JP5988238B2 - 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 - Google Patents
膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5988238B2 JP5988238B2 JP2012037919A JP2012037919A JP5988238B2 JP 5988238 B2 JP5988238 B2 JP 5988238B2 JP 2012037919 A JP2012037919 A JP 2012037919A JP 2012037919 A JP2012037919 A JP 2012037919A JP 5988238 B2 JP5988238 B2 JP 5988238B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- transmembrane protein
- membrane fraction
- mass spectrometry
- transmembrane
- quantitative analysis
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
Description
非特許文献1には、質量分析を用いた膜貫通型タンパク質の定量プロテオミクス(targeted proteomics)手法が提案されている。しかし、各標的タンパク質に対する標準ペプチドを準備する必要があり、手間とコストが嵩むという問題がある。また、網羅的な解析でないため、実施者によるバイアスから逃れられないという問題がある。
[1]以下の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
(a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
(b)得られた膜画分を尿素処理する工程
(c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(g)得られた質量分析データを解析する工程
[2]前記工程(e)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする前記[1]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[3]前記工程(b)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[4]前記工程(c)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[5]膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[6]以下の(A)〜(G)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
(A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
(B)得られた膜画分を尿素処理する工程
(C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程
[7]前記工程(E)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする前記[6]に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[8]前記工程(B)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする前記[6]または[7]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[9]前記工程(C)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする前記[6]〜[8]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[10]膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする前記[6]〜[9]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[11]前記[6]〜[10]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする病態マーカーの探索方法。
[12]前記[6]〜[10]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする被験物質の評価方法。
本発明の膜貫通型タンパク質の質量分析方法(以下、「本発明の質量分析方法」という。)は、以下の(a)〜(g)の工程を有するものであればよい。(a)〜(g)以外の工程を有していてもよく、その内容は特に限定されない。
(a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
(b)得られた膜画分を尿素処理する工程
(c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(g)得られた質量分析データを解析する工程
(A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
(B)得られた膜画分を尿素処理する工程
(C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程
また、得られた膜画分のタンパク質量を測定しておくことが好ましい。タンパク質量の測定方法は、公知の方法から適宜選択して用いることができる。公知のタンパク質量測定法としては、例えばBCA法、micro BCA法などが挙げられる。本発明の方法においては、界面活性剤の影響を受けにくい方法を用いることが好ましい。
シアン系化合物による切断と酵素による切断の順序は限定されず、どちらを先に行ってもよい。好ましくは、シアン系化合物による切断を先に行い、酵素による切断を後に行う。
本発明の質量分析方法を用いれば、試料中に存在する膜貫通型タンパク質を、高感度かつ網羅的に分析することができ、本発明の比較定量解析方法を用いれば、比較する試料間における膜貫通型タンパク質の変動を網羅的に解析することができる。したがって、本発明は、複数の試料間における膜貫通型タンパク質の比較変動の全体像を把握できる技術を提供するものである。具体的には、以下に示す方法に応用することができる。
健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料を用いて本発明の比較定量解析方法を行えば、疾患に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を見出すことが可能である。疾患に基づいて変動する膜貫通型タンパク質は、当該疾患の病態マーカーとして有用である。病態マーカーの探索方法に本発明を用いることにより、従来技術では見出すことができなかった病態マーカーを見出すことが可能になると考えられる。
被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料用いて本発明の比較定量解析方法を行えば、被験物質投与に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を見出すことが可能である。被験物質投与に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を同定することにより、被験物質の評価を行うことができる。被験物質は特に限定されないが、例えば、薬物、ホルモン等の生理活性物質、食品、栄養素、食品添加物、環境汚染物質、毒性物質などが挙げられる。被験物質の評価は、例えば被験物質が薬物の場合には、薬物が膜タンパク質の発現量に及ぼす影響、特に薬物を代謝する酵素や薬物を取り込み・排出するトランスポーターへの影響を評価することができ、被験物質が食品の場合には、食品が膜タンパク質の発現に及ぼす影響、特に栄養を輸送するトランスポーターに対する影響や栄養の代謝系への影響を評価することができる。
異なった環境や中/高/低温、気圧、高・低酸素、放射線等の物理的要因暴露下で生育した細胞や動物個体間の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、環境要因や物理的因子が膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
ある遺伝子の欠失もしくは変異を持つ細胞または個体と、野生型細胞または個体の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、遺伝子欠失や変異が膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
成長や老化の程度が異なった細胞または個体間の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、成長や老化の程度の異なりが膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
(1)実験方法
(1-1) 使用動物
C57BL/6Jマウス(雄、8週齢)を使用した。1群の匹数は6匹とした(日本エスエルシー)。
(1-2) 投与群および投与方法
以下の3群を設けた。試験物質は飲料水に添加し、給水瓶に入れて自由に摂取させた。
対照群:脱イオン水
ショ糖群:ショ糖水(10%w/v、約300mM)
スクラロース群:スクラロース水(10mM)
Low Carbohydrate Purified Dietを用いた(日本エスエルシー)。組成はタンパク質74.6%、脂質23.4%、糖質2.0%であり、3.86kcal/gである。
(1-4) 実験スケジュール
3日間上記飼料および脱イオン水で予備飼育した後、群分けした。その後14日間、上記飼料および各試験物質含有飲料水で飼育した。試験開始14日目にマウスを麻酔下で開胸し、PBSを心臓から注入して還流した後、目的の臓器または組織を採取した。
小腸上部(十二指腸、空腸)および肝臓を採取した。採取した試料は、速やかに液体窒素中にて凍結し、使用するまで−80℃で保存した。なお、小腸は擦過採取により粘膜部分を保存した。
(1-6) 膜画分の調製方法
凍結保存していた組織の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(20 mM Tris-HCl (pH 7.6)、250 mM Sucrose、1 mM EDTA、6 mM EGTA、20 mM β-Glycerophosphate、20 mM NaF、1 μg/ml Aprotinin、1 μg/ml Leupeptin、1 μg/ml Pepstatin、1 mM PMSF)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにDigital homogenizer(AZ ONE)を用いて、ポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で5分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で5分間遠心分離した。続いて、得られた上清を4℃で15分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として膜画分を得た。なお、小腸に関しては、刷子縁膜画分を精製するため、超遠心分離の前に、得られた上清に最終濃度11mMになるようにCaCl2を加え、氷上で30分間緩やかに混和した後、10,000×g、4℃で15分間遠心し、上清を得、これを超遠心分離に供した。膜画分は、Membrane stock solution (20 mM Tris-HCl (pH 7.6)、250 mM Sucrose )に懸濁後、タンパク質量をBCA法により定量し、−80℃で保存した。
融解した膜画分溶液に蒸留水および尿素を加えて、最終タンパク質濃度が0.1〜0.2mg/ml、最終尿素濃度が10Mとなるように調製し、4℃で30分間攪拌した。これに溶液量と等量の蒸留水を加え、438,000×gで30分間遠心した。沈殿を0.1M炭酸ナトリウムでタンパク質濃度が0.05〜0.1mg/ml等量(当初のタンパク質濃度値に対して)になるように懸濁し、4℃で30分間攪拌後、438,000×gで30分間遠心し、沈殿を回収した。尿素/アルカリ処理前のタンパク質量から計算し、濃度が10mg/mlになるように懸濁溶液(5%デオキシコール酸ナトリウム、45〜50%(w/v)尿素、50 mM炭酸ナトリウム)に懸濁し、タンパク質量をBCA法により定量した。
尿素/アルカリ処理を行った膜画分懸濁液20μgを20mM TCEP存在下で、攪拌しながら37℃で30分間保温し、2mM 2−nitro−5−thiocyanobenzoic acid (NTCB)存在下37℃で30分間攪拌した。続いて、0.1M Tris(pH9.0)を10倍量程度加え、37℃で一晩トリプシン消化を行った。外部標準として、十分に酵素消化してあるペプチド4種類(ADH: yeast alcohol dehydrogenase、ENO: yeast enolase、GPB: rabbit glycogen phosphorylase b、BSA: bovine serum albumin)を加えた。
消化産物は、石濱らの開発したPTS(Phase Transfer Surfactant)法にて精製した。精製したペプチドは、チップカラムStageTip(石濱 泰: 分析化学: Vol. 57, p.1011、2008)でSDB(poly stylen-divinylbenzene copolymer)−XCを用いてアルカリ溶液で4分画した。
それぞれの画分をLC−MS HPLC:nano−ACQUITY UPLC(Waters Co., Milford, MA)0.1×150mm(Nikkyo Technos, Tokyo, Japan)を用いて分離し、質量分析計SYNAPT G2(Waters Co., Milford, MA)で分析した。Trapcolumnは MonoCap C18 0.075×50mm(GL Science, Tokyo Japan)で、Flow Rate:400nL/minにて使用した。質量分析の解析ModeはMSE(data independent analysis)Modeを用い、Ionization Sourceは nano−ESIを使用した。Capillary Voltageは1.7kVで、Collision Energyは15−40eVであった。
得られたマススペクトルデータをEMBL−EBI IPI(European Molecular Biology Laboratory-European Bioinformatics Institute International Protein Index)データベースおよびWaters社タンパク質同定/定量アプリケーションProteinLynx Global SERVERを用いて解析し、それぞれの群間における膜貫通型タンパク質の発現量を比較した。
小腸上部(十二指腸、空腸)刷子縁膜画分の試料において、対照群およびショ糖群間で約230のタンパク質の比較定量が可能であった。図1に、小腸上部刷子縁膜画分における糖代謝、コレステロール代謝、アミノ酸代謝に関連するタンパク質比較定量解析結果を示した。糖代謝関係のタンパク質の発現がショ糖群で上昇し、アミノ酸代謝関連タンパク質の発現が減少していることが明らかとなった。示していないが、肝臓から調製した試料を解析した結果は、小腸における発現変化に対応した。
(1)実験方法
(1-1) 使用動物
ddyマウス(雄、7週齢、日本エスエルシー)を使用した。1群の匹数は3匹とし、糖尿病モデルマウス群および対照群の2群を設け、試験を開始した。
(1-2) 糖尿病モデルマウスの作製
糖尿病モデルマウス群には70mg/kgでアロキサンを尾静脈から試験開始24時間後および48時間後に2回投与した。対照群には生理食塩水を投与した。血糖値レベルが4倍以上上昇していることを確認し、試験開始72時間後にマウスを麻酔下で開胸した。PBSを心臓から注入して還流した後、腎臓を採取し、髄質部分を除き皮質部分のみを凍結保存した。
以下、実施例1の小腸と同様の方法で試料を調製し、質量分析を行った。
図2に、同定できたタンパク質のうち、定量可能なものの内訳を示した。これは、多くの膜タンパク質が網羅的に解析可能なことを示すものである。図3に、糖尿病モデルマウスにおける腎皮質冊子縁膜のSlcトランスポーターの変動を解析した結果を示した。外部標準の4種類のタンパク質および内部標準として用いたVillin−1の発現量が対照群と比べて変化していない一方で、多くのSlcトランスポーターの発現が糖尿病モデルマウス群で変動していることが明らかとなった。この結果は、標的を定めずに膜タンパク質の網羅的解析を行うことにより、病態や化合物が生体に及ぼす想定外の影響を明らかにすることが可能であることを示すものでる。
(1)実験方法
ddyマウス(雄、7週齢、日本エスエルシー)の腎臓(全腎)から以下のように粗膜画分を調製した。凍結保存していた腎臓(全腎)の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにDigital homogenizer(AZ ONE)を用いて、ポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに8,000×g、4℃で10分間遠心した。得られた上清をさらに15,000×g、4℃で10分間遠心し、その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。尿素処理試料に関しては、さらに粗膜画分を腎臓の質量の10倍量のHomogenization bufferに懸濁し、最終濃度6Mになるように尿素を加え、氷上で30分間緩やかに混和し後、438,000×g、4℃で15分間遠心した。沈殿物として尿素処理済みの膜画分を得た。尿素処理していない試料は、尿素溶液の代わりに水を加え、同様の処理を行った。
膜画分は、腎臓の質量に等量のMembrane stock solution(実施例1参照)に懸濁し、実施例1と同様の方法でペプチド化し、PTS法で精製した。精製したペプチドは、1次元目の分離を行わずに直接質量分析計のHPLCに供した。
結果を図4に示した。図4から明らかなように、尿素処理によって、膜貫通型タンパク質の同定数が2.5倍以上増加した。
(1)実験方法
実施例1と同様の方法でペプチド化し、PTS法で精製したddyマウス(雄、8週齢、日本エスエルシー)の腎臓粗膜画分由来のペプチド混合物30 μLをチップカラムStageTipで3M社製Empore CATION−SR(SCX)またはEmpore SDB(poly stylen-divinylbenzene copolymer)−XC(RF)を用いて、塩またはアルカリ溶液で4分画した。それぞれの画分を、質量分析計に直結しているHPLCに供し、酸性条件の逆相クロマトグラフィーで2次元分離を行い、そのまま質量分析に供した。
結果を図5に示した。図5から明らかなように、一次元目に強陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた場合(SCX−RF)より一次元目に逆相クロマトグラフィーを用いた場合(RF−RF)のほうが、膜貫通型タンパク質であるトランスポーターの同定数が増加し、全体の同定数としても二倍近く増加した。
マウスの心臓組織を0.5M炭酸ナトリウム(pH 11)中で破砕し、ダウンスホモジェナイザーで10回ホモジナイズした。破砕物をさらにポリトロンホモジェナイザーで破砕し、4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で30分間遠心した。得られた上清をさらに15,000×g、4℃で10分間遠心し、その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(100,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。粗膜画分を0.5M炭酸ナトリウムに懸濁し、等量の40%ショ糖溶液を加え、ショ糖濃度を40%にした試料を超遠心チューブに移した。35%ショ糖溶液、5%ショ糖溶液を重層後、100,000gで18時間超遠心したものを11画分に分画した。ラフトのマーカータンパク質であるFlotollin−1を含む画分を、抗Flotollin−1抗体を用いたウエスタンブロッティングで確認し、ラフト画分を得た。得られたラフト画分を、実施例1と同様に尿素/アルカリ処理し、質量分析計によって解析した。その結果、尿素/アルカリ処理をしない場合にはほとんど検出されなかった膜貫通型タンパク質が尿素/アルカリ処理した場合には検出された。
凍結保存していたddYマウス骨格筋(大腿四頭筋)の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で10分間遠心した。その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。粗膜画分をHomogenization bufferによく懸濁し、35%、30%、10%ショ糖の不連続密度勾配に重層後、400,000×gで15時間超遠心し、30%ショ糖溶液の層にある細胞膜画分を調製した。調製した細胞膜画分は、実施例1で示すように質量分析を行った。
凍結保存していたddYマウス肝臓の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で10分間遠心して得られたものをミトコンドリア画分とした。得られたミトコンドリア画分を実施例1と同様にして質量分析計で解析した結果、ミトコンドリア由来の多くの膜貫通型タンパク質を検出した。
Claims (12)
- 試料中の膜貫通型タンパク質を網羅的に分析する方法であって、以下の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の質量分析方法(ただし、糖タンパク質を支持体に固定化し、非糖タンパク質を除去する工程を有しない)。
(a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
(b)得られた膜画分を界面活性剤で可溶化することなく尿素処理し、可溶化タンパク質が除去された膜画分を回収する工程
(c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(g)得られた質量分析データを解析する工程 - 前記工程(e)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする請求項1に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
- 前記工程(b)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする請求項1または2に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
- 前記工程(c)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
- 膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
- 比較する試料間の膜貫通型タンパク質の変動を網羅的に解析する方法であって、以下の(A)〜(G)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法(ただし、糖タンパク質を支持体に固定化し、非糖タンパク質を除去する工程を有しない)。
(A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
(B)得られた膜画分を界面活性剤で可溶化することなく尿素処理し、可溶化タンパク質が除去された膜画分を回収する工程
(C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程 - 前記工程(E)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする請求項6に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
- 前記工程(B)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする請求項6または7に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
- 前記工程(C)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
- 膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
- 請求項6〜10のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする病態マーカーの探索方法。
- 請求項6〜10のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする被験物質の評価方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012037919A JP5988238B2 (ja) | 2012-02-23 | 2012-02-23 | 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012037919A JP5988238B2 (ja) | 2012-02-23 | 2012-02-23 | 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013174468A JP2013174468A (ja) | 2013-09-05 |
JP5988238B2 true JP5988238B2 (ja) | 2016-09-07 |
Family
ID=49267504
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012037919A Active JP5988238B2 (ja) | 2012-02-23 | 2012-02-23 | 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5988238B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7203407B2 (ja) * | 2018-07-25 | 2023-01-13 | 国立大学法人 熊本大学 | 質量分析用のペプチド試料の調製方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2351547A1 (en) * | 1998-08-31 | 2000-03-09 | Gryphon Sciences | Lipid matrix-assisted chemical ligation and synthesis of membrane polypeptides |
CA2487314A1 (en) * | 2002-06-03 | 2003-12-11 | The Institute For Systems Biology | Methods for quantitative proteome analysis of glycoproteins |
-
2012
- 2012-02-23 JP JP2012037919A patent/JP5988238B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013174468A (ja) | 2013-09-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Neagu et al. | Applications of tandem mass spectrometry (MS/MS) in protein analysis for biomedical research | |
Lund et al. | Efficient isolation and quantitative proteomic analysis of cancer cell plasma membrane proteins for identification of metastasis-associated cell surface markers | |
Cass et al. | Proteomic analysis of Schistosoma mansoni egg secretions | |
Han et al. | A multiplexed quantitative strategy for membrane proteomics: opportunities for mining therapeutic targets for autosomal dominant polycystic kidney disease | |
Casey et al. | Analysis of reproducibility of proteome coverage and quantitation using isobaric mass tags (iTRAQ and TMT) | |
Cheng et al. | Identification of new transmembrane proteins concentrated at the nuclear envelope using organellar proteomics of mesenchymal cells | |
Turtoi et al. | Novel comprehensive approach for accessible biomarker identification and absolute quantification from precious human tissues | |
Smeekens et al. | Mass spectrometric analysis of the cell surface N-glycoproteome by combining metabolic labeling and click chemistry | |
Giuffrida et al. | Back to the past: deciphering cultural heritage secrets by protein identification | |
Thingholm et al. | Characterization of human myotubes from type 2 diabetic and nondiabetic subjects using complementary quantitative mass spectrometric methods | |
Pshezhetsky et al. | Subcellular proteomics of cell differentiation: Quantitative analysis of the plasma membrane proteome of Caco‐2 cells | |
Roulhac et al. | Microproteomics: quantitative proteomic profiling of small numbers of laser-captured cells | |
Horn et al. | Research resource: a dual proteomic approach identifies regulated islet proteins during β-cell mass expansion in vivo | |
Yang et al. | The Glycoproteomics–MS for Studying Glycosylation in Cardiac Hypertrophy and Heart Failure | |
Pasini et al. | Red blood cell proteomics | |
Xu et al. | Up-regulation of fatty acid oxidation in the ligament as a contributing factor of ankylosing spondylitis: a comparative proteomic study | |
Li et al. | Using transcriptomics, proteomics and phosphoproteomics as new approach methodology (NAM) to define biological responses for chemical safety assessment | |
Blonder et al. | Characterization and quantitation of membrane proteomes using multidimensional MS-based proteomic technologies | |
EP2877858B1 (en) | Isotopic labelling of proteins | |
JP5988238B2 (ja) | 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 | |
Ye et al. | Optimization of protein solubilization for the analysis of the CD14 human monocyte membrane proteome using LC-MS/MS | |
Boccaletto et al. | Proteomics: A valuable approach to elucidate spermatozoa post–testicular maturation in the endangered Acipenseridae family | |
Wang et al. | Helminth lipidomics: technical aspects and future prospects | |
Champion et al. | Qualitative and quantitative proteomics methods for the analysis of the Anopheles gambiae mosquito proteome | |
Yang et al. | Recent advances in protein profiling of tissues and tissue fluids |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20150216 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20151118 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20151222 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160215 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20160705 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160801 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5988238 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |