JP5836875B2 - 周波数選択板 - Google Patents
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Description
一般に、FSSは、任意の形状を持つ素子(単位素子)を規則的に配置することで作られる。この単位素子は大きく分けて、金属板(ワイヤ、パッチ)とスロットの2つに区別される。
最初に、2種類のFSSの違いについて説明する。
電磁波がダイポールに入射すると、その電磁波の波長がダイポールの2倍程度の大きさであれば、大きな電流がダイポール上に励起されて共振現象が起き、ダイポールから電磁波が再放射される。
このとき、ダイポールを透過した電磁波と再放射された電磁波(散乱波)は、お互い打ち消し合うために反射波のみが残る。
この現象は、共振周波数に近い帯域でしか起きないため、帯域外の周波数の電磁波は影響を受けずに透過する。
このような性質を有するダイポール等の金属板が周期的に配置されたFSSは、特定の周波数帯域の電磁波のみを透過させないバンドストップフィルタとして作用する。
電磁波がスロットに入射すると、ダイポールの場合とは逆に共振周波数付近の電磁波が通過する。また、共振周波数に近い帯域から外れた周波数の電磁波は金属板によって反射される。
これは、スロットが特定の帯域のみを通過させるバンドパスフィルタとして作用していると言える。
そこで、多数のスロットを金属板の上に周期的に並べることで、金属板の全体にバンドパスフィルタの性能を持たせたものがスロット型のFSSや、バンドパスFSSである。
一般的に、FSSは、誘電体基板上にスロットが周期的に空いている金属板を配置するか、ワイヤやパッチを周期的に配置することで製作される。
このようなアクティブFSSが以下の特許文献1や非特許文献1,2に開示されている。
即ち、このFSSは、図12に示すように、スロットや金属板等の単位素子102が周期的に配置されている2つのFSS101と、2つのFSS101の間に配置されている誘電体103と、FSS101を機械的に駆動する制御装置104とを備えている。
このとき、入射された電磁波に対して、空気の作る電磁界は、FSS101の生成する電磁界に影響を与える。また、この空間の一部又は全部に誘電体103とは別の誘電率を有する誘電体を配置すれば、その誘電体の作る電磁界も影響を及ぼすようになる。
これらの電磁界の影響によって、単位素子102の電気長が変わるため、反射・透過周波数が変化する。これが機械駆動制御を用いたアクティブFSSの仕組みである。
即ち、このFSSは、図13に示すように、誘電体基板105の上に、バイアス回路107及びダイオード108が接続されている単位素子106a,106bが周期的に敷き詰められていることを特徴としている。
印加電圧の有無によってダイオード108のON/OFFを調整することで、単位素子106a,106bの導通を制御することができる。
単位素子106a,106bは導通すると、1つの単位素子として動作して、共振周波数が変わるため、FSSの反射・透過周波数が変化する。
基板に磁力を掛けて透磁率が変わると、入射された電磁波によって基板にできる電磁界も変化する。この電磁界が入射された電磁波によって単位素子が作り出す電磁界に影響を与えるために、単位素子の電気長が変わり、反射・透過周波数が変化する。
図1はこの発明の実施の形態1による周波数選択板を示す三面図である。
図1において、中空誘電体板1は上面(一面)に複数のスロット2(穴)が規則的に空けられており、ガスが中空部3に充填されている誘電体ケースである。
金属板4は中空誘電体板1の上面に空けられているスロット2より大きなスロット5(穴)が規則的に空けられており、規則的に空けられている複数のスロット5が、中空誘電体板1の上面に空けられている複数のスロット2を包含する位置において、中空誘電体板1の内面に貼り付けられている導体板である。
また、中空誘電体板1に使用する素材は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、変形ポリフェニレンエーテル、ポリテトラフルオロエチレンなど、低誘電損失かつ低誘電率の誘電体であれば、どのようなものでもよい。
中空誘電体板1の中空部3にはガスが充填されているが、このガスはプラズマ状態になりやすい分子(例えば、He、Ne、Ar、Kr、Xeなど)の希ガスや空気である。
また、ガスの種類は1種類に限らず、複数種の混合ガスであってもよい。
図1の例では、電極6が中空誘電体板1の内壁面に配置されているが、金属板4と接触していなければ、中空誘電体板1のどの内壁面に配置されていてもよい。
外部電源が制御電圧を電極6に印加することで、中空部3に充填されている希ガスの分子運動を励起して、プラズマを発生させることができる。印加する電圧によって内部のプラズマ密度が変化する。
例えば、対象となる入射波の周波数がプラズマ周波数以下であるならば、後述するように、その電磁波に対してプラズマは、金属的な性質を持つ物質として振舞うようになる。
式(1)(2)において、εrは複素比誘電率、ωp(=2πfp)はプラズマ角周波数である。また、ω(=2πf)は、FSSに入射する電磁波の角周波数、νは衝突周波数、neは電子密度、meは電子質量、eは自由電子の電荷、ε0は真空の誘電率、jは虚数単位である。
[非特許文献3]
R. J. Vidmar、“On the use of Atmospheric Pressure Plasmas as Electromagnetic Reflections and Absorbers”1990、IEEE Trans. Plasma Sci.、Vol. 18、No. 4
図2及び図3は反射率(|R|)、透過率(|T|)、損失(Loss)及び複素比誘電率εrの検証結果を示す説明図である。
したがって、上記のプラズマ周波数fpと衝突周波数νを仮定すると、プラズマ周波数fpの近傍以下の周波数を持つ入射波に対して、プラズマを金属としてみなすことができる。
また、図3に示すように、衝突周波数νを変えずに、プラズマ周波数fpを40GHz(電子密度neを約1.98×10-19 [m-3])程度に選べば、プラズマを金属として扱える周波数帯域も変わっていることがわかる。
図1のFSSは、以下のような原理で、アクティブFSSとして動作する。
まず、プラズマを生成していない場合(外部電源から制御電圧が電極6に印加されていない場合)は、図4に示すように、到来する入射電磁波によって、FSSの上面に配置されている金属板4上に大きな電流が誘起される。
このとき、透過周波数は、金属板4に空けられているスロット5の共振周波数によって決定される。
したがって、プラズマ周波数fpが所望の透過周波数帯以上となるように、電極6に印加する制御電圧の電圧値を制御すれば、スロット2の大きさによって決定される共振周波数を持つ電磁波を透過させることができるFSSの形成が可能になる。
プラズマの密度分布が一様になれば、図2及び図3に示している複素比誘電率εrの分布も一様になる。
複素比誘電率εrが一様に近ければ、プラズマ周波数fp以下の周波数の入射電磁波に対して、プラズマは、一様な密度分布の金属のように振舞うため、動作の制御が容易になる。以上の理由から、外部電源が制御電圧を電極6に印加することで、中空誘電体板1の中空部3にできる電界分布を知る必要がある。
シミュレーション結果では、電極6の付近は強度の変動が大きいが、領域Aは比較的均一な電界強度分布になる。
したがって、中空誘電体1に希ガスが充填されたときに領域A内に生成されるプラズマは、その外側に生成されるものと比べて、均一に近い密度分布になると予想される。
このため、領域Aに含まれている部分は、所望の動作を行うFSSになると考えられる。
図6はこの発明の実施の形態2による周波数選択板を示す三面図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
導体壁8は金属板4が張り付けられている中空誘電体1の内面と直交する面を囲むように、中空誘電体1の中空部に設置されている。図6の例では、導体壁8が中空誘電体1の内面と直交する内壁面に配置されている。
なお、金属板4と導体壁8は、金属線7を通じて、外部電源と接続されている。
図6のFSSの基本的な動作原理は、図1のFSSの基本的な動作原理と同様であるが、中空誘電体板1の中空部3に生じる電界の分布が、図1のFSSの電界分布と比較して、全体的に一様になるという点で相違している。
図5のシミュレーション結果と比較して、図7のシミュレーション結果の方が、全体的に電界分布が一様になっていることが確認される。
したがって、図6のFSSは、図1のFSSと比較して、プラズマ周波数fp以下の周波数の電磁波に対して、一様な密度分布を持つ金属として振舞う範囲が広がるため、中空誘電体板1の中で、FSSとして利用可能な部分が増加する。
図8はこの発明の実施の形態3による周波数選択板を示す三面図であり、図9はこの発明の実施の形態3による周波数選択板の要部を示す斜視図である。
上記実施の形態1では、中空誘電体1の上側の内面に金属板4が貼り付けられているものを示したが、この実施の形態3では、中空誘電体1の上側の内面に金属板4(第1の導体板)が貼り付けられるほか、中空誘電体1の下側の内面にも金属板4(第2の導体板)が貼り付けられている。
ただし、中空誘電体1の下面には、複数のスロットが規則的に空けられており、第2の導体板である金属板4にも、複数のスロット(中空誘電体1の下面に空けられているスロットより大きなスロット)が規則的に空けられており、金属板4における複数のスロットが、中空誘電体1の下面に空けられている複数のスロット2を包含する位置において、中空誘電体1の内面に貼り付けられている。
また、この実施の形態3では、2枚の電極板6が実装されておらず、上下の金属板4が金属線7を通じて、外部電源と接続されている。
まず、外部電源から制御電圧が金属板4に印加されていない場合、FSSは上下の金属板4による2層の周波数選択板として動作する。
したがって、この2層のスロット5の共振周波数によって、FSSの透過周波数帯が決定される。
スロット2とスロット5は大きさが異なるため、プラズマ生成状態のFSSは、プラズマが生成されていない金属板4のみのFSSとは異なる透過周波数を持つFSSとして動作する。
この実施の形態3では、金属板4が中空部3のほぼ全面を上下から覆うような構造であるため、上記実施の形態1,2と比較して、中空部3に発生する電界分布の均一性が上がる。
この効果により、この実施の形態3では、上記実施の形態1,2と比較して、さらに均一な密度分布を持つプラズマを生成することができる。
図11はこの発明の実施の形態4による周波数選択板を示す構成図である。
図11において、ガス密度調整装置21はガスの密度を調整する装置である。
中空誘電体板1に施されている接続孔22には配管23が接続されており、配管23を通じて、中空誘電体板1の中空部3がガス密度調整装置21と接続されている。
この実施の形態4は、上記実施の形態1〜3のいずれにも適用可能である。
中空誘電体板1の中空部3に充填されているガスの密度は、ガス密度調整装置21によって調整される。
中空誘電体板1の中空部3に発生するプラズマの密度分布は、電界分布以外に、ガスの密度分布にも依存する。
したがって、ガス密度調整装置21がガスの密度を調整して、陽光柱と呼ばれる内部のプラズマ密度が一定の領域を広げることで、中空部3に発生するプラズマの密度をさらに均一化することができる。
このような構造とすることにより、上記実施の形態1〜3と比較して、プラズマ周波数fp以下の周波数の電磁波に対して、プラズマをさらに一様な密度分布を持つ金属板とみなすことができる。
Claims (4)
- 一面に複数の穴が規則的に空けられており、ガスが中空部に充填されている誘電体ケースと、
上記誘電体ケースの一面に空けられている穴より大きな穴が規則的に空けられており、規則的に空けられている複数の穴が、上記誘電体ケースの一面に空けられている複数の穴を包含する位置において、上記誘電体ケースの内面に貼り付けられている導体板と、
上記導体板と接触しない位置で、上記誘電体ケースの中空部に設置されている2つの電極とを備え、
上記電極が電源に接続されていることを特徴とする周波数選択板。 - 一面に複数の穴が規則的に空けられており、ガスが中空部に充填されている誘電体ケースと、
上記誘電体ケースの一面に空けられている穴より大きな穴が規則的に空けられており、規則的に空けられている複数の穴が、上記誘電体ケースの一面に空けられている複数の穴を包含する位置において、上記誘電体ケースの内面に貼り付けられている導体板と、
上記導体板が張り付けられている上記誘電体ケースの内面と直交する面を囲むように、上記誘電体ケースの中空部に設置されている導体壁とを備え、
上記導体板と上記導体壁が電源に接続されていることを特徴とする周波数選択板。 - 二つの面に複数の穴が規則的に空けられており、ガスが中空部に充填されている誘電体ケースと、
上記誘電体ケースの一方の面に空けられている穴より大きな穴が規則的に空けられており、規則的に空けられている複数の穴が、上記誘電体ケースの一方の面に空けられている複数の穴を包含する位置において、上記誘電体ケースの内面に貼り付けられている第1の導体板と、
上記誘電体ケースの他方の面に空けられている穴より大きな穴が規則的に空けられており、規則的に空けられている複数の穴が、上記誘電体ケースの他方の面に空けられている複数の穴を包含する位置において、上記誘電体ケースの内面に貼り付けられている第2の導体板とを備え、
上記第1の導体板と上記第2の導体板が電源に接続されていることを特徴とする周波数選択板。 - ガスの密度を調整するガス密度調整装置が配管を通じて誘電体ケースの中空部と接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の周波数選択板。
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