本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、下に添付の記述において説明される。本明細書に記載の方法および物質と同様または同等の任意の方法および物質を本発明の実践および試験において使用することができるが、好ましい方法および物質をこれから説明する。本発明の他の特性、目的、および利点は、記述から明らかになる。記述において、単数形は、文脈が別途明確に示さない限り、複数形も含む。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。不一致が生じる場合、本記述を調節する。
本発明は、本明細書で「TFPIアプタマー」と記載されるTFPIに結合するアプタマー、ならびに場合によっては他の作用物質を用いて、出血障害および他のTFPIによって媒介される病状、疾患、または障害の治療においてそのようなアプタマーを用いるための方法を提供する。加えて、合併症またはその副作用を軽減するか、またはさもなければその進行を遅延させるために、場合によっては他の作用物質を伴って、TFPIアプタマーを、医学的手技の前、間、および/または後に用いることができる。
アプタマーの特定
本明細書に記載のアプタマーは、好ましくは、概して図4に示される、EXponential EnrichmentのSystematic Evolution of LigandsまたはSELEX(商標)として当技術分野で既知の方法を介して特定される。より具体的には、核酸の出発プールを含有する混合物に始まって、SELEX(商標)法は、(a)結合にとって好ましい条件下で混合物を標的と接触させるステップ、(b)未結合核酸を標的に結合した核酸から分配するステップ、(c)結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(d)所望の回数の周期で、接触、分配、および増幅するステップを繰り返して、標的に対して非常に特異的な高親和性アプタマーを産出するステップを含む。RNAアプタマー等の転写されたアプタマーが選択される場合、SELEX(商標)法の増幅ステップは、(i)核酸標的複合体から解離される核酸を逆転写するか、またはさもなければ配列情報を対応するDNA配列に伝達するステップ、(ii)PCR増幅のステップ、および(iii)本プロセスを再開する前に、PCRで増幅された核酸を転写するか、またはさもなければ配列情報を対応するRNA配列に伝達するステップを含む。核酸の出発プールは、修飾または未修飾DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッドであってもよく、許容される修飾は、塩基、糖類、および/またはヌクレオチド間連結での修飾を含む。出発プールの組成物は、最終アプタマーの所望の性質によって決まる。選択を、例えば、インビボ分解に対してアプタマーを安定化させるために修飾ヌクレオチドを組み込む核酸配列により実行することができる。例えば、ヌクレアーゼ分解への耐性を、2’位置での修飾基の組み込みにより大いに増加することができる。
一実施形態において、本発明は、全ての塩基での単一の2’置換またはアデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)、チミジン三リン酸(TTP)、およびウリジン三リン酸(UTP)ヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−NH2、および2’−OMe修飾の組み合わせを含むアプタマーを提供する。別の実施形態において、本発明は、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、2’−NH2、および2’−メトキシエチル修飾の組み合わせを含むアプタマーを提供する。さらなる実施形態において、本発明は、全てもしくは実質的に全ての2’−OMeで修飾されたATP、GTP、CTP、TTP、および/またはUTPヌクレオチドを含むアプタマーを提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の2’−修飾アプタマーは、修飾されたポリメラーゼ、例えば、野生型ポリメラーゼの組み込み率よりも高い、フラノースの2’位置に巨大な置換基を有する修飾ヌクレオチドの組み込み率を有する修飾されたRNAポリメラーゼを用いて作成される。一実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがフェニルアラニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639F)である。別の実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがフェニルアラニンに変化し、位置378のリジンがアルギニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639F/K378R)である。さらに別の実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがフェニルアラニンに変化し、位置784のヒスチジンがアラニンに変化し、位置378のリジンがアルギニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R)であり、転写反応混合物は、転写のために2’−OH GTPの添加を必要とする。さらなる実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがフェニルアラニンに変化し、位置784のヒスチジンがアラニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639F/H784A)である。
一実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがロイシンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639L)である。別の実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがロイシンに変化し、位置784のヒスチジンがアラニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639L/H784A)である。さらに別の実施形態において、修飾されたRNAポリメラーゼは、位置639のチロシンがロイシンに変化し、ヒスチジンが位置784でアラニンに変化し、位置378のリジンがアルギニンに変化した変異体T7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)である。
野生型ポリメラーゼの組み込み率よりも高い、フラノース2’位置で巨大な置換基を有する修飾ヌクレオチドの組み込み率を有する別の好適なRNAポリメラーゼは、例えば、変異体T3RNAポリメラーゼである。一実施形態において、変異体T3RNAポリメラーゼは位置640で変異を有し、位置640のチロシンはフェニルアラニンに置換される(Y640F)。別の実施形態において、変異体T3RNAポリメラーゼは、位置640および785で変異を有し、位置640のチロシンはロイシンに置換され、位置785のヒスチジンはアラニンに置換される(Y640L/H785A)。
2’修飾オリゴヌクレオチドを、全ての修飾ヌクレオチドまたは一部の修飾ヌクレオチドで合成することができる。本修飾は、同一であるか、あるいは異なる。いくつかまたは全てのヌクレオチドを修飾することができ、修飾されるヌクレオチドは、同一の修飾を含有し得る。例えば、同一の塩基を含有する全てのヌクレオチドは、1種類の修飾を有し得る一方で、他の塩基を含有するヌクレオチドは、異なる種類の修飾を有し得る。全てのプリンヌクレオチドは、1種類の修飾を有し得る(か、あるいは修飾されない)一方で、全てのピリミジンヌクレオチドは、別の異なる種類の修飾を有し得る(か、あるいは修飾されない)。このようにして、転写物、または転写物のプールは、例えば、リボヌクレオチド(2’−OH)、デオキシリボヌクレオチド(2’−デオキシ)、2’−アミノヌクレオチド(2’−NH2)、2’−フルオロヌクレオチド(2’−F)、および2’−O−メチル(2’−OMe)ヌクレオチドを含む任意の修飾の組み合わせを用いて生成される。
本明細書で使用される、2’−OMe A、G、C、およびU、ならびに/またはT三リン酸塩(2’−OMe ATP、2’−OMe UTPおよび/または2’−OMe TTP、2’−OMe CTP、ならびに2’−OMe GTP)のみを含有する転写混合物は、MNAまたはmRmY混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、MNAアプタマーまたはmRmYアプタマーと称され、2’−O−メチルヌクレオチドのみを含有する。2’−OMe C、および、Uおよび/またはT、ならびに2’−OH AおよびGを含有する転写混合物は、「rRmY」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rRmY」アプタマーと称される。デオキシAおよびG、ならびに2’−OMe U、および/またはT、およびCを含有する転写混合物は、「dRmY」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dRmY」アプタマーと称される。2’−OMe A、C、およびU、および/またはT、ならびに2’−OH Gを含有する転写混合物は、「rGmH」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rGmH」アプタマーと称される。2’−OMe A、C、Uおよび/またはT、およびG、ならびに2’−OMe A、U、および/またはT、およびC、ならびに2’−F Gを選択的に含有する転写混合物は、「交互混合物」と称され、それから選択されるアプタマーは、「交互混合物」アプタマーと称される。2’−OH AおよびG、ならびに2’−F C、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「rRfY」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rRfY」アプタマーと称される。2’−OMe AおよびG、ならびに2’−F C、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「mRfY」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「mRfY」アプタマーと称される。2’−OMe A、U、および/またはT、およびC、ならびに2’−F Gを含有する転写混合物は、「fGmH」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「fGmH」アプタマーと称される。Gの最大10%がリボヌクレオチドである、2’−OMe A、U、および/またはT、C、およびGを含有する転写混合物は、「r/mGmH」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「r/mGmH」アプタマーと称される。2’−OMe A、U、および/またはT、およびC、ならびにデオキシGを含有する転写混合物は、「dGmH」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dGmH」アプタマーと称される。デオキシA、ならびに2’−OMe C、G、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「dAmB」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dAmB」アプタマーと称される。2’−OH A、ならびに2’−OMe C、G、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「rAmB」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rAmB」アプタマーと称される。2’−OH Aおよび2’−OH G、ならびに2’−デオキシCおよび2’−デオキシTを含有する転写混合物は、rRdY混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rRdY」アプタマーと称される。2’−OMe A、U、および/またはT、およびG、ならびにデオキシCを含有する転写混合物は、「dCmD」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dCmD」アプタマーと称される。2’−OMe A、G、およびC、ならびにデオキシTを含有する転写混合物は、「dTmV」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dTmV」アプタマーと称される。2’−OMe A、C、およびG、ならびに2’−OH Uを含有する転写混合物は、「rUmV」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rUmV」アプタマーと称される。2’−OMe A、C、およびG、ならびに2’−デオキシUを含有する転写混合物は、「dUmV」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dUmV」アプタマーと称される。全ての2’−OHヌクレオチドを含有する転写混合物は、「rN」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「rN」、「rRrY」、またはRNAアプタマーと称される。全てのデオキシヌクレオチドを含有する転写混合物は、「dN」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「dN」、「dRdY」、またはDNAアプタマーと称される。2’−F Cならびに2’−OMe A、G、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「fCmD」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「fCmD」アプタマーと称される。2’−F Uならびに2’−OMe A、G、およびCを含有する転写混合物は、「fUmV」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「fUmV」アプタマーと称される。2’−F AおよびG、ならびに2’−OMe C、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「fRmY」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「fRmY」アプタマーと称される。2’−F Aならびに2’−OMe C、G、およびU、および/またはTを含有する転写混合物は、「fAmB」混合物と称され、それから選択されるアプタマーは、「fAmB」アプタマーと称される。
いくつかの要因を、本明細書に開示のアプタマーを生成するために用いられる転写条件を最適化するのに有用となるよう決定した。例えば、リーダー配列を、DNA転写鋳型の5’末端で固定配列に組み込むことができる。リーダー配列は、典型的には、6〜15個のヌクレオチド長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のヌクレオチド長であり、全てのプリン、またはプリンおよびピリミジンヌクレオチドの混合物から成り得る。
2’−OMe GTPを含有する組成物に関して、別の有用な要因は、2’−OHグアノシンまたはグアノシン一リン酸塩(GMP)の存在または濃縮物であり得る。転写を、二段階に分けることができる。第1の段階は、開始であり、その間、RNAが約10〜12個のヌクレオチドにより伸長され、第2の段階は、伸長であり、その間、転写が第1の約10〜12個のヌクレオチドの添加を越えて進む。過剰な2’−OMe GTPを含有する転写混合物に添加された2’−OH GMPまたはグアノシンが、ポリメラーゼに転写を開始させることを可能にするのに十分であることが見出された。例えば、2’−OHグアノシン、またはGMPでのプライミング転写は、開始ヌクレオチドへのポリメラーゼの特異性のため有用である。GMPの好ましい濃度は、0.5mM、さらにより好ましくは、1mMである。
転写物への2’−OMe置換ヌクレオチドの組み込みを最適化するのに有用な別の要因は、転写混合物における二価マグネシウムおよびマンガンの両方の使用である。塩化マグネシウムおよび塩化マンガンの濃度の異なる組み合わせが、2’−O修飾転写物の収率に影響を及ぼし、塩化マグネシウムおよび塩化マンガンの最適濃度が、二価金属イオンを複合する転写反応混合物中のNTPの濃度によって決まることが見出された。
転写反応に含めることができる他の試薬には、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液等の緩衝液、ジチオスレイトール(DTT)等のレドックス試薬、スペルミジン、スペルミン等のポリカチオン、トリトンX100等の界面活性剤、および任意のそれらの組み合わせが含まれる。
一実施形態において、HEPES緩衝液の濃度は、0〜1Mに及び得る。本発明は、例えば、トリスヒドロキシメチルアミノメタンを含む、5〜10のpKaを有する他の緩衝剤の使用も企図する。いくつかの実施形態において、DTT濃度は、0〜400mMに及び得る。本発明の本方法は、例えば、メルカプトエタノールを含む他の還元剤の使用も提供する。いくつかの実施形態において、スペルミジンおよび/またはスペルミン濃度は、0〜20mMに及び得る。いくつかの実施形態において、PEG−8000の濃度は、0〜50%(w/v)に及び得る。本発明の本方法は、例えば、他の分子量のPEGまたは他のポリアルキレングリコールを含む他の親水性ポリマーの使用も提供する。いくつかの実施形態において、トリトンX−100の濃度は、0〜0.1%(w/v)に及び得る。本発明の本方法は、他のトリトン−X洗剤を含む、例えば、他の洗剤を含む他の非イオン洗剤の使用も提供する。いくつかの実施形態において、MgCl2の濃度は、0.5mM〜50mMに及び得る。MnCl2濃度は、0.15mM〜15mMに及び得る。いくつかの実施形態において、2’−OMe NTPの濃度(それぞれNTP)は、5μM〜5mMに及び得る。いくつかの実施形態において、2’−OH GTPの濃度は、0μM〜300μMに及び得る。いくつかの実施形態において、2’−OH GMPの濃度は、0〜5mMに及び得る。pHは、pH6〜pH9に及び得る。
SELEXプロセスの変形を用いて、アプタマーを特定することができる。例えば、当業者は、アゴニストSELEX、トグルSELEX、2’−修飾SELEX、またはカウンターSELEXを用いることができる。SELEXプロセスのこれらの変形のそれぞれが当技術分野で既知である。
TFPIアプタマー
本発明は、組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合し、いくつかの実施形態において、TFPIの活性を機能的に調節する、例えば、刺激するか、阻止するか、またはさもなければ阻害するか、あるいは刺激する、核酸アプタマー、好ましくは、20〜55個のヌクレオチド長の核酸アプタマーを含む。
TFPIアプタマーは、TFPIもしくは変形または1つ以上のその部分(もしくは領域)に少なくともある程度結合する。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。
本明細書で使用されるTFPI変形は、TFPI機能と本質的に同一の機能を実行する変形を包含し、好ましくは、実質的に同一の構造を含み、いくつかの実施形態において、ヒトTFPIのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性、およびより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含み、配列番号11として図5に示される。
好ましくは、TFPIアプタマーは、全長TFPIに結合する。アプタマーがTFPIの1つ以上の部分に結合する場合、アプタマーが、K3/C末端領域等のK1およびK2領域の外側で、少なくともある程度、TFPIの一部との結合接触または他の相互作用を必要とすることが好ましい。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。より好ましくは、TFPIアプタマーは、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される成熟TFPI(例えば、図3A)の1つ以上の部分に少なくともある程度結合する。
TFPIは、任意の種由来であり得るが、好ましくは、ヒトである。
TFPIアプタマーは、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形に対する解離定数を含む。いくつかの実施形態において、解離定数を、ドットブロット滴定により決定する。
TFPIアプタマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、修飾された核酸(例えば、2’で修飾)もしくは混合されたリボ核酸、デオキシリボ核酸および修飾された核酸、または任意のそれらの組み合わせであり得る。アプタマーは、単鎖リボ核酸、デオキシリボ核酸、修飾された核酸(例えば、2’で修飾)、リボ核酸および修飾された核酸、デオキシリボ核酸および修飾された核酸もしくは混合されたリボ核酸、デオキシリボ核酸および修飾された核酸、または任意のそれらの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、TFPIアプタマーは、少なくとも1つの化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、化学修飾は、糖位置での化学的置換、ヌクレオチド間連結での化学的置換、および塩基位置での化学的置換からなる群から選択される。他の実施形態において、化学修飾は、修飾ヌクレオチドの組み込み、3’キャッピング、5’キャッピング、高分子量の非免疫原性化合物との共役、脂溶性化合物との共役、CpGモチーフの組み込み、およびリン酸骨格へのホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートの組み込みからなる群から選択される。好ましい実施形態において、非免疫原性高分子量化合物は、ポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。いくつかの実施形態において、ポリエチレングリコールは、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。別の好ましい実施形態において、3’キャッピングは、逆位のデオキシチミジンのキャッピングである。
本明細書に記載の修飾は、アプタマーの安定性に影響を及ぼす場合もあり、例えば、キャッピング部分の組み込みは、エンドヌクレアーゼ分解に対してアプタマー安定化させ得る。さらに、本明細書に記載の修飾は、その標的へのアプタマーの結合親和性に影響を及ぼす場合もあり、例えば、修飾ヌクレオチドの部位特異的な組み込みまたはPEGとの共役は、結合親和性に影響を及ぼす場合もある。結合親和性へのそのような修飾の影響を、修飾の組み込み前および組み込み後の結合親和性を比較するために、例えば、ELISA等の機能的アッセイ、または微量の標識アプタマーが様々な標的濃度でインキュベートされ、複合体がニトロセルロース上で捕捉されて定量化される結合アッセイ等の多種多様の当技術分野で認識される技術を用いて決定することができる。
好ましくは、TFPIアプタマーは、TFPIまたは変形もしくは1つ以上のその部分に少なくともある程度結合し、TFPIの機能を阻害するアンタゴニストの役割をする。
TFPIアプタマーは、完全に、または部分的に、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害を阻害するか、減少させるか、阻止するか、またはさもなければ調節する。TFPIアプタマーの存在下でTFPIによって媒介される阻害のレベルが、TFPIアプタマーの不在下でTFPIによって媒介される阻害のレベルと比較して、少なくとも95%、例えば、96%、97%、98%、99%、または100%減少する時に、TFPIアプタマーは、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害等、TFPI生物学的活性を完全に調節するか、阻止するか、阻害するか、減少させるか、拮抗するか、中和させるか、またはさもなければ妨害すると考えられる。TFPIアプタマーの不在下でTFPIによって媒介される阻害のレベルが、TFPIアプタマーの不在下でTFPI活性のレベルと比較して、95%未満、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%減少する時、TFPIアプタマーは、TFPIによって媒介される阻害等、TFPI生物学的活性を部分的に調節するか、阻止するか、阻害するか、減少させるか、拮抗するか、中和するか、またはさもなければ妨害すると考えられる。
治療薬および/または診断薬としての使用のためのTFPIに結合し、その機能を調節するアプタマーの例として、ARC26835、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882が挙げられるが、それらに限定されない。
好ましくは、TFPIアプタマーは、以下の核酸配列のうちの1つを含む:
(ARC26835)
「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は、(当技術分野において2’−OMe、2’−メトキシ、または2’−OCH3含有ヌクレオチドとしても既知の)2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA(配列番号1)、
(ARC17480)
「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号2)、
(ARC19498)
「NH2」は5’−ヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、NH2−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号3)、
(ARC19499)
「NH」は5’−ヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドであり、「PEG」はポリエチレングリコールである、PEG40K−NH−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号4)、
(ARC19500)
「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドであり、「NH2」はヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来である、NH2−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−NH2(配列番号5)、
(ARC19501)
「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドであり、「NH」はヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、「PEG」はポリエチレングリコールである、PEG20K−NH−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−NH−PEG20K(配列番号6)、
(ARC31301)
「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA(配列番号7)、
(ARC18546)
「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号8)、
(ARC19881)
「NH2」は5’−ヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである、NH2−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号9)、
(ARC19882)
「NH」は5’−ヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドであり、「PEG」はポリエチレングリコールである、PEG40K−NH−mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号10)。
ARC26835の化学名は、2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリルである。
ARC17480の化学名は、2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
ARC19498の化学名は、6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
ARC19499の化学名は、N−(メトキシ−ポリエチレングリコール)−6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
ARC19500の化学名は、6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−6−アミノヘキシリルである。
ARC19501の化学名は、N−(メトキシ−ポリエチレングリコール)−6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−6−アミノヘキシリル−N−(メトキシ−ポリエチレングリコール)である。
ARC31301の化学名は、2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリルである。
ARC18546の化学名は、2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
ARC19881の化学名は、6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
ARC19882の化学名は、N−(メトキシ−ポリエチレングリコール)−6−アミノヘキシリル−(1→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−(3’→3’)−2’−デオキシチミジンである。
本発明のTFPIアプタマーは、任意の二次構造を有し得る。好ましくは、TFPIアプタマーは、図10Aおよび図10B等のステムおよびループモチーフを含む。ARC19499の推定上の二次構造が図10Cに示され、ステムおよびループモチーフを含む。
好ましくは、TFPIアプタマーは、1つ以上のリンカーを伴って(図10B)、または伴わずに(図10A)、1つ以上のPEG部分に結合される。PEG部分は、任意の型のPEG部分であり得る。例えば、PEG部分は、線形、分岐、多分岐、星形、櫛形、または樹枝状であり得る。加えて、PEG部分は、任意の分子量を有し得る。好ましくは、PEG部分は、5〜100kDaの範囲の大きさの分子量を有する。より好ましくは、PEG部分は、10〜80kDaの範囲の大きさの分子量を有する。さらにより好ましくは、PEG部分は、20〜60kDaの範囲の大きさの分子量を有する。なお一層より好ましくは、PEG部分は、30〜50kDaの範囲の大きさの分子量を有する。最も好ましくは、PEG部分は、40kDaの大きさの分子量を有する。同一または異なるPEG部分を、TFPIアプタマーに結合することができる。同一または異なるリンカーを用いて、同一または異なるPEG部分をTFPIアプタマーに結合させてもよく、あるいはリンカーを用いなくてもよい。
あるいは、TFPIアプタマーを、1つ以上のリンカーの有無にかかわらず、(1つ以上のPEG部分に結合するというよりはむしろ)1つ以上のPEG代替物に結合することができる。PEG代替物の例として、ポリオキサゾリン(POZ)、PolyPEG、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、およびアルブミンが挙げられるが、それらに限定されない。PEG代替物は、任意の型のPEG代替物であってもよいが、PEG部分と同一または同様に機能する、すなわち、腎臓濾過を軽減し、循環血液中のTFPIアプタマーの半減期を増加させるはずである。同一または異なるPEG代替物を、TFPIアプタマーに結合することができる。同一または異なるリンカーを用いて、同一または異なるPEG代替物をTFPIアプタマーに結合させてもよく、あるいはリンカーを用いなくてもよい。あるいは、PEG部分およびPEG代替物の組み合わせを、同一または異なるリンカーのうちの1つ以上の有無にかかわらず、TFPIアプタマーに結合することができる。
好ましくは、TFPIアプタマーは、リンカーを介してPEG部分に結合される(図10B)。しかしながら、リンカーを使用することなく、TFPIアプタマーを、PEG部分に直接結合することができる(図10A)。リンカーは、任意の種類の分子であり得る。リンカーの例として、アミン、チオール、およびアジドが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、アミン(RNH2)および活性化エステル(R’C(=O)OR”)または無水物(R’C(=O)OC(=O)R”)をリンカーとして用いて、アミド(R’(C=O)NR)を産出することができる。活性化エステルは、制限なく、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)およびNHSのスルホン誘導体、ニトロフェニルエステル、および他の置換芳香族誘導体を含む。無水物は、コハク酸無水物誘導体等の環状であり得る。アミン(RNH2)および活性化炭酸塩(R’OC(=O)OR”)を用いて、カルバミン酸塩(ROC(=O)NR)を産出することができる。活性化カルバミン酸塩は、制限なく、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)およびNHSのスルホン誘導体、ニトロフェニルカルバメートを含む。アミン(RNH2)およびイソチオシアネート(R’N=C=S)をリンカーとして用いて、イソチオ尿素(RNHC(=S)NHR’)を産出することができる。アミン(RNH2)およびイソシアネート(R’N=C=O)をリンカーとして用いて、イソ尿素(RNH(C=O)NHR’)を産出することができる。アミン(RNH2)およびアシルアジド(R’(C=O)N2)をリンカーとして用いて、アミド(RNH(C=O)R’)を産出することができる。アミン(RNH2)およびアルデヒドまたはグリオキサル(R’(C=O)H)をリンカーとして用いて、イミン(R’CH=NR)または還元を介したアミン(R’CH2=NHR)を産出することができる。アミン(RNH2)およびスルホニルクロリド(R’SO2Cl)をリンカーとして用いて、スルホンアミド(R’SO2NHR)を産出することができる。アミン(RNH2)およびエポキシドおよびオキシランをリンカーとして用いて、α−ヒドロキシアミンを得ることができる。チオール(RSH)およびヨードアセチル(R’(C=O)CH2I)をリンカーとして用いて、チオエーテル(RSCH2(O=C)R’)を産出することができる。チオール(RSH)およびマレイミドまたはマレイミド誘導体をリンカーとして用いて、チオエーテルを得ることができる。チオール(RSH)およびアジリジンをリンカーとして用いて、α−アミンチオエーテルを得ることができる。チオール(RSH)およびアクリロイル誘導体(R’CH=CH2)をリンカーとして用いて、チオエーテル(R’CH2CH2SR)を得ることができる。チオール(RSH)およびジスルフィド(R’SSR”)をリンカーとして用いて、ジスルフィド(RSSR’またはR”)を得ることができる。チオール(RSH)およびビニルスルホン(CH2=CHSO2R’)をリンカーとして用いて、チオールエーテル(RSCH2CH2SO2R’)を産出することができる。アジド(RN3)およびアルキン(R’C=H)をリンカーとして用いて、トリアゾリンを産出することができる。好ましくは、リンカーは、リン酸基を含有する。好ましくは、リンカーは、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来である。いくつかの実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜18個の連続したCH2基を含む。より好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜12個の連続したCH2基を含む。さらにより好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、4〜8個の連続したCH2基を含む。最も好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、6個の連続したCH2基を含み、すなわち、5’−ヘキシルアミンリンカーホスホルアミダイトである。同一もしくは異なるリンカーのうちの1つ以上を用いて、同一もしくは異なるPEG部分のうちの1つ以上または同一もしくは異なるPEG代替物のうちの1つ以上をTFPIアプタマーに結合させてもよく、あるいはリンカーを用いなくてもよい。
好ましい実施形態において、以下の構造:
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、
は、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、
は、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、
アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号2)の核酸配列を有し、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜18個の連続したCH2基を含む。より好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜12個の連続したCH2基を含む。さらにより好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、4〜8個の連続したCH2基を含む。最も好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、6個の連続したCH2基を含む。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、
は、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、
アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号8)の核酸配列を有し、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜18個の連続したCH2基を含む。より好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜12個の連続したCH2基を含む。さらにより好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、4〜8個の連続したCH2基を含む。最も好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、6個の連続したCH2基を含む。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
好ましい代替実施形態において、以下の構造:
,
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、
は、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の代替実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、
は、5’−アミンリンカーホスホルアミダイト由来であり、
アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA(配列番号1)の核酸配列を有し、dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜18個の連続したCH2基を含む。より好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、2〜12個の連続したCH2基を含む。さらにより好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、4〜8個の連続したCH2基を含む。最も好ましい実施形態において、5’−アミンリンカーホスホルアミダイトは、6個の連続したCH2基を含む。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
より好ましい実施形態において、以下の構造:
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号2)の核酸配列を有し、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号8)の核酸配列を有し、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
より好ましい代替実施形態において、以下の構造:
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
特定の代替実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA(配列番号1)の核酸配列を有し、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。20KPEG部分は、20kDaの分子量を有する任意のPEG部分であってもよい。好ましくは、20KPEG部分は、20kDaの分子量を有するmPEG部分である。
最も好ましい実施形態において、以下の構造:
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、「n」は、約454個のエチレンオキシド単位(PEG=20kDa)であり、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。nの数が特定の分子量を有するPEGに対してわずかに異なり得るため、「n」は、約454個のエチレンオキシド単位である。好ましくは、「n」は、400〜500個のエチレンオキシド単位に及ぶ。より好ましくは、「n」は、425〜475個のエチレンオキシド単位に及ぶ。さらにより好ましくは、「n」は、440〜460個のエチレンオキシド単位に及ぶ。最も好ましくは、「n」は、454個のエチレンオキシド単位である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号2)の核酸配列を有し、「n」は約450であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。本アプタマーは、ARC19499としても既知である。
特定の実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−mC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−mC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号8)の核酸配列を有し、「n」は約450であり、「3T」は逆位のデオキシチミジンであり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。本アプタマーは、ARC19882としても既知である。
最も好ましい代替実施形態において、以下の構造:
を含むアプタマーまたはその塩が提供され、式中、「n」は、約454個のエチレンオキシド単位(PEG=20kDa)であり、アプタマーは、本発明のTFPIアプタマーである。nの数が、特定の分子量を有するPEGに対してわずかに異なり得るため、「n」は、約454個のエチレンオキシド単位である。好ましくは、「n」は、400〜500個のエチレンオキシド単位に及ぶ。より好ましくは、「n」は、425〜475個のエチレンオキシド単位に及ぶ。さらにより好ましくは、「n」は、440〜460個のエチレンオキシド単位に及ぶ。最も好ましくは、「n」は、454個のエチレンオキシド単位である。
特定の代替実施形態において、アプタマーまたはその塩は、以下の構造:
を含み、式中、アプタマーは、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−dC−mG−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA(配列番号1)の核酸配列を有し、「n」は約450であり、「dN」はデオキシヌクレオチドであり、「mN」は2’−Oメチルを含有するヌクレオチドである。本アプタマーは、ARC19501としても既知である。
本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIに結合する能力を有するアプタマーも提供する。いくつかの実施形態において、アプタマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一の構造を有する。いくつかの実施形態において、アプタマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIおよび実質的に同一の構造に結合する能力を有する。本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIに結合する能力および実質的に同一のTFPIの生物学的機能を調節する能力を有するアプタマーも提供する。本発明はさらに、アプタマーを提供する。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIに結合する能力および実質的に同一の血液凝固を調節する能力を有する。本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一の構造および実質的に同一のTFPIの生物学的機能を調節する能力を有するアプタマーも提供する。本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一の構造および実質的に同一の血液凝固を調節する能力を有するアプタマーも提供する。いくつかの実施形態において、アプタマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIに結合する能力、実質的に同一の構造、および実質的に同一のTFPIの生物学的機能を調節する能力を有する。いくつかの実施形態において、アプタマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示されるアプタマーのうちのいずれか1つと実質的に同一のTFPIに結合する能力、実質的に同一の構造、および実質的に同一の血液凝固を調節する能力を有する。本明細書で使用される、実質的に同一のTFPIに結合する能力とは、親和性が、本明細書に記載の核酸配列および/またはアプタマーの親和性の10倍または100倍以内であることを意味する。所与の配列が実質的に同一のTFPIに結合する能力を有するかを決定することは、十分に当業者の技術の範囲内である。いくつかの実施形態において、TFPIに結合するアプタマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10と少なくとも70%、80%、90%、または95%同一である核酸配列を有する。
TFPIに結合するアプタマーの能力を、実施例34で説明されるように、結合競合アッセイで評価することができ、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示される本アプタマーのうちの1つを、対照アプタマーの役割をする競合相手として選択することができる。例えば、好適なアッセイは、微量の放射標識した対照アプタマーおよび5000nM、16667nM、556nM、185nM、61.7nM、20.6nM、6.86nM、2.29nM、0.76Nm、または0.25nMの非標識競合アプタマーを有する10nMヒトTFPI(American Diagnostica,Stamford, CT、カタログ番号4500PC)をインキュベートすることを含み得る。対照アプタマーを各実験に含める。各分子に関して、それぞれの競合アプタマーの濃度で結合される放射標識した対照アプタマーの割合を分析に用いた。結合される放射標識した対照アプタマーの割合を、アプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=結合される放射標識した対照アプタマーの割合、x=アプタマーの濃度、max=結合される最大の放射標識した対照アプタマー、およびint=y切片)に当てはめ、結合競合についてのIC50値を生成する。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50と比較する。実質的に同一の結合する能力を有するアプタマーは、対照アプタマーのIC50の10倍または100倍以内であるIC50を有するアプタマーおよび/または同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50よりも最大で5倍大きいIC50を有するアプタマーを含み得る。
生物学的機能を調節および/または血液凝固を調節するアプタマーの能力を、例えば、実施例34で説明されるように、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイで評価することができ、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示される本アプタマーのうちの1つを対照アプタマーとして選択することができる。例えば、好適なアッセイは、500nM、167nM、55.6nM、18.5nM、6.17nM、および2.08nMアプタマー濃度でプールされた血友病A血漿におけるCATアッセイでの評価を含み得る。対照アプタマーを各実験に含める。各分子に関して、各アプタマー濃度の内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビン値を分析に使用する。血友病A血漿のみのETPまたはピークトロンビン値を、各濃度での各分子について、アプタマーの存在下での対応する値から減算する。次いで、補正したETPおよびピーク値を、アプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+IC50/x))+int(式中、y=ETPまたはピークトロンビン、x=アプタマーの濃度、max=最大ETPまたはピークトロンビン、ならびにint=y切片)に当てはめ、ETPおよびピークトロンビン双方についてのIC50値を生成する。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50と比較する。実質的に同一の生物学的機能を調節および/または血液凝固を調節する能力を有するアプタマーは、対照アプタマーのIC50の10倍または100倍以内であるIC50を有するアプタマー、および/またはその分子のETPおよびピークトロンビンIC50のうちの1つまたは両方が同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50よりも最大5倍大きいアプタマーを含み得る。
生物学的機能を調節および/または血液凝固を調節するアプタマーの能力を、例えば、実施例34で説明されるように、第Xa因子(FXa)活性アッセイにおいてTFPIの阻害を評価することにより評価することができ、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に示される本アプタマーのうちの1つを、対照アプタマーとして選択することができる。好適なアッセイは、場合によってはアプタマーを添加して、TFPIの存在下および不在下で発色性基質を切断するFXaの能力を測定することを含み得る。例えば、2nMヒトFXaを、8nMヒトTFPIとともにインキュベートする。次いで、500μM発色性基質およびアプタマーを添加し、基質のFXa切断を、時間の関数として、405nm(A405)での吸光度により測定する。アプタマーを、500nM、125nM、31.25nM、7.81nM、1.95nM、および0.49nM濃度で試験する。対照アプタマーを各実験に含める。各アプタマー濃度に関して、A405を、時間の関数としてプロットし、各曲線の直線領域を、等式y=mx+b(式中、y=A405、x=アプタマー濃度、m=基質切断速度、およびb=y切片)に当てはめ、FXa基質切断速度を生成する。TFPIの存在下、およびアプタマーの不在下でのFXa基質切断速度を、各濃度での各分子について、TFPIおよびアプタマー双方の存在下での対応する値から減算する。次いで、補正した速度を、アプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(Vmax/(1+IC50/x))(式中、y=基質切断速度、x=アプタマーの濃度、ならびにVmax=基質切断の最大速度)に当てはめ、IC50および最大(Vmax)値を生成する。各アプタマーのIC50およびVmax値を、同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50およびVmax値と比較する。実質的に同一の生物学的機能を調節および/または血液凝固を調節する能力を有するアプタマーは、対照アプタマーのIC50の10倍または100倍以内であるIC50を有するアプタマー、および/または同一の実験で評価される対照アプタマーのIC50よりも最大5倍大きいIC50を有するアプタマー、および/または同一の実験で評価される対照アプタマーのVmax値の少なくとも80%のVmax値を有するアプタマーを含み得る。
2つ以上の核酸またはタンパク質配列の文脈において、「配列同一性」もしくは「%同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いて、または目視検査により測定される時、最大一致について比較およびアライメントした場合に、同一であるか、あるいは同一である特定の割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2つ以上の配列もしくは部分列を指す。配列比較に関して、典型的には、1つの配列は、試験配列と比較される参照配列の役割をする。比較のための配列の最適アライメントを、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch,J Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似法の検索により、コンピューターによるこれらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genettics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または目視検査(概して、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,pub.by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience(1987)を参照のこと)により行うことができる。
配列同一性の割合を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、基本的局所アライメント検索ツール(以下「BLAST」)で用いられるアルゴリズムであり、例えば、Altschul et al.,J Mol.Biol.215:403−410(1990)およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res.,15:3389−3402(1997)を参照されたく、National Center for Biotechnology Information(以下「NCBI」)から公的に入手可能である。
SELEX(商標)法、2’修飾SELEX(商標)により特定されるアプタマー、最小化アプタマー、最適化アプタマー、および化学的に置換されたアプタマーアプタマーを含むが、それらに限定されない本発明のアプタマーを、固相オリゴヌクレオチド合成技術等の当技術分野で周知の任意のオリゴヌクレオチド合成技術を用いて製造することができる(例えば、Gualtiere,F.Ed.,New Trends in Synthetic Medicinal Chemistry,Ch 9,Chemistry of Antisense Oligonucleotides,p.261−335,2000,Wiley−VCH,New Yorkを参照のこと)。固相オリゴヌクレオチド合成技術を用いたアプタマーの製造を、工業規模で行うこともできる。トリエステル合成法(例えば、Sood et al.,Nucl.Acid Res.4:2557(1977)およびHirose et al.,Tet.Lett.,28:2449(1978)を参照のこと)等の液相法ならびに組換え手段を用いて、本発明のアプタマーを製造することもできる。
加えて、多種多様の官能基を、固相合成中に導入することができる。官能性は、アミンまたはチオール等の官能基をもたらす単純なリンカーであってもよく、あるいはビオチンまたは蛍光色素等のより複雑な構築物であってもよい。典型的には、官能基リンカーまたはより複雑な部分を、ホスホルアミダイトを用いて導入するか、あるいは合成後(すなわち、固相合成後)に導入することができる。あるいは、修飾された固体支持体を利用することにより、多種多様の官能性を、オリゴヌクレオチドの3’末端で導入することができ、それにより、より多岐にわたる共役技術を可能にする。
本発明はさらに、SELEX(商標)プロセスにより同定されたアプタマーを提供し、(a)結合が起こる条件下で、核酸の混合物をTFPIと接触させるステップ、(b)未結合核酸をTFPIに結合した核酸から分配するステップ、(c)結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(d)所望する回数の周期で、結合、分配、および増幅するステップを繰り返して、TFPIに結合するアプタマーを得るステップを含む。
本発明はさらに、TFPIの1つ以上の部分に少なくともある程度結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを同定するための方法を提供し、(a)結合が起こる条件下で、核酸の混合物をTFPIの1つ以上の部分と接触させるステップ、(b)未結合核酸をTFPIに結合した核酸から分配するステップ、(c)結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(d)所望する回数の周期で、接触、分配、および増幅するステップを繰り返して、TFPIに結合するアプタマーを得るステップを含む。本方法は、全長TFPIに結合し、続いて、分配および増幅する、介在する周期または追加の周期を含み得る。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。好ましくは、成熟TFPIの1つ以上の部分(例えば、図3A)は、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される。アプタマーは、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形もしくは1つ以上の部分に対する解離定数を含む。
本発明は、TFPIの1つ以上の部分に少なくともある程度結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを同定するための方法も提供し、(a)結合が起こる条件下で、核酸の混合物を全長TFPIもしくはTFPIの1つ以上の部分と接触させるステップ、(b)未結合核酸を全長TFPIもしくはTFPIの1つ以上の部分に結合した核酸から分配するステップ、(c)全長TFPIもしくはTFPIの一部に結合するリガンドを有する結合された核酸、または全長TFPIもしくはTFPIの一部に結合するリガンドを特異的に溶出するステップ、(d)結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(e)所望する回数の周期で、接触、分配、溶出、および増幅するステップを繰り返して、TFPIの1つ以上の部分に結合するアプタマーを得るステップを含む。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。好ましくは、成熟TFPIの1つ以上の部分(例えば、図3A)は、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される。アプタマーは、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形もしくは1つ以上の部分に対する解離定数を含む。
本発明は、TFPIの1つ以上の部分に少なくともある程度結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを同定するための方法も提供し、(a)TFPI上の1つ以上のエピトープがアプタマー結合するのを阻止するTFPIリガンド(TFPIに結合するリガンド)の存在下で結合が起こる条件下で、核酸の混合物を全長TFPIまたはTFPIの1つ以上の部分と接触させるステップ、(b)未結合核酸を全長TFPIまたはTFPIの1つ以上の部分に結合した核酸から分配するステップ、(c)結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(d)所望の回数の周期で、接触、分配、および増幅するステップを繰り返して、TFPIの1つ以上の部分に結合するアプタマーを得るステップを含む。本方法の他の実施形態において、TFPI上の1つ以上の部分がアプタマー結合するのを阻止するTFPIリガンドの包括は、接触ステップ、分配ステップ、または両方のステップ中に起こり得る。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。好ましくは、成熟TFPIの1つ以上の部分(例えば、図3A)は、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される。アプタマーは、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形もしくは1つ以上の部分に対する解離定数を含む。
本発明は、TFPIの1つ以上の部分に少なくともある程度結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを同定するための方法も提供し、(a)結合が起こる条件下で、核酸の混合物を全長TFPIまたはTFPIの1つ以上の部分と接触させるステップ、(b)所望の機能的性質を有する結合された核酸を、所望の機能的性質を有さない結合された核酸から分配するステップ、(c)TFPIの部分を有する結合された核酸、または全長TFPIもしくはTFPIの部分に結合するリガンドを特異的に溶出するステップ、(d)所望の機能的性質を有する結合された核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を産出するステップ、ならびに任意で、(e)所望の回数の周期で、接触、分配、分配、および増幅するステップを繰り返して、TFPIの1つ以上の部分に結合するアプタマーを得るステップを含む。ステップ(b)およびステップ(c)は、連続して、または同時に起こり得る。例えば、TFPIアプタマーは、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。TFPIアプタマーが、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。TFPIアプタマーが、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、そのアプタマーは、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。好ましくは、成熟TFPIの1つ以上の部分(例えば、図3A)は、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される。アプタマーは、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形もしくは1つ以上の部分に対する解離定数を含む。
本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を有するヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)ポリペプチドに結合するアプタマーも提供し、アプタマーは、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害を調節し、TFPIへの結合において、配列番号4(ARC19499)、配列番号1(ARC26835)、配列番号2(ARC17480)、配列番号3(ARC19498)、配列番号5(ARC19500)、配列番号6(ARC19501)、配列番号7(ARC31301)、配列番号8(ARC18546)、配列番号9(ARC19881)、および配列番号10(ARC19882)からなる群から選択される核酸配列を含む参照アプタマーと競合する。好ましくは、参照アプタマーは、配列番号4の核酸配列(ARC19499)を含む。
本発明はさらに、配列番号11のアミノ酸配列を有するヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)ポリペプチドに結合するアプタマーを提供し、アプタマーは、アプタマーにより認識される領域の少なくとも一部が、第VIIa因子、第Xa因子、または第VIIa因子および第Xa因子の両方で結合されるTFPI領域と異なるTFPIの直線部分または等角部分に結合する。好ましくは、アプタマーは、アミノ酸残基148〜170、アミノ酸残基150〜170、アミノ酸残基155〜175、アミノ酸残基160〜180、アミノ酸残基165〜185、アミノ酸残基170〜190、アミノ酸残基175〜195、アミノ酸残基180〜200、アミノ酸残基185〜205、アミノ酸残基190〜210、アミノ酸残基195〜215、アミノ酸残基200〜220、アミノ酸残基205〜225、アミノ酸残基210〜230、アミノ酸残基215〜235、アミノ酸残基220〜240、アミノ酸残基225〜245、アミノ酸残基230〜250、アミノ酸残基235〜255、アミノ酸残基240〜260、アミノ酸残基245〜265、アミノ酸残基250〜270、アミノ酸残基255〜275、アミノ酸残基260〜276、アミノ酸残基148〜175、アミノ酸残基150〜175、アミノ酸残基150〜180、アミノ酸残基150〜185、アミノ酸残基150〜190、アミノ酸残基150〜195、アミノ酸残基150〜200、アミノ酸残基150〜205、アミノ酸残基150〜210、アミノ酸残基150〜215、アミノ酸残基150〜220、アミノ酸残基150〜225、アミノ酸残基150〜230、アミノ酸残基150〜235、アミノ酸残基150〜240、アミノ酸残基150〜245、アミノ酸残基150〜250、アミノ酸残基150〜255、アミノ酸残基150〜260、アミノ酸残基150〜265、アミノ酸残基150〜270、アミノ酸残基150〜275、アミノ酸残基150〜276、アミノ酸残基190〜240、アミノ酸残基190〜276、アミノ酸残基240〜276、アミノ酸残基242〜276、アミノ酸残基161〜181、アミノ酸残基162〜181、アミノ酸残基182〜240、アミノ酸残基182〜241、およびアミノ酸残基182〜276からなる群から選択される配列番号11のアミノ酸配列の少なくとも一部を含む1つ以上の領域に結合する。より好ましくは、アプタマーは、TFPIへの結合において、配列番号4の核酸配列(ARC19499)を含む参照アプタマーと競合する。
本発明は、配列番号4の核酸配列(ARC19499)を含むTFPIアプタマーで結合される領域と同一の、配列番号11のアミノ酸配列を有するヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)ポリペプチドの領域に結合するアプタマーも提供する。
本発明はさらに、配列番号11の1つ以上の部分を含むヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)ポリペプチドの領域に結合するアプタマーを提供し、1つ以上の部分は、アミノ酸残基148〜170、アミノ酸残基150〜170、アミノ酸残基155〜175、アミノ酸残基160〜180、アミノ酸残基165〜185、アミノ酸残基170〜190、アミノ酸残基175〜195、アミノ酸残基180〜200、アミノ酸残基185〜205、アミノ酸残基190〜210、アミノ酸残基195〜215、アミノ酸残基200〜220、アミノ酸残基205〜225、アミノ酸残基210〜230、アミノ酸残基215〜235、アミノ酸残基220〜240、アミノ酸残基225〜245、アミノ酸残基230〜250、アミノ酸残基235〜255、アミノ酸残基240〜260、アミノ酸残基245〜265、アミノ酸残基250〜270、アミノ酸残基255〜275、アミノ酸残基260〜276、アミノ酸残基148〜175、アミノ酸残基150〜175、アミノ酸残基150〜180、アミノ酸残基150〜185、アミノ酸残基150〜190、アミノ酸残基150〜195、アミノ酸残基150〜200、アミノ酸残基150〜205、アミノ酸残基150〜210、アミノ酸残基150〜215、アミノ酸残基150〜220、アミノ酸残基150〜225、アミノ酸残基150〜230、アミノ酸残基150〜235、アミノ酸残基150〜240、アミノ酸残基150〜245、アミノ酸残基150〜250、アミノ酸残基150〜255、アミノ酸残基150〜260、アミノ酸残基150〜265、アミノ酸残基150〜270、アミノ酸残基150〜275、アミノ酸残基150〜276、アミノ酸残基190〜240、アミノ酸残基190〜276、アミノ酸残基240〜276、アミノ酸残基242〜276、アミノ酸残基161〜181、アミノ酸残基162〜181、アミノ酸残基182〜240、アミノ酸残基182〜241、およびアミノ酸残基182〜276からなる群から選択される。
本発明はさらに、ヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合し、以下の性質:a)TFPIへの結合において、配列番号1〜10のうちのいずれか1つと競合すること、b)第Xa因子のTFPI阻害を阻害すること、
c)血友病血漿におけるトロンビン生成を増加させること、d)内因性テナーゼ複合体のTFPI阻害を阻害すること、e)全血および血漿においてトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))で測定される、正常な止血を回復させること、f)より短い凝固時間、より迅速な血栓形成、またはより安定した血栓の発達によって示される、全血および血漿においてトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))もしくは回転式トロンボエラストメトリー(ROTEM)で測定される、正常な凝固を回復させること、g)希釈プロトロンビン時間(dPT)、組織因子活性凝固時間(TF−ACT)、または任意の他のTFPI感受性凝固時間測定で測定される、凝固時間を減少させることのうちの1つ以上を示すアプタマーを提供する。
本発明は、ヒト組織因子経路阻害剤に結合するアプタマーも提供し、アプタマーは、TFPIへの結合において、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10からなる群から選択される参照アプタマーと競合する。
本発明はさらに、組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合するアプタマーを提供し、アプタマーは、TFPIへの結合において、直接的または間接的のいずれかで、AD4903からなる群から選択される参照抗体と競合する。
本発明は、ヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合し、配列番号4のヌクレオチド配列を有するステムループモチーフを含むアプタマーも提供し、a)ヌクレオチド1、2、3、4、6、8、11、12、13、17、20、21、22、24、28、30、および32のうちの任意の1つ以上が、2’−OMe置換から2’−デオキシ置換に修飾されてもよく、b)ヌクレオチド5、7、15、19、23、27、29、および31のうちの任意の1つ以上が、2’−OMeウラシルから2’−デオキシウラシルまたは2’−デオキシチミンのいずれかに修飾されてもよく、c)ヌクレオチド18が、2’−OMeウラシルから2’−デオキシウラシルに修飾されてもよく、かつ/またはd)ヌクレオチド14、16、および25のうちの任意の1つ以上が、2’−デオキシシトシンから2’−OMeシトシンまたは2’−フルオロシトシンのいずれかに修飾されてもよい。
本発明はさらに、ヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合し、配列番号2のヌクレオチド7〜28を含むアプタマーを提供する。
本発明はさらに、上記のアプタマーのうちのいずれか1つを投与することを含む、出血障害を治療するための方法を提供する。
本発明はさらに、組織因子経路阻害剤(TFPI)に結合するアプタマーを提供し、アプタマーは、配列番号4、1、2、3、5、6、7、8、9、および10からなる群から選択される一次核酸配列を含む。アプタマーの一次核酸配列は、任意の修飾(2’−Oメチル、2’−フルオロ修飾、3T、またはPEG等)なしで、単独でヌクレオチド(アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン)を指す。
アプタマー医薬品化学
TFPIに結合するアプタマーが特定された時点で、いくつかの技術を、特定されたアプタマー配列の結合、安定性、効力、および/または機能的特性をさらに増加させるために任意で実行することができる。
TFPIに結合するアプタマーは、所望の結合および/または機能的特性を有する最小のアプタマー配列(本明細書で「最小化構築物」または「最小化アプタマー」とも称される)を得るために切断型であり得る。これを達成するための1つの方法は、最小化構築物の設計の情報を得るために、折り畳みプログラムおよび配列分析を使用する、例えば、選択物から得られたクローン配列をアライメントし、保存モチーフおよび/または共変動を探し求めることによるものである。好適な折り畳みプログラムは、例えば、RNA構造プログラム(Mathews,D.H.;Disney,M.D.;Childs,J.L.;Schroeder,S.J.;Zuker,M.;and Turner,D.H.,”Incorporating chemical modification constraints into a dynamic programming algorithm for prediction of RNA secondary structure,” 2004.Proceedings of the National Academy of Sciences,US,101,7287−7292)を含む。生化学的プロービング実験を、アプタマー配列の5’および3’境界を決定し、最小化構築物の設計の情報を得るために実行することもできる。次いで、最小化構築物を化学的に合成し、それらが由来した非最小化配列と比較した結合および機能的特性について試験することができる。一連の5’、3’、および/または内部欠失を含有するアプタマー配列の変形を、直接化学的に合成し、それらが由来した非最小化アプタマー配列と比較した結合および/または機能的特性について試験することもできる。
さらに、ドープ再選択を用いて、単一の活性アプタマー配列または単一の最小化アプタマー配列内の配列要求性を調査することができる。ドープ再選択を、目的の単一配列に基づいて設計された合成の縮重プールを用いて実行する。縮重のレベルは、通常、野生型配列、すなわち、目的の単一配列と70%〜85%異なる。概して、中立変異を伴う配列は、ドープ再選択プロセスを介して特定され、いくつかの場合において、配列変化は、親和性の改善をもたらし得る。次いで、ドープ再選択を用いて特定された複合配列情報を使用して、最小の結合モチーフを特定し、最適化の取り組みを支援することができる。
アプタマー配列および/または最小化アプタマー配列を、アプタマー医薬品化学を用いてSELEX(商標)後に最適化し、結合親和性および/または機能的特性を増加させるか、またはあるいは、配列中のどの位置が結合活性および/または機能的特性に必須であるかを決定することができる。
アプタマー医薬品化学は、複数組の変形アプタマーが化学的に合成されるアプタマー改善技術である。これらの複数組の変形は、典型的には、単一置換基の導入の点で親アプタマーとは異なり、この置換基の位置の点で相互に異なる。次に、これらの変形を、相互および親アプタマーと比較する。特性における改善は十分に著しくあり得るため、特定の治療基準を得るのに単一置換基を含むことはそれほど必要ではない。
あるいは、一組の単一変形から収集される情報を用いて、2つ以上の置換基が同時に導入されるさらに複数の組の変形を設計することができる。一設計戦略において、単一置換基変形の全てを順位付けし、上位の4つを選択し、これらの4つの単一置換基変形の全ての可能性のある2つ1組(6種類)、3つ1組(4種類)、および4つ1組(1種類)を合成およびアッセイする。第2の設計戦略において、最良の単一置換基変形を新規の親と見なし、この最高順位の単一置換基変形を含む2つ1組の置換基変形を合成およびアッセイする。他の戦略を用いてもよく、これらの戦略を、さらに改善された変形を特定し続けながら、置換基の数が徐々に増加するように、繰り返し適用することができる。
アプタマー医薬品化学を、特に全体的というよりはむしろ、局所的な置換基の導入を調査する方法として用いることができる。アプタマーが転写により生成されるライブラリ内で発見されるため、SELEX(商標)プロセス中に導入される任意の置換基は、全体的に導入されるはずである。例えば、ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を導入することが所望される時、本結合は、全体的に置換される場合に、Aすべて(またはG、C、T、Uすべて等)でのみ導入することができる。ホスホロチオエートをいくつかのA(またはいくつかのG、C、T、U等)(局所的置換)で必要とするが、他のA(またはいくつかのG、C、T、U等)ではそれを許容することができないアプタマーを、本プロセスでは容易に発見することができない。
アプタマー医薬品化学プロセスで利用することができる置換基の種類は、それらをオリゴマー合成スキームに導入する能力によってのみ制限される。本プロセスは、ヌクレオチドのみに限定されることはない。アプタマー医薬品化学スキームは、立体的嵩高さ、疎水性、親水性、親油性、疎油性、正電荷、負電荷、中性電荷、双性イオン、分極率、ヌクレアーゼ抵抗性、立体構造の剛性、立体構造の柔軟性、タンパク質結合特性、質量等を導入する置換基を含み得る。アプタマー医薬品化学スキームは、塩基修飾、糖修飾、またはホスホジエステル結合修飾を含み得る。
治療アプタマーの脈絡において有益であると思われる置換基の種類を考慮する時、以下のカテゴリー:
(1)体内にすでに存在している置換基、例えば、2’−デオキシ、2’−リボ、2’−O−メチルヌクレオチド、イノシン、もしくは5−メチルシトシン、
(2)承認された治療の一環である置換基、例えば、2’−フルオロヌクレオチド、または
(3)上記の2つのカテゴリーのうちの1つに加水分解、分解、もしくは代謝する置換基、例えば、メチルホスホネート結合オリゴヌクレオチドもしくはホスホロチオエート結合オリゴヌクレオチド
のうちの1つ以上に分類される置換を導入することが望ましくあり得る。
本発明のアプタマーは、本明細書に記載のアプタマー医薬品化学を介して開発されるアプタマーを含む。
本発明のアプタマーの標的結合親和性を、アプタマーと標的(例えば、タンパク質)との間の一連の結合反応を介して評価することができ、微量の32P−標識アプタマーを標的の希釈系列とともに緩衝媒体中でインキュベートし、次いで、真空濾過マニホールドを用いてニトロセルロース濾過により分析する。本明細書でドットブロット結合アッセイと称される場合、本方法は、ニトロセルロース、(上から下に)ナイロンフィルター、およびゲルブロット紙から成る3層の濾過媒体を用いる。標的に結合されるアプタマーがニトロセルロースフィルター上に捕捉される一方で、非標的結合されたアプタマーは、ナイロンフィルター上に捕捉される。ゲルブロット紙を、他のフィルターの支持媒体として含む。濾過後、フィルター層を分離し、乾燥させ、蛍光面上に曝露し、蛍光画像システムを用いて定量化する。定量化された結果を用いて、アプタマー結合曲線を生成することができ、これから解離定数(KD)を算出することができる。好ましい実施形態において、結合反応を実行するために用いられる緩衝媒体は、1×ダルベッコのPBS(Ca++およびMg++を含む)+0.1mg/mL BSAである。
概して、標的の機能的活性を調節するアプタマーの能力をインビトロおよびインビボモデルを用いて評価することができ、標的の生物学的機能により異なる。いくつかの実施形態において、本発明のアプタマーは、既知の標的の生物学的機能を阻害し得る。他の実施形態において、本発明のアプタマーは、既知の標的の生物学的機能を刺激し得る。本発明のアプタマーの機能的活性を、既知のTFPIの機能を測定するよう設計されたインビトロおよびインビボモデルを用いて評価することができる。
アプタマー配列および/または最小化アプタマー配列を、アプタマー配列および/または最小化アプタマー配列の安定性を最適化するように、切断部位および修飾の部位特異的特定のための代謝特性で指向されたアプタマー医薬品化学を用いて最適化することもできる。
代謝特性で指向されたアプタマー医薬品化学は、親アプタマーを試験流体とともにインキュベートし、混合物をもたらすことを含む。次いで、混合物を分析して、インキュベート後の親アプタマーの消失速度または残存するアプタマーの量もしくは割合、特異的アプタマー代謝特性、および特異的アプタマー代謝産物配列を決定する。形成される特異的代謝産物の配列を知ることは、代謝産物の質量に基づいてヌクレアーゼ切断の部位を特定することを可能にする。代謝プロファイリングを体系的に行い、特異的アプタマー切断部位を特定した後、本方法は、アプタマー配列および/または最小化アプタマー配列の安定性を最適化するよう設計される切断部位もしくはその付近で化学的置換または修飾を導入することを含む。
一実施形態において、アプタマーは、a)親アプタマーを試験流体とともにインキュベートして混合物をもたらすこと、b)混合物を分析して親アプタマーの代謝産物を特定し、それにより、親アプタマー中の少なくとも1つのアプタマー切断部位を検出すること、ならびにc)少なくとも1つのアプタマー切断部位に近接した位置で化学的置換を導入して修飾アプタマーをもたらすことにより特定および修飾される。このことは、アプタマーの安定性、具体的には、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼへのアプタマーの安定性を強化する。
いくつかの実施形態において、試験流体は、生物学的マトリックス、具体的には、血清、血漿、脳脊髄液、細胞画分、S9画分、およびミクロソーム画分を含む組織抽出物、房水、硝子体液、ならびに組織ホモジネートのうちの1つ以上からなる群から選択される生物学的マトリックスである。いくつかの実施形態において、生物学的マトリックスは、マウス、ラット、サル、ブタ、ヒト、イヌ、テンジクネズミ、およびウサギのうちの1つ以上からなる群から選択される種由来である。いくつかの実施形態において、試験流体は、少なくとも1つの精製された酵素、具体的には、ヘビ毒ホスホジエステラーゼおよびDNAse Iからなる群から選択される少なくとも1つの精製された酵素を含む。
いくつかの実施形態において、分析するステップは、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法、具体的には、電子噴霧イオン化液体クロマトグラフィー質量分析法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、またはキャピラリー電気泳動法を用いて得られたアプタマーを分析して、少なくとも1つのアプタマー切断部位の位置を決定することを含む。いくつかの実施形態において、分析するステップは、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、キャピラリー電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)、具体的には、LC/MS/MSまたはLC/MS/MS/MS、より具体的には、エレクトロスプレーオン化LC/MS(ESI−LC/MS)、ESI−LC/MS/MS、およびESI−LC/MS/MS/MSのうちの1つ以上からなる群から選択される生物学的分析法を用いて得られたアプタマーを分析することを含む。
いくつかの実施形態において、近接した位置は、アプタマー切断部位に対して直ぐ5’側の位置、アプタマー切断部位からヌクレオチド3個以内の5’側の位置、アプタマー切断部位に対して直ぐ3’側の位置、アプタマー切断部位からヌクレオチド3個以内の3’側の位置、および切断されたヌクレオチド間連結の位置からなる群から選択される位置を含む。
いくつかの実施形態において、化学的置換は、糖位置での化学的置換、塩基位置での化学的置換、およびヌクレオチド間連結での化学的置換からなる群から選択される。より具体的には、置換は、異なるヌクレオチドへのヌクレオチド置換、ピリミジンへのプリン置換、任意のヌクレオチドへの2’−アミン置換、ウリジンへの2’−デオキシジヒドロウリジン置換、シチジンへの2’−デオキシ−5−メチルシチジン置換、プリンへの2−アミノプリン置換、リン酸ジエステルへのホスホロチオエート置換、リン酸ジエステルへのホスホロジチオエート置換、2’−OHヌクレオチド、2’−OMeヌクレオチド、もしくは2’−フルオロヌクレオチドへの2’−デオキシヌクレオチド置換、2’−OHヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチド、もしくは2’−フルオロヌクレオチドへの2’−OMeヌクレオチド置換、2’−OHヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチド、もしくは2’−OMeヌクレオチドへの2’−フルオロヌクレオチド置換、または2’−OH、2’−フルオロ、もしくは2’−デオキシヌクレオチドへの2’−O−メトキシエチルヌクレオチド置換、2’−フルオロヌクレオチドへの2’−O−メトキシエチルヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド置換、および1つ以上のPEGもしくは他のポリマーまたは他のPKもしくは分布に影響を与える構成要素の添加からなる群から選択される。
さらなる実施形態において、これらの方法の導入するステップはさらに、1つ以上の切断部位もしくは単一の切断部位またはそれらの両方で2つ以上の化学的置換を導入することを含む。
2つ以上のアプタマー切断部位が検出される別の実施形態において、これらの方法の導入するステップはさらに、インキュベートするステップ中の時間内に最初に起こるよう決定されたアプタマー切断部位の関連した近接位置で、または化学的置換の導入時に所望の性質を提供する任意の他の切断部位で少なくとも1つの化学的置換を導入することを含む。
他の実施形態において、これらの方法はさらに、試験流体における修飾アプタマーの安定性を試験するステップを含む。いくつかの実施形態において、アプタマーの安定性は、試験流体中で無傷のままである親アプタマーの割合と比較した、試験流体中で無傷のままである修飾アプタマーの割合を決定することにより評価される。いくつかの実施形態において、無傷のアプタマー割合は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、キャピラリー電気泳動法、HPLCおよびLC/MS、具体的には、LC/MS/MSまたはLC/MS/MS/MS、より具体的には、ESI−LC/MS、ESI−LC/MS/MS、およびESI−LC/MS/MS/MSのうちの1つ以上からなる群から選択される生物学的分析法により評価される。他の実施形態において、修飾アプタマーは、試験流体において親アプタマーよりも安定しており、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍安定している。
さらなる実施形態において、これらの方法はさらに、その標的に対する修飾アプタマーの解離定数またはIC50を決定することを含む。いくつかの実施形態において、化学的置換は、アプタマーのそれぞれの位置で単独で導入されるか、あるいは様々な組み合わせで導入され、それぞれの得られたアプタマーに対する解離定数またはIC50が決定される。化学的置換は、単一の化学修飾が親アプタマーの解離定数以下である修飾アプタマーに対する解離定数をもたらすように、アプタマー切断部位に近接した位置で導入される。本発明の別の実施形態において、本方法は、親アプタマーの解離定数またはIC50以下であるその標的に対する解離定数またはIC50を有する修飾アプタマーを選択することを含む。
他の実施形態において、修飾アプタマーは、生物学的活性を有する標的に結合し、本方法はさらに、修飾アプタマーの存在および不在下で標的の生物学的活性を試験することを含む。別の実施形態において、方法はさらに、親アプタマーの生物学的活性と同一であるか、あるいはそれよりも良好である生物学的活性を有する標的に結合する修飾アプタマーを選択することを含む。生物学的活性を、ELISAアッセイまたは細胞に基づいたアッセイ等の任意の関連アッセイで測定することができる。
いくつかの実施形態において、インキュベートするステップ、分析するステップ、導入するステップ、および試験するステップは、所望の安定性が得られるまで反復的に繰り返される。
本発明のアプタマーを、当業者により採用される任意の数の技術に従って、日常的に診断目的に適合させることができる。診断における利用は、インビボおよびインビトロ診断的適用の両方を含み得る。診断薬は、ユーザが特定の場所または濃度で所与の標的の存在を特定することを可能にすることのみ必要とする。単に標的を伴って結合対を形成する能力は、診断目的に肯定的なシグナルを引き起こすのに十分であり得る。当業者は、当技術分野で既知の手順により任意のアプタマーを適合させ、そのようなリガンドの存在を追跡するために標識タグを組み込むこともできるであろう。そのようなタグを、いくつかの診断手順において用いる場合もある。
免疫刺激モチーフを有するアプタマー
本発明は、TFPIに結合し、その生物学的機能を調節するアプタマーを提供する。
脊椎動物の免疫系による細菌DNAの認識は、特定の配列状況における非メチル化CGジヌクレオチドの認識(「CpGモチーフ」)に基づく。そのようなモチーフを認識する1つの受容体は、はっきり異なる微生物成分を認識することで先天性免疫応答に関与するToll様の受容体のファミリーメンバー(約10個のメンバー)であるToll様の受容体9(「TLR9」)である。TLR9は、配列特異的様式で非メチル化オリゴデオキシヌクレオチド(「ODN」)CpG配列により活性化される。CpGモチーフの認識は、先天性免疫応答および最終的には後天性免疫応答につながる防御機構を引き起こす。例えば、マウスにおけるTLR9の活性化は、抗原提示細胞の活性化、MHCクラスIおよびII分子の上方調節、ならびに重要な共刺激分子とIL−12およびIL−23を含むサイトカインの発現を引き起こす。この活性化は、TH1サイトカインIFN−ガンマの強固な上方調節を含むB細胞およびT細胞応答を、直接的および間接的の両方で強化する。集合的に、CpG配列への応答は、感染病からの保護、ワクチンへの改善された免疫応答、喘息に対する効果的な応答、および改善された抗体依存性細胞媒介性細胞毒性につながる。したがって、CpG ODNは、感染病からの保護を提供し、免疫アジュバントまたは癌治療薬(単剤療法またはmAbもしくは他の治療との併用)として機能することができ、喘息およびアレルギー反応を低下させることができる。
CpGモチーフの多種多様の異なるクラスが特定されており、それぞれ、認識時に、異なるカスケードの事象、サイトカインおよび他の分子の放出、ならびにある特定の細胞の活性化をもたらす。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、CpG Motifs in Bacterial DNA and Their Immune Feects,Annu.Rev.Immunol.2002,20:709−760を参照されたい。さらなる免疫刺激モチーフが、以下の米国特許:米国特許第6,207,646号、米国特許第6,239,116号、米国特許第6,429,199号、米国特許第6,214,806号、米国特許第6,653,292号、米国特許第6,426,334号、米国特許第6,514,948号、および米国特許第6,498,148号に開示されており、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。これらのCpGまたは他の免疫刺激モチーフのうちのいずれかを、アプタマーに組み込むことができる。アプタマーの選択は、治療される疾患または障害によって決まる。好ましい免疫刺激モチーフは、「r」がプリンを示し、「y」がピリミジンを示し、「X」が任意のヌクレオチドを示す、以下の通り(5’から3’、左から右に示される):AACGTTCGAG(配列番号12)、AACGTT、ACGT、rCGy、rrCGyy、XCGX、XXCGXX、およびX1X2CGY1Y2であり、式中、X1はGまたはAであり、X2Cではなく、Y1はGではなく、Y2は好ましくはTである。
CpGモチーフがCpGモチーフに結合することで既知の標的以外の特定の標的(「非CpG標的」)に結合するアプタマーに組み込まれ、結合時に免疫応答を刺激する例において、CpGは、好ましくは、アプタマーの非必須領域に配置される。アプタマーの非必須領域を、部位特異的変異原性、欠失分析、および/または置換分析により特定することができる。しかしながら、非CpG標的に結合するアプタマーの能力を著しく妨害しない任意の位置を用いることができる。アプタマー配列内に埋め込まれることに加えて、CpGモチーフを、5’末端および3’末端のいずれかまたはそれら両方に付加するか、またはさもなければアプタマーに結合することができる。非CpG標的に結合するアプタマーの能力が著しく妨害されない限り、結合の任意の位置または手段を用いることができる。
本明細書で使用される「免疫応答の刺激」は、(1)特定の応答の誘導(例えば、Th1応答の誘導)またはある特定の分子の生成、あるいは(2)特定の応答の阻害もしくは抑制(例えば、Th2応答の阻害もしくは抑制)またはある特定の分子の阻害もしくは抑制のいずれかを意味し得る。
1つ以上のCpGまたは他の免疫刺激配列を有するアプタマーを含む本発明のアプタマーを、例えば、本明細書に記載のSELEX(商標)プロセスを用いた多種多様の戦略により特定または生成することができる。組み込まれる免疫刺激配列は、DNA、RNA、置換DNAもしくはRNA、および/または置換もしくは非置換DNA/RNAの組み合わせであり得る。概して、戦略を2つの群に分類することができる。戦略の両方の群に関して、CpGモチーフは、a)抑制された免疫応答が疾患の発症に関連する状況(すなわち、AIDS等の免疫不全症)に対抗するよう免疫応答を刺激するため、およびb)特定の標的もしくは細胞型(すなわち、癌細胞)に対する刺激された免疫応答に焦点を合わせるため、あるいは免疫応答をTH2もしくはTH17状態から離れてTH1状態に向かうよう偏らせるために含まれる(すなわち、アレルギー状態に対抗するためにIgE等の抗アレルギー標的に対するアプタマー中のCpGモチーフを含む)。
第1群において、戦略は、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列ならびに標的への結合部位の両方を含むアプタマーを特定もしくは生成することを対象とし、標的(以下「非CpG標的」)は、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列を認識することで既知の標的以外の標的である。本発明のいくつかの実施形態において、非CpG標的は、TFPI標的である。この群の第1の戦略は、CpGモチーフが固定領域または固定領域の一部としてプールのそれぞれのメンバーに組み込まれたオリゴヌクレオチドプールを用いて(例えば、いくつかの実施形態において、プールメンバーのランダム化領域がその中に組み込まれたCpGモチーフを有する固定領域を含む)、SELEX(商標)を実行して特定の非CpG標的、好ましくは標的に対するアプタマーを得ること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第2の戦略は、SELEX(商標)を実行して特定の非CpG標的を得ること、および選択後に、CpGモチーフを5’および/または3’末端に付加するか、あるいはCpGモチーフをアプタマーの領域、好ましくは非必須領域に組み込むことを含む。この群の第3の戦略は、SELEX(商標)を実行して特定の非CpG標的に対するアプタマーを得ることであり、プールの合成中に、プールのそれぞれのメンバーのランダム化領域がCpGモチーフ中で濃縮されるように1つ以上のヌクレオチド付加ステップにおいて様々なヌクレオチドのモル比を偏らせること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第4の戦略は、SELEX(商標)を実行して特定の非CpG標的に対するアプタマーを得ること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第5の戦略は、SELEX(商標)を実行して特定の非CpG標的に対するアプタマーを得ること、および結合時に免疫応答を刺激するがCpGモチーフを含まないアプタマーを特定することを含む。
第2群において、戦略は、CpGモチーフ(例えば、TLR9または他のtoll様の受容体)の受容体により結合され、結合時に免疫応答を刺激するCpGモチーフおよび/または他の配列を含むアプタマーを特定もしくは生成することを対象とする。この群の第1の戦略は、CpGモチーフが固定領域または固定領域の一部としてプールのそれぞれのメンバーに組み込まれたオリゴヌクレオチドプールを用いて(例えば、いくつかの実施形態において、プールメンバーのランダム化領域がその中に組み込まれたCpGモチーフを有する固定領域を含む)、SELEX(商標)を実行して、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、結合時に免疫応答を刺激することで既知の標的に対するアプタマーを得ること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第2の戦略は、SELEX(商標)を実行して、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、結合時に免疫応答を刺激することで既知の標的に対するアプタマーを得ること、およびCpGモチーフを5’および/または3’末端に付加するか、あるいはCpGモチーフをアプタマーの領域、好ましくは非必須領域に組み込むことを含む。この群の第3の戦略は、SELEX(商標)を実行して、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、結合時に免疫応答を刺激することで既知の標的に対するアプタマーを得ることであり、プールの合成中に、プールのそれぞれのメンバーのランダム化領域がCpGモチーフ中で濃縮されるように1つ以上のヌクレオチド付加ステップにおいて様々なヌクレオチドのモル比を偏らせること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第4の戦略は、SELEX(商標)を実行して、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、結合時に免疫応答を刺激することで既知の標的に対するアプタマーを得ること、およびCpGモチーフを含むアプタマーを特定することを含む。この群の第5の戦略は、SELEX(商標)を実行してCpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合することで既知の標的に対するアプタマーを得ること、および結合時に免疫応答を刺激するがCpGモチーフを含まないアプタマーを特定することを含む。
薬物動態の調節およびアプタマー治療の体内分布
アプタマーを含む全てのオリゴヌクレオチドに基づく治療の薬物動態学的性質を所望の薬学的適用に一致させることが重要である。アプタマーは、器官および組織を標的化するよう分布され、所望の投与計画と一致した期間、体内に留まる(未修飾)ことが可能であるはずである。
本発明は、アプタマー組成物の薬物動態、具体的には、アプタマー薬物動態を調整する能力に影響を及ぼす物質および方法を提供する。アプタマー薬物動態の調整性(すなわち、調節する能力)は、アプタマーへの修飾部分(例えばPEGポリマー)の共役および/あるいは修飾ヌクレオチド(例えば、2’−フルオロもしくは2’−O−メチル)または修飾ヌクレオチド間連結の組み込みを介して達成され、アプタマーの化学組成物を変化させる。アプタマー薬物動態を調整する能力は、既存の治療適用の改善において、またはあるいは新規の治療適用の改善において用いられる。例えば、いくつかの治療適用において、例えば、迅速な薬物クリアランスまたは薬物遮断が所望される場合もある抗新生物または緊急の医療環境では、抗新生物又は緊急の医療環境において、循環中のアプタマーの滞留時間を減少させることが望ましい。あるいは、他の治療適用において、例えば、治療薬の体循環が所望される維持療法では、アプタマーの滞留時間を増加させることが望ましい。
加えて、アプタマー薬物動態の調整性は、対象におけるその治療目的に一致させるよう、アプタマーの体内動態、例えば、吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)を補正するために用いられる。アプタマーの薬物動態の調整性は、アプタマーの吸収の様式および程度、体の流体および組織にわたるアプタマーの分布、アプタマーおよびその代謝産物の連続的な代謝的変換、ならびに最終的にアプタマーおよびその代謝産物の排泄に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかの治療適用において、特定の種類の組織または特定の器官(もしくは一連の器官)を標的化する目的でアプタマー治療薬の体内分布を変化させること、あるいは特定の細胞型に進入する傾向を増加させることが望ましくあり得る。これらの適用において、アプタマー治療薬は、特定の組織および/または器官内で優先的に分布し、そこに蓄積して、治療効果を引き起こす。他の治療適用において、アプタマー治療薬が罹患組織中に優先的に蓄積するように、細胞のマーカーまたは所与の疾患、細胞傷害、もしくは他の異常な病状に関連する症状を示す組織を標的化することが望ましくあり得る。例えば、アプタマー治療薬のPEG化(例えば、20kDa PEGポリマーもしくは他のポリマーまたは共役構成要素でのPEG化)は、PEG化アプタマー治療薬が炎症組織中に優先的に蓄積するように、炎症組織を標的化するために用いられる。
アプタマー治療薬の薬物動態学的特性(例えば、修飾ヌクレオチド等のアプタマー共役体または変化した化学的性質を有するアプタマー)を決定するために、正常な対象、例えば、試験動物もしくはヒト、あるいは罹患対象、例えば、凝固亢進もしくは凝固低下の動物モデル等のTFPI特異的動物モデルまたは凝固欠乏を有するヒトにおいて、多種多様のパラメーターが試験される。そのようなパラメーターには、例えば、分布または排泄半減期(t1/2)、血漿クリアランス(CL)、分布容積(Vss)、濃度時間曲線下面積濃度(AUC)、観察された最大血清または血漿濃度(Cmax)、およびアプタマー組成物の平均滞留時間(MRT)が含まれる。本明細書で使用される「AUC」という用語は、アプタマー投与後のアプタマー治療薬の時間に対する血漿濃度曲線下面積を指す。AUC値は、アプタマーの曝露を推定するために用いられ、例えば、皮下投与等の血管外経路での投与後にアプタマーの生物学的利用能を決定するためにも用いられる。生物学的利用能は、静脈内投与後に得られたAUCに対する皮下投与後に得られたAUCの比率を求め、それらを各投与後に用いられる用量に基準化すること(すなわち、同一の用量または基準化された用量で静脈内投与により投与された同一のアプタマーと比較した、皮下投与後に投与されたアプタマーのパーセント比)により決定される。CL値は、体循環からの親アプタマー治療薬の除去の測定である。分布容積(Vd)は、その血漿濃度に対する一時期の体内のアプタマーの量に関係する用語である。Vdは、どの程度薬物が血漿から除去され、組織および/または器官に分布されるかを決定するために用いられる。より大きなVdは、広範な分布、大規模な組織結合、または広範な分布および大規模な組織結合の両方を意味する。3つの基本的な分布容積:(i)濃度時間曲線の戻し外挿から得られたゼロ時間での分布の見かけ容積または最初の容積、(ii)分布が完了した時点でVdssに近似させて計算される容積であり、面積量が排泄動態によって決まる、容積、および(iii)分布が完了した時点で計算される容積がある。パラメーターが排泄動態とは無関係であるため、理想的には測定されるはずであるこのパラメーターはVdssである。アプタマーのVssが血液量よりも大きい場合、アプタマーが体循環の外側に分布され、組織または器官中で見つけられる可能性が高いことを示唆する。薬力学的パラメーターを、薬物特性を評価するために用いることもできる。
アプタマー治療薬(例えば、修飾ヌクレオチド等のアプタマー共役体もしくは変化した化学的性質を有するアプタマー)の分布を決定するために、正常な動物または罹患した標的特異性動物モデルに投与される放射標識したアプタマーを用いた組織分布の研究または量的全身オートラジオグラフィーが用いられる。特定の部位における放射標識したアプタマーの蓄積を定量化することができる。
安定化アプタマー等の本明細書に記載のアプタマーの薬物動態および体内分布を、小分子、ペプチド、もしくはポリマー等を含むが、それらに限定されない調節部分にアプタマーを共役させることにより、または修飾ヌクレオチドをアプタマーに組み込むことにより、制御された様式で調節することができる。修飾部分の共役および/またはヌクレオチド化学組成物の改変は、循環中のアプタマー滞留時間ならびに組織および細胞での分布の基本的な態様を変化させる。
ヌクレアーゼによる代謝に加えて、オリゴヌクレオチド治療薬は、腎臓濾過による排泄を受けやすい。そのため、静脈内投与されるヌクレアーゼに耐性を示すオリゴヌクレオチドは、典型的には、濾過を阻止することができない場合、30分未満のインビボ半減期を示す。これを、血流から組織内への急速な分布を促進すること、またはオリゴヌクレオチドの見かけ分子量を糸球体の有効なカットオフサイズを超えて増大させることのいずれかにより達成することができる。以下に説明されるように、PEGポリマーへの小分子量治療薬の共役(PEG化)は、循環中のアプタマーの滞留時間を劇的に延長し、それにより、投薬頻度を減少させ、血管標的に対する有効性を増大させることができる。
修飾ヌクレオチドを、アプタマーの血漿クリアランスを調節するために用いることもできる。例えば、インビトロおよびインビボで高度のヌクレアーゼ耐性を示すため現世代のアプタマーの典型である、例えば、2’−フルオロ、2’−OMe、および/またはホスホロチオエート安定化化学的性質を組み込む非共役アプタマーは、未修飾アプタマーと比較した時に、組織、主に肝臓および腎臓内への急速な分布を示す。
PAG誘導体化核酸
上で説明され、図11に示されるように、高分子量の非免疫原性ポリマーでの核酸の誘導体化は、それらをより有効および/または安全な治療薬にする、核酸の薬物動態学的性質および薬力学的性質を変化させる生成能を有する。活性における好ましい変化は、ヌクレアーゼによる分解に対する耐性の増加、腎臓濾過の低下、免疫系に対する曝露の減少、および体内の治療薬の分布の変化を含み得る。
本発明のアプタマー組成物を、1つ以上のポリアルキレングリコール(「PAG」)部分で誘導体化することができる。本発明で用いられる典型的なポリマーは、ポリエチレンオキシド(「PEO」)としても既知のポリエチレングリコール(「PEG」)およびポリプロピレングリコール(ポリイソプロピレングリコールを含む)を含む。さらに、異なるアルキレンオキシドのランダムまたはブロックコポリマーを多数の適用において用いることができる。一般的な形態において、PEG等のポリアルキレングリコールは、各末端で終了するヒドロキシル基を有する線状ポリマー、すなわち、HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OHである。このポリマー、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシルポリエチレングリコールをHO−PEG−OHで表すこともでき、−PEG−の記号は、以下の構造単位:−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−を表すことが理解され、式中、nは、典型的には4〜10,000に及ぶ。
治療指標に好適なPAGポリマーは、典型的には、水および多数の有機溶媒溶解性、毒性の欠如、ならびに免疫原性の欠如の性質を有する。PAGの一用途は、ポリマーを不溶性分子に共有結合し、得られたPAG−分子「共役体」を可溶性にすることである。例えば、非水溶性薬物パクリタキセルは、PEGにカップリングする時に水溶性になることが示された。Greenwald,et al.,J.Org.Chem.,60:331−336(1995)。PAG共役体は、溶解性および安定性を強化するのみならず、体内の分子の血液循環半減期ならびに後に分布を延長するために用いられることが多い。
本発明のアプタマーに共役されるPAG誘導体化化合物は、典型的には、5〜80kDaの大きさであるが、任意の大きさを用いることができ、選択はアプタマーおよび適用によって決まる。本発明の他のPAG誘導体化化合物は、10〜80kDaの大きさである。本発明のさらに他のPAG誘導体化化合物は、10〜60kDaの大きさである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物に誘導体化されるPAG部分は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100kDaの大きさの範囲の分子量を有するPEG部分である。いくつかの実施形態において、PEGは線状PEGである一方で、他の実施形態において、PEGは分岐PEGである。さらに他の実施形態において、PEGは、図6に示されるように、40kDaの分岐PEGである。いくつかの実施形態において、40kDaの分岐PEGは、図7に示されるように、アプタマーの5’末端に結合される。
高分子量のPEG(超10kDa)の生成は困難であり、非能率的であり、高価であり得る。高分子量のPEG核酸共役体を合成するために、より高い分子量の活性化PEGが生成される。そのような分子を生成するための方法は、線状活性化PEGの形成、またはそこで2つ以上のPEGが活性化基を担持する中核に結合される分岐活性化PEGの形成を含む。これらのより高い分子量のPEG分子の末端部分、すなわち、比較的非反応性ヒドロキシル(−OH)部分を、化合物上の反応部位での他の化合物へのPEGのうちの1つ以上の結合のために活性化するか、あるいは官能基に変換することができる。分岐活性化PEGは、3つ以上の終点を有し、2つ以上の終点が活性化された場合、そのようなより高い分子量の活性化PEG分子は、本明細書で多活性化PEGと称される。いくつかの場合において、分岐PEG分子中の全ての終点が活性化されるわけではない。分岐PEG分子の任意の2つの終点が活性化される場合、そのようなPEG分子は、二活性化PEGと称される。分岐PEG分子中の1つの末端のみが活性化される場合、そのようなPEG分子は、単活性化と称される。他の場合において、線状PEG分子は、二官能性であり、「PEGジオール」と称されることもある。PEG分子の末端部分は、化合物上の反応部位での他の化合物へのPEGの結合のために活性化するか、あるいは官能基に変換することができる、比較的非反応性ヒドロキシル部分、−OH基である。そのような活性化されたPEGジオールは、本明細書で同一二活性化PEGと称される。分子は、多種多様の当技術分野で認識される技術のいずれかを用いて生成される。先に説明された方法のうちの1つを用いてPEGを活性化することに加えて、PEG分子の末端アルコール官能性の1つまたは両方を、核酸への異なる種類の共役を可能にするよう改変することができる。例えば、末端アルコール官能性のうちの1つをアミンまたはチオールに変換することは、尿素およびチオウレタン共役体へのアクセスを可能にする。他の官能性は、例えば、マレイミドおよびアルデヒドを含む。
多数の適用において、PEG分子が単官能性である(または単活性化される)ように、1つの末端上のPEG分子を本質的に非反応性部分でキャッピングすることが望ましい。概して、活性化PEGに対して複数の反応部位を示すタンパク質治療の場合、同一二官能性活性化PEGは、大規模な架橋結合をもたらし、官能性に乏しい凝集体を産出する。単活性化PEGを生成するために、PEGジオール分子の末端上の1つのヒドロキシル部分は、典型的には、非反応性メトキシ末端部分、−OCH3で置換される。この実施形態において、ポリマーを、MeO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OHで表すことができ、一般的に「mPEG」と称され、式中、nは、典型的には4〜10,000に及ぶ。
他方のPEG分子のキャッピングされていない末端は、典型的には、表面上の反応部位またはタンパク質、ペプチド、もしくはオリゴヌクレオチド等の分子での結合のために活性化することができる反応末端部分に変換される。
いくつかの事例において、異なる二官能性PEG試薬を生成することが望ましく、PEG分子の末端がN−ヒドロキシスクシンイミドまたはニトロフェニルカーボネート等の反応基を有する一方で、反対側の末端は、マレイミドまたは他の活性化基を含有する。これらの実施形態において、2つの異なる官能性、例えば、アミンおよびチオールを、異なる時期に活性化PEG試薬に共役することができる。
医薬組成物
本発明は、TFPIに結合するアプタマーを含む医薬組成物も含む。いくつかの実施形態において、組成物は、単独で、もしくは1つ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤との組み合わせで、治療有効量の薬理学的に活性なTFPIアプタマーまたはその薬学的に許容される塩を含む。
組成物は、1つ以上のTFPIアプタマーを含み得る。例えば、組成物は、ARC19499を含み得る。あるいは、組成物は、ARC19882を含み得る。あるいは、組成物は、ARC19499および別のTFPIアプタマーを含み得る。組成物が同一のアプタマーであるか、あるいは2つの異なるアプタマーであり得る少なくとも2つのアプタマーを含む実施形態において、アプタマーを、任意でともに繋留するか、またはさもなければカップリングすることができる。好ましくは、組成物は、ARC19499単独、または別のTFPIアプタマーと組み合わせたARC19499のいずれかを含む。あるいは、組成物は、別の作用物質と組み合わせたTFPIアプタマーを含む。好ましくは、組成物は、別の作用物質と組み合わせたARC19499を含む。
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、使用条件下で非毒性である対イオンで調製され、安定した製剤と互換性がある活性化合物の塩形態を指す。TFPIアプタマーの薬学的に許容される塩の例として、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、および酒石酸塩が挙げられる。
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される媒体」、または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、製剤の他の成分と互換性があり、そのレシピエントに対して有害ではないことを意味する。薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知である。薬学的に許容される担体の例を、例えば、Goodman and Gillmans,The Pharmacological Basis of Therapeutics,latest editionで見出すことができる。
医薬組成物は、概して、本治療における治療有効量の活性構成要素、例えば、薬学的に許容される担体または媒体中に溶解もしくは分散される本発明のTFPIアプタマーを含む。好ましい薬学的に許容される担体の例として、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、およびグルコース溶液が挙げられるが、それらに限定されない。しかしながら、他の薬学的に許容される担体も使用し得ることが企図される。他の薬学的に許容される媒体または担体の例として、任意および全ての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張遅延剤、および吸収遅延剤等が挙げられる。組成物中で用いることができる薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等の緩衝物質、飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム等の塩または電解質、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれるが、それらに限定されない。薬学的に活性な物質へのそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。
医薬組成物は、製剤のpH、オスモル濃度、粘度、透明度、色、無菌性、安定性、分解または吸収率を改変または維持するための保存剤、安定剤、湿潤剤、もしくは乳化剤等の薬学的に許容される賦形剤、溶液促進剤、塩、または緩衝液も含有し得る。固体組成物に関して、賦形剤は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、サッカロース、炭酸マグネシウム等を含む。
医薬組成物は、従来の混合法、造粒法、コーティング法に従って調製され、典型的には、活性構成要素の0.1%〜99.9%、例えば、0.1%〜75%、0.1%〜50%、0.1%〜25%、0.1%〜10%、0.1〜5%、好ましくは1%〜50%を含有する。
医薬組成物の製剤は当業者に既知である。典型的には、そのような組成物を、液体溶液もしくは懸濁液のいずれかの注入物質、注入前の液体中の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態、経口投与用の錠剤または他の固体、徐放性製剤用の徐放性カプセル、あるいは点眼薬、クリーム、ローション、軟膏、吸入薬等を含む現在使用されている任意の他の形態に製剤化することができる。本組成物を、例えば、担体としてポリアルキレングリコールを用いて、坐薬に製剤化することができる。いくつかの実施形態において、坐薬は、脂肪乳剤または懸濁液から調製される。手術野における特定の領域を治療するための外科医、医師、または医療従事者による生理食塩水ベースの洗浄液等の無菌製剤の使用は、特に有用であり得る。
本組成物を、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ、および乳剤等の経口剤形に製剤化することができる。例えば、錠剤またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態での経口投与に関して、活性薬物成分を、エタノール、グリセロール、水等の薬学的に許容される経口用非毒性担体と合わせることができる。さらに、所望されるか、あるいは必要である場合、好適な結合剤、滑剤、崩壊剤、および着色剤を混合物に組み込むこともできる。好適な結合剤には、デンプン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、グルコースもしくはベータラクトース等の天然糖、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、もしくはアルギン酸ナトリウム等の天然および合成粘剤、ポリエチレングリコール、ワックス等が含まれる。これらの剤形に使用される滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール等が含まれる。崩壊薬には、制限なく、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物等が含まれる。希釈剤には、例えば、ラクトース、ブドウ糖、サッカロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、および/またはグリシンが含まれる。
医薬組成物を、小単層ベシクル、大単層ベシクル、および多層ベシクル等のリポソーム送達システムにおいて製剤化することもできる。リポソームを、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンを含有する多種多様のリン脂質から形成することができる。いくつかの実施形態において、脂質成分の膜は、米国特許第5,262,564号に説明されるように、薬物の水溶液で水和されて、薬物をカプセル化する脂質層を形成する。例えば、本明細書に記載のアプタマーを、当技術分野で既知の方法を用いて構築される脂溶性化合物または高分子量の非免疫原性化合物との複合体として得ることができる。さらに、リポソームは、細胞毒性薬を内部で標的化および運搬して細胞死滅を媒介するために、それらの表面上にアプタマーを担持し得る。核酸に関連する複合体の例は、米国特許第6,011,020号に提供される。
本発明の組成物を、標的化可能な薬物担体として可溶性ポリマーとカップリングさせることができる。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを含み得る。さらに、本発明の組成物を、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーにカップリングさせることができる。
本発明の組成物を、医療デバイスとの併用で使用することもできる。
投与される活性成分の量および組成物の容量は、治療される宿主動物によって決まる。投与に必要とされる正確な量の活性化合物は、施術者の判断によって決まり、それぞれの個人に特有である。
活性化合物を分散するのに必要とされる最小容量の組成物が、典型的には利用される。好適な投与計画を変えることもできるが、初めに化合物を投与し、結果を監視し、次いでさらに制御された用量をさらなる間隔で与えるのが特徴であろう。
投与
本組成物を、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、およびより好ましくはヒトに投与することができる。「患者」および「対象」という用語は、本出願を通して同義に使用され、これらの用語は、ヒトおよび動物対象の両方を含む。
TFPIアプタマーがアンタゴニストアプタマーである実施形態において、本明細書で提供されるTFPIアプタマー組成物は、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害を阻害するか、軽減するか、阻止するか、またはさもなければ調節するのに有効な量で対象に投与される。TFPIアプタマー組成物は、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害を、完全にもしくは部分的に阻害するか、軽減するか、阻止するか、またはさもなければ調節し得る。TFPIアプタマーは、少なくとも1〜2%の因子補充と同等である血友病血漿に対して、そのアプタマーが、トロンビン生成の増加(例えば、ピークトロンビン、内因性トロンビンポテンシャル、または遅延時間)を引き起こす時に、TFPI活性を阻害するか、またはさもなければ調節すると見なされる。
本組成物を、多数の投与経路で投与することができる。そのような投与経路には、経口経路、経鼻的、経膣的、または経直腸的等の局所経路、ならびに静脈、皮下、皮内、筋肉内、関節内、および髄腔内投与等の非経口経路が含まれるが、それらに限定されない。好適な投与経路を、静脈内投与後の皮下投与等の組み合わせで用いることもできる。しかしながら、投与経路は、担当医により決定される。好ましくは、製剤は、静脈投与される。最も好ましくは、製剤は、皮下投与される。
経口剤形を、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ、または乳剤として投与することができる。
局所剤形には、クリーム、軟膏、ローション、経鼻媒体用のエアゾールスプレーおよびゲル、吸入薬、または経皮貼布が含まれる。
非経口剤形には、予充填シリンジ、ならびに前投与に再構成される溶液および凍結乾燥粉末が含まれる。
本発明のアプタマーを利用する用法用量は、患者の種類、種、年齢、体重、性別、および病状を含む多種多様の要因、治療される状態の重症度、投与経路、患者の腎機能および肝機能、ならびに採用される特定のアプタマーまたはその塩に従って選択される。当業医師または獣医は、状態の進行を予防するか、それに対抗するか、あるいは停止させるのに必要とされる薬物の有効量を容易に決定および処方することができる。
医薬組成物を、様々な治療計画を用いて投与することができる。例えば、本組成物を、患者が出血症状に罹患していない時等に、維持療法として、規定された用量で規定された期間投与することができる。あるいは、本組成物を、患者が出血症状に罹患している時等に、要望に応じて、すなわち、必要に応じて投与することができる。さらなる代替実施形態において、本組成物を、維持療法および要望に応じた療法の組み合わせで投与することができる。そのような実施形態において、組成物を、出血が起こるまで、維持療法として規定された用量で規定された期間投与することができ、その場合、組成物の投与量を出血が止まるまで必要に応じて増加させ、その時点で、組成物の投与量を以前の維持レベルに減少させて戻す。別のそのような実施形態において、組成物を、出血が起こるまで、維持療法として規定された用量で規定された期間投与することができ、その場合、別の出血障害の療法(第VIII因子等)を出血が止まるまで患者に投与し、その時点で、他の出血障害療法が打ち切られる。この全期間中、組成物を維持療法として投与し続ける。さらに別のそのような実施形態において、組成物を、出血が起こるまで、維持療法として規定された用量で規定された期間投与することができ、その場合、組成物の投与量を減少させ、別の出血障害療法(第VIII因子等)を出血が止まるまで患者に投与し、その時点で、組成物の投与量を以前の維持レベルまで増加させて戻し、他の出血障害療法が打ち切られる。別のそのような実施形態において、別の出血障害療法(第VIII因子等)を、出血が起こるまで、維持療法として規定された用量で規定された期間を投与することができ、その場合、組成物を出血が止まるまで患者に投与し、その時点で、組成物での治療が打ち切られる。この全期間中、他の出血障害療法を維持療法として投与し続ける。さらに別のそのような実施形態において、別の出血障害療法(FVIII等)を、出血が起こるまで、維持療法として規定された用量で規定された期間投与することができ、その場合、他の出血障害療法の投与量を減少させ、組成物を出血が止まるまで患者に投与し、その時点で、他の出血障害療法の投与量を以前の維持レベルに増加させて戻し、組成物での療法が打ち切られる。
適応症
本組成物は、TFPIによって媒介される血液凝固の阻害を伴う出血障害の病状の治療を含む、組織因子経路阻害剤(TFPI)によって媒介される病状を治療するか、予防するか、その進行を遅延させるか、あるいは改善するために使用される。治療されるか、予防されるか、遅延されるか、あるいは改善される病状は、血友病A(第VIII因子欠乏症)、血友病B(第IX因子欠乏症)、および血友病C(第XI因子欠乏症)を含む、軽度もしくは中程度もしくは重度の先天性または後天性凝固因子欠乏症、阻害剤を有する血友病AもしくはB、他の因子の欠乏症(V、VII、X、XIII、プロトロンビン、フィブリノーゲン)、α2プラスミン阻害剤の欠乏、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1の欠乏、複数の因子欠乏、機能的因子異常(例えば、プロトロンビン異常)、足首、肘、および膝を含むが、それらに限定されない関節出血(関節血症)、他の位置(筋肉、胃腸、口等)における特発性出血、出血性卒中、頭蓋内出血、外傷に関連する裂傷および他の出血、急性外傷性凝固障害、癌(例えば、急性前骨髄球性白血病)に関連する凝固障害、フォンビルブランド病、播種性血管内凝固、肝臓疾患、月経過多、血小板減少、ならびに抗凝固剤の使用に関連する出血(例えば、ビタミンK拮抗薬、FXa拮抗薬等)からなる群から選択される。
医薬組成物を、医学的手技の前、間、および/または後に投与することもできる。例えば、医薬組成物を、歯科処置、関節形成術(例えば、人工股関節置換手術)を含むが、それらに限定されない整形外科、外科的または放射性滑膜切除術(RSV)、大手術、静脈穿刺、輸血、および切断術により引き起こされる出血に関連した予防法および/または治療等の医学的手技(前、間、および/もしくは後)と併せて投与することができる。
治療上の論理的根拠
作用機序に関する理論に束縛されることを望むことなく、以下の治療上の論理的根拠が、ほんの一例として提供される。
組織因子経路阻害剤(TFPI)の阻害剤は、(外因経路としても既知の)組織因子/第VIIa因子経路を介してトロンビンの生成を高めることが予想されるであろう。正常な個人において、外因経路の活性化は、トロンビン生成応答を刺激して開始させ、少量の活性化トロンビンをもたらす。開始後、この経路は、TFPIの阻害作用により急速に非活性化される。その後のトロンビン生成応答の増殖は、第VIII因子(FVIII)および第IX因子(FIX)を含む内在経路のトロンビン媒介性フィードバック活性化によって決まる。増殖は、十分に多くの量のトロンビンを生成し、安定した血餅の形成を触媒するのに必要である。第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)のいずれかを欠乏する個人は、低下した増殖応答を有する。重度の欠乏(1%未満)を有する個人は、内在経路を介してこれらのタンパク質に依存しているトロンビンを生成することができない。この状態は、十分なトロンビンを生成し、適切な血小板活性化、フィブリン生成、および安定した血栓形成を有することができなくする。しかしながら、これらの個人は、無傷の外因経路を有する。TFPIの阻害は、開始応答の継続を許容し、増殖が外因経路を介して起こることを可能にし、十分なトロンビン生成を許容して、欠乏した内在経路を部分的または完全に置換し、ゆえに出血危険性を軽減し得る。出血増加の危険性も有するこれらの因子を軽度または中程度に欠乏する個人は、TFPI阻害により引き起こされる血液凝固の増加から恩恵を受ける場合もある。加えて、外傷等の他の理由で出血している正常な内因および外因経路を有する患者において、TFPI阻害は、出血を制御し得る止血刺激を提供することができる。他の凝固因子の欠乏、血小板欠乏、および出血に関連する血管障害を有する患者は、TFPIを阻害するであろう治療から恩恵を受ける場合もある。
併用療法
本発明の一実施形態は、凝固カスケード調節分子の他の凝固促進因子または他の阻害剤等の出血性疾患もしくは障害の1つ以上の他の治療との併用で使用され、るTFPIアプタマーもしくはその塩または医薬組成物を含む。医薬組成物を、活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤(APCC)、第VIII因子インヒビターバイパス複合体製剤(FEIBA(登録商標))、組換え第VIIa因子(例えば、NovoSeven(登録商標))、組換え第VIII因子(Advate(登録商標)、Kogenate(登録商標)、Recombinate(登録商標)、Helixate(登録商標)、ReFacto(登録商標))、血漿由来第VIII因子(Humate P(登録商標)、Hemofil M(登録商標))、組換え第IX因子(BeneFIX(登録商標))、血漿由来第IX因子(Bebulin VH(登録商標)、Konyne(登録商標)、Mononine(登録商標))、寒冷沈降物、酢酸デスモプレシン(DDAVP)、イプシロンアミノカプロン酸、またはトラネキサム酸等の別の薬物との併用で投与することもできる。あるいは、医薬組成物を、血液もしくは血液製剤の輸血、血漿フェレーシス、高用量の置換因子での免疫寛容導入療法、免疫抑制剤(例えば、プレドニゾン、リツキシマブ)での免疫寛容療法、または疼痛治療等の別の療法との併用で投与することができる。概して、既知の治療薬の現在利用可能な剤形およびそのような組み合わせで用いる非薬物療法の使用が好適である。
「併用療法」(または「共治療」)は、TFPIアプタマー、およびこれらの治療薬もしくは治療の共作用から有益な効果を提供するよう意図される特定の治療計画の一環として少なくとも第2の作用物質または治療の投与を含む。併用療法の有益な効果には、治療薬または治療の併用に由来する薬物動態学的もしくは薬力学的共作用が含まれるが、それらに限定されない。併用療法におけるこれらの治療薬または治療の投与は、典型的には、規定された期間(選択される併用に応じて、通常、数分、数時間、数日間、または数週間)にわたって実行される。
併用療法は、本発明の併用を付随的および任意にもたらす別個の単剤治療計画の一環として、これらの治療薬または治療のうちの2つ以上の投与を包含するよう意図される場合もあるが、一般的には意図されない。併用療法は、順次様式で治療薬または治療の投与を包含するよう意図される。すなわち、これらの治療薬もしくは治療の投与、または治療薬もしくは治療のうちの少なくとも2つの投与と同様に、それぞれの治療薬もしくは治療は、実質的に同時に起こる様式で異なる時間に投与される。実質上同時投与を、例えば、対象に、各治療薬の一定した比率を有する単回注入薬、または治療薬のそれぞれの複数回の単回注入薬を投与することにより達成することができる。
各治療薬または治療の順次投与または実質上同時投与を、局所経路、経口経路、静脈経路、皮下経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通る直接吸収を含むが、それらに限定されない任意の適切な経路により達成することができる。治療薬もしくは治療を、同一の経路または異なる経路で投与することができる。例えば、選択される併用療法の第1の治療薬または治療を、注入により投与することができる一方で、併用療法の他の治療薬または治療を、皮下投与することができる。あるいは、例えば、全ての治療薬または治療を、皮下投与することができるか、あるいは全ての治療薬または治療を、注入により投与することができる。治療薬または治療が投与される順序は、別途留意されない限り重要ではない。
併用療法は、他の生物学的に活性な成分とのさらなる併用で、上述の治療薬または治療の投与を包含することもできる。併用療法が非薬物療法を含む場合、治療薬および非薬物療法の併用の共作用から有益な効果が得られる限り、その非薬物療法を、任意の好適な時間で行うことができる。例えば、適切な場合において、非薬物療法が、恐らく数日あるいは数週間、治療薬の投与から時間的に除去される場合にも依然として有益な効果が得られる。
拮抗薬
本発明はさらに、本明細書で「TFPI拮抗薬」と称される、TFPIアプタマーの影響を逆転させる作用物質に関する。本作用物質は、タンパク質、抗体、小分子有機化合物、またはオリゴヌクレオチド等の任意の種類の分子であり得る。
好ましくは、TFPI拮抗薬は、10〜15個のヌクレオチド長の核酸である。しかしながら、拮抗薬の長さには制限はない。
好ましくは、TFPI拮抗薬は、TFPIアプタマーに結合する。TFPI拮抗薬は、全長TFPIアプタマーまたはその画分に結合し得る。そのような結合は、イオン相互作用、共有結合、相補的塩基対合、水素結合、または任意の他の種類の化学結合を介し得る。好ましくは、そのような結合は、相補的塩基対合を介する。理論に束縛されることを望むことなく、TFPI拮抗薬は、TFPIアプタマーとのハイブリッド形成により作用し、それにより、TFPIアプタマーの二次および三次構造を破壊し、TFPIへのTFPIアプタマーの結合を予防する。TFPIへのTFPIアプタマーの結合を予防することにより、結合相互作用の効果、例えば、治療効果、および/または分子経路の刺激もしくは阻害を調節することができ、結合相互作用および関連する影響の程度を制御する手段を提供する。
TFPI拮抗薬は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはリボ核酸およびデオキシリボ核酸の混合物であり得る。好ましくは、TFPI拮抗薬は、単鎖である。好ましくは、TFPI拮抗薬は、全ての2’−Oメチル残基および3’−逆位のデオキシチミジンを含む。しかしながら、TFPI拮抗薬は、アプタマー上で見出すことができる任意の他の3’もしくは5’修飾とともに、修飾されたか、あるいは修飾されていない任意のヌクレオチドを含有し得る。
TFPI拮抗薬の例として、ARC23085である配列番号16、ARC23087である配列番号15、ARC23088である配列番号17、およびARC23089である配列番号18が挙げられるが、それらに限定されない。
好ましくは、TFPI拮抗薬は、以下に示される構造:
mA−mG−mC−mC−mA−mA−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mU−mC−mC(配列番号15)を含む核酸であり、式中、「mN」は、(当技術分野において2’−OMe、2’−メトキシ、または2’−OCH3含有残基としても既知の)2’−Oメチル含有残基である。
あるいは、TFPI拮抗薬は、以下に示される構造:
mU−mA−mU−mA−mU−mA−mC−mG−mC−mA−mC−mC−mU−mA−mA(配列番号16)を含む核酸であり、式中、「mN」は、2’−Oメチル含有残基である。
あるいは、TFPI拮抗薬は、以下に示される構造:
mC−mU−mA−mA−mC−mG−mA−mG−mC−mC(配列番号17)を含む核酸であり、式中、「mN」は、2’−Oメチル含有残基である。
あるいは、TFPI拮抗薬は、以下に示される構造:
mC−mA−mC−mC−mU−mA−mA−mC−mG−mA−mG−mC−mC−mA−mA(配列番号18)を含む核酸であり、式中、「mN」は、2’−Oメチル含有残基である。
ARC23085の化学名は、2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリルである。
ARC23087の化学名は、2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリルである。
ARC23088の化学名は、2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリルである。
ARC23089の化学名は、2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−ウラシリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−グアニリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−シチジリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリル−(3’→5’)−2’−OMe−アデニリルである。
本発明は、配列番号15、16、17、または18のうちのいずれか1つに対して70%以上の同一性を有するTFPI拮抗薬も含む。例えば、TFPI拮抗薬は、配列番号15、16、17、または18のうちの1つに対して70、75、80、85、90、95、または100%の同一性を有し得る。
本発明は、TFPIアプタマーに結合するTFPI拮抗薬を含有する医薬組成物も含む。いくつかの実施形態において、本組成物は、単独で、または1つ以上の薬学的に許容される担体との組み合わせで、有効量の薬理学的に活性TFPI拮抗薬またはその薬学的に許容される塩を含む。本組成物は、1つ以上の異なるTFPI拮抗薬を含有し得る。TFPI拮抗薬は、TFPIアプタマーの治療効果を逆転させるのに有効な量で対象に投与される。本組成物を、例えば、局所的、経鼻的、または非経口的等の多数の投与経路により投与することができる。TFPI拮抗薬の用法用量は、患者の種類、種、年齢、体重、性別、および病状を含む多種多様の要因、治療される状態の重症度、投与経路、患者の腎機能および肝機能、患者を治療するのに用いられるTFPIアプタマーの量、ならびに採用される特定のTFPI拮抗薬またはその塩によって決まる。当業医師または獣医は、TFPIアプタマーの治療効果を逆転させるのに必要とされるTFPI拮抗薬の有効量を容易に決定および処方することができる。
本発明はさらに、TFPIアプタマーの止血活性を中和させる作用物質を含む。そのような作用物質は、TFPIに結合し、そのTFPIアプタマーによる阻害を予防し得るか、あるいは作用物質は、TFPIアプタマーの止血活性に対応する様式で、下流の凝固因子(例えば、FXaまたはトロンビン)を阻害し得る。そのような作用物質は、未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン等の抗凝固剤を含み得るが、それらに限定されない。Wesselschmidtによる研究(Wesselschmidt et al.,“Structural requirements for tissue factor pathway inhibitor interactions with factor Xa and heparin”,Blood Coagul Fibrinolysis,vol.4,pp.661−669(1993))は、ヘパリンが、K3およびC末端ドメインとの相互作用を介してTFPIに結合し、TFPIに結合するTFPIアプタマーの能力を直接的または間接的のいずれかで妨害し得ることを示す。さらに、同一の研究において、ヘパリン結合は、TFPIのFXa阻害活性を促進し、TFPIアプタマーの止血活性にさらに対抗する傾向があることが観察された。最終的に、ヘパリンは、抗トロンビン依存的機構を介してトロンビン、Fxa、および他の凝固因子を阻害することで周知である。これらの活性は、トロンビン生成および血栓形成を刺激するTFPIアプタマーの能力を中和させる場合もある。TFPIアプタマーの止血効果が血栓症を引き起こす事象において、これらの作用物質のうちの1つを投与して、その進行を停止させることができる。当業医師もしくは獣医は、TFPIアプタマーの止血効果を逆転させるのに必要とされる抗凝固または他の中和剤の有効量を容易に決定および処方することができる。
キット
医薬組成物を、キット内に包装することもできる。本キットは、TFPIアプタマーの投与に関する取扱説明書とともに組成物を含む。本キットは、以下:シリンジもしくは予充填黒シリンジ、点滴用袋もしくは瓶、バイアル、異なる剤形の同一のTFPIアプタマー、または別のTFPIアプタマーのうちの1つ以上も含み得る。例えば、本キットは、本発明のTFPIアプタマーの静脈内投与製剤および皮下投与製剤の両方を含み得る。あるいは、本キットは、凍結乾燥したTFPIアプタマーおよび生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水の点滴用袋を含み得る。本キットの形態は、別個の成分が異なる剤形で投与される(すなわち、非経口および経口)はずである時、または異なる投与間隔で投与される時に、特に有益である。本キットはさらに、拮抗薬の投与に関する取扱説明書とともにTFPI拮抗薬を含み得る。本キットは、TFPI拮抗薬の静脈内投与製剤および皮下投与製剤の両方を含有し得る。あるいは、本キットは、凍結乾燥したTFPI拮抗薬および溶液の点滴用袋を含有し得る。
好ましくは、キットは、5±3℃で保存される。本キットは、室温で保存するか、あるいは−20℃で凍結することができる。
TFPIの調節
本発明は、分子がTFPIの1つ以上の部分に結合するか、またはさもなければそれと相互作用する、TFPIを調節するための方法も提供し、少なくとも一部は、K3/C末端領域等のTFPIのK1およびK2ドメインの外側である。分子は、例えば、小分子有機化合物、抗体、タンパク質もしくはペプチド、核酸、siRNA、アプタマー、またはそれらの任意の組み合わせ等の任意の種類の分子であり得る。好ましくは、分子は、小分子有機化合物である。より好ましくは、分子は、抗体である。最も好ましくは、分子は、アプタマーである。例えば、分子は、TFPIの直線部分または等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用し得る。分子が、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基の連続的ストレッチに結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、その分子は、TFPIの直線部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。分子が、ポリペプチド鎖の二次および/または三次構造を折り畳むことにより、またはそれらの他の態様によりまとめられる非連続的なアミノ酸残基に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する時に、その分子は、TFPIの等角部分に結合するか、あるいはさもなければそれと相互作用する。好ましくは、分子は、アミノ酸148〜170、アミノ酸150〜170、アミノ酸155〜175、アミノ酸160〜180、アミノ酸165〜185、アミノ酸170〜190、アミノ酸175〜195、アミノ酸180〜200、アミノ酸185〜205、アミノ酸190〜210、アミノ酸195〜215、アミノ酸200〜220、アミノ酸205〜225、アミノ酸210〜230、アミノ酸215〜235、アミノ酸220〜240、アミノ酸225〜245、アミノ酸230〜250、アミノ酸235〜255、アミノ酸240〜260、アミノ酸245〜265、アミノ酸250〜270、アミノ酸255〜275、アミノ酸260〜276、アミノ酸148〜175、アミノ酸150〜175、アミノ酸150〜180、アミノ酸150〜185、アミノ酸150〜190、アミノ酸150〜195、アミノ酸150〜200、アミノ酸150〜205、アミノ酸150〜210、アミノ酸150〜215、アミノ酸150〜220、アミノ酸150〜225、アミノ酸150〜230、アミノ酸150〜235、アミノ酸150〜240、アミノ酸150〜245、アミノ酸150〜250、アミノ酸150〜255、アミノ酸150〜260、アミノ酸150〜265、アミノ酸150〜270、アミノ酸150〜275、アミノ酸150〜276、アミノ酸190〜240、アミノ酸190〜276、アミノ酸240〜276、アミノ酸242〜276、アミノ酸161〜181、アミノ酸162〜181、アミノ酸182〜240、アミノ酸182〜241、およびアミノ酸182〜276からなる群から選択される成熟TFPI(例えば、図3A)の1つ以上の部分に少なくともある程度結合する。分子は、好ましくは、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、好ましくは50nM以下、好ましくは25nM以下、好ましくは10nM以下、好ましくは5nM以下、より好ましくは3nM以下、さらにより好ましくは1nM以下、および最も好ましくは500pM以下のヒトTFPIまたはその変形に対する解離定数を含む。
その精神および範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであるように、本発明において多数の修正および変形が行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、ほんの一例として提供されており、本発明は、そのような特許請求の範囲が付与される同等物の全範囲に加えて、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限される。
本明細書で引用される全ての出版物および特許文書は、そのような出版物および文書それぞれが、参照により本明細書に組み込まれることを具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。出版物および特許文書の引用は、いずれも関連のある先行技術であると認めるものではなく、その内容または日付に関して承認するものでもない。本発明を書面による記述で説明してきたが、当業者は、本発明を多種多様の実施形態において実践することができ、前述の説明および以下の実施例は、図解目的であって、以下に続く特許請求の範囲を制限しないことを認識する。
実施例において、以下のTFPIアプタマーのうちの1つ以上を用いて、様々な実験を行った。ARC26835は、配列番号1に説明されるアプタマーである。ARC17480は、配列番号2に説明されるアプタマーである。ARC19498は、配列番号3に説明されるアプタマーである。ARC19499は、配列番号4に説明されるアプタマーである。ARC19500は、配列番号5に説明されるアプタマーである。ARC19501は、配列番号6に説明されるアプタマーである。ARC26835は、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC19500、およびARC19501のぞれぞれのコアアプタマー配列である。ARC31301は、配列番号7に説明されるアプタマーである。ARC18546は、配列番号8に説明されるアプタマーである。ARC19881は、配列番号9に説明されるアプタマーである。ARC19882は、配列番号10に説明されるアプタマーである。ARC31301は、ARC18546、ARC19881、およびARC19882のぞれぞれのコアアプタマー配列である。
実施例1
本実施例は、どのようにARC19499が生成されたかを実証する。
インビトロ選択実験を、それぞれ、dC、mA、mG、およびmU残基を含有した修飾オリゴヌクレオチド分子のプール、ならびにAmerican Diagnostica(カタログ番号4500PC、Stamford,CT)から入手した組換えヒト組織因子経路阻害剤(TFPI)を用いて実行した。TFPIに結合するための選択の反復ラウンド、続いて増幅ラウンドを実行して、ARC14943、ARC19499への84個のヌクレオチド長の前駆物質を生成した。ARC14943を、コンピューターによる折り畳み予測プログラムおよび系統的欠失を用いて84個のヌクレオチドから32個のヌクレオチド(ARC26835)に最小化した。ARC26835への3’−逆位のデオキシチミジン残基の付加は、ARC17480、33個のヌクレオチド長分子をもたらした。ARC17480への5’−ヘキシルアミン基の添加は、ARC19498をもたらした。次に、この分子を、5’−ヘキシルアミン基を介して40kDa PEG部分でPEG化して、ARC19499をもたらした。
実施例2
本実施例は、ARC17480が、競合tRNAの不在および存在下の両方で、ドットブロット結合実験においてインビトロでTFPIに密接に結合することを実証する。
放射標識したARC17480を、異なる濃度のTFPIとともにインキュベートした。次に、TFPIに結合したARC17480を、ニトロセルロースフィルター膜上に捕捉した。添加した全体の放射標識したARC17480に対するニトロセルロースフィルターに結合した放射標識したARC17480の比率を、タンパク質濃度の関数としての結合したARC17480の割合として決定し、プロットした。ARC17480/TFPI結合プロットの例が図12Aに示される。データを、単相および二相アプタマータンパク質結合のモデルに当てはめた。この実験を11回繰り返し、単相および二相結合モデルの両方を用いてKDを各データセットについて決定した。単相適合を用いて決定された平均KDは4.0±1.5nMであり、二相適合を用いて決定された平均KDは1.7±0.7nMであった。それら自体への適合およびそれら自体の適合は、いずれの結合モデルも明確に支持しないが、データへの単相適合および二相適合の両方ともに、TFPIへのARC17480の相互作用の異なるモデルを想定する。データに当てはめるために使用したモデルにかかわらず、TFPIへのARC17480の結合について決定されたKDは、本質的に同一であった。単相適用および二相適用の両方から決定されたKDを考慮に入れた場合、TFPIに結合するARC17480の平均KDは、2.9±1.6nMであった。この平均KDは、ARC17480とTFPIとの間の結合相互作用の様式を想定せず、したがって、アプタマーとタンパク質との間の結合相互作用の最もロバストな決定である。ARC17480がtRNAの存在下でヒトTFPIへの結合を維持し、このことは、結合が特異的であったことを示唆する。TFPIに対するARC17480の結合親和性の変化は、42±12nMの平均KDを有する0.1mg/mL tRNAの存在下で観察された。tRNAの存在および不在下でのTFPIに結合するARC17480のプロット例が図12Bに示される。
実施例3
本実施例は、非標識ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882が、TFPIへの結合において、放射標識したARC17480と競合することを実証する。本実施例は、これらのアプタマーの全てがARC17480で観察された親和性に類似したTFPIの親和性を有することも実証する。
各アプタマーを、結合競合アッセイにおいて、TFPIへの結合について評価した。これらの実験に関して、ヒトTFPI(American Diagnostica,Stamford,CT、カタログ番号4500PC)を、微量の放射標識したARC17480および異なる濃度の非標識競合アプタマー(ARC19499を除く全てのアプタマーにおいては5000nM〜0.25nM、ARC19499においては1000nM〜0.05nM)とともにインキュベートした。図13AのARC17480およびARC19499での実験において、60nM TFPIを用いた。全ての他の実験(図13B〜E)において、10nM TFPIを用いた。ARC17480を、対照として全ての実験で、競合相手として含めた。各アプタマーについて、各競合アプタマー濃度で結合した放射標識したARC17480の割合を分析に使用した。結合した放射標識したARC17480の割合をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=結合した放射標識したARC17480の割合、x=アプタマーの濃度、max=最大の結合した放射標識したARC17480、およびint=y切片)に当てはめて、結合競合についてのIC50値を生成した。図13A〜Eは、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882との競合実験のグラフを示す。これらの分子全てが、TFPIへの結合について、放射標識したARC17480と同様に競合した。これらの実験は、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882の全てが、全長TFPIに同様に結合することを実証する。
実施例4
本実施例は、TFPIアプタマーがTFPIに特異的に結合することを実証する。
本実験において、ARC17480を、凝固カスケードにおける鍵分子、すなわち、その阻害がTFPI阻害と同様の特性を示すであろう分子、または構造もしくは機能に関してTFPIと同様である分子である多種多様のタンパク質への結合について試験した。調査したタンパク質は、TFPI、第Va因子(FVa)、第XII因子(FXII)、抗トロンビン(ATIII)、ヘパリン共同因子II(HCII)、アルファトロンビン、プロトロンビン、第VIIa因子(FVIIa)、第IXa因子(FIXa)、第Xa因子(FXa)、第XIa因子(FXIa)、カリクレイン、プラスミン、アルファ−1抗トリプシン(セルピン−A1)、TFPI−2、およびGST−TFPI−2であった。最大0.5−1μMの各タンパク質の存在下で、ARC17480は、試験した配列関連または機構関連のタンパク質に対して有意な親和性を有さなかった(図14A〜D)。ARC17480は、タンパク質のより高い濃度であるFXIIへの結合を示した。この結合が0.1mg/mL tRNAの存在下で除去され(図14D)、このことは、結合が恐らく非特異的であったことを示唆する。
これらの実験は、TFPIアプタマーにより媒介される凝固への任意の影響が、恐らくTFPIの結合および阻害を指示するはずであることを示唆する。
実施例5
本実施例は、ARC19499がプレートベースの結合アッセイにおいてTFPIに密接に結合することを実証する。本実施例は、ARC19498が、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてのARC19499とのその競合により、TFPIに密接に結合することも実証する。
TFPIに対するARC19499の結合親和性を評価するために、組換えヒトTFPIタンパク質(0.5mg/mL)を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中に希釈して15μg/mLの最終濃度にし、100μLを96ウェルのMaxisorbプレートに添加し、4℃で終夜インキュベートした。次に、TFPI溶液を除去し、その後、プレートを室温にて200μL洗浄緩衝液(DPBS+0.05%Tween20)で3回洗浄した。次に、プレートを、室温で30分間、DPBS中の10mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)の200μLでブロックした。次に、BSAブロッキング溶液を除去し、プレートを再度200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、DPBS中の0.1%BSAで連続して希釈したARC19499をプレートに添加し、室温で3時間インキュベートした。200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した後、0.5μg/mLウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics)の100μLをプレートに添加し、室温で60分間インキュベートした。次に、抗PEG抗体溶液を除去し、プレートを上述のように洗浄した。次いで、アッセイ緩衝液中で1000倍に希釈された100μLの抗ウサギIgG−HRP二次抗体(Cell Signaling Technology)を各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。200μLの洗浄緩衝液で3回洗浄した後、100μLの停止液(2N H2SO4)を各ウェルに添加して反応を停止させる前に、100μLのTMB溶液(Pierce)を各ウェルに添加し、2分間インキュベートした。次に、アッセイプレートを、Victor3V 1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)を用いて450nmで読み取った。5つの異なる結合実験は、ARC19499と組換えTFPIとの間の結合親和性がプレートベースの結合アッセイにおいて30nMであることを示唆した。これらの実験のうちの1つのデータが図15に示される。
TFPIタンパク質に対するARC19498の親和性を評価するために、ARC19499:TFPI結合競合アッセイを設定した。組換えヒトTFPIタンパク質(0.5mg/mL)をDPBS中に希釈して15μg/mLの最終濃度にし、100μLを96ウェルのMaxisorbプレートに添加し、4℃で終夜インキュベートした。次に、TFPI溶液を除去し、その後、プレートを室温にて200μL洗浄緩衝液(DPBS+0.05%Tween20)で3回洗浄した。次に、プレートを、室温で30分間、DPBS中の10mg/mL BSAの200μLでブロックした。次に、BSAブロッキング溶液を除去し、プレートを再度200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した。ARC19498を連続して希釈し、0.1%BSA中のDPBS中の20nM ARC19499と異なる濃度で混合したARC19498:ARC19499混合物をプレートに添加し、室温で3時間インキュベートした。200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した後、0.5μg/mLウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics)の100μLをプレートに添加し、室温で60分間インキュベートした。次に、抗PEG抗体溶液を除去し、プレートを上述のように洗浄した。次いで、アッセイ緩衝液中で1000倍に希釈した100μL抗ウサギIgG−HRP二次抗体(Cell Signaling Technology)を各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した後、100μL停止液を各ウェルに添加して反応を停止させる前に、TMB溶液(Pierce)の100μLを各ウェルに添加し、2分間インキュベートした。次に、アッセイプレートを、Victor3V 1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)を用いて450nmで読み取った。ARC19499結合の阻害の割合を、0%阻害として20nM ARC19499中の0nM ARC19498、ならびに100%阻害として0nM ARC19498および0nM ARC19499を用いて計算した。IC50を、Graphpad Prism 4ソフトウェアを用いて、4−パラメーターロジスティックに基づいて計算した。図16は、本実験の2つの複製物を示し、それら両方ともに、本アッセイにおいて、ARC19499とのARC19498の競合についての20nMのIC50をもたらした。これらの結果は、ARC19498が、プレートベースの結合アッセイにおいて、ARC19499で観察された結合親和性に類似したTFPIに対する結合親和性を有することを示唆する。
実施例6
本実施例は、ARC17480が結合するTFPI上の領域を試験する。ドットブロット結合実験を、放射標識したARC17480および様々な切断型TFPIタンパク質で実行し、結合競合実験を、放射標識したARC17480、TFPI、およびヘパリンまたは低分子量ヘパリン(LMWH)で実行した。結合実験に用いたタンパク質は、以下の表1に記載される。
微量の放射標識したARC17480を、異なる濃度(500nM〜0.7nM)の全長TFPIおよびTFPI−Hisとともにインキュベートした(表1)。図17Aは、ARC17480が、全長TFPIへのその結合と比較して、TFPI−Hisへの結合を減少させたことを示す。本実験は、TFPI−His内で行方不明であるが、全長TFPI内では存在するTFPIのC末端20個のアミノ酸が、TFPIへのARC17480の結合に寄与することを示唆した。
微量の放射標識したARC17480を、異なる濃度の切断型TFPI−K1K2(500nM−0.008nM)およびK3−C末端ドメインタンパク質(500nM〜0.7nM)とともにインキュベートした(表1)。図17Bは、ARC17480が、切断型TFPI−K1K2への検出可能な結合を有さず、タンパク質のより高い濃度でのみ検出可能であったK3−C末端ドメインタンパク質への非常に弱い結合を有することを示す。微量の放射標識したARC17480を、異なる濃度のC末端ペプチド(10μM〜0.17nM)とともにインキュベートした(表1)。次に、ニュートラアビジン(約100nMモノマー)を結合溶液に添加して、ニトロセルロースフィルター上でのアプタマー:ペプチド複合体の捕捉を支援した。ニトロセルロースフィルター上で捕捉された放射標識したアプタマーの量を定量化し、放射標識したアプタマーの総量と比較して、図17Bに示される結合曲線を生成した。ARC17480は、ペプチドの高い濃度でC末端ペプチドへの弱い結合を示した。
微量の放射標識したARC17480を、0.1mg/mL未分画ヘパリンの不在または存在下で、異なる濃度の全長TFPI(500nM−0.008nM)とともにインキュベートした(図18A)。本結合実験でのヘパリンの包含は、TFPIへのARC17480結合を完全に無効にした。別個の実験において、微量の放射標識したARC17480を、12.5nM全長TFPIおよび未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン(LMWH)の異なる濃度(5μM〜0.25nM)とともにインキュベートした。図18Bは、未分画ヘパリンおよびLMWHの両方ともに、濃度依存的様式で、TFPIへの結合についてARC17480と競合したことを示す。ヘパリンは、LMWHよりも有効な競合相手であった。TFPIのK3−C末端領域は、グリコカリックス結合に関与しており、これは、ヘパリンおよびLMWHが結合されるはずのタンパク質の領域である。これらの実験は、TFPIのK3−C末端領域は、TFPIへのARC17480結合にとって重要であることを示唆する。
総合すると、これらの実験は、C末端ドメインが恐らくTFPIへのARC17480結合に関与することを実証する。これらの実験は、TFPI上のARC17480結合領域が、タンパク質のK1〜K2領域内またはタンパク質のK3−C末端領域内に完全に含有されないことも実証する。ARC17480結合に必要とされる領域は、恐らくタンパク質の2つ以上のドメインに及ぶ。
実施例7
本実施例は、ARC17480およびARC19499が結合するTFPI上の領域を試験する。これらの実験について、TFPI上の異なる領域に結合する抗体を用いて、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてARC19499と競合させ、ドットブロット結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてARC17480と競合させた。競合に使用した抗体は、以下の表2に示される。
本実施例は、抗体AD4903(American Diagnostica、カタログ番号4903)が、プレートベースの結合アッセイにおいてTFPIへのARC19499の結合について競合し、ドットブロット結合アッセイにおいてTFPIへのARC17480の結合について競合したことを実証する(図19Aおよび図20C)。抗体AD4903を、K1ドメインアミノ酸残基22〜87を含有するTFPIの画分に対して産生させ、この領域のある場所でTFPIに結合させる(表2)。本実施例は、TFPIのK2ドメインとK3ドメインとの間の介在領域の一部であるアミノ酸残基148〜162を含有したペプチドに対して産生させた抗体ACJK−4が、ドットブロット結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてARC17480と弱々しく競合したことも実証する(図20B)。本実施例は、TFPIのC末端ドメイン一部である、それぞれアミノ酸残基261〜276および245〜262を含有したペプチドに対して産生させた抗体ACJK−1およびACJK−2が、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIへのARC19499結合について部分的に競合したことも実証する(図19B)。本実施例はさらに、TFPIの異なる領域に結合するいくつかの他の抗体が、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてARC19499と競合せず、ドットブロットベースの結合アッセイにおいて、TFPIへの結合についてARC17480と競合しなかったことを実証する。競合実験で使用した抗体は、以下の表2に示される。
プレートベースの結合実験について、100μLダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中のTFPI(American Diagnostics、カタログ番号4900PC)の400ng/ウェルを用いて、96ウェルのMaxisorbプレートを4℃で被覆した。次に、TFPI溶液を除去し、その後、プレートを室温にて200μL洗浄緩衝液(DPBS+0.05%Tween20)で3回洗浄した。次に、プレートを、室温で30分間、DPBS中の10mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)の200μLでブロックした。次に、BSAブロッキング溶液を除去し、プレートを200μL洗浄緩衝液で3回洗浄した。競合抗体を連続して希釈し、25nM ARC19499の最終濃度のARC19499およびDPBS中の0.1%BSAと混合し、次に、混合物をアッセイプレートに添加し、室温で3時間インキュベートした。ARC19498を同様にARC19499と混合し、抗体競合アッセイで陽性対照として使用した。次に、ウェルを上述のように洗浄した。競合のための抗体AD4903、AD4904、および7035−A01を用いた実験について、アッセイ緩衝液中の0.5μg/mLウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics、カタログ番号2061−1)の100μLをプレートに添加し、室温で3時間インキュベートした。次に、抗PEG抗体溶液を除去し、プレートを上述のように洗浄し、その後、アッセイ緩衝液中の1:1000で希釈した抗ウサギIgG−HRP二次抗体(Cell Signaling Technology、カタログ番号7074)の100μLを各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。二次抗体溶液を除去し、プレートを上述のように洗浄した。抗体ACJK1−ACJK5について、アッセイ緩衝液中の100μLビオチン化ウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics、カタログ番号2173)の0.5μg/mLをアッセイプレートに添加し、室温で3時間インキュベートし、その後、上述のように洗浄した。次に、抗体を除去し、プレートを上述のように洗浄し、その後、DPBS中で200倍に希釈されたR&D Systems(Minneapolis,MN)のストレプトアビジン−HRP(4800−30−06)の100μLを添加し、室温でさらに1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジン−HRPを除去し、プレートを上述のように洗浄した。次に、TMB溶液(Pierce、番号34028)の100μLを各ウェルに添加し、2分間インキュベートし、その後、100μL停止液(2N H2SO4)を各ウェルに添加して反応を停止させた。次に、アッセイプレートを、Victor3V 1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)を用いて、450nmで読み取った。結合阻害の割合を、0%阻害として25nM ARC19499中の0nM抗体、100%阻害として0nM抗体および0nM ARC19499を用いて計算した。IC50を、Prism 4 Graphpadソフトウェアを用いて、4−パラメーターロジスティックに基づいて計算した。
図19Aに示されるように、TFPIのK1ドメイン内で結合する抗体AD4903は、プレートベースの結合アッセイにおいて、組換えTFPIへの結合についてARC19499と競合した。TFPIのC末端領域内で結合する抗体ACJK−1およびACJK−2は、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIに結合するARC19499について部分的に競合した(図19B)。抗体AD4904、ACJK−3、ACJK−4、ACJK−5、および7035−A01は、プレートベースの結合アッセイにおいて、TFPIに結合するARC19499についての競合を示さなかった(図19AおよびB)。これらの実験は、TFPIのK1領域およびC末端領域が、TFPIに結合するARC19499に関与していることを示唆する。
表2の抗体も、ドットブロットベースの競合結合アッセイにおいて試験した。これらの実験において、微量の放射標識したARC17480を、場合によっては抗体を添加して、10nM組換えTFPIとともにインキュベートした。抗体を、1000nM、333nM、111nM、37.0nM、12.4nM、4.12nM、1.37nM、0.46nM、0.15nM、および0.051nMで試験した。ARC17480を、対照として全ての実験で、競合相手として含めた。各分子に関して、各競合アプタマー濃度で結合した放射標識したARC17480の割合を分析に使用した。結合した放射標識したARC17480の割合をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=結合した放射標識したARC17480の割合、x=アプタマーの濃度、max=最大の結合した放射標識したARC17480、およびint=y切片)に当てはめて、結合競合についてのIC50値を生成した。図20は、ACJK−1、ACJK−2、ACJK−3、ACJK−4、ACJK−5、AD4903、およびAD4904で実行した結合競合実験を示す。これらの実験は、抗体AD4903が、ドットブロット競合アッセイにおいて、TFPIに結合するARC17480について競合したことを実証する(図20C)。ACJK−4が、本アッセイにおいて、結合について部分的に競合した(図20B)一方で、ACJK−1、ACJK−2、ACJK−3、ACJK−5、およびAD4904は、結合についてのARC17480との有意な競合を示さなかった(図20A〜C)。これらの実験は、TFPIのK1領域およびK2〜K3介在領域が、TFPIに結合するARC17480に関与していることを示唆する。
総合すると、これらの実験は、TFPIのK1領域が、恐らくTFPIに結合するARC17480/ARC19499に関与していることを実証する。これらの実験は、TFPIのC末端およびK2〜K3介在領域がアプタマー結合に関与し得ることも示唆する。TFPIの他の領域への抗体の結合競合の欠如は、アプタマー結合におけるそれらの関与を妨げない。
実施例8
本実施例は、ARC19499が、外因性テナーゼ(Xase)阻害アッセイにおいて、TFPIを阻害するインビトロ活性を有することを実証する。
本アッセイにおいて、組織因子(TF)を、第VIIa因子(FVIIa)およびリン脂質小胞と混合した。第因子X(FX)を添加し、一定分量を除去し、様々な時点で反応停止させた。この時点で、第Xa因子(FXa)の発色性基質を添加し、FXa生成の速度を決定するために、405nmでの吸光度を1時間にわたって測定した。1nM TFPIを含ませた時、FXa生成の速度が著しく低下した。これは、図21Aにおいて、塗りつぶされたひし形(TFPIなし)を塗りつぶされていない円形(1nM TFPI)と比較した時に見られた。増加した濃度のARC19499を1nM TFPIとともに含ませた時、FXa生成の速度における用量依存的改善が見られた。1000nM ARC19499(塗りつぶされていないひし形)は、TFPI(塗りつぶされたひし形)の不在下でのFXa生成の速度に近いFXa生成の速度をもたらした(図21A)。1つの特定の時点(この場合、4分時点)の速度を、同一の時点でTFPIなしで得られた速度で割ることによって、これらの速度を正常化した(図21B)。この様式において、TFPIは、4分時点におけるFXa生成の速度を70%近く減少させた。増加した濃度のARC19499はこの速度を改善し、10〜1000nMアプタマー付近でTFPIなしでのレベルに近いレベルに達した(図21B)。
本実験は、ARC19499が、インビトロにおける外因性テナーゼ阻害アッセイにおいて、TFPIを阻害することを示唆する。
実施例9
本実施例は、ARC26835、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882が、第Xa因子(FXa)活性アッセイにおいて、TFPI阻害活性を有することを実証する。
各アプタマーを、第Xa因子(FXa)活性アッセイにおいて、TFPIの阻害について評価した。発色性基質を切断するFXaの能力を、場合によってはアプタマーを添加して、TFPIの存在および不在下で測定した。これらの実験について、2nMヒトFXaを、8nMヒトTFPIとともにインキュベートした。次いで、500μM発色性基質およびアプタマーを添加し、基質のFXa切断を、時間の関数として、405nm(A405)での吸光度により測定した。アプタマーを、500nM、125nM、31.25nM、7.81nM、1.95nM、および0.49nM濃度で試験した。ARC17480を、各実験に対照として含んだ。各アプタマー濃度について、A405を時間の関数としてプロットし、各曲線の直線領域を、等式y=mx+b(式中、y=A405、x=アプタマー濃度、m=基質切断速度、およびb=y切片)に当てはめ、FXa基質切断速度を生成した。TFPIの存在下、およびアプタマーの不在下でのFXa基質切断速度を、各濃度の各アプタマーにおいて、TFPIおよびアプタマーの両方の存在下での対応する値から減算した。次いで、調整した速度をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(Vmax/(1+IC50/x))(式中、y=基質切断速度、x=アプタマー濃度、およびVmax=基質切断のp最大速度)に当てはめて、IC50および最大(Vmax)値を生成した。図22A〜Cは、ARC26835、ARC17480、ARC19498、ARC19499、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882でのFXa活性アッセイのグラフを示す。アプタマー濃度の関数としてのFXa活性の増加から証明されるように、これらのアプタマー全てが、これらのアッセイにおいてTFPIを阻害した。これらのアプタマー全てが、FXaアッセイにおいて同様の活性を有した。
実施例10
本実施例は、ARC19499が、精製成分での発色アッセイにおいて、第Xa因子(FXa)をTFPIによる阻害から保護することを実証する。
FXa(1nM)、TFPI(2.5nM)、ARC19499(0−500nM)、およびSpectrozyme Xa(American Diagnostica)発色性基質(200μM)を、平衡が得られるまで(5分間)、2mM CaCl2および0.1%PEG−6,000(HBSP2緩衝液)を含有するHEPES緩衝生理食塩水(20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4)中に37℃でインキュベートした。Spectrozyme FXa加水分解の速度を、ThermoMaxの器具(Molecular Devices)を用いて決定し、TFPIなし(100%)と比較したFXa活性%としてプロットした。増加した濃度のARC19499がFXa活性の増加を引き起こし(図23)、ARC19499がFXaをTFPIによる阻害から保護したことを実証する。このデータに基づいて、TFPIに対するARC19499の見かけの解離定数(KD)は1.8nMであった。ARC19499は、TFPIに対して特異的であるが、TFPIの不在下においてFXa活性を阻害しなかった(データ示されず)。
実施例11
本実施例は、ARC19499が、精製成分での発色活性アッセイにおいて、組織因子、第VIIa因子(FVIIa)および第Xa因子(FXa)から成る外因性FXase複合体を、TFPIによる阻害から保護することを実証する。
再脂質化された組織因子(TF、20pM)、FVIIa(1nM)、PCPS小胞(75%ホスファチジルコリン/25%ホスファチジルセリン、20μM)、およびARC19499(0〜1000nM)を、37℃で10分間、HBSP2緩衝液中でインキュベートし、その後、FX(1μM)およびTFPI(2.5nM)を同時に添加した。一定分量を30秒毎に5分間除去し、20mM EDTAおよび0.1%PEGを含有するHBS緩衝液中で反応停止させた。Spectrozyme FXa基質(200μM)を添加し、基質の加水分解速度を測定し、活性FXaの濃度を較正曲線から推定した。増加した濃度のARC19499が、TFPIの不在下で測定された速度の最大70%のFXa活性の増加を引き起こし(図24)、ARC19499が、外因性FXase複合体をTFPIによる阻害から実質的に保護することを実証する。
実施例12
本実施例は、ARC19499が、精製成分を用いて実行される組織因子:FVIIa活性の蛍光アッセイにおいて、組織因子:FVIIa複合体をTFPI阻害から保護することを実証する。
組織因子(TF、1nM)、FVIIa(2nM)、およびARC19499(0〜7.5nM)を、37℃で10分間、HBSP2中でインキュベートし、その後、蛍光基質SN−17c(50μM)およびTFPI(8nM)を同時に添加した。基質の加水分解速度を、蛍光プレートリーダー(BioTek)で測定した。TFPIは、これらの条件下で、TF:FVIIa活性の約50%を阻害した(図25)。ARC19499の化学量論的濃度の添加(8nM)は、TFPIなしの対照と比較して、全てのTF:FVIIa活性を完全に回復させ(図25)、ARC19499がTF:FVIIa複合体をTFPI阻害から効率的に保護したことを実証する。8nM TFPIの存在下での増加したARC19499濃度の滴定は、ARC19499濃度依存的様式で、TF:FVIIa複合体の活性を増加させ、約1nM ARC19499で活性の中点に達した。データ分析は、本アッセイにおけるTFPIに対するARC19499の見かけのKDが、1.2nMであったことを示唆した。ARC19499は、TFPIに対して特異的であるが、TFPIの不在下においてTF:FVIIa活性を阻害しなかった(データ示されず)。
実施例13
本実施例は、ARC19499が、血友病Aおよび血友病Bをモデル化する合成凝固プロテオームにおいて、TFPIを阻害することを実証する。これらのデータは、ARC19499が、完全なる(0%)第VIII因子(FVIII)または第IX因子(FIX)欠乏の存在下で、正常なトロンビン生成を回復させたことを示す。ARC19499は、不完全な(2%、5%、または40%)FVIII欠乏の存在下で、正常なトロンビン生成も回復させた。
トロンビン生成を、凝血促進剤および凝固阻害剤(第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、プロトロンビン、抗トロンビン、およびTFPI、全て平均生理学的濃度)および50μM PCPS(75%ホスファチジルコリン/25%ホスファチジルセリン)の混合物に添加した5pMの再脂質化された組織因子(TF)で開始した。長期にわたるトロンビン生成を、Spectrozyme TH基質(American Diagnostica)を用いて、発色アッセイにおいて測定した。ARC19499を、完全なる再構成系(健常な対照)、またはFVIII(重度の血友病A)もしくはFIX(重度の血友病B)のいずれかを除外した再構成系において、1nM、2.5nM、5nM、および10nMの増加した濃度で試験した。
全てのタンパク質の平均生理学的濃度のタンパク質(「健常な対照」、図26)の存在下で、5pMの再脂質化されたTFで開始したトロンビン生成の開始(遅滞)期は約6分間であり、観察された活性トロンビンの最大濃度は270nMであった(塗りつぶされたひし形)。TFPIの除外は、開始期を(2分まで)著しく短縮し、最大トロンビン濃度を374nMに増加させた(塗りつぶされた円形)。2.5nM TFPIの存在下における増加したARC19499濃度の添加は、ARC19499依存的様式で、開始期の継続期間を減少させ、最大トロンビン濃度を増加させ、10nM(塗りつぶされていない四角形)で、ARC19499のトロンビン生成特性は、TFPIおよびARC19499の両方の不在下で観察されたトロンビン生成特性とほぼ同一であった(図26)。
FVIIIの不在下において、TFで開始されるトロンビン生成は著しく抑圧された(図27)。開始期を、「健常な対照」(塗りつぶされたひし形)の6分から、血友病A(塗りつぶされていないひし形)の10分に延ばし、最大トロンビン活性は、270nMから34nMに減少した。FVIIIの不在下でのTFPIの除外は、正常なトロンビン生成を回復させ(活性トロンビンの最大濃度は264nMまで増加し)、開始期の継続時間を2分まで遅延させた(塗りつぶされた円形)。FVIIIの不在下および2.5nM TFPIの存在下において、5nM ARC19499(星印)の添加は、3分の開始期で、「健常な対照」で観察されたレベルまでトロンビン生成を回復させた。10nM ARC19499(塗りつぶされていない四角形)および2.5nM TFPIの存在下ならびにFVIIIの不在下において、トロンビン生成特性は、TFPI、FVIII、およびARC19499の不在下で観察されたトロンビン生成特性と類似した。
血友病B(FIXなし)合成凝固プロテオームにおけるARC19499によるTFPI阻害の影響は、血友病Aモデルで観察されたTFPI阻害の影響に類似しており、言い換えると、5nM濃度でFIXの不在下でのARC19499は、「健常な対照」で観察されたレベルに類似したレベルまでトロンビン生成を回復させた(図28)。
TFにより開始されるトロンビン生成へのARC19499の影響を、0%、2%(0.014nM)、5%(0.035nM)、40%(0.28nM)、および100%(0.7nM)FVIIIの合成凝固プロテオームモデルで評価した。選択したFVIII濃度は、重度(1%未満)、中程度(1〜5%)、および軽度(5〜40%)の血友病A患者で観察された範囲を包含した。ARC19499の不在下において(図29)、トロンビン生成は、試験した全てのFVIII濃度で最大で40%抑圧された。40%FVIIIプロテオーム(星印)において観察されたピークトロンビンレベルは、「健常な対照」の約50%であった(塗りつぶされたひし形)。1nMの濃度でのARC19499の添加は、開始期を短縮し、ピークトロンビンレベルを増加させて、トロンビン生成を著しく高めるのに十分であった(図30)。2.5nM ARC19499の添加が、0〜5%FVIIIの存在下でのトロンビン生成を本質的に正常化した(図31)一方で、40%および100%FVIIIでの2.5nM ARC19499は、開始期のさらなる短縮を誘発し、ほぼ「TFPIなし」対照の程度までピークトロンビンを増加させた。
図32は、「健常な対照」および「TFPIなし」対照と比較した、一連のARC19499濃度(0、1、2.5、5、および10nM)の存在下での0%FVIIIのさらなる合成凝固プロテオームデータを示す。図33は、同一の範囲のARC19499濃度での100%FVIIIのデータを示す。図34、35、および36は、それぞれ、0、1、および2.5nM ARC19499の存在下における2%、5%、および40%FVIIIのデータを示す。全ての条件下で、ARC19499は、有意な凝固促進応答を示し、開始期(遅延時間)を減少、ピークトロンビンを増加させた。FVIII欠乏の全ての事例(0〜40%FVIII)において、ARC19499は、正常なトロンビン生成特性を回復させることができた。
実施例14
本実施例は、ARC19499のインビトロ活性が、TFPIの存在に対して特異的であることを実証する。
この実験では、組織因子凝固経路の開始後に長期にわたるトロンビンの生成を測定する校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイにおいて、トロンビン生成に影響を及ぼすARC19499の能力を、3つの異なる血漿条件下で試験した。第1の条件において、TF濃度が最終反応体積において0.1または1.0pMのいずれかになるように、増加した濃度のARC19499を、プールされた正常な血漿(PNP)に添加し、組織因子(TF)およびリン脂質を含有する溶液と混合した(図37)。トロンビン生成を、トロンビンの塩化カルシウムおよび蛍光基質を含有する混合物の添加により開始した。反応は37℃で起こり、蛍光強度を1時間にわって定期的に測定した。ARC19499を、以下の血漿濃度:0.1、1、10、100、および1000nMで試験した。
いずれかのTF濃度で、増加したARC19499は、PNP血漿中のトロンビン生成を増加させた(図37A〜B)。内因性トロンビンポテンシャル(ETP、曲線下面積)およびピークトロンビン(アッセイにおいていずれか1つの時点で生成されるトロンビンの最高レベル)値の両方ともに、ARC19499を伴って用量依存的様式で増加した(図37C〜D)。遅延時間(トロンビン生成が開始するまでの時間)は、ARC19499を伴って用量依存的様式で減少した(図37E)。これらの結果は、両方のTFの濃度で観察された。
ARC19499活性を測定するCATアッセイを、TFPIが枯渇した血漿中で繰り返した。TFPIを免疫枯渇して凍結乾燥した血漿を、American Diagnostica(Stamford,CT)から入手し、使用前に再懸濁した。トロンビン生成を、0.01、0.1、または1.0pM TFで上述のように測定した。図38Aの結果は、それぞれのTF濃度について測定されたトロンビン生成曲線が相互にはっきりと異なるが、特定のTF濃度内では、ARC19499濃度を増加させてもトロンビン生成に本質的な差異はなかった。これは、CATアッセイで測定されたパラメーターにおいても見られた。ARC19499濃度を増加させても、ETP、ピークトロンビン、または遅延時間にほとんど、あるいは全く変化がなく(図38B〜D)、TF濃度とは無関係であった。
ARC19499活性を、第3の一連の血漿条件下で試験した。この場合、PNPを、全てのTFPI活性を中和させるために、TFPIに対して多クローン性抗体とともにインキュベートした。次に、ARC19499を、この抗体で処理された血漿に添加した(図39)。再び、トロンビン生成を、0.01、0.1、または1.0pM TFのいずれかで開始した。TFPIを中和させたため、多クローン性抗体の添加は、全ての3つのTF濃度でトロンビン生成を高めたが、増加した濃度のARC19499は、トロンビン生成のさらなる増加を引き起こさないように見えた(図39A〜C)。ARC19499を添加した時、ETP、ピークトロンビン、または遅延時間への影響は皆無に等しかった(図39D〜F)。
これらの実験は、機能的TFPIが血漿中に存在する時に、ARC19499は凝固促進活性のみを有し、したがって、ARC19499がTFPIに対して特異的であることを示唆する。
実施例15
本実施例は、ARC17480、ARC19498、およびARC19499が、TFPI活性をインビトロで阻害することを実証する。
本実験において、TFPIアプタマー(ARC17480、ARC19498、およびARC19499)の阻害活性を、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイにおいて、プールされた血友病A(第VIII因子欠乏症)血漿においてインビトロで測定した。アプタマーを、プールされた血友病A血漿中の異なる濃度で滴定し、生成されたトロンビンの量を、最終反応物中の1.0pM TFを用いて、プールされた正常な血漿対照(図40A〜C)と比較した。時間曲線に対するトロンビン生成下面積である内因性トロンビンポテンシャル(ETP)と、本実験にわたって生成されたトロンビンの最高濃度であるピークトロンビンの両方ともに、TFPIのアプタマー阻害の間接的測定をもたらした。3つのアプタマー全てが本アッセイにおいて同様の活性を有し、ARC19499が他の2つよりもわずかに高い活性を有した。ARC19499は、30nMの時点で、ETPを正常なレベル近くまで補正した(図40D)。ピークトロンビンレベルは、アプタマーの増加した濃度に伴い増加した(図40E)。
これらの結果は、ARC17480、ARC19498、およびARC19499が、TFPI活性をインビトロで阻害することを示す。
実施例16
本実施例は、ARC19499が、血友病A様の状態を生成するために抗第VIII因子抗体で処理された正常なヒト血漿において、トロンビン生成を増加させることを実証する。
健常な志願者由来の血小板に乏しい血漿を、抗FVIII抗体で処理し、血友病A様の状態を生成した。この抗体で処理された血漿中のトロンビン生成は、血友病A血漿で観察されたトロンビン生成と類似した(図41)。抗体で処理された血漿へのARC19499の添加は、トロンビン生成において用量依存的増加をもたらした。これらの結果は、ARC19499が、抗FVIII抗体での処理に起因する、血漿中のトロンビン生成を低FVIIIレベルで補正することができることを実証する。
実施例17
本実施例は、ARC17480およびARC19499が、TFPI活性をインビトロで阻害し、生物学的活性を有することを実証する。
非PEG化コアTFPI阻害アプタマーARC17480およびPEG化アプタマーARC19499の影響を、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイを用いて、血友病B(FIX−欠乏)血漿におけるインビトロでのトロンビン生成活性について評価した。
これらの研究を、1%未満の第IX因子レベルを有する2人の血友病B患者からプールした血漿(George King Bio−Medical,Inc,Overland Park,KSより市販)において実行した。本アッセイにおいて、血漿およびアプタマーを混合し、リン脂質および組織因子を含有する試薬に添加した。トロンビン生成を、トロンビンの塩化カルシウムおよび蛍光基質を含有する混合物の添加により開始した。反応は37℃で起こり、蛍光強度を、1時間にわたって定期的に測定した。組織因子およびリン脂質の最終濃度は、それぞれ、1pMおよび4μMであった。アプタマーを、以下の血漿濃度:0.3、1、3、10、30、100、300、および1000nMで試験した。個々のトロンビン生成曲線が図42に示され、プールされた正常な血漿と比較した、血友病B血漿中のトロンビン生成の程度への増加した濃度のARC19499(図42A)またはARC17480(図42B)の影響を説明する。ETP、ピークトロンビン、および遅延時間のプロットが図43に示される。ARC19499での結果が左側に示され、ARC17480での結果が右側に示される。
ETPおよびピークトロンビンレベルは、血友病Bプール由来の血漿において、プールされた正常な血漿と比較して、それぞれ、約85%および約95%減少し、第IX因子の欠損によるトロンビン生成の欠乏と一致した。これらのパラメーターの両方で測定されるように、ARC17480(三角形)およびARC19499(ひし形)の両方ともに、トロンビン生成における欠陥を大いに補正した(図43)。100nMの時点で、両方のアプタマーはプールされた正常な血漿で得られたETPとほぼ同等のETPを示し、ARC17480の300nM時点で、ほぼ同等のピークトロンビンを示した(図43)。ピークトロンビンは、ARC19499の300nMの時点でプラトー状態となった。ARC17480およびARC19499は、血友病B血漿の遅延時間を減少させ、薬物を有さないプールされた正常な血漿および任意の血友病B血漿で得られたものを下回った(図43)。
これらの結果は、ARC17480およびARC19499が、血友病B血漿と同様の効力でTFPIをインビトロで阻害することを示す。
実施例18
本実施例は、ARC19499が、陰性対照アプタマーと比較して、TFPI活性をインビトロで阻害し、生物学的活性を有することを実証する。
トロンビン生成を高めるARC19499の能力を、3つの血小板に乏しい血友病血漿:7〜8人の重度の血友病Aを有する患者(1%未満のFVIIIレベル、「血友病A血漿」と称される)からプールした血漿、抗FVIII抗体の高力価を有する3人の異なる血友病A患者(160ベセズダ単位(BU)/mL以上、「インヒビター血漿」と称される)からプールした血漿、および2人の重度の血友病Bを有する患者(1%未満のFIXレベル、「血友病B血漿」と称される)からプールした血漿において試験した。全ての血漿を、George King Bio−Medical(Overland Park,KS)から入手した。トロンビン生成を、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイを用いて測定した。本アッセイにおいて、血漿およびアプタマーを混合し、リン脂質および組織因子を含有する試薬に添加した。トロンビン生成を、トロンビンの塩化カルシウムおよび蛍光基質を含有する混合物の添加により開始した。反応は37℃で起こり、蛍光強度を、1時間にわたって定期的に測定した。組織因子およびリン脂質の最終濃度は、それぞれ、1pMおよび4μMであった。ARC19499(0.3、1、3、10、30、100、300、および1000nM)の存在下でのトロンビン生成を、陰性対照アプタマー(0.1、1、10、100、および1000nM)と比較した。ETP、ピークトロンビン、および遅延時間(平均±標準誤差)のプロットが、図44に示される。
血友病A血漿は、正常な血漿と比較して、わずかに短い遅延時間を有し、ETPおよびピークトロンビンを著しく減少させた(それぞれ、約50%および約75%)。増加した濃度のARC19499は、トロンビン生成における欠陥を大いに補正した。ETPを、3nM ARC19499で正常なレベル近くまで補正し、ピークトロンビンを100nMアプタマーで補正した(図44A)。インヒビター血漿は、正常な血漿と比較して、ETPおよびピークトロンビンも減少させた(それぞれ、約50%および約70%)。重度の血友病A血漿と同様に、ARC19499は、本血漿中のトロンビン生成を増加させた。30nM ARC19499では、ETPおよびピークトロンビンの両方ともに正常なレベルであった(図44B)。血友病Bは、トロンビン生成におけるさらに大きな欠陥を有し、ETPおよびピークトロンビンを著しく減少させ(それぞれ、約70%および約90%)、遅延時間を増加させた。血友病A血漿と同様に、増加した濃度のARC19499は、本血漿中のトロンビン生成を改善し、30nM ARC19499で正常なETPレベル、100〜300nMアプタマーで正常なピークトロンビンレベルを得た(図44C)。総合すると、これらの結果は、30〜100nM ARC19499は、3つの異なる種類の血友病血漿中の凝固を回復させるのに有効であることを実証する。陰性対照アプタマーも同様に3つの異なる血漿において試験したが、トロンビン生成の補正を示さなかった(図44)。
本実施例で使用した陰性対照アプタマーARC32603の配列は、mG−mG−mA−mA−mU−mA−mU−mA−dC−mU−mU−mG−mG−dC−mU−mG−dC−mU−mU−mA−mG−mG−mU−mG−dC−mG−mU−mA−mU−mA−mU−mA−3T(配列番号152)であった。
実施例19
本実施例は、ARC17480、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882が校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイにおいて生物学的活性を有するとを実証する。
各アプタマーのTFPI阻害活性を、CATアッセイにおいて、500nM、167nM、55.6nM、18.5nM、6.17nM、および2.08nMアプタマー濃度のプールされた血友病A血漿中で評価した。ARC17480を対照として全ての実験に含めた。各アプタマーについて、各アプタマー濃度の内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビン値を分析に使用した。血友病A血漿のみのETPまたはピークトロンビン値を、各濃度での各分子について、アプタマーの存在下での対応する値から減算した。次いで、調整したETPおよびピーク値を、アプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+IC50/x))+int(式中、y=ETPまたはピークトロンビン、x=アプタマー濃度、max=最大ETPまたはピークトロンビン、およびint=y切片)に当てはめて、ETPおよびピークトロンビン両方のIC50値を生成した。図45A〜Dおよび図46A〜Bは、ARC17480、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882でのCAT実験のグラフを示す。調整した内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビンの両方が示される。これらの実験は、血友病A血漿のETPおよびピークトロンビンにおける濃度依存的増加で証明されるように、ARC17480、ARC26835、ARC19500、ARC19501、ARC31301、ARC18546、ARC19881、およびARC19882の全てが、CATアッセイにおいて、TFPIを機能的に阻害することを実証する。これらの分子全てが、CATアッセイにおいて同様の活性を有した。
実施例20
本実施例は、TFPIアプタマーが生物学的活性を有することを実証する。
本実験において、NovoSeven(登録商標)の能力と比較した、トロンビン生成に影響を及ぼすARC19499の能力を、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイを用いて試験した。CATアッセイは、いくつかのパラメーターを生成してトロンビン生成を比較する。遅延時間は、トロンビン生成が開始するまでの時間の長さの測定である。ピークトロンビンは、任意の一時点での生成されるトロンビンの最大量の測定である。内因性トロンビンポテンシャル(ETP)は、トロンビン生成曲線下面積である。
これらの研究を、3つの異なる血漿:健常な志願者由来の血小板に乏しい血漿、1%未満の第VIII因子レベルを有する血友病A患者由来の血漿のプール(George King Bio−Medical,Inc,Overland Park,KSから市販)、および第VIII因子に対して阻害剤抗体の高力価を有する血友病A患者由来の血漿(George King Bio−Medical,Inc,Overland Park,KSから市販)の存在下で実行した。CATアッセイにおいて、血漿および薬物(ARC19499またはNovoSeven(登録商標)のいずれか)をともに混合し、リン脂質および組織因子を含有する試薬に添加した。トロンビン生成を、トロンビンの塩化カルシウムおよび蛍光基質を含有する混合物の添加により開始した。反応は37℃で起こり、蛍光強度を、1時間にわたって定期的に測定した。組織因子およびリン脂質最終濃度は、それぞれ、1pMおよび4μMであった。薬物を、以下の血漿濃度:0.3、1、3、10、30、100、および300nMで試験した。
健常な志願者由来の血漿において、ARC19499およびNovoSeven(登録商標)で試験した濃度の範囲にわたってETPの変化はなかった(図47A)。ピークトロンビンレベルは、より高い用量でわずかに増加し、ARC19499およびNovoSeven(登録商標)は、ほぼ同一の様式を示した(図47B)。ARC19499がトロンビン生成の遅延時間に影響を与えなかった一方で、NovoSeven(登録商標)は、遅延時間の用量依存的減少を示し、30nMの時点で最小遅延時間に達した(図47C)。
ETPおよびピークトロンビンレベルは、血友病Aプール由来の血漿において、それぞれ、約40%および約75%減少し、第VIII因子の欠損によるトロンビン生成の欠乏と一致した。ARC19499およびNovoSeven(登録商標)は、これらのパラメーターの両方で測定されるように、トロンビン生成における欠陥を大いに補正した。これらの作用物質は、ほぼ同等のETPへの影響を示し、30nMの時点で最大ETPに達した(図48A)。NovoSeven(登録商標)は、ピークトロンビンにわずかに高い影響を与え、30nMの時点で最大レベルに達した。ARC19499は、300nMで同一のピークトロンビンのレベルに達した(図48B)。健常な志願者由来の血漿において見られるように、ARC19499が遅延時間に影響を与えなかった一方で、NovoSeven(登録商標)は、遅延時間の用量依存的減少を示し、30nMで最大の影響に達した(図48C)。
同様の結果が、高力価抗体を有する患者由来の血漿において見られた。両方の薬物ともに、同一の様式でETPおよびピークトロンビンを増加させた(図49A〜B)。この場合もやはり、ARC19499が遅延時間に影響を与えなかった一方で、NovoSeven(登録商標)は、遅延時間の用量依存的減少を示した(図49C)。インヒビター血漿に関連する標準誤差は、健常な血漿または血友病Aプールにおいて見られた標準誤差よりも高かった。これは、3人のインヒビター患者(160BU/mL、533BU/mL、および584 BU/mL)の間の力価における差異による可能性が高い。
全体的に見て、遅延時間を除いて、ARC19499およびNovoSeven(登録商標)は、試験した全ての血漿におけるトロンビン生成に非常に類似した影響を与えた。
実施例21
本実施例は、TFPIアプタマーが生物学的活性を有することを実証する。
本実験において、NovoSeven(登録商標)の能力と比較した、血栓形成に影響を及ぼすARC19499の能力を、トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))アッセイを用いて試験した。TEG(登録商標)アッセイは、発達する血餅の機械的性質を測定する。TEG(登録商標)アッセイにおいて、血液生成物および任意の活性化因子を含有するカップを、捻れワイヤに取り付けられたピン周囲で自由に振動させる。血餅が発達するにつれて、新しく形成されたフィブリン鎖は、振動したカップを固定されたピンに接続させ、ピンを引っ張り始め、したがって、捻れワイヤへの力を生成する。この力は、血栓形成を監視するコンピューターによりシグナルに変換され、時間に対するシグナルの高さのトレースとして示される。このトレースから、様々な態様の血栓形成を測定するいくつかのパラメーターを抽出することができる。R値は、最初の血餅が発達するまでの時間を測定する。角度は、血餅が形成する速度の測定である。最大振幅(MA)は、血餅強度および安定性の測定である。
これらの研究を、健常な志願者由来のクエン酸全血において実行した。第1のアッセイにおいて、薬物を、処理されていない全血において試験した。第2のアッセイにおいて、血液をまず、薬物添加前に、37℃で3時間、ヒト第VIII因子に対してヒツジ多クローン性抗体で処理した。両方のアッセイにおいて、NovoSeven(登録商標)またはARC19499を、0.01、0.1、1、10、または100nMの最終血液濃度で、血液(抗体で処理された血液または処理されていない血液)に添加した。凝固の活性化は、最終希釈1:200000(約6fM)の組織因子(Innovin)および最終濃度11mMの塩化カルシウムの添加時に起こった。
処理されていない血液において、ARC19499およびNovoSeven(登録商標)の両方ともに、10nMで最小値に達するように見えたR値の中程度の用量依存的減少を示した(図50A)。角度およびMA値は、試験した濃度にわたって変化しないままであった(図50B〜C)。
第VIII因子抗体で処理された血液において、両方の薬物ともに、R値に同様の影響を与えた。処理されていない血液と比較して、抗体で処理された血液のR値は延長された。ARC19499またはNovoSeven(登録商標)の濃度が増加するにつれて、R値は、処理されていない血液のレベルと同一のレベルに回復した(図51A)。抗体処理は、血液中の血栓形成の速度を減少させ、その角度により報告される。NovoSeven(登録商標)は、角度に強い影響を与え、0.1から100nMのNovoSeven(登録商標)に直線的に増加させた。この増加は、処理されていない血液で得られた角度を超えた。ARC19499も角度を増加させたが、値は、処理されていない血液で得られたレベルと同様のレベルで、アプタマーの10nMの時点でプラトー状態となるように見えた(図51B)。MAへの影響は、主として、全血のMAにおける大きな差異があるように見えないため、FVIII抗体処理にかかわらず、両方の薬物において最小であった。両方の薬物ともに、処理されていない血液で得られたMA値と、抗体で処理された血液で得られたMA値との間に収まるMA値をもたらした。(図51C)。
CATアッセイで見られるように、ARC19499およびNovoSeven(登録商標)は、第VIII因子を欠乏したか否かにかかわらず、全血における血栓形成に非常に類似した影響を与えた。この2つの薬物の間の主な違いは、血栓形成の速度(角度)への影響において見られ、NovoSeven(登録商標)は、濃度が増加するにつれて、速度においてより直線的な増加を示すが、ARC19499も同様に、速度を増加させる。
実施例22
本実施例は、TFPIアプタマーが生物学的活性を有することを実証する。
本実験において、トロンビン生成におけるARC19499と第VIII因子との間の相乗効果を、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイを用いて試験した。これらの研究を、1%未満の第VIII因子(FVIII)レベルを有する血友病A患者由来の血漿のプール(George King Bio−Medical,Inc,Overland Park,KSから市販)の存在下で実行した。増加した濃度のARC19499(1〜300nM)を、0、1.4、2.5、5、14、および140%の第VIII因子(World Health Organization International Standard)の存在下で分析した。結果を、ARC19499の不在下での血友病Aおよびプールされた正常な血漿のベースライン応答と比較した。
正常な血漿および血友病A血漿が他の点では同等であると想定して、血友病A血漿における第VIII因子の不在は、本実験において、正常な血漿と比較して、トロンビン生成のベースライン遅延時間の限界に近い減少(図52A)、ピークトロンビン濃度の3〜4倍の減少(図52B)、および内因性トロンビンポテンシャル(ETP)の1.5〜1.6倍の減少(図52C)を引き起こした。第VIII因子の不在下において、ARC19499は、トロンビン生成の遅延時間にほとんど、あるいは全く影響を及ぼさなかったが、ピークトロンビン濃度およびETPにおける用量依存的増加を引き起こした。外因性第VIII因子の添加は、全てのパラメーターにおいて漸進的変化を引き起こし、最大の影響がピークトロンビン濃度で観察された(図52B)。140%の第VIII因子での再構成は、このパラメーターを正常な血漿において観察されたレベルに類似したレベルまで回復させ、より小さい改善が14%以下の第VIII因子で観察された。さらに、それぞれの第VIII因子濃度により引き起こされたピークトロンビンにおける漸進的な増加は、ARC19499の全ての濃度でほぼ同一であり、このことは、トロンビン生成へのその2つの作用物質の影響が、相乗的というよりもむしろ相加的であることを示唆する。ETPにおいて、第VIII因子は、ARC19499の用量応答曲線を平らにし、相加的効果は、より低い濃度のARC19499でのみ観察された(図52C)。いったんARC19499の10nMに達すると、さらなる第VIII因子は利益を有するように見えなかった。図53Aは、FVIIIを添加した異なる濃度の血友病A血漿のETPを示す(点線)。ARC19499の添加は、血友病A血漿および5%FVIIIを添加した血友病A血漿において用量依存的増加をもたらした。ARC19499は、ETPを評価した時の1〜10nMアプタマー(図53A)、またはピークトロンビンを評価した時の10〜30nMアプタマーでの14%FVIIIに類似した血友病A血漿における凝血促進効果を媒介した。ARC19499の飽和量(300nM)を異なる濃度のFVIIIを有する血漿に添加した時、トロンビン生成レベルは正常な血漿で観察されたレベルに近く、このことは、ARC19499が重度の血栓形成促進効果を有さないことを示唆する(図53B)。140%第VIII因子をもってしても、正常な血漿のETPレベルに一度も達しなかった。したがって、この測定により、外因性第VIII因子の添加は、その作用を促進するというよりはむしろ、ARC19499様のバイパス剤の必要性を未然に防ぐように見えた。興味深いことに、ARC19499は、第VIII因子のより高い濃度で遅延時間を減少させるように見えた(図52A)。
この事例におけるTFPIの阻害は、より迅速なトロンビン生成の第VIII因子依存的増殖を可能にし得る。
実施例23
本実施例は、ARC19499が、固定化組織因子で活性化された血友病血漿中の血栓形成の空間的モデルにおける凝固を改善することができることを実証する。
空間実験モデルの主要な性質は、血漿凝固が固定化組織因子(TF)で被覆される表面により活性化されることである。次に、フィブリンゲルが増殖して、巨大な血漿になる。凝固は、特別に設計されたチャンバー内で起こる(図54A)。血漿試料を、チャンバーのウェルに装填し、その後、サーモスタット内に設置する。全ての実験を37℃で実行する。チャンバー内へのその端面上に固定化されるTFの挿入物の浸漬により、凝固を開始する。血栓形成を、CCDカメラを用いて、フィブリンゲルからの光散乱により登録する(図54B)。チャンバーを、単色光で均一に照射し、画像を15秒毎に捕捉する。次に、入手した一連の画像をコンピューターで処理し、血液凝固の空間的動態のパラメーターを計算する。
この一連の実験のために、表面を、1〜100pmole/m2の範囲のTF密度で誘導体化した。表面上のTFの密度は、過剰な第VIIa因子(Novoseven(登録商標)、Novo Nordisk)の存在下で、発色性第Xa因子基質S−2765(Chromogenix)を用いて、第X因子(Enzyme Research Laboratories)を活性化する能力を特徴とした。S−2765切断の速度を光吸収(405nm)で測定し、一式のTF標準溶液(American Diagnostica)を用いて調製された較正曲線と比較して、TF濃度を計算した。
それぞれの光散乱画像を、活性化表面に引かれた垂線に沿って(画素強度に基づく)平均光散乱強度を計算することにより処理した。各画像のデータを、活性化表面からの距離に対する光散乱強度のプロット上に一本の等高線として示した(図55)。血餅増殖を、最大90分の連続した時点で取り込まれた画像から決定した増加した光散乱強度の連続した等高線により質的に(図55)、または時間に対する血餅の大きさをプロットすることにより量的に(図56)示した。各画像における血餅の大きさを、散乱強度が最大半減である等高線に沿って、座標(マイクロメートルまたはミリメートル単位)として決定した。時間プロットに対する血餅の大きさに基づいて、以下のパラメーター:遅延時間(活性化因子との血漿の接触と血栓形成の開始との間の遅延)、血餅成長の初期速度(αもしくはV初期、遅延時間後の最初の10分間にわたる時間曲線に対する血餅の大きさの平均勾配)、血餅成長の空間速度または定常速度(βもしくはV定常、翌30分間にわたる平均勾配)、および本実験の60分後の血餅の大きさ(血栓形成効率の積分パラメーター)を計算した。各実験について、活性化因子表面に沿って、異なる時点から4つの垂線を引いた。時間に対する血餅の大きさの特性を分析し、それぞれの凝固パラメーターの4つの値を得て、次に、平均化して平均を得た。
この研究をまず、(業務用血漿または凍結血漿ではなく)健常なドナーおよび血友病A患者由来の新たに調製された血漿を用いて行った。血液を、健常な志願者および血友病A患者から9:1のv/v比で収集して、3.8%クエン酸ナトリウムおよび0.2mg/mL CTI(Institute of Protein Research,Russian Academy of Sciences)を含有する溶液に入れ、次に、1,500gで15分間の遠心分離で処理し、血小板に乏しい血漿を得た。これを10,000gで5分間さらに遠心分離し、血小板を含まない血漿を得た。正常な血漿の新鮮なプールを、それぞれ3人の健常なドナーから調製した。実験の15分前の時点で、300μLの血漿を18μLのARC19499または組換え第VIIa因子(あるいは、指定されたrVIIaもしくはNovoseven(登録商標))で補充した。ARC19499または第rVIIa因子を欠乏する対照実験において、血漿を、同一の容量のリン酸緩衝生理食塩水で補充した。血漿を6μLの1M CaCl2の添加により再石灰化し、混合し、300μLの再石灰化された血漿を実験用チャンバー内に設置した。次に、TF誘導体化表面を有する挿入物をチャンバー内に設置し、凝固を開始した(図54A)。
300nMのARC19499を有する正常なプールされた血漿およびARC19499を有さない正常なプールされた血漿中の1pmole/m2のTF密度により活性化された、典型的な空間的血栓形成実験の結果が、それぞれ、図55Aおよび図55Bに示される。プロットは、活性化因子からの距離の関数として光散乱の輪郭を示す。2つの輪郭の間の時間は2.5分間であり、各実験の総使用時間は90分間である。図55Aと比較した図55Bの各時点での光散乱の強化は、ARC19499の添加が空間的血栓形成を改善したことを示唆する。しかしながら、血栓形成へのARC19499の影響は、処理された散乱データから算出された時間に対する血餅の大きさのプロットにおいてより明確に見られ、遅延時間、V初期(α)、および60分時点での血餅の大きさにおける改善は観察可能である。
血栓形成パラメーターを、図57に示されるTF表面密度の関数としてプロットした。縦のエラーバーが血餅パラメーターの標準偏差を示し、一方で、「n」は特定のTF密度で実行した実験の数である。横のバーは、TF密度の決定についてのSDである(それぞれの活性化因子シリーズにおいてn=2)。図57Aは、活性化因子TF密度への平均遅延時間依存度を示す。ARC19499によるTFPI阻害の大きさはTF密度によって決まり、密度が減少するにつれてより著しくなった(TF密度1〜3pmole/m2での遅延時間において最大2.5倍の短縮)。図57Bは、活性化因子TF密度への平均的な初期血餅成長速度の依存度を示す。この場合もやはり、ARC19499の影響は、初期速度において約1.8倍の増加が観察された低TF密度(1〜3pmole/m2)でのみ有意であった。図57Cは活性化因子TF密度への血餅成長定常速度の依存度を示し、ARC19499は、活性化因子の全範囲にわたって血餅増殖速度にほとんど影響を与えなかった。最後に、図57Dは、60分後の平均的な血餅の大きさを示す。TFPIの阻害は、1〜4pmole/m2の密度で血餅の大きさに影響を及ぼし、ARC19499の影響は、TF密度が増加するにつれてわずかになった。これらのデータに基づいて、2つのTF密度:低TF密度1〜2pmole/m2、および中程度のTF密度10〜20pmole/m2を、ARC19499のさらなる研究のために選択した。いくつかのロットの活性化因子をこれらのTF密度のそれぞれにおいて調製し、低密度および中程度の密度の活性化因子の平均値は、それぞれ、2.0±0.68(n=22ロット)および20.6±8.90pmole/m2(n=5ロット)であった。
正常なプールされた血漿における異なるARC19499濃度(0〜1000nM)の空間的凝固への影響を評価し、ARC19499の影響の用量依存度を試験した。図58は、異なる正常な血漿プール(n=4)および低表面TF密度での実験の平均(標準誤差)の平均誤差および標準誤差を示す。最大30nMまでのARC19499濃度の増加の増加に伴って遅延時間(図58A)は減少し、それから安定した。ARC19499濃度の増加に伴って初期速度(図58B)は約30%増加した一方で、定常速度(図58C)は、濃度の全範囲にわたって著しく影響を及ぼさなかった。ARC19499濃度の増加に伴い、60分時点での血餅の大きさ(図58D)において検出可能な増加があった。影響を受けた全てのパラメーターに関して、ARC19499の最大の影響が300nMで得られ、最大半減の影響の濃度は10nM未満であった。図59は、図57および図58からの未加工データと合わせた低TF密度での0〜300nMのARC19499の凝固パラメーターの平均(±標準誤差)を示す(n=6)。ARC19499の影響の統計的有意性を計算するために、各パラメーター値の間の差異を各実験において計算し、これらの差異の分布を、t検定を用いてゼロと比較した。星印は、統計的有意性(P0.05未満)を示し、±ARC19499の間の値の差異がゼロとは異なることを示す。遅延時間および血餅の大きさへの影響が一番大きかったが、4つ全てのパラメーターへの影響は統計的に有意であった。
図60は、ARC19499濃度の関数としてプロットした、異なる正常な血漿プール(n=3)および中程度の表面TF密度での実験における平均パラメーター(±標準誤差)を示す。ARC19499の凝固への影響は、この実験においてより小さかった。図61は、4つ全ての凝固パラメーターについて、0nMのARC19499と300nMのARC19499を比較した統計的分析を示す。差異のいくつかが統計的に有意であるように見えたが(星印で示される)、中程度のTF密度で活性化された正常な血漿におけるARC19499の凝固への影響は非常に小さかった。
血友病A血漿中の低密度のTFで活性化された典型的な空間的血栓形成が図62に示される。プロットは、血友病A血漿のみ(図62A)および100nM ARC19499(図62B)または100nM rVIIa(図62C)を含有する血友病A血漿について、活性化因子からの距離の関数として光散乱の特性を示す。本データが算出された光散乱画像の例が図63に示され、処理データから算出された時間に対する血餅の大きさのプロットが図64に示され、正常な血漿特性を比較のために含めた。これらのデータに基づいて、ARC19499は、遅延時間を短縮し、血餅の大きさを増加させることにより、空間的血栓形成を改善した。図64に示されるように、100nM ARC19499は、血栓形成を部分的に正常化し、活性化表面からの血餅増殖を促進した。対照的に、100nM rVIIaは、強力なTF非依存性の凝固を刺激した。活性化表面からの空間的血餅増殖の正常化を刺激するというよりはむしろ、この濃度のrVIIaは、反応チャンバーの至るところで凝固を誘発した。
さらなる実験は、様々な血友病患者の血漿におけるARC19499の濃度依存的影響を特徴付けた。試料を得た患者プールの人口動態が、図65の表に示される。患者の全てが、重度(1%未満)または中程度(1〜5%)のFVIII欠乏を有した。図66、図67、および図68は、それぞれ、患者番号1、2、および3の血漿における低密度のTFで活性化された空間的血栓形成へのARC19499およびrVIIaの影響を示す。この時点より、エラーバーは、単一実験内の増殖するフィブリン血餅の前面に沿ったn=4領域の標準誤差を示す。これらの図のパネルAおよびパネルBは、それぞれ、ARC19499およびrVIIa濃度への遅延時間依存度を示す。遅延時間は2倍減少し、ARC19499の濃度は0から最大30nMまで増加し、より高いARC19499濃度においては、遅延時間のさらなる著しい変化はなかった。同一の図のパネルCおよびパネルDは、それぞれ、ARC19499およびrVIIa濃度への初期速度依存度を示す。初期速度は2倍増加し、ARC19499の濃度は0から最大30nMまで増加し、より高いARC19499濃度においては、さらなる著しい変化はなかった。図69は、1つのグラフにおける3人全ての患者のARC19499およびrVIIa濃度への血餅成長定常速度の依存度を示す。ARC19499は、全体の調査した濃度範囲にわたって定常速度に影響を与えなかった一方で、rVIIaの添加は、本パラメーターの強力な増加につながった。最後に、図70は、ARC19499(図70A)およびrVIIa(図70B)への60分時点での血餅の大きさの依存度を示す。60分時点での血餅の大きさは1.5〜2倍増加し、ARC19499の濃度は0から最大30nMまで増加し、より高いARC19499濃度においては、さらなる著しい変化はなかった。0nM ARC19499および300nM ARC19499についての各パラメーターを比較した、低TF密度データの統計的分析が図71に示される。ARC19499は、遅延時間(図71A)、初期速度(図71B)、および60分時点での血餅の大きさ(図71D)に著しく影響を与えたが、定常速度(図71C)には影響を与えなかった。
図72、図73、および図74は、それぞれ、患者番号4、5、および6の血漿における中程度の密度のTFで活性化された空間的血栓形成へのARC19499およびrVIIaの影響を示す。ARC19499は、試験した全範囲の濃度にわたって、中程度の密度の活性化因子についての凝固パラメーターにほとんど影響を与えなかった。0nM ARC19499および300nM ARC19499についての各パラメーターを比較した、中程度のTF密度のデータの統計的分析が図75に示される。ARC19499は、これらの条件下において、4つの凝固パラメーターのうちのいずれにも著しい影響を与えなかった。
低TF密度の条件下でARC19499での凝固正常化の程度を推定するために、図76は、正常な血漿と比較した、300nMのARC19499を有する血友病Aおよび血友病Aについての平均凝固パラメーターを示す。ARC19499は、正常なレベル未満に遅延時間を短縮し、初期速度を正常化したが、定常速度には影響を与えなかった。ARC19499は、60分時点での血餅の大きさを約2倍、正常な値の30%から最大60%まで増加させた。ARC19499の影響が、正常な血漿および血友病A血漿において異なるかを確認するために、300nMのARC19499を有する場合の比率および300nMのARC19499を有さない場合の比率を、4つ全ての凝固パラメーターについてプロットした[比率=(パラメーター)+ARC19499/(パラメーター)−ARC19499](図77)。血友病A血漿および正常な血漿の両方において、遅延時間比は約0.5であり、このことは、300nM ARC19499の添加がそれぞれの遅延時間を約半分に減少させることを示唆する。V定常についての比率もそれらの血漿の間において同様であった。しかしながら、正常な血漿と比較して、血友病A血漿においてV初期および60分時点での血餅の大きさでより大きな比率が観察され、このことは、血友病A血漿におけるARC19499の最大の影響が、正常な血漿における最大の影響をわずかに超えたことを示唆する。
血友病A血漿におけるARC19499のIC50を決定するために、低TF密度に対するARC19499濃度(最大10nM)の関数として平均遅延時間および血餅の大きさをプロットした(図78)。曲線適合により計算された最大半減の影響は、両パラメーターにおいて約0.7nMであった。
図79は、血友病A血漿のみ、300nM ARC19499を有する血友病A血漿、または30nM rVIIaを有する血友病A血漿についての凝固パラメーターを比較する。図79A〜Dは、それぞれ、遅延時間、初期血餅成長速度、定常速度、および60分後の血餅の大きさを示す。rVIIaとは対照的に、ARC19499は、遅延時間を短縮し、初期速度を増加させることにより、最初に血餅の大きさを増加させ、これは、空間的増殖段階(V定常)に影響を与えなかった。
TFPIが枯渇した血漿における低TF密度での実験も実行し、ARC19499の作用機序およびTFPIによる空間的凝固の調節に関する識見を得た。凍結乾燥したTFPIが枯渇した血漿をAmerican Diagnosticaから購入し、脱イオン水中で再懸濁し、CTIを0.2mg/mL添加した。組換えTFPI(rTFPI、R&D Systems)を、空間的血栓形成の測定のために、低TF表面密度の存在下で、0または10nMの濃度のARC19499を有する血漿またはARC19499を有さない血漿(0または300nM)中に添加した。rTFPIの添加は、ARC19499の不在下において遅延時間(図80)を著しく増加させたが、300nM ARC19499の存在下では影響を与えず、このことは、これが完全に阻害されたことを示唆した。ARC19499は、補充的rTFPIの不在下ではTFPIが枯渇した血漿中の凝固に影響を与えず、このことは、その影響はTFPIに特異的であることを示唆する。rTFPIもARC19499も、本実験において初期速度にいかなる影響も与えなかった。
結論として、ARC19499は、低TF密度(1〜3pmole/m2)で、空間的に不均一な系において、正常な血漿および血友病A血漿中の凝固を著しく改善した。遅延時間が短縮され、空間的増殖の初期速度および60分時点での血餅の大きさがARC19499の最大2倍に増加し、活性化因子どころか空間的増殖速度にほとんど影響を与えなかった。血友病A血漿において、このことが延時間および初期速度パラメーターの完全なる正常化をもたらした一方で、60分時点での血餅の大きさは、部分的に正常化された(ARC19499の添加時に正常な血漿の30%〜60%増加)。TF密度の増加を伴って、アプタマーの影響は小さくなり、TFが20pmole/m2を超えた時点での影響はほとんどなかった。低TF密度での本実験における凝固へのARC19499の作用は、ARC19499がTFPIを欠乏した血漿中の凝固に影響を与えなかったため、TFPIに特異的であった。
実施例24
本実施例は、全血および無細胞(血漿)凝固時間アッセイにおいて、ARC19499が血友病A患者および血友病B患者から収集された試料中の凝固を改善することができることを実証する。
血液試料(20mL)を、7人の重度の血友病A対象(対象番号1、3、5、8、10、11、および12)、2人の重度の血友病B対象(対象番号4および9)、ならびに3人の健常な対照(対象番号2、6、および7)を含む12人の対象から収集した。血液を、0.5mM EDTAおよび0.1mg/mLトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI、Haematologic Technologies Inc.)内に収集した。各試料の約半分を全血アッセイで使用した一方で、残りの半分を遠心分離して、乏血小板血漿(PPP)を調製した。
TF活性凝固時間(TF−ACT)は、未分画ヘパリンおよびプロタミンへの患者の応答を測定するための一般的に用いられているシステムである、Hemochron(登録商標)Response Whole Blood Coagulation System(International Technidyne Corp.)を用いて実行した全血アッセイである。この機器で測定される標準ACTは、凝固の「接触」または「内因性」経路の活性化因子(例えば、セリットまたはカオリン)を含有するチューブを使用する。しかしながら、TF−ACTのために、標準ACTを測定するために設計されるチューブを接触活性化試薬ですすいだ。その中に、12μLの1M CaCl2、所望の量のARC19499、および2μLの5nM再脂質化組換えTF(Haematologic Technologies)を添加した。この混合物への2mLの全血の添加時に、凝固時間を標準ACTに関してHemochron(登録商標)Response機器上で測定した。結果は、図81の表様式で示される。335±22秒の平均ベースラインTF−ACTが正常な対象において観察された。凝血促進効果を示唆するTF−ACTの適度な減少(最大75秒)が、44〜700nMに及ぶARC19499濃度でこれらの個人において観察された。2人の血友病B対象は、528秒および580秒のベースラインTF−ACTを示した。これらの2人の個人において、TF−ACTは88nM ARC19499で160〜205秒減少し、それから、より高いARC19499濃度(最大350nM)で適度に増加した。比較的広い範囲のベースラインTF−ACT値が血友病A群において観察され、平均値は578±140秒であった。ARC19499に依存したTF−ACTの大幅な短縮がこれらの個人の7人中6人に観察され、このうち2人(対象番号1および11)において、正常な範囲以下の値が観察された。最大47秒の適度な減少のみ対象番号12で観察されたが、この対象は、群内で最短の試験ベースラインTF−ACT(328秒)も示した。これらのデータは、ARC19499によるTFPI抑制が、単純な全血凝固アッセイにおいて凝固活性を改善することができたことを示唆する。
希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイを、TF−ACTアッセイに関して説明される血液試料と同一の血液試料から調製されたPPP上で実行した。標準プロトロンビン時間(PT)を、組織因子(約1nM)、塩化カルシウム、およびリン脂質から成るトロンボプラスチンを、血漿に添加することにより実行し、凝固の「組織因子」または「外因性」経路の完全性を評価する。標準PTプトロコルを用いて測定される正常な血漿試料における凝固時間は、典型的には約11秒である。PTは、ワルファリンへの患者の応答を測定するために一般的に使用されており、FVIIIおよびFIXのような接触経路因子の欠乏に対して非常に鈍感である。標準PTとは対照的に、dPTは、非常に低いTF濃度を使用し、本アッセイで測定される凝固時間は、TFおよび接触経路の両方の因子に敏感である。この特定の実験において、トロンボプラスチン試薬(Innovin、Dade−Behring)を、トリス緩衝生理食塩水(20mMトリス、pH7.5、150mM NaCl)中に希釈し、0.3pMのTF濃度に達した。120μLのPPPを60μLの希釈TF溶液と混合することによりdPTを実行し、60μLの25mM CaCl2を血漿/TF混合物に添加する前に、37℃で3分間インキュベートした。凝固時間をACL−8000凝固計(Instrumentation Laboratory,Bedford,MAから)上で記録し、全ての対象に関するデータが図82に表様式で示される。全ての正常な対象および血友病B対象、ならびに7人中6人の血友病A対象由来のPPP試料のベースライン凝固時間は360秒超であり、それは、凝固計上で事前に設定した最大の測定可能な凝固時間であった。1人の血友病A対象(番号10)は、169秒のベースラインdPTを示した。PPPに添加した増加した濃度のARC19499は、典型的には、dPT凝固時間の減少をもたらした。正常な対象由来のPPPにおいて、2nM ARC19499は、ベースラインに対して凝固時間(平均=278±15秒)を著しく低下させるのに十分であったが、血友病A対象または血友病B対象由来の血漿において明らかな影響はなかった。しかしながら、8nM ARC19499は、ほぼ全ての対象由来のPPPにおける凝固時間を低下させた。低いベースラインdPTが観察された対象番号10、およびARC19499に対して非応答性であるように見えた対象番号12由来のPPPにおいて例外が観察された。これらの2人の個人を除いて、8nM ARC19499についての血友病A群の平均凝固時間は188±8秒であった。同一の条件下における正常な群および血友病B群の平均凝固時間は、それぞれ、204±37秒および226±22秒であった。より高い濃度のARC19499は、適度な凝固時間のさらなる減少のみを引き起こした。正常な群、血友病A(番号10および番号12を除く)群、ならびに血友病B群の500nM ARC19499での平均凝固時間は、それぞれ、179±6秒、200±21秒、および161±3秒であった。これらのデータは、ARC19499によるTFPI抑制が、単純な血漿に基づく凝固アッセイにおいて凝固活性を改善することができることを示唆する。
実施例25
本実施例は、回転式トロンボエラストメトリー(ROTEM)で測定されるように、ARC19499が、血友病A患者および血友病B患者由来の全血試料中の凝固を改善することができることを実証する。
血液試料を、39人の健常な志願者(男性27人および女性12人)ならびに40人の血友病患者(全て男性)から収集した。40人の血友病患者のうち、3人の血友病B(HB)患者および28人の血友病A(HA)患者は、重度(1%未満のベースライン因子活性)であると診断され、1人のHA患者および1人のHB患者は、中程度の血友病(1〜5%のベースライン因子活性)に罹患しており、4人のHA患者および2人のHB患者が軽度の血友病(5%超のベースライン因子活性)を有した。21ゲージの翼状針を用いて、血液試料を、1:9の体積比で3.8%クエン酸ナトリウムを含有するプラスチックのVacuetteチューブ(Greiner Bio−One)内に注いだ。
凝固を、初代のトロンボエラストグラフィーシステム(TEG(商標))に基づくROTEM(Pentapharm GmbH)で分析した。典型的なROTEM実験では、血液を加熱したカップ内で、37℃でインキュベートする。フィブリンがカップとピンとの間に形成される時に、ピンの回転が検出されてトレースが生成され、このことは、経時的血栓形成を示唆する。以下のパラメーター:凝固時間(CT)、血栓形成時間(CFT)、最大血餅硬度(MCF)、およびアルファ角度(アルファ)を、ROTEMのトレースから分析することができる。凝固時間(CT)は、分析の開始から血餅の開始までの期間を特徴付ける。血栓形成時間(CFT)は、20mmの振幅に達するまでのその後の期間を特徴付ける。アルファ角度を、2mmの振幅点を通る曲線に対する中心線と接線との間の角度で得る。CFTおよびアルファ角度の両方ともに、血栓の発達の速度を示す。MCFは、ROTEMのトレースの最大振幅から計算され、血餅の安定性および強さを描写し、MCFは、フィブリノーゲンおよび血小板機能によって大きく左右される。
この一式の実験において、300μLのARC19499を混ぜた全血(0、0.2、0.6、2、6、20、60、200、または600nM ARC19499)を、予熱したプラスチックカップに移した。血液試料を20μLの0.2M CaCl2を用いて再石灰化し、凝固を約33fMの組織因子(TF)(Innovin,Dade Behring、1:200,000で希釈)で活性化した。全ての分析を37℃で実行した。測定を、トウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)なし、または100μg/mLのCTI(Haematologic Technologies Inc)を伴ってのいずれかで実行した。測定したパラメーターのうちのいずれかのARC19499の異なる濃度の間の比較を、Bonferroni Correctionを用いてWilcoxon符号付き順位検定で計算した。健常な対照を患者と比較するために、Mann−Whitney U−試験を用いた。第VIII因子(FVIII)活性に対する止血パラメーターの相関関係を分析するために、Spearmanの順位相関係数を用いた。0.05以下のp値を、統計的に有意であると見なした。
血友病患者のベースライン全血凝固特性は、健常な対照(全てp0.01未満)と比較して、CTIの不在下において、(延長されたCTで示される)延長された開始期ならびに減少した全血凝固の増殖段階(延長されたCFTおよびより小さいアルファ角度)を特徴とした(図83)。
2nM以上のARC19499の濃度は、血友病患者および健常な対照(p0.01未満)の両方において、全血凝固を著しく強化した。ARC19499の最大止血効果を、60nM以上の濃度で得た。血友病の血液において、ARC19499はCFTを減少させ、アルファ角度を健常な対照(p0.4超)のアルファ角度に等しい値まで増加させた。凝固時間はARC19499により実質的に改善されたが、完全に正常化されなかった。MCFは、対照と患者との間で著しくは異ならないが、ARC19499によって著しく増加した(血友病患者の2nM以上、および健常な対照の200nMと比較して、0nM ARC19499においてp0.05未満)。
血友病A患者試料中のFVIII凝固剤活性(FVIII:C)活性レベルとベースラインCTとの間の比較は、有意な相関関係を示唆した(p0.01未満)。したがって、血友病A患者のCTデータを、3つの群(1%未満のFVIII:C、1〜5%のFVIII:C、および5%超のFVIII:C)に階級化し、健常な対照のCTデータの次に再プロットした(図84)。先に示唆したように、2nM以上の濃度のARC19499は、凝固時間を著しく短縮した(p0.01未満)。血友病患者および健常な対照のCT値は著しく異なるままであったが(p0.05未満)、ARC19499は、ベースライン値と比較して、血友病患者のCTを最大で38%まで、健常な対照のCTを最大で19%まで短縮した。測定された1%未満のFVIII:Cを有する患者において、ARC19499がCTに最も影響を与えた。1%未満のFVIII:Cを有する患者のCTは完全に正常化されなかったが、ARC19499は、健常な対照の範囲および5%超のFVIII:Cを有する患者の値に等しい値にCTを短縮した。
28人の血友病患者および11人の健常な男性対照由来の試料を用いて、さらなるROTEM分析をCTIを含有する血液において実行した。この場合もやはり、凝固特性は、MCFを除く全てのパラメーターにおいて、患者と健常な対照(p0.01未満)では著しく異なった(図85)。CTIの不在下での測定に類似して、CTIを含有する血液へのARC19499の添加は、CTおよびCFTを著しく短縮し、アルファ角度およびMCF(濃度20nM以上、p0.01以下)を上昇させた。CTIを含有する血液において、前止血効果は、CTIを有さない血液よりも顕著であった。CTIを含有する血液への200nMのARC19499の添加時に、CTが著しく短縮されただけでなく(p0.01未満)、もはや健常な対照のベースラインCTとは異ならなかった(p=0.06)。ARC19499は、全血を欠乏するCTIで事前に観察されたように、CFTおよびCTI全血のアルファ角度も正常化した。60nM以上のARC19499と混ぜた血友病の血液のROTEMパラメーターは、健常な対照のベースライン値と等しかった(p0.1超)。
後天性血友病Aを有する1人の患者を採用した。この患者は、7%のFVIII:C活性、8.5BU/mLのFVIII阻害剤、および63秒上昇したaPTTを示した。この患者は、2回のFVIIIバイパス活性(FEIBA)の注入を受け、最も最近の注入は静脈穿刺の8時間以内であった。結果として、この患者のCTおよびCFTは、すでに正常であった(患者値:CT=496秒、CFT=213秒、健常な対照の平均値:CT=607秒、CFT=251秒)。ARC19499は、対照および遺伝性血友病患者よりもCTおよびCFTをさらに短縮した(CT:19%および30%に対して47%、CFT:38%および22%に対して45%)。ARC19499は、図86に示されるように、アルファ角度も増加させた。
後天性血友病を有する患者は極めてまれであるため、ROTEM実験を、FVIIIに対する中和抗体で処理された正常な血液上で繰り返した。健常な対照由来の血液を、ヒツジ抗ヒトFVIII多クローン性抗体(特定の活性2300BU/mg、Haematologic Technologies Inc)で事前にインキュベートした。図87は、同一の対照におけるCT(左パネル)およびCFT(右パネル)を示し、それぞれのグラフの左側に、FVIII抗体による阻害後の値が示される。60nM ARC19499の添加は、抗体で処理された血液のCTおよびCFTの両方を正常化した。
これらのデータは、ROTEMで測定されるように、ARC19499が、健常な対照および血友病患者由来の血液試料中の凝固に凝固促進効果を与えたことを示す。さらに、ARC19499は、血友病患者由来の血液におけるROTEM凝固パラメーターを正常化することができた。
実施例26
本実施例は、較正自動トロンボグラフィー(CAT)で測定されるように、ARC19499が、血友病A患者および血友病B患者由来の血漿試料中のトロンビン生成を改善することができることを実証する。
血液試料を39人の健常な志願者(男性27人および女性12人)ならびに40人の血友病患者(全て男性)から収集した。40人の血友病患者のうち、3人の血友病B(HB)患者および28人の血友病A(HA)患者は、重度(1%未満のベースライン因子活性)であると診断され、1人のHA患者および1人のHB患者は、中程度の血友病(1〜5%のベースライン因子活性)に罹患しており、4人のHA患者および2人のHB患者が軽度の血友病(5%超のベースライン因子活性)を有した。21ゲージの翼状針を用いて、血液試料を、1:9の体積比で3.8%クエン酸ナトリウムを含有するプラスチックのVacuetteチューブ(Greiner Bio−One)内に注いだ。乏血小板血漿(PPP)を、2段階の室温での遠心分離ステップ、すなわち、1700×gで10分間の第1の回転、その後、18,000×gで15分間の第2の回転により、これらの試料から調製した。100μg/mLのトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI、Haematologic Technologies Inc.)を含有するPPPを、アッセイで用いるために、異なる濃度のARC19499(0、0.2、0.6、2、6、20、60、200、または600nM ARC19499)と混ぜた。
96ウェルのマイクロタイタープレート中に、80μLのPPPを、20μLの組織因子(TF)およびリン脂質の混合物(PPP−Reagent Low,Thrombinoscope BV)に添加することにより、CATアッセイを実行した。TFおよびリン脂質の最終濃度は、それぞれ、1pMおよび4μMであった。20μLの蛍光基質(FluCa Kit,Thrombinoscope BV)を添加することにより反応を開始し、Fluoroskan Ascent蛍光光度計(Thermo Fisher Scientific)を用いて蛍光性を検出した。Thrombinoscopeソフトウェアによる分析は、y軸にトロンビン(nM)、およびx軸に時間(分間)を有するトロンビン生成曲線をもたらした。ソフトウェアは、遅延時間(分、最初のトロンビン生成の開始までの時間)、内因性トロンビンポテンシャル(ETP、nM、トロンビン生成曲線下面積)、ピークトロンビン(nM、アッセイの任意のある時点で生成された最高量のトロンビン)、ピークまでの時間(分、ピークトロンビン濃度に達するまでの時間)、およびスタートテール(分、トロンビン生成の終了に達する時点)を含む、いくつかのパラメーターの値を決定した。測定したパラメーターのうちのいずれかの異なる濃度のARC19499の間の比較を、Bonferroni Correctionを用いてWilcoxon符号付き順位検定で計算した。健常な対照を患者と比較するために、Mann−WhitneyU試験を使用した。0.05以下のp値を、統計的に有意であると見なした。
200nMのARC19499の存在下および不在下でのトロンビン生成と比較した、代表的な血友病A患者(左パネル)および健常な対照(右パネル)のCATデータの例が図88に示される。ARC19499の添加は、血友病A患者試料におけるトロンビン生成曲線を正常化し、健常な対照試料におけるトロンビン生成を増加させた。
全ての血友病患者および健常な男性対照についての平均CATパラメーターが図89に示される。ベースラインにおいて、血友病患者群は、延長されたピークまでの時間、より低いピークトロンビン生成、および大幅に損なわれたETPを示した。ARC19499の不在下において、以下のCATパラメーター:ピークまでの時間、ピークトロンビン生成、ETP、およびスタートテールは、健常な男性対照と血友病患者との間で著しく異なった(p0.001未満)。健常な対照と血友病患者との間に遅延時間における有意な差異はなかった(図90)。ARC19499の添加は、CATアッセイによって評価されたパラメーターの全てを著しくを高めた(図89および図90)。60nMを超える濃度のARC19499は、血友病患者のCATパラメーターを正常化した。以下のCATパラメーター:スタートテール、ピークまでの時間、およびETPにおいて、健常な対照のベースライン値と、60nM以上のARC19499を添加して測定された血友病患者の値との間にもはや有意な差異はなかった(p0.05超)(図89)。患者と対照との間のピークトロンビンは著しく異なるままであったが、600nMのARC19499は、血友病患者のピークトロンビンをベースラインにおいて47nMから135nMに185%増加させ、したがって、健常な対照の正常な範囲に達した(健常な対照の平均ピークトロンビン167nM、最小100nM、最大297nM)。ARC19499は、両群において遅延時間を著しく短縮したが(0.6nMを超える濃度に対してp0.001未満)、それらの群の間の差異は、引き続き有意ではなかった(図90)。
図91は、ピークトロンビンデータを3つの群(1%未満のFVIII凝固剤活性(FVIII:C)、1〜5%のFVIII:C、および5%超のFVIII:C)に階級化し、健常な対照ピークトロンビンデータの次に再プロットしたピークトロンビンデータを示す。増加した濃度のARC19499は、4つ全ての群においてピークトロンビン生成を増加させた。ARC19499は、ベースラインの平均の健常な対照値と比較して、1%未満のFVIII:C血漿においてピークトロンビンを完全に正常化しなかったが、60nM以上の値のARC19499で、5%超のFVIII:C濃度を有する患者のベースラインよりも高いベースラインおよび健常な対照において観察された値の範囲内(図91の斜線領域)に達した。
CATアッセイを、後天性血友病を有する患者由来のARC19499を混ぜた試料上でも実行した。この患者は、7%のFVIII:C活性、8.5BU/mL FVIII阻害剤、および63秒上昇したaPTTを示した。この患者は、2回のFVIIIバイパス活性(FEIBA)の注入を受け、最も最近の注入は静脈穿刺の8時間以内であった。結果として、この患者の凝固のROTEMパラメーターは、すでに正常であった(患者値:CT=496秒、CFT=213秒、健常な対照の平均値:CT=607秒、CFT=251秒)。0、2、20、および200nM ARC19499の存在下で測定されたトロンビン生成曲線が図92に示される。この患者は正常なROTEM値を示したが、ベースラインCAT値は大幅に損なわれた。遺伝性血友病を有する患者に関して、増加した濃度のARC19499は、この患者由来の試料中のトロンビン生成を正常化した。ARC19499は、ピークトロンビンおよび患者のETPに最も影響したが、それらの両方ともに2.5倍以上増加した。ピークトロンビンを正常化した(ピークトロンビン:ベースライン54nM〜最大165nM、健常な対照の平均ベースライン値:164nM)。さらに、ARC19499(200nM)は、ETPを健常な対照の値を上回った値に増加させた(ETP:ベースライン973nM〜最大2577nM、健常な対照の平均ベースライン:ETP1322nM)。
CAT実験をFVIIIに対する中和抗体で処理された正常な血漿上で繰り返した。健常な対照由来のPPPを、ヒツジ抗ヒトFVIII多クローン性抗体(特定の活性2300BU/mg、Haematologic Technologies Inc)で事前にインキュベートした。図93は、同一の対照におけるETP(左パネル)およびピークトロンビン(右パネル)を示し、それぞれのグラフの左側に、FVIII抗体による阻害後の値が示される。60nM ARC19499の添加は、抗体で処理された血漿におけるETPおよびピークトロンビンの両方を正常化した。
これらのデータは、CATで測定されるように、ARC19499が、健常な対照および血友病患者由来の血液試料中のトロンビン生成に凝固促進効果を与えたことを示す。さらに、ARC19499は、血友病患者由来の血漿におけるCATパラメーターを正常化することができた。
実施例27
本実施例は、校正自動トロンビン生成(CAT)で測定されるように、ARC19499が、重度、中程度、および軽度の血友病A患者、ならびに重度の血友病B患者由来の血漿試料中のトロンビン生成時間(TGT)を改善することができることを実証する。
血液を、3.2%クエン酸ナトリウムおよび250μLの1.3mg/mLトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)を含有する3.2mLのVacuetteチューブ内に収集し、最終CTI濃度は100μg/mLであった。試料を、重度(1%未満のFVIII、n=10)、中程度(1〜5%のFVIII、n=7)、および軽度(5〜40%のFVIII、n=5)血友病Aを有する患者、重度の血友病B(1%未満のFIX、n=5)を有する患者、ならびに健常な志願者(n=10)から収集した。CATアッセイ用の乏血小板血漿(PPP)を調製するために、チューブを2500×gで15分間遠心分離し、上清を新鮮なEppendorfチューブに移し、その後、11000×gで5分間遠心分離した。血漿をすぐに使用するか、あるいは後に使用するために−80℃で凍結させるかのいずれかを行った。トロンビン生成へのARC19499の影響を分析するために、ARC19499を、10、100、300、1000、3000、または10,000ng/mL(0.9、9.0、27.1、90.3、271、または903nM)の濃度で血漿に添加した。
トロンビン生成時間(TGT)アッセイを、Thrombinoscopeソフトウェアバーション2.6でプログラム化されたThermo Scientific Fluoroskan Ascent Microplate Fluorometer(シリアル番号374−90031C)から成るThrombinoscope機器(Thrombinoscope,Maastricht,The Netherlands)上で、較正自動トロンボグラフィー(CAT)により実行した。80μLの血漿を、20μLの再脂質化された組換え組織因子(TF、最終濃度1pM)と混合し、20μLのFluCa基質の添加によりアッセイを開始した。Thrombinoscopeソフトウェアによるデータの分析は、y軸上にトロンビン(nM)およびx軸上に時間(分間)を有するトロンビン生成曲線をもたらした。ソフトウェアは、遅延時間(分、最初のトロンビン生成の開始までの時間)、内因性トロンビンポテンシャル(ETP、nM、トロンビン生成曲線下面積)、ピークトロンビン(nM、アッセイの任意のある時点で生成された最高量のトロンビン)、およびピークまでの時間(分、ピークトロンビン濃度に達するまでの時間)を含む、いくつかのパラメーターの値を決定した。全ての測定を二重に実行した。各群の平均における差異を、必要に応じて、スチューデントt検定またはANOVAを用いて試験した。
図94〜97は、健常な志願者(HV)、重度の血友病Aを有する患者(SHA)、中程度の血友病Aを有する患者(MoHA)、および軽度の血友病Aを有する患者(MiHA)からの代表的なCATデータを示す。新たに処理された血漿で実行した実験での健常な志願者、全ての3つの血友病A患者群、および重度の血友病B患者群の平均データは、図98に示される。ベースラインETPおよびピークトロンビンパラメーターは、健常な対照と比較して、全ての血友病患者群において減少し、ピークまでの時間は増加した。ベースラインパラメーター値が3つの血友病A患者群の間で本質的に区別不能であったため、FVIII欠乏の重症度は、観察されたトロンビン生成に影響を与えなかった。FVIII欠乏は、健常な対照と比較して、ベースライン遅延時間にほとんど影響を与えなかったが、FIX欠乏は、ベースラインで約2倍の遅延時間の延長をもたらした。同様のCATパラメーター値が凍結融解を経た血漿試料において観察されたため、血漿の凍結は、トロンビン生成にほとんど影響を与えなかった(図99)。
個別のデータプロット(図95〜97)ならびに平均データプロット(図98および図99)に示されるように、ARC19499の添加は、血友病血漿中のトロンビン生成を改善した。ETPは、最大10,000ng/mL(903nM)の増加した濃度のARC19499とともに増加し、全ての血友病群において正常なレベルに達した(図98および図99)。改善への傾向もピークトロンビンにおいて観察された。このパラメーターの正常化が達成されなかったが、3〜5倍の改善が全ての患者群において観察された。ARC19499は、いずれの血友病A患者群においても遅延時間にほとんど影響を与えなかったが、血友病B由来の血漿における遅延時間をわずかに改善した。ピークまでの時間のわずかな改善も、患者群の全てにおいて観察された。健常な志願者の血漿において、ARC19499の添加は、いずれのCATパラメーターにもほとんど影響を与えなかった。
以下の表:表3.重度の血友病A(SHA)、表4.中程度の血友病A(MoHA)、表5.軽度の血友病A(MiHA)、表6.重度の血友病B(SHB)、および表7.正常群における新鮮な血漿および凍結血漿についての平均CATデータが、四分位範囲で示される。総合すると、データは、ARC19499が、全ての重症度レベルの血友病A患者の血漿、および重度の血友病B血漿中のトロンビン生成を改善したことを示す。
実施例28
本実施例は、トロンボエラストグラフィー(TEG)で測定されるように、ARC19499が、血友病Aおよび血友病B患者由来の全血および血漿試料中の凝固を改善することができることを実証する。
血液を、3.2%のクエン酸ナトリウムおよび250μLの1.3mg/mLトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)を含有する3.2mLのVacuetteチューブ内に収集し、最終CTI濃度は100μg/mLであった。試料を、重度(1%未満のFVIII、n=10)、中程度(1〜5%のFVIII、n=7)、および軽度(5〜40%のFVIII、n=5)血友病Aを有する患者、重度の血友病B(1%未満のFIX、n=5)を有する患者、ならびに健常な志願者(n=10)から収集した。CATアッセイ用の乏血小板血漿(PPP)を調製するために、チューブを2500×gで15分間遠心分離し、上清を新鮮なEppendorfチューブに移し、その後、再び11000×gで5分間遠心分離した。血漿をすぐに使用するか、あるいは後に使用するために−80℃で凍結させるかのいずれかを行った。トロンビン生成へのARC19499の影響を分析するために、ARC19499を、10、100、300、1000、3000、または10,000ng/mL(0.9、9.0、27.1、90.3、271、または903nM)の濃度で血漿に添加した。
トロンボエラストグラフィー(TEG)アッセイを、HaemoscopeのTEG5000シリーズの機器を用いて実行した。使い捨ての反応カップ中に、300μLの全血を40μLの9pM組織因子(TF)および20μLの0.2M CaCl2に添加して、全血TEGアッセイを実行した。時間トレースに対する振幅を分析して、R時間(血栓形成を開始するまでの時間、振幅=2mm)、K値(振幅20mmに達するのに必要とされる時間に等しい、血栓形成の速度の測定)、および角度(R時間に設定されるその開始点で描かれた振幅トレースの接線から計算される、血栓形成の速度の別の測定)を得た。血漿TEGアッセイを補充的リン脂質(PL)を含めたことを除いて同様に実行した。これらのアッセイにおいて、300μLのPPPを、10μLの38pM TF、30μLの48μM PL(20%ホスファチジルセリン、20%ホスファチジルエタノールアミン、60%ホスファチジルコリン、Avanti Polar Lipids)、および20μLの0.2M CaCl2と混合した。これらの反応における最終PL濃度は4μMであった。
図100〜103は、健常な志願者(HV)、重度の血友病Aを有する患者(SHA)、中程度の血友病Aを有する患者(MoHA)、および軽度の血友病Aを有する患者(MiHA)からの代表的な全血TEGデータを示す。健常な志願者、全ての3つの血友病A患者群、および重度の血友病B患者群の平均データが図104に示される。ベースラインR時間の値は、健常な対照と比較して、全ての血友病患者群において上昇し、このことは、血餅開始の遅延を示唆し、最も有意な影響が重度の血友病Aおよび血友病B試料において観察された。さらに、健常な対照と比較して、血友病患者試料のK値は増加し、角度は減少した。これらの影響は、因子欠乏の重大度にかかわらず、全ての患者群において同様であったが、これらの影響の両方ともに、正常群と比較して、より緩徐な血栓形成を示す。
個別のデータ(図101〜103)および平均データプロット(図104)に示されるように、ARC19499の添加は、TEGで測定されるように、全血中の血栓形成を改善した。増加した濃度のARC19499(最大10,000ng/mL、903nM)は、患者群の全てにおいて、TEGパラメーターの全てを実質的に正常化した(図104)。ARC19499は、正常な血餅開始(R時間)および発達(K値および角度)を回復させた。
同様の結果が、血漿TEGアッセイで観察された。重度の血友病A(SHA)、中程度の血友病A(MoHA)、軽度の血友病A(MiHA)を有する代表的な患者からの個別の血漿TEGデータが図105〜107に示され、平均データは図108に示される。血友病血漿試料におけるベースライン凝固効果は、3つ全てのTEGパラメーターにおいて疾患重症度との相関への傾向を示し、最も実質的な効果が重度の血友病Aおよび血友病B試料で観察された(図108)。ARC19499の添加は、血栓形成を示す3つ全てのパラメーターを改善した。増加した濃度のARC19499は、R時間およびK値で測定されるように、患者群の全てにおいて凝固を正常化するように見えた。対照的に、ARC19499が、軽度および中程度の血友病A群の両方の角度を正常化するように見えた一方で、重度の血友病Aおよび血友病B群の角度は、試験した最高濃度のARC19499においてさえも完全には補正されなかった。それにもかかわらず、実質的な改善が、群の全てにおいて観察された。
以下の表:表8.重度の血友病A(SHA)、表9.中程度の血友病A(MoHA)、表10.軽度の血友病A(MiHA)、表11.重度の血友病B(SHB)、および表12.正常群における全血TEG測定についての平均データが、四分位範囲で示される。さらなる表は、血漿TEG測定:表13.重度の血友病A(SHA)、表14.中程度の血友病A(MoHA)、表15.軽度の血友病A(MiHA)、表16.重度の血友病B(SHB)、および表17.正常群についての平均データを四分位範囲で示す。表の全てにおいて、各パラメーターの予期された正常な範囲は、欄見出しの斜字体で示される。総合すると、本データは、ARC19499が、全ての重症度レベルの血友病A患者血漿および重度の血友病B血漿中の血栓形成を改善することを示す。
実施例29
本実施例は、ARC19499のインビトロ活性を逆転させることができることを実証する。
4つの拮抗薬(ARC23085、ARC23087、ARC23088、およびARC23089)をARC19499と混合し、血友病A血漿において、校正自動トロンビン生成(CAT)およびトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))アッセイの両方で試験した(図109)。
CATアッセイに関して、ARC19499を、それぞれの拮抗薬と個別に37℃で5分間インキュベートした。次に、混合物を、100nM ARC19499の最終濃度および増加した濃度のARC23085、ARC23087、ARC23088、またはARC23089(2.5、5、10、20、40、80、160、および320nM)で血友病A血漿に添加した。次に、CATアッセイを、先に説明したように、最終TF濃度1.0pMを用いて実行した。ARC19499単独で、血友病A血漿のETPを約600nMから約900nMに改善した(図109A)。試験した4つ全ての拮抗薬は、80nMを超える濃度で試験した時に、この改善を阻止した。ARC23085およびARC23089が160nMでARC19499活性をほぼ完全に逆転させた一方で、ARC23087およびARC23088は、320nMでARC19499活性をほぼ完全に逆転させた。ピークトロンビンを見ると(図109B)、それら4つの拮抗薬は、80nMで同様のARC19499活性の部分的逆転を示した。この場合もやはり、160nMの時点でARC23085およびARC23089がARC19499活性を完全に逆転させた一方で、他の2つの拮抗薬は、320nMの時点でARC19499活性を完全に逆転させた。
TEG(登録商標)アッセイに関して、ARC19499およびそれら4つの拮抗薬のうちの1つずつを、血友病A血漿と混合し、TFおよびCaCl2を添加して凝固を開始させた。これを、ARC19499および追加の拮抗薬の37℃での5分間の事前インキュベーションを伴って、およびインキュベーションを伴わずに実行した。ARC19499を単独で試験した時に、アプタマーは、血友病A血漿の延長されたR値を54分から8.3分に補正した(図109C)。ARC23085は、この改善を部分的に逆転させ、それぞれ、5分間の事前インキュベーションを伴って30分、および伴わずに24分のR値となった。ARC23087は、事前インキュベーションなしではARC19499を逆転させることができないが、インキュベーションを伴ってARC19499活性を逆転させたことを実証し、38分のR値をもたらした。ARC23088は、本アッセイにおいて、任意の事前インキュベーションに関係なく、ARC19499活性を逆転させる能力が皆無に近かったことを実証した。ARC23087と同様に、ARC23089は、事前インキュベーションなしでは、ARC19499活性を逆転させる能力がほとんどないことを示した。しかしながら、本アッセイの前に拮抗薬をARC19499とともにインキュベートした時に、ARC19499活性をほぼ完全に逆転させ、42分のR値をもたらした(図109C)。
これらの実験は、ARC19499のインビトロ活性を逆転させることができることを示唆する。
実施例30
本実施例は、ARC19499が低分子量ヘパリン(LMWH)のインビトロ抗凝固活性を阻害しないことを実証する。
本アッセイにおいて、増加した濃度のARC19499および増加した濃度のLMWHをともに混合し、血友病A血漿に添加した。これらの血漿混合物のトロンビンポテンシャルを、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイを用いて分析した。図110は、それぞれのLMWH濃度の存在下での増加したアプタマーの濃度のトロンビン生成曲線を示す。ARC19499を、0.1、1、10、100、および1000nMで試験した。LMWHを、0(図110A)、0.156(図110B)、0.312(図110C)、0.625(図110D)、1.25(図110E)、2.5(図110F)、および5.0IU(国際単位)/mL(図110G)で試験した。
図111Aにおいて、それぞれの組み合わせのETP値をy軸に示し、LMWH濃度をx軸に示す。図111Bのピークトロンビン値においても同様にした。両方の事例において、治療用量のLMWH(0.5〜1.0IU/mL)は、トロンビン生成を強力に阻害し、より高い濃度では、最大1000nM ARC19499の存在下でさえ、いかなるトロンビンの生成もほぼ完全に阻止した(図111)。LMWHの381±24.3nMおよび299±18.0nMのIC50値を、それぞれ、ARC19499の不在下におけるETPおよびピークトロンビンデータから計算し、これらの結果は、以前の測定と一致している(Robert et al.,Is thrombin generation the new rapid,reliable and relevant pharmacological tool for the development of anticoagulant drugs?,Pharmacol Res.2009;59:160−166)。増加した濃度のARC19499は、LMWHのIC50を著しく変化させるようには見えず(図112)、このことは、ARC19499がLMWHの抗凝固活性を妨害しないことを示唆する。
本実験は、1000nM ARC19499の存在下でさえも、治療用量のLMWHが依然としてインビトロアッセイにおいて抗凝固剤のままであることを示唆する。
実施例31
本実施例は、TFPIアプタマーが血清ヌクレアーゼに対して安定であることを実証する。
本実験において、各アプタマーの50μMを、90%のプールされたヒト、カニクイザル、またはラット血清中で、37℃で72時間インキュベートした。図113に示されるように、試料をHPLCで分析し、インキュベーション時間の関数として残存する割合を決定した。
ARC19498およびARC19499の両方ともに、72時間にわたって、ヒト、サル、ならびにラット血清において95%を超えて安定していた(図113Aおよび113B)。
ARC19500は、72時間にわたって、ヒト、サル、およびラット血清において92%を超えて安定しており(図113C)、ARC19501は、72時間にわたって、ヒト、サル、およびラット血清において80%を超えて安定していた(図113D)。
ARC19881は、72時間にわたって、ヒト、サル、およびラット血清において78%を超えて安定しており(図113E)、ARC19882は、72時間にわたって、ヒト、サル、およびラット血清において91%を超えて安定していた(図113F)。
実施例32
本実施例は、TFPIアプタマーが生物学的活性を有することを実証する。
本実験において、血友病Aの非ヒト霊長類モデルを、カニクイザルに、ヒト第VIII因子(20mg、50,000ベセズダ単位)に対するヒツジ多クローン性抗体の単回静脈内(IV)ボーラスを注入することにより作成した。静脈内注入の3.5時間後、サルを、生理食塩水(1mL/kg)、組換え第VIIa因子(rFVIIa)(NovoSeven(登録商標)、90μg/kgボーラス)、またはARC19499(600μg/kg、300μg/kg、もしくは100μg/kgボーラスのいずれか)のいずれかで処理した。クエン酸血液試料を、抗体投与前(ベースライン)、抗体投与の2.5時間後、薬物/生理食塩水での処理の15分間後(時間=3.75時間)、ならびに薬物/生理食塩水での処理の1時間および2時間後(それぞれ、時間=4.5および5.5時間)に得た。血液を処理して血漿を生成し、クエン酸血漿試料を、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、第VIII因子機能、およびトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))についてアッセイした。生理食塩水で処理したサルは、5.5時間の時点で引き出された後に、ARC19499(600μg/kg)の治療を受けた。本治療を受けてから15分後に、別のクエン酸血液試料を注ぎ、血漿を処理した。
ARC19499がサルTFPIを阻害することを確実にするために、抗体処理後にサルから採取された血漿を、1〜1000nMの増加した濃度のARC19499とエクスビボで混合し、TEG(登録商標)アッセイで試験した(図114)。アプタマーを混合した血漿を、抗体処理前および抗体処理後の両方において(それぞれ、実線および点線)、アプタマーを有さない血漿と比較した。抗体処理のみが、R値を延長した。この抗体で処理された血漿へのARC19499の添加は、R値をベースラインレベル近くまで補正し、このことは、アプタマーがサル血漿と交差反応したことを示唆する。
抗体注入の2.5時間後に回収した血漿試料において、第VIII因子レベルは0.6%を下回り、5.5時間のアッセイにわたってそのままの状態であった(図115)。予想通り、FVIIIに対して非感受性であるPTは、抗体投与後に変化しないままであったが(図116A)、rFVIIaの注入時に、PT値の13.0±0.4秒から10.7±0.4秒へのわずかな下落があった。aPTT値は、第VIII因子抗体の投与後に増加した(図116B)。PTアッセイで見られるように、rFVIIa投与は、aPTTアッセイにおける凝固時間の減少をもたらした。生理食塩水処理時に、aPTT値に変化はなかった。(全ての濃度での)ARC19499での治療は、aPTTの延長をもたらした。5.5時間後の時点でARC19499ボーラス投与を受けた生理食塩水で処理した動物も、アプタマー投与後にaPTTの延長を示した。この血友病A様のモデルにおける血栓の発達へのARC19499での治療の影響を、組織因子(TF)活性化TEG(登録商標)を用いてアッセイした。試験した全ての動物において、抗体投与は、R値の延長をもたらした(図117A)。生理食塩水での処理がR値にさらなる影響を与えなかった一方で、rFVIIaならびに600μg/kgおよび300μg/kg ARC19499での治療の両方ともに、ベースラインに近いレベルまでのR値の減少をもたらした。ARC19499の100μg/kg用量は無効用量であり、R値にプラスの影響を与えなかった。生理食塩水で処理したサルにおいて、研究の終盤でのARC19499のさらなる注入は、R値の減少に即効性があった。角度(図117B)および最大振幅(MA)(図117C)は、抗体投与後に両方ともに減少した。600μg/kgおよび300μg/kg ARC19499での治療は、NovoSeven(登録商標)と同様に、角度にますます影響を与えるように見えた一方で、100μg/kg ARC19499での治療は、生理食塩水処理に同様に反応を示した(図117B)。生理食塩水を含む処理の全ては、MAに付加的影響を与えないように見えた(図117C)。
第2の一連の関連実験において、サルを、同一濃度の抗FVIII抗体で、続いて、1時間後に、300μg/kg ARC19499または90μg/kg NovoSeven(登録商標)で処理した。クエン酸血液試料を得て、抗体投与の60分間後、ならびに薬物投与の60、120、180、240、300、および420分後に、ベースラインの血漿を処理した。血漿試料を、上述のように、TF活性化TEG(登録商標)アッセイを用いて試験した。前述同様に、抗体投与は、R値の増加(図118A)、ならびに角度およびMA値の減少(図118B〜C)をもたらした。ARC19499およびNovoSeven(登録商標)は、非常に類似した様式で反応を示し、R値をベースラインレベル近くまで回復させ、角度およびMA値の両方を改善した(図118)。
総合すると、第VIII因子、aPTT、およびTEG(登録商標)の全てが、これらのサルにおいて、血友病A様の状態をうまく引き起こしたことを示唆する。ARC19499の注入時のaPTTの適度な延長は、恐らく、先に他のアプタマーで観察された、内因性カスケードのさらなる非特異的阻害を反映する。しかしながら、TEG(登録商標)アッセイで測定されるTF活性化血漿における凝固時間(R値)の明確な補正は、第VIII因子の欠損による止血欠陥が、TFPIのARC19499阻害によりうまく回避されたことを示唆する。
ARC19499での治療におけるさらなる観察で、TFPIの血漿レベルの増加をもたらすように見えた。予備実験において、ARC19499での治療後、上述のこれらのカニクイザル実験からの試料のTFPI濃度は、1:40で希釈した際にTFPI ELISAの定量の上限を超えた。静脈内または皮下(SC)投与のいずれかを介して非常に高い用量(20mg/kg)のARC19499を受けたカニクイザル由来のEDTA血漿試料のTFPIレベルを測定するこにより、この結果をより綿密に分析した。血液試料を2週間にわたって定期的に注ぐことにより、より延長されたARC19499への曝露後のTFPI血漿濃度における変化の評価を可能にした。TFPI濃度を、以下:投与前、投与後0.083(静脈内のみ)、0.5、2、6、12、36、72、120、168、240、および336時間の時点で連続して希釈した血漿試料(最大1:1600に希釈)中で測定した。ARC19499の静脈内投与または皮下投与のいずれかで治療された動物において、TFPIレベルは、第1の時点で約0.2nM(投与前)から5〜7nMにすぐに増加し、その後、ピークレベルまでの時間にわたってより緩徐に、それぞれ、91±12および71±2nMに増加した(図119)。TFPIレベルのパターンは、静脈内投与または皮下投与のいずれかで治療されたサルにおいて類似しており、72〜120時間の時点でピークレベルまで増加し、緩徐な下落が続いた。しかしながら、ARC19499 tmax推定値は、それぞれ、静脈内投与では5分、皮下投与では24時間であった(データ示されず)。したがって、ARC19499がインビボで血漿TFPIの増加を促したが、長期にわたるTFPIおよびARC19499濃度の変化は、必ずしも相関しているわけではない。TFPIの増加の機構は知られていないが、ARC19499への最初の曝露が内皮細胞表面からのTFPIの急速な放出を引き起こした一方で、それに続く増加は、細胞内貯蔵からのTFPIの緩徐な放出、TFPI発現の上方調節、および/またはTFPIクリアランス機構の阻害によるものである可能性がある。アプタマー治療の際のこの血漿TFPIレベルの増加は、ARC19499に対して特異的であった。TFPI以外の標的に対するアプタマーは、TFPIレベルを増加させるようには見えず、特に、ARC19499と同一のレベルまで増加させるようには見えなかった(データ示されず)。
実施例33
本実施例は、ARC19499が血友病Aの非ヒト霊長類(NHP)モデルの出血時間を短縮し、この短縮された出血時間が、大抵の場合において、血友病Aに関連し、かつ以下で説明されるNHPモデルに含まれる延長されたR値からのトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))R値(初期血栓形成までの時間の測定)の同時補正により反映されることを実証する。
ARC19499で治療した場合の出血時間およびARC19499で治療しなかった場合の出血時間を、カニクイザルに抗FVIII抗体(FVIII Ab)を投与して血友病A様の状態を引き起こした血友病AのNHPモデルにおいて評価した。図120に図示されるように、出血時間を、実験の開始時(ベースライン)、次いで、FVIII Ab投与の2.5時間後に測定した。次に、1mg/kg ARC19499のボーラス投与での処理を開始した。出血時間を、全てのサル群について、第1のARC19499投与の1時間後に測定した。出血時間が補正されなかったサルに関して、出血時間を、第2のARC19499投与の17分後に再評価した。出血時間が依然として補正されなかったサルに関して、出血時間を、第3のARC19499投与の17分間後に再評価した(第3群および第4群)。
血液試料の出血時間の評価および収集に関して、サルを麻酔し、血圧決定のために大腿静脈内に線を設置し、出血時間の評価に使用した伏在静脈の反対側の伏在静脈に、投薬およびサンプリングのために、22ゲージのカテーテルを挿入した。出血時間の評価および関連したFVIII AbとARC19499投薬のスケジュールならびに血液サンプリングが図120に示される。前処理ベースライン血液試料および出血時間(前処理出血時間、BT0)を、それぞれ、FVIII Ab投薬の10分前および5分前に採取した。まず生理食塩水を混合した約3〜4mLの血液を回収することにより血液試料を採取し、その後、それを取っておいた。次に、希釈されていない血液試料を、シリンジを用いて採取した。収集した血液をすぐにクエン酸塩含有チューブ内に注入し、10回反転させて混合した。クエン酸全血の試料をTEG(登録商標)で分析し、残りのクエン酸血液を処理して分析用の血漿を得た。次に、第1の血液−生理食塩水試料を、サルに戻し注入し、その後、採取した血液試料と同等の量の生理食塩水を流した。
伏在静脈を出血時間の評価のために曝露した。22ゲージ、1インチの皮下注射針(Kendall Monoject,Kendall Healthcare,Mansfield, MA)を、止血鉗子を用いて90°の角度に対して斜角で慎重に屈曲させ、屈曲は、注射針の先端から5mmであった。注射針を、注射針の屈曲に至るまで曝露した静脈内に挿入し、1つの静脈壁のみに穿刺した。血液を、Surgicutt Bleeding Time Blotting Paper(ITC,Edison,NJ)を用いて静脈から取り出し、実際の穿刺部位に触れないように注意した。血液を取り出す能力の喪失によって決定されるように、出血開始の瞬間から出血停止までの時間を測定した。血圧を、出血時間評価の1〜5分前および1〜5分後に測定した。出血時間の評価後、創傷をGluture(Abbott Labs, Abbott Park, IL)で閉じた。
FVIII Ab(Haematologic Technologies Inc(Essex Junction,VT)のヒツジ抗ヒトFVIII多クローン性抗体、ロットY1217)を、出血時間の評価に使用した伏在静脈の反対側の伏在静脈に設置した22ゲージのカテーテルを介する緩徐な単回ボーラス投与として、サルの静脈内に投与(静脈内投与)した。これを使用するまで−80℃で凍結保存し、使用前に3回を超えずに解凍および再凍結させた。それぞれのサルは、12,642ベセズダ単位/kgのFVIII Abを受けた。FVIII Abを与えた2時間後に別の血液試料を採取し、30分間後に出血時間を評価した(FVIII投与後の出血時間、BTFVIII)。ARC19499の第1の用量を、緩徐な単回ボーラス投与として静脈内投与した。第VIII因子AbまたはARC19499のいずれかの投与前の全ての事例において、0.5〜1.0mLの流体をカテーテルから除去し、FVIII AbまたはARC19499を投与し、その後、カテーテルを2〜3mLの温生理食塩水で洗い流した。血液試料を55分間後に採取した。第1のARC19499用量の投与の1時間後、出血時間を評価した(ARC19499の第1の用量投与後の出血時間、BT1)。次に、出血時間が第1のARC19499用量によって補正されたかを決定した。処理前のベースラインと第1のARC19499用量投与後の出血時間との間の差異が、処理前のベースラインとFVIII投与後の出血時間との間の差異の半分未満(すなわち、(BT1〜BT0)/(BTFVIII〜BT0)が0.5未満)である場合に、補正が実現されたと見なされる。出血時間が無事に補正された場合、その動物についての出血時間の研究を終了した。出血時間が補正されなかった場合、第2の1mg/kg ARC19499用量を、先の出血時間の評価の開始10分後に投与した。血液試料を12分後に採取し、出血時間の評価を第2のARC19499注入の17分後に開始した(第2のARC19499用量投与後の出血時間、BT2)。次に、出血時間が第2のARC19499用量によって補正されたかを決定した。出血時間が無事補正された場合、その動物についての出血時間の研究を終了した。出血時間が補正されなかった場合、第3の1mg/kg ARC19499用量を、先の出血時間の評価の開始10分後に投与した。血液試料を12分後に採取し、出血時間の評価を第3のARC19499注入の17分後に開始した(第3のARC19499用量投与後の出血時間、BT3)。次に、出血時間が第3のARC19499用量によって補正されたかを決定した。出血時間が無事補正されたかにかかわらず、その動物についての出血時間の研究を終了した。出血時間が補正されなかった場合、第4の3mg/kg ARC19499用量を、先の出血時間の評価の開始14分後に投与し、血液試料を全血TEG(登録商標)分析のために採取したが、本研究で使用した種類に類似した利用可能な静脈の種類の欠如のため、これ以上出血時間を評価しなかった。翌24時間にわたる出血の予防措置として、それぞれの動物の回復前にARC19499(1〜3mg/kg)をさらに投与した。それぞれの動物の血液サンプリング、化合物の投与、および出血時間の評価の実際の時点は、報告した時点の5分以内である。
本研究におけるサル由来のクエン酸血漿中のFVIIIa活性レベルを、Chromogenix(Diapharma,Columbus OH)のCoamatic FVIIIアッセイを用いて測定した。本研究中に得た試料を、処理前のベースライン血漿試料のプールから生成された標準曲線と比較した。全ての試料および標準物質を、キット添付の反応緩衝液中で80倍に希釈した。反応を製造業者の指示通りに実行し、405nmでの吸光度の変化を45分間にわたって読み取った。カニクイザル血漿試料に関連するFVIII活性レベルは、表18および図121(表18Aおよび図121A:第1群:出血時間を1回用量の1mg/kg ARC19499で補正したサル、表18Bおよび図121B:第2群:出血時間を2回用量の1mg/kg ARC19499で補正したサル、表18Cおよび図121C:第3群:出血時間を3回用量の1mg/kg ARC19499で補正したサル、表18Dおよび図121D:第4群:出血時間を3回用量の1mg/kg ARC19499補正しなかったサル)に示される。抗体処理の前に、全てのサル由来の血漿は、57.6%〜93.5%まで様々な非常に高いFVIII活性レベルを有した(表18)。抗体処理後、この活性は、全ての動物において測定可能なレベル未満(0.1%未満)に減少し、本アッセイにわたって低いままであった(図121)。最も重要なことに、本アッセイは、動物の異なる群の間のFVIII不活性化のレベルに差異を留意せず、このことは、出血時間を補正するのに必要とされるARC19499の用量が、FVIII Ab投与後のFVIII活性の異なるレベルには関連していないことを示唆する。
(出血時間が1回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第1群のサルの群平均出血時間(±標準誤差)が表19に示される。血液試料の時点に対するこの群の群平均出血時間も図122に図示する(図122A:秒単位、図122B:ベースライン出血時間の%)。抗FVIII抗体での処理は、群平均出血時間を群平均ベースライン出血時間の203±15%に延長するという結果をもたらした。1mg/kg ARC19499でのサルの処理は、群平均出血時間を本質的にベースラインレベルまで戻して補正した(群平均ベースライン出血時間の102±11%)。第1群のサルの個別の出血時間が表20に示され、それぞれの時点での個別のサルの出血時間も図123でプロットする。(図123A:秒単位、図123B:ベースライン出血時間の%)。この群の全てのサルは、FVIII Abの投与に反応して、それらのベースライン出血時間と比較して、出血時間の延長を示した(範囲:ベースライン出血時間の162〜252%)。この群の全てのサルは、1mg/kg ARC19499の投与に反応して、それらのベースライン出血時間と比較して、出血時間の補正も示した(範囲:ベースライン出血時間の82〜152%)。
(出血時間が2回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第2群のサルの群平均出血時間(±標準誤差)が表21に示される。血液試料の時点に対するこの群の群平均出血時間も図124に図示する(図124A:秒単位、図124B:ベースライン出血時間の%)。抗FVIII抗体での処理は、群平均出血時間を群平均ベースライン出血時間の195±26%に延長するという結果をもたらした。1mg/kg ARC19499でのサルの処理後、群平均出血時間が減少したが、群平均ベースライン出血時間の175±20%のみであった。その後、追加用量の1mg/kg ARC19499が、本質的にベースラインレベルまで群平均出血時間を減少させた(群平均ベースライン出血時間の94±17%)。第2群のサルの個別の出血時間が表22に示され、それぞれの時点での個別のサルの出血時間も図125でプロットする(図125A:秒単位、図125B:ベースライン出血時間の%)。この群の全てのサルは、FVIII abの投与に反応して、処理前のそれらのベースライン出血時間と比較して、出血時間の延長を示した(範囲:ベースライン出血時間の143〜263%)。1mg/kg ARC19499の投与後、それらのサルの3匹が出血時間のわずかな減少を示した一方で、1匹のサルは、出血時間の微増を示した。この群の全てのサルは、1mg/kg ARC19499の第2の用量に反応して、出血時間の補正を示した(範囲:ベースライン出血時間の61〜138%)。
第3群のサルの出血時間が表23に示され、血液試料の時点に対する出血時間も図126に図示する(図126A:秒単位、図126B:ベースライン出血時間の%)。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、その出血時間をベースライン出血時間の220%に延長させることを示した。ARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、出血時間は、ベースラインの330%に増加した。2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理は、出血時間をベースライン出血時間の210%に減少させるという結果をもたらした。この第2の用量が実際に出血時間を補正しなかったことを確認するために、さらなる出血時間の評価を第2の用量のARC19499の投与の38分後に実行した。この45秒の出血時間は、第2のARC19499用量を与えた12分後に測定した42秒に非常に近く、出血時間が2回用量のARC19499により補正されなかったことを確認した。追加用量の1mg/kg ARC19499は、出血時間をベースライン出血時間の85%に補正した。
第4群のサルの出血時間が表24に示され、血液試料の時点に対する出血時間も図127に図示する(図127A:秒単位、図127B:ベースライン出血時間の%)。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、その出血時間をベースライン出血時間の143%に延長させることを示した。ARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、出血時間は、ベースライン出血時間の193%まで著しく増加した。2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理後の出血時間は、その後、ベースライン出血時間の154%まで減少した。追加用量の1mg/kg ARC19499は、出血時間を有意に変化することができず、ここではベースライン出血時間の159%であった。先の評価で使用した静脈と一致した十分な利用可能な静脈を欠如するため、この動物においてさらなる出血時間の評価を行うことができなかった。
カニクイザル全血の凝固状態を、クエン酸全血試料上でTEG(登録商標)アッセイを用いて分析した。凝固反応を開始するために、330μLのクエン酸全血を、20μL 0.2M[Haemonetics Corporation(Braintree,MA)]および10μL組織因子(TF)を含有する使い捨てカップ(Haemonetics Corp、カタログ番号6211)に添加した(37℃で最終希釈1:200000)。Innovin(Dade−Behring,Newark,DE)を、組織因子(TF)源として使用し、製造業者の推奨通りに水中で再構成し、使用前に0.9%生理食塩水中で1:5555に希釈した。再構成した原液Innovinを、4℃で4週間未満保存した。初期血栓形成に対する時間(R値)を、Haemoscope TEG(登録商標)5000システム(Haemonetics Corporation,Braintree,MA)を用いて測定した。
(出血時間が1回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第1群のサルの群平均R値(±標準誤差)が表25に示される。血液試料の時点に対する群平均R値も図示する(図128)。FVIII Abでの処理は、群平均R値を群群平均ベースラインR値の約4.8倍に延長するという結果をもたらした。1mg/kg ARC19499でのサルの処理が、FVIII Abでの処理後に得た値から群平均R値を減少させた一方で、このR値は、依然として群平均ベースラインR値の約3.2倍であった。第1群のサルの個別のR値が表26に示され、血液試料の時点に対する個別のR値も図129に図示する。この群の全てのサルは、FVIII abの投与に反応して、処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の延長を示した(2.9〜9.4倍の範囲)。この群の1匹を除く全てのサルが、1mg/kg ARC19499の投与に反応して、処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の減少も示した(1.4〜5.3倍の範囲)。1匹のサル、NHP0701565は、1mg/kg ARC19499の投与後にR値の微増を示した。
(出血時間が2回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第2群のサルの群平均R値(±標準誤差)が表27に示される。血液試料の時点に対する群平均R値も図130に図示する。抗FVIII抗体での処理は、群平均R値を群平均ベースラインR値の約5.9倍に延長するという結果をもたらした。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、群平均R値は、群平均ベースラインR値の約4.0倍に減少した。この群の出血時間を補正した2回用量の1mg/kg ARC19499でのサルの処理は、FVIII Abでの処理後に得た値から群平均R値をさらに減少させたが、このR値は、依然として群平均ベースラインR値の約3.5倍であった。第2群のサルの個別のR値が表28に示され、血液試料の時点に対する個別のR値も図131に図示する。この群の全てのサルは、FVIII Abの投与に反応して、ベースラインでの処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の延長を示した(4.0〜9.1倍の範囲)。この群の1匹を除く全てのサルは、1mg/kg ARC19499の投与に反応して、処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の減少も示し(2.4〜5.0倍の範囲)、この群の出血時間の全てを補正した2回用量の1mg/kg ARC19499でのこれらのサルの処理は、これらのサルのうちの2匹のR値をさらに減少させ、第3のサルのR値をわずかに増加させた。1匹のサル、NHP0611655は、1mg/kg ARC19499の投与後に、FVIII Ab注入後のR値と比較して、103%のR値の増加を示し、出血時間を補正した追加の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理は、ベースラインR値の6.4倍までR値を減少させた。
第3群のサルのR値が表29に示され、血液試料の時点に対するR値も図132に図示する。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、そのベースラインR値の7.6倍のそのR値の延長を示した。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、R値は、ベースラインR値の6.1倍に減少した。このサルの出血時間も補正しなかった2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理は、さらにR値をベースラインのR値の5.8倍にわずかに減少させた。出血時間を補正した追加用量の1mg/kg ARC19499は、R値をベースラインR値の3倍に減少させた。
第4群のサルのR値が表30に示され、血液試料の時点に対するR値も図133に図示する。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、そのベースラインR値の2.9倍の延長を示した。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、R値は、ベースラインR値の1.6倍に減少した。このサルの出血時間も補正しなかった2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理は、さらにR値をベースラインR値の1.5倍にわずかに減少させた。依然として出血時間を補正しなかった追加用量の1mg/kg ARC19499は、R値をベースラインR値の1.2倍強にわずかに減少させた。第4の3mg/kg ARC19499用量は、R値にほとんど影響を与えず、ここでは処理前のベースラインR値の1.1倍であった。先の評価で使用した静脈と一致した十分な利用可能な静脈を欠如するため、この動物においてさらなる出血時間の評価を行うことができなかった。
カニクイザル血漿の凝固状態も、クエン酸血液試料由来の血漿においてTEG(登録商標)アッセイを用いて分析した。クエン酸全血試料を血漿処理まで室温で保った。試料を2,000×gで15分間、室温で遠心分離した。血漿を除去し、分析用として輸送するまで−80℃ですぐに保存した。分析前に、血漿試料を37℃で急速に解凍した。凝固反応を開始するために、330μLのクエン酸血漿を、20μL 0.2M(Haemonetics Corporation(Braintree,MA))および10μL TF(37℃で最終希釈1:200000)を含有する使い捨てカップ(Haemonetics Corporation,Braintree,MA、カタログ番号6211)に添加した。Innovin(Dade−Behring,Newark,DE)を、組織因子(TF)源として使用し、製造業者の推奨通りに水中で再構成し、使用前に0.9%生理食塩水中で1:5555に希釈した。再構成した原液Innovinを4℃で4週間未満保存した。初期血栓形成に対する時間(R値)を、Haemoscope TEG(登録商標)5000システム(Haemonetics Corporation,Braintree,MA)を用いて測定した。
(出血時間が1回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第1群のサル由来の血漿試料の群平均R値(±標準誤差)が表31に示される。血漿試料の時点に対する群平均R値も図示する(図134)。FVIII Abでの処理は、群平均R値を群平均ベースラインR値の約2.8倍に延長するという結果をもたらした。1mg/kg ARC19499でのサルの処理が、FVIII Abでの処理後に得た値から群平均R値を減少させた一方で、このR値は、依然として群平均ベースラインR値の約1.9倍であった。第1群のサルの個別のR値が表32に示され、血漿試料の時点に対する個別のR値も図135に図示する。この群の全てのサルは、FVIII Abの投与に反応して、処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の延長を示した(1.7〜5.1倍の範囲)。この群の1匹を除く全てのサルは、1mg/kg ARC19499の投与に反応して、処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の減少も示した(1.3〜1.8倍の範囲)。1匹のサル、NHP0603477は、1mg/kg ARC19499の投与後に、FVIII Ab注入後のR値と比較して、50%のR値の増加を示し、全血TEG(登録商標)分析は、その代わりに、1mg/kg ARC19499の投与後に、FVIII Ab注入後のR値と比較して、53%のR値の減少を示した。その全血TEG(登録商標)分析が1mg/kg ARC19499の投与に反応してR値の微増を示したNHP0701565の血漿TEG(登録商標)分析は、1mg/kg ARC19499の投与後、FVIII Ab注入後のR値よりも実際には66%下回った。
(出血時間が2回用量の1mg/kg ARC19499により補正された)第2群のサル由来の血漿試料の群平均R値(±標準誤差)が表33に示される。血液試料の時点に対する群平均R値も図136に図示する。抗FVIII抗体での処理は、群平均R値を群平均ベースラインR値の約4.0倍に延長するという結果をもたらした。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、群平均R値は、群平均ベースラインR値の約2.2倍に減少した。この群の出血時間を補正した2回用量の1mg/kg ARC19499でのサルの処理は、FVIII Abでの処理後に得た値から群平均R値をさらに著しく減少させなかった。第2群のサルの個別のR値が表34に示され、血液試料の時点に対する個別のR値も図137に図示する。この群の全てのサルは、FVIII Abの投与に反応して、ベースラインでの処理前のそれらのベースラインR値と比較して、R値の延長を示した(1.1〜6.4倍の範囲)。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、この群の全てのサルの血漿R値は、群平均ベースラインR値を超えて減少した(0.5〜4.5倍の範囲)。2匹のサルのR値は、依然として処理前のベースラインでのR値よりも高かったが、この群の出血時間の全てを補正した2回用量の1mg/kg ARC19499でのサルの処理は、変化をもたらさなかったか、あるいはR値をさらに減少させた(0.5〜3.2倍の範囲)。
第3群のサル由来の血漿試料のR値が表35に示され、血液試料の時点に対するR値も図138に図示する。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、そのR値をそのベースラインR値の3.5倍に延長させることを示した。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、R値は、ベースラインR値の1.3倍に減少した。このサルの出血時間も補正しなかった2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理は、R値をベースラインR値の1.1倍にさらに減少させた。出血時間を補正した追加用量の1mg/kg ARC19499は、R値をベースラインR値の0.9倍に減少させた。
第4群のサル由来の血漿試料のR値が表36に示され、血液試料の時点に対するR値も図139に図示する。このサルは、FVIII Abの投与に反応して、そのベースラインR値の2.9倍に延長させることを示した。出血時間を補正しなかったARC19499の1mg/kg用量での処理に反応して、R値は、ベースラインR値を超えてベースラインR値の1.1倍に減少する。このサルの出血時間も補正しなかった2回用量の1mg/kg ARC19499でのこのサルの処理後に採取した血液からの血漿は、ベースラインR値の1.2倍よりもわずかに高いR値を示した。依然として出血時間を補正しなかった追加用量の1mg/kg ARC19499は、ベースラインR値の1.0倍強にわずかにR値を減少させた。第4の3mg/kg ARC19499用量は、処理前のベースラインを下回ってR値を減少させた(処理前のベースラインR値の0.9倍)。先の評価で使用した静脈と一致した十分な利用可能な静脈を欠如するため、この動物においてさらなる出血時間の評価を行うことができなかった。
上述の実施例は、FVIII Abで処理したサルが、伏在静脈の穿刺後に長引く出血を呈し、血友病の特徴である長引く出血との一致が観察された。この研究で試験したサルの大多数(12匹中11匹)において、最大3mg/kg ARC19499での処理がこの長引く出血時間を補正した。それらのサルの6匹のみが、この補正を呈するために1mg/kg ARC19499の1回用量を必要とし、他の4匹のサルの出血時間は、2回用量の1mg/kg ARC19499で補正された。これらのサル由来の全血のTEG(登録商標)分析のR値は、FVIII Ab投与後に予期された上昇を示し、この上昇は、ARC19499での処理後にベースラインレベルに向かって減少し、同様のパターンがこれらの血液試料からの血漿の分析において見られた。これらのデータは、ARC19499が、誘発された血友病のモデルにおいて長引く出血を補正することができることを示し、インヒビターおよび非インヒビター血友病A患者の治療における成功した治療薬としてのARC19499の可能性のある臨床的有用性を支援する。
実施例34
本実施例は、アプタマー医薬品化学を通じた、ARC17480において許容できる置換および許容できない置換の評価である。
以下の表37ならびに図140および図141に示されるように、ARC17480内の残基の2’位またはリン酸骨格内での修飾を用いて試験するために、分子を生成した。ARC17480内のそれぞれ個々の2’−デオキシ残基を、対応する2’−メトキシまたは2’−フルオロを含有する残基により置換し、それぞれARC18538−ARC18541およびARC19493−ARC19496を得た(図140)。追加的に、ARC17480内の9、14、16、および25位の4つのデオキシシチジン残基に、2’−デオキシから2’−メトキシおよび/または2’−デオキシから2’−フルオロの複数の残基を有するいくつかの分子を生成し、ARC18545、ARC18546、ARC18549、ARC19476、ARC19477、ARC19478、ARC19484、ARC19490、およびARC19491を得た(図140)。ARC17480内のそれぞれ個々の2’−メトキシ残基を対応する2’−デオキシ残基により置換し、2’−メトキシウリジン残基を2’−デオキシチミジンおよび2’−デオキシウリジンの両方の残基で置換して、ARC19448−ARC19475およびARC33867−ARC33877を得た(図140)。ARC17480内の各ヌクレオチド対の間のリン酸塩を、個々にホスホロチオエートで置換し、ARC19416−ARC19447を得た(図141)。
修飾されたARC17480分子を、結合および機能についてアッセイした。本評価に使用されたアッセイは、自動較正トロンビン生成(CAT)アッセイ、ドットブロット結合競合アッセイ、およびFXa活性アッセイであった。これらのアッセイの結果を表37に要約し、図142に示す。置換は、行われた3つのアッセイのうちの少なくとも2つの基準を満たす場合、活性に対して許容できると見なされた。許容できた(「満たす」)、および許容できなかった(「満たさない」)置換を、表37に特定する。各アッセイに使用された実験詳細および基準を、以下の段落に記載する。
各分子のTFPI阻害活性を、CATアッセイで、500nM、166.67nM、55.56nM、18.52nM、6.17nM、および2.08nMのアプタマー濃度で、プールした血友病A血漿中で評価した。ARC17480を対照として全ての実験に含めた。各分子について、各アプタマー濃度の内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビン値を分析に使用した。血友病A血漿のみのETPまたはピークトロンビン値を、各濃度での各分子について、アプタマーの存在下での対応する値から減算した。次いで、補正したETPおよびピーク値をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+IC50/x))+int(式中、y=ETPまたはピークトロンビン、x=アプタマーの濃度、max=最大ETPまたはピークトロンビン、およびint=y切片)に当てはめて、ETPおよびピークトロンビン双方についてのIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50と比較した。置換は、CATアッセイにおいて、その分子のETPおよびピークトロンビン双方のIC50が、同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表37に示す。
各分子を、組織因子経路阻害剤(TFPI)への結合について、結合競合アッセイで評価した。これらの実験について、10nMのヒトTFPI(American Diagnostica,Stamford,CT、カタログ番号4500PC)を、微量の放射標識したARC17480、ならびに5000nM、1666.67nM、555.56nM、185.19nM、61.73nM、20.58nM、6.86nM、2.29nM、0.76nM、または0.25nMの非標識の競合アプタマーとともにインキュベートした。ARC17480を、対照として全ての実験で、競合相手として含めた。各分子について、各競合アプタマー濃度で結合した放射標識したARC17480の割合を分析に使用した。結合した放射標識したARC17480の割合をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=結合した放射標識したARC17480の割合、x=アプタマーの濃度、max=最大の結合した放射標識したARC17480、およびint=y切片)に当てはめて、結合競合についてのIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50と比較した。置換は、結合競合アッセイにおいて、その分子のIC50が同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表37に示す。
各分子を、第Xa因子(FXa)活性アッセイでTFPIの阻害について評価した。Fxaの発色基質を切断する能力を、TFPIの存在および不在下で、アプタマーを添加して、または添加せずに測定した。これらの実験のために、2nMのヒトFXaを8nMのヒトTFPIとともにインキュベートした。次いで、500μMの発色基質およびアプタマーを添加し、この基質のFXa切断を、時間の関数として405nmの吸光度(A405)で測定した。アプタマーを、500nM、125nM、31.25nM、7.81nM、1.95nM、および0.49nMの濃度で試験した。ARC17480を対照として各実験に含めた。各アプタマー濃度について、A405を時間の関数としてプロットし、各曲線の直線領域を等式y=mx+b(式中、y=A405、x=アプタマー濃度、m=基質の切断速度、およびb=y切片)に当てはめて、FXa基質の切断速度を生成した。TFPIの存在下、およびアプタマーの不在下でのFXa基質の切断速度を、各濃度の各分子について、TFPIおよびアプタマー双方の存在下での対応する値から減算した。次いで、補正した速度をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(Vmax/(1+IC50/x))(式中、y=基質の切断速度、x=アプタマーの濃度、およびVmax=基質の最大切断速度)に当てはめて、IC50値および最大(Vmax)値を生成した。各アプタマーのIC50値およびVmax値を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50値およびVmax値と比較した。置換は、FXa活性アッセイにおいて、その分子のIC50が同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えず、かつVmax値が同一の実験で評価されたARC17480のVmax値の80%より低くなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表37に示す。
本実施例は、ARC17480内の複数の個々の2’置換が結合および活性に対して許容でき、2’置換のいくつかの組み合わせもまた許容できることを示す(表37および図142)。本実施例はまた、ホスホロチオエート置換が、ARC17480内の各ヌクレオチド対間で許容できることも示す(表37)。ARC17480内の許容できる2’置換および/またはホスホロチオエート置換のさらなる組み合わせが、結合および活性について許容できる可能性が高い。
実施例35
本実施例は、ARC17480内で許容できる欠失および許容できない欠失の評価である。
以下の表38および図143に示されるように、ARC17480配列内で欠失された単一または複数の残基を用いて試験するために、分子を生成した。ARC17480内のそれぞれ個々の残基を1つずつ欠失させて、ARC32301、ARC33120〜ARC33143、およびARC18555を得た。2つの隣接するヌクレオチドが同一である場合は、対応する二重欠失も生成し、ARC32302、およびARC33144〜ARC33148を得た。さらに、複数の欠失を有する分子を生成して、ARC32303、ARC32305、ARC32306、ARC32307、ARC33889、ARC33890、ARC33891、ARC33895、ARC33900、およびARC33907を得た。
欠失を有するARC17480分子を、結合および機能についてアッセイした。本評価に使用されたアッセイは、自動較正トロンビン生成(CAT)アッセイ、ドットブロット結合競合アッセイ、およびFXa活性アッセイであった。これらのアッセイの結果を表38および図144に要約する。置換は、行われた3つのアッセイのうちの少なくとも2つの基準を満たす場合、活性に対して許容できると見なされた。許容できた(「満たす」)、および許容できなかった(「満たさない」)置換を、表38に特定する。各アッセイに使用された実験詳細および基準を、以下の段落に記載する。
各分子のTFPI阻害活性を、CATアッセイで、500nM、166.67nM、55.56nM、18.52nM、6.17nM、および2.08nMのアプタマー濃度で、プールした血友病A血漿中で評価した。ARC17480を対照として全ての実験に含めた。各分子について、各アプタマー濃度の内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビン値を分析に使用した。血友病A血漿のみのETPまたはピークトロンビン値を、各濃度での各分子について、アプタマーの存在下での対応する値から減算した。次いで、補正したETPおよびピーク値をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+IC50/x))+int(式中、y=ETPまたはピークトロンビン、x=アプタマーの濃度、max=最大ETPまたはピークトロンビン、およびint=y切片)に当てはめて、ETPおよびピークトロンビン双方についてのIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50と比較した。置換は、CATアッセイにおいて、その分子のETPおよびピークトロンビン双方のIC50が、同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表38に示す。
各分子を、組織因子経路阻害剤(TFPI)への結合について、結合競合アッセイで評価した。これらの実験について、10nMのヒトTFPI(American Diagnostica,Stamford,CT、カタログ番号4500PC)を、微量の放射標識したARC17480、ならびに5000nM、1666.67nM、555.56nM、185.19nM、61.73nM、20.58nM、6.86nM、2.29nM、0.76nM、または0.25nMの非標識の競合アプタマーとともにインキュベートした。ARC17480を、対照として全ての実験で、競合相手として含めた。各分子について、各競合アプタマー濃度で結合した放射標識したARC17480の割合を分析に使用した。結合した放射標識したARC17480の割合をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=結合した放射標識したARC17480の割合、x=アプタマーの濃度、max=最大の結合した放射標識したARC17480、およびint=y切片)に当てはめて、結合競合についてのIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50と比較した。置換は、結合競合アッセイにおいて、その分子のIC50が同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表38に示す。
各分子を、第Xa因子(FXa)活性アッセイでTFPIの阻害について評価した。Fxaの発色基質を切断する能力を、TFPIの存在および不在下で、アプタマーを添加して、または添加せずに測定した。これらの実験のために、2nMのヒトFXaを8nMのヒトTFPIとともにインキュベートした。次いで、500μMの発色基質およびアプタマーを添加し、この基質のFXa切断を、時間の関数として405nmの吸光度(A405)で測定した。アプタマーを、500nM、125nM、31.25nM、7.81nM、1.95nM、および0.49nMの濃度で試験した。ARC17480を対照として各実験に含めた。各アプタマー濃度について、A405を時間の関数としてプロットし、各曲線の直線領域を等式y=mx+b(式中、y=A405、x=アプタマー濃度、m=基質の切断速度、およびb=y切片)に当てはめて、FXa基質の切断速度を生成した。TFPIの存在下、およびアプタマーの不在下でのFXa基質の切断速度を、各濃度の各分子について、TFPIおよびアプタマー双方の存在下での対応する値から減算した。次いで、補正した速度をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(Vmax/(1+IC50/x))(式中、y=基質の切断速度、x=アプタマーの濃度、およびVmax=基質の最大切断速度)に当てはめて、IC50値および最大(Vmax)値を生成した。各アプタマーのIC50値およびVmax値を、同一の実験で評価されたARC17480のIC50値および最大値と比較した。置換は、FXa活性アッセイにおいて、その分子のIC50が同一の実験で評価されたARC17480のものの5倍を超えず、かつVmax値が同一の実験で評価されたARC17480のVmax値の80%より低くなければ、許容できると見なされた。許容できる置換を、アッセイ基準を満たす(「満たす」)、またはアッセイ基準を満たさない(「満たさない」)として、表38に示す。
本実施例は、ARC17480内の複数の個々の欠失が結合および活性に対して許容でき、欠失のいくつかの組み合わせもまた許容できることを示す(表38および図144)。ARC33889およびARC33895はそれぞれ、それらの5’および3’末端での合計7つの欠失に許容でき、25ヌクレオチド長であるコア分子を生じた。ARC17480内の欠失のさらなる組み合わせが、分子中の追加的変化を伴って、または伴わずに、結合および活性に対して許容できる可能性がある。
実施例36
本実施例は、ARC19499の3’を切り詰めた誘導体が、CATアッセイにおいて機能的活性を有することを示す。
ARC21383、ARC21385、ARC21387、およびARC21389は、ARC19499に対して、それらの3’末端に連続する単一欠失を有する(表39)。これらの分子は、それらの5’末端が40kDaのPEGでPEG化されている。これらの分子を異なる濃度(300nM〜1.2nM)で血友病A血漿に添加し、トロンビン生成を測定した。この実験ではARC19499を対照として使用した。これらの3’を切り詰めた分子は全て、CATアッセイにおいて、内因性トロンビンポテンシャル(ETP、図145A)およびピークトロンビン(図145B)の双方に関して、ARC19499を用いて観察されたものに類似した活性を有した。
本実施例は、ARC19499を3’−3Tおよび3つの3’末端コアヌクレオチドの除去により切り詰めることができ、依然としてCATアッセイにおいて親分子ARC19499のものに類似した活性を保持することを示す。
実施例37
本実施例は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上の部分に少なくとも部分的に結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを特定するための戦略を説明する。これらの実験のために、標的とされるTFPIの領域を含む部分的TFPIタンパク質またはペプチドが、選択標的として使用される。この種類の実験には、TFPIタンパク質の任意の部分が使用されてもよい。例えば、完全長TFPIのK3およびC末端ドメインのみを含有するTFPIタンパク質(K3−C TFPI、アミノ酸182〜276)が、選択の標的である。核酸プールをK3−C TFPIとともにインキュベートし、結合を起こさせ、この混合物を分配して結合した核酸を非結合核酸から分離し、結合した核酸をタンパク質から溶出し、増幅する。この過程を、アプタマーが特定されるまで複数のサイクルの間任意で繰り返す。いくつかのサイクルについて、アプタマーが、完全長タンパク質との関連で、このタンパク質のK3−C末端領域に結合することを保証するために、完全長TFPIを標的として使用する。これらの実験により、結合エピトープが例えば、このタンパク質のK3−C末端領域内に含有される、TFPI結合アプタマーの特定がもたらされる。
実施例38
本実施例は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上の部分に少なくとも部分的に結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを特定するための戦略を説明する。これらの実験のために、完全長TFPIが選択標的として使用され、TFPIの一部分またはTFPIに結合するリガンドを使用して、TFPIタンパク質の一部分に結合するアプタマーを溶出する。TFPIの一部分のみを含有するタンパク質またはペプチドもまた、選択標的として使用することができるだろう。例えば、溶出のために、TFPIのアミノ酸150〜190を含むペプチドが使用される。核酸プールを完全長TFPIとともにインキュベートし、結合を起こさせ、この混合物を分配して結合した核酸を非結合核酸から分離し、結合した核酸を、TFPI 150〜190ペプチドとともにインキュベートすることによりタンパク質から溶出し、増幅する。この過程を、アプタマーが特定されるまで複数のサイクルの間繰り返す。これらの実験により、結合エピトープが例えば、TFPIの150〜190領域の全てまたは一部を含有する、TFPI結合アプタマーの特定がもたらされる。
実施例39
本実施例は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上の部分に少なくとも部分的に結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを特定するための戦略を説明する。これらの実験のために、完全長TFPIが選択標的として使用され、TFPIに結合するリガンドは、エピトープがアプタマーに結合するのを阻止して、アプタマーがこのタンパク質上の代替部位に結合するのを推進するために、その選択に含まれる。TFPIの一部分のみを含有するタンパク質またはペプチドもまた、選択標的として使用することができるだろう。その阻止リガンドは、選択ステップおよび/または分配ステップに、捕捉方法または洗浄試薬として含まれる。例えば、TFPIのC末端に結合する抗体がその選択に含まれる。核酸プールをこの抗体の存在下でTFPIとともにインキュベートし、結合を起こさせ、この混合物を分配して結合した核酸を非結合核酸から分離し、結合した核酸をタンパク質から溶出し、増幅する。この過程を、アプタマーが特定されるまで複数のサイクルの間繰り返す。いくつかのサイクルは、分配ステップの間洗浄液中に抗体を含み、いくつかのサイクルは、結合ステップで抗体と併せて、または抗体を含めずに、TFPI−アプタマー複合体を捕捉するための分配方法として抗体を使用する。これらの実験により、結合エピトープが、例えば、TFPIのC末端の抗体結合領域内に含有されない、TFPI結合アプタマーの特定がもたらされる。
実施例40
本実施例は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上の部分に少なくとも部分的に結合するか、またはさもなければそれと相互作用するアプタマーを特定するための戦略を説明する。これらの実験のために、完全長TFPIが選択標的として使用され、所望の機能的性質を有するアプタマーをその機能的性質を有さない核酸から分離する分配ステップが採用される。TFPIの一部分のみを含有するタンパク質またはペプチドもまた、選択標的として使用することができるだろう。例えば、所望のアプタマーの機能的性質は、第Xa因子(FXa)とのTFPI相互作用の阻害である。これらの実験のために、核酸プールを、結合を可能にする条件下でTFPIとともにインキュベートし、次いで分配して、TFPIに結合したアプタマーから結合していない核酸を分離する。次いで、TFPIに結合したアプタマーを、疎水性プレートに結合されたFXaとともにインキュベートする。遊離TFPIおよびTFPI−FXa相互作用を妨げないアプタマーと結合したTFPIは、プレート上のFXaに結合し、一方TFPI−FXa相互作用を妨げるアプタマーと結合したTFPIは、プレートに結合しない。次いで、非結合TFPI−アプタマー複合体からのアプタマーを増幅する。この過程を、アプタマーが特定されるまで複数のサイクルの間繰り返す。これらの実験によって、例えば、TFPIとFXaとの間の機能的相互作用の阻害を媒介するTFPIタンパク質の領域に結合するアプタマーの特定がもたらされる。
実施例41
本実施例は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上の部分に少なくとも部分的に結合するか、またはさもなければそれと相互作用する抗体を特定するための戦略を説明する。抗原は、対象とするTFPIの任意の1つ以上の部分であってもよい。例えば、抗原は、完全長TFPIのK3およびC末端ドメインのみを含有するTFPIタンパク質(K3−C TFPI、アミノ酸182〜276)であってもよい。抗原は発現系で発現されるか、自動タンパク質合成機で合成される。次いで、マウスを溶液中の抗原で免疫付与する。次いで、抗体生成細胞を免疫付与されたマウスから単離し、骨髄腫細胞と融合させて、モノクローナル抗体生成ハイブリドーマを形成する。次いで、そのハイブリドーマを選択培地中で培養する。次いで、得られた細胞を連続希釈により播種し、抗原に特異的に結合する抗体の生成についてアッセイする。次いで、選択されたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養する。次いで、抗体をハイブリドーマ細胞の培養培地浮遊物から精製する。これらの実験により、結合エピトープが、例えば、このタンパク質のK3−C末端領域内に含有される、TFPI−結合抗体の特定がもたらされる。
実施例42
本実施例は、ARC17480の許容できるおよび許容できないヌクレオチド変異を評価する。本実施例は、ARC17480の欠失と組み合わせた許容できるおよび許容できないヌクレオチド変異を評価する。
以下の表40並びに図146および150に示されるように、ARC17480配列内の個別または複数のヌクレオチドの変異について試験を行うために、分子を発生させた。ARC17480の各残基について、単一変異を試料採取した。2’−メトキシ残基については、2’−メトキシ−A、2’−メトキシ−C、2’−メトキシ−G、および2’−メトキシ−U残基を評価し、2’−デオキシ残基については、2’−デオキシ−A、2’−デオキシ−C、2’−デオキシ−G、および2’−デオキシ−T残基を評価した。表40(ARC33149〜ARC33180、ARC34856〜ARC34919)の配列は、各ヌクレオチド位の3つの可能性のある変異を包含する。例えば、ARC17480のヌクレオチドが2’−メトキシ−Aであるならば、対応する2’−メトキシ−C、2’−メトキシ−G、および2’−メトキシ−U変異は本実施例に示される。さらに、ARC17480に対して複数のヌクレオチド変異を有するいくつかの分子を評価した。ARC17480配列に対してヌクレオチド変異とヌクレオチド欠失の両方を有するいくつかの分子も試験した。
置換されたARC17480分子を結合および官能基についてアッセイした。当該評価に用いたアッセイは、校正自動トロンビン生成(CAT)アッセイ、ドットブロット結合−競合アッセイ、FXa活性アッセイであった。これらのアッセイの結果は表40に要約し、図147に記載した。変異が実施された3つのアッセイのうち少なくとも2つの基準を満たせば、活性について許容できると考えられた。許容できる(「はい」)および許容できない(「いいえ」)変異を表40に同定した。各アッセイに用いた実験の詳細および基準は以下の段落に記述する。本実施例に記述した分子は最初にCATアッセイおよびドットブロット結合−競合アッセイで試験を行った。大部分の場合、CATアッセイの結果とドットブロット結合−競合アッセイの結果との間に矛盾があるならば、FXa活性アッセイだけで分子に試験を実施した。
各分子のTFPI阻害活性をアプタマー濃度が500nM、166.67nM、55.56nM、18.52nM、6.17nMおよび2.08nMであるプールされた血友病Aの血漿でCATアッセイで評価した。全ての実験にARC17480を対照として含めた。各分子について、各アプタマー濃度の内因性トロンビンポテンシャル(ETP)およびピークトロンビン値を分析に用いた。血友病Aの血漿単独のETPまたはピークトロンビン値を、各濃度の各分子についてのアプタマー存在下で対応する値から引いた。その後、補正したETPおよびピーク値をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+IC50/x))+int(式中、y=ETPまたはピークトロンビン、x=アプタマー濃度、max=最大のETPまたはピークトロンビン、およびint=y−切片)に適合させ、ETPとピークトロンビンの双方についてIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を同じ実験で評価したARC17480のIC50と比較した。分子のETPとピークトロンビンIC50の双方が、同じ実験で評価したARC17480のIC50より5倍以下であれば、変異がCATアッセイにおいて許容できると考えられた。許容できる変異を、アッセイ基準を満たす(「はい」)またはアッセイ基準を満たさない(「いいえ」)として、表40に表した。
各分子を結合−競合アッセイにおける組織因子経路阻害剤(TFPI)の結合について評価した。これらの実験について、10nMのヒトTFPI(American Diagnostica、スタンフォード、コネチカット州、カタログ番号4900PC)を、微量の放射標識されたARC17480および標識されていない競合アプタマーの5000nM、1666.67nM、555.56nM、185.19nM、61.73nM、20.58nM、6.86nM、2.29nM、0.76nMまたは0.25nMと共にインキュベートした。全ての実験にARC17480を対照として、競合として含めた。各分子について、各競合アプタマーの濃度で結合された放射標識されたARC17480の百分率を分析に用いた。放射標識された結合ARC17480の百分率をアプタマー濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=放射標識された結合ARC17480の百分率、x=アプタマー濃度、max=最大の結合されたARC17480、およびint=y−切片)に適合させ、結合−競合についてIC50値を生成した。各アプタマーのIC50を同じ実験で評価したARC17480のIC50と比較した。分子のIC50が同じ実験で評価したARC17480のIC50より5倍以下であれば、変異が結合−競合アッセイにおいて許容できると考えられた。許容できる変異を、アッセイ基準を満たす(「はい」)またはアッセイ基準を満たさない(「いいえ」)として、表40に表した。
いくつかの分子を第Xa因子(FXa)活性アッセイにおけるTFPIの阻害について評価した。発色基質を切断するFXaの能力をTFPIの存在下または不在下、アプタマーの追加する場合と追加しない場合で測定した。これらの実験について、2nMのヒトFXaを8nMのヒトTFPIとインキュベートした。その後、500μMの発色基質およびアプタマーを加え、FXaの基質切断を、時間の関数として405nmの吸光度(A405)で測定した。アプタマーの濃度が500nM、125nM、31.25nM、7.81nM、1.95nMおよび0.49nMで試験を行った。各実験にARC17480を対照として含めた。各アプタマー濃度において、時間の関数としてA405をプロットし、各曲線の直線領域を等式y=mx+b(式中、y=A405、x=アプタマー濃度、m=基質切断の割合、およびb=y−切片)に適合させ、FXaの基質切断の割合を生成した。TFPIの存在下およびアプタマーの不在下のFXaの基質切断の割合を、各濃度の各分子について、TFPIもアプタマーも存在しているときの対応する値から引いた。その後、アプタマー濃度の関数として補正した割合をプロットし、等式y=(Vmax/(1+IC50/x))(式中、y=基質切断の割合、x=アプタマー濃度、およびVmax=基質切断の最大の割合)に適合させ、IC50および最大値(Vmax)を生成した。各アプタマーのIC50値およびVmax値を同じ実験で評価したARC17480のIC50値およびVmax値と比較した。分子のIC50が同じ実験で評価したARC17480のIC50より5倍以下であれば、変異はFXa活性アッセイにおいて許容できると考えられ、Vmax値は同じ実験で評価したARC17480のVmax値の80%以上であった。許容できる変異を、アッセイ基準を満たす(「はい」)またはアッセイ基準を満たさない(「いいえ」)として、表40に表した。
ARC17480のいくつかの残基は単一変異に許容できるのに対し、他は示さなかった(図146および147、表40)。分子の5’および3’末端の単一変異は、残基1〜6および残基30〜32(ARC33149−33154、ARC34856−34867、ARC33178−33180、ARC34914−34919)のいずれか4つの可能性のあるヌクレオチドとの分子の活性によって証明されるように、よく許容された。19位(ARC33167、34892、34893)の単一変異もまたよく許容された。残基8、10、11、15、21、28、および29(ARC33156、ARC34870、ARC34871、ARC33158、ARC34874、ARC34875、ARC33159、ARC34876、ARC34877、ARC33163、ARC34884、ARC34885、ARC33169、ARC34896、ARC34897、ARC33176、ARC34910、ARC34911、ARC33177、ARC34912、ARC34913)は単一変異に対していくらか許容できたが、残りの残基は単一変異に対してほとんど許容できなかった(残基7、9、12〜14、16〜18、20、および22〜27、ARC33155、ARC34868、ARC34869、ARC33157、ARC34872、ARC34873、ARC33160、ARC34878、ARC34879、ARC33161、ARC34880、ARC34881、ARC33162、ARC34882、ARC34883、ARC33164、ARC34886、ARC34887、ARC33165、ARC34888、ARC34889、ARC33166、ARC34890、ARC34891、ARC33168、ARC34894、ARC34895、ARC33170、ARC34898、ARC34899、ARC33171、ARC34900、ARC34901、ARC33172、ARC34902、ARC34903、ARC33173、ARC34904、ARC34905、ARC33174、ARC34906、ARC34907、ARC33175、ARC34908、およびARC34909)。
5’および3’末端の変異の許容性は、これらの残基がARC17480の機能に重要でないことを示唆する。いくつかの分子の活性の検討はこの観察(図148、表40)を支持するデータを加える。1〜5位および30〜32位の複数の結合された変異は活性基準(ARC34854)を満たす分子になり、これらのヌクレオチドが活性に大切であるとは思われないという結論を支持する。しかしARC33893は、削除されたARC17480の5’末端に5ヌクレオチド(残基1〜5)があり、3’末端に3ヌクレオチド(残基30〜32)があるが、CATまたはFXaアッセイにおいて活性基準を満たさない。ARC33929は、残基1〜5および残基30〜32が欠失している点でARC33893とほとんど同じであるが、残基6で2’−メトキシ−Gに置換され、残基29で2’−メトキシ−Cに置換される(番号付けはARC17480の残基を意味する)。ARC33929はCAT、結合、およびFXaアッセイにおいて活性基準を満たし、分子内の変異も作られるならば、残基1〜5および残基30〜32がARC17480配列から削除され得ることを示している。6位および29位の同じ変異も、ARC34855の活性によって証明されるように、残基1〜5および残基30〜32に変異がある状況で許容できることを示す。これらの実験により、残基6〜29はARC17480のコア配列を形成し得ることが示唆される。
様々な分子を試験することから得られる結果により、配列内のいくつかのヌクレオチドが互いに塩基対を形成する可能性があることが示される(表40、図149)。6位のmAおよび29位のmUに変異を含むが、この2つの残基の間に塩基対を維持する分子は活性基準を満たす。具体的にはARC33183(6mU:29mU)、ARC34920(6mG:29mC)、およびARC34921(6mC:29mG)である。上述のように、6位の単一変異は許容できる一方で、29位の単一変異は部分的に許容できる。まとめると、これらの結果により、残基6および29はワトソン・クリック塩基対合規則に従って一緒に置換されるならば、変異に対して許容できることが説明され、残基6および29は塩基対合されることが強く示唆される。7位のmUおよび28位のmAに変異を含むが、この2つの残基の間に塩基対を維持する分子は活性基準を満たす。具体的にはARC33184(7mA:28mU)、ARC34922(7mG:28mC)、およびARC34923(7mC:28mG)である。上述のように、7位の単一変異は許容できない一方で、28位の単一変異は部分的に許容できる。まとめると、これらの結果により、残基7および28はワトソン・クリック塩基対合規則に従って一緒に置換されるならば、変異に対して許容できることが説明され、残基8および27は塩基対合されることが強く示唆される。8位のmAおよび27位のmUに変異を含むが(8mA:27mU)、この2つの残基の間に塩基対を維持する分子は活性基準を満たす。具体的にはARC33185(8mU:27mA)、ARC34924(8mG:27mC)、およびARC34925(8mC:27mG)である。上述のように、8位の単一変異は部分的に許容できる一方で、27位の単一変異は許容できない。まとめると、これらの結果により、残基8および27はワトソン・クリック塩基対合規則に従って一緒に置換されるならば、変異に対して許容できることが説明され、残基8および27は塩基対合されることが強く示唆される。残基6および29、7および28、並びに8および27が塩基対を形成するという結論は、適切な塩基対合相互作用(ARC35173−35180)を保つ同じ分子の中に、これらの位の複数変異に許容できることによっても支持される。しかし、残基1〜5および30〜32が削除されて分子内に同じ複数変異が作られるとき、いくつかの変異しか許容できず(ARC35181−35189)、このことは、変異が全長の分子の構成で作られるとき、残基1〜5および30〜32は結合および活性に積極的に寄与することが示唆される。
許容できる単一変異を組み合わせた分子についても試験を行い、図150(ARC35190、ARC35191、ARC35193−35195、ARC35220、ARC35221、ARC35223−35229、ARC35231、ARC35232)に表す。これらの分子は結合−競合またはFXaアッセイにおいて活性基準を満たさなかった。この実験により、分子内の単一変異が許容できることがあるとしても、分子内の他の変異と組み合わせたときに許容できないことが示される。
本実施例は、多くの単一および複数変異がARC17480配列内で許容できることを説明する。変異内の分子を評価することにより、コアアプタマー配列がヌクレオチド6〜29に含まれること、残基6および29、7および28、並びに8および27が配列内に塩基対を形成する可能性があることが示唆される。さらに、多くの変異は個別には許容できるが、互いに組み合わせると、常に許容できるとは限らない。
実施例43
本実施例は、FXaがTFPIに結合することについて放射標識されたARC17480と部分的に競合することを説明する。
これらの実施例について、最終濃度が10nMのヒトTFPI(American Diagnostica社、スタンフォード、コネチカット州、カタログ番号4900PC)を微量の放射標識されたARC17480および異なる濃度のヒトFXa(Haematologic Technologies社、エセックス・ジャンクション、バーモント州、カタログ番号HCXA−0060)またはARC19499(2000nM〜0.10nM)とインキュベートした。対照もTFPI不在下で実施し、微量の放射標識されたARC17480を異なる濃度のFXa(2000nM〜0.10nM)とインキュベートした。放射標識されたARC17480の結合の百分率を競合の濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=放射標識されたARC17480結合の割合、x=競合の濃度、max=最大の放射標識されたARC17480結合、およびint=y−切片)に適合させ、結合−競合についてIC50値を生成した。図151は、TFPIに結合することについて、FXaおよびARC19499の放射標識されたARC17480との競合をグラフに表す。濃度が約75nM以上の競合結合曲線の平坦域によって証明されるように、FXaはTFPIに結合することについて、ARC17480と部分的に競合する。対照的に、ARC19499はTFPIに結合することについて、放射標識されたARC17480と完全に競合する。TFPIを欠損する対照実験では、ARC17480はFXaに検知できる結合がない。
これらの結果により、TFPIに結合することについて、FXaがARC17480と部分的に競合することが説明され、FXaおよびARC17480はTFPIに同時に結合し得ることが示唆される。
実施例44
本実施例はARC19499と第VIII補充因子との間の薬物間相互作用の可能性を評価する。本実施例は、凝固形成の空間的モデル、固定化された組織因子と活性化される血友病の血漿中、第VIII補充因子(FVIII)の存在下または不在下において、ARC19499が凝固を改善することができることを説明する。
空間的実験モデルの主要な特性は、血漿の凝固が固定化された組織因子(TF)で覆われた表面によって活性化されることである。その後、フィブリンゲルは血漿の塊に伝播する。凝固サイズ対時間の計測値から、以下のパラメーターーが計算され得る。遅延時間(血漿が活性因子に接触し、凝固形成が始まるまでの遅延)、凝固増殖の初期速度(V初期、遅延時間経過後、最初の10分間にわたって凝固サイズ対時間の曲線の勾配を意味する)、凝固増殖の空間的速度(V定常、次の30分間にわたる勾配を意味する)、実験から60分後の凝固増殖。
ARC19499が凝固ネットワーク規則の現在の知識に基づいて、凝固の伝播に及ぼし得る影響を予想するために、まず、4つの異なるケース、正常な血漿、TFPIが完全に不活性化された正常な血漿、血友病Aの血漿(fVIIIなし)、およびTFPI活性が完全に不活性化された血友病Aの血漿について凝固のコンピューターー・シミュレーションを実施した。ちょっとした修正を加えた凝固の詳細な機序による数学モデルを用いて、血液凝固のコンピューターー・シミュレーションを実施した(Panteleevら(2006)Biophys J 90:1489−1500)。モデルの反応動態学を一組の微分方程式によって記述した。数学モデルは二相性であり、反応は活性因子(TF)との表面と血漿の量の両方で起こった。以下のモデル定数はオリジナルのモデルとは異なった。接触による活性化を阻害するために、血液はトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)に回収されたため、kcontact(接触による活性化の定数)を0min−1に設定し、第VIIa因子およびVII因子とTFとの会合速度定数(kaVIIa,TFおよびkaVII,TF)を0.0094nM−1min−1に設定し、第VIIa因子およびVII因子とTFとの解離速度定数(kdVIIa−TFおよびkdVII−TF)を0.0342min−1に設定し、第Xa因子、第VIIa因子およびTFの解離速度定数を385min−1に設定し、複合体VIIa−TF(kcat X,VIIa−TF)による第X因子活性化の触媒定数を20min−1に設定し、ミカエリス定数(KM X,VIIa−TF)を390nMに設定した。血小板がない血漿で実験を行ったため、実効定数keff IX,VIIaおよびkeff X,VIIaを0nM−2min−1に設定した。
組織因子(TF)密度が5pmole/m2であるコンピューターー・シミュレーションの結果は、TFPIの完全な不活性化により遅延時間を有意に短縮する一方で、凝固の伝播に及ぼす影響は、正常な血漿も血友病の血漿も小さいことを表した(図152A)。TFPIが存在するとき、TF密度を100pmole/m2まで増加させると、正常な血漿も血友病の血漿も、遅延時間が実質的に短縮した。組織因子(TF)密度が5pmole/m2であるシミュレーションとは対照的に、100pmole/m2でのTFPIの完全な不活性化では、速度および凝固サイズはわずかしか改善しない一方で、遅延時間は影響を受けなかった。これらのシミュレーションは、TFPIの遮断は最初の凝固形成段階に影響を及ぼすものであり、主に遅延時間および初期の凝固増殖の速度を変化させると予想した。図152Cに表されるように、遅延時間については、TFPIの遮断の影響はTF密度が低い場合に大きくなるはずである。
空間的凝固形成におけるTFPIおよびfVIIIの相対的な役割を理解し、TFPI拮抗作用およびfVIII補充についての可能性のある薬物間相互作用効果を予想するために、0〜0.7nMのfVIIIの濃度範囲、0〜2.5nMのTFPIの濃度範囲についてもコンピューターー・シミュレーションを実施した(すなわち、両方のタンパク質の活性が0〜100%)。モデルの凝固を10pmole/m2のTF表面密度によって開始した(図153)。TFPI拮抗作用が遅延時間を短縮することによって凝固開始時間に影響を及ぼした(図153A)一方で、fVIIIは主に凝固伝播速度に影響した(図153C)。積分パラメーターーである凝固サイズ(図153D)は、fVIII濃度の全範囲でTFPIに従属した。しかし、TFPI拮抗作用の(凝固サイズの全体的な増加に関して)絶対効率はfVIIIレベルの増加と変わらない一方で、相対効率は低下した。
空間的凝固の実験的計測を特別に設計されたチャンバーーに実施した(図154A)。血漿の試料をサーモスタットに続いて配置されたチャンバーーのウェルに充填した。全実験は37℃で行った。凝固を端面に固定化されたTFと共にチャンバーーに挿入したものを浸漬することによって開始した。凝固形成はCCDカメラを用いてフィブリンゲルから光散乱によって登録した(図154B)。チャンバーーは単色光で均一に照射された。散乱した光は外部ノイズを減ずる光学フィルターを通過する。画像は15秒毎にキャプチャーした。得られた連続の画像をその後、コンピューターーで加工し、血液凝固の空間ダイナミクスのパラメーターーを計算した。得られた連続の画像をその後、コンピューターーで加工し、血液凝固の空間ダイナミクスのパラメーターーを計算した。
当該一組の実験のために、表面を1〜2pmole/m2のTF密度で誘導体化した。トロンボプラスチンを(Fadeevaら(2010)Biochemistry(Mosc)75:734−743)に本質的に記述されるように、化学的な吸着法によってポリスチレン表面に固定した。表面を以下のようにPEIの薄い層で覆った。4mg/mLのアルブミン、2%のPEI、および1%のグルタルアルデヒドを2:1:1の容積比で混合し、13μL/cm2のポリスチレン表面に塗布した。ポリスチレン表面を室温(RT)で24時間乾燥させた。その後、室温に1時間、0.5%のグルタルアルデヒドでインキュベートし、蒸留水で15分間4回洗浄した。得られた表面を室温で1時間、12nMのトロンボプラスチン(0.2mL/cm2)にインキュベートし、15分間蒸留水で2回洗浄した。表面の遊離したグルタルアルデヒドは0.1Mのグリシン(0.2mL/cm2)で1時間インキュベートすることによって遮断された。最後に、活性因子を15分間蒸留水20mLで4回洗浄し、37℃で30分間乾燥させ、ポリエチレンバッグに密封した。活性因子を4℃で保管した。
表面のTF活性は、過剰な第VIIa因子の存在下で第X因子を活性化することのできる能力を特徴とする。Actichrome TFアッセイからキャリブレーターTFと共に調製された活性化因子(1×4mm)またはキャリブレーターTF溶液を96ウェルプレートのウェルに配置した。緩衝液A(1Mのトリス、150mMのNaCl、0.1%のPEG−6000、pH8.7)をその後、20μL加えた。次に塩化カルシウム(15mM)を含む緩衝液Aに第VIIa因子(20μL、60nM)を加え、室温で5分間インキュベートした。最後に、緩衝液Aの1.5μMの第X因子の20μLを加えた。活性因子を37℃で30分間インキュベートした。活性因子をウェルから取り除いた。活性化を停止し、検出を開始するために、25mMのEDTAおよび1.05mMの発色基質S−2765を含む溶液の40μLをウェルに加えた。発色基質切断の割合は、動力学的な様式のThermomaxマイクロプレートリーダーを用いて、405nmの波長で光吸収することによって特定した。TF濃度は検量線から特定した。
血液はインフォームドコンセント済みの血友病A患者から回収した。全患者は重度の血友病A(FVIII:C<1%)と診断され、30または50IU/kgの第VIII因子による予防を受け(患者8を除く)、実験前の3日間は第VIII因子の濃縮製剤を使用しないことを報告した。患者の大部分からの血液試料は、第VIII因子の投与前(0時間)、投与後1、4、24、および48時間に回収された(患者7〜9については0、1、および24時間の試料のみを回収した)。0、1および24時間に回収された試料だけを空間的凝固実験のために用いた一方で、APTTおよび第VIII因子のレベル(凝固活性に基づくアッセイで)は全試料で測定した。図155は、患者の特徴および第VIII因子投与前に測定されたVIIIおよびAPTT値を表す。図156は、異なる時点の各患者について測定した第VIII因子およびAPTT値を表し、残らず第VIII因子の薬物動態の既知のパラメーターーと良好に一致する。空間的凝固実験についての血液は、3.8%のクエン酸ナトリウム(pH5.5)と0.1mg/mL(最終濃度)のトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)を含む溶液に9:1のv/v比で回収された。その後、血液は15分間2,500gを遠心分離によって処理され、血小板が不足した血漿を得て、その後さらに5分間11,000gを遠心分離にかけ、血小板のない血漿を得て、後に使用するために−80℃で凍結した。実験前に凍結した血漿を室温の流水下で10分間解凍し、(Sinauridzeら(1998)Biochim Biophys Acta 1425:607−616)に記述されるように、乳酸の処置によって血漿のpHを7.2〜7.4に安定させた。ARC19499の一定分量を最初の実験日の前に室温で30分間解凍した。ARC19499をリン酸緩衝塩類溶液(PBS)に溶解し、必要な最終濃度に達した。各実験の前の15分間に、血漿の300μLはARC19499溶液の18μLで補われた。ARC19499の最終濃度が0nMである対照実験では、血漿はビヒクルPBSの同じ容量で補われた。活性因子を緩衝液(20nMのヘペス、NaClの150mM、pH=7.2〜7.4)に置き、実験中、活性因子近くの気泡形成を減じた。1MのCaCl2の溶液、活性因子の緩衝液および調製された血漿は、37℃で15分間別々にインキュベートした。実験チャンバーーを37℃で実験装置のサーモスタットに置いた。血漿を続いて6μLの1MのCaCl2を加えることによって再石灰化し、素早く混合し、血漿の300μLを実験チャンバーーに置いた。活性因子は緩衝液から取り出され、余剰な緩衝液は吸取紙で取り除かれ、活性因子を実験チャンバーーに置き、凝固を開始した。
各実験について、凝固増殖のパラメーターーを連続画像に基づいて測定した。最初に、背景の画像を連続画像の各画像から抜き取り、結果として得られる画像を分析した。活性因子に垂直線を引き、凝固の輪郭(ピクセル強度に基づいて、平均の光散乱のプロット対活性因子からの距離)を計算した。凝固サイズを座標としての各輪郭について測定し、光散乱強度が最大の50%であり、これが最大半量のフィブリノゲンのフィブリンへの変換に対応する(Ovanesovら(2005)J Thromb Haemost 3:321−331に記述されるように)。60分後の遅延時間、凝固増殖の初期速度(αまたはV初期)、凝固増殖の空間的速度(βまたはV定常)および凝固サイズを含む空間的凝固パラメーターーを凝固サイズ対時間プロットから計算した。各実験について、活性因子の異なる領域に、活性因子の表面に4つ垂直線を引いた。凝固増殖の特性を分析し、各凝固パラメーターーの値を4つ得て、平均を取り、平均値を得た。
血友病Aの血漿における空間的凝固のARC19499の実験的効果を9例からの血漿を用いて試験を行った。図157は、fVIII注入後の様々な時点に回収された血友病Aの血漿に100nMのARC19499をin vitroに加えた効果を説明する。図157Aは、血友病Aの血漿の表面密度が2pmole/m2である固定化されたTFによって開始される凝固サイズの典型的な光散乱微速度画像を表し、それぞれ、第VIII因子投与前(0時間)、および第VIII因子投与後1時間または24時間、ARC19499(100nM)存在下および不在下を表す。これらの画像に、TFでコートされた活性因子が各画像の左側の垂直方向の黒色の細長い片として見える。図157のパネルB、CおよびDはパネルAの関連する画像に由来する凝固サイズ対時間プロットである。パネルCは試験全体の実験的分析に使用したパラメーターーも説明する。
対照として、ARC19499が新たに調製された血漿および凍結および解凍の周期を経た同じ血漿に及ぼす影響を比較する一連の実験を行った。当該試験に使用した血漿の調製方法は、実験前に凍結/解凍された血漿を含むため、凝固パラメーターーを凝固亢進に移行し、実験中の大部分の血漿に自然に起こる凝固の出現を導くことができた。図158は、CTIに回収された新たに調製された血漿および凍結/解凍された同じ血漿中に測定された300nMのARC19499がある場合とない場合の空間的凝固のパラメーターーの比を表す。この図は、新たに調製された血漿と凍結/解凍された同じ血漿との間に、ARC19499に対する凝固のパラメーターーまたは反応に有意差が認められなかったことを表す。
図159〜167は、患者1〜9にそれぞれ第VIII因子を投与する前(0時間)、および投与後の1時間および24時間のARC19499の濃度への凝固パラメーターーの依存度を表す。各図のパネルA、B、CおよびDは、遅延時間、初期速度、定常速度および凝固サイズをそれぞれ表す。パネルEは第VIII因子およびARC19499の濃度への凝固サイズの依存度を表す。全例に、遅延時間を短縮し、凝固サイズを増加させることによって、ARC19499が空間的凝固を向上させた。ARC19499は第VIII因子の濃度の全範囲に、影響の程度は患者ごとに異なるが、有意な影響を引き起こした。V初期およびV定常への影響はもっと入り交じっていたが、試料のいくつかにこれらのパラメーターーの増加が認められた。
薬物間相互作用の転帰は、患者の大多数にシミュレーションで予測したものとほぼ同じであった。図159〜167のパネルEに表されるように、ARC19499は、第VIII因子の低濃度に凝固サイズに最も大きな効果があった一方で、第VIII因子はARC19499の低濃度で最も効果的であった。このことは、患者2および3からの血漿を除き、大部分の血漿に認められ、ARC19499の相対的効果は第VIII因子の全濃度についてほぼ同じであった(逆も真であった)。さらに、初期の第VIII因子レベルが極めて高かった患者9における第VIII因子の低濃度を試験することができなかった。それでも、第VIII因子の高濃度でARC19499の影響がないことを検討することができた。患者7の血漿には24時間の時点に、有意な自然に起こる凝固があり、凝固サイズを評価することができなかった。しかしながら0時間および1時間の時点のデータは、当該患者の血漿を同じカテゴリーに包含することができた。
様々な患者からの血漿を使用して得られた結果をさらに分析するために平均化した。図168は、患者の血液中の第VIII因子の3つの濃度範囲、5%未満、5%〜30%、および30%以上について、100nMのARC19499を加えることの影響を表す。全凝固パラメーターーについての平均値およびS.E.M.を表す。図168のそれぞれのパネルの実験の数にいくらか差があることに留意されたい。これは全ての凝固パラメーターーを常に計算できるわけではなかったことを原因とする。例えば、凝固がない実験について遅延時間を計算することはできない。逆に、活性因子に依存しない凝固の実験については、遅延時間しか計算できす、60分の時点の凝固サイズは計算できない。
図168のパネルAは、指示された第VIII因子の濃度範囲について、100nMのARC19499を加えた場合と加えない場合の平均遅延時間を比較したものを表す。ARC19499は、3つ全ての第VIII因子の濃度範囲で、遅延時間を統計的に有意に減少させた(平均値は対応t検定を用いてP<0.05で有意差がある)。しかしながら、ARC19499で達成された値は、互いに有意差は認められなかった(平均値は対応t検定を用いてP<0.05)。第VIII因子の濃度が増加するとARC19499の効率性にいくらか低下もあった(FVIII<5%では遅延時間は50%短縮したが、FVIII>30%ではその効果は25%に過ぎなかった)。
図168のパネルBおよびCは同じ濃度範囲について、ARC19499が凝固増殖の速度に及ぼす影響を表す。ARC19499が初期速度に及ぼす影響は統計的に有意(FVIII>30%を除き)であり、定常速度は有意ではなかったが(5%<FVIII<30%を除き)、影響は小さいほうであった(影響が40%超であったFVIII<5%を除き18%〜30%の増加)。
図168のパネルDに表されるように、ARC19499は、第VIII因子の濃度の3つ全ての範囲について、凝固サイズを統計的に有意に増加させた(P<0.01)。第VIII因子の濃度が増加する(5%未満30%以上)につれて、ARC19499の影響は200%から40%まで低下した。言い換えれば、ARC19499の添加により、第VIII因子の全レベルについて同じであるプラトーを達成した(ARC19499での凝固サイズの値は、対応t検定を用いるP=0.05で、3つの濃度範囲に有意差はなかった)。
最後に、図169に、第VIII因子注入後の0、1および24時間で得られる平均的な空間凝固パラメーターーをARC19499の濃度の関数として表す。垂直なエラーバーは標準誤差を示し、実験の数は患者数に等しく、n=9である。凝固サイズの増加の規模に関して(パネルD)、ARC19499の絶対的な用量依存は3つの時点すべてについてほぼ同じに見えた。ARC19499の相対効果は0時間の時点(四角形)で最大であり、1時間(円形)および24時間(三角形)の時点で最小である。
空間的凝固モデルのデータに基づくTFPIおよびARC19499についての活動の機序を図170に模式的に表す。正常な血漿では、fXaをいくらか産生した後、外因性テナーゼはfXaに依存的な様式でTFPIによって阻害され、第X因子および第IX因子の活性をさらに防ぐこととなる。このことはしかし、内因性テナーゼによって正常に代償される。fXaとは対照的に,
fIXaは抗トロンビンIIIによってゆっくりと阻害され、空間に効率的に拡散することができ、fVIIIaに結合し、活性因子から離れてfXaを産生する(図170A)。当該経路は血友病Aの血漿では機能せず(図170B)、凝固の開始は影響を受けないが、空間的伝播は損なわれる。血友病Aの血漿において、ARC19499によってTFPIを遮断することは膜結合複合体VIIa−TFの阻害を防ぐ。結果的に、第Xa因子および第IXa因子のより高い産生がトロンビンレベルを増加させ、凝固形成の初期段階を進める(図170C)が、不完全な空間的伝播を進めない。要約すると、ARC19499のTFPIの不活性化は、血友病Aの損なわれた空間的凝固の伝播を正常するというよりむしろ、最終的な凝固サイズを究極には正常なサイズとほぼ同じにする凝固の開始を進める。
同様に、図171では、fVIIIおよび/またはTFPIの存在下または不存在下において、空間および時間の関数として、内因性および外因性テナーゼによって産生される第Xa因子を表すために数学的モデリングを使用した。パネルAは、TFPI存在下および不存在下の正常および血友病Aの血漿について、典型的な凝固サイズ対時間プロットを表す。パネルBは、同じ条件下の内因性テナーゼ(右のパネル)および外因性テナーゼ(左のパネル)による第Xa因子の産生に及ぼす影響を表す。これらのパネルに表されるように、血友病Aは内因性第Xa因子の産生を本質的に排除する。TFPI阻害は内因性第Xa因子の産生にほとんど影響しないが、外因性第Xa因子の産生を実質的に高める。注目すべきことに第Xa因子の産生を高めることは活性因子の近くに局所化される。第Xa因子は、血漿中のその急速な阻害のため、活性因子から離れたところでは得ることができない。したがって、TFPI拮抗作用の影響は局所化される。凝固物は大きくなるが、それほど大きくはならない。このことは、第VIII因子がないときに長所を与え、外因性第Xa因子は凝固の重要な要素となる。対照的に、第VIII因子が存在し活性因子から離れたところで凝固伝播をもたらすとき、TFPI阻害は凝固をほとんど進行させない。
結論として、当該試験のデータにより、血友病Aの血漿の第VIII因子のあらゆる濃度範囲について、ARC19499を添加することによって、主に、遅延時間の短縮および凝固サイズの増加によって、空間的な凝固形成が有意に向上することが示される。対照的に、第VIII因子は遅延時間にほとんど影響を及ぼさないが、空間的凝固増殖の速度を増加させる。ARC19499は、第VIII因子のレベルを増加させることによって、遅延時間にほんのわずかしか影響を及ぼさない。凝固サイズに関して、第VIII因子の濃度が低いときにARC19499の相対効果は大きく、試験を受けた患者の大多数(9例中7例)に第VIII因子の濃度が高いときには小さかった。逆に、第VIII因子の影響はARC19499の濃度が低いときは大きかった。残りの2例では、利用できるデータが、反応の差が第VIII因子の初期レベルまたは使用される第VIII因子の濃縮製剤(Haemoctin、Kogenate、またはOctanate)に起因すると思われることをなんら示していないにも関わらず、第VIII因子の全レベルについて、ARC19499の相対効果にほとんど差がなかった。
凝固のin vitroの実験的モデルを使用する試験から得られる全体的な結論は、血友病Aの血漿におけるARC19499の影響は、第VIII因子の濃度が増加するにつれて小さくなることである。同じことがARC19499の濃度の関数として、第VIII因子の影響に当てはまる。このことにより、患者は現在の第VIII因子のレベルに懸念することなく、ARC19499で安全に治療を受けることができ、逆も真で、臨床試験中にARC19499を摂取している患者は第VIII因子の濃縮製剤で安全に治療を受けることができる。
実施例45
本実施例は、ARC19499が、精製された成分での色素形成アッセイにおいてTFPIによって阻害を受けることから第Xa因子(FXa)を保護することを説明する。TFPIは活性が緩やかで強力なFXa阻害剤であり([Huangら(1993)J Biol Chem 268(36):26950−26955]、TFPIのクーニッツ(Kunitz)−2ドメインを必要とするが(Girardら(1989)Nature 338:518−520;Petersenら(1996) Eur J Biochem 235:310−316)、他のTFPIドメインも当該相互作用を強化することに寄与する(Huangら1993)。FXaとの最初の遭遇により、TFPIと、強結合複合体に緩やかに異性化するFXaとの間に弱い衝突錯体を急速に形成する。このことがFXa基質の存在下で、FXa活性の初期バースト(υo)と、続くもっとゆっくりとした定常状態速度(υs)と二相性の速度曲線となる。本実施例では、υoおよびυsに反映されるように、ARC19499がFXaのTFPI阻害に及ぼす影響を検討した。
TFPIおよび/またはARC19499の様々な濃度が存在する下で、成分を混合物に加える順序と反応を開始する前に一緒にインキュベートする時間の長さを変更して、発色基質(S−2765、Chromogenix)を切断するFXaの能力を測定した。最初の実験では、濃度を増加させたTFPIを(最終1nM)およびS−2765(最終0.5nM)と混合し、FXaを最後に加えるか(図172A)、S−7265を最後に加えるかした(図172B)。FXaを最後に加えたとき(図172A)、S−7265の切断についての進行曲線はFXa/TFPI複合体が安定化するにつれて定常状態速度(υs)に移行したυoを特徴とする産生物の発生の初期バーストから始まった。TFPIの濃度が最大32nMまで増加すると、υoもυsも徐々に低下した。基質を最後に加えたとき(図172B)、FXaおよびTFPIは基質を加える直前に一緒に混合した。これらのステップはたった数分で完了したが、FXaおよびTFPIは基質を加えるまでに十分に速く平衡化し、強力な複合体の形成は大方完了しているように見えた。この場合の進行曲線は二相性の特徴が弱いことを表し、産生物の形成速度は、定常状態速度υsを主に反映した。8nM以上のTFPIの存在下では、阻害はこれらの条件下でほぼ完了し、産生物はほとんど形成されない。
これらの反応へのARC19499の影響を検討するために、1nMのFXaおよび0.5mMのS−2765と共に、8nMのTFPIを濃度が増したARC19499(最終1、10、または100nM)と混合した。FXaを最後に加えるか(図172C)またはS−2765を最後に加えるか(図172D)した。ARC19499は定常状態速度に有意な影響があるように見えた。このことは図172Dに最も明確に表れ、0または1nMのARC19499の存在下ではFXaの活性はほとんど観察されなかったが、実質的な活性は、ARC19499がもっと高い濃度で回復した。定常状態速度への同様の影響が図172Cにはっきり表れる一方で、反応の初期速度への影響はほとんどはっきりしないが、小さいように見える。
υsへのARC19499の影響を検討するために実験をさらに行った。図172Bおよび172Dの実験と同様に、基質を最後に加えたが、阻害複合体が完全に平衡化されたことを確実にするために、基質を加える前に、FXa、TFPI、およびアプタマーを室温で30分間インキュベートした(図173)。FXa(1nM)およびS−2765(0.5mM)の最終濃度は前回の実験と同じであったが、TFPIは1〜40nMに変化し、ARC19499は1.25から2560nMに変化した。図173Aでは、FXaの反応速度をアプタマーの濃度の関数としてx軸上にプロットし、図173Bでは、同じデータをTFPIの濃度の関数としてx軸上にプロットした。観察された速度はTFPIまたはARC19499の不在下で40〜45mOD/分であり、TFPIの濃度が最も低いとき(1nM)であっても、阻害を観察した。以前に観察したように、ほぼ完全な阻害はTFPIの濃度が8nM以上のときに認められる。ARC19499の濃度を増加させると、TFPIの存在下でFXaの活性を増加させることができる。TFPIのいずれの濃度で、アプタマーの濃度が最も高いときでは、TFPIの不在下に見られるレベルまでFXaの活性を完全に回復することはできなかった(塗りつぶしたひし形、図173A)。図173BはARC19499の影響は160nMのアプタマーによって飽和されたことを表す。この図はARC19499の濃度が飽和しても、当該アッセイのTFPI阻害を完全に元に戻さなかったことを説明する。TFPIはFXaの弱い阻害剤のままであった。
要約すると、これらの2つの図は、ARC19499はFXaに接触した後に、TFPIを阻害する最も大きい役割を担っているように思われることを示唆する。このことは反応初期速度への影響は小さく、定常状態速度への影響はかなり大きいことを説明しているように思われる。これらのデータはまた、ARC19499がTFPIを阻害してもなお、得られるTFPI:ARC19499複合体は相互に作用し、FXaを阻害することができ、図173では、なぜTFPIの完全な阻害がないのかを説明する。
実施例46
本実施例はARC17480とARC19499が結合するTFPI上の領域を検討する。これらの実験について、TFPI上の様々な領域に結合する抗体を用いて、プレートベースの結合アッセイに、ARC19499と共にTFPIに結合することについて競合させ、またはドットブロット結合アッセイに、ARC17480と共にTFPIに結合することについて競合させた。競合に使用する抗体を以下の表41に表す。
本実施例は、抗体M105273(Fitzgerald Industries社のモノクローナル抗体)をプレートベースの結合アッセイではARC17480がTFPIに結合することについて競合させ、ドットブロット結合アッセイではARC17480がTFPIに結合することについて競合させたことを説明する。抗体M105273はK3ドメインアミノ酸残基160〜250を含むTFPIの断片に対して産生され、当該領域のどこかでTFPIに結合する(表41)。本実施例はまた、M105271、M105272、およびAHTFPI−5138すべてがプレートベースの結合アッセイではTFPIに結合することについてARC19499と競合するが(図174)、ドットブロット結合アッセイでは競合しないことを説明する(図175A)。M105271はK1ドメインアミノ酸残基17〜87を含むTFPIの断片に対して産生されるモノクローナル抗体である。M105272はK2ドメインアミノ酸残基88〜160を含むTFPIの断片に対して産生されるモノクローナル抗体である。AHTFPI−5138はTFPI(残基1〜16)のN末端に対して産生されるモノクローナル抗体である。一方、TFPI(残基251〜276)のC末端に対して産生されたM105274は両方のアッセイで弱い競合活性を示すのみであった(図174および175A)。PAHTFPI−SはK1およびK2ドメインのみを含むTFPIの切断型バージョンに対して産生されるポリクローナル抗体であり、ネガティブコントロールのオリゴヌクレオチドであるARC32603と同様に、ドットブロット結合アッセイではいかなる競合も示さなかったが、プレートベースの結合アッセイではARC19498と同様に競合した(図174)。競合実験に使用する抗体を以下の表41に表す。
プレートベースの結合実験について、100μLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中のTFPIの400ng/ウェル(American Diagnostics社、カタログ番号4900PC)を用いて、96ウェルMaxisorbプレートを4℃でコートした。TFPI溶液をその後除去し、プレートを室温で200μLの洗浄緩衝液(DPBS+0.05%のTween20)で続けて3回洗浄した。プレートはその後室温で30分間、DPBS中の10mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)の200μLで遮断した。BSAで遮断した溶液をその後除去し、プレートを200μLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。競合する抗体を連続的に希釈し、DPBS中最終濃度が25nMのARC19499および0.1%のBSAでARC19499と混合し、混合物をその後アッセイプレートに加え、室温で3時間インキュベートした。ARC19498をARC19499と同様に混合し、抗体競合アッセイのポジティブコントロールとして使用した。ウェルをその後上述のように洗浄した。競合にPAHTFPI−Sを使用する実験について、アッセイ緩衝液中の0.5μg/mLのウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics社、カタログ番号2061−1)の100μLをプレートに加え、室温で3時間インキュベートした。抗PEG抗体の溶液はその後除去し、プレートを上述のように洗浄し、アッセイ緩衝液中に1:1000に希釈した抗ウサギIgG−HRP二次抗体を各ウェルに加え(Cell Signaling Technology社、カタログ番号7074)、30分間インキュベートした。二次抗体の溶液はその後除去し、プレートを上述のように洗浄した。残りの抗体について、アッセイ緩衝液中の100μLのビオチン化ウサギモノクローナル抗PEG抗体(Epitomics社、カタログ番号2173)の0.5μg/mLをプレートに加え、室温で3時間インキュベートした。抗PEG抗体の溶液はその後除去し、プレートを上述のように洗浄し、DPBS中に200倍に希釈したR&D Systems社(ミネアポリス、ミネソタ州)のストレプトアビジン−HRPの100μLを加え、室温でさらに1時間インキュベートした。ストレプトアビジン−HRPはその後除去し、プレートを上述のように洗浄した。TMB溶液(Pierces社、カタログ番号34028)の溶液の100μLを各ウェルに加え、2分間インキュベートし、100μLの停止溶液(2NのH2SO4)を各ウェルに加え、反応を停止させた。アッセイプレートをその後Victor3V1420マルチレーベル・カウンター(Perkin Elmer)を用いて450nmで読み取った。結合の阻害の割合を阻害が0%である25nMのARC19499、並びに阻害が100%である0nMの抗体および0nMのARC19499を用いて計算した。Prism4 Graphpadソフトウェアを用いて4パラメーターロジスティクスに基づいてIC50を計算した。
図174に表されるように、TFPIのK1ドメイン内で結合する抗体M105271、TFPIのK2ドメイン内で結合する抗体M105272、TFPIのK3ドメイン内で結合する抗体M105273およびTFPIのN末端領域に結合するAHTFPI−5138はすべて、プレートベースの結合アッセイで組換えTFPIに結合することについてARC19499と競合する。なかでも、TFPIのK3ドメインに対してM105273が最も良好に競合し、ARC19499とTFPIとの間の相互作用を100%近く遮断した一方で、その他の抗体は相互作用を60%と85%の間で遮断する。TFPIのK1およびK2ドメインに対して向けられるポリクローナル抗体であるPAHTFPI−Sは試験することのできた最大の濃度(300nM)で相互作用の50%近く阻害した。しかしながら、この抗体はプラトーに達していなかったため、もっと高い濃度でより高い阻害が可能である。TFPIのC末端部内に結合するモノクローナル抗体であるM105274は、当該アッセイではTFPIに結合することについて、ARC19499に部分的にしか競合しなかった(<50%)。
表41の抗体はドットブロットに基づく競合結合アッセイでも試験を行った。これらの実験では、抗体を加える場合と加えない場合とで、微量の放射標識されたARC17480を10nMの組換えTFPIとインキュベートした。抗体は1000nM、333nM、111nM、37.0nM、12.4nM、4.12nM、1.37nM、0.46nM、0.15nMおよび0.051nMで試験した。ARC17480を対照としてすべての実験に競合として含めた。各分子について、各競合アプタマーの濃度で放射標識されたARC17480の結合の百分率を分析に使用した。放射標識されたARC17480の結合の百分率をアプタマーの濃度の関数としてプロットし、等式y=(max/(1+x/IC50))+int(式中、y=放射標識されたARC17480の結合の百分率、x=アプタマー濃度、max=最大の放射標識されたARC17480の結合、およびint=y−切片)に適合させ、結合−競合についてIC50値を生成した。図175はM105271、M105272、M105273、M105274、PAHTFPI−S、およびARC32603で実施した結合−競合実験を表す。これらの実験は、抗体M105273がドットブロット競合アッセイで、TFPIに結合するARC17480に競合することを示す(図175A)。M105274は当該アッセイで結合に部分的に競合する(図175A)一方で、M105271、M105272、およびPAHTFPI−SはARC17480と結合することについて、有意な競合を示さない(図175A、図175B)。
上述の2組の実験の間の主な差は以下のように要約できる。1)プレートアッセイは固定化されたTFPIを使用できた一方で、ドットブロットアッセイは溶液中の10nMのTFPIを使用できた。2)プレートベースのアッセイの競合アプタマー(ARC19499)には5’末端で分子量の高いPEGがあったのに対し、ドットブロットアッセイの競合アプタマー(ARC17480)にはリン酸基しかなかった。3)プレートベースのアッセイの競合アプタマーは25nMの濃度で加えられた一方で、ドットブロットアッセイの競合アプタマーは微量(ピコモル)しか加えられなかった。これらの因子のいずれか、特にプレートベースのアッセイでは明らかであったが、ドットブロットアッセイでは明らかにならなかったM105271、M105722およびPAHTFPI−Sによる見かけの競合が結果の違いに寄与していたと思われる。2つのアッセイは一致しており、M105273による(TFPIのK3ドメインに対する)完全に近い競合およびM105274による(TFPIのC末端領域に対する)部分的な競合を表す。まとめると、これらの実験は、K3ドメインがARC17480/ARC19499とTFPIとの間の相互作用に重要な役割を担っており、C末端ドメインも同様に役割を担い得ることが示唆される。しかしながら、プレートアッセイのデータは、TFPIの複数の領域が直接的または間接的にこの相互作用に寄与し得、アプタマー結合のTFPIの特定のドメインまたは領域の関与を除外しないことを示す。
実施例47
本実施例は血友病Aの非ヒト霊長類モデルで得られる血漿の試料のARC19499の濃度を評価する。本実施例は実施例32に拡張し、血友病Aのサルのモデルにおける凝固欠損を矯正するときのARC19499の効果を記述する。
本実験では、血友病Aの非ヒト霊長類モデルをカニクイザルにヒトの第VIII因子に対するヒツジポリクローナル抗体を静脈に単回ボーラス注射(20mg、50,000ベセスダ単位)をすることによって生成する。静脈注射から3.5時間後に、サルを生理食塩水(1mL/kg)、組換え第VIIa因子(rFVIIa)(NovoSeven(登録商標)、90μg/kgボーラス)またはARC19499(600μg/kg、300μg/kgまたは100μg/kgボーラス)のいずれかで処置した。抗体を投与する前(ベースライン、時間=0)、抗体投与から2.5時間後、薬物/生理食塩水の処置から15分後(時間=3.75時間)、および薬物/生理食塩水の処置から1時間および2時間後(時間=それぞれ4.5時間および5.5時間)にクエン酸塩添加血を得た。血漿を発生するように血液を処理にかけ、プロトロンビン時間(PT)、特性活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、第VIII因子の機能およびトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))を含むいくつかの方法を用いてクエン酸塩添加血漿を分析した。特にARC19499の300μg/kgおよび600μg/kgの用量が、TEGによって測定されるように、試料の凝固欠損を矯正するのに効果があるように見えた(実施例32)。ARC19499がこれらの試料に存在することを確認するために、ARC19499の血漿濃度を紫外吸収検出の高速液体クロマトグラフィー(HPLC−UV)によって測定した。
HPLC分析のために血漿の試料を調製するために、少量の一(50μL)定分量の試験血漿を消化用緩衝液(60mMのトリスHCL、pH8.0、100mMのEDTAおよび0.5%のSDS)の25μLおよびプロテイナーゼ溶液(10mMのトリスHCl、pH7.5、20mMのCaCl
2、10%のグリセロールv/v中の1.0mg/mLのプロテイナーゼK)の75μLと混合した。150μLの試料を55℃で一晩インキュベートし振盪した。インキュベートした後、試料を遠心分離にかけ(14,000回転、4℃、15分)、上清の100μLを取り出し、HPLC注入バイアルに移した。アッセイの注入量は約25μLであった。HPLC分析に使用された装置の条件を表42に表す。定量の下限(LLOQ)は線形の濃度範囲が0.2〜500μg/mLで0.2μg/mLであった。HPLC法は盲検のサルの血漿に調製され、in vivoの試料に調製するために用いる同じプロテイナーゼ法によって抽出されたARC19499の濃度の標準品に対して較正した。報告されたARC19499の濃度はすべてアプタマーの質量に基づいており、PEGの質量を除外した。
個別の血漿試料中の測定されたARC19499の濃度を表43(300μg/kg)および表44(600μg/kg)に認めることができる。300μg/kgで処置を受けたサルの測定されたARC19499の平均濃度は、試験の一定期間にわたり、6.80〜8.05μg/mL(0.61〜0.73μM)であった。600μg/kgで処置を受けたサルの測定されたARC19499の平均濃度は、試験の一定期間にわたり、14.93〜15.73μg/mL(1.35〜1.42μM)であった。
実施例48
本実施例は、精製された成分および発色性のFXa基質を用いてFXa活性のアッセイにおいて、ARC19499が第Xa因子(FXa)をTFPIによる阻害から保護することを説明する。
FXaのTFPI媒介の阻害を試験するために、事前に記述されているもの(Huangら(1993)J Biol Chem 268(36):26950−5)に修正を加えてFXa基質の切断を監視した。第Xa因子はEnzyme Research Laboratories社製であった。組換えヒトTFPIを(Pedersenら(1990)J Biol Chem 265(28):16786−93)に記述されているように、Novo Nordisk社(コペンハーゲン、デンマーク)の細胞株から精製した。FXaの80μL(最終濃度、0.2nM)またはTFPIを加えたFXa(最終濃度、2nM)のいずれかを室温で20分間、3mMのCaCl2と共に、アッセイ緩衝液(20mMのヘペス、pH7.4、150mMのNaCl、および1mg/mLのウシ血清アルブミン)にインキュベートした。その後、発色基質の20μL(Pefachrome FXa 5523、Centerchem社の最終濃度、0.3mM)またはTFPIを加えた発色基質の20μLを加え、基質のFXa切断を監視した。FXaのTFPI阻害へのARC19499の影響を検討するとき、アプタマーの濃度を最大4μM(最終濃度)に変化させることもアッセイに含めた。基質のFXa切断をThermoMax(商標)プレートリーダー(Molecular Devices社、サニーベール、カリフォルニア州)の96ウェルのマイクロタイタープレート中で監視した。
FXaのTFPI媒介の阻害に対するARC19499の影響を特徴化するために、アプタマーとヒトTFPIとの間の見かけの親和性を最初に確かめた。このアッセイでは、濃度を変化させたアプタマーを1または2nMのTFPIと混合し、FXaに加え、FXa−TFPI複合体を形成した。阻害されていないFXaを特定の発色基質の切断によってアッセイした。データを相対的なFxa活性に対して正規化し、TFPIの不在下のFXaの活性を1、TFPIが存在し、ARC19499が存在しないときのFXaの活性を0とする。この正規化した結果を図176に表す。TFPIと共に存在するアプタマーが多いほど、より大きなFXaの活性がアッセイに残っていたことが見ることができる。起点と平坦域との間の曲線の中間点は、ARC19499およびTFPIについての見かけの結合定数を推定し、ARC19499の濃度は約50nMである。図178は、アプタマーの濃度が飽和していても、相対的なFXaの活性は100%に達していないことを説明する。これらのデータについて可能な説明は、ARC19499はFXaと直接接触するTFPIの第2のクーニッツドメインに結合していないことである。したがって、ARC19499はFXaとTFPIとの間の相互作用を完全に遮断することができない。言い換えれば、アプタマー−TFPI複合体はFXaの活性阻害を持ち続けているが、TFPI単独ほどの能力ではない。
次にFXaとTFPIとの間の相互作用を検討した。以前の報告と同様に、TFPIの存在/不在下のXa基質の切断を監視することによって、FXaとTFPIとの間の相互作用を試験した(Huangら、1993;Franssenら(1997)Biochem J 323:33−7;Baughら(1998)J Biol Chem 273(8):4378−86)。図177A(#1と標識された曲線)に表されるように、FXaは擬似一次条件で発色基質を切断する。TFPIおよび発色基質をFXaに同時に加えたとき、FXaがTFPIによって阻害されるにつれて、基質の切断の割合が徐々に減少した(図177Aの曲線2)。基質を加える前にFXaをTFPIと共に事前にインキュベートしたとき、平衡点での基質の切断の割合を図177A(曲線3)に表す。アプタマーをアッセイに含めたとき、図177Bの曲線4に表されるように、TFPI不在下のFXa活性は影響を受けなかった。しかしながら、アプタマーをTFPIと共に同時にFXaに加えたとき、図177Bの曲線5を図177Aの曲線1と比較することによって表されるように、基質の切断の割合が劇的に増加した。図177Bの曲線6によって表されるように、FXaおよびTFPIを事前にインキュベートして、FXa−TFPI複合体を形成したとき、図177Aの曲線3と比較すると、アプタマーの添加により、平衡点での基質のXa切断が高まった。曲線3と曲線6との比較により、アプタマーは事前に形成されたXa−TFPI複合体からTFPIを取り除くことができ、それによりFXa活性が有意に回復した。
図177のライン1および4の勾配は、アッセイの最初のFXaの濃度を表す。TFPIはFXaをゆっくりと阻害するため、反応の後半段階の曲線#2、#3、#5、および#6は平衡点での各実験のFXa活性を表す。言い換えれば、これらの勾配は各条件下でTFPIによって阻害されなかったFXaの量を表す。阻害されなかったFXaの濃度は勾配から導きだすことができるため、平衡点でのFXa−TFPI複合体の濃度は最初のFXaの濃度と平衡点でのFXaの濃度との間の差を表す。同様に、TFPIの濃度も導きだすことができる。したがって、各アッセイのFXa−TFPIの平衡定数Kiは、曲線#2、#3、#5、および#6についてそれぞれ、0.24nM、0.15nM、4.3nM、および3.4nMであると計算された。ARC19499の存在によってFXaについてのTFPIのKiが20倍に増加したことは明らかである。これらのデータはアプタマーがTFPIの相互作用と共にFXaに干渉し、それによってTFPIをFXaの弱い因子阻害剤にする。
要約すると、結果は、ARC19499はFXaの活性に直接影響を及ぼさないが、第Xa因子に結合するTFPIに干渉することができ、Xa−TFPI複合体からTFPIを引き離すこともできることを示す。
実施例49
本実施例はARC19499が外因性テナーゼをTFPIによる阻害から保護することを説明する。
このアッセイでは、再脂質付加された組換えヒト組織因子(Innovin(商標)、Baxter社)の1pM、1nMの第VIIa因子(Enzyme Research Laboratories社)、150nMの第X因子(FX)、3nMの塩化カルシウム、2nMのTFPI、および様々な濃度のARC19499を第Xa因子(Pefachrome FXa 5523、Centerchem社)についての発色基質と共に、37℃でインキュベートした。これらのアッセイに使用する組換えヒトTFPIを(Pedersenら(1990)J Biol Chem 265(28):16786−93)に記述されるように、Novo Nordisk社(コペンハーゲン、デンマーク)の細胞株から精製した。
第Xa因子(FXa)の基質の切断を図178Aに表す。曲線#1はTFPI不在下の外因性テナーゼ複合体によるFXaの発生を表す。曲線#2〜5は、4000、1000、100、および10nMのARC19499と共に2nMのTFPIの存在下のFXaの発生を表す。曲線#6は、2nMのTFPIは存在するがARC19499が存在しないときのFXaの発生を表す。図178Aのデータは(Baughら(1998)J Biol Chem 273(8):4378−86に記述されるように)活性FXaの量に変換され、これを図178Bに表す。曲線#1は、TFPIが存在しないとき、外因性テナーゼが結果的に持続性のFXa活性になることを示す。曲線#6は、TFPIがARC19499の不在下でXaの発生を停止することを示す。曲線#2〜5は、ARC19499の存在下でTFPIによる第Xa因子の阻害が遅延することを示す。ある程度まで、存在するARC19499が多いほど、第Xa因子の発生が長く持続することも明らかである。活性第Xa因子が平衡点にある(曲線が水平になる箇所)セクションが曲線#2〜6にある。水平なラインのそれぞれが起点に向かって伸長する点、および曲線#1との切片は、TFPIが外因性テナーゼを遮断する点として定義され得る。ターンオフ時間をARC19499の濃度に対してプロットし、これを図178Cに表す。4000nMのARC19499がこのアッセイの飽和であることが明らかである。図178A〜178Cから、ARC19499は外因性テナーゼによって第Xa因子の発生を延長するが、TFPIの調節を完全に遮断しないことも明らかである。図178Cの曲線の中間点は約50nMであり、図176に表されるデータと一致している。
実施例50
本実施例は、ARC19499が、プロトロンビナーゼ複合体内でプロトロンビンのFXa媒介活性化のTFPI阻害を防ぐことを説明する。
プロトロンビナーゼ活性のTFPI阻害を(Franssenら(1997)Biochem J 323:33−7)に記述されているようにいくつかの修正を加えて行った。リン脂質液胞を調製するために使用する1,2−ジオレオイル−sn−グリセリン−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、L−α−ホスファチジルコリン(PC)、およびL−α−ホスファチジルセリン(PS)はAvanti Polar Lipids社(アラバスター、アラバマ州)製であった。単層リン脂質液胞(15%のPS、41%のPCおよび44%のPE)を(Mayerら(1986)Biochim Biophys Acta 858(1):161−8))に記述されているように調製した。組換えヒトTFPIを(Mayerら(1986)Biochim Biophys Acta 858(1):161−8)に記述されているように、Novo Nordisk社(コペンハーゲン、デンマーク)の細胞株から精製した。第Xa因子(FXa)はEnzyme Research Laboratories社製であり、第Va(FVa)因子はHaematologic Technologies社製であった。Q−セファロース結合(塩溶出)上のクロマトグラフィー、ヘパリン親和性クロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー、HiTrap Qからのカルシウム溶出によってプロトロンビン複合体濃縮物からプロトロンビンを調製した。プロトロンビナーゼ複合体(0.1pMの第Xa因子、1nMの第Va因子および20μMのリン脂質膜)をTFPIがある場合とない場合とで、37℃で20分間インキュベートした後、プロトロンビン(300nM)およびトロンビンについての発色基質(0.3mMのTos−Gly−Pro−Arg−pNA−AcOH、Centerchem社)を加えた。基質のトロンビン切断を37℃で30分間続けて監視した。
図179Aおよび図179Bの曲線#1および#4は(それぞれ)、アプタマーの不在下(図179A)および存在下(図179B)で、Xa/Va複合体によってプロトロンビンからトロンビンが発生することを表す。この図から見ることができるように、アプタマーの存在はTFPIの不在下ではプロトロンビナーゼ活性に影響を与えなかった。FVaがアッセイから取り除かれたとき、ライン#3および#6に表されるように、トロンビンの発生を検知することができなかった。図179Aの曲線#2に表されるように、TFPIの1nMがアッセイに含まれたとき、プロトロンビナーゼからトロンビンの発生が減少した。しかしながら、図179Bの曲線#5に表されるように、ARC19499をアッセイに加えると、トロンビンの発生がベースラインのレベルまで回復した。このアッセイは二次反応を監視するために設計されたため、観察されたデータを以下の等式に適合することができる。
式中、第2の微分定数であるCはプロトロンビナーゼの濃度に比例する。曲線#1、4、および5の適合された第2の微分定数は同じである一方で、曲線#2の適合された定数は他の約67%である。第2の微分定数がプロトロンビナーゼの濃度に比例するため、図179のデータは、図179Aの条件下で、膜上の第Xa/Va因子複合体のTFPIに競合するにも関わらず、TFPIはプロトロンビナーゼ活性の約1/3を阻害することを示す。しかしながら、ARC19499はプロトロンビナーゼのTFPI媒介阻害を遮断し、図179Bに表されるように活性を回復させる。
これらの結果はアプタマーがFXaのTFPI阻害と干渉することを示す。この干渉は、遊離したFXaに当てはまるだけでなく、プロトロンビナーゼ複合体内のFXaにも当てはまる。
実施例51
本実施例は、ARC19499にはFVIII欠損血漿および全血の生物学的活性があることを説明する。ARC19499は血漿の希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイおよび組織因子活性化全血凝固アッセイの凝固時間を短縮した。
血漿中の凝固時間について、血友病Aのドナーからプールされた第VIII因子(FVIII)欠損血漿はHRF社(ローリー、ノースカロライナ州)製であり、正常な血漿はThermo Scientific社(ミドルタウン、バージニア州)製であった。血漿の70μLを脂質付加された組み替え組織因子(Innovin(商標)、0.5pMまたは1pM)溶液と混合し、37℃で3分間インキュベートした後に25mMのCaCl2の70μLを血漿/Innovin混合物に加えることによって、希釈プロトロンビン時間(dPT)を測定した。凝固時間をStart4凝固計で記録した。FVIII欠損血漿のdPTを短縮するARC19499の効果を試験したとき、アプタマーを組織因子(TF)溶液の0.5pMまたは1pMのどちらかに希釈し、FVIII欠損血漿と37℃で3分間インキュベートした後にCaCl2を加えて凝固反応を開始した。
図180Aに表されるように、プールされた正常な血漿中で0.25pMの組織因子の最終濃度は、ARC19499不在下でdPTが160秒になった一方で、組織因子の0.5pMは、dPTが140秒になった。図180Aに表されるように、FVIIIのレベルが低下するにつれて、dPTが進行的に延長した。FVIIIの不在下で、0.25pMのTFは360秒(事前にセットしたパラメーターー)以内に測定できる凝固を産生することができなかった一方で、TFの0.5pMは、凝固時間が270秒になった。第VIII因子欠損血漿のdPTアッセイにARC19499を含めたとき、凝固時間が短縮した。図180Bに表されるように、30nMのARC19499は、0.25pMのTFの存在下でdPTを240秒まで短縮した。同様に、ARC19499の30nMは、0.5pMのTFの存在下で凝固時間を180秒まで短縮した。
全血を測定するために、個々の患者からの試料を使用した。重度の血友病A(FVIII阻害剤がある場合とない場合で、FVIII活性が1IU/dLより小さい)の外来患者をノースカロライナ大学の包括的血友病クリニックから募った。募集した全患者は、少なくとも7日間にFVIIIまたはいかなるバイパス生成物の治療を受けたことがなかった。血液試料は、ノースカロライナ大学の人対象委員会の治験審査委員会によって承認されたプロトコルを用いて、清潔な静脈穿刺によって得られ、試験前にEDTA(最終5mM)を含む管に移した。第VIII因子欠損血漿のdPT試験と同様に、様々な量のARC19499を含むInnovin溶液の10μLをEDTA処理した血液の150μLに加え、0.5pMの組織因子および設計されたARC19499濃縮物を得た。全血/Innovin/ARC19499の混合物を37℃で3分間インキュベートした後に、25mMのCaCl2の70μLを開始した凝固に加えた。ARC19499の不在下で、血友病Aの試料は0.5pMの脂質付加された組換え組織因子によって開始されるように、360秒以内に凝固しなかった。しかしながら、図181に表されるように、ARC19499をアッセイに含めたとき、凝固時間が劇的に短縮した。各個体のARC19499への反応は異なっているが、ARC19499の30nMが最適効果に達するという一般的傾向は同じである。
実施例52
TFPI活性の薬理学的な抑止は、血友病の出血を管理および/または防ぐ実効可能な方法になり得る。アプタマーBAX499(かつてはArchemix社から提供されるARC19499)と標的分子のヒトTFPIとの間の相互作用を検討した。BAX499とTFPIとの間の見かけの結合定数(Ki)は50nMであった。BAX499の存在下で、TFPIと第Xa因子との間のKiは20倍に増加し、BAX499がTFPIと第Xa因子との間の親和性を低下させたことを示す。精製された成分を用いた系では、BAX499は外因性テナーゼ活性のTFPI媒介の阻害を遅延させ、プロトロンビナーゼ複合体のTFPI阻害を完全に防いだ。血漿系では、BAX499は、第VIII因子欠損血漿の希釈プロトロンビン時間(0.25pMのTFによって開始される)を短縮した。具体的には、10nMのアプタマーは30IU/dLのFVIIIを含む血漿と同様の凝固時間を発生させた。さらに、新たに採血された重度の血友病Aの血液に加えたとき、BAX499はまた全血凝固時間を有意に短縮した。全体的に、これらの結果は、BAX499はTFPI活性を減弱させ、血友病の治療における阻害についてTFPIを標的にするという考えが支持されることを示す。
実施例53
本実施例はARC19498が結合するTFPI上の領域を検討する。本実験では、ARC19498の存在下および不在下で、TFPIの水素重水素交換(HDX)の特性を評価し、アプタマーによる保護部位を特定する。アプタマーの存在下および不在下で、HDXをTFPI上で実施し、タンパク質はペプシン触媒されたタンパク質分解によって消化され、得られるペプチドの質量を質量分析によって測定した。アプタマーが不在のときより存在しているときのほうがゆっくりと交換するTFPIの領域は、相互作用の部位に思われる。
HDXによるTFPI/ARC19498相互作用を評価するために使用する実験方法を図182に説明する。この図は、一般的に、方法がどのように使用され、抗原についての抗体のエピトープを特定するのかを表す。「抗原」をTFPIにおよび「抗体」をARC19498に変えることによって、同じ一般的な方法をTFPI/ARC19498相互作用の特定のケースに適用することができる。方法は、測定できる割合の水性溶媒中に、タンパク質アミド水素をプロトンと交換するという前提に基づく。タンパク質が重水(D2O)に基づく溶媒に移された時、アミド水素は重水素原子と交換し、タンパク質の分子質量が増加する。適切な時点で反応を凍結し、質量分析によって経時的な質量の増加を測定することによって、HDXの割合を測定することができる。適切な酵素でタンパク質を消化し、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)によって成分のペプチドの質量を評価することによって、タンパク質の特定の領域の交換速度をさらに調べることができる。抗体またはアプタマー等のリガンドを加えることにより、その領域内のアミド水素の溶媒への露出度を低下させることによって、相互作用の部位のHDXを遅らせることができる。HDXの特性をリガンドの添加によって攪乱する成分のペプチドを同定することによって、リガンド相互作用の部位をタンパク質配列にマップすることができる。
予備的な実験は、次の交換実験についてタイムウインドウを測定するために、2つのpHでアプタマー不在下のTFPIの交換特性を評価した。全長のTFPI(American Diagnostica社)をD2O中のpH7.0のリン酸緩衝塩類溶液(PBS)、またはD2O中1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、2mMのフォスコリン−12を含むpH5.0の50mMのクエン酸塩緩衝液に希釈することによって、HDXを実施した。溶液中のTFPIの最終濃度は4.7μMであり、D2Oの濃度は85%であった。これらを23℃で30、100、300、1000または3000秒間インキュベートし、その後40μLを冷却した急冷溶液の20μLと混合した。pH7交換について、8Mの尿素の急冷溶液、1Mのトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)、pH4の5mMのフォスコリン−12を使用した。pH5交換について、8Mの尿素の急冷溶液、1MのTHP、100mMのクエン酸塩、pH4の2mMのフォスコリン−12を使用した。各試料を「緩衝液A」(H2O中の0.05%のトリフルオロ酢酸(TFA))中の固定化されたペプシンカラムに200μL/分で通した。ペプシンの断片を逆相トラップカラムに充填し、200μL/分で3分間「緩衝液A」で脱塩した。消化性ペプチドをその後、13%〜40%の「緩衝液B」(95%のアセトニトリル、5%のH2O、0.0025%のTFA)の直線勾配でC18カラムによって分離し、質量分析によって分析した。対照として、TFPIを100nMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む85%のD2Oに希釈し、60℃で3時間インキュベートすることによって、完全に重水素化された試料を調製した。
pH5およびpH7、23℃の溶液中のTFPIについてのHDXの結果を図183から図185に表す。データはTFPIが極めて動的なタンパク質であることを示す。タンパク質の大部分は23℃、pH7で30秒前には完全に交換した(70%より大きい重水素化)(図183および184)。断片の大部分は30秒、23℃、pH5であっても有意に重水素化され、0.3秒、23℃、pH7と等量である(図183および184)。図185に表されるように、重水素化内容物の確立はpH5(正方形)の時点とpH7(ひし形)の時点との間の時間で連続的である。この図のために、pH5の時点をpH7の等量に変換した(例えば、pH5の30秒はpH7の0.3秒に等しい)。この図は、pHの変化がTFPIの動的な特性を変化させないことを示す。
アプタマー存在下のHDX実験をPOROS(登録商標)ALクロマトグラフィー・レジン(Invitrogen社)上で固定化されたARC19498を使用して実施した。POROS(登録商標)ALレジン上のアミン反応性アルデヒド基はARC19498の5’末端アミンと反応することができる。レジンへの結合は本質的に製造者の指示に従い行った。最初に0.1gのPOROS(登録商標)ALレジンは、約40nmoleのARC19498を含むpH7.0のPBSの400μLに溶解された4mgのNaCNBH3(63.7μmol)とインキュベートされた(1時間、室温)。2.8MのNa2SO4を5つの80μLの部分に段階的に加え、最終的な混合物(50μMのARC19598、5mg/mL(80mM)のNaCNBH3、1.4MのNa2SO4)を室温で一晩インキュベートした。結合されたレジンをPBSで洗浄し、PBS(pH7.2)中のNaCNBH3(8mg/mL)およびエタノールアミン(約1M)の溶液で遮断した。レジンをその後PBSで再度洗浄し、乾燥させ、pH7.0のPBS中に再懸濁した。
ARC19498存在下のTFPIのHDXを図183の上のパネルに記述した「オン溶液/オフカラム交換」を使用して最初に評価した。この方法では、重水素on−exchange反応を溶液中に行い、off−exchange反応(H2Oで再均衡化)をARC19498カラムに結合されたTFPIでおこなった。重水素on−exchange反応を図186に記述されるように所望のpHに適した「交換D」緩衝液中に行った。ARC19498と結合したレジンで調製したクロマトグラフィーカラム(総容積約100mL)を0.8%のギ酸で洗浄し、その後85%のD2Oを含む「交換HD」緩衝液(3部のPBS、pH7.0、17部の「交換D」緩衝液)で均衡化した。on−exchangeステップを開始するために、濃縮されたTFPI溶液の6μL(1mg/mL、31μM)を34μLの「交換D」緩衝液に希釈し、4.7μMのTFPIおよび85%のD2Oの最終濃縮物を得た。反応物を3℃で150または500秒間のいずれかでインキュベートし、その間ARC19498カラム上に挿入し、カラムは3℃で「交換HD」緩衝液の100μLで洗浄した。カラムはその後、3℃、適切なpH(図185)で「交換H」緩衝液の200μLで洗浄し、on−exchange反応を中断し、off−exchange反応を開始した。カラムをその後、3℃で75秒または250秒のいずれかでインキュベートした。その後、110μLの冷却された「緩衝液E」(H2O中、pH2.5の8Mの尿素、1MのTHP、50mMのクエン酸塩、2mMのフォスコリン−12)をカラムに加えることによって、off−exchange反応を中断した。TFPIを追加の40μLの冷却された「緩衝液E」でカラムから溶出した。
溶出されたTFPIの分析を開始するために、40μLの画分を20μLの冷却した「緩衝液Q」(H20中pH4、200mMのクエン酸塩)と混合し、「緩衝液A」に200μL/分で流れる固定化されたペプシンに55μLを適用した。ペプシン断片の溶液を回収し、13〜40%の「緩衝液B」の直線勾配を用いて、画分についてC18カラム上に充填する前に脱塩した。ペプチドはその後、質量分析によって分析された。
第2の実験を図183の下のパネルに記述された「オンカラム/オフカラム交換」を用いて実施した。この方法では、TFPIを重水素on−exchange反応の前にARC19498上に充填し、on−exchangeとoff−exchange反応の両方をカラム上で実施した。この実験の目的はARC19498に依存せずにゆっくりと交換するTFPIの領域について制御することである。この場合、TFPI貯蔵液を「交換H」緩衝液に希釈し、「交換H」で均衡化もされていたARC19498カラム上に適用した。3℃の「交換HD」の200μLがカラム上を通過し、150秒または500秒間インキュベートすることによって、on−exchange反応を開始した。「オン溶液/オフカラム交換」実験について記述されているように、次のステップおよび分析を実施した。
TFPIとのHDX実験の結果を図187〜189に表す。全体的に、データは、TFPIの2つの一般的な領域はARC19498、残基15〜69および191〜272に結合すると保護されたことを示す。図187は、pH5、6、および7、3℃のon/off交換の後に、TFPIの各断片について、時間の関数としてプロットされた重水素化の割合(%)の点から、重水素の中身を表す。タンパク質配列の約70%を網羅してペプチドが得られた。青色の三角形はオン溶液/オフカラム実験のデータを表し、紫色のひし形はオンカラム/オフカラム対照実験のデータを表す。全交換時間は23℃のpH7の等量に変換された(例えば3℃のpH6の150秒は23℃のpH7の1.85秒に等しい)。重水素化レベルの差を図188の表の形式で表す。オン溶液/オンカラム実験後の全pHのわたる平均の重水素化レベルおよび断片191〜205、208〜236および255〜272の交換時間は、オンカラム/オフカラム実験後のものより5%大きかった。pH5についてはとりわけ、重水素化レベルの平均の差は3つの断片のどれよりも10%以上大きかった。同様に、オン溶液/オンカラム実験後の断片15〜25、31〜47、および56〜69の平均の重水素化レベルはオンカラム/オフカラム実験後より5%大きかった。
図189に、各断片の重水素化レベルの差をTFPIアミノ酸配列に対して並置して図形形式で説明する。この図では、各遮断が次のペプチドを表す。パネルAでは、各遮断はpH5、6、および7の2つの交換時間(150および500秒)に対応する6つの時点を含む。暗青色はアプタマー結合に何の保護もないことを表す。明るい色は、色キーに表されるように、オン溶液/オフカラム交換後のほうがオンカラム/オフカラム交換後よりも重水素が多いことを示す。パネルBは、全交換時間および全pHにわたるTFPIの各断片について重水素化レベルの平均の差を表す。再度、明るい色は保護領域に対応する(>5%)。これらのデータは、残基15〜69および191〜272がARC19498のTFPIへの結合上で保護されることを示す。残基15〜69はTFPIのK1ドメイン(残基26〜76)と大体対応する一方で、191〜272はK3ドメイン(189〜239)およびC末端断片((240〜276)に対応し、これらがARC19498についての相互作用の可能性のある領域であることを示唆する。
実施例54
組織因子経路阻害剤(TFPI)は凝固開始の主要な制御因子であり、凝固促進および抗凝固療法について有望な標的である。アプタマーARC19499は、TFPIを不活性化することによってホメオスタシスを向上させるように設計された親和性の高い特定のTFPI拮抗薬である。しかしながら、TFPIを阻害することによる凝固開始の刺激が、どの程度、どのような様式で凝固伝播の空間的および時間的特徴に影響を及ぼすのかは、すぐには明らかにならない。空間的、反応を止める実験系で、組換え活性因子VII(rVIIa)と比較してARC19499の凝固に対する影響を検討した。
固定化された組織因子(TF)と共に表面によって活性化される再石灰化される血漿の凝固伝播をビデオ顕微鏡で監視した。
用量依存的なARC19499は、遅延時間を短縮し、凝固サイズを最大約2倍にまで増加させることによって、2pmole/m2の組織因子(TF)と活性化される正常および血友病Aの血漿の凝固を向上させた。TFPIを補充する場合と補充しない場合のTFPIが枯渇した血漿における実験によって確認されるように、この効果はTFPI特有であった。凝固の向上は、最大半数がARC19499の0.7nMであり、10〜1000nMでプラトーに到達した。ARC19499の効果はTFの表面密度が増加すると減少した。これとは対照的に、rVIIaは、遅延時間の短縮と凝固伝播の空間的速度の増加の両方によって、2または20pmole/m2でTFと活性化された血友病Aの血漿の凝固を向上させた。rVIIaが30nMより大きい(>30nM)ときに、反応チャンバーーの至る所で活性因子に依存しない凝固があるまで、rVIIaの効果は濃度と共に増加した。
これらの結果は、ARC19499が凝固の空間的実験モデルにおいて、具体的にはrVIIaとは質的に異なる様式でTFPIを阻害することによって、凝固を有意に向上させることを示す。
これで、本発明を明細書および実施例により説明したが、当業者は、本発明が種々の実施形態で実践され得、上記の説明および実施例が説明を目的とするものであって、以下の特許請求の範囲を限定するものではないことを認識するだろう。