JP5892854B2 - デュアルバンド移相器、デュアルバンド移相器の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、無線通信用機器や無線回路などに用いられる移相器に関し、より詳しくは、対象の二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の入力信号に独立して同時に動作する移相器に関する。
移相器は、送信波または受信波の位相を制御する機能を持ち、さまざまな無線回路に用いられている。例えば、多数のアンテナ素子が周期的に配置されたアレーアンテナでは、複数の移相器を用いて各アンテナ素子に給電される入力波の位相を制御することによって、アレーアンテナの指向性制御が実現されている。
例えば、移相器が実装された送受信機は、レーダー、衛星搭載用通信機器、移動通信基地局用装置などさまざまな装置で利用されている。また、線形電力増幅器であるフィードフォワード増幅器では、電力増幅器で発生するひずみ成分の抽出と除去のために移相器が用いられている。複数のアンテナで構成される受信ダイバーシチ装置では、一部のアンテナ出力端に移相器を設けることで、複数のアンテナで受信した信号レベルを最大化する最大比合成による受信ダイバーシチを実現できる。
移相器の構成として、誘電体素子を用いる構成、平面回路を用いる構成、導波管を用いる構成、信号処理回路を用いる構成などがある。導波管を用いるマイクロ波帯またはミリ波帯送受信機では、導波管の壁面位置を物理的に移動させることによって反射係数を変更し位相を制御する。また、小型レーダーでは、通常、平面回路による移相器が用いられる。移動通信基地局用装置の垂直面指向性制御を行うチルト装置では、誘電体素子を用いる構成などが用いられる。フィードフォワード増幅器のような無線回路では、小型化かつ低消費電力化の可能な平面回路による移相器またはダイオードを用いた移相器が利用されている。信号処理回路による移相器は、直交変調器で入力信号に所定の位相を与えることができる。一般的に、物理的形状に制約のある導波管または誘電体素子を用いた移相器では設定できる位相範囲に制約があるが、信号処理回路を用いる移相器にはそのような制約がない。
代表的な平面回路を用いる移相器として、ブランチラインカプラとダイオードを用いた移相器がある。図1に基本的なブランチラインカプラ110を用いた移相器を示す。入力端子である第1端子101と、第2端子102と、第3端子103と、出力端子である第4端子104の4端子を持つブランチラインカプラ110では、4個の伝送線路がループ状に接合されており、各接合部が各端子に対応する。第2端子102に伝送線路901(長さL1)と伝送線路902(長さL2)が直列に接続されており、伝送線路902の端部(伝送線路902の両端部のうち、伝送線路901に接続されていない方の端部)は接地されている。第3端子103に伝送線路903(長さL1)と伝送線路904(長さL2)が直列に接続されており、伝送線路904の端部(伝送線路904の両端部のうち、伝送線路903に接続されていない方の端部)は接地されている。伝送線路901と伝送線路902との接続部には、一端(アノード)が接地されたダイオードD1の他端(カソード)が接続されている。伝送線路903と伝送線路904との接続部には、一端(アノード)が接地されたダイオードD2の他端(カソード)が接続されている。第1端子101は入力端子であり、第4端子104は出力端子である。図1の構成では、ダイオードD1とダイオードD2のON/OFFの同期制御によって50Ohm線路長を制御する。ダイオードD1とダイオードD2が共にOFFのときはブランチラインカプラ110からみて50Ohm線路長はL1+L2であり、ダイオードD1とダイオードD2が共にONのときはL1となる。
位相値を離散的に制御する移相器として、長さの異なる二つの線路911,912を平行に配置し、各線路の一端同士を二つのダイオードD3,D4で選択可能に接続し、各線路の他端同士を二つのダイオードD5,D6で選択可能に接続した構成を有する移相器がある(図2)。図2の構成では、ダイオードD3およびダイオードD5をON、ダイオードD4およびダイオードD6をOFFとするか、ダイオードD3およびダイオードD5をOFF、ダイオードD4およびダイオードD6をOFFとして、線路911と線路912のいずれか一方を選択する。このように選択された線路長に応じて位相値が制御される。
位相値を連続的に制御するために、可変容量ダイオードを用いる構成がある。この構成では、可変容量ダイオードへの印加電圧を制御することによって容量値が制御される。例えば図1のダイオードD1とダイオードD2の代わりにそれぞれ可変容量ダイオードを用いる。この構成によると、ブランチラインカプラ110からみた反射係数を連続的に制御できることから位相値の連続制御が可能になる。
これらの従来技術として、例えば非特許文献1、非特許文献2を例示できる。
誘電体素子や導波管を用いる移相器は、特許文献1、特許文献2、特許文献3に例示されるようにパッシブ素子が用いられる。特許文献1によると、アクチェエータを用いて移相器の位相設定値が機械的に制御される。ここで用いられる移相器の構成は一般に長さを調整可能な伝送線路である。特許文献2では、誘電体基板上に伝送線路を円弧状に形成し、導体稼動部材によって等価的に伝送線路長を制御する構成が開示されている。特許文献3は、導波管の長さを制御する構成が開示されている。
宮内,山本,"通信用マイクロ波回路",電子情報通信学会,1981. D. Parker, and D. C. Zimmermann, "Phased Arrays - Part II: Implementations, Applications, and Future Trends," IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 50, no. 3, pp. 688-698, March 2002.
特開2000-283258号公報 特開2008-124845号公報 特開2004-328187号公報
従来の移相器は単一周波数帯域で動作するように設計されている。例えば、レーダーなどの応用例では一般に単一周波数帯域を対象として動作する機能が求められている。これに対して、移動通信システムにおける移動通信基地局は1.5GHz帯、1.8GHz帯、2GHz帯などの複数の周波数帯域をサポートしている。各帯域に適応された送受信装置を設置するものの、アンテナとして、設置上の制約などから、一つのレドーム内に複数の周波数帯域に対応したアンテナ素子が用いられる。周波数帯域により送受信波の伝搬特性が異なることから、周波数帯域ごとにチルト角制御を行う場合がある。このため、各帯域の送受信装置とアンテナとの間には、各帯域に対応した移相器を設置している。例えば、1.8GHzおよび2.1GHz帯で動作する移動通信基地局の場合、一つの移相器で1.8GHz帯のチルト角と2.1GHz帯のチルト角を個々に実現することが望まれるが、両者の周波数帯域が近接していることから、実際には同一のチルト角で両帯域に対応している。
移相器は一般にアンテナ直下またはアンテナ内部に設置される。複数の周波数帯域に適応するマルチバンドアンテナでは、移相器をマルチバンドに適応する構成とすることによって、装置数の削減とアンテナの軽量化に貢献できると考えられる。一般的に、一つの移相器に複数の周波数帯域の送受信波が同時に入力されると、移相器の構造または周波数特性から、或る周波数帯域で位相を調整するとその他の周波数帯域の位相も一意に決まってしまう。これは、従来の移相器が、複数の位相調整手段を設けたとしても、或る位相調整手段が他の位相調整手段による位相調整の影響を受けない構造を有していないからである。
上述したように、マルチバンドに適応する移動通信システムでは、各周波数帯域で独立したチルト角制御を行うことが求められるため、複数の周波数帯域の送受信波が同時に入力された場合に、一つの移相器で複数の周波数帯域の位相を同時に独立に制御することが求められる。従来の移相器ではこのような独立した位相制御が移相器の構造上の理由によりできなかった。
本発明は、二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の入力信号に独立して同時に動作するデュアルバンド移相器とその制御方法を提供することを目的とする。
本発明のデュアルバンド移相器は、第1周波数帯域の信号と第2周波数帯域の信号とが混合した入力波が入力される入力端子と、出力端子と、少なくとも一つの反射端子を備えた移相器において、各反射端子に位相制御回路が接続されており、各位相制御回路は、位相制御回路が接続されている反射端子に接続された分配器と、当該分配器に接続された第1帯域位相制御部および第2帯域位相制御部とを含み、当該第1帯域位相制御部は、第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロックと、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部とを含み、当該第2帯域位相制御部は、第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロックと、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部とを含むデュアルバンド移相器であって、第1周波数帯域において入力波と出力端子からの出力波との間の位相を比較する第1位相比較器と、第2周波数帯域において入力波と出力端子からの出力波との間の位相を比較する第2位相比較器と、第1位相比較器の出力と第2位相比較器の出力に基づいて各位相調整部のリアクタンスを制御する制御器とを含むことを特徴とする。
本発明のデュアルバンド移相器の制御方法は、第1周波数帯域の信号と第2周波数帯域の信号とが混合した入力波が入力される入力端子と、出力端子と、少なくとも一つの反射端子を備えた移相器において、制御器を含み、各反射端子に位相制御回路が接続されており、各位相制御回路は、位相制御回路が接続されている反射端子に接続された分配器と、当該分配器に接続された第1帯域位相制御部および第2帯域位相制御部とを含み、当該第1帯域位相制御部は、第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロックと、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部とを含み、当該第2帯域位相制御部は、第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロックと、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部とを含み、制御器が各位相調整部のリアクタンスを制御する、ように構成されたデュアルバンド移相器の制御方法であって、制御器が、入力波の位相と出力端子からの出力波の位相とを比較し、当該比較結果に基づいて各位相調整部のリアクタンスを制御する制御工程を有する。
本発明によると、二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の入力信号の位相を独立して同時に制御できる。
従来の移相器。 従来の移相器。 実施形態1のデュアルバンド移相器を示す図。 実施形態1のデュアルバンド移相器の実施例を示す図。 図4に示す実施例のシミュレーション結果を示す図。 実施形態2のデュアルバンド移相器を示す図。 実施形態3のデュアルバンド移相器を示す図。 制御回路を備えた実施形態3のデュアルバンド移相器を示す図。
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。各実施形態に共通の構成要素には同じ符号を割り当てて重複説明を省略することとする。
《実施形態1》
<デュアルバンド移相器>
実施形態1のデュアルバンド移相器1は、第1端子101、第2端子102、第3端子103と第4端子104の4端子を持つブランチラインカプラ110と、第2端子102に接続された第1位相制御回路120と、第3端子103に接続された第2位相制御回路130とを含む構成を持つ(図3)。第1端子101はデュアルバンド移相器1の入力端子であり、第1および第2の周波数帯域の入力信号が混合した入力波が入力される。第2端子102と第3端子103はそれぞれ反射端子である。第4端子104はデュアルバンド移相器1の出力端子である。
<ブランチラインカプラ>
ブランチラインカプラ110は、例えば、結合度3dBのブランチライン型90度ハイブリッド回路である。第1端子101と第2端子102との間および第3端子103と第4端子104との間の2端子対回路としての分布定数線路105aについて、それぞれ、その特性インピ−ダンスZ0は(Z/√2)であり(Zは負荷のインピーダンス)、かつ、予め決められた周波数f0(波長λ0)においてその電気長θはほぼ1/4波長(θ=λ0/4)である。第1端子101と第4端子104との間および第2端子102と第3端子103との間の2端子対回路としての分布定数線路105bについて、それぞれ、その特性インピ−ダンスZ0はZであり(Zは負荷のインピーダンス)、かつ、周波数f0においてその電気長θはほぼ1/4波長(θ=λ0/4)である。
<第1位相制御回路>
第1位相制御回路120は、T分配器121と、第1帯域位相制御部122と、第2帯域位相制御部123とを含む。T分配器121の第1端子121aはブランチラインカプラ110の第2端子102に接続されており、T分配器121の第2端子121bは第1帯域位相制御部122に接続されており、T分配器121の第3端子121cは第2帯域位相制御部123に接続されている。
第1帯域位相制御部122は、第1周波数帯域の中心周波数fでT分配器121の第2端子121bを高周波的に短絡させるように、つまり第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロック1221と、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部1222とを含む。第1位相調整部1222は、所望の移相量に応じて予め定められたリアクタンス値を持つように構成されているか、あるいは、移相量を変更可能にするためにリアクタンス値を変更可能な構成を持つ。リアクタンスは好ましくは容量性リアクタンスである。第1短絡ブロック1221および第1位相調整部1222の各一端はT分配器121の第2端子121bに接続されている。このため、T分配器121からの入力波(正確には、ブランチラインカプラ110によって分波された入力波がさらに分配器によって等分配された信号波である)に含まれる第1周波数帯域の信号は第1位相調整部1222に伝播しない。つまり、第1位相調整部1222は、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。この実施形態では、例えば、第1短絡ブロック1221は中心周波数fで1/4波長(電気長90度)のオープンスタブであり、第1位相調整部1222は伝送線路1222aと可変容量手段(例えば可変容量キャパシタ)1222bとの直列接続で構成されている。伝送線路1222aの一端はT分配器121の第2端子121bに接続されており、可変容量手段1222bの一端は伝送線路1222aの他端に接続されており、可変容量手段1222bの他端は接地されている。可変容量手段1222bのキャパシタンスを適切に設定することによって、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。
第2帯域位相制御部123は、第2周波数帯域の中心周波数fでT分配器121の第3端子121cを高周波的に短絡させるように、つまり第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロック1231と、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部1232とを含む。第2位相調整部1232は、所望の移相量に応じて予め定められたリアクタンス値を持つように構成されているか、あるいは、移相量を変更可能にするためにリアクタンス値を変更可能な構成を持つ。リアクタンスは好ましくは容量性リアクタンスである。第2短絡ブロック1231および第2位相調整部1232の各一端はT分配器121の第3端子121cに接続されている。このため、T分配器121からの入力波(正確には、ブランチラインカプラ110によって分波された入力波がさらに分配器によって等分配された信号波である)に含まれる第2周波数帯域の信号は第2位相調整部1232に伝播しない。つまり、第2位相調整部1232は、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。この実施形態では、例えば、第2短絡ブロック1231は中心周波数fで1/4波長(電気長90度)のオープンスタブであり、第2位相調整部1232は伝送線路1232aと可変容量手段(例えば可変容量キャパシタ)1232bとの直列接続で構成されている。伝送線路1232aの一端はT分配器121の第3端子121cに接続されており、可変容量手段1232bの一端は伝送線路1232aの他端に接続されており、可変容量手段1232bの他端は接地されている。可変容量手段1232bのキャパシタンスを適切に設定することによって、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。
<第2位相制御回路>
第2位相制御回路130は、T分配器131と、第1帯域位相制御部132と、第2帯域位相制御部133とを含む。T分配器131の第1端子131aはブランチラインカプラ110の第3端子103に接続されており、T分配器131の第2端子131bは第1帯域位相制御部132に接続されており、T分配器131の第3端子131cは第2帯域位相制御部133に接続されている。
第1帯域位相制御部132は、第1周波数帯域の中心周波数fでT分配器131の第2端子131bを高周波的に短絡させるように、つまり第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロック1321と、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部1322とを含む。第1位相調整部1322は、所望の移相量に応じて予め定められたリアクタンス値を持つように構成されているか、あるいは、移相量を変更可能にするためにリアクタンス値を変更可能な構成を持つ。リアクタンスは好ましくは容量性リアクタンスである。第1短絡ブロック1321および第1位相調整部1322の各一端はT分配器131の第2端子131bに接続されている。このため、T分配器131からの入力波(正確には、ブランチラインカプラ110によって分波された入力波がさらに分配器によって等分配された信号波である)に含まれる第1周波数帯域の信号は第1位相調整部1322に伝播しない。つまり、第1位相調整部1322は、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。この実施形態では、例えば、第1短絡ブロック1321は中心周波数fで1/4波長(電気長90度)のオープンスタブであり、第1位相調整部1322は伝送線路1322aと可変容量手段(例えば可変容量キャパシタ)1322bとの直列接続で構成されている。伝送線路1322aの一端はT分配器131の第2端子131bに接続されており、可変容量手段1322bの一端は伝送線路1322aの他端に接続されており、可変容量手段1322bの他端は接地されている。可変容量手段1322bのキャパシタンスを適切に設定することによって、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。
第2帯域位相制御部133は、第2周波数帯域の中心周波数fでT分配器131の第3端子131cを高周波的に短絡させるように、つまり第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロック1331と、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部1332とを含む。第2位相調整部1332は、所望の移相量に応じて予め定められたリアクタンス値を持つように構成されているか、あるいは、移相量を変更可能にするためにリアクタンス値を変更可能な構成を持つ。リアクタンスは好ましくは容量性リアクタンスである。第2短絡ブロック1331および第2位相調整部1332の各一端はT分配器131の第3端子131cに接続されている。このため、T分配器131からの入力波(正確には、ブランチラインカプラ110によって分波された入力波がさらに分配器によって等分配された信号波である)に含まれる第2周波数帯域の信号は第2位相調整部1332に伝播しない。つまり、第2位相調整部1332は、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。この実施形態では、例えば、第2短絡ブロック1331は中心周波数fで1/4波長(電気長90度)のオープンスタブであり、第2位相調整部1332は伝送線路1332aと可変容量手段(例えば可変容量キャパシタ)1332bとの直列接続で構成されている。伝送線路1332aの一端はT分配器121の第3端子131cに接続されており、可変容量手段1332bの一端は伝送線路1332aの他端に接続されており、可変容量手段1332bの他端は接地されている。可変容量手段1332bのキャパシタンスを適切に設定することによって、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与えることなく、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。
<原理>
実施形態1において、第1帯域位相制御部122と、第2帯域位相制御部123と、第1帯域位相制御部132と、第2帯域位相制御部133は、それぞれ、構造が同じであるから、第1帯域位相制御部122を例にとって、この発明の基本原理を説明する。
既述のとおり、第1短絡ブロック1221は中心周波数fで1/4波長(電気長90度)の開放線路であり、第1位相調整部1222は伝送線路1222a(長さL、特性インピーダンス50Ohm)と可変容量手段(例えば可変容量キャパシタ)1222bとの直列接続で構成されている。T分配器121の第2端子121bに1/4波長開放線路が接続されているため、T分配器121の第2端子121bにて第1周波数帯域の信号は短絡となり、伝送線路1222aには第2周波数帯域の信号のみが伝達される。可変容量キャパシタの静電容量値を変更すると、ブランチラインカプラ110の第2端子102から見て、第2周波数帯域での反射係数は可変容量キャパシタの静電容量に応じて変化するが、第1周波数帯域での反射係数は1/4波長開放線路によって常に短絡に固定されている(ブランチラインカプラ110の第2端子102から見ると、第1周波数帯域の信号のインピーダンスはスミスチャート上の短絡点で常に固定されるが、第2周波数帯域の信号のインピーダンスは可変容量キャパシタの静電容量と可変容量キャパシタに接続している伝送線路の線路長に応じてスミスチャート上を移動する)。すなわち、第2周波数帯域の信号の位相制御を行っても、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与えない。このように本発明に含まれる基本回路部(ここで説明した例では、第1帯域位相制御部122に相当する)は、一方の周波数帯域での反射係数を短絡に固定したまま、一方の周波数帯域での反射係数とは独立に他方の周波数帯域での反射係数だけを任意に設定できる。
従って、異なる二つの周波数帯域での反射係数を独立に設定するためには、双対な二つの基本回路部を用意すればよい。すなわち、第1の基本回路部は、一方の周波数帯域での反射係数を短絡に固定したまま、一方の周波数帯域での反射係数とは独立に他方の周波数帯域での反射係数だけを任意に設定するものであり、例えば、第1帯域位相制御部122に相当する。第1の基本回路部に対して双対な第2の基本回路部は、他方の周波数帯域での反射係数を短絡に固定したまま、他方の周波数帯域での反射係数とは独立に一方の周波数帯域での反射係数だけを任意に設定するものであり、例えば、第2帯域位相制御部123に相当する。この双対な二つの基本回路部に混合信号を送るために、反射端子に分配器の一端を接続して、当該分配器の二つの端子に第1の基本回路部と第2の基本回路部を接続すればよい。この構成が位相制御回路に相当する。反射端子が複数ある場合には、分配器と双対な二つの基本回路部で構成された位相制御回路を各反射端子に接続すればよい。たとえば、ブランチラインカプラ110にて異なる二つの周波数帯域の信号の移相を独立に制御するには、既述のように、二つの反射端子に第1位相制御回路と第2位相制御回路を接続すればよい。
<機能>
このデュアルバンド移相器1の構成によると、第1周波数帯域の信号の観点からは、デュアルバンド移相器1はあたかも、ブランチラインカプラ110と、第1位相制御回路120の第2位相調整部1232に含まれる可変容量手段1232bと、可変容量手段1232bの一端とブランチラインカプラ110の第2端子102との間の伝送線路(以下、伝送線路Bと呼称する)と、第2位相制御回路130の第2位相調整部1332に含まれる可変容量手段1332bと、可変容量手段1332bの一端とブランチラインカプラ110の第3端子103との間の伝送線路(以下、伝送線路Dと呼称する)と、で構成されている。通常、可変容量手段1232bのキャパシタンスと可変容量手段1332bのキャパシタンスは等しく設定される。
他方、第2周波数帯域の信号の観点からは、デュアルバンド移相器1はあたかも、ブランチラインカプラ110と、第1位相制御回路120の第1位相調整部1222に含まれる可変容量手段1222bと、可変容量手段1222bの一端とブランチラインカプラ110の第2端子102との間の伝送線路(以下、伝送線路Aと呼称する)と、第2位相制御回路130の第1位相調整部1322に含まれる可変容量手段1322bと、可変容量手段1322bの一端とブランチラインカプラ110の第3端子103との間の伝送線路(以下、伝送線路Cと呼称する)と、で構成されている。通常、可変容量手段1222bのキャパシタンスと可変容量手段1322bのキャパシタンスは等しく設定される。
このため、デュアルバンド移相器1では、第1端子101から入力された入力波(第1と第2の周波数帯域の入力信号が混合した信号波)はブランチラインカプラ110によって分波され、所定の位相差を持って第2端子102と第3端子103に至り、各帯域の信号の位相変化は次のようにして生じる。
[1]第1周波数帯域の信号の観点からは、分波された入力波はそれぞれ伝送線路Bと伝送線路Dを伝播して可変容量手段1232bと可変容量手段1332bで各キャパシタンスに応じた反射係数で反射される。その後、反射波はそれぞれ伝送線路Bと伝送線路Dを伝播して第2端子102と第3端子103に至りブランチラインカプラ110によって合成され、入力波に対して所望の位相差を持った信号波が第4端子104から出力される。
[2]第2周波数帯域の信号の観点からは、分波された入力波はそれぞれ伝送線路Aと伝送線路Cを伝播して可変容量手段1222bと可変容量手段1322bで各キャパシタンスに応じた反射係数で反射される。その後、反射波はそれぞれ伝送線路Aと伝送線路Cを伝播して第2端子102と第3端子103に至りブランチラインカプラ110によって合成され、入力波に対して所望の位相差を持った信号波が第4端子104から出力される。
なお、第4端子104から出力される出力波は、位相変化された第1周波数帯域の信号と位相変化された第2周波数帯域の信号が混合した信号波である。
このように、デュアルバンド移相器1は、二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の入力信号に独立して同時に動作する。
<補記>
上述のように、「通常、可変容量手段1222bのキャパシタンスと可変容量手段1322bのキャパシタンスは等しく設定される」、要するに、「通常、第1位相制御回路120に含まれる第1位相調整部1222のリアクタンス値と第2位相制御回路130に含まれる第1位相調整部1322のリアクタンス値が等しい」、と説明したが、ここで“等しい”とは、両方のリアクタンス値が完全に一致することを意味するものではない。設計上のリアクタンス値と実際のリアクタンス値との間に誤差が生じることは通常であり、このため、両方のリアクタンス値を完全に一致させることには相当の困難が伴う。また、この程度の誤差があったとしても、実用上、支障が生じることは無い(換言すれば、実用上の支障が無いように、誤差を考慮してリアクタンス値が設定される)。
同様に、「通常、可変容量手段1232bのキャパシタンスと可変容量手段1332bのキャパシタンスは等しく設定される」、要するに、「通常、第1位相制御回路120に含まれる第2位相調整部1232のリアクタンス値と第2位相制御回路130に含まれる第2位相調整部1332のリアクタンス値が等しい」、と説明したが、ここで“等しい”とは、両方のリアクタンス値が完全に一致することを意味するものではない。
<変形例>
各位相調整部は、キャパシタンスを変更可能とする構成に限定されず、例えば線路長を変更可能な伝送線路構造を採用することができる。具体的には、同軸型伝送線路の導体長を調整する構造や、PinダイオードまたはMEMSスイッチを用いて伝送線路の長さを機械的に可変する構造を用いることができる。また、可変容量キャパシタとして、例えばバリキャップが挙げられるが、機械式のトリマコンデンサを用いてもよい。位相調整部に半導体素子を用いる利点は位相値を連続制御できることであり、位相調整部に受動素子を用いる利点は半導体特有の非線形ひずみを生じないことである。
<実施形態1の実施例>
この実施例では、第1周波数帯域の中心周波数(第1中心周波数f1)を1823MHz、第2周波数帯域の中心周波数(第2中心周波数f2)を2045MHzとした(図4)。これは日本国で運用されている1.7GHz帯と2.1GHz帯のそれぞれの運用帯域の中心周波数である。運用周波数帯域は上りと下りの帯域とした。
ブランチラインカプラ110の設計周波数f0は、第1中心周波数f1と第2中心周波数f2の中間周波数である1934MHzとした。これはブランチラインカプラ110には、1.7GHz帯と2.1GHz帯の送信波または受信波を同時に入力することから、1.7GHz帯と2.1GHz帯の周波数特性を均一にする観点から、中間周波数f0にて設計を行った。ブランチラインカプラ110では、周知のように、二つの90度50Ohm線路と二つの90度35.5Ohm線路が環状に構成されている。なお、図中、ZとZ0は特性インピーダンス[単位:Ohm]を表しており、ELは電気長を表している[単位:deg]。
第1位相制御回路120において、T分配器121は、中間周波数1934MHzの40度50ohm線路と、二つの中間周波数1934MHzの90度50Ohm 線路で構成される。第1短絡ブロック1221である90度開放線路は第1中心周波数1823MHzの50Ohm線路である。第1位相調整部1222に含まれる伝送線路は第2中心周波数2045MHzの30度50Ohm線路である。この30度50Ohm線路は、可変容量キャパシタのキャパシタンスをバイアス電圧で制御したときに他方の周波数帯域の位相に影響を与えないようにするためであり、30度という数値は計算機シミュレーションにて決定した。第2短絡ブロック1231である90度開放線路は第2中心周波数2045MHzの50Ohm線路である。第2位相調整部1232に含まれる伝送線路は第1中心周波数1823MHzの30度50Ohm線路である。この30度50Ohm線路は、可変容量キャパシタのキャパシタンスをバイアス電圧で制御したときに他方の周波数帯域の位相に影響を与えないようにするためであり、30度という数値は計算機シミュレーションにて決定した。
第2位相制御回路130の構成は第1位相制御回路120と同じとした。
図5に図4に示す実施例の計算機シミュレーション結果を示す。第1周波数帯域での位相制御に用いられる二つの可変容量キャパシタにそれぞれ同じキャパシタンスを設定した。また第2周波数帯域での位相制御に用いられる二つの可変容量キャパシタにそれぞれ同じキャパシタンスを設定した(注:図4に示すように、当該キャパシタンス値は僅かに異なるが、誤差の許容範囲内であり、この意味で「同じ」と表現した)。
図5の横軸は4個の可変容量キャパシタに設定したキャパシタンスを表しており、縦軸はデュアルバンド移相器1の出力の位相値を表している。第1周波数帯域に関して可変容量キャパシタを制御したときの第1周波数帯域の信号の位相はダイヤ印で示されており、この場合の第2周波数帯域の信号の位相は四角印で示されている。計算機シミュレーション結果から、第1周波数帯域の信号の位相値は-70degから110degまで連続的に変化しているのに対して、第2周波数帯域の信号の位相値は-65degで一定であることがわかる。第2周波数帯域に関して可変容量キャパシタを制御したときの第2周波数帯域の信号の位相は×印で示されており、この場合の第1周波数帯域の信号の位相は三角印で示されている。計算機シミュレーション結果から、第2周波数帯域の信号の位相値は-80degから10degまで連続的に変化しているのに対して、第1周波数帯域の信号の位相値は65degでほぼ一定であることがわかる。このように、デュアルバンド移相器1によると、二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の信号の位相を独立して同時に調整できることがわかる。
《実施形態2》
<デュアルバンド移相器>
実施形態2のデュアルバンド移相器2(図6)は、実施形態1の変形例の一例であり、下記の点で、実施形態1のデュアルバンド移相器1と異なる。
第1位相制御回路120の第1位相調整部1222が、伝送線路1222aと伝送線路1222cとの直列接続と、伝送線路1222aと伝送線路1222cとの接続部に一端(カソード)が接続され他端(アノード)が接地された可変容量ダイオードVD1で構成されている。伝送線路1222aの一端はT分配器121の第2端子121bに接続されており、伝送線路1222cの一端は伝送線路1222aの他端に接続されており、伝送線路1222cの他端は接地されている。
第1位相制御回路120の第2位相調整部1232が、伝送線路1232aと伝送線路1232cとの直列接続と、伝送線路1232aと伝送線路1232cとの接続部に一端(カソード)が接続され他端(アノード)が接地された可変容量ダイオードVD2で構成されている。伝送線路1232aの一端はT分配器121の第3端子121cに接続されており、伝送線路1232cの一端は伝送線路1232aの他端に接続されており、伝送線路1232cの他端は接地されている。
第2位相制御回路130の第1位相調整部1322が、伝送線路1322aと伝送線路1322cとの直列接続と、伝送線路1322aと伝送線路1322cとの接続部に一端(カソード)が接続され他端(アノード)が接地された可変容量ダイオードVD3で構成されている。伝送線路1322aの一端はT分配器131の第2端子131bに接続されており、伝送線路1322cの一端は伝送線路1322aの他端に接続されており、伝送線路1322cの他端は接地されている。
第2位相制御回路130の第2位相調整部1332が、伝送線路1332aと伝送線路1332cとの直列接続と、伝送線路1332aと伝送線路1332cとの接続部に一端(カソード)が接続され他端(アノード)が接地された可変容量ダイオードVD4で構成されている。伝送線路1332aの一端はT分配器131の第3端子131cに接続されており、伝送線路1332cの一端は伝送線路1332aの他端に接続されており、伝送線路1332cの他端は接地されている。
この構成によると、各位相調整部に含まれる可変容量ダイオードの印加電圧を制御することによって位相調整部のリアクタンス値が変わるため、位相調整部に対応する周波数帯域の信号の位相に影響を与えることができる。
<制御方法>
各可変容量ダイオードの印加電圧を制御する方法について説明する。
デュアルバンド移相器2は、さらに、4個のバンドパスフィルタ(BPF)200−1,200−2,200−3,200−4と、2個の位相比較器210−1,210−2と、可変容量ダイオードの印加電圧を制御する制御器220を含む。
BPF200−1は、出力波から第1周波数帯域の信号成分を抽出するフィルタであり、BPF200−2は、入力波から第1周波数帯域の信号成分を抽出するフィルタであり、BPF200−3は、出力波から第2周波数帯域の信号成分を抽出するフィルタであり、BPF200−4は、入力波から第2周波数帯域の信号成分を抽出するフィルタである。
なお、ブランチラインカプラ110の第1端子101への入力波は、図示しない方向性結合器によって抽出され、BPF200−2とBPF200−4へ入力される。同様に、ブランチラインカプラ110の第4端子104への出力波は、図示しない方向性結合器によって抽出され、BPF200−1とBPF200−3へ入力される。なお、入力波を二つの周波数帯域に分波すればよいので、本実施形態のようにBPFを用いる構成に限定されるものではなく、例えば、HPF(ハイパスフィルタ)とLPF(ローパスフィルタ)を用いてもよい。
位相比較器210−1は、BPF200−1とBPF200−2で抽出された出力波に含まれる第1周波数帯域の信号成分と入力波に含まれる第1周波数帯域の信号成分を乗算し、直流成分を抽出する。第1周波数帯域の直流成分にはデュアルバンド移相器2によって設定された位相のみが含まれる。
位相比較器210−2は、BPF200−3とBPF200−4で抽出された出力波に含まれる第2周波数帯域の信号成分と入力波に含まれる第2周波数帯域の信号成分を乗算し、直流成分を抽出する。第2周波数帯域の直流成分にはデュアルバンド移相器2によって設定された位相のみが含まれる。
制御器220は、位相比較器210−1からの出力である位相と位相比較器210−2からの出力である位相を入力とし、各帯域に応じた所望の位相(つまり、デュアルバンド移相器2による移相によって実現されるべき位相)と比較する。或る帯域の位相が所望の位相と異なる場合には、制御器220は、当該帯域の位相が所望の位相になるように、当該帯域に応じた可変容量ダイオードの印加電圧を制御する。図示されるデュアルバンド移相器2の例では、第1周波数帯域の位相が所望の位相と異なる場合には、制御器220は、当該帯域の位相が所望の位相になるように、当該帯域に応じた可変容量ダイオードVD2,VD4の印加電圧を制御し、第2周波数帯域の位相が所望の位相と異なる場合には、制御器220は、当該帯域の位相が所望の位相になるように、当該帯域に応じた可変容量ダイオードVD1,VD3の印加電圧を制御する。両帯域に対する制御は独立に行われる。通常、ペアで制御される二つの可変容量ダイオードの印加電圧は等しく設定される。
制御器220に格納される制御アルゴリズムは、制御器220のメモリ内に記録されている所望の位相と位相比較器の出力である位相との誤差(位相誤差)を算出し、その位相誤差を最小にするように可変容量ダイオードの印加電圧を制御するアルゴリズムである。可変容量ダイオードの印加電圧のバリエーションは容量値が一定間隔となるように予め選定されており、制御器220はアルゴリズムによって選定された印加電圧が可変容量ダイオードに印加される制御を実行する(可変容量ダイオードへの電圧印加回路は周知技術によって達成されるので説明および図示を省略する)。
実施形態1の実施例(図5)から、第1周波数帯域と第2周波数帯域のそれぞれの位相制御はほぼ独立に行われていることがわかるが、1/4波長開放線路の特性によっては、第1周波数帯域の位相制御と第2周波数帯域の位相制御に相互依存性が生じる場合がある。図5では、第2周波数帯域の調整において、キャパシタンスが2.5pFから3.0pFの範囲で第1周波数帯域の信号の位相がわずかに変動していることが理解される。このような場合、制御器220は、第1周波数帯域の位相制御と第2周波数帯域の位相制御を交互に切り替えて行い、各周波数帯域の位相制御における位相誤差がともに所定値以下となるように制御が実行される。二つの周波数帯域について完全に独立に位相制御できる場合では、制御器220は第1周波数帯域と第2周波数帯域のそれぞれの位相誤差を独立に監視すればよい。第1周波数帯域の位相制御と第2周波数帯域の位相制御に相互依存性が生じる場合には、制御器220は第1周波数帯域における位相誤差と第2周波数帯域における位相誤差をともに監視し、この二つの位相誤差がそれぞれ所定値以下になるように第1周波数帯域の位相制御と第2周波数帯域の位相制御を交互に切り替えて行う。
第三世代移動通信方式の送信波帯域幅は1.4MHzから20MHzの範囲である。この範囲の送信波がデュアルバンド移相器2に入力波として入力された場合でも、位相比較器は送信波の位相成分を十分に除去できるが、それをさらに容易する方法として、ブランチラインカプラの第1端子101に送信波よりも十分にレベルの低いパイロット信号を注入する方法がある。パイロット信号は無変調波の搬送波であり、送信波の隣接帯域に注入される。デュアルバンド移相器2のBPFと位相比較器はパイロット信号の位相を抽出するため、送信波に比べてより簡易に位相を検出できる。なお。BPFとして、SAWフィルタなど狭通過帯域幅特性を持つフィルタを利用できる。
なお、上述の制御に関わる構成は実施形態1にも適用できる。すなわち、実施形態1のデュアルバンド移相器1は、さらに、4個のバンドパスフィルタ(BPF)200−1,200−2,200−3,200−4と、2個の位相比較器210−1,210−2と、可変容量キャパシタのキャパシタンスを制御する制御器220を含み、実施形態2と同様の構成とされる。この構成においても実施形態2の制御方法が適用でき、制御器220はアルゴリズムによって選定された制御信号が可変容量キャパシタンスに印加される制御を実行する(可変容量キャパシタンスへの制御信号印加回路は周知技術によって達成されるので説明および図示を省略する)。
《実施形態3》
<デュアルバンド移相器>
実施形態3のデュアルバンド移相器3(図7)は、実施形態1の変形例の一例であり、下記の点で、実施形態1のデュアルバンド移相器1と異なる。
デュアルバンド移相器3は、ブランチラインカプラ110に替えて、サーキュレータ150を備えている。サーキュレータ150は、入力端子である第1端子101a、出力端子である第2端子104a、反射端子である第3端子103aを持っている。このため、実施形態1と異なり一つの位相制御回路を具備すればよく、第3端子103aには、第1位相制御回路120または第2位相制御回路130が接続されている。図7では、第1位相制御回路120が第3端子103aに接続されている構成を例示している。なお、T分配器121の第1端子121aはサーキュレータ150の第3端子103aに接続されている。
<機能>
このデュアルバンド移相器3の構成によると、第1周波数帯域の信号の観点からは、デュアルバンド移相器3はあたかも、サーキュレータ150と、第1位相制御回路120の第2位相調整部1232に含まれる可変容量手段1232bと、可変容量手段1232bの一端とサーキュレータ150の第3端子103aとの間の伝送線路(以下、伝送線路B1と呼称する)で構成されている。
他方、第2周波数帯域の信号の観点からは、デュアルバンド移相器3はあたかも、サーキュレータ150と、第1位相制御回路120の第1位相調整部1222に含まれる可変容量手段1222bと、可変容量手段1222bの一端とサーキュレータ150の第3端子103aとの間の伝送線路(以下、伝送線路A1と呼称する)で構成されている。
このため、デュアルバンド移相器3では、第1端子101aから入力された入力波(第1と第2の周波数帯域の入力信号が混合した信号波)はサーキュレータ150によって第3端子103aから出力され、各帯域の信号の位相変化は次のようにして生じる。
[1]第1周波数帯域の信号の観点からは、入力波は伝送線路B1を伝播して可変容量手段1232bでそのキャパシタンスに応じた反射係数で反射される。その後、反射波は伝送線路B1を伝播して第3端子103aに至り、サーキュレータ150によって、入力波に対して所望の位相差を持った信号波として第4端子104aから出力される。
[2]第2周波数帯域の信号の観点からは、入力波は伝送線路A1を伝播して可変容量手段1222bでそのキャパシタンスに応じた反射係数で反射される。その後、反射波は伝送線路A1を伝播して第3端子103aに至り、サーキュレータ150によって、入力波に対して所望の位相差を持った信号波として第4端子104aから出力される。
なお、第4端子104aから出力される出力波は、位相変化された第1周波数帯域の信号と位相変化された第2周波数帯域の信号が混合した信号波である。
このように、デュアルバンド移相器3は、二つの周波数帯域の入力信号が混合した入力波に対して、それぞれの周波数帯域の入力信号に独立して同時に動作する。
なお、実施形態2で説明した制御に関わる構成は実施形態3にも適用できる。すなわち、実施形態3のデュアルバンド移相器3は、さらに、4個のバンドパスフィルタ(BPF)200−1,200−2,200−3,200−4と、2個の位相比較器210−1,210−2と、可変容量キャパシタのキャパシタンスを制御する制御器220を含み、実施形態2と同様の構成とされる(図8)。この構成においても実施形態2の制御方法が適用でき、制御器220はアルゴリズムによって選定された制御信号が可変容量キャパシタンスに印加される制御を実行する(可変容量キャパシタンスへの制御信号印加回路は周知技術によって達成されるので説明および図示を省略する)。
<各実施形態の変形例>
各実施形態では、短絡ブロックの構成例として1/4波長開放線路を用いる例を説明した。1/4波長開放線路は、いわゆるノッチフィルタであり、その役割は他方の周波数成分を抑圧することである。よって、このような性質を持つものであれば、短絡ブロックの構成に制限はない。例えば短絡ブロックを、十分な帯域外減衰特性を持つBPFを用いて構成することもできる。或いは、短絡ブロックを、直列共振回路としてもよい。
各実施形態では、T分配器を用いる例を説明した。しかし、T分配器に限定されるものではなく、同様の効果を有する回路としてウイルキンソン型電力分配器、方向性結合器などを例示することができる。ブランチラインカプラ110に入力される送信波の帯域にて位相周波数特性が平坦な特性を持てばよいので、いわゆる3端子回路と50ohm終端した4端子回路を適用することもできる。

Claims (5)

  1. 第1周波数帯域の信号と第2周波数帯域の信号とが混合した入力波が入力される入力端子と、出力端子と、少なくとも一つの反射端子を備えた移相器において、
    各上記反射端子に位相制御回路が接続されており、
    各上記位相制御回路は、
    位相制御回路が接続されている反射端子に接続された分配器と、当該分配器に接続された第1帯域位相制御部および第2帯域位相制御部とを含み、当該第1帯域位相制御部は、第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロックと、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部とを含み、当該第2帯域位相制御部は、第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロックと、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部とを含む
    デュアルバンド移相器であって、
    第1周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較する第1位相比較器と、
    第2周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較する第2位相比較器と、
    上記第1位相比較器の出力と上記第2位相比較器の出力に基づいて、上記各位相調整部のリアクタンスを制御する制御器と
    を含むことを特徴とするデュアルバンド移相器。
  2. 請求項1に記載のデュアルバンド移相器であって、
    上記反射端子の数は2であり、二つの上記位相制御回路を備えており、
    一方の上記位相制御回路に含まれる第1位相調整部のリアクタンスと他方の上記位相制御回路に含まれる第1位相調整部のリアクタンスとが等しく設定され、
    一方の上記位相制御回路に含まれる第2位相調整部のリアクタンスと他方の上記位相制御回路に含まれる第2位相調整部のリアクタンスとが等しく設定される
    ことを特徴とするデュアルバンド移相器。
  3. 第1周波数帯域の信号と第2周波数帯域の信号とが混合した入力波が入力される入力端子と、出力端子と、少なくとも一つの反射端子を備えた移相器において、
    制御器を含み、
    各上記反射端子に位相制御回路が接続されており、
    各上記位相制御回路は、
    位相制御回路が接続されている反射端子に接続された分配器と、当該分配器に接続された第1帯域位相制御部および第2帯域位相制御部とを含み、当該第1帯域位相制御部は、第1周波数帯域を阻止するように構成された第1短絡ブロックと、第2周波数帯域の信号の位相に影響を与える第1位相調整部とを含み、当該第2帯域位相制御部は、第2周波数帯域を阻止するように構成された第2短絡ブロックと、第1周波数帯域の信号の位相に影響を与える第2位相調整部とを含み、
    上記制御器が上記各位相調整部のリアクタンスを制御する
    ように構成されたデュアルバンド移相器の制御方法であって、
    上記制御器が、上記入力波の位相と上記出力端子からの出力波の位相とを比較し、当該比較結果に基づいて上記各位相調整部のリアクタンスを制御する制御工程
    を有するデュアルバンド移相器の制御方法。
  4. 請求項に記載のデュアルバンド移相器の制御方法であって、
    上記デュアルバンド移相器は、さらに、第1周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較する第1位相比較器と、第2周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較する第2位相比較器とを備えており、
    上記第1位相比較器が、第1周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較して、位相誤差を出力する工程と、
    上記第2位相比較器が、第2周波数帯域において上記入力波と上記出力端子からの出力波との間の位相を比較して、位相誤差を出力する工程と、を有し、
    上記制御工程は、上記制御器が、上記第1位相比較器の出力と上記第2位相比較器の出力に基づいて、上記各位相調整部のリアクタンスを制御する工程である
    ことを特徴とするデュアルバンド移相器の制御方法。
  5. 請求項に記載のデュアルバンド移相器の制御方法であって、
    上記反射端子の数は2であり、上記デュアルバンド移相器は二つの上記位相制御回路を備えており、
    上記制御工程は、上記制御器が、一方の上記位相制御回路に含まれる第1位相調整部のリアクタンスと他方の上記位相制御回路に含まれる第1位相調整部のリアクタンスとを等しく設定し、一方の上記位相制御回路に含まれる第2位相調整部のリアクタンスと他方の上記位相制御回路に含まれる第2位相調整部のリアクタンスとを等しく設定する工程である
    ことを特徴とするデュアルバンド移相器の制御方法。
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