以下に説明する、発明を実施するための形態(以下実施例と記す)は、実際の製品として要望されている色々な課題を解決しており、特に車両の吸入空気量を計測する計測装置として使用するために望ましい色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。下記実施例が解決している色々な課題の内の一つが、上述した「発明が解決しようとする課題」の欄に記載した内容であり、また下記実施例が奏する色々な効果の内の一つが、「発明の効果」の欄に記載した効果である。下記実施例が解決している色々な課題について、さらに下記実施例により奏される色々な効果について、下記実施例の説明の中で、述べる。従って下記実施例の中で述べる、実施例が解決している課題や効果は、「発明が解決しようとする課題」の欄や「発明の効果」の欄の内容以外の内容についても記載している。
以下の実施例で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同一の構成を示しており、同じ作用効果を成す。既に説明済みの構成について、図に参照符号のみを付し、説明を省略する場合がある。
図1及び図2は、熱式流量計300の外観を示している。図1Aは熱式流量計300の左側面図、図1Bは正面図である。図2Aは右側面図、図2Bは背面図である。
熱式流量計300はハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を主通路である吸気ボディに固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子306を有する外部接続部(コネクタ部)305と、流量等を計測するための計測部310とを備えている。尚、図1Bでは、外部接続部305の一部を切り欠いて内部の端子306を示してある。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられている。計測部310の内部には、主通路を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部602や主通路を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400(図3,4参照)が設けられている。
計測部310は主通路の外壁から中央に向かう軸に沿って長く延びる形状を成しているが、幅は、図1Aおよび図2Aに記載の如く、狭い形状を成している。即ち熱式流量計300の計測部310は、側面の幅が薄く正面が略長方形の形状を成しており、これにより、被計測気体30に対して流体抵抗を小さくしている。
計測部310には、被計測気体30の流れの上流側に向かって開口する入口343が形成されており、入口343の内部には被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が配置されている。入口343が設けられている計測部310の中央部では、ハウジング302を構成する計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって窪んでおり、前記窪み形状の上流側外壁から温度検出部452が上流側に向かって突出する形状を成している。また窪み形状の外壁の両側部には表カバー303と裏カバー304が設けられており、前記表カバー303と裏カバー304の上流側端部が、窪み形状の外壁より上流側に向かって突出した形状を成している。このため前記窪み形状の外壁とその両側の表カバー303と裏カバー304とにより、被計測気体30を取り込むための入口343が成形される。入口343から取り込まれた被計測気体30は入口343の内部に設けられた温度検出部452に接触することで、温度検出部452によって温度が計測される。さらに窪み形状を成す、ハウジング302の外壁から上流側に突出した温度検出部452を支える部分に沿って流れた被計測気体30は、表カバー303と裏カバー304に設けられた表側出口344および裏側出口345から主通路に排出される。
図3及び図4に、熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を示す。図3Aはハウジング302の左側面図であり、図3Bはハウジング302の正面図である。図4Aはハウジング302の右側面図であり、図4Bはハウジング302の背面図である。
ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路の壁面側から中心に向かって延びる構造を成している。ハウジング302の先端側の表裏両面に、副通路を形成するための副通路溝が設けられている。図3Bに表側副通路溝332を示し、図4Bに裏側副通路溝334を示す。副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353とが、ハウジング302の先端部に設けられている。尚、ハウジング302或いは熱式流量計300において、外部接続部305及びフランジ312が設けられた側を基部或いは基部側と呼び、この基部に対して他端側を先端部或いは先端側と呼ぶ。
表側副通路溝332や裏側副通路溝334で作られる副通路は外壁窪み部366や上流側外壁335や下流側外壁336により熱絶縁部315に繋がっている。また上流側外壁335には上流側突起317が設けられ、下流側外壁336には下流側突起318が設けられている。熱式流量計300はフランジ312で主通路を形成する管壁に固定される。
この実施例ではハウジング302に副通路を形成するための副通路溝を設けており、表カバー303をハウジング302の表面に、裏カバー304をハウジング302の裏面にかぶせることにより、副通路が完成する。すなわち、副通路溝とカバーとにより副通路が完成する構成としている。このような構造とすることで、ハウジング302の樹脂モールド工程でハウジング302の一部としてすべての副通路溝を成形することができる。
図4Bにおいて、主通路を流れる被計測気体30の一部が入口350を形成する入口溝351から裏側副通路溝334内に取り込まれ、裏側副通路溝334内を流れる。裏側副通路溝334は進むにつれて深くなる形状をしており、溝に沿って流れるにつれ表側の方向に被計測気体30は徐々に移動する。特に裏側副通路溝334は回路パッケージ400の上流部342で急激に深くなる急傾斜部347が設けられていて、空気の一部は急傾斜部347に沿って移動し、回路パッケージ400の上流部342で図3Bに記載の計測用流路面430の方を流れる。一方、空気に含まれる異物は、空気と比べて質量が大きいため、慣性力によって急激に進路を変えることができず、図4Bに示す計測用流路面裏面431の方を移動する。
回路パッケージ400の上流部342において表側副通路溝332側に移動した被計測気体30である空気は、計測用流路面430に沿って流れる。このとき、空気と流量検出部602とは計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436を介して熱伝達を行い、流量の計測が行われる。計測用流路面430を通過した被計測気体30や回路パッケージ400の下流部341から表側副通路溝332に流れてきた空気は共に表側副通路溝332に沿って流れ、出口352を形成する出口溝353から主通路に排出される。
この実施例における副通路は、被計測気体30に混入しているごみなどの異物をその慣性力を利用して計測用流路面裏面431側に誘導することによって、流量検出部602を異物による汚損から保護している。
この実施例では、裏側副通路溝334で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端部からフランジ312方向に向かう。最もフランジ312側の位置では、副通路を流れる気体は主通路の流れに対して逆方向の流れに変わる。この逆方向の流れの部分で裏面側の副通路(入口350側の副通路)が、表面側に成形された副通路(出口352側の副通路)につながっている。
この実施例では、流量を計測するための計測用流路面430の流れ方向における前後に裏側副通路溝334と表側副通路溝332とに貫通する構成から成り、かつ回路パッケージ400の先端側はハウジング302で支持した構成ではなく空洞部382を有し、回路パッケージ400の上流部342の空間と回路パッケージ400の下流部341の空間が繋がった構成である。この回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成として、ハウジング302の一方面に成形した裏側副通路溝334からハウジング302の他方の面に成形した表側副通路溝332へ被計測気体30が移動する形状で副通路を成形している。このような構成とすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の両面に副通路溝を成形でき、また両面の副通路溝を繋ぐ構造を合わせて形成することが可能となる。
この実施例では、この回路パッケージ400の上流部342と下流部341とを貫通する構成としている。しかし、回路パッケージ400の上流部342と下流部341のどちらか一方を貫通した構成としてもよい。
なお、裏側副通路溝334の両側には裏側副通路外周壁391と裏側副通路内周壁392が設けられ、これら裏側副通路外周壁391と裏側副通路内周壁392のそれぞれの高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の裏側副通路が成形される。また表側副通路溝332の両側には表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394が設けられ、これら表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394の高さ方向の先端部と表カバー303の内側面とが密着することで、ハウジング302の表側副通路が形成される。
温度検出部452の根元部に外壁窪み部366が設けられ、これにより測温用窪み368が設けられている。外壁窪み部366及び測温用窪み368により、フランジ312あるいは熱絶縁部315から上流側外壁335及び上流側突起317を介して温度検出部452に伝わってくる熱の影響を低減できる。
次に再び図3及び図4を参照して、回路パッケージ400のハウジング302への樹脂モールド工程による固定について説明する。回路パッケージ400はハウジング302に樹脂モールドにより一部が埋設されて固定されている。このために、ハウジング302には、回路パッケージ400をハウジング302に埋設固定するための固定部372,366,376が設けられている。固定部372,366,376は第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の外周を覆うようにして埋設している。尚、固定部376は外壁窪み部によって構成されている。
図3Bに示す如く、固定部372,376は表カバー303に接する高さの面を有する固定部372と薄肉部376とにより回路パッケージ400を覆っている。図4Bに示すとおり、回路パッケージ400の裏側にも上述のような形状(薄肉部373)を設けている。固定部372,376は回路パッケージ400の外壁を帯状に全周にわたって覆い、回路パッケージ400のフランジ312側と副通路430,431側とには非被覆部分が設けられている。固定部366は外壁窪み部を形成し、この外壁窪み部366の上流側の部分を、温度検出部452を支える支持部としている。
回路パッケージ400とフランジ312との間に空隙が成形され、この空隙部分が端子接続部320として機能している。この端子接続部320で回路パッケージ400の接続端子412と外部端子306のハウジング302側に位置する外部端子内端361とがそれぞれスポット溶接あるいはレーザ溶接などにより電気的に接続される。
接続端子412は、内蔵する流量検出部602や処理部604への電力の供給、及び流量計測値や温度などの各種計測値の出力のために設けられている。
図3B及び図4Bに示すように、外部端子内端361に接続されない端子414が設けられている。端子414は、第1樹脂モールド工程で回路パッケージ400が生産された後、回路パッケージ400が正しく動作するか、第1樹脂モールド工程で電気的な接続において異常が発生していないかを検査するための端子である。
上述したように、流量検出部602や処理部604を第1樹脂モールド工程においてトランスファモールドすることにより回路パッケージ400を製造する。第1樹脂モールド工程の後、被計測気体30を流す副通路(例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334)を有するハウジング302を、第2樹脂モールド工程にて製造する。この第2樹脂モールド工程で、回路パッケージ400をハウジング302の樹脂内に内蔵して、ハウジング302内に樹脂モールドにより固定する。
図5は、第1樹脂モールド工程で作られる回路パッケージ400の外観を示している。なお、回路パッケージ400の外観上に記載した斜線部分は、第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する樹脂により覆われる面を示す。図5Aは回路パッケージ400の左側面図、図5Bは回路パッケージ400の正面図、図5Cは回路パッケージ400の背面図である。回路パッケージ400は、後述する流量検出部602や処理部604を内蔵し、熱硬化性樹脂でこれらがモールドされ、一体成形される。
回路パッケージ400は、ハウジング302に固定されるパッケージ本体部426(図3、図4を参照)と、パッケージ本体部426から突出してハウジング302から露出する突出部424を有している。パッケージ本体部426は、略矩形の平板形状を有しており、上流端辺部の中央部分に突出部424が設けられている。
図5Bに示す回路パッケージ400の表面には、被計測気体30を流すための面として作用する計測用流路面430が被計測気体30の流れ方向に長く延びる形状で成形されている。この実施例では計測用流路面430は、被計測気体30の流れ方向に長く延びる長方形を成している。この計測用流路面430は、図5Aに示す如く、他の部分より薄く作られていて、その一部に熱伝達面露出部436が設けられている。内蔵されている流量検出部602は、熱伝達面露出部436を介して被計測気体30と熱伝達を行い、被計測気体30の状態、例えば被計測気体30の流速を計測し、主通路を流れる流量を表す電気信号を出力する。
熱伝達面露出部436を有する計測用流路面430の裏面には、図5Cに示す如く、回路パッケージ400の樹脂モールド成形時に内部基板あるいはプレートを支持する金型の押さえの押さえ跡442が残っている。熱伝達面露出部436は被計測気体30との間で熱のやり取りを行うために使用される場所であり、被計測気体30の状態を正確に計測するためには、流量検出部602と被計測気体30との間の熱伝達が良好に行われることが望ましい。このため、熱伝達面露出部436の部分が第1樹脂モールド工程での樹脂で覆われるのを避けなければならない。熱伝達面露出部436とその裏面である計測用流路面裏面431の両面に金型を当て、この金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止する。熱伝達面露出部436の裏面に凹部形状の押さえ跡442が成形されている。この部分は、流量検出部602等を構成する素子が近くに配置されており、これら素子の発熱をできるだけ外部に放熱することが望ましい。成形された凹部は、樹脂の影響が少なく、放熱し易い効果を奏している。
図5Bにおいて、438は半導体ダイヤフラム裏面の空隙674(図7参照)と連通する開口である。この開口438は第1樹脂モールド工程で成形される。
回路パッケージ400に設けられた温度検出部452は、温度検出部452を支持するために被計測気体30の上流方向に延びている突出部424の先端に設けられて、被計測気体30の温度を検出する機能を備えている。高精度に被計測気体30の温度を検出するには、被計測気体30以外の部分との熱の伝達をできるだけ少なくすることが望ましい。温度検出部452を支持する突出部424は、その根元より、先端部分が細い形状を成し、その先端部分に温度検出部452を設けている。このような形状により、温度検出部452への突出部424の根元部からの熱の影響が低減される。
また、温度検出部452で被計測気体30の温度が検出された後、被計測気体30は突出部424に沿って流れ、突出部424の温度を被計測気体30の温度に近づける作用を為す。すなわち、突出部424の突出長さ(高さ)を長く(高く)して、被計測気体30による冷却性能を高めている。このことにより、突出部424の根元部の温度が温度検出部452に及ぼす影響が抑制されている。特にこの実施例では、温度検出部452を備える突出部424の近傍が細く、突出部424の根元に行くに従って太くなっている。このため、被計測気体30がこの突出部424の形状に沿って流れ、突出部424を効率的に冷却する。
回路パッケージ400では、図5中に示される斜線部分がハウジング302を成形する樹脂により覆われて固定される固定面432となる。
突出部424の根元に固定面432を設けることで、突出部424の機械的強度を増している。回路パッケージ400の表面において、被計測気体30が流れる軸に沿う方向に帯状の固定面を設け、さらに被計測気体30が流れる軸と交差する方向の固定面を設けることで、より強固に回路パッケージ400とハウジング302とを互いに固定することができる。固定面432において、計測用流路面430に沿って幅Lで帯状に回路パッケージ400を取り巻いている部分が上述した被計測気体30の流れ軸に沿う方向の固定面であり、突出部424の根元を覆う部分が、被計測気体30の流れ軸を横切る方向の固定面である。
図6は、回路パッケージ400のリードフレーム510およびリードフレーム510への回路チップやセンサチップの搭載状態を示している。なお、破線部508の内側は、回路パッケージ400のモールド成形時に用いられる金型により覆われる部分である。
リードフレーム510は、支持枠512にリードが機械的に接続されて支持された構成を有しており、リードの中央にプレート532が搭載され、プレート532にチップ状の流量検出部(センサチップ)602およびLSIとして作られている処理部604が搭載されている。流量検出部602にはダイヤフラム672が設けられており、これが熱伝達面露出部436に相当する。また、以下に説明する流量検出部602の各端子と処理部604とがワイヤ542で電気的に接続されている。さらに処理部604の各端子と対応するリード514とがワイヤ543で接続されている。また回路パッケージ400の接続端子となる部分とプレート532との間に位置するリード514は、それらの間にチップ状の回路部品(回路チップ)516が接続されている。
このように回路パッケージ400として完成された場合の最も先端側に、ダイヤフラム672を有する流量検出部602を配置し、流量検出部602に対して接続端子となる方に処理部604がLSIの状態で配置され、さらに処理部604の端子側に接続用のワイヤ543が配置されている。
プレート532を支えるために、リードが設けられており、このリードはリード556やリード558により支持枠512に固定されている。なお、プレート532の下面には上記リードと接続されるプレート532と同等の面積の図示しないリード面が設けられており、プレート532がこのリード面上に搭載される。これらリード面はグランド接地されている。これによって、上記流量検出部602や処理部604の回路内の接地を共通して上記リード面を介して行うことでノイズを抑えることができ、被計測気体30の計測精度を向上している。またプレート532から流路の上流側の方に、すなわち上述した流量検出部602や処理部604、回路部品516の軸を横切る方向の軸に沿って突出するようにして、リード544、545が設けられている。このリード544、545には温度検出素子518、例えばチップ状のサーミスタが接続されている。さらに突出部424の根元である処理部604に近い方(突出部424の基端側)に、リード548、549が設けられ、リード544、545とリード548、549とはAuワイヤなどの細線546で電気的に接続されている。リード548、549とリード544、545とを直接接続すると、熱がこれらリード548、549とリード544、545とを介して温度検出素子518に伝わり、正確に被計測気体30の温度を計測することができなくなる。このため断面積が小さく熱抵抗の大きい電気配線546で接続することにより、リード548、549とリード544、545との間の熱抵抗を大きくできる。これにより、熱の影響が温度検出素子518に及ばないようにし、被計測気体30の温度の計測精度を向上している。
またリード548、549はリード552やリード554により、支持枠512に固定されている。これらリード552やリード554と支持枠512との接続部分は、前記突出している温度検出素子518の突出方向に対して傾斜した状態で支持枠512に固定されており、金型もこの部分で斜めの配置となる。第1樹脂モールド工程でモールド樹脂がこの斜めの状態に沿って流れることにより、温度検出素子518が設けられた先端部分に、第1樹脂モールド工程のモールド樹脂がスムーズに流れ、信頼性が向上する。
図6に樹脂の圧入方向を示す矢印592を示している。回路部品を搭載したリードフレーム510を金型で覆い、金型に樹脂注入用の圧入孔590を丸印の位置に設け、矢印592の方向から熱硬化性樹脂を前記金型内に注入する。圧入孔590から矢印592の方向に、回路部品516や温度検出素子518があり、温度検出素子518を保持するためのリード544、545がある。さらに矢印592の方向と近い方向にプレート532や処理部604、流量検出部602が設けられている。このように配置することで、第1樹脂モールド工程で樹脂がスムーズに流れる。第1樹脂モールド工程では、熱硬化性樹脂を使用しており、硬化する前に樹脂を全体に行き渡らせることが重要である。このためリード514における回路部品や配線の配置と、圧入孔590や圧入方向の関係がたいへん重要となる。
図7は、図6のC−C断面の一部を示す図である。
被計測気体30の流量を計測する流量検出部602にはダイヤフラム672が設けられており、ダイヤフラム672の背面には空隙674が設けられている。ダイヤフラム672には図示していないが被計測気体30と熱のやり取りを行い、これによって流量を計測するための素子が設けられている。ダイヤフラム672に成形させている素子間に、被計測気体30との熱のやり取りとは別に、ダイヤフラム672を介して素子間に熱が伝わると、正確に流量を計測することが困難となる。このためダイヤフラム672は熱抵抗を大きくする必要があり、ダイヤフラム672ができるだけ薄く作られている。
流量検出部(流量検出素子)602は、ダイヤフラム672の熱伝達面437が露出するように、第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の第1樹脂に埋設されて固定されている。ダイヤフラム672には、図22に示す発熱体608、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654と下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658など)などの素子が設けられている。前記素子は、ダイヤフラム672に相当する熱伝達面露出部436において素子表面の熱伝達面437を介して図示していない被計測気体30と互いに熱の伝達を行う。熱伝達面437は各素子の表面で構成しても良いし、その上に薄い保護膜を設けても良い。
流量検出部(流量検出素子)602の前記素子が設けられている部分は、計測用流路面430の熱伝達面露出部436に配置されていて、熱伝達面437が計測用流路面430を成形している樹脂から露出している。流量検出素子602の外周部は計測用流路面430を成形している第1樹脂モールド工程で使用された熱硬化性樹脂で覆われている。このため、ダイヤフラム672の裏面側に形成された空隙674内とダイヤフラム672の表面側とを連通するための連通孔676及び樹脂開口部438を設け、ダイヤフラム672の表面および裏面に作用する気圧が等しくなるようにしている。
図6及び図7に示すように、第1プレート532の上には流量検出部602と処理部604として動作するLSIとが設けられている。第1プレート532の下側には、第1プレート532を支えるための第2プレート536としてリードフレームが設けられている。第2プレート536を構成するリードフレームはグランド電極として使用する。尚、連通孔676は、第1プレート532に形成した溝を前記リードフレームで覆うことにより、第1プレート532と前記リードフレームとの間に形成されている。
図8は第1樹脂モールド工程により図6に示すリードフレーム510を熱硬化性樹脂でモールドし、熱硬化性樹脂で覆った状態を示す。この図8の状態の後、リード514が端子毎に切り離され、接続端子412や端子414となる。
図8でリードから支持枠512を切り落とすことにより回路パッケージ400が製作される。このとき、樹脂面からリードの切断端部が露出した状態になっている。この切断端部に水や塩水(以下、水等)が付着した場合、切断端部及びこの切断端部に繋がるリードが腐蝕することがある。また、使用中にリードの切断端部から回路パッケージ400の内部に水等が浸入すると、回路チップやセンサチップの腐蝕につながりかねない。このようなことがないようにすることが耐久性向上の観点や信頼性向上の観点で重要である。例えば傾斜部594や傾斜部596が第2樹脂モールド工程でモールド樹脂(第2のモールド樹脂)により覆われ、図6に示すリード552やリード554と支持枠512との間を切断した切断端部が、前記モールド樹脂により覆われる(図5(B)、(C)を参照)。このことによりリード552やリード554の切断端部の腐食や切断端部から回路パッケージ400内への水等の浸入が防止される。リード552やリード554の切断端部は温度検出部452の電気信号を伝える重要なリード部分と近接している。従って、このようなリードの切断端部を第2樹脂モールド工程で覆うことが望ましい。
また、温度検出素子518が搭載されるリード544とリード545は、対をなして配置されており、互いに電位差が大きく、切断端部(第1の切断端部)544aが突出部424の突出方向に直交する幅方向の一方の側面に露出して配置されており、切断端部(第2の切断端部)545aが他方の側面に露出して配置されている。切断端部544a、545aは、温度検出部452の温度検出素子518よりも突出部424の基端側の位置で互いに極めて接近した位置に露出している。これにより、例えば、被計測気体に混じって主通路内に流れ込んだ水等が、突出部424の切断端部544aと切断端部545aとの間に亘って付着して、切断端部544aと切断端部545aとを短絡する水膜ブリッジを形成することが考えられる。電位差のある2つの切断端部544a,545aの間に水膜ブリッジが形成されると、リード544,545に腐蝕が発生し易い状況になる。したがって、2つの切断端部544a,545a間に形成される水膜ブリッジを分断する構造を付与して腐食を防止することが望ましい。
以下、水膜ブリッジを分断する構造の実施例について説明する。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第1の実施例を説明する。
図3B、図4Bに示していないが、回路パッケージ400の突出部424には、2つの切断端部544a,545aの間に形成された水膜ブリッジを分断する構造として凸形状部が設けられている。図9は、突出部424表面に設ける凸形状部の具体例を説明する図であり、図9Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図9Aは、図9Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。なお、切断端部544aと切断端部545aとは、互いに極めて接近した位置でモールド樹脂から露出し、電位差が生じているため、リードの切断端部に水や塩水(以下、水等)が付着した場合に、2つの切断端部544a,545aの間に水膜ブリッジが形成されて腐蝕し易い箇所であるといえる。その他の接近した位置に露出している電位差のあるリードの切断端部間がある構造にも、本発明は適用できる。
凸形状部460a,460bは、図9A及び図9Bに示すように、突出部424の切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ直線700方向に対して垂直方向に延びる形状を有している。この凸形状部460は、2つの切断端部544a,545aを結ぶ線分700と交わる地点700aを中心にして両側に延びる形状が有効である。凸形状部460a,460bは、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。この段差が水膜ブリッジを分断する。
これにより、被計測気体30に混入した水や塩水が突出部424に付着しても、凸形状部460により水膜ブリッジを分断することができ、2つの切断端部544a,545aの短絡による腐蝕や回路パッケージ400内への水等の浸入を防止できる。凸形状部460a、460bの横断面は三角形状である。三角形の頂点では、平らな箇所がないため水滴を保持できず、水膜ブリッジを分断し易い。したがって三角形の頂角の角度は概ね90度以下が好ましい。2つの切断端部544a,545aの間に形成された水膜ブリッジを分断することができる四角形などの多角形または円形、扇形などいずれの形状でもよい。
上記した具体例では、凸形状部460a,460bが表面424aと裏面424cとに分断されて形成された場合を例に説明したが、突出部424の図9Bの表面424a、左側面424b、裏面424cと全周に渡り連続して形成してもいい。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第2の実施例を説明する。
本実施例では、図10A、図10Bに示すように、片側の切断端部545aを囲むように凸形状部461a、461bを形成してもよい。図10Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図10Aは、図10Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。図10Bの上から下の方向が重力方向である場合、水滴は凸形状部461a、461bに沿って移動したのち突出部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることが期待できる。凸形状部461a,461bは、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第3の実施例を説明する。
図11に示すように、リード544とリード545とは突出部424の突出高さ方向の同じ高さ位置に配置しなくてもよい。図11Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図11Aは、図11Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。図11に示すように、2つの切断端部544a,545aは突出部424の突出高さ方向に離れて配置されても、機能上問題ない。2つの切断端部544a,545aを突出部424の突出高さ方向に離して(異なる高さ位置に)配置することにより、2つの切断端部544a,545aの距離が長くなる。このため、2つの切断端部544a,545aの間に水膜ブリッジが形成され難くなり、腐蝕が抑制される効果がある。さらに、図11に示すように、2つの切断端部544a,545aの間に、突出部424の突出方向に対して垂直方向に凸形状部462を形成することにより、2つの切断端部544a,545aの間に形成される水膜ブリッジを分断する効果が高まる。尚、凸形状部462は、突出部424の突出高さ方向において、同じ高さ位置で突出部424を囲むように、環状に形成されている。凸形状部462は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。これにより、本実施例では、電位差を有する2つの切断端部544a,545aは流体の流れ方向に離間して設けられ、凸形状部462によって形成された段差は流体の流れ方向を横切る方向に設けられている。
ここで凸形状部462は、水や塩水を含む被計測気体30の方向に対して、垂直方向に形成されている、水や塩水は、凸形状部462に衝突するため、凸形状部462の上流側で主に水や塩水が付着して、下流側には付着し難い。このため、凸部形状の水膜ブリッジを分断する効果がさらに高まる。また図11Bの上から下の方向が重力方向である場合、凸形状部462に衝突した水や塩水が重力により凸形状部462に沿って移動したのち突起部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることが期待できる。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第4の実施例を説明する。
図12では、2つの切断端部544a,545aを突出部424の突出高さ方向に離して配置した上に、2つの切断端部544a,545aの間に、突出部424の突出高さ方向に対して概ね45゜傾けて凸形状部463を形成した例である。図12Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図12Aは、図12Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。凸形状部463は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。これにより、本実施例では、電位差を有する2つの切断端部544a,545aは流体の流れ方向に離間して設けられ、凸形状部463によって形成された段差は流体の流れ方向を横切る方向に設けられている。
熱式流量計は、設置状況によりその重力方向が変わることがある。突出部424の突出方向に対して概ね45゜傾けて凸形状部463を形成した場合、いずれの方向で熱式流量計が取付けられても、水や塩水は、凸形状部463に衝突するため、凸形状部463の上流側で主に水や塩水が付着して、下流側には付着し難く、凸形状部に加えて水膜ブリッジを分断する効果が期待できる。さらに、凸形状部463に衝突した水や塩水が重力により凸形状部463に沿って移動したのち突出部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることも期待できる。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第5の実施例を説明する。
図13には、切断端部544a、545aを突出部424の突出方向に対して離して配置した上に、その切断端部544aと545aの間に、凸部形状372の代わりに突出部424の突出方向に対して概ね45゜傾けて突出部424の先端部の表面と裏面にそれぞれ段差形状部464を形成した例である。図13Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図13Aは、図13Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。本実施例では、突出部424は段付きの2つの面で構成されている。すなわち、先端側の外面と基端側の外面とが段付きの2つの面で構成され、先端側の外面と基端側の外面との間に段差形状部464が形成されている。この段差464は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に形成されている。段差にすることで、2つの切断端部544a,545aの間に形成される水膜ブリッジを分断して腐食を防止できる上、温度検出部452への突出部424の根元部からの熱の影響が低減される。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第6の実施例を説明する。
図14に示すように、切断端部の一方545aが突出部424の先端に配置しても、機能上問題ない。図14Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図14Aは、図14Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。2つの切断端部544a,545aの間は、温度検出部452の温度検出素子518よりも突出部424の先端側の位置で互いに極めて接近した位置に露出しているため、2つの切断端部544a,545aが突出部424の突出高さ方向に離れて配置されることにより、2つの切断端部544a,545aの距離が長くなる。このため、2つの切断端部544a,545aの間に水膜ブリッジが形成され難くなり、腐蝕が抑制される効果がある。さらに水や塩水を含む被計測気体30の方向に対して垂直面に切断端部545aが配置されているため、切断端部545a面上の水や塩水は被計測気体30の流れにより、突起部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることが期待できる。
図14に示すように、さらに凸形状部462を設けることにより、2つの切断端部544a,545aの間に形成される水膜ブリッジを分断する効果が高まる。尚、凸形状部462は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。これにより、本実施例では、電位差を有する2つの切断端部544a,545aは流体の流れ方向に離間して設けられ、凸形状部462によって形成された段差は流体の流れ方向を横切る方向に設けられている。従って、凸形状部462の下流側には水や塩水が付着し難くなる。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第7の実施例を説明する。
2つの切断端部544a,545aの間に形成された水膜ブリッジを分断する段差を構成するための別の構造として、凹形状部465がある。図15は、突出部424表面に凹部形状を形成する構成の具体例を説明する図である。図15Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図15Aは、図15Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。2つの切断端部544a,545aは、図11乃至13と同様に配置されている。
凹形状部465は、図15A、図15Bに示すように、突起部424の切断端部544a、545aを最短距離で結ぶ線分700方向に対して垂直方向に延びる形状を有している。すなわち、凹形状部465は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成している。この凹形状部465は、2つの切断端部544a,545aを結ぶ線分700と交わる地点を中心にして両側に延びる形状が有効である。図15では、2つの切断端部544a,545aを突出部424の突出高さ方向に離して配置した上に、2つの切断端部544a,545aの間に、突出部424の突出高さ方向に対して概ね45゜傾けて凹形状部465を形成した例である。熱式流量計は、設置状況によりその重力方向が変わることがある。突出部424の突出方向に対して概ね45゜傾けて凹形状部465を形成した場合、いずれの方向で熱式流量計が取付けられても、凹形状部465に水や塩水が溜まり、凹形状部465に溜まった水や塩水が重力により凹形状部465に沿って移動したのち突起部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることも期待できる。なお凹形状部465は、表面張力により平面に比べて水や塩水が溜まりやすい特長を利用している。なお、図9、図10、図11に示した凸形状部を凹形状部に置き換えた構造でも効果がある。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第8の実施例を説明する。
図16では、図11と同様に2つの切断端部544a,545aを突出部424の突出高さ方向に離して配置した上に、2つの切断端部544a,545aの間に、第2樹脂モールド工程でモールド樹脂(第2のモールド樹脂)により被覆した被覆部466が設けられている。図16Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図16Aは、図16Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。被覆部466は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。これにより、本実施例では、電位差を有する2つの切断端部544a,545aは流体の流れ方向に離間して設けられ、被覆部466によって形成された段差は流体の流れ方向を横切る方向に設けられている。
これにより2つの切断端部544a,545aの間に形成された水膜ブリッジを分断することができる。図16Bに示すように、被覆部466は突出部424に外嵌されて密着するリング形状またはC字形状を有している。被覆部466は、凸部形状と同じ効果があり、水や塩水を含む被計測気体30の流れ方向に対して、垂直方向に形成されている。水や塩水は、被覆部466に衝突するため、被覆部466の上流側で主に水や塩水が付着して、下流側には付着し難い。このため、被覆部466の水膜ブリッジを分断する効果がさらに高まる。また図16Bの上から下の方向が重力方向である場合、被覆部466に衝突した水や塩水が重力により被覆部466に沿って移動したのち突起部424から脱落して、被計測気体30と共に表側出口344および裏側出口345から主通路に排出されることが期待できる。
水膜ブリッジを分断する構造について、その第9の実施例を説明する。
図17では、図11と同様に2つの切断端部544a,545aを突出部424の突出高さ方向に対して離して配置した上に、その一方の切断端部544a上に、第2樹脂モールド工程によって成形したモールド樹脂(第2のモールド樹脂)により被覆した被覆部467を設けている。図17Bは、図3Aの突出部424を拡大して示す拡大図、図17Aは、図17Bの紙面上における左側面(突出部424の先端面)を示す図である。ただしもう一方の切断端部545a上には、第2樹脂モールド工程でモールド樹脂(第2のモールド樹脂)による被覆部371は設けない。被覆部467は、切断端部544aと545aとを最短距離で結ぶ線分700を横切るように、切断端部544aと545aとの間に段差を形成する。ただし、本例の場合は、一方の切断端部544aが被覆部467で被覆されるため、段差による水膜ブリッジの分断効果を期待する必要はない。
多量の水または塩水が溜まった場合、切断端部544aが被覆部467で覆われているため、回路パッケージ400のモールド樹脂から露出する切断端部に水や塩水が付着しても切断端部間に水膜ブリッジが形成されることはない。また経時的な変化で被覆部467と切断端部544aに隙間ができて水または塩水が溜まった場合、切断端部545a上には第2樹脂モールド工程でモールド樹脂(第2のモールド樹脂)による被覆部467は設けていないため、被覆部467と2つの切断端部544a,545aとの隙間に溜まった水または塩水で2つの切断端部544a,545a間に水膜ブリッジが形成されることはない。
また、2つの切断端部544a,545aの配置を図9と同様の配置として、2つの切断端部544a,545aを被覆部467で覆ってもよい。被覆部467と2つの切断端部544a,545aとの間に隙間が生じた場合は、水膜ブリッジが形成される可能性があるので、隙間が生じないように配慮する必要がある。
以上、水膜ブリッジを分断する構造の実施例について説明した。
上述した各実施例では、熱式流量計300は、流体に流量を検出する流量検出部602と、流量検出部602から出力される出力信号を処理する処理部604とを備えている。また、少なくとも処理部604を含む電気回路部品を、電気配線を兼ねるリード514,548,549,552,554,556,558,544,545に搭載してモールド樹脂で被覆した回路パッケージ400を備える。そして、回路パッケージ400のモールド樹脂部の少なくとも一部が流体流路に配置されるように構成されている。複数のリードの端部(切断端部)が流体流路に配置されたモールド樹脂部の表面に露出している。モールド樹脂部の表面に露出した複数の端部のうち電位差を有する2つの端部544a,545aの間を最短距離で結ぶ経路700が横切る面上に、段差を形成している。
次に、熱式流量計の生産工程について説明する。
図18は回路パッケージ400の生産工程を示し、図19は熱式流量計の生産工程を示す。図18において、ステップ1は図6に示すリードフレームを生産する工程を示す。このリードフレームは例えばプレス加工によって作られる。
ステップ2は、ステップ1で作られたリードフレーム510のリード上に、まずプレート532を搭載し、さらにプレート532に流量検出部602や処理部604を搭載し、さらに温度検出素子518、チップコンデンサなどの回路部品516を搭載する。またステップ2では、回路部品間や回路部品とリード間、リード同士の電気的な配線を行う。このステップ2で、リード544、545とリード548、549間を接続線546で接続する。
次にステップ3で、第1樹脂モールド工程により、熱硬化性樹脂(第1のモールド樹脂)でモールドされる。この状態を図8に示す。また、ステップ3で、リードフレーム510から支持枠512を切り落とし、さらにリード間も切り離し、回路パッケージ400を完成する。この回路パッケージ400には、電位差が大きくかつ互いに接近した位置に露出している一対のリード544、545の切断端部544a、545aの間に図9乃至図17に示す凸形状部や凹形状部を含む段差が成形されている。
ステップ4で、出来上がった回路パッケージ400の外観検査や動作の検査を行う。この検査のために、接続端子412に加え端子414が使用される。
図19に示す工程では、回路パッケージ400と外部端子306とが使用され、ステップ5で第2樹脂モールド工程によりハウジング302がつくられる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、図8に示す回路パッケージ400の斜線部分432が第2樹脂モールド工程のモールド樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。ステップ6で各外部端子内端361の切り離しが行われ、接続端子412と外部端子内端361との接続がステップ7で行われる。
ステップ7によりハウジング302が完成すると次にステップ8で、表カバー303と裏カバー304とがハウジング302に取り付けられ、ハウジング302の内部が表カバー303と裏カバー304で密閉されるとともに、被計測気体30を流すための副通路が完成する。
ステップ9で、実際に副通路に気体が導かれ、特性の試験が行われる。
図20は熱式流量計300の流量検出回路601を示す回路図である。流量検出回路601は、発熱体608を有する流量検出部602と処理部604とを備えている。処理部604は、流量検出部602の発熱体608の発熱量を制御すると共に、流量検出部602の出力に基づいて流量を表す信号を、端子662を介して出力する。前記処理を行うために、処理部604は、Central Processing Unit(以下CPUと記す)612と入力回路614、出力回路616、補正値や計測値と流量との関係を表すデータを保持するメモリ618、一定電圧をそれぞれ必要な回路に供給する電源回路622を備えている。電源回路622には車載バッテリなどの外部電源から、端子664と図示していないグランド端子を介して直流電力が供給される。
流量検出部602には被計測気体30を熱するための発熱体608が設けられている。電源回路622から、発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606のコレクタに電圧V1が供給され、CPU612から出力回路616を介してトランジスタ606のベースに制御信号が加えられ、この制御信号に基づいてトランジスタ606から端子624を介して発熱体608に電流が供給される。発熱体608に供給される電流量はCPU612から出力回路616を介してトランジスタ606に加えられる制御信号により制御される。処理部604は、被計測気体30の温度が当初の温度より所定温度、例えば100℃、だけ高くなるように発熱体608の発熱量を制御する。
流量検出部602は、発熱体608の発熱量を制御するための発熱制御ブリッジ640と、流量を計測するための流量検知ブリッジ650と、を有している。発熱制御ブリッジ640の一端には、電源回路622から一定電圧V3が端子626を介して供給され、発熱制御ブリッジ640の他端はグランド端子630に接続されている。また流量検知ブリッジ650の一端には、電源回路622から一定電圧V2が端子625を介して供給され、流量検知ブリッジ650の他端はグランド端子630に接続されている。
発熱制御ブリッジ640は、熱せられた被計測気体30の温度に基づいて抵抗値が変化する測温抵抗体である抵抗642を有しており、抵抗642と抵抗644、抵抗646、抵抗648はブリッジ回路を構成している。抵抗642と抵抗646の交点Aおよび抵抗644と抵抗648との交点Bの電位差が端子627および端子628を介して入力回路614に入力され、CPU612は交点Aと交点Bとの間の電位差が所定値、この実施例ではゼロボルト、になるようにトランジスタ606から供給される電流を制御して発熱体608の発熱量を制御する。
流量検知ブリッジ650は、抵抗652と抵抗654、抵抗656、抵抗658の4つの測温抵抗体で構成されている。これら4つの測温抵抗体は被計測気体30の流れに沿って配置されており、抵抗652と抵抗654とは発熱体608に対して被計測気体30の流路における上流側に配置され、抵抗656と抵抗658とは下流側に配置されている。
被計測気体30が発熱体608に対して上流側から下流側に向けて流れている場合、上流側に配置されている抵抗652や抵抗654は、被計測気体30によって冷却される。また、下流側に配置されている抵抗656と抵抗658は、発熱体608により暖められた被計測気体30により暖められる。このため、流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間に電位差が発生する。
抵抗652と抵抗656との交点Cと、抵抗654と抵抗658との交点Dとの間の電位差が端子631と端子632を介して入力回路614に入力される。計測精度を高めるために、例えば被計測気体30の流れがゼロの状態で、前記交点Cと交点Dとの間の電位差がゼロとなるように流量検知ブリッジ650の各抵抗が設定されている。CPU612は計測結果に基づいて被計測気体30の流量を表す電気信号を端子662から出力する。
このとき、CPU612は流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間の電位差に基づいて、メモリ618に記憶されている前記電位差と主通路の流量との関係を表すデータを検索し、主通路の流量を求める。図20に示す端子664および端子662は接続端子412に含まれている。
図21は、図20の流量検出部602の回路配置を示す回路構成図である。流量検出部602は矩形形状の半導体チップとして作られており、図21に示す流量検出部602の左側から右側に向って、矢印の方向に、被計測気体30が流れる。
流量検出部(流量検出素子)602には、半導体チップの厚さを薄くした矩形形状のダイヤフラム672が形成されている。このダイヤフラム672には、破線で示す薄厚領域(すなわち上述した熱伝達面)603が設けられている。この薄厚領域603の裏面側には、上述した空隙674が成形されている。
薄厚領域603の中央部には発熱体608が設けられている。発熱体608の周囲に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642が設けられている。薄厚領域603の外側に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648が設けられている。抵抗642、644、646、648によって発熱制御ブリッジ640が構成される。
また、発熱体608を挟むように、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654と下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658とが配置されている。発熱体608に対して被計測気体30の流れ(矢印方向)の上流側に、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654が配置され、下流側に下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されている。
また、発熱体608の双方の端部は、端子624および629にそれぞれ接続されている。ここで、図20に示すように、端子624にはトランジスタ606から発熱体608に供給される電流が加えられ、端子629はグランドとして接地される。
発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642、抵抗644、抵抗646、抵抗648は、それぞれ接続されて、端子626と630に接続される。図20に示すように、端子626には電源回路622から一定電圧V3が供給され、端子630はグランドとして接地される。また、抵抗642と抵抗646との間、抵抗646と抵抗648との間の接続点は、端子627と端子628に接続される。図21に記載の如く、端子627は抵抗642と抵抗646との交点Aの電位を出力し、端子627は抵抗644と抵抗648との交点Bの電位を出力する。図20に示すように、端子625には、電源回路622から一定電圧V2が供給され、端子630はグランド端子として接地される。また、抵抗654と抵抗658との接続点は端子631に接続され、端子631は図20の点Bの電位を出力する。抵抗652と抵抗656との接続点は端子632に接続され、端子632は図20に示す交点Cの電位を出力する。
図21に示すように、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642は、発熱体608の近傍に成形されているので、発熱体608からの発熱で暖められた気体の温度を精度良く計測することができる。一方、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648は、発熱体608から離れて配置されているので、発熱体608からの発熱の影響を受け難い構成に成っている。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。