IM(図7参照)を形成して、モニタ等に表示させる。
また、温度推定部60は、メモリ42に記憶されたデータに基づいて、各位置nにおける非線形係数比κ(数19式参照)を算出し、予め実験等により確認されている関数(例えば図8のグラフ)を利用して、各位置nにおける照射後の組織温度を推定する。例えば治療用超音波Tのフォーカス点における治療箇所Pの温度や、温度変化画像IMを確認したユーザ(検査者)によって指定された箇所における温度の推定値が算出される。もちろん、計測領域D内の全域に亘って各位置nにおける温度の推定値が算出されてもよい。算出された推定値は、モニタ等に表示される。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態によれば、例えば、HIFUによる治療中に治療箇所の温度を計測できるため、例えば、治療箇所が適切な温度で焼灼できているかどうかを治療中に確認することができる。なお、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
10 超音波プローブ、12 送信ビームフォーマ、14 受信ビームフォーマ、16 ハイパスフィルタ処理部、18 ローパスフィルタ処理部、20 正規化処理部、30 離散値処理部、40 対数変換部、50 画像形成部、60 温度推定部。

Claims (5)

  1. 計測用超音波を送受する計測用振動子と、
    計測用振動子を制御することにより生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、
    超音波の受信信号に含まれる基本波成分と高調波成分を抽出するフィルタ処理部と、
    超音波の非線形特性に起因する前記高調波成分に加えて前記基本波成分を用いることにより、前記高調波成分と前記基本波成分の比である正規化された非線形特性を得る非線形特性処理部と、
    正規化された非線形特性に基づいて生体内の温度情報を得る温度情報処理部と、
    を有する、
    ことを特徴とする超音波医用装置。
  2. 請求項1に記載の超音波医用装置において、
    前記非線形特性処理部は、前記高調波成分と前記基本波成分の比である正規化された非線形係数を算出し、
    前記温度情報処理部は、前計測と後計測のそれぞれから得られる前記非線形係数を互いに比較することにより生体内の温度情報を得る、
    ことを特徴とする超音波医用装置。
  3. 請求項2に記載の超音波医用装置において、
    前記温度情報処理部は、前計測と後計測の両計測から得られる前記非線形係数の比である非線形係数比に基づいて、生体内の温度変化を示した超音波画像を形成する、
    ことを特徴とする超音波医用装置。
  4. 請求項2または3に記載の超音波医用装置において、
    前記温度情報処理部は、前計測と後計測の両計測から得られる前記非線形係数の比である非線形係数比に基づいて、生体内における温度の推定値を得る、
    ことを特徴とする超音波医用装置。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波医用装置において、
    生体内の治療箇所に対して治療用超音波を送波する治療用振動子をさらに備え、
    前記非線形特性処理部は、前記高調波成分と前記基本波成分の比である正規化された非線形係数を算出し、
    前記温度情報処理部は、治療用超音波の送波前と送波後のそれぞれにおいて得られる前記非線形係数を互いに比較することにより、生体内の治療箇所における温度情報を得る、
    ことを特徴とする超音波医用装置。
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