JP5811817B2 - フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 - Google Patents

フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、トランス、チョークコイルおよびインダクタなどの電子部品の主要部(フェライト部)を構成するフェライト組成物と、該組成物から構成されるフェライトコアと、該フェライトコアの周囲に巻き線が巻回してあるコイル部品などの電子部品に関する。
近年、携帯機器等の各種電子機器の小型・軽量化が急速に進み、それに対応すべく、各種電子機器の電気回路に用いられる電子部品の小型化・高効率化・高周波数化への要求が急速に高まっている。
例えば液晶バックライト用トランスなどは、ディスプレーの薄型化に伴い、より小さく、より薄い形状で、従来のものと同等以上の特性を持つことが要求されている。このようなトランスに用いられるコアに要求される特性としては、例えば、使用周波数領域および使用温度領域での電力損失が小さいこと、初期透磁率が高いこと、飽和磁束密度が高いこと、比抵抗が高いことが挙げられる。従来、このようなトランスに用いられるコアの材料としては、電力損失の小さいMn−Zn系フェライトが多く使用されてきた。
しかしながら、Mn−Zn系フェライトは、比抵抗が低く、直巻線ができないことから小型化・薄型化には限界があった。また、使用周波数が高周波数になるほど、渦電流損失が増加するため、高周波数領域、例えば、MHz領域における使用には適していないという問題があった。
これに対し、Ni−Zn系フェライトは、上記のMn−Zn系フェライトに比べて電力損失が大きいものの、比抵抗が高く、直巻線が可能である。このため、Ni−Zn系フェライトの低損失化を図るための種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1では、主成分として、酸化鉄をFe換算で46.0〜49.95モル%、酸化銅をCuO換算で2.3〜12.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で24.0〜30.0モル%、酸化マンガンをMn換算で0.01〜3.5モル%を含み、残部が酸化ニッケルで構成され、副成分として、リンをP換算で2〜63ppm、酸化タングステンをWO換算で0.001〜0.5wt%含む酸化物磁性材料が提案されている。
しかしながら、上記の酸化物磁性材料は50kHzにおける電力損失を改善しているものの、高周波領域、例えば、MHz領域における電力損失については何ら考慮されておらず、高周波領域における低損失の実現が望まれていた。また、特に携帯用の小型電子機器等では、高い初期透磁率及び飽和磁束密度と、低電力損失(MHz領域)の特性をバランスよく併せ持つフェライト組成物が求められている。
特開2003−321272号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高い比抵抗を有し、高い初期透磁率及び飽和磁束密度と、低電力損失(MHz領域)との特性をバランスよく併せ持つフェライト組成物と、該フェライト組成物で構成してあるフェライトコアと、該フェライトコアを有する電子部品とを、提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るフェライト組成物は、
主成分が、酸化鉄をFe換算で44.0〜49.95モル%、酸化銅をCuO換算で1.0〜20.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で13.0〜19.9モル%、酸化マンガンをMn換算で0.01〜5.4モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分100重量部に対して、副成分として、リンをP換算で2〜65ppm、酸化ジルコニウムをZrO換算で40〜5000ppm含有し、さらにPbの含有量が10ppm以下、Cdの含有量が10ppm以下であり、
前記酸化鉄および前記酸化マンガンの合計含有量が、Fe換算およびMn換算で、50.1モル%以下であることを特徴とする。
主成分を構成する酸化物の含有量を上記の範囲とし、さらに副成分としてリン、酸化ジルコニウムおよびPb、Cdを上記の範囲で含有させることにより、本発明に係るフェライト組成物によれば、フェライトの性能指数(μi×Bs)/Pcvを、所望の値(好ましくは86以上、さらに好ましくは100以上)とすることができる。なお、フェライトの性能指数(μi×Bs)/Pcvとは、高周波数領域(例えば10MHz以上)における、初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsおよび電力損失Pcvの特性のバランスの良さを表す指標である。
本発明の場合に、高周波領域におけるフェライトの性能指数が向上する理由は必ずしも明らかではないが、リンおよび酸化ジルコニウムを上記の範囲で共存させること、しかも上記主成分および副成分の他に、CdおよびPbの含有量を所定の範囲に制御すること、また、酸化鉄および酸化マンガンの合計含有量を上記の範囲とすること等により得られる複合効果が大きく影響していると考えられる。
本発明に係るフェライトコアは、好ましくは上記のいずれかに記載のフェライト組成物から構成される。
本発明に係る電子部品は、好ましくは上記のフェライトコアを有する電子部品である。
本発明に係る電子部品としては、特に制限されないが、コイル部品、トランス部品、磁気ヘッド部品などが挙げられる。本発明に係る電子部品は高いインダクタンスと高い飽和磁束密度を有しているため、インダクタやチョークコイル等のコイル部品として好適である。また、スイッチング用、インバータ用等の電源トランス等のトランス部品、さらにはRFID(Radio Frequency Identification、無線周波数識別)用フェライトコアおよびこれを用いたフェライトコイル部品にも好適である。
特に、本発明に係るフェライトコアは、高い比抵抗ρを有し、初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsおよび電力損失Pcvのバランスを良好に保つことができ、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトの性能指数(μi×Bs)/Pcvを、所望の値(例えば86以上)とすることができる。このようなフェライトコアは、特にRFID(Radio Frequency Identification、無線周波数識別)用フェライトコア、DC−DCコンバータ用フェライトコア、及びこれらを用いたフェライトコイル部品等への使用に好適である。
なお、使用される周波数の上限については特に制限されないが、本発明に係るフェライトコアや電子部品が用いられる機器の使用周波数を考慮すると、20MHz程度である。
本発明によると、初期透磁率、飽和磁束密度および比抵抗を高く維持しつつ、高周波領域(例えば、10MHz以上)においても、電力損失(コアロス)が低減され、フェライトの性能指数(μi×Bs)/Pcvを所望の値(例えば86以上)とすることができるフェライト組成物を得ることができる。
このようなフェライト組成物を、フェライトコア等のフェライト部材に適用することで、電子部品の小型化、高効率化、高周波数化を実現することができる。
図1は本発明の一実施形態に係るトランス用フェライトコアである。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態に係るフェライトコアとしては、図1に示したトロイダル型のほか、FT型、ET型、EI型、UU型、EE型、EER型、UI型、ドラム型、ポット型、カップ型等を例示することができる。このフェライトコアの周囲に巻き線を所定巻数だけ巻回することにより所望のトランスを得る。
本実施形態に係るフェライトコアは、本実施形態に係るフェライト組成物で構成してある。
本実施形態に係るフェライト組成物は、Ni−Cu−Zn系フェライトであり、主成分として、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化マンガンおよび酸化ニッケルを含有している。
主成分100モル%中、酸化鉄の含有量は、Fe換算で、44.0〜49.95モル%、好ましくは48.1〜49.9モル%、より好ましくは48.4〜49.8モル%である。酸化鉄の含有量が多すぎても少なすぎても、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。特に、酸化鉄の含有量が少なすぎると、電力損失(コアロス)が増加すると共に初期透磁率及び飽和磁束密度が低下する傾向にあり、多すぎると、電力損失が増加する傾向にある。
主成分100モル%中、酸化銅の含有量は、CuO換算で、1.0〜20.0モル%、好ましくは4.0〜5.6モル%である。酸化銅の含有量が多すぎても少なすぎても、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。特に、酸化銅の含有量が少なすぎると、電力損失が増加する傾向にあり、多すぎると、電力損失が増加すると共に飽和磁束密度が減少する傾向にある。
主成分100モル%中、酸化亜鉛の含有量は、ZnO換算で、13.0〜19.9モル%、好ましくは18.0〜19.9モル%である。酸化亜鉛の含有量が多すぎても少なすぎても、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。特に、酸化亜鉛の含有量が少なすぎると、電力損失が増加すると共に初期透磁率が低下する傾向にあり、多すぎると、電力損失が増加すると共に飽和磁束密度が低下する傾向にある。
主成分100モル%中、酸化マンガンの含有量は、Mn換算で、0.01〜5.4モル%、好ましくは0.1〜1.0モル%である。酸化マンガンの含有量が多すぎても少なすぎても、電力損失が増加する傾向にあり、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。
また、主成分100モル%中、酸化鉄および酸化マンガンの合計含有量(Fe+Mn)が、Fe換算およびMn換算で、50.1モル%以下、好ましくは49.9モル%以下である。酸化鉄および酸化マンガンの合計含有量の上限を上記の範囲とすることで、良好な特性を得ることができる。特に、酸化鉄および酸化マンガンの合計含有量(Fe+Mn)が、Fe換算およびMn換算で、50.1モル%を超えると、比抵抗が低下すると共に、電力損失が増加する傾向にあり、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。
主成分の残部は、酸化ニッケルのみから構成されていてもよい。
本実施形態に係るフェライト組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、リンおよび酸化ジルコニウムを含有している。
リンの含有量は、主成分100重量部に対して、P換算で、2〜65ppm、好ましくは2〜30ppmである。リンの含有量が多すぎても少なすぎても、電力損失が増加すると共に飽和磁束密度が低下する傾向にあり、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。
酸化ジルコニウムの含有量は、主成分100重量部に対して、ZrO換算で、40〜5000ppm、好ましくは40〜1500ppmである。酸化ジルコニウムの含有量が多すぎても少なすぎても、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。酸化ジルコニウムの含有量が少なすぎると、電力損失が増加する傾向にあり、多すぎると、電力損失が増加すると共に飽和磁束密度が低下する傾向にある。
また、本実施形態に係るフェライト組成物は、上記主成分および副成分の他に、CdおよびPbを含有している。このような成分を所定の範囲に制御することにより、高周波数領域での電力損失、初期透磁率及び飽和磁束密度を良好に保つことができ、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvを所望の値(例えば86以上)に制御できる。
Pbの含有量は、主成分100重量%中に、10ppm以下、好ましくは2〜5ppmである。その含有量が、主成分100重量%中に、10ppmを超えると、電力損失が増加する傾向にあり、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。
Cdの含有量は、主成分100重量%中に、10ppm以下、好ましくは2〜5ppmである。その含有量が、主成分100重量%中に、10ppmを超えると、電力損失が増加する傾向にあり、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)を下回る傾向にある。
PbおよびCdは、主成分原料である酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン中に含まれることがある。PbおよびCdの含有量が所定の範囲を超えると、高周波数領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが劣化する傾向にあることが、本願発明者らによって見出された。そこで、本発明では、原料中のCdおよびPbの含有量を厳密に管理し、上記の範囲内となるようにする。なお、CdおよびPbの含有量を所定の範囲に制御する方法は、特に限定されず、主成分にCdおよびPbの酸化物等を添加することで所定の範囲に制御してもよい。
この他、本実施形態に係るフェライト組成物には、原料中の不可避的不純物元素の酸化物が数ppm〜数百ppm程度含まれ得る。
具体的には、B、C、S、Cl、As、Se、Br、Te、Iや、Li、Na、Mg、Al、K、Ga、Ge、Sr、In、Sn、Sb、Ba、Bi等の典型金属元素や、Sc、Ti、V、Cr、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素が挙げられる。
従来から、特に携帯用の小型電子機器等の電子部品として好適なフェライト組成物として、高周波領域(例えば、10MHz以上)においても電力損失Pcvが小さく、かつ初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsおよび比抵抗ρが高いフェライト組成物が求められていた。
しかし、従来のフェライト組成物においては、電力損失Pcv、初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsおよび比抵抗ρのそれぞれの特性が個々に、所定の評価基準を満足するフェライト組成物であっても、特定の用途(例えばRFID(Radio Frequency Identification、無線周波数識別)用フェライトコアやDC−DCコンバータ用フェライトコア等)に用いられる場合には、十分な性能(例えば、インダクタンス、コアロスおよび直流重畳等)が得られない等の不具合が生じる場合があり、評価基準と要求特性の実状が合致していなかった。
このような実情に鑑み、本発明者等は、鋭意検討の結果、高周波領域(例えば、10MHz以上)においても、低減された電力損失(コアロス)と、高い初期透磁率および飽和磁束密度とのバランスを制御することによって、特定の用途にも好適に用いることができるフェライト組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明者等は、高周波領域(例えば、10MHz以上)における電力損失(コアロス)と、初期透磁率および飽和磁束密度とのバランスに着目し、新たな評価基準として、高周波領域(例えば、10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvを規定した。
本実施形態に係るフェライト組成物において、高周波領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvを、所望の値(例えば86以上)とすることにより、例えばRFID(Radio Frequency Identification、無線周波数識別)用フェライトコアおよびこれを用いたフェライトコイル、DC−DCコンバータ用フェライトコア、及びこれらを用いたフェライトコイル部品等の電子部品として好適に用いることができる。
一方、フェライト組成物の電力損失Pcv、初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsおよび比抵抗ρの個別の特性が、所定の評価基準を満足しない場合はもとより、満足する場合であっても、高周波領域(例えば10MHz以上)におけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば86以上)とならない場合(すなわち、電力損失Pcv、初期透磁率μi、飽和磁束密度Bsのバランスが悪い場合)には、十分な性能(例えば、インダクタンス、コアロスおよび直流重畳等)が得られない等の不具合が生じる場合がある。
次に、本実施形態に係るフェライト組成物の製造方法の一例を説明する。
まず、出発原料(主成分の原料および副成分の原料)を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、例えば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。なお、平均粒径が0.1〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
主成分の原料としては、酸化鉄(α−Fe)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、必要に応じて酸化マンガン(Mn)、あるいは複合酸化物などを用いることができる。さらに、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物等を用いることができる。焼成により上記した酸化物になるものとしては、例えば、金属単体、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、有機金属化合物等が挙げられる。
副成分の原料としては、リン(P)、酸化ジルコニウム(ZrO)を用いることができる。リンについては、リン酸(P)の形態で用いることが好ましい。酸化ジルコニウムについては、主成分の原料の場合と同様とすればよい。
CdおよびPbについては、主成分の原料である酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガンに含まれる場合がある。そのため、CdおよびPbの含有量の異なる種々の酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガン原料の使用量を調整することで、CdおよびPbの含有量を調整することができる。なお、CdおよびPbの含有量を所定の範囲に制御する方法は、特に限定されず、主成分にCdおよびPbの酸化物等を添加することで所定の範囲に制御してもよい。
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を起こさせ、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800〜1100℃の温度で、通常1〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、主成分の原料と副成分の原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼き後に行なってもよい。
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、仮焼き材料の平均粒径が、好ましくは1〜2μm程度となるまで行う。
次に、粉砕材料の造粒(顆粒)を行い、造粒物を得る。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、例えば、加圧造粒法やスプレードライ法などが挙げられる。スプレードライ法は、粉砕材料に、ポリビニルアルコールなどの通常用いられる結合剤を加えた後、スプレードライヤー中で霧化し、低温乾燥する方法である。
次に、造粒物を所定形状に成形し、成形体を得る。造粒物の成形としては、例えば、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。乾式成形法は、造粒物を、金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより行う成形法である。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態ではトロイダル型形状とされる。
次に、成形体の本焼成を行い、焼結体(本実施形態のフェライト組成物)を得る。本焼成は、多くの空隙を含んでいる成形体の粉体粒子間に、融点以下の温度で粉体が凝着する焼結を起こさせ、緻密な焼結体を得るために行われる。こうした本焼成は、好ましくは900〜1300℃の温度で、通常2〜5時間程度行う。本焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。
このような工程を経て、本実施形態に係るフェライト組成物は製造される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態では、トロイダル型形状とするために、本焼成前に該形状に成形しているが、本焼成後に該形状に成形(加工)してもよい。
また、上述した実施形態では、本実施形態に係るフェライト組成物を、フェライトコアとして用いるが、特に制限されることはなく、磁気ヘッド部品、インダクタやチョークコイル等のコイル部品のフェライト部としても好適に用いることができる。また、スイッチング用、インバータ用等の電源トランス等のトランス部品のフェライト部を本発明のフェライト組成で構成してもよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
まず、主成分の原料として、Fe、NiO、CuO、ZnO、Mnを準備した。副成分の原料として、P及びZrOを準備した。なお、出発原料の平均粒径は0.1〜3μmであった。
なお、CdおよびPbについては、主成分の原料である酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガンに含まれる。そのため、最終的に得られるサンプルが表1〜表4に記載のCd量およびPb量を含有するよう、CdおよびPbの含有量の異なる種々の酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガン原料の使用量を調整して準備した。
次に、準備した主成分および副成分の原料の粉末を秤量した後、ボールミルで5時間湿式混合して原料混合物を得た。
次に、得られた原料混合物を、空気中において900℃で2時間仮焼して仮焼き材料とした後、ボールミルで20時間湿式粉砕して粉砕材料を得た。
次に、この粉砕材料を乾燥した後、該粉砕材料100重量部に、バインダーとしてのポリビニルアルコールを1.0重量部添加して造粒し、20メッシュの篩で整粒して顆粒とした。この顆粒を、100kPaの圧力で加圧成形して、トロイダル形状(寸法=外径18mm×内径10mm×高さ5mm)の成形体と、ディスク形状(寸法=直径25mm×厚さ5mm)の成形体を得た。
次に、これら各成形体を、空気中において、1000〜1250℃で2時間焼成して、焼結体としてのトロイダルコアサンプルおよびディスクコアサンプルを得た。得られたサンプルについて、蛍光X線分析を行い、フェライトコアの組成を測定した。結果を表1〜4に示す。なお、リン(P)の含有量は、吸光光度法により測定した。さらにサンプルに対し以下の特性評価を行った。
比抵抗(ρ)
得られたディスクコアサンプルの両面に、In−Ga電極を塗り、直流抵抗値を測定し、比抵抗ρを求めた(単位:Ωm)。測定は、IRメーター(TOA Electronics社製SUPER MEGOHMMETERMODEL SM−5E)を用いて行った。ρは10Ωm以上を良好とした。結果を表1〜4に示す。
電力損失(Pcv)
得られたトロイダルコアサンプルに、1次巻線および2次巻線を5回ずつ巻回し、10MHz、5mT、23℃での電力損失Pcvを測定した(単位:kW/m)。測定は、B−Hアナライザー(岩崎通信機株式会社製SY−8232)を用いて行った。10MHzにおけるPcvは721kW/m以下を良好とした。結果を表1〜4に示す。
近年の電子機器の駆動周波数の高周波化を考慮し、本実施例では、このような機器が通常用いられる温度領域においてPcvを測定した。
初期透磁率(μi)
得られたトロイダルコアサンプルに、銅線ワイヤを10ターン巻きつけ、LCRメーター(ヒューレットパッカード 4284A)を使用して、初期透磁率μiを測定した。測定条件としては、測定周波数100kHz、測定温度23℃、測定レベル0.4A/mとした。100kHzにおけるμiは131以上を良好とした。結果を表1〜4に示す。
飽和磁束密度(Bs)
得られたトロイダルコアサンプルに、巻線を60回巻回した後、B−Hカーブトレーサー(理研電子株式会社製Model BHS40)を用いて4kA/mの磁場を印加したときの飽和磁束密度Bsを23℃において測定した(単位:mT)。なお、Bsは400mT以上を良好とした。結果を表1〜4に示す。
なお、表1〜4には、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数を示す(μi×Bs)/Pcvも示した。(μi×Bs)/Pcvは86以上、より好ましくは100以上を良好とした。
なお、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvを、上記のような所望の値(例えば86以上)とすることにより、例えばRFID(Radio Frequency Identification、無線周波数識別)用フェライトコア、DC−DCコンバータ用フェライトコア、及びこれらを用いたフェライトコイル等の電子部品等として好適に用いることができる。
Figure 0005811817
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表1〜4より、副成分であるPおよびZrOが同時に含有され、またPbおよびCdの含有量が本発明の範囲内にあり、かつ主組成の含有量が本発明の範囲内である場合には(実施例1〜40)、比抵抗ρが十分に高く、また1MHzにおいて電力損失Pcvが良好となり、しかも高い初期透磁率μiおよび飽和磁束密度Bsが得られ、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば68以上)となることが確認できた。
これに対し、表1より、PまたはZrOの何れかひとつ以上が含有されていない場合、あるいは、PもしくはZrOの含有量が本発明の範囲外となっている場合には(比較例1〜7)、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば68以上)とならないことが確認された。
また、表2より、CuOおよびZnOの含有量が本発明の範囲外となる場合(比較例8〜11)には、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば68以上)とならないことが確認された。
さらに、表3より、Feの含有量が本発明の範囲外である場合、Mnの含有量が本発明の範囲外である場合、あるいはFeとMnの合計量が本発明の範囲外である場合には(比較例12〜17)、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば68以上)とならないことが確認された。さらに、FeとMnの合計量が本発明の範囲外である場合には(比較例16および17)、特に比抵抗ρも悪化することが確認された。
さらに、表4より、CdまたはPbが本発明の範囲外となっている場合には(比較例18および19)、10MHzにおけるフェライトコアの性能指数(μi×Bs)/Pcvが所望の値(例えば68以上)とならないことが確認された。

Claims (3)

  1. 主成分が、酸化鉄をFe換算で44.0〜49.95モル%、酸化銅をCuO換算で1.0〜20.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で13.0〜19.9モル%、酸化マンガンをMn換算で0.01〜5.4モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分100重量部に対して、副成分として、リンをP換算で2〜65ppm、酸化ジルコニウムをZrO換算で40〜5000ppm含有し、さらにPbの含有量が10ppm以下、Cdの含有量が10ppm以下であり、
    前記酸化鉄および前記酸化マンガンの合計含有量が、Fe換算およびMn換算で、50.1モル%以下であることを特徴とするフェライト組成物。
  2. 請求項1に記載のフェライト組成物から構成されるフェライトコア。
  3. 請求項2に記載のフェライトコアを有する電子部品。
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