JP5904484B2 - In−111封入リポソームを含む放射性医薬組成物 - Google Patents
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Description
エチレンジシステインを封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームと、
エチレンシステインよりも脂溶性が高い有機配位子を含む111In錯体と、
を混合し、
前記EC封入リポソーム中のエチレンジシステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに111Inを封入させる、111In封入リポソームの製造方法を提供するものである。
エチレンシステインよりも脂溶性が高く、かつ、111Inに配位結合して111In錯体を形成するための有機配位子を有する第2の容器と、
を備え、
前記111In錯体と、前記EC封入リポソームとを混合し、前記EC封入リポソーム中のエチレンジステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに111Inを封入させるためのキットを提供するものである。
EC封入リポソームは、当業者により通常用いられるリポソーム形成性物質を原料として、公知の方法(例えば、特許文献1明細書記載の方法)に従って製造する事ができる。以下、好ましい態様における製造方法の例を、記載する。
リポソーム内への111Inの導入に用いる脂溶性リガンドとは、エチレンジシステインよりも脂溶性の高い有機配位子であるが、具体的には、111Inとの間で形成された錯体が、後述するインキュベーション環境下において111Inをリポソームの水性コア内のエチレンジシステインに受け渡し得る錯体となるようなものを脂溶性リガンドとして用いることができる。これは、後のインキュベーションにおいてトランスキレーションによってリポソーム内で111In−EC錯体が形成されるようにするためである。この様なリガンドとしては、好ましくは、8−ヒドロキシキノリン、トロポロン、又はアセチルアセトンを用いることができ、特に好ましくは8−ヒドロキシキノリンを用いることができる。また、インキュベーション環境下、具体的には、水中、かつ、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH5〜6において、ECよりも111Inに対する錯体安定度定数が小さい他の脂溶性リガンドを用いても良い。
好ましい態様において、111In‐EC封入リポソームは、上記で調製した111Inと脂溶性リガンドとの錯体と、EC封入リポソームとを混合し、一定条件下でインキュベートすることによって得ることができる。
次に、111In‐EC錯体封入リポソームの使用方法について述べる。
111In‐EC錯体封入リポソームは、ヒトなどの哺乳類への投与に適した形態で含む放射性医薬組成物として使用することができる。放射性医薬組成物は、水や生理食塩液に111In‐EC錯体封入リポソームを懸濁させたものであることが好ましい。かかる放射性医薬組成物は、緩衝剤、薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤などの追加成分を適宜含んでいてもよい。
次に、111In‐EC錯体封入リポソームを製造するためのキットについて説明する。このキットは、
(i)エチレンジシステイン(EC)を封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームを有する第1の容器、および
(ii)上記脂溶性リガンドを有する第2の容器、
を備えるものである。
このキットは、111In錯体と、EC封入リポソームとを混合し、EC封入リポソーム中のエチレンジステインと有機配位子との配位子交換により、EC封入リポソームにさらに111Inを封入させるためのキットであるが、こうした11In‐EC錯体封入リポソームを製造するための一連の操作方法を記載した使用説明書を含むことがより好ましい。
(エチレンジシステインの合成)
エチレンジシステイン(N,N'−ethylene dicysteine、EC)の合成はBrondeauらの方法(Blondeau et al.,Canadian J.Chem.45:49−52,1967)に準じて行った。L−チオプロリン(thiazolidine−4−carboxylic acid,東京化成工業株式会社製)のアンモニア溶液に金属ナトリウムを加え撹拌した後、塩化アンモニウムを加え室温で一晩撹拌し、生成した結晶を水に溶解し塩酸で析出させることによって得た(融点251−254℃)。
ナス型フラスコ内で、クロロホルムに溶解させたジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(日本油脂株式会社製)とコレステロール(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)をモル比2:1(20μmol:10μmol)で混合させた後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧下で溶媒を留去することにより、フラスコ内壁に脂質の薄膜を形成させた。さらに、エバポレーターで4時間以上減圧下に置き、溶媒を完全に留去した。別に、エチレンジシステインを5%(w/v)マンニトール水溶液に加え、1mol/L水酸化ナトリウムを少量加えて溶解し、10mmol/LのEC溶液を調製した。調製したEC溶液2mLを脂質の薄膜を形成した上記フラスコに添加し、65℃湯浴にて脂質薄膜を膨潤させ、多重膜リポソーム(MLV)を懸濁液として得た。リポソーム形成装置(製品名:The Extruder、日油リポソーム株式会社製)に、ポリカーボネート・メンブランフィルター(製品名:Nuclepore(登録商標)、Whatman社製)孔径0.1μm2枚、0.2μm1枚を重ねてセットし、加圧ろ過を繰り返し、単膜リポソーム(SUV)を得た。得られたリポソームは生理食塩水で膨潤したSephadex(登録商標)G−50 fine(GE ヘルスケア株式会社製)を担体とするカラム(1.5cmφ×30cm)に付し、生理食塩水で溶出して精製した。得られたリポソーム画分を424,000×gで20分間遠心分離し、得られた沈殿を生理食塩水1.5mLで再懸濁してEC封入リポソーム溶液を調製した。得られたEC封入リポソームの平均直径を動的光散乱(形式:Microtrac UPA 日機装株式会社製、溶媒:水、測定温度25℃、測定時間:180秒×3)にて測定したところ、104.8nmであった。
111In溶液(塩化インジウム(111In)注、日本メジフィジックス株式会社製)600μLと8−ヒドロキシキノリン(和光純薬株式会社製)のエタノール溶液(51mmol/L)15μLを混和し、これに0.5mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)200μLを加え、40℃で30分間インキュベーションし、111In−オキシン溶液を調製した。
111In−EC錯体封入リポソームは配位子交換反応により調製した。上記で調製したEC封入リポソーム溶液1.5mLを、上記で調製した111In−オキシン溶液(全量)に加え、40℃で30分インキュベーションした後、424,000×g、20分間、遠心し、111In−EC錯体封入リポソーム画分を沈殿として分離した。これを生理食塩水で再懸濁して111In−EC封入リポソームを得た。未封入の111In−オキシンは上清として除去した。得られた111In−EC錯体封入リポソームにつき、下記式(1)に従って標識率を測定したところ、80〜90%であった。放射能は、キューリーメータ(形式:IGC−7、アロカ株式会社製)で測定した。
5%(w/v)マンニトール溶液に少量の水酸化ナトリウムを滴下してpHを8とした液にECを溶解し、10mmol/L EC溶液を調製した。
111In溶液(塩化インジウム(111In)注、日本メジフィジックス株式会社製)300 μLと0.2mol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)200μLを混合し、これに上記10mmol/L EC溶液を60μL加えて111In−EC錯体溶液を調製した。溶液中の111In−EC錯体の存在、及び、111In−EC錯体以外の111Inの化学形が溶液中に存在しないことは、TLCで確認した。
別に、健常マウスを代謝ケージ内に置き、排泄された尿を採取した。採取したマウスの尿を精製水で20倍に希釈した後、フィルター(孔径0.2μm)にて濾過した(以下、希釈マウス尿という)。
上で調製した111In−EC錯体溶液20μLを希釈マウス尿250μLと混合し、111In−EC錯体/マウス尿混液とした。
なお、TLCを用いた111In−EC錯体の分析条件は下記のとおりである。
TLCプレート:シリカゲルプレート(製品名:Silica gel 60、メルク株式会社製)
展開相:エタノール/0.4mol/L酢酸緩衝液(pH6)の混合液(3:1)
検出:フルオロイメージアナライザー(形式:FLA−7000, 富士フイルム株式会社製)
111In−EC錯体封入リポソーム溶液200μLと生理食塩水で飽和させた1−オクタノール500μLを混合し、5分間激しく揺とうした後、5分間静置し、遠心分離(1,000rpm×5分)して、水相とオクタノール相に分離した。それぞれの相中の放射活性を測定し、111Inの水相への移行を確認した。さらに、水相をHPLCによって分析し、水相内における111Inの化学形を同定した。その結果、水相内の111Inが、111In−EC錯体の形で存在している事が確認された。本実験においては、リポソーム水性コア内に存在していた111Inは、全て水相に移行している。当該水相中の111Inが111In−EC錯体の形で存在していた事から、111In−EC錯体封入リポソームの水性コア内に存在している111Inは、111In−EC錯体の形で存在していることが確認された。
カラム:COSMOSIL 5C18−MS−II(4.6mm×150mm、ナカライテスク株式会社製)
移動相:0.01mol/L酢酸アンモニウム水溶液(pH:6.8)とアセトニトリルとの混合溶媒(体積比95:5)
検出器:ガンマ線検出装置(ポジトロンスペクトロメータ)(形式:JSM−1405、アロカ株式会社製)
Sarcoma180担がんモデルは、ddYマウス(7〜9週齢、体重30〜40g)の肢皮下にSarcoma180細胞2×106個を移植して作成し、移植後8〜12日後に実験に供した。リン脂質濃度5μmol/mLとなるように生理食塩水で希釈した111In−EC錯体封入リポソーム溶液0.2mL(0.2〜1MBq)をSarcoma180担がんマウスに尾静脈より投与した。投与1、6、12、24、48時間後に断頭によって屠殺した後、各組織を摘出し重量測定を行い、さらに放射能をオートガンマカウンター(形式:2480WIZARD2、株式会社パーキンエルマージャパン製)で測定した。
111In−EC錯体封入リポソームを投与した担がんマウスにおける腫瘍集積を小動物用nanoSPECT/CT装置(Bioscan社製)を用いて画像化した。具体的には、実施例1で調製した111In−EC封入リポソーム(18.5MBq)を、実施例2と同様な方法で作製した担がんマウス(7〜9週齢、体重30〜40g)に尾静脈から投与し、投与後1及び26時間後に画像を収集した。4検出器を用いて、総収集方向28、1方向につき150秒の収集を行い、OSEM法を土台とするInVivoScopeソフトウエア(Bioscan社)を用いて、画像再構成を行った。Subset/Iterationを7/1−3,14/4−6,28/7−9(収集方向数28)とし、voxel sizeを0.3mm、filter sizeをvoxel sizeの35%とした。
ECの代わりにニトリロ三酢酸(NTA)を用い、上記実施例1と同様の方法を行って111In−NTA錯体を封入したリポソーム(111In−NTA錯体封入リポソーム)を調製した。具体的には、ECの代わりにNTAを用いてNTA封入リポソーム溶液を調製し、111In−オキシン溶液との配位子交換反応により、111In‐NTA錯体封入リポソームを得た。なお、NTA封入リポソームの調製に際しては、エチレンジシステインを5%(w/v)マンニトール水溶液に溶解して得た溶液の代わりに、ニトリロ三酢酸を5%(w/v)マンニトール含有50mmol/L HEPES緩衝液(pH7.4)に溶解した液(10mmol/L)を用いた。
比較例1で調製した111In−NTA錯体封入リポソームを用いた以外は実施例3と同様な方法で、Sarcoma180担がんマウスにおける111In−NTA錯体封入リポソームの体内動態及び排泄を観察した。
実施例2記載の方法により調製した111In−NTA錯体封入リポソームを投与した担がんマウスにおける腫瘍集積を、実施例4と同様にして画像化した。ただし、画像収集は、投与後1及び24時間後に行った。
Claims (7)
- リン脂質を用いて製造されたリポソーム中に111Inとエチレンジシステインとの錯体を封入させた111In封入リポソームを含み、
該 111 In封入リポソームは、
エチレンジシステイン(EC)を封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームと、エチレンジシステインよりも脂溶性が高い有機配位子を含む 111 In錯体とを混合し、EC封入リポソーム中のエチレンジシステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに 111 Inを封入させて得られた、放射性医薬組成物。 - 前記有機配位子が、8−ヒドロキシキノリン、トロポロン及びアセチルアセトンからなる群から選択される、請求項1に記載の放射性医薬組成物。
- 前記有機配位子が、8−ヒドロキシキノリンである、請求項1又は2に記載の放射性医薬組成物。
- リン脂質を用いて製造されたリポソーム中に 111 Inとエチレンジシステインとの錯体を封入させた 111 In封入リポソームを含み、
該 111 In封入リポソームは、
エチレンジシステイン(EC)を封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームと、エチレンジシステインよりも脂溶性が高い有機配位子を含む 111 In錯体とを混合し、EC封入リポソーム中のエチレンジシステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに 111 Inを封入させて得られた、腫瘍用画像化剤。 - リン脂質を用いて製造されたリポソーム中に111Inを封入させた111In封入リポソームを含む放射性医薬組成物の製造方法であって、
エチレンジシステイン(EC)を封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームと、エチレンジシステインよりも脂溶性が高い有機配位子を含む111In錯体とを混合し、
前記EC封入リポソーム中のエチレンジシステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに111Inを封入させることを含む、放射性医薬組成物の製造方法。 - 前記有機配位子が、8−ヒドロキシキノリン、トロポロン及びアセチルアセトンからなる群から選択される、請求項5に記載の放射性医薬組成物の製造方法。
- エチレンジシステイン(EC)を封入し、リン脂質を用いて製造されたEC封入リポソームを有する第1の容器と、
エチレンジシステインよりも脂溶性が高く、かつ、111Inに配位結合して111In錯体を形成するための有機配位子を有する第2の容器と、
を備え、
前記111In錯体と、前記EC封入リポソームとを混合し、前記EC封入リポソーム中のエチレンジステインと前記有機配位子との配位子交換により、前記EC封入リポソームにさらに111Inを封入させるためのキット。
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