以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について実施形態別に区別する際には、A,B,C,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要(基本概念、基本構成)
2.第1実施形態(片方向の信号伝送、ケーブル内は導線伝送)
3.第2実施形態(双方向の信号伝送、ケーブル内は導線伝送)
4.第3実施形態(接続適合性検知機構)
5.第4実施形態(ケーブル内は光伝送)
6.第5実施形態(電源ケーブルへの適用)
7.比較例との対比
<全体概要>
[基本概念]
本実施形態の仕組みは、第1の電子機器と第2の電子機器をケーブルで接続する場合に、コネクタ部分における信号伝送をコンタクト(ピン)による電気的な接触によるものではなく、無線伝送にする点に大きな特徴がある。電子機器とケーブルがコネクタで接続(嵌合)されたとき(換言すると両者が比較的近距離に配置された状態で)、伝送対象信号を無線信号に変換してから、この無線信号を無線信号伝送路を介して伝送するようにする。そのための機構としては、変調処置や復調処理を行なう信号変換部(以下では無線通信部とも称する)と接続された結合部を各コネクタ部に設けておき、コネクタ同士が装着されることで両結合部の間に電磁界結合部が形成されるようにする。
コネクタ装置(の装着構造)がある規格(たとえば業界規格)に従ったものである場合は、電磁界結合部を、規格に従った装着構造の形状を満たすように導波構造のものとして設ける。好ましくは、各信号結合部と無線信号伝送路の構成を、レセプタクルとプラグが嵌合する際の装着構造に適用するのがよい。たとえば、装着構造に設けられる穴(あるいは孔)や樹脂モールドや金属材などを導波構造に利用することが考えられる。たとえば、規格によっては、装着構造の形状・位置などについても規格化されている場合がある。この場合、その装着構造のある決められた箇所に無線伝送路を結合する構成を適用することで、既存のコネクタとの互換性を確保し易い。
規格(標準インタフェースとも称する)は、現在存在しているものに限らず将来、規格となるものも含む。規格は、たとえばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc. ;米国電気電子学会)やJIS(日本工業規格)などの非商業的組織または政府組織(公的な規格団体)によって認められた正当な(法律上の)技術的ガイドライン(de jure technical guideline )に従った、ハードウェア開発またはソフトウェア開発の領域において均一性を確立するために使用される公的なインタフェースの場合が典型例である。ただし、このような公的なインタフェースに限らず、民間団体や単一の会社にて取り纏められた私的な標準インタフェース、いわゆる業界標準インタフェース(工業標準インタフェース)や事実上の業界標準インタフェースであってもよい。何れにしても、規格は、ある一定の取決めを満足する接続インタフェースであればよい。たとえば、ある会社によって製品または理念が開発され、それが広く使用されることで事実上の(デファクト;de facto)技術的ガイドライン(非公式な規格)となるような場合にも、本実施形態の規格に該当する。
たとえば、コネクタ嵌合部は金属材(シールドケース)で覆われることがあるし、コネクタ同士を装着の接合を強くするために、その金属材の一部に、凹状部と凸状部の組合せでなるロック機構を備えることがある。この場合、シールドケースをなす金属材の側面に薄型の電磁界結合部(両コネクタのカプラー部の対で構成される)を埋め込み、コネクタ同士が装着されたときに両カプラー部が相対して無線伝達が行なわれるようにする。このとき、金属材とロック機構を利用して電磁界結合部を構成することで、コネクタの形状を既存のものと変えることなく電磁界結合部を構成できる。
本実施形態の信号伝送システム(無線伝送システム)で使用する搬送周波数としてはミリ波帯で説明するが、本実施形態の仕組みは、ミリ波帯に限らず、より波長の短い、たとえばサブミリ波帯の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。本実施形態の信号伝送システムは、好適な事例としてたとえば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像装置、携帯電話装置、ゲーム装置、コンピュータなどにおいての機器間接続に適用される。
コネクタの適用箇所としては、複数(典型的には2つ)の電子機器をケーブルで接続する場合の電子機器側と接続ケーブル側のそれぞれに設けられるコネクタが典型的であるが、このような態様には限定されない。2つの電子機器の接続をケーブルを介さずに行なう場合もあるが、この場合は、各電子機器の接続箇所のコネクタに本実施形態の仕組みを適用すればよい。たとえば、USBメモリを電気機器本体に装着する場合のコネクタが該当する。ケーブルの片側が電子機器と一体の場合もあるが、この場合は、一体でない側のコネクタに本実施形態の仕組みを適用すればよく、電子機器と一体である側はコネクタ接続でないので、その箇所には無線伝送を適用することが不要になるのは言うまでもない。たとえば、表示モニタの映像ケーブルや電子機器のACケーブルなどが該当する。また、電子機器との接続に限らず、接続ケーブル同士を接続する場合、つまり一方の接続ケーブルが延長ケーブルの場合でもよい。延長ケーブルは、複数の接続ポートを有するものでもよい。たとえば、ハブ(HUB)やルータやテーブルタップなどが該当する。
コネクタ対(レセプタクルとプラグのそれぞれ)には、無線伝送路を挟んで、送信部と受信部が対となって組み合わされて配置される。両コネクタ間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。たとえば、レセプタクルが送信側となりプラグが受信側となる場合、レセプタクルに送信部が配置されプラグに受信部が配置される。プラグが送信側となりレセプタクルが受信側となる場合には、プラグに送信部が配置されレセプタクルに受信部が配置される。
たとえば、装置とケーブルを接続するコネクタの場合、レセプタクルとプラグには電源や信号を伝達するコンタクト電極とともに電極との相対位置が決められた電磁界結合部(無線のカプラー)が設けられ、プラグがレセプタクルに挿入されたとき電極同士が接触(接続)するとともに無線カプラー同士も相対する。無線カプラーには送信部や受信部が接続され、これによってコネクタ接続部分で無線により信号伝送を行なうことができる。
送信部は、たとえば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波の信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波の信号に変換する信号変換部)と、ミリ波の信号を伝送する伝送路(ミリ波信号伝送路)に送信側の信号生成部で生成されたミリ波の信号を結合させる送信側の信号結合部を備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
たとえば、送信側の信号生成部(信号変換部)は変調回路を有し、変調回路が伝送対象の信号を変調する。送信側の信号生成部はさらに変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波の信号(高周波信号)を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波の信号に変換することも考えられる。送信側の信号結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波の信号をミリ波信号伝送路に供給する。
一方、受信部は、たとえば、ミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波の信号を受信する受信側の信号結合部と、受信側の信号結合部により受信されたミリ波の信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号)を生成する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。たとえば、受信側の信号生成部は復調回路を有し、ミリ波の信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波の信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換することも考えられる。
つまり、レセプタクルとプラグとの間の信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、ミリ波信号により接点レスで伝送する(電気配線での伝送でない)ようにする。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送が要求されるもの)に関しては、ミリ波信号による通信インタフェースにより接点レスで伝送するようにする。要するに、レセプタクルとプラグの間において装着構造を介して電気的接触(電気配線)によって行なわれていた信号伝送をミリ波信号により無線で行なうものである。ミリ波帯で信号伝送を行なうことで、Gbpsオーダーの高速信号伝送を実現することができるようになるし、ミリ波信号の及ぶ範囲を制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
高速伝送が要求されないものに関しても、ミリ波信号による通信インタフェースにより非接触(接点レス)で伝送するようにしてもよい。
ここで、各信号結合部は、レセプタクルとプラグがミリ波信号伝送路を介してミリ波の信号が伝送可能となるようにするものであればよい。たとえばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えて電磁界的に結合をとるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに共振などを利用して静電的あるいは磁気的に結合をとるものであってもよい。
「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、ミリ波信号を伝送路中に閉じ込めつつミリ波信号を伝送させる構造を持つものがよい。たとえば、ミリ波信号伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路やミリ波誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、かつ、ミリ波信号の外部放射を抑える遮蔽材が設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路などにすることが考えられる。たとえばコネクタの外装としてシールドケースが存在することもあるが遮蔽材としてこのシールドケースを利用できる。この場合、シールドケースの側面に薄型の無線結合部を埋め込み、コネクタ同士が装着されたときに結合部が相対して無線伝達が行われるようにすることが考えられる。もちろん、レセプタクルとプラグが嵌合するときにはミリ波結合部間の距離を極めて短くできるので、積極的な閉込め構造を有していなくても外部放射や外部からの影響を抑制できる。
因みに、空気(いわゆる自由空間)の場合、各信号結合部はアンテナ構造や共振構造などをとることになり、その構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でなく、導波路を介しての高周波信号の伝送にすればよい。
好ましくは、他のコネクタ部が無線信号を伝送できるものであるか否かを判定する判定部(以下では接続適合性判定部とも称する)を備えるものとする。好ましくは、接続適合性判定部の判定結果を表示や音声などを利用して通知する通知部を備えるものとする。
接続適合性判定部は、たとえば、他のコネクタ部が無線結合部を有することで電磁界結合部を形成できるものであるか否かを判定し、また、無線信号の仕様が他のコネクタ部との間で共通であるか否かを判定するものとすることが好ましい。この場合、接続適合性判定部は、他のコネクタ部が無線結合部を有するものであり、かつ、無線信号の仕様が他のコネクタ部との間で共通である場合に、無線信号を伝送できると判定し、それ以外は無線結合部を介しての無線信号を伝送できないと判定する。
接続適合性判定部としては、信号成分のパワーを検出するパワー検出部や、無線通信部が受信した受信信号に基づいて予め定められた符号を検出する符号検出部を使用する。たとえば、相対するカプラー部の存在を検出する機能と、相対するカプラー部が存在した場合に無線による信号伝送が有効な状態であることを認識する機能を設け、それらの情報をコネクタ接続された装置で共有して無線の使用を制御するとよい。つまり、全てのコネクタ装置が無線結合部を有するものである場合に伝送対象信号を各コネクタ装置を介して無線伝送することを許可し、それ以外は無線伝送を禁止するように制御する。本実施形態を適用するインタフェースと従来のインタフェースが混合して使われても、無線機能の対応可否を相互に認識して狭帯域伝送と広帯域伝送を適時選択でき、信号伝送の側面からの下位互換性を確実に担保できる。
接続ケーブルで電子機器を接続する場合は、コネクタ接続部でのインタフェースを無線で行なった後に、広帯域情報を接続ケーブルで伝送することになる。この場合、好ましくは、広帯域情報を接続ケーブルで伝送するための信号処理で使用する同期クロックを、無線伝送を行なうための搬送信号を元にして生成するとよい。同期クロックの生成回路を簡易にできるし、同期クロックと搬送信号を同期させた状態で処理できるので、同期クロックと搬送信号の低周波ビートによって無線回路(変調回路や復調回路)の特性が変動するのを避けられる。
好ましくは、信号処理時に使用されるタイミング信号を、変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成してタイミング信号と搬送信号の同期をとることで、タイミング信号生成部の回路規模を小さくし、また、変調特性の変動を抑制するとよい。
好ましくは、接続ケーブルは光信号を伝送するものとする。この場合、無線信号を復調して得た電気信号を光信号に変換して接続ケーブルに供給し、接続ケーブルを伝送してきた光信号を電気信号に変換して変調処理用の伝送対象信号とする。無線伝送の前後の接続ケーブルでの信号伝送を光伝送にすることで、接続ケーブルの信号伝送に関しても、より高速性・大容量性に適するようになる。
[基本構成]
図1は、本実施形態の信号伝送システムの基本構成を説明する図である。信号伝送システム1は、第1の電子機器2と、接続ケーブル4(コネクタ装置の一態様:ハーネス、ケーブルコネクタなどとも称される)と、第2の電子機器8とで構成されている。
接続ケーブル4は、ケーブル部40と、ケーブル部40の電子機器2側の端部に設けられたコネクタ部(コネクタプラグ:以下プラグ42と記す)と、ケーブル部40の電子機器8側の端部に設けられたコネクタ部(コネクタプラグ:以下プラグ44と記す)とで構成されている。
電子機器2には、接続ケーブル4のプラグ42と嵌合可能なコネクタ部(コネクタレセプタクル:以下レセプタクル22と記す)が設けられている。電子機器8には、接続ケーブル4のプラグ44と嵌合可能なコネクタ部(コネクタレセプタクル:以下レセプタクル84と記す)が設けられている。電子機器2と電子機器8とが接続ケーブル4で接続されることで、電子機器2から電子機器8側への信号伝送や、逆に電子機器8から電子機器2側への信号伝送が可能となっている。
ここで、本実施形態の信号伝送システム1は、コンタクト電極を利用する通常の電気的な接続系統の他に、無線で信号接続を行なう系統も設けられている。以下では、無線接続の系統に着目して説明する。
接続ケーブル4に関しては、プラグ42は、無線通信部402と有線通信部404を具備した集積回路である通信チップ401を備えており、プラグ44は、無線通信部602と有線通信部604を具備した集積回路である通信チップ601を備えている。
電子機器2は、無線による信号伝送の対象となるベースバンド信号の一例である広帯域のデータを処理する広帯域情報処理部200とプラグ44の無線通信部402と対応する無線通信部202を備えている。無線通信部202と無線通信部402の間が無線で信号接続を行なう部分であり、電磁界結合部12が構成されるようになっている。
電子機器8は、無線による信号伝送の対象となるベースバンド信号の一例である広帯域のデータを処理する広帯域情報処理部800とプラグ46の無線通信部602と対応する無線通信部802を備えている。無線通信部602と無線通信部802の間が無線で信号接続を行なう部分であり、電磁界結合部14が構成されるようになっている。
図示しないが、電子機器2と電子機器8は、必須ではないが、この他にも、無線による信号伝送の対象とならない信号の一例である狭帯域のデータを処理する狭帯域情報処理部やクロック信号を処理するクロック処理部や電源部なども備えるようにしてもよい。たとえば、ケーブル部40で有線伝送を行なうための信号処理や受信側の電子機器2、電子機器8でデータ再生処理を行なう場合に、データ生成側と同様の同期クロック(データクロックとも称する)を使用することがある。同期クロックをデータに重畳して伝送することも考えられるが、同期クロックとデータを分離して伝送するのが最も単純な解決手法である。同期クロックの代わりにデータとの位相は確定していないが周波数だけはデータレートと正確な整数比を持つ参照クロックを伝送することもある。
ここで、図1(1)に示す第1構成例の場合、無線通信部202をレセプタクル22内に収容し、無線通信部802をレセプタクル84内に収容している。一方、図1(2)に示す第2構成例の場合、無線通信部202をレセプタクル22外(電子機器2の筐体内)に収容し、無線通信部802をレセプタクル84外(電子機器8の筐体内)に収容している。その他の点は第1構成例と同じである。第2例の場合、無線通信部202と広帯域情報処理部200(さらには狭帯域情報処理部なども)とを1つの半導体集積回路に収容し、また、無線通信部802と広帯域情報処理部800(さらには狭帯域情報処理部なども)とを1つの半導体集積回路に収容できる利点がある。
広帯域情報処理部200や広帯域情報処理部800並びに無線通信部202および無線通信部802は、送信系の処理と受信系の処理の何れか一方でもよいし双方の機能に対応したものでもよい。たとえば、電子機器2側から電子機器8側への広帯域情報の信号伝送の場合、広帯域情報処理部200は広帯域情報生成部として機能し無線通信部202は無線送信部として機能し、広帯域情報処理部800は広帯域情報再生部として機能し無線通信部802は無線受信部として機能する。広帯域情報処理部200が広帯域のベースバンド信号を生成して無線通信部202に渡し、広帯域情報処理部800は無線通信部802で復調された広帯域のベースバンド信号に基づいて予め定められた信号処理を行なう。
電子機器8側から電子機器2側への広帯域情報の信号伝送の場合、広帯域情報処理部800は広帯域情報生成部として機能し無線通信部802は無線送信部として機能し、広帯域情報処理部200は広帯域情報再生部として機能し無線通信部202は無線受信部として機能する。そして、広帯域情報処理部800は広帯域のベースバンド信号を生成して無線通信部802に渡し、広帯域情報処理部200は無線通信部202で復調された広帯域のベースバンド信号に基づいて予め定められた信号処理を行なう。
双方向通信に対応する場合、これらの両機能を実現するように広帯域情報処理部200および広帯域情報処理部800と無線通信部202および無線通信部802が作用する。すなわち、広帯域情報処理部200は、広帯域のベースバンド信号を生成するとともに、無線通信部202で復調されたベースバンド信号に基づいて信号処理を行なう。広帯域情報処理部800は、広帯域のベースバンド信号を生成するとともに、無線通信部802で復調されたベースバンド信号に基づいて信号処理を行なう。
有線通信部404と有線通信部604は、両者間が導線(電気配線)や光配線(光ケーブルや光シートバスなど)などのケーブル部40で接続されており、両者間で広帯域のベースバンド信号(広帯域データ)を有線伝送する。
このような仕組みにすることで、レセプタクルとプラグが装着(嵌合)された状態で信号伝送を行なう場合に、電気配線では実現困難な伝送速度・伝送容量の信号インタフェースを実現できる。その際、電気配線により接続をとる場合のように多配線を必要としないので、筐体形状や構造が複雑化することがない。また、ミリ波帯を使用すれば電気配線によらずに高速信号伝送を実現し易く、機器間のケーブル接続における他の電気配線に対して妨害を与えずに済む。形状か小さい、あるいは、端子数が多いコネクタおよび信号配線に依存することなく、一方向または双方向に、無線(ミリ波)の信号で、簡単かつ安価な構成で、レセプタクルとプラグの間の信号インタフェースを構築できる。
<第1実施形態>
図2〜図2Aは、第1実施形態の信号伝送システム1Aの全体構成を説明する図である。第1実施形態は、電子機器2側から電子機器8側へ信号伝送を行なう片方向通信に、広帯域信号に関してコネクタ部に無線伝送を行なう本実施形態の仕組みを適用するものである。特に、後述の第4実施形態との相違として、第1実施形態は、片方向通信であるとともに、接続ケーブル4における広帯域信号用の有線伝送を電気配線(導線9010)で行なうものである。
ここで、図2に示す第1実施形態の第1例の構成は、ケーブル部40は狭帯域信号と広帯域信号を各別の配線で伝送する態様である。図2Aに示す第1実施形態の第2例の構成は、ケーブル部40は狭帯域信号と広帯域信号を共通の配線(電気配線に限らず光配線も含む)で伝送する態様である。何れも、第1の電子機器2と第2の電子機器8が接続ケーブル4で接続された状態で示している。
[構成:第1例]
最初に、図2に示す第1例の構成について説明する。第1の電子機器2は、広帯域情報処理部200(広帯域情報生成部)と無線通信部202(無線送信部)を備える。電子機器2は、無線による信号伝送の対象とならない信号の一例である狭帯域のデータを処理する狭帯域情報処理部204(狭帯域情報生成部)と、クロック信号を処理するクロック処理部206(クロック生成部)と、電源部208を備える。電源部208は、接続ケーブル4を介して第2の電子機器8側に電源(DC電圧)を供給する電源供給回路を有する。
狭帯域情報処理部204、クロック処理部206、電源部208、および各信号に共通の基準電位(接地:GND )に関しての電子機器8側との接続を電気配線(導線接続)によって行なうべく、レセプタクル22にはコンタクト電極23(コネクタピン)が設けられている。レセプタクル22のコンタクト電極23と嵌合する接続ケーブル4のプラグ42にもコンタクト電極43が設けられている。コンタクト電極23とコンタクト電極43を纏めてコンタクトとも称する。
レセプタクル22外の無線通信部202とプラグ42内の無線通信部402の間を、無線で信号接続を行なう電磁界結合部12を構成するように、レセプタクル22にはカプラー部120(無線結合部)が設けられ、プラグ42にはカプラー部125(無線結合部)が設けられている。
第2の電子機器8は、広帯域情報処理部800(広帯域情報再生部)と無線通信部802(無線受信部)を備える。電子機器8はさらに、無線による信号伝送の対象とならない信号の一例である狭帯域のデータを処理する狭帯域情報処理部804(狭帯域情報再生部)と、クロック信号を処理するクロック処理部806(クロック再生部)と、電源部808を備える。電源部808は、接続ケーブル4を介して第1の電子機器2側から供給された電源に基づいて安定化した二次電源を生成する電源安定化回路(直流直流変換回路、DC−DCコンバータ)を有する。電源部808は、たとえば三端子レギュレータやツェナーダイオードなどの基準電源を利用した電源安定化回路を使用できる。電源部808を備えずに、電源部208が生成したDC電圧そのものを電子機器8側で使用してもよい。
狭帯域情報処理部804、クロック処理部806、電源部808、および各信号に共通の基準電位(接地:GND )に関しての電子機器2側との接続を電気配線(導線接続)によって行なうべく、レセプタクル84にはコンタクト電極85(コネクタピン)が設けられている。レセプタクル84のコンタクト電極85と嵌合する接続ケーブル4のプラグ44にもコンタクト電極45が設けられている。コンタクト電極45とコンタクト電極85を纏めてコンタクトとも称する。
レセプタクル84外の無線通信部802とプラグ44内の無線通信部602の間を、無線で信号接続を行なう電磁界結合部14を構成するように、レセプタクル84にはカプラー部130(無線結合部)が設けられ、プラグ44にはカプラー部135(無線結合部)が設けられている。
電磁界結合部12(カプラー部120およびカプラー部125)と電磁界結合部14(カプラー部130およびカプラー部135)の詳細構成については後述する。
接続ケーブル4のコンタクト電極同士(つまり、プラグ42のコンタクト電極43とプラグ44のコンタクト電極45)は、ケーブル部40内で導線接続されていて、電源とクロック信号と狭帯域信号が伝達される。
プラグ42内の通信チップ401は、電源端子が電源部208と電源部808の間の電源配線系統と接続され、基準端子が基準電位配線系統と接続される。必須ではないが、クロック処理部206とクロック処理部806の間のクロック信号配線系統から通信チップ401にクロック信号が供給されることもある。プラグ44内の通信チップ601は、電源端子が電源部208と電源部808の間の電源配線系統と接続され、基準端子が基準電位配線系統と接続される。必須ではないが、クロック処理部206とクロック処理部806の間のクロック信号配線系統から通信チップ601にクロック信号が供給されることもある。
電子機器2側の広帯域信号は無線通信部202で無線信号に変換され電磁界結合部12(カプラー部120およびカプラー部125)を介して無線信号でプラグ42に伝達される。さらに、プラグ42内の通信チップ401(無線通信部402)で電気信号に変換されて、有線通信部404によってケーブル部40内の導線9010を介して電子機器8側へ伝達される。詳しくは、先ず、電子機器8側のプラグ44へ電気信号が伝達され、プラグ44内の通信チップ601(有線通信部604)で受信された後に無線通信部602で無線信号に変換されて、電磁界結合部14(カプラー部130およびカプラー部135)を介して無線信号でレセプタクル84に伝達される。この無線信号は、電子機器8の無線通信部802で電気信号に変換され広帯域情報処理部800に供給される。
[構成:第2例]
次に、図2Aに示す第2例の構成について、第1例との相違点に着目して説明する。プラグ42の通信チップ401は、有線通信部406(有線送信部)と信号選択部408(セレクタ)を有する。有線通信部406は、電子機器2側の狭帯域情報処理部204およびクロック処理部206とコンタクト電極23およびコンタクト電極43を介して接続され、狭帯域信号およびクロック信号を受信する。信号選択部408は、無線通信部402で変換された電気信号(広帯域信号)と有線通信部406で受信された電気信号(狭帯域信号およびクロック信号)の何れか一方を選択して有線通信部404に供給する。
プラグ44の通信チップ601は、有線通信部606(有線受信部)を有する。有線通信部604は、復調した信号の内、広帯域信号は無線通信部602へ渡し、狭帯域信号とクロック信号は有線通信部606に渡す。有線通信部606は、電子機器8側の狭帯域情報処理部804およびクロック処理部806とコンタクト電極45およびコンタクト電極85を介して接続され、狭帯域信号およびクロック信号を送出する。
このような第2例の構成では、コンタクト経由で電子機器2側から入力された狭帯域信号およびクロック信号をプラグ42内の有線通信部406で受信して、信号選択部408により広帯域信号伝送とマルチプレクスして(時分割で何れか一方を選択して)伝送する。こうすることで、広帯域信号伝送用の導線と、狭帯域信号伝送用やクロック信号伝送用の導線を共用でき、全体の導線数を削減できる。
[電磁界結合部:第1例]
図3は、無線カプラー(電磁界結合部12および電磁界結合部14)の第1例を説明する図である。ここで、図3(1)は、第1の電子機器2のレセプタクル22と接続ケーブル4のプラグ42が嵌合されたときに形成される電磁界結合部12を説明する図である。図3(2)は、第2の電子機器8のレセプタクル84と接続ケーブル4のプラグ44が嵌合されたときに形成される電磁界結合部14を説明する図である。ここでは、信号電子機器2側から電子機器8側へミリ波帯で片方向通信する場合で説明する。
第1例は、カプラー部120とカプラー部125で構成される電磁界結合部12、およびカプラー部130とカプラー部135で構成される電磁界結合部14は何れも、空間伝送を適用するものである。
たとえば、図3(1)に示すように、電磁界結合部12は、レセプタクル22のカプラー部120は伝送路結合部122で構成されており、伝送路結合部122は高周波伝送路121(マイクロストリップライン)を介して無線通信部202(この例では無線送信部)と接続される。プラグ42のカプラー部125は、伝送路結合部127で構成されており、伝送路結合部127は高周波伝送路126(マイクロストリップライン)を介して無線通信部402(この例では無線受信部)と接続される。
図3(2)に示すように、電磁界結合部14は、レセプタクル84のカプラー部130は伝送路結合部132で構成されており、伝送路結合部132は高周波伝送路131を介して無線通信部802(この例では無線受信部)と接続される。プラグ44のカプラー部135は、伝送路結合部137で構成されており、伝送路結合部137は高周波伝送路136を介して無線通信部602(この例では無線送信部)と接続される。
レセプタクル22とプラグ42を嵌合した際に伝送路結合部122と伝送路結合部127が接近することで、また、レセプタクル84とプラグ44を嵌合した際に伝送路結合部132と伝送路結合部137が接近することで、ミリ波信号(ミリ波帯の無線信号)が電磁界結合し、ミリ波信号が空間伝送される。つまり、プラグをレセプタクルに装着した際に伝送路結合部同士が接近することで、両者間に形成される空間部分を「電磁界結合」によって無線伝送を行なう。
ここで、「電磁界結合」するとは、容量による結合、磁界による結合、電磁界による結合の何れかによって空間伝送を実現することを意味する。容量や磁界による結合の一例としては、無線信号(ここではミリ波信号)の波長をλとしたとき、レセプタクルとプラグの嵌合時にマイクロストリップラインから延長されたプローブ状の伝送路結合部同士がλ/4波長分重なるように位置関係を設定ておくことで、プローブ状の伝送路結合部間で共振することによりミリ波信号が伝送される。このような形態を「近接の電磁界結合を利用した無線伝送」と称する。電磁界による結合の場合は、伝送路結合部としてアンテナ状のものを使用して無線信号を伝送する。このような形態を「アンテナによる電磁界結合を利用した無線伝送」と称する。
図4は、第1例の電磁界結合部12および電磁界結合部14(その1:近接の電磁界結合を利用した無線伝送を適用したもの)の具体的な構造例を示す図である。ここで、図4はプラグをレセプタクルに装着した状態を示す。以下では、レセプタクル22とプラグ42が装着される場合(つまり電磁界結合部12が形成される場合)で説明する。レセプタクル22が凹状形状(Female、メス型)のコネクタ装置で、プラグ42が凸状形状(Male、オス型)のコネクタ装置であるとして説明するが、凹凸の関係を逆にしてもよい。
カプラー部120、カプラー部125は誘電体素材で形成された多層基板(誘電体基板)上に構成され、プラグ42の端子端面にカプラー部125をなす伝送路結合部127を設ける。同じ誘電体基板には集積回路が実装され、ケーブル導線が接続されてレセプタクル内回路やプラグ内回路を構成する。
たとえば、電子機器2の基板(装置基板2002)に取り付けられたレセプタクル22の各コンタクト電極23(広帯域信号ピン、狭帯域信号ピン、電源ピン、シールド兼GNDピン)は電子機器2の基板(装置基板2002)の裏面側で図示しない回路パターンと半田付けされている。レセプタクル22には誘電体基板2004が設けられ、無線通信部202を収容した通信チップ201が搭載されている。通信チップ201の広帯域情報処理部200側の所定の端子がコンタクト電極23と回路パターン2010を介して接続される。通信チップ201の無線通信部202の所定の端子が回路パターンで形成された高周波伝送路121と接続される。回路パターン(高周波伝送路121)の先端にカプラー部120をなすプローブ状の電磁界結合部122aが形成されている。
ケーブル部40側のプラグ42には誘電体基板4004が設けられ、無線通信部402と有線通信部404を収容した通信チップ401が搭載されている。ケーブル部40の導線9010のうちの広帯域信号を除く狭帯域信号、電源、シールド兼GNDの各導線9010が、誘電体基板4004の回路パターン4010を介して、対応するコンタクト電極43と接続されている。電源とシールド兼GNDの回路パターン4010は通信チップ401とも接続される。ケーブル部40の広帯域信号の導線9010は通信チップ401の有線通信部404の所定の端子と回路パターン4010で接続される。通信チップ401の無線通信部402の所定の端子が回路パターンで形成された高周波伝送路126と接続される。回路パターン(高周波伝送路126)の先端にカプラー部125をなすプローブ状の電磁界結合部127aが形成されている。
レセプタクル22とプラグ42のそれぞれは、既存のコネクタ装置と同様に、嵌合部分がシールドケース2050、シールドケース4050をなす金属材で覆われている(後述の図8も参照)。電磁界結合部127aは、シールドケース4050よりも外側(レセプタクル22との嵌合面側)で誘電体基板4004の端子面側(外側)に形成されており、絶縁保護膜4020で覆われている。
プラグ42のシールドケース4050がレセプタクル22のシールドケース2050に入り込むとカプラー部同士が相対する。レセプタクル22とプラグ42が規定の位置で嵌合し電磁界結合部122aと電磁界結合部127aが相対することで、プローブ状の電磁界結合部122aと電磁界結合部127aがλ/4波長分重なって共振し(これによって電磁界結合部12が形成され)、ミリ波が伝送されるようになっている。
図4Aは、第1例の電磁界結合部12および電磁界結合部14(その2:アンテナによる電磁界結合を利用した無線伝送を適用したもの)の具体的な構成例を示す図である。図4Aはプラグをレセプタクルに装着した状態を示す。以下では、図4に示した「近接の電磁界結合を利用した無線伝送」を適用した構造例との相違点に着目して説明する。
レセプタクル22、プラグ42のそれぞれのシールドケースの内面に、カプラー部120、カプラー部125をなすアンテナを配置し、コネクタ装着時に形成される空間をミリ波伝送する。たとえば、レセプタクル22は、プローブ状の電磁界結合部122aに代えてアンテナ結合部122bを備え、プラグ42は、プローブ状の電磁界結合部127aに代えてアンテナ結合部127bを備える。アンテナ結合部122bとレセプタクル22の筐体(モールド)との間には空間で構成された導波路2040が形成されており、アンテナ結合部127bとプラグ42の筐体(モールド)との間には空間で構成された導波路4040が形成されている。導波路2040、導波路4040は空間にせずにミリ波帯での無線伝送に適した誘電体素材を充填してもよい。
アンテナ結合部122b、アンテナ結合部127bは、誘電体基板2004、誘電体基板4004の回路パターンにより形成すればよい。図示した例では、横方向に指向性を持つアンテナとして逆Fアンテナをアンテナ結合部122b、アンテナ結合部127bとして使用しているが、このことは必須でなく、たとえば、モノポール、ダイポール、八木などのその他のアンテナでもよい。
プラグ42のシールドケース4050がレセプタクル22のシールドケース2050に入り込むことでカプラー部同士が相対する。レセプタクル22とプラグ42が規定の位置で嵌合したとき空気を媒質とするミリ波信号伝送路9(導波路2040、導波路4040による)が形成され、電磁界結合部12が形成されるようになっている。
導波路2040、導波路4040で構成されるミリ波信号伝送路9の両端は、電磁気学的にオープンまたはショートとなるように、伝送路の構造を作ることが好ましい。導波路2040、導波路4040で構成されるミリ波信号伝送路9の送信側と受信側に反射器を各々実装することで、アンテナ結合部122b、アンテナ結合部127bによりミリ波信号伝送路9(導波路2040、導波路4040)側へ放射されたミリ波の進行方向がミリ波信号伝送路9の延在方向に変換されるようにするとよい。この場合、一方の通信チップ(201,401)のアンテナ結合部(122b,127b)により放射されたミリ波(電磁波)がミリ波信号伝送路9の厚み方向に進行する。その後、送信側の反射器で反射し、電磁波がミリ波信号伝送路9の延在方向に進行し、さらに、受信側の反射器で反射し、他方の半導体パッケージのアンテナ結合部(122b,127b)に至るようになる。
[電磁界結合部:第2例]
図5は、無線カプラー(電磁界結合部12および電磁界結合部14)の第2例を説明する図である。ここで、図5(1)は、第1の電子機器2のレセプタクル22と接続ケーブル4のプラグ42が嵌合されたときに形成される電磁界結合部12を説明する図である。図5(2)は、第2の電子機器8のレセプタクル84と接続ケーブル4のプラグ44が嵌合されたときに形成される電磁界結合部14を説明する図である。以下では、第1例との相違点に着目して説明する。
第2例は、カプラー部120とカプラー部125で構成される電磁界結合部12、およびカプラー部130とカプラー部135で構成される電磁界結合部14は何れも、導波路を介して無線伝送を行なうものである。つまり、プラグとレセプタクルとの間を、導波路結合部と導波路とによって中継する構成である。カプラー構造は、導波路と導波路結合部とによって構成され、プラグをレセプタクルに装着した際に、導波路と導波路結合部とが一体化し、無線伝送が実現される。
たとえば、図5(1)に示すように、電磁界結合部12は、レセプタクル22の第2例のカプラー部120は導波路結合部123で構成されており、導波路結合部123は高周波伝送路121を介して無線通信部202(この例では無線送信部)と接続される。プラグ42の第2例のカプラー部125は、導波路結合部128と導波路129で構成されており、導波路結合部128は高周波伝送路126を介して無線通信部402(この例では無線受信部)と接続される。
図5(2)に示すように、電磁界結合部14は、レセプタクル84の第2例のカプラー部130は導波路結合部133で構成されており、導波路結合部133は高周波伝送路131を介して無線通信部802(この例では無線受信回路)と接続される。プラグ44の第2例のカプラー部135は、導波路結合部138と導波路139で構成されており、導波路結合部138は高周波伝送路136を介して無線通信部602(この例では無線送信回路)と接続される。
レセプタクル22にプラグ42を嵌合した際に導波路結合部123と導波路結合部128が導波路129を介して電磁界結合されることで、また、レセプタクル84とプラグ44を嵌合した際に導波路結合部133と導波路結合部138が導波路139を介して電磁界結合されることで、ミリ波信号(ミリ波帯の無線信号)が無線伝送される。導波路を介して無線伝送を行なうことによって、電磁波の放射を小さくするとともに、無線チャネルの分離を容易に行なうことができる。
図6〜図6Aは、第2例を適用した電磁界結合部12および電磁界結合部14の具体的な構成例を示す図である。ここで、図6はプラグをレセプタクルに装着する過程(前後)を示し、図6Aはプラグをレセプタクルに装着した状態を示す。以下では、第1例を適用した構造例との相違点に着目して説明する。
レセプタクル22側は、通信チップ201から延在するように高周波伝送路121とカプラー部120をなすプローブ状の電磁界結合部122aが回路パターンで形成されており、第1例における「近接の電磁界結合を利用した無線伝送」を適用した構造と同様である。プラグ42の絶縁保護膜4020と対向する部分には絶縁保護膜2020が形成されている。
プラグ42としては、導体壁で空洞が形成された導波管や空洞部分に誘電体素材が充填された導波管(誘電体導波管)を導波路129として用いるとともに、導波管にスロット(導体抜きの部分、開口部)を形成し、無線通信部402と接続された伝送線路から延長されたプローブを介して電磁界結合を行なう。プラグ42の凸部をレセプタクル22の凹部に装着した際に、電波の反射や減衰が小さくなるようにプローブとスロットとの位置を決める。
たとえば、誘電体基板4004内でプリントパターン、並びにプリントパターンの層間にビアホールを打ち、ビアを伝送方向に並べることで矩形の誘電体導波管を形成し、これを導波路129として用いている。プリントパターンとビアホール列が導体壁4030として機能し、所定の周波数の電磁波に適するように導波管の径を選択することで、当該周波数の電磁波の減衰を抑えて伝送することができる。
導波路129は、導波路結合部128および高周波伝送路126を介して無線通信部402と接続されている。誘電体基板4004を導波管の構成部材として利用することで、導波路129の形成が容易になる。導波路結合部128は、スロット結合を利用するなど導波構造にしたものである。つまり、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナなど)の適用によるアンテナ構造を導波路の結合部位として機能させている。
プラグ42の誘電体基板4004に形成されたスロットパターン構造そのものがアンテナとして機能して電磁波を直接に放射する。通信チップ401から高周波伝送路126(ストリップライン伝送路)が引き出されその延長状にプローブ状の電磁界結合部127aが存在し、誘電体基板4004の一部に形成された導波路129に導波路結合部128をなす開口部(スロット4032a)を形成してスロットパターン構造を構成する。
このような構造のミリ波結合構造では、ミリ波信号は、通信チップ401の無線通信部402の信号配線と高周波伝送路126を介して電気的に接続された電磁界結合部127aと、スロット4032a(開口部)が、両者の間の誘電体基板4004の樹脂に形成されるミリ波伝送媒体により電磁結合するようになる。これによって、ミリ波伝送媒体を伝送したミリ波がスロット4032aから電磁波となって放射され導波路129に入射する。つまり、スロットパターン構造はアンテナとして電磁波を放射するようになる。放射された電磁波は、導波路129と結合し、導波路129を伝搬する。
導波路結合部123側についても導波路結合部128と同様であり、スロット結合を利用するなど導波構造にしたものである。詳しくは、プラグ42の凸部がレセプタクル22の凹部に装着された際に、通信チップ201から引き出された高周波伝送路121(ストリップライン伝送路)の延長上にプローブ状の電磁界結合部122aが存在し、誘電体基板4004の一部に形成された導波路129の開口部(スロット4032b)と電磁界結合部122aの間で電磁結合させる。
第1例の導波路2040、導波路4040と同様に、導波路129(ミリ波信号伝送路9)の両端は、電磁気学的にオープンまたはショートとなるように、伝送路の構造を作ることが好ましい。また、導波路129の送信側と受信側に反射器を各々実装することで、スロット結合により導波路129側へ放射されたミリ波の進行方向が導波路129の延在方向に変換されるようにするとよい。
図6Bは、既存のコネクタへ第2例の電磁界結合部を適用する例を説明する図である。ここで、図6B(1)はHDMIのプラグ先端部分を示す図であり、図6B(2)は、USB3.0のプラグ先端部分を示す図である。従来、これらプラグ先端部分は、電気端子を保護するため、あるいは電磁界放射を防護するために、導体(シールドケース4050)で覆われている。レセプタクル22とプラグ42の装着時に接合を強くするために、レセプタクル22に挿入されるプラグ42をロックする凹状部(凹形状構成、窪み)と凸状部(凸形状構成、出っ張り)の組合せでなるロック機構を備える。たとえば、プラグ42側には凹状部としての固定穴(ロック穴4050)が導体壁に設けられている。そこで、シールドケース4050を導体壁4030または導体壁4030の一部とする導波管(導波路129)を構成するとともに、ロック穴4052をスロット4032bとするカプラー部125(導波路結合部)を形成することにより、プラグ42の形状を既存のものと変えることなくカプラー部125を構成することができる。
[電磁界結合部:第3例]
図7は、無線カプラー(電磁界結合部12および電磁界結合部14)の第3例を説明する図である。ここで、図7(1)は、第1の電子機器2のレセプタクル22と接続ケーブル4のプラグ42が嵌合されたときに形成される電磁界結合部12を説明する図である。図7(2)は、第2の電子機器8のレセプタクル84と接続ケーブル4のプラグ44が嵌合されたときに形成される電磁界結合部14を説明する図である。以下では、第2例との相違点に着目して説明する。
第3例は、カプラー部120とカプラー部125で構成される電磁界結合部12、およびカプラー部130とカプラー部135で構成される電磁界結合部14は何れも、導波路(導波管)の断面を介して無線伝送を行なうものである。プラグとレセプタクルとの間を、導波管の断面で中継する構成である。カプラー構造は、導波路と導波路結合部の対とによって構成され、プラグをレセプタクルに装着した際に、導波路の断面同士が近接することで導波路接合部(導波管接合部)を形成し、これによって無線伝送が実現される。
たとえば、図7(1)に示すように、レセプタクル22の第3例のカプラー部120は導波路結合部123と導波路124で構成されており、プラグ42の第3例のカプラー部125は、導波路結合部128と導波路129で構成されている。図7(2)に示すように、レセプタクル84の第3例のカプラー部130は導波路結合部133と導波路134で構成されており、プラグ44の第3例のカプラー部135は、導波路結合部138と導波路139で構成されている。導波路124、導波路129、導波路134、導波路139は何れも導波管とする。
レセプタクル22とプラグ42を嵌合した際に導波管断面が近接し導波路接合部が形成されることで、また、レセプタクル84とプラグ44を嵌合した際に導波管断面が近接し導波路接合部が形成されることで、無線伝送が実現される。導波管断面の中継部分(導波路接合部)においては、伝送モードが同一なので電磁波の移行が容易であり、ずれや隙間に対して伝送特性の劣化を小さくすることができる。
図8〜図8Aは、第3例を適用した電磁界結合部12および電磁界結合部14の具体的な構成例を示す図である。ここで、図8(1)、(2)はプラグをレセプタクルに装着する前の状態を示し、図8A(1)、(2)はプラグをレセプタクルに装着した状態を示す。以下では、第2例を適用した構造例との相違点に着目して説明する。
プラグ42は、先ず、通信チップ401から延在するように高周波伝送路126とカプラー部125をなすプローブ状の電磁界結合部127aが回路パターンで形成されており、第1例における「近接の電磁界結合を利用した無線伝送」を適用した構造と似通っている。第2例とは異なり、誘電体基板4004を利用せずに、プラグ42の誘電体素材で形成されている樹脂モールドに導体壁4030を埋め込んで導波路129をなす誘電体導波管を形成している。導波路129は、導波路結合部128側にはスロット4032が形成されているが、レセプタクル22との嵌合部側は、スロットを備えず、誘電体導波管の断面が表出するようになっている。
導波路結合部128は、第2例と同様に、導波路129の一部で、スロット結合を利用するなど導波構造にしたものである。すなわち、通信チップ401から引き出された高周波伝送路126(ストリップライン伝送路)の延長上にプローブ状の電磁界結合部127aが存在し、誘電体基板4004とは別に形成された導波路129のスロット4032と電磁界結合部127aとの間で電磁結合させる。
レセプタクル22も、プラグ42と同様に、通信チップ201から延在するように高周波伝送路121とカプラー部120をなすプローブ状の電磁界結合部122aが回路パターンで形成されている。レセプタクル22の誘電体素材で形成されている樹脂モールドに導体壁2030を埋め込んで導波路124をなす誘電体導波管を形成している。導波路124は、導波路結合部123側にはスロット2032が形成されているが、プラグ42との嵌合部側は、スロットを備えず、誘電体導波管の断面が表出するようになっている。導波路124と導波路129でミリ波信号伝送路9が構成される。
導波路結合部123は、導波路結合部128と同様に、導波路124の一部で、スロット結合を利用するなど導波構造にしたものである。すなわち、通信チップ201から引き出された高周波伝送路121(ストリップライン伝送路)の延長上にプローブ状の電磁界結合部122aが存在し、誘電体基板2004とは別に形成された導波路124のスロット2032と電磁界結合部122aとの間で電磁結合させる。
レセプタクル22とプラグ42は、プラグ42の導波路129(導波管型カプラー)の延長上に相対するように、レセプタクル22の導波路124(導波管型カプラー)が配置される。レセプタクル22にプラグ42が装着されると、レセプタクル22の導波路124の断面とプラグ42の導波路129の断面が相対する。
第2例の導波路129と同様に、導波路124(ミリ波信号伝送路)の導波路結合部123側の端部と導波路129(ミリ波信号伝送路)の導波路結合部128の端部は、電磁気学的にオープンまたはショートとなるように、伝送路の構造を作ることが好ましい。また、導波路124、導波路129の送信側と受信側に反射器を各々実装することで、スロット結合により導波路124、導波路129側へ放射されたミリ波の進行方向が導波路124、導波路129の延在方向に変換されるようにするとよい。
[フロントエンド部:第1例]
図9(1)は、無線送受信回路のフロントエンド部分(変調機能部、復調機能部)の第1例を説明する図である。
無線送信回路1100(第1実施形態では無線通信部202と無線通信部602)は、変調機能部1110と送信増幅部1120を有する。無線伝送の対象となる広帯域信号(たとえば12ビットの画像信号)が変調機能部1110に供給される。変調機能部1110としては、変調方式に応じて様々な回路構成を採り得るが、たとえば、振幅や位相を変調する方式であれば、周波数混合部1112(ミキサー回路)と送信側局部発振部1114を備えた構成を採用すればよい。図はASK変調方式を採用する場合で示す。
送信側局部発振部1114は、変調に用いる搬送信号(変調搬送信号)を生成する。周波数混合部1112は、広帯域信号で送信側局部発振部1114が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の変調信号を生成して送信増幅部1120に供給する。変調信号は送信増幅部1120で増幅され電磁界結合部12、電磁界結合部14のカプラー(カプラー部120、カプラー部135)から放射される。
無線受信回路3100(第1実施形態では無線通信部402と無線通信部802)は、復調機能部3110と可変ゲイン型の受信増幅部3120と二値化部3122を有する。図示した例では、周波数混合部3112の後段に二値化部3122が設けられているが、二値化部3122を備えることは必須でない。たとえば、周波数混合部3112の後段の他の機能部が二値化部3122の機能を果たすように構成することが考えられる。
復調機能部3110は、送信側の変調方式に応じた範囲で様々な回路構成を採用し得るが、ここでは、変調機能部1110の前記の説明と対応するように、振幅や位相が変調されている方式の場合で説明する。
復調機能部3110は、2入力型の周波数混合部3112(ミキサー回路)を備え、受信したミリ波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路を用いる。なお、自乗検波回路に代えて自乗特性を有しない単純な包絡線検波回路を使用することも考えられる。
カプラー(カプラー部125、カプラー部130)で受信されたミリ波受信信号は受信増幅部3120に入力され振幅調整が行なわれた後に復調機能部3110に供給される。振幅調整された受信信号は周波数混合部3112の2つの入力端子に同時に入力され自乗信号が生成される。周波数混合部3112で生成された自乗信号は、図示しないフィルタ処理部の低域通過フィルタで高域成分が除去されることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号)が生成され、二値化部3122に供給される。
カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)を介した無線通信では、漏洩や他チャンネルからの妨害が少ないから、単純なAM変調回路と自乗検波方式の復調回路で低エラーレートの広帯域通信が可能である。伝播損失も自由空間伝送に比べれば非常に小さいのでフロントエンド回路は小型で省電力の回路で構成することができる。
[フロントエンド部:第2例]
図9(2)は、無線送受信回路のフロントエンド部分(変調機能部、復調機能部)の第2例を説明する図である。第2例は、第1例をベースに注入同期(インジェクションロック)方式を適用する構成である。以下では、第1例との相違点に着目して説明する。
図示しないが、注入同期方式にする場合には、無線送信回路1100は、好ましくは、受信側での注入同期がし易くなるように変調対象信号に対して予め適正な補正処理を施しておく。典型的には、変調対象信号に対して直流近傍成分を抑圧してから変調する、つまり、DC(直流)付近の低域成分を抑圧(カット)してから変調することで、搬送周波数近傍の変調信号成分ができるだけ少なくなるようにし、受信側での注入同期がし易くなるようにしておく。DCだけでなくその周りも抑圧した方がよいと言うことである。デジタル方式の場合、たとえば同符号の連続によってDC成分が発生してしまうことを解消するべくDCフリー符号化を行なう。
また、ミリ波帯に変調された信号(変調信号)と合わせて、変調に使用した搬送信号と対応する受信側での注入同期の基準として使用される基準搬送信号も送出するのが望ましい。基準搬送信号は、送信側局部発振部1114から出力される変調に使用した搬送信号と対応する周波数と位相(さらに好ましくは振幅も)が常に一定(不変)の信号であり、典型的には変調に使用した搬送信号そのものであるが、少なくとも搬送信号に同期していればよく、これに限定されない。たとえば、変調に使用した搬送信号と同期した別周波数の信号(たとえば高調波信号)や同一周波数ではあるが別位相の信号(たとえば変調に使用した搬送信号と直交する直交搬送信号)でもよい。
変調方式や変調回路によっては、変調回路の出力信号そのものに搬送信号が含まれる場合(たとえば標準的な振幅変調やASKなど)と、搬送波を抑圧する場合(搬送波抑圧方式の振幅変調やASKやPSKなど)がある。よって、送信側からミリ波帯に変調された信号と合わせて基準搬送信号も送出するための回路構成は、基準搬送信号の種類(変調に使用した搬送信号そのものを基準搬送信号として使用するか否か)や変調方式や変調回路に応じた回路構成を採ることになる。
注入同期方式を採用する第2例の無線受信回路3100は、復調機能部3110が受信側局部発振部3114を備え、注入信号を受信側局部発振部3114に供給することで、送信側で変調に使用した搬送信号に対応した出力信号を取得する。典型的には送信側で使用した搬送信号に同期した発振出力信号を取得する。そして、受信したミリ波変調信号と受信側局部発振部3114の出力信号に基づく復調用の搬送信号(復調搬送信号:再生搬送信号と称する)を周波数混合部3112で乗算する(同期検波する)ことで同期検波信号を取得する。この同期検波信号は図示しないフィルタ処理部で高域成分の除去が行なわれることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号)が得られる。以下、第1例と同様である。
周波数混合部3112は、同期検波により周波数変換(ダウンコンバート・復調)を行なうことで、たとえばビット誤り率特性が優れる、直交検波に発展させることで位相変調や周波数変調を適用できるなどの利点が得られる。
受信側局部発振部3114の出力信号に基づく再生搬送信号を周波数混合部3112に供給して復調するに当たっては、位相ズレを考慮する必要があり、同期検波系において位相調整回路を設けることが肝要となる。
さらに図示した例では、位相調整回路の機能だけでなく注入振幅を調整する機能も持つ位相振幅調整部3116を復調機能部3110に設けている。位相調整回路は、受信側局部発振部3114への注入信号、受信側局部発振部3114の出力信号の何れに対して設けても良く、その両方に適用してもよい。受信側局部発振部3114と位相振幅調整部3116で、変調搬送信号と同期した復調搬送信号を生成して周波数混合部3112に供給する復調側の搬送信号生成部が構成される。
図示しないが、周波数混合部3112の後段には、変調信号に合成された基準搬送信号の位相に応じて(具体的には変調信号と基準搬送信号が同相時)、同期検波信号に含まれ得る直流オフセット成分を除去する直流成分抑制部を設ける。
受信側局部発振部3114の自走発振周波数をfo(ωo)、注入信号の中心周波数(基準搬送信号の場合はその周波数)をfi(ωi)、受信側局部発振部3114への注入電圧をVi、受信側局部発振部3114の自走発振電圧をVo、Q値(Quality Factor)をQとすると、ロックレンジを最大引込み周波数範囲Δfomax で示す場合、式(A)で規定される。式(A)より、Q値がロックレンジに影響を与え、Q値が低い方がロックレンジが広くなることが分かる。
Δfomax =fo/(2*Q)*(Vi/Vo)*1/sqrt(1−(Vi/Vo)^2)…(A)
式(A)より、注入同期により発振出力信号を取得する受信側局部発振部3114は、注入信号の内のΔfomax 内の成分にはロック(同期)し得るが、Δfomax 外の成分にはロックし得ず、バンドパス効果を持つと言うことが理解される。たとえば、周波数帯域を持った変調信号を受信側局部発振部3114に供給して注入同期により発振出力信号を得る場合、変調信号の平均周波数(搬送信号の周波数)に同期した発振出力信号が得られ、Δfomax 外の成分は取り除かれるようになる。
受信側局部発振部3114に注入信号を供給するに当たっては、図示のように、受信したミリ波信号を受信増幅部3120で増幅して位相振幅調整部3116を介して注入信号として受信側局部発振部3114に供給することが考えられる。この場合、Δfomax 内に変調信号の周波数成分が多く存在することは好ましくなく、少ない方が望ましい。「少ない方が望ましい」と記載したのは、ある程度は存在していても適切に信号入力レベルや周波数を調整すれば注入同期が可能であることに基づく。つまり、注入同期に不要な周波数成分も受信側局部発振部3114に供給され得るので注入同期が取り難いことが懸念される。しかしながら、送信側で予め、変調対象信号に対して低域成分を抑圧(DCフリー符号化などを)してから変調することで、搬送周波数近傍に変調信号成分が存在しないようにしておけば、図示の構成でも差し支えない。
図示しないが、受信増幅部3120と復調機能部3110の間に周波数分離部を設け、受信したミリ波信号から変調信号と基準搬送信号を周波数分離し、分離した基準搬送信号成分を位相振幅調整部3116を介して注入信号として受信側局部発振部3114に供給してもよい。この構成では、注入同期に不要な周波数成分を予め抑制してから供給するので、注入同期が取り易くなる。
図示しないが、注入同期用の系統を広帯域信号伝送用の系統とを各別のカプラーで、好ましくは干渉を起さないように受信する方式にしてもよい。この構成では、振幅も常に一定の基準搬送信号を受信側局部発振部3114に供給でき、注入同期の取り易さの観点では最適の方式と言える。
カプラー(カプラー部125、カプラー部130)で受信されたミリ波受信信号は図示を割愛した分配器(分波器)で周波数混合部3112と受信側局部発振部3114(位相振幅調整部3116を介して)に供給される。受信側局部発振部3114は、注入同期が機能することで、送信側で変調に使用した搬送信号に同期した再生搬送信号を出力する。
受信側で注入同期がとれる(送信側で変調に使用した搬送信号に同期した再生搬送信号を取得できる)か否かは、注入レベル(注入同期方式の発振回路に入力される基準搬送信号の振幅レベル)や変調方式やデータレートや搬送周波数なども関係する。また、変調信号は注入同期可能な帯域内の成分を減らしておくことが肝要であり、そのためには送信側でDCフリー符号化をしておくことで、変調信号の中心(平均的な)周波数が搬送周波数に概ね等しく、また、中心(平均的な)位相が概ねゼロ(位相平面上の原点)に等しくなるようにするのが望ましい。
たとえば、式(A)に基づき、注入電圧Viや自走発振周波数foを制御することでロックレンジを制御するようにする。換言すると、注入同期がとれるように、注入電圧Viや自走発振周波数foを調整することが肝要となる。周波数混合部3112の後段(たとえば図示しない直流成分抑制部の後段)に注入同期制御部3130を設け、周波数混合部3112で取得された同期検波信号(ベースバンド信号)に基づき注入同期の状態を判定し、その判定結果に基づいて、注入同期がとれるように、調整対象の各部を制御する。
その際には、受信側で対処する手法と、図中に点線で示すように、送信側に制御に資する情報(制御情報のみに限らず制御情報の元となる検知信号など)を供給して送信側で対処する手法の何れか一方またはその併用を採り得る。受信側で対処する手法は、ミリ波信号(特に基準搬送信号成分)をある程度の強度で伝送しておかないと受信側で注入同期がとれないという事態に陥るので、消費電力や干渉耐性の面で難点があるが、受信側だけで対処できる利点がある。これに対して、送信側で対処する手法は、受信側から送信側への情報の伝送が必要になるものの、受信側で注入同期がとれる最低限の電力でミリ波信号を伝送でき消費電力を低減できる、干渉耐性が向上するなどの利点がある。
このように注入同期方式によって送受信の局部発振器(送信側局部発振部1114と受信側局部発振部3114)を同期させ、同期検波を行なうことにより、自乗検波に比べて微弱な無線信号でもデータ伝送ができる。このため、カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)に損失の大きい材料や構造が許容される。
加えて、詳しくは後述するが、有線伝送の送信側(有線通信部404)は、その前段の無線伝送側(無線通信部402)で再生した搬送信号に基づいてデータクロックを生成(再生)し、これをケーブル部40で有線伝送を行なうための送信信号処理に使用できる。つまり、データへのクロック重畳やデータと分離してのクロック有線伝送を行なわなくても、実態として、搬送信号によってデータクロックを伝送することができる。なお、有線伝送の受信側(有線通信部604)はその後段の無線伝送(無線通信部602)で変調に使用する搬送信号に基づいてデータクロックを生成(再生)し、これをケーブル部40で有線伝送を行なうための受信信号処理に使用できる。
[ベースバンド信号→無線送信]
図10は、無線フロントエンド回路を含む無線送信回路、すなわち、広帯域情報処理部200で生成される広帯域信号(ベースバンド信号)を無線通信部202で無線送信する機能部の詳細構成例を示す図である。図10Aは、デジタル画像データのクロック周波数の一例を示す図表である。
無線通信部202は、無線送信回路1100と同様の構成である(図9を参照)。ここでは、無線通信部202の構成説明を割愛する。
第1実施形態の広帯域情報処理部200Aは、信号処理部1200とタイミング信号生成部1300を備えている。信号処理部1200は、先入先出法(FIFO:First-In/First-out)を適用したFIFOメモリ1212、フレーマ1214、符号変換部1216、マルチプレクサ1218を有する。FIFOメモリ1212には、広帯域信号(たとえば25〜600Mb/sの12ビットデータ)と、書込クロック(たとえば25〜600MHzのクロック)と分周部1310からの読出クロックが入力される。
FIFOメモリ1212は、たとえば25〜600MHzで12ビットデータを取り込み8ビット単位で読み出す。たとえば、FIFOメモリ1212は書込クロックに同期して広帯域信号を取り込み、読出クロックに同期して広帯域信号(たとえば900Mb/sの8ビットデータ)を出力するとともに、未読出データ量が一定値を切るとその旨を示すEMPTY信号を出力する。これらの信号はフレーマ1214に供給される。
フレーマ1214は、FIFO入力データと900MHzクロックの周波数比に関する情報をデータ中に挿入する。たとえば、フレーマ1214は、動作クロックに同期して公知のフレーム処理を行ない広帯域信号(たとえば900Mb/sの8ビットデータ)を出力するとともに、EMPTY信号に基づくNULL信号を出力する。これらの信号は符号変換部1216に供給される。符号変換部1216は、たとえば8B10B変換回路で構成されており、10ビット長のデータコードやNULLコードを発生しマルチプレクサ1218に供給する。
マルチプレクサ1218には、分周部1310から選択制御クロック(たとえば9GHzのクロック)が供給される。マルチプレクサ1218は、符号変換部1216から供給されるコードを選択制御クロックに従って順次切り替えて選択することにより9Gb/sのNRZ信号を生成し変調機能部1110の周波数混合部1112に供給する。
タイミング信号生成部1300は、広帯域情報処理部200Aで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部1300は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、PLL(Phase-Locked Loop :位相同期ループ)やDLL(Delay-Locked Loop :遅延同期ループ)などで構成するのが好適である。以下ではPLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部1300は、無線通信部202(無線送信回路1100)の送信側局部発振部1114を発振回路として利用するように構成されており、分周部1310と、位相周波数比較部1320(PFD)と、チャージポンプ部1330(CP)と、ループフィルタ部1350と、基準信号発生部1370(REF)を備えている。
送信側局部発振部1114は、電圧制御発振回路(VCO)と電流制御発振回路(CCO;Current Control Oscillator)の何れを採用してもよい。以下では、特段の断りのない限り、電圧制御発振回路を採用するものとして説明する。
分周部1310は、送信側局部発振部1114の出力端子から出力された出力発振信号Vout の発振周波数fvco を1/αに分周して分周発振信号Vdev を取得し位相周波数比較部1320に供給する。αは、PLL逓倍数(分周比とも称する)であって、1以上の正の整数で、かつ、PLL出力クロックCK_PLLである出力発振信号Vout (送信搬送信号)の周波数を変更できるように可変にするのがよい。
本構成例では、分周部1310は、出力発振信号Vout の周波数を1/6に分周する第1分周部1312、第1分周部1312の出力クロックの周波数を1/10に分周する第2分周部1314、第2分周部1314の出力クロックの周波数を1/Nに分周する第3分周部1316を有する。分周部1310全体のPLL逓倍数αは「6*10*N」である。第2分周部1314の出力クロックは、FIFOメモリ1212の読出クロック、フレーマ1214および符号変換部1216の動作クロックとして使用される。
位相周波数比較部1320は、基準信号発生部1370から供給される基準クロックREF と送信側局部発振部1114からの出力発振信号Vout を分周部1310で分周した分周発振信号Vdev の位相および周波数を比較し、比較結果である位相差および周波数差を示す誤差信号をパルス幅変調されたUP/DOWN信号として出力する。
チャージポンプ部1330は、位相周波数比較部1320から出力されたUP/DOWN信号に応じた駆動電流(チャージポンプ電流Icpと称する)を入出力する。チャージポンプ部1330は、たとえば、位相周波数比較部1320から出力されたチャージポンプ電流Icpを入出力するチャージポンプと、チャージポンプにバイアス電流Icpbiasを供給する電流値可変型の電流源とを備えて構成される。
ループフィルタ部1350は、チャージポンプ部1330を介して位相周波数比較部1320から出力された比較信号を平滑化する平滑化部の一例である。ループフィルタ部1350は、たとえばローパスフィルタであって、チャージポンプ部1330により生成されたチャージポンプ電流Icpを積分し、送信側局部発振部1114の発振周波数fcco を制御するためのループフィルタ出力電流Ilpを生成する。ループフィルタ出力電流Ilpは、送信側局部発振部1114の発振制御信号CN_1として使用される。
ループフィルタ部1350は、図示しないが具体的には、ループフィルタ容量Cpのコンデンサ(容量素子)を有するものとする。なお、コンデンサだけでなくループフィルタ抵抗Rpの抵抗素子を直列に接続することで、ループの安定性を高めるようにしてもよい。1つのチャージポンプを備える構成を採る場合、通常は、この抵抗素子を備えた構成を採用する。
ループフィルタ部1350では、チャージポンプから出力されたチャージポンプ電流Icpに基づいてループフィルタの一方の端子(つまり電圧電流変換部の入力)に電圧信号(チャージポンプ電圧Vcpと称する)が生成される。コンデンサへの充放電動作となるので、ループフィルタ部1350は、位相周波数比較部1320からの比較結果信号の所定のカットオフ周波数(ロールオフ周波数やポールともいう)以上の周波数成分を減衰させて、送信側局部発振部1114に供給される発振制御電圧Vcnt を平滑化するように、少なくとも1つのカットオフ周波数を呈する低域通過フィルタとして機能する。
広帯域情報処理部200Aの全体動作は以下の通りである。変調機能部1110の送信側局部発振部1114から出力された54GHzの送信搬送信号は第1分周部1312により6分周されてマルチプレクサ1218の9GHz選択制御クロックとなる。9GHz選択制御クロックはさらに第2分周部1314により10分周されてフレーマ1214と符号変換部1216の900MHz動作クロックなる。タイミング信号生成部1300は、900MHzの動作クロックが基準信号発生部1370からの基準クロックREF と周波数位相同期するように、位相周波数比較部1320、チャージポンプ部1330、ループフィルタ部1350とともにPLL回路を構成している。
周波数混合部1112にて54GHzの送信搬送信号が9Gb/sNRZ信号で変調されたRF信号が送信増幅部1120を介して電磁界結合部12のカプラー部120を駆動している。送信搬送信号とNRZデータを1つのRF用VCO(送信側局部発振部1114)から生成し同期させているのは、PLL部品を削減することと、送信搬送信号とNRZの低周波ビートによって変調機能部1110の特性が変動するのを避けるためである。
この例では電子機器2から送信される情報は25〜600MHzの書込クロックに同期した25〜600Mb/sの12ビットデータである。このように広範に周波数が変化する例のひとつはデジタルベースバンド画像RGBデータのRデータである。デジタル画像データは図10Aに示すように種々のクロック周波数を持つ。
本例では、この可変レートのデータを一律の900Mb/sNRZデータに変換するために、FIFOメモリ1212とフレーマ1214を使っている。FIFOメモリ1212は、25〜600MHzの書込クロックによって12ビット単位で入力データを取り込み、900MHz読出クロックによって8ビット単位で読み出す。このとき、FIFOメモリ1212に貯まった未読出データの量が一定値を切ると、FIFOメモリ1212はEMPTY信号を出力し、そのときフレーマ1214はNULL信号を出力する。フレーマ1214からのFIFO読出データとNULL信号を受け取った符号変換部1216は10ビット長のデータコードもしくはNULLコードを発生する。コードはマルチプレクサ1218(10:1マルチプレクサ)によって9Gb/sのNRZ信号となり、周波数混合部1112に与えられる。
[無線受信→有線送信]
図11は、無線フロントエンド回路を含む無線受信回路、すなわち、無線通信部402で復調される広帯域情報を有線通信部404で有線送信する機能部(通信チップ401)の詳細構成例を示す図である。
無線通信部402は、注入同期方式を採用した無線受信回路3100と同様の構成である(図9(2)を参照)。ここでは、無線通信部402の構成説明を割愛する。
第1実施形態の有線通信部404Aは、無線通信部402で復調された広帯域信号を接続ケーブル4(ケーブル部40)に伝送させる。このとき、復調された広帯域信号の周波数のままでケーブル部40を駆動することも考えられるが、復調された広帯域信号の周波数が既存のケーブルの対応周波数よりも高い場合には複数の信号に分割して周波数を低下させるのがよい。伝送データの高速化に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす、つまり、多チャネル化して広帯域データ伝送に対応する。以下では、多チャネル化して広帯域データ伝送に対応する構成で説明する。
有線通信部404Aは、信号処理部3200とタイミング信号生成部3300を備える。信号処理部3200は、識別回路3202、デマルチプレクサ3204、符号変換部3212、デマルチプレクサ3214、符号変換部3222、マルチプレクサ3234、配線駆動部3240を有する。
識別回路3202とデマルチプレクサ3204にはタイミング信号生成部3300からリタイミングクロック(たとえば9GHzのクロック)が供給される。符号変換部3212とデマルチプレクサ3214にはタイミング信号生成部3300から第1動作クロック(たとえば900MHzのクロック)が供給される。符号変換部3222にはタイミング信号生成部3300から第1動作クロックよりも低速の第2動作クロック(たとえば300MHzのクロック)が供給される。デマルチプレクサ3214にはタイミング信号生成部3300から出力クロック(たとえば3GHzのクロック)が供給される。
識別回路3202は、無線通信部402により復調された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して取り込みデマルチプレクサ3204に供給する。識別回路3202は二値化部3122の機能も兼ねる。
デマルチプレクサ3204は、識別回路3202から供給された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して複数の信号(たとえば10系統の信号)に分割して周波数を低下させ符号変換部3212に供給する。
符号変換部3212は、たとえば10B8B変換回路で構成されており、デマルチプレクサ3204でデマルチプレクスされたデータを8ビット長のデータコードに変換してデマルチプレクサ3214に供給する。デマルチプレクサ3214は、符号変換部3212から供給された複数系統(この例では8系統)のデータを複数の信号(たとえば3系統の信号:合計で24系統)に分割して周波数を低下させ符号変換部3222に供給する。
符号変換部3222は、たとえば8B10B変換回路で構成されており、デマルチプレクサ3214でデマルチプレクスされたデータを10ビット長のデータコードに変換してマルチプレクサ3234に供給する。このとき、符号変換部3222は、NRZ信号に定期的に3本同時にスキュー補正用の特殊コードを挿入する。
マルチプレクサ3234は、タイミング信号生成部3300から供給される出力クロックに基づいて、符号変換部3222から供給されるコードを順次切り替えて選択することにより複数系統(たとえば3系統)の信号を生成し配線駆動部3240に供給する。
タイミング信号生成部3300は、有線通信部404Aで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部3300は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、PLLやDLLなどで構成するのが好適である。以下ではDLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部3300は、遅延同期部3310(DLL)と分周部3320を備えている。分周部3320は、遅延同期部3310から出力されたリタイミングクロックを1/10に分周して第1動作クロック(たとえば900MHzのクロック)とする第1分周部3322と、第1分周部3322から出力された第1動作クロックをさらに1/3に分周して第2動作クロック(たとえば300MHzのクロック)とする第2分周部3324を有する。
遅延同期部3310は、無線通信部402(無線受信回路3100)の受信側局部発振部3114を発振回路として利用するように構成されており、分周部3312、位相比較部3314(PD)、位相調整部3316を有する。
遅延同期部3310は、識別回路3202およびデマルチプレクサ3204用(9Gb/sデータ用)のリタイミングクロック(たとえば9GHzのクロック)を、無線通信部402で注入同期により再生した復調搬送信号(周波数は54GHz)を分周部3312により1/6に分周することで得る。この際に、分周部3312の位相を、NRZデータをサンプリングするのに最も好適な位相にするために無線通信部402(周波数混合部3112)で復調されたNRZ信号と位相調整部3316から出力されたリタイミングクロックの位相差を位相比較部3314で検出し、検出した位相差情報を位相調整部3316に供給する。
分周部3312は、出力信号の位相を位相調整部3316の制御の元で調整可能なものとする。位相調整部3316は、位相比較部3314で検出された位相差情報に基づき、リタイミングクロック(この例では9GHz)の位相が最もよい位相となるように分周部3312の位相調整を行なう。
分周部3312を単純な分周器とし位相調整部3316を遅延素子が複数段配置されたものとしてもよい。この場合、位相調整部3316は、位相比較部3314で検出された位相差情報に基づき、リタイミングクロック(この例では9GHz)の位相が最もよい位相となるように何れの遅延素子の出力を使用するかを制御することで位相調整を行なう。
無線通信部402の全体動作は以下の通りである。無線通信部402は、同期注入で再生した信号を復調搬送信号(周波数は54GHz)として使用し、受信したRF信号に乗じることで9Gb/sのNRZデータを復調して、信号処理部3200の識別回路3202に供給する。
識別回路3202でサンプリングすなわちリタイミングされたデータはデマルチプレクサ3204により1:10にデマルチプレクスされ900Mb/sの信号(10ビット)に変換された後に符号変換部3212により10B8Bデコードされる。さらにデマルチプレクサ3214により300MHzまでデマルチプレクスされ、符号変換部3222により8B10Bコード化され、マルチプレクサ3234により10:1にマルチプレクスされることで3本の3Gb/sNRZ信号とされ、配線駆動部3240によりケーブル部40中の導線で伝送される。
[有線受信→無線送信]
図12は、無線フロントエンド回路を含む有線受信回路と無線送信回路、すなわち、有線通信部604で受信される広帯域情報を無線通信部602で無線送信する機能部(通信チップ601)の詳細構成例を示す図である。
無線通信部602は、無線送信回路1100と同様の構成である(図9を参照)。無線通信部602の構成説明を割愛する。
第1実施形態の有線通信部604Aは、有線通信部404Aによりケーブル部40内の導線を伝送される3本の3Gb/sのNRZ信号を受信して3:1にマルチプレクスして9Gb/sNRZ信号とする。このため、有線通信部604Aは、前段信号処理部5100と後段信号処理部5200とタイミング信号生成部5300を備えている。
前段信号処理部5100は、受信した3本の3Gb/sのNRZ信号を処理する機能部であり、3Gb/sのNRZ信号をサンプリングするサンプリング部5110を各別に備える。前段信号処理部5100はまた、サンプリング部5110の後段に1つのデスキュー部5150を備える。
波形等化部5112は、ケーブル部40内の導線9010を経由した3本の3Gb/sNRZ信号の波形整形を行なう。識別回路5114は、リタイミングクロック(周波数は3GHz)で波形等化部5112から出力された信号を取り込むことで、2値に量子化してデマルチプレクサ5116に供給する。デマルチプレクサ5116は、識別回路5114から供給された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して複数の信号(たとえば10系統の信号)に分割して周波数を低下させ符号変換部5118に供給する。
デスキュー部5150は、符号変換部3222によってNRZ信号に定期的に3本同時に挿入されているスキュー補正用の特殊コードを基準にして、ケーブル部40内の導線伝送で生じた信号間スキューを検出しスキューがなくなるように補正する。
後段信号処理部5200は、前段信号処理部5100のデスキュー部5150から出力される複数系統の信号をマルチプレクスして9Gb/sNRZ信号とする機能部であり、マルチプレクサ5214、符号変換部5216、マルチプレクサ5218を備える。
マルチプレクサ5214と符号変換部5216には、分周部5310から動作クロック(たとえば900MHzのクロック)が供給される。マルチプレクサ5218にはさらに高速の動作クロック(たとえば9GHzのクロック)が分周部5310から供給される。
マルチプレクサ5214は、デスキュー部5150から供給されるコードを低速動作クロックに従って順次切り替えて選択することにより900Mb/sのNRZ信号を生成し符号変換部5216に供給する。符号変換部5216は、たとえば8B10B変換回路で構成されており、10ビット長のデータコードを発生しマルチプレクサ5218に供給する。マルチプレクサ5218は、符号変換部5216から供給されるコードを高速動作クロックに従って順次切り替えて選択することにより9Gb/sのNRZ信号を生成し無線送信回路1100の周波数混合部1112に供給する。
タイミング信号生成部5300は、有線通信部604Aで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部5300は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、PLLやDLLなどで構成するのが好適である。以下ではPLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部5300は、無線通信部602(無線送信回路1100)の送信側局部発振部1114を発振回路として利用するように構成されており、分周部5310と、位相比較部5320(PD)と、チャージポンプ部5330(CP)と、ループフィルタ部5350を備えている。
タイミング信号生成部5300はまた、前段信号処理部5100の3系統のうちの2系統について位相補正部5360を備えるとともに、全系統に各別に分周部5370を備える。位相補正部5360は、遅延同期部3310と似通っており、位相比較部5364(PD)と位相調整部5366を有する。位相比較部5320は、回路配置的には、前段信号処理部5100側の1系統分の位相比較部5364(PD)としても機能するようになっている。
分周部5310は、出力発振信号Vout の周波数を1/6に分周する第1分周部5312、第1分周部5312の出力クロックの周波数を1/3に分周する第2分周部5314、第1分周部5312の出力クロックの周波数を1/10に分周する第3分周部5316、第3分周5316の出力クロックの周波数を1/3に分周する第4分周部5318を有する。
変調機能部1110の送信側局部発振部1114から出力された54GHzの送信搬送信号は第1分周部5312により6分周されてマルチプレクサ5218の高速動作クロック(9GHz選択制御クロック)となる。9GHz選択制御クロックはさらに第3分周部5316により10分周されてマルチプレクサ5214と符号変換部5216の低速動作クロック(900MHz動作クロック)となる。低速動作クロックはさらに第4分周部5318により3分周されてデスキュー部5150の低速動作クロック(300MHz動作クロック)となる。
第1分周部5312から出力された高速動作クロックはまた第2分周部5314により3分周されて3GHz比較クロックとして位相比較部5320と位相補正部5360に供給されるとともに、位相補正部5360が設けられていない系統の識別回路5114とデマルチプレクサ5116用のリタイミングクロックとして使用される。
タイミング信号生成部5300は、3GHz比較クロックが前段信号処理部5100が受信する受信信号と周波数位相同期するように、位相比較部5320、チャージポンプ部5330、ループフィルタ部5350とともにPLL回路を構成している。タイミング信号生成部5300の動作は、基本的にはタイミング信号生成部1300と似通っている。異なる点は、タイミング信号生成部5300は、基準信号発生部1370と対応する機能部を備えず、前段信号処理部5100の位相補正部5360が設けられていない系統の波形等化部5112の出力信号を基準クロックとして使用する点にある。
サンプリング部5110は、増幅機能を持った波形等化部5112(EQ:Cable EQualizer )、識別回路5114、デマルチプレクサ5116、符号変換部5118を有する。1系統の識別回路5114とデマルチプレクサ5116にはタイミング信号生成部5300からリタイミングクロック(周波数は3GHz)が共通に供給される。この系統の符号変換部5118には、リタイミングクロック(周波数は3GHz)を分周部5370で1/10に分周した動作クロックが供給される。残りの系統(この例では2系統)の識別回路5114とデマルチプレクサ5116には位相補正部5360からリタイミングクロック(周波数は3GHz)が共通に供給される。符号変換部5118には、同一系統の位相補正部5360からのリタイミングクロック(周波数は3GHz)を分周部5370で1/10に分周した動作クロックが供給される。
位相調整部5366には、第2分周部5314から3GHz比較クロックが供給される。位相調整部5366は、遅延素子が複数段配置されており、位相比較部5364で検出された位相差情報に基づいて、リタイミングクロック(この例では3GHz)の位相が最もよい位相となるように何れの遅延素子の出力を使用するかを制御することで位相調整を行なう。
位相補正部5360は、識別回路5114およびデマルチプレクサ5116用(3Gb/sデータ用)のリタイミングクロック(たとえば3GHzのクロック)を、受信信号と位相同期させる。因みに、周波数同期はタイミング信号生成部5300で実現されている。タイミング信号生成部5300からのリタイミングクロックの位相を、NRZデータをサンプリングするのに最も好適な位相にするために波形等化部5112から出力されたNRZ信号と位相調整部5366から出力されたリタイミングクロックの位相差を位相比較部5364で検出し、検出した位相差情報を位相調整部5366に供給する。位相調整部5366は、位相比較部5364で検出された位相差情報に基づいて、リタイミングクロックの位相を調整する。
有線通信部604Aの全体動作は以下の通りである。ケーブル部40内の導線を経由した3本の3Gb/sNRZ信号は先ず波形等化部5112で波形整形された後に3GHzサンプリングクロック(リタイミングクロック)で2値に量子化される。リ3GHzサンプリングクロックのうちの1つは、受信したNRZ信号の遷移と位相をタイミング信号生成部5300の位相比較部5320で比較し、結果を送信側局部発振部1114にフィードバックしてPLL構成により取得する。残りの系統の3GHzサンプリングクロックは、その1つの系統の3GHzサンプリングクロックを位相補正部5360(の位相調整部5366)に供給し、自系統のNRZ信号との位相差情報(位相比較部5364で検出される)に基づいて位相をシフトすることで得られる。つまり、位相のシフト量は各々の3GHzサンプリングクロックとNRZ信号遷移の位相比較によって調整される。
3GHzサンプリングクロックで量子化されリタイミングされた3Gb/s信号はデマルチプレクサ5116により300Mb/sの信号(10ビット)に分解され、符号変換部5118により8ビットデータに変換されデスキュー部5150に供給される。デスキュー部5150は、データに挿入されているスキュー補正用の特殊コードを基準に、ケーブル部40内の導線伝送で生じた信号間スキューがなくなるように補正する。
後段信号処理部5200は、デスキュー部5150が出力する300Mb/s、24ビットの信号をマルチプレクサ5214でマルチプレクスして900Mb/s信号(10ビット)を取得し、符号変換部5216に供給する。以降の処理は、広帯域情報処理部200Aの符号変換部1216以降と同等である。
[無線受信→ベースバンド信号]
図13は、無線フロントエンド回路を含む有線受信回路と無線送信回路、すなわち、無線通信部802で復調される広帯域情報を広帯域情報処理部800で信号処理する機能部の詳細構成例を示す図である。
無線通信部802は、注入同期方式を採用した無線受信回路3100と同様の構成である(図9(2)を参照)。ここでは、無線通信部802の構成説明を割愛する。
第1実施形態の広帯域情報処理部800Aは、受信した広帯域信号を処理するもので、信号処理部7200とタイミング信号生成部7300を備える。信号処理部7200は、識別回路7202、デマルチプレクサ7204、符号変換部7212、デフレーマ7214、FIFOメモリ7216を有する。
識別回路7202とデマルチプレクサ7204にはタイミング信号生成部7300からリタイミングクロック(たとえば9GHzのクロック)が供給される。符号変換部7212とデフレーマ7214にはタイミング信号生成部7300から第1動作クロック(たとえば900MHzのクロック)が供給される。FIFOメモリ7216には、タイミング信号生成部7300から書込クロック(たとえば900MHzのクロック)と読出クロック(たとえば25〜600MHzのクロック)が入力される。
タイミング信号生成部7300は、広帯域情報処理部800Aで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部7300は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、PLLやDLLなどで構成するのが好適である。以下では有線通信部404Aのタイミング信号生成部3300と同様にDLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部7300は、遅延同期部7310(DLL)と分周部7320とデジタルPLL部7330を備えている。分周部7320は、遅延同期部7310から出力されたリタイミングクロックを1/10に分周して符号変換部7212およびデフレーマ7214の動作クロック並びにFIFOメモリ7216の書込クロック(たとえば900MHzのクロック)とする。デジタルPLL部7330は、FIFOメモリ7216用の読出クロック(たとえば25〜600MHzのクロック)を生成する。
遅延同期部7310は、遅延同期部3310と同様の構成であり、無線通信部802(無線受信回路3100)の受信側局部発振部3114を発振回路として利用するように構成されており、分周部7312、位相比較部7314(PD)、位相調整部7316を有する。
遅延同期部7310は、識別回路7202およびデマルチプレクサ7204用(9Gb/sデータ用)のリタイミングクロック(たとえば9GHzのクロック)を、無線通信部802で注入同期により再生した復調搬送信号(周波数は54GHz)を分周部7312により1/6に分周することで得る。この際に、分周部7312の位相を、NRZデータをサンプリングするのに最も好適な位相にするために無線通信部802(周波数混合部3112)で復調されたNRZ信号と位相調整部7316から出力されたリタイミングクロックの位相差を位相比較部7314で検出し、検出した位相差情報を位相調整部7316に供給する。
分周部7312は、出力信号の位相を位相調整部7316の制御の元で調整可能なものとする。位相調整部7316は、位相比較部7314で検出された位相差情報に基づき、リタイミングクロック(この例では9GHz)の位相が最もよい位相となるように分周部7312の位相調整を行なう。
分周部7312を単純な分周器とし位相調整部7316を遅延素子が複数段配置されたものとしてもよい。この場合、位相調整部7316は、位相比較部7314で検出された位相差情報に基づき、リタイミングクロック(この例では9GHz)の位相が最もよい位相となるように何れの遅延素子の出力を使用するかを制御することで位相調整を行なう。
デジタルPLL部7330は、広帯域情報処理部200Aの信号処理部1200のフレーマ1214の機能でデータ中に挿入されたFIFO入力データと900MHzクロックの周波数比に関する情報を用いてクロックを生成する。デジタルPLL部7330で生成されたクロックは、FIFOメモリ7216の読出クロックや図示しない後段回路の動作クロックとして使用される。このようなデジタルPLLはたとえば「VESA DisplayPort規格」でも用いられている。
信号処理部7200の識別回路7202から符号変換部7212までの処理は、有線通信部404Aの信号処理部3200の識別回路3202から符号変換部3212までの処理と同様である。たとえば、識別回路7202は、無線通信部802により復調された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して取り込みデマルチプレクサ7204に供給する。識別回路7202は二値化部3122の機能も兼ねる。
デマルチプレクサ7204は、識別回路7202から供給された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して複数の信号(たとえば10系統の信号)に分割して周波数を低下させ符号変換部3212に供給する。符号変換部3212は、たとえば10B8B変換回路で構成されており、デマルチプレクサ3204でデマルチプレクスされたデータを8ビット長のデータコードに変換するとともにNULL信号を抽出して、これらの信号をデフレーマ7214に供給する。
デフレーマ7214はフレーマ1214と逆の処理を行なうもので、たとえば、動作クロックに同期して公知のデフレーム処理を行ない広帯域信号(たとえば900Mb/sの8ビットデータ)を出力するとともに、NULL信号に基づくEMPTY信号を出力する。10B8B出力である広帯域信号(たとえば900Mb/sの8ビットデータ)はFIFOメモリ7216に供給され、EMPTY信号はデジタルPLL部7330における読出クロック生成時の基準信号として利用される。
FIFOメモリ7216は、900MHzで8ビットデータを取り込み12ビット単位で読み出す。たとえば、FIFOメモリ7216は、書込クロック(周波数は900MHz)に同期してデフレーマ7214からの10B8B出力(8ビット)を取り込み、デジタルPLL部7330で生成された読出クロック(周波数は25〜600MHz)に同期して広帯域信号(たとえば25〜600Mb/sの12ビットデータ)をベースバンド信号として出力する。
<第2実施形態>
[電磁界結合部近傍の構成]
図14は、第2実施形態の信号伝送システム1Bのカプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)近傍の構成を説明する図である。
第2実施形態は、電子機器2側から電子機器8側へ信号伝送と電子機器8側から電子機器2側へ信号伝送とを行なう双方向通信に、広帯域信号に関してコネクタ部に無線伝送を行なう本実施形態の仕組みを適用するものである。以下では、電磁界結合部12と電磁界結合部14の系統を纏めて説明する場合は、電磁界結合部14側の構成要素を括弧書きで示す。
双方向通信に対応する場合、第1例の構成を、各方向に各別に設けることが先ず考えられる。しかしながらこの場合、カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)を各方向について設けなければならないので、双方向インタフェースを構築する部品数が多くなる。そこで、第2実施形態では、双方向通信の各方向で、1組のカプラー(カプラー部120とカプラー部125の対、カプラー部130とカプラー部135の対)を共有することで、双方向インタフェースを構築する部品数を削減する。
図14は、無線通信を双方向で行なう回路の概念図である。図14では、無線通信部202(無線通信部802)をレセプタクル22(レセプタクル84)に収容している。図示しないが、無線通信部202(無線通信部802)をレセプタクル22外(電子機器2内や電子機器8内)に収容してもよい(後述の図15、図15Aを参照)。
無線通信部202(無線通信部802)は、双方向通信に対応するように、送信回路182(無線送信回路1100と同様の構成)と受信回路184(無線受信回路3100と同様の構成)を有する。無線通信部402(無線通信部602)は、双方向通信に対応するように、送信回路186(無線送信回路1100と同様の構成)と受信回路188(無線受信回路3100と同様の構成)を有する。
図14(1)、図14(3)に示すように、無線通信部202は図示しない広帯域情報処理部200と接続され、送信回路182に広帯域情報処理部200から広帯域送信信号Txdata_1が入力され、受信回路184で復調された広帯域受信信号Rxdata_2が広帯域情報処理部200に入力される。無線通信部402は図示しない有線通信部404と接続され、送信回路186に有線通信部404から広帯域送信信号Txdata_2が入力され、受信回路188で復調された広帯域受信信号Rxdata_1が有線通信部404に入力される。
図14(2)、図14(4)に示すように、無線通信部602は図示しない有線通信部604と接続され、送信回路186に有線通信部604から広帯域送信信号Txdata_1が入力され、受信回路188で復調された広帯域受信信号Rxdata_2が有線通信部604に入力される。無線通信部802は図示しない広帯域情報処理部800と接続され、送信回路182に広帯域情報処理部800から広帯域送信信号Txdata_2が入力され、受信回路184で復調された広帯域受信信号Rxdata_1が広帯域情報処理部800に入力される。
ここで、図14(1)、図14(2)に示す第1例は、レセプタクル22(レセプタクル84)側に方向管理部190を使用し、プラグ42(プラグ44)側に方向管理部192を用いることで、1組のカプラーで双方向同時送受信を行なう形態である。方向管理部190と方向管理部192としては、方向性結合器やサーキュレータを使用できる。
方向管理部190と方向管理部192は、送信回路182、送信回路186から来た信号をカプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)にのみ送り込み、受信回路184、受信回路188へ漏洩しない。カプラーが受信した信号は受信回路184、受信回路188のみに伝播し送信回路182、送信回路186へは伝わらない。これによって、送信回路182、送信回路186の出力は損失することなくカプラーから送信され、受信回路184、受信回路188は送信回路182、送信回路186からの信号に乱されることなく、カプラーが受信した信号を正しく判別できる。
イーサネット(登録商標)のように全ての接続機器が対等の双方向インタフェースにカプラー通信(電磁界結合部を介した無線通信)を導入する場合には、このような双方向フロントエンド回路を用いるとコネクタの部品点数を減らすことができる。HDMIなどは装置にデータを出力するソース機器とデータを受信するシンク機器の区別があるが、ケーブル自体は両端が同一形状をしているため、どちらのプラグをソース機器のレセプタクルに挿入しても良いようにカプラーを介した無線通信は双方化されていることが望ましい。
図14(3)、図14(4)に示す第2例は、方向性結合器やサーキュレータを使用せずに、異なる2種類の搬送周波数を用いることによって、1組のカプラーで双方向同時送受信を行なう形態である。異なる2種類の搬送周波数を用いることに対応して、受信系統には、それぞれ異なる搬送周波数に対応した周波数選択機能部を設ける。たとえば、図示した例では、受信回路184の前段にバンドパスフィルタ194(BPF)を設け、受信回路188の前段にバンドパスフィルタ196(BPF)を設けている。バンドパスフィルタ194およびバンドパスフィルタ196は周波数選択機能部の一例であるが、周波数選択機能部は、バンドパスフィルタに限らない。たとえば、受信回路において注入同期方式による同期検波を行なうことにより、検波後のベースバンド信号を帯域制限する方式とすることで、2組の搬送波による送受信信号を分離するようにしてもよい。
[構成:第1例]
図15は、第2実施形態の第1例の信号伝送システム1Bの全体構成を説明する図である。第1の電子機器2と第2の電子機器8が接続ケーブル4で接続された状態で示している。図2に示した第1実施形態の第1例の構成に対する変形例で示すが、図2Aに示した第1実施形態の第2例の構成に対しても同様の変形が可能である。以下では、第1実施形態の第1例の構成との相違点に着目して説明する。クロック信号の伝送は割愛する。
電子機器2は、図14に示した双方向同時通信に対応した無線通信部202を備え、無線通信部202には2系統の広帯域情報処理部200_1,200_2が接続されている。広帯域情報処理部200_1は広帯域信号を無線通信部202に供給し、広帯域情報処理部200_2は無線通信部202で復調された広帯域信号を受け取る。電子機器2はまた、狭帯域信号の系統についても、2系統の狭帯域情報処理部204_1,204_2を備えている。
接続ケーブル4のプラグ42は、図14に示した双方向同時通信に対応した無線通信部402を備え、無線通信部402には2系統の有線通信部404_1,404_2が接続されている。これらは通信チップ401に収容されている。有線送信器として機能する有線通信部404_1は無線通信部402で復調された広帯域信号を受け取りケーブル部40に伝送し、有線受信器として機能する有線通信部404_2はケーブル部40を介して受信した広帯域信号を無線通信部402に供給する。
接続ケーブル4のプラグ44は、図14に示した双方向同時通信に対応した無線通信部602を備え、無線通信部602には2系統の有線通信部604_1,604_2が接続されている。これらは通信チップ601に収容されている。有線受信器として機能する有線通信部604_1はケーブル部40を介して受信した広帯域信号を無線通信部602に供給し、有線送信器として機能する有線通信部604_2は無線通信部602で復調された広帯域信号を受け取りケーブル部40に伝送する。
電子機器8は、図14に示した双方向同時通信に対応した無線通信部802を備え、無線通信部802には2系統の広帯域情報処理部800_1,800_2が接続されている。広帯域情報処理部800_1は無線通信部802で復調された広帯域信号を受け取り、広帯域情報処理部800_2は広帯域信号を無線通信部802に供給する。電子機器8はまた、狭帯域信号の系統についても、2系統の狭帯域情報処理部804_1,804_2を備えている。
有線送信器として機能する有線通信部404_1と有線通信部604_2は、図11に示した有線通信部404と同様の構成のものを使用する。有線受信器として機能する有線通信部404_2と有線通信部604_1は、図12に示した有線通信部604と同様の構成のものを使用する。
第1例は、後述の第2例(図15A)とは異なり、有線通信部404_1と有線通信部604_1の間のケーブル部40における有線伝送と、有線通信部404_2と有線通信部604_2の間のケーブル部40における有線伝送を、各別の導線を使用して行なう点に特徴がある。ケーブル部40の導線数は第2例よりも多くなるが、エコーキャンセラー技術を適用する必要がないのでプラグ42,44を第2例よりも簡易にできるし、送信信号と受信信号のクロストークの可能性は第2例よりも少なくなる。
[構成:第2例]
図15Aは、第2実施形態の第2例の信号伝送システム1Bの全体構成を説明する図である。第1の電子機器2と第2の電子機器8が接続ケーブル4で接続された状態で示している。ここでも、図2に示した第1実施形態の第1例の構成に対する変形例で示すが、図2Aに示した第1実施形態の第2例の構成に対しても同様の変形が可能である。以下では、第2実施形態の第1例の構成との相違点に着目して説明する。
第2例は、第1例をベースに、有線通信部404_1と有線通信部604_1の間と、有線通信部404_2と有線通信部604_2の間を、共通の導線で有線伝送できるように、エコーキャンセラー技術を適用する点に特徴を有する。公知のエコーキャンセラー技術を用いて共通の差動対を双方向の通信に用いる。このため、通信チップ401は、有線通信部404_1,404_2のケーブル部40側にエコーキャンセル部410(EC)を備え、通信チップ601は、有線通信部604_1,604_2のケーブル部40側にエコーキャンセル部610(EC)を備える。
<第3実施形態>
第3実施形態は、コネクタ接続において規格の互換性がとれているか否かを検出して無線通信を行なうか否かを制御する態様である。コネクタ部で無線伝送を行なう本実施形態の仕組みを適用しているか否かを検出して制御する機構(接続適合性判定機構、無線対応識別制御機構、無線通信機能検出機構などと称する)を設けることで、本実施形態を適用していない既存のコネクタ装置と下位互換を図る点に特徴を有する。装着構造は既存のコネクタと同じであっても(機械的な接続の互換性を維持しても)、コネクタ部にカプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)を設けるので形状変更が行なわれる。この場合に、接続された各機器、ケーブルの全てが無線伝送が可能な場合には無線伝送を行ない、そうでない場合は既存のコネクタ仕様で伝送する。
因みに、電子機器2、接続ケーブル4、電子機器8には、無線対応識別制御機構が存在する他に、無線対応であるのか無線非対応であるのかは、それぞれ以下のようになっているものとする。たとえば、電子機器2は、広帯域情報処理部200と無線通信部202とカプラー部120が存在し、無線非対応であるときには広帯域情報処理部200と無線通信部202とカプラー部120が存在しない。
電子機器8は、無線対応であるときには広帯域情報処理部800と無線通信部802とカプラー部130が存在し、無線非対応であるときには広帯域情報処理部800と無線通信部802とカプラー部130が存在しない。
接続ケーブル4が無線対応であるときには、プラグ42にはカプラー部125と通信チップ401が設けられ、プラグ44にはカプラー部135と通信チップ601が設けられている。接続ケーブル4が無線非対応であるときには、プラグ42にはカプラー部125と通信チップ401が存在せず、プラグ44にはカプラー部135と通信チップ601が存在せず、プラグ42とプラグ44の何れか一方のみが無線対応(カプラー部や通信チップが存在する)であるということはない。
カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)を適用した本実施形態の新世代インタフェースがカプラーのない旧世代インタフェースと混在して使用されることが想定される。このような場合、電子機器2と接続ケーブル4と電子機器8の全てにカプラーを適用した無線通信機能があるときに限ってカプラーを介したデータ伝送(特に広帯域データ伝送)を実行し、そうでないときには従前と同様に、導線を使った旧世代インタフェースとして機能させる。
[第1例]
図16は、第3実施形態の第1例の信号伝送システム1Cの全体構成を説明する図である。第1の電子機器2と第2の電子機器8が接続ケーブル4で接続された状態で示している。ここでは、図2に示した第1実施形態の第1例の構成に対する変形例で示すが、図2Aに示した第1実施形態の第2例の構成に対しても同様の変形が可能である。
第3実施形態の第1例は、片方向通信を行なう場合に、無線通信の対応/非対応の識別と識別結果に基づく制御を行なうものである。以下、第1実施形態の第1例の構成との相違点に着目して説明する。
カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)を適用した本実施形態の新世代インタフェースがカプラーの無い旧世代インタフェースと混在して使用されることが想定される。このような場合、電子機器2と接続ケーブル4と電子機器8の全てにカプラーを適用した無線通信機能があるときに限ってカプラーを介した広帯域データ伝送を実行し、そうでないときには従前と同様に、導線を使った旧世代インタフェースとして機能させる。以下、第1実施形態の第1例の構成との相違点に着目して説明する。
電子機器2は、方向管理部220とパワー検出部222(PW)と通知部229をさらに備える。通知部229は、判定部の一例であるパワー検出部222の判定結果を表示や音声など(たとえば電子機器2のディスプレイやスピーカなど)を利用して通知する。
方向管理部220としては、方向性結合器やサーキュレータを使用できる。方向管理部220は、無線通信部202からの信号を電磁界結合部12(のカプラー部120)に供給するとともに、電磁界結合部12(のカプラー部120)からの信号成分(第1例では反射した信号成分)をパワー検出部222に供給する。
パワー検出部222は、方向管理部220を介して供給される電磁界結合部12での反射成分のレベルを検知し、予め定められた閾値Th1と比較することで、接続ケーブル4のプラグ42が無線対応であるか否かを判定する。パワー検出部222としては、電磁界結合部12での反射成分のレベルを検知できるものであれればどのような構成のものでもよく、たとえば包絡線検波や自乗検波を適用することができる。
パワー検出部222は、この判定結果に基づいて、広帯域情報処理部200、無線通信部202、狭帯域情報処理部204の動作を制御する。たとえば、パワー検出部222は、接続ケーブル4のプラグ42が無線対応であると判定したときには、狭帯域情報処理部204の動作を停止させ、広帯域情報処理部200と無線通信部202を作動させる(DATA,WIDE)。接続ケーブル4のプラグ42が無線非対応であると判定したときには、狭帯域情報処理部204を動作させ、広帯域情報処理部200と無線通信部202の動作を停止させることで無駄な電力消費を抑える(NULL,NARROW)。
方向管理部220は、無線通信部202から来た信号を電磁界結合部12にのみ送り込み、パワー検出部222へ漏洩しない。電磁界結合部12で反射した成分はパワー検出部222のみに伝播し無線通信部202へは伝わらない。これによって、無線通信部202の出力は損失することなく電磁界結合部12から送信されるし、電磁界結合部12で反射した成分は無線通信部202からの信号に乱されることなく、パワー検出部222は反射成分を正しく判別できる。
接続ケーブル4が無線非対応であるとパワー検出部222が認識した後には、仮に閾値Th1を越えるパワーが検出されなくなったとしても広帯域通信に切り替えることはできない。このことは、誤検知に弱いということを意味する。誤検知対策としては、パワー検出部222は、閾値Th1を越えるパワーが予め定められた時間だけ継続的に検出されたときに接続ケーブル4が無線非対応と認識するとよい。あるいは、パワー検出部222は予め定められた時間ごとに繰り返して検出を行ない、無線非対応の検知回数が予め定められた回数に達したときに接続ケーブル4が無線非対応と認識するとよい。
接続ケーブル4(プラグ42)のレセプタクル22への抜き差し対策としては、たとえば、装着(嵌合)させたときに、自動的にあるいは操作者により、パワー検出部222をリセットして広帯域通信モードで動作させる機構を設けるとよい。
必須ではないが、狭帯域通信を行なうときには、広帯域情報処理部200と無線通信部202の動作を継続させ、広帯域情報処理部200は有意のデータではない特定コードを無線通信部202に供給し、無線通信部202は有意のデータではない特定コードで変調した電波を送信するようにしてもよい。こうすることで、接続ケーブル4が無線非対応のときは反射成分がパワー検出部222へ継続的に戻ってくるので、パワー検出部222は継続的にあるいは繰り返し接続ケーブル4が無線非対応と認識でき、誤検知対策がより確実になる。加えて、接続ケーブル4(プラグ42)のレセプタクル22への抜き差しにも対処できる。
プラグ42の通信チップ401は、コード検出部424と整合制御部426と通知部429をさらに備える。コード検出部424はパワー検出部222と同様のパワー検出部に置き換えることもできる。
コード検出部424は、無線通信部402が復調した情報が規則正しいコードであるか否かを判定し、判定結果をプラグ44の通信チップ601の無線通信部602へ通知する。無線通信部602は、コード検出部424からの判定結果に基づいて無線通信部602の動作モードを制御する。たとえば、判定結果が規則正しいコードでない旨(FREE)を示しているときは自走発振モードにし、判定結果が規則正しいコードである旨(DATA)を示しているときは広帯域データで変調された電波を送信する。
整合制御部426は、プラグ44の通信チップ601から供給される制御信号(OPEN/CLOSE)に基づいて、無線通信部402の入力終端を制御するもの、詳しくはカプラー部120とカプラー部125の間のインピーダンス整合を制御するものである。整合制御部426は、無線通信部402の入力端と基準電位(たとえば接地や電源電位など)との間の接続をオン/オフする短絡部とすることが考えられる。短絡部が開放のときにはカプラー部120とカプラー部125の間はインピーダンス整合がとられるが、短絡部が閉じられることでインピーダンス変化(マッチング不整合)が起き、電子機器2側からの電波はカプラー部120で反射される。
短絡部としては、たとえばNMOS(Nch型のMOSトランジスタ)を使用し、ドレインを無線通信部402の入力端に接続し、ソースを接地し、ゲートに通信チップ601からの制御信号を入力する。制御信号が「CLOSE 」であるときはNMOSをオンすることで整合制御部426は閉じ、制御信号が「OPEN」であるときはNMOSをオフすることで整合制御部426は開く。
なお、コード検出部424は、規則正しいコードを検知できないときは無線通信部602を動作停止にすることで電力消費を削減してもよい。さらには、無線通信部402や有線通信部404や有線通信部604も動作停止にして、電力消費を一層削減するようにしてもよい。これらの場合、整合制御部426の制御はパワー検出部622からの制御信号ではなく、コード検出部424の検知結果に基づいて行なうとよい。
プラグ44の通信チップ601は、方向管理部620とパワー検出部622と通知部629をさらに備える。通知部429や通知部629は、判定部の一例であるコード検出部424やパワー検出部622の判定結果を、表示や音声などを利用して(たとえばプラグ42やプラグ44にLEDやブザーを設けるなどして)通知する。
方向管理部620としては、方向性結合器やサーキュレータを使用できる。方向管理部620は、無線通信部602からの信号を電磁界結合部14(のカプラー部135)に供給するとともに、電磁界結合部14(のカプラー部135)で反射した信号成分をパワー検出部622に供給する。
パワー検出部622は、方向管理部620を介して供給される電磁界結合部14での反射成分のレベルを検知し、予め定められた閾値Th2と比較することで、電子機器8のレセプタクル84が無線対応であるか否かを判定する。パワー検出部622としては、電磁界結合部14での反射成分のレベルを検知できるものであれればどのような構成のものでもよく、たとえば包絡線検波や自乗検波を適用することができる。
パワー検出部622は、この判定結果に基づいて、プラグ42側の通信チップ401の整合制御部426の動作を制御するための制御信号(OPEN/CLOSE)を切り替える。たとえば、パワー検出部622は、電子機器8のレセプタクル84が無線対応であると判定したときには制御信号を「OPEN」にして整合制御部426を開き、電子機器8のレセプタクル84が無線非対応であると判定したときには制御信号を「CLOSE 」にして整合制御部426を閉じる。
方向管理部620は、無線通信部602から来た信号を電磁界結合部14にのみ送り込み、パワー検出部622へ漏洩しない。電磁界結合部14で反射した成分はパワー検出部622のみに伝播し無線通信部602へは伝わらない。これによって、無線通信部602の出力は損失することなく電磁界結合部14から送信されるし、電磁界結合部14で反射した成分は無線通信部602からの信号に乱されることなく、パワー検出部622は反射成分を正しく判別できる。
電子機器8は、コード検出部824と通知部829をさらに備える。通知部829は、判定部の一例であるコード検出部824の判定結果を表示や音声など(たとえば電子機器8のディスプレイやスピーカなど)を利用して通知する。
コード検出部824はパワー検出部222と同様のパワー検出部に置き換えることもできる。コード検出部824は無線通信部802が復調した情報が規則正しいコードであるか否かを判定し、判定結果に基づいて、広帯域情報処理部800と狭帯域情報処理部804の動作を制御する。たとえば、パワー検出部822は、規則正しいコードであると判定したときには、狭帯域情報処理部204の動作を停止させ、広帯域情報処理部800を作動させる(WIDE)。規則正しいコードでないと判定したときには広帯域情報処理部800の動作を停止させ、狭帯域情報処理部204を作動させる(NARROW)。
接続ケーブル4が無線非対応であるとコード検出部824が認識した後に、仮に規則正しいコードであると判定できたときには、コード検出部824は広帯域通信に切り替えることができる。このことは、誤検知に強いということを意味する。電子機器2側とは異なり、特段の誤検知対策は不要である。また、特段の対策をしなくても、接続ケーブル4(プラグ44)のレセプタクル84への抜き差しに対処できる。
次に、無線通信の対応/非対応の識別と制御について説明する。
#ケース1:電子機器2=無線対応、接続ケーブル4=無線非対応
最初は、パワー検出部222をリセットして、広帯域情報処理部200と無線通信部202を動作させて無線通信部202から高周波信号(電波)を電磁界結合部12に送出する。無線非対応の接続ケーブル4のプラグ42にはカプラー部120が存在せず、無線通信部202から出力された高周波信号はレセプタクル22のカプラー部120で反射しパワー検出部222へ戻る。閾値Th1を越えるパワーが検出されたときパワー検出部222は接続ケーブル4が無線非対応と認識し、広帯域情報処理部200と無線通信部202を停止させ、狭帯域情報処理部204を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。ここで、電子機器8が無線対応であったとしても、#ケース2と同様に、コード検出部824は狭帯域通信を行なうように制御する。これにより、電子機器2と電子機器8の間の伝送は、狭帯域伝送となり、コンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース2:電子機器8=無線対応、接続ケーブル4=非対応
電子機器8の無線通信部802は無入力になり、コード検出部824は規則正しいコードを検出しない。このとき、コード検出部824は、接続ケーブル4が無線非対応と認識し、広帯域情報処理部800を停止させ、狭帯域情報処理部804を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。ここで、電子機器2が無線対応であったとしても、#ケース1と同様に、パワー検出部222は狭帯域通信を行なうように制御する。これにより、電子機器2と電子機器8の間の伝送は、狭帯域伝送となり、コンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース3:接続ケーブル4=無線対応、電子機器2と電子機器8=無線非対応
接続ケーブル4のプラグ42側の無線通信部402は無入力になり、コード検出部424は規則正しいコードを検出しない。コード検出部424の検知出力はプラグ44側の通信チップ601に送られて無線通信部602を自走発振モードにする。その電波はカプラー部135に送られるが、電子機器8が無線非対応でカプラー部130を持たないことからカプラー部135で反射するため、閾値Th2を超える反射成分がパワー検出部622で検出される。閾値Th2を越える反射を検出したパワー検出部622はプラグ42側の整合制御部426を閉じる。電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース4:電子機器2と接続ケーブル4=無線対応、電子機器8=無線非対応
接続ケーブル4のプラグ44のパワー検出部622は、#ケース3と同様に閾値Th2を超える反射成分を検知でき、プラグ42側の整合制御部426を閉じる。整合制御部426が閉じられることで電磁界結合部12にマッチング不整合が起こり、無線通信部402の入力終端は見えなくなり、無線通信部202が送出した電波はカプラー部120で反射する。パワー検出部222は、#ケース1と同様に閾値Th1を超える反射成分を検知でき、広帯域情報処理部200と無線通信部202を停止させ、狭帯域情報処理部204を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース5:電子機器8と接続ケーブル4=無線対応、電子機器2=無線非対応
接続ケーブル4のプラグ42の無線通信部402は無入力になりコード検出部424は規則正しいコードを検出しない。#ケース3と同様にコード検出部424の検知結果はプラグ44側に送られて無線通信部602を自走発振モードにする。無線通信部602から送出される電波は規則正しいコードで変調されていないので、電子機器8側のコード検出部824は#ケース2と同様に、広帯域情報処理部800を停止させ、狭帯域情報処理部804を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース6:電子機器2と電子機器8と接続ケーブル4=無線対応
パワー検出部222は、広帯域データモードであれば広帯域情報処理部200からのデータで変調した電波を出力し、狭帯域モードであれば有意のデータではない特定コードで変調した電波を送信するように、各部を制御する。
無線通信部202から出力された何れかのモードの電波は、電磁界結合部12を介してプラグ42の無線通信部402に入力される。電磁界結合部12はインピーダンス整合がとれ無線通信部402の入力は適正に終端されるのでパワー検出部222は閾値Th1を超える反射成分を検出しない。その結果、仮に当初は狭帯域データモードであったとしても、パワー検出部222は広帯域モードで各部を制御するようになるので、広帯域データで変調した電波を無線通信部202から出力する。接続ケーブル4は有線通信部404と有線通信部604を使って無線通信部402が取り込んだ広帯域データを導線伝送する。
このとき、広帯域モードの場合、コード検出部424は広帯域モードに対応した規則正しいコードを検出するので、無線通信部602は広帯域データで変調された電波を送信する。この電波は電磁界結合部14を介して電子機器8の無線通信部802に入力される。電磁界結合部14はインピーダンス整合がとれ無線通信部802の入力は適正に終端されるのでパワー検出部622は閾値Th2を超える反射成分を検出しない。その結果、整合制御部426は開かれた状態が維持され、無線通信部402の入力終端は機能して、カプラー部120は無線通信部202からの電波を反射しない。電子機器8のコード検出部824は、接続ケーブル4からの電波を受けて広帯域モードに対応した規則正しいコードを検出するので、各部を広帯域モードで制御する。広帯域情報処理部800は、接続ケーブル4からの電波を受けて広帯域データを再生する。
一方、狭帯域モードの場合、有意のデータではない特定コードで変調した電波が無線通信部202から無線通信部402に送信される。コード検出部424は狭帯域モードに対応した特定コードを検出するので、無線通信部602を自走発振モードにする。無線通信部602から送出される電波は規則正しいコードで変調されていないので、電子機器8側のコード検出部824は#ケース2や#ケース5と同様に、広帯域情報処理部800を停止させ、狭帯域情報処理部804を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。これにより、電子機器2と接続ケーブル4と電子機器8の全てにカプラーを適用した無線通信機能があるときであっても、従前と同様に、導線を使った旧世代インタフェースとして機能させることができる。
なお、狭帯域通信を行なう場合(全てが無線対応の場合における狭帯域モードの場合も含む)に無線通信に関する機能部を動作させておくことは電力消費上無駄である。この対策としては、たとえば、コード検出部424の検知結果で整合制御部426、有線通信部404、有線通信部406を制御するように変形することが考えられる。コード検出部424は狭帯域モードに対応した特定コードを検出すると、有線通信部404と有線通信部406の動作を停止するとともに、整合制御部426を閉じる。無線通信部602も動作停止にしてもよい。
これにより、#ケース4と同様に電子機器2側のパワー検出部222は、閾値Th1を超える反射成分を検知でき、広帯域情報処理部200と無線通信部202を停止させ、狭帯域情報処理部204を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。電子機器8は、無線通信部602が自走発振モードや動作停止のときには規則正しいコードを検知できないので、広帯域情報処理部800を停止させ、狭帯域情報処理部804を動作させて、狭帯域通信を行なうように制御する。これにより、無線伝送に関する機能部の動作をできるだけ停止させつつ、導線を使った旧世代インタフェースとして機能させることができる。機器に複数のインタフェース規格を容易に搭載することができる。
無線対応可能な電子機器2、ケーブル4、電子機器8がこのような形態で狭帯域通信を行なうことは、単に電子機器2が送信回路202からの電波出力を停止してあたかもケース5であるかのようなの形態をとることに比べて次のような利点がある。それは、コード検出器424が1)データのコードを検出、2)ヌルコードを検出、3)何れのコードも検出せずという3状態を検出可能であるように作っておくと、狭帯域通信状態を3)であればハードウエア的に広帯域通信が不可能であるケース5、2)であれば広帯域通信も可能なハードウエアで狭帯域通信状態が選択されているケース6であると区別することが可能になる。消費電力削減のために受信回路402やコード検出部424を間歇動作とする場合の回路動作頻度を、ハードウエアの交換が無い限り広帯域通信の開始はあり得ない前者では低く、いつ広帯域通信が始まっても不思議ではない後者では高く設定するのが合理的である。
[第2例]
図16Aは、第3実施形態の第2例の信号伝送システム1Cの全体構成を説明する図である。第1の電子機器2と第2の電子機器8が接続ケーブル4で接続された状態で示している。ここでは、図15に示した第2実施形態の第1例の構成に対する変形例で示すが、図15Aに示した第2実施形態の第2例の構成に対しても同様の変形が可能である。
第3実施形態の第2例は、双方向通信を行なう場合に、無線通信の対応/非対応の識別と識別結果に基づく制御を行なうものである。双方向通信の場合に無線対応識別制御機構を設けるには、第1例の構成を、各方向に各別に設けることが先ず考えられる。しかしながらこの場合、回路規模が大きくなる。加えて、パワー検出部は送信対象のRF信号であるのか反射成分なのかの区別が問題となる。双方向通信に対応した構成であるので、パワー検出部は、接続の相手方が無線非対応のときの反射成分のレベルだけでなく、正常な方向のRF信号のレベルも検知する。ここで、接続の相手方が無線非対応のときの反射成分の方が正常な方向のRF信号レベルよりも小さいと考えて、処理することも考えられる。しかしながら、このような判別手法では、反射の状況次第では判定が不確実になることも起こり得る。
そこで、第2例では、第1例の片方向通信を双方向通信に変形することに加えて、双方向通信に対応した各無線通信部に、受信回路184、受信回路188の捉えたRF(高周波)信号が自身の送信回路182、送信回路186が出力したRF信号の反射成分なのか相手から届いたRF信号なのかを区別する機構を設けることで、回路規模の増大を抑える。RF信号の区別のため、一例として、電子機器2や電子機器8が出力する無線信号と接続ケーブル4が出力する無線信号には、パターンが異なり識別可能なコード(たとえばNULLコード)を使う。
以下、電子機器2、接続ケーブル4、電子機器8は、前提として、第2実施形態の第1例のように双方向通信に対応した構成であるものとし、第3実施形態の第1例との相違点に着目して説明する。
電子機器2は、コード検出部224(CD)と制御部228をさらに備える。コード検出部224は、受信回路184が復調した情報から予め定められたコードを検出する。ここで、予め定められたコードとは「NULLコード」である。パワー検出部222は、送信回路182の反射波成分あるいは無線通信部402側からのRF信号のレベルを検出する。制御部228は、パワー検出部222の検知結果とコード検出部224の検知結果に基づいて、広帯域伝送にするのか狭帯域伝送にするのかを制御する。
接続ケーブル4のプラグ42の通信チップ401は、方向管理部420とパワー検出部422をさらに備える。因みに、第1例とは異なり整合制御部426を備えない。パワー検出部422は、送信回路186の反射波成分あるいは無線通信部202側からのRF信号のレベルを検出する。コード検出部424は、受信回路188が復調した情報から予め定められたコードを検出する。ここで、予め定められたコードとは「NULLコード」である。コード検出部424は接続ケーブル4の「NULLコード」を検出したときは接続の相手方(ここでは電子機器2)が無線非対応であると識別し、その旨を出力する。
ここにパワー検出部422を用いる理由は、受信回路188への信号パワーが微弱でSN比が悪くコードを誤検出してしまうような場合でも、パワー検出部422によって測定されたパワーが微弱であることをもって電子機器2は無線対応ではないと判断するためである。そのような状況は電子機器2が本来無線対応可能な機器であってカプラー120と受信回路184がパッシブに終端を形成しているが、何らかの理由で送信回路182を停止し無線対応を停止中の場合などに発生する。このような状況ではプラグ42内の送信回路186の出力の極一部がカプラー12や方向性結合器420の不完全性によって受信回路188に漏洩していることがあり、電子機器2とプラグ42のもつコードの一部が類似しているとノイズによるコードの誤認がコード検出器424において生じ得るのである。
パワー検出部422の検知結果とコード検出部424の検知・識別結果は双方向通信に対応した有線通信部404に供給される。有線通信部404は、コード検出部424が接続ケーブル4のNULLコードを検出したとき(つまり接続の相手方が無線非対応であると識別したとき)は、その旨を有線伝送し、プラグ44側の送信回路182の送信動作を停止させる。因みに、コード検出部424の誤検知による動作不良を防止するべく、パワー検出部422が反射成分を検知している旨を示しているときにコード検出部424が接続ケーブル4のNULLコードを検出したときのみ送信回路182の送信動作を停止させるようにしてもよい。
接続ケーブル4のプラグ44の通信チップ601は、コード検出部624をさらに備えている。パワー検出部622はパワー検出部422と同様の機能をなし、コード検出部624はコード検出部424と同様の機能をなす。
電子機器8は、方向管理部820とパワー検出部822と制御部828をさらに備える。パワー検出部822はパワー検出部222と同様の機能をなし、コード検出部824はコード検出部224と同様の機能をなし、制御部828は制御部228と同様の機能をなす。
なお、図面の都合で通知部を割愛しているが、電子機器2、プラグ42、プラグ44、電子機器8のそれぞれにおいては、パワー検出部やコード検出部の判定結果を通知部で通知するようにするとよい。
次に、無線通信の対応/非対応の識別と制御について説明する。
#ケース1:電子機器の一方と接続ケーブル=無線対応、電子機器の他方=無線非対応 たとえば、電子機器2が無線対応で電子機器8が無線非対応であるとする。この場合、電子機器8側にはRF信号を終端する電磁界結合部14や無線通信部802が存在しないので、通信チップ601の送信回路182がRF信号を送出したときその反射波が通信チップ601の受信回路184に入る。コード検出部624は受信信号からコードを調べることで接続ケーブル4のNULLコードが検出されるので接続の相手方(ここでは電子機器8)が無線非対応であると識別する。その識別結果は有線通信部604から有線通信部404に通知される。この通知を受けた有線通信部404は無線通信部402の送信回路186の送信動作を停止させる。
プラグ42が電磁界結合部12(カプラー部125)と無線通信部402を持ちRF信号を終端しているので、電子機器2の受信回路184は無線通信部202の送信回路182がRF信号を送出したときその反射波を拾うことはない。しかし、無線通信部402は送信回路186の送信動作が停止されているので、無線通信部202は無線通信部402からのRF信号を受信できない。したがって、パワー検出部222はRF信号を検出しない。制御部228は、このパワー検出部222の検知結果に基づいて、無線通信を使った広帯域伝送はできないと判断して狭帯域伝送を行なうように制御する。電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース2:電子機器の少なくとも一方=無線対応、接続ケーブル4=無線非対応
電子機器2と電子機器8のうちの無線対応の機器は、接続の相手型(プラグ42やプラグ44)がカプラー(カプラー部125、カプラー部135)と無線通信部402、無線通信部602を持たないことによる反射を受信する。コード検出部224やコード検出部824によりコードを調べることで自身のNULLコードが検出される。制御部228は、このコード検出部224、コード検出部824の検知結果に基づいて、無線通信を使った広帯域伝送はできないと判断して狭帯域伝送を行なうように制御する。電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。
#ケース3:接続ケーブル4=無線対応、電子機器2と電子機器8=無線非対応
電子機器2と電子機器8は狭帯域伝送しかできないので、電子機器2と電子機器8の間の狭帯域伝送はコンタクト電極と導線を介して行われる。このとき、#ケース1から推測されるように、コード検出部424は反射成分についての受信信号からコードを調べることで接続ケーブル4のNULLコードを検出でき、この結果に基づいて無線通信部602の送信回路182の送信動作を停止させる。同様に、コード検出部624は反射成分についての受信信号からコードを調べることで接続ケーブル4のNULLコードを検出でき、この結果に基づいて無線通信部402の送信回路186の送信動作を停止させる。
#ケース4:電子機器2と電子機器8と接続ケーブル4=無線対応
全てのRF信号は相対するカプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)と受信回路184、受信回路188で終端されるので反射しない。受信回路184、受信回路188に入力されるのは全て相対する送信回路182、送信回路186からのRF信号である。このことは、コード検出部224とコード検出部824が接続ケーブル4のNULLコードを検出し、コード検出部424が電子機器2のNULLコードを検出し、コード検出部624が電子機器8のNULLコードを検出することで確認される。確認がとれると、電子機器2(の制御部228)と電子機器8(の制御部828)は、広帯域伝送の回路を動作させ、接続ケーブル4はプラグ42とプラグ44の間で広帯域データ伝送を行なう。
なお、第3実施形態の第1例および第2例で説明した判定処理は、専ら、他のコネクタ部が無線結合部を有することで電磁界結合部を形成できるものであるか否かを判定していたが、これだけではなく、さらに、無線信号の仕様が他のコネクタ部との間で共通であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合、他のコネクタ部が無線結合部を有するものであり、かつ、無線信号の仕様が他のコネクタ部との間で共通である場合に、無線信号を伝送できると判定し、それ以外は無線結合部を介しての無線信号を伝送できないと判定する。たとえば、無線信号の仕様判定のために、予め取り決めたコードを伝送対象信号に挿入し、各コード検出部でそのコードを使って判定することが考えられる。また、変調方式が異なる場合には予め取り決めたコードを適正に取得できるか否かで判定することも考えられる。
<第4実施形態>
図17は、第4実施形態の信号伝送システム1Dを説明する図である。ここで、図17(1)は、第1実施形態の図11に対応し、図17(2)は、第1実施形態の図12に対応する。
第4実施形態は、広帯域信号に関してコネクタ部に無線伝送を行なう本実施形態の仕組みを適用するものである。特に、前述の第1実施形態との相違として、第4実施形態は、接続ケーブル4における広帯域信号用の有線伝送を光配線(光ケーブル、光ファイバ)で行なうものである。つまり、接続ケーブル4内で広帯域データ伝送に光伝送を使う形態である。広帯域信号を導線伝送ではなく光伝送にすることで、接続される相手方機器と電気的に分離できる(アイソレーションをとれる)し、多チャネル化して広帯域データ伝送に対応しなくても済むので場合によっては有線伝送用の信号処理回路を簡易にできる。
ここでは、片方向通信を行なう第1実施形態に対する変形例で説明する。全体構成は図示しないが、たとえば、図2や図2Aにおける有線通信部404と有線通信部604の間を光配線にすればよい。図示しないが、双方向通信を行なう第2実施形態において、第4実施形態を適用して、接続ケーブル4における広帯域信号用の有線伝送を光配線(光ケーブル)で行なうようにしてもよい。
図17(1)には、無線通信部402で復調される広帯域情報を有線通信部404で光信号で有線送信する機能部の詳細構成例が示されている。無線通信部402は、注入同期方式を採用した無線受信回路3100と同様の構成である(図9(2)を参照)。ここでは、無線通信部402の構成説明を割愛する。
第4実施形態の有線通信部404Dは、信号処理部3400とタイミング信号生成部3500を備える。信号処理部3400は、受信した無線信号を復調して得た電気信号を光信号に変換する電気光変換部の一例であり、識別回路3402と電流駆動部3440(LDドライバ)と半導体レーザ3450(LD)を有する。
タイミング信号生成部3500は、有線通信部404Dで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部3500は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、PLLやDLLなどで構成するのが好適である。以下ではDLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部3500は、遅延同期部3510(DLL)を備えている。遅延同期部3510は、無線通信部402(無線受信回路3100)の受信側局部発振部3114を発振回路として利用するように構成されており、分周部3512、位相比較部3514(PD)、位相調整部3516を有する。遅延同期部3510の構成および動作は、第1実施形態の遅延同期部3310と同様である。
識別回路3402は、第1実施形態の信号処理部3200の識別回路3202と同様に、無線通信部402により復調された広帯域信号をリタイミングクロックに同期して取り込む。識別回路3402は二値化部3122の機能も兼ねる。
識別回路3402でサンプリングされた9Gb/s出力は電流駆動部3440に供給される。電流駆動部3440は、この9Gb/s出力に基づいて半導体レーザ3450を駆動することで電気信号(広帯域データ)を光信号に変換する。
ケーブル部40は、第1実施形態の導線9010に代えて光ファイバ9020(光ケーブルの一例)が使用されている。光ファイバ9020のプラグ42側には光結合部9022(Optical Coupler )が設けられている。半導体レーザ3450から発せられた光信号は光結合部9022を介して光ファイバ9020に取り込まれ、光ファイバ9020を伝達する。
図17(2)には、有線通信部604で受信される広帯域情報を無線通信部602で無線送信する機能部の詳細構成例が示されている。無線通信部602は、無線送信回路1100と同様の構成である(図9を参照)。無線通信部602の構成説明を割愛する。
第4実施形態の有線通信部604Dは、CDR(Compact Disc Recordable )などの光読取回路に似通った構成であり、信号処理部5400とタイミング信号生成部5500を備えている。信号処理部5400は、光ケーブルを伝送した光信号を電気信号に変換する光電気変換部の一例であり、光検出部5402と、9Gb/sのNRZ信号をサンプリングするサンプリング部5410を備える。光検出部5402にはフォトダイオード(PD)が使用される。光ファイバ9020のプラグ44側には光結合部9024(Optical Coupler )が設けられている。
サンプリング部5410は、増幅機能を持った電流電圧変換回路5412(TIA)と識別回路5414を有する。電流電圧変換回路5412は、ケーブル部40内の光ファイバ9020を経由した9Gb/sNRZ信号の波形整形を行なう。識別回路5414は、二値化部3122の機能を備えており、リタイミングクロック(周波数は9GHz)で電流電圧変換回路5412から出力された信号を取り込むことで、2値に量子化して無線通信部602の周波数混合部1112に供給する。
タイミング信号生成部5500は、有線通信部604Dで使用するタイミング信号を生成するものである。タイミング信号生成部5500は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、たとえばPLLやDLLなどで構成するのが好適である。以下では第1実施形態のタイミング信号生成部5300と同様にPLLで構成する場合で説明する。たとえば、CDR−PLL回路の考え方を適用できる。
タイミング信号生成部5500は、無線通信部602(無線送信回路1100)の送信側局部発振部1114を発振回路として利用するように構成されており、分周部5510と、位相比較部5520(PD)と、チャージポンプ部5530(CP)と、ループフィルタ部5550を備えている。分周部5510は出力発振信号Vout の周波数を1/6に分周して、識別回路5414と位相比較部5520に供給する。
変調機能部1110の送信側局部発振部1114から出力された54GHzの送信搬送信号は分周部5510により6分周されて識別回路5414への9GHzリタイミングクロックとなる。この9GHzリタイミングクロック選はまた9GHz比較クロックとして位相比較部5520に供給される。
タイミング信号生成部5500は、9GHz比較クロックが信号処理部5400が受信する受信信号と周波数位相同期するように、位相比較部5520、チャージポンプ部5530、ループフィルタ部5550とともにPLL回路を構成している。タイミング信号生成部5500の動作は、基本的にはタイミング信号生成部5300と同じである。
有線通信部604Dの全体動作は以下の通りである。光ファイバ9020を伝達した光信号(9Gb/sNRZ信号)は光結合部9024を介して光検出部5402に入射する。光検出部5402は、光信号を電気信号に変換して電流電圧変換回路5412に供給する。電流電圧変換回路5412は電気信号を増幅・整形して識別回路5414に供給する。識別回路5414は、タイミング信号生成部5500で抽出した9GHzリタイミングクロックで、電流電圧変換回路5412の出力をサンプリングして9Gb/sNRZ信号を取得し無線通信部602に供給する。9Gb/sNRZ信号は周波数混合部1112に変調信号として入力される。無線通信部602は、送信側局部発振部1114からの54GHz送信搬送信号を9Gb/sNRZ信号で変調しRF信号を生成する。変調されたRF信号は送信増幅部1120と電磁界結合部14(カプラー部130)を介して伝送される。
第4実施形態では、導線伝送と比べると、ケーブル部40での有線伝送を光伝送で実現しているので、広帯域伝送に向いており、多チャネル化処理を行なわずに済むから、機器間のアイソレーションがとれるだけでなく、有線伝送用の信号処理回路を簡易にできる。
<第5実施形態>
図18〜図20は、第5実施形態の信号伝送システム1Eを説明する図である。ここでは双方向通信を行なう第2実施形態に対する変形例で示すが、片方向通信を行なう第1実施形態や広帯域信号に関しての有線伝送を光伝送で行なう第4実施形態に対しても同様の仕組みを適用できる。
第5実施形態は、電源ケーブル5(ACアダプタのケーブルを含む)に、広帯域信号に関してコネクタ部(コンセントやテーブルタップなどを含む)に無線伝送を行なう本実施形態の仕組みを適用するものである。因みに、第1〜第4実施形態とは異なり、電源ケーブルでは、狭帯域信号用や電源用のコンタクトが存在しない。
電源ケーブル5は、ケーブル部50と、ケーブル部50の電子機器2E側の端部に設けられたコネクタ部(コネクタプラグ:以下プラグ52と記す)と、ケーブル部50の電子機器8E側の端部に設けられたコネクタ部(コネクタプラグ:以下プラグ54と記す)とで構成されている。
電子機器2Eと電子機器8Eとが電源ケーブル5で接続されることで、電子機器2Eから電子機器8E側へ電源が供給される。ここで、第5実施形態では、コンタクト電極を利用する通常の電源供給の接続系統の他に、無線で信号接続を行なう系統も設けられている。以下では、無線接続の系統に着目して説明する。
電源ケーブル5のケーブル部50は、電源供給線5010の他に、広帯域データ専用のデータ伝送線5020を備え、データ伝送線5020を使って広帯域データ伝送を行なう。データ伝送線5020は、第1〜第3実施形態のように導線9010を使用することもできるし、第4実施形態のように光ファイバ9020を使用することもできる。
電子機器2Eには、電源ケーブル5のプラグ52と嵌合可能なレセプタクル22が設けられている。電子機器8Eには、電源ケーブル5のプラグ54と嵌合可能なレセプタクル84が設けられている。
[第1例]
図18に示す第1例はAC電圧で電源供給する形態であり、電子機器2Eと電子機器8Eは、たとえば何れか一方(たとえば電子機器2E)がたとえばコンセント(たとえば壁に配置)やテーブルタップなどであり、他方(たとえば電子機器8E)はパーソナルコンピュータやデジタルテレビ(DTV)などの音声や映像などのデータを処理する機器である。AC電圧で電源供給する形態の第1例では、ケーブル部50の電源供給線5010としてはAC配線5012が使用される。
電子機器2Eは、本来の機能要素である電源線250(ACパワーソース)の他に、無線通信部202と通信インタフェース部270(通信IF部)を備える。電源線250にはたとえばノイズフィルタが設けることもある。ACプラグ258を介して電源線250にAC電源が供給される。無線通信部202は第2実施形態で説明したものと同様に送信回路182と受信回路184を具備した双方向通信対応のものであるである。双方向通信に対応するべく、カプラー部120と無線通信部202の間には方向管理部190が設けられている。通信インタフェース部270は、広帯域LANなどの通信手段との接続を中継する機能部であり、たとえばブリッジやHUBやルータなどが該当する。
電源ケーブル5のプラグ52は、電源部450と無線通信部460を備える。電源部450は、無線通信部460に電源(DC電圧)を供給するもので、電流制限抵抗452、トランス454、AC/DC変換部456を有する。電流制限抵抗452は2本の電源線のうちの一方とトランス454の一次巻線の一方の入力端の間に存在する。トランス454の一次巻線の他方の入力端は2本の電源線のうちの他方と接続されている。トランス454の二次巻線はAC/DC変換部456に接続される。AC/DC変換部456は公知の仕組みによりAC電圧をDC電圧に変換し、DC電圧を無線通信部460に供給する。
無線通信部460は、無線通信部402および有線通信部404を具備した通信チップ401を有する。通信チップ401は第2実施形態で説明したものと同様に送信回路186と受信回路188を具備した双方向通信対応のものである。双方向通信に対応するべく、カプラー部125と通信チップ401の間には方向管理部192を備える。
電源ケーブル5のプラグ54は、電源部650と無線通信部660を備える。電源部650は、無線通信部660に電源(DC電圧)を供給するもので、電流制限抵抗652、トランス654、AC/DC変換部656を有する。電流制限抵抗652は2本の電源線のうちの一方とトランス654の一次巻線の一方の入力端の間に存在する。トランス654の一次巻線の他方の入力端は2本の電源線のうちの他方と接続されている。トランス654の二次巻線はAC/DC変換部656に接続される。AC/DC変換部656は公知の仕組みによりAC電圧をDC電圧に変換し、DC電圧を無線通信部660に供給する。
無線通信部660は、無線通信部602および有線通信部604を具備した通信チップ601を有する。通信チップ601は第2実施形態で説明したものと同様に送信回路186と受信回路188を具備した双方向通信対応のものであるである。双方向通信に対応するべく、カプラー部135と通信チップ601の間には方向管理部192を備える。
電子機器8Eは、本来の機能要素である電源部850(ACパワーシンク)の他に、無線通信部802と通信インタフェース部870(通信IF部)を備える。電源部850は、AC電源からDC電源を生成する。無線通信部802は第2実施形態で説明したものと同様に送信回路182と受信回路184を具備した双方向通信対応のものであるである。双方向通信に対応するべく、カプラー部120と無線通信部802の間には方向管理部190が設けられている。通信インタフェース部870は、通信インタフェース部270と同様に、広帯域LANなどの通信手段との接続を中継する機能部である。
[電磁界結合部の構造例]
図19は、第5実施形態(第1例)の無線カプラー(電磁界結合部12および電磁界結合部14)の具体的な構成例を示す図である。図示した例は、図7〜図8Aで説明した第3例(導波路の断面を介して無線伝送を行なう態様)を採用している。データ伝送線5020としては導線9010を使用している。図から明らかであるので、ここでは、各部の説明を割愛する。第3例を適用することに限らず、第1例や第2例を適用してもよい。
[第2例]
図20に示す第2例はDC電圧で電源供給する形態であり、電子機器2Eと電子機器8Eは、たとえば何れか一方(たとえば電子機器2E)がACアダプタであり、他方(たとえば電子機器8E)はパーソナルコンピュータやデジタルテレビ(DTV)などの音声や映像などのデータを処理する機器である。DC電圧で電源供給する形態の第2例では、ケーブル部50の電源供給線5010としてはDC配線5014が使用される。
電子機器2EがACアダプタとなり、電子機器2Eは、電源線250の代わりに電源部260を備える。電源部260は、電子機器2EをACアダプタとするべく、コンセントからACプラグ268で引き込んだ交流電源を直流電源(DC電圧)に変換し電源ケーブル5を介して電子機器8Eに直流電源を供給するもので、電流制限抵抗262、トランス264、AC/DC変換部266を有する。電流制限抵抗262はACプラグ268を介した2本の電源線のうちの一方とトランス264の一次巻線の一方の入力端の間に設けられている。トランス264の一次巻線の他方の入力端は2本の電源線のうちの他方と接続されている。トランス264の二次巻線はAC/DC変換部266に接続される。AC/DC変換部266は公知の仕組みによりAC電圧をDC電圧に変換する。このDC電圧は電源ケーブル5のケーブル部50のDC配線5014を介して電子機器8E側に供給される。電子機器8Eは、AC電源からDC電源を生成する電源部850の代わりに、DC電源からDC電源を生成する電源部808を備える。
電源供給線5010がDC配線5014となるので、プラグ52の電源部450とプラグ54の電源部650を次のように変更する。電源部450は、電流制限抵抗452、トランス454、AC/DC変換部456に代えて、DC/DC変換部458を備える。電源部650は、電流制限抵抗652、トランス654、AC/DC変換部656に代えて、DC/DC変換部658を備える。DC/DC変換部458やDC/DC変換部658は、たとえば三端子レギュレータやツェナーダイオードなどの基準電源を利用した電源安定化回路を使用できる。DC/DC変換部458を備えずに、電源部260が生成したDC電圧そのものを無線通信部460に供給してもよいし、DC/DC変換部658を備えずに、電源部260が生成したDC電圧そのものを無線通信部660に供給してもよい。
第1例および第2例の何れにおいても、カプラー(電磁界結合部12、電磁界結合部14)およびケーブル部50に増設したデータ伝送線5020を使って広帯域データ伝送を行なう。第1例の場合、電源供給線5010はAC配線5012であり、AC配線5012に供給される電力はAC電源そのものであり、電源ケーブル5のAC/DC変換回路(電源部450、電源部650)を経て、無線通信機能部(無線通信部460、無線通信部660)にパワーを供給する。これに対して、第2例の場合は、電源供給線5010はDC配線5014であり、DC配線5014に供給される電力はDC電源であるから、電源ケーブル5にはAC/DC変換回路が不要で、DC配線5014からそのまま無線通信機能部(無線通信部460、無線通信部660)にパワーを供給でき、必要に応じてDC/DC変換回路(DC/DC変換部458、DC/DC変換部658)を設ければよい。
[適用システム]
図21は第5実施形態の適用例を説明する図である。RFカプラー通信機能(広帯域データに関しての無線通信機能)を備えた電源ケーブル5には、図21のような用途が考えられる。たとえば、電子機器2Eとしてテーブルタップ2E_1とACアダプタ2E_2が存在する。テーブルタップの各コンセントに各種の電子機器8Eからの電源ケーブル5が接続される。なお、ACアダプタ2E_2はテーブルタップ2E_1の1つのコンセントからAC電源の供給を受ける。電子機器8Eとしては、デジタルテレビ8E_1(DTV)、DVD(ブルーレイを含む)を利用した録画再生装置8E_2、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ8E_3、ノート型のパーソナルコンピュータ8E_4が存在している。
テーブルタップ2E_1とデジタルテレビ8E_1、録画再生装置8E_2、パーソナルコンピュータ8E_3との接続は第1例が適用され、ACアダプタ2E_2とパーソナルコンピュータ8E_4との接続は第2例が適用される。何れも、電源ケーブル5を繋ぐだけで機器間の高速データ通信が可能になる。既存のPLC(Power Line Communication)のようにパワーラインやその電極に信号を通さないので宅内AC配線による電源不要輻射が少ない。
<比較例との対比>
産業用装置や民生機器の情報処理能力は年々増強されており、それらをケーブルで繋ぐインタフェースの伝送すべきデータ帯域も拡大を続けている。従来(既存)のインタフェースと互換性を保ちながら伝送帯域を拡大する世代交代は種々のインタフェースで実施されている。代表的な例として、イーサネット(登録商標)では、10Base−Tから100Base−TXへ、さらには1000Base−Tへの拡張が挙げられ、USB(Universal Serial Bus)では、USB1.0からUSB2.0へ、さらにはUSB2.0からUSB3.0への拡張が挙げられる。一般にこれらの世代交代では旧世代用に設計されたコネクタ電極の形状と配置が広帯域に適していないことが問題になる。これによる制約を克服するために様々な技術が適用されている。
たとえば、イーサネット(登録商標)では、参考文献1に示されているように、伝送信号符号の改良とともに、ケーブルイコライザ、エコーキャンセラ、クロストークキャンセラなどの信号整形技術が導入された。
参考文献1:石田修、“高速イーサネット規格の標準化動向”、NGN時代の光技術・産業懇談会第5回公開討論会、2008年3月5日、[online]、[平成22年3月26日検索]、インターネット<URL:http://www.oitda.or.jp/main/study/ngn/NGN5-Siryou/07NGN5-1.pdf>
USBでは、USB2.0からUSB3.0への拡張時には、参考文献2に示されているように、広帯域信号用のピンが追加され、従来4芯だったケーブルは9芯となり、外見は従来型と同じサイズにしつつ、ピン(コンタクト電極)追加のためにコネクタの形状が変更されている。追加されたUSB3.0の信号線が相互に繋がるときにはUSB3.0として動作し、そうでないときにはUSB2.0(あるいは1.0)で動作することで、既存のUSB機器やUSBケーブルとの接続互換性(下位互換性)を維持している。
参考文献2:ルネサス社のホームページ(リンク先):製品情報→専用IC→USBデバイスの“USB”→USBの“USB3.0の仕様概要”→“下位互換性”、[online]、[平成22年3月26日検索]、インターネット<URL:http://www.necel.com/usb/ja/about_usb/USB3_3.html>
しかしながら、さらなる高速・大容量のデータ伝送の要求を満たすには、従来のような技術の延長線では限界に達する。たとえば、次世代デジタルマルチメディアインタフェースとしてHDMI(High-Definition Multimedia Interface)が注目されている。しかしながら、現状でも1対当たり3.4Gb/sの差動信号対を3対収納しているHDMIのような小型で多極のコネクタを持つインタフェースをさらに広帯域化する場合には信号処理の側面からの対処やピン追加での対処には困難性がある。たとえば、5Gb/sを超えるような高周波のエコーキャンセラ、クロストークキャンセラを製造することは至難であるし、現行世代のコネクタに挿抜できるという制限の下にこれ以上のピンを追加することが困難(実質上、不可能)なコネクタ形状をしているからである。高速・大容量のデータ伝送の要求におけるこのような困難性は、HDMIに限らず、イーサネット(登録商標)やUSBでも起こり得る。
また、従来のインタフェースに広帯域のデータ通信機能を付加する最も極端な例として、参考文献3に示すように、PLC(Power Line Communications :高速電力線通信)がある。従来のPLCは本来AC電力の輸送だけが目的であったACラインに高周波信号を重畳して通信を実現している(同文献中のOFDM(直交周波数分割多重)伝送方式概要を参照)。しかしながら、このPLC技術では、ACラインはアンテナとして高周波信号を輻射するので、この不要輻射を抑えるために従来のPLCは変調方式と送信パワーを制限される。また、高周波特性を考慮することなく設計された既存のACラインやコンタクトも変調方式を選択する際の強い制約条件になる。これらの結果、PLCで達成できる通信帯域は狭くなり、画像などの高速・大容量のデータ伝送には不十分であると言わざるを得ない。
参考文献3:高速電力線通信推進協議会(PLC-J)事務局のホームページ(リンク先)
:、PLC−Jシステム概要→PLCとは?→PLCの技術的課題→高速通信を実現するためのPLC技術、[online]、[平成22年3月26日検索]、インターネット<URL:http://www.plc-j.org/about_plcsys3.htm>
これに対して、本実施形態の仕組みでは、コネクタ接続部に無線伝送を行なうためのカプラー (実施形態の電磁界結合部12、電磁界結合部14)を追加し、カプラーを介して無線伝送を行なうようにしたので、前述のような問題を緩和できる。たとえば、
1)カプラーではピンが不要であるから、旧世代インタフェース用に設計されたコネクタ電極の形状と配置による高周波的な制約に縛られることなく広帯域通信ができる。
2)コネクタ部にカプラーを追加するに当たり、外見は従来型と同じサイズにすることで、旧世代インタフェースと互換性のある新世代インタフェースが実現できる。このとき、第3実施形態のように接続適合性検知機構を設ければ、新世代インタフェースと旧世代インタフェースが混合して使われても無線機能の有無を相互に認識して狭帯域伝送と広帯域伝送を適時選択することができる。
3)互換性を保つ条件下ではピンを増設することが不可能な構造的余裕のないインタフェースでも、カプラーではピンが不要であるから、広帯域伝送能力をもつ新世代インタフェースを実現できる。
4)カプラーの露出面は広帯域信号を送受信する回路素子とは直流的には絶縁しているし、絶縁耐圧の高い薄膜で保護することもできるから、送受信回路素子の静電耐力とは無関係に高い静電耐力をもったインタフェースを実現できる。
5)第1実施形態の第1例のように広帯域伝送と旧世代の狭帯域伝送を各別の伝送線を使用するシステム構成にする場合は、広帯域通信は旧世代の狭帯域通信機能とは電気的に絶縁できるので、狭帯域通信が高い直流バイアスを要求していても広帯域通信機能は高周波特性に優れた低耐圧素子で製造することができる。
6)第1実施形態の第2例のように広帯域伝送と旧世代の狭帯域伝送を共通の伝送線を使用するシステム構成にする場合は、有線伝送(ケーブル部40)の導線数の増加を抑えることができる。
7)双方向通信に対応する場合に、互いに異なる方向への片方向通信のシステム構成(第1実施形態の構成)を単純に並べるのではなく、第2実施形態のようにすることで、双方向通信が1組のカプラーを共有して同時に実行でき、双方向広帯域インタフェースを構築する部品数が削減できる。
8)広帯域データに関してのケーブル部40における有線伝送のための信号処理において、無線伝送用の搬送信号を変調する広帯域データ(たとえばNRZ信号)の同期クロックを、搬送信号に基づいて生成すると、搬送信号と同期クロックを同期させることができる。これにより、回路の部品数を減らしケーブルのプラグ内に集積し易くできるし、変調信号と搬送信号の低周波ビートによる変調特性の変動を抑制することもできる。
9)広帯域データに関してのケーブル部40における有線伝送を、第1〜第3実施形態のように導線伝送ではなく、第4実施形態のように光伝送にすれば、接続機器間のアイソレーションをとれるし、有線伝送用の信号処理回路を簡易にできる。
10)第5実施形態のように、電源ケーブルに応用すれば、汎用的な広帯域LAN用のケーブルを使用できるので、これ以外のケーブルを敷設することなく、PLCと同様のイメージで、機器間の高速データ通信を実現できる。従来のPLCはACラインに直接信号を重畳するので不要輻射を抑えるために通信帯域が制限を受けたが、第5実施形態の方式はカプラーおよびACケーブルに増設したデータ専用導体を使ってデータ伝送を行なうので、従来よりも広帯域なデータ通信を実現できる。
11)コネクタ部にカプラーを実装するに当たっては、カプラーの露出面は広帯域信号を送受信する回路素子とは直流的には絶縁しているし、絶縁耐圧の高い薄膜で保護することもできるから、送受信回路の静電耐力とは無関係に高い静電耐力をもったインタフェースを実現できる。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明の他に、たとえば、以下の発明が抽出される。以下列記する。
<<第1の付記発明>>
<付記1>
第1のコネクタ装置と、
前記第1のコネクタ装置と装着可能な第2のコネクタ装置と、
を備え、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置とが装着されることで、導波構造による電磁界結合部が形成され、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置との間では、伝送対象信号を無線信号に変換してから前記無線信号を前記電磁界結合部を介して伝送するようになっており、
前記電磁界結合部の前記導波構造は、規格に従った装着構造の形状を満たすように設けられている
信号伝送システム。
<付記2>
前記伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する第1の信号変換部と、
受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する第2の信号変換部と、
を備え、
前記第1のコネクタ装置は、前記第1の信号変換部と電気的に接続された第1の無線結合部を有し、
前記第2のコネクタ装置は、前記第2の信号変換部と電気的に接続された第2の無線結合部を有する
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記3>
前記第1の無線結合部は、前記第1の信号変換部と第1の高周波伝送路を介して接続された第1の伝送路結合部を有し、
前記第2の無線結合部は、前記第2の信号変換部と第2の高周波伝送路を介して接続された第2の伝送路結合部を有し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置が装着されることで形成される、前記第1の伝送路結合部と前記第2の伝送路結合部との間の空間で、前記無線信号を伝送するように構成されている
付記2に記載の信号伝送システム。
<付記4>
前記第1の伝送路結合部は第1のプローブ状の無線結合部を有し、
前記第2の伝送路結合部は第2のプローブ状の無線結合部を有し、
無線信号の波長をλとしたとき、前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置との装着時に前記プローブ状の無線結合部同士がλ/4波長分重なり共振することで前記無線信号を伝送するように、それぞれの前記プローブ状の無線結合部の位置関係が設定されている
付記3に記載の信号伝送システム。
<付記5>
前記第1の伝送路結合部は第1のアンテナ結合部を有し、
前記第2の伝送路結合部は第2のアンテナ結合部を有し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置との装着時に、前記第1のアンテナ結合部と前記第2のアンテナ結合部との間で、前記無線信号を伝送するように構成されている
付記3に記載の信号伝送システム。
<付記6>
前記第1のアンテナ結合部の電波放射側には第1の導波路が設けられており、
前記第2のアンテナ結合部の電波放射側には第2の導波路が設けられており、
前記第1のアンテナ結合部と前記第2のアンテナ結合部との間での無線伝送が前記第1の導波路と前記第2の導波路を介して行なわれる
付記5に記載の信号伝送システム。
<付記7>
前記第1の無線結合部は、前記第1の信号変換部と第1の高周波伝送路を介して接続された第1の導波路結合部を有し、
前記第2の無線結合部は、前記第2の信号変換部と第2の高周波伝送路を介して接続された第2の導波路結合部と導波路を有し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置が装着されることで、前記第1の導波路結合部と前記第2の導波路結合部が前記導波路を介して電磁界結合され前記無線信号を伝送するように構成されている
付記2に記載の信号伝送システム。
<付記8>
前記第2の無線結合部の前記導波路は、前記第2の信号変換部が搭載された回路基板内に形成された誘電体導波管である
付記7に記載の信号伝送システム。
<付記9>
前記第1の導波路結合部は第1のプローブ状の無線結合部を有し、
前記第2の導波路結合部は第2のプローブ状の無線結合部と第1の開口部とで構成されるスロットアンテナ構造をなしており、
前記第2の無線結合部の前記導波路の前記第2の導波路結合部とは反対側の前記第1の無線結合部と相対する位置には第2の開口部が設けられており、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置が装着されることで、前記第1の導波路結合部の前記第1のプローブ状の無線結合部と前記第2の無線結合部の前記第2の開口部とでスロットアンテナ構造が形成されるようになっている
付記7または付記8に記載の信号伝送システム。
<付記10>
前記第2のコネクタ装置の前記第1のコネクタ装置との装着部分は金属材で覆われており、
前記金属材の一部には、前記第2のコネクタ装置に装着される前記第1のコネクタ装置をロックする穴が設けられており、
前記第2の無線結合部の前記導波路の導体壁は、前記第1のコネクタ装置との装着部分を覆おう前記金属材を利用して構成されており、
前記第2の無線結合部の前記第2の開口部は、前記第1のコネクタ装置をロックする前記穴を利用して構成されている
付記9に記載の信号伝送システム。
<付記11>
前記第1の無線結合部は、前記第1の信号変換部と第1の高周波伝送路を介して接続された第1の導波路結合部と第1の導波路を有し、
前記第2の無線結合部は、前記第2の信号変換部と第2の高周波伝送路を介して接続された第2の導波路結合部と第2の導波路を有し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置が装着されることで、前記第1の導波路の長手方向の断面と前記第2の導波路の長手方向の断面とが相対して導波路接合部が形成され、前記導波路接合部を介して前記無線信号を伝送するように構成されている
付記2に記載の信号伝送システム。
<付記12>
他のコネクタ装置と装着可能な装着構造を有し、
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換するまたは受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送する無線結合部を有し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置とが装着されることで、導波構造による電磁界結合部が形成され、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置との間では、伝送対象信号を無線信号に変換してから前記無線信号を前記電磁界結合部を介して伝送するようになっており、
前記電磁界結合部の前記導波構造は、規格に従った装着構造の形状を満たすように設けられている
コネクタ装置。
<付記13>
前記無線結合部は、前記信号変換部と高周波伝送路を介して接続された伝送路結合部を有し、
前記他のコネクタ装置が装着されることで形成される、自装置の前記伝送路結合部と前記他のコネクタ装置の前記伝送路結合部との間の空間で、前記無線信号を伝送するように構成されており、
前記第1の伝送路結合部は第1のプローブ状の無線結合部を有し、
前記第2の伝送路結合部は第2のプローブ状の無線結合部を有し、
無線信号の波長をλとしたとき、前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置との装着時に前記プローブ状の無線結合部同士がλ/4波長分重なり共振することで前記無線信号を伝送するように、それぞれの前記プローブ状の無線結合部の位置関係が設定されている
付記12に記載のコネクタ装置。
<付記14>
前記伝送路結合部はアンテナ結合部を有し、
前記他のコネクタ装置との装着時に、自装置の前記アンテナ結合部と前記他のコネクタ装置の前記アンテナ結合部との間で、前記無線信号を伝送するように構成されている
付記13に記載のコネクタ装置。
<付記15>
前記アンテナ結合部の電波放射側には導波路が設けられており、
自装置の前記アンテナ結合部と前記他のコネクタ装置の前記アンテナ結合部との間での無線伝送が前記導波路を介して行なわれる
付記14に記載のコネクタ装置。
<付記16>
前記無線結合部は、前記信号変換部と高周波伝送路を介して接続された導波路結合部を有し、前記信号変換部と高周波伝送路を介して接続された導波路結合部と導波路とを有する前記他のコネクタ装置と装着されることで、自装置の前記導波路結合部が前記他のコネクタ装置の前記導波路を介して電磁界結合され前記無線信号を伝送するように構成されている、
または、
前記無線結合部は、前記信号変換部と高周波伝送路を介して接続された導波路結合部と導波路とを有し、前記他のコネクタ装置と装着されることで、自装置の導波路結合部と前記他のコネクタ装置の前記導波路結合部が前記導波路を介して電磁界結合され前記無線信号を伝送するように構成されている
付記12に記載のコネクタ装置。
<付記17>
前記他のコネクタ装置と装着されることで、プローブ状の無線結合部と開口部とでスロットアンテナ構造が形成されるようになっている
付記16に記載のコネクタ装置。
<付記18>
前記他のコネクタ装置との装着部分は金属材で覆われており、
前記金属材の一部には、装着される前記他のコネクタ装置をロックする穴が設けられており、
前記無線結合部の前記導波路の導体壁は、前記他のコネクタ装置との装着部分を覆おう前記金属材を利用して構成されており、
前記開口部は、前記他のコネクタ装置をロックする前記穴を利用して構成されている
付記17に記載のコネクタ装置。
<付記19>
前記無線結合部は、前記信号変換部と高周波伝送路を介して接続された導波路結合部と導波路を有し、
前記他のコネクタ装置が装着されることで、自装置の前記導波路の長手方向の断面と前記他の装置の導波路の長手方向の断面とが相対して導波路接合部が形成され、前記導波路接合部を介して前記無線信号を伝送するように構成されている
付記12に記載のコネクタ装置。
<付記20>
他のコネクタ装置を装着可能な装着構造を具備したコネクタ部と、
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と、
を備え、
前記コネクタ部は、前記信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送する無線結合部を有し、
前記コネクタ部が前記他のコネクタ装置と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ装置の前記無線結合部との間で、導波構造による電磁界結合部が形成されるようになっており、
前記電磁界結合部の前記導波構造は、規格に従った装着構造の形状を満たすように設けられている
電子機器。
<第1の付記発明の名称・技術分野・効果>
第1の付記発明は、信号伝送システム、コネクタ装置、電子機器に関する。
第1の付記発明の一態様によれば、接触を利用した接続インタフェースとは異なり、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
接触ピンを増設することが不可能な構造的余裕のないコネクタへの適用も可能である。コネクタ装置間の装着構造と導波構造による電磁界結合部を規格に従うようにすることで、既存のコネクタとの下位互換性を維持しつつ、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
<<第2の付記発明>>
<付記1>
他のコネクタ部と装着可能な装着構造を有し、伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と接続され前記無線信号を伝送するための無線結合部を有し、前記他のコネクタ部と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ部の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっているコネクタ部と、
前記他のコネクタ部との間で前記電磁界結合部を介して前記無線信号を伝送できるものであるか否かを判定する判定部と、
を備えた信号伝送システム。
<付記2>
前記判定部は、前記無線信号を伝送できると判定したときは、前記伝送対象信号を各コネクタ部を介して前記無線信号で伝送することを許可する
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記3>
前記判定部は、前記無線信号を伝送できないと判定したときは、前記伝送対象信号を各コネクタ部を介して前記無線信号で伝送することを禁止する
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記4>
前記判定部は、前記無線信号を伝送できないと判定したときには、前記信号変換部の動作を停止させる
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記5>
前記判定部は、前記無線信号の伝送が有効な状態であるか否かを判定し、前記無線信号の伝送が有効な状態でないときには、前記信号変換部の動作を停止させる
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記6>
信号伝送を行なう接続ケーブルと、
有線信号で前記接続ケーブルを介して通信を行ない、かつ、前記接続ケーブルを介して伝送される有線信号と、無線信号と対応する高周波信号との変換を行なう有線通信部と、
を有し、
前記接続ケーブルの両端に前記無線結合部と前記有線通信部と前記判定部が設けられており、
前記接続ケーブルの両側のそれぞれの前記判定部は、前記接続ケーブルの他方の側において装着された前記他のコネクタ部が前記電磁界結合部を介して前記無線信号を伝送できるか否かの情報を共有し合い、連携して前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
付記1〜付記5の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記7>
前記判定部は、前記無線信号を伝送できないと判定したときには、前記有線通信部の動作を停止させる
付記6に記載の信号伝送システム。
<付記8>
前記判定部は、
前記信号変換部から送出された信号を前記無線結合部に供給するとともに、前記無線結合部からの信号成分を前記信号変換部とは別の系統へ送る方向管理部と、
前記無線結合部から前記方向管理部を通して得られる信号成分のパワーを検出するパワー検出部と、
を有し、
前記パワー検出部の検出結果に基づいて前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
付記1〜付記7の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記9>
前記判定部は、
前記信号変換部が受信した受信信号に基づいて、予め定められた符号を検出する符号検出部を有し、
前記符号検出部の検出結果に基づいて前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
付記1〜付記8の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記10>
前記判定部は、
前記信号変換部から送出された信号を前記無線結合部に供給するとともに、前記無線結合部からの信号成分を前記信号変換部とは別の系統へ送る方向管理部と、
前記無線結合部から前記方向管理部を通して得られる信号成分のパワーを検出するパワー検出部と、
前記信号変換部が受信した受信信号に基づいて、予め定められた符号を検出する符号検出部と、
前記パワー検出部と前記符号検出部の検出結果に基づいて、前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する制御部と、
を有する付記1〜付記9の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記11>
前記他のコネクタ部と装着されたときに、前記他のコネクタ装置との間で電気的な接触により信号伝送を行なう信号系統が設けられており、
前記判定部は、無線伝送を禁止するときは、前記電気的な接触により信号伝送を行なうように制御する
付記1〜付記10の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記12>
前記判定部は、前記他のコネクタ部が前記無線結合部を有するものであり、かつ、前記無線信号の仕様が前記他のコネクタ部との間で共通である場合に、前記電磁界結合部を介して前記無線信号を伝送できると判定する
付記1〜付記11の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記13>
前記判定部の判定結果を通知する通知部を備える
付記1〜付記12の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記14>
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための無線結合部と、
他のコネクタ装置と装着可能な装着構造と、
を有し、
前記他のコネクタ装置と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ装置の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっており、
さらに、装着された前記他のコネクタ装置との間で前記電磁界結合部を介して前記無線信号を伝送できるものであるか否かを判定する判定部を備える
コネクタ装置。
<付記15>
前記判定部は、
前記信号変換部から送出された信号を前記無線結合部に供給するとともに、前記無線結合部からの信号成分を前記信号変換部とは別の系統へ送る方向管理部と、
前記無線結合部から前記方向管理部を通して得られる信号成分のパワーを検出するパワー検出部と、
を有し、
前記パワー検出部の検出結果に基づいて前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
付記14に記載のコネクタ装置。
<付記16>
前記判定部は、
前記信号変換部が受信した受信信号に基づいて、予め定められた符号を検出する符号検出部を有し、
前記符号検出部の検出結果に基づいて前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
付記14または付記15に記載のコネクタ装置。
<付記17>
前記判定部は、
前記信号変換部から送出された信号を前記無線結合部に供給するとともに、前記無線結合部からの信号成分を前記信号変換部とは別の系統へ送る方向管理部と、
前記無線結合部から前記方向管理部を通して得られる信号成分のパワーを検出するパワー検出部と、
前記信号変換部が受信した受信信号に基づいて、予め定められた符号を検出する符号検出部と、
前記パワー検出部と前記符号検出部の検出結果に基づいて、前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する制御部と、
を有する付記14に記載のコネクタ装置。
<付記18>
他のコネクタ装置と装着されたときに、前記他のコネクタ装置との間で電気的な接触により信号伝送を行なう信号系統が設けられており、
前記判定部は、無線伝送を禁止するときは、前記電気的な接触により信号伝送を行なうように制御する
付記14〜付記17の何れかに記載のコネクタ装置。
<付記19>
他のコネクタ部と装着可能な装着構造を具備したコネクタ部と、
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と、
を備え、
前記コネクタ部は、前記信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための無線結合部を有し、
前記コネクタ部が前記他のコネクタ装置と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ装置の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっており、
さらに、前記他のコネクタ部との間で前記電磁界結合部を介して前記無線信号を伝送できるものであるか否かを判定する判定部を備える
電子機器。
<付記20>
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する第1の信号変換部と電気的に接続され無線信号を伝送するための第1の無線結合部を有する第1のコネクタ装置と、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する第2の信号変換部と電気的に接続され無線信号を伝送するための第2の無線結合部を有する第2のコネクタ装置とを使用し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置を装着することで前記第1の無線結合部と前記第2の無線結合部との間で前記電磁界結合部を形成して前記無線信号を伝送できるか否かを判定し、この判定結果に基づいて前記無線信号の伝送を許可するか禁止するかを制御する
信号伝送方法。
<第2の付記発明の名称・技術分野・効果>
第2の付記発明は、信号伝送システム、コネクタ装置、電子機器、信号伝送方法に関する。
第2の付記発明の一態様によれば、接触を利用した接続インタフェースとは異なり、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
接触ピンを増設することが不可能な構造的余裕のないコネクタへの適用も可能である。接触を利用した接続インタフェースをそのまま残しておくこともでき、信号伝送的な規格の互換性判定を行ない、無線伝送を許可するか禁止するかを制御することで、既存のコネクタとの下位互換性を維持しつつ、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
<<第3の付記発明>>
<付記1>
他のコネクタ部と装着可能な装着構造を有し、伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と接続され前記無線信号を伝送するための無線結合部を有し、前記他のコネクタ部と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ部の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっているコネクタ部と、
信号処理の基準として使用されるタイミング信号を、前記信号変換部の変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成するタイミング信号生成部と、
を備えた信号伝送システム。
<付記2>
信号伝送を行なう接続ケーブルと、
有線信号で前記接続ケーブルを介して通信を行ない、かつ、前記接続ケーブルを介して伝送される有線信号と、無線信号と対応する高周波信号との変換を行なう有線通信部と、
を有し、
前記タイミング信号生成部は、前記有線通信部が前記有線信号の変換を行なうための基準として使用される前記タイミング信号を生成する
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記3>
前記信号変換部は、前記復調処理で使用する搬送信号を注入同期方式により生成する
付記1または付記2に記載の信号伝送システム。
<付記4>
前記信号変換部は前記変調処理で使用する搬送信号を生成する搬送信号生成部を有し、
前記タイミング信号生成部は、前記搬送信号生成部を発振部として利用した位相同期ループ回路を有する
付記1または付記2に記載の信号伝送システム。
<付記5>
前記タイミング信号生成部は、
並列化された複数の信号系統の1系統分について、前記タイミング信号が供給される位相周波数比較部を有し、
さらに、並列化された複数の信号系統の残りの系統分について、前記位相周波数比較部に入力される前記タイミング信号の位相調整を行ない当該系統分の前記タイミング信号を生成する位相補正部を有する
付記4に記載の信号伝送システム。
<付記6>
前記タイミング信号生成部は、
前記復調処理で使用する搬送信号を分周する分周部と、
前記タイミング信号と前記信号変換部の前記復調処理で処理された信号の位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部から出力される位相差情報に基づいて、前記タイミング信号の位相調整を行なう位相調整部と、
を有する付記1〜付記3の何れかに記載の信号伝送システム。
<付記7>
前記分周部は前記位相調整部の制御の元で出力信号の位相を調整可能に構成され、前記出力信号を前記タイミング信号として出力する
付記6に記載の信号伝送システム。
<付記8>
前記位相調整部は、前記分周部の出力信号を順に遅延する遅延素子が複数段配置されており、前記位相比較部から出力される位相差情報に基づいて、何れの前記遅延素子の出力信号を前記タイミング信号として使用するかを調整することで、前記タイミング信号の位相調整を行なう
付記6に記載の信号伝送システム。
<付記9>
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための無線結合部と、
他のコネクタ装置と装着可能な装着構造と、
を有し、
前記他のコネクタ装置と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ装置の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっており、
さらに、信号処理の基準として使用されるタイミング信号を、前記信号変換部の変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成するタイミング信号生成部を備える
コネクタ装置。
<付記10>
前記信号変換部は前記変調処理で使用する搬送信号を生成する搬送信号生成部を有し、
前記タイミング信号生成部は、前記搬送信号生成部を発振部として利用した位相同期ループ回路を有する
付記9に記載のコネクタ装置。
<付記11>
前記タイミング信号生成部は、
並列化された複数の信号系統の1系統分について、前記タイミング信号が供給される位相周波数比較部を有し、
さらに、並列化された複数の信号系統の残りの系統分について、前記位相周波数比較部に入力される前記タイミング信号の位相調整を行ない当該系統分の前記タイミング信号を生成する位相補正部を有する
付記10に記載のコネクタ装置。
<付記12>
前記タイミング信号生成部は、
前記復調処理で使用する搬送信号を分周する分周部と、
前記タイミング信号と前記信号変換部の前記復調処理で処理された信号の位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部から出力される位相差情報に基づいて、前記タイミング信号の位相調整を行なう位相調整部と、
を有する付記9に記載のコネクタ装置。
<付記13>
前記分周部は前記位相調整部の制御の元で出力信号の位相を調整可能に構成され、前記出力信号を前記タイミング信号として出力する
付記12に記載のコネクタ装置。
<付記14>
前記位相調整部は、前記分周部の出力信号を順に遅延する遅延素子が複数段配置されており、前記位相比較部から出力される位相差情報に基づいて、何れの前記遅延素子の出力信号を前記タイミング信号として使用するかを調整することで、前記タイミング信号の位相調整を行なう
付記12に記載のコネクタ装置。
<付記15>
前記信号変換部は、前記復調処理で使用する搬送信号を注入同期方式により生成する
付記9〜付記14の何れかに記載のコネクタ装置。
<付記16>
他のコネクタ部と装着可能な装着構造を具備したコネクタ部と、
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する、または、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する信号変換部と、
を備え、
前記コネクタ部は、前記信号変換部と接続され前記無線信号を伝送するための無線結合部を有し、
前記コネクタ部が前記他のコネクタ部と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ装置の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっており、
さらに、信号処理の基準として使用されるタイミング信号を、前記信号変換部の変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成するタイミング信号生成部を備える
電子機器。
<付記17>
前記信号変換部は、前記復調処理で使用する搬送信号を注入同期方式により生成する
付記16に記載の電子機器。
<付記18>
伝送対象信号に基づいて変調処理を行なうことで高周波信号に変換する第1の信号変換部と電気的に接続され無線信号を伝送するための第1の無線結合部を有する第1のコネクタ装置と、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことでベースバンド信号に変換する第2の信号変換部と電気的に接続され無線信号を伝送するための第2の無線結合部を有する第2のコネクタ装置とを使用し、
前記第1のコネクタ装置と前記第2のコネクタ装置を装着することで前記第1の無線結合部と前記第2の無線結合部との間で電磁界結合部を形成し、
前記伝送対象信号を前記第1の信号変換部で無線信号に変換してから、この無線信号を前記電磁界結合部を介して前記第2の信号変換部に伝送するに当たり、信号処理の基準として使用されるタイミング信号を、前記信号変換部の変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成する
信号伝送方法。
<付記19>
前記復調処理で使用する搬送信号を注入同期方式により生成する
付記18に記載の信号伝送方法。
<第3の付記発明の名称・技術分野・効果>
第3の付記発明は、信号伝送システム、コネクタ装置、電子機器、信号伝送方法に関する。
第3の付記発明の一態様によれば、接触を利用した接続インタフェースとは異なり、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。接触ピンを増設することが不可能な構造的余裕のないコネクタへの適用も可能である。接触を利用した接続インタフェースをそのまま残しておくこともでき、既存のコネクタとの下位互換性を維持しつつ、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
信号処理時に使用されるタイミング信号を変調処理または復調処理で使用する搬送信号に基づいて生成することで、タイミング信号生成部の回路規模を小さくできるし、変調特性の変動を抑制できる。
<<第4の付記発明>>
<付記1>
受信した無線信号を復調して得た電気信号を光信号に変換する電気光変換部を具備する第1のコネクタ装置と、
前記光信号を伝送する光ケーブルと、
前記光ケーブルを伝送した光信号を電気信号に変換する光電気変換部を具備する第2のコネクタ装置と、
前記第1のコネクタ装置と装着可能な第3のコネクタ装置と、
前記第2のコネクタ装置と装着可能な第4のコネクタ装置と、
を備え、
前記第1のコネクタ装置と前記第3のコネクタ装置との間、および、前記第2のコネクタ装置と前記第4のコネクタ装置との間では、無線信号を伝送する
信号伝送システム。
<付記2>
前記第1のコネクタ装置と前記第3のコネクタ装置が装着されることで第1の電磁界結合部が形成されるようになっており、
前記第2のコネクタ装置と前記第4のコネクタ装置が装着されることで第2の電磁界結合部が形成されるようになっている
付記1に記載の信号伝送システム。
<付記3>
前記第3のコネクタ装置は
、伝送対象信号を無線信号に変換してからこの無線信号を前記第1の電磁界結合部を介して前記第1のコネクタ装置に伝送し、
前記第1のコネクタ装置は、前記無線信号を前記電気光変換部で光信号に変換してから、この光信号を前記光ケーブルを介して前記第2のコネクタ装置に伝送し、
前記第2のコネクタ装置は、前記光信号を前記光電気変換部で変換して得た前記電気信号を無線信号に変換してから、この無線信号を前記第2の電磁界結合部を介して前記第4のコネクタ装置に伝送する
付記1または付記2に記載の信号伝送システム。
<付記4>
他のコネクタ装置と装着可能な装着構造を有し、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことで電気信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための無線結合部と、
前記信号変換部で変換した電気信号を光信号に変換して光ケーブルに供給する電気光変換部と、
を備え、
前記他のコネクタ部と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ部の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっている
コネクタ装置。
<付記5>
他のコネクタ装置と装着可能な装着構造を有し、変調処理を行なうことで高周波信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための無線結合部と、
光ケーブルを介して伝送された光信号を電気信号に変換して前記信号変換部に供給する電気光変換部と、
を備え、
前記他のコネクタ部と装着されることで前記無線結合部と前記他のコネクタ部の前記無線結合部との間で電磁界結合部が形成されるようになっている
コネクタ装置。
<付記6>
光信号を伝送する光ケーブルと、
第1の他のコネクタ装置と装着可能な装着構造を有し、受信した無線信号に基づいて復調処理を行なうことで電気信号に変換する第1の信号変換部と、
前記第1の信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための第1の無線結合部と、
前記第1の信号変換部で変換した電気信号を光信号に変換して前記光ケーブルに供給する電気光変換部と、
第2の他のコネクタ装置と装着可能な装着構造を有し、変調処理を行なうことで高周波信号に変換する第2の信号変換部と、
前記第2の信号変換部と接続され、前記無線信号を伝送するための第2の無線結合部と、
前記光ケーブルを介して伝送された光信号を電気信号に変換して前記第2の信号変換部に供給する電気光変換部と、
を備え、
前記第1の他のコネクタ部と装着されることで前記第1の無線結合部と前記第1の他のコネクタ部の前記第1の無線結合部との間で第1の電磁界結合部が形成されるようになっており、
前記第2の他のコネクタ部と装着されることで前記第2の無線結合部と前記第2の他のコネクタ部の前記第2の無線結合部との間で第2の電磁界結合部が形成されるようになっている
コネクタ装置。
<付記7>
光信号を伝送する光ケーブルと、
第1のコネクタ装置と、
前記光ケーブルを介して前記第1のコネクタ装置と接続可能な第2のコネクタ装置と、
前記第1のコネクタ装置と装着可能な第3のコネクタ装置と、
前記第2のコネクタ装置と装着可能な第4のコネクタ装置と、
を使用し、
前記第1のコネクタ装置と前記第3のコネクタ装置との間では無線信号を伝送し、
前記第1のコネクタ装置は、前記第3のコネクタ装置から受信した無線信号を復調して得た電気信号を光信号に変換して前記光ケーブルに供給し、
前記第2のコネクタ装置は、前記光ケーブルを伝送した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号をさらに無線信号に変換し、
前記第2のコネクタ装置と前記第4のコネクタ装置との間では、無線信号を伝送する
信号伝送方法。
<第4の付記発明の名称・技術分野・効果>
第4の付記発明は、信号伝送システム、コネクタ装置、電子機器、信号伝送方法に関する。
第4の付記発明の一態様によれば、接触を利用した接続インタフェースとは異なり、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。接触ピンを増設することが不可能な構造的余裕のないコネクタへの適用も可能である。接触を利用した接続インタフェースをそのまま残しておくこともでき、既存のコネクタとの下位互換性を維持しつつ、高速性・大容量性が求められる信号の接続インタフェースを実現できる。
無線伝送の前後の信号伝送を光信号で行なうようにすることで、より確実に、高速性・大容量性を実現できる。