発明の詳細な説明
本明細書において本発明は、免疫刺激配列(ISS)の有効量を反復投与で個体へ投与することによる、個体における喘息の治療法を提供する。本発明のひとつの態様において、長期の疾患修飾は、ISSの反復投与を用いて付与することができる。長期の疾患修飾は、個体におけるTh2反応の抑制を含む。場合によっては、この抑制は、Th2反応の阻害である。
一般的方法
本発明の実践は、別に記さない限りは、当該分野の技術の範囲内である、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の通常の技術を利用するであろう。そのような技術は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第二版(Sambrookら、1989)及び「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第三版(Sambrook及びRussel、2001)(本明細書ではまとめて及び個別に「Sambrook」と称す);「Oliconucleotide Synthesis」(M. J. Gait編集、1984);「Animal Cell Culture」(R.I. Freshney編集、1987);「Handbook of Experimental Immunology」(D. M. Weir 及びCC. Blackwell編集);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J. M. Miller及びM. P. Calos編集、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M. Ausubelら編集、1987、2001までの補遺を含む);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」(Mullisら編集、1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E. Coliganら編集、1991);「The Immunoassay Handbook」(D. Wild編集、Stockton Press NY, 1994);「Bioconjugate Techniques」(Greg T. Hermanson編集、Academic Press, 1996);「Methods of Immunological Analysis」(R. Masseyeff、W.H. Albert、及びN. A. Staines編集、Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993)、Harlow及びLane(1988)、「Antibody, A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Publications, NY、並びに、Harlow及びLane(1999)、「Using Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press, コールドスプリングハーバー, NY(本明細書ではまとめて及び個別に「Harlow及びLane」と称す)、Beaucageら編集、「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry」(John Wiley & Sons, Inc., NY, 2000);並びに、Agrawal編集、「Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties」(Humana Press Inc., NJ, 1993)などの文献に、十分に説明されている。
定義
本明細書において使用される用語「アレルゲン」は、被験者への曝露時に、アレルギー反応を誘発する、分子、通常はタンパク質の抗原又は抗原性部分をいう。典型的には本被験者は、例えば、膨疹及び発赤試験又は当該技術分野において公知の任意の方法により示されるように、アレルゲンに対しアレルギー性である。分子への曝露時に、例え被験者の極小さいサブセットがアレルギー性免疫反応(例えばIgE)を示したとしても、その分子は、アレルゲンと称される。アレルゲンは、季節に応じて、わずかに少量又は大量に環境中に存在することができる。アレルゲンの例は、下記表1に列記している。
「個体」は、マウスのような脊椎動物であり、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は、ヒト、霊長類、家畜、スポーツ用動物、齧歯類及びペットを含むが、これらに限定されるものではない。
物質の「有効量」とは、臨床の結果を含む、有益な又は所望の結果を実行するために十分な量であり、従って「有効量」は、それが適応される状況に応じて決まる。抗原の同時投与を伴う又は伴わないのいずれかで、免疫反応を変調する組成物を投与する状況において、ISS(及び適用可能である場合は抗原)の有効量は、抗原が単独で投与された場合に得られる免疫反応と比べ、そのような変調を実現するのに十分な量である。有効量は、Th2免疫反応の抑制及び/又は阻害のような、疾患修飾の長期の恩恵をもたらすことができる。有効量は、1回又は複数回投与で投与することができる。
本明細書において使用されかつ当該技術分野において周知である「治療」とは、臨床の結果を含む、有益な又は所望の結果を得る方法である。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床の結果とは、1種又は複数の症状の軽減もしくは改善、疾患範囲の縮小、疾患の安定化した(すなわち増悪しない)状態、疾患進行の遅延もしくは鈍化、及び/又は病態の改善もしくは緩和を含むが、これらに限定されるものではない。「治療」は、治療を受けない場合に期待される生存と比べた場合の、生存の延長も意味する。
本明細書において使用される用語「長期の疾患修飾」は、ISS最終投与量の投与後少なくとも3週間の期間、好ましくは少なくとも8週間の期間、最も好ましくは少なくとも12週間の期間にわたる1種又は複数の喘息症状の軽減又は消失をいう。喘息の症状は、気管支過敏症、好酸球の気道への浸潤、気道における粘液産生、気道におけるTh2サイトカイン、気道リモデリング、即時型喘息反応(アレルゲン曝露直後の気道収縮)、及び遅発型喘息反応(アレルゲン曝露の数時間後の気道収縮)を含むが、これらに限定されるものではない。
ISSの生物学的作用
ISSの反復投与を使用することにより、長期の疾患修飾を喘息の個体へもたらすことができることはわかっている。本実施例は、この知見のいくつかの例証を提供する。実施例1は、ISSのひとつの型、例えば1018 ISSの直接作用は、アレルギー喘息のマウスモデルにおいて、約1週間持続することを明らかにする。実施例2及び3は、Th2反応を、1018 ISSが少なくとも8週間複数回投与された個体において抑制することができることを例示している。Th2抑制の長期作用は、少なくとも13週間持続することができる。従って一態様において、本発明は、ISSの有効量を少なくとも8週間個体へ投与することにより、長期の喘息の治療を提供する。この治療の長期作用は、少なくとも13週間持続することができる。本発明は、少なくとも13、15、17、19、21又は25週間持続する長期の疾患修飾をもたらすために、少なくとも8週間のISSの反復投与を用いることにより、喘息を有する個体に、長期の恩恵を提供する方法を企図している。
機能的に、ISSは、個体における細胞性及び体液性免疫反応、特にリンパ球増殖及び個々の単球及びナチュラルキラー(NK)細胞によるサイトカイン(インターフェロン又はIFNを含む)の放出を増強する。インビボにおける合成ISSによる免疫刺激は、個々のリンパ球の、例えばISS、ISSオリゴヌクレオチドコンジュゲート、及びISS含む組み換え発現ベクターとの接触により行われる。例えば、米国特許第6,610,661号及びWO 97/28259を参照のこと。従って未変性の微生物ISSは、感染症に反応するよう個体の免疫系を刺激するが、これらのISSの合成アナログは、微生物抗原に対するのみではなく、アレルゲン及び他の物質にも対する個体の免疫反応の変調のために治療的に有用である。
ISS組成物
本発明の方法は、任意の型のISSを使用することにより実践することができる。一実施態様において、1018 ISSが使用される。1018 ISSの構造は、複数の化学論文に加え特許において公開されている。例えば、Hesselらの論文、(2005) J. Exp. Med., 202(ll):1563を参照のこと。一般に1018 ISSは、(5’−TGACTGTGAACGTTCGAGATGA−3’)(配列番号:1)である。別の実施態様において、1種又は複数のCpGモチーフ(複数)含有−ISSを使用することができる。例えば米国特許公開第2006/0058254号又はWO 2004/058179を参照のこと。別の実施態様において、1種又は複数のキメラ免疫調節化合物(「CIC」)を使用することができる。例えば、米国特許公開第2004/0132677号を参照のこと。
本発明に従い、ISSは、少なくとも1個のCGジヌクレオチドを含む、長さが少なくとも8個の塩基のパリンドローム配列(すなわちパリンドローム)を少なくとも1個含む。ISSは、そのポリヌクレオチドの5’末端又はその近傍に少なくとも1個のTCGトリヌクレオチド配列も含む(すなわち、5’−TCG)。場合によっては、このパリンドローム配列及び5’−TCGは、ISS内の0、1又は2個の塩基により隔てられている。場合によっては、このパリンドローム配列は、5’−TCGの全て又は一部を含む。
ISSは、当該技術分野において説明されており、かつそれらの活性は、例えばサイトカイン分泌、抗体産生、NK細胞活性化、B細胞増殖、T細胞増殖などの、免疫反応の様々な態様を示す標準アッセイを用い、容易に同定され得る。例えばWO 97/28259;WO 98/16247;WO 99/11275;Kriegら、(1995) Nature 374:546-549;Yamamotoら、(1992a);Ballasら、(1996);Klinmanら、(1997);Satoら、(1996);Pisetsky、(1996a);Shimadaら、(1986) Jpn. J. Cancer Res. 77:808-816;Cowderyら、(1996) J. Immunol. 156:4570-4575;Romanら、(1997);Lipfordら、(1997a);WO 98/55495及びWO 00/61151を参照のこと。従ってこれら及び他の方法は、免疫調節ISSを同定、試験及び/又は確認するために使用することができる。
ISSは、長さが10個の塩基又は塩基対より長い、好ましくは15個の塩基又は塩基対よりも長い、より好ましくは20個の塩基又は塩基対よりも長いものであることができる。本明細書に説明された式に関して、任意の及び全てのパラメータは独立して選択されることが理解される。例えば、x=0〜2である場合、yは、xの値(又は式中のいずれか他の選択可能なパラメータ)とは無関係に独立して選択されてよい。
一部の実施態様において、ISSは、(a)少なくとも2個のCGジヌクレオチドを含む、少なくとも8塩基長のパリンドローム配列であり、ここでCGジヌクレオチドは、0、1、2、3、4又は5個の塩基により互いに隔てられているもの、並びに、(b)ポリヌクレオチドの5’末端から塩基0、1、2又は3個に位置した(TCG)y配列であり、ここでyは1又は2であり、及び(TCG)y配列の3’末端は、0、1又は2個の塩基によりパリンドローム配列の5’末端から隔てられているもの:を含む。一部の実施態様において、(b)の(TCG)y配列のCGジヌクレオチドは、(a)のパリンドローム配列の少なくとも2個のCGジヌクレオチドのひとつとみなしてよい。一部の実施態様において、本パリンドローム配列のCGジヌクレオチドは、1、3又は4個の塩基により互いに隔てられている。本発明の一部のISSにおいて、本出願の本段又は別所において説明されたかどうかにかかわらず、本パリンドローム配列は、2/3未満のG及びCの塩基組成を有する。一部の実施態様において、本パリンドローム配列は、1/3よりも大きいA及びTの塩基組成を有する。
一部の実施態様において、ISSは、(a)少なくとも2個のCGジヌクレオチドを含む、長さが少なくとも8個の塩基のパリンドローム配列であり、ここでCGジヌクレオチドは、0、1、2、3、4又は5個の塩基により互いに隔てられているもの、並びに、(b)ポリヌクレオチドの5’末端から塩基0、1、2又は3個に位置した(TCG)y配列であり、ここでyは1又は2であり、このパリンドローム配列は、(TCG)y配列の全て又は一部を含み、及び(b)の(TCG)y配列のCGジヌクレオチドは、(a)のパリンドローム配列のCGジヌクレオチドのひとつとみなしてよいもの:を含む。好ましくは一部の実施態様において、本パリンドローム配列のCGジヌクレオチドは、1、3又は4個の塩基により互いに隔てられている。
従って一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1CGX1’(CG)p)z(配列番号:2)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1CGX1’(CG)P)配列を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1CGX1’(CG)P)配列の5’側X1である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))(配列番号:3)y配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、p=0である場合、X1は、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2X3CGX3’X2’X1’(CG)P)z(配列番号:4)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−3、−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’、並びにX3及びX3’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1X2X3CGX3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:5)配列の第一の(X1X2X3CGX3’X2’X1’)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2X3CGX3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:5)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3CGX3’X2’X1’CCG)P)(配列番号:5)配列の5’側X1及びX2である。w=−3であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から三番目(すなわち最後から三番目)、末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3CGX31’X2’X1’(CG)P)(配列番号:5)配列の5’側X1、X2及びX3である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、p=1である場合、X1、X2、及びX3は各々、A又はTのいずれかである。一部の実施態様において、p=0である場合、X1、X2、及びX3の少なくとも2つは、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’(CG)p)z(配列番号:6)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−3、−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’、X3及びX3’、並びにX4及びX4’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、10塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:8)配列の第一の(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’)(配列番号:7)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’(CG)P)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:8)配列の5’側X1及びX2である。w=−3であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から三番目(すなわち最後から三番目)、末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3X4CGX4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:8)配列の5’側X1、X2及びX3である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、p=1である場合、X1、X2、X3、及びX4の少なくとも3つは、A又はTのいずれかである。一部の実施態様において、p=0である場合、X1、X2、X3、及びX4の少なくとも2つは、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1CGCGX1’(CG)p)z(配列番号:9)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1CGCGX1’(CG)P)配列の第一の(X1CGCGX1’)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1CGCGX1’(CG)P)配列の5’側X1である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(CGX1X1’CG(CG)p)z(配列番号:10)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−2、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(CGX1X1’CG(CG)P)配列の第一の(CGX1X1’CG)を含む。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、CGであり、及び第一の(CGX1X1’CG(CG)P)配列の5’側CGである。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2CGX3X3’CGX2’X1’(CG)P)z(配列番号:11)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’、並びにX3及びX3’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、10塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1X2CGX3X3’CGX2’X1’(CG)P)(配列番号:13)配列の第一の(X1X2CGX3X3’CGX2’X1’)(配列番号:12)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2CGX3X3’CGX2’X1’(CG)P)(配列番号:13)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2CGX3X3’CGX2’X1’(CG)P)(配列番号:13)配列の5’側X1及びX2である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、p=1である場合、X1、X2、及びX3は各々、A又はTのいずれかである。一部の実施態様において、p=0である場合、X1、X2、及びX3の少なくとも2つは、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2CGX2’X1’(CG)p)z(配列番号:14)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1X2CGX2’X1’(CG)P)z(配列番号:28)配列の第一の(X1X2CGX2’X1’)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2CGX2’X1’(CG)P)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2CGX2’X1’(CG)P)配列の5’側X1及びX2である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられる。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、X1及びX2は各々、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’(CG)p)z(配列番号:15)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−3、−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’、X3及びX3’、X4及びX4’、並びにX5及びX5’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、12塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の((X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:17)配列の第一の(X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’)(配列番号:16)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:17)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:17)配列の5’側X1及びX2である。w=−3であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から三番目(すなわち最後から三番目)、末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3X4X5CGX5’X4’X3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:17)配列の5’側X1、X2及びX3である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、X1、X2、X3、X4、及びX5の少なくとも3つは、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2CGCGX2’X1’(CG)p)z(配列番号:18)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(XIX2CGCGX2’X1’(CG)P)(配列番号:19)配列の第一の(X1X2CGCGX2’X1’)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2CGCGX2’X1’(CG)P)(配列番号:19)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2CGCGX2’X1’(CG)P)(配列番号:19)配列の5’側X1及びX2である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、X1及びX2は各々、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’(CG)p)z(配列番号:20)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−3、−2、−1、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、X2及びX2’、並びにX3及びX3’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、10塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:22)配列の第一の(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’)(配列番号:21)を含む。w=−1であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の3’側塩基は、第一の(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’(CG)p)(配列番号:22)配列の5’側X1である。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:22)配列の5’側X1及びX2である。w=−3であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から三番目(すなわち最後から三番目)、末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、各々、第一の(X1X2X3CGCGX3’X2’X1’(CG)P)(配列番号:22)配列の5’側X1、X2及びX3である。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、p=1の場合、X1、X2、及びX3は、各々、A又はTのいずれかである。一部の実施態様において、p=0の場合、X1、X2、及びX3の少なくとも2つは、A又はTのいずれかである。
一部の実施態様において、ISSは、式:5’−Nx(TCG(Nq))yNw(CGX1X2X2’X1’CG(CG)p)z(配列番号:23)の配列を含んでよく、ここでNはヌクレオシドであり、x=0〜3、y=1〜4、w=−2、0、1又は2、p=0又は1、q=0、1又は2、及びz=1〜20であり、ここでX1及びX1’、並びにX2及びX2’は、自己相補的であり、並びにここで(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の5’側Tは、該ポリヌクレオチドの5’末端から0〜3個の塩基である。ISSは、8塩基長又はそれよりも大きいパリンドローム配列を更に含み、ここでこのパリンドローム配列は、少なくとも1個の(CGX1X2X2’X1’CG(CG)P)(配列番号:24)配列の第一の(CGX1X2X2’X1’CG)を含む。w=−2であるISSにおいて、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の末位から二番目(すなわち最後から二番目)及び最終(すなわち最後)の3’側塩基は、CGであり、及び第一の(CGX1X2X2’X1’CG(CG)P)(配列番号:24)配列の5’側CGである。一部の実施態様において、(TCG(Nq))y配列は、0、1又は2個の塩基により、このパリンドローム配列から隔てられている。別の実施態様において、本パリンドローム配列は、(TCG(Nq))y(配列番号:3)配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様において、X1及びX2は、各々、A又はTのいずれかである。
y=2又はそれよりも大きいような本明細書に説明された任意のモチーフを含むISSに関して、(TCG(Nq))のy個反復の各々における(Nq)は、独立して選択される。例えば、y=2のISSにおいて、第一のTCG(Nq)は、N=A及びq=1を有し、第二のTCG(Nq)は、q=0を有してよく、この場合ISSのこの部分は、...TCGATCG...である。一部の実施態様における本明細書に説明された任意のモチーフを含むISSの一部の実施態様において、xは好ましくは0又は1である。本明細書に説明された任意のモチーフを含むISSの一部の実施態様において、yは好ましくは1又は2である。本明細書に説明された任意のモチーフを含むISSの一部の実施態様において、wは好ましくは0である。本明細書に説明された任意のモチーフを含むISSの一部の実施態様において、zは好ましくは1、2、3、4、5、6、7又は8である。
前述のように、これらのISSは、少なくとも8塩基長のパリンドローム配列を少なくとも1個含む。一部の実施態様において、ISSは、少なくとも下記の長さ(塩基で)のパリンドローム配列を少なくとも1個含む:10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30。一部の実施態様において、本パリンドローム配列は、ISSにおいて少なくとも1回反復される。一部の実施態様において、本パリンドローム配列は、もしあれば、(TCG(Nq))y配列の5’側の塩基も含む。
前述の教示に従い使用することができる具体的ISSの非限定的例は、米国特許公開第2006/0058254号、同じく米国特許公開第2004/0132677号に開示されている。
ISSへの修飾
ISSは、修飾を含んでよい。ISSの修飾は、当該技術分野において公知のいずれかを含むが、3’OH基又は5’OH基の修飾、ヌクレオチド塩基の修飾、糖成分の修飾、及びリン酸基の修飾に限定されない。修飾された塩基(類)が、ワトソン−クリック塩基対を通じてその天然の相補体と同じ特異性を維持する(例えばISSのパリンドローム部分は依然自己相補的である)限りは、修飾された塩基は、ISSのパリンドローム配列に含まれてよい。
ISSは、天然の又は修飾された非天然の塩基を含んでよく、かつ修飾された糖、リン酸、及び/又は末端を含んでよい。例えばリン酸修飾は、ホスホジエステル連結に加え、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル及びホスホロジチオエートを含むが、これらに限定されるものではなく、並びに任意の組み合わせで使用されてよい。他の非リン酸連結も使用することができる。一部の実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格のみを含む。一部の実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格のみを含む。一部の実施態様において、ISSは、ホスホジエステルとホスホロチオエート連結の組み合わせのような、リン酸骨格中のリン酸連結の組み合わせを含んでよい。
当該技術分野において公知の糖修飾、例えば2’−アルコキシ−RNAアナログ、2’−アミノ−RNAアナログ、2’−フルオロ−DNA、及び2’−アルコキシ−又はアミノ−RNA/DNAキメラ並びに本明細書において説明されたその他のものなども作製し、かつ任意のリン酸修飾と組み合わせることができる。塩基修飾の例は、電子求引性部分の、ISSのシトシンのC−5及び/又はC−6(例えば5−ブロモシトシン、5−クロロシトシン、5−フルオロシトシン、5−ヨードシトシン)並びにISSのウラシルのC−5及び/又はC−6(例えば5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−フルオロウラシル、5−ヨードウラシル)への追加を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、WO 99/62923を参照のこと。ISSのパリンドローム配列における塩基修飾の使用は、ワトソン−クリック塩基対に関与した塩基の自己相補能を妨害してはならない。しかしパリンドローム配列の外側の修飾された塩基は、この制限を伴わずに使用することができる。
加えて、骨格リン酸基修飾(例えば、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート及びホスホロジチオエートのヌクレオチド間連結)は、ISSに免疫調節活性を付与し、かつそれらのインビボにおける安定性を増強し、それらを特に治療的適用において有用にすることができる。特に有用なリン酸基修飾は、ISSオリゴヌクレオチドのホスホロチオエート型又はホスホロジチオエート型への転換である。それらの可能性のある免疫調節特性に加え、ホスホロチオエート及びホスホロジチオエートは、それらの未修飾のオリゴヌクレオチド対応物よりも、インビボにおける分解に対しより抵抗性であり、本発明のISSを、個体により利用可能とする。
ISSの合成及びスクリーニング
ISSは、酵素的方法、化学的方法、及び比較的大きいオリゴヌクレオチド配列の分解を含むが、これらに限定されるものではない、当該技術分野において周知の技術及び核酸合成装置を用いて合成することができる。例えば、Ausubelら(1987)及びSambrookら(1989)の論文を参照のこと。酵素的に集成する場合は、個々のユニットを、例えばT4 DNA又はRNAリガーゼなどのリガーゼにより、連結することができる。例えば米国特許第5,124,246号を参照のこと。オリゴヌクレオチド分解は、米国特許第4,650,675号に例示されているように、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼへの曝露により達成することができる。
ISSは、通常のポリヌクレオチド単離手順を用いて単離することもできる。このような手順は、共有されたヌクレオチド配列を検出するためのゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーのプローブハイブリダイゼーション、共有された構造的特徴を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、及び特定の未変性の配列のポリメラーゼ連鎖反応による合成を含むが、これらに限定されるものではない。
環状ISSは、単離し、組み換え法により合成するか、又は化学的に合成することができる。環状ISSが単離又は組み換え法により得られる場合、ISSは好ましくはプラスミドであろう。比較的小さい環状オリゴヌクレオチドの化学合成は、文献に説明された任意の方法を用いて行うことができる。例えばGaoら、(1995) Nucleic Acids Res. 23:2025-2029;及び、Wangら、(1994) Nucleic Acids Res. 22:2326-2333を参照のこと。
ほとんどのISSの二重鎖(すなわち二本鎖)型及びヘアピン型は、動的平衡にあり、ヘアピン型は一般に、低いポリヌクレオチド濃度及び高温において好ましい。共有的鎖間又は鎖内架橋は、各々、熱−、イオン−、pH−、及び濃度−が誘導した高次構造の変化に対し、二重鎖又はヘアピンの安定性を増大する。化学架橋は、ポリヌクレオチドを、物理化学的及び生物学的特徴決定のために、二重鎖又はヘアピン型のいずれかに固定するために使用することができる。高次構造的に均質でありかつそれらの最も活性型(二重鎖又はヘアピン型のいずれか)に固定された架橋したISSは、それらの未架橋の対応物よりもより活性がある可能性がある。従って本発明の一部のISSは、共有的鎖間及び/又は鎖内架橋を含む。
二重鎖DNAを化学的に架橋する様々な方法が、当該技術分野において公知である。架橋したポリヌクレオチド生成物が所望の免疫調節活性を有する限りは、任意の架橋法を使用することができる。
ひとつの方法は、二重鎖又はヘアピンの末端で、例えば、2個の反対の(opposing)チミジンの間に、ジスルフィド橋を生じる。この架橋法に関して、関心対象のオリゴヌクレオチド(類)は、5’−DMT−N3−(tBu−SS−エチル)チミジン−3’−ホスホロアミダイト(“T*”)により合成される。ジスルフィド橋を形成するために、混合されたジスルフィド結合が還元され、オリゴヌクレオチドは精製され、これらの鎖はハイブリダイズされ、かつこれらの化合物は空気酸化され、ヘアピン型の場合は鎖内架橋を、又は二重鎖型の場合は鎖間架橋を形成する。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドは最初にハイブリダイズされ、その後還元、精製及び空気酸化されてもよい。このような方法及び他の方法は、例えば、Glickら、(1991) J. Org. Chem. 56:6746-6747;Glickら、(1992) J. Am. Chem. Soc. 114:5447-5448;Goodwinら、(1994) Tetrahedron Letters 35:1647-1650;Wangら、(1995) J. Am. Chem. Soc. 117:2981-2991;Osborneら、(1996) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 6:2339-2342、及びOsborneら、(1996) J. Am. Chem. Soc. 118:11993-12003に説明されている。
別の架橋法は、二重鎖又はヘアピン構造内のオフセット(offset)残基間にジスルフィド橋を形成する。この架橋法に関して、関心対象のオリゴヌクレオチド(類)は、交換可能なヌクレオシド(例えばGlen Researchから市販されている)により合成される。この方法は、例えば、A−Aジスルフィド又はC−Aジスルフィド橋を使用し、かつ他の塩基を介した連結も可能である。ジスルフィド−修飾されたポリヌクレオチドを形成するために、交換可能なヌクレオシドを含むポリヌクレオチドは、シスタミン(又は他のジスルフィド−含有アミン)と反応する。ジスルフィド橋を形成するために、混合されたジスルフィド結合は還元され、オリゴヌクレオチドが精製され、鎖がハイブリダイズされ、かつこれらの化合物は空気酸化され、ヘアピン型の場合は鎖内架橋を、又は二重鎖型の場合は鎖間架橋を形成する。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドは最初にハイブリダイズされ、その後還元、精製及び空気酸化されてもよい。このような方法及び他の方法は、例えば、Glickら、(1991) J. Org. Chem. 56:6746-6747;Glickら、(1992) J. Am. Chem. Soc. 114:5447-5448;Goodwinら、(1994) Tetrahedron Letters 35:1647-1650;Wangら、(1995) J. Am. Chem. Soc. 117:2981-2991;Osborneら、(1996) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 6:2339-2342、及びOsborneら、(1996) J. Am. Chem. Soc. 118:11993-12003に説明されている。
別の架橋法は、二重鎖又はヘアピン構造内のオフセット残基間にジスルフィド橋を形成する。この架橋法に関して、関心対象のオリゴヌクレオチド(類)は、交換可能なヌクレオシド(例えばGlen Researchから市販されている)により合成される。この方法は、例えば、A−Aジスルフィド又はC−Aジスルフィド橋を使用し、かつ他の塩基を介した連結も可能である。ジスルフィド−修飾されたポリヌクレオチドを形成するために、交換可能なヌクレオシドを含むポリヌクレオチドは、シスタミン(又は他のジスルフィド−含有アミン)と反応する。ジスルフィド橋を形成するために、混合されたジスルフィド結合は還元され、オリゴヌクレオチドが精製され、鎖がハイブリダイズされ、かつこれらの化合物は空気酸化され、ヘアピン型の場合は鎖内架橋を、又は二重鎖型の場合は鎖間架橋を形成する。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドは最初にハイブリダイズされ、その後還元、精製及び空気酸化されてもよい。このような方法は、例えば、Ferentzら、(1991) J. Am. Chem. Soc. 113:4000-4002、及びFerentzら、(1993) J. Am. Chem. Soc. 115:9006-9014に説明されている。
ポリヌクレオチド及び修飾されたポリヌクレオチドを作製する技術は、当該技術分野において公知である。ホスホジエステル連結を含む天然のDNA又はRNAは一般に、適切なヌクレオシドホスホロアミダイトの、3’−末端が固相支持体に結合した成長するオリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシ基への連続結合、それに続く中間体亜リン酸トリエステルのリン酸トリエステルへの酸化により、合成される。一旦所望のポリヌクレオチド配列が合成されると、このポリヌクレオチドは、支持体から除去され、リン酸トリエステル基は、リン酸ジエステルへと脱保護され、かつヌクレオシド塩基は、水性アンモニア又は他の塩基を用いて脱保護される。例えば、Beaucageの「Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties」(Agrawal編集)、Humana Press社, Totowa, NJ(1993)中の「Oligodeoxyribonucleotide Synthesis」;Warnerら、(1984) DNA 3:401、及び米国特許第4,458,066号を参照のこと。
本ISSは、リン酸−修飾したポリヌクレオチドも含むことができ、その一部はポリヌクレオチドを安定化することが知られている。従って一部の実施態様は、安定化されたISSを含む。修飾されたリン酸連結又は非リン酸連結を含むポリヌクレオチドの合成も、当該技術分野において公知である。総説に関しては、Matteucciの「Oligonucleotides as Therapeutic Agents」(1997) (DJ. Chadwick及びG. Cardew編集)John Wiley and Sons社, ニューヨーク, NY中の「Oligonucleotide Analogs: an Overview」を参照のこと。本発明のポリヌクレオチド内の糖又は糖アナログ部分に結合することができるリン誘導体(又は修飾されたリン酸基)は、一リン酸エステル、二リン酸エステル、三リン酸エステル、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどであることができる。前記リン酸アナログの調製、及びそれらのヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドへの組み込みそれ自身も公知であり、かつ本明細書において詳細に説明する必要はない。Peyrottesら、(1996) Nucleic Acids Res. 24:1841-1848;Chaturvediら、(1996) Nucleic Acids Res. 24:2318-2323;及び、Schultzら、(1996) Nucleic Acids Res. 24:2966-2973を参照のこと。例えば、ホスホロチオエートリゴヌクレオチドの合成は、酸化工程を硫化工程と交換すること以外は、天然のオリゴヌクレオチドについて先に説明されたものに類似している(Zon、「Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties」(Agrawal編集)、Humana Press社(1993)中の「Oligonucleotide Phosphorotihoates」, 165-190頁,)。同様に他のリン酸アナログの合成、例えばホスホトリエステル(Millerら、(1971) JACS 93:6657-6665)、非架橋ホスホロアミデート(Jagerら、(1988) Biochem. 27:7247-7246)、N3’からP5’ホスホロアミデート(Nelsonら、(1997) JOC 62:7278-7287)及びホスホロジチオエート(米国特許第5,453,496号)なども、説明されている。他の非-リンベースの修飾されたオリゴヌクレオチドも使用することができる(Stirchakら、(1989) Nucleic Acids Res. 17:6129-6141)。ホスホロチオエート骨格を持つポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格を持つものよりも、より免疫原性であることができ、かつ宿主への注入後の分解に対しより抵抗性であるように見える。Braunら、(1988) J. Immunol. 141:2084-2089;及び、Latimerら、(1995) Mol. Immunol. 32:1057-1064。
本発明において使用されるISSは、1個又は複数のリボヌクレオチド(唯一又は主たる糖成分としてリボースを含む)、デオキシリボヌクレオチド(主たる糖成分としてデオキシリボースを含む)を含むことができるか、又は当該技術分野において公知であるように、修飾された糖又は糖アナログをISSへ組み込むことができる。従って糖成分は、リボース及びデオキシリボースに加え、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖「アナログ」シクロペンチル基であることができる。糖は、ピラノシル型又はフラノシル型であることができる。ISSにおいて、糖成分は好ましくは、リボース、デオキシリボース、アラビノース又は2’−O−アルキルリボースのフラノシドであり、並びに糖は、各複素環塩基へ、α又はβアノマー配置のいずれかで結合することができる。糖修飾は、2’−アルコキシ−RNAアナログ、2’−アミノ−RNAアナログ、2’−フルオロ−DNA、及び2’−アルコキシ−又はアミノ−RNA/DNAキメラを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、ISSの糖修飾は、2’−O−メチル−ウリジン及び2’−O−メチル−シチジンを含むが、これらに限定されるものではない。これらの糖又は糖アナログ及びそのような糖又はアナログが複素環塩基(核酸塩基)に結合されている各「ヌクレオシド」の調製は、それ自身公知であり、そのような調製がいずれかの具体例に関連する場合を除いて、ここで説明は不要である。糖修飾を行い、及びISSの調製におけるいずれかのリン酸修飾と組み合わせてもよい。
ISSに組み込まれる複素環塩基又は核酸塩基は、天然の主要なプリン及びピリミジン塩基(すなわち、前述のウラシル、チミン、シトシン、アデニン及びグアニン)に加え、該主要塩基の天然の及び合成の修飾であることができる。従ってISSは、2’−デオキシウリジン及び/又は2−アミノ−2’−デオキシアデノシンを含んでよい。
当業者は、様々な複素環塩基及び様々な糖成分(及び糖アナログ)を含む、多数の「合成」非天然のヌクレオシドを、当該技術分野において利用可能であること、及び本発明の他の基準を満足する限りは、ISSは、天然の核酸の主要な5種の塩基成分以外の1種又は複数の複素環塩基を含むことができることを理解するであろう。しかし好ましくは、ISSの複素環塩基は、ウラシル−5−イル基、シトシン−5−イル基、アデニン−7−イル基、アデニン−8−イル基、グアニン−7−イル基、グアニン−8−イル基、4−アミノピロロ[2.3−d]ピリミジン−5−イル基、2−アミノ−4−オキソピロロ−[2,3−d]ピリミジン−5−イル基、2−アミノ−4−オキソピロロ[2.3−d]ピリミジン−3−イル基を含むが、これらに限定されるものではなく、ここでプリンは、ISSの糖成分へは9−位で、ピリミジンは1−位で、ピロロピリミジンは7−位で、及びピラゾロピリミジンは1−位で結合される。
ISSは、少なくとも1個の修飾された塩基を含んでよい。本明細書において使用される用語「修飾された塩基」は、「塩基アナログ」と同義であり、例えば「修飾されたシトシン」は「シトシンアナログ」と同義である。同様に「修飾された」ヌクレオシド又はヌクレオチドは、本明細書においてヌクレオシド又はヌクレオチド「アナログ」と同義であると定義される。塩基修飾の例は、ISSのシトシンのC−5及び/又はC−6への電子求引性部分の付加を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくはこの電子求引性部分は、ハロゲンである。このような修飾されたシトシンは、アザシトシン、5−ブロモシトシン、ブロモウラシル、5−クロロシトシン、塩素化シトシン、シクロシトシン、シトシンアラビノシド、5−フルオロシトシン、フルオロピリミジン、フルオロウラシル、5,6−ジヒドロシトシン、5−ヨードシトシン、ヒドロキシ尿素、ヨードウラシル、5−ニトロシトシン、ウラシル、及びいずれか他のピリミジンアナログ又は修飾されたピリミジンを含むが、これらに限定されるものではない。他の塩基修飾の例は、ISSのウラシルのC−5及び/又はC−6への電子求引性部分の付加を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくはこの電子求引性部分は、ハロゲンである。このような修飾されたウラシルは、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−フルオロウラシル、及び5−ヨードウラシルを含むが、これらに限定されるものではない。
塩基修飾の他の例は、1個又は複数のチオール基の塩基への付加を含み、これは2−アミノ−アデニン、6−チオ−グアニン、2−チオ−チミン、4−チオ−チミン、5−プロピニル−ウラシル、及び4−チオ−ウラシルを含むが、これらに限定されるものではない。塩基修飾の他の例は、N4−エチルシトシン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン及び5−ヒドロキシシトシンを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、Kandimallaら、(2001) Bioorg. Med. Chem. 9:807-813を参照のこと。
塩基−修飾されたヌクレオシドの調製、及び該塩基−修飾されたヌクレオシドを前駆体として使用する修飾されたオリゴヌクレオチドの合成は、米国特許第4,910,300号、第4,948,882号、及び第5,093,232号に開示されている。これらの塩基−修飾されたヌクレオシドは、それらをオリゴヌクレオチドの末端又は内部のいずれかの位置へ化学合成により組み込むことができるようにデザインされている。オリゴヌクレオチドの末端又は内部のいずれかの位置に存在するこのような塩基−修飾されたヌクレオシドは、ペプチド又は他の抗原の結合部位として利用することができる。それらの糖成分が修飾されたヌクレオシドが説明されており(米国特許第4,849,513号;第5,015,733号;第5,118,800号;及び、第5,118,802号を含むが、これらに限定されるものではない)、かつ同様に使用することができる。
一部の実施態様において、ISSは、ほぼ以下の長さのいずれかよりも短い(塩基又は塩基対で):10,000;5,000;2500;2000;1500;1250;1000;750;500;300;250;200;175;150;125;100;75;60;50;40;30;25;20;15;14;13;12;11;10。一部の実施態様において、ISSは、ほぼ以下の長さのいずれかよりも長い(塩基又は塩基対で):10;11;12;13;14;15;20;25;30;40;50;60;75;100;125;150;175;200;250;300;350;400;500;750;1000;2000;5000;7500;10000;20000;50000。あるいは、本ISSは、10,000;5,000;2500;2000;1500;1250;1000;750;500;300;250;200;175;150;125;100;75;60;50;40;30;25;20;15;14;13;12;11;10の上限、及び10;11;12;13;14;15;20;25;30;40;50;60;75;100;125;150;175;200;250;300;350;400;500;750;1000;2000;5000;7500から独立して選択された下限を有し、ここで下限は上限未満であるようなサイズ範囲のいずれかであることができる。一部の実施態様において、ISSは、塩基長が約200以下であることが好ましい。
あるいは、ISSは、核酸ハイブリダイゼーションのような、当該技術分野において周知の技術を用い、微生物種(特にミコバクテリア)から単離されてよい。好ましくはそのような単離されたISSは、実質的に純粋な状態、すなわちリポ多糖のような内在性夾雑物を含まないようになるまで精製されるであろう。比較的大きいポリヌクレオチドの一部として単離されたISSは、エンドヌクレアーゼ消化によるなどの周知の技術により、所望の長さまで切断することができる。当業者は、本発明において使用する可能性のあるISSを得るためにポリヌクレオチドを単離、精製、及び消化するのに適した技術を熟知しているか、又は容易に確認することができるであろう。
特定のオリゴヌクレオチドが、本発明において有用なISS特性を有することの確認は、以下に説明されたようにISSがサイトカイン分泌に影響を及ぼすかどうかを評価することにより得ることができる。そのような評価を行う上で有用なインビトロ技術の詳細は、本実施例に示されており;当業者は、本明細書に記されたパラメータに沿ってサイトカイン分泌を測定する他の方法も知っているか、又は容易に確認することができるであろう。
ISSと共に投与されてよい抗原
任意の抗原を、ISSと同時投与するか、並びに/又はISS及び抗原を含有する組成物(及びこれらの組成物の調製品)において使用してよい。
一部の実施態様において、本抗原はアレルゲンである。組み換えアレルゲンの例を、表1に提示している。多くのアレルゲンの調製品が、当該技術分野において周知であり、これはブタクサ花粉アレルゲン抗原E(Amb a I)(Rafnarら、(1991) J. Biol. Chem. 266:1229-1236)、草アレルゲンLol p1(Tamboriniら、(1997) Eur. J. Biochem. 249:886-894)、主要なイエダニアレルゲンDer pI及びDer PII(Chuaら、(1988) J. Exp. Med. 167:175-182;Chuaら、(1990) Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 91:124-129)、家猫アレルゲンFel dI(Rogers ら、(1993) Mol. Immunol. 30:559-568)、シラカバ花粉Bet vl(Breitenederら、(1989) EMBO J. 8:1935-1938)、日本スギアレルゲンCry j1及びCry j2(Kingetsuら、(2000) Immunology 99:625-629)、及び他の樹木花粉由来のタンパク質抗原(Elsayedら、(1991) Scand. J. Clin. Lab. Invest. Suppl. 204:17-31)の調製品を含むが、これらに限定されるものではない。示されたように、カバ、ヒノキ及び日本スギを含む、樹木由来のアレルゲンが公知である。インビボ投与のための草花粉からのタンパク質抗原の調製品が、報告されている。
一部の実施態様において、アレルゲンは、食品アレルゲンであり、これはピーナッツアレルゲン、例えばAra hI(Stanleyら、(1996) Adv. Exp. Med. Biol. 409:213-216);クルミアレルゲン、例えばJug rI(Tueberら、(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 101:807-814);ブラジルナッツアレルゲン、例えばアルブミン(Pastorelloら、(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102:1021-1027);shrISSアレルゲン、例えばPen aI(Reeseら、(1997) Int. Arch. Allergy Immunol. 113:240-242);卵アレルゲン、例えばオボムコイド(Crookeら、(1997) J. Immunol. 159:2026-2032);牛乳アレルゲン、例えばウシβ-ラクトグロビン(Selotら、(1999) Clin. Exp. Allergy 29:1055-1063);魚アレルゲン、例えばパルブアルブミン(Van Doら、(1999) Scand. J. Immunol. 50:619-625;Gallandら、(1998) J. Chromatogr. B. Biomed. ScL Appl. 706:63-71)を含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、アレルゲンは、ラテックスアレルゲンであり、これはHev b 7(Sowkaら、(1998) Eur. J. Biochem. 255:213-219)を含むが、これに限定されるものではない。表1は、使用することができるアレルゲン例の一覧を示している。
一部の実施態様において、本抗原は、原虫、細菌、真菌(単細胞及び多細胞を含む)、及びウイルス感染物質を含む感染物質に由来する。好適なウイルス抗原の例は、本明細書に説明されており、かつ当該技術分野において公知である。細菌は、インフルエンザ菌、結核菌及び百日咳菌を含む。原虫感染物質は、マラリア原虫、リーシュマニア種、トリパノソーマ種及びシストソマ種を含む。真菌は、カンジダ・アルビカンスを含む。
一部の実施態様において、本抗原は、ウイルス抗原である。ウイルスポリペプチド抗原は、HIVタンパク質、例えばHIV gagタンパク質(膜アンカー(MA)タンパク質、コアキャプシド(CA)タンパク質及びヌクレオキャプシド(NC)タンパク質を含むが、これらに限定されるものではない)、HIVポリメラーゼ、インフルエンザウイルスマトリックス(M)タンパク質及びインフルエンザウイルスヌクレオキャプシド(NP)タンパク質、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コアタンパク質(HBcAg)、B型肝炎eタンパク質(HBeAg)、B型肝炎DNAポリメラーゼ、C型肝炎抗原などを含むが、これらに限定されるものではない。インフルエンザワクチンを考察する参考文献は、Scherle及びGerhard、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4446-4450;Scherle及びGerhard、(1986) J. Exp. Med. 164:1114-1128;Granoffら、(1993) Vaccine 11:S46-51;Kodihalliら、(1997) J. Virol. 71:3391-3396;Ahmeidaら、(1993) Vaccine 11:1302-1309;Chenら、(1999) Vaccine 17:653-659;Govorkova及びSmirnov、(1997) Acta Virol. (1997) 41:251-257;Koideら、(1995) Vaccine 13:3-5;Mbawuikeら、(1994) Vaccine 12:1340-1348;Tamuraら、(1994) Vaccine 12:310-316;Tamuraら、(1992) Eur. J. Immunol. 22:477-481;Hirabayashiら、(1990) Vaccine 8:595-599がある。他の抗原ポリペプチドの例は、群-又は亜群特異的抗原であり、これはアデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス及びポックスウイルスを含むが、これらに限定されるものではない、多くの感染物質について公知である。
当該技術分野において、多くの抗原性ペプチド及びタンパク質が公知であり、かつ利用可能であり;他のものを、従来の技術を用い同定することができる。腫瘍形成に対する免疫処置又は存在する腫瘍の治療のための免疫調節ペプチドは、腫瘍細胞(生存又は放射線照射した)、腫瘍細胞抽出物、又は腫瘍抗原のタンパク質サブユニット、例えばHer−2/neu、Mart1、癌胎児性抗原(CEA)、ガングリオシド、ヒト乳脂肪球(HMFG)、ムチン(MUC1)、MAGE抗原、BAGE抗原、GAGE抗原、gp100、前立腺特異抗原(PSA)、及びチロシナーゼなどを含むことができる。免疫ベースの避妊のためのワクチンは、ISSと共に投与される精子タンパク質を含むことにより作製することができる。Leaら、(1996) Biochim. Biophys. Acta 1307:263。
弱毒化され失活されたウイルスは、抗原としてここで使用するのに適している。これらのウイルスの調製品は、当該技術分野において周知であり、かつ多くが市販されている(例えば「医家向け医薬品便覧(PDR)」(1998)、第52版、Medical Economics Company, Inc.を参照のこと)。例えば、ポリオウイルスは、IPOL(登録商標)(Pasteur Merieux Connaught)及びORIMUNE(登録商標)(Lederle Laboratories)として、A型肝炎ウイルスはVAQTA(登録商標)(Merck)として、麻疹ウイルスはATTENUVAX(登録商標)(Merck)として、ムンプスウイルスはMUMPSVAX(登録商標)(Merck)として、及び風疹ウイルスはMERUVAX(登録商標)II(Merck)として入手可能である。加えて、HIV−1、HIV−2、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ヒト及び非ヒトパピローマウイルス及び遅発性脳ウイルスなどの弱毒化され失活されたウイルスは、ペプチド抗原を提供することができる。一部の実施態様において、この抗原は、ワクシニア、アデノウイルス、及びカナリアポックスなどのウイルスベクターを含む。
抗原は、それらの給源から、当該技術分野において公知の精製技術を用い、単離されるか、もしくはより好都合なことに組み換え法を用いて作出されてよい。抗原性ペプチドは、精製された未変性のペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、粗タンパク質抽出物、弱毒化又は失活されたウイルス、細胞、微生物、又はそのようなペプチドの断片を含むことができる。免疫調節ペプチドは、未変性であるか、又は化学合成もしくは酵素合成することができる。当該技術分野において公知の化学合成法のいずれかが適している。液相ペプチド合成を用い、中サイズのペプチドを構築するか、又はペプチドを化学構築するために、固相合成を使用することができる。Athertonら、(1981) Hoppe Seylers Z. Physiol. Chem. 362:833-839。タンパク質分解酵素も、アミノ酸を組み合わせ、ペプチドを作出するために利用することができる。Kullmann (1987) Enzymatic Peptide Synthesis, CRC Press, Inc.。あるいは、ペプチドは、細胞の生化学的機構を使用することによるか、又は生物給源からの単離により、得ることができる。組み換えDNA技術をペプチドの生成に使用することができる。Hamesら、(1987) Transcription and Translation: A Practical Approach, IRL Press。ペプチドは、アフィニティクロマトグラフィーのような標準技術を用い単離することもできる。
好ましくは、抗原は、ペプチド、脂質(例えばコレステロールを除くステロール、脂肪酸及びリン脂質)、インフルエンザ菌ワクチンで使用されるもののような多糖、ガングリオシド及び糖タンパク質である。これらは、化学的及び酵素的方法を用いる単離及び合成を含む、当該技術分野において公知のいくつかの方法により得ることができる。場合によっては、多くのステロール、脂肪酸及びリン脂質などについて、分子の抗原性部分が市販されている。
本組成物及びこの組成物を使用する方法において有用なウイルス抗原の例は、HIV抗原を含むが、これらに限定されるものではない。このような抗原は、非限定的にgp160、gp120及びgp41を含むHIVエンベロープ糖タンパク質由来の抗原を含むが、これらに限定されるものではない。HIV遺伝子及び抗原の多くの配列が公知である。例えば、Los Alamos National Laboratory HIV Sequence Databaseは、HIVのヌクレオチド及びアミノ酸の配列を収集し、監督し及び注釈している。このデータベースは、インターネットでアクセス可能であり、毎年刊行されており、Human Retroviruses and AIDS Compendiumを参照のこと(例えば2000年版)。
感染物質由来の抗原は、例えば、未変性のウイルス又は細菌抽出物から、感染物質に感染した細胞から、精製されたポリペプチドから、組み換えにより作出されたポリペプチドから及び/又は合成ペプチドとして、当該技術分野において公知の方法を用い、得ることができる。
ISS−抗原
ISSは、抗原と共に使用される場合、多くの方法で抗原と共に投与されてよい。一部の実施態様において、ISS及び抗原は、互いに空間的に近接して、又は混合物として(すなわち溶液中)、投与されてよい。以下に説明するように、空間的近接は、コンジュゲート(連結)、封入、プラットホームへの固定(affixation)又は表面への吸着を含む、多くの方法で実現され得る。一般にかつ最も好ましくは、ISS及び抗原は、ISS及び抗原の混合物としての投与と比べ、生じる免疫反応を増強するのに有効な距離で、近接して会合されている。
一部の実施態様において、ISSは、抗原とコンジュゲートされている。ISS部分は、共有的及び/又は非共有的相互作用を含む、様々な方法で、コンジュゲートの抗原部分と結合することができる。
これらの部分間の連結は、ISSの3’又は5’末端で、又はISSの内部位置の好適に修飾された塩基で、作製することができる。抗原がペプチドでありかつ好適な反応基(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を含む場合、これはシトシン残基のN4アミノ基と直接反応することができる。ISSのシトシン残基の数及び位置に応じ、1個又は複数の残基での特異的結合を実現することができる。
あるいは、当該技術分野において公知であるように、修飾されたオリゴヌクレオシドを、ISSのいずれかの末端、又は内部位置に組み込むことができる。これらは、ブロックされた官能基を含むことができ、これはブロックされた場合、関心対象の抗原上に存在するか又は付着することができる様々な官能基と反応性である。
抗原がペプチド又はポリペプチドである場合、コンジュゲートのこの部分は、固形支持体化学によりISSの3’−末端に結合することができる。例えばISS部分は、支持体上で予め合成されたポリペプチド部分へ追加することができる。Haralambidisら、(1990a) Nucleic Acids Res. 18:493-499;及び、Haralambidisら、(1990b) Nucleic Acids Res. 18:501-505。あるいはISSは、3’−末端から伸びる切断可能なリンカーを介して固形支持体に結合されるように、合成することができる。ISSの支持体からの化学切断時に、末端チオール基はそのオリゴヌクレオチドの3’−末端に残留する(Zuckermannら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:5305-5321;及び、Coreyら、(1987) Science 238:1401-1403)か、又は末端アミノ基がオリゴヌクレオチドの3’−末端に残留する(Nelsonら、(1989) Nucleic Acids Res. 17:1781-1794)。アミノ−修飾されたISSのペプチドのアミノ基へのコンジュゲートは、Benoitらの論文((1987) Neuromethods 6:43-72)に説明されたように行うことができる。チオール−修飾されたISSのペプチドのカルボキシル基へのコンジュゲートは、Sinahらの論文((1991) Oligonucleotide Analogues: A Practical Approach, IRL Press)に説明されたように行うことができる。付属したマレイミドを保持するオリゴヌクレオチドの、ペプチドのシステイン残基のチオール側鎖への結合も説明されている。Tungら、(1991) Bioconjug. Chem. 2:464-465。
本コンジュゲートのペプチド又はポリペプチド部分は、オリゴヌクレオチドの合成時にオリゴヌクレオチドへ組み込まれたアミン、チオール、又はカルボキシル基を介して、ISSの5’−末端へ結合することができる。好ましくはオリゴヌクレオチドが固相支持体へ固定される間に、一端に保護されたアミン、チオール、又はカルボキシル、及び他端にホスホラミダイトを含む連結基が、5’−ヒドロキシルへ共有結合される。脱保護に続き、アミン、チオール及びカルボキシル官能性を用い、このオリゴヌクレオチドをペプチドへ共有結合することができる。Benoitら、(1987);及び、Sinahら、(1991)。
ISS−抗原コンジュゲートは、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合及び/又はファンデルワールス引力のような、非共有的相互作用によっても形成することができる。
非共有的に連結されたコンジュゲートは、ビオチン−ストレプトアビジン複合体のような、非共有相互作用を含むことができる。ビオチニル基は、例えばISSの修飾された塩基に結合することができる。Rogetら、(1989) Nucleic Acids Res. 17:7643-7651。ストレプトアビジン部分のペプチド部分への組み込みは、ストレプトアビジンコンジュゲートされたペプチドとビオチン化されたオリゴヌクレオチドの非共有的に結合した複合体の形成を可能にする。
非共有的会合は、ISS及び荷電アミノ酸などの抗原内の残基が関与しているイオン相互作用によるか、又はオリゴヌクレオチド及び抗原の両方と相互作用し得る荷電残基を含むリンカー部分の使用によっても生じることができる。例えば非共有的コンジュゲートは、一般に負帯電したISSと、正帯電したペプチドのアミノ酸残基、例えばポリリシン、ポリアルギニン及びポリヒスチジン残基の間で起こり得る。
ISSと抗原の間の非共有的コンジュゲートは、それらの天然のリガンドとしてDNAと相互作用する分子のDNA結合モチーフを介して起こり得る。例えば、そのようなDNA結合モチーフは、転写因子及び抗−DNA抗体において認めることができる。
ISSの脂質への連結は、標準法を用いて行うことができる。これらの方法は、オリゴヌクレオチド−リン脂質コンジュゲートの合成(Yanagawaら、(1988) Nucleic Acids Symp. Ser. 19:189-192)、オリゴヌクレオチド−脂肪酸コンジュゲートの合成(Grabarekら、(1990) Anal. Biochem. 185:131-135;及び、Starosら、(1986) Anal. Biochem. 156:220-222)、及びオリゴヌクレオチド−ステロールコンジュゲートの合成(Boujradら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5728-5731)を含むが、これらに限定されるものではない。
オリゴヌクレオチドのオリゴ糖への連結は、標準の公知の方法を用いて形成することができる。これらの方法は、オリゴ糖が免疫グロブリンの一部であるオリゴヌクレオチド−オリゴ糖コンジュゲートの合成を含むが、これらに限定されるものではない。O’Shannessyら、(1985) J. Applied Biochem. 7:347-355。
環状ISSのペプチド又は抗原への連結は、いくつかの方法で形成することができる。環状ISSが組み換え法又は化学法を用いて合成される場合、修飾されたヌクレオシドが適している。Ruth、(1991) Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press。その後標準の連結技術を用い、環状ISSを、抗原又は他のペプチドへ結合することができる。Goodchild、(1990) Bioconjug. Chem. 1:165。環状ISSが組み換え法又は化学法を用いて単離又は合成される場合、この連結は、化学的活性化、又は光活性化、抗原又は他のペプチドへ組み込まれた反応基(例えばカルベン、ラジカル)により形成することができる。
ペプチド及び他の分子をオリゴヌクレオチドに結合する追加の方法は、米国特許第5,391,723号;Kessler、(1992) 「Nonradioactive labeling methods for nucleic acids」、Kricka(編集) Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press;及び、Geogheganら、(1992) Bioconjug. Chem. 3:138-146に説明されている。
ISSは、別の方法で抗原(類)に近接して会合されてもよい。一部の実施態様において、ISS及び抗原は、封入により近接して会合される。別の実施態様において、ISS及び抗原は、プラットホーム分子へ連結することにより近接して会合される。「プラットホーム分子」(「プラットホーム」とも称される)とは、ISS及び抗原(類)の結合を可能にする部位を含む分子である。別の実施態様において、ISS及び抗原は、表面、好ましくはキャリア粒子への吸着により、近接して会合される。
一部の実施態様において、本発明の方法は、その複合体が標的に利用可能となるまで、ISS及び第一の抗原の近接会合を維持することができる封入物質(又はそのような封入剤を含有する組成物)を利用する。好ましくはISS、抗原及び封入剤を含有する組成物は、アジュバント水中油型エマルション、微粒子及び/又はリポソームの形である。より好ましくはISS−免疫調節分子を封入しているアジュバント水中油型エマルション、微粒子及び/又はリポソームは、約0.04μm〜約100μmのサイズの粒子形であり、好ましくは以下の範囲のいずれかである:約0.1μm〜約20μm;約0.15μm〜約10μm;約0.05μm〜約1.00μm;約0.05μm〜約0.5μm。
ミクロスフェアのようなコロイド分散系、ビーズ、巨大分子複合体、ナノカプセル並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル及びリポソームのような脂質−ベースのシステムは、ISS−含有組成物の効果的封入を提供することができる。
本封入組成物は更に、多種多様な成分のいずれかを含有する。これらは、明礬、脂質、リン脂質、脂質膜構造(LMS)、ポリエチレングリコール(PEG)及び他のポリマー、例えばポリペプチド、糖ペプチド、及び多糖などを含むが、これらに限定されるものではない。
封入成分に好適なポリペプチドは、当該技術分野において公知のいずれかを含み、脂肪酸結合タンパク質を含むが、これに限定されるものではない。修飾されたポリペプチドは、非限定的にグリコシル化、リン酸化、ミリスチル化、硫酸化及びヒドロキシル化を含む、様々な修飾のいずれかを含む。本明細書において使用される好適なポリペプチドは、ISS−含有組成物の免疫調節活性を保存するように、ISS−含有組成物を保護するものである。結合タンパク質の例は、ウシ血清アルブミン(BSA)及び大豆アルブミンなどのアルブミンを含むが、これらに限定されるものではない。
他の好適なポリマーは、医薬分野において公知のものであり、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、及び多糖などの天然のポリマー、並びに合成ポリマーを含むが、これらに限定されるものではない。天然のポリマーの例は、タンパク質、糖ペプチド、多糖、デキストラン及び脂質である。追加のポリマーは、合成ポリマーであることができる。本発明における使用に適した合成ポリマーの例は、ポリアルキルグリコール(PAG)、例えばPEG、ポリオキシエチル化ポリオール(POP)、例えばポリオキシエチル化グリセロール(POG)、ポリトリメチレングリコール(PTG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリエチルオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミノ酸、ポリウレタン及びポリホスファゼンを含むが、これらに限定されるものではない。合成ポリマーは更に、直鎖又は分枝鎖の、置換又は非置換の、ホモポリマー、2種以上の異なる合成モノマーのコポリマー、又はブロックコポリマーであることもできる。
本発明の封入組成物において使用するためのPEGは、化学物質供給業者から購入するか、又は当業者に公知の技術を用い合成するかのいずれかである。
本明細書において使用される用語「LMS」は、極性脂質の極性ヘッド基が境界面の水相に面するように並び、膜構造を形成している、層状脂質粒子を意味する。LMSの例は、リポソーム、ミセル、渦巻状(すなわち一般に円柱状リポソーム)、マイクロエマルジョン、単層ベシクル、多重層ベシクルなどである。
好ましい本発明のコロイド状分散系はリポソームである。リポソーム−封入された抗原で免疫処置したマウスにおいて、リポソームは、抗原に対するTh1−型免疫反応を増強するように見える。Aramakiら、(1995) Vaccine 13:1809-1814。本明細書において使用される「リポソーム」又は「脂質ベシクル」は、少なくとも1つ及び可能ならば1つよりも多い二層脂質膜により結合された小型ベシクルである。リポソームは、非限定的に音波処理、押出、又は脂質−界面活性剤複合体からの界面活性剤の除去をを含む、当該技術分野において公知の技術のいずれかにより、リン脂質、糖脂質、脂質、コレステロールなどのステロイド、関連分子、又はそれらの組み合わせから人工的に作製される。リポソームは任意に、組織標的化成分などの追加成分も含むことができる。「脂質膜」又は「脂質二層」は、専ら脂質からなる必要はないが、膜の全体構造が、疎水性コアをはさむ2個の親水性表面のシートであることを条件として、非限定的にコレステロール及び他のステロイド、脂溶性化学物質、任意の長さのタンパク質、及び他の両媒性分子を含む、いずれか好適な他の成分を追加的に含むことができることは理解される。膜構造に関する全般的考察については、「The Encyclopedia of Molecular Biology」J. Kendrew (1994)を参照のこと。好適な脂質に関しては、例えばLasic、(1993)「Liposomes: from Physics to Applications」 Elsevier, アムステルダムを参照のこと。
ISS−含有組成物を含むリポソームの調製プロセスは、当該技術分野において公知である。脂質ベシクルは、当該技術分野において公知の好適な技術のいずれかにより調製することができる。方法は、マイクロ封入、マイクロフルイダイゼーション、LLC法、エタノール注入、フレオン注入、「バブル」法、界面活性剤透析、水和、音波処理、及び逆相蒸発を含むが、これらに限定されるものではない。Watweらの論文((1995) Curr. Sci. 68:715-724)において検証されている。最も望ましい特性を伴うベシクルを提供するために、技術を組み合わせてもよい。
本発明は、組織又は細胞標的化成分を含むLMSの使用を包含している。このような標的化成分とは、完全な(intact)動物、臓器又は細胞培養物へ投与される場合、ある組織又は細胞部位で、他の組織又は細胞部位よりも優先して、それが蓄積することを増強するLMSの成分である。標的化成分は一般に、リポソームの外側からアクセス可能であり、従って好ましくは外側表面に結合されているか、もしくは脂質二層の外側に挿入されているかのいずれかである。標的化成分はとりわけ、前述の任意の分子に結合した、ペプチド、巨大なペプチドの領域、細胞表面分子もしくはマーカーに特異的な抗体、又はそれらの抗原結合断片、核酸、糖質、複合糖質の領域、特別な脂質、又は小型分子、例えば薬物、ホルモンもしくはハプテンなどであることができる。細胞型−特異的細胞表面マーカーに特異性を有する抗体は、当該技術分野において公知であり、かつ当該技術分野において公知の方法により容易に調製される。
LMSは、治療的処置が方向付けられる任意の細胞型、例えば免疫反応を変調するか及び/又はこれに参画することができる細胞型を標的化することができる。このような標的細胞及び臓器は、APC、例えばマクロファージ、樹状細胞及びリンパ球、リンパ系構造、例えばリンパ節及び脾臓、並びに非リンパ系構造、特に樹状細胞が認められるものを含むが、これらに限定されるものではない。
本発明のLMS組成物は、追加的に界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、両性イオン性、又は非イオン性であることができる。使用することができる界面活性剤のひとつの種類は、非イオン性界面活性剤であり;特に好ましいのは、水溶性のものである。
ISS及び抗原が、プラットホーム分子への連結により近接して会合されているような実施態様において、プラットホームは、タンパク質性又は非タンパク質性(すなわち有機物)であってよい。タンパク質性プラットホームの例は、アルブミン、γグロブリン、免疫グロブリン(IgG)及びオボアルブミンを含むが、これらに限定されるものではない。Borelら、(1990) Immunol. Methods 126:159-168;Dumasら、(1995) Arch. Dematol. Res. 287:123-128;Borelら、(1995) Int. Arch. Allelgy Immunol. 107:264-267;Borelら、(1996) Ann. N.Y. Acad. Sci. 778:80-87。プラットホームは、ISS及び抗原の両方への結合に対応するために、多価である(すなわち、1個よりも多い結合部位又は連結部位を含む)。従ってプラットホームは、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上の結合部位又は連結部位を含んでよい。高分子プラットホームの別の例は、デキストラン、ポリアクリルアミド、フィコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリD−グルタミン酸/D−リシンである。
プラットホーム分子使用の原理は、当該技術分野において周知である。一般にプラットホームは、ISS及び抗原の好適な結合部位を含むか、又は含むように誘導される。加えて又は代わりに、ISS及び/又は抗原は、適切な連結基を提供するように誘導される。例えば単純なプラットホームは、ペプチドのような二官能性リンカー(すなわち2個の結合部位を有する)である。更なる例は以下に考察する。
プラットホーム分子は、生物学的に安定化されてよく、すなわちこれらは治療的有効性をもたらすために、数時間から数日から数ヶ月のインビボ排泄半減期を示し、並びに定義された組成物の合成短鎖で構成されることが好ましい。これらは一般に、分子量約200〜約1,000,000の範囲、好ましくは以下の範囲のいずれかを有する:約200〜約500,000;約200〜約200,000;約200〜約50,000(又は未満、例えば30,000)。結合価のある(valency)プラットホーム分子の例は、ポリエチレングリコール(PEG;好ましくは分子量約200〜約8000を有する)、ポリ−D−リシン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、D−グルタミン酸及びD−リシン(3:2の比)などのポリマーである(又はポリマーで構成される)。使用することができる他の分子は、アルブミン及びIgGである。
本発明における使用に適した他のプラットホーム分子は、米国特許第5,552,391号に開示された、化学的に規定された、非高分子の結合価のあるプラットホーム分子である。本発明における使用に適した他の均質な化学的に規定された結合価のあるプラットホーム分子は、誘導された2,2’−エチレンジオキシジエチルアミン(EDDA)及びメチレングリコール(TEG)である。
追加の好適な結合価のあるプラットホーム分子は、テトラアミノベンゼン、ヘプタアミノβシクロデキストリン、テトラアミノペンタエリスリトール、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)及び1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(Cyclen)を含むが、これらに限定されるものではない。
一般にこれらのプラットホームは、標準の化学合成技術により作製される。PEGは、誘導されかつ多価とされなければならず、このことは標準技術を用いて実現される。コンジュゲート合成に適しているいくつかの物質、例えばPEG、アルブミン、及びIgGは、市販されている。
ISS及び抗原のプラットホーム分子へのコンジュゲートは、多くの方法で実行することができ、典型的には1個又は複数の架橋剤並びに抗原及びISSプラットホーム及びプラットホーム分子上の官能基が関与している。プラットホーム及びISS及び抗原は、適切な連結基を有さなければならない。連結基は、標準合成化学技術を用いて、プラットホームへ追加される。連結基は、標準固相合成技術又は組み換え技術のいずれかを用いて、ポリペプチド抗原及びISSへ添加されてよい。組み換えアプローチは、リンカーを結合するためには翻訳後修飾が必要であり、そのような方法は当該技術分野において公知である。
例として、ポリペプチドは、ポリペプチドのプラットホームへの結合部位として働くアミノ基、カルボキシル基又はスルフヒドリル基などの官能基を含む、アミノ酸側鎖部分を含む。ポリペプチドが既にこれらの基を含まない場合は、そのような官能基を有する残基をポリペプチドへ付加してよい。このような残基は、固相合成技術又は組み換え技術により組み込むことができ、これらは両方ともペプチド合成技術分野において周知である。ポリペプチドが、炭水化物側鎖(類)を有する場合(又は抗原が炭水化物である場合)、官能性アミノ、スルフヒドリル及び/又はアルデヒド基を、従来の化学によりそこに組み込んでよい。例えば第1級アミノ基は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下での酸化された糖のエチレンジアミンとの反応により組み込むことができ、スルフヒドリルは、システアミンジヒドロクロリドの反応、それに続く標準ジスルフィド還元剤による還元により導入することができ、アルデヒド基は、過ヨウ素酸酸化後に生成することができる。同様の様式で、プラットホーム分子が、既に適切な官能基を有さない場合は、これが官能基を含むように誘導することもできる。
様々な長さの親水性リンカーが、ISS及び抗原のプラットホーム分子への接続に有用である。好適なリンカーは、エチレングリコール直鎖オリゴマー又はポリマーを含む。このようなリンカーは、式R1S(CH2CH2O)nCH2CH2O(CH2)mCO2R2を有するリンカー(式中、n=0〜200、m=1又は2、R1=H又はトリチルなどの保護基、R2=H又はアルキル又はアリール)、例えば4−ニトロフェニルエステルを含む。これらのリンカーは、チオエーテルを介し、ハロアセチル(haloaceyl)、マレイミドなどのようなチオール反応基を含む分子の、アミド結合によるアミノ基を含む第二の分子への接続に有用である。これらのリンカーは、付着順序に関して柔軟であり、すなわちこのチオエーテルは最初又は最後に形成させることができる。
ISS及び抗原が表面上の吸着により近接して会合されている実施態様において、この表面は、無機コア又は有機コアのいずれかにより作製された担体粒子(例えばナノ粒子)の形であってよい。このようなナノ粒子の例は、ナノ結晶粒子、アルキルシアノアクリレートの重合により作製されたナノ粒子、及びマロン酸メチリデンの重合により作製されたナノ粒子を含むが、これらに限定されるものではない。ISS及び抗原が吸着することができる追加の表面は、活性炭素粒子及びタンパク質−セラミックナノ粒子を含むが、これらに限定されるものではない。担体粒子の他の例が、本明細書に提示されている。
吸着された分子を細胞へ送達する目的のポリヌクレオチド及びポリペプチドの表面への吸着は、当該技術分野において周知である。例えば、Douglasら、(1987) Crit. Rev. Ther. Drug. Carrier Syst. 3:233-261;Hagiwaraら、(1987) In Vivo 1:241-252;Bousquetら、(1999) Pharm. Res. 16:141-147;及び、Kossovskyら、米国特許第5,460,831号を参照のこと。この吸着媒表面を含む物質は生分解性であることが好ましい。ISS及び/又は抗原の表面への吸着は、イオン性及び/又は疎水性相互作用を含む、非共有的相互作用により生じてよい。
一般に、ナノ粒子などの担体の特徴、例えば表面電荷、粒子サイズ及び分子量などは、重合条件、モノマー濃度及び重合過程での安定化剤の存在によって決まる(Douglasら、1987)。ISS及び/又は抗原の吸着を可能に又は増強するために、担体粒子の表面は、例えば表面コーティングにより修飾されてよい。吸着されたISS及び/又は抗原を伴う担体粒子は更に、他の物質でコーティングされてよい。このような他の物質の添加は、本明細書に説明されたように、例えば一旦被験者へ投与された粒子の半減期を延長するか、及び/又は粒子を特定の細胞型又は組織へ標的化することができる。
ISS及び抗原が吸着され得るナノ結晶表面が説明されている(例えば米国特許第5,460,831号を参照)。ナノ結晶コア粒子(直径1μm以下)は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド及び/又は他の医薬品の吸着を促進する表面エネルギー修飾層により、コーティングされている。米国特許第5,460,831号に開示されたように、例えばコア粒子は、オリゴヌクレオチドの吸着を促進する表面でコーティングされ、引き続き、例えば脂質−抗原混合物の形の、抗原調製品でコーティングされている。このようなナノ粒子は、ISS内層及び抗原外層を保持する、ナノメーターサイズの、典型的には0.1μmの桁の粒子の自己集成型複合体である。
別の吸着性表面は、アルキルシアノアクリレートの重合により作製されたナノ粒子である。アルキルシアノアクリレートは、アニオン重合プロセスにより、酸性化された水性媒体中で重合することができる。重合条件によって、この小型粒子は、20〜3000nmの範囲のサイズを有する傾向があり、特定の表面特性及び特定の表面電荷を伴うナノ粒子を作製することが可能である(Douglasら、1987)。例えばオリゴヌクレオチドは、テトラフェニルホスホニウムクロリドなどの疎水性陽イオン又はセチルトリメチルアンモニウムブロミドなどの第4級アンモニウム塩の存在下で、ポリイソブチル−及びポリイソヘキシルシアノアクリレートナノ粒子へ吸着されてよい。これらのナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの吸着は、核酸鎖の負帯電したリン酸基と疎水性陽イオンの間のイオン対形成により媒介されるように見える。例えば、Lambertら、(1998) Biochimie 80:969-976;Chavanyら、(1994) Pharm. Res. 11:1370-1378;Chavanyら、(1992) Pharm. Res. 9:441-449を参照のこと。ポリペプチドは、ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子に吸着されてもよい。例えば、Douglasら、1987;Schroederら、(1998) Peptides 19:777-780を参照のこと。
別の吸着性表面は、マロン酸メチリデンの重合により作製されたナノ粒子である。例えば、Bousquetらの論文(1999)に説明されているような、ポリ(マロン酸メチリデン2.1.2)ナノ粒子に吸着されたポリペプチドは、最初に静電力により吸着され、引き続き疎水力により安定化されるように見える。
ISS/MC複合体
ISSは、ISS/マイクロキャリア(ISS/MC)複合体の形で投与されてよい。従って本発明は、ISS/MC複合体を含有する組成物を提供する。
本発明に有用なマイクロキャリアは、サイズが約150、120又は100μm未満であり、より一般的にはサイズが約50〜60μm未満、好ましくはサイズが約10μm未満であり、及び純水に不溶性である。本発明において使用されるマイクロキャリアは、生分解性が好ましいが、非生分解性マイクロキャリアも適用可能である。マイクロキャリアは、「ビーズ」又は他の粒子のように通常固相であるが、生分解性ポリマー又は油状物を含む水中油型エマルションのような液相マイクロキャリアも企図される。マイクロキャリアとしての使用に適用可能な多種多様な生分解性及び非生分解性材料が、当該技術分野において公知である。
本発明の組成物又は方法において使用するためのマイクロキャリアは一般に、サイズが約10μm未満(例えば、約10μm未満の平均直径を有するか、又は粒子の少なくとも約97%が10μmの篩のフィルターを通過する)であり、かつナノキャリア(すなわちサイズが約1μm未満のキャリア)を含む。好ましくは、上限が約9、7、5、2、もしくは1μm又は900、800、700、600、500、400、300、250、200、もしくは100nm、かつ下限が約4、2、もしくは1μm、又は約800、600、500、400、300、250、200、150、100、50、25、もしくは10nmから独立して選択され、ここで下限は上限未満であるサイズを有するマイクロキャリアが選択される。一部の実施態様において、本マイクロキャリアは、サイズ約1.0〜1.5μm、約1.0〜2.0μm、又は約0.9〜1.6μmを有する。ある好ましい実施態様において、マイクロキャリアは、サイズ約10nm〜約5μm、又は約25nm〜約4.5μm、約1μm、約1.2μm、約1.4μm、約1.5μm、約1.6μm、約1.8μm、約2.0μm、約2.5μm又は約4.5μmを有する。マイクロキャリアがナノキャリアである場合、好ましい実施態様は、約25〜約300nm、50〜約200nm、約50nm又は約200nmのナノキャリアを含む。
固相生分解性マイクロキャリアは、以下を含むが、これらに限定されるものではない、生分解性ポリマーから製造することができる:生分解性ポリエステル、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、及びそれらのコポリマー(ブロックコポリマーを含む)、加えてポリ(乳酸)及びポリ(エチレングリコール)のブロックコポリマー;ポリオルトエステル、例えば3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンベースのポリマー(DETOSU);ポリアンヒドリド、例えばセバシン酸などの比較的親水性のモノマーをベースにしたポリ(アンヒドリド)ポリマー;ポリイミド無水物、例えばグリシン又はアラニンなどのアミノ酸を組み込んでいるセバシン酸−由来のモノマー(すなわちアミノ−末端窒素を介したイミド結合によりセバシン酸に連結した)をベースにしたポリ無水物ポリマー;ポリエステル無水物;ポリホスファゼン、特にカルボン酸基の発生を通じてポリマー骨格の分解を触媒することができる加水分解−感受性エステル基を含むポリ(ホスファゼン)(Schachtら、(1996) Biotechnol. Bioeng. 1996:102);並びに、ポリアミド、例えばポリ(乳酸−コ−リシン)。
マイクロキャリアを製造するのに適した多種多様な非生分解性材料も公知であり、これはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリカ、セラミック、ポリアクリルアミド、デキストラン、ヒドロキシアパタイト、ラテックス、金、及び強磁性体又は常磁性体材料を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施態様は、金、ラテックス、及び/又は磁気ビーズを除外する。ある実施態様において、マイクロキャリアは、第二の材料(例えばポリスチレン)により封入された第一の材料(例えば磁気材料)で製造される。
固相ミクロスフェアは、当該技術分野において公知の技術を用いて調製される。例えばこれらは、エマルション−溶媒抽出/蒸発技術により調製することができる。一般にこの技術において、ポリ無水物(polyanhydrate)、ポリ(アルキル−α−シアノアクリレート)及びポリ(α−ヒドロキシエステル)、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)及びポリ(カプロラクトン)などの生分解性ポリマーが、塩化メチレンなどの好適な有機溶媒に溶解され、エマルション分散相(DP)を構成する。DPは、高速ホモジナイゼーションにより、溶解した界面活性剤、例えばポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルピロリドン(PVP)を含有する過剰量の水性連続相(CP)へ、乳化される。CP中の界面活性剤は、個別のかつ適切なサイズのエマルション液滴の形成を確実にする。その後有機溶媒が、CPへ抽出され、引き続きシステムの温度を上昇することにより、蒸発される。その後固形微粒子が、遠心分離又は濾過により分離され、例えば凍結乾燥又は真空適用により、乾燥され、その後4℃で貯蔵される。
乾燥ミクロスフェアの平均サイズ、サイズ分布及び表面電荷などの物理化学的特徴を決定することができる。サイズ特徴は、例えば動的光散乱技術により決定され、及び表面電荷は、ζ電位測定により決定された。
液相マイクロキャリアは、リポソーム、ミセル、油滴、及び生分解性ポリマー又は油分を取り込んでいる他の脂質又は油ベースの粒子を含む。ある実施態様において、生分解性ポリマーは界面活性剤である。別の実施態様において、液相マイクロキャリアは、スクアレン又は植物油などの生分解性油分を内包しているので、生分解性である。ひとつの好ましい液相マイクロキャリアは、水中油型エマルション内の油滴である。好ましくは、マイクロキャリアとして使用される水中油型エマルションは、スクアレンのような生分解性置換基を含む。
ISS/MC複合体は、マイクロキャリアの表面に結合したISS(すなわち、ISSはMC内に封入されていない)を含み、並びに好ましくは各マイクロキャリアに結合した複数のISS分子を含む。ある実施態様において、様々なISSの混合物が、マイクロキャリアと複合されてよく、その結果このマイクロキャリアは、1種よりも多いISS種に結合されている。このISSとMCの間の結合は、共有的又は非−共有的であってよい。当業者に理解されるように、ISSは、修飾されるか又は誘導されてよく、かつマイクロキャリアの組成物は、ISS/MC複合体形成に望ましい結合の所望の型に適合するように選択及び/又は修飾されてよい。
共有的に結合されたISS/MC複合体は、当該技術分野において公知の共有的架橋技術を用いて連結されてよい。典型的には、ISS部分は、そこでISS部分がマイクロキャリアに連結され得る部位を提供するために、付加的部分(例えば遊離アミン基、カルボキシル基又はスルフヒドリル基)の組み込み、又は修飾された(例えばホスホロチオエート)ヌクレオチド塩基の組み込みのいずれかにより修飾されるであろう。本複合体のISS部分とMC部分の間の連結は、ISSの3’又は5’末端で、又はISSの内部位置の適宜修飾された塩基で行うことができる。本マイクロキャリアは一般に、それを介して共有的連結が形成される部分を取り込むためにも修飾されるが、マイクロキャリア上に通常存在する官能基も利用することができる。ISS/MCは、ISSをマイクロキャリアと共に、共有的複合体の形成を可能にする条件(例えば、架橋剤の存在下、又はISSとの共有結合を形成する活性化された部分を含む活性化されたマイクロキャリアの使用により)下でインキュベーションすることにより形成される。
多種多様な架橋技術が、当該技術分野において公知であり、かつアミノ基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基と反応性の架橋剤を含む。当業者に明らかであるように、橋かけ剤(crosslinking agent)及び架橋プロトコールの選択は、ISS及びマイクロキャリアの立体配置、更にはISS/MC複合体の望ましい最終的な立体配置によって決まるであろう。この架橋剤は、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性のいずれかであってよい。ホモ二官能性架橋剤が使用される場合、この架橋剤は、ISS及びMC上の同じ部分を利用する(例えば、アルデヒド架橋剤は、ISS及びMCの両方とも1個又は複数の遊離アミンを有するISS及びMCを共有的に連結するために使用される)。ヘテロ二官能性架橋剤は、ISS及びMC上の異なる部分を利用し(例えば、マレイミド−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ISS上の遊離スルフヒドリル及びMC上の遊離アミンを共有的に連結するために使用される)、及びマイクロキャリア間結合の形成を最小化することが好ましい。ほとんどの場合において、マイクロキャリア上の第一の架橋部分とISS上の第二の架橋部分を介して架橋することが好ましく、そこでは第二の架橋部分は、マイクロキャリア上には存在しない。ISS/MC複合体を作製するひとつの好ましい方法は、ヘテロ二官能性架橋剤とのインキュベーションによる、マイクロキャリアの「活性化」、その後のISS及び活性化されたMCの反応に適した条件下でのインキュベーションによる、ISS/MC複合体形成によるものである。この架橋剤は、これらの反応性部分の間に「スペーサー」アームを組み込むことができるか、又は架橋剤内のふたつの反応性部分は直接連結されてよい。
ひとつの好ましい実施態様において、ISS部分は、マイクロキャリアへの架橋のための少なくとも1個の遊離スルフヒドリル基(例えば、5’−チオール修飾された塩基又はリンカーにより提供される)を含むのに対し、マイクロキャリアは、遊離アミン基を含む。これら2種の基と反応性のヘテロ二官能性架橋剤(例えば、マレイミド基及びNHS−エステルを含む架橋剤)、例えばスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシラートなどを使用し、MCを活性化し、その後ISSを共有的に架橋し、ISS/MC複合体を形成する。
非−共有的ISS/MC複合体は、結合対がISS及びMCを連結する場合に通常であるように、イオン(静電気)結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス引力、又は2種もしくはそれよりも多い異なる相互作用の組み合わせを含む、任意の非−共有的結合又は相互作用により連結されてよい。
好ましい非−共有的ISS/MC複合体は、典型的には、疎水性又は静電気(イオン)相互作用、又はそれらの組み合わせにより複合される(例えば、ISSと結合対に使用されるMCに結合したポリヌクレオチドの間の塩基対形成による)。ポリヌクレオチドの骨格の親水性の性質のために、複合体形成を疎水性相互作用に頼るISS/MC複合体は一般に、その複合体のISS部分に高度に疎水性部分を組み込むための修飾が必要である。好ましくはこの疎水性部分は、生体適合性で、非免疫原性であり、かつ該組成物が意図される個体にとって天然である(例えば、哺乳類、特にヒトにおいて認められる)。好ましい疎水性部分の例は、脂質、ステロイド、コレステロールなどのステロール、及びテルペンを含む。疎水性部分をISSに連結する方法は、当然ISSの立体配置及びその疎水性部分の同一性に左右されるであろう。この疎水性部分は、ISS内の任意の都合のよい部位に、好ましくは5’又は3’末端のいずれかに付加されてよく;コレステロール部分のISSへの付加の場合、コレステロール部分はISSの5’末端に、通常の化学反応を用いて付加されることが好ましい(例えば、Godardら、(1995) Eur. J. Biochem. 232:404-410を参照)。好ましくは、疎水結合により連結されたISS/MC複合体で使用するためのマイクロキャリアは、油滴又は疎水性ポリマーなどの、疎水性物質から製造されるが、疎水性部分を組み込むように修飾された親水性物質を更に利用することができる。マイクロキャリアが、リポソーム又は管腔を備える他の液相マイクロキャリアである場合、MC調製プロセス時のISSの封入を避けるために、ISS/MC複合体は、MCの調製後に、ISS及びMCを混合することにより、形成される。
静電気結合により結合された非−共有的ISS/MC複合体は典型的には、高度に負帯電したポリヌクレオチド骨格を利用する。従って非−共有的に結合したISS/MC複合体で使用するマイクロキャリアは一般に、生理的pH(例えば約pH6.8〜7.4)で、正帯電(陽イオン)している。このマイクロキャリアは、固有の正電荷を有してよいが、通常正電荷を有さない化合物から作製されたマイクロキャリアは、正帯電(陽イオン)し始めるように誘導又はそうでなければ修飾されてよい。例えばマイクロキャリアの作製に使用されるポリマーは、第1級アミンのような正帯電した基を付加するように誘導される。あるいは正帯電した化合物は、製造時にマイクロキャリアの配合物中に取り込まれてよい(例えば、正帯電した界面活性剤を、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)コポリマーの製造時に使用し、得られるマイクロキャリア粒子に正電荷を付与することができる)。
本明細書に説明されたように、陽イオンミクロスフェアを調製するためには、陽イオン脂質又はポリマー、例えば1,2−ジオレオイル−1,2,3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)又はポリリシンなどが、これらの相中のそれらの溶解度に従い、DP又はCPのいずれかに添加される。
本明細書に説明されたように、ISS/MC複合体は、ポリヌクレオチド及び該粒子の、好ましくは水性混合物中でのインキュベーションにより、陽イオンミクロスフェア上に吸着することにより予備形成することができる。このようなインキュベーションは、周囲温度(室温)(例えばほぼ20℃)又は冷蔵庫(例えば4℃)内を含む、いずれか望ましい条件下で行うことができる。陽イオンミクロスフェア及びポリヌクレオチドは比較的迅速に会合するので、このインキュベーションは、5、10、15分間又はそれよりも長くなど任意の都合の良い時間、一晩又はそれよりも長いインキュベーションを含んでよい。例えばISSは、ポリヌクレオチド及び該粒子の4℃での一晩の水性インキュベーションにより、陽イオンミクロスフェア上に吸着することができる。しかし陽イオンミクロスフェア及びポリヌクレオチドは自発的に会合するので、ISS/MC複合体は、このポリヌクレオチド及びMCのsISSle同時投与によって形成され得る。ミクロスフェアは、サイズ及びポリヌクレオチド会合前後の表面電荷により特徴付けることができる。選択されたバッチはその後、例えば、本明細書に説明されたような確立されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)、及びマウス脾細胞のアッセイなどで、好適な対照に対する活性について評価されてよい。これらの配合物は、好適な動物モデルにおいて評価することもできる。
ヌクレオチド塩基対形成により連結された非−共有的ISS/MC複合体は、通常の方法を用いて作製することができる。一般に塩基−対形成されたISS/MC複合体は、ISSと少なくとも部分的に相補的である結合した、好ましくは共有結合したポリヌクレオチド(「捕獲ポリヌクレオチド」)を含むマイクロキャリアを使用し、作出される。ISSと捕獲ヌクレオチドの間の相補性のセグメントは、好ましくは少なくとも6、8、10又は15個の隣接(contiguous)塩基対、より好ましくは少なくとも20個の隣接塩基対である。この捕獲ヌクレオチドは、当該技術分野において公知の任意の方法によりMCに結合されてよく、及び好ましくは5’又は3’末端でISSに共有的に結合される。
他の実施態様において、ISS/MC複合体中のISS及びMCを連結するために、結合対を使用することができる。この結合対は、受容体及びリガンド、抗体及び抗原(もしくはエピトープ)、又は高親和性(例えば、Kdが約10〜8未満)で結合する任意の他の結合対であってよい。好ましい結合対のひとつの型は、ビオチン及びストレプトアビジン又はビオチン及びアビジンであり、これは非常に緊密な複合体を形成する。ISS/MC複合体結合を媒介する結合対を使用する場合、ISSは、その結合対の一員との典型的には共有的連結により誘導され、かつMCは、その結合対の他方の一員により誘導される。これら2種の誘導された化合物の混合物は、ISS/MC複合体形成を生じる。
多くのISS/MC複合体の実施態様は、抗原を含まず、ある実施態様は、ISS/MC複合体療法の目的である疾患又は障害に関連した抗原(類)を排除する。更なる実施態様において、ISSは、1種又は複数の抗原分子にも結合している。抗原は、例えばWO 98/16247に開示されたような、共有的及び/又は非共有的相互作用を含む様々な方法で、ISS/MC複合体のISS部分に結合することができる。あるいは、抗原は、マイクロキャリアに連結されてもよい。ISSへ結合した抗原を含むISS/MC複合体内の抗原とISSの間の連結は、本明細書に説明された技術及び当該技術分野において公知の技術により作製することができ、これは直接の共有的連結、架橋剤部分(これはスペーサーアームを含んでよい)を介した共有的コンジュゲート、特異的結合対(例えばビオチン及びアビジン)を介した非共有的コンジュゲート、並びに静電気又は疎水結合を介した非共有的コンジュゲートを含むが、これらに限定されるものではない。
陽イオン縮合剤及び安定化剤を伴うISS複合体
ISSは、レシピエントにおける免疫反応を変調するために、陽イオン縮合剤、ISS、及び安定化剤を含有する組成物(すなわちCIS組成物)として投与されてよい。米国特許出願第60/402,968号を参照のこと。一部の実施態様において、CIS組成物は、抗原及び/又は脂肪酸も含有してよい。
本発明のCIS組成物は、典型的には粒子形状である。当業者に明らかであるように、本発明のCIS粒子状組成物は、様々なサイズの粒子の集団からなるであろう。この自然に生じる変動性のために、本発明の組成物中の粒子の「サイズ」は、直径のある範囲で又は最大もしくは最小として説明され得る。粒子は、粒子の少なくとも95%(質量で)が特定された寸法に合致する場合には、特定のサイズであると考えられる(例えば粒子の少なくとも97%が、直径20μm未満である場合、その組成物は直径20μm未満の粒子からなると考えられる)。粒子は、濾過(例えば、カットオフサイズよりも大きい粒子を捕獲するための「デプス」フィルターの使用)、動的光散乱、TEM(特に凍結割断処理との組み合わせ)及びSEMを含む電子顕微鏡などを含む、当該技術分野において公知の簡便な方法により測定されてよい。
好ましくは、本発明のCIS組成物は、直径約50μm未満、より好ましくは直径約20μm未満である粒子を含むが、一部の実施態様において、これらの粒子は、直径約3、2又は1μm未満であろう。好ましい粒子サイズ範囲は、直径約0.01μm〜50μm、0.02〜20μm、0.05〜5μm、及び0.05〜3μmである。
CIS組成物の成分は、組成物中に様々な比/量で存在してよいが、安定化剤(類)並びに脂肪酸及び抗原などの任意の成分の量は、比較的不変であり続け、安定化剤は一般に約0.1%〜0.5%(v/v)を変動し、脂肪酸は約0〜0.5%を変動し、及び抗原濃度は約0.1〜約100μg/mL、好ましくは約1〜約100μg/mL、より好ましくは約10〜50μg/mLを変動することが企図されている。ISS及び陽イオン縮合剤の量及び比は、本発明の組成物においてより大きい変動範囲に供される。ISSの量は、ISSの分子量の関数としてある程度変動し、一般に約50μg/mL〜約2mg/mL、好ましくは約100μg/mL〜1mg/mLの範囲である。陽イオン縮合剤は、一般にISSよりも過剰(質量に関して)で存在し、一般に約1:2(ISS:陽イオン縮合剤)〜約1:6、より好ましくは約2:5〜1:5である。
CIS組成物の粒子サイズは、多くの変数の関数である。本組成物中の粒子のサイズ分布は、陽イオン縮合剤のISSに対する比を変更することにより、変調することができる。例えば、例証的+ISS/0.4%Tween85/0.4%オレイン酸塩/ポリミキシンB組成物において、陽イオン縮合剤のISSに対する比を変更することにより、平均粒子サイズを陽イオン縮合剤:IMC=1での約1.5μmから、陽イオン縮合剤:ISS=10での約45μmまで変更することができる。
ある実施態様において、CIS組成物は、陽イオン縮合剤、ISS及び非イオン性界面活性剤である安定化剤を含有する。他の実施態様において、本組成物は、膜破壊性陽イオンリポペプチド(好ましくはポリミキシン、より好ましくはポリミキシンB)、ISS及び安定化剤を含有する。一部の実施態様において、安定化剤は、血清タンパク質ではない(特にウシ血清タンパク質ではない)。実施態様のこのクラスの例証的組成物は、ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤、例えばTween 80又はTween 85を安定化剤として使用し、オレイン酸塩を任意の追加の安定化剤として使用する。
一部の実施態様において、CIS組成物は、免疫調節粒子を含有し、ここでこれらの粒子は、陽イオン縮合剤、ISS及び非イオン性界面活性剤である安定化剤を一緒にするプロセスにより作製される。他の実施態様において、本発明の組成物は、免疫調節粒子を含み、ここでこれらの粒子は、膜破壊性陽イオンリポペプチド(好ましくはポリミキシン、より好ましくはポリミキシンB)、ISS及び安定化剤を一緒にするプロセスにより形成される。一部の実施態様において、安定化剤は、血清タンパク質ではない(特にウシ血清タンパク質ではない)。
一部の実施態様において、CIS組成物は、免疫調節粒子を含有し、ここでこれらの粒子は、ISS及び非イオン性界面活性剤である安定化剤を一緒にし、これによりISS/安定化剤混合物を形成し、及び陽イオン縮合剤をISS/安定化剤と一緒にするプロセスにより形成される。他の実施態様において、本発明の組成物は、免疫調節粒子を含有し、ここでこれらの粒子は、ISS及び安定化剤を一緒にし、これによりISS/安定化剤混合物を形成し、並びに膜破壊性陽イオンリポペプチド(好ましくはポリミキシン、より好ましくはポリミキシンB)をISS/安定化剤混合物と一緒にするプロセスにより形成される。一部の実施態様において、安定化剤は、血清タンパク質ではない(特にウシ血清タンパク質ではない)。
一部の実施態様において、CIS組成物は、免疫調節粒子を含有し、ここでこれらの粒子は、陽イオン縮合剤、ISS及び非イオン性界面活性剤である安定化剤を含有する。他の実施態様において、本発明の組成物は、免疫調節粒子を含有し、ここでこれらの粒子は、膜破壊性陽イオンリポペプチド(好ましくはポリミキシン、より好ましくはポリミキシンB)、ISS及び安定化剤を含有する。一部の実施態様において、安定化剤は、血清タンパク質ではない(特にウシ血清タンパク質ではない)。
CIS組成物及びCIS組成物を使用する方法において有用な陽イオン縮合剤は、生理的pH(すなわちpH約7.0〜約7.5)で正帯電している分子である。好ましくは、本発明において使用される陽イオン縮合剤は、両性イオン性ではなく、及びポリ陽イオン、すなわち1個の分子につき1個よりも多い正電荷を有するものである。本発明において有用な陽イオン縮合剤は、親水性又は両親媒性ポリ陽イオンを含む。
好ましい陽イオン縮合剤は、以下を含む:(a)膜破壊性陽イオンリポペプチドであり、ポリミキシンA、ポリミキシンB(ポリミキシンB1及びポリミキシンB2を含む)、ポリミキシンC、ポリミキシンD、ポリミキシンE(コリスチンとしても公知)、ポリミキシンK、ポリミキシンM、ポリミキシンP、ポリミキシンS及びポリミキシンTを含むポリミキシン類、サークリンA、サークリンB、サークリンC、サークリンD、サークリンE及びサークリンFを含むサークリン類、オクタペプチン、アンホテリシンBを含むアンホテリシン類、並びにオクタノイル−KFFKFFKFF(配列番号:25)及びアシルKALA(オクタノイル−WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALEACEA(配列番号:26))を含むアシル化されたペプチドを含むが、これらに限定されるものではないもの;(b)膜破壊性陽イオンペプチドであり、ポリミキシンBノナペプチド、セクロピンA、セクロピンB及びセクロピンP1を含むセクロピン類、KFFKFFKFF(配列番号:25)及びKALA(WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKACEA)(配列番号:27)を含むが、これらに限定されるものではないもの;(C)単鎖陽イオン界面活性剤であり、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジル−ジメチル−アンモニウムブロミド(BDAB)、CpyrB(セチル−ピリジニウムブロミド)、CimB(セチルイミダゾリウムブロミド)、及び非限定的にポリ−L−リシン(PLL)及びポリエチレンイミン(PEI)を含むポリ陽イオンポリマーを含むが、これらに限定されるものではないもの。ある実施態様において、陽イオン縮合剤は、膜破壊性陽イオンリポペプチド、好ましくはポリミキシン、より好ましくはポリミキシンBである。一部の実施態様において、陽イオン縮合剤は、脂肪酸エステル(すなわち脂質)及び二本鎖陽イオン界面活性剤を除外してよい。
CIS組成物及びCIS組成物を使用する方法において有用な安定化剤は、水中に懸濁可能であり、かつ水の表面張力を低下するものを含むが、水溶性及び/又は水に完全に混和性である安定化剤が好ましい。タンパク質(好ましくは親水性タンパク質)、非イオン性界面活性剤、ポリマー性界面活性剤(例えばポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン)、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び脂肪酸を含む、安定化剤の多くのクラスが、本発明の組成物及び方法において有用であるが、ある実施態様において、血清タンパク質(特にウシ血清タンパク質)、脂肪酸、及び/又はイオン性界面活性剤は、この安定化剤の定義から除外されてよい。
任意のタンパク質は、本発明の安定化剤として使用することができる。一部の実施態様において、安定化剤は、抗原として意図されないタンパク質であり(下記考察を参照);これらの実施態様において、このタンパク質は、本組成物の意図されたレシピエントと同じ種に由来することが好ましい(例えば組成物のヒトにおける使用が意図される場合、安定化剤として使用されるタンパク質はヒトタンパク質であることが好ましい)。血清アルブミンは、そのような実施態様において安定化剤として有用な例証的タンパク質である。他の実施態様において、抗原は、安定化剤として利用され、この場合この抗原は、意図されたレシピエントと合致する種である必要はないが、一般にはこの種でないことが好ましい。本発明の組成物及び方法において有用な抗原は、以下に明らかにされている。
CIS組成物及びCIS組成物を使用する方法に有用な非イオン性界面活性剤は、グルカミド、例えばデシルジメチルホスフィンオキシド(APO-10)及びジメチルドデシルホスフィンオキシド(APO-12)、オクタノイル−N−メチルグルカミド(MEGA-8)、ノナノイル−N−メチルグルカミド(MEGA-9)及びデカノイル−N−メチルグルカミド(MEGA-10)など、ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤で、ポリオキシエチレン(10)ドデシルエステル(ゲナポールC100)、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)30)、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(LUBROL(登録商標)PX)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)35)、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(BRIJ(登録商標)52)、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(BRIJ(登録商標)56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(BRIJ(登録商標)58)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(BRIJ(登録商標)72)、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(BRIJ(登録商標)76)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(BRIJ(登録商標)78)、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(BRIJ(登録商標)700)、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)92)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)97)、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)98)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)8(ゲナポール80)、プルロニック(登録商標)F-68、プルロニック(登録商標)F-127、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)9(Thesit)、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100)、ポリオキシエチレン(8)イソオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-114)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(TWEEN(登録商標)40)、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート(TWEEN(登録商標)60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(TWEEN(登録商標)65)、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(TWEEN(登録商標)85)、ポロキサマー188、及びポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル(Nonidet NP40)など、アルキルマルトシド界面活性剤であり、シクロヘキシル−n−エチル−β−D−マルトシド、シクロヘキシル−n−ヘキシル−β−D−マルトシド、及びシクロヘキシル−n−メチル−β−D−マルトシドを含むもの、n−デカノイルショ糖、グルコピラノシドであり、メチル6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−a−D−グルコピラノシド(HECAMEG)、及びアルキルグルコピラノシド、例えばn−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド、n−オクチル−α−D−グルコピラノシド、及びn−オクチル−β−D−グルコピラノシドを含むもの、アルキルチオグルコピラノシドであり、n−ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシドを含むもの、アルキルマルトピラノシドであり、n−デシル−β−D−マルトピラノシド及びn−オクチル−β−D−マルトピラノシドを含むもの、n−デシル−β−D−チオマルトシド、ジギトニン、n−ドデカノイルショ糖、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ヘプタン1,2,3−トリオール、n−オクタノイル−β−D−グルコシルアミン(NOGA)、n−オクタノイルショ糖、ポロキサマー(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、例えばポロキサマー188及びポロキサマー407など、並びにスルホベタイン類であり、SB-10、SB-12、及びSB-14を含むもの、並びにn−ウンデシル−β−D−マルトシドを含む。好ましい安定化剤は、ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤、特にポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート及びポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエートである。
CIS組成物及びCIS組成物を使用する方法において有用な陰イオン性界面活性剤は、カプリル酸及びそれらの塩、ケノデオキシコール酸及びそれらの塩、コール酸及びそれらの塩、デカンスルホン酸及びそれらの塩、デオキシコール酸及びそれらの塩、グリコデオキシコール酸及びそれらの塩、ラウロイルサルコシン及びそれらの塩、n−ドデシル硫酸及びそれらの塩(ナトリウム塩及びリチウム塩を含む)、タウロケノデオキシコール酸及びそれらの塩、タウロコール酸及びそれらの塩、タウロデヒドロコール酸及びそれらの塩、タウロデオキシコール酸及びそれらの塩、タウロリソコール酸及びそれらの塩、並びにタウロウルソデオキシコール酸及びそれらの塩を含む。
陽イオン性界面活性剤は、セチルピリジニウム及びそれらの塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含むセチルトリメチルアンモニウム及びそれらの塩、臭化ドデシルトリメチルアンモニウムを含むドデシルトリメチルアンモニウム及びそれらの塩、アルキルアンモニウムイミダゾリン、第4級イミダゾリン、及び臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含むテトラデシルトリメチルアンモニウム及びそれらの塩である。
安定化剤としての使用のために選択された界面活性剤は、油/水型乳化性界面活性剤と考えられるものが好ましい。油/水型乳化性界面活性剤は、当該技術分野において公知であり、一般に疎水/親水バランス(HLB)値が約8〜約18であることで特徴付けられる。好ましくは、特定の組成物に組み込まれた界面活性剤は、HLB値約10〜約16、より好ましくは約11〜約15を有する(例えば、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、HLB=15.4;ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテル、HLB=13.5;ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、HLB=11)。
ある実施態様において、CIS組成物は、追加成分として、1種又は複数の脂肪酸、又はそれらの塩も含んでよい。安定化剤成分として脂肪酸及び本組成物の追加成分として脂肪酸を使用するこれらの実施態様において、安定化剤として使用される脂肪酸は、「追加」成分として使用される脂肪酸とは異なるであろう。本発明のCIS組成物において有用な脂肪酸は、サイズが4〜30個の炭素原子の範囲であり、不飽和(例えばステアリン酸)、単不飽和(例えばオレイン酸)、又は多不飽和(例えばリノール酸)であってよいが、単不飽和及び多不飽和脂肪酸が一般に好ましい。
一部の実施態様において、本CIS組成物は、炭素鎖の長さが少なくとも約4、5、6、8、10、15、18、又は20個の炭素原子及び約30、25、20、19、15又は10個未満の炭素原子を有する脂肪酸を組み込むであろう。従って一部の実施態様において、本発明において利用される脂肪酸は、長さが約4〜30、5〜25、10〜20、又は15〜20個の範囲の炭素原子の炭素鎖を有することができる。
CIS組成物において有用な脂肪酸は、アラキドン酸、デカン酸、ドコサン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ノナデカン酸、ノナン酸、オクタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、テトラコサン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、及びウンデカン酸を含むが、これらに限定されるものではない。CIS組成物において使用するのに好ましい脂肪酸は、オレイン酸、パルミトレイン酸、及びリノール酸を含む。
本発明のある実施態様において、抗原は、CIS組成物へ組み込まれるか、又はCIS組成物と組み合わせて混合される。抗原を組み込んでいるそれらのCIS組成物は、特定の組成物それ自身へ抗原を組み込むか、又は特定の組成物が懸濁されている溶液中に溶解もしくは懸濁されてよい。任意の抗原が、本発明のCIS組成物へ、組み込まれるか、又はこれと同時投与されてよい。
ISSの送達
一実施態様において、ISSは、それ自身個体へ送達される。別の実施態様において、ISSは、1種又は複数の抗原と共に送達される。一実施態様において、抗原は、ISSとコンジュゲートとして同時投与される。別の実施態様において、抗原は、個別のビヒクル中で、ISSと共に投与される。抗原の投与は、ISSと同時期又は同時であることができる。下記ISSの送達の考察も同じく、ISSを伴う抗原の送達を企図している。
ISSは、プラスミド、コスミド、ウイルス又はレトロウイルスなどの送達ベクターに取り込まれてよく、これは次にサイトカイン、ホルモン及び抗原などの治療的に恩恵のあるポリペプチドをコードしてよい。このようなベクターへのISSの取り込みは、それらの活性に有害な影響を及ぼさない。
コロイド状分散システムを、ISSの、鼻腔粘膜などの炎症組織への標的化された送達に使用してよい。コロイド状分散システムは、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合型ミセル及びリポソームを含む脂質−ベースのシステムを含む。一実施態様において、本発明のコロイド状システムは、リポソームである。
リポソームは、インビトロ及びインビボにおける送達ビヒクルとして有用である人工膜ベシクルである。サイズが0.2〜4.0μmの範囲である大型単層ベシクル(LUV)は、大型高分子を含む水性緩衝液の実質的割合を封入することができることが示されている。RNA、DNA及び無傷のビリオンは、水性の内部内に封入することができ、かつ生物学的活性型で細胞へ送達される(Fraleyら、Trends Biochem. Sci, 6:77 , 1981)。リポソームは、哺乳類細胞に加え、植物細胞、酵母細胞及び細菌細胞へポリヌクレオチドを送達するために使用される。リポソームが効果的遺伝子導入ビヒクルであるためには、下記の特徴が存在しなければならない:(1)高い効率でアンチセンスポリヌクレオチドをコードしているが、それらの生物活性は損なわない遺伝子の封入;(2)標的細胞への、非−標的細胞と比べ優先的かつ実質的な結合;(3)ベシクルの水性内容物の、標的細胞の細胞質への高効率での送達;並びに、(4)遺伝情報の正確かつ効果的な発現(Manninoら、Biotechniques, 6:682, 1988)。
本リポソームの組成物は、通常ステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質、特に高い相転移温度のリン脂質の組み合わせである。他のリン脂質又は他の脂質も使用することができる。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価陽イオンの存在により左右される。
リポソーム製造に有用な脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドなどのホスファチジル化合物を含む。特に有用なものは、ジアシルホスファチジルグリセロールであり、ここでその脂質部分は、14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含み、かつ飽和されている。例証的リン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
リポソームの標的化は、解剖学的(anatomical)要因及び機械的要因を基に分類することができる。解剖学的分類は、例えば、臓器特異性、細胞特異性、及び細胞小器官特異性などの選択性のレベルを基にしている。機械的標的化は、受動的又は能動的であるかどうかを基に識別することができる。受動標的化は、リポソームが、洞様毛細血管を含む臓器内の細網内皮系(RES)の細胞に分布する自然の傾向を利用する。他方で能動標的化は、リポソームの、モノクローナル抗体、糖質、糖脂質、もしくはタンパク質などの特異的リガンドへの結合によるか、又は天然の局在化部位以外の臓器及び細胞型への標的化を実現するための、リポソームの組成もしくはサイズの変化による、リポソームの変更に関与している。
標的化された送達システムの表面は、様々な方法で修飾されてよい。リポソームの標的化された送達システムの場合、標的化リガンドをリポソーム二層との安定した会合状態に維持するために、脂質基は、リポソームの脂質二層へ組み込まれ得る。様々な周知の連結基を、脂質鎖の標的化リガンドへの連結に使用することができる(例えば、Yanagawaら、Nuc.Acids Symp.Ser., 19:189 (1988);Grabarekら、Anal. Biochem., 185:131 (1990);Starosら、Anal.Biochem., 156:220 (1986);及び、Boujradら、Proc. Natl. Acad. Sci USA, 90:5728 (1993)を参照のこと)。ISSの標的化された送達は、ISSの、ウイルス及び非ウイルス組み換え発現ベクターの表面への、抗原もしくは他のリガンドへの、モノクローナル抗体への、又は望ましい結合特異性を有する任意の分子へのコンジュゲートによっても実現され得る。
当業者は、オリゴヌクレオチド−ペプチドコンジュゲートを調製するのに有用な方法を熟知しているか、又は容易に決定することができるであろう。コンジュゲートは、ISSの末端又は内部位置の好適に修飾された塩基で(例えばシトシンもしくはウラシル)のいずれかで達成され得る。参考までに、オリゴヌクレオチドをIgのタンパク質及びオリゴ糖部分にコンジュゲートする方法は、公知である(例えば、O’Shannessyら、J. Applied Biochem., 7:347 (1985)、別の有用な参考文献である「Kessler:Nonradioactive Labeling Methods for Nucleic Acids」、Kricka(編集)、Nonisotopic DNA Probe Techniques(Acad. Press, 1992)を参照のこと)。
ペプチド薬の本発明のISSとの同時投与は、組み換え発現ベクターにより送達可能な治療的に有益な任意のタンパク質をコードしている組み換え発現ベクター(プラスミド、コスミド、ウイルス又はレトロウイルス)への、cis又はtransでのISSの取り込みによっても実現することができる。本発明を実践する上で使用するためのISSの発現ベクターへの取り込みが望ましい場合、そのような取り込みは、当業者には詳細な説明を必要としない通常の技術を用いて実現され得る。しかし検証のために、当業者は、Ausubelの「Current Protocols in Molecular Biology」(前掲)を参照することを欲するものである。
簡単に述べると、組み換え発現ベクター(任意のタンパク質をコードせず、ISSの担体として使用されるものを含む)の構築は、標準ライゲーション技術を使用する。構築されたベクター内の正確な配列を確認する分析のために、このライゲーション混合物を使用し、個々の細胞を形質転換し、成功した形質転換体を、適宜抗生物質耐性について選択することができる。この形質転換体由来のベクターは、例えば、Messingらの方法(Nucleic Acids Res., 9:309, 1981)、Maxamらの方法(Methods in Enzymology, 65:499,1980)、又は当業者に公知の他の好適な方法により、調製、制限による分析、及び/又は配列決定される。切断された断片のサイズ分離は、例えば、Maniatisらにより説明されている(Molecular Cloning, pp. 133-134, 1982)ような、通常のゲル電気泳動を用いて行われる。
個々の細胞は、発現ベクターにより形質転換され、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、又は遺伝子を増幅するのに適するように改変された通常の栄養培地において培養されてよい。温度、pHなどの培養条件は、発現について選択された個々の細胞と共に先に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
組み換え発現ベクターが、本発明のISSの担体として利用される場合、プラスミド及びコスミドが、それらは病原性を持たないので特に好ましい。しかしプラスミド及びコスミドは、ウイルスよりもより迅速に、インビボにおいて分解に供され、従って全身投与された遺伝子治療ベクターにより発揮されるISS免疫刺激活性を実質的に阻害するのに適量のISSを送達することができない。このウイルスベクターの代わりの、アデノ随伴ウイルスは、低病原性という利点を有する。アデノ随伴ウイルスの外来遺伝子を挿入する能力の相対的な低さは、本発明のISSが合成され得るサイズは相対的に小さいために、この状況において問題はないであろう。
本発明に利用することができる他のウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア又はレトロウイルスなどのRNAウイルスを含む。レトロウイルスベクターは、海洋生物(marine)、鳥又はヒトのHIVレトロウイルスの誘導体が好ましい。1個の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:モロニーマウス(marine)白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス(marine)肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス(marine)乳癌ウイルス(MuMTV)、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)。多くの追加のレトロウイルスベクターは、複数の遺伝子を取り込むことができる。これらのベクターは全て、選択マーカーの遺伝子を導入又は取り込み、その結果導入された細胞を同定又は作製することができる。
組み換えレトロウイルスは欠損性であるので、感染性ベクター粒子を作出するためには、これらを補助する必要がある。この補助は、例えば、LTR内の調節配列の制御下で、レトロウイルスの構造遺伝子の全てをコードしているプラスミドを含むヘルパー細胞株を使用することにより提供され得る。これらのプラスミドは、キャプシド形成に関するRNA転写産物を認識するためのパッケージング機構が可能であるヌクレオチド配列を喪失している。パッケージングシグナルの欠損を有するヘルパー細胞株は、例えばT2、PA317及びPA12を含むが、これらに限定されるものではない。これらの細胞株は、ゲノムがパッケージされていないので、空のビリオンを作出する。レトロウイルスベクターが、パッケージングシグナルは無傷であるが構造遺伝子は関心対象の他の遺伝子と交換されているそのようなヘルパー細胞に導入される場合、このベクターはパッケージングされ、かつベクタービリオンが作出されることができる。例えば1種又は複数の関心対象の配列を、特異的標的細胞上の受容体のリガンドをコードしている別の遺伝子と共に、ウイルスベクターへ挿入することにより、このベクターは、標的特異性となることができる。レトロウイルスベクターは、例えば糖質、糖脂質、又はタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを挿入することにより、標的特異性とすることができる。好ましい標的化は、レトロウイルスベクターを標的とするために抗体を用いることにより達成される。当業者は、ISSを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするために、レトロウイルスゲノムに挿入することができる特異的ポリヌクレオチド配列を、知っているか、又は過度な実験を行うことなく容易に解明することができるであろう。
ISSの医薬組成物
ISSがベクター又は他の送達システムを使用せずに送達される場合、ISSは、医薬として許容し得る組成物中に調製されるであろう。本発明のISSと共に使用するための好ましい医薬として許容し得る担体は、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液及び乳液を含んでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は、水、アルコール性/水性の溶液、乳液又は懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム液、デキストロース加リンゲル液、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液又は不揮発性油を含む。静脈内ビヒクルは、体液及び栄養素補充液、電解質補充液(デキストロース加リンゲル液をベースにしたものなど)などを含む。例えば抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性気体などの保存剤及び他の添加剤も、存在してよい。ISS組成物は、本発明に従い引き続き再構成及び使用するために当該技術分野において周知の手段を用いて凍結乾燥されてもよい。
吸収促進剤、界面活性剤及び化学性刺激物(例えば、ケラチン分解性物質)は、ISS組成物の標的組織への透過を増強することができる。有機物及びペプチド−ベースの薬物の経粘膜送達を成功させるために使用される吸収プロモーター及び界面活性剤に関する一般原理について考察する参考文献については、Chienの著書「Novel Drug Delivery Systems」、第4章(Marcel Dekker, 1992)を参照のこと。
好適な経鼻吸収促進剤の例は、特にChienの前掲の著書の第5章表2及び3に記されており;マイルダー物質(milder agent)が好ましい。経粘膜/経鼻送達のために本発明の方法で使用するのに適した作用物質も、Chienらの著書「Nasal Drug Delivery」の「Treatise on Controlled Drug Delivery」第9章及びその表3-4B(Marcel Dekker, 1992)に説明されている。皮膚を通じた薬物の吸収を増強することがわかっている好適な物質は、Sloanの著書「Use of Solubility Parameters from-Regular Solution Theory to Describe Partitioning-Driven Processes」第5章の「Prodrugs: Topical and Ocular Drug Delivery」(Marcel Dekker, 1992)、及びその著書の別所に説明されている。
ISSの個体への投与の方法及び経路
本発明のISSは、薬物送達に適したいずれか利用可能な方法及び経路を用い、個体へ投与される。一実施態様において、抗原を伴う又は伴わないISSは、当業者に公知の任意の送達手段により、上位及び/又は下位気管へ送達される。ISSのひとつの好ましい送達方法は、本実施例に説明されたような、鼻腔内送達である。別の好ましいISS送達方法は、吸入である。他の投与法は、エクスビボ法(例えば、ISSと共にインキュベーション又はトランスフェクションされた細胞の送達)に加え、全身的もしくは局所的経路である。当業者は、ISSを個体へ方向付ける送達の方法及び経路は、ISSのインビボにおける分解を避けなければならないことを理解するであろう。
ひとつの態様において、本発明は、環境中に自然に存在する抗原(すなわち「偶発的」抗原)と一緒の、ISSの投与法を提供する。偶発的アレルゲンは、季節を通じてレベルが変動するアレルゲンであることができる。季節性アレルゲンの存在は、例えば天気サービス会社からの天気予報、テレビ、ラジオもしくは新聞により放送されるニュース報道、公的機関の記録(institutional record)、及び個人的な調査などの様々な給源を使用することにより、確認することができる。偶発的抗原の例は、ブタクサ、例えばブタクサ花粉アレルゲン抗原E(Amb a I)がある。他の非限定的偶発的抗原の例は、草アレルゲンLol p1(Tamboriniら、(1997) Eur. J. Biochem. 249:886-894)、主要なイエダニアレルゲンDer pI及びDer PII(Chuaら、(1988) J. Exp. Med. 167:175-182;Chuaら、(1990) Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 91:124-129)、家猫アレルゲンFel dI(Rogers ら、(1993) Mol. Immunol. 30:559-568)、シラカバ花粉Bet vl(Breitenederら、(1989) EMBO J. 8:1935-1938)、日本スギアレルゲンCry j1及びCry j2(Kingetsuら、(2000) Immunology 99:625-629)、及び他の樹木花粉由来のタンパク質抗原(Elsayedら、(1991) Scand. J. Clin. Lab. Invest. Suppl. 204:17-31)がある。示されたように、カバ、ヒノキ及び日本スギを含む、樹木由来のアレルゲンが公知である。インビボ投与のための草花粉からのタンパク質抗原の調製が、報告されている。使用することができる他の抗原は、先に表1に説明している。
多くの外在性抗原の個体への侵入点は、皮膚又は粘膜を通じてである。従って皮膚(例えば表皮及び皮下の状態)又は粘膜(例えば呼吸器、眼、舌又は生殖器の状態)を標的とする送達の方法及び経路は、特に有用であろう。当業者は、皮膚及び粘膜への薬物送達の手段を熟知しているか、又は容易に確認することができる。しかし検証のために、本発明において有用な例証的薬物送達の方法及び経路を、以下に簡単に説明する。
鼻腔内投与手段は、喘息(例えばアレルギー喘息)、呼吸器炎症、特に鼻孔から気管又は気管支へ伝達された抗原により媒介された炎症などの呼吸器の問題に対処するのに、特に有用である。このような手段は、本発明のポリヌクレオチド組成物のエアロゾル懸濁液の吸入を含む。ポリヌクレオチド組成物を鼻粘膜、気管及び気管支に送達するのに適したネブライザー装置は、当該技術分野において周知であり、従って本明細書においては詳細に説明しない。鼻腔内薬物送達に関する全般的総説については、当業者は、Chienの著書「Novel Drug Delivery Systems」の第5章(Marcel Dekker, 1992)を参考にすることが望まれる。
投与の皮膚経路に加え、皮下注射は、皮膚のアレルギー反応及び炎症に対処するのに有用である。皮膚への薬物送達の手段の例は、好適な医薬調製品の外用塗布、経皮伝達、注射及び表皮投与である。
経皮伝達に関して、吸収促進剤又はイオントフォレシスが、好適な方法である。そのような方法に関する総説については、当業者は、Chienの前掲の著書の第7章を参考にすることが望まれる。イオントフォレシスによる伝達は、電気パルスにより、無傷の皮膚を通して、数日又はそれよりも長い期間、それらの製品を連続して送達する、市販の「貼付剤」を用いて実現することができる。この方法の使用は、医薬組成物の比較的高い濃度での制御された伝達を可能にし、組み合わせ薬の注入をもたらし、かつ吸収促進剤の同時使用を可能にする。
本方法において使用するための例証的貼付剤製品は、General Medical社(ロスアンジェルス、カリフォルニア州)の製品で商標LECTRO PATCHである。この製品は、貯蔵庫の電極を、中性pHに電気的に維持し、かつ異なる濃度の用量を提供するか、連続して投与するか及び/又は定期的に投与するように適合することができる。この貼付剤の調製及び使用は、LECTRO PATCH製品に添付されている、製造業者の印刷された指示に従い行われるべきであり;これらの指示は参照により本明細書に組み入れられる。
表皮投与は本質的に、この刺激物に対する免疫反応を誘起するのに十分な、表皮の最も外側層の力学的又は化学的刺激に関与している。表皮投与において使用するための装置の例は、皮膚へとタイン(tyne)上にコーティングされたISSを引っ掻くために使用することができる複数の非常に狭い直径の短いタインを利用する。Pasteur Merieux社(リヨン、仏国)により製造されたMONO-VACC旧ツベルクリン試験に含まれるこの装置は、ISSの表皮投与における使用に適している。この装置の使用は、該装置製品と共に含まれた製造業者の書面による指示に従い;使用及び投与に関するこれらの指示は、本装置の通常の使用を例示するために参照により本明細書に組み入れられる。同じく本実施態様において使用される同様の装置が、アレルギー試験を実行するために現在使用されている。
全身投与は、医薬調製品の侵襲性又は全身に吸収される外用投与に関連している。外用塗布に加え、静脈内及び筋肉内注射が、薬物の全身投与のための一般的手段の例である。
ISSの投薬パラメータ
本発明のISSの特別な利点は、低用量であっても、抗炎症活性及び/又は免疫療法活性を発揮するそれらの能力である。使用される用量は、達成されるべき臨床目標に応じて変動するが、好適な用量範囲は、長期の疾患修飾を得るために有効な量であるものである。一実施態様において、長期疾患の実施態様は、下記の喘息の症状のいずれかひとつを軽減する:気管支過敏症、気道への好酸球浸潤、気道内の粘液分泌、気道内のTh2サイトカイン、気道リモデリング、即時型喘息反応(アレルゲン曝露直後の気道収縮)、及び遅発型喘息反応(アレルゲン曝露の数時間後の気道収縮)。
一態様において、ISSは、少なくとも週3回の投与量で投与される。投与されるべきISSの用量は、約0.001mg/kg〜約100mg/kgである。一実施態様において、投与されるべき用量は、0.005mg/kg〜約50mg/kgである。別の実施態様において、投与されるべきISSの用量は、約0.01mg/kg〜約10mg/kgである。別の実施態様において、ISSの少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、又は12回投与量が、長期の疾患修飾を実現するために、個体へ投与される。
ISSは、ある期間にわたり複数回投与される。用量投与の間の間隔は、1週間に1回である。別の場合は、用量投与の間のわずかに短い期間が使用され、例えば、用量投与の間は3、4、5又は6日であってよい。別の代替場合において、より長い期間が、用量投与の間に経過し、例えば、8、9、10、11、12、13又は14日毎であってよい。更に別の代替の場合において、ISSは、2.5週、3週、又は4週毎の反復用量で投与されてよい。一実施態様において、ISSは、少なくとも3回の毎週の投与量で、1回投与量につき約0.01mg/kg〜約10mg/kgで投与される。別の実施態様において、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、又は12回のISS投与量が、長期作用を実現するために、個体へ投与される。
更に別の態様において、ISSは、約0.01mg/kg〜約10mg/kgの用量で投与され、並びに長期の疾患修飾をもたらすために、これらの用量の間を約3、4、5又は6日あけて、少なくとも3回投与量が、個体に投与される。別の実施態様において、ISSは、約0.01mg/kg〜約10mg/kgの用量で投与され、並びに長期の疾患修飾をもたらすために、これらの用量の間を約8、9、10、11、12、13、又は14日あけて、少なくとも3回投与量が個体に投与される。別の実施態様において、ISSは、約0.01mg/kg〜約10mg/kgの用量で投与され、並びに長期の疾患修飾をもたらすために、これらの用量の間を約2.5週間、3週間又は4週間あけて、少なくとも3回投与量が、個体に投与される。一実施態様において、長期作用を実現するために、ISSの少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11又は12回の投与量が、これらの用量の間が約3〜約14日の範囲の間隔で個体に投与される。別の実施態様において、ISSの少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11又は12回の投与量が、長期作用を実現するために、これらの用量の間が約2.5週間、3週間又は4週間の範囲の間隔で、個体に投与される。別の実施態様において、これらのISS投与量は、およそ1週間に1回で投与される。当業者は、実施例において例証されるように、Th2サイトカインレベルを測定することにより、投与量の範囲を調節することができるであろう。本開示に提示された内容及び出願時に一般に公知であるものを鑑み、臨床技術分野の業者は、本発明のISSの投与に関する好適なパラメータを熟知しているか、又は容易に確認することができるであろう。
これに関して、本発明のISSの抗炎症活性及び免疫治療的活性は、本質的に投与量−依存型であることは注意されなければならない。従ってISSの効能を2倍だけ増強するためには、各単回投与量は、濃度で倍加されなければならない。臨床的には、低用量(例えば約0.01mg/kg)のISSを投与することが勧告され、この用量は望ましい治療上の目的に到達するために必要に応じて増加される。現在の試験を基に、ISSは、これらの用量レベルでの毒性はほとんど又は全くないと考えられる。
本発明の方法の実践において使用するためのキット
本発明は、先に説明された方法で使用するために、キットも提供する。このようなキットは、以下のいずれか又は全てを備えてよい:ISS(コンジュゲート型又は非コンジュゲート型);医薬として許容し得る担体(ISSと予備混合されてよい)、又は凍結乾燥されたISSを再構成するための懸濁液基剤;追加の医薬品;ISSを個体へ送達するために使用される、ISS及び追加の医薬品の各々のための滅菌バイアル、又はそれらの混合物のための単独のバイアル、装置;治療された個体において求める免疫調節作用が達成されたことの兆候を検出するためのアッセイ試薬、ISSをどのように、いつ投与するかの指示書、並びに好適なアッセイ装置。
本発明の実践を例示する実施例を、以下に記す。これらの実施例は、単に参照を目的とするものであり、本発明の限定するために構築されるものではない。
実施例
実施例1:ブタクサ−誘導したアレルギー喘息に関するマウスモデルにおける1018 ISSによる鼻腔内治療後のTh2−型遺伝子誘導の阻害
本実験の目的のひとつは、ブタクサ−感作され及びチャレンジされたマウスにおけるアレルゲン−誘導したTh2−遺伝子誘導の阻害に対する、鼻腔内1018 ISS治療の作用の持続期間を調べることであった。評価した遺伝子は、様々なTh2−サイトカイン、ケモカイン、及び気道炎症に関与した様々な他の分子を含んだ。雌のBALB/cマウスを、ミョウバン上のブタクサで、−21日目及び−14日目に腹腔内感作した。様々な時点で(−7日目から0日目と3時間の範囲)、マウス群を、軽い麻酔下で、1018 ISS又は食塩水により鼻腔内処置した。0日目に、全ての群に、ブタクサ又は食塩水のいずれかを鼻腔内チャレンジした。チャレンジの6時間後、肺を摘出し、液体窒素で瞬時に凍結した。総RNAを単離し、cDNAに転換した。mRNAの発現を、肺cDNA試料において、リアルタイム定量的PCRを用いて測定した。
使用した材料は、以下であった:1018(ロット番号AGU-003、Dynavax社)、ブタクサ(花粉ロット#16、24QQ 56-9FD-3、2003年1月17日抽出、Dynavax社)、パイロジェンフリー食塩水(Sigma社)。使用した方法は、以下であった:試験は、Charles River社(ホリスター、CA)から入手した6〜8週齢の雌のBALB/cマウスで行った。全部で90匹のマウスを、ミョウバン上のブタクサ10μgで、−21日目及び−14日目に腹腔内感作した。−7日目以降開始し、5匹のマウスの群は、軽いイソフロライン(isofloraine)麻酔下で、下記のスケジュールに従い、パイロジェンフリー食塩水(50μl)又は1018 ISS(20μg/50μl食塩水)により、鼻腔内処置した。
0日目に、全てのマウスに、ブタクサ(5μg/50μl食塩水)又は食塩水(50μl)のいずれかを鼻腔内チャレンジした。チャレンジの6時間後、肺を摘出し、液体窒素で瞬時に凍結し、−80℃で後に使用するために貯蔵した。総RNAを、RNeasyミニキット(Qiagen社、バレンシア、CA)を用い単離した。RNA試料を、DNAse−処置し(Roche Diagnostics社、マンハイム、独国)、Superscript II Rnase H逆転写酵素(Invitrogen社、ロックビル、MD)を先に公開された方法(Scheerensら、Eur. J. of Immunology 2001, 31:1465-74)に従い使用し、cDNAに転換した。
各cDNA試料において、様々な遺伝子のmRNA発現レベルを、リアルタイム定量的PCR(ABI Prism 5700、Perkin Elmer Applied Biosystems社)及びSYBRグリーン(Qiagen社、バレンシア、CA)を用いて測定した。検出に使用したセンス及びアンチセンスプライマーは、当研究室で開発し、Th2−サイトカイン、ケモカイン、及び気道炎症に関連した様々な他の分子に対するプライマーセットを含んだ。関心対象の遺伝子に加え、各試料中の、ハウスキーピング遺伝子のmRNA発現を測定した(この場合ユビキチン)。1試料あたりのRNA量を補正した後、全てのデータを、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して計算した(遺伝子/ユビキチン比として表した)。
結果:図1において、Th2−型気道炎症反応の発生に必須の6種の遺伝子を示し、データは遺伝子/ユビキチン比として表している。このデータは、感作されたマウスにおけるブタクサによる鼻腔内チャレンジは、食塩水−チャレンジしたマウスと比べた場合に、IL−4、IL−5、及びIL−13などのTh2−遺伝子のmRNA発現レベルをアップレギュレーションしたことを明らかにしている(ブタクサ−チャレンジしたマウスは、灰色棒のRW/RW/食塩水で示し、食塩水−チャレンジしたマウスは、白色棒のRW/食塩水/食塩水で示した)。加えて、ケモカインTARC、MDC及びエオタキシンのmRNA発現レベルは、RW/RW/食塩水マウスにおいて、アレルゲンチャレンジ後にアップレギュレーションされた。対照的に、1018 ISSで前処置されたマウスにおいて(黒色棒のRW/RW/1018として示す)、様々なサイトカイン及びケモカインの発現レベルのブタクサ−誘導したアップレギュレーションは、しかし、1018 ISS前処置が−1日目もしくは−3日目、又は一部の遺伝子については−5日目に与えられた場合にのみ、阻害された。
図2において、GOB−5及びC2に関する遺伝子/ユビキチン比が示されている。GOB−5及びC2(FIZZ−1としても公知)は両方とも、IL−4により気道において誘導されることがわかっている遺伝子である。本発明者らのデータから、ブタクサによるチャレンジは、両方の遺伝子のアップレギュレーションに繋がったことは明らかである。対照的に、ブタクサによるチャレンジの数日前に与えられた1018 ISSによる前処置は、Th2−型気道炎症に関連したこれらのmRNAの発現を阻害した。GOB−5に関して、1018 ISS処置は、−1日目又は−3日目に投与された場合に有効である。C2に関して、1018 ISS処置は、−3日目又は−5日目に投与された場合に有効である。
アレルギー喘息のマウスモデルにおけるISSによる前処置は、アレルゲン−誘導した気道好酸球増加症及び気道過敏症を阻害することが公表されている(Broideら、J. Immunol, 161:7054, 1998)。本発明者らは、この阻害は、気道におけるISS−誘導したTh2及びTh2−依存型遺伝子発現レベルのダウンレギュレーションと相関することを示した(Hesselら、(2005) J. Exp. Med., 202(11):1563)。
ここで本発明者らは、気道におけるアレルゲン−誘導したTh2反応のISS−媒介した阻害の期間を決定した。この有効性のウインドウを確立する方法として、本発明者らは、感作したマウスにおけるアレルゲンチャレンジ後のTh2−型気道炎症の発症に必須の又は発症に密に関連している気道における一連の遺伝子の発現を測定した。本発明者らのデータは、アレルゲンチャレンジの1〜3日前に与えられた1018 ISSは、これらの遺伝子の大部分を阻害することができ、このことは気道におけるTh2反応の大きな減少を招いたことを明らかにしている。本発明者らは、1018 ISSがアレルゲンチャレンジから更に離れて投与される(すなわち−3日目よりも早く)場合、Th2又はTh2−依存型の遺伝子発現をダウンレギュレーションすることができないことを認めた。
従って、ISS処置の気道Th2反応に対する直接作用を研究することを求める場合、アレルゲンチャレンジ前1〜3日以内に前処置することが推奨されるのに対し、ISSの疾患修飾に対する長期作用を研究することに関心がある場合は、直接のISS作用が存在しないことを確実にするために、ISS処置後少なくとも1週間は待つことが推奨される。
実施例2:ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおける1018 ISSによる長期鼻腔内処置の作用
本実験セットの目的のひとつは、ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおいて、1018 ISSによる長期鼻腔内処置が、疾患修飾につながるかどうかを調べることである。ブタクサ−感作しかつチャレンジしたマウスにおける、1018 ISSでの毎週1回の鼻腔内処置の長期作用を調べた。
マウスは、鼻腔内低投与量のブタクサで、感作し、引き続き週1回を基本にチャレンジした。同じく週1回を基本に、マウスを、食塩水又は1018 ISSのいずれかで、鼻腔内処置した。この実験過程のいくつかの時点で、マウスを、2週間の休薬期間のために、別にした。この休薬期間は、1018 ISS処置の直接作用を減弱することを確実にするためであった。この2週間の終わりに、これらのマウスを、高投与量のブタクサで再チャレンジし、このアレルゲンチャレンジに対する反応を、気道内のTh2及びTh1サイトカイン量を測定することにより、及び気道の好酸球浸潤の量を決定することにより、評価した。
より詳細には、使用した物質は以下であった:1018(ロット番号AGU-003, Dynavax社);ブタクサ(花粉ロット#16、24QQ 56-9FD-3、2003年1月17日抽出、Dynavax社);パイロジェンフリー食塩水(Sigma社)。使用した方法は、以下であった:試験は、Charles River社(ホリスター、CA)から入手した6〜8週齢の雌のBALB/cマウスで行った。マウスを、ミョウバン上のブタクサ15μgで、0日目及び7日目に腹腔内感作した。14日目以降開始し、マウスは、軽いイソフロライン麻酔下で、ブタクサ0.5μg又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)により、週1回を基本で鼻腔内チャレンジした。同時に、マウスは、1018 ISS(20μg/50μl食塩水)又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)で、鼻腔内経路を介して、週1回で処置した。抗原チャレンジ及びISS処置の1、2、6及び10週間後、マウスは、2週間の休薬期間のために別にし、その後ブタクサ5μgで鼻腔内再チャレンジした。24時間後、肺を洗浄し、その洗浄液中のサイトカインをELISAにより測定した。IL−4、IL−13、IL−10、及びIFN−γのELISA検出レベルは、各々、8、8、8、及び23pg/mlであった。洗浄液は、遠心し、回収した細胞を、トリパンブルーを用いてカウントした。残存する細胞を用い、サイトスピン(cytospin)を調製し、ライト・ギムザ染色により染色した。分画的細胞カウントを行い、好酸球の数を各サイトスピンについて決定した。
図3及び4において、洗浄液(BAL液)中で測定されたTh2−型サイトカインIL−4、IL−13及びIL−10のレベルは、pg/mlで示されている。加えて図4において、Th1−型サイトカインIFN−γが示されている。これらの結果は、感作されたマウスにおける週1回のブタクサによるチャレンジは、高レベルのIL−4、IL−13、及びIL−10に加え、高い数の好酸球(図5に示された)を伴い、気道における頑固なTh2炎症に繋がったことを示している。これらの高レベルのTh2サイトカイン及び好酸球は、ブタクサで感作したマウスを、食塩水でのみチャレンジした場合には存在しなかった。マウスをブタクサでチャレンジし、同時に1018 ISSで処置した場合、食塩水又はISSで処置したブタクサ−チャレンジしたマウスを比較すると、ISS処置の1、2、又は6週間後に有意差は認められなかった。しかし、1018 ISS処置の10週間後、Th2サイトカインレベルに加え好酸球数は、有意に減少し(IL−13:* p<0.05;IL−4、IL−10、及び好酸球:** p<0.01)、これはTh2炎症がこれらのマウスにおいて阻害されたことを示している。更に、これらのデータは、IFN−γのレベルの増加は、1018 ISSで処置したマウスにおいて測定したいずれの時点においても誘導されないことを示し、これは、1018 ISSによる10週間の処置は、気道における顕性のTh1−型反応を誘導しなかったことを示している。
本実験において説明された本発明者らの実験データは、ISS処置は、疾患修飾、すなわちアレルゲンに対するTh2反応の阻害に繋がらなかったが、これは、他方で、気道における顕性のTh1反応の発生を随伴しなかったことを明らかにした。実施例1において、本発明者らは、1018 ISSの気道におけるTh2反応に対する直接作用は、1週間未満続いたことを決定した。従って本実施例において、全てのマウスは、それらの最後のISS処置後、少なくとも2週間休薬し、その後アレルゲンで再チャレンジした。従って認められたいずれの作用も、ISS処置の直接作用に起因しなかった。アレルゲンによる再チャレンジに対する反応は、気道が依然アレルゲンチャレンジに対する反応でTh2炎症を発症しているかどうか、又はこれらはアレルゲンチャレンジに対し不応性(refractory)となり始めているかどうかを決定するためであった。本発明者らのデータは、本疾患の修飾作用を実現するためには、少なくとも10週間の鼻腔内1018 ISS処置が必要であることを示した。
実施例3:ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおける1018 ISSによる長期鼻腔内処置の作用
本実験セットは、ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおいて、1018 ISSによる長期鼻腔内処置が、疾患修飾をもたらしたかどうかを調べ、1018 ISS処置を停止し、アレルゲン曝露を継続した後、この疾患修飾が維持されるかどうかを評価するために行った。
マウスは、鼻腔内低投与量のブタクサで、感作し、引き続き週1回を基本にチャレンジした。同じく週1回を基本に、マウスを、食塩水又は1018 ISSのいずれかで、鼻腔内処置した。この実験過程のいくつかの時点で、マウスを、2週間の休薬期間のために、別にした。この休薬期間は、1018 ISS処置の直接作用を減弱することを確実にするためであった。この2週間の終わりに、これらのマウスを、高投与量のブタクサで再チャレンジし、このアレルゲンチャレンジに対する反応を、気道内のTh2及びTh1サイトカイン量を測定することにより評価した。本試験に含まれた実験群は、以下であった:
12週間のISS処置及び合計25週間のアレルゲンチャレンジを受け取るマウスの目的は、ISS−誘導した疾患修飾が、連続したアレルゲン曝露の存在下で長期間持続したかどうかを評価するためであった。
より詳細には、使用した物質は以下であった:1018(ロット番号AGU-003, Dynavax社);ブタクサ(花粉ロット#01/26/05、Dynavax社);パイロジェンフリー食塩水(Sigma社)。試験は、Charles River社(ホリスター、CA)から入手した6〜8週齢の雌のBALB/cマウスで行った。マウスを、ミョウバン上のブタクサ15μgで、0日目及び7日目に腹腔内感作した。14日目以降開始し、マウスは、軽いイソフロライン麻酔下で、ブタクサ0.5μg又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)により、週1回を基本で鼻腔内チャレンジした。同時に、マウスは、1018 ISS(20μg/50μl食塩水)又はTOLAMBA(20μg/50μl食塩水)又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)で、鼻腔内経路を介して、週1回で処置した。抗原チャレンジ及びISS処置の1、8、12、16及び25週間後、マウスは、2週間の休薬期間のために別にし、その後ブタクサ5μgで鼻腔内再−チャレンジした。24時間後、肺を洗浄し、その洗浄液中のサイトカインをELISAにより測定した。
結果:図6に示したように、洗浄液(BAL液)中で測定されたTh2−型サイトカインIL−4、IL−5、IL−13及びIL−10のレベルは、pg/mlで示されている。IL−4、IL−5、IL−13、IL−10、及びIFN−γ ELISAの検出レベルは、各々、8、8、8、8、及び23pg/mlであった。加えてTh1−型サイトカインIFN−γを測定したが、検出レベルを上回るIFN−γの誘導はいずれの処置群においても測定されなかった。本発明者らの結果は、感作されたマウスにおける週1回のブタクサによるチャレンジは、高レベルのIL−4、IL−5、IL−13、及びIL−10を伴い、気道における頑固なTh2炎症に繋がったことを示している。マウスをブタクサでチャレンジし、同時に1018 ISSで処置した場合、食塩水又はISSで処置したブタクサ−チャレンジしたマウスを比較すると、ISS処置の1週間後に有意差は認められなかった。しかし1018 ISS処置の8、12、16及び25週間後、Th2サイトカインレベルは、有意に減少し、これは、アレルゲン−誘導したTh2炎症は1018 ISS−処置したマウスにおいて阻害されたことを示している。検出可能なレベルのIFN−γは1018 ISSで処置したマウスにおいて測定したいずれの時点においても誘導されないという知見は、25週間の1018 ISS処置は、気道における顕性のTh1−型反応を誘導しなかったことを示している。12週間1018 ISSで処置し、引き続き更に13週間アレルゲンチャレンジを受けることを継続した群において、Th2反応は阻害され続け、このことは、1018 ISSにより誘導された疾患修飾は、長期間持続することを示している。
実施例2において、本発明者らは、10週間のISS処置は、疾患修飾、すなわちアレルゲンに対するTh2反応の阻害に繋がるが、これは、気道における顕性のTh1反応の発生を随伴しなかったことを明らかにした。ここで説明された実験は、この発見を、疾患修飾は8週間の1018 ISS処置後に事実上既に達成されており、この疾患修飾は、アレルゲン曝露が更に13週間継続された場合にさえ持続するという知見に拡大している。
実施例4:ISS−コンジュゲート
1018 ISS及びAmb a Iにコンジュゲートされた1018 ISS(TOLAMBAとして公知のコンジュゲート)の両方を使用した以外は、前記実施例3に類似した方法を用いた。図7は、鼻腔内経路を介して週1回を基本で25週間1018 ISSの20μg、又は鼻腔内経路を介して週1回を基本で25週間TOLAMBAの20μgにより処置したマウスにおける、Th2−型サイトカインIL−4、IL−5、IL−10、及びIL−13の測定の結果を示すグラフである。Th2抑制は、ISS−コンジュゲートを使用した場合にも認められた。
実施例5:ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおける1018 ISSによる長期間鼻腔内処置の作用及びIFN−γの役割
本実験は、ブタクサ−誘導したアレルギー喘息のマウスモデルにおける1018 ISSによる長期間鼻腔内処置により誘導された疾患修飾の維持が、サイトカインIFN−γにより媒介されるかどうかを調べるために行った。
マウスは、鼻腔内低投与量のブタクサで、感作し、引き続き週1回を基本にチャレンジした。同じく週1回を基本に、マウスを、食塩水又は1018 ISSのいずれかで、鼻腔内処置した。この実験過程のいくつかの時点で、マウスを、2週間の休薬期間のために、別にした。この休薬期間は、1018 ISS処置の直接作用を減弱することを確実にするためであった。2週間の終わりに、これらのマウスを、高投与量のブタクサで再チャレンジし、このアレルゲンチャレンジに対する反応を、気道内のTh2及びTh1サイトカインの量を測定することにより評価した。本試験に含まれた実験群は、以下であった:
13週間のISS処置及び合計17週間のアレルゲンチャレンジを受け取るマウスの目的は、ISS−誘導した疾患修飾が、連続したアレルゲン曝露の存在下で長期間持続したかどうかを評価するためであった。抗体処置を受け取る群(対照又は抗−IFN−γ抗体のいずれか)の目的は、IFN−γはISS−誘導した疾患修飾の維持に必要かどうかを評価するためであった。
より詳細には、使用した物質は以下であった:1018 ISS(ロット番号AGU-003, Dynavax社);ブタクサ(花粉ロット#01/26/05、Dynavax社);パイロジェンフリー食塩水(Sigma社)。試験は、Charles River社(ホリスター、CA)から入手した6〜8週齢の雌のBALB/cマウスで行った。マウスを、ミョウバン上のブタクサ15μgで、0日目及び7日目に腹腔内感作した。14日目以降開始し、マウスは、軽いイソフロライン麻酔下で、ブタクサ0.5μg又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)により、週1回を基本で鼻腔内チャレンジした。同時に、マウスは、1018 ISS(20μg/50μl食塩水)又はパイロジェンフリー食塩水(50μl)で、鼻腔内経路を介して、週1回で処置した。いくつかの群においては、マウスは、アイソタイプ対照抗体(クローンGL113)又はIFN−γに対する抗体(クローンXMGl.2)(200μl中2mg、週1回)により、13〜17週目の間、腹腔内処置した。抗原チャレンジ及びISS処置の1、3、8、13及び17週後、マウスは、2週間の休薬期間のために別にし、その後ブタクサ5μgで鼻腔内再−チャレンジした。24時間後、肺を洗浄し、その洗浄液中のサイトカインをELISAにより測定した。
結果:図8において、洗浄液(BAL液)中で測定されたTh2−型サイトカインIL−4、IL−13及びIL−5のレベルは、pg/mlで示されている。IL−4、IL−13、IL−5、及びIFN−γELISAの検出レベルは、各々、16、16、31、及び16pg/mlであった。加えてTh1−型サイトカインIFN−γを測定したが、検出レベルを上回るIFN−γの誘導はいずれの処置群においても測定されなかった。本発明者らの結果は、感作されたマウスにおける週1回のブタクサによるチャレンジは、高レベルのIL−4、IL−13、及びIL−5を伴い、気道における頑固なTh2炎症に繋がったことを示している。マウスをブタクサでチャレンジし、同時に1018 ISSで処置した場合、食塩水又はISSで処置したブタクサ−チャレンジしたマウスを比較すると、ISS処置の1又は3週間後にIL−4及びIL−5において有意差は認められなかった。IL−13レベルは、ISS−処置及びブタクサ−チャレンジしたマウスにおいて、ISS処置の1又は3週間後に、有意に阻害された。しかし1018 ISS処置の8、13、及び17週間後、3種のTh2サイトカインレベルは全て有意に減少し、これは、アレルゲン−誘導したTh2炎症は1018 ISS−処置したマウスにおいて阻害されたことを示している。検出可能なレベルのIFN−γは1018 ISSで処置したマウスにおいて測定したいずれの時点においても誘導されないという知見は、17週間の1018 ISS処置は、気道における顕性のTh1−型反応を誘導しなかったことを示している。13週間1018 ISSで処置し、引き続き更に4週間アレルゲンチャレンジを受けることを継続した群において、Th2反応は阻害され続け、このことは、1018 ISSにより誘導された疾患修飾は、長期間持続することを示している。13週間1018 ISSで処置し、引き続きアレルゲン曝露を継続し、対照又は抗−IFN−γ抗体のいずれかで処置した群において、Th2反応は同じく阻害され続け、このことは、IFN−γは疾患修飾の維持に必要でないことを示している。
実施例2において、本発明者らは、10週間のISS処置は、疾患修飾、すなわちアレルゲンに対するTh2反応の阻害に繋がったが、これは、気道における顕性のTh1反応の発生を随伴しなかったことを明らかにした。実施例3において、本発明者らは、疾患修飾は8週間の1018 ISS処置後既に達成されており、この疾患修飾は、アレルゲン曝露が更に13週間継続された場合にさえ持続することを明らかにした。本実験は、疾患修飾は8週間の1018 ISS処置後に達成されているという知見を反復し、IFN−γはこの疾患修飾の維持に必要ではないという知見に拡大している。