JP5849508B2 - Bgmのマスキング効果評価方法及びbgmのマスキング効果評価装置 - Google Patents
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Description
例えばピアノ曲やスイングジャズ等のようにピアノやドラム等の間欠的な打音が中心となっているBGMの場合、打音の発生時には高いマスキング効果を得られるが、それ以外の時にはマスキング効果が得られにくい。逆に、例えばフーガやカノンのように弦楽器等による連続的な音が中心となっているBGMの場合、ピアノ曲とは異なり、高いマスキング効果がほぼ切れ目なく得られる。
前記の方法におけるBGM候補の前記音特性は、コンピュータや騒音計により簡便に取得できるので、そのBGM候補のT/M比の予測値も簡単に得ることができる。
図1は、この実施形態のBGMのマスキング効果評価方法が実施される建物の一例を示している。この建物において、会議室AR内の会話の内容が、その会議室ARと壁W及びドアDRを隔てて隣接する廊下Cのドア前位置R2にいる聴者に聞き取られないように、廊下Cに設けたスピーカS2からBGMが再生される。この実施形態は、会議室ARから廊下Cに漏れる会話の内容に対して有効なマスキング効果を発揮するためのものである。
(マスキング効果評価方法)
このマスキング効果評価方法は、マスカーとしてのBGM候補の音特性に基づいて、ターゲットとしての会話に対するBGM候補のマスキング効果の高さを評価するものである。
−1.35×Leq,1kHz+26.3
次に、この評価式から他のBGM候補に対する前記T/M比の予測値を取得する。
(マスキング効果評価装置)
次に、上記BGMのマスキング効果評価を自動的に行うBGMのマスキング効果評価装置について説明する。このマスキング効果評価装置は、BGM候補の音特性から、評価式に基づいてそのBGM候補のマスキング効果を自動的に評価することができるようにしたものである。
次に、マスキング効果評価装置10による作用を説明する。この作用は、データ処理部11の制御のもとに、記憶済みのプログラムが実行されるものである。この装置によるマスキング効果評価処理では、まず、ステップ(以下、Sと略記する)10において、前記キーボード14により入力された会話の話者の特性、すなわちターゲット種別の選択によりターゲット種別が設定される。
次に、S30において、前記再生装置13からBGM候補の曲データを取り込む処理が実行される。
次に、S50において、S20で選択した評価式により、S40で取得した音特性に対応するT/M比の予測値を求めて出力する処理が実行される。
(BGMの音楽媒体)
上記マスキング効果評価装置10により求められるT/M比の予測値は、曲データや音楽CDタイトル欄の一部に付加的な情報として記録される。すなわち、ターゲットに対するマスキング効果の高さの情報が示された曲データや音楽CDが実現される。ここで、「マスキング効果の高さの情報」とは、ターゲット種別ごとに適・不適が設定された情報であり、例えば「好適ターゲット:男・30代、適ターゲット:男女・20代以上」、「適ターゲット:女・20代、不適ターゲット:女・40代」のように段階的にランク付けした情報である。ユーザは、BGM候補の音楽CDから取得する前記情報により、ターゲットである会話に対するBGM候補のマスキング効果の高さを、容易に把握することができる。また、上記指標を、音楽CDのラベルに印刷すれば、そのBGM候補のマスキング効果の高さを一目で把握できる。さらに、マスキング効果の高いBGMだけを選択して再生することも出来る。
(実施条件)
図1に示す建物において、会議室ARから廊下Cに漏れる会話をターゲットとし、この廊下Cに再生するBGMをマスカーとすることによりマスキングを行う。なお、会議室ARと廊下Cとの間の室内音圧レベル差Dr はDr =−20dBであり、廊下Cにおけるドア前位置R2での特定場所間音圧レベル差Dp,r は、Dp,r =−15dBである。
(複数種のサンプルBGMのT/M比の取得)
まず、ターゲットとしての録音された男性アナウンス再生用のスピーカS1を会議室ARの座席位置に設置した。そして、会議室AR内の所定位置R1(スピーカS1から距離1m)における等価音圧レベルLAeqが
LAeq =65dBA
となるようにターゲット再生時の音の大きさを設定した。
LAeq =41dBA
であり、同ドア前位置R2におけるターゲット非再生時の暗騒音の等価音圧レベルLAeq は
LAeq =31dBA
である。
・ピアノ曲 「村松宗継 あなたがいるから」
・アコースティック・ギター曲
・スイングジャズ 「Isn’t It Romantic」
・イージーリスニング (シンセサイザー曲)
・管弦楽曲1「バッハ 音楽の捧げもの 上方5度フーガ・カノニカ」
・管弦楽曲2「バッハ 音楽の捧げもの 5度のカノン・フーガ」
参考として、ターゲットの男性アナウンスと、マスカーのサンプルBGMを対象に、100msec毎の騒音レベル、及び1/1オクターブ125Hz〜4KHzの各帯域の音圧レベルの頻度分布を図2〜図9に示す。なお、図2〜図9の横軸は音圧レベル(dB)、縦軸は出現回数を示し、動特性Fast、50秒間の等価音圧レベルLAeq が100dBA となるようにターゲット及びマスカーの大きさを補正して頻度分布を作成した。
(マスキング効果が得られるT/M比の取得)
次に、被験者をドア前位置R2に立たせて、ターゲットとマスカーの同時再生を50秒間聞かせた後、男性アナウンスの会話内容の理解程度を以下の4段階から選択させた。被験者は、正常な聴力を持つ20〜50代の男性8名である。すなわち、前記会話を再生しつつ7種類の前記サンプルBGMを前記5種類の各T/M比で50秒間ずつ再生した。従って、各被験者は、7種類のサンプルBGMと5種類のT/M比との組み合わせからなる35種類の状況において、会話内容の理解程度を選択した。なお、各被験者に提示する35種類の組み合わせの再生順序はランダムである。
B:会話中の単語を聞き取ることができる場合があるが、内容は理解できない。
C:会話をほとんど聞き取ることができ、内容をほぼ理解できる。
図10〜図16に示すグラフは、7種類の前記各サンプルBGMにおける5種類のT/M比について、8名の前記被験者が上記各T/M比毎に上記の4段階評価を行った結果を示している。この各グラフから理解されるように、ピアノ曲やスイングジャズについては、前記評価のランクAを選択した被験者が存在せず、又はランクBを選択した被験者の割合も相対的に低い。このため、ピアノが中心のサンプルBGMは、マスキング効果が相対的に低いと判断される。一方、バイオリン曲や管弦楽曲1,2については、前記評価のランクAを選択した被験者が存在し、またランクBを選択した被験者の割合も相対的に高い。このため、弦楽器や管楽器が中心のサンプルBGMは、マスキング効果が相対的に高いと判断される。
(音特性の取得)
サンプルBGM候補のワヴ(WAV)ファイルデータを騒音計(リオン株式会社製「精密騒音計 NA−28」)にライン入力させることにより、前記サンプルBGMの音特性である等価音圧レベルLAeq 、5%時間率音圧レベルL5 、時間率音圧レベルの90%レンジ幅L95-5、及び、音圧レベルのサンプリング値の標準偏差σの特性値を、125〜4kHzの範囲で各1/1オクターブ帯域について取得した。この各音特性値のデータを図18の表に示す。なお、このときの騒音計の動特性はFastであり、また各周波数帯域の音圧レベルはA特性補正済みデータである。
(回帰分析)
次に、前記各サンプルBGMについて得られた前記T/M50%比を目的変数とし、そのサンプルBGMから取得した前記各音特性を説明変数とする回帰分析を行った。このとき、説明変数に用いる音特性は、前記T/M50%比との単相関係数が0.7以上のものを採用した。ここでは、1kHz帯域における等価音圧レベルLeq,1kHzと、250Hz帯域における5%時間率音圧レベルL5,250Hzとを説明変数として採用した。なお、図18において単相関係数が0.7以上の音特性は3つあるが、標準偏回帰係数が大きい方の上記2つの音特性を採用した。この回帰分析は、マイクロソフト社の表計算ソフト「エクセル」の回帰分析プログラムである「ソルバー」機能を用いて行うことができる。
−1.35×Leq,1kHz+26.3 … (1)
(精度)
上記の回帰式(1)の精度を統計手法により調べると、目的変数であるT/M50%比とその予測値との相関係数が0.87、相関係数の二乗である決定係数が0.76(>0.5)、自由度補正済み決定係数が0.66、又、有意Fが0.029(<0.05)となった。よって、上記回帰式(1)の検定結果は、有意であり、その有効性が確認された。図19のグラフに示すように、この回帰式(1)を用いて求めたT/M50%比の予測値は、サンプルBGMのT/M50%比にほぼ一致していることが確認された。
・等価音圧レベル:一定時間内の音エネルギーの時間平均値をレベル表示した値
・N%時間率音圧レベル:一定時間内の音圧レベルがあるレベルを越えている時間の合計が一定時間のN%(例えば5%)に相当するときの音圧レベル
・時間率音圧レベルのM%レンジ幅:N%時間率音圧レベルと(100−N)%時間率音圧レベルとの差M
・室内音圧レベル差Dr:JIS A1417による規定
・等価音圧レベルLAeq :JIS Z8731による規定
・1/1オクターブ帯域毎の等価音圧レベル、及びA特性補正済み音圧レベル:JIS Z8731による規定
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
(他の技術的思想)
以下、前記各実施形態から把握され、請求項として挙げられていない技術的思想を記載する。
Claims (6)
- サンプルBGMをマスカーとして用いたときにマスキング効果が得られる等価音圧レベルのT/M比を目的変数とし、前記サンプルBGMの音特性を説明変数とする回帰分析により設定した評価式を用いて、他のBGM候補の前記T/M比の予測値を取得し、
この予測値の値に基づいて、ターゲットに対する同BGM候補のマスキング効果の高さを評価することを特徴とするBGMのマスキング効果評価方法。 - 前記各サンプルBGMの複数種の前記音特性を取得し、この各音特性と前記各サンプルBGMのT/M比とのそれぞれの単相関係数に基づいて前記説明変数として用いる音特性を選択することを特徴とする請求項1に記載のBGMのマスキング効果評価方法。
- 前記複数種の音特性は、1/1オクターブ帯域毎の等価音圧レベル、同じく5%時間率音圧レベル、同じく時間率音圧レベルの90%レンジ幅、及び、同じく音圧レベルのサンプリング値の標準偏差のうちのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のBGMのマスキング効果評価方法。
- 前記音特性は、1kHz帯域の等価音圧レベルLeq,1kHzと、250Hz帯域の5%時間率音圧レベルL5,250Hzであり、
前記回帰分析によって得られた回帰式は、
T/M比=0.98×L5,250Hz−1.35×Leq,1kHz+26.3
であることを特徴とする請求項3に記載のBGMのマスキング効果評価方法。 - 前記音特性は、騒音計により取得されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のBGMのマスキング効果評価方法。
- サンプルBGMをマスカーとして用いたときにマスキング効果が得られる等価音圧レベルのT/M比と、各サンプルBGMの複数種の音特性との関連性を表す評価式を、複数種のターゲット種別に応じて記憶する評価式記憶手段と、
新たに取得したBGM候補の曲データから、音特性のデータを取得する音特性取得手段と、
指定されたターゲット種別に対応する評価式により、取得した前記音特性に対応する前記T/M比の予測値を求める予測値算出手段とを備えたことを特徴とするBGMのマスキング効果評価装置。
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