JP5880893B2 - 有機遍歴磁性体化合物を含有する磁石、スピントロニクス素子及び水素精製材料 - Google Patents

有機遍歴磁性体化合物を含有する磁石、スピントロニクス素子及び水素精製材料 Download PDF

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Description

本発明は、有機遍歴磁性体化合物、有機遍歴磁性体化合物の製造方法、磁石、スピントロニクス素子及び水素精製材料に関する。
Si系アモルファス半導体は、その優れた加工性から現在市場の大半を占めている。例えば、液晶ディスプレイのTFT(Thin Film Transistor)や太陽電池には、Si系アモルファス半導体が頻繁に用いられる。
一方、有機半導体は、軽量、柔軟性という特性からウエラブルなデバイスへの応用が期待されている。しかしながら、主に半導体部は無機結晶またはドープされたポリマーが主流であり、世界的に見ても有機アモルファス半導体などの有機半導体の開発は著しく遅れているのが現状である。
また、低分子π化合物や光伝導性ドープポリマーを用いた有機薄膜太陽電池や、有機EL(Organic Electro-Luminescence)素子の開発が現在進められているが、その性能は無機Si系アモルファス固体に比べて劣ることがよく知られている。これは、薄膜やチップなどの加工形態において高い性能や安定性を維持できないことと関係がある。加工形態に依存せず高い性能を有する無機Si系アモルファスのように、有機アモルファス固体などの有機化合物には工業的な観点から高いポテンシャルが期待されるが、これまでに応用された例は極めて少ない。それは、有機アモルファス固体として知られているものは、類似したπ電子系スターバスト分子群に限られており、これらのラジカル体に伝導性の発現するものも存在するがその値は一般に極めて低いためである。
さらに、一般の電荷移動型の有機導体は電気分解法などにより作成していたため、配列制御を行うことは困難である。また、電子物性は結晶構造に大きく依存しているため、工業化に必要とされるポリマー化や液晶化による薄膜への応用の点でも難がある。
また、ドーピングを行うことにより半導体化する伝導性高分子は、配列を制御することは困難であるため、電荷分離能の向上は困難である。また、化学的な安定性に欠け、経時劣化が激しい。
高いホール効果を有するInScやGaAs結晶は、稀少金属であるため高価であり、また、加工性に乏しい。熱電材料として知られるコバルト酸化物結晶も、軽量化や薄膜化は困難である。
これらの観点から、多くの機能を制御可能な材料となり得る化合物が最近提案された(特許文献3)。これは、ドナー分子を無機酸あるいは無機塩基と塩形成させるというシンプルな手法で製造できる有機半導体である。同様の手法で多様な有機半導体を製造できる見込みがあり、この手法は画期的なものである。
特開2005-112951 特表2007-526640 PCT/JP2009/ 52440
本発明は、上述の背景技術に鑑みてなされたものであり、多くの機能を制御可能な材料となり得る化合物などを提供することを目的とする。
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。以下、この発明を詳細に説明する。
本発明の第1の側面は、
ドナーとなる有機分子を無機酸あるいは無機塩基と塩形成させることによって形成され、
自己集積することを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第2の側面は、
アンモニウム部位を有することを特徴とする請求項1記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第3の側面は、
自己集積した状態でアンモニウム部位に対して水素結合がなされることを特徴とする請求項2記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第4の側面は、
テトラチアフルバレン類縁体部位を骨格に含みプロトン酸官能基を有する化合物を、アンモニアとの塩又はヒドロキシアミンとの塩へと誘導させることによって形成されることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第5の側面は、
テトラチアフルバレン類縁体部位を骨格に含み第一級アミンを有する化合物を、無機酸塩へと誘導させることによって形成されることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第6の側面は、
(化1)で表されるいずれかの化合物であることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
(式中、X1からX4はS又はSe、R1は(化2)に表されるいずれかである。)(式中、R2からR8は(化3)に表されるいずれか(同一でも異なっていてもよい。)
本発明の第7の側面は、
(化4)で表されるいずれかの化合物であることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第8の側面は、
(化5)で表されるいずれかの化合物であることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第9の側面は、
テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩であることを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第10の側面は、
ドナーとなる有機分子を無機酸あるいは無機塩基と1対1で塩形成させることによって形成し、自己集積する化合物を製造することを特徴とする有機遍歴磁性体化合物の製造方法
にある。
本発明の第11の側面は、
擬似閉殻配置を有することを特徴とする有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第12の側面は、
塩橋結合を含み、
分子量20000以下の有機化合物にブレンステッド酸又は塩基を添加することで全体の0.1%以上のラジカル種が安定に発生することによって形成される有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第13の側面は、
電子ドナー分子中又は電子アクセプター分子中にプロトン化され得る多重結合を有する塩橋物質であり、
塩橋形成の際に全体の0.1%以上のラジカル種が安定に発生することによって形成される有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第14の側面は、
テトラチアフルバレン骨格又はテトラセレナフルバレン骨格を有する塩橋物質であり、
塩橋形成の際に全体の5%以上のラジカル種が安定に発生することによって形成される有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第15の側面は、
ラジカルスピンの電子状態が擬似閉殻配置を有する請求項13又は14に記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第16の側面は、
塩橋結合を含む有機遍歴磁性体化合物の製造方法であって、
分子量20000以下の有機化合物にブレンステッド酸又は塩基を添加することで全体の0.1%以上のラジカル種を安定に発生させることによって形成する有機遍歴磁性体化合物の製造方法
にある。
本発明の第17の側面は、
電子ドナー分子中又は電子アクセプター分子中にプロトン化され得る多重結合を有する塩橋物質である有機遍歴磁性体化合物の製造方法であって、
塩橋形成の際に全体の0.1%以上のラジカル種を安定に発生させることによって形成される有機遍歴磁性体化合物の製造方法
にある。
本発明の第18の側面は、
テトラチアフルバレン骨格又はテトラセレナフルバレン骨格を有する塩橋物質である有機遍歴磁性体化合物の製造方法であって、
塩橋形成の際に全体の0.1%以上のラジカル種を安定に発生させることによって形成される有機遍歴磁性体化合物の製造方法
にある。
本発明の第19の側面は、
ラジカルスピンの電子状態が擬似閉殻配置を有する請求項17又は18に記載の有機遍歴磁性体化合物の製造方法
にある。
本発明の第20の側面は、
半導体であることを特徴とする請求項9に記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第21の側面は、
強磁性体であることを特徴とする請求項9に記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第22の側面は、
有機室温遍歴磁性体化合物であることを特徴とする請求項9に記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第23の側面は、
請求項9記載の有機遍歴磁性体化合物を含有する磁石
にある。
本発明の第24の側面は、
請求項9記載の有機遍歴磁性体化合物を含有するスピントロニクス素子
にある。
本発明の第25の側面は、
請求項9記載の有機遍歴磁性体化合物を含有する水素精製材料
にある。
本発明の第26の側面は、
塩橋結合内にプロトン欠陥を含む有機化合物であって、損失した電荷を補うためにラジカルカチオンまたはラジカルアニオンを発生した有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第27の側面は、
塩橋物質中でカチオンとアニオンの存在比が1:1から外れることにより電荷が不釣り合いとなり、損失した電荷を補うためにラジカルカチオンまたはラジカルアニオンを発生した有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第28の側面は、
負性磁気抵抗効果を生じる請求項1記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第29の側面は、
負性磁気抵抗効果を生じる請求項6記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第30の側面は、
負性磁気抵抗効果を生じる請求項9記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第31の側面は、
印加磁場に応じた略線形の負性磁気抵抗効果を生じる請求項9記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第32の側面は、
低温になればなるほど磁気抵抗効果が大きくなる請求項31記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
本発明の第33の側面は、
有機室温遍歴磁性体化合物であって、250K以上300K以下の温度範囲において低温になればなるほど磁気抵抗効果が大きくなる請求項31記載の有機遍歴磁性体化合物
にある。
ここで、プロトン酸官能基には、例えば、-COOH、-SO3H、-PO3H、-PSO2Hがある。第一級アミンは例えば-NHnD3-n(n=2〜0)(ここでDは重水素)で表される。また、無機酸には、例えばHBF4, HClO4, HCl, HBr, HI, DBF4, DClO4, DCl, DBr, DIがある。無機塩基には、例えばNHnD3-n (n=3〜0), NHnD2-nOH (n=2〜0), NHnD2-nOD (n=2〜0)がある。
なお、半導体とは、電気を通す導体や電気を通さない絶縁体に対して、それらの中間的な性質を示す物質を指す。例えば、室温付近で、電気伝導度がほぼ102〜10-6Scm-1(SはΩ-1)の範囲のものである。
ドナーとは電子供与体(電子供与分子ないしは電子供与基)を指す。また、アクセプターとは電子受容体(電子受容分子ないしは電子受容基)を指す。
室温とは300K(27℃)を指し、室温付近はその±10℃程度を意味する。
テトラチアフルバレン(TTF)類縁体部位を骨格に含むとは、1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミン、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸のように、分子の骨格中にテトラチアフルバレン構造を有するものを指す。
また、本明細書及び本特許請求の範囲の化合物には、同等の構造を有し、重水素などの元素同位体で元素が置換された化合物も含まれる。したがって、例えば、上述の(化2)には下記の(化2A)で表されるものも含まれる。
本発明によれば、多くの機能を制御可能な材料となり得る化合物などが得られる。本発明のさらに他の目的、特徴又は利点は、後述する本発明の実施の形態や添付する図面に基づく詳細な説明によって明らかになるであろう。
テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の光電子分光法(X-rayphotoelectron spectroscopy (XPS) )によって測定されたN(1s)の結合エネルギーを示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のバンド構造 a)バンド分散 b) Fermi準位付近の状態密度 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の磁化曲線の温度依存性を示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のXPSによる表面分析を示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩ペレットサンプルの光学吸収スペクトルを示す図である。 重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の磁化曲線を示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩及び重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のプロトン起電力を示す図である。 水素濃淡電池法を示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸ヒドロキシアンモニウム塩の磁化曲線を示す図である。 ジベンゾテトラチアフルバレンエタンアンモニウム臭化塩の磁化曲線を示す図である。 ジベンゾテトラチアフルバレンエタンアンモニウム四フッ化ホウ素塩の磁化曲線を示す図である。 ラジカルスピン濃度が異なる3種の化合物の300K, 0磁場における残留磁化をプロットした図である。インセット図は、0.1%以上のスピン濃度で十分に有効的な磁気モーメントを発現することを示す。 アンモニウム塩結晶化の際に使用する溶媒と得られたキャリアドープ結晶のスピン濃度との相関関係を示す図である。 300Kにおける結晶構造を示す模式図である。 電気伝導度の温度依存性を示す図である。 熱起電力を示す図である。 示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter(DSC))の熱量測定結果を示す図である。 熱重量分析計(Thermogravimetric analyzer(TGA))による熱重量測定結果を示す図である。 誘電率を示す図ある。 温度を変化させながら光伝導性を測定した際の測定データを示す図である。 温度を変化させながら光伝導性を測定した際の測定データを示す図である。 温度を変化させながら光伝導性を測定した際の測定データを示す図である。 熱起電力を示す図である。 電気伝導度の温度依存性を示す図である。 電気伝導度の温度依存性を示す図である。 拡散反射スペクトルを示す図である。 熱起電力の温度依存性を示す図である。 各化合物の拡散反射スペクトルを示す図である。 テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の粉末X線結晶構造解析である。 重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の粉末X線結晶構造解析である。 分子間結合と分子間相互作用に着目した立体構造を示す模式図である。 分子間結合と分子間相互作用に着目した立体構造を示す模式図である。 TTFCOO・NH4塩の4量体中に1分子のラジカル種TTF・+COO・NH4が埋没されたモデルを用いた非制限Hartree-Fock法(UHF)/6-31G*による電子状態を示す図である。 4分子ユニット中に1つラジカル種を含むクラスターモデルに対して、水素結合方向(1次元)の周期性を考慮して行った周期的量子化学計算の結果を示す図である。 TTFCOO-NH4 +塩の電気電導度の外部磁界依存性例(温度300K)を示す図である。 TTFCOO-NH3 +OH塩単結晶サンプルの磁気抵抗測定例(温度300K)を示す図である。 TTFCOO-NH3 +OH塩単結晶サンプルの磁気抵抗効果の温度依存性を示す図である。 TTFCOO-NH3 +Ph 塩の磁気抵抗測定例(温度300K)を示す図である。 TTFCOO-NH3 +Ph 塩の磁気抵抗効果の温度依存性を示す図である。 DBTTF(CH)(CH3)NH3 +・Br- 塩の磁気抵抗効果測定例 (温度 300K) を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
[概要]
純粋な有機固体の磁気相互作用は一般に極めて弱く、いかなる強磁性的特性も7K以下程度の極低温でのみしか発現しない。ところが、本発明者らが開発したキャリアドープ有機物は、極低温から室温を超える幅広い温度範囲で強磁性的振る舞いをする遍歴電子を一部生じる。本実施形態に記載の技術は、物質中における強磁性遍歴電子の割合を合成的に増やすことができれば、世界初となる室温での有機磁石実現の可能性を強く示唆するものである。また、有機物ではほとんど例のない室温遍歴磁性体であることから、室温スピントロニクスへの応用も期待される。更に、プロトン伝導能を有することから、室温有機燃料電池や天然ガスからの水素精製材料への応用も可能である。
ここでは、その具体例として2つの例を簡潔に示す。
1)テトラチアフルバレン(TTF)から2工程にてテトラチアフルバレン-2-カルボン酸を全収率65%で得た後に、28%アンモニア水溶液で塩を調製し、元素分析レベルで純粋な1:1のテトラチアフルバレニルカルボン酸・アンモニウム塩を得た。
なお、得られた粉末状固体をペレット化した際の電気伝導性は、室温で1.0x10-3 S/cm程度であった。
2)エチルメチルケトンを出発原料とし、15工程にてジベンゾテトラチアフルバレニルエチルアミンを全収率1%で得た後に、42%四フッ化ホウ素酸水溶液または47-49%臭素酸水溶液で塩を調製し、いずれも元素分析レベルで純粋な1:1のジベンゾテトラチアフルバレニルエチルアミン・四フッ化ホウ素酸塩およびジベンゾテトラチアフルバレニルエチルアミン・臭素酸塩を得た。
なお、得られた粉末状アモルファス固体をペレット化した際の電気伝導性は、室温で1.0x10-3〜10-4S/cm程度であった。
次に、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の分子集合構造の概要などについて説明する。
200K以上の高温領域では、アンモニウム部位回転および振動運動に由来するメカニズムにより高い熱起電力が発生する点で、特にこれまでにない新規な特性が観測された。アンモニウム部位に対して水素結合能を有さないカウンターカチオンおよびアンモニウムプロトンの一部を置換基で置き換えた場合はそれほど優れた物性を発揮しないことから、アンモニウムの回転運動が物性発現の大きな鍵になることが実験的に証明されている。
なお、電気伝導に関しては、重水素化サンプルの誘電分散の周波数依存性から、水素結合が電子伝導にあらわに関与していることが明らかとなっている。
アンモニウムは物性発現の鍵になるだけでなく、TTF(ドナー)分子をキャリア輸送現象に適した分子配列に有効に自己集積させる役割を担っている。
まず、一例として300Kにおける結晶構造について説明する。
図12は、300Kにおける結晶構造を示す模式図である。図に示すとおり、アンモニウムを中心としてカラム状の水素結合ネットワークが形成されており、それらが入れ子状にスタックすることにより有効なπ-π相互作用とS・・・S接触を発生している。キャリアは2次元的な配列中を動き回ることができる。
以下では、特定の化合物を例示しながら、それらの化合物の物性などを詳細に説明する。それらの化合物は、主として、塩橋結合内に生じるプロトン欠陥の損失電荷を補填するためにキャリアドープされる有機物である。
[遍歴強磁性体]
図1は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のN(1s)の結合エネルギーを示す図である。最も代表的な物質であるテトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウムに含まれるプロトン欠陥量は、光電子分光法(XPS)による窒素1s軌道のNH3種の混入割合より15%と見積もられる。これは、電子スピン共鳴法から見積もられるテトラチアフルバレンラジカル分子の含有量16%とほぼ一致している。このプロトン欠陥の存在が結晶中の電子にスピン分極を生じさせる。
図2は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のバンド構造 a)バンド分散 b) Fermi準位付近の状態密度 c) スピン分極軌道を示す図である。図2aは、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のユニットセルを基本とする結晶構造を第一原理計算によって構造最適化したものの基底状態のバンド分散を示す。K空間は4x4x4のサイズを考慮した。ここでは16%のドープ効果をバックグラウンドチャージとして加えている。これはa軸およびb軸に大きな分散を有する四角格子であり、その形はup, downスピン間で異なる。図2bは、Fermiレベルにおけるupスピン、downスピンの状態密度が異なることを示す。これらは電子伝導に寄与する遍歴電子にスピン分極が生じることを示す。その磁化の大きさは0.66μBである。この計算は、この物質中にプロトン欠陥が一様に配置された場合には、室温下で遍歴強磁性体となることを明確に示す。しかしながら、水素結合性のプロトンが可動であり、このプロトン移動の際に生じる準安定状態のスピン分極の度合いは小さいことが同様の計算から明らかとなっており、これが実際の磁気相互作用を減少させる要因となっている。
図3は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩結晶を加圧成型したサンプルの磁化曲線を示す。反磁性補正は行っていない。5Kから400Kの広い温度範囲で残留磁化が確認され、強磁性相互作用の存在を示している。磁化曲線の形状から保持力の小さい軟磁石の傾向を示す。
図4は、XPSによる表面分析の結果を示す。XPSはサンプル表面に付着した金属不純物の存在が極微量でもあれば、それを検出する。しかしながら複数回の測定で広い範囲にわたり有機物以外の元素は検出されないことから、上述の磁気特性はテトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の遍歴電子由来のものであると言える。飽和磁化の磁気モーメントの大きさは10-4μBと理論値よりも大幅に小さいが、これは、プロトン欠陥の混入が磁気的相互作用を発現するのに有利な一様な状態ではないことが最大の原因と考えられる。また、粉末微結晶を9MPa/cm2, 2分間加圧したペレット状とすることで、結晶内部のプロトン欠陥混入状態の一様性が増し、磁化率が増大する傾向が見られる。
図5は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩ペレットサンプルの光学吸収スペクトルを示す図である。電子状態の変化は図に示す粉末微結晶とペレット状態の光学吸収スペクトルの違いからも明らかである。
図6は、重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の磁化曲線を示す図である。
図7は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩及び重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩のプロトン起電力を示す図である。更に、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩及び重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩は水素濃淡電池法によりネルンストの理論式のそれぞれ約半分、1/4のプロトン起電力を発生することから、いずれもプロトン伝導能を有する(図7A)。
表は、この際の測定条件を示す。
図7Bは、水素濃淡電池法を示す図である。
これは燃料電池や天然ガスからの水素精製等に応用可能な特性である。
図8は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸ヒドロキシアンモニウム塩の磁化曲線を示す図である。図9は、ジベンゾテトラチアフルバレンエタンアンモニウム臭化塩の磁化曲線を示す図である。これらの図はそれぞれ、種類の異なるキャリアドープ有機物の磁化曲線を示す。プロトン欠陥量や結晶配列の違いから磁気モーメントの大きさに差を生じるが、基本的にいずれも室温遍歴磁性体であり、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸アンモニウム塩の磁気特性発現機構と同様の機構で磁気相互作用を発現するものと考えられる。
図10Aは、ジベンゾテトラチアフルバレンエタンアンモニウム四フッ化ホウ素塩の磁化曲線を示す図である。
特に、有機遍歴磁性体化合物としては下記のものが好ましい。
1、テトラチアフルバレン骨格、テトラセレナフルバレン骨格を有する塩橋物質で、塩橋形成の際に全体の0.1%以上のラジカル種が安定に発生するもの。ラジカルスピンの電子状態が擬似閉殻配置を有するもの。
その根拠は、0.1%以上の濃度でラジカルスピンが発生し、その電子状態が擬似閉殻配置を有する場合には、ラジカルスピン上の電子が遍歴電子として動き回り、10-5S/cm程度以上の電子伝導性を示すようになることが実験によって確認されているためである。
図10Bは、ラジカルスピン濃度が異なる3種の化合物の300K, 0磁場における残留磁化をプロットした図である。化合物はそれぞれ、A (テトラチアフルバレンカルボン酸:0%), B(テトラチアフルバレンカルボン酸アニリン塩単結晶:2%), C(テトラチアフルバレンカルボン酸ヒドロキシアミン塩単結晶:10%)である。この図から、有効的な磁気特性を得るためには少なくとも0.1%以上のラジカルスピンを発生していることが好ましいことが分かる。
有機ラジカル種は、ラジカルスピンの電子状態がHOMO準位にあるために反応性に富み、空気中の酸素等の外的要因により分解する傾向が強い。そこで、有機ラジカル種を化学的に安定な電子状態にするために、一般にシアノ基やニトロ基などの電子吸引性基を分子中に導入して安定化する工夫がなされる。そのように、電子状態に工夫を施して空気中において長期保存しても、合成当初の分子の組成や電子状態を保ち、容易に分解しないラジカルスピンを発生した状態を「ラジカル種が安定に発生」とここで表現している。
遷移金属元素のd軌道や希土類金属元素のf軌道は、最外殻のs軌道またはp軌道より内殻に位置し、高い局在性を有する原子軌道であり、より低い軌道エネルギーを有する。このd軌道やf軌道の電子状態を擬似閉殻配置というが、これらの軌道の高い局在性から、そこに占有されたd電子やf電子は化学結合に関与しない傾向にあるため、奇電子を安定化する。擬似閉殻配置をとり、化学結合に参加せず、強く安定化された奇電子の性質が磁性の原因になることが多い。擬似閉殻配置についてはあらためて後述する。
0.1%以上の濃度でラジカルスピンが発生する場合には、ラジカルスピン上の電子が遍歴電子として動き回り電子伝導性を示す。しかしながら、多結晶サンプルにおける粒界抵抗による非本質的な電子伝導性の低下という理由により 1 %以上がより好ましい。また、多結晶サンプルにおいても十分に大きな磁気特性を発揮しうるという理由により5 %以上であることがさらに好ましい。
2、電子ドナーもしくは電子アクセプター分子中にプロトン化されうる多重結合を有する塩橋物質で、塩橋形成の際に全体の0.1%以上のラジカル種が安定に発生するもの。さらに好ましくは、ラジカルスピンの電子状態が擬似閉殻配置を有するもの。
その根拠は、0.1%以上の濃度でラジカルスピンが発生し、その電子状態が擬似閉殻配置を有する場合には、ラジカルスピン上の電子が遍歴電子として動き回り、10-5S/cm程度以上の電子伝導性を示すようになることが実験によって確認されているためである。
3、塩橋結合を含み、分子量20000以下の低分子量有機化合物にブレンステッド酸または塩基を添加することにより全体の0.1%以上のラジカル種が安定に発生する物質。さらに好ましくは、ラジカルスピンの電子状態が擬似閉殻配置を有するもの。
その根拠は、0.1%以上の濃度でラジカルスピンが発生する場合には、ラジカルスピン上の電子が遍歴電子として動き回り電子伝導性を示すようになることが実験によって確認されているためである。
高分子であっても一部塩橋による自己集積部位を有することが好ましく、これを満たすためには分子量20000以下が望ましい。磁気特性を十分に発揮するためには、プロトン欠陥が物質中に均一に導入され、均一なドープ状態が得られることが望ましく、極端に大きい分子量では難易度が上昇することが推測されるため、分子量は10000以下であることがさらに好ましい。
[他の物性など]
半導体の性質と磁性体の性質とを融合することができれば、強磁性半導体として利用できる。この融合は、スピントロニクス素子の実現可能性を示すものであり、重要である。ここでは、半導体としての性質に関することを主に述べる。まず、下記の化合物の物性について説明する。
図13は、電気伝導度の温度依存性を示す図である。測定の際には4端子法を採用した。
図14は、熱起電力を示す図である。図に示すように、温度を低温から高温、または高温から低温に変化させても相転移による変化が観測されず、抵抗率の温度依存性が熱活性型の半導体であることがわかる。また、熱起電力の温度依存性はほとんどなく、広い温度範囲でこの化合物は優れた物性を持つことがわかる。特に、熱電効果を利用した熱発電などへの応用が期待できることをこのデータは示している。
図15は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter(DSC))の熱量測定結果を示す図である。図5は、熱重量分析計(Thermogravimetric analyzer(TGA))による熱重量測定結果を示す図である。140℃以下まではいずれの測定値もほぼ安定しているが、およそ140℃を超えると測定値が大きく変化した。これは140℃を超えるとNH3が失われることを示唆していると考えられる。
図16は、誘電率を示す図ある。図に示すとおり、分極、誘電応答が観測された。この結果は、強誘電性により、強誘電体メモリ、ひいては圧電効果を利用するアクチュエータなどとしての応用の可能性を示唆するものである。
図17、図18及び図19は、温度を変化させながら光伝導性を測定した際の測定データを示す図である。図18、図19及び図20は、それぞれ、0℃、20℃、30℃で測定を行った際のデータを示している。ペレット化したサンプル(幅0.08 cm、厚み0.03 cm)を使用し、銀ペーストにて端子付けを行う2端子法を採用した。また、可視光領域を全て含む波長領域の光照射を行った。
次に、下記の化合物の物性について説明する。
図21は、熱起電力を示す図である。上述の化合物と同様に、温度を低温から高温、または高温から低温に変化させても相転移による変化が観測されず、抵抗率の温度依存性が熱活性型の半導体であることがわかる。また、熱起電力の温度依存性はほとんどなく、広い温度範囲でこの化合物も優れた物性を持つことがわかる。この化合物もまた、熱電効果を利用した熱発電などへの応用が期待できることをこのデータは示している。
次に、下記の化合物の物性について説明する。
図22は、電気伝導度の温度依存性を示す図である。一方、図23は化6の化合物の電気伝導度の温度依存性を示す図である。図に示すように、両者の電気伝導度の温度依存性はよく似ており、他の点においても似た物性を示すことが示唆される。
図24は、電気伝導度の温度依存性を示す図である。一方、図23は化6の化合物の電気伝導度の温度依存性を示す図である。図に示すように、両者の電気伝導度の温度依存性はよく似ており、他の点においても似た物性を示すことが示唆される。
図25は、熱起電力の温度依存性を示す図である。図14、図21と同様に高い熱起電力を示すとともに、温度依存性は少ないことから、この化合物も優れた物性を持つことが分かる。この化合物もまた、熱電効果を利用した熱発電などへの応用が期待できることをこのデータは示している。
図26は、各化合物の拡散反射スペクトルを示す図である。図に示すとおり、各化合物は、通常の酸・塩基の塩とは異なり、900nm付近まで吸収を有することが判明した。これは、長波長の電磁波の吸収が実現していることを示しており、太陽電池などの応用にこれらの化合物が適していることを示している。
なお、下記の化合物は電気伝導性から2つのグループに分類された。
1)電気伝導性が〜10-2S/cm程度のグループ
2)電気伝導性が〜10-3S/cm程度のグループ
[分子集合構造]
図27は、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の粉末X線結晶構造解析である。また、図28は、重水素化テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の粉末X線結晶構造解析である。いずれも、シンクロトロン光を使用し、1.3000オングストロームの条件下で測定した。これらを解析することにより、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩は一定の規則性をその分子集合構造中に有する微結晶状態となっていることが明らかである。
図29及び図30は、分子間結合と分子間相互作用に着目した立体構造を示す模式図である。図に示すように、テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩などの化合物は、各分子が重なり合い、分子間では水素結合による多数の緩やかな結合があり、全体としてTTF部位がカラム状に配列している。S原子とS原子との接触距離が3.5オングストローム以下であり、隣り合うS原子の軌道が重なり合い、安定な立体構造が保たれている。
[擬似閉殻配置]
擬似閉殻配置は、キャリア発生の鍵となる酸と塩基とからなる水素結合ネットワークによる自己集積化によって有機ラジカル種を閉殻分子配列の間に埋め込むというシンプルな手法により実現している。擬似閉殻配置(quasi-closed-shell configuration)とは、例えば、遷移金属d軌道や特に希土類金属f軌道で見られる電子配置のことであり、この配置では、スピンは化学結合に関与せず、低い軌道エネルギーを有し、他のエネルギー状態の高い電子に遮蔽されているため原子軌道内部に孤立、局在する。これは、固体状態において強い電子相関効果を誘引し、強相関系金属に特有の種々の高い物性発現の源となる。また、この系のことは、強い電子相関効果から電子の有効質量を増大させるため「重い電子系」とも呼ばれる。これまで説明してきた一連の化合物群は、有機固体で初めて実現されたf電子系金属に位置づけられる。
このことは理論計算により裏付けられる。粉末X線結晶構造より得られたTTFCOO・NH4塩の原子座標を基にして、2個以上60個以下の原子中に1個の有機ラジカル種を水素結合によって埋め込んだクラスターモデルを用いてab initio計算(量子化学計算)を行った。
図31は、TTFCOO・NH4塩の4量体中に1分子のラジカル種TTF・+COO・NH4が埋没されたモデルを用いた非制限Hartree-Fock法(UHF)/6-31G*による電子状態を示す図である。図において、a) 擬似閉殻配置、b) 分子軌道図である。いずれの結果においても、ラジカル種の単占有軌道(singly occupied molecular orbital: SOMO)はフロンティア軌道にはおらず、より安定化された軌道に局在することが明らかとなった。この擬似閉殻配置は、ラジカル種が水素結合を利用した超分子配列中に埋め込まれた形を有する化合物について発現する。
例として、アクセプター性分子で同様の効果を発現すると考えられるものを以下列挙する。
図32は、4分子ユニット中に1つラジカル種を含むクラスターモデルに対して、水素結合方向(1次元)の周期性を考慮して行った周期的量子化学計算の結果を示す図である。M点のバンドギャップはわずか0.3 eVであり、半導体的性質をよく再現する。これは、擬似閉殻配置により、SOMO近傍の軌道がスプリットされることにより伝導キャリアが発生していることを裏付けている。なお、計算方法は以下のとおりであった。
Periodic Boundary Condition (PBC)-UHF/3-21G*
ブリリアンゾーンサンプリング: 40k x 1 x 1 点
計算プログラム: Gaussian03, Rev. D 01
[負性磁気抵抗効果]
上述の化1から化11などの本明細書に記載の物質群は、塩橋結合内に生じるプロトン欠陥の損失電荷を補填するためにドープされる有機物である。これらの物質群は、粉末成形ペレット、単結晶いずれの状態においても、印加磁場に応じた負性磁気抵抗効果を生じる。
以下、様々な物質を具体的に例示しながら説明する。
表2は、TTFCOO-NH4 +塩の磁気抵抗の結晶化溶媒依存性 (300K) 、すなわち、TTFCOO-NH4 +塩を様々な溶媒から再結晶により析出させ、ドープ量を変化させた粉末成形ペレットサンプルの励起電流値と9T印加時、室温における負性磁気抵抗(MR)の大きさを示す。いずれも、0.35-0.55%の範囲のMR効果が確認される。
表3は、TTFCOO-NH4 +塩のアンモニア処理による磁気抵抗の増加(300K)、すなわち、ジエチルエーテルから析出させた粉末結晶をアンモニアガス雰囲気中に1分間静置する処理を行った場合のデータを示す。この場合、アンモニア処理前の状態に比べて30%程度のMR効果の増大が確認される。
表4は、TTFCOO-NH4 +塩の単結晶試料の磁気抵抗特性(300K)、すなわち、同物質の単結晶の9T印加時のMR効果を示す。
図33は同物質の粉末成形ペレットサンプルの300Kにおける外部磁場依存性を示す。一例として、テトラヒドロフラン(THF)溶媒から析出させたサンプルの値を示している。印加磁場に応じて略線形の負性磁気抵抗効果が生じている。
表5は、TTFCOO-NH3 +OH塩単結晶サンプルの磁気抵抗効果
、すなわち、TTFCOO-NH3 +OH塩単結晶の9T印加時の300Kと130KのMR効果を示す。
図34は同物質の300KにおけるMRの磁場依存性を示す。
図35は同物質の9TにおけるMR効果の温度依存性を示す。低温になればなるほど磁気抵抗効果が略線形に大きくなる。例えば、250K-300K、200K-300K及び130K-300Kの温度範囲において磁気抵抗効果が増大する。
表6は、TTFCOO-NH3 +Ph塩の単結晶磁気抵抗効果(300K) 、すなわち、TTFCOO-NH3 +Ph塩単結晶の9T印加時の300KのMR効果を示す。
図36は同物質の300KにおけるMRの磁場依存性を示す。
図37は同物質の9TにおけるMR効果の温度依存性を示す。
図38はDBTTF(CH)(CH3)NH3・Br塩の300KにおけるMR効果の磁場依存性を示す。
いずれの物質においても、室温付近において1%以下のMR効果を示しており、セルフドープされた電子状態は磁場に応答するキャリアを有することが示された。この現象の起源は、本物質群が有する強磁性スピン成分と伝導キャリアが相互作用することにより発生するものであり、本物質群の強磁性スピン成分の存在を証明するものである。
上述の化1から化11などの本明細書に記載の物質群は、アンモニウムイオンを主骨格として含む有機半導体であり、アンモニウムイオン上に0.1%以上99.9%以下のプロトン欠陥を生じた場合に、伝導性が大きく発現することが明らかになっている。このように、アンモニウム上のプロトン欠陥がドーパントとなる有機半導体では、ドーパントの周りに磁性が生じるため、荷電キャリアがその影響を受けて磁場印加時に負性磁気抵抗を発現する。欠陥構造の周囲に強磁性が発生する効果は、有機物では本明細書に記載の物質群が初めての事例であるため、今後の物質開発に大きな影響を及ぼすことは必至である。プロトン欠陥を含む塩橋構造に発生する強磁性は、低温のみならず、室温のような高温でも同様に観測されており、温度による影響を受けにくいことが全ての事例によって示されている。そのため、このドーパントにより荷電キャリアを発生した物質では、すべて負性磁気抵抗効果を発揮する。
[合成方法]
次に、化合物の具体的な合成方法について説明する。
(テトラチアフルバレン-2-カルボン酸の合成)
アルゴン雰囲気下ジイソプロピルアミン(0.65 ml, 5.42 mmol)に乾燥ジエチルエーテル(10 ml)を加え、n-BuLi (1.65 mol/ L, 5.45 mmol)をゆっくり滴下した。これを氷浴上で1時間撹拌し、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を調製した。アルゴン雰囲気下、テトラチアフルバレン (TTF) (1.014 g, 4.96 mmol) を乾燥ジエチルエーテル(100 ml)に溶解し、-78 ℃で撹拌しながら、調製したLDAをキャヌラーを用いてゆっくり滴下した。温度を維持したまま15分間撹拌し、リチオ体の沈殿を確認した。そこに乾燥ジエチルエーテルにくぐらせたドライアイスを投入し、一晩かけて温度を室温に戻した。濾過により固体を得た後にジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体をアルカリ水に溶解し、ジエチルエーテルにより水層を洗浄した。水層に、3M HClを加えて酸性にし、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することにより、赤色固体のテトラチアフルバレン-2-カルボン酸 (0.8023 g, 3.23 mmol, 65%) を得た。
1H NMR(DMSO) : δ= 7.67 (s, 1H), 6.75 (s, 2H) ppm.
IR (KBr) : 3060, 2930, 1650, 1530, 1420, 1290 cm-1.
(テトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩の調製)
テトラチアフルバレン-2-カルボン酸 (150 mg, 0.604 mmol)を乾燥ジエチルエーテル(30 ml)に溶解し、不溶成分を吸引ろ過により取り除いた。ろ液に28%アンモニア水溶液を滴下し、超音波発生装置に15秒かけて固体を析出させた。析出した固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、さらにトルエン (3 ml) 中で懸濁させながら撹拌し、その後にろ過することによりテトラチアフルバレン-2-カルボン酸・アンモニウム塩 (130.8 mg, 0.493 mmol, 82%)を得た。
1H NMR(DMSO) : δ= 6.75 (s, 2H), 7.67 (s, 1H) ppm.
IR (KBr) : 2930, 1650, 1530, 1420, 1290 cm-1.
Anal. Calcd. for C7H6N O2S4: C, 31.68; H, 2.66; N, 5.28. Found. C, 31.59; H, 2.75; N, 5.10.
(1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミンの合成)
<1,3-ベンゾジチオール-2-チオン>
アルゴン置換した100 mlフラスコにイソアミルアルコール (0.80 ml, 0.73 mmol),二硫化炭素 (4.0 ml, 6.6 mmol),1,2-ジクロロエタン(20 ml),イソアミルニトリル (0.97 ml, 0.73 mmol)を加え、加熱撹拌しながら1,4-ジオキサン(4 ml)に溶解したアントラニル酸 (1.00 g, 7.30 mmol)を加えた。10時間加熱還流した後,水を加えて反応を停止し、3M水酸化カリウム水溶液を加え,ジクロロメタンにより抽出し,乾燥,濃縮することで1.29 gの茶色液体を得た。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより原点成分を除いた。これに、硫黄(0.143 g, 4.46 mmol)とオルトジクロロベンゼン(2.0 ml)を加え、4時間加熱還流した。これを一晩放置し,生じた結晶をろ過して茶色針状結晶の1,3-ベンゾジチオール-2-チオン (0.383 g, 2.08 mmol, 51 %)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 7.26-7.42 (m,2H), 7.46-7.50 (m,2H) ppm.
IR (KBr) : 1434, 1264, 1119, 1059, 1025, 741, 474, 892 cm-1.
<4,5-ジメチル-1,3-ジチオール-2-オン>
アルゴン雰囲気下で,蒸留精製したエチルメチルケトン (0.53 mg, 5.9 mmol)をアセトニトリル (8 ml)に溶解した溶液を30 mlフラスコ中に加え,室温で撹拌しながらブロモテトラメチルシラン (0.86 ml, 6.2 mmol),蒸留精製したジメチルスルホキシド (0.46ml, 6.5 mmol)を加え,氷浴上で一時間撹拌した。これにイソプロピルキサントゲン酸カリウム (1.14 g, 6.53 mmol)を加え更に室温で1時間撹拌した。水を加えて反応を停止し,1M塩酸を加え,ジエチルエーテルで抽出し,乾燥,濃縮した。濃縮物をクロロホルム/エーテル(1:1)溶液 (8 ml)に溶解し、50 mlフラスコ中で撹拌しながら60%過塩素酸水溶液 (2 ml) を滴下し、滴下終了後1時間加熱還流した。水を加えて反応を停止し,ジエチルエーテルにより抽出し,乾燥,濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ヘキサン/ジクロロメタン(3:1))により精製することで、無色結晶の4,5-ジメチル-1,3-ジチオール-2-オン(0.37 g,2.5 mmol, 43%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 2.15 (s,6H) ppm.
IR (KBr) : 1655, 1600, 1438, 1188, 1092, 885, 755, 418 cm-1.
<5-アセチル-1,3-ベンゾジチオール-2-オン>
アルゴン雰囲気下で,50 mlフラスコに4,5-ジメチル-1,3-ジチオール-2-オン (0.445 g, 3.04 mmol)の四塩化炭素 (18 ml)溶液を加えて撹拌し,ここにN-ブロモスクシンイミド(NBS)(2.38 g, 13.4 mmol)を加えた。白熱電球照射下で10時間加熱還流し,その後13.5時間室温で撹拌した。反応液をろ過し,濾液を濃縮乾固,乾燥することにより、1.26 gの黒色固体(粗収率107%)を得た。得られた黒色固体とヨウ化テトラブチルアンモニウム (2.34 g, 9.09 mmol)を50 mlフラスコ中に加え,アセトニトリル (14 ml) に溶解させて5時間加熱還流し,ここにメチルビニルケトン (1.93 ml, 12.7 mmol)を滴下した後,30分間加熱還流した。濃縮後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン(1:1)→(4:3))により精製し,5-アセチル-1,3-ベンゾジチオール-2-オン(0.222 g, 1.06 mmol, 39%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 2.63 (s,3H), 7.60 (d,1H,J = 4.2 Hz), 7.90 (dd,1H,J = 1.7 Hz,J = 3.3 Hz), 8.09 (d,1H,J = 1.2 Hz) ppm.
IR (KBr) : 3078, 2923, 1687, 1638, 1391, 1355, 1273, 1248, 889, 818 cm-1.
<5-(2-メチル-1,3-ジオキサラン-2-イル)-1,3-ベンゾジチオール-2-オン>
アルゴン置換した50 mlフラスコに5-アセチル-1,3-ベンゾジチオール-2-オン(0.222 g, 1.06 mmol)のトルエン (12 ml) 溶液を加え撹拌し,これにパラトルエンスルホン酸一水和物 (0.059 g, 0.34 mmol)を加え,更にエチレングリコール(0.3 ml)を加えて4時間加熱還流した。その後、約1.5 mlのトリエチルアミンを加えて反応を停止し,更に一時間室温で撹拌した。反応液を濃縮,乾燥して、0.359 gの茶色オイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン(2:1)→ジクロロメタンのみ)により精製し,5-(2-メチル-1,3-ジオキサラン-2-イル)-1,3-ベンゾジチオール-2-オン (0.158 g,0.621 mmol, 59%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 1.66 (s,3H), 3.76-3.81 (m,2H), 4.04-4.09 (m,2H), 7.45 (s,2H), 7.63 (s,1H) ppm.
IR (KBr) : 3421, 1685, 1638, 1375, 1274, 1243, 1195, 1038, 878 cm-1.
<2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレン>
1,3-ベンゾジチオール-2-チオン (1.19 g, 6.46 mmol)と5-(2-メチル-1,3-ジオキサラン-2-イル)-1,3-ベンゾジチオール-2-オン (0.66 g, 2.60 mmol),トリエチルホスファイト (70 ml) をアルゴン置換した200 mlフラスコに加え,9時間加熱還流した。水を加え,氷浴で冷却しながら3M塩酸を滴下したのち,濃縮,乾燥した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後(クロロホルムのみ→酢酸エチルのみ),クロロホルムから再結晶することにより、2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレン(0.481 g,1.39 mmol, 53%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 2.57 (s,3H), 7.12-7.15 (m,2H), 7.26-7.33 (m,2H), 7.69 (dd,2H,J = 3.5 Hz,J = 0.6 Hz), 7.83 (d,1H,J = 0.8 Hz) ppm.
IR (KBr) : 1668, 1568, 1447, 1390, 1348, 1272, 1235, 1121, 810, 748 cm-1.
<O-メチル-2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレンオキシム>
200 mlフラスコに2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレン (0.98 g, 2.83 mmol) を加え,ピリジン (70 ml) を加えて撹拌し,ここにO-メチルヒドロキシアミン塩酸塩 (0.354, 4.24 mmol)を加えて6時間加熱還流し,室温で40時間撹拌した。反応液に水を加えてジクロロメタンで抽出し,有機層を濃縮,乾燥させ、生成物をクロロホルムで再結晶し,O-メチル-2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレンオキシム (0.85 g, 2.26 mmol, 80%) を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 2.17 (d,3H,E/Z mixture), 3.98 (d,3H,E/Z mixture), 7.10-7.13 (m,2H), 7.21-7.27 (m,5H), 7.38 (d,1H,J = 4.2 Hz), 7.58 (d,1H,E/Z mixture) ppm.
IR (KBr) : 3436, 2923, 1653, 1444, 1050, 892, 818, 745 cm-1.
<1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミン>
アルゴン置換した300 mlフラスコにO-メチル-2-アセチルジベンゾテトラチアフルバレンオキシム(1.92 g, 5.12 mmol)とTHF (160 ml) を加えて撹拌し,氷冷下ボランテトラヒドロフラン錯体テトラヒドロフラン溶液 (21.1 ml, 21.4 mmol) を加え,3時間加熱還流した。冷却した反応液に1M塩酸 (20 ml) を加えて反応を停止し,水酸化カリウム水溶液を少量ずつ加えるとともに濃縮してTHFをある程度除去した後,液性を塩基性にし,ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮,乾燥して, 1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)-エチルアミン(1.67 g,4.79 mmol, 94%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : δ= 1.35 (d,3H,J = 3.3 Hz), 4.08 (q,1H,J = 3.3 Hz), 7.08-7.14 (m,3H), 7.19-7.29 (m,4H) ppm.
IR (KBr) : 3046, 2922, 1561, 1445, 1428, 1260, 1120, 1028, 811, 776, 737 cm-1.
(ブレンステッド酸塩の調製)
各種酸との塩は,1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミンを溶媒(ジエチルエーテル又はジクロロメタン)に溶解し,そこにブレンステッド酸水溶液 (HBr, HBF4) を滴下し,数分間超音波を当て,生成した固体を濾過することにより調製した。1回の洗浄に用いる蒸留水はパスツールピペットで2、3滴,これを5回程度行なうことによって洗浄とした。
<1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミン・臭素酸塩>
1H NMR (DMSO-d6) : δ= 1.49 (d,3H,J = 6.9 Hz), 4.40 (s,1H), 7.27-7.76 (m,7H), 8.21 (s,3H) ppm.
IR (KBr) : 2923, 1590, 1497, 1444, 1222, 1080, 738, 591, 435 cm-1.
Anal. Calcd. for C16H14BrNS4・H2O: C, 43.03%; H, 3.62%; N, 3.14%. Found. C, 43.24%; H, 3.37%, N, 3.04%.
<1-(ジベンゾテトラチアフルバレン-2-イル)エチルアミン・四フッ化ホウ素酸塩>
1H NMR (DMSO-d6) : δ= 1.50 (d,3H,J = 6.9 Hz), 4.39 (q,1H,J = 6.9 Hz), 7.33 (m,4H), 7.62 (m,5H) ppm.
IR (KBr) : 2924, 1616, 1498, 1445, 1225, 1083, 741, 591, 523, 415 cm-1.
Anal. Calcd. for C16 H14 B F4 N S4: C, 44.14%; H, 3.24%; N, 3.22%. Found. C, 43.96%; H, 3.40%, N, 3.17%.
[合成過程での創意工夫]
キャリアドープにより、固体中でのラジカルスピン濃度を増やすことが磁気特性を向上させる上で重要な要素であるが、結晶化溶媒を変えることで最大38%(1,4-ジオキサン使用)までスピン濃度を向上させることに成功した。
図11は、アンモニウム塩結晶化の際に使用する溶媒と得られたキャリアドープ結晶のスピン濃度との相関関係を示す図である。
実験はキャリアドープされた塩の多結晶を加圧成型してペレット状にした小片を室温条件でESR測定し、そのESRシグナルを標準物質である2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(2,2-diphenyl -1-picrylhydrazyl) (通称DPPH)のピーク面積と比べてスピンの定量を行ったものである。使用したサンプル量はいずれも規格化されている。
[用途]
本実施形態の化合物は多様な用途に使用することができる。スピントロニクス素子、情報通信素子、メモリ素子、磁気シールド、医療用磁気シールド、磁石、磁性半導体、電界効果トランジスタ(FET)、磁石入り絆創膏、ハードディスクドライブのヘッド、高感度再生用GMRヘッド、固体磁気メモリ、磁気抵抗メモリ(MRAM)、ファイバ通信用光アイソレータ、磁界で色が変わる材料、伝導電子スピンと原子磁気モーメントの相互作用を利用した材料などが例として挙げられる。
なお、単結晶ではなくとも、微結晶加圧成形状態で高い物性値を示すことから、ポリマーや液晶へ形態変換し、薄膜化できる可能性が示唆される。塗布による薄膜形成は多くの用途への可能性を拓くものである。
[権利解釈など]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施形態の修正又は代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
また、この発明の説明用の実施形態が上述の目的を達成することは明らかであるが、多くの変更や他の実施例を当業者が行うことができることも理解されるところである。特許請求の範囲、明細書、図面及び説明用の各実施形態のエレメント又はコンポーネントを他の1つまたは組み合わせとともに採用してもよい。特許請求の範囲は、かかる変更や他の実施形態をも範囲に含むことを意図されており、これらは、この発明の技術思想および技術的範囲に含まれる。

Claims (3)

  1. 以下の式で表される化合物群から選択されるいずれかの有機遍歴磁性体化合物を含有する磁石。

    (式中、Xから は、Sであり、Rは、以下の式で表される置換基群及び−COONH Phのいずれかであり、R〜Rは、H、またはC2n+1(nは1〜5の整数である。)であり、ただし、R=R=R=Hの場合を除く。)
  2. 以下の式で表される化合物群から選択されるいずれかの有機遍歴磁性体化合物を含有するスピントロニクス素子。

    (式中、Xから は、Sであり、Rは、以下の式で表される置換基群及び−COONH Phのいずれかであり、R〜Rは、H、またはC2n+1(nは1〜5の整数である。)であり、ただし、R=R=R=Hの場合を除く。)
  3. 以下の式で表される化合物群から選択されるいずれかの有機遍歴磁性体化合物を含有する水素精製材料。

    (式中、Xから は、Sであり、Rは、以下の式で表される置換基群及び−COONH Phのいずれかであり、R〜Rは、H、またはC2n+1(nは1〜5の整数である。)であり、ただし、R=R=R=Hの場合を除く。)

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