近年、2.4GHz帯又は5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとしてIEEE802.11g規格やIEEE802.11a規格などの普及が目覚ましい。これらのシステムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの物理層伝送速度を実現している(例えば、非特許文献1参照)。
ただし、ここでの伝送速度は物理レイヤ上での伝送速度であり、実際にはMAC(Medium Access Control)レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値は30Mbps程度であり、情報を送信しようとする通信局が増えればこの特性は更に低下する。一方で、有線LAN(Local Area Network)では、Ethernet(登録商標)の100Base−Tインタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、100Mbpsの高速回線の提供が普及しており、無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められている。
そのための技術として、IEEE802.11n規格において、空間多重送信技術としてMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が導入された。更に、IEEE802.11acでは、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を適用したマルチユーザMIMO(MU−MIMO)送信方法が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
IEEE802.11準拠の無線LANシステムでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス)に基づくアクセス制御手順を採り入れて、各通信局は他の通信局との信号の衝突を回避する。送信要求が発生した通信局は、まず所定のセンシング期間(DIFS:Distributed Inter-Frame Space)だけ無線媒体の状態を監視し、この間に他の通信局による送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行う。通信局は、引き続きランダム・バックオフ期間中も無線媒体を監視するが、この間にも他の通信局による送信信号が存在しない場合に、所定の期間に渡る排他的なチャネルの送信権(TXOP:Transmission Opportunity)を得る。このように送信権(TXOP)を得た通信局はTXOP Holder(以下、送信権取得通信局と称する)と呼ばれる。送信権取得通信局となった通信局は、TXOP期間内で再びCSMA/CAを実施することなく、連続的にフレームを送信することができる。
また、無線通信における隠れ端末問題を解決する方法として、「仮想キャリアセンス」が挙げられる。具体的には、通信局は、自局宛てではない受信フレーム中に無線媒体を予約するためのDuration(持続使用期間)情報が含まれている場合には、このDuration情報に応じた期間はメディアが使用されているものとし(仮想キャリアセンス)、当該期間を送信停止期間(NAV:Network Allocation Vector)として設定し、NAV期間においてフレームの送信を行わないようにする。これによって、TXOP期間におけるチャネルの排他的利用が保証される。
通信局は、フレームを受信すると上述通り必要に応じてNAVを設定すると同時に、受信したフレームはTXOP期間を開始するフレームであれば、受信したフレームの送信元通信局、いわゆる、送信権取得通信局を識別する情報(例えば、MACアドレス)を記録しておく(例えば、非特許文献3参照)。TXOP期間が終了すると記憶した送信権取得通信局を識別する情報を削除する。なお、TXOP期間を開始するフレームとは、特別なフレームではなく、例えばRTS(Request To Send:送信要求)フレームのような当該フレームを送信することにより一定期間に渡ってチャネルを予約する信号である。したがって、当該フレームにより明示的にTXOP期間が開始されることを示す情報は含まれていない。
通信局は、TXOP期間内において再度フレームを受信すると、その受信フレームの送信元アドレスと、送信権取得通信局を識別する情報として記憶したMACアドレスとが同一であるか否かを確認する。もし、同一ならば、受信フレームの送信元通信局は送信権取得通信局であると判断し、自局内のNAVの設定有無に関わらず必要な返信フレームを送信する。これによって、送信権取得通信局は同一TXOP期間内で異なる複数の通信局とデータの送受信を行うことができる。
以下、図12及び図13を参照して、通信局間において行われるフレームの送受信の例を説明する。図12は、送信権取得通信局がTXOP内において他の通信局宛にデータフレームを複数送信する際に、フレームを送信するタイミングの例を示したタイムチャートである。同図において、横軸は時間を示している。ここでは、基地局装置AP(Access Point)9と無線端末WT(Wireless Terminal)91〜WT93とが通信局としてあり、基地局装置AP9が無線端末WT91〜WT93宛のデータを収容し、無線端末WT91〜WT93宛のデータフレームを同一TXOP期間内で送信する例を示している。基地局装置AP9は、TXOPを取得し、まず無線端末WT91に対してデータを送信する。基地局装置AP9は無線端末WT91とのデータ通信を終えると無線端末WT92に対してデータを送信し、最後に無線端末WT93に対してデータを送信する。
次に、基地局装置AP9及び無線端末WT91〜WT93の動作を説明する。まず、基地局装置AP9は、無線端末WT91〜WT93宛のデータが生起するとCSMA/CAを実施し、所定のセンシング期間及びランダム・バックオフ時間に亘って他の通信局から送信された信号が検出されないことを確認して送信権(TXOP)を取得する。基地局装置AP9は送信権を取得したために送信権取得通信局(TXOP Holder)になり、フレームの送信を行う。基地局装置AP9は無線端末WT91宛に、フレーム・シーケンスの開始を示す開始フレームとしてのRTSフレームを送信する(時刻t911)。
無線端末WT91は、受信したRTSフレームの宛先が自局であり、また、自局内で送信停止期間が設定されていないため、基地局装置AP9宛にCTS(Clear To Send:送信許可)フレームを返信する(時刻t912)。これにより、無線端末WT91はデータを受信できる状態にある旨を基地局装置AP9に対して通知する。
一方、基地局装置AP9からRTSフレームを受信した他の通信局である、無線端末WT92及び無線端末WT93はRTSフレームの宛先が自局でないため、RTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間(送信停止期間)に設定し、該当するNAV期間内においてフレームの送信を行わないようにする。また、基地局装置AP9からRTSフレームを受信したことにより、TXOP期間(利用送信権期間)が開始されたことを検出すると共に、無線端末WT91〜WT93は、基地局装置AP9が送信権取得通信局であることを記憶する。
基地局装置AP9は、無線端末WT91からCTSフレームを受信すると、無線端末WT91宛のデータフレームを送信する(時刻t913)。無線端末WT91は、自局宛のデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP9に対してBA(Block ACK)フレーム(又はACK(Acknowledgement:肯定応答)フレーム)を返信し(時刻t914)、フレームの送受信を終える。
次に、基地局装置AP9は、無線端末WT92宛のデータを送信するため、宛先を無線端末WT92としたRTSフレームを送信する(時刻t915)。ここで、無線端末WT92は、送信権取得通信局である基地局装置AP9からRTSフレームを受信したため、NAV期間内であるか否かに関わらず、送信権取得通信局宛にCTSフレームを返信する(時刻t916)。無線端末WT91及び無線端末WT93は、自局宛ではないRTSフレームを受信したため、NAV期間を設定する。既にNAV期間が設定されている場合は、NAV値を更新する。
基地局装置AP9は、無線端末WT92からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT92宛のデータフレームを送信する(時刻t917)。無線端末WT92は、基地局装置AP9からデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP9に対してBAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t918)、フレームの送受信を終える。
次に、基地局装置AP9は、無線端末WT93宛のデータを送信するため、宛先を無線端末WT93としたRTSフレームを送信する(時刻t919)。ここで、無線端末WT93は、送信権取得通信局である基地局装置AP9からRTSフレームを受信したため、NAV期間内であるか否かに関わらず、送信権取得通信局宛にCTSフレームを返信する(時刻t920)。
一方、無線端末WT91及び無線端末WT92は、自局宛ではないRTSフレームを受信したため、NAV期間を設定する。既にNAV期間が設定されている場合は、NAV値を更新する。基地局装置AP9は、無線端末WT93からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT93宛のデータフレームを送信する(時刻t921)。無線端末WT93は、基地局装置AP9からデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP9に対してBAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t922)、フレームの送受信を終える。
IEEE802.11nでは、TXOP内でのデータ伝送を更に効率化するために、RD(Reverse Direction)プロトコルが導入されている。従来技術では、TXOPを取得した通信局がデータフレームを送信し、それに対する返信フレームを受信する一方向のデータ伝送のみが行われる。これに対し、RDプロトコルでは、TXOPを取得した通信局が、データを送信する際にMACフレーム内の特定のフィールドで「RDG(RD Grant)=1」、すなわち、逆方向のデータ伝送を許可することを示す情報(逆方向許可情報)を送信することで、そのデータの受信局は、同じTXOP内でTXOPを取得した通信局(TXOP holder)を宛先とした逆方向のデータフレームを送信することができる(例えば、非特許文献4参照)。
図13は、IEEE802.11nにおけるRDプロトコルを適用し、双方向にデータの送受信が行われる際のフレームの例を示したタイムチャートである。同図において、横軸は時間を示している。ここでは、基地局装置AP9と無線端末WT91〜WT93とが通信局としてあり、基地局装置AP9が無線端末WT91及び無線端末WT93とデータの送受信を互いに行う例を示している。基地局装置AP9は、送信権を得て無線端末WT91宛に、開始フレームとしてのRTSフレームを送信し(時刻t931)、無線端末WT91からCTSフレームを受信し(時刻t932)、無線端末WT91宛にデータフレームを送信する(時刻t933)。このとき、基地局装置AP9は、データフレームに含まれるMACヘッダ内のRDGフィールドに「1」を設定することにより、RD(逆方向)での送信が可能であることを無線端末WT91に通知する。
無線端末WT91は、RDGフィールドに「1」が設定されたMACヘッダを含むデータフレームを受信すると、基地局装置AP9宛にデータを送信可能であることを検出し、RDGフィールドに「1」を設定したBAフレームを返信する(時刻t934)。これにより、無線端末WT91は、RDにより送信するデータがあることを基地局装置AP9に通知する。そして、無線端末WT91は、SIFS(Short Inter-frame space)の後に基地局装置AP9宛にデータフレームを送信する(時刻t935)。なお、無線端末WT91は、送信するデータフレームに含まれるMACヘッダ内のRDGフィールドに「0」を設定することで、送信する最後のデータフレームであることを、送信権取得通信局である基地局装置AP9に通知する。基地局装置AP9は、無線端末WT91からデータフレームを受信すると、無線端末WT91にBAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t936)、無線端末WT91との通信を終える。
次に、基地局装置AP9は、宛先を無線端末WT93としたRTSフレームを送信する(時刻t937)。ここで、無線端末WT93は、送信権取得通信局である基地局装置AP9からRTSフレームを受信したために、NAV期間であるか否かに関わらず送信権取得通信局にCTSフレームを返信する(時刻t938)。
一方、無線端末WT91及び無線端末WT92は、自局宛でないRTSフレームを受信したため、NAV期間を設定する。既にNAV期間が設定されている場合は、NAV期間を更新する。基地局装置AP9は、無線端末WT93からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT93宛のデータフレームを送信する(時刻t939)。ここで、基地局装置AP9は、送信したデータフレームに含まれるRDGフィールドに「1」を設定することで、無線端末WT93に逆方向(RD)での送信が可能であることを無線端末WT93に通知する。
無線端末WT93は、RDGフィールドに「1」が設定されているデータフレームを基地局装置AP9から受信すると、基地局装置AP9に対してBAフレームと共にデータフレームを送信する(時刻t940)。基地局装置AP9は、RDGフィールドに「0」が設定されているデータフレームを無線端末WT93から正しく受信すると、無線端末WT93に対してBAフレームを送信し(時刻t941)、無線端末WT93との通信を終える。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による無線通信システムを説明する。図1は同実施形態における無線通信システムの構成例を示す概略図である。本実施形態の特徴は、TXOP開始フレームを正しく受信できなかった通信局は、正しく受信するフレームを用いて送信権取得通信局の推測・特定を行うことにある。図1に示す例では、無線通信システムは2つのセルA及びセルBを有している。各セルA、Bは、基地局装置と無線端末とを有している。基地局装置及び無線通信端末は予め定められた同一の周波数帯域を用いて互いに無線通信を行う。セルAは、1台の基地局装置AP1と、3台の無線端末WT11〜WT13とを有している。セルBは、1台の基地局装置AP2と、1台の無線端末WT21とを有している。セルA及びセルBは、同一の周波数帯を使ってデータの送受信を行う。以下、セルAに着目して説明を行う。セルBが有する基地局装置AP2及び無線端末WT21がセルAに対する干渉局である場合について説明する。以下、基地局装置AP1と基地局装置AP2とのいずれか一方、あるいは両方を示すとき基地局装置APという。また、無線端末WT11〜WT13及び無線端末WT21のいずれか一つ、あるいは全てを示すとき無線端末WTという。なお、本実施形態では、無線通信システムが2つのセルを具備する場合について説明するが、3つ以上のセルを有していてもよい。
図2は、本実施形態における無線通信装置(基地局装置AP及び無線端末WT)の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように無線通信装置は、無線通信部1と、制御部2と、送信権取得通信局(TXOP Holder)の推測・特定の判断処理を行う送信権取得通信局管理部3とを備えている。無線通信部1は、予め定められた周波数帯を用いて他の無線通信装置(基地局装置AP及び無線端末WT)とフレームの送受信を行う。送信権取得通信局管理部3は送信権取得通信局の推測又は判断処理を行う。制御部2は、送信権取得通信局管理部3が記憶している送信権取得通信局を示す情報に基づいて、無線通信部1が行うフレームの送受信を制御する。
図3は、本実施形態における無線通信装置(基地局装置AP及び無線端末WT)の送信権取得通信局を推測又は判断する処理動作を示すフローチャートである。まず、無線通信装置において、フレームを受信する(ステップS101)と、制御部2は受信フレームのDuration値が0であるか否かを判定する(ステップS102)。Duration値は0(ステップS102:YES)の場合は、TXOP期間が終了となるので、送信権取得通信局の推測・判断を行う必要がなく、受信フレームに対する必要な処理(ステップS103)をする。
一方、受信フレームのDuration値は0でなければ(ステップS102:NO)制御部2は、送信権取得通信局の推測・判断を行う送信権取得通信局管理部3の情報を参照する。送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報があれば(ステップS104:YES)その情報を元に受信フレームに対する必要な処理を進めるよう制御部2に指示を行う。
送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報が無ければ(ステップS104:NO)、受信フレームの送受信送信装置アドレスを元に送信権取得通信局を特定できるか否かを判断する(ステップS105)。ここで、送信権取得通信局を特定できれば(ステップS105:YES)、その情報を保存(ステップS106)することにより送信権取得通信局を特定し、受信フレームに対する必要な処理を進める(ステップS103)。
一方、送信権取得通信局を特定できなれば(ステップS105:NO)、送信権取得通信局の候補を推測できるか否かを判断する(ステップS107)。ステップS107で送信権取得通信局の候補を推測できるなら、その情報を保存(ステップS108)し、受信フレームに対する必要な処理を進める(ステップS103)。ステップS107で送信権取得通信局の候補を推測できないなら、受信フレームに対する必要な処理を進める(ステップS103)。
図4は、同実施形態におけるRD手法が無効なシステムでの無線通信装置の送信権取得通信局を推測又は判断する処理動作を示すフローチャートである。まず、無線通信装置において、フレームを受信する(ステップS201)と受信フレームのDuration値が0であるか否かを判定する(ステップS202)。Duration値は0の場合は、TXOP期間が終了となるので、送信権取得通信局の推測・判断を行う必要がなく、受信フレームに対する必要な処理をする(ステップS203)。
一方、受信フレームのDuration値は0でなければ制御部2は、送信権取得通信局の推測・判断を行う送信権取得通信局管理部の情報を参照する(ステップS204)。送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報があればその情報を元に受信フレームに対する必要な処理を進めるよう制御部2に指示を行う(ステップS203)。送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報が無ければ(ステップS204:NO)、受信フレームの種類に応じて送信権取得通信局を特定できるか否かを判断する。
具体的な送信権取得通信局の判別方法は次の通りである。受信フレームがACK(BA)フレームなら(ステップS205:YES)、DATAフレームに対する返信フレームを受信したと見なせるので、受信フレームの宛先通信局は送信権取得通信局であると判断できる(ステップS206)。この判断情報を受信フレームのDuration期間のみ保持する(ステップS207)。Duration期間が終了すると上記の送信権取得通信局の情報をメモリーから削除する。
次に、受信フレームが、CTSなら(ステップS208:YES)、既に送信権取得通信局の候補に関する情報がメモリに保持されているか否かを確認する(ステップS209)。受信CTSフレームの宛先通信局は、既に送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていれば(ステップS210)、上記CTSフレームの宛先通信局は送信権取得通信局であると断定する(ステップS206)。
一方、メモリ内には、上記CTSフレームの宛先通信局は送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていなければ、上記CTSフレームの宛先通信局は送信権取得通信局の候補であるとし、メモリに記憶する(ステップS211)。そして、期間T以内でフレームを受信しなければ記憶した情報を削除する(ステップS212)。
次に、受信フレームがRTSであれば(ステップS213:YES)なら、既に送信権取得通信局の候補に関する情報がメモリに保持されているか否かを確認する(ステップS214)。受信RTSフレームの送信元通信局は、既に送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていれば(ステップS215:YES)、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局であると断定する(ステップS220)。一方、メモリ内には、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていなければ、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補であるとし、メモリに記憶する(ステップS216)。そして、期間T以内でフレームを受信しなければ記憶した情報を削除する(ステップS217)。
次に、また、受信フレームがDATAフレームであれば(ステップS218:YES)、そのフレーム長さがRTS_Thresholdよりも大きければ(ステップS219:YES)、送信元通信局は送信権取得通信局であると断定する(ステップS220)。IEEE802.11プロトコルではRTS_Thresholdよりも大きいDataフレームを送信する際は予めRTS/CTSの交換が行う必要があるため、RTS_Thresholdよりも大きいDataフレームを受信すれば、上述RTS/CTSの交換が正しく実施されていると判断できる。従って、RTS_Thresholdよりも大きいDataフレームを受信すれば、送信元通信局は送信権取得通信局であると断定できる。
一方、受信Dataのフレーム長がRTS_Thresholdよりも小さければ、RTSフレームの受信と同じく、既に送信権取得通信局の候補に関する情報がメモリに保持されているか否かを確認する(ステップS214)。受信Dataフレームの送信元通信局は、既に送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていれば、上記Dataフレームの送信元通信局は送信権取得通信局であると断定する(ステップS220)。そして、送信権取得通信局の情報を受信フレームのDuration期間のみ保持する(ステップS221)。一方、メモリ内には、上記Dataフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていなければ、上記Dataフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補であるとし、メモリに記憶する(ステップS216)。
次に、受信フレームがBAR(BA Request)フレームであれば(ステップS222:YES)受信フレームの送信元送信局は、送信権取得通信局であると判断する(ステップS223)。
次に、図1に示すセルAにおいて、無線端末WT13が隣接するセルBから干渉を受けている場合におけるセルAの通信動作を示すフレーム・シーケンスを説明する。ここでは、セルAにおいて、基地局装置AP1が無線端末WT11〜WT13宛のデータを収容し、無線端末WT11〜WT13宛のデータフレームを同一TXOP期間内で送信する例を説明する。また、基地局装置AP1が開始フレームとしてのRTSフレームを送信するときに、無線端末WT13が干渉を受けており、基地局装置AP1と無線端末WT11とが通信をしている間に、無線端末WT13が干渉を受けなくなる例を説明する。
図5は、本実施形態における送信権取得通信局(基地局装置AP1)が他の通信装置宛にデータフレームを複数送信するタイミングを示すタイムチャートである。同図において、横軸は時間を示している。まず、基地局装置AP1は、無線端末WT11〜WT13宛のデータが生起するとCSMA/CA(キャリアセンス)を実施し、所定のセンシング期間及びランダム・バックオフ期間に亘って他の無線通信装置(無線端末WT11〜WT13)から送信された信号が検出されないことを確認して送信権(TXOP)を取得する。基地局装置AP1は送信権を取得したために送信権取得通信局になり、フレームの送信を行う。基地局装置AP1は無線端末WT11宛に開始フレームとしてのRTSフレームを送信する(時刻t101)。
無線端末WT12は、基地局装置AP1からRTSフレームを受信するとRTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権取得通信局管理部3に記録する。また、無線端末WT12は、自装置内にNAV期間が設定されていないときに、自装置宛でないRTSフレームを受信したことにより、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定し、該当するNAV期間においてフレームの送信を行わないようにする。また、無線端末WT12は、開始フレームとしてのRTSフレームを受信したことにより、TXOP期間が開始されたことを検出する。
無線端末WT13は、干渉局から干渉を受けているため、基地局装置AP1からRTSフレームを受信することができず、TXOP期間が開始されたこと、及び基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを検出できない。無線端末WT11は、基地局装置AP1からRTSフレームを受信すると、RTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権管理部3に記録する。また、無線端末WT11は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t102)。
基地局装置AP1は、無線端末WT11からCTSフレームを受信すると、無線端末WT11宛のデータフレームを送信する(時刻t103)。基地局装置AP1が無線端末WT11宛のデータフレームを送信している間に、無線端末WT13が干渉を受けなくなる。
無線端末WT11は、基地局装置AP1から自装置宛のデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP1に対してBAフレーム(又はACKフレーム)を送信し(時刻t104)、フレームの送受信を終える。このとき、無線端末WT13は、無線端末WT11が送信したBAフレーム(又はACKフレーム)を受信し、受信したフレームに含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定する。また、無線端末WT11は、受信BAフレームの宛先である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権管理部3に記録する。
次に、基地局装置AP1は、無線端末WT13宛のデータを送信するため、宛先無線端末WT13としたRTSフレームを送信する(時刻t109)。このとき、無線端末WT11及び無線端末WT12は、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定する。
無線端末WT13は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、RTSフレームの送信元と送信権管理部3に記憶されている送信権取得通信局とが一致していることを検出する。この検出結果に基づいて、無線端末WT13は、NAV期間であるか否かに関わらす、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t110)。
基地局装置AP1は、無線端末WT13からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT13宛のデータフレームを送信する(時刻t111)。無線端末WT13は、基地局装置AP1からデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP1に対して、BAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t112)、フレームの送受信を終える。
図6〜図8は、それぞれBARフレーム、DATAフレーム、CTSフレームを受信することで送信権取得通信局を推測・特定する場合のタイミングを示すタイムチャートである。図6〜図8に示す詳細動作は、図5に示す動作と同様であるのでここでは詳細な説明を省略する。
図9は、本実施形態における送信権取得通信局(基地局装置AP1)が他の通信装置宛にデータフレームを複数送信するタイミングを示すタイムチャートである。同図において、横軸は時間を示している。まず、基地局装置AP1は、無線端末WT11〜WT13宛のデータが生起するとCSMA/CA(キャリアセンス)を実施し、所定のセンシング期間及びランダム・バックオフ期間に亘って他の無線通信装置(無線端末WT11〜WT13)から送信された信号が検出されないことを確認して送信権(TXOP)を取得する。基地局装置AP1は送信権を取得したために送信権取得通信局になり、フレームの送信を行う。基地局装置AP1は無線端末WT11宛に開始フレームとしてのRTSフレームを送信する(時刻t101)。
無線端末WT12は、基地局装置AP1からRTSフレームを受信するとRTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権取得通信局管理部3に記録する。また、無線端末WT12は、自装置内にNAV期間が設定されていないときに、自装置宛でないRTSフレームを受信したことにより、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定し、該当するNAV期間においてフレームの送信を行わないようにする。また、無線端末WT12は、開始フレームとしてのRTSフレームを受信したことにより、TXOP期間が開始されたことを検出する。
無線端末WT13は、干渉局から干渉を受けているため、基地局装置AP1からRTSフレームを受信することができず、TXOP期間が開始されたこと、及び基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを検出できない。無線端末WT11は、基地局装置AP1からRTSフレームを受信すると、RTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権管理部3に記録する。また、無線端末WT11は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t102)。
基地局装置AP1は、無線端末WT11からCTSフレームを受信すると、無線端末WT11宛のデータフレームを送信する(時刻t103)。無線端末WT11は、基地局装置AP1から自装置宛のデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP1に対してBAフレーム(又はACKフレーム)を送信し(時刻t104)、フレームの送受信を終える。無線端末WT11が基地局装置AP1宛のBAフレームを送信している間に、無線端末WT13が干渉を受けなくなる。
次に、基地局装置AP1は、無線端末WT12宛のデータを送信するため、宛先を無線端末WT12としてRTSフレームを送信する(時刻t105)。 このとき、無線端末WT11及び無線端末WT13は、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定する。また、無線端末WT13は、基地局装置AP1が送信権取得通信局の候補であることを送信権管理部3に記録する。そして、この情報を保持する期間をTとしてタイマーを動かす。受信フレームはRTSであるため、タイマーTの長さはSIFS+CTS長+SIFS期間と設定する。
無線端末WT12は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、RTSフレームの送信元と送信権管理部3に記憶されている送信権取得通信局とが一致していることを検出する。この検出結果に基づいて、無線端末WT12は、NAV期間であるか否かに関わらず、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t106)。基地局装置AP1は、無線端末WT12からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT12宛のデータフレームを送信する(時刻t107)。
無線端末WT13は、WT12のCTSフレームを正しく受信できれば、CTSフレームの宛先端末AP1が送信権取得通信局であると判断する。無線端末WT13は、例えば、WT13とWT12は互いにキャリアセンスできない距離に存在する等の理由により、WT12のCTSフレームを受信できなくても、タイマーT以内に再び送信権取得通信局候補であるAP1からフレームを受信すると、AP1が送信権取得通信局であると判断する。無線端末WT12は、基地局装置AP1からデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP1に対して、BAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t108)、フレームの送受信を終える。
次に、基地局装置AP1は、無線端末WT13宛のデータを送信するため、宛先無線端末WT13としたRTSフレームを送信する(時刻t109)。このとき、無線端末WT11及び無線端末WT12は、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定する。無線端末WT13は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、RTSフレームの送信元と送信権管理部3に記憶されている送信権取得通信局とが一致していることを検出する。この検出結果に基づいて、無線端末WT13は、NAV期間であるか否かに関わらす、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t110)。
基地局装置AP1は、無線端末WT13からCTSフレームを正しく受信すると、無線端末WT13宛のデータフレームを送信する(時刻t111)。無線端末WT13は、基地局装置AP1からデータフレームを正しく受信すると、基地局装置AP1に対して、BAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t112)、フレームの送受信を終える。
図10は、同実施形態におけるRD手法が有効なシステムでの無線通信装置の送信権取得通信局を推測又は判断する処理動作を示すフローチャートである。無線通信装置において、フレームを受信する(ステップS301)と受信フレームのDuration値が0であるか否かを判定する(ステップS302)。Duration値が0の場合は、TXOP期間が終了となるので、送信権取得通信局の推測・判断を行う必要がなく、受信フレームに対する必要な処理をする(ステップS303)。
一方、受信フレームのDuration値は0でなければ(ステップS302:NO)制御部2は、送信権取得通信局の推測・判断を行う送信権取得通信局管理部の情報を参照する。送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報があればその情報を元に受信フレームに対する必要な処理を進めるよう制御部2に指示を行う。送信権取得通信局管理部3において、既に送信権取得通信局に関する情報、すなわち、送信権取得通信局を判別できる情報が無ければ、受信フレームの種類に応じて送信権取得通信局を特定できるか否かを判断する(ステップS304)。
具体的な送信権取得通信局の判別方法は次の通りである。受信フレームがRTSであれば(ステップS305:YES)なら、既に送信権取得通信局の候補に関する情報がメモリに保持されているか否かを確認する(ステップS306)。受信RTSフレームの送信元通信局は、既に送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていれば(ステップS307:YES)、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局であると断定する(ステップS308)。そして、この判断情報を受信フレームのDuration期間のみ保持する(ステップS309)。
一方、メモリ内には、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていなければ(ステップS307:NO)、上記RTSフレームの送信元通信局は送信権取得通信局の候補であるとし、メモリに記憶する(ステップS310)。そして、期間T以内でフレームを受信しなければ記憶している情報を削除する(ステップS311)。
次に、受信フレームがDATA、BA(ACK)、BAR、CTSフレームのいずれかである場合は(ステップS312:YES)、既に送信権取得通信局の候補に関する情報がメモリに保持されているか否かを確認する(ステップS313)。既に送信権取得通信局の候補としてメモリに保存されていれば(ステップS313:YES)、保存されている通信局情報とマッチする上記受信フレームの送信元通信局又は宛先通信局のいずれか送信権取得通信局であると推測する(ステップS314)。
次に、保持情報に送信元または宛先通信局が入っていれば(ステップS315:YES)、RD手法が有効な場合は、上記の1つのフレームを受信するだけで送信権取得通信局の断定が難しいので、上記両通信局は送信権取得通信局の有力な候補であると登録する(ステップS316)。そして、この判断情報を受信フレームのDuration期間のみ保持する(ステップS317)。送信権取得通信局の有力な候補から同一TXOP区間内で呼び出しがあるその呼び出しに対して返答することとする。
図11は、本実施形態においてIEEE802.11nのRDプロトコルを用いた双方向のデータ送受信が行われる際のフレームを示したタイムチャートである。同図において、横軸は時間を示している。ここでは、基地局装置AP1が無線端末WT91及び無線端末WT13とデータの送受信をお互いに行う例を示している。
基地局装置AP1は、無線端末WT11、WT13宛のデータが生起するとCSMA/CAを実施し、所定のセンシング期間及びランダム・バックオフ期間に亘って他の通信装置から送信された信号が検出されないことを確認して送信権を取得する。基地局装置AP1は送信権を取得したために送信権取得通信局になり、フレームの送信を行う。基地局装置AP1は無線端末WT11宛に開始フレームとしてのRTSフレームを送信する(時刻t121)。このとき、無線端末WT12は、基地局装置AP1から自装置宛てでないRTSフレームを受信すると、RTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権取得通信局管理部3に記録する。また、無線端末WT12は、受信したRTSフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定し、該当するNAV期間においてフレームの送信を行わないようにする。また、無線端末WT12は、開始フレームとしてのRTSフレームを受信したことにより、TXOP期間が開始されたことを検出する。
無線端末WT13は、干渉局から干渉を受けているため、基地局装置AP1からRTSフレームを受信することができず、TXOP期間が開始されたこと、及び基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを検出できない。無線端末WT11は、基地局装置AP1からRTSフレームを受信すると、RTSフレームの送信元である基地局装置AP1が送信権取得通信局であることを送信権取得通信局管理部3に記録する。また、無線端末WT11は、受信したRTSフレームの宛先が自装置であることを検出し、CTSフレームを基地局装置AP1に返信する(時刻t122)。
基地局装置AP1は、無線端末WT11からCTSフレームを受信すると、無線端末WT11宛にデータフレームを送信する(時刻t123)。このとき、基地局装置AP1は、データフレームに含まれるMACヘッダ内のRDGフィールドに「1」を設定することにより、RD(逆方向)での送信が可能であることを無線端末WT11に通知する。無線端末WT11は、RDGフィールドに「1」が設定されたMACヘッダを含むデータフレームを基地局装置AP1から受信すると、基地局装置AP1宛にデータを送信可能であることを検出し、MACヘッダ内のRDGフィールドに「1」を設定したBAフレーム(又はACKフレーム)を基地局装置AP1に返信する(時刻t124)。これにより、無線端末WT11は、RDにより送信するデータがあることを基地局装置AP1に通知する。
そして、無線端末WT11は、SIFSの後に基地局装置AP1宛にデータフレームを送信する(時刻t125)。なお、無線端末WT11は、送信するデータフレームのRDGフィールドに「0」を設定することで、送信する最後のデータフレームであることを、送信権取得通信局である基地局装置AP1に通知する。無線端末WT13は、無線端末WT11が基地局装置AP1宛に送信するデータフレームを正しく受信できる。
無線端末WT13は、受信したフレーム内に含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定し、該当するNAV期間においてフレームの送信を行わないようにする。また、無線端末WT11および基地局装置AP1は、送信権取得通信局の候補であることを送信権取得通信局管理部3に記録する。
基地局装置AP1は、無線端末WT11からデータフレームを受信すると、無線端末WT11にBAフレーム(又はACKフレーム)を返信し(時刻t126)、無線端末WT11との通信を終える。このとき、無線端末WT13は、受信したBA(又はACK)フレームの送信元通信局および宛先通信局は、無線端末WT13内で送信権取得通信局の候補になっていることを知り、無線端末WT11および基地局装置AP1は、送信権取得通信局の有力な候補として送信権取得通信局管理部3に記録する。同一TXOP区間内で上記の送信権取得通信局の有力な候補より呼び出しがあると、それに対して返答する。このように、2つ以上の通信局を送信権取得通信局の有力な候補として登録しても問題にならないのは、例えば、WT11は、AP1が送信権取得通信局であることを既に分かっているため、同一TXOP区間内でWT11から呼び出しがあると思われないからである。
次に、基地局装置AP1は、宛先を無線端末WT13としたRTSフレームを送信する(時刻t127)。無線端末WT11及び無線端末WT12は、受信したRTSフレームが自装置宛てでないことを検出すると、受信したRTSフレームに含まれる持続使用期間情報が示す期間をNAV期間に設定する。無線端末WT13は、基地局装置AP1から受信したRTSフレームが自装置宛てであること、AP1が送信権取得通信局の有力な候補であることを検出し、NAV期間であるか否かに関わらず、CTSフレームを基地局装置AP1に送信する(時刻t128)。
基地局装置AP1は、無線端末WT13からCTSフレームを受信すると、無線端末WT13宛にデータフレームを送信する(時刻t129)。このとき、基地局装置AP1は、データフレームに含まれるMACヘッダ内のRDGフィールドに「1」を設定することにより、RDでの送信が可能であることを無線端末WT13に通知する。
無線端末WT13は、MACヘッダ内のRDGフィールドに「1」が設定されている自装置宛てのデータフレームを基地局装置AP1から受信すると、RDでデータを送信可能であることを検出し、DAフレームと共にデータフレームを基地局装置AP1に送信する(時刻t130)。このとき、無線端末WT13は、データフレームに含まれるMACヘッダ内のRDGフィールドに「0」を設定して、送信すべきデータがないことを通知する。基地局装置AP1は、無線端末WT13からBAフレーム及びデータフレームを受信すると、無線端末WT13に対してBAフレームを返信し(時刻t131)、無線端末WT13との通信を終える。
上記のように、自装置がフレーム送受信に関わらない場合においても受信フレームの種類及びその受信フレームの送受信通信局を基に送信権取得通信局を特定することができる。場合によっては、1つのフレームを正しく受信すると、送信権取得通信局を特定できる。場合によっては、2つ以上のフレームを受信する必要がある。このように送信権取得通信局を推測・特定することにより、基地局装置AP1及び無線端末WT11〜WT13(無線通信装置)は、TXOP期間の開始を示す開始フレームを干渉等で受信できずに、送信権取得通信局を把握することができずとも、干渉を受けなくなった後にいずれの無線通信装置が送信権取得通信局であるかを推測することができる。
このように、開始フレームを正しく受信できずとも、送信権取得通信局がいずれの無線通信装置であるかを把握することができるので、送信権取得通信局からの要求に応答せずに再送処理が行われてしまうことを抑制することができる。その結果、無線通信システムにおいて再送処理の発生を抑えて、スループットを改善させることができる。
なお、上述実施形態において、基地局装置AP1が送信権取得通信局となった場合のタイムチャートを示して説明したが、これに限ることなく、無線端末WT11〜WT13が送信権取得通信局になってもよい。
なお、本発明における無線通信装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより送信処理及び受信処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。