JP5870384B2 - 直交加速同軸円筒飛行時間型質量分析器 - Google Patents

直交加速同軸円筒飛行時間型質量分析器 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2012年5月22日出願の米国特許仮出願第61/650,008号、2012年5月21日出願の欧州特許出願第12168612.5号、2012年5月18日出願の英国特許出願第1208847.2号、2012年9月14日出願の英国特許出願第1216489.3号、2012年9月14日出願の英国特許出願第1216488.5号および2012年9月14日出願の英国特許出願第1216486.9号の優先権および利益を主張する。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、飛行時間型質量分析器、質量分析計、イオンの質量分析法、および質量分析法に関する。
二段階抽出飛行時間型質量分析計を特徴付ける基本方程式について述べている文献のW.C.Wiley,I.H.McLaren,「Time−of−Flight Mass Spectrometer with Improved Resolution」、Review of Scientific Instruments 26,1150(1955)、を参照する。この原理は、連続軸方向抽出飛行時間型質量分析器,直交加速飛行時間型質量分析器およびタイムラグフォーカシング装置にも等しく当てはまる。
図1は、空間(spatial)(または空間(space))収束の原理を示し、この場合、初期空間分布を備えたイオンが検出器面に合焦し、それにより装置の解像度が改善される。
イオン速度と位置分布は、図2に示されるように、装置を通過する際のイオンビームの状態を記述する位相空間楕円として表現される。位相空間およびリュービルの定理の性質に関する知識があれば、本発明の好ましい実施形態の態様の理解に役立つ。
イオン光学における基本定理は、リュービルの定理であり、この定理は、「移動粒子雲に対する位相空間中の粒子密度ρ(x,p,y,p,z,p)は、不変である」ことを述べている。ここで、p,p,pは、デカルト座標の3方向の運動量である。「Geometrical Charged−Particle Optics」,Harald H.Rose,Springer Series in Optical Sciences 142、を参照されたい。
リュービルの定理によると、位相空間中の特定の体積を満たす時間tの粒子雲は、後の時間tにその形状を変化させることができるが、その体積の大きさを変えることはできない。電磁場を使ってこの体積を減らそうとする試みは失敗するが、もちろん、後に続く操作の前に、ビームの絞りを開く(焦点の合わないイオンを拒絶する)ことにより、位相空間の所望の領域を標本抽出することは可能である。一次近似により、リュービルの定理は、3つの独立した空間座標x、yおよびzに分割される。その結果、イオンビームは、イオン光学系を通ってイオンビームが進むに伴い変化する形状を、それ自体の全体領域ではなく、3つの独立した位相空間領域に換算して記述できる。この概念を図3に示す。この図は、N個の光学要素を含み、それぞれの要素が面積を変えずに位相空間の形状を変化させる光学系を示す。
緩衝ガスを含む高周波イオンガイドから出でくるイオン分布は、通常、楕円形状の位相空間分布で記述できる。このようなRFガイドは、飛行時間型質量分析器質量分析計に対するエレクトロスプレーイオン化などの連続イオンビーム源を接続するためによく使われる。従って、空間収束の概念を利用して位相空間楕円で表される大きな空間分布を有する最初のイオンビームを検出器面で小さい分布を有する空間分布に変換することが飛行時間型質量分析器設計者の目標である。長い飛行時間に加えて検出器面での小さい空間分布が、高解像度飛行時間型質量分析器分光計を生み出す。いずれの個別の質量対電荷比に対しても検出器面が等飛行時間であることが望ましい。通常、飛行時間型質量分析器装置は、飛行時間の二乗に比例して質量対電荷比スペクトルに分光する(すなわち、質量対電荷比の平方根が時間に比例する)。しかし、どの一般的静電光学要素系によって加速されても、全てのイオン(質量対電荷比に関係なく)が同じ軌道を取ることになるのは事実である。そのため、実質的に静電素子から構成されると見なせる直交加速飛行時間型質量分析器であれば、異なる質量対電荷比のイオンを、分光計中の同じ位置で、異なる時間に空間収束させるであろう。
等飛行時間面は、固有の質量対電荷比のイオンが、初期の位相空間分布とは実質的に無関係な同じ飛行時間を有する分光計の面として定義できる。また、等飛行時間面は、最高解像度を得るためにイオン検出器が配置される面である。プッシャーの有限の立ち上がり時間、RF装置から出てくるイオンの質量依存位相空間特性、およびパルス状イオンパケットとパルス電場の相対的タイミングなどの、静電系に無関係な理想的質量対電荷比から飛行時間型質量分析器を逸脱させると考えられる副次的効果が存在する。これらの効果および理想的静電系からのずれは、本発明に関連する場面で説明および考察する。
楕円の傾斜角度は、位置/速度分布の相関を表す。大きな空間的広がりおよび緩やかな傾斜を有する楕円は、直交飛行時間型質量分析器の輸送光学系を通ってプッシャー(加速)領域へと加速されてRFガイドから出てくるイオンビームにより生成され得る。楕円が垂直配向(背が高くて幅が狭い)の場合、イオン検出器を配置可能な場所はどこでも等飛行時間面である。イオンビームが装置を通過する際に分光計中の異なる位置にある楕円の形状は、後で記載される本発明を説明する図で提示される。楕円の速度または位置軸に目盛りは付与されておらず、それらは本発明の操作の基礎となる原理を理解するための例示の目的のみで示されていることを理解されたい。
図1に示す単純な二段階ワイリー・マクラーレン飛行時間型質量分析器は、四つの主面P1、P2、P3、P4が境界となる3つの別々の領域を画定することにより作られる。異なる電界領域は、通常、それぞれ静的でもパルス状でもよい印加電位(電圧)を有する一連のグリッドワイヤまたはメッシュ(以降はグリッドとする)を主面の位置に配置することにより形成される。加速および減速領域は、イオンが摩擦なしにそれに沿って転がると考えることができる傾斜面または曲線により可視化される。イオンが静電場中でそれらの電荷に比例した力を受け、従って、類似の電荷であるが異なる質量のイオンは、それらの質量に逆比例する速度で加速される(一方、重力下では、力は質量に比例し、従って、全ての粒子は、質量に関係なく同じ速度で加速される)という点で、この重力との類似性は、完全には正しくないことに留意されたい。
イオンビームは、グリッドを通過する毎に、グリッドワイヤとの衝突により失われ、また、境界に極めて隣接して存在する電場の2つの隣接する領域の間での異なる電界強度に起因する変動により偏向される(散乱として知られる)。従って、ビームが分光計を通過する際に、これらの損失により強度が低下し、また、初期速度の広がりによりイオンビームの脱焦(発散)が起こる。
P1の位置のプッシャープレートにパルス電圧Vpを印加し、直交加速場を形成し、一部のビームを飛行時間型質量分析器中に引き出す。飛行時間型質量分析器の開始時刻として機能するのは、このパルス電圧の印加のタイミングである。全ての対象イオン(異なる質量対電荷比の)は、プッシャーが再度起動される前に、検出器に向かって飛行できる。入射イオンビームをサンプリングするデューティサイクルは、通常、ひずみのないビームが取り出されるようにするために約20%であり、この数値は、質量の平方根に逆比例して低下する。得られるイオンの飛行経路が2つの速度間のベクトル、すなわち、入射ビームの速度および分光計の場により与えられる速度のベクトルで形成される飛行管に対する角度となるようにイオンの初期の(プッシュ前)速度を保持すると有利である。この得られるベクトル軌道により、イオン検出器のプッシャー領域に対するオフセットの配置が可能となり、これは、構築を簡単にするために有利である。この点は、後でさらに詳細に説明される。1メートルまでの飛行長のこのタイプの構造を採用した最先端の装置で約5000の解像度が達成できる。
より高い解像度は、リフレクトロンを使ってイオンビームそれ自体に重なるように反射することにより直交加速飛行時間型質量分析計で実現できる。このような装置は、コンパクトな装置構造を維持する一方でフィールドフリー領域(「FFR」)で等飛行時間面を与えるように調節できる。慎重な電圧の調節により、このプロセスを複数回繰り返して、等飛行時間面をフィールドフリー領域中に存在させながら装置の有効飛行長(および、その結果のイオンの飛行時間)を増やすことができる。
図4は、イオンが、面P1、P2、P3により画定される二段階加速領域で加速され、フィールドフリー領域(P3〜P4)に入る配置を示す。その後、フィールドフリー領域を通って面P3、P7により画定される小さいミラーに戻る前に、イオンは、面P4、P5、P6により画定されるリフレクトロンを通過する。イオンビームは、主リフレクトロンに戻され、その後、フィールドフリー領域を通って送り返される。フィールドフリー領域端部の等飛行時間面、すなわち、P3の位置に検出器が配置されている。
ベクトル軌道がビームに運動の初期方向成分を保持させることにより、イオン検出器をプッシャー領域に隣接して配置することが可能となる。このような配置を使って50,000〜100,000もの高い解像度を達成可能であるが、この性能は、感度(イオン伝送率)の犠牲の下に成り立っている。この場合では、イオンビームは、グリッドを12回通過し、通過毎にビームが減衰する。
この損失に加えて、イオンビームは、初期速度の広がりによる発散、およびグリッドに近接する電場による散乱があり、従って、その断面積は、検出器面で劇的に増加してしまう。装置の有限デューティサイクルと併せてこれらの因子全てが因子として機能する場合、伝送率は、初期ビーム強度の1%の低さになる可能性があり、従って、装置の感度を低下させる。
国際公開第WO2005/040785号(Farnsworth)は、図5に示す第3のセクター電極155に印加されたパルス電場を使ってイオンが分析器に導入される改良スパイラトロン(Spiratron)配置を開示している。イオンパケットは、図6に示すように角度θで一対の同軸円筒に送られ、ここで、ガイドの外側に配置されている(イオン検出器70が飛行管の外側に配置されて示されている図3の装置で明らかなように)イオン検出器へ放出されるまでらせん状軌道175を移動する。イオンは、第3の電極にパルス電圧が印加されているために安定な軌道が得られる。イオンが検出器末端の飛行管中にある場合に、装置からイオンを取得する方法が開示されていない。
9ページ、9〜10行は、500の最大到達可能解像度が得られる1000のT/ΔT(1μs入射パルスで1kHz繰り返し率)を意味することに留意されたい。低解像度は、開示配置が一次エネルギー(または空間)収束特性のみを半径方向イオンパケットに与えるという事実による。
9ページ、11〜18行は、上流トラップ90が装備されない連続エレクトロスプレーイオン源を使った配置を意図していることに留意されたい。この配置では、イオンは、θ=0°で入射する可能性があり、軸方向ドリフト速度をイオンに与えるパルス電圧の印加が遅れることが示唆される。また、この配置は、15ページ、5〜15行にも記載されている。
イオンビームが国際公開第WO2005/040785号で開示の配置中にθ=0°で入射する場合、その特許で開示の改善スパイラトロン配置においては、イオンは、軸方向電場が印加される前に、完全回転を行わないように制限される必要があり得ることは、当業者には理解されよう。重要なのは、国際公開第WO2005/040785号で開示の環状領域中へ入射するイオンは、それらの質量対電荷比に応じた異なる回転位置を仮定しているということである。従って、相対的低い質量対電荷比を有するイオンは、軸方向電場が印加される時間までに、ほぼ1回転する恐れがあるが、一方、比較的高質量対電荷比を有するイオンは、軸方向電場が印加される時間までに1回転の一部のみの回転を行うであろう。
従って、イオン入射と直交加速との間の遅延を許容すると、質量依存開始位置を有するイオンを生じることになり、その結果、質量分析器の解像度は、さらに低下するであろう。
国際公開第WO2005/040785号の図3を参照すると、環状領域とイオン検出器70との間にポートが設けられ、イオン検出器で検出されるためにはイオンがそこを通過する必要があることは明らかである。イオンは、軸方向電場が印加される時間には質量依存である出発位置を有すると思われるから、異なる質量を有するイオンは、環状領域中の異なるらせん状経路を取るであろう。結果として、一部のイオンは、引き出しポートを見失い、従って、イオン検出器により検出されない恐れがあるらせん状軌道を取ることになる。
従って、国際公開第WO2005/040785号で開示の改良スパイラトロン配置は、厳密な質量範囲の制限も要するであろう。
英国特許第GB−2390935号(Verentchikov)は、図14に示すような2つの飛行時間型質量分析計を含む配置を開示している。親イオンは、第1の遅い(かつ長時間)飛行時間型質量分析計(TOF1)で分離される。この分析計は、低イオンエネルギー(1〜100eV)で動作し、フラグメントイオンは、その後、第2の早くて短い時間の飛行時間型質量分析計(TOF2)で、はるかに高いkeVエネルギーで質量分析される。イオンは、らせん状経路を取るように、2つの電極の軸に対する傾斜角度で第1の飛行時間型質量分析計TOF1に入射する。イオンは、環状イオンガイド領域中へ直交加速されないことを当業者なら分かるであろう。また、図14で開示の配置の解像度は非常に低い(Rは約75)ことも明らかである。
コンパクトな大きさの高解像度、高伝送性直交加速飛行時間型質量分析器を提供することが望まれる。
本発明の態様では、下記を含む飛行時間型質量分析器が提供される:
長手方向軸線を有し、第1の環状イオンガイド部および第2の環状イオンガイド部を含む環状イオンガイド、
イオンが第1の環状イオンガイド部に導入されて、第1の環状イオンガイド部内で長手方向軸線の周りに実質的に安定な円軌道を形成するように配置され、適合された第1の装置、
環状イオンガイド内に配置されたイオン検出器、
第1の環状イオンガイド部から第2の環状イオンガイド部に向かう第1の軸方向でイオンを直交加速するように配置され、適合された第2の装置、および
少なくとも第2の環状イオンガイド部の一部に沿って軸方向DC電位を維持するように配置および適合され、それにより、イオンが、第1の軸方向とは実質的に逆の第2の軸方向に反射され、イオンがイオン検出器により検出される前に、第2の環状イオンガイド部を軸方向に複数回通過する第3の装置。
国際公開第WO2005/040785号(Farnsworth)で開示の配置は、イオンがらせん状軌道を取る改良スパイラトロン配置を含む。
国際公開第WO2005/040785号は、イオンに、直交加速される前に環状イオンガイド部内で長手方向軸線の回りに実質的に安定な円軌道を形成させることを開示していない。
国際公開第WO2005/040785号は、環状イオンガイド内に配置されるイオン検出器を開示していない。国際公開第WO2005/040785号の図3を参照すると、イオン検出器が環状イオンガイド内に配置されず、さらに、イオン検出器70のイオン検出面が、長手方向軸線に対して実質的に垂直ではなく、長手方向軸線に対し平行な面内に配置されていることが明らかである。
国際公開第WO2005/040785号は、少なくとも環状イオンガイド部の一部に沿って軸方向DC電位を維持し、それにより、第1の軸方向とは実質的に逆の第2の軸方向にイオンを反射し、イオンが環状イオンガイドを軸方向に複数回通過することを開示していない。
従って、国際公開第WO2005/040785号で開示の改良スパイラトロン配置は、本発明とは基本的に異なる方式で動作することが理解されよう。
国際公開第WO2005/040785号で開示の配置では、イオンは、飛行管中で加速され、らせん方向への飛行時間分散を受け、すなわち、飛行時間分散が長手方向および回転方向の両方向になる。
対照的に、本発明では、飛行時間分散は、長手方向にのみ発生する。
直交加速されるイオンは、実質的に長手方向軸線に垂直の等飛行時間面に空間的に収束するように配置される。
これは、国際公開第WO2005/040785号で開示の等飛行時間面が長手方向軸線に対し平行な改良スパイラトロン配置とは対照的である。
イオン検出器のイオン検出面は、等飛行時間面に実質的に配置されるのが好ましい。
第2の装置は、軸方向パルス電場を印加されるように配置され、適合されるのが好ましい。
第2の装置は、軸方向パルス電場と実質的に同じ時間に半径方向パルス電場が印加されるように配置され、適合されるのが好ましい。第2の装置は、軸方向パルス電場と実質的に同じ半径方向パルス電場が印加され、それにより、イオンが長手方向軸線に垂直な面内に非円形または楕円形の軌道を取るように配置され、適合されるのが好ましい。
国際公開第WO2005/040785号は、環状イオンガイド領域長をのぞき込んだ場合に、イオンが円形経路ではなく楕円形経路を取るように軸方向パルス電場の印加と同時に半径方向パルス電場を印加することを教示または示唆していない。
第2の装置は、イオンが第2の環状イオンガイド部で直交加速され、それにより、質量対電荷比に応じて時間的に分離するように配置され、適合されるのが好ましい。
第2の装置は、イオンを直交加速し、それにより、飛行時間分散が長手方向のみで発生するように配置され、適合される。
長手方向のみの飛行時間分散は、飛行時間分散がらせん方向である国際公開第WO2005/040785号で開示の配置などの既知のスパイラトロン配置に対する本発明の大きな特異点である。
さらに、本発明では、イオン検出器の検出面は、長手方向軸線に対し直交するか、または垂直である面内に配置される。これは、本発明によるイオンの等飛行時間面が、国際公開第WO2005/040785号で開示の配置中のイオンの等飛行時間面に対し実質的に垂直であるという理由による。
イオン検出器は、環状、部分的環状または分割型環状イオン検出面を有するのが好ましい。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。
好ましい実施形態では、イオン検出器は、(i)環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部の実質的に中心に、(ii)環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部の実質的に端部に、(iii)フィールドフリー領域の端部に、(iv)第1の環状イオンガイド部に隣接して、または(v)第1の環状イオンガイド部の遠位に、配置される。
環状イオンガイドは、内側円筒形電極配置を含むのが好ましい。
内側円筒形電極配置は、好ましくは、軸方向分割型であり、複数の第1の電極を含む。
環状イオンガイドは、外側円筒形電極配置を含むのが好ましい。
外側円筒形電極配置は、好ましくは、軸方向分割型であり、複数の第2の電極を含む。
好ましい実施形態では、環状飛行時間イオンガイド領域は、内側円筒形電極配置と外側円筒形電極配置との間に形成される。
飛行時間型質量分析器は、内側円筒形電極配置および/または外側円筒形電極配置にDC電位を印加して、イオンを環状イオンガイド内で半径方向に制限するように作用する半径方向DC電位を維持するように配置され、適合された装置をさらに含むのが好ましい。
飛行時間型質量分析器は、
(i)1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に1種または複数種の第1の電圧を印加し、それにより、第1の環状イオンガイド部内に位置するイオンが内側円筒形電極配置の周りの軌道を前進または移動し、その後、
(ii)1種または複数種の第2の電圧を1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に印加し、それにより、イオンが第2の環状イオンガイド部に向け直交加速され、イオンが渦巻き状経路に沿って第2の環状イオンガイド部を第1の軸方向へ通過し、
(iii)任意選択で、1種または複数種の第3の電圧を1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に印加し、それにより、イオンが第1の軸方向とは逆の第2の軸方向に反射して戻され、
(iv)環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部を通過するイオンの飛行時間を測定する、
ように配置され、適合された制御システムをさらに含むのが好ましい。
第2の装置は、第1の環状イオンガイド部両端に電位差を印加し、それにより、イオンが第1の環状イオンガイド部から出て直交加速され、第2の環状イオンガイド部に入るように配置され、適合されるのが好ましい。
イオンは、第2の環状イオンガイド部を通過する際に実質的に渦巻き状経路を取るのが好ましい。渦巻き状経路は、環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部の少なくとも一部に沿って非らせん状であり、それにより、渦巻き状経路のねじれに対する湾曲の比率が変化するか、または一定ではないのが好ましい。
これは、イオン経路のねじれに対する湾曲の比率が一定のまま維持されるようにイオンがらせん状経路を取る国際公開第WO2005/040785号で開示の改良スパイラトロン配置とは対照的である。
飛行時間型質量分析器は、環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部の一部に沿って1種または複数種の半放物線型またはその他のDC電位を維持してイオンを反射するように配置され、適合された装置をさらに含むのが好ましい。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。
飛行時間型質量分析器は、環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部の一部に沿って1種または複数種の放物線型DC電位を維持し、それにより、イオンが単振動を受けるように配置され、適合された装置をさらに含むのが好ましい。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。
環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部は、逆軸方向にイオンを反射するための1個または複数個のリフレクトロンを含むのが好ましい。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。
第2の装置は、好ましくは、時間Tでイオンを直交加速するように配置され、イオンは、その後に続く時間Tにイオン検出器により検出され、100未満、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲の質量対電荷比を有するイオンが、環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部を通って、(i)50μs未満、(ii)50〜100μs、(iii)100〜150μs、(iv)150〜200μs、(v)200〜250μs、(vi)250〜300μs、(vii)300〜350μs、(viii)350〜400μs、(ix)400〜450μs、(x)450〜500μs、および(xi)500μs超、からなる群より選択される合計飛行時間T−Tを有するように配置される。
異なる質量対電荷比を有するイオンは、環状イオンガイドまたは第2の環状イオンガイド部を通って実質的に異なる渦巻き状経路を取る。
これは、イオンがらせん方向に飛行時間分散を受けるために、異なる質量対電荷比を有するイオンが実質的に同じらせん状経路を取る、例えば、国際公開第WO2005/040785号で開示されたスパイラトロン配置とは対照的である。
好ましい実施形態では、使用時に、少なくとも、第1の電場セクターおよび第2の電場セクターが形成されるように、第1の環状イオンガイド部中の電極は分割型である。
飛行時間型質量分析器は、第1の電場セクター中の半径方向電場を実質的にゼロに維持している間に、第1の時間T1に、第1の電場セクターに向け実質的に接線方向にイオンが入射し、それにより、イオンが第1の環状イオンガイド部に入射している間、実質的にフィールドフリー領域中にあるように配置され、適合された制御システムをさらに含むのが好ましい。
制御システムは、第2の電場セクター中で半径方向電場を維持し、それにより、第2の後の時間T2に、イオンが第1の電場セクターから第2の電場セクターに入り、半径方向に閉じ込められるようにさらに配置され、適合されるのが好ましい。
制御システムは、T3>T1である第3の時間T3で、第1の電場セクター内に半径方向電場の維持を可能とし、それにより、第2の電場セクターから第1の電場セクターに入る際に、イオンが半径方向に閉じ込められ続け、第1の環状イオンガイド部内で実質的に安定な円軌道を形成するようにさらに配置され、適合されるのが好ましい。
第2の装置は、T4>T3である第4の時間T4で、第1の環状イオンガイド部から第2の環状イオンガイド部へ向けてイオンを直交加速するように配置され、適合されるのが好ましい。
飛行時間型質量分析器は、第1の環状イオンガイド部から第2の環状イオンガイド部に向けて直交加速されたイオンの飛行時間を測定するように配置され、適合された制御システムを含む。
イオン検出器は、イオン検出器のイオン検出面に衝撃を与えるか、または衝突するイオンを検出するように配置され、適合されるのが好ましい。
本発明の一態様では、上述の飛行時間型質量分析器を含む質量分析計が提供される。
本発明の一態様では、
長手方向軸線を有し、第1の環状イオンガイド部および第2の環状イオンガイド部を含む環状イオンガイドを用意すること、
イオンを前記第1の環状イオンガイド部に導入し、それにより、前記イオンが、前記第1の環状イオンガイド部内で、前記長手方向軸線の回りに実質的に安定な円軌道を形成すること、
前記環状イオンガイド内に配置されたイオン検出器を用意すること、
前記第1の環状イオンガイド部から前記第2の環状イオンガイド部へ向けて第1の軸方向にイオンを直交加速すること、および
前記第2の環状イオンガイド部の少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持し、それにより、前記イオンが前記第1の軸方向とは実質的に逆の第2の軸方向に反射され、前記イオン検出器に検出される前に、前記イオンが前記第2の環状イオンガイド部を軸方向に複数回通過すること、
を含むイオンの質量分析方法が提供される。
本発明の一態様では、上述のイオンの質量分析方法を含む質量分析方法が提供される。
本発明の態様では、
長手方向軸線を有する環状イオンガイド、
前記環状イオンガイドの少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持するように配置され、適合された装置、および
前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが軸方向に複数回通過して時間的に分離する際に、飛行時間分散が長手方向のみに発生するように配置され、適合された装置、
を含む飛行時間型質量分析器が提供される。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。国際公開第WO2005/040785号で開示の配置では、飛行時間分散は、らせん方向内で発生し、すなわち、飛行時間分散は、長手方向のみに、またはその方向単独では発生しない。さらに、国際公開第WO2005/040785号は、環状イオンガイドの一部に沿って軸方向DC電位を維持すること、またはイオンを軸方向に複数回通過させることを開示していない。
本発明の一態様では、
長手方向軸線を有する環状イオンガイドを用意すること、
前記環状イオンガイドの少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持すること、および
前記 環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが軸方向に複数回通過して時間的に分離する際に、飛行時間分散が 長手方向のみに発生すること、
を含むイオンの質量分析方法が提供される。
このような配置は、国際公開第WO2005/040785号では開示されていない。国際公開第WO2005/040785号で開示の配置では、飛行時間分散は、らせん方向内で発生し、すなわち、飛行時間分散は、長手方向のみに、またはその方向単独では発生しない。さらに、国際公開第WO2005/040785号は、環状イオンガイドの一部に沿って軸方向DC電位を維持すること、またはイオンを軸方向に複数回通過させることを開示していない。
本発明の態様では、
長手方向軸線を有する環状イオンガイド、および
環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、前記イオンが軸方向に複数回通過する際に、イオンが長手方向軸線に実質的に垂直の等飛行時間面に空間的に収束するように配置され、適合された装置、
を含む飛行時間型質量分析器が提供される。
これは、等飛行時間面が長手方向軸線に平行で、イオンが軸方向への複数回通過をしない国際公開第WO2005/040785号で開示の配置とは対照的である。
本発明の一態様では、
長手方向軸線を有する環状イオンガイドを用意すること、および
前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、前記イオンを軸方向に複数回通過させ、前記長手方向軸線に実質的に垂直の等飛行時間面に前記イオンを空間的に収束させること、
を含むイオンの質量分析方法が提供される。
これは、等飛行時間面が長手方向軸線に平行で、イオンが軸方向への複数回通過をしない国際公開第WO2005/040785号で開示の配置とは対照的である。
本発明の態様では、
環状イオンガイド領域、および
イオンを環状イオンガイド領域中へ直交加速するように配置され、適合された第1の装置、
を含む飛行時間型質量分析器が提供される。
当業者なら、既知のスパイラトロン配置では、イオンがらせん状経路を取ることを理解するであろう。このような既知の配置とは対照的に、好ましい実施形態によるイオンの取る経路は、実質的にらせん状ではない。ねじれに対する湾曲の比率が一定の場合、およびその場合のみ、曲線は一般らせんと呼ばれることは理解されよう。好ましい実施形態では、イオンは、軸方向に沿って一様回転を行わない。
飛行時間型質量分析器は、第1の円筒型電極配置をさらに含むのが好ましい。
第1の円筒型電極配置は、好ましくは、軸方向分割型であり、複数の第1の電極を含む。
飛行時間型質量分析器は、第2の円筒型電極配置をさらに含むのが好ましい。
第2の円筒型電極配置は、好ましくは、軸方向分割型であり、複数の第2の電極を含む。
環状イオンガイド領域は、第1の円筒型電極配置と第2の円筒型電極配置との間に形成されるのが好ましい。
第1の操作モードでは、イオンは、環状イオンガイド領域の第1の部分内の軌道中を前進または移動するのが好ましい。
第1の装置は、環状イオンガイド領域の第1の部分の両端に電位差を印加し、それにより、イオンが直交加速されて環状イオンガイド領域の第1の部分から出て、環状イオンガイド領域の第2の部分中へ入るように配置され、適合されるのが好ましい。
イオンは、環状イオンガイド領域の第2の部分を通過する際に、1種または複数種の軌道を取る、および/またはらせん状経路を取るのが好ましい。
飛行時間型質量分析器は、イオン検出器をさらに含むのが好ましい。
イオン検出器は、環状イオンガイド領域内、またはそれに隣接して配置されるのが好ましい。
イオン検出器は、環状イオン検出面を有するのが好ましい。
イオン検出器は、環状イオンガイド領域の中心に配置されるのが好ましい。
イオン検出器は、フィールドフリー領域の端部、および/または、環状イオンガイド領域の端部に配置されるのが好ましい。
イオン検出器は、環状イオンガイド領域の第1の部分に隣接して配置されるが好ましい。
イオン検出器は、環状イオンガイド領域の第1の部分の遠位に配置されるが好ましい。
飛行時間型質量分析器は、環状イオンガイド領域の一部に沿って1種または複数種の半放物線型またはその他の電位を維持し、イオンを反射するように配置され、適合された装置をさらに含むのが好ましい。
飛行時間型質量分析器は、環状イオンガイド領域の一部に沿って1種または複数種の放物線型電位を維持し、イオンを単振動させるように配置され、適合された装置をさらに含むのが好ましい。
環状イオンガイド領域は、逆軸方向にイオンを反射するための1個または複数個のリフレクトロンを含むのが好ましい。
イオンは、好ましくは、時間T1に直交加速され、時間T2に検出され、さらに、100未満、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲の質量対電荷比を有するイオンが、環状イオンガイド領域を通って、(i)50μs未満、(ii)50〜100μs、(iii)100〜150μs、(iv)150〜200μs、(v)200〜250μs、(vi)250〜300μs、(vii)300〜350μs、(viii)350〜400μs、(ix)400〜450μs、(x)450〜500μs、および(xi)500μs超、からなる群より選択される合計飛行時間T2−T1を有するように設定される。
本発明の一態様では、上述の飛行時間型質量分析器を含む質量分析計が提供される。
本発明の一態様では、
イオンを環状イオンガイド領域中へ直交加速すること、および
イオンの飛行時間を測定すること、
を含むイオンの質量分析方法が提供される。
本発明の一態様では、上述のイオンの質量分析方法を含む質量分析方法が提供される。
本発明の態様では、
複数の第1の電極を含む内側円筒形電極配置、および複数の第2の電極を含む外側円筒形電極配置であって、外側円筒形配置は、内側円筒形電極の回りに配置され、使用時に、内側電極と外側電極との間で環状イオンガイド領域を形成する内側電極と外側電極配置、
環状イオンガイド領域内、またはその端部に配置されたイオン検出器、および
(i)1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に1種または複数種の第1の電圧を印加し、それにより、イオンが環状イオンガイド領域の第1の領域内に入って内側円筒形電極配置の周りの軌道を前進または移動し、その後、
(ii)1種または複数種の第2の電圧を1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に印加し、それにより、イオンが環状イオンガイド領域の第2の領域に向け直交加速され、イオンがらせんまたは渦巻き状経路に沿って環状イオンガイド領域の第2の領域を第1の軸方向へ通過し、
(iii)1種または複数種の第3の電圧を1個または複数個の第1の電極および/または第2の電極に印加し、それにより、イオンが第1の軸方向とは逆の第2の軸方向に反射して戻され、
(iv)環状イオンガイド領域を通過するイオンの飛行時間を測定する、
ように配置され、適合された制御システム、
を含む飛行時間型質量分析器が提供される。
本発明の一態様では、
イオンを環状イオンガイド領域の第1の領域に配置させることであって、内側円筒形電極配置の周りで軌道中をイオンが前進または移動するように配置させること、および、その後、
イオンを環状イオンガイド領域の第2の領域中へ直交加速し、それにより、イオンがらせん状または渦巻き状経路に沿って環状イオンガイド領域の第2の領域を第1の軸方向へ通過すること、
イオンを反射して、第1の軸方向とは逆の第2の軸方向に戻すこと、および
環状イオンガイド領域を通過するイオンの飛行時間を測定すること、
を含むイオンの質量分析方法が提供される。
既知の直交加速飛行時間型質量分析器の欠点は、それらが、長い飛行経路の装置中でのイオンビームの発散による伝送損失を受け、利用可能な検出器領域が過剰充填を生ずることである。発散は、初期イオンビーム条件から、またはグリッド境界での散乱から生ずる可能性がある。
本発明の好ましい実施形態は、イオンを飛行時間分散の方向に垂直の、安定な半径方向軌道内に閉じ込めることによりこの制限を克服しようとするものである。
本発明の好ましい実施形態は、従来の配置に対し多くの利点を有する。例えば、好ましい実施形態は、単回パス装置に比べて高い解像度を有する。
また、好ましい飛行時間型質量分析器の実施形態では、グリッドレス飛行経路反復要素の構築により多重パスモードで高伝送率を有する。
好ましい実施形態の別の利点は、(発散による)検出器の過充填を防止する安定な半径方向閉じ込めに起因する高伝送率を有することである。
また、好ましい実施形態は、装置に入射するイオンパケットの高デューティサイクルを有する。
好ましい実施形態の利点は、イオンを装置の光学軸と整合させるための外部イオン検出器を使わないことである。このような検出器は、収差と構造の複雑さを持ち込む。
好ましい実施形態のさらなる利点は、増加した入射エネルギーおよびその結果としての上流部品の表面帯電に対する耐性の増加である。
一実施形態では、質量分析計は、
(a)(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)ポーラスシリコンを用いたレーザー脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃イオン化(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離イオン化(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、(xx)グロー放電(「GD」)イオン源、(xxi)インパクターイオン源、(xxii)リアルタイム直接分析(DART」)イオン源、(xxiii)レーザースプレイイオン化(「LSI」)イオン源、(xxiv)ソニックスプレーイオン化(「SSI」)イオン源、(xxv)マトリックス支援インレットイオン化(Matrix Assisted Inlet Ionisation)(「MAII」)イオン源、および、(xxvi)溶媒支援インレットイオン化(Solvent Assisted Inlet Ionisation)(「SAII」)イオン源、からなる群より選択されるイオン源、および/または、
(b)1つまたは複数の連続またはパルス状イオン源、および/または、
(c)1つまたは複数のイオンガイド、および/または、
(d)1つまたは複数のイオン移動度分離装置、および/または1つまたは複数の電界非対称イオン移動度分光装置、および/または、
(e)1つまたは複数のイオントラップまたは1つまたは複数のイオントラッピング領域、および/または、
(f)(i)衝突誘導解離(「CID」)フラグメント化装置、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメント化装置、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメント化装置、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメント化装置、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメント化装置、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメント化装置、(vii)レーザー誘起解離フラグメント化装置、(viii)赤外線照射誘発解離装置、(ix)紫外線照射誘発解離装置、(x)ノズル−スキマーインターフェースフラグメント化装置、(xi)インソースフラグメント化装置、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメント化装置、(xiii)熱または温度源フラグメント化装置、(xiv)電場誘起フラグメント化装置、(xv)磁場誘起されたフラグメント化装置、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメント化装置、(xvii)イオン−イオン反応フラグメント化装置、(xviii)イオン−分子反応フラグメント化装置、(xix)イオン−原子反応フラグメント化装置、(xx)イオン−準安定性イオン反応フラグメント化装置、(xxi)イオン−準安定性分子反応フラグメント化装置、(xxii)イオン−準安定性原子反応フラグメント化装置、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−分子反応装置、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−準安定性イオン反応装置、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−準安定性分子反応装置、(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成させるためのイオン−準安定性原子反応装置、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメント化装置、からなる群より選択される1つまたは複数の衝突、フラグメント化または反応セル、および/または
(g)1つまたは複数のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器、および/または、
(i)1つまたは複数のイオン検出器、および/または、
(j)(i)四重極マスフィルタ、(ii)2次元又はリニア四重極イオントラップ、(iii)ポール(Paul)または3次元四重極イオントラップ、(iv)ペニング(Penning)イオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁気セクター型マスフィルタ、(vii)飛行時間型マスフィルタ、および、(viii)ウィーンフィルタ、からなる群より選択される1つまたは複数のマスフィルタ、および/または、
(k)イオンをパルス状にする装置またはイオンゲート、および/または、
(l)実質的に連続的なイオンビームをパルス状イオンビームに変換する装置、
をさらに含んでもよい:
質量分析計は、使用時にイオンを送出する開口部を各々有する複数の電極を備える積層リング型イオンガイドをさらに含み、電極間の間隔がイオン通路の長さ方向に沿って増大し、イオンガイドの上流部分に配置される電極の開口部が第1の直径を有し、イオンガイドの下流部分に配置される電極の開口部が第1の直径よりも小さい第2の直径を有し、使用時に、次に配列される電極に、逆相のAC又はRF電圧を印加してもよい。
以降で、付随する図を参照しながら種々の本発明の実施形態が例示のみの目的で説明される。
空間収束の原理を示す図である。 イオン速度と位相空間楕円を示す図である。 リュービルの定理を示す図である。 従来の飛行時間型質量分析器におけるW形状飛行時間領域を示す図である。 本発明の好ましい実施形態による飛行時間型質量分析器の端面図である。 安定な軌道中に閉じ込められたイオンを示す図である。 2つの円筒の間の分析器の内側に配置されたグリッドに印加されているパルス電圧を示す図である。 本発明の一実施形態を示す図である。 本発明の別の実施形態を示す図である。 イオンが初期に閉じ込められた実施形態の図である。 イオン経路の一方側に印加された放物線型電位を示す図である。 放物線型電位に沿って振動するイオンを示す図である。 イオン検出器に送られるイオンを示す図である。 初期に閉じ込められているイオンを示す図である。 直交加速されているイオンを示す図である。 フィールドフリー領域の出口に配置されたイオン検出器により検出されているイオンを示す図である。 イオンが放物線型電位を受ける実施形態を示す図である。 イオンが放物線型電位内で振動する実施形態を示す図である。 イオンがフィールドフリー領域の出口に配置されたイオン検出器に送られる実施形態を示す図である。 プッシュ前状態におけるビームストップによる位相空間の変化を示す図である。 パルス電圧を有するグリッドレス配置を含む本発明のさらなる実施形態を点線で示す図である。 モデル化された飛行時間型質量分析器の配置の模式図である。 モデル化された飛行時間型質量分析器の同軸配置の図である。 解析システムと本発明の一実施形態による飛行時間型質量分析器とのイオンピークの比較を示す図である。 解析システムと本発明の一実施形態による飛行時間型質量分析器による飛行時間ピークの比較を示す図である。 本発明の好ましい実施形態の断面、および環状飛行時間領域中に直行加速される前に最初に安定な軌道を取るイオンビームを示す図である。 PCB基板上の導電性リングの図である。 イオン検出器の表面全体にわたり半径方向電位の維持を可能とするマイクロチャネルプレートイオン検出器の図である。 軌道分類を示す図である。 有効電位を示す図である。 軌道の内側限界を示す図である。 τ=tの関数としての半径方向運動を示す図である。 一実施形態による軌道運動を示す図である。 内部電場の走査なしに環状イオンガイド領域中に入射したイオンの軌道を示す図である。 同様に内部電場の走査なしに、より高いエネルギーを有する環状イオンガイド領域中に入射したイオンの軌道を示す図である。 入射領域を第1と第2セクターに分割し、イオンが第1のセクターに入射する場合に、イオンが最初にフィールドフリー領域に入ることを確実にすることによる、イオンを環状イオンガイド領域に入射する好ましい方法を示す図である。 イオンが第1セクターから第2セクターへ移動し、第1セクターで半径方向電場が復帰された後で得られるイオン軌道を示す図である。 質量分析器に入射し、回転するに従い分離するイオンを示す図である。 しばらく経った後の、質量分析器に入射し、回転するに従い分離するイオンを示す図である。
以降で、図5を参照しながら、配置の一例が説明される。図5は、2個の同軸円筒型電極を含み、それらの間に環状イオンガイド空間を備える飛行時間型質量分析器の配置を示す。
好ましい実施形態では、イオンは、異なる電位VouterとVinnerで保持される2つの同軸円筒の間で半径方向に閉じ込められる。イオンビーム(分析される異なる質量対電荷比化学種を含むイオンパケットであるのが好ましい)は、外側円筒に侵入するために接近するように配置されるが、そこにはイオンビームが通過可能な開口またはすき間が設けられているのが好ましい。
ビームが装置への侵入を完了した際に内側と外側円筒間で電場を高めることにより、環状イオンガイド空間に入るイオンが安定な円軌道を形成するのが好ましい。円筒内に何ら電場がない場合には、イオンが軌道内に残るのが好ましいが、それらの初期の軸方向速度に応じて軸方向に分散することになる。この状態は、図6Aに示されている。
次に、図6Bを参照する。イオンが安定な円軌道中に閉じ込められると、グリッドにパルス電圧を印加される。このグリッドは、分析器内側の2つの円筒間に配置されるのが好ましい。空間収束の達成に必要な電場関数を生成するために、内側と外側円筒は、分割型であるのが好ましく、また、内側と外側の分割電極のそれぞれに異なる電圧が印加されるのが好ましい。
図6Aは、どのようにして内側と外側円筒型電極を実施形態に従って軸方向に分割できるかを示す。内側と外側円筒形電極は、好ましい実施形態に従って下記の実施形態の全てで軸方向に分割されるが、図示を簡略化する目的のみのために、その後の図の内のいくつかでは軸方向分割を省略している場合がある。
再度図6Bを参照する。イオンは、軸方向に直交加速され、また、中心電極セットの周りで回転し続けるのが好ましいが、これと同時に、飛行時間型質量分析器の軸に沿って実質的にらせん状に移動を開始するのが好ましい。
飛行時間分散は、軸方向のみに発生し、イオンは伝送損失を防ぐために半径方向に閉じ込められることを理解されたい。結果として、好ましい円筒装置中の2つの座標の挙動は切り離される。
図6Bは、4個の主面P1、P2、P3、P4を備えた単純な実施形態を示し、これは、図1のワイリー・マクラーレン飛行時間型質量分析器の主面に極めて類似している。空間収束は、同じ原理で達成される。しかし、図6Bの実施形態の配置では、安定な半径方向軌道により、グリッド境界でのビーム発散およびグリッド散乱に起因する損失が防止される。
好ましい実施形態の配置によるさらなる利点は、分光計に入射するイオンのパルス状パケットと結合された場合、全体のイオンパケットを安定な軌道中に捕捉して、利用できることである。分光計の取得周期(プッシュ)の間にイオンが上流RF装置中に貯蔵される場合は、好ましい配置により実質的に100%のデューティサイクルが実現できる可能性がある。
図6Aと6Bの実施形態では、イオンは、依然として、グリッド電極との衝突で失われる可能性があるが、好都合にも、好ましい実施形態は、従来の配置より実質的に高い伝送率を有する。
また、グリッド電極を使用せず、従って、従来の配置に比べてさらに都合がよい他の実施形態も検討されており、以下に記載される。
安定な半径方向軌道を取る直交加速電場またはパルス電場の印加が実現されることは、他の既知の形態の質量分析器に比べて重要な特徴であることに留意されたい。
特に、分光計の軸に対するビームの方向を変える偏向装置を使って、装置の外側からのイオンパケットが質量分析器中にパルス出力されるオービトラップ型(RTM)質量分析器が知られている。このような偏向装置は、飛行時間の収差および等飛行時間面の歪みを生じる。これらの収差は、前記装置の解像度を制限し、その結果、高解像度を達成するには、非常に長い飛行時間が必要となる。
好ましい実施形態の特有の利点は、安定軌道に沿った加速電場の印加の実現により、偏向装置の必要性をなくし、従来の直交加速飛行時間型質量分析器と類似のより速い時間尺度で解像度性能を実現可能とすることである。
ビーム発散損失により損失することなく長い飛行経路が可能であることは、本発明の実施形態による半径方向閉じ込め方式同軸円筒飛行時間型質量分析器の利点である。従って、好ましい実施形態は、多重パス飛行時間型質量分析器配置に理想的に適合する。
好ましい実施形態に従って、主面の損失を減らすために最小数のグリッド電極を含む種々の多重パス配置が検討されている。
図7Aと7Bは、実施形態による好ましい配置を示す。この実施形態では、飛行時間型質量分析器の長さに沿って放物線型電位が印加される前に、軸方向対称性装置の一方側にイオンが入射し、そこで安定化される。放物線型電位は、イオンを分光計の中心に向かって加速する作用をする。放物線型電位井戸の形状は、イオンが前後に振動して、単振動を可能とするのが好ましい。検出前のイオンの通過回数が多いほど、装置の解像度が高くなる。
好都合にも、上流のイオントラップにイオンを貯蔵できる。イオントラップから質量選択的に排出して、既知の質量範囲のイオンを分析器に順次放出し、その間に他のものを母集団中に貯蔵してもよい。このようにして、より狭い取得質量範囲部分から、全質量範囲を含む高解像度質量スペクトルをまとめることができる。
図7Bの位相空間の変化は、等飛行時間面が実質的に電位井戸の底の装置の中心で認められることを示す。実際には、そこから小さいずれがあり、これは初期の位相空間楕円の傾斜の関数であるが、通常想定される装置の配置では、この影響は小さい。
一実施形態では、イオン検出器は、軸方向電場が存在しない装置の領域に配置されても、または位置してもよい。
一実施形態では、イオン検出器は、次に考察される図8A〜8Dのように、装置の軸方向フィールドフリー領域中に配置されてもよい。図8A〜8Dは、ワイリー・マクラーレンおよび放物線型電位井戸部の組み合わせを実装した実施形態を示す。図8A〜8Dのそれぞれは、装置の取得周期の異なる時間を示す。
イオンは、好ましくは、本発明の実施形態による、2電場ワイリー・マクラーレン型イオン源を組み込んだ同軸配置飛行時間型質量分析器から抽出される。イオンは、フィールドフリー領域中へ直交加速され、フィールドフリー領域に沿って飛行する。その後、図8A〜8Bに示すように、イオンは放物線型電位勾配(井戸の半分)に入る。
図8Bに示すように、イオンが放物線部内にある間、好ましくは、図8Cに示すように、井戸の残りの半分のスイッチを入れ、および、好ましくは、イオンを設計回数振動させて、装置の有効飛行経路を増やし、その後、図8Dに示すように、イオン検出器に向けて放出する。
図8Dから、等飛行時間面は、もはや電位井戸の基底にはないことが分かるであろう。これは、イオンビームを等飛行時間空間収束させるのに必要なフィールドフリー領域の大きさ(この場合、正確にP3と検出器との間の距離である)が原因である。放物線型電位井戸の右側半分への外向き飛行では、フィールドフリー領域の半分のみが利用されている。この半分のスイッチを切断すると、対象イオンは、残りの必要なフィールドフリー領域を飛行し、等飛行時間面に空間的に収束する。放物線型電位井戸と組み合わせてフィールドフリー領域の一部をこのような多重パス装置を可能とする単振動を起こさせることができるのは、配置の組み合わせによるものである。このようなフィールドフリー領域がなければ、電場の歪みなしに検出器を配置できる場所はどこにもないであろう。
より高度の空間収束が必要な場合は、放物線型パルス電位井戸を、リフレクトロン飛行時間型質量分析器のフィールドフリー領域に含めることができる。以降で、図9A〜9Fを参照しながら、このさらなる実施形態に関し記載する。
この実施形態による操作の原理は、図8A〜8Dを参照して上記で記載の内容と類似であるが、図9A〜9Cに示すように単回パスモードも含まれる。このモードは、放物線型電位井戸のパルス出力を含まない。このような操作モードは、低解像度でのより高速の取得が必要な場合に、特に有用である。より高度の空間収束は、電位井戸の最小パス数に対し実現される到達可能な最高の解像度を可能とする。
当業者なら分かるように、飛行時間型質量分析器の質量範囲は、調和ポテンシャル井戸により形成される往復回数と共に減少する。分析器をN回横切る場合、利用できる質量範囲は、下記式に従い、Nの値と共に減少する。

max/mmin=(N/(N−1)) (1)
これは欠点に見えるが、加速の前に分析器に入るビームの位相空間条件を最適化することにより、減少した質量範囲を生かすことができる。通常、イオンビームは、リングスタック、四重極またはより高次の多重極などのRF収束素子ならびにレンズおよびグリッドなどの静電素子の組み合わせにより条件付けられている。初期条件の最適化は、ビームを厳密に光学軸に閉じ込めることを含む。RFのみの四重極を使用することによりビームを光学軸に厳密に閉じ込めることがよく行われるが、この装置は、収束作用に強い質量依存性がある。これは、特定の質量のイオンは、光学軸に効率的に詰め込まれるが、一方で、より高い質量のイオンは、あまり強力でない状態で閉じ込められ、また、より小さい質量のイオンが、装置中で不安定であるか、またはRF場から過剰なエネルギーを取得する場合があることを意味する。
従って、往復回数により決まる限られた質量範囲を分析器へ伝送することにより、最良の装置解像度のための、狭くなった質量範囲内に含まれる質量に対する位相空間特性の可能な最良の最適化ができる。
国際公開第WO2011/154731号(Micromass)は、どのようにしてイオンビームを拡大して、従来の二段ワイリー・マクラーレン装置の位相空間条件を最適するかを記載している。国際公開第WO2011/154731号は、領域中の電場ではなくビームから認められる加速電位差で適正に拡大されたビーム尺度の往復所要時間収差をどのようにして制限するかを開示している。
本発明の好ましい実施形態は、分析器に入射したイオンパケットを、直交加速の前に中心電極の回りで所望の長さ回転させることにより、完全な無収差ビーム拡大を可能とする。分析器は、加速パルス印加の前には、軸方向に完全にフィールドフリーである。これは、イオンの初期速度に起因して、自由拡大を可能とする。プロセスは、基本的に、輸送光学系から飛行時間型質量分析器まで可変飛行距離を有するのと類似である。イオンが回転し、拡大するに伴い、位相空間楕円は、さらに伸長し、電位が印加されると、ビームはより多くの加速電位を獲得する。分析器が十分良好な空間収束特性を有する限り、ビームの拡大が可能になるに伴い、解像度が改善される。飛行時間型質量分析器の加速領域内に、窓板(または、ビームストップ)を慎重に配置することにより、ビームが軸方向拡大できる最大寸法を分析器の空間収束特性に制限することができる。ビームストップの位置にまで到達すると、イオンは、加速の前にさらに回転可能となり、位相空間は、回転時間が長くなるほど、速度方向が次第に短くなった切り詰められた楕円形状を取る。これは図10に示されている。
遅延時間を変えることにより、いくつかのイオンの損失を犠牲にしてより高い解像度を実現できる。これは、MALDI装置の遅延抽出の技術に類似であると考えることができ、それにより、分析器中に抽出する前に、イオンは、標的板を離れ、イオン源の初期速度と相関する位置を採用できる。イオン速度と位置の関係は、面により規定される脱離イベントのために極めて高い。本発明の実施形態による遅延抽出は、このような完全な位置/速度の相関を持たないが、それにもかかわらず、高度のイオン収束が達成でき、分析器に入射する対象の質量範囲に対しさらに最適化でき、すなわち、遅延時間は、抽出が生じる前に、入射範囲の中心質量がビームストップの位置に丁度到着する(すなわち、空間収束が解像度を低下させる前のレベルまで満たす)ことを可能とするように設定可能である。
米国特許出願第546495号(Cornish)は、ポストソース分解(「PSD」)により生成された広い運動エネルギー差異のイオンをMALDI飛行時間型質量分析器装置に導入するためのカーブドフィールドリフレクトロンの使用について開示している。本発明の実施形態では、このような配置を利用して、イオン検出器の適切な位置設定に必要な良好な空間収束およびフィールドフリー領域を有する第1の加速段階を与えることができる。
上述のように、グリッド電極が使われないさらなる本発明の実施形態が検討されている。安定な軌道により得られる半径方向の閉じ込めは、イオンが狭い範囲の半径方向位置を取ることを意味する。これは、完全なシステムをグリッドレスにし、それでも、これらの因子が持ち込む軸方向電場中の攪乱とイオン損失を避けながら、良好な空間収束を維持することが可能であることを意味する。本発明の半径方向安定性を備えていないグリッドレス飛行時間型質量分析器は、イオン光学要素の過剰充填により生じる電場の脱焦の影響を受け、最終的には装置の感度および解像度が制限される。
本発明の実施形態によるグリッドレス電極配置の一例は、図11に示されている。この場合は、パルス出力される電位が点線で示されているが、パルス出力および位相空間の変化の順序と性質は、図8A〜8Dに関して記載されたものと類似である。2個の同心分割型円筒の間の内部空間中で外側および内側アセンブリと接触する共通の機械部品(例えば、グリッド電極)を持つのではなく、別々に組み上げられた2個の同心分割型円筒から装置が構成でき、構築法が単純化される点で、グリッド電極の除去はさらなる利点を有する。
本発明の実施形態による同軸飛行時間型質量分析器のモデル化を行った。解析システムからの結果を、好ましい実施形態による同軸飛行時間型質量分析器配置に対するSIMION(RTM)シミュレーション結果と比較した。
図12は、モデル化に使った飛行時間型質量分析器配置を示し、平均イオン出発面は、長さL1=40mmのプッシャー領域の中心にある。V1の電圧は1000Vである。
加速領域L2を50mmに設定し、電圧V2を5000Vに設定した。種々の領域をグリッドで画定したが、放物線型領域はグリッドで画定しなかった。距離Lpを99mmとしてモデル化し、Vpを10,000Vに設定した。イオンが右手の放物線(RHP)内に入った後、左手の放物線(LHP)を上昇させる。所望の回数の通過が発生後、イオンがLHPにある間にRHPを下降させる。
パイソンモデルでは、全フィールドフリー距離は、解くことができる変数であり、一方、SIMION(RTM)シミュレーションでは、イオンは、固定検出器面距離で記録される。これらのイオンは、次にパイソンモデルにインポートされ、変数フィールドフリー領域に関し解くことができ、従って、両方の手法が明確にされる。
図13は、SIMION(RTM)モデル化で使われる同軸配置を示す。 内側円筒の半径Rinを10mmに設定し、外側円筒の内径Routを20mmに設定した。従って、Rgapは10mmである。
軸方向電極セグメントが1mm幅、それらの間のすき間が1mmとなるよう配置した。グリッド電極をセグメント間に配置されるとしてモデル化し、電圧を、最初の2つの領域を横切って線形電圧低下を与え、放物線型領域に二次電位を与えるように印加されるものとしてモデル化した。
電位差を、内側円筒と外側円筒との間に半径方向閉じ込めを与えるように印加した。示した結果では、+650Vを外側円筒に印加し、内側円筒は、グリッドと同じ電位である。
500の質量対電荷比を有する単電荷イオンに対し、500eVの半径方向KEおよび+650Vの外側円筒印加により、良好な半径方向閉じ込めが得られる。半径方向発散を与える放物線型領域内での閉じ込めを保持するためには、大きな半径方向KEが必要である。
最初のシステムに対して、初期のイオン条件は、1mmのポジションデルタ(position delta)(+/−0.5mm)、ガウシアン速度分布の広がり:5m/s標準偏差、初期イオンドリフトなし、放物線型領域を通る8パス(単一放物線を通過する往と復で1パスである)および放物線領域への10kV印加、とした。結果を図14に示す。
解析システムに対して、合計FFRは1203mm、70.712μsドリフト時間である。飛行時間型質量分析器に対しては、好ましい実施形態では、FFRは1619mm、79.617μsドリフト時間である。本発明の実施形態による飛行時間型質量分析器の解像度特性は、解析システムと同等である。
初期位相空間がより小さく設定され、放物線を通るより多くのパスが可能な場合、好ましい実施形態により解像度がさらに改善される。このシステムでは、初期イオン条件は、0.2mmのポジションデルタ(+/−0.1mm)、ガウス速度分布の広がり:1m/s標準偏差、初期イオンドリフトなし、放物線型領域を通る32パス(単一放物線を通過する往と復で1パスである)および放物線領域への10kVの印加とした。
解析システムは、1203mmのFFRであり、一方、好ましいシステムによるFFRは、1630mmであった。好ましい実施形態によるシステムの170,000解像度に比較して、解析システムの解像度は、189,000であった。
170,000の潜在的解像度を有する飛行時間型質量分析器は、現状技術の市販飛行時間型質量分析器と比較して、極めて大きな性能上の進歩を示すことは理解されよう。
解析およびSIMION(RTM)システムは、正確に一致しないが、好ましい実施形態は、解析システムの解像度の約90%を達成できることは明らかである。図15に示すように、解析システムによる飛行時間は、191μsであり、一方、好ましい実施形態による飛行時間は、200μsであった。両方の場合とも、飛行時間は、過度に長くはない(12GHz TDC検出器)。
多重パス同軸円筒TOFの特有の経路
分析器の通過回数が増えるに伴い質量範囲が縮小することは、既知の多重パス飛行時間型質量分析計の明らかな欠点である。これは、分析器をより少ない回数通過している可能性のある比較的遅い大きい質量のイオンから、それより速くて小さい質量のイオンを区別するのは不可能であるという理由が原因である。これに対処するため、一部の小さい分析質量範囲のみを分光計に入射させ、選択した分析器の往復回数での折り返し雑音発生を避けることができる。
本発明の好ましい実施形態の重要な特徴は、全ての質量の全てのイオンに対し特有の経路が与えられ、それにより、ただ1回の取得サイクルで全体の質量範囲をカバーできるということである。従って、本発明は、技術的に大きな改善を意味する。
イオンは、軸方向電場のない切替型セクターを使った分割型同軸円筒飛行時間質量分析計に入射するのが好ましい。イオンは、分光計の円筒型プッシャー領域中で円軌道を描くように入射するのが好ましい。イオンは、中心電極セットの周りを回転させられ、広がってプッシャーを満たし、その後、往復所要時間を最小化するために抽出電場が印加されると、イオンは大きな電圧低下にさらされる。
抽出電場を印加して、円回転イオンビームに軸方向および半径方向への推進力を与えるのが好ましい。軸方向電場は、好ましくは、二次電位関数を使って生成され、それにより、好ましくは、イオンは、z方向(飛行時間解析の方向)で実質的に単振動を示す。また、半径方向電場は、同時にパルス出力され、それにより、イオンはもはや完全な円軌道を描かず、分析器を横切る際に半径方向位置の変動を許容する偏心軌道を描き始める。イオンは、軸方向の振動とは無関係な振動数の半径方向振動を示すのが好ましい。他の実施形態では、イオンは、内向きまたは外向きにイオンを動かす不安定な軌道を描いてもよい。どちらの場合でも、好ましくは分析器の内側に配置され、z軸に垂直で、好ましくは等飛行時間面に相当する位置のイオン検出器に衝突する前に、イオンが分析器中のz方向の振動数を示す特有の経路を取るのが望ましい。
イオン検出器が環の形を取ることができ、それにより、φに関係なく、すなわち、φ方向に対しイオンの制約または制御をしなくても、全てのイオンを捕捉できるので、イオンがφ角座標内に自由に広がることができるのは本発明の利点である
装置の分割型構造および印加軸方向および半径方向電場成分の固有の分断により、軸方向電場強度に対する半径方向電場強度の固定比率に対する境界条件を満たすことのみが可能な一体構造の円筒型電極を使った場合は可能ではない半径方向および軸方向運動の独立の制御が可能となる。
本発明の特定の好ましい実施形態を図16Aに示す。イオンは、外側分割電極セットO1と内側分割入射電極セットI1との間に入射し、ここでイオンは、熱運動速度(イオン源からの)によって回転および軸方向に広がることができる。
次に、好ましくは、パルス出力半径方向および軸方向電場が印加され、イオンビームを分析器の中心部へ移動させ、そこで、イオンは、半径方向振幅δRおよび軸方向振幅δzで振動する。切替型セクター領域に入る際に収差を最小限にするために、分析器の入射部分が中心部分より狭い場合がある。実施形態では、半径方向電場のパルス成分より与えられた半径方向振動のためにイオンがより狭い入射領域に衝突するのを防ぐために、イオンが最初に装置本体に入る場合にさらに軸方向電場を上げるのが好ましい。これにより、飛行時間軌道での小さい質量依存性を生じるが、等飛行時間面P1の位置は変更されない。装置端部およびイオン検出器の位置のフリンジ電場を制御するために、所望の解析電場F1、F2およびイオン検出器Dの表面の境界条件に厳密に従ういくつかの光学部品を組み込むことができる。これらは、補正電圧が印加されるPCB基板上の導電性リングの形を取ってもよい(図16B)。マイクロチャネルプレート検出器の場合には、その抵抗に起因する性質を利用でき、また、図16Cに示すように、境界条件は、その内側と外側領域の間に半径方向電圧V1およびV2を印加することにより、満たすことができる。
好ましい実施形態では、所定の数の通過の間、半径方向振動の振動数、振幅および位相を制御することにより、イオンをイオン検出器に衝突させないのが好ましい。
運動方程式の誘導
運動方程式は、ラグランジュ法を使って誘導できる。ラグランジュ関数は、運動エネルギーと位置エネルギー(本件の内容では電位)との間の差である。時間非依存性で円筒対称電位を有する円筒座標系では、この関数は、

である。
オイラー・ラグランジュの方程式は、3つのq円筒座標r、φおよびzのそれぞれについて、

となる。着目している電位クラスに対して、

となる。
いくつかの一般的結論が導き出せる。一つ目は、電位が式、

により記述できる場合、z方向の運動は、(r、φ)面内の軌道運動からは切り離されていることである。
2つ目は、z軸の周りの運動に対し角運動量Lの保存を表す式6は、

で表すことができ、これは、φが定数(L=0で、この場合、純粋な半径方向運動に対応する)、または半径が定数(純粋な円運動)でなければ、rとφの運動は相互に関連していることを意味する。式7が満たされると、問題は、半径方向変数、および、それぞれ、


で表される変数に関する微分方程式に帰着され、また、計算の前提のr(t)、φ(t)は、式8を積分することにより得られる。
半径方向の運動方程式9は、

により再公式化できる。ここで、有効半径方向電位、

は、遠心力項を含む。
エネルギーErφ

は、保存される。
特に注目すべき初期条件は、電位降下ΔUによる加速によってイオンが初期速度を得る場合に発生する。簡単にするために、入射半径をRで、初期半径方向速度を、

と仮定する。この場合、角運動量が、

であると、

となり、これは、明確にqとmから独立している。電位、

が、初期条件(RおよびΔU、または、同じ意味であるが、軌道角運動量L)により顕著に変化することに留意されたい。しかし、固定U(r)に対し、

と対応付けすることにより、角運動量と有効電位が未変化のまま残る。r=Rが有効電位

の最小となるように量

を選択できる場合には、安定な円軌道を得ることができる。
軌道微分方程式
軌道r(φ)に対する微分方程式も同様に得ることができる。最初に、式8から、

を得ることができ、これから、

を導出でき、これにより、次式のように、φ導関数の方を選択して、時間導関数を削除可能となる。

この式では、式14を使い、新しい変数:u=l/rを導入している。

であることに留意すると、式11の運動方程式から軌道の微分方程式、

が得られる。
初期条件で、有効電位、

が、qとmから独立している場合は、u(φ)に、従って、r(φ)にも、同じことが言える。
時間依存性と軌道周期
イオンは、最初、円軌道として設定される。束縛軌道が種々の半径に達する時間には、着目すべきである。中心力に関しては、軌道は、その折り返し点のそれぞれの周りで対称であり、また、r=Rmaxからr=Rmin(または、逆)への最初の横断から当該の式の誘導が可能となる。さらに、t(r)は、この範囲では、単一値である。
エネルギー保存式13から出発する場合、出発点が円軌道で、t=0でパルス電場であるから、初期条件は、r(0)=Rmaxおよび

となる。
あるいは、r=Rminで出発することも可能であるが、結論は実質的に同じになるであろう。従って、下式、

で記述できる。この式を変形すると、

が得られる。ここで、関連する軌道の部分では、

であることがわかっているので、負の平方根が採用されている。これから、式、

に変形でき、これを積分して、

が得られる。ここで、便宜上、qとm、および独立関数τ(r):

を導入している。
半径方向軌道周期は、

で表されるRminに到達した後にRmaxに戻るのに要する時間である。
残念ながら、着目すべき電位クラスに対し、この積分を解析的に解くことはできない。しかし、直接的な方法で数値解を得ることはできる。
ラプラスの方程式の分離解法
固定半径rでの電場がz軸の二次関数であるという制約の下で、円筒対称の場合のラプラス方程式の一般解を見つけるのが望ましい。
円筒座標系のラプラスの方程式は、次式、

で表すことができる。
円筒対称の解が目的なので、角度依存項を削除でき、

が得られる(全てのφに対し)。
固定rに対し、zの二次関数の、

の形の解が望ましい。これを式29に代入して、

が得られる。
全てのzの値に対して、この式が成立するためには、第1項は0でなければならない。すなわち、

である。これは、直接に積分できて、

が得られる。ここで、rは、長さの次元を持つ任意定数で、陽関数表示対数の無次元引数を保持するために導入される。これを式31に代入して、

を得る。これをもう1回積分して、

を得て、再度積分して、

が得られる。
一般解は、

で表すことができる。
r、φ面内の運動から軸方向運動を分離するように、a=0に設定すると、電位は、

となり、

の位置に半径方向に固有のz非依存定留点を有し、これは、k>0で極大点になる。この電場は、接近して空隙を置いて配置された(z方向で)任意の外径Rと内径Rの一連の同軸環状電極対を使って近似できる。軸方向位置zで電極に印加されるべき電位は、

である。
k、b、bまたは、結果的にこの方法で生成できるRに対する数学的制約はない。電位の式37に対応する運動方程式は、



である。
軸方向運動
k=0の場合、式42は、z方向の単振動を表す。解はよく知られている。初期位置z(0)および初期z速度、

のイオンに対し、

であり、ここで、角振動数は、

である。周期は、

である。
円軌道
円軌道(軸方向運動を無視して)を得るためには、

である事が必要である。式43から、

であることが推論でき、これは、これらの軌道が、一定角速度を有することを意味し、これは、半径Rの円軌道に対し、式41から、

の角速度である。この式は、R<Rである限り有効である。
一般軌道
さらに一般的な軌道を取り扱うために、特定の電位の式38の代わりに有効半径方向電位の式15を検討することができる。

を選択することにより、半径方向折り返し点または定留点で軌道を開始できる。無関係の定数(または、zのみに依存性の)項を無視することにより、

が得られ、これを微分して、

が得られ、従って、Rでの定留点は、

または、これを変形して、

で表すことができる。これは、k、b、ΔU>0として、

である限り、2つの別々の解を持つ。有効電位の式46の漸近挙動は、

であり、小さいrに対しては、大きな正数になり、大きなrに対しては大きな負数になり、式49により定義される定留点RS−およびRS+は、それぞれ、極小および極大点となるはずである。従って、条件式50は、束縛軌道の存在にとって必要であり、また、r<RS+の条件も満たす必要がある。束縛軌道の近地点および遠地点の半径は、それぞれ、RminおよびRmaxで表すことができる。

である事は明らかである。
出発点r=Rを有する軌道の性質は、部分的には、有効電位の式47のr=Rでの傾斜の符号から判断できる。特に、傾斜(にRを乗じた値)が、

が正である場合には、出発点は、半径方向極大点であり、軌道は束縛されなければならない。この傾斜が負である場合は、出発点は、半径方向極小点であり、

および

である場合(そして、その場合のみ)、軌道は、束縛される。傾斜がゼロの場合、円軌道の条件(

の場合安定であり、

の場合不安定である)が満たされる。
図17は、固定kとΔUに対し、(R、b)面内の点で生成される軌道を示す。直線より上の領域、

では、電位は、2つの定留点(極小と極大点)を有する。曲線より上の領域、

では、軌道は束縛され、半径方向極大点から出発する。直線と曲線は、点、

で接するが、これは、有効電位の変曲点での不安定円軌道に対応する。R=RS−より下の領域中の束縛と非束縛軌道との間の境界は、このプロットでは示していない。図17は、k=8x10Vm−2およびΔU=1000Vの場合の軌道分類を示す。直線より上は、有効電位が極小点を有することを示す。曲線より上は、出発点が束縛軌道の半径方向極大点である。
k=8x10Vm−2、R=Rmax=0.075m、b=5000VおよびΔU=1000Vのパラメータを有する束縛軌道に対応する有効電位の例を図18に示す。電位の定留点は、RS−=0.048m、よびRS+=0.350m(目盛りの範囲外)の点である。Rmin=0.034m。r=R=Rmaxで出発して、イオンは、RminとRmaxとの間を振動する。
図19は、k=8x10Vm−2、ΔU=1000VおよびR=0.075mに対応する軌道に対し、bの関数としてのRminを示す。bが増加する(および、それと一緒に、電位の引力部分が増加する)に伴い、Rminは減少する。このプロットの右方向へ向かう軌道は、高度に偏心していることに留意されたい。
3次元軌道
質量分光計を通って軸方向に前後に振動し、所定の数(N−1回?0)の通過に対しイオン検出器に衝突せず、最後のN回目の通過時にイオン検出器に衝突する一組の軌道を見つけるのが望ましい。イオンが軸方向速度を持たないで、すなわち、

で出発するという仮定を加えて運動の式44の軸方向の方程式を検討する。簡略化するために、Z≡z(0)と記述することにする。
この軌道は、時間、

にイオン検出器を通過する。
単純化のために、イオン検出器Wの軸方向の広がりは、軌道の軸方向広がりより小さい、すなわち、W<<2Zと仮定する。イオン検出器を通過する際、イオンは、速度、

を有し、従って、イオン検出器を通過するのに要する時間は、約、

である。
t=tに対し、<N、およびr(t)<Hの場合に、

に対し、r(t)>Hを満たす半径方向軌道を見つけることが望ましい。半径方向軌道が臨界半径r=Hに到達する時間を知るのが望ましい。
最初にイオン検出器の有限の軸方向広がりを無視する場合、Rminは、半径方向周期の半分の奇数倍で達せられるが、z=0は、軸方向周期の4分の1の奇数倍で発生することに留意されたい。Rmin<Hを仮定すると、イオンは、同時に、r=Rminおよびz=0である場合に、イオン検出器に衝突することが保証される。これは、全ての対の正の整数j、nに対し、

が成立する場合に起こる。この式は、

とも記述できる。
式27から、条件は、従って、

であり、これは、qとmに当然無関係であり、τ(Rmin)は、式26の積分、

である。
図18は、k=8xl0Vm−2、R11=Rmax=0.075m、b=5000VおよびΔU=1000Vのパラメータによる有効電位を示す。この電位の定留点は、Rs−=0.048mおよびRs+=0.350m(目盛りの範囲外)の点である。Rmin=0.034m。
固定kとΔUに対し、検出器がN−1回検出器に衝突しない条件を満たすために、(b、R)空間中で特定の点であって、その近くでn=Nに対しては式60が成立するが、1<n<Nに対してはその条件が成立する点から離れている点を選択しなければならない。
図19と20は、N=7、jmax=19に対応し、入射半径r=0.065mを有する軌道を示す。この軌道は、軸方向6回の通過時は検出器に衝突せず、最後の7回目の通過時に検出器に衝突する。図19は、k=8x10Vm−2、ΔU=1000VおよびR=0.075mの軌道の内側限界を示す。
図20は、k=8x10Vm−2、ΔU=1000V、b=3700VおよびR=0.065mの場合の、

の関数としての半径方向運動を示す。r=0.039mの水平線は、配置可能な検出器面を表す。イオンは、イオン検出器軸方向に6回通過し、18.5半径方向サイクル後の最後の7回目に検出器に衝突する。垂直線は、z=0の面を通過するτ値に対応する。幅W=0.01mの検出器を通過するΔτは、このプロットのスケールでは見ることができない。
図21は、k=8xl0Vm−2、ΔU=1000V、b=3700VおよびR=0.065mの場合の軌道運動を示す。
代替実施形態では、イオン軌道を、有効半径方向電位の変曲点近傍から出発して、環状検出器まで渦巻き状に外向きに進行させることができる。
別の実施形態では、半径方向に束縛された軌道が、Rmaxではなく、Rmin で出発してもよい。この場合は、入射半径は、外側検出器半径よりも小さいであろう。
同軸円筒TOFへのイオン入射方法
図5を参照しながら、安定な軌道を実現する分光計へのイオン入射するためのあまり好ましくない方法が上記で示され、説明されてきた。このあまり好ましくない実施形態では、安定な軌道は、イオンが装置に入る際に、外側電極に対して内側電極の電圧を下げることにより実現できる。この手法には、装置中へパルス出力される限定された時間分布のイオンパケットが必要である。この方式で入射するイオンは、わずかに質量依存性の半径方向位置の範囲を取る。可能な最高解像度を得るために、飛行時間型質量分析器を横切る際に、全てのイオンが全体として同じ軸方向電場を受ける必要があるので、これは理想的とは言えない。
内部電場を操作することなしに、小さい開口を経由して一対の同軸円筒中にイオンを単純に入射する場合には、安定な軌道は実現されず、入射したイオンは、常に、最終的に同心円筒間の空間の外側に行き着く軌道を描くことになる。このような軌道の2つの例を図22Aと22Bに示す。
図22Aでは、イオンがこのような位置および両方の円筒に対し完全に接線方向の速度成分で瞬時に生成されるとすると、イオンは、内側と外側円筒との間の途中の円形軌道を描くようなエネルギーで入射する。このイオンは完全に不安定で、約4分の1回転しただけですぐに内側円筒に衝突することが分かる。
図22Bでは、イオンは高エネルギーで入射し、まだ不安定であるが、外側円筒に衝突するまで1回転半ほど生存する。
従って、イオンが安定軌道に一旦入れば、充填因子が最小化され、質量の装置内の半径方向位置に対する依存性が僅かか、または全くないように、装置中へイオンを入射する方法を見つけるのが望ましい。
好ましい実施形態に従って利用される分割型同軸円筒配置は、必要に応じ、異なるセグメントおよびそのセグメントの異なる部分に対し別々の電圧の印加を可能とする。好ましい実施形態では、飛行時間型分析器の加速領域は、2つのセクターに分割される。これにより、半径方向閉じ込め電場のセクター角度と時間に対する制御が可能となる。内側または外側円筒の角度部分へのパルス電圧の印加により、半径方向閉じ込め電場のパルス出力をONまたはOFFできる。
図23Aは、好ましい実施形態では、どのようにして装置を2つの領域またはセクターに分割するかを示す。時計の文字盤に例えて記述すると、第1の領域またはセクター(12:00時から約3:00時の間の領域)が電極の残りの部分(3:00時から時計回りに約12:00時の間の領域)から分離される。
図23Aは、等電位線を示し、また、反時計回りの方向に主半径方向セクター中へ偏向される前に、どのようにして右側から装置の頂上に入射したイオンが第1のセクター中で実質的にフィールドフリー飛行をするかを示す。この時点では、電場は実質的に静的であるので、単一エネルギーで異なる質量のイオンは、同じ軌道を取る。このことは静電気学の基本原理であるので、当業者なら理解するであろう。
イオンが主セクターの周辺を通る間に、小さいセクターは、主セクターと同じ電圧に切り替えられ、それにより、イオンが回路を完成する時間までに半径方向連続トラッピング電場が形成できる(図23B参照)。このようなスキームは、比較的長い時間のイオンパケットが装置に入射するのを可能とし、飛行時間型質量分析器に運転の高デューティサイクルを与える。
従って、好ましい実施形態は、イオンが安定軌道にあれば、充填因子が最小化され、事実上、質量の装置内の半径方向位置に対する依存性がないように、装置にイオンを入射できるという点で特に有利である。
既知の多重パス飛行時間型質量分析器の問題の一つは、検出時に、特定のイオンの化学種が通過したパスの回数を測定するのが困難であるという点である。限定された質量範囲を質量分析器に入射させて、このような折り返し現象が起きないようにすることによりこの問題に対処しようとしていることは知れられている。より短い時間のイオンパケットが分析器に入射する場合は、イオンパケットの角度位置を保持することにより、検出器に衝突するときに質量を特定することが可能である。
図24A〜Bを参照する。3種のイオン、M1、M2、およびM3(この場合、M1>M2>M3である)は、短い時間のパケットとして質量分析器に入射する。図24Aで入射直後、回転により異なる質量が分離し始めたことがわかる。イオンのそれぞれが分析器を通過するに伴い、角度情報を保持する検出器を使って、角度φの変化を予測することが可能である。飛行時間および角度位置の組み合わせにより、特定のケースで、十分明確に質量対電荷(従って、分析器の往復回数)を決定できる。この追加の角度情報により、より大きな質量範囲を分析器に一度に入射可能となり、その結果、全質量範囲をカバーするために一緒に寄せ集めるべき異なるスペクトルの数を減らすことができる。
好ましい実施形態に関連して本発明が記載されてきたが、当業者なら、付随する請求項で定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形態と詳細における種々の変更を行えることを理解するであろう。

Claims (40)

  1. 長手方向軸線を有し、第1の環状イオンガイド部および第2の環状イオンガイド部を含む環状イオンガイド、
    イオンが前記第1の環状イオンガイド部に導入され、前記イオンが前記第1の環状イオンガイド部内で前記長手方向軸線の周りに実質的に安定な円軌道を形成するように配置され、適合された第1の装置、
    前記環状イオンガイド内に配置されたイオン検出器、
    前記第1の環状イオンガイド部から前記第2の環状イオンガイド部へ第1の軸方向にイオンを直交加速するように配置され、適合された第2の装置、および、
    前記第2の環状イオンガイド部の少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持し、それにより、前記イオンが前記第1の軸方向とは実質的に逆の第2の軸方向に反射され、さらに、前記イオン検出器により検出される前に、前記イオンが前記第2の環状イオンガイド部を複数回軸方向に通過するように配置され、適合された第3の装置、
    を含む飛行時間型質量分析器。
  2. 直交加速される前記イオンが、前記長手方向軸線に実質的に垂直の等飛行時間面に空間的に収束するように配置される請求項1に記載の飛行時間型質量分析器。
  3. 前記イオン検出器のイオン検出面が、前記等飛行時間面に実質的に配置される請求項2に記載の飛行時間型質量分析器。
  4. 前記第2の装置が、軸方向パルス電場を印加するように配置され、適合される請求項1、2または3に記載の飛行時間型質量分析器。
  5. 前記第2の装置が、前記軸方向パルス電場と実質的に同じ時間に半径方向パルス電場を印加するようにさらに配置され、適合される請求項4に記載の飛行時間型質量分析器。
  6. 前記第2の装置が、前記軸方向パルス電場と実質的に同じ時間に半径方向パルス電場を印加し、それにより、前記イオンが前記長手方向軸線に垂直な面内で非円形または楕円形の軌道を取るように配置され、適合される請求項5に記載の飛行時間型質量分析器。
  7. 前記第2の装置が、前記第2の環状イオンガイド部へ前記イオンを直交加速し、それにより、それらの質量対電荷比に応じて前記イオンを時間的に分離するように配置され、適合される請求項1〜6のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  8. 前記第2の装置が、前記イオンを直交加速し、それにより、長手方向にのみ飛行時間分散が発生するように配置され、適合される請求項1〜7のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  9. 前記イオン検出器が、前記長手方向軸線に実質的に垂直の面内に配置されるイオン検出面を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  10. 前記イオン検出器が、環状、部分的環状または分割型環状イオン検出面を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  11. 前記イオン検出器が、(i)前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部の実質的に中心部、(ii)前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部の実質的に端部、(iii)フィールドフリー領域の端部、(iv)前記第1の環状イオンガイド部の隣接部、または(v)前記第1の環状イオンガイド部の遠位、のいずれかに配置される請求項1〜10のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  12. 前記環状イオンガイドが、内側円筒形電極配置を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  13. 前記内側円筒形電極配置が、軸方向に分割され、複数の第1の電極を含む請求項12に記載の飛行時間型質量分析器。
  14. 前記環状イオンガイドが、外側円筒形電極配置を含む請求項12または13に記載の飛行時間型質量分析器。
  15. 前記外側円筒形電極配置が、軸方向に分割され、複数の第2の電極を含む請求項14に記載の飛行時間型質量分析器。
  16. 環状飛行時間イオンガイド領域が、前記内側円筒形電極配置と前記外側円筒形電極配置との間に形成される請求項14または15に記載の飛行時間型質量分析器。
  17. DC電位を前記内側円筒形電極配置および/または前記外側円筒形電極配置に印加し、前記環状イオンガイド内でイオンを半径方向に閉じ込める作用をする半径方向DC電位を維持するように配置され、適合された装置をさらに含む請求項14〜16のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  18. (i)1個または複数個の前記第1の電極および/または前記第2の電極に1種または複数種の第1の電圧を印加し、それにより、前記第1の環状イオンガイド部内に位置するイオンが前記内側円筒形電極配置の周りの軌道を前進または移動し、その後、
    (ii)1種または複数種の第2の電圧を1個または複数個の前記第1の電極および/または前記第2の電極に印加し、それにより、イオンが前記第2の環状イオンガイド部に向け直交加速され、イオンが渦巻き状経路に沿って前記第2の環状イオンガイド部を第1の軸方向へ通過し
    iv)前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部を通過するイオンの飛行時間を測定する、
    ように配置され、適合された制御システムをさらに含む請求項13を引用する請求項15に記載の飛行時間型質量分析器。
  19. 前記第2の装置が、前記第1の環状イオンガイド部の両端に電位差を印加し、それにより、イオンが前記第1の環状イオンガイド部から直交加速され、前記第2の環状イオンガイド部へ入るように配置され、適合される請求項1〜18のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  20. イオンが、前記第2の環状イオンガイド部を通過する際に実質的に渦巻き状経路を取る請求項1〜19のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  21. 前記渦巻き経路が、前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部の少なくとも一部に沿って非らせん状であり、それにより、前記渦巻き状経路のねじれに対する湾曲の比率が変化するか、または一定でない請求項20に記載の飛行時間型質量分析器。
  22. イオンを反射するために、前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部の一部に沿って1種または複数種の半放物線型またはその他のDC電位を維持するように配置され、適合された装置をさらに含む請求項1〜21のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  23. 前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部の一部に沿って1種または複数種の放物線型DC電位を維持し、それにより、イオンが単振動するように配置され、適合された装置をさらに含む請求項1〜22のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  24. 逆軸方向にイオンを反射するために、前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部が、1個または複数個のリフレクトロンを含む請求項1〜23のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  25. 前記第2の装置が、時間Tでイオンを直交加速するように配置され、前記イオンがそれに続く時間Tで前記イオン検出器によって検出され、さらに、100未満、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲の質量対電荷比を有するイオンが、前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部を通って、(i)50μs未満、(ii)50〜100μs、(iii)100〜150μs、(iv)150〜200μs、(v)200〜250μs、(vi)250〜300μs、(vii)300〜350μs、(viii)350〜400μs、(ix)400〜450μs、(x)450〜500μs、および(xi)500μs超、からなる群より選択される合計飛行時間T−Tを有するように配置される請求項1〜24のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  26. 異なる質量対電荷比を有するイオンが、前記環状イオンガイドまたは前記第2の環状イオンガイド部を通る実質的に異なる渦巻き状経路を取る請求項1〜25のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  27. 前記第1の環状イオンガイド部の電極が、分割され、それにより、使用時に、少なくとも、第1の電場セクターおよび第2の電場セクターが形成される請求項1〜26のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  28. 第1の時間T1に前記第1の電場セクター中へイオンを実質的に接線方向に入射し、その間、前記第1の電場セクター内を実質的にゼロ半径方向電場に維持し、それにより、前記第1の環状イオンガイド部へ入射する間に前記イオンが実質的にフィールドフリー領域に存在するように配置され、適合された制御システムをさらに含む請求項27に記載の飛行時間型質量分析器。
  29. 前記制御システムが、前記第2の電場セクター中で半径方向電場を維持し、それにより、第2のその後の時間T2でイオンが前記第1の電場セクターから前記第2の電場セクター中へ入り、半径方向に閉じ込められるようにさらに配置され、適合される請求項28に記載の飛行時間型質量分析器。
  30. 前記制御システムが、T3>T1である第3の時間T3に、半径方向電場を前記第1の電場セクター内で維持可能とし、それにより、イオンが前記第2の電場セクターから前記第1の電場セクターに入る際に、前記イオンが半径方向に閉じ込められ続け、前記第1の環状イオンガイド部内に実質的に安定な円軌道を形成するようにさらに配置され、適合される請求項29に記載の飛行時間型質量分析器。
  31. 前記第2の装置が、T4>T3である第4の時間T4に、前記第1の環状イオンガイド部から前記第2の環状イオンガイド部へイオンを直交加速するように配置され、適合される請求項30に記載の飛行時間型質量分析器。
  32. 前記第1の環状イオンガイド部から前記第2の環状イオンガイド部へ直交加速される前記イオンの飛行時間を測定するように配置され、適合された制御システムをさらに含む請求項1〜31のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  33. 前記イオン検出器が、前記イオン検出器のイオン検出面に衝撃を与えるか、または衝突するイオンを検出するように配置され、適合される請求項1〜32のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器。
  34. 請求項1〜33のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析器を含む質量分析計。
  35. 長手方向軸線を有し、第1の環状イオンガイド部および第2の環状イオンガイド部を含む環状イオンガイドを用意すること、
    イオンを前記第1の環状イオンガイド部に導入し、前記イオンが前記第1の環状イオンガイド部内で前記長手方向軸線の周りに実質的に安定な円軌道を形成すること、
    前記環状イオンガイド内に配置されたイオン検出器を用意すること、
    前記第1の環状イオンガイド部から前記第2の環状イオンガイド部へ第1の軸方向にイオンを直交加速すること、および
    前記第2の環状イオンガイド部の少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持し、それにより、前記イオンが前記第1の軸方向とは実質的に逆の第2の軸方向に反射され、さらに、前記イオン検出器により検出される前に、前記イオンが前記第2の環状イオンガイド部を複数回軸方向に通過すること、
    を含むイオンの質量分析方法。
  36. 請求項35に記載のイオンを質量分析する方法を含む質量分析方法。
  37. 長手方向軸線を有する環状イオンガイド、
    前記環状イオンガイドの少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持するように配置され、適合された装置、および
    前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが時間的に分離され、複数回軸方向へ通過し、さらに、飛行時間分散が長手方向にのみ発生するように配置され、適合された装置、
    を含む飛行時間型質量分析器。
  38. 長手方向軸線を有する環状イオンガイドを用意すること、
    前記環状イオンガイドの少なくとも一部に沿って軸方向DC電位を維持すること、および
    前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが時間的に分離され、複数回軸方向へ通過し、さらに、飛行時間分散が長手方向にのみ発生すること、
    を含むイオンの質量分析方法。
  39. 長手方向軸線を有する環状イオンガイド、および
    前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが複数回軸方向に通過し、さらに、前記イオンが前記長手方向軸線に実質的に垂直の等飛行時間面に空間的に収束するように配置され、適合された装置、
    を含む飛行時間型質量分析器。
  40. 長手方向軸線を有する環状イオンガイドを用意すること、および
    前記環状イオンガイド中へイオンを直交加速し、それにより、前記イオンが複数回軸方向に通過し、さらに、前記イオンを前記長手方向軸線に実質的に垂直の等飛行時間面に空間的に収束させること、
    を含むイオンの質量分析方法。
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