以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、光学装置110の全体構成図である。図1に示すように、光学装置110の一例は、眼鏡である。光学装置110は、ヘルメット又は車両等の前面部分であってもよい。図1に矢印で示すように、光学装置110を装着したユーザから見て上下左右前後を、光学装置110の上下左右前後方向とする。
光学装置110は、枠体12と、電源部14と、左右一対の調光部16と、近接センサ18と、第1受光部20と、制御部22とを備える。
枠体12は、電源部14と、一対の調光部16と、近接センサ18と、第1受光部20と、制御部22とを保持する。枠体12は、左右一対の腕部24、24と、枠本体部26とを有する。一対の腕部24の前端部は、それぞれ枠本体部26の左右の端部に連結されている。腕部24の後端部は、ユーザの耳にかけられる。これにより、枠本体部26が、一対の調光部16とともに、ユーザの目の前方に配置される。枠本体部26は、一対の調光部16を支持する。
電源部14は、制御部22によって制御されて、一対の調光部16と、近接センサ18と、第1受光部20と、制御部22とに電圧を印加する。電源部14の一例は、充電可能な二次電池である。二次電池の一例は、リチウム電池、ニッケル電池である。尚、電源部14は、一次電池であってもよい。
一対の調光部16は、枠本体部26に保持されて、ユーザの左目及び右目の前方に設けられる。一対の調光部16は、電源部14から出力されて制御部22によって調節されて印加される電圧によって、外部から入射する光の透過率を変化可能とする。調光部16は、それぞれが独立に透過率を変更可能な第1領域62と第2領域64とを有してよい。例えば、調光部16は、調光部16の中央部を含むが少なくとも一部の端部を含まない第1領域62と、調光部16の少なくとも一部の端部を含む第2領域64とを有してよい。
一例として、調光部16は、図1に示すように調光部16の中央及び下部(下端部を含む)を含む第1領域62と上部(上端部を含む)の第2領域64とを有する。これに代えて、調光部16は、ユーザの視線が集中する調光部16の中央部分に対応する第1領域62と、第1領域62の外周を囲む第2領域64とを有してもよい。このような場合、第1領域62にはユーザの視線が集中しやすいが、第2領域64にはユーザの視線が集中しにくい。
近接センサ18は、枠本体部26の中央部の後面、即ち、ユーザ側に配置され、ユーザが光学装置110を装着したことを検出する。近接センサ18は、制御部22と接続されている。近接センサ18は、枠本体部26の後方の物体の有無を検出して、有無に関する情報を制御部22に出力する。従って、近接センサ18は、光学装置110がユーザに装着されると、枠本体部26の後方にユーザが存在することを検出して、有無に関する情報の一例である存在信号を制御部22へと出力する。
近接センサ18の一例は、赤外線等の光を後方へと出力する発光素子と、発光素子から出力された赤外線等の光を受光して電気信号に変換する受光素子である。従って、発光素子から出力された光が、光学装置110を装着したユーザ等に反射されて、受光素子に受光される。この場合、近接センサ18は、ユーザの存在を検出して存在信号を出力する。
第1受光部20は、枠本体部26の中央部の前面、即ち、入射側に配置され、光学装置110に入射する光を検出する。第1受光部20は、制御部22と接続されている。第1受光部20は、前方に向けて設けられている。尚、前方とは、水平方向及び鉛直方向からの傾斜が0°の真正面のみならず、水平方向及び鉛直方向に傾斜している方向も含む。第1受光部20は、前方から入射する外部からの光量を検出して、検出した光量を示す信号を制御部22に出力する。第1受光部20の詳細は、後述する。
制御部22は、枠本体部26の中央部に設けられ、光学装置110の動作を制御する。制御部22は、調光部16とフレキシブル配線によって接続されてよい。制御部22は、光学装置110の制御全般を司る。制御部22の詳細は、後述する。
図2は、調光部16の分解斜視図である。光学装置110は、ユーザに装着された状態では、前方が外部である。従って、外部からの光は、矢印A1に示すように、前方または前方から鉛直方向に傾斜した方向から後方へと進行する。また、ユーザは、光学装置110を装着すると、調光部16の後方の位置となる。
図2に示すように、調光部16は、入射側偏光板30と、入射側基板32と、入射側透明電極34と、入射側配向膜36と、液晶部材38と、出射側配向膜40と、出射側透明電極42と、出射側基板44と、出射側偏光板46とを有する。
入射側偏光板30は、調光部16の最も入射側に配置されている。入射側偏光板30は、入射側基板32の出射側の面の全面を覆う。入射側偏光板30は、矢印A2で示すように、出射側から見て、水平方向から左回りに傾斜させた透過軸を有する。入射側偏光板30の透過軸の傾斜角度の一例は、出射側から見て、鉛直方向から右回り45°である。入射側偏光板30は、外部から入射する光、例えば、無偏光の自然光を、透過軸と平行な偏光方向の直線偏光にして出射する。
入射側基板32は、入射側偏光板30の出射側に配置されている。入射側基板32は、光学的に等方なガラス等の光を透過可能な絶縁性の材料によって構成される。入射側基板32は、入射側偏光板30、入射側透明電極34、入射側配向膜36を保持する。
入射側透明電極34は、入射側基板32の出射側の面の全面にわたって形成されている。入射側透明電極34は、導電性を有し、光を透過可能なITO(Indium Tin Oxide)等の材料によって構成される。入射側透明電極34は、第1領域62に対応する分割電極162及び第2領域64に対応する分割電極160から構成される。
入射側配向膜36は、入射側透明電極34の出射側の面の全面にわたって形成されている。入射側配向膜36は、矢印A3に示すように、出射側から見て、左下方のラビング方向を有する。入射側配向膜36のラビング方向の一例は、出射側から見て、水平方向から左下方に45°傾斜した方向である。入射側配向膜36のラビング方向は、入射側偏光板30の透過軸と平行である。入射側配向膜36は、ラビング方向に沿って、液晶部材38の液晶分子を配向させる。
液晶部材38は、入射側配向膜36及び入射側偏光板30よりも出射側、即ち、ユーザ側に設けられている。液晶部材38を構成する材料の一例は、ポジ型ネマティック液晶である。液晶部材38には、入射側偏光板30の透過軸と平行な偏光方向の直線偏光が入射する。液晶部材38は、電圧が印加されていない状態では、入射する直線偏光の偏光方向を90°回転させる。一方、液晶部材38は、電圧が印加されると、入射する直線偏光の偏光方向を90°未満回転させて、または、回転させずに出射する。
出射側配向膜40は、液晶部材38の出射側の面の全面にわたって設けられている。換言すれば、出射側配向膜40は、液晶部材38よりもユーザ側に設けられている。従って、液晶部材38は、入射側配向膜36及び出射側配向膜40との間に配置される。出射側配向膜40は、矢印A4に示すように、出射側から見て、左上方のラビング方向を有する。換言すれば、出射側配向膜40のラビング方向は、入射側配向膜36のラビング方向と、水平方向では同じ左方向であって、鉛直方向では異なる上方向である。出射側配向膜40のラビング方向の一例は、出射側から見て、水平方向から左上方に45°傾斜した方向である。出射側配向膜40のラビング方向は、入射側配向膜36のラビング方向と直交する。出射側配向膜40は、ラビング方向に沿って、液晶部材38の液晶分子を配向させる。これにより、液晶部材38は、ツイストネマティックモードとなる。
出射側透明電極42は、出射側配向膜40の出射側の面の全面にわたって設けられている。入射側透明電極34及び出射側透明電極42は、互いに対向して設けられている。従って、液晶部材38は、入射側透明電極34及び出射側透明電極42の間に設けられる。入射側透明電極34及び出射側透明電極42は、液晶部材38の全面にわたって、略等電位で電圧を印加する。出射側透明電極42は、入射側透明電極と同じ材料によって構成されてよい。入射側透明電極34が分割される代わりに、出射側透明電極42が分割されて、複数の分割電極を有してもよい。
出射側基板44は、出射側透明電極42の出射側の面の出射側に配置されている。出射側基板44は、入射側基板32と同じ材料によって構成されてよい。出射側基板44は、出射側配向膜40、出射側透明電極42、出射側偏光板46を保持する。入射側基板32及び出射側基板44は、液晶部材38を封止する。
出射側偏光板46は、出射側基板44の出射側の面の全面を覆う。出射側偏光板46は、調光部16の最も出射側に配置されている。出射側偏光板46は、矢印A5で示すように、出射側から見て、水平方向から右回りに傾斜させた透過軸を有する。出射側偏光板46の透過軸の傾斜角度の一例は、出射側から見て、鉛直方向から左回り45°である。従って、出射側偏光板46の透過軸は、出射側配向膜40のラビング方向と平行である。また、出射側偏光板46は、入射側偏光板30の透過軸と直交する透過軸を有する。出射側偏光板46には、液晶部材38によって変調された直線偏光が入射し、透過軸と平行な偏光方向を有する直線偏光を出射する。
調光部16は、このような構成を備えることにより、無偏光の入射光を入射側偏光板30で直線偏光に変換し、液晶部材38で直線偏光を変調させて、変調された光のうち出射側偏光板46を透過した光を出射光として出力する。例えば、液晶部材38は、電圧が印加されない状態で、入射した直線偏光を90度回転させて出力し、電圧が徐々に印加されるにつれて徐々に回転角度が減少した直線偏光を出力し、一定以上の電圧が印加された状態で入射した直線偏光を回転させずに出力する。これにより、調光部16は、電圧非印加時に透過状態となり、電圧の印加量応じて徐々に非透過状態に変化する。
図3は、光学装置110の制御系のブロック図である。図3に示すように、制御部22は、充電部50と、液晶駆動部52と、電圧制御部の一例である主制御部54と、記憶部56とを備える。
充電部50は、電源部14と、外部の電源とを接続する。充電部50は、制御部22からの指示に基づいて、電源部14の充電の開始及び停止を制御する。充電部50は、電源部14の充電状態の情報を主制御部54に出力する。
液晶駆動部52は、電源部14から電力を受ける。液晶駆動部52は、入射側透明電極34及び出射側透明電極42を介して、液晶部材38に電圧を印加する。液晶駆動部52は、オペアンプ、アナログスイッチを有する。
主制御部54の一例は、マイクロコンピュータである。主制御部54は、充電部50、液晶駆動部52、及び、記憶部56を介して、光学装置110を制御する。
主制御部54は、液晶駆動部52を介して、調光部16に印加する電圧を制御する。具体例として、主制御部54は、近接センサ18から存在信号が入力されている状態では、入射側透明電極34及び出射側透明電極42を介して、調光部16に印加される電圧を制御して調光部16の調光を制御する。主制御部54は、近接センサ18から存在信号が入力されていない状態では、調光部16に電圧を印加せず調光部16の調光を制御しない。換言すれば、主制御部54は、存在信号が入力されている状態では、光学装置110をオン状態にして、存在信号が入力されていない状態では、光学装置110をオフ状態にする。また、主制御部54は、充電部50から取得した電源部14の充電状態に基づいて、光学装置110の電源のオン状態・オフ状態を切り替える。
主制御部54は、オン状態において、第1受光部20から取得した信号に基づいて、調光部16の液晶部材38に印加する電圧を制御することで、調光部16の調光状態を制御する。具体的な例としては、主制御部54は、液晶部材38に印加する電圧を、高電圧と低電圧とを周期的に切り替えることによって制御する。高電圧の一例は、3Vであって、低電圧の一例は、0Vである。尚、主制御部54は、高電圧を印加する場合、+3Vと−3Vとを一周期ごとに交互に印加する。主制御部54は、600Hzの間の周波数で高電圧と低電圧とを切り替える。ここで、主制御部54は、左右の調光部16に印加する電圧を同期させている。
主制御部54は、高電圧のデューティ比によって、調光部16の透過率を制御する。ここでいう、高電圧のデューティ比は、1周期、即ち、低電圧を印加する時間と高電圧を印加する時間の和に対する高電圧を印加する時間の比である。尚、以下の説明において、単にデューティ比と記載した場合、当該デューティ比は、高電圧のデューティ比を意味する。尚、主制御部54は、調光部16の透過率が「0」とならないように、即ち、完全に遮光しないように電圧を制御する。より好ましくは、主制御部54は、調光部16の透過率が8%以上となるように電圧を制御する。
更に、主制御部54は、調光部16に印加する電圧のデューティ比によって、調光部16に与える電圧を切り替え、調光部16の透過率を切り替える。例えば、主制御部54は、分割電極160/分割電極162に印加する電圧のデューティ比を高くすることにより第1領域62/第2領域64の透過率を低下させ、分割電極160/分割電極162に印加する電圧のデューティ比を低くすることにより第1領域62/第2領域64の透過率を上昇させる。
図4は、第1受光部20を示すブロック図である。第1受光部20は、それぞれが特定の波長域の光を受光して受光光量に応じた信号を出力する。例えば、第1受光部20は、第1波長の光を受光して光量に応じた第1信号を出力し、前記第1波長と異なる第2波長の光を受光して光量に応じた第2信号を出力する。第1受光部20は、1又は複数の受光センサを有してよい。例えば、第1受光部20は、複数の受光センサのそれぞれから受光した光の光量を示す信号を制御部22に供給することにより、入射した光の光量及び色の情報を制御部22に供給してよい。例えば、第1受光部20は、図示するように、第1波長の光を受光して光量に応じた第1信号を出力する第1受光センサ202、第1波長と異なる第2波長の光を受光して光量に応じた第2信号を出力する第2受光センサ204、及び第1波長及び第2波長と異なる第3波長の光を受光して光量に応じた第3信号を出力する第3受光センサ206を有する。
一例として、第1受光部20はRGBカラーセンサであってよく、第1受光センサ202は赤色となる波長(例えば、620nm)近傍の光を受光して第1信号を出力し、第2受光センサ204は緑色となる波長(例えば、540nm)近傍の光を受光して第2信号を出力し、第3受光センサ206は青色となる波長(例えば、460nm)近傍の光を受光して第3信号を出力してよい。別の一例として、第1受光部20は、赤色を受光する第1受光センサ、及び、可視光を全て受光する第2受光センサを備えてもよい。
具体的には、第1受光部20は、カラーフィルタ付きフォトダイオードであってよく、この場合、第1受光センサ202等の各受光センサは、カラーフィルタの各画素を透過した各色の光を受光する。また、第1受光部20は、回折格子付きフォトダイオードであってよく、この場合、第1受光センサ202等の各受光センサは、回折格子により分光された各色の光を受光する。これらに代えて、第1受光部20は、カラーチェンジャー付きフォトダイオードであってよく、この場合、第1受光部20は1個の受光センサを有してよく、受光センサの前でカラーホイールが回転することにより、受光センサに時分割で異なる色(波長)の光を入光させて、受光センサは時分割で第1信号及び第2信号等を出力してよい。第1受光センサ202等の各受光センサは、第1信号及び第2信号等として、受光した各色の光の光量に応じたアナログ電気信号を出力する。これに代えて、各受光センサは、受光した各色の光の光量に応じたアナログ電気信号をデジタル信号(電気信号又は光信号等)に変換して出力してよい。光量の一例は、照度[単位:ルクス(=lx)]であってよい。本実施形態の説明では、第1受光部20が複数の受光センサを有する場合を例に説明する。
図5、図6及び図7は、調光部16の複数の調光状態を説明する図である。主制御部54は、第1受光部20の複数の受光センサからの信号を受信して、入射光の光量及び色を算出して、調光部16を複数の調光状態の間で切り替える。例えば、主制御部54は、第1受光センサ202、第2受光センサ204、及び/又は第3受光センサ206から受信した第1信号、第2信号及び/又は第3信号に基づいて、調光部16の透過率を制御して、調光部16を無調光状態、第1調光状態又は第2調光状態に切り換える。
図5は、無調光状態に制御された調光部16を示す。例えば、主制御部54は、算出した入射光の光量及び色と、記憶部56に記憶されている基準とを比較する。主制御部54は、入射光の光量及び色が予め定められた基準を満たすと判定する場合、調光部16の液晶部材38へ電圧を印加しない。これにより、液晶部材38は、全領域で入射した直線偏光を90°回転させて出射する。この結果、調光部16は、図5に示す無調光状態となる。図5に示す状態は、調光部16の透過率が最も大きい状態である。換言すれば、光学装置110は、電圧が印加されていない状態で透過率が最も大きくなるノーマリーホワイトモードである。なお、本明細書で単に「透過率」という場合は、例えば、調光部16の表面に対して鉛直方向から入射する光に対する透過率を指すものであってよい。これに代えて、「透過率」は、眼鏡である光学装置110を使用する人の眼の位置(例えば、設計上想定されるユーザの眼の位置)から調光部16の各領域を結ぶ直線に沿って入射する光に対する透過率を指すものであってよい。例えば、調光部16の第1領域の透過率は、第1領域の中心と人の眼を結ぶ線に沿った光線の透過率であってよい。
図6は、第1調光状態に制御された調光部16を示す。主制御部54は、第1調光状態において、調光部16の第1領域62及び第2領域64の透過率を独立に制御する。例えば、主制御部54は、上下方向において、調光部16の中央部の第1領域62よりも端部の第2領域64の透過率を低くする。一例として、主制御部54は、第1受光部20が受光した光の光量及び色が予め定められた基準を満たすと判定すると、調光部16の分割電極162のみに、予め定められた第1のデューティ比で高電圧と低電圧とを周期的に印加する。これにより、調光部16の上端部に位置する第2領域64は、入射した直線偏光の一部または全部を90°未満で回転させて出射する。この結果、調光部16は、図6に示すように、上部のみが不透過状態又は不透過状態に近い状態となる。これにより、光学装置110は、第1調光状態において、庇のように、視界の上方からの強力な光(例えば太陽光等)を効果的に減光する。
図6に示す第1調光状態では、少なくとも第2領域64の透過率が、図5に示す調光部16の透過率よりも低い状態である。一方で、主制御部54は、分割電極160には電圧を印加せず調光部16の第1領域62は、図5と同じノーマリーホワイトモードとなる。なお、分割電極を調光部16の下端及び/又は左右端に設けることにより、主制御部54は調光部16の下端及び/又は左右端の透過率を低下させてもよい。
図7は、第2調光状態に制御された調光部16を示す。第2調光状態において、主制御部54は、第1調光状態よりも中央部の第1領域62と端部の第2領域64の透過率の差が小さくなるように調光部16を制御する。例えば、主制御部54は、第2調光状態において、第1領域62と第2領域64との透過率の差を0になるように調光部16を制御する。
一例として、主制御部54は、第1受光部20が受光した光の光量及び色が予め定められた基準を満たすと判定すると、調光部16の分割電極160及び分割電極162に、第1のデューティ比よりも小さい予め定められた第2のデューティ比で高電圧と低電圧とを周期的に印加する。これにより、調光部16は、全領域において、入射した直線偏光の一部または全部を90°未満で回転させて出射する。この結果、調光部16は、図7に示すように、全体が半透過状態となる。これにより、光学装置110は、第2調光状態において、一般的なサングラスのように、視界全体からの光(例えば白い壁に反射した太陽光等)を効果的に減光する。図7に示す状態では、第1領域62及び第2領域64の透過率が、図5に示す調光部16の透過率よりも低く、図6に示す第2領域64の透過率よりも高い状態である。
図8は、主制御部54による光量及び色に基づく調光部16の制御の一例を示す。主制御部54は、記憶部56に予め格納されたテーブルに基づいて、第1受光部20から入射した光の光量及び色の情報を受け取り、光量及び色が予め定められた基準を満たすか否かを判断し、判断結果に基づき調光部16を無調光状態と第1調光状態と第2調光状態とで切り換えてよい。
例えば、まず、主制御部54は、第1受光部20の複数の受光センサから受信した信号の強度平均等から、第1受光部20が受光した光の光量を算出して、当該光量に基づいて第1受光部20が受光した光が予め定められた照度基準以上明るいか否かを判断する。一例として、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が、第1閾値Th1以上明るいか、第1受光部20が受光した光が第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2以上明るいか、又は第1受光部20が受光した光の明るさが第2閾値Th2未満かを判定する。
次に、主制御部54は、第1受光部20の複数の受光センサからの信号強度の比率等から、第1受光部20が受光した光の色情報を算出して、当該色情報に基づいて第1受光部20が受光した光が予め定められた色基準以上赤いか否かを判断する。主制御部54の具体的な判断手法は後述する。
そして、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が第1閾値Th1以上明るいと判断した場合(図8表の(a)及び(d))、及び、第1受光部20が受光した光が第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2以上明るく予め定められた基準以上赤いと判断した場合(図8表の(b))に調光部16を第1調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、第1受光部20に受光した光が非常に明るい場合((a)及び(b))に、太陽光が直接ユーザの眼に入射していると判断して、調光部16のうち太陽光が通過する可能性が高い端部の第2領域に庇状の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。更に、主制御部54は、第1受光部20に受光した光がある程度以上明るく更に赤い場合に、夕日が入射していると判断し、調光部16に同様の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
主制御部54は、第1受光部20が受光した光が第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2以上明るいが、予め定められた基準以上赤くないと判断した場合(図8表の(e))に調光部16を第2調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、第1受光部20に受光した光が一定以上明るくかつ赤くない場合(e)に、太陽光の反射光(例えば、太陽光が白い壁で乱反射した光)が光学装置110に入射していると判断して、調光部16全体に薄い遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
次に、光量閾値の設定方法の一例について説明する。図9は、太陽の位置と色とを説明する図である。図10は、太陽の位置と照度と色との関係を示すグラフである。
図9に示すように、太陽がユーザの真上にある状態の太陽の位置をSu1とする。時間の経過につれて、太陽が徐々に西に沈む位置をそれぞれ、位置Su2からSu5とする。位置Su3及びSu4では、太陽は西日の状態であり、Su1〜Su2と比較して赤みを帯びる。位置Su5では、太陽は地平線LHまたは水平線LHの下に沈んでいるが、西の方向が明るい状態である。
図10に示すように、これらの位置Su1から位置Su5において、第1受光部20が検出する光量は、太陽が位置Su1から位置Su3に移動する間は増加するとともに、太陽が位置Su3から位置Su5に移動する間は減少する。従って、直射日光が強く光量の多い位置Su2から位置Su3において、調光部16の透過率が下がるように、光量の第1閾値Th1が、設定される。なお、実際にはSu1とSu3とでは光量の差が50倍程度あるが、図10では説明の便宜のために各太陽の位置Su1〜Su5における光量の差を実際よりも小さく示している。
また、位置Su1から位置Su5において、第1受光部20の受光する光の色は、太陽が位置Su1から位置Su5に移動する間に徐々に赤みを帯びる。従って、照度自体はそれほど強くないが入射角度が低いことから人の眼にわずらわしく感じやすい夕日Su4において、調光部16の透過率が下がるように、光量の第2閾値Th2及び色基準が設定される。
図11は、第1調光状態の調光部16の変形例を示す。主制御部54は、第1調光状態において、調光部16の第1領域62の透過率を異ならせてよい。例えば、主制御部54は、光量が予め定められた基準以上大きい場合に第1調光状態の第1領域62を図11(a)に示すように第2領域64よりも透過率が高いが無調光状態よりは透過率が低い半透過状態としてよく、また光量が基準未満の場合に第1領域62を図11(b)に示すように無調光状態と同じ透過状態としてよい。
一例として、主制御部54は、複数の受光センサからの信号に基づいて、図8表(a)、(b)又は(d)に該当すると判断した場合、調光部16を第1調光状態に制御する。ここで、主制御部54は、第1調光状態において、まぶしさをより低減するために第1領域62をより透過率が低い状態(例えば、図11(a)の半透過状態)にするように、調光部16の透過率を制御してよい。なお、主制御部54は、図8(a)及び(d)の場合に第1領域62を半透過状態に制御し、図8(b)の場合には半透過状態にしないように制御してもよく、これにより強い夕日が入射して夕日以外の景色が暗い状況等でユーザが周囲の状況を視認しにくくなることを避けることができる。
また、主制御部54は、複数の受光センサからの信号(例えば第1信号、第2信号又は第3信号、若しくはこれらの2以上の組み合わせ等)に基づいて、第1受光部20が受光した光が予め定められた色基準以上赤く、かつ、第1受光部20が受光した光が予め定められた照度基準Th1未満の明るさであると判断した場合(例えば、図8(b)の場合)に、第1調光状態において、第1領域62をより透過率が高い状態(例えば、図11(b)の透過状態)にするように、調光部16の透過率を制御してよい。
これにより、例えば、図10のSu3の太陽がある環境では太陽だけでなく周囲の風景もまぶしい可能性が高いので、光学装置110は、第1調光状態において第2領域64だけでなく第1領域62の透過率も多少減少させて、ユーザのまぶしさを低減することができる。一方で、図10のSu4の太陽がある環境下では、Su3の太陽がある環境と比較してより夕暮れに近い状態になるので、光学装置110は、第1調光状態において第1領域62の透過率を減少せず、ユーザに太陽以外の風景等を十分に観察できるようにすることができる。
図12は、第1調光状態の調光部16の別の変形例を示す。主制御部54は、第1調光状態において、調光部16の第1領域62の透過率を異ならせることに加えて/代えて、第2領域64の透過率を異ならせてよい。例えば、主制御部54は、光量が予め定められた基準以上大きい場合に第1調光状態の第2領域64を図12(a)に示すように透過率が低い状態としてよく、また光量が基準未満の場合に第2領域64を図12(b)に示すように透過状態ではないが比較的透過率が高い状態としてよい。
一例として、主制御部54は、第1調光状態において、図8(a)および/または(d)に相当する場合に第2領域64がより透過率が低い状態(図12(a))になり、図8(b)に相当する場合に第2領域64がより透過率が高い状態(図12(b))となるように調光部16の透過率を制御してよい。これにより、光学装置110は、光源のまぶしさに応じて第1調光状態における庇状の遮光領域の減光作用を調節することができる。
図13は、第2調光状態の調光部16の変形例を示す。主制御部54は、第2調光状態において、調光部16の透過率を複数のレベルに切り替えてよい。例えば、主制御部54は、第2調光状態において、光量に応じて調光部16の透過率を細分化した複数のレベルに制御してよい。
一例として、主制御部54は、第1信号及び第2信号等に基づいて第1受光部20が受光した光が図8(e)に該当すると判断する場合に、第1閾値Th1>第3閾値Th1.1>第2閾値Th2となる第3閾値Th1.1を設定し、受光した光量LAがTh2≦LA<Th1.1となるか、又はTh1.1≦LA<Th1となるかを判定する。主制御部54は、Th2≦LA<Th1.1を満たすと判定した場合は、図13(a)に示すように調光部16の透過率を比較的高い第1レベルにし、Th1.1≦LA<Th1を満たすと判定した場合は、図13(b)に示すように調光部16の透過率を比較的低い第2レベルにする。これにより、主制御部54は、第2調光状態においても、入射光の光量に応じて適切な調光部16の減光作用を適切な程度にすることができる。
更に、主制御部54は、第2調光状態において調光部16を複数の透過率のレベルで制御する際に、調光部16の透過率を一の閾値に基づいてあるレベルから別のレベルに切り替えた後は、透過率を再び別のレベルから元のレベルに戻すための閾値を、最初に用いた一の閾値によりも余裕を持たせてよい。
例えば、まず、主制御部54は、第2調光状態において、第1閾値Th1>第3閾値Th1.1>第2閾値Th2となる第3閾値Th1.1を設定する。そして、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が第3閾値Th1.1以上明るくなったと判断した場合、調光部16の透過率を第1レベルから第1レベルよりも透過率が低い第2レベルに切り替える。その後、主制御部54は、第2調光状態において、第3閾値Th1.1>第4閾値Th1.2>第2閾値Th2となる第3閾値Th1.1よりも小さい第4閾値Th1.2を設定し、第1受光部20が受光した光が第4閾値Th1.2より暗くなったと判断した場合、調光部16の透過率を第2レベルから第1レベルに切り替えてよい。
これにより、主制御部54は、第2調光状態で調光部16の透過率のレベルを一度切り替えた後は、光量がもとに戻っても透過率のレベルを容易に元に戻さないようにすることができ、光量の閾値付近で調光状態が次々に切り替わる現象を防ぐ。従って、光学装置110は、ユーザの視認性を向上させることができる。
図14は、液晶部材38に分割電極160等を介して印加される電圧のデューティ比と、透過率が安定化するまでの時間の関係を示す図である。図14に示す例は、液晶部材38をスーパーツイストネマティックモードとした場合である。図14に示すように、調光部16の透過率は、電圧が高電圧から低電圧に切り替えられると、略最大値となって飽和する。
図14に示すように、調光部16の透過率が、最小値から最大値に変化する場合、高電圧から低電圧に切り替えてから透過率が安定化するまでに必要な時間は、約7msである。ここでいう、透過率の安定化に要する時間とは、調光部16の透過率が最小値の状態から、電圧を切り替えて最大値になるまでの時間である。尚、60Hzの1周期は16.67msなので、1周期の間で低電圧が印加されている時間は8.33msである。透過率が最小値から最大値に変化する場合、液晶部材38の液晶分子は、直線状に配列した状態から、入射側から出射側に沿って捩れた状態に戻る。
一方、調光部16の透過率が、最大値から最小値に変化する場合、低電圧から高電圧に切り替えてから透過率が安定化するまでに必要な時間は、約300μsである。従って、透過率が大きくなって安定化するまでの時間は、透過率が小さくなって安定化するまでの時間よりも長い。尚、透過率が最大値から最小値に変化する場合、液晶部材38の液晶分子は、入射側から出射側に沿って捩れた状態から、直線状に配列した状態へと変化する。
主制御部54は、第1受光部20から光量の増加を示す信号を受け取ってから当該信号を処理して、調光部16を制御する信号を出力するのに若干処理時間を必要とする。しかし、主制御部54は、第1信号及び/又は第2信号等に基づいて第1受光部20の光量の増加を検出してから0.2秒未満で調光部16を第1調光状態又は第2調光状態に制御し、調光部16の透過率を低下させる。調光部16の調光状態の変化時間の詳細については後述する。これにより、光学装置110は、人がまぶしい光を不快に感じる時間が経過する前に、適切な調光をユーザに提供することができる。
尚、ツイストネマティックモードでは、調光部16の透過率が、最小値から最大値に変化する場合、高電圧から低電圧に切り替えてから透過率が安定化するまでに必要な時間は、約5msである。但し、ツイストネマティックモードでは、高電圧から低電圧に切り替えてから透過率が変化し始めるのに、1msを要する。ツイストネマティックモードでは、調光部16の透過率が、最大値から最小値に変化する場合、低電圧から高電圧に切り替えてから透過率が安定化するまでに必要な時間は、約300μsである。
主制御部54は、図14の下部に示すように、例えば、600Hzで高電圧を印加する。図14に示すように、主制御部54は、調光部16の透過率が最小値の状態から電圧を切り替えて最大値へと変化する場合に安定化に要する時間と、調光部16の透過率が最大値の状態から電圧を切り替えて最小値へと変化する場合に安定化に要する時間との和よりも短い周期で、高電圧と低電圧とを切り替えている。より詳細には、主制御部54は、調光部16の透過率が最小値の状態から、電圧を切り替えて最大値へと変化する場合に安定化に要する時間より短い周期で、高電圧と低電圧とを切り替えている。ここで、図14の下部に示すように、一の周期において、複数のデューティ比が存在する。上述したようにこの複数のデューティ比は、調光部16の透過率と関係がある。この関係の具体例について説明する。
図15は、デューティ比と、調光部16の透過率との関係を示すグラフである。図15の下のグラフは、調光部16に印加される電圧の波形を示す。図15の下のグラフにおいて、各電圧波形VL1から電圧波形VL5の周期は同じである。電圧波形VL1から電圧波形VL5のそれぞれにおいて、高電圧の値は互いに同じであり、低電圧の値は互いに同じである。電圧波形VL1から電圧波形VL5の順で、高電圧のデューティ比が徐々に小さくなる。図15の上のグラフにおける透過率波形WA1から透過率波形WA5は、それぞれ電圧波形VL1から電圧波形VL5が印加された調光部16の前方透過率のグラフである。
図15に示すように、調光部16の透過率は、印加される電圧の周期が液晶部材38の安定化するまでの時間よりも短いので、最大値と最小値との間の一部の領域で振幅する。更に、高電圧のデューティ比は、透過率と関係がある。具体的には、電圧波形VL1等のようにデューティ比が高くなると、高電圧の時間が長くなる。従って、透過率が高い時間が短くなるので、透過率を時間で積算した積算透過率は低くなる。一方、電圧波形VL5のようにデューティ比が低くなると、低電圧の時間が長くなる。従って、透過率が高い時間が長くなるので、積算透過率は高くなる。尚、本実施形態では、主制御部54は、分割電極に対して電圧波形VL1〜VL5のいずかを与え、又は、電圧を印加しないことにより、調光部16の各領域の透過率を切り替え、これにより調光部16の各調光状態を実現する。
光学装置110では、主制御部54は、高電圧と低電圧とを液晶部材38が安定化する時間よりも短い周期で切り替えて、調光部16に印加する。これにより、光学装置110は、調光部16の透過率を最大値と最小値との間の一部の領域で振幅させることができる。これにより、ユーザは、光量が一定の値で振幅した状態で外部を見ることになるので、光学装置110は、フリッカを緩和することができる。
また、光学装置110は、主制御部54が、高電圧と低電圧とを信号機等の点滅周期よりも極めて短い周期で切り替えている。これにより、光学装置110は、ユーザの目に光がほとんど達しない時間が連続することを抑制できる。この結果、光学装置110は、フリッカをより抑制することができる。
図16は、光学装置110による処理のフローチャートである。
まず、主制御部54は、S10において、近接センサ18がユーザを検出したか否かを判定する。主制御部54は、ユーザを検出できない場合(S10:No)、近接センサ18がユーザを検出したと判定するまで待機状態となる。主制御部54は、ユーザが眼鏡型の光学装置110を装着したこと等に応じてユーザを検出した場合(S10:Yes)、近接センサ18はユーザを検出したことを示す存在信号を主制御部54へと出力する。
次に、S12において、主制御部54は、光量を検出の要否を判定する検出時間tをリセットして「0」にする。
次に、S14において、主制御部54は、検出時間tが光量を検出する検出周期P0以上となったか否かを判定する。主制御部54は、検出時間tが検出周期P0以上となるまで、待機状態となる(S14:No)。主制御部54は、検出時間tが検出周期P0以上となったと判定すると(S14:Yes)、処理をS16に進める。
S16において、主制御部54は、第1受光部20の複数の受光センサから受光した光量に関する情報を取得する。
次に、S18において、主制御部54は、取得した光量に関する情報に基づいて、第1受光部20によって検出された光量が第2閾値Th2以上か否かを判定する。例えば、主制御部54は、複数の受光センサが受光した光量の平均が第2閾値Th2以上か否かを判定する。一例として、主制御部54は、第1受光センサ202からの第1信号、第2受光センサ204からの第2信号、及び、第3受光センサ206からの第3信号(又はその一部、例えば第1信号と第2信号)の信号強度の平均値に対応する光量が、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2以上明るいか、又は第2閾値Th2未満かを判定する。ここで、第1〜第3信号がデジタル信号である場合は、主制御部54は、複数の受光センサからの信号の信号強度に代えてデジタル信号が示す光量の値を用いてよい。
主制御部54は、光量が第2閾値Th2未満と判定すると(S18:No)処理をS20に進め、光量が第2閾値Th2以上と判定すると(S18:Yes)処理をS22に進める。
S20において、主制御部54は、調光部16を無調光状態に制御し、処理をS30に進める。
S22において、主制御部54は、取得した光量に関する情報に基づいて、S18と同様に第1受光部20によって検出された光量が第2閾値Th2よりも大きい第1閾値Th1以上か否かを判定する。例えば、主制御部54は、複数の受光センサが受光した光量の平均等が第1閾値Th1以上か否かを判定する。主制御部54は、光量が第1閾値Th1未満と判定すると(S22:No)処理をS24に進め、光量が第1閾値Th1以上と判定すると(S22:Yes)処理をS26に進める。
S24において、主制御部54は、取得した光量に関する情報に基づいて、第1受光部20に受光された光の赤さが予め定められた基準以上か否かを判定する。例えば、主制御部54は、赤色を受光する第1受光センサ202からの第1信号の強度の、他の受光センサからの信号の強度(例えば、第2信号及び第3信号の一方の強度、又は、これらの強度の総和)に対する割合を色情報とし、当該割合が予め定められた値以上であるかを判定する。すなわち、主制御部54は、複数の受光センサからのRGB信号中のR信号の比率が一定以上大きいときに入射光が赤いと判定する。
これに代えて、例えば、主制御部54は、RGBカラーセンサである複数の受光センサからの信号の強度に基づいて、第1受光部20が受光した光の色をxy色度図等の色空間上の座標に変換し、受光した光が色空間上で赤色を示す空間(一例として、xy色度図上で(x,y)=(0.52,0.41)から予め定められた距離内の空間)に含まれる場合に予め定められた基準以上赤いと判定してもよい。S24において、主制御部54は、光の赤さが予め定められた基準以上と判定した場合、処理をS26に進め、そうでない場合処理をS28に進める。
S26において、主制御部54は、調光部16を第1調光状態に制御し、処理をS30に進める。例えば、主制御部54は、図6、図11及び図12等で説明した手法で調光部16を第1調光状態に制御してよい。
S28において、主制御部54は、調光部16を第2調光状態に制御し、処理をS30に進める。例えば、主制御部54は、図7及び図13等で説明した手法で調光部16を第2調光状態に制御してよい。
S30において、主制御部54は、近接センサ18から存在信号を取得して、近接センサ18がユーザを検出しているか否かを判定する。例えば、主制御部54は、近接センサ18から存在信号を検出している場合は処理をS12に戻し、近接センサ18から存在信号を検出していない場合は処理を終了する。
上述したように、光学装置110によると、主制御部54が、第1受光部20が受光した光の光量及び色に応じて、調光部16の調光状態を制御する。これにより、光学装置110は、異なる外光環境に対応して適切な調光をユーザに提供することができる。特に、光学装置110では、主制御部54は、光量が非常に大きい場合又は光量が一定以上大きくかつ赤い光が入射する場合に、太陽光が直接ユーザの眼に入射する可能性が高いと判断して、調光部16を第1調光状態にする。これにより、光学装置110は、例えば、日中の太陽及び夕暮れ時の太陽に対して適切に遮光することができる。
図17、図18、図19及び図20は、光学装置110が複数の受光部を有する変形例を示す。本変形例において、光学装置110は、図17に示すように第1受光部20a、第2受光部20b、及び、マスク280を備える。光学装置110は、更に3個目以降の受光部を備えてもよい。
第1受光部20aは、既に説明した第1受光部20と同様であってよい。第2受光部20bは、第1受光部20aと異なる方向からの光を受光し、受光した光量に応じた第4信号を少なくとも出力する。例えば、第2受光部20bは、可視光全体の波長域を受光する単一の受光センサを備え、当該単一の受光センサが受光した光量に応じた第4信号を出力してもよい。これに代えて、第2受光部20bは、図1で説明した第1受光部20と同様に、複数の受光センサからRGBの3色の受光量に応じた第4〜第6信号を出力するカラーセンサであってもよい。第2受光部20bがカラーセンサである場合、第1受光部20aは、カラーセンサであってもなくてもよい。
マスク280は、開口部282を有し、第1受光部20a及び第2受光部20bの入射側に設けられる。マスク280は、枠本体部26の前面の中央部に配置されてよい。マスク280は、外部からの光のうち水平方向の光を開口部282から通過させ、水平方向以外の光を遮蔽する。マスク280は、例えば、枠形状の部材である。これに代えてマスク280は、液晶素子により実現されてもよい。
図18に示すように、水平方向(水平方向から予め定められた角度分上方にずれた方向を含んでよい)から入射した光は、マスク280を通過して、第1受光部20a及び第2受光部20bの両方に入射する。また図19に示すように、水平に対して斜め上方向から入射した光の一部はマスク280で遮蔽され、光の一部はマスク280を通過して第2受光部20bに入射する。これにより、図19に示す状態では、第2受光部20bのみに強い光が入射する。
このように、入射光の入射角により、同一の光源について第1受光部20a及び第2受光部20bで受光する光量が異なる。本変形例において、主制御部54は、第1信号、第2信号、第3信号、及び第4信号等に基づき入射光の角度を推定し、入射した光の光量、色、及び、角度に応じて調光部16の透過率を制御する。
図20は、本変形例の主制御部54による光量及び色に基づく制御の一例を示す。主制御部54は、第1受光部20a及び第2受光部20bから入射した光の光量を示す信号を受信して、入射光の光量、色及び角度を判断し、これらの光量等が予め定められた基準を満たすか否かを判断し、判断結果に基づき調光部16を無調光状態と第1調光状態と第2調光状態とで切り換える。
例えば、まず、主制御部54は、第1受光部20aの1又は複数の受光センサから受信した信号強度の平均等から、第1受光部20aが受光した光の光量を算出して、当該光量に基づいて第1受光部20aが受光した光が予め定められた照度基準以上明るいか否かを判断する。一例として、主制御部54は、第1受光部20aが受光した光が、第1閾値Th1以上明るいか、第1受光部20aが受光した光が第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2以上明るいか、又は第1受光部20aが受光した光の明るさが第2閾値Th2未満かを判定する。同様に、主制御部54は、第2受光部20bの1又は複数の受光センサから受信した信号強度の平均等から、第2受光部20bが受光した光の光量を算出して、当該光量に基づいて第2受光部20bが受光した光が予め定められた照度基準以上明るいか否かを判断する。
次に、主制御部54は、第1受光部20a及び/又は第2受光部20bの1又は複数の受光センサから受信した信号強度の割合等から、第1受光部20a等が受光した光の色情報を算出する。例えば、主制御部54は、第1受光部20a及び第2受光部20bから同色の受光センサの信号強度を取得し、これらを平均することで受光部間で平均化されたRBGごとの信号強度を算出し、平均化されたRBGごとの信号強度から色情報を算出してよい。また、例えば、主制御部54は、第1受光部20a及び第2受光部20bからの信号のうち受光した光量が大きい一方から光量に関する信号を受信して、色情報を算出してよい。これにより、例えば図19に示すように斜めから光が入射して、実質的に第1受光部20a及び第2受光部20bの一方のみに光が入射する場合でも、入射した光の色をより正確に算出することができる。主制御部54は、算出した色情報に基づいて第1受光部20a等が受光した光が予め定められた色基準以上赤いか否かを判断する。
一例として、主制御部54は、第1受光部20aが受光した光が第1閾値Th1以上明るく、第2受光部20bが受光した光が第1閾値Th1以上明るいと判断した場合(図20(a))に、調光部16を第1調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、水平方向(または、水平方向から予め定められた角度分上方にずれた方向を含む範囲の方向)に非常に強い光が入射したことに応じて、調光部16を第1調光状態にすることができる。すなわち、このような場合に、主制御部54は、太陽光が直接ユーザの眼に入射していると判断して、調光部16のうち太陽光が通過する可能性が高い端部領域に庇状の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
また、主制御部54は、第1受光部20aが受光した光が第1閾値Th1以上明るく、第2受光部20bが受光した光の明るさが第1閾値Th1未満と判断した場合(図20(d)及び(g))、並びに、第2受光部20bが受光した光が第1閾値Th1以上明るく、第1受光部20aが受光した光の明るさが第1閾値Th1未満と判断した場合(図20(b)及び(c))に、調光部16を第2調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、水平に対して斜め方向から非常に強い光が入射したことに応じて、調光部16を第2調光状態にすることができる。すなわち、このような場合には、太陽光が直接ユーザの眼には入らないが、建物の表面及び調光部16表面等で乱反射した光がユーザの眼に入りまぶしい状態であると主制御部54が判断して、調光部16全体に薄い遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。これに代えて、主制御部54は、第1受光部20aの受光した光が第1閾値Th1以上の場合(図20(a)、(d)及び(g))の場合には、第2受光部20bの受光量に関わらず、調光部16を第1調光状態としてもよい。
また、主制御部54は、第1受光部20aが受光した光の明るさが第1閾値Th1未満第2閾値Th2以上で、第2受光部20bが受光した光の明るさが第1閾値Th1未満第2閾値Th2以上と判断した場合(図20(e))、受光した光の色に応じて、調光部16を第1調光状態又は第2調光状態に制御する。主制御部54は、受光した光の色が予め定められた基準以上赤いと判断した場合に調光部16を第1調光状態に制御し、受光した光の色が予め定められた基準以上赤くないと判断した場合に調光部16を第2調光状態に制御する。
これにより、主制御部54は、第1受光部20a等に受光した光が一定以上明るく、かつ赤い場合に、夕日が入射していると判断し、調光部16に庇状の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。一方で、主制御部54は、第1受光部20に受光した光が一定以上明るく、かつ赤くない場合に、やや強い環境光が入射していると判断し、調光部16全体に薄めの遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
主制御部54は、これ以外の場合(図20(f)、(h)及び(i))の場合、調光部16を無調光状態としてよいが、これに代えて第2調光状態としてもよい。
図21及び図22は、調光部16が3個の領域を有する光学装置110の変形例を示す。本変形例において、図示するように、光学装置110は、それぞれが独立に透過率を変更可能な第1領域62、第2領域64、及び、第3領域66を有する一対の調光部16を備える。例えば、調光部16は、図示するように調光部16の最下端に位置し、調光部16の中央部を含む第1領域62、第1領域62の上部に位置する第2領域64と、調光部16の上端部かつ第2領域64の上部に設けられた第3領域66とを有する。
図22は、本変形例における調光部16の第1調光状態の例を示す。本変形例において、主制御部54は、第1調光状態において、光量及び色等に応じて、調光部16を更に複数の異なる調光状態に制御してよい。例えば、主制御部54は、第1調光状態の中で光量が比較的多い条件下で、図22(a)のように第3領域66のみを比較的透過率が低い半透過状態又は不透過状態に制御してよい。また、主制御部54は、第1調光状態の中で光量が比較的少ない条件下で、図22(b)のように第2領域64に加えて第3領域66を図22(a)の第3領域66に比べて透過率が高い半透過状態に制御してよい。
図23、図24、及び図25は、光学装置110が単一の受光部で光の入射方向を推定する変形例を示す。図23に示すように、本変形例で光学装置110は、第1受光部20の前面に複数の分割透過領域272a、272b、及び、272cを備える。複数の分割透過領域272a、272b、及び、272cは、例えば、枠本体部26の前面の中央部に配置されてよく、主制御部54によりそれぞれが独立して透過/遮光状態を制御可能な液晶素子であってよい。主制御部54は、光量を検出する場合、例えば、複数の分割透過領域272a〜cの少なくとも1個を開状態として、残りを閉状態としてよい。
図24は、複数の分割透過領域の動作の一例を示す。主制御部54は、複数の分割透過領域272a〜cのうちの開状態とするものを時分割で切り替える。例えば、主制御部54は、図22に示すように、まず複数の分割透過領域272a〜cのうち分割透過領域272aのみを開状態にし、残りを閉状態とする。これにより、第1受光部20は、水平方向に対し大きい角度から入射した光のみを受光する。次に主制御部54は、複数の分割透過領域272a〜cのうち分割透過領域272bのみを開状態にし、残りを閉状態とする。これにより、第1受光部20は、水平方向に対し中程度の角度から入射した光を受光する。次に、主制御部54は、複数の分割透過領域272a〜cのうち分割透過領域272cのみを開状態にし、残りを閉状態とする。これにより、第1受光部20は、ほぼ水平方向から入射した光を受光する。
主制御部54は、このように複数の分割透過領域272a〜cのいずれかを順次開状態にしつつ、第1受光部20から光量に関する信号を受信する。主制御部54は、光量に関する信号から光量を特定して、最も大きい光量を検出したときの開状態の分割透過領域272a〜cを特定する。これにより、主制御部54は、外部からの入射光の入射角を粗く推定する。例えば、主制御部54は、分割透過領域272aが開状態での光量が最も大きいと判定すると、前方から上方に大きく傾斜した角度(例えば、45°以上)を光の入射角と特定する。主制御部54は、第1受光部20の受光した光の光量、色及び入射角に応じて、調光部16の調光状態を切り替えるように、調光部16に電圧を印加する。
図25は、本変形例における、主制御部54による光量、色及び入射角に基づく制御の一例を示す。例えば、主制御部54は、図21及び図22に係る光学装置において図25の制御を実行してよい。主制御部54は、第1受光部20から入射した光の光量の信号を受信し、受信した信号から入射光の光量、色及び入射角を特定し、これらが予め定められた基準を満たすか否かを判断し、判断結果に基づき調光部16を無調光状態と第1調光状態と第2調光状態とで切り換える。
例えば、主制御部54は、図8で説明した手法と同様の方法で第1受光部20が受光した光が予め定められた照度基準以上明るいか否かを判断し、受光した光が予め定められた色基準以上赤いか否かを判断する。
次に、主制御部54は、第1受光部20が受光した光の入射角が低角度、中角度、高角度のいずれであるかを判断する。例えば、主制御部54は、分割透過領域272aが開状態での光量が最も大きいと判定すると入射角が高角度であると判断し、分割透過領域272bが開状態での光量が最も大きいと判定すると入射角が中角度であると判断し、分割透過領域272cが開状態での光量が最も大きいと判定すると入射角が低角度であると判断する。
そして、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が低角度で第1閾値Th1以上明るいと判断した場合(図25(a))、調光部16を第1調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、水平方向に近い低角度方向から非常に強い光が入射したことに応じて、調光部16を第1調光状態にすることができる。例えば、主制御部54は、図21及び図22において第2領域64及び第3領域66を不透過状態としてよい。すなわち、このような場合に、主制御部54は、太陽光が直接ユーザの眼に入射していると判断して、調光部16のうち太陽光が通過する可能性が高い端部の第3領域66だけでなく第2領域64に庇状の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを最大限低減することができる。
また、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が中角度で第1閾値Th1以上明るいと判断した場合(図25(d))、調光部16を第1調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、水平方向に比較的近い中角度方向から非常に強い光が入射したことに応じて、調光部16を第1調光状態にすることができる。ここで、例えば、主制御部54は、図21及び図22において第3領域66のみを不透過状態としてよい。すなわち、この場合、低角度の図25(a)の場合と異なり、第2領域64を透過状態(又は半透過状態)とする。これにより、図25(a)の場合と比べて高角度からの明るい光を遮光しつつ中角度以下の景色等をユーザに視認させることができる。
また、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が高角度であり、かつ第1閾値Th1以上明るいと判断した場合(図25(g))に、調光部16を第2調光状態に制御する。これにより、主制御部54は、斜め方向に一定以上の強い光が入射したことに応じて、調光部16を第2調光状態にすることができる。すなわち、このような場合に、主制御部54は、太陽光が直接ユーザの眼には入らないが環境が明るすぎると判断して、調光部16全体に薄い遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
また、主制御部54は、第1受光部20が受光した光が低角度であり、かつ第1閾値Th1未満第2閾値Th2以上明るいと判断した場合(図25(b))、又は、第1受光部20が受光した光が中角度であり、かつ第1閾値Th1未満第2閾値Th2以上明るいと判断した場合(図25(e))に、受光した光の色に応じて、調光部16を第1調光状態又は第2調光状態に制御する。主制御部54は、受光した光の色が予め定められた基準以上赤いと判断した場合に調光部16を第1調光状態に制御し、受光した光の色が予め定められた基準以上赤くないと判断した場合に調光部16を第2調光状態に制御する。
これにより、主制御部54は、第1受光部20に受光した光が一定以上明るく、かつ赤い場合に、夕日が入射していると判断し、調光部16の第2領域64に庇状の遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。一方で、主制御部54は、第1受光部20に受光した光が一定以上明るく、かつ赤くない場合に、やや強い環境光が入射していると判断し、調光部16全体に薄めの遮光領域を形成して、ユーザのまぶしさを低減することができる。
ここで、図25(b)において受光した光が赤く第1調光状態とする場合、主制御部54は、図25(a)の制御と同様に、図21及び図22において調光部16の第2領域64及び第3領域66を不透過状態としてよい。また、図25(e)において受光した光が赤く第1調光状態とする場合、主制御部54は、図25(d)の制御と同様に、図21及び図22において調光部16の第3領域66のみを不透過状態とし、第2領域64を透過状態(又は半透過状態)としてよい。
主制御部54は、これ以外の場合(図25(c)、(f)、(h)及び(i))の場合、調光部16を無調光状態としてよいが、これに代えて第2調光状態としてもよい。
図26及び図27は、光学装置110による処理の変形例のフローチャートを示す。本変形例において、調光部16が第1領域62及び第2領域64を有し、主制御部54は、複数の調光状態を切り替える速さを制御する。
まず、主制御部54は、図26に示すS110において、近接センサ18がユーザを検出したか否かを判定する。主制御部54は、ユーザを検出できない場合(S110:No)、近接センサ18がユーザを検出したと判定するまで待機状態となる。主制御部54は、ユーザが眼鏡型の光学装置110を装着したこと等に応じてユーザを検出した場合(S110:Yes)、近接センサ18はユーザを検出したことを示す存在信号を主制御部54へと出力する。
次に、S112において、主制御部54は、光量を検出の要否を判定する検出時間t及び駆動時間t1をリセットして「0」にする。
次に、S114において、主制御部54は、検出時間tが光量を検出する検出周期P0以上となったか否かを判定する。主制御部54は、検出時間tが検出周期P0以上となるまで、待機状態となる(S114:No)。主制御部54は、検出時間tが検出周期P0以上となったと判定すると(S114:Yes)、処理をS116に進める。
S116において、主制御部54は、第1受光部20等から受光した光量に関する情報を取得する。主制御部54は、取得した光量に関する情報から光量を算出して、次式に基づいて光量の加重移動平均である平均化光量ALを算出する。尚、平均化光量は単純移動平均、または、指数移動平均によって求めてもよい。また、主制御部54は、第1受光部20等からの光量に関する情報から受光した光の色、及び、必要に応じて受光した光の入射角を取得する。
次に、S118において、主制御部54は、平均化光量等に基づいて、調光部16の調光状態を決定する。例えば、主制御部54は、平均化光量ALを光量LAとして、図8、図20又は図25で説明した方法及び図16のS18〜S28の処理に基づいて、調光部16の調光状態を決定してよい。
次に、S120において、主制御部54は、記憶部56に格納された目標透過率テーブルに従って、決定した調光状態に応じた調光部16の目標透過率TTrを取得する。例えば、主制御部54は、調光状態が第1調光状態に決定されたことに応じて第1領域62の目標透過率TTr1−1及び第2領域64の目標透過率TTr1−2を取得し、調光状態が第2調光状態に決定されたことに応じて第1領域62及び第2領域64の目標透過率TTr2を取得する。図11から図13に説明した形態を実施する場合、主制御部54は、各調光状態において平均化光量ごとに更に細分化された目標透過率を取得してもよい。
次に、S122において、主制御部54は、調光部16の各領域に対し、目標透過率TTr及び現在透過率PTrに基づいて、単位時間当たりの透過率変化量ΔTrを算出する(S122)。透過率変化量ΔTrは、次式で算出される。尚、qは、予め定められた設定数である。qが大きいほど、透過率変化量ΔTrが小さくなり、透過率の変化を滑らかにすることができる。これにより、主制御部54は、例えば、第1領域62に対する透過率変化量ΔTr1及び第2領域64に対する透過率変化量ΔTr2を算出する。主制御部54は、現在、印加している電圧のデューティ比から現在透過率PTrを特定してよい。
ΔTr=(TTr−PTr)/q
主制御部54は、変更対象の調光状態ごとに異なる値のqを用いてよい。例えば、主制御部54は、第1調光状態に変更する場合はqの値を小さくし(例えばq=1)とし、第2調光状態に変更する場合はqの値を大きくし(例えばq=10)としてよい。
次に、S124において、主制御部54は、検出時間tを「0」に設定する。
次に、図27に示すS126において、主制御部54は、駆動時間t1が調光部16を駆動する周期である駆動周期P1以上となったか否かを判定する。主制御部54は、駆動時間t1が駆動周期P1以上となるまで、待機状態となる(S126:No)。主制御部54は、駆動時間t1が駆動周期P1以上となったと判定すると(S126:Yes)、処理をS128に進める。駆動周期P1は、検出周期P0より短くてよい。
S128において、主制御部54は、調光部16の各領域について、目標透過率TTrと現在の現在透過率PTrが等しいか否かを判定して、透過率の切り替えの要否を判定する。調光部16の全領域において目標透過率TTrと現在の現在透過率PTrが等しい(又は、両者の差が予め定められた閾値未満である)場合、主制御部54は、処理をS136に進め、そうでない場合、処理をS130に進める。
S130において、主制御部54は、調光部16の複数の領域のうち、目標透過率TTrと現在の現在透過率PTrが等しくないと判断された領域について、現在透過率PTrと透過率変化量ΔTrとの和を算出する。
次に、S132において、主制御部54は、現在透過率PTrと透過率変化量ΔTrとの和が算出された調光部16の領域に対して、透過率が現在透過率PTrと透過率変化量ΔTrとの和となるように、電圧のデューティ比を変更して、透過率を切り替える。これにより、主制御部54は、調光部16の各領域に対する調光状態を制御する。
次にS134において、主制御部54は、駆動時間t1を「0」に設定する。
次にS136において、主制御部54は、近接センサ18から存在信号を取得して、近接センサ18がユーザを検出しているか否かを判定する。例えば、主制御部54は、近接センサ18から存在信号を検出している場合は処理をS114に戻し(図26及び27のA)、近接センサ18から存在信号を検出していない場合は処理を終了する。
ここで、図27のS130及びS132の処理にあたり、主制御部54は、第2調光状態において、第1信号及び第2信号等により示される受光した光量の大きさの変化速度に基づいて、調光部16の透過率の変化速度を制御してよい。例えば、主制御部54は、第1受光部20等から受光した現在の光量が、S116において算出した平均化光量ALに対して予め定められた基準以上解離した場合、S122の処理においてΔTrを算出する際のqの値を予め定められた値又は解離度に応じた値減じてよい。このように、光学装置110は、外光の変化の速さに応じて調光部16の透過率を変化させるので、例えば室内から野外に移動した場合等に調光部16が速やかに外光を減光させてユーザにまぶしさを感じさせることがなく、また、ゆっくり明るさが変わる場合にはゆっくり遮光度合も変化させることで、ユーザに対して自然な調光を提供することができる。
図28及び図29は、光学装置110による無調光状態から第1調光状態及び第2調光状態への変化の例を示す。主制御部54は、調光部16を無調光状態から第1調光状態へ変化させる場合と、無調光状態から第2調光状態へと変化させる場合とで、変化速度を異ならせてもよい。例えば、図28に示すように、主制御部54は、無調光状態から第1調光状態への変化を短い時間(例えば、0.2秒)で完了してよい。また、例えば、図29に示すように、主制御部54は、無調光状態から第2調光状態への変化を比較的長い時間(例えば、1.5秒)で完了してよい。
すなわち、主制御部54は、第1調光状態に切り替える時間よりも長い時間をかけて調光部を第2調光状態に切り替える。第1調光状態に切り替える場面では強烈な外光が直接眼に入射し迅速な遮光が望まれる一方で、第2調光状態に切り替える場面では外光の強度が一定程度に収まるので迅速な遮光を行うよりもゆっくり調光状態を切り替えた方がユーザにとってわずらわしくない。本変形例の光学装置110によると、状況に応じてユーザに心地よい調光を提供することができる。
図28及び図30に示すように、主制御部54は、調光部16を無調光状態から第1調光状態へ変化させる場合と、第1調光状態から無調光状態へと変化させる場合とで、変化速度を異ならせてもよい。例えば、図30に示すように、主制御部54は、第1調光状態から無調光状態へ変化させる時間(例えば、1.5秒)を無調光状態から第1調光状態へ変化させる時間(例えば、0.2秒)より長くしてよい。第1調光状態に切り替える場面では強烈な外光が直接眼に入射し迅速な遮光が望まれる一方で、第1調光状態から無調光状態に切り替える場面では外光が弱いので迅速な遮光を行うよりもゆっくり調光状態を切り替えた方がユーザにとってわずらわしくない。本変形例の光学装置110によると、状況に応じてユーザに心地よい調光を提供することができる。主制御部54は、調光部16を第1調光状態と第2調光状態との間で変化させる場合にも、同様に変化時間に差を設けてよい。
また、光学装置110は、調光状態間の変化速度を異ならせることに加えて/代わりに、調光状態に遷移するための光量の測定時間/回数を異ならせてよい。例えば、主制御部54は、第1信号及び第2信号等を含む光量についての信号を順次取得し、第1調光状態に切り替えるために参照する第1信号及び第2信号等の取得回数よりも、第2調光状態に切り替えるために参照する第1信号及び第2信号の取得回数を多くしてよい。
具体的には、図26のS118において、調光状態を決定する場合、主制御部54は、S118において平均化光量ALを照度基準と一度のみ比較して調光部16の調光状態を決定することに代えて、S114〜S118の処理を繰り返して(すなわち、S118の後に、検出時間t=0とし、処理をS114に戻す)、平均化光量ALを照度基準と複数回比較した結果により調光状態を決定する。ここで、主制御部54は、繰り返しの中で、予め定められた第1の回数(例えば、2回)連続して調光状態を第1調光状態にすべきと判断したときに調光状態を第1調光状態にすると決定して処理をS120に進め、第1の回数よりも大きい第2の回数(例えば、4回)連続して調光状態を第2調光状態にすべきと判断したときに調光状態を第2調光状態にすると決定して処理をS120に進めてよい。
図31は、透過率、平均化光量、検出された光量の時間変化を測定した実験結果のグラフである。図31に示すグラフは、次の条件の下で図26及び図27に係る処理で調光部16の制御(例えば、無調光状態と第1又は第2調光状態との切り替え)が実行された結果である。図31に示す横軸の1目盛は、平均化光量を算出する周期の1/2である。
(1)検出された光量の最大値:14000ルクス、
(2)検出された光量の最小値:3000ルクス、
(3)光量の変化:11000ルクス/200ms、
(4)調光部16の透過率の最大値:40%、
(5)調光部16の透過率の最小値:9%、
(6)第1受光部20の検出周期:50ms、
(7)平均化光量の検出回数m:10、
(8)透過率変化量ΔTr算出時のq:30。
図31に示す光量(=照度)の最大値14000ルクスは概ね日中の日向の光量に相当し、光量の最小値3000ルクスは概ね日中の日陰の光量に相当する。光量の変化を算出する単位時間200msは、人の目の瞬きと同程度の時間である。このような、光量の環境変化に対して、調光部16の透過率は、光量の変化が開始した100ms以内から変化を始め、約1s後には、(現在透過率PTr+ΔTr)に近い透過率に到達する。その後、光学装置110は、ゆっくりと調光部16の透過率を変化させていく。この実験では、光学装置110は、調光部16の透過率変化をゆっくり変化させることにより、光量の変化に対して透過率を急峻に変化させるよりも、ユーザの違和感を低減できる。また、光学装置110は、急な光量変化に対する眩しさ除去の機能も充分に作用することができる。
ここで、人の眼に対しスポットライトを当てて瞳孔の変化を観測した実験の結果を説明する。実験では、軽度屈折異常以外の眼科的疾患がない視力又は矯正視力が良好な(前例遠方視力1.2以上、近方視力1.0以上)青年30人を被験者とした。スポットライト(タングステンランプ:Pro−light,Lowel社製)を点灯した場合の環境照度は視点位置近傍において20000lx(太陽光を想定)とし、スポットライトを点灯しない環境照度は視点位置近傍において300lxとした。照度は照度計T10(Minolta,Co,Ltd.,)を用いて計測した。スポットライトを計測開始後1秒間照射を継続するように設定し、遮光レンズ(調光部16に相当)をスポットライトが照射開始してから0.05秒後、0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、0.5秒後に、スポットライトから被験者の両眼への光を遮光するように設定した。遮光レンズの透過率を1%(第1調光状態に相当)に設定した。対象者の右眼を計測及び解析対象とし、各計測の間には15分の休憩時間を設定した。瞳孔反応計測器として、メディテスターVOG−L(パナソニック社製)を用い、40万画素の赤外線CCDカメラにより眼球の鮮明な画像を撮影し、照射開始前後の被験者の瞳孔反応量(縮瞳量)を計測した。瞳孔反応計測器の前部に遮光レンズを設置した。
表1は、実験結果を示す。表の「対光反応前瞳孔径」はスポットライト照射前の被験者の瞳孔径の平均を示し、「対光反応(最小縮小)瞳孔径」はスポットライト照射後の被験者の瞳孔径の最小値を示し、「瞳孔径反応量」は「対光反応前瞳孔径」と「対光反応(最小縮小)瞳孔径」との差分を示す。表に示すように、遮光開始時間が0.05秒及び0.1秒の場合には、瞳孔径反応量が1.2〜1.3mm程度となっており瞳孔の変化は比較的小さい。従って、被験者がまぶしさを感じる程度は比較的小さいと考えられる。一方で、遮光開始時間が0.2秒以上の場合には、瞳孔径反応量が1.9〜2.1mm程度と大きくなる。従って、被験者がまぶしさを感じる程度は増大したと考えられる。なお、被験者の自覚においても、0.05秒及び0.1秒ではスポットライトのまぶしさが0.2秒以上の場合と比較して軽減されていることが確認された。実験結果から調光部16による無調光状態から第1/第2調光状態への変化(特に第1調光状態への変化)は0.2秒未満(例えば、0.05〜0.1秒の範囲)で実行することが好ましいことが示される。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。