JP5988238B2 - 膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 - Google Patents

膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法に関するものである。
細胞膜や細胞内小器官膜に局在する膜貫通部位を持つタンパク質(以下、「膜貫通型タンパク質」という。)は、全タンパク質の20〜30%を占めており、トランスポーター、イオンチャネル、受容体等の生命活動維持にとって非常に重要な機能を担っている。しかし、疎水性の高さや存在量の少なさから生化学的な扱いが難しく、膜タンパク質を可溶性タンパク質と同程度に抽出および同定することは困難であることから、未だ膜貫通型タンパク質を対象とした網羅的定量プロテオミクス技術は開発されていない。
膜貫通型タンパク質の定量比較の従来技術としては、抗体を用いたウエスタンブロットが一般的である。しかし、その適用は対象とした1種類のタンパク質のみに限られる。また対象タンパク質は抗体が取得できているタンパク質に限られる。
非特許文献1には、質量分析を用いた膜貫通型タンパク質の定量プロテオミクス(targeted proteomics)手法が提案されている。しかし、各標的タンパク質に対する標準ペプチドを準備する必要があり、手間とコストが嵩むという問題がある。また、網羅的な解析でないため、実施者によるバイアスから逃れられないという問題がある。
Junichi Kamiie et al., Pharm. Res. 2008; 25: 1469-1483
本発明は、試料中に存在する膜貫通型タンパク質を、高感度かつ網羅的に分析可能な質量分析方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]以下の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
(a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
(b)得られた膜画分を尿素処理する工程
(c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(g)得られた質量分析データを解析する工程
[2]前記工程(e)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする前記[1]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[3]前記工程(b)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[4]前記工程(c)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[5]膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[6]以下の(A)〜(G)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
(A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
(B)得られた膜画分を尿素処理する工程
(C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程
[7]前記工程(E)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする前記[6]に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[8]前記工程(B)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする前記[6]または[7]に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
[9]前記工程(C)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする前記[6]〜[8]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[10]膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする前記[6]〜[9]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
[11]前記[6]〜[10]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする病態マーカーの探索方法。
[12]前記[6]〜[10]のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする被験物質の評価方法。
本発明の膜貫通型タンパク質の質量分析方法によれば、試料中に存在する膜貫通型タンパク質を、高感度かつ網羅的に分析することができる。本発明の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法によれば、比較する試料間における膜貫通型タンパク質の変動を網羅的に解析することができる。
ショ糖投与マウスの小腸を試料として刷子縁膜画分を取得し、小腸刷子縁膜画分の糖代謝、コレステロール代謝、アミノ酸代謝に関連する膜貫通型タンパク質の発現量を、ショ糖非投与マウスと比較した結果を示す図である。 糖尿病モデルマウスの腎臓を試料として腎皮質刷子縁膜画分を取得し、本発明の比較定量解析方法を用いて同定できたタンパク質のうち、定量可能なものの内訳を示した図である。左図は同定されたタンパク質全体のうち、細胞質タンパク質と膜タンパク質の割合を示し、右図は左図の膜タンパク質をさらに分類したものである。 糖尿病モデルマウスにおける腎皮質冊子縁膜画分のSlcトランスポーターの変動を、本発明の比較定量解析方法を用いて解析した結果を示す図である。 マウス腎臓を試料として粗膜画分を取得し、本発明の膜貫通型タンパク質の質量分析方法に従い尿素処理を行った場合(本発明)と、尿素処理を行わなかった場合(対照)の膜貫通型タンパク質の同定数を比較した結果を示す図である。 マウス腎臓を試料として粗膜画分を取得し、本発明の膜貫通型タンパク質の質量分析方法において、多次元分離の一次元目に逆相クロマトグラフィーを用いた場合(RF−RF)と、強陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた場合(SCX−RF)の膜貫通型タンパク質の同定数を比較した結果を示す図である。
〔膜貫通型タンパク質の質量分析方法および比較定量解析方法〕
本発明の膜貫通型タンパク質の質量分析方法(以下、「本発明の質量分析方法」という。)は、以下の(a)〜(g)の工程を有するものであればよい。(a)〜(g)以外の工程を有していてもよく、その内容は特に限定されない。
(a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
(b)得られた膜画分を尿素処理する工程
(c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(g)得られた質量分析データを解析する工程
本発明の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法(以下、「本発明の比較定量解析方法」という。)は、以下の(A)〜(G)の工程を有するものであればよい。(A)〜(G)以外の工程を有していてもよく、その内容は特に限定されない。
(A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
(B)得られた膜画分を尿素処理する工程
(C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
(D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
(E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
(F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
(G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程
本発明の質量分析方法および本発明の比較定量解析方法(以下、両者を合わせて「本発明の方法」という場合がある。)における解析対象は膜貫通型タンパク質である。膜貫通型タンパク質は、膜貫通部位を持つタンパク質を意味し、通常細胞膜や細胞内小器官膜に局在する。一般に、膜貫通部位を1つ持つものは1回膜貫通型タンパク質と称され、膜貫通部位を2つ以上持つものは複数回膜貫通型タンパク質と称される。本発明の方法における解析対象とする膜貫通型タンパク質の膜貫通部位の数は限定されないが、膜貫通部位の数が多い膜貫通型タンパク質のほうが質量分析による網羅的な解析が困難であると考えられるため、複数回膜貫通型タンパク質を解析対象とすることが好ましい。解析対象とする膜貫通型タンパク質としては、例えば、トランスポーター、イオンチャネル、受容体、酵素、細胞接着因子などが挙げられる。なかでもトランスポーター、酵素、細胞接着因子を分析対象とすることが好ましい。
工程(a)および工程(A)では、試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する。試料は、解析対象とする膜貫通型タンパク質を豊富に含む膜画分を調製可能な試料であれば特に限定されない。膜貫通型タンパク質を豊富に含むとは、全タンパク質に含まれる膜タンパク質の割合、または全膜画分中に含まれる膜タンパク質の割合よりも解析対象とする膜タンパク質の割合が高い状態を意味する。動物、植物、微生物等の生体構成成分を好適に用いることができる。具体的には、例えば、血液、体液、臓器や組織の生検試料、培養細胞などが挙げられる。
本発明の比較定量解析方法における工程(A)は、比較しようとする複数の試料を用いる点で、本発明の比較定量解析方法における工程(a)と異なる。工程(A)における試料の数は2以上であれば特に限定されない。比較しようとする試料は特に限定されず、例えば、異なる個体の同一組織または臓器、同一個体の異なる組織または臓器、異なった種類の培養細胞、異なった処理を行った培養細胞、同一組織または臓器、同種細胞の異なった膜画分などが挙げられる。より具体的には、野生型個体と変異型個体の同一組織または臓器、健常個体と疾患個体の同一組織または臓器、薬剤投与個体と薬剤非投与個体の同一組織または臓器、同一組織または同一臓器または同種細胞から調製したラフト画分と非ラフト画分などが挙げられる。
工程(a)および工程(A)において、膜画分を調製する方法は特に限定されず、用いる試料に応じて、公知の方法の中から適宜選択することができる。公知の膜画分を調製としては、例えば、文献 Kaback, H. R. (1971) Methods Enzymol. 22: 99-120、文献 Biber et al Nature protocol (2007) 2: 1356-1359、文献 Hell et al (1988) EMBO J. 7:3023-3029、文献 Blitzer and Donovan (1984) J Biol Chem. 259: 9295-9301 に記載の方法などが挙げられる。
得られた膜画分は、適当な溶液に懸濁した状態で凍結保存することができる。凍結保存用の溶液としては、例えばショ糖やグリセロールを含有するバッファー(例えば、[20 mM Tris-HCl (pH 7.6)、250 mM Sucrose]、[10 mM HEPES-KOH pH7.4、320 mM Sucrose]、[ 50 mM リン酸バッファー pH7.4、50 mM NaCl、10 % Glycerol]等)などが挙げられる。
また、得られた膜画分のタンパク質量を測定しておくことが好ましい。タンパク質量の測定方法は、公知の方法から適宜選択して用いることができる。公知のタンパク質量測定法としては、例えばBCA法、micro BCA法などが挙げられる。本発明の方法においては、界面活性剤の影響を受けにくい方法を用いることが好ましい。
工程(b)および工程(B)では、得られた膜画分を尿素処理する。尿素処理することにより、膜画分中に存在する可溶化タンパク質を除去することができる。尿素処理の方法は特に限定されず、膜画分の懸濁液に尿素を添加して一定時間処理すればよい。尿素濃度は、約4〜約10Mが好ましく、約7〜約9Mがより好ましく、約7.5〜約8.5Mがさらに好ましい。尿素処理を行う際の膜画分懸濁液のタンパク質濃度は、約0.1〜約10mg/mlが好ましく、約0.2〜約1mg/mlがより好ましく、約0.4〜約0.5mg/mlがさらに好ましい。処理温度は、約3〜約30℃が好ましく、約3〜約10℃がより好ましく、約3〜約5℃がさらに好ましい。処理時間は、約15〜約60分が好ましく、約20〜約40分がより好ましく、約25〜約35分がさらに好ましい。尿素処理の際に膜画分を懸濁する溶液は特に限定されず、例えば蒸留水、低濃度のリン酸バッファー、低濃度のトリスバッファーなどを好適に用いることができる。尿素処理は、攪拌しながら行うことが好ましい。尿素処理を行った膜画分は、尿素の最終濃度を蒸留水等で約4M程度に希釈して、超遠心により回収することができる。
工程(b)および工程(B)において、さらに膜画分をアルカリ処理することが好ましい。尿素処理とアルカリ処理の両方を行うことにより、膜画分中に存在する可溶化タンパク質の除去効率を大幅に向上させることができる。アルカリ処理の方法は、特に限定されないが、尿素処理前または処理後の膜画分懸濁液にアルカリを添加して一定時間処理すればよい。添加するアルカリとしては、例えば炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ処理のpHは、約11.0〜約13.0が好ましく、約11.5〜約12.5がより好ましい。膜画分懸濁液のタンパク質濃度は、約0.1〜約10mg/mlが好ましく、約0.2〜約1mg/mlがより好ましく、約0.4〜約0.5mg/mlがさらに好ましい。処理温度は、0〜約30℃が好ましく、0〜約10℃がより好ましく、0〜約5℃がさらに好ましい。処理時間は、約10〜約60分が好ましく、約20〜約40分がより好ましく、約25〜約35分がさらに好ましい。アルカリ処理は、攪拌しながら行うことが好ましい。
工程(c)および工程(C)では、膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する。本工程では、膜画分中のタンパク質を可溶化した後にペプチド化処理することが好ましい。可溶化およびペプチド化の方法は、公知の方法から適宜選択して用いることができる。また、公知のペプチド化方法を複数組み合わせて用いてもよい。公知のペプチド化方法としては、酵素により切断する方法、化学薬剤により切断する方法、物理的に切断する方法(超音波処理等)などが挙げられる。また、複数の酵素を組み合わせてもよい。本発明の方法においては、増田らの報告による可溶化法(Masuda et al. Journal of Proteome Research 2008, 7, 731-740)で可溶化し、シアン系化合物による切断と酵素による切断を組み合わせてペプチド化処理することが好ましい。
ペプチド化処理に用いるシアン系化合物としては、例えば、2−nitro−5−thiocyanobenzoic acid (NTCB)、臭化シアンなどが挙げられる。なかでもNTCBが好ましい。シアン系化合物を用いるペプチド化処理方法は、例えば、文献 Iwasaki et al Journal of Proteome Research 2009, 8, 3169-3175 に記載の方法が挙げられるが、これに限定されない。
ペプチド化処理に用いる酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、エンドプロテイナーゼLys−Cなどが挙げられる。なかでもトリプシンが好ましい。酵素を用いるペプチド化処理方法は、例えば、尿素処理または尿素/アルカリ処理を行った膜画分可溶化液に酵素を添加し一定時間処理すればよい。膜画分可溶化液のタンパク質濃度は、約0.05〜約0.5mg/mlが好ましく、約0.06〜約0.2mg/mlがより好ましく、約0.08〜約0.1mg/mlがさらに好ましい。酵素の濃度は、約2〜約50μg/mlが好ましい。処理温度は、約4〜約37℃が好ましく、約25〜約37℃がより好ましく、約30〜約37℃がさらに好ましい。処理時間は、約12〜約24時間が好ましく、約12〜約18時間がより好ましい。
シアン系化合物による切断と酵素による切断の順序は限定されず、どちらを先に行ってもよい。好ましくは、シアン系化合物による切断を先に行い、酵素による切断を後に行う。
工程(d)および工程(D)では、膜画分からペプチド混合物を精製する。ペプチド化処理した膜画分からペプチド混合物を精製する方法は、公知のペプチド精製法から適宜選択して用いることができる。本発明の方法においては、PTS(Phase Transfer Surfactant、相間移動溶解)法(Masuda et al. Journal of Proteome Research 2008, 7, 731-740)を用いて精製することが好ましい。具体的には、可溶化溶液に酢酸エチルを加えることで、可溶化に用いたデオキシコール酸ナトリウムが有機層に移動することを利用して、ペプチドを水溶液中に抽出する。
工程(e)および工程(E)では、ペプチド混合物を多次元分離する。多次元分離は二次元以上であれば特に限定されない。本願発明者らは、二次元分離により所望の高感度かつ網羅的な質量分析が可能であることを確認している。多次元分離に用いる分離方法は特に限定されず、公知のペプチド分離方法から適宜選択することができる。具体的には、例えば、クロマトグラフィー法、電気泳動法などが挙げられる。なかでもクロマトグラフィー法が好ましい。クロマトグラフィーの種類も特に限定されず、オープンカラムクロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、チップカラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。また、分離手法も特に限定されず、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどが挙げられる。
一次元目の分離方法と、二次元目以後の分離方法の組合せについても特に限定されないが、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことが好ましい。少なくとも2回の逆相クロマトグラフィーは、一次元目と二次元目でもよく、一次元目と三次元目でもよく、二次元目と三次元目でもよく、それ以外でもよい。好ましくは、二次元分離において一次元目と二次元目の両方に逆相クロマトグラフィーを行うことである。
工程(f)および工程(F)では、多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する。本発明の方法においては、質量分析法はペプチドを定量分析できる方法であれば特に限定されない。例えば、安定同位体標識剤を用いた方法(AB Sciex社iTRAQ)、未標識で定量分析を行うMS法(Water社)などが好ましい。本発明の方法は、市販の質量分析計用いて好適に行うことができる。質量分析計の操作方法は、その取り扱い説明書に従えばよい。
工程(g)では、得られた質量分析データを解析する。質量分析データの解析は、公知のデータベースおよび公知の解析ソフトウェアを用いて行うことができる。公知のデータベースとしては、例えば、EMBL−EBI IPI(European Molecular Biology Laboratory-European Bioinformatics Institute International Protein Index)データベースなどを用いることができる。公知の解析ソフトウェアとしては、例えば、Waters社タンパク質同定/定量アプリケーションProteinLynx Global SERVER、Thermo社Proteome Discovererなどを挙げることができる。
工程(G)では、得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する。具体的には、得られた各試料の質量分析データを、それぞれ工程(g)と同様に解析する。得られた解析データに基づいて、比較しようとする2試料間の変動を算出する。2試料間の変動の算出にも、上記の解析ソフトウェアを用いることができる。2試料間の変動値は、例えば、一方における定量値を1として他方をそれに対する比で表すことが可能である。
〔本発明の方法の利用〕
本発明の質量分析方法を用いれば、試料中に存在する膜貫通型タンパク質を、高感度かつ網羅的に分析することができ、本発明の比較定量解析方法を用いれば、比較する試料間における膜貫通型タンパク質の変動を網羅的に解析することができる。したがって、本発明は、複数の試料間における膜貫通型タンパク質の比較変動の全体像を把握できる技術を提供するものである。具体的には、以下に示す方法に応用することができる。
(1)病態マーカーの探索方法
健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料を用いて本発明の比較定量解析方法を行えば、疾患に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を見出すことが可能である。疾患に基づいて変動する膜貫通型タンパク質は、当該疾患の病態マーカーとして有用である。病態マーカーの探索方法に本発明を用いることにより、従来技術では見出すことができなかった病態マーカーを見出すことが可能になると考えられる。
(2)被験物質の評価方法
被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料用いて本発明の比較定量解析方法を行えば、被験物質投与に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を見出すことが可能である。被験物質投与に基づいて変動する膜貫通型タンパク質を同定することにより、被験物質の評価を行うことができる。被験物質は特に限定されないが、例えば、薬物、ホルモン等の生理活性物質、食品、栄養素、食品添加物、環境汚染物質、毒性物質などが挙げられる。被験物質の評価は、例えば被験物質が薬物の場合には、薬物が膜タンパク質の発現量に及ぼす影響、特に薬物を代謝する酵素や薬物を取り込み・排出するトランスポーターへの影響を評価することができ、被験物質が食品の場合には、食品が膜タンパク質の発現に及ぼす影響、特に栄養を輸送するトランスポーターに対する影響や栄養の代謝系への影響を評価することができる。
(3)環境変化や物理的因子による影響の評価
異なった環境や中/高/低温、気圧、高・低酸素、放射線等の物理的要因暴露下で生育した細胞や動物個体間の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、環境要因や物理的因子が膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
(4)遺伝子型の違いによる影響の評価
ある遺伝子の欠失もしくは変異を持つ細胞または個体と、野生型細胞または個体の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、遺伝子欠失や変異が膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
(5)成長や老化による影響の評価
成長や老化の程度が異なった細胞または個体間の特定の組織、膜ドメインにおける膜タンパク質の発現変動を比較し、成長や老化の程度の異なりが膜タンパク質の発現に及ぼす影響を評価することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:ショ糖またはスクラロースを投与したマウスにおける膜貫通型タンパク質のプロテオーム解析〕
(1)実験方法
(1-1) 使用動物
C57BL/6Jマウス(雄、8週齢)を使用した。1群の匹数は6匹とした(日本エスエルシー)。
(1-2) 投与群および投与方法
以下の3群を設けた。試験物質は飲料水に添加し、給水瓶に入れて自由に摂取させた。
対照群:脱イオン水
ショ糖群:ショ糖水(10%w/v、約300mM)
スクラロース群:スクラロース水(10mM)
(1-3) 飼育飼料
Low Carbohydrate Purified Dietを用いた(日本エスエルシー)。組成はタンパク質74.6%、脂質23.4%、糖質2.0%であり、3.86kcal/gである。
(1-4) 実験スケジュール
3日間上記飼料および脱イオン水で予備飼育した後、群分けした。その後14日間、上記飼料および各試験物質含有飲料水で飼育した。試験開始14日目にマウスを麻酔下で開胸し、PBSを心臓から注入して還流した後、目的の臓器または組織を採取した。
(1-5) 採取試料および凍結保存
小腸上部(十二指腸、空腸)および肝臓を採取した。採取した試料は、速やかに液体窒素中にて凍結し、使用するまで−80℃で保存した。なお、小腸は擦過採取により粘膜部分を保存した。
(1-6) 膜画分の調製方法
凍結保存していた組織の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(20 mM Tris-HCl (pH 7.6)、250 mM Sucrose、1 mM EDTA、6 mM EGTA、20 mM β-Glycerophosphate、20 mM NaF、1 μg/ml Aprotinin、1 μg/ml Leupeptin、1 μg/ml Pepstatin、1 mM PMSF)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにDigital homogenizer(AZ ONE)を用いて、ポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で5分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で5分間遠心分離した。続いて、得られた上清を4℃で15分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として膜画分を得た。なお、小腸に関しては、刷子縁膜画分を精製するため、超遠心分離の前に、得られた上清に最終濃度11mMになるようにCaClを加え、氷上で30分間緩やかに混和した後、10,000×g、4℃で15分間遠心し、上清を得、これを超遠心分離に供した。膜画分は、Membrane stock solution (20 mM Tris-HCl (pH 7.6)、250 mM Sucrose )に懸濁後、タンパク質量をBCA法により定量し、−80℃で保存した。
(1-7) 膜画分の尿素/アルカリ処理
融解した膜画分溶液に蒸留水および尿素を加えて、最終タンパク質濃度が0.1〜0.2mg/ml、最終尿素濃度が10Mとなるように調製し、4℃で30分間攪拌した。これに溶液量と等量の蒸留水を加え、438,000×gで30分間遠心した。沈殿を0.1M炭酸ナトリウムでタンパク質濃度が0.05〜0.1mg/ml等量(当初のタンパク質濃度値に対して)になるように懸濁し、4℃で30分間攪拌後、438,000×gで30分間遠心し、沈殿を回収した。尿素/アルカリ処理前のタンパク質量から計算し、濃度が10mg/mlになるように懸濁溶液(5%デオキシコール酸ナトリウム、45〜50%(w/v)尿素、50 mM炭酸ナトリウム)に懸濁し、タンパク質量をBCA法により定量した。
(1-8) ペプチド化処理
尿素/アルカリ処理を行った膜画分懸濁液20μgを20mM TCEP存在下で、攪拌しながら37℃で30分間保温し、2mM 2−nitro−5−thiocyanobenzoic acid (NTCB)存在下37℃で30分間攪拌した。続いて、0.1M Tris(pH9.0)を10倍量程度加え、37℃で一晩トリプシン消化を行った。外部標準として、十分に酵素消化してあるペプチド4種類(ADH: yeast alcohol dehydrogenase、ENO: yeast enolase、GPB: rabbit glycogen phosphorylase b、BSA: bovine serum albumin)を加えた。
(1-9) ペプチド混合物の精製(PTS法)および1次元分離
消化産物は、石濱らの開発したPTS(Phase Transfer Surfactant)法にて精製した。精製したペプチドは、チップカラムStageTip(石濱 泰: 分析化学: Vol. 57, p.1011、2008)でSDB(poly stylen-divinylbenzene copolymer)−XCを用いてアルカリ溶液で4分画した。
(1-10) HPLCによる2次元分離および質量分析
それぞれの画分をLC−MS HPLC:nano−ACQUITY UPLC(Waters Co., Milford, MA)0.1×150mm(Nikkyo Technos, Tokyo, Japan)を用いて分離し、質量分析計SYNAPT G2(Waters Co., Milford, MA)で分析した。Trapcolumnは MonoCap C18 0.075×50mm(GL Science, Tokyo Japan)で、Flow Rate:400nL/minにて使用した。質量分析の解析ModeはMSE(data independent analysis)Modeを用い、Ionization Sourceは nano−ESIを使用した。Capillary Voltageは1.7kVで、Collision Energyは15−40eVであった。
(1-11) 質量分析データの解析
得られたマススペクトルデータをEMBL−EBI IPI(European Molecular Biology Laboratory-European Bioinformatics Institute International Protein Index)データベースおよびWaters社タンパク質同定/定量アプリケーションProteinLynx Global SERVERを用いて解析し、それぞれの群間における膜貫通型タンパク質の発現量を比較した。
(2)結果
小腸上部(十二指腸、空腸)刷子縁膜画分の試料において、対照群およびショ糖群間で約230のタンパク質の比較定量が可能であった。図1に、小腸上部刷子縁膜画分における糖代謝、コレステロール代謝、アミノ酸代謝に関連するタンパク質比較定量解析結果を示した。糖代謝関係のタンパク質の発現がショ糖群で上昇し、アミノ酸代謝関連タンパク質の発現が減少していることが明らかとなった。示していないが、肝臓から調製した試料を解析した結果は、小腸における発現変化に対応した。
〔実施例2:糖尿病モデルマウスにおける腎皮質膜貫通型タンパク質のプロテオーム解析〕
(1)実験方法
(1-1) 使用動物
ddyマウス(雄、7週齢、日本エスエルシー)を使用した。1群の匹数は3匹とし、糖尿病モデルマウス群および対照群の2群を設け、試験を開始した。
(1-2) 糖尿病モデルマウスの作製
糖尿病モデルマウス群には70mg/kgでアロキサンを尾静脈から試験開始24時間後および48時間後に2回投与した。対照群には生理食塩水を投与した。血糖値レベルが4倍以上上昇していることを確認し、試験開始72時間後にマウスを麻酔下で開胸した。PBSを心臓から注入して還流した後、腎臓を採取し、髄質部分を除き皮質部分のみを凍結保存した。
以下、実施例1の小腸と同様の方法で試料を調製し、質量分析を行った。
(2)結果
図2に、同定できたタンパク質のうち、定量可能なものの内訳を示した。これは、多くの膜タンパク質が網羅的に解析可能なことを示すものである。図3に、糖尿病モデルマウスにおける腎皮質冊子縁膜のSlcトランスポーターの変動を解析した結果を示した。外部標準の4種類のタンパク質および内部標準として用いたVillin−1の発現量が対照群と比べて変化していない一方で、多くのSlcトランスポーターの発現が糖尿病モデルマウス群で変動していることが明らかとなった。この結果は、標的を定めずに膜タンパク質の網羅的解析を行うことにより、病態や化合物が生体に及ぼす想定外の影響を明らかにすることが可能であることを示すものでる。
〔実施例3:尿素処理の効果〕
(1)実験方法
ddyマウス(雄、7週齢、日本エスエルシー)の腎臓(全腎)から以下のように粗膜画分を調製した。凍結保存していた腎臓(全腎)の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにDigital homogenizer(AZ ONE)を用いて、ポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに8,000×g、4℃で10分間遠心した。得られた上清をさらに15,000×g、4℃で10分間遠心し、その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。尿素処理試料に関しては、さらに粗膜画分を腎臓の質量の10倍量のHomogenization bufferに懸濁し、最終濃度6Mになるように尿素を加え、氷上で30分間緩やかに混和し後、438,000×g、4℃で15分間遠心した。沈殿物として尿素処理済みの膜画分を得た。尿素処理していない試料は、尿素溶液の代わりに水を加え、同様の処理を行った。
膜画分は、腎臓の質量に等量のMembrane stock solution(実施例1参照)に懸濁し、実施例1と同様の方法でペプチド化し、PTS法で精製した。精製したペプチドは、1次元目の分離を行わずに直接質量分析計のHPLCに供した。
(2)実験結果
結果を図4に示した。図4から明らかなように、尿素処理によって、膜貫通型タンパク質の同定数が2.5倍以上増加した。
〔実施例4:多次元分離の一次元目に逆相クロマトグラフィーを用いる効果〕
(1)実験方法
実施例1と同様の方法でペプチド化し、PTS法で精製したddyマウス(雄、8週齢、日本エスエルシー)の腎臓粗膜画分由来のペプチド混合物30 μLをチップカラムStageTipで3M社製Empore CATION−SR(SCX)またはEmpore SDB(poly stylen-divinylbenzene copolymer)−XC(RF)を用いて、塩またはアルカリ溶液で4分画した。それぞれの画分を、質量分析計に直結しているHPLCに供し、酸性条件の逆相クロマトグラフィーで2次元分離を行い、そのまま質量分析に供した。
(2)実験結果
結果を図5に示した。図5から明らかなように、一次元目に強陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた場合(SCX−RF)より一次元目に逆相クロマトグラフィーを用いた場合(RF−RF)のほうが、膜貫通型タンパク質であるトランスポーターの同定数が増加し、全体の同定数としても二倍近く増加した。
〔実施例5:心筋のラフト画分の網羅的解析〕
マウスの心臓組織を0.5M炭酸ナトリウム(pH 11)中で破砕し、ダウンスホモジェナイザーで10回ホモジナイズした。破砕物をさらにポリトロンホモジェナイザーで破砕し、4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で30分間遠心した。得られた上清をさらに15,000×g、4℃で10分間遠心し、その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(100,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。粗膜画分を0.5M炭酸ナトリウムに懸濁し、等量の40%ショ糖溶液を加え、ショ糖濃度を40%にした試料を超遠心チューブに移した。35%ショ糖溶液、5%ショ糖溶液を重層後、100,000gで18時間超遠心したものを11画分に分画した。ラフトのマーカータンパク質であるFlotollin−1を含む画分を、抗Flotollin−1抗体を用いたウエスタンブロッティングで確認し、ラフト画分を得た。得られたラフト画分を、実施例1と同様に尿素/アルカリ処理し、質量分析計によって解析した。その結果、尿素/アルカリ処理をしない場合にはほとんど検出されなかった膜貫通型タンパク質が尿素/アルカリ処理した場合には検出された。
〔実施例6:骨格筋の細胞膜画分の質量分析〕
凍結保存していたddYマウス骨格筋(大腿四頭筋)の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で10分間遠心した。その後、その上清を4℃で30分間超遠心分離(438,000×g)し、沈殿物として粗膜画分を得た。粗膜画分をHomogenization bufferによく懸濁し、35%、30%、10%ショ糖の不連続密度勾配に重層後、400,000×gで15時間超遠心し、30%ショ糖溶液の層にある細胞膜画分を調製した。調製した細胞膜画分は、実施例1で示すように質量分析を行った。
〔実施例7:肝臓ミトコンドリア画分の質量分析〕
凍結保存していたddYマウス肝臓の重量を測定し、30倍量のHomogenization buffer(実施例1参照)を加えHandy micro homogenizer(マイクロテックニチオン)で破砕し、さらにポッターホモゲナイザーで15回ホモジナイズした。破砕物は4℃で10分間低速遠心分離(1,000×g)し、得られた上清をさらに10,000×g、4℃で10分間遠心して得られたものをミトコンドリア画分とした。得られたミトコンドリア画分を実施例1と同様にして質量分析計で解析した結果、ミトコンドリア由来の多くの膜貫通型タンパク質を検出した。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (12)

  1. 試料中の膜貫通型タンパク質を網羅的に分析する方法であって、以下の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の質量分析方法(ただし、糖タンパク質を支持体に固定化し、非糖タンパク質を除去する工程を有しない)
    (a)試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分を調製する工程
    (b)得られた膜画分を界面活性剤で可溶化することなく尿素処理し、可溶化タンパク質が除去された膜画分を回収する工程
    (c)前記工程(b)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
    (d)前記工程(c)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
    (e)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
    (f)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
    (g)得られた質量分析データを解析する工程
  2. 前記工程(e)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする請求項1に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
  3. 前記工程(b)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする請求項1または2に記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
  4. 前記工程(c)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
  5. 膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の質量分析方法。
  6. 比較する試料間の膜貫通型タンパク質の変動を網羅的に解析する方法であって、以下の(A)〜(G)の工程を有することを特徴とする膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法(ただし、糖タンパク質を支持体に固定化し、非糖タンパク質を除去する工程を有しない)
    (A)比較しようとする複数の試料から、解析対象とする膜貫通型タンパク質を含む膜画分をそれぞれ調製する工程
    (B)得られた膜画分を界面活性剤で可溶化することなく尿素処理し、可溶化タンパク質が除去された膜画分を回収する工程
    (C)前記工程(B)後の膜画分中のタンパク質をペプチド化処理する工程
    (D)前記工程(C)後の膜画分からペプチド混合物を精製する工程
    (E)得られたペプチド混合物を多次元分離する工程
    (F)多次元分離後のペプチド混合物を質量分析に供する工程
    (G)得られた各試料の質量分析データを用いて比較定量する工程
  7. 前記工程(E)における多次元分離が、逆相クロマトグラフィーを少なくとも2回行うことを特徴とする請求項6に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
  8. 前記工程(B)において、さらに膜画分をアルカリ処理することを特徴とする請求項6または7に記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
  9. 前記工程(C)におけるペプチド化処理が、シアン系化合物による切断と酵素による切断の組み合わせであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
  10. 膜貫通型タンパク質が、複数回膜貫通型タンパク質であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法。
  11. 請求項6〜10のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、健常個体由来の試料および疾患個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする病態マーカーの探索方法。
  12. 請求項6〜10のいずれかに記載の膜貫通型タンパク質の比較定量解析方法を用い、被験物質投与個体由来の試料および被験物質非投与個体由来の試料における膜貫通型タンパク質の比較定量解析を行うことを特徴とする被験物質の評価方法。
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