JP5979845B2 - マイクロ波手術器およびマイクロ波手術器を備える装置 - Google Patents

マイクロ波手術器およびマイクロ波手術器を備える装置 Download PDF

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Description

本発明はマイクロ波手術器に関し、より詳細には、マイクロ波手術器を組み込んだ手術用の装置に関する。
マイクロ波を用いた手術支援用の種々のデバイスが開発されてきた。例えば特許文献1には、生体組織に対してマイクロ波を照射することで生体組織を凝固または止血するマイクロ波手術装置が開示されている。特許文献1に記載のマイクロ波手術装置は、マイクロ波発生ユニットと、マイクロ波発生ユニットからのマイクロ波を生体組織に対して照射する手術電極とを有している。同軸ケーブルによって、マイクロ波発生ユニットからのマイクロ波を手術電極へと伝送し、手術電極からマイクロ波を生体組織に対して照射することによって、生体組織内に発生した誘電熱を利用し、生体組織の凝固、止血、切開等を行うことができる。
また例えば下記特許文献2には、マイクロ波手術器が開示されている。特許文献2に記載のマイクロ波手術器は、組織や血管の極めて強力なシーリング効果を持ち、煙やミストが出ず、従来の類似デバイスと比較しても優れた手術支援用のデバイスである。
一方で、近年ではロボットを用いた手術が導入されつつある。手術用のロボットには止血能力が不可欠であるが、現在は、止血手段として高周波を用いた電気メスしか供給されていない。高周波を用いた電気メスでは、組織や血管をシーリングする能力が不十分であり、リンパ漏れが生じる。さらに、多くの関節を有するロボットアームの先端にエネルギーデバイスを装着する技術は現時点では無く、自在に可動するロボットアームの先端にエネルギーデバイスを持たせることは、現時点では、内視鏡の鉗子を持たせること以外に成功した事例は無い。この場合、マイクロ波を伝送する同軸ケーブルにある程度の太さが必要となるので、同軸ケーブルがロボットアームの関節の可動を阻害し、ロボットアームが自在に可動することが困難となる。そこで、自在に可動するロボットアームの先端に、組織や血管の十分なシーリング能力を有する小型のエネルギーデバイスを装着することが期待されている。
特許第3782495号公報 特願2010−266401号明細書
以下では、説明の便宜上、本出願人による特許文献2に記載のマイクロ波手術器を、従来技術に係る発明として説明する。図5は、従来技術に係るマイクロ波手術器の側面図である。
図5に示すように、マイクロ波手術器81は、先端に電極部824を有する手術器本体82を備えている。手術器本体82は、本体グリップ部821と、本体グリップ部821に揺動可能に取り付けられたスライドグリップ部822と、本体グリップ部821の先端に取り外し可能に螺合された挿入部823とを備えている。電極部824は挿入部823の先端に設けられている。
電極部824は第1の電極824aおよび第2の電極824bを備え、スライドグリップ部822を握って矢印Aで示すように本体グリップ部821側に移動させることで、第1の電極824a及び第2の電極824bが互いに近づくように移動して、生体組織を挟むことができる。本体グリップ部821にはマイクロ波照射のオン/オフを制御するスイッチ825が設けられている。
本体グリップ部821の後端側からは、後述する電子回路部85へ電力を供給するための電源ケーブル826と、電子回路部85からの熱を放出するための冷却水を供給する給水チューブ841とが延びており、これらは電源や冷却水源に接続可能となっている。
図6は、従来技術に係るマイクロ波手術器の筐体および冷却水袋が設置された部分の側面図である。
図6に示すように、本体グリップ821内には直方体上の筐体83が設置されており、この筐体83内には、後述するマイクロ波発振器91、増幅器92、可変出力整合回路93、検出回路94、マイクロコントローラ95等から構成される電子回路部85が収容されている。筐体83の先端部にはSMAコネクタ等のコネクタ831が設置されており、挿入部823を本体グリップ部821に螺合させることで、このコネクタ831が、挿入部823内の給電ライン823aの後端に設けられたコネクタ823bに接続可能となっている。
マイクロ波電力の低下や動作不安定などの問題を防止するためには、筐体83内の電子回路部85から発生する熱を効果的に放出する必要がある。このため、筐体83の上面をほぼ覆うように、冷却水袋84が筐体83上に設けられている。冷却水袋84には給水チューブ841を介して外部の冷却水源(図示省略)が接続されている。冷却水袋84内において筐体83から吸熱した水は、排水チューブ842を介して外部へと排水される。
図7は、従来技術に係るマイクロ波手術器の電子回路部の回路図である。
図7に示すように、電子回路部85は、マイクロ波発振器91と、マイクロ波を増幅させるための増幅器92とを有するマイクロ波発生ユニット90を備えている。増幅器92と電極部824とを直接接続すると、マイクロ波発生ユニット90(特に増幅器92)の出力インピーダンスと生体組織のインピーダンスとの整合が取れないので、マイクロ波発生ユニット90(特に増幅器92)と電極部824との間に可変出力整合回路93を備えている。可変出力整合回路93はコイル931と、第1および第2の可変コンデンサ932a、932bとを備えており、第1および第2の可変コンデンサ932a、932bの静電容量を調節することで、インピーダンス整合を行う。
各可変コンデンサ932a、932bの静電容量は、マイクロ波発生ユニット90(特に増幅器92)と電極部824との間における入射電力及び反射電力に基づいて決定される。このために、電子回路部85は、検出回路94とマイクロコントローラ95とをさらに備えている。検出回路94は、可変出力整合回路93と電極部824との間に接続されており、双方向の検波器941及び方向性結合器942を備えている。マイクロコントローラ95は、演算処理や制御処理をするためのマイクロプロセッサ951と、アナログ/デジタル変換器(ADC)952a〜952cと、デジタル/アナログ変換器(DAC)953a〜953cと、メモリ(図示省略)とを備えている。
通常、マイクロ波の電送に用いる同軸ケーブルのインピーダンスは50Ωであり、マイクロ波発振器の出力インピーダンスも、これに合わせて50Ωとなっている。一方、マイクロ波を照射して止血が完了するまで、止血鉗子のマイクロ波に対する負荷インピーダンスは5Ω〜20Ωの間で変化する。インピーダンス整合を行わない場合、電力の伝送効率は33%〜82%程度となり、止血が進むにつれて伝送効率が極端に悪化する。そのため、特許文献2に記載のマイクロ波手術器では、可変出力整合回路93および検出回路94を使用してインピーダンスを整合させて、効率よくマイクロ波を伝送している。
特許文献2に記載のマイクロ波手術器は、手術器本体82の全長(電極部824の先端から本体グリップ部821の後端までの長さ)Lpは250〜300mm程度であり、大型のマイクロ波発生ユニットを有する従来のマイクロ波手術器と比較して、十分に小型化されている。しかしながら、自在に可動するロボットアームの先端に組み込むには、さらなる小型化が必要とされていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自在に可動するロボットアームの先端に装着できる程度に小型化されたマイクロ波手術器を提供することにある。
上記目的の達成のために、本発明に係るマイクロ波手術器(1)は、生体組織の止血を行うマイクロ波手術器であって、マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の出力インピーダンスおよび止血終了時の出力インピーダンスの幾何平均であることを特徴とする。
また、本発明に係るマイクロ波手術器(2)は、マイクロ波手術器(1)において、前記マイクロ波発生部が、前記マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を増幅し、増幅された前記マイクロ波を前記鉗子駆動部を介して前記鉗子部に送信する増幅器とを備え、前記マイクロ波発振器および前記増幅器が半導体素子を用いて構成されている。
また、本発明に係るマイクロ波手術器(3)は、マイクロ波手術器(1)において、前記鉗子駆動部が、前記電極対を開閉させて前記生体組織を挟持する鉗子開閉機構と、前記マイクロコントローラからの制御信号に基づいて駆動力を発生し、前記鉗子開閉機構に駆動力を伝達する鉗子駆動機構とを備え、前記第1の電極がリターン電極として機能し、前記第2の電極が、前記マイクロ波を供給するアクティブ電極として機能する。
また、本発明に係るマイクロ波手術器(4)は、マイクロ波手術器(1)において、前記第2の電極の先端から前記鉗子駆動機構の後端までの長さが、前記マイクロ波の波長の1/4倍である。
また、本発明に係るマイクロ波手術器(5)は、マイクロ波手術器(1)において、前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスと、前記鉗子部および前記鉗子駆動部を含む部分の出力インピーダンスとが、同じ大きさの値であり、前記マイクロ波発生部と前記鉗子駆動部とが一体化されている。
また、本発明に係る第1の装置は、生体組織の止血を行うマイクロ波手術器と、ロボットアームとを備える手術用の装置であって、前記マイクロ波手術器が、マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の出力インピーダンスおよび止血終了時の出力インピーダンスの幾何平均であって、前記マイクロ波手術器が前記ロボットアーム内に配置され、前記マイクロ波発生部が前記ロボットアームと熱交換可能に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る第2の装置は、生体組織の止血を行うマイクロ波手術器を備える、生体内手術用の装置であって、前記マイクロ波手術器が、マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の出力インピーダンスおよび止血終了時の出力インピーダンスの幾何平均であって、前記マイクロ波手術器が前記装置内に配置され、前記マイクロ波発生部が前記装置と熱交換可能に接続されていることを特徴とする。
本発明によると、自在に可動するロボットアームの先端に装着できる程度に小型化されたマイクロ波手術器を提供することができる。
また、本発明によると、手術用のロボット自体に内蔵できる程度に小型化されたマイクロ波手術器を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器の側面図である。 本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器の電子回路部の回路図である。 本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器を備えるロボットアームの側面図である。 マイクロ波発振器のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。 従来技術に係るマイクロ波手術器の側面図である。 従来技術に係るマイクロ波手術器の筐体および冷却水袋が設置された部分の側面図である。 従来技術に係るマイクロ波手術器の電子回路部の回路図である。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の説明及び図面において、同じ符号は同じ又は類似の構成要素を示すこととし、よって、同じ又は類似の構成要素に関する説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器の側面図である。図1に示すように、マイクロ波手術器1は、一体型マイクロ波発生機2と、鉗子部3と、鉗子開閉機構4とを備える。一体型マイクロ波発生機2は、後述するマイクロ波発生ユニット5、マイクロコントローラ6、高周波チョークコイル7、および低周波ブロックコンデンサ8を備える。これらマイクロ波発生ユニット5、マイクロコントローラ6、高周波チョークコイル7、および低周波ブロックコンデンサ8は、電子回路部を構成する。
鉗子部3は第1の電極31および第2の電極32を備え、鉗子開閉機構4の先端に取り付けられる。第2の電極がマイクロ波を供給するための電極(アクティブ電極)であり、第1の電極がGND電極(リターン電極)である。本実施形態では、鉗子開閉機構4が第1の電極31を矢印Bで示す方向に移動させることにより、第1の電極31および第2の電極32が互いに近づいて生体組織を挟むことができる。
鉗子開閉機構4の後端にはSMAコネクタ等のコネクタプラグ41が設けられており、一体型マイクロ波発生機2の先端に設けられたSMAコネクタ等のコネクタソケット21と接続可能になっている。また、鉗子開閉機構4の後端には、鉗子駆動ケーブル42も接続されており、後述するマイクロコントローラ6からの制御信号に基づいて、鉗子駆動機構43が駆動力を出力し、鉗子駆動ケーブル42を介して鉗子開閉機構4に駆動力が伝達される。鉗子駆動機構43は、モータ若しくはギヤ機構で回転力若しくは直線力(引張/開放)を発生する、例えば公知のアクチュエータ若しくは電磁プランジャである。鉗子駆動ケーブル42は例えばワイヤであり、鉗子駆動ケーブル42が前後に移動することで、鉗子開閉機構4は第1の電極31を動作させる。
一体型マイクロ波発生機2の後端には、後述するマイクロ波発生ユニット5、マイクロコントローラ6、および鉗子駆動機構43へ電力を供給し、マイクロコントローラ6へ制御信号を送信するための電源・制御線コネクタ22が設けられている。電源・制御線コネクタ22は、ロボットアーム側の電力供給手段および制御信号送信手段(図示省略)と接続される。
図1において、マイクロ波を供給する第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLは、使用するマイクロ波の周波数(ISM(Industry-Science-Medical)バンド:2.4〜2.5GHz)の波長λgによって決定される。本願発明では、マイクロ波発生ユニット5と止血対象の生体組織とのインピーダンス整合を程良く確保することによって、従来の可変出力整合回路93および検出回路94を不要としている。インピーダンス整合については後述する。
一体型マイクロ波発生機2、鉗子部3、および鉗子開閉機構4は防水仕様であり、一体型マイクロ波発生機2と鉗子開閉機構4とを接続するコネクタプラグ41、コネクタソケット21、および電源・制御線コネクタ22、並びに鉗子駆動ケーブル42についても防水仕様である。すなわち、マイクロ波手術器1を構成する部材は全て防水仕様であり、手術中における血液や体液等の侵入による電気絶縁不良を避けることができる。また、手術後の消毒処理が可能である。
図2は、本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器の電子回路部の回路図である。電子回路部は面実装部品で構成され、全体として、マイクロストリップ等の形式で、誘電体基板上に一体的に形成されている。
図2に示すように、電子回路部は、マイクロ波発生ユニット5、マイクロコントローラ6、高周波チョークコイル7、および低周波ブロックコンデンサ8を備える。マイクロ波発生ユニット5、マイクロコントローラ6、および鉗子駆動機構43へは電源(図示省略)が接続されている。
マイクロ波発生ユニット5は、マイクロ波発振器51と、マイクロ波を増幅させるための増幅器52とを備える。マイクロ波発振器51は、例えばGaAs MESFETなどの半導体素子を用いて構成された公知のマイクロ波発振器とすることができる。増幅器52は、マイクロ波発振器51から発振されるマイクロ波を増幅するためのものであって、例えば高効率のGaN(ガリウムナイトライド)FET(高電力に向いている)等を用いて構成することができる。
マイクロコントローラ6は、演算処理および制御処理をするためのマイクロプロセッサ61と、アナログ/デジタル変換器(ADC)62と、デジタル/アナログ変換器(DAC)63と、メモリ(図示省略)とを備える。マイクロコントローラ6は、マイクロ波発生ユニット5および鉗子駆動機構43に制御信号を送信して、これらの動作を制御する。具体的には、マイクロコントローラ6は、ロボットアーム側からの制御信号ctrlに基づいてマイクロ波発生ユニット5(特に増幅器52)を制御し、マイクロ波が鉗子部3の第1の電極31および第2の電極32間に照射される。
また、低周波定電流源64が、高周波チョークコイル7を介して鉗子部3に接続されている。この低周波定電流源64は、鉗子部3を介して、一定値の低周波交流電流を生体組織へと供給する。低周波ブロックコンデンサ8が低周波定電流源64とマイクロ波発生ユニット5との間に設けられているので、低周波定電流はマイクロ波発生ユニット5側へは供給されず、鉗子部3側へのみ供給される。なお、低周波とは、生体組織におけるH2OやNaイオン等の電気分解の影響が出ない程度であれば問題はなく、例えば、500Hz〜10kHz程度のものをいい、矩形波様が好ましい。また、低周波交流定電流を用いる理由は、生体組織内の水分や電解質(主に食塩)の電気分解を防ぐためである。
図3は、本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器を備えるロボットアームの側面図である。図3に示すように、一例として示す2軸多関節ロボットのロボットアームは、アームの先端部として機能する第1関節アーム11と、第2関節アーム12と、第1関節アーム11および第2関節アーム12を接続する2軸関節13とを備える。本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器1は、第1関節アーム11内に収容される。一例として、マイクロ波手術器1内の一体型マイクロ波発生機2の寸法は、図3中に示す高さH1=12mm、幅D1=40mm程度であり、図示しないが、一体型マイクロ波発生機2の奥行きW1は20〜25mm程度である。前述の通り、第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLは、使用するマイクロ波の周波数の波長λgによって決定される。本実施の形態ではL=20mm程度である。マイクロ波手術器1の寸法は、これらの寸法により決定され、例えば長手方向の長さとして35mm程度、奥行き(後述する第1関節アーム11部)として直径30mm程度である。
マイクロ波手術器1のマイクロ波発生ユニット5から発生する熱(約30W)を効率良く発散させるために、第1関節アーム11は熱伝導に優れた素材により構成される。さらに、第1関節アーム11に平らな面を設け、熱接触面が可能な限り広く、かつ圧接力が可能な限り大きくなるように、第1関節アーム11の平らな面に、マイクロ波発生ユニット5を、例えばねじ14等で取り付ける。すなわち、第1関節アーム11を放熱器として利用する。これによって、本願発明では、従来の冷却袋84、給水チューブ841、および排水チューブ842を不要とし、小型化を阻害していた水冷式の冷却システムから開放される。
図1〜図3に示す本発明の実施の形態に係るマイクロ波手術器の動作を説明すると次の通りである。
まず、マイクロプロセッサ61がロボットアーム側からマイクロ波照射開始指令を受けると、マイクロプロセッサ61は鉗子器開閉制御信号を鉗子駆動機構43に送信する。鉗子駆動機構43は、鉗子器開閉制御信号に基づいて駆動力を出力し、鉗子開閉機構4を介して鉗子部3の第1の電極31を閉じる。
次に、マイクロプロセッサ61が、マイクロ波発生ユニット5に制御信号を送信する。制御信号を受診したマイクロ波発生ユニット5は、増幅器52を介してマイクロ波発振器51から高電力(20〜30W程度)のマイクロ波を出力する。出力されたマイクロ波は、鉗子部3を通じて止血のために生体組織に印加される。
止血処理の終了検出は、マイクロコントローラ6が生体組織の抵抗値の変化をモニターすることにより行われる。本願発明では、低周波定電流源64が生体組織へ低周波交流電流を供給することを用いて、生体組織の止血の完了を判断する。すなわち、生体組織の止血が完了すると、その抵抗値が変化する(具体的には、抵抗値が約30〜50%減少する)ので、抵抗値の変化によって、生体組織の止血が完了したと判断することができる。この判断はマイクロプロセッサ61が行う。マイクロプロセッサ61は、ADC62を介して低周波交流電圧の振幅値Vsと低周波定電流の振幅値Icとを取り込み、数式 Rs=Vs/Ic によって抵抗値Rsを算出する。マイクロプロセッサ61はこの抵抗値Rsをモニターし、前回の測定値と比較してこの抵抗値Rsが30〜50%程度下降したとマイクロプロセッサ61が判断した場合、マイクロプロセッサ61はマイクロ波の発振を停止するよう、DAC63を介してマイクロ波発生ユニット5(特に増幅器52)を制御する。
マイクロ波の発振が停止した後、マイクロプロセッサ61は鉗子器開閉制御信号を鉗子駆動機構43に送信し、鉗子駆動機構43が鉗子開閉機構4を介して鉗子部3の第1の電極31を開き、一連の動作を終了する。マイクロプロセッサ61は、ロボットアーム側から次のマイクロ波照射開始指令を受けるまで待機する。
次に、マイクロ波発生ユニット5と止血対象の生体組織とのインピーダンス整合について説明する。図1において、マイクロ波を供給する第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLは、使用するマイクロ波の周波数の波長λgによって決定されている。本発明の実施の形態では、 L≒λg/4 程度であり、約20mm程度である。この設定によって、マイクロ波発生ユニット5と止血対象の生体組織とのインピーダンス整合が程良く確保される。この際のマイクロ波の伝送効率は、止血開始時から止血終了時に至るまで、概ね90%〜100%に確保される。
通常、マイクロ波の電送に用いる同軸ケーブルのインピーダンスは50Ωであり、マイクロ波発振器の出力インピーダンスも、これに合わせて通常50Ωとなっている。一方、マイクロ波を照射して止血が完了するまで、止血鉗子のマイクロ波に対する負荷インピーダンスは概ね5Ω〜20Ωの間で変化する。止血開始時は約20Ωであり、止血終了時は約5Ωである。インピーダンス整合を行わない場合、電力の伝送効率は33%〜82%程度となり、止血が進むにつれて伝送効率が極端に悪化する。
本願発明では、止血開始時から止血終了時に至るまでマイクロ波の良好な伝送効率を確保するために、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを、負荷インピーダンスの幾何平均に変換している。止血開始時の負荷インピーダンスZsが20Ω、止血終了時の負荷インピーダンスZeが5Ωであるので、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを5Ω〜20Ωの幾何平均値に変換する。
さらに、本願発明では、異なる特性インピーダンスの伝送経路を反射なく接続するために、伝送経路のインピーダンスを入出力インピーダンスの積の平方根に設定し、マイクロ波を供給する第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLをλg/4に設定している。鉗子部3側のインピーダンスは通常の50Ωであるので、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを10Ωとするためには、鉗子部3の第2の電極32からコネクタプラグ41までの特性インピーダンスを(10Ω×50Ω)1/2 =22.4Ωとし、マイクロ波を供給する第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLをλg/4とする必要がある。
これにより、止血開始時から止血終了時に至るまでのマイクロ波の伝送効率は次のように求められる。
止血開始時(〜20Ω)の伝送効率:
1−{(20Ω−10Ω)/(20Ω+10Ω)}≒0.889 (88.9%)
止血最良時点(〜10Ω)の伝送効率:
1−{(10Ω−10Ω)/(10Ω+10Ω)}=1.00 (100%)
止血終了時(〜5Ω)の伝送効率:
1−{(10Ω−5Ω)/(10Ω+5Ω)}≒0.889 (88.9%)
このように、本願発明では、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスを負荷インピーダンスの幾何平均に設定することで、マイクロ波の伝送効率を、止血開始時から止血終了時に至るまで概ね90%〜100%に確保している。これにより、本願発明では、従来の可変出力整合回路93および検出回路94を不要としている。また、マイクロ波発生ユニット5から鉗子部3の第2の電極32までの長さも短くできるので、止血時間の短縮が図られる。さらに、マイクロ波発振器の出力を増大させる必要がなく、使用するマイクロ波発振器91の出力は、比較的低い出力でも良い。
図4は、マイクロ波発振器のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。負荷インピーダンスが10Ωの場合を(A)に示し、負荷インピーダンスが5Ω(止血終了時)の場合を(B)に示し、負荷インピーダンスが20Ω(止血開始時)の場合を(C)に示す。図中には反射係数Γおよび定在波比VSWRもあわせて示す。
図4(A)を参照すると、負荷インピーダンスが10Ωの場合、中心周波数2.45GHzにて定在波比VSWR=1.00が得られる。また、ISM周波数バンドの上限および下限である、中心周波数2.45GHz±100MHzの周波数では、定在波比VSWR=1.06が得られる。これは伝送効率99.92%に相当する。
図4(B)を参照すると、負荷インピーダンスが5Ωの場合、中心周波数2.45GHzにて定在波比VSWR=2.00が得られる。これは伝送効率88.89%に相当する。また、中心周波数2.45GHz±100MHzの周波数では、定在波比VSWR=2.01が得られる。これは伝送効率88.74%に相当する。
図4(C)を参照すると、負荷インピーダンスが20Ωの場合、中心周波数2.45GHzにて定在波比VSWR=2.00が得られる。また、中心周波数2.45GHz±100MHzの周波数においても、定在波比VSWR=2.00が得られる。これらは伝送効率88.89%に相当する。
本発明のマイクロ波手術器1は、マイクロ波発振器51および増幅器52を有するマイクロ波発生ユニット5がマイクロ波手術器1本体に内蔵されているので、可撓性のある長い同軸ケーブルによって、電極部(鉗子部3)と増幅器52とを接続する必要が無い。このため、可撓性を有さない同軸管によるケーブルでこれらを接続することができ、電力損失を低減することが可能となる。その結果、マイクロ波発生ユニット5に大出力を要求しないので、これを小型化することが可能となり、マイクロ波手術器1全体を小型化することができる。
また、本発明のマイクロ波手術器1は、従来の可変出力整合回路93および検出回路94が不要であるので、マイクロ波手術器1全体を小型化することができる。さらに、本発明のマイクロ波手術器1は、従来の冷却袋84、給水チューブ841、および排水チューブ842が不要であるので、マイクロ波手術器1全体をさらに小型化することができる。
また、マイクロ波発振器51および増幅器52を有するマイクロ波発生ユニット5は、マイクロ波を発生させ且つ増幅する手段として半導体素子を用いる。従来は、同軸ケーブルによる電力損失を補うためにマイクロ波発生ユニットとしてマグネトロンを使用していた。しかし本発明に係るマイクロ波手術器1では、同軸ケーブルを使用しないので電力損失を考慮する必要がなく、半導体素子を用いたマイクロ波発生ユニットを使用することができる。半導体素子を用いたマイクロ波発生ユニットはマグネトロンのように強磁性体を使用していないので、本発明のマイクロ波手術器1はMRI装置と併用することが可能となる。
また、従来は、反射電力と入射電力との合成によるマイクロ波発生ユニットの損傷を防止するために、強磁性体を有するアイソレータなどの保護装置を設置していたが、上述したように構成することで、アイソレータなどの保護装置を省略することもできる。この結果、本発明のマイクロ波手術器1は、MRI装置との併用が可能となる。
上記説明したように、本発明のマイクロ波手術器1は、従来のマイクロ波手術器と比較しても特に小型化されているので、自在に可動するロボットアームの先端に装着することが可能である。ロボットアームの先端に本発明のマイクロ波手術器1が備わることで、生体外でのロボット手術に限られず、生体(患者)内でのロボット手術が可能となる。生体内でのロボット手術には、ロボットに強い止血能力と生体組織のシーリング能力とが必要になる。さらに、例えばMRI画像等で、生体内でのロボットの位置を随時モニターする必要がある。本発明のマイクロ波手術器1は、強い止血能力および生体組織のシーリング能力を有し、さらにMRI装置と併用することが可能であるので、生体内でのロボット手術の用途に適している。
以上、本発明を特定の実施の形態によって説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、マイクロコントローラ6は、抵抗値Rsをモニターし、前回の測定値と比較して抵抗値Rsが30〜50%程度下降したとマイクロプロセッサ61が判断した場合に、生体組織の止血が完了したと判断して、マイクロ波発生ユニット5を制御していたが、これに限らず、マイクロコントローラ6は、予めメモリ(図示省略)に格納している抵抗値変化のデータや、時間経過に対する最適な印加電力のデータに基づいて、マイクロ波電力を印加させるようにマイクロ波発生ユニット5を制御してもよい。
また、上記実施の形態では、マイクロコントローラ6は一体型マイクロ波発生機2内に組み込まれているが、これに限らず、マイクロコントローラ6を別体型としてもよい。
また、上記実施の形態では、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを10Ωに変換し、マイクロ波を供給する第2の電極32からコネクタプラグ41までの長さLをλg/4に設定しているが、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを最初から10Ωに設計すれば、長さL=λg/4の制限から開放され、長さLを0〜数λg程度の変化させても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。長さL=λg/4の制限から開放されることは、すなわちより一層の小型化が可能であることを意味する。
具体的には、マイクロ波発生ユニット5の出力インピーダンスZoを最初から10Ωに設計し、さらに、コネクタソケット21およびコネクタプラグ41を排除することで、鉗子開閉機構4と一体型マイクロ波発生機2とを直接的に接続し、鉗子開閉機構4と一体型マイクロ波発生機2とを一体化すれば、マイクロ波手術器1をより一層小型化することが可能である。この場合、マイクロ波発生ユニット5と業界標準の測定器(インピーダンスが業界標準の50Ωに設定されている)との間に、高精度のインピーダンス変換器を挿入すれば、マイクロ波手術器1の設計および製造時の性能確認および品質管理も容易となる。
また、上記実施の形態では、マイクロ波手術器1は2軸多関節ロボットのロボットアームに組み込まれているが、これに限らず、手術用のロボットであれば良い。マイクロ波手術器1は、例えば生体(患者)内に取り込み可能な寸法を有する体内作業ロボットに組み込まれてもよい。より小型化されたマイクロ波手術器1は、鉗子部3がマイクロ波発生ユニット5とほぼ直結しているので、マイクロ波の出力の減衰は極めて少なく、発熱も無い状況で手術操作にマイクロ波を使用することができる。
また、上記実施の形態では、マイクロ波発生ユニット5は第1関節アーム11を放熱器として利用しているが、これに限らず、熱交換可能なボディーと接続されていればよい。より小型化されたマイクロ波手術器1が、例えば体内作業ロボットに組み込まれている場合には、マイクロ波発生ユニット5は、体内作業ロボットを構成するボディの表面と熱交換可能に接続されていればよい。
1 マイクロ波手術器
2 一体型マイクロ波発生機
3 鉗子部
4 鉗子開閉機構
5 マイクロ波発生ユニット
6 マイクロコントローラ
7 高周波チョークコイル
8 低周波ブロックコンデンサ
11 第1関節アーム
12 第2関節アーム
13 2軸関節
31 第1の電極
32 第2の電極
42 鉗子駆動ケーブル
43 鉗子駆動機構
51 マイクロ波発振器
52 増幅器
61 マイクロプロセッサ
62 アナログ/デジタル変換器(ADC)
63 デジタル/アナログ変換器(DAC)
64 低周波定電流源64

Claims (7)

  1. 生体組織の止血を行うマイクロ波手術器であって、
    マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、
    前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、
    前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、
    前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、
    外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、
    前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の負荷インピーダンスおよび止血終了時の負荷インピーダンスの幾何平均であるマイクロ波手術器。
  2. 前記マイクロ波発生部が、
    前記マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、
    前記マイクロ波を増幅し、増幅された前記マイクロ波を前記鉗子駆動部を介して前記鉗子部に送信する増幅器とを備え、
    前記マイクロ波発振器および前記増幅器が半導体素子を用いて構成されている、請求項1に記載のマイクロ波手術器。
  3. 前記鉗子駆動部が、
    前記電極対を開閉させて前記生体組織を挟持する鉗子開閉機構と、
    前記マイクロコントローラからの制御信号に基づいて駆動力を発生し、前記鉗子開閉機構に駆動力を伝達する鉗子駆動機構とを備え、
    前記第1の電極がリターン電極として機能し、前記第2の電極が、前記マイクロ波を供給するアクティブ電極として機能する、請求項1に記載のマイクロ波手術器。
  4. 前記第2の電極の先端から前記鉗子駆動機構の後端までの長さが、前記マイクロ波の波長の1/4倍である、請求項1に記載のマイクロ波手術器。
  5. 前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスと、前記鉗子部および前記鉗子駆動部を含む部分の出力インピーダンスとが、同じ大きさの値であり、前記マイクロ波発生部と前記鉗子駆動部とが一体化されている、請求項1に記載のマイクロ波手術器。
  6. 生体組織の止血を行うマイクロ波手術器と、ロボットアームとを備える手術用の装置であって、
    前記マイクロ波手術器が、
    マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、
    前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、
    前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、
    前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、
    外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、
    前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の負荷インピーダンスおよび止血終了時の負荷インピーダンスの幾何平均であって、
    前記マイクロ波手術器が前記ロボットアーム内に配置され、前記マイクロ波発生部が前記ロボットアームと熱交換可能に接続されている装置。
  7. 生体組織の止血を行うマイクロ波手術器を備える、生体内手術用の装置であって、
    前記マイクロ波手術器が、
    マイクロ波を発振および増幅するマイクロ波発生部と、
    前記生体組織に前記マイクロ波を照射するための電極対である第1の電極および第2の電極を有する鉗子部と、
    前記鉗子部および前記マイクロ波発生部の間に接続され、前記鉗子部を駆動する鉗子駆動部と、
    前記鉗子部を介して前記生体組織に所定の低周波交流電流を供給する低周波定電流源と、
    外部から入力される前記マイクロ波の照射制御信号と、前記低周波交流電流とに基づいて、前記マイクロ波発生部および前記鉗子駆動部を制御するマイクロコントローラとを備え、
    前記マイクロ波発生部の出力インピーダンスが、固定値であり、止血開始時の負荷インピーダンスおよび止血終了時の負荷インピーダンスの幾何平均であって、
    前記マイクロ波手術器が前記装置内に配置され、前記マイクロ波発生部が前記装置と熱交換可能に接続されている装置。
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