JP5874944B2 - ニッケル酸化鉱の湿式精錬方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、その原料となる硫化鉱石の資源枯渇傾向に伴い、低品位の酸化鉱石を精製する技術が開発され、実用化されている。
そのCCDから得られる液体成分(以下、オーバーフローという場合がある)は、硫化工程に適したpHに調整するために中和工程に回され、pHを調整することにより、発生する微細な固形物を沈殿除去した後、例えば、硫化工程に送られ、硫化処理が行われ、ニッケル・コバルトの混合硫化物という中間原料を得るのが一般的である。
また、このHPALプロセスは、ニッケル酸化鉱のみでなく、ニッケル硫化鉱石や硫化銅鉱石、酸化銅鉱石など多くの種類にも適用できる。
このためHPALプロセスの操業に伴って発生する、膨大な量の浸出残渣を積立保管するための広大な残渣堆積場が必要である。
その原料の酸化鉄は、限られた資源であり、しかも鋼の品質維持に必要な良質な鉄鉱石の入手は次第に難しくなっている。このため、浸出残渣を鉄鉱石として使用する検討がなされている。
その理由に以下に示す2点が挙げられる。
(1)HPALプロセスの浸出残渣には、酸化鉄以外にも脈石や不純物、特に硫黄が含まれるため、従来の一般的な製鉄プロセスに用いる原料には適さなかった。
(2)浸出残渣から回収されるヘマタイトの平均粒径が1μm以下と非常に細かく取扱いが困難である。
なお、焼結鉱は粉鉱石を焼結して製造され、ペレットは微粉鉱石を焼成して得られる。
このような製鉄原料に利用できる酸化鉄中の硫黄品位は、個々の製鉄所の設備能力、生産量などによって異なるが、一般には1%未満に抑制することが必要とされている。
この浸出残渣中の硫黄の由来は、その大部分がニッケル精製中に混入する硫酸カルシウム(石膏)である。
石膏は、高圧酸浸出で得られた浸出スラリーに残留する遊離硫酸(遊離硫酸とはHPALプロセスで十分な浸出を行うために過剰に加えた硫酸のうち、未反応で残留する硫酸のことである。)を中和する際に、一般的で安価なカルシウム系の中和剤、例えば、石灰石や消石灰を添加しており、中和剤に含まれるカルシウムと遊離硫酸とが反応することで生成し、浸出残渣中に混入することになる。
なお、浸出残渣に含有される硫黄の一部(1%程度)は、生成したヘマタイトの粒子中に取り込まれている。
例えばこのような用途に適した中和剤として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどがある。
このため、全量あるいは部分的に上記のような中和後に難溶性の澱物を形成するカルシウム系の中和剤を使用せざるを得ず、硫黄の混入を避けられないことから、HPALプロセスで生成する浸出残渣をヘマタイトに加工して製鉄原料として用いることはできなかった。
例えば特許文献2には、鉄明礬石含有残留物と硫化亜鉛含有物を少なくとも1000kPaの酸素分圧及び130〜170℃の温度条件で、オートクレーブ内において40〜100g/lの遊離硫酸とともに攪拌し、残留物および硫化亜鉛含有濃厚物の鉄分及び亜鉛分を実質的に溶解させ、溶液を亜鉛電解のための浸出循環路に導入して鉄を赤鉄鉱の形で沈殿させ、前記固形物から硫黄を分離し、残留物は別の用途に供給することを特徴とする方法である。
しかしこの方法は、オートクレーブのような高価な新規の装置を要し、設備コストがかさみ、さらに生産性の面でも課題があった。
例えば、特許文献3は、硫酸マグネシウムのソースから酸化マグネシウムを回収するプロセスであって、金属含有鉱石または精鉱の浸出に関連したプロセスの一部から得られた溶液状態の硫酸マグネシウムのソースを用意する工程と、溶液状態の硫酸マグネシウムを固体硫酸マグネシウムに変換する工程と、固体硫酸マグネシウムを還元性雰囲気中で元素状硫黄に接触させる工程と、マグネシウムを酸化マグネシウムとして、かつ硫黄を二酸化硫黄ガスとして回収する工程とを含むプロセスである。
しかしながら特許文献3の方法は、溶液中のマグネシウムを硫酸マグネシウムとして晶析させたり、得た硫酸マグネシウムを加熱して酸化マグネシウムに変換するのに多量の熱を必要とし、経済的な方法とは言い難い。
例えば、特許文献4は、ニッケルまたはコバルトと鉄とを含む酸化鉱石から、ニッケルまたはコバルトを回収する方法において、酸化鉱石として、第一の酸化鉱石と、この第一の酸化鉱石よりもマグネシウム含有率が高い第二の酸化鉱石とを準備する工程と、第一の酸化鉱石を、第一の小粒径酸化鉱石と、第一の大粒径酸化鉱石とに分級し、第二の酸化鉱石を第二の小粒径酸化鉱石と、第二の大粒径酸化鉱石とに分級する分級工程と、硫酸を使用して第一の大粒径酸化鉱石から、ニッケルまたはコバルトを浸出し、ニッケルまたはコバルトを含む硫酸浸出溶液と浸出残渣とを得る浸出工程と、その浸出残渣を含む硫酸浸出溶液と第二の大粒径酸化鉱石とを混合し、硫酸浸出溶液と第二の大粒径酸化鉱石に含有されるマグネシウムとを反応させてpH調整し、ニッケルまたはコバルトを含む反応液と、鉄を含む反応残渣とを得る反応工程と、その反応残渣を含む反応液を、中和剤を使用して中和し、ニッケルまたはコバルトを含む中和液と、鉄を含む中和残渣とを得る中和工程とを含むことを特徴とする回収方法である。
しかしながら、鉱石を分級するためのコストや手間は無視できなかった。さらに、浸出残渣中には脈石成分も多く、そのままでは鉄品位が低くなり、効率的な原料とは言い難かった。
従って、HPALプロセスで使用する中和剤の全量を酸化マグネシウムで代替することは困難だった。
しかしながら、中和工程で従来のカルシウム系中和剤を使用して、特許文献1に記載の、実操業の効率を向上する技術を利用しようとすれば、中和工程の残渣がCCDに戻し入れられるため、浸出残渣への硫黄分混入は避けられず、硫黄品位の上昇を招く問題が新たに発生してしまう。
(2)得られた浸出スラリーを、中和剤の添加により中和処理してNi富化成分とFe富化成分に分離した予備中和後スラリーを形成する予備中和工程。
(3)(2)の予備中和工程により形成された予備中和後スラリーを、固液分離してNi富化スラリー(液体成分)とFe富化スラリー(固体成分)に分離、洗浄する固液分離工程1。
(4)(3)の固液分離工程1により得られたNi富化スラリーを、Ca系中和剤を用いて中和する中和工程1。
(5)(3)の固液分離工程1により得られたFe富化スラリーを、非Ca系中和剤を用いて中和する中和工程2。
(6)(5)の中和工程2を経て生成された中和後Fe富化スラリーを固液分離、洗浄して固体成分としてヘマタイトを生成する固液分離工程3。
(7)(3)の固液分離工程1で得られたFe富化スラリーの一部を、Ni富化スラリーを中和する(4)の中和工程1に種晶として添加する種晶添加処理。
(8)(4)のNi富化スラリーの中和工程1から得られる沈殿を、固液分離して、硫黄化合物を含む残渣(固体成分)と硫黄を含まない液体成分に分離、洗浄する固液分離工程2。
(9)(6)の固液分離工程3で得られたヘマタイトを、1150〜1350℃で焼成する焼成工程。
図1は、本発明の製造工程フロー図である。
鉱石に含まれる有価金属は、図1の最も左側の実線矢印(中和工程からは細実線矢印)で示すフローに従って製造されていく。
一方、この製造プロセスの副生品であるヘマタイトは、図1の太実線で示されるように固液分離工程1(CCD)から右側に分岐した太実線矢印の先で得られる浸出残渣(Fe富化スラリー)に含まれ、その後、図1の最も右側の太実線矢印で示すフローに従って製造される。以下、各工程について詳細に説明する。
本発明における中和処理は、「1.予備中和工程」、「2.中和工程1」、「3、中和工程2」の3工程において行われる。それぞれの工程において使用する中和剤を下記に記す。
予備中和工程における中和剤には、母岩、酸化マグネシウムもしくは水酸化マグネシウムを用いる。
中和工程1における中和剤には、Ca系の中和剤を用いることができ、安価な石灰石や消石灰を用いる。
中和工程2における中和剤には、非Ca系中和剤を使用し、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いるが、水酸化マグネシウムや酸化マグネシウムを用いても良い。
各中和工程を説明する。
本発明の予備中和工程では、先ず中和剤に表1に成分組成の代表例を示した母岩(単位:wt%)を用いることで、カルシウムの混入を抑制しながら中和を進める。その目標とするpHは、ニッケル酸化鉱石の精錬の場合、次工程の固液分離工程1での分離効率を向上させるため、pH1〜3程度に中和する。
固液分離工程1から得られる液体成分(Ni富化スラリー)を中和処理する中和工程1で、安価な石灰石や消石灰などのCa系中和剤を用いる。このことで、安定かつ低コストでの操業が可能となる。その目標とするpHは、ニッケル酸化鉱石の精錬の場合、後工程で不純物分離の効率を向上させるため、pH3〜5程度に中和する。
そこで、沈降速度を向上させるため、固液分離工程1(CCD)のアンダーフロー分である浸出残渣のFe富化スラリー(ヘマタイトが主成分)の一部を種晶として、添加における固形分重量を、沈殿物重量の50重量%以上、80重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
固形分重量が50重量%未満だと、種晶としての役割を果たせず、沈降速度の向上が不充分となり、80重量%より大きいと、沈降速度の向上させる効果があまり変わらないだけでなく、Fe富化スラリーを処理して得られるヘマタイトの生産量が少なくなるので不利である。
浸出残渣(Fe富化スラリー)を中和する中和工程2では、供給不安定な水酸化マグネシウムなどは用いず、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどを用いるのが好ましい。
また、水酸化マグネシウムを中和剤として用いると、排水中のMg量が多くなり最終Mg固化処理において大量の中和剤が必要になるので好ましくない。
目標とするpHは、ヘマタイトとしては最終的な中和の工程となるため、pH6〜8程度に中和する。
次に本発明における固液分離処理は、「固液分離工程1」、「固液分離工程2」、「固液分離工程3」の3処理にて行われる。
固液分離工程1では、CCD(Counter Current Decantation)などの公知の方法を用いて行い、予備中和工程の中和により形成されたNi富化成分とFe富化成分に分離した予備中和後スラリーを、Ni富化スラリー(液体成分)とFe富化スラリー(固体成分:浸出残渣)に分離する。
Ni富化スラリーは、後工程で処理されニッケル・コバルト混合硫化物や硫酸ニッケル溶液などの中間原料となり、さらに精錬されて有価金属となる。
一方、Fe富化スラリーの浸出残渣からは、図1の最も右側の太実線矢印で示すフローに従って中和工程2、固液分離工程3を経て、製鉄用酸化鉄(高純度ヘマタイト)を回収する。
固液分離工程2では、CCD(Counter Current Decantation)などの公知の方法を用いて行い、中和工程1から得られる、石膏を主成分とする沈殿物のスラリーから液体成分を、固液分離工程1の洗浄液として回収し、残渣(固体成分)を最終処理工程に送出する。
この固液分離工程2を設けたことにより、Fe富化スラリーを生成する固液分離工程1において使用する洗浄液に石膏を除去した洗浄液を用いることができることから、分離されたFe富化スラリーに石膏が混入することがなくなり、得られるヘマタイトの硫黄品位を抑制することができる。また、新しく用意する洗浄液の量も削減可能となる。
固液分離工程3では、湿式分級、シックナーやフィルタープレスなど公知の方法を用いて行い、中和工程2から得られる中和後のFe富化スラリーから固形分として、硫黄分が1%未満のヘマタイトを回収する。また、得られた液体成分は、固液分離工程1の洗浄液として回収する。
一般的に固体物質の運送においては、水分含有量が多いと船舶輸送中に液状化現象を引き起こし、船舶の転覆を引き起こす可能性がある。日本海事検定協会にて調査した結果、本発明ヘマタイトの運送許容水分値(TML:Transportable Moisture Limit)は17%以下であった。このため、船舶搬送する場合、当該ケーキの水分含有率を下げる必要がある。同時に当該ヘマタイトの粒子径は1μm程度と非常に細かいので、発塵の可能性が非常に高い。
その脱水方法には、加熱法、フィルタープレス法、遠心分離法などがあるが、水分除去効率の高さや経済性からフィルタープレス(加圧濾過)による方法が広く用いられている。
従って、極微粒子である本発明のヘマタイト製造工程から得られたヘマタイトケーキを焼成して、粗粒子とする。
したがって、得られるヘマタイトの平均粒径が1μmを超える場合、そのようなヘマタイトを焼成した後に得られる焼成体の強度が低下するので、好ましくない。
ヘマタイト焼成温度が1150℃未満であると、ヘマタイト焼成体の密度が4.0g/cc未満になる。この密度が4.0g/cc以下であると焼成体の空孔が多くなり、焼成体にクラックが生じ、脆くなる原因となる。
粒子径(d50)が3mm未満であると高炉内での目詰まりの原因になり、還元ガスの流れが悪くなる。一方で、20mmを超えると、反応時間が長くなり生産性悪化の原因となる。
具体的には、母岩の粒径が500μmを超えない範囲であれば、中和性能に差がなく、また、分級に湿式サイクロンを用いる場合、分級除去したい物質の粒径が大きいほど分級精度を上げることができることから、母岩の粒径は500μm以下となる範囲、そして設備負荷を考えると好ましくは150μm前後の平均粒径となるように調整することにより、ヘマタイト以外の脈石等をU/F側に分配させ、ヘマタイトの品位を向上させることが出来る。
粒子径は、粒度分布測定装置「型番 SALD−3100」(SHIMADZU社製)で測定した。
焼結炉には炉床昇降式高温炉(丸祥電器株式会社製)を使用した。焼結温度は、焼結物の温度を熱電対で測定し、焼結温度が所定の温度に達してから所定時間保持した。
その結果、ヘマタイトの硫黄品位0.9%、平均粒径0.6μm、水分率22%のヘマタイトを得ることができた。
中和工程1にFe富化スラリーを添加して、沈殿物の沈降を促進したため従来と同様の効率で操業することができた。
得られたヘマタイトケーキを高圧フィルタープレス(高圧加熱濾過装置)をすることで、ヘマタイト硫黄品位0.9%、ヘマタイトの平均粒径0.6μm、水分率13%のヘマタイトが得られた。
得られた焼成体の硫黄品位は0.01%、水分率は0%であった。また、この焼成体の密度は5.0g/cc、粒子径(d50)は20mmであった。
得られたヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を1150℃、10分の焼成を施した。次にジョークラッシャーを使用して粉砕した。
得られた焼成体の硫黄品位は0.07%、水分率は0%であった。また、この焼成体の密度は4.3g/cc、粒子径(d50)は20mmであった。
本発明を適用せず、図2の従来の製造工程フロー図に示すように中和工程から得られた沈殿をCCD(固液分離工程)に戻し入いれる操業を実施した。
その結果、得られたヘマタイトの硫黄品位は6.5%であり、製鉄用原料としては使用が困難なヘマタイトしか得られなかった。
図1に示す本発明に係る製造工程フローに従い、固液分離工程2(CCD)、固液分離工程3(フィルタープレス)、中和工程2(中和剤:水酸化ナトリウム)を実施し、特に、中和工程1から得られる沈殿を固液分離工程1に戻し入れることなく、操業を実施した。
得られたヘマタイトの硫黄品位は0.9%、平均粒子は0.6μm、水分率は22%であった。
得られた焼成体の硫黄品位は0.01%、水分率は0%であった。また、焼成体の密度は5.2g/cc、粒子径(d50)は20mmであった。
図1に示す本発明に係る製造工程フローに従い、固液分離工程2(CCD)、固液分離工程3(フィルタープレス)、中和工程2(中和剤:水酸化ナトリウム)を実施し、特に、中和工程1から得られる沈殿を固液分離工程1に戻し入れることなく、操業を実施した。
得られたヘマタイトの硫黄品位は0.9%、平均粒子は0.6μm、水分率は22%であった。
得られた焼成体の硫黄品位は0.2%、水分率は0%であった。また、焼成体の密度は3.8g/cc、粒子径(d50)は20mmであった。
Claims (2)
- ニッケル酸化鉱の湿式精錬方法であって、
前記湿式精錬方法は、中和工程を含み、
前記中和工程では、中和剤に母岩を使用し、
前記母岩の粒径を調整して中和を行うことにより、小粒径側にヘマタイトが濃縮した小粒径部と、大粒径側に前記ヘマタイト以外のニッケル酸化鉱の構成物質が濃縮した大粒径部とからなるスラリーを得て、
前記中和工程に続いて、前記スラリーを洗浄しながら固液分離して得た固体成分を、分級してヘマタイトケーキを得る湿式分級工程と、
前記ヘマタイトケーキを焼成して焼成体を得る工程と
が設けられていることを特徴とするニッケル酸化鉱の湿式精錬方法。 - 前記焼成体を粉砕することを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱の湿式精錬方法。
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