JP5947392B2 - 膵嚢胞の鑑別 - Google Patents

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Description

本発明は、National Institutes of Healthより授与されたCA 62924、CA 57345、およびCA 43460の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明について一定の権利を有する。
発明の技術分野
本発明は癌管理の分野に関する。特に、予後および診断の分野に関する。
発明の背景
標準的な医療行為において腹部イメージングの使用が増加した結果、膵嚢胞が同定される頻度が高まっている。同時に、これらの嚢胞の管理が重要な臨床上の問題となっている(1,2)。これらの病変は、剖検で調べられた患者の20%超において(3)、MRIで検査された患者の19.6%において(4〜6)、およびCTで検査された患者の2.6%において見出される(7,8)。非常に多くの場合、嚢胞は、膵臓病変とは無関係の症状のためにイメージングを受ける患者において偶発的所見として同定される。しかし、嚢胞が同定されると、難しい一生涯の管理の問題が発生する(1,2,9〜13)。ほぼ必ず良性である嚢胞のタイプもあれば、低グレードの悪性のものもあるし、浸潤性膵管腺癌(PDA)の前駆型であるものもあり、PDAは予後不良を伴う(14〜17)。従って、嚢胞タイプの識別は膵嚢胞を有する患者の有効な管理にとって重要である。残念なことに、従来の臨床所見、X線撮影所見、または細胞学的所見から嚢胞のタイプを決定することは、多くの場合、困難である(1,2,9〜16,17)。
嚢胞の約40%は、アルコール性、胆道原性、または外傷性急性膵炎の合併症として発症する非腫瘍性の"仮性嚢胞"である(14〜16,17)。それらは、内科的に、または切除を行わない外科的ドレナージによって管理される。腫瘍性嚢胞(嚢胞全体の60%)には、主に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、および漿液性嚢胞腺腫(SCA)、および充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)の4つのタイプがある(18)。SCA、IPMN、およびMCNは良性(即ち、非浸潤性)であるが、IPMNおよびMCNは、外科的に切除されないとPDAへと進行する(即ち、浸潤性病変となる)可能性を有する(17)。いくつかの報告書では、外科的切除を受ける患者の年齢に基づいて、大きな非浸潤性IPMNが診断されてから(平均年齢 63.2歳)IPMNに由来する浸潤性癌が診断されるまで(平均年齢 68.1歳)に5年の時間差があることが示唆されている。このことから、前癌状態の嚢胞が正確に同定されれば、治療的切除に対して広いタイムウィンドウが提供される(19)。SPNは低グレードの悪性腫瘍と見なされるが、それらの広範な転移の前に検出および除去されれば、SPNは手術によって治療可能である(20)。
IPMNは腫瘍性嚢胞のもっとも一般的なタイプであり嚢胞全体の約25%〜35%を占めるのに対して、SCA、MCN、およびSPNは、それぞれ、膵嚢胞の約20%、約10%、および約5%を占める。SCA(図1A)は、中心に位置する異型性でない球形の核を有するグリコーゲンに富んだ立方上皮で裏打ちされている(17)。SCA(図1B)は正常な管系内で発生し、管腔内に大きな乳頭状突起をしばしば形成する円柱状のムチン産生細胞で裏打ちされている(17)。SCAの上皮は豊富な毛細血管網を伴う(21)。MCN(図1C)も円柱状のムチン産生細胞で裏打ちされているが、IPMNとは対照的にこの腫瘍性上皮は特徴的な卵巣型間質を伴い、嚢胞は管系とは連通していない(17)。MCNはほぼ必ず、女性の膵体部または膵尾部に生じ、一方、IPMNおよびSCAは、膵臓の任意の部分に男女双方で生じ得る。SPN(図1E、F)は専門的には充実性腫瘍であるが、それらの大多数は、他のタイプの膵嚢胞性腫瘍に臨床的およびX線写真的に似ている嚢胞性変性を起こす(20)。MCNと同様に、それらは一般に女性において発生し、管系とは連通していない。組織学的には、SPNは微細な微小血管によって支持された均一な低粘着性細胞からなる。SPNの腫瘍性細胞は、正常な膵臓では正常な相当物はない。
現在に至るまで、腫瘍性嚢胞のタイプの確定診断は、通常、外科的に採取された検体の病理組織学的検査後にのみ得ることができる。膵嚢胞を外科的に切除する判断は、臨床的パラメータに加えて、嚢胞の推定されるタイプに基づく。切除はSPNと推定されたすべての嚢胞に対して実施される。一方、SCAと診断された嚢胞は、それらが大きいかまたは症状を引き起こしている場合に限り、切除が必要とされる。最後に、推定上のMCNまたはIPMNを有する患者は、それらが急速な増殖または壁性結節の存在などの一定の基準を満たすならば、手術を受ける。(1, 2, 9〜13)。3分の1の症例で、外科的に摘出された嚢胞の術前診断が間違いであることが示されており、これは不必要な外科的処置ということになり得る(22)。例えば、無症候性の小さなSCAは本質的に悪性の可能性を有さないので、摘出する必要はない(17)。しかし、SCAはIPMNであると疑われることがあるため、外科的に切除されることがある(1,2,22)。これらの嚢胞性病変の除去のためには、多くの場合大がかりな外科的処置が必要とされるので、より正確な術前診断は不必要な手術に伴うコスト、罹患率、および偶発的死亡率を減らす可能性を有する。
膵嚢胞を有する患者から、内視鏡による吸引によって嚢胞液を容易かつ安全に採取することができる(23〜28)。これらの液体は多くの場合、無細胞性であり、従って、通常は細胞学的診断には有用でない。しかし、このような液体はDNAの異常を含む生化学的な異常の存在に関して分析することが可能であり、これらの病変を有する患者の診断を提供し彼らの管理を改善する可能性を有する(23〜28)。分子遺伝学をベースとする将来の診断アッセイのための準備を整えるために、本発明者らは本明細書において、腫瘍性嚢胞の全4タイプの代表的な症例について、すべてのアノテーションされたコード遺伝子を含むエクソームの配列を決定した。
当技術分野では、膵嚢胞を有する患者の有効な管理のために、外科的試料を得る必要なく、嚢胞タイプを識別することが引き続き必要とされている。
本発明の一つの局面に従って、膵嚢胞を鑑別するために方法が用いられる。膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、膵嚢胞に特徴的な突然変異に関して試験する。以下の各群から少なくとも一つの遺伝子が試験される:
a. VHL;
b. GNAS;
c. RNF43、KRAS;および
d. CTNNB1。
突然変異のパターンによりそれがどのタイプの膵嚢胞であるかが示される。
本発明の別の局面に従って、膵嚢胞を漿液性嚢胞腺腫として同定するために方法が用いられる。膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、VHLにおける突然変異に関して試験する。このような突然変異の存在により、該嚢胞が漿液性嚢胞腺腫であることが示される。
本発明の別の局面は、膵嚢胞を膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍のいずれかとして同定する方法である。膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、RNF43またはKRASにおける突然変異に関して試験する。該遺伝子の一方または両方における突然変異により膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍が示される。
本発明のさらに別の局面に従って、膵嚢胞を鑑別診断するための装置を用いることができる。該装置は、以下の各群からの少なくとも一つの遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドのセットを含む固体支持体を含む:
a. VHL;
b. GNAS;
c. RNF43、KRAS;および
d. CTNNB1。
該オリゴヌクレオチドは、突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズする。固体支持体は100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む。
本発明の別の局面に従って、キットが膵嚢胞の鑑別診断に役立つ。該キットは、以下の各群からの少なくとも一つの遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブのセットを含む:
a. VHL;
b. GNAS;
c. RNF43、KRAS;および
d. CTNNB1。
該オリゴヌクレオチドは、突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズする。キットは100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む。
これらの局面および他の局面は、本明細書を読めば当業者には明らかであり、より良い管理医療のための方法およびツールを当技術分野に提供する。
[本発明1001]
以下の工程を含む、膵嚢胞を鑑別する方法:
膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、膵嚢胞に特徴的な突然変異に関して試験する工程であって、以下の各群から少なくとも一つの遺伝子が試験される、工程:
a.VHL;
b.GNAS;
c.RNF43、KRAS;および
d.CTNNB1。
[本発明1002]
以下の工程を含む、膵嚢胞を漿液性嚢胞腺腫として同定する方法:
膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、VHLにおける突然変異に関して試験する工程であって、該突然変異により該嚢胞が漿液性嚢胞腺腫であることが示される、工程。
[本発明1003]
以下の工程を含む、膵嚢胞を膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍として同定する方法:
膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、RNF43またはKRASにおける突然変異に関して試験する工程であって、該遺伝子の一方または両方における突然変異により膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍が示される、工程。
[本発明1004]
以下の工程をさらに含む、本発明1003の方法:
前記核酸をGNASにおける突然変異に関して試験する工程であって、GNASにおける突然変異により前記嚢胞が膵管内乳頭粘液性腫瘍であることが示唆される、工程。
[本発明1005]
突然変異が置換突然変異またはヘテロ接合性の消失である、本発明1002の方法。
[本発明1006]
突然変異が置換突然変異またはヘテロ接合性の消失である、本発明1003の方法。
[本発明1007]
KRAS突然変異がコドン12内にある、本発明1003の方法。
[本発明1008]
GNAS突然変異がコドン201内にある、本発明1004の方法。
[本発明1009]
CTNNB1突然変異が、コドン32〜コドン37より選択される一つのコドン内にある、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記遺伝子の各々が試験される、本発明1001の方法。
[本発明1011]
a.VHL;
b.GNAS;
c.RNF43、KRAS;および
d.CTNNB1
の各群からの少なくとも一つの遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドのセットを含む固体支持体
を含む、膵嚢胞を鑑別診断するための装置であって、該オリゴヌクレオチドが突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズし、該固体支持体が100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む、装置。
[本発明1012]
a.VHL;
b.GNAS;
c.RNF43、KRAS;および
d.CTNNB1
の各群からの少なくとも一つの遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブのセット
を含む、膵嚢胞の鑑別診断に役立つキットであって、該オリゴヌクレオチドが突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズし、該キットが100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む、キット。
[本発明1013]
試験がハイブリダイゼーションを利用する、本発明1001、1002、または1003のいずれかの方法。
[本発明1014]
試験がライゲーションを利用する、本発明1001、1002、または1003のいずれかの方法。
[本発明1015]
試験が増幅を利用する、本発明1001、1002、または1003のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記核酸がRNF43における突然変異に関して試験される、本発明1003の方法。
腫瘍性嚢胞の病理組織学。図1A.典型的なSCA(SCA 38)は、中央に位置する異型性でない球形の核を示す(スケールバー:100μ)。図1B.典型的なIPMN(IPMN 4)は、管腔内に大きな乳頭状突起を形成する円柱状のムチン産生細胞で裏打ちされている(スケールバー:100μ)。図1C.典型的なMCN(MCN)も円柱状のムチン産生細胞で裏打ちされているが、腫瘍性上皮は特徴的な卵巣型間質を伴う(スケールバー:100μ)。図1D.円柱状のムチン産生細胞のレーザーキャプチャー顕微解剖後の同一のMCN(スケールバー:100μ)。図1E.典型的な嚢胞形成しているSPN(SPN2;スケールバー:10mm)の肉眼所見。図1F.SPN17は顕微鏡下で微細な間質に支持された低粘着性細胞を示す(スケールバー:50μ)。 膵臓の腫瘍性嚢胞において観察されたヘテロ接合性の消失。線は観察された消失領域を示し、表示された色によって異なる嚢胞タイプを示す。 全ゲノムの一塩基多型(SNP)の配列評価に基づく代表的なLOHデータ。各染色体の短腕のテロメアの位置をx軸上に示す。y軸は各SNPの2つのアレルの比を示す。正常な細胞では、この割合は0.5である;すべての細胞が遺伝子座の一方のアレルを消失している純粋な腫瘍性細胞集団では、アレル比は0.0である。少なくともいくつかの腫瘍性細胞でLOHが起きた遺伝子座においては、0.0よりも高いアレル比は、顕微解剖された細胞集団を「汚染」した非腫瘍性細胞とその遺伝子座においてLOHが起きていない一部の腫瘍性細胞とを反映している。図3A.VHL遺伝子を含む3p染色体上の領域のLOHを示すSCA40。図3B.RNF43遺伝子を含む17q染色体上の領域のLOHを示すIPMN12。図3C.RNF43遺伝子を含む17q染色体上の領域のLOHを示すMCN169。 VHLおよびRNF43における突然変異を確認するために用いられたライゲーションアッセイ。突然変異。各レーンは、各々が100個の鋳型分子を含有する4つの独立したPCR産物のうちの一つのライゲーションの結果を示す。さらに、ライゲーション産物は変性アクリルアミドゲル上でサイズ分離される。緑色のバンドは、野生型(WT)アレルが存在する場合に未標識オリゴヌクレオチドにライゲーションする6-カルボキシフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドプローブである。赤色のバンドは、変異型(MUT)アレルが存在する場合にのみ同一の未標識オリゴヌクレオチドにライゲーションするヘキサクロロフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドプローブである。WTおよびMUT特異的オリゴヌクレオチドプローブは長さが異なり(それぞれ、約32塩基および約12塩基)、そのため、それらはアクリルアミドゲルにおいて異なる位置に移動した。評価した嚢胞の試料および突然変異を示す。 (表1)膵臓の腫瘍性嚢胞における反復性の遺伝子変化。 データセット4.膵臓の腫瘍性嚢胞において同定された体細胞突然変異。 データセット5.VHL特異的なキャプチャーおよびシーケンシングによって同定されたSCAにおける体細胞突然変異。 データセット6.ライゲーションアッセイのために用いられたオリゴヌクレオチドプローブ。
発明の詳細な説明
本発明者らは、膵嚢胞の様々なタイプを識別するために用いることができるマーカーのセットを開発した。この識別は嚢胞からの嚢胞液を用いて、および/または嚢胞からの上皮細胞を用いて決定することができる。従って、外科的試料は必要ではない。嚢胞液または細胞から得られた核酸を試験することによって、特定のタイプの突然変異についての標的である遺伝子パネルが同定された。これらの突然変異により、その遺伝子が腫瘍発生の過程において重要であることが確認される。特定のタイプの突然変異が同定されたが、同一マーカーにおける他の突然変異またはエピジェネティックな変化によって、結果的に同一の腫瘍に至ってもよい。
核酸は嚢胞からの嚢胞液または上皮細胞のいずれからも得ることができる。ナンセンス突然変異またはミスセンス突然変異などの置換突然変異に関する任意の試験を用いることができる。突然変異について試験するために、配列決定を用いることができる。上記遺伝子のうちの一つにおけるヘテロ接合性の消失も明らかにすることができる。試験され得るおよび見出され得る他の突然変異には、フレームシフト、スプライス部位、欠失、または転座が含まれる。ハイブリダイゼーション、伸長、合成、ライゲーション、および増幅に基づく試験を含む、これらの遺伝学的事象に関する任意の試験が用いられ得る。これらの遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングに関する試験も用いられ得る。これは、遺伝子が身体の他の細胞よりも非常に弱く発現するようなメチル化パターンの変化を含み得る。典型的には、同定される突然変異は体細胞突然変異である。これは、試験膵嚢胞核酸を、血球などの身体の他の部分に由来する核酸と比較することによって明らかにすることができる。限定はされないが、当技術分野で公知である、突然変異を試験するための任意の方法が用いられ得る。
以下に報告する結果によると、VHLにおける反復性の突然変異は、SCA(漿液性嚢胞腺腫)のみで見出されている。RNF43およびKRASにおける突然変異は、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)およびMCN(粘液性嚢胞腫瘍)の両方で見出されている。加えて、CTNNB1における突然変異は、SPN(充実性偽乳頭状腫瘍)のみで見出されている。GNASにおける突然変異は、以前にIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)で見出されていた。従って、これらのマーカーをひとまとめに分析することによって、嚢胞のタイプおよび進行の可能性を極めて明確に同定することができる。これらの遺伝子のうちの任意の単一の遺伝子が試験されてもよい。これらの遺伝子のうちの2つまたはそれ以上の任意の組み合わせを、1つのパネルにおいて用いてもよい。
好都合なことに、一連の遺伝子は、固体支持体に付着されたオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを有する固体支持体を含む装置にすることができる。該オリゴヌクレオチドは遺伝子の様々な部分を表すことができるし、異なる変異型を表すことができる。特定の変異型が存在するかどうかを調べるため、または遺伝子の特定の部分が欠損しているかどうかを調べるために、試験を実施することができる。遺伝子の全体または一部が異なる遺伝子またはゲノム領域に隣接しているかどうかを調べるために、試験を実施することができる。エピジェネティックなサイレンシングに関して、固体支持体へのハイブリダイゼーションによって、mRNAまたはmRNAから作られるcDNAの量を調べることができる。典型的には、該装置は膵嚢胞における突然変異に関しての試験という特別な目的のためのものであり、全ゲノムまたは遺伝子の全エクソームではなく限られた数の遺伝子を含有する。例えば、固体支持体上には500個未満、400個未満、300個未満、200個未満、100個未満、75個未満、50個未満、25個未満、または10個未満の遺伝子のプローブまたはプライマーが存在し得る。固体支持体は、マイクロアレイ、チップ、ウェル、ビーズ、または他の適切な形態であってよい。
同様に、膵嚢胞のタイプを同定する目的でキットを作製することができる。該キットは固体支持体を含んでもよいし、または含まなくてもよい。溶液相のプライマーまたはプローブなどの、他の形態のプライマーまたはプローブを用いてもよい。特定の変異型が存在するかどうかを調べるため、または遺伝子の特定の部分が欠損しているかどうかを調べるために、試験を実施することができる。遺伝子の全体または一部が異なる遺伝子またはゲノム領域に隣接しているかどうかを調べるために、試験を実施することができる。エピジェネティックなサイレンシングに関して、プローブへのハイブリダイゼーションによって、mRNAまたはmRNAから作られるcDNAの量を調べることができる。典型的には、該キットは膵嚢胞を試験するという特別な目的のためのものであり、全ゲノムまたは遺伝子の全エクソームではなく限られた数の遺伝子を含有する。例えば、キット中には500個未満、400個未満、300個未満、200個未満、100個未満、75個未満、50個未満、25個未満、または10個未満の遺伝子のプローブまたはプライマーが存在し得る。限定はされないが、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは図8(データセット6)に示すものから選択することができる。図5(表1)、または図6(データセット4)もしくは図7(データセット5)において同定された任意の突然変異について、試験することができる。該遺伝子は、他の突然変異に関しても調べてもよい。
上記の結果は基礎研究および応用研究の双方において意味を持つ。嚢胞の全4タイプが、ユビキチンリガーゼ複合体のいずれかの構成要素である遺伝子の欠損(SCA、IPMN、MCN)、または自身をこれらの複合体による分解に対して抵抗性にする遺伝子の欠損(SPN)を伴うことは非常に興味深い。粘液性嚢胞の双方のタイプ(IPMNおよびMCN)で遺伝的に不活化されるRNF43は、内因性のE3ユビキチンリガーゼ活性を有する(46)。この遺伝子の産物に関する研究は比較的少ないが、p53介在性アポトーシスを調節する複合体中に存在していることが示されている(60)。これらの過去の研究に基づいて、野生型RNF43遺伝子産物の腫瘍抑制効果はそのユビキチンリガーゼ活性の結果である可能性がある。この仮説を確認するためには、タンパク質RNF43がインビボでユビキチン化するタンパク質を明らかにすること、およびこのようなユビキチン化がRNF43の腫瘍抑制性の役割のために必須であることを実証することが重要である。
一方、VHLは、VHL症候群の原因である遺伝子として同定されて以来(61)、集中的な研究の対象となっている。VHLのもっともよく研究されている機能は、血管形成におけるその役割に関する(62)(63)。細胞が十分に酸素化されると、HIFαタンパク質のプロリルヒドロキシル化がHIFαタンパク質のVHLへの結合を誘導する。続いて、VHLは、ユビキチン化および引き続くHIFαの分解を誘導するユビキチン(Ub)リガーゼ複合体を動員する。VHLが不活化されると、HIFαタンパク質は安定化して、その結果、細胞が十分に酸素化されている場合でも血管形成を刺激する多くの遺伝子が発現する。
VHL突然変異がSCA形成を刺激し得る方法は少なくとも2つある。第一に、恐らくHIFαの異常な活性化の結果として、SCA内には豊富な毛細血管網があることが知られている。この毛細血管網は局所的な血行動態を乱すことができて、嚢胞液の産生を促し、成長因子の局所濃度の上昇が上皮細胞の増殖を刺激することができる(21)。第二の可能性は、十分に実証されているがそれほど広くは研究されていないVHLタンパク質の機能である微小管の安定化に関するものである(64,65)。VHLの非存在下では、一次線毛は存在しないか、または欠陥がある(66)。特定のタイプの嚢胞と一次線毛の欠陥とを関連付けるたくさんの証拠を考慮すると、VHLの微小管安定化機能は嚢胞の抑制におけるその役割にとって重要であることが示唆されている(66)。VHL遺伝子が不活化された複数のマウスモデルは(SCAではないが)様々な嚢胞を発症し(67〜70)、このことはこの論題に関する今後の研究に対して実りのある道のりを示唆している。
本発明者らの結果は診断上も重要な意味を持つ可能性がある。序論で記載した通り、外科的介入に先んじて嚢胞の様々なタイプを識別することは患者の管理において極めて重要である(1,2,9〜16,17)。嚢胞液はこのような患者から容易に得ることができ、分析アッセイに供することができる(22,23,26,27,71〜73)。本発明者らの結果は、通常、わずか5つの遺伝子−VHL、RNF43、CTNNB1、GNAS、およびKRAS−の分析によって嚢胞のタイプが識別できることを示す(表1):8例のSCAはすべてVHLの遺伝子内突然変異またはVHLにおけるもしくはVHLに隣接するヘテロ接合性の消失を有し、それ以外の4つの遺伝子の突然変異は含まなかった;8例のIPMNはすべてRNF43、GNAS、またはKRASの変化を有し、VHLまたはCTNNB1の突然変異は全く有さなかった;MCNは常にKRASまたはRNF43の突然変異を有したが、GNAS、CTNNB1、またはVHLの突然変異は全く含まなかった;ならびに、SPNは常にCTNNB1の突然変異を含み、それ以外の4つの遺伝子の突然変異は全く含まなかった。臨床データおよび放射線学的データと組み合わせると、それによって嚢胞液の分子遺伝学的分析はより正確な診断につながり得る。IPMNおよびMCNの場合、GNAS、RNF43、および他の遺伝子における遺伝子変化の個数およびタイプを用いて浸潤癌への進行のリスクの測定に役立てることができるかどうかを明らかにすることが重要であると考えられる。これらの診断目的および他の診断目的のための分子遺伝学的分析のさらなる価値を明らかにするには、4つのすべての嚢胞タイプを有する患者由来の多くの嚢胞液試料の検査が必要であると考えられる。
上記の開示は本発明を概説するものである。本明細書に開示される参考文献はすべて、参照によって明確に組み入れられる。より完全な理解は以下の具体的な実施例を参照することによって得ることができ、これらの実施例は例示のみを目的として本明細書において提供されるものであって本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1
材料および方法
患者および検体
本研究は、Johns Hopkins Medical Institutions、Memorial Sloan Kettering Cancer Center、Wayne State University Emory University、およびUniversity of Indianaの治験審査委員会の承認を得た。病変は、標準的な基準(74)を用いてIPMN、MCN、SPN、またはSCAと分類された。SCAを有する患者の中に、VHL症候群の臨床的特徴を持った者はおらず、SPNのすべてがステージ1B、pT2N0M0であった(74)。IPMNは国際的に認められた基準に従ってサブタイプに分類された(75)。
外科的に切除された膵嚢胞性腫瘍の新鮮凍結された組織検体は、予め維持されたJohns Hopkins Surgical Pathology Tumor Bankを介して、および協力機関(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、Emory University、University of Utrecht、およびWayne State University)から入手した。IPMN、SCA、SPN、および2例のMCNの検体をカミソリの刃を用いて顕微解剖した。これらの場合においては、連続凍結切片を用いて、OCT包埋した組織ブロックのトリミングを行なった。浸潤癌が嚢胞性病変に付随している場合は、嚢胞性病変のみを採取した。各嚢胞タイプの対応する正常な膵臓組織または脾臓組織を同様に顕微解剖した。6例のMCNが腫瘍性上皮下の著しく豊富な卵巣様間質によって特徴付けられ(図1Cの例)、レーザーキャプチャー顕微解剖法(LCM)を必要とした。平均50〜75個の凍結切片(各々、10μm)をUV処理したPALMメンブランスライド(Carl Zeiss MicroImaging, Inc., Thornwood, NY)上に置いた。70%エタノール中で洗浄し、標準的なヘマトキシリンおよびエオジン染色を行なった後、PALM Micro Beam System(Carl Zeiss MicroImaging, Inc., Thornwood, NY)を用いて切片をLCMに供した(図1)。各病変から平均5.000〜10.000個の細胞を収集した。各スライドに対する顕微解剖の総時間数は、DNA分解を最小限とするために<15分とした。
膵嚢胞液は、外科的に切除した膵切除検体から無菌シリンジを用いて外科病理学室において採取した。吸引した液体は切除の30分以内に−80℃で保存した。
DNAの精製
DNAは、AllPrepキット(Qiagen)を用いて製造業者の説明書に従って嚢胞壁から精製した。DNAは、製造業者のプロトコールに従って、嚢胞液250μLから、RLTM緩衝液(Qiagen)3mlを加えた後AllPrep DNAカラム(Qiagen)に結合させることによって精製した。すべての場合において、DNAは以前に記載されたプライマーおよび条件を用いてqPCRで定量した(76)。
ライブラリの作製
ライブラリは、以前に記載された通りに修正されたIllumina(Illumina, San Digeo, CA)のプロトコールに従って作製した(77)。要約すると、(1)TE 100マイクロリットル(μl)中1〜3マイクログラム(μg)のゲノムDNAをCovaris超音波処理器(Covaris, Woburn, MA)で100〜500bpの大きさに断片化した。150bpよりも短い断片を除去するために、DNAを5 x Phusion HF緩衝液 25μl、ddH2O 416μl、およびNT結合緩衝液 84μlと混合してNucleoSpinカラム(カタログ#636972, Clontech, Mountain View, CA)に装填した。該カラムを卓上遠心機で14,000gにて1分間遠心して、洗浄緩衝液(ClontechのNT3)600μlで1回洗浄して、完全に乾燥するまで2分間再度遠心した。DNAはキットに含まれる溶出緩衝液45μl中に溶出した。(2)精製して断片化したDNAをH2O 40μl、エンドリペア反応緩衝液10μl、エンドリペア酵素ミックス(カタログ# E6050, NEB, Ipswich, MA)5μlと混合した。該エンドリペア混合液100μlを20℃で30分間インキュベートして、PCR精製キット(カタログ#28104, Qiagen)により精製して、溶出緩衝液(EB)42μlで溶出した。(3)Aテール処理するため、エンドリペア処理したDNA 42μlすべてを10X dAテーリング反応緩衝液 5μlおよびクレノウ(エキソ-クレノウ)(カタログ# E6053, NEB, Ipswich, MA)3μlと混合した。該混合液50μlを37℃で30分間インキュベートした後、DNAをMinElute PCR精製キット(カタログ#28004, Qiagen)で精製した。精製したDNAを70℃のEB 25μlで溶出した。(4)アダプターのライゲーションのため、Aテール処理したDNA 25μlをPE-アダプター(Illumina)10μl、5X ライゲーション緩衝液 10μl、およびQuick T4 DNAリガーゼ(カタログ# E6056, NEB, Ipswich, MA)5μlと混合した。該ライゲーション混合液を20℃で15分間、インキュベートした。(5)アダプターライゲーション処理したDNAを精製するために、工程(4)のライゲーション混合液 50μlをNT緩衝液 200μlと混合して、NucleoSpinカラムでクリーンアップした。DNAを溶出緩衝液50μl中に溶出した。(6)増幅ライブラリを得るために、各50μlのPCRを10個用意し、各々は、H2O 29μl、5 x Phusion HF緩衝液 10μl、10mMの各dNTPを含有するdNTPミックス 1μl、DMSO 2.5μl、Illumina PEプライマー#1 1μl、Illumina PEプライマー#2 1μl、Hotstart Phusionポリメラーゼ 0.5μl、および工程(5)のDNA 5μlを含んだ。用いたPCRプログラムは、98℃で2分間;98℃で15秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を6サイクル;および72℃で5分間であった。PCR産物を精製するために、(10個のPCR反応液からの)PCR混合液500μlをNucleoSpin Extract IIキットのNT緩衝液1000μlと混合して、工程(1)において記載したように精製した。ライブラリDNAを70℃の溶出緩衝液で溶出して、DNA濃度は260nmでの吸光度により推定した。
エクソームおよび標的サブゲノムDNAのキャプチャー
ヒトエクソームのキャプチャーは、以前に記載された通りに修正されたAgilentのSureSelect Paired-End Target Enrichment System (All Exon 50 Mbキット、Agilent, Santa Clara, CA)のプロトコールに従って実施した(77)。(1)SureSelect Hyb #1 25μl、SureSelect Hyb #2 1μl、SureSelect Hyb #3 10μl、およびSureSelect Hyb #4 13μlを含有するハイブリダイゼーション混合液を調製した。(2)前記のPEライブラリDNA 3.4μl(0.5μg)、SureSelect Block #1 2.5μl、SureSelect Block #2 2.5μl、およびBlock #3 0.6μlを、384ウェルDiamond PCRプレート(カタログ# AB-1111, Thermo-Scientific, Lafayette, CO)の一つのウェル中に入れて、microAmp透明接着フィルム(カタログ#4306311; ABI, Carlsbad, CA)で密封して、95℃で5分間GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(Life Sciences Inc., Carlsbad CA)中に置いて、続いて(加温した蓋を被せて)65℃に保持した。(3)工程(1)のハイブリダイゼーション緩衝液 25〜30μlを別の密封したプレート中で、加温した蓋を被せて65℃で少なくとも5分間加熱した。(4)SureSelectオリゴキャプチャーライブラリ 5μl、ヌクレアーゼフリーの水 1μl、および希釈したRNase Block(ヌクレアーゼフリーの水を用いてRNase Blockを1:1で希釈して調製した)1μlを混合して、別の密封した384ウェルプレート中で65℃で2分間加熱した。(5)すべての反応液を65℃に維持しながら、工程(3)のハイブリダイゼーション緩衝液 13μlを工程(4)のSureSelectキャプチャーライブラリミックス 7μlに加え、続いて工程(2)のライブラリ含有液全体(9μl)に加えた。該混合物を8〜10回、ゆっくりとピペッティングした。(6)該384ウェルプレートをしっかりと密封して、該ハイブリダイゼーション混合液を、加温した蓋を被せて65℃で24時間インキュベートした。
ハイブリダイゼーション後、キャプチャーしたDNAライブラリを回収および増幅するために5つの工程を実施した:(1)キャプチャーしたDNAを回収するための磁気ビーズ:Dynal MyOneストレプトアビジンC1磁気ビーズ(カタログ#650.02, Invitrogen Dynal, AS Oslo, Norway)50μlを1.5mlマイクロチューブに入れて、ボルテックスミキサーで強く再懸濁した。ビーズを、SureSelect結合緩衝液 200μlを加えて3回洗浄して、ボルテックスで5秒間混合し、上清を除去するためにDynal磁気分離機中に置いた。3回の洗浄後、ビーズをSureSelect結合緩衝液 200μl中に再懸濁した。(2)キャプチャーしたDNAを結合させるために、前記のハイブリダイゼーション混合液全量(29μl)をサーモサイクラーからビーズ溶液に直接移して、静かに混合した;該ハイブリダイゼーション混合液/ビーズ溶液をEppendorfサーモミキサー中で室温にて850rpmで30分間インキュベートした。(3)ビーズを洗浄するために、Dynal磁気分離機に適用した後、上清をビーズから除去して、ビーズをボルテックスミキサーで5秒間混合することによってSureSelect洗浄緩衝液#1 500μl中に再懸濁して、室温で15分間インキュベートした。続いて、磁気分離後にビーズから洗浄緩衝液#1を除去した。ビーズをさらに3回、それぞれ、65℃で10分間インキュベートして予め加温したSureSelect洗浄緩衝液#2 500μlで洗浄した。最後の洗浄後、SureSelect洗浄緩衝液#2を完全に除去した。(4)キャプチャーしたDNAを溶出するために、ビーズをSureSelect溶出緩衝液 50μl中に懸濁してボルテックスで混合し、室温で10分間インキュベートした。磁気分離後に上清を取り出して、新たな1.5mlマイクロチューブに回収して、SureSelect中和緩衝液 50μlと混合した。キャプチャーしたDNAライブラリ 15μlを得るために、DNAをQiagen MinEluteカラムで精製して70℃のEB 17μl中に溶出した。(5)キャプチャーしたDNAライブラリは次の方法で増幅した:各々が、H2O 9.5μl、5 x Phusion HF緩衝液 3μl、10mM dNTP 0.3μl、DMSO 0.75μl、Illumina PEプライマー#1 0.15μl、Illumina PEプライマー#2 0.15μl、Hotstart Phusionポリメラーゼ 0.15μl、およびキャプチャーしたエクソームライブラリ 1μlを含有する、15個のPCR反応液を用意した。用いたPCRプログラムは、98oCで30秒間;98℃で10秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を14サイクル;および72℃で5分間であった。PCR産物を精製するために、(15個のPCR反応液からの)PCR混合液225μlをNucleoSpin Extract IIキットのNT緩衝液450μlと混合して、前記のように精製した。最終的なライブラリDNAを70oCの溶出緩衝液30μlで溶出して、DNA濃度はOD260の測定によって推定した。
本発明者らは、KRAS配列がAll Exon 50Mbキットでは効率的にキャプチャーされず、カバー率は多くの場合塩基当たり10未満であったことを見出した。従って、後述のライゲーションアッセイを用いてKRASをさらに評価した。Illuminaによるシーケンシングによって同定されたすべてのKRAS突然変異がライゲーションによって確認され、4つのさらなるKRAS突然変異が同定された(IPMN 11、20、26、および36)。これらの4つの突然変異は表S4に含まれており、定量はデジタルライゲーションによって与えられた。VHLエクソンのキャプチャーのためのライブラリは、前記のように作製した。該ライブラリは、(79)および(41)に記載されたようにデザインされたプローブを用いて、(78)に記載されたようにキャプチャーした。
体細胞突然変異の同定
キャプチャーしたDNAライブラリをIllumina GAIIx/HiSeq Genome Analyzerで試料当たり1レーンを用いて配列決定して、最終のライブラリ断片から150(2 x 75)塩基対を得た。配列決定されたリードを解析して、CASAVA 1.7ソフトウェア(Illumina)のElandアルゴリズムを用いてヒトゲノムhg18に対してアライメントした。重複するタグは除去して、ミスマッチの塩基は、(i)該塩基が5個を超える別個のタグによって同定され;(ii)特定のミスマッチ塩基を含む別個のタグの個数が、別個のタグの総数の少なくとも20%であり;かつ(iii)該塩基が対応する正常試料中のタグの>0.1%では存在せず、かつ、(iv)SNPデータベース(National Library of Medicine of the National Institutes of Heatlhによる1000ゲノム由来のdbSNP Build 134 リリース)には存在しない場合にのみ、突然変異と同定した。CHASM値は以前に記載されたように決定した(45)。
LOHを同定するために、本発明者らは、各嚢胞の対応する正常試料において同定されたすべてのヘテロ接合の位置を調べた。各SNPの「マイナーアレル」とは、その腫瘍ではより一般的でないアレルを示す。SNPの両方のアレルが同数のタグによって示される場合は、該マイナーアレルの割合はy軸上に0.5と示される。コピー数の解析はデジタル核型分析(29)によって実施して、SureSelectオリゴキャプチャーライブラリによってキャプチャーされる各遺伝子にマッピングされるリード数をビニングした。
ライゲーションアッセイ
VHL、RNF43、およびKRASの関連する部分を含有するPCR産物を、表S6に記載したプライマーを用いて、以前に記載された条件(41)を用いて増幅した。各10ulのPCRは、2x Phusion Flash PCRマスターミックス(New England Biolabs)5ul中1〜100個の鋳型分子、ならびに最終濃度0.25uMのフォワードプライマーおよび1.5uMのリバースプライマーを含有した。VHLおよびRNF43の増幅に用いたプライマーの配列を表S6に示す;KRASプライマーは以前に記載されている(41)。以下のサイクル条件を用いた:98℃で2分間;98℃で10秒間、69℃で15秒間、72℃で15秒間を3サイクル;98℃で10秒間、66℃で15秒間、72oCで15秒間を3サイクル;98℃で10秒間、63℃で15秒間、72℃で15秒間を3サイクル;98℃で10秒間、60℃で60秒間を41サイクル。反応は少なくとも四つ組で実施して、それぞれを独立して評価した。Phusionポリメラーゼを不活化するためにプロテイナーゼK(18.8mg/ml、Roche)0.5ulおよびdH2O 4.5ulを含有する溶液 5ulを各ウェルに加えて、60℃で30分間インキュベートして、続いて該プロテイナーゼKを不活化するために98℃で10分間インキュベートした。
ライゲーションアッセイ(41)は、熱耐性DNAリガーゼを用いた、以前に記載された技術(80)に基づいた。各10ulの反応液は、PCR産物(未精製)2ul、10 x Ampligase緩衝液(Epicentre)1ul、Ampligase(5U/ul、Epicentre)0.5ul、アンカープライマー(最終濃度2uM)、WT特異的プライマー(最終濃度0.1uM)、および変異型特異的プライマー(最終濃度0.025uM)を含有した。VHLおよびRNF43のライゲーションアッセイに用いたプローブの配列を表S6に示す;KRASプローブは以前に記載されている(41)。以下のサイクル条件を用いた:95℃で3分間;95℃で10秒間、37℃で30秒間、45℃で60秒間を35サイクル。各反応液のうちの5ulをホルムアミド5ulに加えて、ライゲーション産物を10% 尿素-トリス-ホウ酸-EDTAゲル(Invitrogen)で分離して、Amersham-GE Typhoon装置(GE Healthcare)で撮像した。
統計学的解析
本文において「A±B」と列記されたすべての値は、平均値(A)および標準偏差(B)に相当する。本文中に別段の記載のない限り、分布の比較のためには、標本分散が等しくないと仮定する両側t検定を用いた。P値は、(http://faculty.vassar.edu/lowry/VassarStats.html)で入手可能なデータインターフェースを用いて算出した。
実施例2
実験デザイン
腫瘍性嚢胞は腫瘍性上皮細胞および非腫瘍性細胞(間質性、血管性、および炎症性(17))の混合物から構成される(図1)。本発明の突然変異検出能力を最大限とするために、本発明者らは腫瘍性上皮細胞を非腫瘍性細胞から慎重に顕微解剖した。MCNの病変には細胞性の卵巣型間質が存在するので(図1C、D)、これはMCNでは非常に困難であった。顕微解剖の後、本研究で分析した各嚢胞試料の腫瘍性細胞含有率は少なくとも33%であった。
顕微解剖した32例の嚢胞、すなわち4タイプの各々について8例の嚢胞、に由来するDNA、および同一患者の正常組織に由来する対応するDNAを本研究に用いた。患者の臨床的および病理組織学的特徴ならびにその嚢胞病変を表S1に詳記する。DNAはアダプターにライゲーションして、標準的なIlluminaプロトコールを用いて増幅した。続いて、増幅した該DNAを50MB SureSelect Enrichment Systemでキャプチャーした。キャプチャーしたDNAは20,000を超えるコード遺伝子およびmiRBase, v.13のすべてのmiRNAを含む。シーケンシングは、Illumina GAIIまたはHiSeqの装置を用いて比較的高い深度で実施した(64個のライブラリ[嚢胞DNAに由来する32個、対応する正常DNAに由来する32個]においてbp当たり120倍±40の平均固有カバー率、表S2)。このレベルの配列カバー率では、>33%の腫瘍性細胞を含有する嚢胞試料に由来するDNA中に存在するクローン性ヘテロ接合性突然変異を検出する確率は>99%となる。
実施例3
SCAの分析
SureSelect Enrichment Systemによってキャプチャーされた配列中の一塩基多型を用いて、本発明者らは8名のSCA患者の対応する正常DNA試料において15,190±428個のヘテロ接合性バリアントを同定することができた。調べた8例のSCAの各々において、少なくとも一つの染色体領域のヘテロ接合性の消失(LOH)が同定された(図2、表S3)。LOHの最大率(70%±13%)から、顕微解剖で達成された腫瘍性細胞含有率が高い割合であったことが確認された。大多数のSCAで消失した唯一の領域は3p染色体上にあった(図2、図3Aの例)。8例中7例のSCAが3p染色体のアレルを消失し、該消失は9,934,713〜12,850,443の塩基で画定された。このLOHが、残っているアレルの倍加に関連しているかどうかを調べるために、本発明者らはLOHの領域内にあるすべての配列のコピー数を、同一嚢胞の他のすべての染色体領域のそれと比較した。これは、材料および方法の項目で説明したように、デジタル核型分析(29)により正規化したタグ数を比較することによって達成された。この分析の結果、3p染色体のLOHを示す7例のSCAすべてにおいて、3p染色体配列の1コピーのみが腫瘍に残っていることが示された(残りのゲノムは多倍数体ではなく平均二倍体であると仮定した)。
本発明者らは以前に、Illumina装置から得られた次世代シーケンシングデータにおける体細胞突然変異の信頼性のある同定のための方法について記載している(30,31)。偽陽性の判定を避けるためにストリンジェントな基準を用いて、本発明者らは8例のSCA腫瘍において、71個の遺伝子内に分布した合計79個の非同義の体細胞突然変異を同定した(表S4)。腫瘍当たり平均わずか10±4.6個の非同義の体細胞突然変異が存在しており、PDA(腫瘍当たり48±23個(32))で観察されたよりも大幅に少なかった(p<0.001)。
2例以上のSCAで突然変異した遺伝子は2個のみであった(表S4)。これらのうちの一つはTBC1D3(TBC1ドメインファミリーメンバー3F)であり、ここでは2つのミスセンス突然変異が観察された(表S4)。この遺伝子は、初期エンドソーム輸送において重要なRAB5AのGTPアーゼ活性を刺激するタンパク質をコードする(33)(34)。TBC1D3の発癌特性はインビトロおよびマウスモデルにおいて以前に実証されていて、TBC1D3遺伝子座は原発性前立腺腫瘍の15%において増幅される(35)(36)。しかしながら、本発明者らが同定した2つのTBC1D3突然変異がドライバーまたはパッセンジャー(それぞれ、腫瘍形成に直接的に寄与するまたは直接的には寄与しない突然変異と定義される)であるかどうかは不明である。これに対して、3p染色体上の10,158,319〜10,168,746の位置に位置するフォンヒッペル・リンダウ(von Hippel-Lindau)遺伝子VHLは真の腫瘍抑制遺伝子であり(37)、4例のSCAがこの遺伝子における突然変異を含んだ(SCA 23ではN78S、SCA35ではW117L、SCA38ではC162W、およびSCA40ではS80R[表S4])。これら4例中3例(SCA23、38、および40)はVHL染色体領域のLOHの証拠を示した(表S3)。興味深いことに、VHLの検出可能な突然変異を有さない4例の腫瘍(SCA14、27、29、および37)はVHL内またはVHLに隣接する3p染色体の一方のアレルを消失していた(図2および表S3)。本発明者らは、これらの4例では、VHL遺伝子は、欠失もしくは転座などのシーケンシングでは検出できない遺伝子変化によって、または腎細胞癌におけるVHLサイレンシング(38)の原因であるようなエピジェネティックなメカニズムによって不活化されたと推測している。
漿液性嚢胞腺腫が、腎細胞癌(RCC)および他の腫瘍タイプの素因となる疾患であるVHL症候群を有する患者の15%超で同定されている(39)(40)。注目すべきことに、SCAは、過剰なグリコーゲン産生および脈管構造の特有の漸増(血管新生)を含む、数種の組織形態学的特徴をRCCと共有する。SCAにおいて同定されたVHLの4つの突然変異のすべてがこれまでに腎細胞癌において同定されたものと同一であった(http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/);4つのうちの3つはVHL症候群患者の生殖系列においてこれまでに記載されていて、4つ目(W117L)はVHL患者の生殖系列において突然変異したことが見出された同一のアミノ酸位置にあった(http://www.umd.be/VHL/)。これはヒト細胞におけるこれらの突然変異の不活化の特性の確実な証拠を提供する。これらの各4例において、本発明者らはライゲーションをベースとする独立のアッセイを用いて、嚢胞におけるVHL突然変異が体細胞性であることをさらに確認した(図4A)。
本発明者らの知る限り、SCA嚢胞から得られた前記の液体において、VHLまたは他のいかなる遺伝子の突然変異も同定されていない。序論で議論したように、細針吸引によって得られた試料におけるこのような突然変異の実証は、診断的観点から有用であり得る。VHL突然変異がSCAからの液体において同定され得るかどうかを調べるために、本発明者らはVHL遺伝子配列を含有する特注のチップをデザインして、18例のSCA嚢胞液のDNAからのライブラリをキャプチャーするために使用した。これらの例のうち9例(50%)において、本発明者らはVHLの点突然変異を同定した(表S5)。2つはナンセンスコドンを生成し、1つはフレームシフトを生じる1bp欠失であり、1つはスプライスドナー部位を変化させたことから、該突然変異のうちの4つはコードされたタンパク質の機能を不活化することが予想された。5つのミスセンス突然変異のうち、4つはVHL症候群を有する患者の生殖系列において観察されたものと同一であった。28例のIPMNおよび3例のMCNからVHL遺伝子を同様にキャプチャーした結果、VHL突然変異がないことが明らかになった。
実施例4
IPMNの分析
十分にアノテーションされた169個の癌遺伝子を分析した以前の研究において、本発明者らはIPMN試料においてGNASおよびKRASの反復性の突然変異を同定し、これらの突然変異が、それぞれ、IPMNの66%および81%で存在することを示した(41)。KRAS突然変異はこれまでにIPMNおよびPDAにおいて同定されている(42)(43)。これらの分析を拡張するために、本発明者らは、顕微解剖した8例の高グレードのIPMNおよび対応する正常組織に由来するDNAについてエクソーム全体のシーケンシングを実施した。
8例中7例のIPMNにおいて、少なくとも1つの染色体領域のLOHが同定された(図2、表S3)。VHL遺伝子を含む領域の消失は同定されなかった。もっとも一般的に欠失した領域は17q染色体上にあり、nt 53,790,884〜53,939,507で画定され、8試料中4試料で観察された(図2、表S3、図3Bの例)。デジタル核型分析により、これらの4例では、LOH事象は欠失した17q染色体領域の倍加に関連していなかった。
体細胞突然変異を同定するためのSCAに関する前記の同一の基準を用いて、8例のIPMNにおいて、191個の遺伝子内の合計211個の非同義の突然変異を同定した(表S4)。腫瘍当たり26±12個の非同義の体細胞突然変異が存在し(表S1)、SCAにおける個数の2倍超であり(p<0.001)、PDAにおいて見出された個数のほぼ半分であった(p<0.001)。
8例のIPMNのうちの2例以上で突然変異した遺伝子は6個だった(表S4)。予想された通り、KRASおよびGNASの両方の突然変異は一般的に見られて、各々5例の腫瘍において同定され、それぞれ常にコドン12およびコドン201で同定された(表S4)。APCにおいて2つの突然変異が観察された。APCは、その突然変異が常に結腸直腸腫瘍形成を引き起こす周知の腫瘍抑制遺伝子である(44)。APC突然変異の一つはナンセンス塩基置換であり(IPMN 4におけるR450X)、結腸直腸癌を有する患者の生殖系列で生じる不活化突然変異の典型であった(http://www.umd.be/APC/)。2つ目は、機能的影響がたとえあったとしても不明である、ミスセンス置換(嚢胞21におけるR99W)であった。2例の異なるIPMNがOBFC1(オリゴヌクレオチド/オリゴ糖結合フォールド含有1(oligonucleotide/oligosaccharide-binding fold containing 1))における突然変異を有しており、他の2例がCACAN11(カルシウムチャネル、電圧依存性、Tタイプ、アルファ11サブユニット)における突然変異を有した。これらの2つの遺伝子を腫瘍のプロセスと結びつける遺伝的データまたは機能的データはない。所与の突然変異がタンパク質の構造的特性または生化学的特性を変化させる確率を求めるCHASM分析(45)により、OBFC1およびCACAN11におけるミスセンス突然変異、ならびにAPCにおける前記ミスセンス突然変異がコードされたタンパク質の機能を変化させる可能性はあまりなく、パッセンジャーであり得ることが示された。この研究で同定されたすべてのミスセンス突然変異のCHASMスコアを表S3に示す。
IPMNでもっとも一般的に突然変異した遺伝子はRNF43であったが、これはIPMNにおいてLOHが生じる17q染色体の小さな領域内の、17番染色体上のnt 53,786,037〜53,849,930に位置する(表S3)。RNF43にコードされるタンパク質は内因性のE3ユビキチンリガーゼ活性を有することが示されている(46)。RNF43は、17q染色体のLOHを起こした4例すべてを含む、8例中6例の腫瘍で突然変異した。6例中5例の突然変異は、ナンセンスコドンとなる塩基対置換であった(表S4)。この遺伝子における突然変異の個数およびタイプに基づき、これがパッセンジャーとして機能する確率は極めて低かった(<10〜12、二項検定)。6例の各RNF43突然変異はライゲーションをベースとする独立のアッセイによって確認された(図4)。RNF43の発現は細胞増殖の亢進と相関することが示されているが(47)、IPMNにおけるこの遺伝子の不活化突然変異により、この遺伝子が膵管上皮細胞の腫瘍形成を抑制することはほぼ明確である。
実施例5
MCNの分析
IPMNと比べてMCNでは比較的少ないLOH事象が同定された(図2、表S3)。2例以上の腫瘍で消失した領域は一つのみであり、この領域は17q染色体上であり、RNF43遺伝子を含んでいた(図3Cの例)。
8例のMCNにおいて、115個の遺伝子内に分布した合計128個の非同義の体細胞突然変異を同定した(表S4)。腫瘍当たり16.0±7.6個の非同義の体細胞突然変異が存在し、SCAよりも多いがIPMNよりは少なかった(表S2)。RNF43遺伝子座のLOHを有する2例の腫瘍のうちの1例のRNF43を含め、3例のMCNがRNF43における遺伝子内突然変異を有した。RNF43。変化のうちの2つはナンセンス突然変異(S41XおよびR371X)であり、3つ目はミスセンス突然変異(R127P)であった(表S4)。不活化突然変異が過剰に示される、このタイプの突然変異のパターンは、腫瘍抑制遺伝子に特徴的であり、IPMNにおいてRNF43について観察されたものと類似している(表1)。切断突然変異を有する1例のMCNは低グレードのMCN(MCN166)であり、RNF43突然変異を有する他の2例の腫瘍は高グレードのMCNであった。
これらのRNF43突然変異に加えて、KRAS突然変異が6例のMCNで見出され、TP53突然変異が2例で見出された。KRAS突然変異は、MCNに関するこれまでの研究と一致して、すべてコドン12に存在していた(41,48)。TP53の変化はこれまでに他の癌のタイプで観察されたものと同一であった(http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/)。TP53突然変異はしばしば攻撃性に関連するため、この遺伝子の突然変異を有するMCNはPDAへと進行する可能性が極めて高いものであり得る。最後に、2例以上のMCNで突然変異した遺伝子は他に2つ(MUC4およびPOTEJ)あったが、CHASMによる突然変異の分析ではそれらがタンパク質の機能に対して実質的な影響を有するとは示唆されなかった(表S4)。
実施例6
SPNの分析
SPNに関するもっとも注目すべき発見は、同定された遺伝子変化が少ないことであった。何らかのLOHが示されたのは、研究された8例の腫瘍のうちの1例のみであった(図2D、図3、および表S3)。LOHが存在しないのは、非腫瘍性細胞による顕微解剖試料の汚染のためではなかった;この可能性は、病理組織学的分析によって、および後述される通りCTNNB1変異型アレルの高い割合(39%〜59%;表S4)によって排除することができた。
LOHと同様に、点突然変異の個数も極めて少なかった(腫瘍当たり2.9±1.8個の突然変異)。この個数は他の嚢胞タイプのいずれよりも低く(p<0.001)、さらに、小児腫瘍(51)を含む全ゲノムシーケンシングによって今までに調べられた腫瘍タイプよりも少なかった(49,50)。8例中5例の腫瘍は、わずか1個または2個の体細胞突然変異を含んだ(表S4)。それにも関わらず、すべての腫瘍がCTNNB1のミスセンス突然変異を有しており、これらのすべての突然変異がコドン32、コドン33、コドン34、またはコドン37に存在していた。コードされるタンパク質(β-カテニン)のこの領域は、このタンパク質の制御に重要である(52-54)。コドン32とコドン37の間にあるセリンまたはスレオニン残基でリン酸化されると、β-カテニンはE3ユビキチンリガーゼによって分解される。この領域内の突然変異はリン酸化およびその結果生じるタンパク質の分解を阻害する(55,56)。これまでの研究で、SPNではほぼ必ずCTNNB1が突然変異していることが示されている(57,58)。本発明者らの研究は、シーケンシングによってすべてのコード遺伝子が評価されるときでも、多くの場合では、CTNNB1突然変異がこれらの腫瘍で見られる唯一の突然変異であることを示している。これらの腫瘍の転座またはエピジェネティックな事象に関する調査により、さらなる変化の同定につながる可能性がある。もしそうでないならば、この腫瘍タイプは、成人における固形腫瘍の形成には数個の連続した突然変異が必要であるという一般的な見解に対する例外になるであろう(59)。
参考文献
引用される各参考文献の開示は本明細書に明確に組み入れられる。
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Claims (15)

  1. 以下の工程を含む、膵嚢胞を鑑別することを補助する方法:
    膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、膵嚢胞に特徴的な突然変異に関して試験する工程であって、以下のa-dの各遺伝子が試験され
    VHLにおける突然変異により漿液性嚢胞腺腫が示され、
    GNASにおける突然変異により膵管内乳頭粘液性腫瘍が示され、
    RNF43における突然変異により膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍が示され、
    CTNNB1における突然変異により充実性偽乳頭状腫瘍が示される、工程:
    a.VHL;
    b.GNAS;
    c.RNF43および
    d.CTNNB1。
  2. 以下の工程を含む、膵嚢胞を膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍として同定することを補助する方法:
    膵嚢胞の嚢胞液または上皮細胞から単離された核酸を、RNF43およびKRASにおける突然変異に関して試験する工程であって、該遺伝子の一方または両方における突然変異により膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞腫瘍が示される、工程。
  3. 以下の工程をさらに含む、請求項2に記載の方法:
    前記核酸をGNASにおける突然変異に関して試験する工程であって、GNASにおける突然変異により前記嚢胞が膵管内乳頭粘液性腫瘍であることが示唆される、工程
  4. 突然変異が置換突然変異またはヘテロ接合性の消失である、請求項2に記載の方法。
  5. KRAS突然変異がコドン12内にある、請求項2に記載の方法。
  6. GNAS突然変異がコドン201内にある、請求項3に記載の方法。
  7. CTNNB1突然変異が、コドン32〜コドン37より選択される一つのコドン内にある、請求項1に記載の方法。
  8. KRASの核酸さらに試験される、請求項1に記載の方法。
  9. a.VHL;
    b.GNAS;
    c.RNF43および
    d.CTNNB1
    各々の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドのセットを含む固体支持体
    を含む、膵嚢胞を鑑別診断するための装置であって、該オリゴヌクレオチドが突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズし、該固体支持体が100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む、装置。
  10. a.VHL;
    b.GNAS;
    c.RNF43および
    d.CTNNB1
    各々の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブのセット
    を含む、膵嚢胞の鑑別診断に役立つキットであって、該オリゴヌクレオチドが突然変異部位を含むまたは突然変異部位に隣接する領域にハイブリダイズし、該キットが100個未満の遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドを含む、キット。
  11. 試験がハイブリダイゼーションを利用する、請求項1または2に記載の方法。
  12. 試験がライゲーションを利用する、請求項1または2に記載の方法。
  13. 試験が増幅を利用する、請求項1または2に記載の方法。
  14. KRAS遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項9に記載の装置。
  15. KRAS遺伝子に対して相補性であるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブをさらに含む、請求項10に記載のキット。
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