(発明の詳細な説明)
以下に詳細に記載する本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防するための哺乳動物対象への治療組成物の投与を包含する。また本発明は、哺乳動物対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の臨床スクリーニング、診断、予後のための、特定の治療的治療に最も応じそうな見込みのある患者を同定するための、乳癌療法、結腸直腸癌療法、食道癌療法、胃癌療法、前立腺癌療法又は子宮癌療法の結果をモニタリングするための、薬剤スクリーニング及び薬剤開発のための、方法及び組成物を提供する。
一態様において、本発明は、マトリプターゼステム又はその断片に特異的に結合し得る作用物質、又はマトリプターゼステムをコードする核酸にハイブリダイズできるハイブリダイズ作用物質、又は癌、特に乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌などの疾患の治療、スクリーニング、検出及び/又は診断における使用のためにマトリプターゼの活性を検出できる作用物質を提供する。
本発明の別の態様は、マトリプターゼステム又はその断片に特異的な結合ができる親和性試薬であり、例えば、検出可能な標識を含む若しくはこれに結合する、又は細胞傷害性部分などの治療的部分を含む若しくはこれに結合する親和性試薬である。親和性試薬は、例えば、抗体でもよい。
本発明の別の態様は、マトリプターゼステム又はその断片に特異的な結合ができる親和性試薬の治療上有効量を含む医薬組成物である。
別の態様において、本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療又は予防のための、マトリプターゼステムのポリペプチド又はその1以上の断片若しくは誘導体の使用を提供する。
また本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療又は予防のための医薬の製造における、マトリプターゼステムのポリペプチド又はその1以上の断片若しくは誘導体の使用を提供する。
一態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療又は予防のための、マトリプターゼステムのポリペプチド、その1以上の断片若しくは誘導体、又はその1以上の断片若しくは誘導体の治療上有効量を投与することを含む、治療方法を提供する。
本発明はさらに、対象おける乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療若しくは予防方法、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に対し対象をワクチン接種する方法であって、対象に、マトリプターゼステムのポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片の有効量を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
哺乳動物対象は、ヒトでない哺乳動物でもよいが、好ましくはヒト、より好ましくはヒトの成人、すなわち少なくとも21歳(より好ましくは、少なくとも35歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳又は少なくとも80歳)のヒト対象であり得る。
一態様において、対象において免疫反応を誘発できる組成物を提供し、該組成物はマトリプターゼステムのポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片、及び1以上の適切な補助剤(適切な補助剤は後述する)を含む。
免疫反応を誘発できる組成物は、例えば、マトリプターゼステムのポリペプチド又はその誘導体及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片を含むワクチンとして提供できる。
本発明の一態様において、マトリプターゼステムは、異種ペプチド部分を有する融合タンパク質である抗原として提供する。
一実施態様において、マトリプターゼステム、又はマトリプターゼステム/融合タンパク質が細胞表面に提示され、抗原として使用される。別の実施態様において、融合タンパク質は、異種膜貫通ドメインを含む。好ましい実施態様において、膜貫通ドメインは、免疫グロブリン膜貫通ドメインである。別の好ましい実施態様において、膜貫通ドメインは、IgG膜貫通ドメインである。
開示の明確性のために、かつ限定を目的とせず、本発明は、胸部、結腸直腸、食道、胃、前立腺及び子宮組織の分析に関して記載する。しかしながら、当業者に認識されているように、後述する分析及び技術は、他のタイプの患者サンプルに適用でき、該サンプルには、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有する危険性のある患者からの組織サンプル(例えば、胸部生検、結腸生検、食道生検、胃生検、前立腺生検又は子宮生検などの生検)又はそのホモジェネートを含む。本発明の方法及び組成物は、生存対象のスクリーニング、診断及び予後に特に適するが、例えば、対象における死後診断に使用し、同じ疾患を発症する危険のある家族を同定することができる。
(マトリプターゼステム)
本発明の一態様において、一次元電気泳動、同位元素コード化された親和性タグ(ICAT)又は他の適切な方法は、対象、好ましくは生存対象からの乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌組織サンプルを分析するために、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌のスクリーニング又は診断のためにマトリプターゼステムの発現を測定するために、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌患者の予後を測定するために、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌療法の有効性をモニタするために使用し、又は薬剤開発のために使用する。
本明細書中で使用されるように、用語「本発明のタンパク質」又は「マトリプターゼ」は、
胸部及び結腸直腸組織サンプルの1D電気泳動並びに前立腺組織サンプルのICAT分析により実験的に検出される、図1に図示するタンパク質をいう。これらの配列のタンパク質誘導体は、本明細書中に記載するのと同じ目的に有用であり得る。
このタンパク質は、実施例1及び2に記載する好ましい技術の方法及び装置(1Dゲル電気泳動又はICAT、膜タンパク質抽出物のトリプシン消化を伴う)により、乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌患者からの胸部、結腸直腸及び前立腺組織サンプルの膜タンパク質抽出物において同定された。ペプチド配列を、SWISS PROT及びtrEMBLデータベース(生命情報工学のスイス研究所(SIB)及びヨーロッパ生命情報工学研究所(EBI)により保有され、www.expasy.comで利用できる)に対して比較し、そのエントリは下記の通りであった:Q9Y5Y6(腫瘍形成性タンパク質14のサプレッサ)が同定された。
腫瘍形成性タンパク質14のサプレッサは、細胞外マトリクスを分解する。SWISS-PROTによれば、乳癌浸潤及び転移に役割を担うことが提案されている。該サプレッサは、P1部位としてArg又はLysでの合成基質の開裂により定義されるトリプシン様活性を呈する。該サプレッサは、口の上皮及び表皮の最終分化と関連したプロフィラグリンプロセシング、角質細胞成熟及び脂質マトリクス構造において必須な生理的役割を有し、毛包成長のためにも決定的である。該サプレッサは、大部分のヒト上皮において発現するII型膜貫通セリンプロテアーゼであり、厳密には上皮プロテアーゼである。該サプレッサは、上皮起源の癌腫において発現し、間充織起源の腫瘍においては発現しない。
該タンパク質は、US2006/0171884にも記載されている(そこで「マトリプターゼ」と称されている)。マトリプターゼの触媒ドメインに対して産生される抗体も記載され、癌の治療のために示される。タンパク質はWO2007/141280にも記載され、これは引用により本明細書にその全体が組み込まれる。結腸直腸癌のスクリーニング、診断及び予後についての方法及び組成物が記載される。
マトリプターゼの細胞外ステム領域は、アミノ酸残基86-201を含む単一のSEAドメインから成ることが報告されている(図2(a)、マトリプターゼステム配列 A、配列番号10を参照されたい)。マトリプターゼの活性化は、経時的なタンパク質内開裂及び活性化部位自己開裂を必要とする。開裂は、アミノ酸Gly149の後で起こり、アミノ酸残基86-149を含むステム領域を結果的に生じる(図2(b)、マトリプターゼステム配列B、配列番号11を参照されたい)。さらにタンパク質開裂は、アミノ酸K189の後で起こり得、これはアミノ酸配列86-189を含むステム領域を結果的に生じる(図2(c)、マトリプターゼステム配列C、配列番号12を参照されたい)又はアミノ酸K204の後で起こり得、これはアミノ酸配列86-204を含むステム領域を結果的に生じる(図2(d)、マトリプターゼステム配列D、配列番号13を参照されたい)。マトリプターゼはそれから、Arg614の後のタンパク質開裂によりその活性形態に変換する。触媒C末端セリンプロテアーゼドメインは、アミノ酸残基615-855から成る(図3、配列番号14を参照されたい)。例えば、マトリプターゼを参照されたい:「細胞表面上での強力なタンパク質分解(Potent Proteolysis on the Cell Surface)」;List, Bugge及びSzaboの文献;Mol Med 12(1-3)1-7, Jan-March 2006、及び「血液由来因子による上皮細胞表面上のマトリプターゼの制御(Regulation of the activity of matriptase on epithelial cell surfaces by a blood derived factor)」;Benaud, Dickson及びLinの文献;Eur J Biochem 268, 1439-1447, 2001であり、これらは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
マトリプターゼの活性化は、血液における触媒試薬の自己触媒的な放出をもたらす。マトリプターゼの触媒ドメイン(配列番号14により定義される)は、任意の周知の方法によってアッセイすることができ、該アッセイには、以下に限定されないが、本明細書において実施例5及び6に記載の技術、キナーゼアッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイ及び他の機能的アッセイ、免疫アッセイ及びウエスタンブロッティングを含む。
従って、(例えば、実施例4に記載するアッセイを使用する)マトリプターゼステムの検出、さらには例えば、実施例5及び6に記載するアッセイを使用して)対象から得られるサンプルにおけるマトリプターゼの可溶性触媒ドメインを検出することは、マトリプターゼの開裂が発生し、その対象における治療標的としてのマトリプターゼのステム領域の有効性を示し得ることを証明するであろう。実施例4のマトリプターゼステムを検出する免疫組織化学アッセイの結果と、実施例5及び6のマトリプターゼの可溶性触媒ドメインを検出するアッセイの結果との間にデータの一致があり、これは、この方法が実行可能であることを示す。
マトリプターゼステムは、断片、特にエピトープ含有断片(例えばその抗原性若しくは免疫原性断片及びその誘導体)として有用である。抗原性若しくは免疫原性断片などのエピトープ含有断片は、典型的には、長さ12アミノ酸以上の、例えば20アミノ酸以上の、例えば50又は100アミノ酸以上のものである。断片は、タンパク質の完全なステムの長さの95%以上、例えば90%以上、例えばタンパク質の完全なステムの長さの75%又は50%又は25%又は10%以上であり得る。
あるいは、本明細書において使用されるか又は言及されるタンパク質/ポリペプチドは、具体的に本明細書に引用/記載したもの、又はそれに85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%同一又は類似する部分に限定され得る。
抗原性若しくは免疫原性断片などのエピトープ含有断片は、患者において関連する免疫反応を誘発できる。マトリプターゼステムをコードするDNAも、その断片、例えばその免疫原性断片などのマトリプターゼステムの断片をコードするDNAとして有用である。マトリプターゼステムをコードする核酸(例えばDNA)の断片は、完全なコード領域の長さの95%以上、例えば90%以上、例えば完全なコード領域の長さの75%又は50%又は25%又は10%以上であり得る。核酸(例えばDNA)の断片は、長さ36ヌクレオチド以上の、例えば60ヌクレオチド以上の、例えば150又は300ヌクレオチド以上であり得る。
マトリプターゼステムの誘導体は、1以上の(例えば15アミノ酸などの1〜20、又はタンパク質のステムの全長に基づくアミノ酸数に対し最高10%又は5%又は1%などの最高20%)削除、挿入又は置換がなされた配列上のバリアントを含む。置換は、典型的には保存的置換であり得る。誘導体は、典型的には、それらが由来するタンパク質と同じ生物学的機能を基本的に有する。誘導体は、典型的には、それらが由来するタンパク質と同等に抗原性であるか又は免疫原性である。誘導体は、典型的には、それらが由来するタンパク質のリガンド-結合活性、又は活性受容体-複合体形成能、又は好ましくはその両方のいずれかを有する。
タンパク質の誘導体には、例えば精製中に処理される、カルボキシメチル化された、カルボキシアミド化された、アセチル化されたタンパク質などの化学的に処理したタンパク質も含む。
下記の表1a及び1bは、それぞれ乳癌及び結腸直腸癌患者から胸部及び結腸直腸組織サンプルの膜タンパク質抽出物の1Dゲル電気泳動及び質量分析により検出される、マトリプターゼの異なる発生を例示する。第1の左手の列は分子量を提供し、右手の列は質量分析により観測される配列のリスト及び対応する配列番号を提供する。
下記の表2は、前立腺の癌患者からの前立腺組織サンプルの膜タンパク質抽出物のICAT及び質量分析により検出される、マトリプターゼの異なる発生を例示する。第1の左手の列はサンプル番号を提供し、右手の列は質量分析により観測される配列のリスト及び対応する配列番号を提供する。
マトリプターゼステムについて、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象からの組織を分析して得られる検出レベルと比較して、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象から組織を分析して得られる検出レベルは、使用される具体的な分析プロトコル及び検出技術に依存する。したがって、本発明は、各研究室が、診断技術で従前通りであるように、使用における分析プロトコル及び検出技術に従い、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象における基準範囲を確立することを予期する。好ましくは、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌があることが公知の対象からの少なくとも1つのコントロールポジティブの組織サンプル、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でないことが公知の対象からの少なくとも1つのコントロールネガティブの組織サンプル(及び、より好ましくは、ポジティブ及びネガティブのコントロールサンプル)は、分析される試験サンプルの各バッチに含まれる。
マトリプターゼステムは、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌の検出、予後、診断若しくはモニタリングのために、又は、創薬のために使用できる。本発明の一実施態様において、対象(例えば、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌があることで疑われる対象)からの組織は、配列番号10〜13により定義される配列のいずれか1つに含まれるそれらのペプチドから成るマトリプターゼステムに特異的なそれらのペプチドのみの検出について1D電気泳動又はICATにより分析される。好ましくは、検出するペプチドのうちの1つは、配列番号7により定義されるペプチドである。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌(例えばコントロールサンプル)がない対象からの組織、又は予め決定された基準範囲と比較しての前記対象からの組織におけるマトリプターゼステムの大量の増加は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の存在を示す。
表1〜2に示される配列は、本発明の全ての関連する態様において使用できる。
マトリプターゼのバリアント、断片、免疫原性断片又は抗原性断片に関して:結腸直腸癌用途のために:好ましくは、これらは、配列番号7により定義される配列を含む。
本明細書で使用するように、マトリプターゼステムは、それが実質的に無汚染のタンパク質である調製物、すなわち存在する総タンパク質の10%未満(好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満)がタンパク質を汚染している調製物で存在する場合、「単離されている」。汚染タンパク質は、質量分析により測定される、マトリプターゼの単離されたステムのアミノ酸配列と著しく異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。本明細書中で使用される「著しく異なる」配列は、質量分析によりマトリプターゼステムから分割される汚染タンパク質を許容するものであり、実施例1及び2の参照プロトコルに従って実施する。
従って、1つの態様において、本発明は、(特に先に定義した)マトリプターゼステムのポリペプチド又はその免疫原性断片の治療上有効量及びアジュバントを含む、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療のための医薬組成物を提供する。
マトリプターゼステムは、当業者に周知の任意の方法でアッセイでき、該方法には以下に限定されないが、本明細書に記載した好ましい技術、キナーゼアッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイ及び他の機能的アッセイ、免疫アッセイ及びウエスタンブロッティングを含む。一実施態様において、マトリプターゼステムは、その分子量の特性により1Dゲル上で分離され、ゲルを染色することにより視覚化される。一実施態様において、マトリプターゼは、蛍光色素で染色され、蛍光スキャナで撮像される。Sypro Red(Molecular Probes社, Eugene, Oregon)は、この目的に適した色素である。好適な蛍光色素は、1999年10月5日に出願された米国特許出願第09/412168号において開示され、これは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。別の実施態様において、マトリプターゼステムは、同位元素コード化された親和性タグ(ICAT)を使用して分析する。
あるいは、マトリプターゼステムは、免疫アッセイで検出できる。一実施態様において、免疫アッセイは、マトリプターゼステムが存在する場合に結合(例えば免疫特異的結合)が発生し得る条件下で、抗マトリプターゼステム抗体(又は他の親和性試薬)で試験される対象からのサンプルを接触させること、及び該結合剤による全ての結合(例えば免疫特異的結合)の量を検出するか又は測定することにより実施する。マトリプターゼのステム結合剤は、本明細書中に教示される方法及び技術により生産できる。
マトリプターゼステムは、その断片、例えばそのエピトープ含有(例えば免疫原性又は抗原性)断片検出特性により検出できる。断片は、少なくとも10、より典型的には少なくとも20アミノ酸、例えば少なくとも50又は100アミノ酸の長さを有し得る。
一実施態様において、組織切片の親和性試薬(例えば抗体)の結合を使用して、マトリプターゼステムの異所局在又はマトリプターゼステムの異常なレベルを検出することができる。特定の実施態様において、マトリプターゼステムに対する抗体(又は他の親和性試薬)を使用して、マトリプターゼステムの異常なレベルが乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を表すマトリプターゼステムのレベルについて、患者組織(例えば胸部、結腸直腸、食道、胃、前立腺又は子宮組織)をアッセイすることができる。本明細書において使用する「異常なレベル」は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象のレベル又は参照レベルと比較して増加するレベルを意味する。
全ての適切な免疫アッセイを使用することができ、該アッセイには以下の技術を使用する競合アッセイ及び非競合アッセイを含むがこれらに限定されない:例えば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光免疫アッセイ及びプロテインA免疫アッセイ。
必要に応じて、マトリプターゼステム、関連遺伝子又は関連した核酸配列に続けて相補的配列を含む亜配列をコードする遺伝子も、ハイブリダイゼーションアッセイ法に使用できる。マトリプターゼステムをコードするヌクレオチドは、又は少なくとも8ヌクレオチド、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド及び最も好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含むその亜配列をハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。ハイブリダイゼーションアッセイ法は、マトリプターゼステムをコードする遺伝子の異所性発現と関連した状態、障害若しくは疾患状態の検出、予後、診断若しくはモニタリングのために、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の示唆的な徴候若しくは症状を有する対象の鑑別診断のために使用できる。特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイ法は、核酸を含んでいる対象のサンプルを、マトリプターゼステムをコードするDNA又はRNAにハイブリダイズできる核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起こり得るような条件下で接触させること、及び全ての結果として生じるハイブリダイゼーションを検出若しくは測定することを含む方法により実施することができる。
それゆえに、マトリプターゼステムをコードする核酸(例えばDNA又はより好適にはRNA)を、例えば、マトリプターゼのステムをコードする核酸にハイブリダイズできるハイブリダイズ作用物質を使用して検出できる。
そのような典型的な方法には、以下を含む:
(a)マトリプターゼのステムをコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続ヌクレオチドを含む1以上のオリゴヌクレオチドプローブを、対象からの生体サンプルから得られたRNA若しくは該RNAから複製されるcDNAと接触させる工程であって、ヌクレオチド配列が存在する場合に該ヌクレオチド配列にプローブのハイブリダイゼーションを可能ににする条件下で起こる、前記接触工程;
(b)プローブとヌクレオチド配列との間にハイブリダイゼーションがある場合にハイブリダイゼーションを検出する工程;及び、
(c)工程(b)における検出がある場合におけるハイブリダイゼーションを、コントロールサンプルにおいて検出されたハイブリダイゼーションと、又は先に測定された基準範囲と比較する工程。
また本発明は、抗マトリプターゼステム抗体(又は他の親和性試薬)を含む診断用キットを提供する。加えて、このようなキットは、以下の1以上を任意に含み得る:(1)診断、予後、治療的モニタリングのため又はこれらの用途の任意の組合せのための抗マトリプターゼステム親和性試薬を使用するための取扱説明書;(2)親和性試薬に対する標識化結合パートナー;(3)抗マトリプターゼステム親和性試薬が固定化された固相(試薬ストリップなど);及び、(4)診断、予後又は、治療的使用又は任意のそれらの組み合わせについての規制認可を示している標識又は挿入物。親和性試薬に標識化結合パートナーが提供されていない場合、抗マトリプターゼ親和性試薬自体は、検出可能なマーカー、例えば化学発光、酵素、蛍光又は放射性部分で標識化できる。
また本発明は、核酸にハイブリダイズできる核酸プローブ、好適にはマトリプターゼステムをコードするRNAを含むキットを提供する。特定の実施態様において、キットは、1以上の容器に、一対のプライマー(例えば、各々、6〜30ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチド及びさらにより好ましくは10〜20ヌクレオチドのサイズ範囲)を含み、該プライマーは、適切な反応条件下で、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(例えばInnisらの文献, PCR Protocols, Academic Press社, San Diego, CAを参照)、リガーゼ連鎖反応(EP 320,308を参照)Qβレプリカーゼの使用、周期的プローブ反応又は公知技術の他の方法などにより、マトリプターゼステムをコードする核酸の少なくとも一部の増幅を開始できる。
キットは、例えば標準又はコントロールとしての使用のために、マトリプターゼステムの予め定められた量又はマトリプターゼステムをコードする核酸をさらに任意に含み得る。
(臨床研究での使用)
本発明の診断法及び組成物は、臨床研究をモニタリングする際に、例えば乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の療法のための薬剤を評価することを支援できる。一実施態様において、候補分子は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有する対象のマトリプターゼステムレベルを回復させるそれらの能力について、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌でない対象で見出されるレベルに対し、又は治療された対象において非乳癌、非結腸直腸癌、非食道癌、非胃癌、非前立腺癌若しくは非子宮癌の値若しくはその近傍のマトリプターゼステムレベルを保つために、試験される。
別の実施態様において、本発明の方法及び組成物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する個人を同定するために臨床研究の候補を選別するために使用し;このような個人はその後、研究から除外でき、又は治療若しくは分析用に別々の一団にすることができる。
(マトリプターゼステム及び対応する核酸の産生)
一態様において、本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防する方法であって、このような治療又は予防を必要とする対象に、マトリプターゼステム又は1以上のその断片若しくは誘導体をコードする核酸の治療上有効量を、例えばワクチンの形態で投与することを含む、前記方法を提供する。
別の態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防する方法であって、このような治療又は予防を必要とする対象に、マトリプターゼのステムの機能又は発現を阻害する核酸の治療上有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の方法(及び/又は本明細書中に開示される他のDNA態様)は、例えば、核酸がマトリプターゼステムアンチセンス核酸又はリボザイムであるものを含み得る。
従って、本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防するための薬剤の製造における、マトリプターゼステム又はその1以上の断片若しくは誘導体をコードする核酸の使用を含む。
乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防するための薬剤の製造における、マトリプターゼステムの機能又は発現を阻害する核酸の使用も提供する。
本発明において使用されるDNAは、開始材料として商業的なmRNAを使用するcDNAライブラリからのcDNA断片として単離することにより得ることができ、そのヌクレオチド配列を決定及び同定することができる。すなわち、具体的には、クローンはcDNAライブラリからランダムに単離され、これはOharaらの文献の方法(DNA Research第4巻, 53-59 (1997))に従って調製される。次に、ハイブリダイゼーションを介し、複製されたクローン(これは、繰り返し現れる)を取り出し、インビトロ転写及び翻訳を実施する。50kDa以上の産物が同定されたクローンの両端のヌクレオチド配列を決定する。
さらに、公知の遺伝子のデータベースは、このようにして得られた末端ヌクレオチド配列を問合わせとして使用し、相同性について検索する。
上記のスクリーニング法に加えて、cDNAの5'及び3'末端配列は、ヒトゲノム配列に関連する。それから、未知の長鎖遺伝子が配列間領域に同定され、cDNAの全長を分析する。このようにして、既知の遺伝子に依存して従来のクローニング方法により得ることができない未知の遺伝子を系統的にクローン化できる。
さらに、本発明のDNAを含んでいるヒト由来遺伝子の全ての領域は、短い断片又は得られた配列において起こる人工エラーを防ぐのに十分な注意を払いながら、RACEなどのPCR法を使用して調製することもできる。上述の通り、本発明のDNAを有するクローンを得ることができる。
本発明のDNAのクローニングのための別の手段において、本発明のポリペプチドの一部の適切なヌクレオチド配列を有する合成DNAプライマーを作成し、その後、適切なライブラリを使用するPCR法により増幅する。あるいは、選択は、適切なベクターに組み込まれかつ本発明のポリペプチドの領域の一部若しくは全部をコードするDNA断片又は合成DNAで標識されたDNAと、本発明のDNAとのハイブリダイゼーションにより実施できる。ハイブリダイゼーションは、例えば、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(Frederick M. Ausubelらにより編集、1987)に記載される方法により実施することができる。上記の通りに本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む限り、本発明のDNAはいかなるDNAでもあってもよい。このようなDNAは、cDNAライブラリから同定及び単離されたcDNAでよく、又は胸部、結腸直腸、食道、胃、前立腺若しくは子宮組織由来のようなDNAでもよい。このようなDNAは、合成DNA等でもよい。ライブラリ構築に使用されるベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド等のいずれでもよい。さらに、上記の細胞及び/又は組織から調製される総RNA画分又はmRNA画分の使用により、増幅は、直接的な逆転写共役ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「RT-PCR法」と略記される)により実施できる。
マトリプターゼステムのアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列からなる上記ポリペプチドをコードするDNA、又はアミノ酸配列の一部を構成する1以上のアミノ酸の削除、置換若しくは付加によりマトリプターゼステムのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列からなる上記ポリペプチドをコードするDNAは、例えば、部位特異的突然変異生成法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法及び当業者に公知のPCR法の適切な組合せにより容易に産生できる。加えて、この時点で、ポリペプチドに実質的に同等な生物活性を付与する可能的方法は、ポリペプチドを構成するアミノ酸のうちの相同アミノ酸(例えば極性及び無極性アミノ酸、疎水性及び親水性アミノ酸、正荷電及び負荷電アミノ酸、及び芳香族アミノ酸)の置換である。さらに、実質的に同等な生物活性を維持するために、本発明のポリペプチドに含まれる機能的ドメイン中のアミノ酸は好ましくは保存される。
さらに、本発明のDNAの例には、マトリプターゼステムのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA、並びに該DNAに対しストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、マトリプターゼステムのアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能に等しい生物活性(機能)を有するポリペプチド(タンパク質)をコードするDNAを含む。このような条件下において、マトリプターゼステムのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNAにハイブリダイズできるこのようなDNAの例は、該DNAの完全なヌクレオチド配列を有するある程度、例えばおよそ80%以上、好ましくはおよそ90%以上及びより好ましくはおよそ95%以上の全体平均相同性を有するヌクレオチド配列を含むDNAである。ハイブリダイゼーションは、例えば、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(Frederick M. Ausubelらにより編集、1987)に記載される方法又はそれに準じる方法などの公知技術の方法に従って実施することができる。ここで、「ストリンジェント条件」とは、例えば、およそ「1*SSC、0.1%SDS及び37℃」の条件、よりストリンジェント条件ではおよそ「0.5*SSC、0.1%SDS及び42℃」、又はさらによりストリンジェント条件ではおよそ「0.2*SSC、0.1%SDS及び65℃」の条件である。よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件については、プローブ配列との高い相同性を有するDNAの単離を予期できる。SSC、SDS及び温度条件の上記の組合せは例示目的で与えられる。上記と類似のストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの決定について上記の要因又は他の要因(例えば、ハイブリダイゼーションについてのプローブ濃度、プローブ長及び反応時間)の適切な組合せを使用して当業者により達成できる。
本発明のクローン化DNAは、目的に応じて、直接使用でき、又は必要に応じて制限酵素での消化又はリンカー付加の後に使用できる。DNAは、5'末端側の翻訳開始コドンとしてATGを有することができ、3'末端側の翻訳終了コドンとしてTAA、TGA又はTAGを有し得る。これらの翻訳開始及び翻訳終了コドンは、適切な合成DNAアダプタを使用して付加することもできる。
本発明の方法/使用において、マトリプターゼステムは、例えば単離された形態、例えばマトリプターゼステムのポリペプチドが少なくともある程度にまで精製された形態などで提供することができる。マトリプターゼステムのポリペプチドは、実質的に純粋な形態で、すなわち他のタンパク質を相当程度に除去した形態で提供できる。マトリプターゼステムのポリペプチドは、組換え方法を使用して生産でき、合成的に生産でき、又はこれらの方法の組合せにより生産することもできる。マトリプターゼステムは当業者に公知のいかなる方法によっても容易に調製でき、該方法には、本発明のDNAを含んでいる発現ベクター又は本発明のDNAを含んでいる遺伝子を生産すること、該発現ベクターを使用して形質転換された形質転換体を培養し、本発明のポリペプチド又は該ポリペプチドを含んでいる組換えタンパク質を生成及び蓄積すること、並びに該結果産物を回収することを含む。
マトリプターゼステムの組換えポリペプチドは、公知技術の方法により、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から調製できる。したがって、本発明は、マトリプターゼステムのポリペプチド又は核酸を含む発現系、このような発現系で遺伝子操作された宿主細胞、及び組換え技術によるマトリプターゼステムのポリペプチドの産生にも関する。マトリプターゼステム産生の組換えポリペプチドについて、宿主細胞を遺伝子操作して発現系又は核酸についてのその部分を組み込むことができる。このような組込みは、公知技術の方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン媒介型トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン脂質媒介型トランスフェクション、エレクトロポーレーション、形質導入、切屑付与(scrape loading)、弾道導入又は感染などを使用して実施できる(例えば、Davisらの文献、分子生物学における基礎実験(Basic Methods in Molecular Biology)、1986、及びSambrookらの文献、分子クローニング:研究所マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, 1989を参照されたい)。
宿主細胞、例えば、エシェリキア(Escherichia)属、ストレプトコッキ(Streptococci) 属、スタフィロコッキ(Staphylococci) 属、ストレプトマイセス属の細菌、バチルス属の細菌、酵母、アスペルギルス細胞、昆虫細胞、昆虫及び動物細胞を使用する。本明細書に使用するエシェリキア属の細菌の具体例には、大腸菌K12及びDH1(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 60, 160 (1968))、JM103(Nucleic Acids Research, Vol. 9, 309 (1981))、JA221(Journal of Molecular Biology, Vol. 120, 517 (1978))及びHB101(Journal of Molecular Biology, Vol. 41, 459 (1969))を含む。バチルス属の細菌として、例えば、枯草菌MI114(Gene, Vol. 24, 255 (1983))及び207-21(Journal of Biochemistry, Vol. 95, 87 (1984))が使用される。酵母として、例えば、出芽酵母AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D及び20B-12、分裂酵母NCYC1913及びNCYC2036、並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)が使用される。昆虫細胞として、例えば、ドロソフィラ(Drosophila)S2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が使用される。動物細胞として、例えば、COS-7及びVeroサル細胞、CHOチャイニーズハムスター細胞(以下、CHO細胞と略記される)、dhfr-遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウス骨髄腫細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞、COS、HeLa、C127、3T3、HEK 293、BHK及びボーズメラノーマ細胞が使用される。
無細胞翻訳システムを使用して組換えポリペプチドを生産することもできる(例えば、ウサギ網状赤血球溶解物、小麦麦芽溶解物、SP6/T7インビトロT&T及びRTS 100大腸菌HY転写及び翻訳キット(Roche Diagnostics社, Lewes, UKから)、並びにTNTクイック共役転写/翻訳系(Promega UK社, Southampton, UKから))。
公知技術の方法に従って発現ベクターを産生できる。例えば、ベクターは、(1)本発明のDNAを含んでいるDNA断片又は本発明のDNAを含んでいる遺伝子を切除すること、及び(2)適切な発現ベクターにおいてプロモータの下流にDNA断片を連結することにより産生できる。以下の多種多様な発現系を使用することが可能である:例えば、限定ではないが、染色体、エピソーム及びウイルス由来の系、例えば、大腸菌に由来するプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18及びpUC118)、枯草菌に由来するプラスミド(例えばpUB110、pTP5及びpC194)、バクテリオファージに由来するプラスミド、トランスポゾンに由来するプラスミド、酵母エピソームに由来するプラスミド(例えばpSH19及びpSH15)、挿入エレメントに由来するプラスミド、酵母染色体エレメントに由来するプラスミド、ウイルスに由来するプラスミド、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、並びにそれらの組み合わせに由来するベクター、例えばプラスミド及びバクテリオファージ( [λ]ファージなど)の遺伝エレメント、例えばコスミド及びファージミド。発現系は、発現を制御並びに発生させる制御領域を含み得る。本発明において使用されるプロモータは、それらが遺伝子発現について使用される宿主に適切な限り、いかなるプロモータでもあってもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合、trpプロモータ、lacプロモータ、recAプロモータ、pLプロモータ、lppプロモータなどが好ましい。宿主が枯草菌である場合、SPO1プロモータ、SPO2プロモータ、penPプロモータなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモータ、PGKプロモータ、GAPプロモータ、ADHプロモータなどが好ましい。動物細胞が宿主として使用される場合、この事例に使用するプロモータの例には、SRaプロモータ、SV40プロモータ、LTRプロモータ、CMVプロモータ及びHSV-TKプロモータを含む。通常、宿主においてポリペプチドを産生する核酸を維持し、増幅し又は発現することが可能である任意の系又はベクターを使用できる。
適切な核酸配列は、上記のSambrookらの文献に記載されるものなどの任意の様々な周知かつ日常的な技術によって発現系に挿入できる。適切な分泌シグナルをマトリプターゼステムのポリペプチドに組み込み、小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境に翻訳タンパク質の分泌をさせることができる。これらのシグナルは、マトリプターゼステムのポリペプチドに内在性であってよく、又はシグナルは異種シグナルでもよい。宿主細胞における形質転換は、公知技術の方法に従って実施できる。例えば、以下の文書を参照できる:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 69, 2110 (1972);Gene, Vol. 17, 107 (1982);Molecular & General Genetics, Vol. 168, 111 (1979);Methods in Enzymology, Vol. 194, 182-187 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), Vol. 75, 1929 (1978);Cell Technology, separate volume 8, New Cell Technology, Experimental Protocol.263-267 (1995) (Shujunshaにより発行);及びVirology, Vol. 52, 456 (1973)。本発明のDNAを含んでいる発現ベクター又は本発明のDNAを含んでいる遺伝子で形質転換されこのようにして得られた形質転換体は、公知技術の方法に従って培養できる。例えば、宿主がエシェリキア属の細菌である場合、該細菌は通常、およそ15℃〜43℃でおよそ3〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は振動を加えることもできる。宿主がバチルス属の細菌である場合、該細菌は通常、およそ30℃〜40℃でおよそ6〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は振動を加えることもできる。宿主が酵母である形質転換体を培養する場合、培養は通常、pHをおよそ5〜8に調整した培地を使用して、およそ20℃〜35℃でおよそ24〜72時間実施する。必要に応じて、通気又は振動を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合、該細胞は通常、pHがおよそ6〜8であるように調整した培地を使用して、およそ30℃〜40℃でおよそ15〜60時間培養する。必要に応じて、通気又は振動を加えることもできる。
マトリプターゼステムのポリペプチドが細胞に基づくスクリーニングアッセイ用に発現される場合、該ポリペプチドは細胞表面で産生されることが好ましい。この場合、細胞は、スクリーニングアッセイの使用前に回収できる。マトリプターゼステムのポリペプチドが培地に分泌される場合、該培地は前記ポリペプチドを単離するために回収できる。細胞内にて産生される場合、該細胞ははじめに、マトリプターゼステムのポリペプチドを回収する前に、溶解しなければならない。
マトリプターゼステムのポリペプチドは、組換え細胞培養物から、又は周知の方法によって他の生物学的供給源から回収及び精製でき、該方法には、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、分子篩クロマトグラフィ、遠心分離法、電気泳動法及びレクチンクロマトグラフィを含む。一実施態様において、これらの方法の組合せが使用される。別の実施態様において、高速液体クロマトグラフィが使用される。さらなる態様において、特にマトリプターゼステムのポリペプチドに結合する抗体は、前記ポリペプチドのマトリプターゼステムのポリペプチドを含むサンプルを減少させるか又は前記ポリペプチドを精製するために使用できる。
培養生成物から本発明のポリペプチド又はタンパク質を分離し及び精製するために、例えば、培養後に、微生物本体又は細胞を公知の方法で回収し、それらを適切な緩衝液に懸濁し、該微生物本体又は細胞を例えば超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解によって破壊し、その結果物をそれから遠心分離又は濾過に供し、その後に該タンパク質の粗抽出物を得ることができる。緩衝液は、尿素若しくは塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤、又はTriton X-100(商標)など界面活性剤を含むこともできる。タンパク質が培養液に分泌される場合、微生物本体又は細胞及び上清は、培養の完遂後に公知の方法により分離した後、その上清を回収する。このようにして得られた培養上清又は抽出物に含まれるタンパク質は、公知の単離及び精製法の適切な組合せにより精製できる。本発明のこのようにして得られたポリペプチド(タンパク質)は、公知の方法又はそれに従う方法によって、塩に変換できる。逆にいえば、本発明のポリペプチド(タンパク質)が塩の形態で得られる場合、該塩を公知の方法又はそれに従う方法により遊離タンパク質若しくはペプチド又は別の塩に変換できる。さらに、トリプシン又はキモトリプシンなどの適切なタンパク質修飾酵素を、組換えにより産生されるタンパク質に精製の前又は後に作用させて、修飾を適宜加えることができ、又はポリペプチドを部分的に取り除くことができる。本発明のポリペプチド(タンパク質)又はその塩の存在は、様々な結合アッセイ、特異的抗体を使用する酵素免疫アッセイなどにより測定できる。
マトリプターゼステムのポリペプチドが単離又は精製中に変性する場合、当技術分野に周知の技術をリフォールディングに使用し、該ポリペプチドの天然又は活性立体構造を再生することができる。本発明の文脈において、マトリプターゼステムのポリペプチドは、限定ではないが、組織サンプル、例えば胸部、結腸直腸、食道、胃、前立腺又は子宮組織サンプルなどの任意の供給源からの生体サンプルから得ることができる。
マトリプターゼステムのポリペプチドは、「成熟タンパク質」の形態であってよく、又は融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部でもよい。分泌若しくはリーダー配列、プレ-、プロ-若しくはプレプロ-タンパク質配列、又は親和性タグ、例えば限定ではないが、複数ヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグなど精製を助ける配列を含む追加的アミノ酸配列を含むことは、しばしば有利である。
マトリプターゼは、例えば、ヘモフィルス・インフルエンザBからのタンパク質Dとして知られる表層タンパク質、NS1などのインフルエンザウイルスからの非構造的タンパク質、B型肝炎からのS抗原、又はそのC末端などのLYTA(配列番号16)として公知のタンパク質などの異種融合パートナーと融合できる。
組換え製造の間、安定性を提供できるさらなる配列を使用することもできる。このような配列は、必要に応じて、追加的配列又はその一部として切断可能配列を組み込むことにより任意に除去できる。従って、マトリプターゼステムのポリペプチドは、他のポリペプチド又はタンパク質(例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ及びプロテインA)を含む他の部分に融合できる。このような融合タンパク質は、適切なプロテアーゼを使用して切断でき、その後、各タンパク質に分離し得る。このような追加的配列及び親和性タグは、周知技術である。上記に加えて、エンハンサ、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー及びSV40複製起点などの公知の特徴を、必要に応じて発現ベクターに加えることができる。
(マトリプターゼステムに対するアフィニティ試薬の生産)
当技術分野におけるものによると、3種の主要な免疫親和性試薬、すなわちモノクローナル抗体、ファージディスプレイ抗体、及びより小さな抗体由来分子、例えばアフィボディ、ドメイン抗体(dAbs)、ナノボディ、ユニボディ、DARPins、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディなどがある。一般に、抗体の使用が確立されている本発明による用途において、他の親和性試薬(例えばアフィボディ、ドメイン抗体、ナノボディ、ユニボディ、DARPins、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディ)を使用できる。このような物質は、マトリプターゼに免疫特異的に結合し得ると称し得る。必要に応じて、用語「親和性薬品」は、リガンド、レクチン、ストレプトアビジン、抗体模倣体及び合成結合剤を含むがこれらに限定されない、マトリプターゼに特異的に結合し得る免疫親和性試薬及び他の物質を含むことを意図するものとする。
(マトリプターゼステムに対する抗体の産生)
本発明に従って、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの類似体、マトリプターゼステムに対する関連タンパク質、又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を、免疫特異的にこのような免疫原を結合する抗体を産生する免疫原として使用できる。このような免疫原は、上記の方法を含む任意の好都合な手段により単離できる。本明細書で使用される用語「抗体」とは、抗原又はエピトープに特異的に結合できる、免疫グロブリン遺伝子若しくは免疫グロブリン遺伝子群又はその断片に由来するか、これを手本とするか、又はこれにより実質的にコードされる、ペプチド又はポリペプチドをいう。例えば「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」、第3版、W.E. Paul編, Raven Press, N.Y. (1993); Wilsonの論文 (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmushの論文 (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。用語抗体には、抗原結合部分、すなわち抗原を結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば断片、亜配列、相補性決定領域(CDR)を含み、該部位には、(i)すなわちVL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジドメインでジスルフィド結合により結合された2個のFab断片を含む二価の断片であるF(ab')2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単腕のVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardらの文献, (1989) Nature, 341:544-546);並びに、(vi)単離された相補性決定ドメイン(CDR);を含む。単鎖抗体も、言及により用語「抗体」に含まれる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体又は、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片及びF(ab')2断片、Fab発現ライブラリにより産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであり得る。
「特異的に結合」(又は「免疫特異的に結合」)という用語は、抗体が専らその意図する標的のみに結合することを示すことは意図されない。むしろ、抗体は、非標的分子に対するその親和性と比較した場合、その意図する標的に対するその親和性が約5倍より高い場合に、「特異的に結合する」。好適には、健常人又は動物の望ましくない物質、特に天然に存在するタンパク質又は組織との、有意な交差反応又は交差結合がない。抗体の親和性は、非対象分子に対するその親和性よりも、標的分子に対し、例えば、少なくとも約5倍、例えば10倍、例えば25倍、特に50倍、及び特別には100倍以上大きい。いくつかの実施態様において、抗体又は他の結合剤と抗原との特定の結合は、少なくとも106 M-1の結合親和性を意味する。抗体は、例えば少なくとも約107M-1、例えば約108M-1〜約109M-1、109M-1〜約1010M-1又は約1010M-1〜約1011M-1の親和性で結合できる。
親和性は、Kd=koff/konとして算出される(koffは、解離速度定数であり、konは、会合速度定数であり、及びKdは平衡定数である)。親和性は、平衡時に、様々な濃度(c)での標識されたリガンドの結合した画分(r)を測定することにより決定できる。データは、スキャッチャード方程式を使用してグラフ化される:r/c = K(n-r):
式中、
r=平衡時における、結合したリガンドのモル数/受容体のモル数;
c=平衡時の遊離リガンド濃度;
K=平衡会合定数;及び、
n=受容体分子1個あたりのリガンド結合部位の数。
図式解法により、r/cをY軸に、対してrをX軸にプロットし、こうしてスキャッチャードプロットを作製する。親和性は、当該直線の負の勾配である。koffは、結合した標識リガンドを過剰な非標識リガンドで競合させることにより決定できる(例えば、米国特許第6,316,409を参照されたい)。その標的分子に対する標的化剤の親和性は、例えば少なくとも約1×10-6モル/リットル、例えば少なくとも約1×10-7モル/リットル、例えば少なくとも約1×10-8モル/リットル、特に少なくとも約1×10-9モル/リットル、及び特別には少なくとも約1×10-10モル/リットルなどである。スキャッチャード分析による抗体親和性測定は、当技術分野において周知である。例えばvan Erpらの文献, J. Immunoassay 12: 425-43, 1991; Nelson及びGriswoldの文献, Comput. Methods Programs Biomed. 27: 65-8, 1988を参照されたい。
当技術分野で公知の方法は、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの類似体、マトリプターゼステムの関連ポリペプチド、又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を認識する抗体を産生するために使用する。当業者は、例えば「抗体:研究室マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」, Harlow及びDavid Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されるような多くの手順が抗体の産生に使えることを認めるであろう。当業者は、抗体を模倣する結合断片又はFab断片が様々な手順により遺伝情報から調製することもできることも認めるであろう(「抗体工学:実践的アプローチ(Antibody Engineering: A Practical Approach)」(Borrebaeck, C.編), 1995, Oxford University Press, Oxford; J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))。
本発明の一実施態様において、マトリプターゼステムの特定のドメインに対する抗体が産生される。特定の実施態様において、マトリプターゼステムの親水性断片を、抗体産生の免疫原として使用する。
抗体産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により達成できる。例えば、マトリプターゼステムの特定のドメインを認識する抗体を選択するために、このようなドメインを含んでいるマトリプターゼステムの断片に結合する生成物について、生成されたハイブリドーマをアッセイできる。マトリプターゼステムの第1の相同体を特異的に結合するが、マトリプターゼステムの第2の相同体には特異的に結合しない(又はより弱く結合する)抗体の選択について、マトリプターゼステムの第1の相同体に対する正の結合、及びマトリプターゼステムの第2の相同体に結合することの欠如(又は結合の減少)に基づいて選択できる。同様に、マトリプターゼステムを特異的に結合するが、(マトリプターゼステムとして同じコアペプチドを有する異なるグリコフォームなどの)同じタンパク質の異なるアイソフォームに特異的に結合しない(又はより弱く結合する)抗体の選択について、マトリプターゼステムへの正の結合、及び異なるアイソフォームに結合することの欠如(又は結合の減少)に基づいて選択できる。従って、本発明は、マトリプターゼステムの異なるアイソフォーム又はアイソフォーム(例えばグリコフォーム)よりも、マトリプターゼステムに対してより大きな親和性(例えば、少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、特に少なくとも10倍大きな親和性)で結合する抗体(モノクローナル抗体など)を提供する。同様に、マトリプターゼステムを特異的に結合するが、全長マトリプターゼ(配列番号1により規定される)に特異的に結合しない(又はより弱く結合する)抗体の選択について、マトリプターゼステムへの正の結合、及び全長マトリプターゼに結合することの欠如(又は結合の減少)に基づいて選択できる。従って、本発明は、全長マトリプターゼよりも、マトリプターゼステムに対してより大きな親和性(例えば、少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、特に少なくとも10倍大きな親和性)で結合する抗体(モノクローナル抗体など)を提供する。
本発明の方法で使用できるポリクローナル抗体は、免疫動物の血清に由来する抗体分子の異質集団である。非分画免疫血清を使用することもできる。公知の様々な手順は、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに対する関連ポリペプチド、又はマトリプターゼステムに対する関連ポリペプチドの断片に対するポリクローナル抗体の産生のために使用できる。例えば、1つの方法は、関心対象のポリペプチドを精製すること、又は例えば周知技術の固相ペプチド合成法を使用して関心対象のポリペプチドを合成することである。例えば、「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purification)」, Murray P. Deutcher編, Meth. Enzymol. Vol 182 (1990); 「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」, Greg B. Fields編, Meth. Enzymol. Vol 289 (1997); Kisoらの文献, Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 38: 1192-99, 1990; Mostafaviらの文献, Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids 1: 255-60, 1995; Fujiwaraらの文献, Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 44: 1326-31, 1996。選択されたポリペプチドはそれから、ウサギ、マウス、ラット、その他を含むがこれらに限定されるものではない様々な宿主動物を免疫するために注入によって使用し、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を生成することができる。マトリプターゼステムをゲル電気泳動により精製する場合、マトリプターゼステムは、先立ってのポリアクリルアミドゲルからの抽出を伴い又は伴わず、免疫に使用できる。様々なアジュバント(すなわち免疫賦活剤)は、宿主種に応じて、免疫学的反応を強化するために使用でき、該アジュバントには、完全又は不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメットゲラン桿菌)又はコリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)などのアジュバントを含むがこれらに限定されない。追加的なアジュバントも、周知技術である。
マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに対する関連ポリペプチド、又はマトリプターゼステムに対する関連ポリペプチドの断片に対して指示されたモノクローナル抗体(mAbs)の調製について、培養の連続細胞系により抗体分子の産生を提供する全ての技術を使用できる。例えば、ハイブリドーマ技術は、最初に、Kohler及びMilstein(1975, Nature 256:495-497)により、並びにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborらの文献, 1983, Immunology Today 4:72)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ技術(Coleらの文献, 1985, 「モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」中, Alan R. Liss社, pp. 77-96)により開発された。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそのいずれかのサブクラスを含む、いずれかの免疫グロブリンのクラスのものであり得る。本発明のmAbsを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養してもよい。本発明のさらなる実施態様において、モノクローナル抗体は、公知の技術を利用して無菌動物において産生できる(PCT/US90/02545、引用により本明細書に組み込まれる)。
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)を含むが、これらに限定されない。キメラ抗体は、異なる部分がヒト免疫グロブリン定常ドメイン及びマウスmAb由来の可変領域を有するものなどの異なる種由来である分子である。 (例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号;及びBossらの米国特許第4,816397号を参照されたく、これらは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ヒト化抗体は、非ヒト種からの1以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種からの抗体分子である。 (例えば、Queenの米国特許第5,585,089号を参照されたく、これは、その全体が引用により本明細書に組み込まれる)。
キメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の組換えDNA技術により産生でき、例えば以下に記載された方法を使用する:PCT公開番号WO87/02671;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT公開番号WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterらの文献、1988、Science, 240:1041-1043;Liuらの文献、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liuらの文献, 1987, J. Immunol. 139:3521 3526; 139:3521-3526;Sunらの文献、1987、Proc .Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimuraらの文献, 1987, Canc. Res. 47:999-1005;Woodらの文献、1985、Nature, 314:446-449;及びShawらの文献、1988、J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559;Morrisonの文献、1985、Science, 229:1202-1207;Oiらの文献、1986、Bio/Techniques4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesらの文献、1986、Nature, 321:552-525;Verhoeyanらの文献、(1988) Science 239:1534;Beidlerらの文献, 1988, J. Immunol. 141:4053 4060。
完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療的治療に特に望ましい。このような抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して産生できる。トランスジェニックマウスは、通常の様式で、選択された抗原、例えばマトリプターゼステムの全体又は一部で免疫される。抗原に対して指示されたモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスにより収容されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、その後にクラススイッチ及び体細胞突然変異を受ける。従って、このような技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生できる。ヒト抗体を産生するこの技術の概要については、Lonberg及びHuszarの文献(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術、並びにこのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な考察については、以下を参照されたい:例えば米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び米国特許第5,545,806号。加えて、Medarex(Princeton, NJ)などの会社は、先に記載したものと類似の技術を使用して、選択された抗原に対して指示されたヒト抗体を提供するために関与できる。
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド選択(guided selection)」として言及される技術を使用して産生できる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)は、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を導くために使用する。 (Jespersらの文献 (1994) Bio/technology 12:899 903)。
本発明の抗体をファージディスプレイ技術を使用して産生し、選択された標的に結合するためのポリペプチドのライブラリを産生及び選別することもできる。例えば、Cwirlaらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6378-82, 1990; Devlinらの文献, Science 249, 404-6, 1990, Scott及びSmithの文献, Science 249, 386-88, 1990;並びにLadnerらの米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードしているDNAとそのポリペプチドとの間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、そのポリペプチドをコードするファージゲノムを封入しているキャプシドの一部としてポリペプチドを提示する、ファージ粒子により提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝的物質の間の物理的会合の確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時大量スクリーニングを可能にする。標的への親和性を有するポリペプチドを提示するファージはその標的に結合し、これらのファージは、標的への親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージにより提示されるポリペプチドの同一性は、それらの各ゲノムにより決定できる。これらの方法を用い、次に所望の標的に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドは、通常の手段により大量に合成できる。例えば、米国特許第6,057,098号を参照されたく、全ての表、図面及び特許請求の範囲を含む、その全体は引用により本明細書に組み込まれる。特に、このようなファージは、レパートリ又は組合せの抗体ライブラリ(例えばヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために利用できる。関心対象の抗原を結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を使用して、例えば標識抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕獲された抗原を使用して選択又は同定できる。これらの方法に使用されるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えで融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化されたFv抗体ドメインと共にファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。本発明の抗体を作成するために使用できるファージディスプレイ法は、以下の文献に開示された方法を含み:Brinkmanらの文献, J. Immunol.Methods 182:41 50 (1995);Amesらの文献, J. Immunol.Methods 184:177 186 (1995);Kettleboroughらの文献, Eur.J. Immunol.24:952 958 (1994);Persicらの文献, Gene 187 9-18 (1997);Burtonらの文献, Advances in Immunology 57:191-280 (1994);PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公報WO90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;及び、米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号及び第5,969,108号;これらの各々は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
上記の文献に記載するように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域を単離及び使用して、ヒト抗体を含む抗体全体、又はその他の所望の抗原結合断片を産生することができ、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む任意の所望の宿主において、例えば以下に詳細に記載するように発現させることができる。また、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2断片を組換えで産生する技術も、以下に開示されたものなどの当該技術分野において公知の方法を使用して利用できる:PCT公開公報WO92/22324;Mullinaxらの文献、BioTechniques, 12(6):864-869 (1992);及びSawaiらの文献、AJRI 34:26-34 (1995);及びBetterらの文献、Science, 240:1041-1043(1988)(前記引用文献は、これらの全体が引用により組み込まれる)。
単鎖Fvs及び抗体を産生するために使用できる技術の例には、以下に記載されるものを含む:米国特許4,946,778及び5,258,498;Hustonらの文献、Methods in Enzymology, 203:46-88(1991);Shuらの文献、PNAS 90:7995-7999(1993);及びSkerraらの文献、Science, 240:1038-1040(1988)。
本発明は、当該技術分野において公知の方法により作成できる二重特異性抗体の使用をさらに提供する。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいている(Milsteinらの文献, 1983、Nature, 305:537-539)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、そのうちの1つのみが正確に二重特異性構造を有する。親和性クロマトグラフィー工程により通常なされる正確な分子の精製は、むしろ扱いにくく、生成物収率は低い。同様の手法は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829に、及びTrauneckerらの文献、1991、EMBO J. 10:3655-3659に開示されている。
異なるアプローチ及びより好ましいアプローチに従って、所望の結合特異性をもつ抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、少なくともヒンジ、CH2及びCH3領域の部分を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。融合体の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常ドメイン(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。これは、該構築物に使用した不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する場合の実施態様において、該3つのポリペプチド断片の相互の比率を調整する際に大きな柔軟性を提供する。しかし、同等の比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収率を生じるときか、又は比率が特に意味を持たないときは、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を発現ベクターに挿入できる。
このアプローチの好ましい実施態様において、二重特異性抗体は、一方の腕の第1の結合特異性をもつハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とで構成する。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することは容易な分離方法を提供するので、この非対称構造が、望まれない免疫グロブリン鎖状結合からの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが判明した。このアプローチは、1994年3月3日に公開されたWO 94/04690に開示される。二重特異性抗体の産生に関するさらなる詳細については、例えば、Sureshらの文献、Methods in Enzymology, 1986 121:210を参照されたい。
本発明は、抗マトリプターゼステム免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体又は類似体を提供する。機能的に活性とは、その断片、誘導体又は類似体が、断片、誘導体又は類似体が誘導される抗体により認識される同じ抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘発できることを意味する。詳細には、特定の実施態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワーク、及び特に抗原を認識するCDR配列に対するC末端であるCDR配列の削除により強化できる。どのCDR配列が抗原を結合するかについて決定するために、CDR配列を含んでいる合成ペプチドを、公知技術の任意の結合アッセイ方法による、抗原との結合アッセイに使用できる。
本発明は、限定ではないが、F(ab')2断片及びFab断片などの抗体断片を提供する。特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術により産生してもよい。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖定常ドメイン、及び重鎖のCH1ドメインからなり、抗体分子のペプシン消化により産生される。Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生される。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖と軽鎖との二量体、又はFvs若しくは単鎖抗体(SCA)などの任意のその最小断片 (例えば、米国特許第4,946,778号;Birdの文献、1988、Science, 242:423-42;Hustonらの文献、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883;及びWardらの文献、1989、Nature, 334:544-54)又は本発明の抗体と同じ特異性を有する任意のその他の分子を提供する。単鎖抗体は、アミノ酸ブリッジを介してFvドメインの重鎖及び軽鎖断片を結合して単鎖ポリペプチドを生じることにより形成される。大腸菌(E. coli)における機能的Fv断片の集合体についての技術を使用してもよい(Skerra らの文献, 1988、Science, 242:1038-1041)。
その他の実施態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質(又はその機能的に活性な断片)、例えば免疫グロブリンがN末端又はC末端にて共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して、その免疫グロブリンでない別のタンパク質のアミノ酸配列(又はその一部、好ましくは該タンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)に融合する融合タンパク質を提供する。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片は、定常ドメインのN末端にて他のタンパク質に共有結合で結合する。上記のように、このような融合タンパク質は、精製を容易にし、インビボでの半減期を増大し、及び免疫系に対する上皮関門を通る抗原の送達を増強し得る。
本発明の免疫グロブリンには、共有結合が免疫特異的結合を損なわない限り、修飾された(すなわち、任意のタイプの分子の共有結合により)類似体及び誘導体を含む。例えば、制限する目的ではないが、免疫グロブリンの誘導体及び類似体には、例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド若しくはその他のタンパク質に対する結合などによりさらに修飾されたものを含む。任意の多数の化学的修飾を、特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これらに限定されない公知技術により実行できる。加えて、類似体又は誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含むことができる。
前述の抗体は、マトリプターゼステムの局在及び活性に関する周知技術の方法で、例えば、イメージング、適切な生理的サンプルにおけるそのレベルの測定、診断法などについて使用できる。
マトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得るモノクローナル抗体を調製する具体的方法には、マトリプターゼステム(例えば、配列番号 10〜13のいずれか1つにより定義される)であるタンパク質又はその免疫原性断片、マトリプターゼステムを含んでいる融合タンパク質又はその免疫原性断片で非ヒト動物(例えばマウス又はウサギ)を免疫をする工程、いずれかの事例において任意に免疫賦活剤(例えばミョウバン、CpG、Ribiアジュバント)と共にこのようなタンパク質を発現する細胞で非ヒト動物を免疫する工程を含む。典型的な融合タンパク質は、N末端オステオネクチンシグナル配列並びにC末端第Xa因子切断部位及びヒトFcG1と共にマトリプターゼステム又はその免疫原性断片を含む。例えば、非ヒト動物は、例えば配列番号 15により定義される融合タンパク質、又は前記タンパク質を発現する細胞で免疫できる。本方法のさらなる工程は典型的には、前記動物から抗体産生細胞を単離すること、該細胞を不死化細胞(例えばSp2/0骨髄腫細胞株(ATCC CRL 1581))と融合させて抗体産生ハイブリドーマを生産することにより該細胞を不死化させることを含み得る。抗体はその後、前記ハイブリドーマから単離できる。所望であれば、抗体の特異性は、ハイブリドーマ形成の前又は後のいずれかに、免疫特異的にマトリプターゼステムに結合するそれらの能力を測定することにより評価できる(例えば実施例3を参照されたい)。上述の通り、トランスジェニック動物(例えばトランスジェニックマウス)は、完全ヒト抗体を産生するために使用できる。このようなトランスジェニック動物は、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現させ、かつ内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現させないように改変される。あるいは、非ヒト動物抗体は、ヒト化できる。マトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得るヒト化モノクローナル抗体は、このような非ヒト動物モノクローナル抗体の1以上のCDR(例えば、軽鎖及び重鎖の各々についての2、3、4、5又は6以上(例えば1、2又は3以上)を有することにより適切に特徴づけられる。ヒト化抗体は、このようなモノクローナル抗体及び可変領域のヒト又はヒト化フレームワーク領域のCDRを有し得る。定常領域が存在する場合、これ(これら)は典型的にはヒトである。全(二価)抗体を使用でき、又はその誘導体(例えばFab断片、ScFv誘導体)を上記の通りに調製できる。
(マトリプターゼステムに対するアフィボディの産生)
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58アミノ酸残基タンパク質ドメインに基づき、親和性タンパク質の新規なクラスを表す。この3ヘリックス束ドメインは、所望の分子を標的化するアフィボディバリアントをファージディスプレイ技術を使用して選択できる、コンビナトリアルファージミドライブラリの構築物の足場として使用される(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PAの文献、「αヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain)」, Nat Biotechnol 1997;15:772-7. Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PAの文献, 「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA(IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。この低分子量(6kDa)と組合せてアフィボディ分子の単純で頑強な構造は、多種多様な用途、例えば検出試薬として(Ronmark J, Hansson M, Nguyen Tらの文献, 「大腸菌で産生されるアフィボディ-Fcキメラの構築及び特徴づけ(Construction and characterization of affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli)」, J Immunol Methods 2002;261:199-211)、及び受容体相互作用を阻害することに(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PAの文献,「コンビナトリアルタンパク質操作により開発されたCD28結合アフィボディによるCD28-CD80共刺激の阻害(Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding アフィボディ ligand developed by combinatorial protein engineering)」, Protein Eng 2003、16:691-7)該タンパク質を適合化させる。アフィボディのさらなる詳細及びその産生方法は、その全体が本明細書に引用により組み込まれる米国特許第5831012号を参照することにより得ることができる。
また、標識化されたアフィボディも、アイソフォームの存在量を測定するためのイメージング用途に有用であろう。
(マトリプターゼステムに対するドメイン抗体の産生)
ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最も小さな機能的結合単位であり、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖いずれかの可変領域に対応する。ドメイン抗体は、およそ13kDaの分子量を有する。Domantisは、完全ヒトVH及びVL dAbの一連の大きくかつ高度に機能的なライブラリ(それぞれのライブラリに10,000,000,000を超える異なる配列)を開発し、これらのライブラリを使用して治療標的に対し特異的なdAbを選択する。多くの従来の抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞株において十分に発現する。ドメイン抗体のさらなる詳細及びその産生方法は、以下を参照することにより得ることができる:米国特許第6,291,158号;6,582,915;6,593,081;6,172,197;6,696,245;米国特許出願第2004/0110941号;欧州特許出願第1433846号、並びに欧州特許第0368684号及び第0616640号;WO05/035572、WO04/101790、WO04/081026、WO04/058821、WO04/003019及びWO03/002609(これらのそれぞれは、その全体が本明細書に引用により組み込まれる)。
(マトリプターゼステムに対するナノボディの産生)
ナノボディは、天然に存在する重鎖抗体の固有の構造的及び機能的な特性を含む、抗体由来の治療的タンパク質である。これらの重鎖抗体には、1つの可変領域(VHH)及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。重要なことに、クローン化され、単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の最大限の抗原結合能を有する完璧に安定ポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVHドメインと高い相同性を有し、いかなる活性の損失もなくさらにヒト化できる。重要なことに、ナノボディには低い免疫原性可能性があり、これはナノボディ鉛化合物での霊長類研究において確認された。
ナノボディは、従来の抗体の利点を、小分子薬の重要な特徴と結びつける。従来の抗体の様に、ナノボディは、高い標的特異性、それらの標的に対する高親和性、及び低い固有の毒性を示す。しかしながら、小分子薬の様に、それらは、酵素を阻害でき、容易に受容体間隙にアクセスできる。さらに、ナノボディは、極めて安定で、注入以外の手段により投与でき(例えば、WO 04/041867(その全てが引用により本明細書に組み込まれる)を参照)、製造するのが容易である。ナノボディの他の利点には、それらの小型の結果として一般的でない又は隠れたエピトープを認識すること、それらの独特な三次元的薬剤形式柔軟性に起因する高親和性及び選択性を有するタンパク質標的の空腔又は活性部位への結合、半減期の設定、並びに薬剤発見の容易さ及びスピードを含む。
ナノボディは1つの遺伝子によりコード化され、ほとんど全ての原核及び真核生物宿主、例えば大腸菌(例えば、引用によりその全てが本明細書に組み込まれるUS 6,765,087を参照)、カビ(例えばアスペルギルス(Aspergillus)又はトリコデルマ(Trichoderma))及び酵母(例えばサッカロミセス(Saccharomyces)、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)、ハンセヌラ(Hansenula)又はピキア(Pichia))(例えば、引用によりその全てが本明細書に組み込まれるUS 6,838,254を参照)において、効率的に産生される。製造プロセスは拡張可能であり、マルチキログラム量のナノボディが産生された。ナノボディは従来の抗体と比較して優れた安定性を呈するので、それらは長い貯蔵寿命(すぐに使える溶液)として製剤化できる。
ナノクローン法(例えば、引用によりその全てが本明細書に組み込まれるWO 06/079372を参照)は、B細胞における自動化したハイスルーアウト選択に基づいて、所望の標的に対してナノボディを生成する特許された方法である。
(マトリプターゼステムに対するユニボディの産生)
ユニボディは、別の抗体断片技術である;しかしながら、これは、IgG4抗体のヒンジ部位の除去に基づく。ヒンジ部位の削除は、従来のIgG4抗体の基本的に半分のサイズで、IgG4抗体の二価結合領域よりもむしろ一価結合領域を有する分子を生じる。IgG4抗体は不活性で、それゆえ、免疫系と相互作用せず、これは免疫反応が要求されない疾患の治療のために有利であり得ることも周知であり、この効果はユニボディへと受け継がれる。例えば、ユニボディは、それが結合する細胞を阻害又は静止させるが殺さないことに機能し得る。加えて、癌細胞に結合しているユニボディは、該細胞が増殖することを促進しない。さらに、ユニボディは従来のIgG4抗体の約半分のサイズであるので、それらは潜在的に有利な有効性を有するより大きな固形腫瘍よりも良好な分布を示すことができる。ユニボディは、全IgG4抗体と同程度の速度で身体から除去され、それらの抗原に対し全抗体と同等の親和性で結合できる。ユニボディのさらなる詳細は、特許WO2007/059782を参照することで得ることができ、これは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
(マトリプターゼステムに対するDARPinsの産生)
DARPins(設計されたアンキリンリピートタンパク質)は、非抗体ポリペプチドの結合能力を利用するために開発された抗体模倣DRP(設計されたリピートタンパク質)技術の1例である。アンキリン又はロイシンリッチリピートタンパク質などのリピートタンパク質は、遍在的な結合タンパク質であり、抗体とは異なり、細胞内及び細胞外に生じる。これらの独特なモジュラ構造は、反復する構造単位(繰り返し)を特徴とし、これは一緒に束となり、可変的かつモジュラ標的結合表面を提示する伸長した繰り返しドメインを形成する。このモジュラリティに基づいて、非常に多様化された結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリを生成できる。この戦略には、可変表面残基及び繰り返しドメインへのそれらのランダムなアセンブリを提示する自己適合性リピートのコンセンサス設計を含む。
DARPinsは非常に高い収率で細菌発現系で産生でき、これらは公知の最も安定なタンパク質に属する。ヒトの受容体、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルス及び膜タンパク質を含む、幅広い範囲の標的タンパク質に対する高度に特異的な高親和性DARPinsが選択された。一桁のナノモル〜ピコモルの範囲で親和性を有するDARPinsを得ることができる。
DARPinsは、ELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー分析(FACS)、免疫組織化学(IHC)、チップ適用、親和性精製又はウエスタンブロット法を含む、広範囲の用途において使用した。DARPinsはまた、細胞内区画において、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合した細胞内標識タンパク質として高度に活性であることが証明された。DARPinsはさらに、pM範囲のIC50を有するウィルス侵入を阻害するために用いた。DARPinsは、タンパク質-タンパク質相互作用を阻止するために理想的であるのみならず、酵素も阻害する。プロテアーゼ、キナーゼ及び輸送体は、多くの場合アロステリック阻害様式で成功的に阻害された。血液比率に対する腫瘍及び非常に良好な腫瘍上の非常に速くかつ特定の富化は、DARPinsをインビボ診断又は治療アプローチによく適合させる。
DARPinsに関する付加的情報及び他のDRP技術は、米特許出願公開番号第2004/0132028号及び国際特許出願公開WO 02/20565に見出すことができ、この両方は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
(マトリプターゼステムに対するアンチカリンの産生)
アンチカリンは付加的な抗体模倣の技術であるが、この場合において、結合特異性は、ヒト組織及び体液において自然にかつ豊富に発現される低分子量のタンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、化学的感応性又は不溶性な化合物の生理的輸送及び貯蔵に関連したインビボ機能の範囲を実施するために進化した。リポカリンは、該タンパク質の1つの終点で4つのループを支持する高度に保存されたβバレルを含む頑強な固有の構造を有する。これらのループは結合ポケットへの入口を形成し、該分子のこの一部の高次構造的差異は個々のリポカリン間の結合特異性における変化を説明する。
保存されたβ-シートフレームワークにより支持された超可変ループの全体構造は、免疫グロブリンを暗示するが、リポカリンはサイズに関してかなり抗体と異なり、単一の免疫グロブリンドメインよりわずかに大きい160〜180アミノ酸の単一ポリペプチド鎖から成る。
リポカリンはクローン化され、これらのループはアンチカリンを作成するために操作に供される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリを作成し、アンチカリンディスプレイは、結合機能の選択及びスクリーニングを可能にし、それに原核又は真核生物システムにおけるさらなる分析についての可溶タンパク質の発現及び産生が続いた。研究は、事実上、いかなるヒト標的タンパク質に対しても特異的なアンチカリンを開発できることを成功的に証明し;これらは単離でき、ナノモル以上の範囲で結合親和性を得ることができる。
アンチカリンは、二重ターゲティングタンパク質(それゆえ、デュオカリンとよばれる)として形式化することもできる。デュオカリンは、標準製造プロセスを使用して1つの容易に産生されたモノマータンパク質の2つの別々の治療標的を結合するとともに、その2つの結合ドメインの構造方向に関わらずに標的特異性及び親和性を保持する。
単一の分子を介する複数の標的の調節は、単一の原因因子より多くのものを含むことが公知の疾患において特に有利である。さらに、デュオカリンなどの二価又は多価の結合形式は、疾患の細胞表面分子を標的化すること、シグナル伝達経路におけるアゴニスト効果の媒介、又は結合を介した強化された内部取り込み効果の誘導、及び細胞表面受容体のクラスタリングに顕著な潜在性を有する。さらに、デュオカリンの高い固有の安定性はモノマーアンチカリンと同等であり、デュオカリンに対して柔軟な製剤及び送達可能性を提供する。
アンチカリンに関する追加的情報は、米国特許第7,250,297号及び国際特許出願公開番号WO 99/16873で見出でき、この両方は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
(マトリプターゼステムに対するアビマーの生産)
アビマーは、インビトロエキソンシャフリング及びファージディスプレイによりヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化し、結合及び阻害特性を有するマルチドメインタンパク質を生じる。複数の独立結合ドメインを結合することは、結合活性を生じることが示されており、従来の単一エピトープ結合タンパク質と比較して向上した親和性及び特異性を生じる。他の潜在的利点には、大腸菌における複数の標的に特異的な分子の単純かつ効率的な生産、向上した耐熱性及びプロテアーゼに対する抵抗性を含む。ナノモル以下の親和性を有するアビマーは、様々な標的に対して得られた。
アビマーに関する追加的情報は、特許出願公開番号2006/0286603、2006/0234299、2006/0223114、2006/0177831、2006/0008844、2005/0221384、2005/0164301、2005/0089932、2005/0053973、2005/0048512、2004/0175756に見出すことができ、その全ては引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
(マトリプターゼステムに対するバーサボディの生産)
バーサボディは、15%超のシステインを有する3〜5kDaの小さなタンパク質であり、これは高ジスルフィド密度の足場を形成し、典型的タンパク質が有する疎水性核を置き換える。疎水性核を含む、少数のジスルフィドを有する多数の疎水性アミノ酸の置換は、より小さく、より親水性で(より少ない凝集及び非特異的結合)、プロテアーゼ及び熱により抵抗性であるタンパク質を結果的に生じ、かつ低密度のT細胞エピトープを有する。これは、MHC提示に寄与するほとんどの残基が疎水性であるからであるう。これら4つ全ての特性は、免疫原性に影響を及ぼすことが周知であり、一緒に、これらは免疫原性の大きな減少を引き起こすと予想される。
バーサボディについての着想は、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリ及びアネモネにより産生される天然の注射可能なバイオ医薬品から来ており、これらは予想外に低い免疫原性を呈することが公知である。選択された天然タンパク質ファミリーで始めることは、設計により、並びにサイズ、疎水性、タンパク質分解抗原プロセシング及びエピトープ密度を選別することにより、天然の注射可能なタンパク質について平均よりはるかに下のレベルに最小化される。
バーサボディの構造を与えられ、これらの抗体模倣体は、多価性、複特異性、半減期メカニズムの多様性、組織標的化モジュール、及び抗体Fc領域の不在を含む、多目的な形式を提供する。さらに、バーサボディは、大腸菌において高収量で製造され、これらの親水性及び小型のため、バーサボディは非常に可溶性で、高濃度に配合できる。バーサボディは、例外的に、熱安定(これらは沸騰できる)で、長期の貯蔵寿命を提供する。バーサボディに関する追加的情報は、引用によりその全てが本明細書に組み込まれる米特許出願公開番号第2007/0191272号に見出すことができる。
(親和性試薬の発現)
(抗体の発現)
本発明の抗体は、抗体の合成のために当業界で公知のいかなる方法によっても生産でき、特に、化学合成により又は組換え発現により生産でき、好ましくは組換え発現技術により生産される。
抗体又はその断片、誘導体若しくは類似体の組換え発現には、該抗体をコードする核酸の構築物が必要である。抗体ヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードする核酸は、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てることができ(例えば、Kutmeierらの文献, 1994, BioTechniques, 17:242に記載するように)、これには、簡潔には、抗体をコードする配列の部分を含む重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、次いでPCRによる連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
あるいは、抗体をコードする核酸は、抗体をクローニングすることにより得てもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手不可能であるが、該抗体分子の配列が公知である場合、該抗体をコードする核酸は、該配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅により又は特定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用してクローニングすることにより適切な供与源(例えば、抗体cDNAライブラリ又は該抗体を発現する任意の組織又は細胞から作製したcDNAライブラリ)から得てもよい。
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(又はこのような抗体をコードする核酸をクローニングするためのcDNAライブラリについての供与源)が入手不可能である場合、特定の抗原に特異的な抗体を、当該技術分野において公知の任意の方法により例えばウサギなどの動物を免疫して、ポリクローナル抗体を産生することにより又はより好ましくはモノクローナル抗体を産生することにより産生してもよい。あるいは、少なくとも抗体のFab部分をコードするクローンは、特異性抗原を結合するFab断片のクローンについてのスクリーニングFab発現ライブラリ(例えばHuseらの文献, 1989, Science 246:1275-1281にて説明したように)により又は抗体ライブラリを選別することにより得られることが可能である(例えば、Clacksonらの文献, 1991, Nature 352:624; Haneらの文献, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937を参照されたい)。
いったん少なくとも抗体分子の可変領域をコードする核酸が得られると、これは該抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでいるベクターに導入できる(例えば、PCT公開公報WO 86/05807;PCT公開公報WO 89/01036;及び、米国特許第5,122,464号を参照されたい)。完全な抗体分子の発現を可能にする核酸での同時発現についての完全な軽鎖又は重鎖を含むベクターも利用できる。次いで、抗体をコードする核酸を使用して、スルフヒドリル基を含まないアミノ酸残基で鎖内ジスルフィド結合に関与する1以上の可変領域システイン残基を置換する(又は欠失させる)ために必要なヌクレオチド置換(群)又は欠失(群)を導入できる。このような修飾は、ヌクレオチド配列の特異的な突然変異又は欠失の導入についての当該技術分野において公知の任意の方法、例えば化学的突然変異誘発、インビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonらの文献, 1978, J. Biol. Chem. 253:6551)、PCTに基づいた方法などにより行うことができるが、これらに限定されない。
加えて、適切な生体活性のヒト抗体分子からの遺伝子と共に、適切な抗原特異性のマウス抗体分子から遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の生産のために開発された技術(Morrisonらの文献, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855; Neubergerらの文献, 1984, Nature 312:604-608; Takedaらの文献, 1985, Nature 314:452-454)を使用できる。上記のように、キメラ抗体は、マウスmAb及びヒト抗体定常ドメインに由来する可変領域を有する分子、例えばヒト化抗体などの異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。
いったん、本発明の抗体分子をコードする核酸が得られたら、該抗体分子の産生用ベクターを、当該技術分野において公知の技術を使用する組換えDNA技術により生産できる。従って、抗体分子配列を含む核酸を発現することにより本発明のタンパク質を調製するための方法を本明細書に記載する。当業者に公知の方法を使用して、抗体分子コード配列及び適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築できる。これらの方法には、例えばインビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ遺伝子組換えを含む。例えば、Sambrookらの文献(1990, 「分子クローニング、研究室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)及びAusubelらの文献(編集、1998, 「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, NY)に記載する技術を参照されたい。
発現ベクターを従来技術により宿主細胞に移し、次いで該トランスフェクト細胞を従来技術で培養し、本発明の抗体を産生する。
本発明の組換え抗体を発現するために使用される宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞、又は好ましくは、特に組換え抗体分子全体の発現のための真核細胞のいずれであってもよい。特に、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルスから主要な中初期遺伝子プロモータエレメントなどのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foeckingらの文献, 1986, Gene 45:101; Cockettらの文献, 1990, Bio/Technology 8:2)。
種々の宿主-発現ベクター系を利用して、本発明の抗体分子を発現させることができる。このような宿主-発現系は、関心対象のコード配列を産生し、その後に精製され得る培地を表すのみならず、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換されたか又はトランスフェクトされた場合、本発明の抗体分子をインサイチューで発現し得る細胞も表すことができる。これらには、以下を含むが、これらに限定されない:抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis))などの微生物;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピキア);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞株;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させたか、若しくは抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞株;又は、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモータ(例えばメタロチオネインプロモータ)、又は哺乳動物のウイルスに由来するプロモータ(例えばアデノウイルス後期プロモータプロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)を含んでいる組換え発現構造物を収容している哺乳動物細胞株(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3細胞)。
細菌系では、発現される抗体分子について意図される使用に応じて、多数の発現ベクターを都合よく選択できる。例えば、大量のこのようなタンパク質が産生されるときは、抗体分子を含む医薬組成物の産生について、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましいであろう。このようなベクターには、以下を含むが、これらに限定されない:融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列が個々にベクター内にlac Zコード領域とインフレームで結合され得る大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献, 1983, EMBO J. 2:1791);pINベクター(Inouye及びInouyeの文献、1985、Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke及びSchusterの文献、1989、J. Biol. Chem. 24:5503-5509);及び、その他。また、pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、マトリクスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着及び結合、続く遊離グルタチオンの存在下における溶出により、溶解した細胞から容易に精製できる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出できるように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
昆虫系では、外来遺伝子を発現するためにキンウワバ(Autographa californica)核多角体病ウィルス(AcNPV)をベクターとして使用する。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞内で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングしてもよく、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置いてもよい。哺乳動物宿主細胞では、多数のウイルスに基づく発現系(例えば、アデノウイルス発現系)を利用できる。
上記のように、挿入された配列の発現を調整し、又は要求される特定の様式の遺伝子産物を修飾して加工した宿主細胞を選択できる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、該タンパク質の機能に重要であり得る。
組換え抗体の長期多収の産生のためには、安定な発現が好ましい。例えば、関心対象の抗体を安定的に発現する細胞株は、該細胞を、抗体のヌクレオチド配列及び選択可能なヌクレオチド配列(例えばネオマイシン又はハイグロマイシン)を含む発現ベクターでトランスフェクトすること、及び該選択可能マーカーの発現を選択することにより産生できる。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接的に又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
抗体分子の発現レベルはベクター増幅により増加できる(概説について、Bebbington及びHentschelの文献、「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞においてクローン化された遺伝子の発現についての遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」、第3巻を参照。(アカデミックプレス、ニューヨーク、1987))。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能なとき、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルの増加は、該マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域が抗体遺伝子と関係しているので、抗体の産生も増加する(Crouseらの文献, 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
宿主細胞には、第1のベクターが重鎖由来ポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来ポリペプチドをコードする本発明の2つの発現ベクターを同時トランスフェクトできる。該2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含み得る。あるいは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用できる。このような状況において、有毒な過剰の遊離重鎖を避けるために、軽鎖を重鎖の前に置くべきである(Proudfootの文献, 1986, Nature 322:52; Kohlerの文献, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197)。重鎖及び軽鎖のコード配列には、cDNA又はゲノムDNAを含み得る。
いったん本発明の抗体分子が組換え発現されたならば、これを、抗体分子の精製についての当該技術分野において公知の任意の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA又は特異的抗原との親和性クロマトグラフィー、及びサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差動的溶解度により、又はタンパク質の精製についてのその他の任意の標準的技術により精製できる。
あるいは、任意の融合タンパク質を、発現される融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することにより容易に精製できる。例えば、Janknechtらの文献により記載される系により、ヒト細胞株において発現された非変性融合タンパク質の容易な精製が可能になる(Janknechtらの文献, 1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに対して翻訳可能的に融合されるように、関心対象の遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングする。タグは、融合タンパク質に対するマトリクス結合ドメインとして作用する。組換えワクシニアウイルスで感染させた細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに添加して、ヒスチジンタグ化タンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出させる。
次いで、これらの方法により産生された抗体を、最初に関心対象の精製されたポリペプチドとの親和性及び特異性についてスクリーニングして、必要であれば、結合から除外されることが望まれるポリペプチドとの抗体の親和性及び特異性の結果と比較することにより選択できる。スクリーニング手順には、マイクロタイタープレートの別々のウエルにおける精製ポリペプチドの固定化を含むことができる。次いで、可能性のある抗体又は抗体群を含む溶液をそれぞれのマイクロタイターのウエルに置き、約30分間〜2時間インキュベートする。次いで、マイクロタイターのウエルを洗浄し、標識された二次抗体(例えば、生じた抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼに抱合した抗マウス抗体)をウエルに添加し、約30分間インキュベートし、その後洗浄する。基質をウエルに添加すると、固定されたポリペプチド(群)に対する抗体が存在する場合、呈色反応が現れる。
このように同定された抗体は、それから、選択されたアッセイ設計における親和性及び特異性についてさらに分析できる。標的タンパク質に関する免疫アッセイ法の開発において、精製した標的タンパク質は、選択された抗体を使用する免疫アッセイ法の感受性及び特異性を判断するための標準としての役割を果たす。様々な抗体の結合親和性が異なり得るので;特定の抗体対(例えばサンドイッチアッセイにおいて)は互いに立体配置的などに干渉する可能性があり、抗体の分析性能は、抗体の絶対的親和性及び特異性より重要な測定であり得る。
当業者であれば、抗体又は結合断片を産生し、並びに種々のポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニング及び選択する際に多くのアプローチを採用できるが、これらのアプローチは本発明の範囲を変更しないことを認識するであろう。
治療的用途に関して、抗体(特に、モノクローナル抗体)は、適切には、ヒト抗体又はヒト化された動物(例えば、マウス)抗体であってもよい。動物性抗体は、免疫原としてヒトタンパク質(例えばマトリプターゼステム)を使用して、動物において抗体価を上げることができる。ヒト化は、典型的には、同定されたCDRをヒトフレームワーク領域近傍へと移植することを含む。通常、鎖の高次構造を最適化するためにいくつかのその後のレトロ突然変異が必要とされる。このような方法は、当業者に公知である。
(アフィボディの発現)
アフィボディの構造は、他で記載されている(Ronnmark J, Gronlund H, Uhle´ n, M., Nygren P.A'の文献, 「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA (IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655.)、これにはアフィボディファージディスプレイライブラリの構成を含む(Nord, K., Gunneriusson, E., Ringdahl, J., Sta'hl, S., Uhle´ n, M. & Nygren, P.A'の文献, 「aヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1997, Nat. Biotechnol.15, 772-777)。
バイオセンサ結合研究を使用しての最適アフィボディバリアントを調査するためのバイオセンサ分析も他に記載されている(Ronnmark J, Gronlund H, Uhle´ n, M., Nygren P.A'の文献, 「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA (IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655.)。
(親和性試薬の修飾)
好ましい実施態様において、抗体又はその断片などの抗マトリプターゼステム親和性試薬を、診断部分(検出可能な標識など)又は治療的部分に抱合化する。抗体は、診断のために、又は所与の治療計画の有効性を決定するために使用できる。検出は、抗体を検出可能な物質(標識)に結合することにより容易にできる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光材料、生物発光材料、放射性核種、ポジトロン放射金属(ポジトロン放出断層撮影での使用)及び非放射性常磁性金属イオンを含む。一般に、本発明に従った診断法として使用するために抗体に抱合できる金属イオンについては米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み;適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンを含み;適切な発光材料には、ルミノールを含み;適切な生物発光の材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み;及び、適切な放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcを含む。また、68Gaも利用できる。
抗マトリプターゼステム抗体又はそのその断片並びに他の親和性試薬は、所与の生体反応を修飾するために治療薬又は薬部分に抱合化できる。親和性試薬が抱合化できる典型的な治療薬は、細胞傷害性部分である。治療薬部分又は薬部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとして解釈されない。例えば、薬部分は、所望の生体活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質には以下を含み得る:例えば、アブリン、リシンA、プソイドモナス外毒素若しくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベータ、血栓薬又は抗血管新生薬剤、例えばアンジオスタチン若しくはエンドスタチンなどのタンパク質;又は、リンホカイン、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)若しくはその他の成長因子などの生体応答調節因子。
このような治療的部分を抗体に抱合するための技術は公知であり、以下を参照されたい:例えばArnonらの文献、「モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)」における「癌治療における薬物の免疫ターゲティングについてのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、Reisfeldらの文献、(編)、pp. 243-56(Alan R. Liss社、1985);Hellstromらの文献、「徐放性薬物送達(Controlled Drug Delivery)」における「薬物送達についての抗体(Antibodies For Drug Delivery)」(第2版)、Robinsonらの文献、(編)、pp. 623-53(Marcel Dekker社 1987);Pincheraら(編)「モノクローナル抗体'84:生物学的及び臨床適用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」におけるThorpeの文献「癌治療における細胞傷害剤の抗体担体:総説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」, pp. 475-506 (1985);Baldwinら(編)「癌の検出及び治療法のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)」における「癌治療法における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果及び将来的展望(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, pp. 303-16 (Academic Press 1985)、及びThorpeらの文献,「抗体毒素抱合体の調製及び細胞傷害特性(The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody Toxin Conjugates)」, Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)。
あるいは、Segalにより米国特許第4,676,980号に開示されたように、抗体を第2の抗体に抱合させて、抗体ヘテロ抱合体を形成できる。
抗体は、これに抱合された治療的部分の有無にかかわらず、単独で、又は細胞傷害性因子(群)及び/若しくはサイトカイン(群)と組合せて投与される治療薬として使用できる。
また本発明は、抗体に誘導された細胞媒介細胞毒性(ADCC)を誘発する、完全ヒト又はヒト化抗体を提供する。完全ヒト抗体は、タンパク質配列が天然に存在するヒト免疫グロブリン配列により単離されたものであって、単離された抗体産生ヒトBリンパ球由来、又はマウス免疫グロブリンコード化染色体領域がオルソログヒト配列で置き換えられたマウスのトランスジェニックマウスBリンパ球由来のいずれかである。後者のタイプのトランスジェニック抗体には、制限されないが、HuMab(Medarex社、CA)及びXenomouse(Abgenix社、CA)を含む。ヒト化抗体は、適切な抗原特異性の非ヒト抗体分子の定常領域が、適切なエフェクター機能を有するヒト抗体、好ましくはIgGサブタイプの定常領域で置き換えられたものである(Morrisonらの文献, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855; Neubergerらの文献, 1984, Nature 312:604-608; Takedaらの文献, 1985, Nature 314:452-454)。適切なエフェクター機能にはADCCを含み、これは癌細胞表面上の標的に結合した場合、完全ヒト抗体又はヒト化抗体が通常の免疫系の一部であるリンパ球の細胞殺害特性のスイッチを入れる自然的プロセスである。これらの活性リンパ球(ナチュラルキラー(NK)細胞と呼ばれる)は、抗体が結合した生細胞を破壊するために、細胞傷害プロセスを使用する。ADCC活性は、免疫応答性の生きたヒト対象から抽出された抗原特異的抗体及び末梢血単核細胞の存在下で、Eu3+標識された生細胞からのユーロピウム(Eu3+)の放出を測定することにより検出及び定量化できる。ADCCプロセスは以下に詳細に記載される:Janeway Jr. C.A.らの文献、Immunobiology、第5版、2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X;Pier G.B.らの文献, Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5;Albanell J.らの文献, Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68 及びWeng, W.-K.らの文献, Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p3940-3947。ADCCの検出及び定量化についての適切な方法は、Blombergらの文献, Journal of Immunological Methods. 1986, 86:p225-9; Blombergらの文献, Journal of Immunological Methods. 1986, 21;92:p117-23、及びPatel & Boydの文献, Journal of Immunological Methods. 1995, 184:p29-38において見出すことができる。
ADCCは、典型的には、NK細胞の活性化を含み、NK細胞表面上のFc受容体により抗体で被覆された細胞の認識に依存する。Fc受容体は、標的細胞表面に特異的に結合するIgGなどの抗体のFc(結晶質)部分を認識する。NK細胞の活性化を誘発するFc受容体は、CD16又はFcγRIIIaとよばれる。いったんFcγRIIIa受容体がIgG Fcに結合すると、NK細胞はIFN-γなどのサイトカイン、並びに標的細胞に入ってアポトーシスを誘発することにより細胞死を促進するパーフォリン及びグランザイムを含む細胞傷害性顆粒を放出する。
抗体による抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の誘導は、免疫系の細胞表面に存在する抗体定常領域(Fc)と様々な受容体の間の相互作用を変更する修飾により強化できる。このような修飾には、哺乳動物細胞における天然又は組換え合成の間に通常では抗体のFcに加えられる複雑なオリゴ糖鎖におけるα1,6結合されたフコース部分の還元又は不在を含む。好ましい実施態様において、抗体又はその断片などの非フコシル化抗マトリプターゼステム親和性試薬は、ADCC反応を誘導するこれらの能力を強化するためにもたらされる。
Fcのオリゴ糖類におけるα1,6結合されたフコース部分を還元又は除去するための技術は、十分に確立されている。1例において、組換え抗体は、α1,6結合におけるフコースを、N結合された二分岐複合体型Fcオリゴ糖の最も内側のN-アセチルグルコサミンに加えるその能力が欠損した細胞株において合成される。このような細胞株は、これに限定されないがラットハイブリドーマYB2/0を含み、これは低レベルのα1,6-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT8)を発現する。好ましくは、抗体は、FUT8遺伝子の両コピーの欠損により、α1,6結合されたフコシル部分を複雑なオリゴ糖鎖に加えることができない細胞株において合成される。このような細胞株は、FUT8-/-CHO/DG44細胞株を含むが、これに限定されるものではない。部分的にフコシル化された又は非フコシル化された抗体及び親和性試薬を合成する技術は、Shinkawaらの文献, J. Biol. Chem. 278:3466-34735 (2003); Yamane-Ohnukiらの文献, Biotechnology and Bioengineering 87: 614-22 (2004) 並びにWO00/61739 A1、WO02/31140 A1及びWO03/085107 A1に記載されている。第2の例において、組換え抗体のフコシル化は、N-アセチルグルコサミンを二分することを実行する複雑なN結合型オリゴ類の生産を最大化するレベルで糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼを過剰発現させるために遺伝子操作された細胞株の合成により低減されるか又は撤廃される。例えば、抗体は、酵素N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼIII(GnT III)を発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞株において合成される。細胞株は適切な糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼで安定的にトランスフェクションし、これらの細胞を使用して抗体を合成する方法はWO9954342に記載される。
非フコシル化された抗体又は親和性試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/又はサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用できる。
さらなる修飾において、抗体Fcのアミノ酸配列は、リガンド親和性に影響を及ぼすことなく、ADCC活性化を強化する方法で変えられる。このような修飾の例は、Lazarらの文献, Proceedings of the National Academy of Sciences 2006, 103:p4005-4010; WO03074679及びWO2007039818に記載される。これらの例において、抗体Fcのアミノ酸の置換、例えば239位のセリンについてのアスパラギン酸、及び332位のグルタミン酸についてのイソロイシンは、Fc受容体に対する抗体の結合親和性を変え、ADCC活性化の増加をもたらす。
アミノ酸置換による強化されたADCC活性化を有する抗体試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/又はサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用できる。
(乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の診断)
本発明によれば、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有することが疑われるか又は有することが既知の対象から得られた胸部、結腸直腸、食道、胃、前立腺又は子宮組織の試験サンプルを診断又はモニタリングのために使用できる。一実施態様において、コントロールサンプル(乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象から)又は予め決定された基準範囲に比較して試験サンプルにおけるマトリプターゼステムの多量性の変化は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の存在を示す。別の実施態様において、コントロールサンプル又は予め決定された基準範囲に比較して試験サンプルにおけるマトリプターゼステムの相対的多量性は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌のサブタイプを示す(例えば、炎症性乳癌;家族性又は散発的な結腸直腸癌;扁平上皮細胞食道癌;消化管間質腫瘍又は扁平上皮細胞頸部癌)。さらに別の実施態様において、コントロールサンプル又は予め決定された基準範囲に比較して試験サンプルにおけるマトリプターゼステムの相対的多量性は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌(例えば転移についての可能性)の程度又は重篤性を示す。上述した方法のいずれかにおいて、マトリプターゼステムの検出は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の1以上の追加的な生体標識の検出と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼアッセイ、マトリプターゼステムを検出し及び/又は視覚化する免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロット、免疫沈降に続くドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫組織化学、その他)を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法を使用して、マトリプターゼステムのレベルを測定できる。さらなる態様において、コントロールサンプル又は予め決定された基準範囲に比較して試験サンプルにおけるマトリプターゼステムをコードするmRNAの多量性の変化は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の存在を示す。任意の適切なハイブリダイゼーションアッセイ法を使用して、マトリプターゼステムをコードするmRNAを検出し及び/又は視覚化することによりマトリプターゼステム発現を検出することができる(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチュウハイブリダイゼーション、その他)。
本発明の別の一実施例において、マトリプターゼステムに特異的に結合する標識された抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を検出し、診断し又はモニタリングするための診断目的に使用できる。例えば、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌は、動物において、例えば哺乳動物及び特にヒトにおいて検出される。
(スクリーニングアッセイ)
本発明は、マトリプターゼステムに結合し、又はマトリプターゼステムの発現若しくは活性に刺激効果若しくは阻害効果を有する作用物質(例えば、候補化合物又は試験化合物)の同定方法を提供する。また本発明は、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質に結合するか、又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチド若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質の発現若しくは活性に刺激効果若しくは阻害効果を有する作用物質、候補化合物又は試験化合物の同定方法を提供する。作用物質、候補化合物又は試験化合物の例には、核酸(例えば、DNA及びRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態、小分子及び他の薬物を含むが、これらに限定されない。作用物質は、以下のものを含む、公知技術のコンビナトリアルライブラリ法における多数のアプローチのいずれかを使用して得ることができる:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス指定可能な並列固相又は溶液相ライブラリ;逆重畳を必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリ法;及び、親和性クロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリ法。生物学的ライブラリアプローチはペプチドライブラリに限られる一方で、その他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子ライブラリに適用できる(Lamの文献、1997、Anticancer Drug Des. 12:145;米国特許第5,738,996号;及び、米国特許第5,807,683号、それぞれ、その全体が引用により本明細書に組み込まれる)
分子ライブラリの合成についての方法の例は、当該技術分野において、例えば以下に見いだすことができる:DeWittらの文献、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909;Erbらの文献、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:11422;Zuckermannらの文献, 1994, J. Med. Chem. 37:2678;Choらの文献, 1993, Science 261:1303;Carrellらの文献, 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carellらの文献, 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;及び、Gallopらの文献, 1994, J. Med. Chem. 37:1233、これらのそれぞれは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
化合物のライブラリは、以下に存在し得る:例えば溶液中で(例えば、Houghtenの文献, 1992, Bio/Techniques, 13:412-421)、又はビーズ上(Lamの文献, 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodorの文献, 1993, Nature, 364:555-556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(特許番号5,571,698;5,403,484;及び5,223,409)、プラスミド(Cullらの文献, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1865-1869)若しくはファージ(Scot 及び Smithの文献, 1990 Science, 249:386-390;Devlinの文献, 1990, Science 249:404-406;Cwirlaらの文献, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;及びFeliciの文献, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)に存在し、これらのそれぞれは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
一実施態様において、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片(例えば機能的に活性な断片)、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片、又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)作用物質は、細胞に基づくアッセイ系で同定される。この実施態様によれば、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片、又はマトリプターゼステムの融合タンパク質を発現している細胞を候補化合物又はコントロール化合物と接触させ、マトリプターゼステムと相互作用する候補化合物の能力を測定する。所望の場合、このアッセイ法を使用して、複数の候補化合物(例えば、ライブラリ)を選別できる。該細胞は、例えば原核生物起源(例えば、大腸菌)又は真核生物起源(例えば、酵母又は哺乳動物)であり得る。さらに、細胞は、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質を内因的に発現できるか、又はマトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質を発現するために遺伝子操作できる。特定の場合において、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質、又は候補化合物は、例えば、放射性標識(例えば32P、35S及び125I)又は蛍光標識(例えばフルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド又はフルオレサミン)で標識し、マトリプターゼステムと候補化合物との間の相互作用の検出を可能にする。マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質により直接的に又は間接的に相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で測定できる。例えば、候補化合物とマトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質との間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーション分析、免疫沈降又はウェスタンブロット解析で測定できる。
別の実施態様において、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)作用物質は、無細胞アッセイ系で同定される。この実施態様によれば、マトリプターゼステム若しくはその断片の天然又は組換えポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド若しくはその断片の天然又は組換えポリペプチド、マトリプターゼステムの融合タンパク質若しくはその断片を候補化合物又はコントロール化合物と接触させ、マトリプターゼステム、又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチド、又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力を測定する。所望の場合、このアッセイ法を使用して、複数の候補化合物(例えば、ライブラリ)を選別できる。好ましくは、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質ははじめに、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質をそれが特異的に認識し結合する固定された抗体(又は他の親和性試薬)と接触させることにより、又はマトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片若しくはマトリプターゼステムの融合タンパク質の精製調製物をタンパク質を結合するように設計された表面と接触させることにより、固定される。マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質は、部分的に若しくは完全に精製でき(例えば部分的に又は完全に他のポリペプチドがない)、又は細胞溶解物の一部であり得る。さらに、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片は、マトリプターゼステム若しくはその生物学的活性部分を含む融合タンパク質、又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチド、及びグルタチオンSトランスフェラーゼなどのドメインであり得る。あるいは、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質は、当業者に周知の技術を使用してビオチン化できる(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals; Rockford, IL)。マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で測定できる。
別の実施態様において、細胞に基づくアッセイ系を使用して、マトリプターゼステムの産生又は分解の原因であり、又はマトリプターゼステムの翻訳後修飾の原因である酵素などのタンパク質又はその生物学的活性部分に結合し又はその活性を調節する作用物質を同定する。一次選別において、複数の化合物(例えばライブラリ)を、自然に又は組換え的に以下を発現する細胞と接触させる: (i)マトリプターゼステム、マトリプターゼステムのアイソフォーム、マトリプターゼステムの相同体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムの融合タンパク質又は前述のいずれかの生物学的に活性な断片;及び、(ii)マトリプターゼステム、マトリプターゼステムのアイソフォーム、マトリプターゼステムの相同体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムの融合タンパク質のプロセシングの原因であるタンパク質、又はマトリプターゼステム、マトリプターゼステムのアイソフォーム、マトリプターゼステムの相同体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムの融合タンパク質若しくは断片の産生、分解又は翻訳後修飾を調節する化合物を同定するための断片。必要に応じて、一次選別において同定された化合物をそれから、自然に又は組換え的にマトリプターゼステムを発現する細胞に対して二次選別においてアッセイできる。マトリプターゼステム、マトリプターゼステムのアイソフォーム、マトリプターゼステムの相同体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド又はマトリプターゼステムの融合タンパク質の産生、分解又は翻訳後修飾を調節する候補化合物の能力は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロット解析を含むがこれらに限定されない当業者に公知の方法で測定できる。
別の実施態様において、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質に競合的に相互作用する(すなわち、結合する)作用物質を競合結合アッセイで同定する。この実施態様によれば、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質を発現している細胞を、候補化合物、又はマトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させ;それから、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質に優先的に相互作用する候補化合物の能力を測定する。あるいは、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質に優先的に相互作用する(すなわち、結合する)作用物質は、無細胞アッセイ系において、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片、マトリプターゼステムの融合タンパク質を候補化合物、又はマトリプターゼステム、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させることにより同定される。上記のように、マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの断片、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムに関連するポリペプチドの断片又はマトリプターゼステムの融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で測定できる。細胞に基づくか、又は無細胞におけるいずれかで、これらのアッセイを使用して、複数の候補化合物(例えば、ライブラリ)を選別できる。
別の実施態様において、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの発現又は活性を調節する(すなわち、上方制御するか又は下方制御する)作用物質は、マトリプターゼステム又はマトリプターゼに関連するポリペプチドを発現している細胞(例えば原核起源又は真核生物起源の細胞)を候補化合物又はコントロール化合物(例えばリン酸緩衝食塩水(PBS))と接触させること、及び、マトリプターゼステム、マトリプターゼに関連するポリペプチド、又はマトリプターゼステムの融合タンパク質、マトリプターゼステムをコードするmRNA又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードするmRNAの発現を測定することにより同定される。候補化合物の存在下におけるマトリプターゼステム、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムをコードするmRNA又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルは、候補化合物の不在下における(例えばコントロール化合物の存在下における)マトリプターゼステム、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド、マトリプターゼステムをコードするmRNA又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルと比較する。候補化合物はそれから、この比較に基づいて、マトリプターゼステム、又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの発現のモジュレータとして同定できる。例えば、マトリプターゼステム又はmRNAの発現が、その不在においてより候補化合物存在下において著しく高い場合、該候補化合物はマトリプターゼステム又はmRNAの発現の刺激剤として同定される。あるいは、マトリプターゼステム又はmRNAの発現が、その不在においてより候補化合物存在下において著しく低い場合、該候補化合物はマトリプターゼステム又はmRNAの発現の阻害剤として同定される。マトリプターゼステム又はそれをコードするmRNAの発現レベルは、当業者に公知の方法により測定できる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロット分析又はRT-PCRにより評価することができ、タンパク質レベルは、ウエスタンブロット分析により評価できる。
別の実施態様において、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの活性を調節する作用物質は、マトリプターゼステム若しくはマトリプターゼステムに関連するポリペプチドを含む調製物、又はマトリプターゼステム若しくはマトリプターゼステムに関連するポリペプチドを発現する細胞(例えば原核又は真核生物細胞)を、試験化合物若しくはコントロール化合物と接触させること、及び、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの活性を調節する(例えば、刺激又は阻害する)試験化合物の能力を測定することにより、同定される。マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの活性は、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの細胞シグナル伝達経路の誘導(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3、その他)を検出すること、適切な基質における標的の触媒又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドに応答性であり、かつ検出可能なマーカー(例えばルシフェラーゼ)をコードする核酸に機能的に連結された制御エレメント)の誘導を検出すること、又は、細胞応答、例えば細胞分化若しくは細胞増殖を検出することにより、評価できる。本説明に基づき、当業者に公知の技術が、これらの活性を測定するために使用できる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。候補化合物はそれから、コントロール化合物に対する該候補化合物の効果を比較することにより、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの活性のモジュレータとして同定できる。適切なコントロール化合物には、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び通常の食塩水(NS)を含む。
別の実施態様において、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの発現、活性、又は発現及び活性の両方を調節する(すなわち、上方制御するか又は下方制御する)作用物質を動物モデルにおいて同定する。適切な動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコを含むが、これらに限定されない。好ましくは、使用する動物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌のモデルを表す(例えば、ヌードマウス又はSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L, Sordat M.の文献, Eur J Cancer. 1980;16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献, J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞株の異種移植片;エストロゲン欠乏SCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞株の異種移植片、Ecclesの文献 1994 Cell Biophysics 24/25, 279;ヌードマウスにおけるAZ-521などの胃細胞株の異種移植片;ヌードマウスにおけるCWR-22などの前立腺癌細胞株の異種移植片、Pretlowらの文献, J Natl Cancer Inst. 1993 Mar 3;85(5):394-8;又は、ヌードマウスにおけるCaSkiなどの子宮頸癌細胞株の異種移植片)。これらのモデルにおいて呈される病理は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌のそれと類似しているので、これらはマトリプターゼステムのレベルを調節する試験化合物に利用できる。この実施態様により、試験化合物又はコントロール化合物を適切な動物に投与し(例えば、経口的に、直腸に、又は非経口的に、例えば腹膜内に又は静注で)、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの発現、活性、又は発現及び活性の両方における効果を測定する。マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドの発現における変化を先に概要を示した方法で評価できる。
さらに別の実施態様において、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドは、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドに結合する又は相互作用する他のタンパク質を同定するためのツーハイブリッドアッセイ又はスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイトタンパク質」として使用される(例えば、米国特許5,283,317; Zervosらの文献 (1993) Cell 72:223 232; Maduraらの文献(1993) J. Biol. Chem. 268:12046 12054; Bartelらの文献(1993) Bio/Techniques 14:920 924; Iwabuchiらの文献(1993) Oncogene 8:1693 1696;及び、PCT公開公報WO 94/10300を参照されたい)。当業者に公知であるように、このような結合タンパク質は、例えば、マトリプターゼを含むシグナリング経路の上流又は下流の要素として、マトリプターゼステムによりシグナルの伝播に関与している可能性もある。
本発明は、先に記載したスクリーニングアッセイ法により同定される新規作用物質、及び本明細書に記載したような治療についてのその使用をさらに提供する。加えて、本発明はまた、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療についての薬剤の製造におけるマトリプターゼステムと相互作用するか又は活性を調節する作用物質の使用を提供する。
(マトリプターゼステムの治療的使用)
本発明は、治療的化合物の投与による様々な疾患及び障害の治療又は予防を提供する。このような化合物には、以下を含むが、これらに限定されるものではない:マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの類似体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド及びその誘導体(断片を含む);前述に対する抗体(又は他の親和性試薬);マトリプターゼステム、マトリプターゼステムの類似体、マトリプターゼステムに関連するポリペプチド及びその断片をコードする核酸;マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードする遺伝子に対するアンチセンス核酸;及び、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードする遺伝子のモジュレータ(例えばアゴニスト及びアンタゴニスト)。本発明の重要な特徴は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に関与するマトリプターゼステムをコードする遺伝子の同定である。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象の組織におけるマトリプターゼステムの機能又は発現を減少させる治療的化合物の投与により治療でき(例えば、症状を改善するか又は開始若しくは進行を遅延させる)又は予防できる。
一実施態様において、それぞれマトリプターゼステムに特異的に結合する1以上の抗体(又は他の親和性試薬)を、単独で、又は追加的な治療的化合物若しくは治療と組み合わせて投与する。
抗体(又は他の親和性試薬)などの生物学的生成物は、例えば、それが投与される対象に対し同種(allogeneic)である。一実施態様において、ヒトのマトリプターゼのステム若しくはヒトのマトリプターゼステムに関連するポリペプチド、ヒトのマトリプターゼのステム若しくはヒトのマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードする核酸、又はヒトのマトリプターゼのステム若しくはヒトのマトリプターゼステムに関連するポリペプチドに対する抗体(又は他の親和性試薬)を、治療法(例えば、症状を改善するか又は開始若しくは進行を遅延させる)又は予防についてヒト対象に投与する。
理論により制限されることなく、マトリプターゼステムに特異的に結合する抗体(又は他の親和性試薬)の治療的活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の現象を介して達成できることが想到される(例えば、Janeway Jr. C.A.らの文献, Immunobiology, 5th ed., 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X; Pier G.B. らの文献, Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5; Albanell J. らの文献, Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68 及び、Weng, W.-K. らの文献, Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947を参照されたい)。
(乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌の治療及び予防)
乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を発症する危険性のある対象への、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象の組織と比較して乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象の組織に示差的に存在するマトリプターゼステムのレベル又は活性(すなわち、機能)を調節する(増加又は減少させる)化合物の投与により、治療又は予防される。一実施態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を発症する危険性のある対象への、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有する対象の組織において減少したマトリプターゼステムのレベル又は活性(すなわち、機能)を上方制御する(すなわち増加させる)化合物を投与することにより、治療又は予防される。このような化合物の例には、マトリプターゼステムのアンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイム、マトリプターゼステムに対して指示された抗体(又は他の親和性試薬)、及びマトリプターゼステムの酵素活性を阻害する化合物を含むがこれらに限定されない。他の有用な化合物、例えばマトリプターゼステムのアンタゴニスト及びマトリプターゼステムの小分子アンタゴニストは、インビトロアッセイを使用して同定できる。
乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌はまた、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を発症する危険性のある対象への、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を有する対象の組織において増加したマトリプターゼステムのレベル又は活性(すなわち、機能)を下方制御する化合物の投与により、治療又は予防される。このような化合物の例には以下を含むが、これらに限定されない:マトリプターゼのステム、マトリプターゼステムの断片及びマトリプターゼのステムに関連するポリペプチド;マトリプターゼのステム、マトリプターゼステムの断片及びマトリプターゼステムに関連するポリペプチドをコードする核酸(例えば遺伝子療法における使用のため);及び、酵素活性を有するマトリプターゼステム又はマトリプターゼステムに関連するそれらのポリペプチド、該酵素活性を調節することが公知の化合物又は分子。使用できる他の化合物、例えばマトリプターゼのステムのアゴニストは、インビトロアッセイを使用して同定できる。
別の実施態様において、治療又は予防は、個々の対象の必要に合わせて調節する。従って、特定の実施態様において、マトリプターゼステムのレベル又は機能を促進する化合物は、マトリプターゼの前記ステムのレベル若しくは機能がないか、又はコントロール若しくは通常の基準範囲に比較して減少している乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。さらなる実施態様において、マトリプターゼステムのレベル又は機能を促進する化合物は、マトリプターゼの前記ステムのレベル若しくは機能がコントロール若しくは通常の基準範囲に比較して増加している乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。さらなる実施態様において、マトリプターゼステムのレベル又は機能を減少させる化合物は、マトリプターゼの前記ステムのレベル若しくは機能がコントロール若しくは通常の基準範囲に比較して増加している乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。さらなる実施態様において、マトリプターゼステムのレベル又は機能を減少させる化合物は、マトリプターゼの前記ステムのレベル若しくは機能がコントロール若しくは通常の基準範囲に比較して減少している乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。そのような化合物の投与によるマトリプターゼステムの機能又はレベルにおける変化は、例えば、サンプルを得ることにより、及びマトリプターゼステムのインビトロレベル若しくは活性、又はマトリプターゼステムをコードするmRNAのレベル、又は上述の任意の組合せをアッセイすることにより、容易に検出できる。このようなアッセイは、本明細書に記載するように、化合物の投与前又は後に行うことができる。
本発明の化合物には、正常な方へマトリプターゼステムプロフィールを回復させる任意の化合物、例えば小さな有機分子、タンパク質、ペプチド、抗体(又は他の親和性試薬)、核酸などを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は、任意の他の化学療法薬と組み合わせて与えることができる。
(ワクチン療法)
本発明の別の態様は、マトリプターゼステム若しくはその断片を含むエピトープ、又はマトリプターゼステムをコードする核酸、又は任意に免疫賦活剤と共にその断片を含む、免疫原性組成物、好適にはワクチン組成物である。
また、このような組成物を対象に投与することを含む免疫反応を上げる方法、並びに、このような組成物の治療上有効量をその必要のある対象に投与することを含む乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療方法又は予防方法、及び乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を予防又は治療することにおける使用のためのこのような組成物を提供する。
従って、マトリプターゼステムは抗原性物質として有用であり得、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療又は予防のためのワクチンの製造に使用できる。このような物質は、「抗原性」及び/又は「免疫原性」であり得る。通常、「抗原性」は、タンパク質が抗体(又は他の親和性試薬)を上げるために使用できるか、又は実際に対象若しくは実験動物における抗体反応を誘導できることを意味する。「免疫原性」は、タンパク質が対象又は実験動物において保護免疫反応を誘発できることを意味する。従って、後者の場合、該タンパク質は、抗体反応を引き起こすのみならず、さらに抗体に基づかない免疫反応をも引き起こし得る。また、「免疫原性」は、該タンパク質がインビトロ設定(例えばT細胞増殖アッセイ)における免疫様反応を誘発できるか否かも含む。適切な免疫反応の生成は、1以上のアジュバントの存在及び/又は抗原の適切な提示を必要とし得る。
当業者は、マトリプターゼステムの相同体又は誘導体も抗原性/免疫原性物質としての使用が見出されることを認識する。従って、例えば、1以上の付加、削除、置換等を含むタンパク質は、本発明に含まれる。加えて、1つのアミノ酸を別の類似の「タイプ」に置き換えることが可能であり得る。例えば、1つの疎水性アミノ酸を別のものに置き換える。アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを使用できる。このプログラムはアミノ酸配列を比較し、適切な様にいずれかの配列にスペースを挿入することにより最適整列を見出す。最適整列についてのアミノ酸同一性又は類似性(アミノ酸タイプの同一性及び保存)を算出することができる。BLASTxのようなプログラムは、類似配列で最も長いストレッチを整列配置し、値を適合に割り当てる。このようにしていくつかの類似領域が見出される比較を得ることが可能であり、その各々は異なるスコアを有する。両方のタイプの分析が、本発明において考察される。
相同体及び誘導体の場合、本明細書に記載するタンパク質との同一性の程度は、該相同体又は誘導体がその抗原性及び/又は免疫原性を保持すべきであることよりも重要ではない。しかしながら、好適には、本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチドとの少なくとも60%の類似性(上記のように)を有する相同体又は誘導体、例えば、少なくとも80%の類似性などの少なくとも70%の類似性を有する相同体又は誘導体を提供する。特に、少なくとも90%又は95%の類似性さえも有する相同体又は誘導体が提供される。好適には、相同体又は誘導体は本明細書に記載したタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の配列同一性を有し、例えば、相同体又は誘導体は少なくとも80%の同一性などの少なくとも70%の同一性を有する。特に、相同体又は誘導体は、少なくとも90%又は95%の同一性さえ有する。
代わりのアプローチにおいて、相同体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドに効果的にタグを付けることによって精製がより容易になる部分を組み込んた融合タンパク質であり得る。それは「タグ」を除去するのに必要であり得、又はそれは融合タンパク質自体が有用であるのに充分な抗原性を保持する場合でもあり得る。
エピトープ領域、すなわちタンパク質又はポリペプチドの抗原性又は免疫原性の原因となるその領域を同定するために抗原性タンパク質又はポリペプチドを選別することが可能であることは周知である。当業者に周知の方法は、抗原性について断片及び/又は相同体及び/又は誘導体を試験するのに使用できる。従って、本発明の断片は、1以上のこのようなエピトープ領域を含むべきであるか又はこれらの抗原性/免疫原性特異性を保持するためにこのような領域に十分に類似すべきである。従って、本発明による断片について、本明細書に記載するようにそれらはタンパク質又はポリペプチド、相同体又は誘導体の特定の部分に100%同一であり得るので、同一性の程度はおそらく無関係である。重要な問題は、再度、断片がそれが由来するタンパク質の抗原性/免疫原性特性を保持するということである。
相同体、誘導体及び断片にとって重要なことは、これらが、その由来するタンパク質又はポリペプチドの抗原性/免疫原性の少なくとも1を有することである。従って、追加的な本発明の態様において、マトリプターゼステムの抗原性若しくは免疫原性断片、又はその相同体又は誘導体を提供する。
マトリプターゼステム又はその抗原性断片は、精製された若しくは単離された調製物として、単独で提供できる。従って、さらなる態様において、本発明は、マトリプターゼステム及び/又はその1以上の抗原性断片を含む抗原組成物を提供する。このような組成物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の検出又は診断に使用できる。
本発明によるワクチン組成物は、予防的又は治療的なワクチン組成物のいずれでもよい。
本発明のワクチン組成物は、1以上のアジュバント(免疫賦活剤)を含み得る。周知技術の例には、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル類、及び不完全フロイントアジュバントなどの油中水乳剤を含む。アジュバントは、抗CTLA-4抗体又は抗PD-1抗体などの免疫療法であり得る。他の有用なアジュバントは、当業者に周知である。
癌の治療のためにワクチン組成物に使用される適切なアジュバントは、以下を含む:3De-Oアシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL又は単にMPLとして公知。WO92/116556を参照されたい)、サポニン、例えばQS21又はQS7、及び例えばWO95/26204にて開示されるCpG含有分子などのTLR4アゴニスト。
使用されるアジュバントは、構成要素、例えばMPL及びQS21又はMPL、QS21及びCpG含有部分の組合せでもよい。
アジュバントは、水中油乳剤又はリポソーム製剤として調製できる。
このような調製物は、他のビヒクルを含み得る。
別の実施態様において、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムのペプチド断片をコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの調製物を、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療についてのワクチンとして使用する。このような調製物は、アジュバント又は他のビヒクルを含み得る。
(乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌を治療するためのマトリプターゼステムの阻害)
本発明の一実施態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象の組織と比較して乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象の組織において上昇するマトリプターゼステムのレベル及び/又は機能をアンタゴナイズする(阻害する)化合物の投与により治療されるか又は予防される。
この目的のために有用な化合物には、抗マトリプターゼステム抗体(又は他の親和性試薬、並びにその結合領域を含んでいる断片及び誘導体)、マトリプターゼステムのアンチセンス又はリボザイム核酸、及び相同組換えによる内因性マトリプターゼステム機能を「ノックアウト」するのに使用される非機能的マトリプターゼステムをコードする核酸を含むがこれらに限定されない(例えば、Capecchiの文献, 1989, Science 244:1288-1292を参照されたい)。マトリプターゼステムの機能を阻害する他の化合物は、公知のインビトロアッセイ、例えば別のタンパク質又は結合パートナーへのマトリプターゼステムの結合を阻害する、又はマトリプターゼステムの公知の機能を阻害する試験化合物の能力についてのアッセイの使用により、同定できる。
このような阻害は、例えば、インビトロで又は細胞培養でアッセイできるが、遺伝的アッセイを使用することもできる。本明細書に記載する好ましい技術を使用して、化合物の投与の前後でマトリプターゼステムのレベルを検出することもできる。適切なインビトロ又はインビボアッセイは、以下により詳細に記載するように、具体的化合物の効果、及びその投与が罹患組織の治療を示すか否かを測定するのに利用される。
特定の実施態様において、マトリプターゼステムの機能(活性)を阻害する化合物は、本発明による治療を受けていない乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象の組織と比較して、マトリプターゼステムの組織レベル又は機能的活性の増加(例えば、正常レベル又は所望のレベルよりも高い)が検出される対象に治療的又は予防的に投与され、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象において見出されるレベル若しくは活性又は予め決定された基準範囲をもたらすように治療的又は予防的に投与される。先に概説したような当該技術分野における標準的方法を利用して、マトリプターゼステムのレベル又は機能における増加を測定できる。マトリプターゼステムの適切な阻害因子組成物は、例えば、小分子、すなわち1000ダルトン以下の分子を含み得る。このような小分子は、本明細書に記載するスクリーニング法により同定できる。
(治療的又は予防的化合物についてのアッセイ)
本発明は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌の治療又は予防についての化合物の有効性を同定又は検証するために、創薬における使用のためのアッセイも提供する。
従って、マトリプターゼのステムの活性を調節する化合物のスクリーニングの方法を提供し、該方法は以下を含む: (a)マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分を候補化合物と接触させること;及び(b)マトリプターゼステムの活性がそれにより調節されているか否かを測定すること。このようなプロセスは、(a) マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分をサンプル中の候補化合物と接触させること;及び、(b)前記候補化合物を接触させた後の前記サンプル中のマトリプターゼステム又はその生物学的活性部分の活性を、前記候補化合物を接触させる前の前記サンプル中のマトリプターゼステム又はその生物学的活性部分の活性と、又は基準レベルの活性と比較すること;を含み得る。
スクリーニングの方法は、マトリプターゼのステムの活性を阻害する化合物のスクリーニングの方法でもよい。
マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分は、例えば細胞上に又は細胞により発現され得る。マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分は、例えばそれを発現する細胞から単離できる。マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分は、例えば固相上に固定できる。
マトリプターゼステム又はマトリプターゼのステムをコードする核酸の発現を調節する化合物のスクリーニングの方法も提供し、該方法は以下を含む:(a)マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸を発現している細胞を候補化合物と接触させること;及び、(b) マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸の発現がそれにより調節されているか否かを測定すること。このようなプロセスは、(a)マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸を発現している細胞をサンプル中の候補化合物と接触させること;及び、(b)前記候補化合物を接触させた後の前記サンプル中のマトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸の発現を、前記候補化合物を接触させる前の前記サンプル中のマトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸の発現と、又は基準レベルの発現と比較すること;を含み得る。
該方法は、マトリプターゼステム又はマトリプターゼのステムをコードする核酸の発現を阻害する化合物のスクリーニング方法であり得る。
本発明の他の態様は、以下を含む:上述したスクリーニング法により入手できる化合物、マトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸の活性又は発現を調節する化合物、例えばマトリプターゼステム又はマトリプターゼステムをコードする核酸の活性又は発現を阻害する化合物。
このような化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防することにおける使用のために提供される。このような化合物の治療上有効量をその必要の対象に投与することを含む乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防する方法も提供される。
試験化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象において見出されるレベルに対し、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を有する対象におけるマトリプターゼステムのレベルを回復させる、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすそれらの能力についてアッセイできる。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でない対象において見出されるレベルに対し、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を有する対象におけるマトリプターゼステムのレベルを回復させることができる、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすことができる化合物を、さらなる創薬のリード化合物として使用でき、又は治療的に使用できる。マトリプターゼステムの発現は、本明細書に記載する好ましい技術、免疫アッセイ、ゲル電気泳動とそれに続く視覚化、マトリプターゼステムの活性の検出、又は本明細書に教示されるか若しくは当業者に公知の他の任意の方法によってアッセイできる。臨床モニタリングにおいて、又は薬剤開発において、このような分析は候補薬物を選別するために使用でき、ここで、豊富なマトリプターゼステムは臨床疾患の代理マーカーとして扱うことができる。
様々な特定の実施態様において、インビトロアッセイを、対象の障害に関与する細胞型の細胞典型により実施して、化合物がこのような細胞型に所望の影響を有するか否か測定することができる。
療法に使用するための化合物は、ヒトでの試験前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなど含むが、これらに限定されない適切な動物モデル系で試験できる。インビボ試験については、ヒトに対する投与の前に、当該技術分野において公知の任意の動物モデル系を使用できる。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌の動物モデルの例には、以下を含むがこれらに限定されない:ヌードマウス又はSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L, Sordat M.の文献, Eur J Cancer. 1980;16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献, J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞株の異種移植片;エストロゲン欠乏SCIDマウスのMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞株の異種移植片、Ecclesらの文献 1994 Cell Biophysics 24/25, 279;ヌードマウスのAZ-521などの胃細胞株の異種移植片;ヌードマウスのCWR-22などの前立腺癌細胞株の異種移植片、Pretlowらの文献, J Natl Cancer Inst. 1993 Mar 3;85(5):394-8、又はヌードマウスのCaSkiなどの子宮頸癌細胞株の異種移植片。これらのモデルにおいて呈される病理は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌のそれと類似しているので、上記のものは、マトリプターゼステムのレベルを調節する試験化合物に利用することができる。また、本開示に基づき、トランスジェニック動物がマトリプターゼステムをコードする遺伝子又は遺伝子群の「ノックアウト」変異を有して産生され得ることは、当業者にとって明らかである。遺伝子の「ノックアウト」変異は、変異された遺伝子を発現させなくするか、又は異常形態で若しくは低レベルで発現させる突然変異であり、その結果、該遺伝子産物と関連する活性がほとんど又は完全になくなる。トランスジェニック動物は、例えば、哺乳動物、例えばマウスである。
一実施態様において、マトリプターゼステムの発現を調節する試験化合物は、非ヒト動物(例えばマウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)において、好ましくはマトリプターゼステムを発現する乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。この実施態様により、試験化合物又はコントロール化合物を動物に投与し、マトリプターゼステムの発現に対する試験化合物の影響を測定する。マトリプターゼステムの発現を変える試験化合物は、試験化合物で処置した動物若しくは動物群におけるマトリプターゼステム(又はそれをコードするmRNA)のレベルを、コントロール化合物で処置した動物若しくは動物群におけるマトリプターゼステム又はmRNAのレベルと比較することにより、同定できる。当業者に公知の技術、例えばインサイチューハイブリダイゼーションを使用して、mRNA及びタンパク質レベルを測定することができる。動物は、試験化合物の効果をアッセイするために犠牲にすることができ、又は犠牲にしなくてもよい。
別の実施態様において、マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分の活性を調節する試験化合物は、非ヒト動物(例えばマウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)、好ましくはマトリプターゼステムを発現する乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。この実施態様により、試験化合物又はコントロール化合物を動物に投与し、マトリプターゼステムの活性に対する試験化合物の影響を測定する。マトリプターゼステムの活性を変える試験化合物は、コントロール化合物で処置した動物及び試験化合物で処置した動物をアッセイすることにより同定できる。マトリプターゼステムの活性は、マトリプターゼステムの細胞セカンドメッセンジャーの誘導を検出すること(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3、その他)、マトリプターゼステム若しくはその結合パートナーの触媒活性又は酵素活性を検出すること、リポーター遺伝子の誘導を検出すること(例えば、ルシフェラーゼ又は緑色蛍光タンパク質などの検出可能なマーカーをコードする核酸を機能的に連結したマトリプターゼステムに応答する制御エレメント)、又は細胞応答を検出すること(例えば細胞分化又は細胞増殖)により評価できる。当業者に公知の技術は、マトリプターゼステムの活性の変化を検出するために利用できる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
さらに別の実施態様において、マトリプターゼステムのレベル又は発現を調節する試験化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒト対象において、特に重篤な乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒト対象において同定される。この実施態様により、試験化合物又はコントロール化合物をヒト対象に投与し、マトリプターゼステムの発現に対する試験化合物の影響を、マトリプターゼステム又はこれをコードするmRNAを生体サンプルにおいて分析することにより測定する。マトリプターゼステムの発現を変える試験化合物は、コントロール化合物で処置した対象又は対象群におけるマトリプターゼステム又はそれをコードするmRNAのレベルを、試験化合物で処置した対象又は対象群におけるマトリプターゼステム又はそれをコードするmRNAのレベルと比較することにより、同定できる。あるいは、マトリプターゼステムの発現の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるマトリプターゼステム又はそれをコードするmRNAのレベルを比較することにより同定できる。当業者に公知の技術を使用して、生体サンプルを得、mRNA又はタンパク質発現を解析することができる。例えば、本明細書に記載する好ましい技術は、マトリプターゼステムのレベルの変化を評価するために使用できる。
別の実施態様において、マトリプターゼステムの活性を調節する試験化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒト対象(特に重篤な乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒト対象)で同定される。この実施態様において、試験化合物又はコントロール化合物をヒト対象に投与し、マトリプターゼステムの活性に対する試験化合物の影響を測定する。マトリプターゼステムの活性を変える試験化合物は、試験化合物で処置した対象からの生体サンプルをコントロール化合物で処置した対象からのサンプルと比較することにより同定できる。あるいは、マトリプターゼステムの活性の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるマトリプターゼステムの活性を比較することにより同定できる。マトリプターゼステムの活性は、マトリプターゼステムの細胞シグナル伝達経路の生体サンプル誘導(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3、その他)、マトリプターゼステム又はその結合パートナーの触媒活性若しくは酵素活性、又は細胞応答、例えば、細胞分化若しくは細胞増殖において検出することにより評価できる。当業者に公知の技術を使用して、マトリプターゼステムのセカンドメッセンジャーの誘導における変化、又は細胞応答の変化を検出することができる。例えば、RT-PCRを使用して、細胞セカンドメッセンジャーの誘導の変化を検出できる。
別の実施態様において、コントロール対象(例えば乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でないヒト)において検出されたレベルに対し、マトリプターゼステムのレベル又は発現を変化させる試験化合物は、さらなる試験使用又は治療的使用のために選択される。別の実施態様において、コントロール対象(例えば乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌でないヒト)において見出される活性に対し、マトリプターゼステムの活性を変化させる試験化合物は、さらなる試験使用又は治療的使用のために選択される。
別の実施態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒト対象、好ましくは重篤な乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象で同定される。この実施態様により、試験化合物又はコントロール化合物を対象に投与し、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の1以上の症状に対する試験化合物の影響を測定する。1以上の症候を減少させる試験化合物は、対照化合物で処置した対象を試験化合物で処置した対象と比較することにより同定できる。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に精通している医師に公知の技術を使用して、試験化合物が乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌か子宮癌に関連する1以上の症状を減少させるか否かを測定できる。例えば、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象の腫瘍量を減少させる試験化合物は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有する対象のために有益である。
別の実施態様において、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を有するヒトにおいて乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、さらなる試験使用又は治療的使用のために選択される。
(治療的及び予防的組成物及びこれらの使用)
本発明は、本発明の化合物の有効量を対象に投与することを含む、治療(及び予防)の方法を提供する。特定の態様において、本化合物は、実質的に精製されている(例えば、その作用を制限するか又は望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない)。対象は、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどを含むがこれらに限定されない動物であり、例えばヒトなどの哺乳動物である。特定の実施態様において、非ヒト哺乳動物が対象である。
本化合物が核酸を含むときに利用できる製剤及び投与方法は、先に記載してあり;さらなる適切な製剤及び投与経路を以下に記載してある。
種々の送達系、例えばリポソーム内のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、本化合物を発現できる組換え細胞、受容体媒介型エンドサイトーシス(Wu及びWuの文献, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)、レトロウイルス又はその他のベクターの一部としての核酸の構築などが公知であり、本発明の化合物を投与するために使用できる。導入の方法は、経腸的又は非経口的であることができ、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路を含むが、これらに限定されない。本化合物は、任意の好都合な経路により、例えば注入又は大量瞬時投与により、上皮性又は粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜など)を介した吸収により投与でき、他の生体活性物質と共に投与してもよい。投与は、全身的又は局所であり得る。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む任意の適切な経路により、本発明の医薬組成物を中枢神経系に導入することが望ましい可能性があり;例えば、脳室内注入は、例えばオマヤレザバー(Ommaya reservoir)などの貯蔵部に取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にできる。また、例えば吸入器又は噴霧器の使用、及びエアロゾル化薬で処方により肺投与も利用できる。
本発明の一態様において、本発明で利用される核酸は、例えば粒子媒介型表皮性送達を利用して真皮に送達できる。
特定の実施態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましいであろうし;これは、例えば、限定するものではないが、外科手術の間の局部的な注入、例えば注射による、カテーテルによる、又はインプラントによる局所適用により達成してもよく、前記インプラントは、サイラスティック膜などの膜を含む多孔性、非多孔性若しくはゲル状物質又は線維である。一実施態様において、投与は、胸部組織、結腸直腸組織、食道組織、胃組織、前立腺組織又は子宮組織への直接注入によるものであり得、又は悪性腫瘍組織若しくは新生物組織若しくは前新生物組織の部位(又は前者の部位)での直接注入によるものであり得る。
別の実施態様において、本化合物は、小胞、特にリポソームで送達できる(Langerの文献, 1990, Science 249:1527 1533; Treatらの文献, 「感染性疾患及び癌の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」中, Lopez Berestein及びFidler (編), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez Beresteinの文献, 同書, pp. 317-327;同書を一般に参照されたい)。
さらに別の実施態様において、本化合物は、徐放系で送達できる。一実施態様において、ポンプを使用できる(Langerの文献,上掲; Seftonの文献, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201; Buchwaldらの文献, 1980, Surgery 88:507; Saudekらの文献, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照されたい)。別の実施態様において、ポリマー物質を使用できる(「徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer及びWise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御薬剤生体利用能、薬剤生産設計及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen and Ball (編), Wiley, New York (1984); Ranger及びPeppas, J.の文献, 1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたく; また、Levyらの文献, 1985, Science 228:190; Duringらの文献, 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howardらの文献, 1989, J. Neurosurg. 71:105も参照されたい)。さらに別の実施態様において、徐放系は治療標的、すなわち胸部、結腸、食道、胃、前立腺又は子宮の近傍に置くことができ、それゆえ、全身用量の一部のみが必要とされる(例えばGoodsonの文献, 「徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」中,上掲, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照されたい)。
他の徐放系は、Langerの文献(1990, Science 249:1527 1533)により再検討にて議論されている。
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である特定の実施態様において、該核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築して投与することにより、それが細胞内になるように、例えばレトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286号を参照)、又は直接注入により、又は微粒子照射の使用により(例えば遺伝子銃; Biolistic, Dupont)、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクト試薬での被覆により、又は核内に入ることが公知のホメオボックス様ペプチドに関連付けて投与すること(Joliotらの文献, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868)などにより、インビボで投与して、そのコードタンパク質の発現を促進できる。あるいは、核酸は、細胞内に導入して、相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
また、本発明は、医薬組成物も提供する。このような組成物は、化合物の治療上有効量及び医薬として許容し得る担体を含む。特定の実施態様において、用語「医薬として許容し得る」は、連邦政府若しくは州政府の規制当局により承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められている動物及びより好ましくは特にヒトにおける使用のための薬局方に収載されていることを意味する。用語「担体」とは、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルをいう。このような医薬担体は、水及び油等の滅菌液であり得、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油等の石油、動物、植物又は合成起源のものを含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときに好ましい担体である。特に注射用溶液については、食塩水並びに水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液も液体担体として利用できる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。組成物には、所望の場合、微量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。組成物は、坐薬としてトリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体と共に配合できる。経口製剤には、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、その他のなどの標準的担体を含み得る。適切な薬剤担体の例は、E.W. Martinによる「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載される。このような組成物には、化合物の治療的有効量を、好ましくは精製した形態で、対象への投与に適した形態を提供するのに適切な量の担体と共に含む。製剤化は、投与様式に合わせるべきである。
例えば、1以上の抗体が使用される実施態様において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合化された医薬組成物としてルーチン手順に従い製剤化する。典型的には、静脈内投与用組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物は、溶解剤及び注射部位における疼痛を緩和するリドカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、別々に又は単位剤形に混合されて、例えば活性薬剤の量を示すアンプル又はサッシェなどの密封封止容器内に乾燥凍結乾燥粉末として又は水を含まない濃縮物として供給する。組成物を輸液により投与する場合、無菌医薬品等級の水又は食塩水を含有する輸液ボトルで供給できる。組成物が注射により投与される場合、成分が投与前に混合できるように、注射用滅菌水又は塩類溶液のアンプルを提供できる。
本発明の化合物は、中性又は塩形態として製剤化できる。医薬として許容し得る塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基と形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの遊離カルボキシル基と形成されたものを含む。
乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療に効果的である本発明の化合物の量は、標準的な臨床技術により測定できる。加えて、最適な用量範囲を同定するのを補助するために、インビトロアッセイ法を任意に使用できる。また、製剤に利用される正確な用量は、投与経路及び疾患又は障害の重症度に依存し、開業医の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。しかし、静脈内投与に適切な用量範囲は、一般に体重1キログラムあたり約20〜500μgの活性化合物である。鼻腔内投与に適切な用量範囲は、一般に約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定できる。
坐薬は、一般に重量の0.5%〜10%の範囲の活性成分を含み、経口製剤は、好ましくは10%〜95%の活性成分を含む。
また、本発明は、本発明の医薬組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を含む医薬パック又はキットも提供する。このような容器には、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府当局により規定された形態での通知を任意に伴うことができ、この通知は(a)ヒト投与についての製造、使用又は販売の機関による承認、(b)使用の方向性、又はその両方を反映する。
従って、キットが本発明で利用される抗体を含むという態様において、例えば、抗体は、投与又は使用の前に再構成のために凍結乾燥できる。キットが癌などの療法/治療における使用のための場合、抗体は、任意にキットを提供できる等張水溶液により再構成できる。一態様において、キットは、例えば凍結乾燥できる本発明で使用される免疫原性ポリペプチドなどのポリペプチドを含むことができる。後者のキットは、免疫原性ポリペプチドを再構成するためのアジュバントをさらに含むことができる。
また本発明は、本明細書に記載する組成物、例えば対象において免疫応答を誘発するための医薬組成物及び/又はワクチン組成物にも拡張する。
(イメージング技術によるマトリプターゼステムの多量性の測定)
イメージング技術によるマトリプターゼステムの多量性の測定の利点は、このような方法が非侵襲性であり(試薬が投与されることを必要とし得ることは別として)、該対象からサンプルを抽出する必要がないことであり得る。
適切なイメージング技術には、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を含む。このような技術を使用するマトリプターゼステムの視覚化は、適切な標識、例えば18F、11C又は123Iなどの放射性トレーサの取り込み及び結合を必要とする(例えばNeuroRx - The Journal of the American Society for Experimental NeuroTherapeutics (2005) 2(2), 348-360、及び該技術のさらなる詳細について上掲361-371頁を参照されたい)。放射性トレーサ又は他の標識は、好適に標識された特定のリガンドの対象(例えば注入により)に、投与によりマトリプターゼステムに組み込むことができる。あるいは、これらは、(例えば注入により)対象に投与できるマトリプターゼステムに特異的な結合親和性試薬(例えば抗体)に組み込むことができる。イメージングについてのアフィボディの使用に関する議論について、例えばOrlova A, Magnusson M, Eriksson TL, Nilsson M, Larsson B, Hoiden-Guthenberg I, Widstrom C, Carlsson J, Tolmachev V, Stahl S, Nilsson FYの論文, 「ピコモル親和性HER2結合アフィボディ分子を使用する腫瘍イメージング(Tumor imaging using a picomolar affinity HER2 binding affibody molecule)」, Cancer Res. 2006 Apr 15;66(8):4339-48を参照されたい。
(免疫組織化学を使用する乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の診断及び治療)
免疫組織化学は優れた検出技術であり、それゆえ、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の診断及び治療に非常に有用であり得る。免疫組織化学は、蛍光色素、酵素、放射性元素又はコロイド金などのマーカーにより視覚化される抗原-抗体相互作用を介する特異試薬として、マトリプターゼステムに特異的に結合する標識された抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体の使用により、組織切片におけるマトリプターゼステムの抗原の局在を介して乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を検出し、診断し又はモニタリングするために使用できる。
モノクローナル抗体技術の発達は、ヒト新生物の最新の正確な顕微鏡診断における免疫組織化学の立場を保証する際にきわめて重大であった。免疫組織化学による拡散した腫瘍的形質転換細胞の同定は、癌浸潤及び転移、並びに増加した悪性度に対する腫瘍細胞関連免疫表現型の進化のより鮮明な画像を可能にする。将来の抗新生物治療アプローチには、個々の患者の腫瘍性疾患に伴う特定の免疫表現型的パターンに特異的な様々な個別的免疫治療を含み得る。さらなる考察について、例えばBodey Bの論文, 「新生物の診断及び治療における免疫組織化学の意義(The significance of immunohistochemistry in the diagnosis and therapy of neoplasms)」, Expert Opin Biol Ther. 2002 Apr;2(4):371-93を参照されたい。
本発明は、以下の番号をつけたパラグラフを参照することで理解することもできる:
1.細胞表面上に残るマトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得る単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬。
2.マトリプターゼステムが配列番号10〜13のいずれか1つにより定義される、パラグラフ1において定義した単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬。
3.診断部分に結合される、パラグラフ1又はパラグラフ2によるマトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得る単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬。
4.治療的部分に抱合される、パラグラフ1又はパラグラフ2によるマトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得る単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬。
5.パラグラフ1〜4において定義した抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬を含むキット。
6.パラグラフ1〜4において定義した複数の異なる抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬を含むキット。
7.親和性試薬の結合ドメインを含むパラグラフ1、2若しくは4において定義した抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬又はその断片若しくは誘導体の治療上有効量、及び任意に医薬として許容し得る担体を含む、医薬組成物。
8.親和性試薬の結合ドメインを含むパラグラフ1、2若しくは4において定義した抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬又はその断片若しくは誘導体を対象に投与することを含む、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療方法又は予防方法。
9.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療のための医薬の製造における親和性試薬の結合ドメインを含む、パラグラフ1、2又は4において定義した抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬、その断片又は誘導体の使用。
10.対象において治療標的としてマトリプターゼステムの有効性を測定する方法であって、該方法には以下を含む:
(a)前記対象から得られる1以上のサンプルにおけるマトリプターゼステムの可溶性触媒ドメインを検出するように構成されるアッセイを実施すること;及び、
(b)前記アッセイの結果をマトリプターゼのステムの有無に関連付けること。
11.マトリプターゼステムの可溶性触媒ドメインが配列番号14により定義されるパラグラフ10による方法。
12.マトリプターゼステム又はその1以上の断片若しくは誘導体をコードする核酸の治療上有効量をこのような治療又は予防を必要とする対象に(例えばワクチンの形態で)投与することを含む乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の治療方法又は予防方法。
13.マトリプターゼのステムの機能又は発現を阻害する核酸の治療上有効量をこのような治療又は予防を必要とする対象に投与することを含む乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の治療方法又は予防方法。
14.核酸がマトリプターゼのステムのアンチセンス核酸又はリボザイムである、パラグラフ13の方法。
15.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防するための医薬の製造におけるマトリプターゼステム又はその1以上の断片若しくは誘導体をコードする核酸の使用。
16.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌を治療又は予防するための医薬の製造におけるマトリプターゼのステムの機能又は発現を阻害する核酸の使用。
17.核酸がマトリプターゼのステムのアンチセンス核酸又はリボザイムである、パラグラフ16の使用。
18.以下を含む、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を検出し、診断し及び/又はスクリーニングする方法:
(a)試験サンプルを、マトリプターゼのステム又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片との接触に供すること;及び、
(b)マトリプターゼのステム又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片に特異的に結合し得るサンプルにおける抗体(又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬)の存在を検出すること。
19.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を検出し及び/又は診断するためのスクリーニングにおけるマトリプターゼステム及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片の使用。
20.マトリプターゼステム及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片を含む、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌を検出し及び/又は診断するためのスクリーニングにおいて使用するためのキット。
21.ヒト対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌のスクリーニング及び/又は診断のための方法であって、前記ヒト対象から得られた生体サンプルにおいて、マトリプターゼのステム又はその断片の有無を同定する工程を含む、前記方法。
22.ヒト対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌治療をモニタリングし及び/又は評価する方法であって、前記ヒト対象から得られた生体サンプルにおけるマトリプターゼのステム又はその断片の有無を同定する工程を含む、前記方法。
23.ヒト対象から得られた生体サンプル中の転移性乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌細胞の有無を同定する方法であって、マトリプターゼのステム又はその断片の有無を同定する工程を含む、前記方法。
24.ヒト対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌治療をモニタリングし及び/又は評価するための方法であって、マトリプターゼのステム又はその断片が、患者から得られた生体サンプルにおいて増加/減少しているか否か測定する工程を含む、前記方法。
25.マトリプターゼのステム又はその断片若しくは誘導体に対し、1以上の抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬を利用する免疫アッセイ工程を含み、前記親和性試薬が任意に診断的部分に抱合されている、パラグラフ21〜24のいずれか1つにおいて定義した方法。
26.マトリプターゼのステムについてコードされた核酸を増幅するための核酸プローブ及び/又はPCR反応の使用を含む、パラグラフ21〜24のいずれか1つに定義した方法。
27.対象の全身のスキャンが、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌細胞、特に転移性乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌細胞の局在を測定するために実行される、パラグラフ21〜24のいずれか1つに定義した方法。
28.標識された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬を利用し、前記親和性試薬が診断部分に任意に抱合される、パラグラフ27に定義した方法。
29.マトリプターゼのステム又はその断片の検出及び/又は測定における使用のための1以上の試薬を含む診断キット。
30.マトリプターゼのステム又はその断片に対し、1以上の抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬を有する1以上の容器を含み、前記親和性試薬が任意に診断部分に抱合される、パラグラフ29に定義したキット。
31.前記又は各親和性試薬及び/又は該親和性試薬がその上に固定されている固相(試薬ストリップなど)に対する標識化結合パートナーをさらに含む、パラグラフ30に定義したキット。
32.マトリプターゼのステム又はその断片をコードするDNA又はRNAにハイブリダイズできる核酸プローブを含む、パラグラフ30に定義したキット。
33.対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌のスクリーニング、診断又は予後のための方法、又は対象に投与された抗乳癌、抗結腸直腸癌、抗食道癌、抗胃癌、抗前立腺癌若しくは抗子宮癌剤又は療法の効果をモニタリングするための方法であって:
(a)タンパク質単離技術、例えば一次元電気泳動により対象からサンプルを分析して、特性の一次元アレイを生成すること;及び、
(b)相対的な多量性が乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の有無と相関する少なくとも1つの選択された特徴について、そのような選択された特徴の各々の多量性を、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌でない1以上の個人からのサンプル中の選択された特徴の多量性と、又は予め測定された基準範囲と比較すること;を含み、
該サンプル中の選択された特性の相対的多量性が、該対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌及び子宮癌の有無を示す、前記方法。
34.工程(b)がマトリプターゼのステムを定量的に検出することを含む、パラグラフ33の方法。
35.対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌のスクリーニング、診断又は予後のための方法、又は対象に投与された抗乳癌、抗結腸直腸癌、抗食道癌、抗胃癌、抗前立腺癌若しくは抗子宮癌剤又は療法の効果をモニタリングするための方法であって、該対象からのサンプルにおいてマトリプターゼのステムを定量的に検出することを含む、前記方法。
36.前記サンプルが胸部組織、結腸直腸組織、食道組織、胃組織、前立腺組織又は子宮組織のサンプルである、パラグラフ33〜35のいずれか1つの方法。
37.定量的に検出する工程が前記サンプルを試験することを含み、前記試験工程が以下を含む、パラグラフ35又はパラグラフ36による方法:
(a)前記サンプルを、マトリプターゼステムに免疫特異的である単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬(前記親和性試薬は診断部分に任意に抱合される)と接触させること;及び、
(b)結合が該親和性試薬と該サンプルにおける少なくとも1つの種との間に発生したか否か検出すること。
38.前記定量的に検出する工程が前記サンプルを試験することを含み、前記試験の工程が以下を含む、パラグラフ37による方法:
(a)該サンプルをマトリプターゼのステムを捕捉するための捕捉試薬と接触させること;及び、
(b)直接的に又は間接的に標識された検出試薬を使用して捕捉されたマトリプターゼステムを検出すること。
39.前記捕捉試薬が、単離された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬である、パラグラフ38による方法。
40.前記マトリプターゼステムが特定のアイソフォームの形態であり、かつ前記捕捉試薬が該遺伝子ファミリーの他のメンバー、例えば炭水化物についてのレクチン、又はホスホチロシン若しくはホスホセリン/スレオニンAb、又はメチル化若しくはアセチル化Abからのアイソフォームを識別するアイソフォームの構成要素部分を認識する、パラグラフ38又はパラグラフ39による方法。
41.前記親和性試薬がモノクローナル抗体である、パラグラフ37〜39のいずれか1つによる方法。
42.マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分と相互作用する化合物のスクリーニング方法であって:
(a)マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分を候補化合物と接触させること;及び、
(b)マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分と相互作用する該候補化合物の能力を測定すること;を含む、前記方法。
43.マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分の活性を調節する化合物のスクリーニング方法又は同定方法であって:
(a)第1の一定分量において、候補化合物をマトリプターゼステム又はその生物学的活性部分と接触させること;及び、
(b)該候補化合物の添加後の第1の一定分量におけるマトリプターゼステム又はその生物学的活性部分の活性を、コントロールの一定分量におけるマトリプターゼステム若しくはその生物学的活性部分の活性、又は予め測定された基準範囲と比較すること;を含む、前記方法。
44.マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分が細胞により発現される、パラグラフ42又は43の方法。
45.マトリプターゼステム又はその生物学的活性部分が組換え型である、パラグラフ42、43又は44の方法。
46.前記ポリペプチド又はその生物学的活性部分が固相上に固定される、パラグラフ45の方法。
47.マトリプターゼのステムの発現又は活性を調節する化合物のスクリーニング方法であって:
(a)マトリプターゼステムの産生又は分解に関与する酵素を候補化合物と接触させること;
(b)前記酵素の活性の調節を検出すること;を含む、前記方法。
48.マトリプターゼのステムの発現又は活性を調節する化合物のスクリーニング方法であって:
(a)マトリプターゼステムを発現している細胞の第1の群を候補化合物と接触させること;
(b)マトリプターゼステムを発現している細胞の第2の群をコントロール化合物と接触させること;及び、
(c)該細胞の第1及び第2の群におけるマトリプターゼステム若しくはマトリプターゼステムをコードするmRNAのレベルを比較すること、又は該細胞の第1及び第2の群における細胞セカンドメッセンジャーの誘導レベルを比較すること;を含む、前記方法。
49.マトリプターゼのステムの発現又は活性を調節する化合物のスクリーニング方法又は同定方法であって:
(a)哺乳動物の第1の群に候補化合物を投与すること;
(b)哺乳動物の第2の群にコントロール化合物を投与すること;及び、
(c)該第1及び第2の群におけるマトリプターゼステム若しくはマトリプターゼステムをコードするmRNAの発現レベルを比較すること、又は第1及び第2の群における細胞セカンドメッセンジャーの誘導レベルを比較すること;を含む、前記方法。
50.前記哺乳動物が、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌についての動物モデルである、パラグラフ49の方法。
51.対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌のスクリーニング、診断又は予後のための方法、又は対象に投与した抗乳癌、抗結腸直腸癌、抗食道癌、抗胃癌、抗前立腺癌若しくは抗子宮癌剤又は療法の効果をモニタリングするための方法であって:
(a)マトリプターゼのステムをコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続ヌクレオチドを含む1以上のオリゴヌクレオチドプローブを、該対象からの生体サンプルから得られたRNA、又は該RNAからコピーされたcDNAと接触させる工程であって、前記接触が、該プローブの該ヌクレオチド配列に対するハイブリダイゼーションが存在する場合に許容する条件下で起こる、前記工程;
(b)該プローブと該ヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションがある場合に検出する工程;及び、
(c)工程(b)において検出された場合、該ハイブリダイゼーションを、コントロールサンプルにおいて検出されるハイブリダイゼーション、又は予め測定された基準範囲と比較する工程;を含む、前記方法。
52.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の治療のための医薬の製造におけるマトリプターゼステムと相互作用するか又はその活性を調節する作用物質の使用。
53.対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の治療又は予防のための方法、又は乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌に対して対象にワクチン接種する方法であって、マトリプターゼステム及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片の有効量を、好ましくはワクチンとして該対象に投与する工程を含む、前記方法。
54.乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌の治療又は予防のための医薬の製造におけるマトリプターゼのステム、1以上のその断片若しくは誘導体の使用。
55.マトリプターゼステム又はその誘導体及び/又は1以上のその抗原性若しくは免疫原性断片を含むワクチン。
56.マトリプターゼステム及び/又は1以上のその抗原性若しくは免疫原性断片並びに1以上の適切なアジュバントを含む、対象において免疫応答を誘発できる組成物。
57.対象において免疫応答を誘発する際のパラグラフ56に定義する組成物の使用。
58.マトリプターゼのステムの多量性を測定する方法、例えばマトリプターゼのステムを定量的に検出する方法がイメージング技術の使用を含む、パラグラフ1〜57のいずれか1つによる方法。
59.前記イメージング技術が、標識されたアフィボディの使用を含む、パラグラフ58による方法。
60.前記イメージング技術が、標識された抗体の使用を含む、パラグラフ58による方法。
61.対象における乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の存在を同定する方法であって、マトリプターゼステムの存在又は量を測定するために、マトリプターゼステム又は1以上のその抗原性若しくは免疫原性断片に特異的に結合し得る標識された抗体又はアフィボディ、ナノボディ若しくはユニボディなどの他の親和性試薬、その誘導体及び類似体により、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌細胞、特に転移性乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌若しくは子宮癌細胞の組織切片における局在を測定する免疫組織化学を実施する工程を含み、該マトリプターゼステムの存在又は量が乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、前立腺癌又は子宮癌の存在を示す、前記方法。
62.マトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得るモノクローナル抗体を生産する方法であって、マトリプターゼステム若しくはその免疫原性断片であるタンパク質、又はマトリプターゼステム若しくはその免疫原性断片である融合タンパク質で非ヒト動物を免疫するか、又は任意に免疫賦活剤と共にいずれかの場合においてこのようなタンパク質を発現する細胞で非ヒト動物を免疫する工程を含む、前記方法。
63.前記非ヒト動物が、融合タンパク質、又は前記タンパク質を発現する細胞で免疫される、パラグラフ62による方法。
64.抗体産生細胞を前記動物から単離し、それらを不死化細胞と融合させて不死化させ、抗体産生ハイブリドーマを生産する工程をさらに含む、パラグラフ62又は63による方法。
65.前記ハイブリドーマから抗体を単離する工程をさらに含む、パラグラフ64による方法。
66.パラグラフ62〜65のいずれか1つの方法により入手できるマトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得る、単離されたモノクローナル抗体。
67.ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現し、かつ内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現しないように遺伝子組換え及び適合化された非ヒト動物に基づくヒトモノクローナル抗体である、パラグラフ66による単離されたモノクローナル抗体。
68.パラグラフ62〜65のいずれか1つの方法により入手できるモノクローナル抗体の1以上のCDRを有することにより特徴づけられるマトリプターゼステムに免疫特異的に結合し得る、単離されたヒト化モノクローナル抗体。
69.マトリプターゼのステムに免疫特異的に結合し得る、パラグラフ66〜68のいずれか1つによるモノクローナル抗体の断片又は誘導体。
本発明の各態様の好適な特性は、必要な変化を加えて他の態様の各々に関する。本明細書に記載した従来技術文献は、法律により許される最大限で組み込まれる。
(実施例1:乳癌及び結腸直腸癌組織サンプルに発現する膜タンパク質の同定)
以下の参照プロトコルを使用して、乳癌及び結腸直腸癌組織サンプルから抽出される膜タンパク質を1Dゲルにより単離し、分析した。
(1.1 材料及び方法)
1.1.1−原形質膜分画
乳癌又は結腸直腸癌の上皮から回収した細胞を溶解し、1000Gで遠心分離に供した。上清を取り、それから該上清を3000Gで遠心分離した。もう一度、上清を取り、それから該上清を100,000Gで遠心分離した。
結果として生じたペレットを回収し、15-60%のスクロース勾配で遠心分画した。
ウエスタンブロットを使用して細胞内マーカーを同定し、原形質膜増量画分をプールした。
プールされた溶液を直接的に1Dゲル(以下の1.1.4節を参照されたい)に適用したか、又は後述するようにヘパリン結合及びヌクレオチド結合画分にさらに分画した。
1.1.2−原形質膜ヘパリン-結合画分
上記の1.1.1からのプールされた溶液をヘパリンカラムに適用し、カラムから溶出し、1Dポリアクリルアミドゲル(以下の1.1.4節を参照されたい)で電気泳動分画した。
1.1.3−原形質ヌクレオチド結合画分
上記の1.1.1からのプールされた溶液をCibacrom Blue 3GAカラムに適用し、カラムから溶出し、1Dポリアクリルアミドゲル(以下の1.1.4節を参照されたい)で電気泳動分画した。
1.1.4−1Dゲル技術
タンパク質又は膜ペレットを1Dサンプル緩衝液(1〜2μg/μl)に可溶化した。サンプル緩衝液及びタンパク質混合物をそれから3分間、95℃に加熱した。
9-16%のポリアクリルアミド勾配ゲルは、引用によりその全てが本明細書に組み込まれるAusubel F.M.ら編, 1989, 「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, 第II巻, Green Publishing Associates社、及びJohn Wiley & Sons社, New York, 10.2節に記載される手順に従い、スタッキングゲル及びスタッキングコームとともに成形した。
界面活性剤抽出物及び分子量標準(66、45、31、21、14kDa)から得られたタンパク質混合物の30〜50μgは、10μlピペットチップを使用してスタッキングゲルに添加し、該サンプルを該ゲルにおいて40mAで5時間の電気泳動分画した。
それからプレートを開き、ゲルを固定液(10%酢酸、40%エタノール、50%水)のトレイにおき、終夜振盪した。これに続いて、ゲルをプライマー溶液(7.5%酢酸(75ml)、0.05%SDS(10%、5ml)において30分振盪することにより開始した。ゲルはそれから、3時間振盪しながら蛍光色素(7.5%酢酸、社内調製の色素(600μl)中0.06%OGS)でインキュベートした。Sypro Red(Molecular Probes社, Eugene, Oregon)はこの目的に適した色素である。好適な蛍光色素は1999年10月5日に出願された米国特許出願番号第09/412168号において開示され、これは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
コンピュータ読み取り可能な出力が、アポロ3スキャナ(Oxford Glycosciences, Oxford, UK)を用いた蛍光染色ゲルを撮像することによりもたらされた。このスキャナは、WO 96/36882、及びDavid A. Basijiの「内部反射光学及び相感受性検出を利用するハイスループット蛍光スキャナの開発(総内部反射、電気泳動)(Development of a High throughput Fluorescence Scanner Employing Internal Reflection Optics and Phase sensitive Detection (Total Internal Reflection, Electrophoresis))」と題された博士論文, ワシントン大学(1997), 国際論文摘要58/12 B巻, 6686頁に記載されたスキャナから開発され、これらの各々の内容は、引用により本明細書に組み込まれる。この計測器の最新の実施態様には以下の改良を含む:ゲルを精密な親ねじ駆動システム上のスキャナにより輸送する。これはBasiji論文において定められたベルト駆動システムにガラスプレートを置くより好ましい。というのも、それは画像光学系を通り越した所にゲルを正確に輸送する再生可能な手段を提供するからである。
公知の位置でしっかりとガラスプレートを保持する3つの配列ストッパに対して、ゲルをスキャナに固定する。上記の精密な輸送システム及びゲルがガラスプレートに結合するという事実に関連して上記のようにすることにより、ゲルの絶対位置を予測でき、記録できる。これは、ゲル上の各特性の正確な座標を切除についての切除ロボットに伝え得ることを確実にする。この切除ロボットは、位置精度を保存するガラスプレートに対し同一の取付方法を有する。
ゲルを適切な位置に保つ担体は、画像幾何学を補正するために使用され、かつスキャンが正確に実施されたことを確認する品質管理特性である、統合された蛍光マーカー(指定されたM1、M2、M3)を備える。
システムの光学部品を逆にした。レーザー、鏡、導波管及び他の光学部品は、ここでは走査されるガラスプレートより上にある。Basiji論文の実施態様はこれらの底面を有する。従って、ガラスプレートはスキャナゲル側を下にして載置し、その結果、光路はガラスプレートを通るままである。こうすることにより、ガラス板から壊れて離れたであろうゲルの全粒子は、光学系へよりもむしろ機器の底部上に落下する。
ゲルを走査することにおいて、これらの染色を除去し、水ですすぎ、短時間で空気乾燥させ、アポロ3で撮像した。イメージングの後、ゲルを、少量の染色液を含むポリエチレンバッグに密閉し、次いで4℃で保存した。
見かけの分子量は、サンプルと一緒に動く一組の公知の分子量マーカーからの補間により算出した。
1.1.5−選択されたタンパク質の回収及び分析
タンパク質は、1D電気泳動に適用できるように以下の通りロボットカッターに変更を加えた米国特許第6,064,754号、5.4及び5.6、5.7、5.8節に(引用により本明細書に組み込まれる)記載したプロセスにより、ゲルから機械的に切除した:カッターをレーンの最上位で開始し、該レーンの左縁部から直径1.7mmでゲルディスクを切る。カッターをそれから2mm右、及び0.7mm下に動かし、さらなるディスクを切る。それからこれを繰り返す。カッターは、第1のゲルカットの直接底面上であるが2.2mm下方へ補正された位置にもどり、3つの斜めの切断のパターンを繰り返す。これをゲルの全長について続ける。
注:レーンが著しく広がるのを認められた場合、補正を横になすこともできる。すなわち先のゲルカットの直接底面上の位置に戻す代わりに、該カットをわずかに左に(該レーンの左側に)及び/又は右に(該レーンの右側に)補正できる。ゲル断片の範囲内で含まれたタンパク質を処理してトリプシンペプチドを生成し;これらのペプチドの部分的なアミノ酸配列をWO98/53323及び1998年6月15日に出願された出願番号第09/094996号に記載したように、質量分析により測定した。
タンパク質を処理してトリプシン消化ペプチドを生成した。トリプシンペプチドは、PerSeptive Biosystems Voyager DETM STRマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI TOF)質量分析器を使用する質量分析により分析され、選択されたトリプシンペプチドはnanoflowTMエレクトロスプレーZスプレー源を備えているMicromass四重極飛行時間型(Q-TOF) 質量分析器(Micromass, Altrincham, U.K.)を使用するタンデム型質量分析(MS/MS)により分析した。マトリプターゼステムの部分的なアミノ酸配列解析及び同定について、トリプシンペプチドの解釈されてないタンデム型の質量スペクトルをSEQUEST検索プログラム、バージョンv.C.1を使用して検索した(Engらの文献, 1994, J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5:976 989)。データベースによる同定についての基準には以下を含んだ:トリプシンの切断特異性;データベースから返されたペプチドにおける一組のa、b及びyイオンの検出、並びにカルバミドメチル化を考慮した全てのシステイン残基での質量の増加。検索されたデータベースは、www.ncbi.nlm.nih.govでアクセス可能である全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)により保持される非冗長データベースにおけるタンパク質エントリから構築されたデータベースであった。SEQUESTプログラムを使用するスペクトル-スペクトル相関を介したタンパク質の同定に続いて、MALDI-TOF質量スペクトルにおいて検出された質量を、同定されたタンパク質のトリプシン消化ペプチドに割り当てた。SEQUESTプログラムを使用するトリプシン消化ペプチドの未解釈のMS/MSスペクトルでの検索を介してもアミノ酸配列が同定できない場合、該ペプチドのタンデム質量スペクトルを当該技術分野において公知の方法を使用して手動で解釈した。(ペプチドイオンの低エネルギー断片化質量スペクトルの解釈の場合、Gaskellらの文献, 1992, Rapid Commun. Mass Spectrom. 6:658 662を参照されたい)。
1.1.6−乳癌及び結腸直腸癌関連タンパク質の識別
マトリプターゼを同定する方法は、天然に存在するヒトタンパク質の上記の質量分析により実験的に得られたペプチド配列を使用して、発表されたヒトゲノム配列のコード化エキソンを同定し、組織する。
ヒトゲノムの化学配列を明らかにすることにおける最近の劇的な進歩により、この莫大な課題が完遂間近になった(Venter, J.C.らの文献 (2001). 「ヒトゲノムの配列(The sequence of the human genome.)」Science 16: 1304-51; 国際ヒトゲノム配列コンソーシアムの文献(2001). 「ヒトゲノムの一次配列及び解析(Initial sequencing and analysis of the human genome)」Nature 409: 860-921)。この配列情報が、分子進化、比較ゲノム学、病理機構及び分子医薬を含む多くの生物学的過程を理解する上で実質的な衝撃を有することにはおよそ疑いがない。実現されるべきヒトゲノムの配列に固有の完全な医学的価値のために、ゲノムは「組織化」され、注釈付けされる必要がある。これは少なくとも以下の3つのことを意味する: (i)ゲノムの個々の部分の配列の集合を、それぞれの染色体の明瞭で連続的な配列に構築すること。 (ii)遺伝子を含むそれぞれの染色体のそれらの領域の明白な同定。 (iii)遺伝子の微細構造並びにそのmRNA及びタンパク質産物の特性の決定。「遺伝子」の定義はますます複雑な問題である一方で(H Pearsonの文献:「遺伝子とは何か?(What is a gene?)」 Nature (2006) 24: 399 - 401)、創薬及び開発にとっての即座の興味は、機能的な発現されたタンパク質をコードするこれらの遺伝子のカタログである。これらの遺伝子のサブセットは、全てとまではいかないまでもほとんどの病態の分子基盤に関与する。従って、医薬産業にとって重要な直近の目標は、ヒトゲノムにおいて全てのこのような遺伝子を同定し、これらの微細構造を記載することである。
(OGAP(登録商標)データベースを形成するための、ペプチド質量、ペプチドの特徴、EST及び公共領域ゲノム配列データの加工及び組み込み)
個別の遺伝学的単位(エキソン、転写物及び遺伝子)を以下の一連の工程を使用して同定した:
1.Ensembl及び様々な遺伝子予測プログラムから入手可能な遺伝子同定を組み合わせることによりヒトゲノムに位置づけられたトリプシンペプチドを含む「仮想トランスクリプトーム」を生成する。また、これは、遺伝子同定のSNPデータ(dbSNPから)及び全ての選択的スプライシングを組み込む。また、公知の混入物を仮想トランスクリプトームに付加した。
2.OGeS質量分析データベースにおける全てのタンデムスペクトルを、仮想トランスクリプトームにおける1つに対して位置づけることができるペプチドを産生するように解釈する。一連の自動化されたスペクトル解釈アルゴリズムを使用してペプチド同定を行った。
3.OGeS質量分析データベースにおいて全ての質量がマッチしたペプチドのセットは、典型的には20ppmという質量分析器の質量精度に基づいた寛容性を使用して、タンデムペプチドによりヒットした転写物由来の全てのペプチドを検索することにより、作製する。
4.全てのタンデムペプチド及び質量がマッチしたペプチドを、「タンパク質クラスター」の形態で組合せる。これは、配列を共通のペプチドヒットに基づいてクラスターへとグループ化する再帰的過程を使用してなされる。生物学的配列は、これらが1以上のタンデムペプチド又は質量マッチペプチドを共有する場合に、同じクラスターに属するとみなす。
5.誤って同定したペプチドを除外するための初期のフィルタリング後、生じたクラスターをヒトゲノムに対して位置づける。
6.次いで、タンパク質クラスター内のペプチドのそれらの近接度及び同時観察を使用して、タンパク質クラスターを予備的遺伝子境界を定義する領域に集約させる。近接度は、同じ染色体の同じ鎖上の80,000ヌクレオチド内に存在するペプチドとして定義する。クラスター観察スコアリング及びゲノムに対する複数マッピングに基づいた種々の排除則を使用して出力結果を洗練する。結果として生じる「確認された遺伝子」は、各クラスタにおける質量分析により観察されたペプチド及び質量の最良を占めるものである。また、遺伝子の公称座標がこの段階の出力である。
7.それぞれの確認された遺伝子の転写物の最良のセットを、タンパク質クラスター、ペプチド、EST、候補エキソン及び元のタンパク質スポットの分子量から作製する。
8.それぞれの同定された転写物を、観察されたペプチドを提供するサンプルに関連づけた。
9.データを考察し、マイニングするためのアプリケーションの使用。工程1〜8の結果は、それぞれが多数のエキソン及び1以上の転写物からなる、遺伝子を含むデータベースであった。アプリケーションは、この統合したゲノム/プロテオームデータを示して、検索するために記載した。Ensemblにより同じGolden経路座標系に位置づけられた任意の特徴(OMIM疾患座、InterProその他)は、位置及び微細構造の一致によりこれらの遺伝子に相互参照できた。
(結果)
本方法を使用してタンパク質コード遺伝子及びそれらのエキソンを同定するためのおよそ1,000,000ペプチド配列を生成して、膀胱癌における506遺伝子、乳癌における4,713遺伝子、子宮頸癌における1,371遺伝子、結腸直腸癌における949遺伝子、神経膠芽腫の1,544遺伝子、肝臓癌における1,782遺伝子、慢性リンパ性白血病の2,424遺伝子、肺癌における978遺伝子、黒色腫の1,764遺伝子、卵巣がんの1,033遺伝子、膵癌における2,961遺伝子及び前立腺癌における3,307遺伝子を含む、67の異なる組織及び57の疾患にわたる18083遺伝子についてのタンパク質配列の同定を生じ、乳癌及び結腸直腸癌サンプルから単離及び同定されたマトリプターゼステムによって本明細書にて実証した。
(1.2 結果)
本明細書にさらに記載するように、これらの実験はマトリプターゼを同定した。全長マトリプターゼは乳癌及び結腸直腸癌サンプルにおける原形質膜において検出され、細胞質においては検出されなかった。
(実施例2:前立腺癌組織サンプルにおいて発現する膜タンパク質の同定)
以下の参照プロトコルを使用して、前立腺癌組織サンプルから抽出された膜タンパク質をアイソトープコード親和性タグ(ICAT)を使用して分析した。
(2.1 材料及び方法)
2.1.1−膜画分の調製
前立腺癌から回収した細胞を溶解し、1000Gで遠心分離に供した。上清を取り、それからこれを3000Gで遠心分離した。もう一度、上清を取り、それからこれを100000Gで遠心分離した。
結果として生じたペレットは標識化緩衝液(50mMトリス-HCl pH 8.3、5mM EDTA、0.5%SDS)中で沸騰させて溶解し、タンパク質濃度を測定した。
ウエスタンブロットを使用して、膜タンパク質マーカーを検証した。
2.1.2−ICAT試薬の合成
使用したICAT試薬は、以下の同位元素的に異なる基質により合成した:4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(A)(Aldrich, Milwaukee, WI)及び2,2',3,3',11,11',12,12'-オクタデウテロ-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(B)(Gerber, S.A., Scott, C.R., Turecek, F. & Gelb, M.H.の文献 「エレクトロスプレーイオン化質量分析による細胞溶解液中の複数の酵素の速度解析(Analysis of rates of multiple enzymes in cell lysates by electrospray ionization mass spectrometry.)」J. Am. Chem. Soc. 121, 1102-1103 (1999))。N-(13-アミノ-4,7,10-トリオキサトリデカニル)ビオチンアミド(C)の合成は以下の通りであった。過剰なN,N-ジイソプロピルエチルアミン(Aldrich)を含んでいる乾燥したジメチルホルムアミド中ビオチン-ペンタフルオロフェニルエステル(Pierce, Rockford, IL)に、5当量の(A)を室温で3時間撹拌しながら加えた。溶媒を減圧下で除去し、(C)は逆相HPLCにより均一性に精製した。重い類似体を(C)について調製したが、5当量の(B)を用いた。N-(13-ヨードアセトアミド-4,7,10-トリオキサトリデカニル)ビオチンアミド(D)の合成は以下の通りだった。過剰のN,N-ジイソプロピルエチルアミンを含んでいる乾燥したジメチルホルムアミド中の (C)(又は重い類似体)に、2当量のヨード酢酸無水物(Aldrich)を室温で3時間撹拌しながら加えた。溶媒を減圧下で除去し、(D)は逆相HPLCにより均一性に精製し、MSにより特徴づけた。
2.1.3−ICAT分析
100ugの総タンパク質を使用した。変性タンパク質混合物のジスルフィド結合を37℃で1時間還元した(50mMトリス緩衝液pH 8.5、6MグアニジンHCl、5mMトリブチルホスフィン)。各混合物中のシステイニル基を、5倍モル過剰の適切なICAT試薬でそれぞれビオチン化した。過剰なICAT試薬は0.1%SDS含有トリス緩衝液(50mM、pH 8.5)でのゲル濾過(Bio-Rad, Richmond, CA)により複合サンプルから除去され、タンパク質画分は37℃で終夜トリプシン(Promega, Madison, WI)にて消化した。それからペプチド溶液を、調製済み単量体アビジンカラム(Pierce)に通した。カラムを水で洗浄し、ビオチン化ペプチドを0.3%ギ酸(1ml画分)で溶出した。溶出されたサンプルの量(0.3%ギ酸中)を1,000から50ulまで減らした。全手順にわたるペプチド回収をおよそ70%と推定した。
LCQイオントラップ質量分析器(Finnigan MAT, San Jose, CA)は、自社作成のマイクロエレクトロスプレー源、及びHP1100溶媒送達システム (Hewlett Packard, Palo Alto, CA)を用いて使用した(例えば、Figeys, D.らの文献 「新規質量分析技術と組み合わせた電気泳動:タンパク質及びプロテオームの解析のための強力なツール(Electrophoresis combined with novel mass spectrometry techniques: powerful tools for the analysis of proteins and proteomes.)」Electrophoresis 19, 1811-1818 (1998)を参照されたい)。5-80%の溶媒Bで60分の2成分勾配(アセトニトリル及び0.005%ヘプタフルオロ酪酸(HFBA))溶媒Aは、0.4%酢酸及び0.005%HFBAから成った。0.5ul/分の流速は、社内においてMonitor球状シリカ(Column Engineering, Ontario, CA)で充填した100um x 12cmの溶融シリカキャピラリーカラムに使用した。機能的なクロマトグラフィは、H2O中500pmolと同程度のペプチド負荷を有するこの設定で達成した。1μlのペプチド混合物をカラム上に加圧負荷した。溶出ペプチドは、他で記載するようなuLC-MS及びuLC-MS/MS技術によって分析した(例えば、Gygi, S.P., Rochon, Y., Franza, B.R. & Aebersold, Rの文献, 「酵母におけるタンパク質とmRNA多量性との間の相関(Correlation between protein and mRNA abundance in yeast)」, Mol. Biol. 19, 1720-1730 (1999)、並びにGygi, S.P., Han, D.K.M., Gingras, A.C., Sonenberg, N. & Aebersold, Rの文献, 「質量分析及び配列データベース検索によるタンパク質解析:ポストゲノム時代における癌治療のためのツール(Protein analysis by mass spectrometry and sequence database searching: tools for cancer research in the post-genomic era)」, Electrophoresis 20, 310-319 (1999)を参照されたい)。ペプチド対を溶出する強度は、走査式質量分析器において測定した。示差的にタグ付けされたペプチド対の溶出時間にわずかな違い(軽い類似体の1〜2秒前に溶出する重い類似体)がある。この理由のために、各溶出ペプチドの全てのピーク面積を再構築し、比率算出に使用した。アミノ酸配列を決定するために、質量分析器は、データ依存的MS/MSモードで操作し(完全走査質量スペクトルの後に、タンデム型の質量スペクトルが続く)、ここで前駆体イオンは、先の走査から「飛行中に」選択される。断片化のために選択されたイオンについてのm/z比をリストに置き、さらなる断片化から1分間動的に除外した。部分的なアミノ酸配列及びOGTA284の同定について、トリプシンペプチドの解釈されてないタンデム型の質量スペクトルをSEQUEST検索プログラムを使用して検索し(Eng, J., McCormack, A.L. & Yates, J.R.の文献 「ペプチドのタンデム型質量スペクトルデータをタンパク質データベースにおけるアミノ酸配列と相関させるためのアプローチ(An approach to correlate tandem mass spectral data of peptides with amino acid sequences in a protein database.)」J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5, 976-989 (1994))、これは、OWL非冗長複合タンパク質配列データベースに対し、タンデム型の質量スペクトルを検索した(Bleasby, A.J., Akrigg, D. & Attwood, T.K. 「OWL非冗長複合タンパク質配列データベース(OWL-a non-redundant composite protein sequence database.)」Nucleic Acids Res. 22, 3574-3577 (1994))。
2.1.4−前立腺癌関連のタンパク質の識別
実施例1の1.1.6節に記載する方法を実験的なサンプル中の前立腺癌関連タンパク質を同定するために使用した。
(2.2 結果)
本明細書にさらに記載するように、これらの実験はマトリプターゼを同定した。全長マトリプターゼは前立腺癌サンプルの膜において検出され、細胞質において検出されなかった。
(実施例3:マトリプターゼステムに対する抗体の産生)
以下の参照プロトコルを使用して、マトリプターゼステムFc-融合タンパク質を産生し、マトリプターゼステムに対する抗体の産生のための免疫及び生成に使用した。
(3.1 材料及び方法)
3.1.1−マトリプターゼステムFc-融合タンパク質の生成
全長マトリプターゼ(OGTA004)cDNAは、Open Biosystems(IMAGE ID# 5213189)から購入し、増幅のテンプレートとして使用した。アミノ酸86-201にわたるステム領域を増幅し、インフレームでN末端オステオネクチンシグナル配列及びC末端第Xa因子切断部位並びにヒトFcG1とともにサブクローニングを可能にするプライマーを設計した。該挿入物を、ハイグロマイシン選択可能マーカーとともに哺乳動物の発現ベクターに基づくInvitrogen pCDNA 3.1にサブクローニングした。CHO-S細胞はInvitrogenのDMRIE-C試薬を使用してトランスフェクションし、安定細胞を500ug/mLのハイグロマイシンB存在下で選択した。融合タンパク質の発現は、抗ヒトFc抗体及び抗マトリプターゼ抗体を用いたウエスタンブロットを介して確認した。該融合タンパク質を図4に示す。
3.1.2−ハイブリドーマ生成
Sp2/0骨髄腫細胞株(ATCC CRL 1581)を融合に使用した。元のATCCバイアルを解凍し、培養で増幅した。冷凍されたバイアルの種ストックをこの増幅から調製した。細胞は1ヵ月間の培養において維持され、週に2回継代した。P388D1(ATCC、TIB-63 FL)細胞からの上清は、該ハイブリドーマの条件培地として使用した。簡潔にいうと、細胞を培養し、200mLに拡大した。静止培養物を〜7日間培養した。消耗上清を遠心し、0.2μmの無菌フィルタにて濾過した。この細胞株を1ヵ月間継代し、新しいバイアルを解凍して培養した。
3.1.3−OGTA004ステム融合タンパク質を使用する免疫
抗体は、合計5回の免疫について2〜4日間隔の足蹠/ip/scによるRibiアジュバントの20ug用量にてOGTA004ステム-hFcG1タンパク質を免疫したマウス(Hco7(J/K)/Balb/c)の脾臓/リンパ節の融合から生成した。
(3.2 結果)
抗体Medarexクローン1432.896.13B4は上記のプロトコルから生成した。
(実施例4:マトリプターゼステムに対する抗体を使用する免疫組織化学)
以下の参照プロトコルを使用し、マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)を使用して、免疫組織化学をFFPE腫瘍及び正常組織において実施した。
(4.1 材料及び方法)
4.1.1−抗体の特異性の測定
抗マトリプターゼステム抗体(Abcam # 28267)の特異性をELISAで測定した。プレートは、2mg/mlのステム-融合タンパク質(Medarex)又はマトリプターゼ(マトリプターゼ)触媒ドメイン(Biosite)のいずれかで被覆した。抗マトリプターゼ抗体は10mg/mlで試験し、結合は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合ヤギ抗ウサギ抗体により検出した。
結果は、抗マトリプターゼステム抗体(Ab 28267)がステム-融合タンパク質に非常に特異的であり、マトリプターゼ触媒ドメインには結合しないことを示す。
(FFPE組織スライドを染色するためのプロトコル)
4.1.2−脱パラフィン化及び再水和
スライドをキシレン槽に置き、5分間インキュベートした。槽を変え、該方法を1回繰り返した。過剰な液体を軽くたたいて落とし、スライドを5分間無水エタノールに置いた。過剰な液体を軽くたたいて落とし、スライドを5分間90%エタノールに置いた。過剰な液体を軽くたたいて落とし、スライドを5分間80%エタノールに置いた。過剰な液体を軽くたたいて落とし、スライドを5分間70%エタノールに置いた。過剰な液体を軽くたたいて落とし、スライドを最短で30秒間、蒸留又は脱イオン水に置いた。
必要に応じて、再水和された組織は、使用前に最長で18時間、緩衝液中で2〜8℃に保つことができる。染色前に組織を室温にすることができる。
4.1.3−抗原回復
スライドを脱イオン水ですすいだ。それからスライドを、空白のスライドで満たされた空のスロットを有する灰色のTissue Tekスライドホルダーに置いた。該ホルダーを250mlの使用応力抗原回復溶液を含んでいる白いTissue Tek槽に置いた。蓋をゆるく槽上に配置し、全ての液漏れを吸着する紙タオル上で電子レンジオーブン内の中央においた。オーブンを高出力でオンにし、該溶液が急沸するまでしっかりと見、その後直ちにオーブンをオフにした(約2分。)オーブンパワーをおよそ10%レベルにセットし、10〜15分間加熱した。槽/スライドをオーブンから取り出し、槽において20〜30分間冷却して室温に至らせた。これらをそれから何回か脱イオン水ですすいだ。スライドをPBSに置いた。
4.1.4−染色
ペルオキシダーゼブロッキング:余分な緩衝液を軽くたたいて落とした。それから、キムワイプを使用して、標本周辺を注意深く拭き、全ての残留液を除去し、定められた領域内に試薬を保った。該領域をPAPペンでマークした。十分なペルオキシドブロッキング試薬をボトル1に適用し、標本をカバーした。これを5分間インキュベートした。これをそれから洗瓶から蒸留水又はPBSで穏やかにすすぎ、新たなPBS槽に置いた。組織を10%血清(二次抗体の種由来)で20〜30分間ブロックした。ブロッキング緩衝液を捨て、一次染色を適用した。
一次又はネガティブコントロール試薬:余分な緩衝液を軽くたたいて落とした。十分な一次抗体又はネガティブコントロールをカバー標本に適用した。これを30分間インキュベートした。抗体溶液を除去し、必要に応じて保存した。これを洗瓶からPBSで穏やかにすすぎ、5分間新たなPBS槽に置いた。これを1回繰り返した。注:染色手順が中断されなければならない場合、スライドは、染色に効果を及ぼすことなく室温で最長で1時間の一次抗体のインキュベーション後、PBS中に保持できる。
ペルオキシダーゼ標識ポリマー:余分な緩衝液を軽くたたいて落とした。ボトル3(ラベルされたポリマー)から十分な液滴をカバー標本に適用した。これを30分間インキュベートした。スライドを上記のようにすすいだ。
基質-クロマゲン(Chromagen):余分な緩衝液を軽くたたいて落とし、すぐに使える基質-クロマゲン溶液の十分量をカバー標本に適用した。これを5〜10分間インキュベートし、それから蒸留水で洗瓶から穏やかにすすいだ。基質-クロマゲン廃液を適切な廃棄用の危険物容器に回収した。
ヘマトキシリンカウンタ染色:スライドを水性0.1%ヘマトキシリンの槽に浸し、強度に応じて2〜5分間インキュベートした。槽の中で水道水で穏やかにすすいだ。
包埋:余剰水を軽くたたいて落とし、1〜2滴の包埋媒体を適用し、スリップをカバーした。
(4.2 結果)
マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)を使用した免疫組織化学は、食道癌サンプル、子宮癌サンプル、胃癌サンプル及び乳癌サンプルにおける腫瘍細胞の均一的染色を明示し、これはマトリプターゼのステム領域を標的としている抗体が治療的設定において上皮起源の癌細胞を標的とするために使用できるという仮説と整合した。この抗体についての特異性は、複数の他の癌及び正常組織におけるIHCにより実証される。染色は、正常な食道、正常な肝臓、正常な胸部及び正常な卵巣組織において観察されなかった。散在的染色は、正常な胃及び正常な結腸サンプルの上皮細胞にみられた。
(実施例5:サンドイッチELISAを使用するマトリプターゼの可溶性触媒ドメインを検出するためのアッセイ)
以下の参照プロトコルを使用し、サンドイッチELISAをマトリプターゼの触媒ドメインに対する抗体を使用して実施した。
(5.1 材料及び方法)
サンドイッチELISAのためのマトリプターゼステムの触媒ドメイン(配列番号14により定義される。図3を参照されたい)に対する抗体はBiositeで開発された。ビオチン化抗体(一次抗体)を2ug/mlまでアッセイ緩衝液(10mMトリス、150mMNaCl、1%BSA)に希釈し、384ウエルのニュートラアビジン被覆プレート(Pierce Chemical Company, Rockford IL)に添加し、室温で1時間インキュベートした。ウエルをそれから洗浄緩衝液(20mMホウ酸塩、150mMNaCl、0.2%Tween 20)で洗浄した。サンプル及び標準を加え、室温で1時間インキュベートした。ウエルを再び洗浄した。フルオレセインに抱合された抗体(二次抗体)を2ug/mlまでアッセイ緩衝液に希釈し、それからプレートに加え、1時間の室温でインキュベートした。ウエルを再び洗浄した。抗フルオレセイン抗体をアルカリホスファターゼに抱合化し、アッセイ緩衝液に1/2338希釈して加え、室温で1時間インキュベートした。それから最終的な洗浄を実施した。最後に、基質(Promega Attophos製品#S1011, Promega Corporation, Madison, WI)を加え、プレートを直ちに読み取った。全ての添加は10ul/ウエルであった。プレートは各添加の間に3回洗浄し、最終洗浄は基質添加前9回であった。標準は、特異性抗原を正常血清患者プールに入れることにより調製した。読み取りは、Tecan Spectrafluor(Tecan社, Mannedorf, Switzerland)を使用し、430nmの励起フィルタ及び570nm発光の発光フィルタを有する6つの読取サイクルの間の動力学的モードにて実施した。RFU/秒の傾斜を測定した。
最終的なボックス及びROCの結果は、Analyse-it General + Clinical Laboratory 1.73 (Analyse-it Software Ltd., Leeds England)を使用して分析した。
(5.2 結果)
これらの実験は、正常サンプルで見出されたより高い濃度で、乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌サンプルにマトリプターゼステムの可溶性触媒ドメインを検出した。該触媒ドメインは、マトリプターゼステムの開裂の後に放出され、それゆえこれらの実験は、マトリプターゼが乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌において切断されることを実証し、これらの癌の治療標的としてマトリプターゼステムの有効性を示す。
図5は、前立腺癌サンプルにおけるマトリプターゼステムの触媒ドメインについてのボックスプロット線データを示す。このグラフ上の垂直軸は、マトリプターゼステムの触媒ドメインの濃度(ng/ml)である。これらのデータは、有意なp値とともに、正常なサンプルと比較して前立腺癌サンプルにおいてマトリプターゼステムの触媒ドメインのより高い濃度を示し、これにより前立腺癌における治療標的としてマトリプターゼステムの有効性を示す。
(実施例6:ルミネックス技術を使用するマトリプターゼの可溶性触媒ドメインを検出する多重アッセイ)
以下の参照プロトコルを使用し、ルミネックス(Luminex)技術を使用する多重アッセイを、マトリプターゼステムの触媒ドメインに対する抗体を使用して実施した。
(6.1 材料及び方法)
マトリプターゼの触媒ドメインに対する各一次抗体(配列番号14により定義される。図3を参照されたい)を、独特なルミネックス磁気ミクロスフェア(Mug beads, Luminex Corporation, Austin, TX)に抱合化した。マグビーズカクテル(50ul)を、96ウエルの黒い丸底コスタープレート(Corning Incorporated, Corning NY)に添加した。96ウエルの磁気リングスタンドを使用し、マグビーズを1分間引き下げ、洗浄/アッセイ緩衝液(1%BSA及び0.02%Tween 20含有PBS)で洗浄した。50ulのサンプル又は標準をさらなる50ulの洗浄/アッセイ緩衝液とともに加え、室温で1時間振盪器上でインキュベートした。プレートを磁気リングスタンドに配置し、1分間おいた。マグビーズをそれから再び洗浄した。ビオチン標識抗体をそれから1ウエルにつき50ulでさらなる50ulの洗浄/アッセイ緩衝液とともに加え、室温で1時間振盪器上でインキュベートした。プレートは再び磁気スタンド上に配置し、マグビーズを洗浄した。ストレプトアビジン-RPE(Prozyme, San Leandro, CA, Phycolin, コード#PJ31S)を洗浄/分析緩衝液中1ug /mlに希釈し、50ulをさらなる50ulの洗浄/アッセイ緩衝液とともに各ウエルに添加し、室温で1時間振盪器上でインキュベートした。最終洗浄を実施し、ビーズを100ulの洗浄/アッセイ緩衝液で再懸濁し、それから各ウエルをXponentソフトウェア3.0を使用するルミネックス 200リーダーで読み取った。全ての試薬希釈剤を洗浄/アッセイ緩衝液で作成した。ビオチン-抗体は、分析ごとに最適濃度に変更した。添加した最初のマグビーズ量は、各分析についてのおよそ50,000であった。磁気ビーズを各洗浄前の時に1分プルダウンした。各洗浄工程は100ulの洗浄/アッセイ緩衝液で3回洗浄した。アッセイ検量線は、正常なドナー患者の血清プールにおいて作成した。ルミネックスリーダー及びマグビーズは、製造業者によるガイドラインに従って使用し、調製した。検量線は、5つのパラメータログロジスティックフィットを使用して算出し、各サンプル濃度はこの曲線の適合から測定した。
最終的なボックス及びROC結果は、Analyse-it General + Clinical Laboratory 1.73 (Analyse-it Software Ltd., Leeds England)を使用して分析した。
(6.2 結果)
61の正常サンプル、43の乳癌サンプル、65の結腸直腸癌サンプル及び14の前立腺癌サンプルを使用した実験は、マトリプターゼステムの可溶性触媒ドメインが乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌サンプルにおいて検出でき、さらに、該触媒ドメインの濃度が、正常サンプルにおいてよりも乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌において高いというさらなる証拠を生じた。これは、マトリプターゼが乳癌、結腸直腸癌及び前立腺癌において切断されることを実証し、治療標的としての該ステムの有効性を示す。
図6a及び6bは、それぞれ乳癌及び結腸直腸癌についてのマトリプターゼについてのROCデータ曲線を示す。ROC曲線は、1-特異性(偽陽性)に対し、感度(真の陽性)をプロットする。0.5を超えるROC曲線の下の領域は、疾患と標準の間の良好な識別を示す。これは図6a及び6bに示されたデータにおける事例であり、これを低いp値とともに、該触媒ドメインの濃度が、正常なサンプルにおいてよりも乳癌及び結腸直腸癌において著しく高いことを示す。
(実施例7:酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用する抗原特異抗体のスクリーニング)
以下の参照プロトコルを使用し、マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)の特異性を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で測定した。
(7.1 材料及び方法)
プレートは、50μL/ウエルの1×PBS中1〜2μg/mLのマトリプターゼステムペプチド(又は社内調製マトリプターゼステム-hFc又は無関係なHIgG又はhFcタンパク質)で終夜被覆した。これを冷蔵庫に保存した。該プレートを空にし、1×PBST + 5%ニワトリ血清で30分間〜1時間室温にてブロッキングした(200μL/well)。該プレートを空にし、1×PBSTを使用して洗瓶(3×)又はプレート洗浄液(3×)で手洗浄した。洗瓶を使用する場合、プレートは紙タオル上で吸い取った。
50μL/ウエルのブロッキング緩衝液をプレートに添加し、50μL/ウエルのハイブリドーマ上清を添加した。これを室温で1時間インキュベートした。利用できる場合、ポジティブコントロールを使用した。プレートを空にし、1×PBSTを使用して洗瓶(3×)又はプレートワッシャ(3×)で手洗浄した。洗瓶を使用する場合、プレートは紙タオルで吸い取った。
二次HRP抗ヒトIgG Fc(1:3000)又はHRP抗ヒトκ(1:2000)を1×PBST +5%ニワトリ血清に希釈した。100μL/ウエルを添加し、これを室温で1時間インキュベートした。プレートを空にし、1×PBSTを使用して洗瓶(3×)又はプレートワッシャ(3×)で手洗浄した。洗瓶を使用する場合、プレートは紙タオルで吸い取った。
プレートを10mLのABTS基質を使用して開発した。これを室温で15〜30分間インキュベートした。プレートをMolecular Devicesソフトウェア(415-490nM)で読み取った。
試薬及び器材:
リン酸緩衝食塩水(PBS)、Ca及びMg不含DPBS(Hyclone SH30013.03又はSigma P 3813)。
PBS-T(洗浄緩衝液)、0.05%Tween 20含有PBS(Sigma P-1379)。
PBS-T 及び1%BSA(Sigma A 9647)又は5%ニワトリ血清。これはブロッキング緩衝液及びサンプル緩衝液として使用する。
ELISAプレート(Nunc, Imuno-plate F96 Maxisorp 442404又はFalcon, 353912 flex plates又はCostar EIA/RIA Plates, 96ウエル平底, # 9018)。
マトリプターゼステムペプチド、社内調製マトリプターゼステム-hFc、無関係なHIgG及びhFcタンパク質HRP抗ヒトg-鎖特異抗体(Jackson, 109-036-098)、HRP抗ヒトk(Bethyl、A80-115P)。
ABTS基質(Moss社, 製品: ABTS-1000)。
405nmフィルタを有するELISAプレートリーダー。
自動ELISAプレート洗浄器。
(7.2 結果)
図7(a)及び7(b)は、垂直軸上に405nmの光学密度、並びに水平軸上に抗体及びコントロールを有するELISA分析のグラフを示す。図7(a)は、抗hk-hrp単独、無関係なHIgG及びマトリプターゼステムに対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)についての結果を示し、これは、ウサギポリクローナル抗体がマトリプターゼのステムに高度に特異的であることを実証する。図7(b)は、社内調製ステム-hFcタンパク質、ウサギステムペプチド及び無関係なhFcについての無関係なHIgG(5μg/ml)、マトリプターゼステムに対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)並びに抗HIgGFc-hrpについての結果を示す。このグラフは、ウサギポリクローナル抗体がマトリプターゼステム(社内調製ステム-hFcタンパク質及びウサギステムペプチド)に高度に特異的であることを示す。
(実施例8:蛍光標識細胞分取(FACS)を使用する抗体のスクリーニング)
以下の参照プロトコルを使用し、マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)を蛍光標識細胞分取(FACS)を使用してHT-29結腸癌細胞において選別した。
(8.1 材料及び方法)
細胞はHT-29細胞を計数し、細胞株ごとに生存度を算出することにより調製した。0.25×105/サンプルについて十分な細胞を50ml管へ移し、PBSで2回を洗浄した。
細胞は冷却FACS緩衝液(0.02%アジド含有PBS中2%FBS)に2.5×105細胞/mlで再懸濁した。100μL/ウエルをU底96ウエルプレート(Falcon 非組織培養処理 #35-1177)に添加し、2500RPMで1分間遠心分離した。緩衝液は1回の素早い動きで廃棄し、該プレートを紙タオル上で軽くたたき、余分な緩衝液を除去した。
100μLの上清サンプル及びコントロールをウエルに添加し、ペレットを再懸濁した。これを氷上で30〜40分間インキュベートした。これをそれから200μL/ウエルのFACS緩衝液で1回洗浄し、2500 RPM、4℃で1分間遠心分離した。緩衝液を廃棄した。
50μL/ウエルの特異的(Jackson, # 109-095-098)二次FITC標識ヤギ抗ヒトIgG Fcを1:100希釈で添加した。これを4℃の暗条件で20〜30分間インキュベートし、200μL/ウエルのFACS緩衝液で2回洗浄し、2500RPM、4℃で1分間遠心分離した。
サンプルを1:100希釈のヨウ化プロピジウム(Roche, Cat.1 348 639)を含んでいる80μL/ウエルのFACS緩衝液に再懸濁した。該96ウエルプレートをFACS Caliberで直接読み取った。データをCellQuestソフトウェアを使用して解析した。
FACS試薬:
FACS緩衝液:2%FBS(Hyclone、# SH30071.03)及び0.02%NaN3(Sigma # S-8032)を添加したリン酸緩衝食塩水(PBS)。これをブロッキング緩衝液並びに洗浄緩衝液として使用した。ELISAプレート(Becton Dickinson, Falcon, U底96 ウエルプレート, # 351177)。
FACS管(Becton Dickinson、Falcon、# 352052)。
FITC標識抗ヒトγ鎖特異抗体(Jackson, #109-095-098)。
ヨウ化プロピジウム(Roche # 1348639)
FACScalibur(BectonDickinson)
エッペンドルフ遠心分離機(Eppendorf # 581012)
(8.2 結果)
図8は、垂直軸上の最大の%、並びに水平軸上の2つの高さの蛍光チャネルを有するHT-29結腸癌でのFACS分析のグラフを示す。このグラフは、マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)がHT-29結腸癌細胞によく結合することを示す。
(実施例9:ウエスタンブロットを使用するマトリプターゼステムタンパク質の検出)
以下の参照プロトコルを使用し、マトリプターゼの細胞外ステム領域に対するウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)を使用して、組換えマトリプターゼステム-FcG1融合タンパク質を発現しているCHO-S細胞におけるマトリプターゼをウエスタンブロッティングを使用して検出した。
(9.1 材料及び方法)
単層で培養した細胞をインサイチュウにて4%SDS、20%グリセロール、10% 2-メルカプトエタノール、0.004%ブロモフェノールブルー、0.125M トリス-HCl, pH 6.8、プロテイナーゼ阻害剤を含む2×Laemmliサンプル緩衝液で溶解し、及び直ちに素早く凍らせた。95℃で5分間煮沸した後に、サンプルを冷却し、ベンゾナーゼで30分間処理し(1mlのサンプル当たり1000単位超)、超音波水槽中で一連の超音波処理に供し(5〜10回、それぞれ10〜15分)、ゲノムDNAを剪断した。
1レーンにつき20〜30μlの溶解物のからのタンパク質は、Novex及びNuPAGE/Novexプレキャストミニゲル(Invitrogen, UK)上でのミニゲル電気泳動により分離した。ゲルをiBlot Dry Blotting System(Invitrogen, UK)でニトロセルロース膜上へブロットした。泳動された溶解物の量は、泳動マーカーとしてのGAPDHの存在により推定した(抗GAPDH抗体:カタログ番号CB1001, Calbiochem; at 1:10000)。
該膜を動物性物質を含まないブロッカー(Vector)とインキュベートし、4℃で、14〜18時間、回転させながら、1:500希釈で動物性物質を含まないブロッカー中マトリプターゼの細胞外ステム領域にウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)でプローブした。二次抗体は抗マウスDyLight 488抱合体(Pierce)であった。
(9.2 結果)
図9は、マトリプターゼの細胞外ステム領域にウサギポリクローナル抗体(AbCAM, UK, ab28267)によってプローブされた組換えマトリプターゼステム-FcG1融合タンパク質を発現しているCHO-S細胞での2つのウエスタンブロットの結果を示す。これらの結果は、マトリプターゼステム-FcG1融合タンパク質の予測された分子量に対応するサイズのシグナルが存在することを示す。
特許及び特許出願を含む、本出願において言及した全ての引用文献は、引用によりその最も可能な広い範囲で本明細書に組み込まれる。
本明細書及び特許請求の範囲を通じ、用語「マトリプターゼ」は、句「本発明のタンパク質」を置き換えるため、及び本出願がその優先権を主張する米国仮出願US 60/963,837に記載される出願人の内部参照OGTA004を置き換えるために使用される。これらの用語の全ては、マトリプターゼポリペプチドに言及するものとして理解され、その「ステム」は、活性化部位自己開裂の後に細胞表面上に残る部分である。
明細書及び添付する特許請求の範囲の全てを通し、文脈が別途要求しない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形体は、述べられた整数、工程、整数の群又は工程の群を包含するのみではなく、任意のその他の整数、工程、整数の群又は工程の群を除外しないことを意味すると解する。
本発明の実施態様は、特定の要素を含んで本明細書に記載される。また本発明は同じ要素から成っているか又は本質的に成っている個別的な実施態様まで拡張され、その逆もまた同じである。
本説明及び「特許請求の範囲」の一部を形成している本出願は、あらゆる後願に関する優先権の基として使用できる。そのような後願の「特許請求の範囲」は、本明細書に説明された特徴又は特徴の組合せを指摘してよい。これらは、生成物、組成物、プロセス又は「特許請求の範囲」の使用の形をとることができ、かつ限定を伴わない例とし、以下の「特許請求の範囲」を含んでよい。