JP5788309B2 - 自己治癒能力を有する長繊維強化セラミックス複合材料 - Google Patents

自己治癒能力を有する長繊維強化セラミックス複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、自己治癒能力を有する長繊維強化セラミックス複合材料に関する。
使用中に発生した損傷を自発的に感知し、修復することのできる自己治癒能力を有するセラミックス材料が近年開発されている。自己治癒能力を有するセラミックス材料は極めて高い機械的信頼性や超長使用寿命を示すため、次世代の構造・機械材料として期待されている。
自己治癒機能は何らかの化学反応により生じるため、自己治癒材料の構成は、その化学反応の反応物(以後、治癒発現物質とも呼ぶ)を母材が内包した複合材となる。このため、治癒発現物質の性状を改質することによって、自己治癒材料の特性強化を引き起こすことが可能である。実際に、治癒発現物質の改質や変更により、自己治癒機能を強化した新しい自己治癒材料が近年研究されている(非特許文献1)。
本発明者らは、治癒発現物質の高温酸化を利用した自己治癒セラミックスの研究開発を行っている(非特許文献2)。また、1998年に、セラミックス母材に炭化ケイ素粒子を分散複合し、その炭化ケイ素粒子の高温酸化を利用した“粒子分散型”自己治癒セラミックスが提案されている(非特許文献3)。その後、発明者らは、この“粒子分散型”自己治癒セラミックスの特性評価を活発に実施している。さらに、発明者らはその他の自己治癒材料の研究の動向と同じく、複合する炭化ケイ素粒子のナノ粒子化(非特許文献4)や治癒発現物質を耐熱アルミニウム合金へ変更(非特許文献1)することで、いわゆる第二世代の自己治癒セラミックスの開発を行い、自己治癒機能の強化に成功している。
飯田雄也、中尾航、「耐熱アルミ合金の高温酸化による自己治癒機能を有するセラミック基複合材の開発」 日本機械学会2010年度年次大会 講演論文集(6)、278−22(2010) W. Nakao, K. Takahashi, K. Ando, "Chapter 6, Self-Healing of Surface Cracks in Structural Ceramics", In: Self-healing Materials: Fundamentals, Design Strategies, and Applications, Ghosh, S.K. (Ed.), 183-217, (2010), WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, German. K. Ando, T. Ikeda, S. Sato, F. Yao, Y. Kobayasi, "A Preliminary Study on Crack healing Behaviour of Si3N4/SiC Composite Ceramics", Fatigue and fracture of Engineering Materials and structures, 21, 119-122, (1998). W. Nakao, Y. Tsutagawa, K. Ando, "Enhancement of In-Situ Self-Crack-Healing Efficient Temperature Region by SiC Nano-Sizing," J. Intelligent Mater. Sys. Struct., 19[3], 407-410, (2008).
ところで、近年、高効率かつ燃料多様性を有するセラミックタービンの実用化の研究が盛んになされている。部材の耐熱性向上は、ジェットエンジン、ガスタービンおよび蒸気タービンなどの既存のエネルギー機器の更なる高効率化を実現し、これに伴い二酸化炭素排出を抑制し、さらに低炭素化を実現する新規応用を創出する。
ここで、最も温室効果ガスの排出抑制が期待される応用事例が、発電用水素燃焼タービンシステムである。発電用水素燃焼タービンは、水素ガスと酸素ガスを理論混合比で燃焼させ発電に用いるため、二酸化炭素排出のない理想的な発電システムである。このため、水素国際利用クリーンエネルギー計画(通称WE−NET計画)では、再生可能エネルギーから生成した水素エネルギーを利用する技術の一つとして検討された。しかしながら、発電用水素燃焼タービン等には、異物衝突損傷(FOD)があり、それを解決するのに十分な性能を有するセラミックス材料の開発に至っていなかった。ここで、FODとは、高速気流中に曝されるタービン動翼や静翼に、異物が高速で衝突することにより発生する損傷である。異物衝突が生じると衝突背面に引張り過大負荷が作用する。セラミックスは金属と異なり有効な変形機構を有していないため、作用した過負荷により割れもしくは欠けが生じ、タービンの運転を続行することが困難となる。
このように、本発電システムの駆動媒体となる超高温水蒸気に適応可能な耐熱材料が欠如していたため、従来の化石燃料を用いたガスタービン以上の熱効率を得るに至っていない。このように、高効率な発電用水素燃焼タービンシステムを実現するセラミックタービンに用いる新規なセラミックス材料の開発が望まれている。
また、現在、電力供給形態が、大規模集中型から小型分散型へ移行しつつある。有効な小型分散型発電として、マイクロガスタービン発電が知られている。マイクロガスタービンは、一般には、500kW又は300kW以下の出力のガスタービンの総称である。特に、一般家庭用電源には、電気事業法の制約から出力50kW以下の超小型マイクロガスタービンが求められている。超小型マイクロガスタービンでは冷却機構を導入することが不可能であるために、部材の耐熱性によってタービン効率が直接決定してしまう。さらに、現行の大型ガスタービンで用いられている熱遮蔽コーティングや冷却翼を用いることができないため、現状では大型ガスタービンに比べ熱効率で大幅に劣っている。従って、高効率かつ超小型マイクロガスタービンを実現するためにも、良好な耐熱性や機械的特性を有する新規なセラミックス材料の開発が望まれている。
そこで、本発明は、優れた機械特性と化学的安定性とを有するセラミックス複合材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、長繊維強化と自己治癒能力の発現を融合する革新的な材料設計指針を酸化物セラミックスに導入することで、優れた機械特性と化学的安定性とを有する耐熱材料としてのセラミックス複合材料が作製できることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、セラミックス母材と、前記セラミックス母材中に含まれたセラミックス繊維部材と、前記セラミックス繊維部材表面を覆うように設けられた自己治癒性を有する界面層とを備え、前記界面層が、TiAl、又は、Nb−Al系合金で形成されているセラミックス複合材料である。
本発明は別の一側面において、セラミックス母材と、前記セラミックス母材中に含まれたセラミックス繊維部材と、前記セラミックス繊維部材表面を覆うように設けられた自己治癒性を有する界面層とを備え、前記セラミックス繊維部材は、複数のセラミックス繊維と、前記複数のセラミックス繊維のそれぞれの外側に設けられた前記セラミックス繊維のセラミックスと同じセラミックスとを有し、前記界面層が、SiCで形成されているセラミックス複合材料である。
本発明のセラミックス複合材料は一実施形態において、前記セラミックス母材がAl23で形成されている。
本発明のセラミックス複合材料は別の一実施形態において、前記セラミックス繊維部材がAl23で形成されている。
本発明のセラミックス複合材料は更に別の一実施形態において、前記セラミックス繊維部材の複合率が41〜79%である。
本発明によれば、優れた機械特性と化学的安定性とを有するセラミックス複合材料を提供することができる。
本発明の長繊維強化セラミックス複合材料の模式図である。 本発明の長繊維強化セラミックス複合材料が損傷を受けたときの状態及びその後の自己治癒機能発現機構の模式図である。 主き裂を完全に接合するために必要な治癒発現物質からなる界面層厚さを示した図である。 セラミックス複合材料の作製手順の一例に係る説明図である。 好ましい分散剤濃度の根拠となるスラリー濃度と分散剤濃度との関係に係るグラフである。 実施例2の試料断面の光学顕微鏡写真である。 実施例3の自己治癒挙動試験の結果である。 実施例4で選抜した二元系アルミニウム合金の高温酸化挙動を示す図である。
図1は、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料を模式的に示している。図2は、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料が損傷を受けたときの状態及びその後の自己治癒機能発現機構を模式的に示している。セラミックス複合材料は、セラミックス母材(図2では「母材」と記載)と、セラミックス母材中に含まれた繊維部材(図2では「繊維」と記載)と、繊維部材表面を覆うように設けられた自己治癒性を有する界面層とを備えている。
繊維部材表面を被覆する自己治癒性を有する界面層は、治癒発現物質で構成されている。治癒発現物質は、粒径1μm以下に微細化することが望ましい。
従来の長繊維強化セラミックスと同様に、界面層の強度をセラミックス繊維及びセラミックス母材よりも低くする。これにより、図2のように、複合材中をき裂が進展し界面層へ到達すると、界面層が優先的に破壊するため、主き裂は界面層方向へ偏向もしくは分枝する。さらにき裂が進展する場合は、界面層の破面間で摩擦が発生する。このため、き裂の成長に伴いき裂進展抵抗が増加するため、き裂進展が抑制される。しかしながら、偏向もしくは分枝したき裂は最大欠陥部であるため、FOD等の過負荷を繰り返し受けると、成長を続け、最終破壊へ至る主要因となる。
本発明の長繊維強化セラミックス複合材料では、界面層が治癒発現物質で構成されているため、偏向もしくは分枝したき裂面上で、治癒発現物質は外気と接触する。本発明の長繊維強化セラミックス複合材料が高温酸化雰囲気で利用されていることを想定すれば、治癒発現物質は分枝き裂の発生と同時に高温酸化を開始する。治癒発現物質の高温酸化の生成物と反応熱により、き裂は再結合される。自己治癒により強度の完全回復が達成され、治癒部の強度が未損傷部より優れれば、次に生じる異物衝突では、治癒部以外で損傷が生じ、再度自己治癒機能が働く。以上のように、繰り返される異物衝突にも対応することが可能となり、FOD問題を抜本的に解決したセラミックタービン部材を実現することができる。
このように、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、治癒発現物質を母材/繊維界面に局在化することで、長繊維強化セラミックスの脆性緩和性と自己治癒機能の共生を可能とした第三世代の自己治癒セラミックスであると言える。これに加え、母材に酸化物系セラミックスを用いているため、高い耐酸化性と耐熱性も同時に得ることができる。このように、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、セラミックスタービンの有用性向上において極めて重要な高耐熱性も有している。
さらに、従来の、母材に治癒発現物質を分散させただけの“粒子分散型”自己治癒セラミックスと比較して、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料の優位性について説明する。従来の、母材に治癒発現物質分散させただけの“粒子分散型”自己治癒セラミックスは、完全な強度回復は可能であるが、その治癒可能な欠陥寸法に不十分な点を持っている。さらに、以下に示す致命的な欠陥も有している。自己治癒が対象としている損傷(主に表面き裂)は、停止している、もしくは、安定的な成長過程にあることを前提としている。しかしながら、過大負荷を部材が受けることにより発生するき裂は不安定な成長過程にある。特に、破壊靭性の低いセラミックスでは、不安定なき裂進展過程を抑制する手段を持たない。このため、“粒子分散型”自己治癒セラミックスは、自己治癒が発現する前に最終破壊に至ってしまう。“粒子分散型”自己治癒セラミックスの致命的な欠点を改善するため、本発明では、治癒発現物質を母材/繊維界面に配置して界面層を形成している。図2に示すように、本発明の長繊維強化自己治癒セラミックスでは、き裂進展時に主き裂が母材/繊維界面に分枝し、分枝き裂面間が摩擦することで大きなき裂進展抵抗を生み出す。さらに、分枝き裂面の少なくとも一方は、治癒発現物質からなる界面層であるため、主き裂の分枝とともに自己治癒が発現し、き裂を接合する。上述のように、過大負荷によりき裂が発生、進展した場合、長繊維強化の効果によりき裂成長を抑制し、停止もしくは安定的な成長段階となったき裂を自己治癒により接合する効果を発揮する。さらに、自己治癒の対象となるき裂を局在化させた治癒発現物質周辺へ誘導するため、“粒子分散型”自己治癒セラミックスよりも大きな損傷に対しても自己治癒可能となる。
界面層の厚さの最適値は、治癒発現物質の酸化反応に伴う体積膨張率や繊維複合率により変化する。さらに、完全な強度回復を達成するためには、主き裂を酸化生成物により充填することが望ましい。この条件を満たす界面層厚さの最小値は、治癒発現物質を炭化ケイ素とした場合、図3のようになる。ここで、本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、治癒発現物質が局在化しているため、主き裂面の大部分は治癒発現物質を含んでいない。このため、局在化している治癒発現物質からの酸化生成物で主き裂の空隙を充填するためには、き裂の大きさと競合する界面層厚さが幾何学関係から決定する。この関係を満たす条件が界面層厚さの最小値となる。
本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、セラミックス母材中の繊維部材の複合率(繊維複合率)を増加させることで、より良好な自己治癒効果を発揮することができる。すなわち、繊維複合率が増加すればするほど、長繊維強化セラミックス複合材料の表面に生じたき裂が内部へ進む際、深さ方向へ進むよりも、内部の繊維に当たり、その繊維の表面に沿う方向に進みやすくなる。ここで、き裂が深さ方向へ進むと、長繊維強化セラミックス複合材料に大きな孔が空いてしまう可能性があり、このような状態は自己治癒が困難となり好ましくない。これに対し、き裂が繊維の表面に沿う方向に進むと、繊維表面に形成された脆い界面層がこのき裂を引き受けて損傷する。そしてこの損傷を自身で治癒することで、より良好な自己治癒効果を発揮することができる。繊維複合率(体積%)は、好ましくは30〜91%、より好ましくは主き裂を完全に治癒発現物質の酸化生成物で充填することが可能となる41〜79%である。
本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、市販のアルミナ繊維、母材としてアルミナ粉末および治癒発現物質として炭化ケイ素等の粉末を用いて作製することができる。母材及び繊維は最も汎用性が高く、入手性の容易さから選定することができる。母材及び繊維は酸化物系セラミックスであれば使用可能であるが、耐熱性、化学的安定性の観点からAl23が好ましい。また、繊維を覆う界面層となる治癒発現物質として、炭化ケイ素などの炭化物、融点が1300℃以上の耐熱合金等が使用可能であるが、SiC、TiAl、Nb−Al系合金(Nb2Al、NbAl3等)粉末が特に好ましい。
セラミックス複合材料は、治癒発現物質を被覆した酸化物系セラミックス繊維を成形した後、当該セラミックス繊維を母材粒子が分散したスラリーに浸漬し、続いて焼結を行うことで製造することができる。焼結は、治癒発現物質の保護のため不活性ガス雰囲気中で行い、低温度での焼結が望ましい。使用環境は、治癒反応が高温酸化により誘発されるため、ある程度の高温かつ酸化雰囲気である必要がる。ただし、ガスタービンや蒸気タービンの排ガスは概ねこの条件を満たす。本発明の長繊維強化セラミックス複合材料は、ガスタービン部材、ジェットエンジン部材、自動車用エンジン部材、セラミックスばね材、その他、耐熱性が要求される部材には概ね利用可能である。
セラミックス複合材料の作製手順の一例について説明する。図4に、当該作製手順の一例を模式的に示す。まず、上記アルミナ繊維を一定速度で炭化ケイ素等の粉末が分散したスラリー中に浸漬、通過させ、繊維表面にスラリーを均一に被覆する。続いて、被覆した繊維を成形し、母材であるアルミナ粉末が分散したスラリーを含浸後、焼結する。ここで、上記母材の含浸プロセスは部材全体の機械特性向上に大きく影響する。本発明では、上述の長繊維強化セラミックス複合材料の好ましい製造方法も検討している。このような好ましい製造方法の一例として、具体的には、アルミナ長繊維が一様となるようなスラリー条件や被覆条件を決定する。被覆用のアルミナスラリーでは水とアルミナ粉体との比率を1:1、分散剤濃度を1.0mass%、結合剤濃度を0mass%とした。SiCスラリーでは水とSiC粉体との比率を1:1、分散剤濃度を0.5mass%、結合剤濃度を0.5mass%とする。母材用のアルミナスラリーでは水とアルミナ粉体との比率を2:3、分散剤濃度を1.0mass%、結合剤濃度を5.0mass%とする。また、被覆手法としてアルミナ長繊維(ニチアス製、ルビロン、外径0.3mm)に直接炭化ケイ素を被覆するのではなく、一度アルミナを含浸することで、繊維が一様に均質になることを確認している。図5に、上記分散剤濃度の根拠となるスラリー濃度と分散剤濃度との関係に係るグラフを示す。
上記被覆処理を繰り返すことで、炭化ケイ素層の厚さを制御することが可能であり、また、ヤーン径の異なる繊維を用いることで被覆厚さが同じでも、治癒発現物質の含有率を制御することが可能である。これらを制御因子として、強度を完全に回復することが可能な最適組成を決定する。また、治癒発現物質を他の材料(具体的には、耐熱アルミニウム合金もしくは三元炭化物)に置き換えても良い。これらの新規治癒発現物質は、炭化ケイ素よりも高温酸化時の発熱量および体積膨張率が大きいため、含有率が少量であっても自己治癒可能な欠陥サイズが大きいという特徴を有している。
セラミックス複合材料の作製手順において、上述では表面にスラリーを均一に被覆した繊維部材を成形し、母材であるアルミナ粉末が分散したスラリーを含浸後、焼結しているが、繊維複合率をより高めるためには、以下の方法を用いることが好ましい。すなわち、表面にスラリーを均一に被覆した繊維部材を成形した後、これをアルミナ粉末が分散したスラリー中に通過させて、板状の支持体に所定の負荷で巻き付けて固めた後、焼結することが好ましい。このような作製手順によれば、母材の被覆厚さと板状の支持体に巻き付けるときの負荷の調整によって所望の繊維複合率に制御することができる。
自己治癒能力の評価は、JIS R1607に準拠した切欠き試験片の破壊試験を行い、自己治癒の有無による破壊エネルギーの変化および破面様式の変化から決定することができる。本試験片には試験前に予荷重を付与し、切欠け先端にポップインき裂を導入する。このポップインき裂は、主き裂以外に界面層への分枝き裂を含んでいるため、本発明の自己治癒対象として最も適している。また、予荷重の大きさによりポップインき裂の大きさが変化するため、事前に自己治癒能力の評価に最適な条件を検討する必要がある。高温耐久性試験は、自己治癒能力の評価に用いる切欠け試験片と同形状の試験片により行う。これにより、治癒部の耐久性をピンポイントに評価することが可能となる。
表1に、本発明のセラミックス複合材料と、従来・競合技術及び類似技術との各種特性の比較をまとめる。
(◎:非常に良好、○:良好、△:普通、×:不良)
耐熱材料の高機能化は、ガスタービンの高効率化およびそれに伴う二酸化炭素排出削減に大きく寄与してきた。特にNi基超合金においては、一方向凝固材から単結晶材の活用、貴金属元素添加による高融点化、遮熱コーティングの利用など数多くの技術が開発されている。しかしながら、金属表面温度が基材融点に到達しようとしており、今後飛躍的な性能向上を望むことができない。よって、現行の材料設計指針とは大きく異なる材料開発が急務となっている。
自己治癒能力を付与したSiCf/SiC複合材の開発が検討されており、本技術の競合技術と考えられる。SiCf/SiCを含む非酸化物系長繊維強化セラミックスは、航空宇宙用耐熱材料として活発な研究開発が行われており、タービン用部材としての応用研究も行われている。さらに、本発明材料よりもさらに耐熱性が高い。しかしながら、非酸化物系長繊維強化セラミックスは水蒸気存在下での耐酸化性に乏しい。さらに、繊維自体が酸化するため自己治癒により長繊維強化機能の劣化が予想され、本発明材料のような顕著な自己治癒能力を発現することができない。したがって、セラミックタービンにおいて最大の障壁であるFOD問題を解決できるセラミックスは、本発明材料だけである。
近年活発な研究開発が行われている白金族合金は、本技術にとっての類似技術となる次世代耐熱材料である。Ni基超合金に比べ耐熱性に優れることは当然でありながら、現在までNi基合金において開発された技術を導入することも容易である。さらに、大きな変形能を有するためセラミックス部材のようなFOD問題が基本的に問題とならない。しかしながら、大量生産が必須なエネルギー産業に応用する場合、価格面および希少元素の利用保護の面で本発明材料が優れている。
次に、本発明に係る実施例を以下に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
治癒発現物質である炭化ケイ素粒子をアルミナ繊維に被覆し、アルミナに複合した材料を作製した。繊維の被覆には、粒径500nmの炭化ケイ素粒子を分散剤であるポリアクリル酸アンモニウムと結合剤であるアクリル系エマルジョンとともに水に分散し水系スラリー中を通過させることで行った。また、治癒発現物質の被覆は4回繰り返すことで、平均60μmの被覆厚さとした。プリフォームの作製は、繊維の成形体に粒径200nmのアルミナ粒子、分散剤であるポリアクリル酸アンモニウムと結合剤であるアクリル系エマルジョンからなる水系スラリーを蒸発乾固して行った。プリフォームは1300℃、1h、Ar雰囲気中で焼結を行った。
この試料の曲げ試験を行ったところ、最終破壊前に分枝き裂の形成及びそれに伴う顕著な繊維のプルアウト現象が確認され、通常のセラミックスの30倍以上の変形が可能であった。また、破面観察から、母材/繊維界面に存在する炭化ケイ素界面層の顕著な損傷(分枝き裂)が確認された。
(実施例2)
治癒発現物質である炭化ケイ素粒子をアルミナ繊維に被覆し、アルミナに複合した材料を作製した。繊維の被覆には、粒径500nmの炭化ケイ素粒子を分散剤であるポリアクリル酸アンモニウムと結合剤であるアクリル系エマルジョンとともに水に分散し水系スラリー中を通過させることで行った。また、治癒発現物質の被覆は3回繰り返すことで、平均60μmの被覆厚さとした。炭化ケイ素粒子で被覆したアルミナ繊維は、粒径200nmのアルミナ粒子、分散剤であるポリアクリル酸アンモニウムと結合剤であるアクリル系エマルジョンからなる水系スラリー中を浸漬したのちに1軸方向に積層し、蒸発乾固することでプリフォームを得た。プリフォームは1300℃、1h、Ar雰囲気中で焼結を行った。図6に、作製した試料の試料断面の光学顕微鏡写真を示す。作製した試料は、繊維含有率58%で、界面層厚さ60μmであった。
この試料の曲げ試験をJIS R1607に準拠して行ったところ、最終破壊前に分枝き裂の形成及びそれに伴う顕著な繊維のプルアウト現象が確認され、通常のセラミックスの30倍以上の変形が可能であった。また、破面観察から、母材/繊維界面に存在する炭化ケイ素界面層の顕著な損傷(分枝き裂)が確認された。
(実施例3)
過大負荷により発生する損傷を模擬したポップインき裂(V字型形状に切欠きを設けた試験片にあらかじめ負荷することで、切り欠き先端から発生・成長させたき裂)を対象に、実施例2に係る本発明のセラミックス複合材料の自己治癒挙動について検討した。試験結果を図7に示す。図7に示す通り、ポップインき裂の発生により、最大強度およびそれまでの剛性は低下した。一方、同様のポップインき裂を導入した試験片を大気中での熱処理(1300℃、1h)を施すことで、強度が損傷導入前と同等の値まで回復した。これは、自己治癒機能と同様に治癒発現物質である炭化ケイ素の高温酸化がポップインき裂内の分枝き裂すなわち母材/繊維間の剥離を再結合したことを表した結果である。
(実施例4)
市販の二元系アルミニウム合金粉末からSiCに代わる、界面層の構成材料として有効な治癒発現物質の選抜試験を行った。図8に、選抜した二元系アルミニウム合金の治癒発現物質として最も重要な特性である高温酸化挙動を示す。ここで、横軸は各試料を乾燥空気中において一定の昇温速度で加熱した際に急激な酸化反応を示した温度の逆数を示している。図8に示す通り、選抜したアルミニウム合金は既存の治癒発現物質であるSiCに比べ、低温度域で酸化活性を示した。特に、ビーズミルにてφ1.5μmまで微細化したNbAl3−15%Nb2Al粉末は、約550℃に酸化活性温度を有した。実際にこの粉末をアルミナ中に分散し焼結体を作製すると、表面長さ100μmの表面き裂を500℃で自己治癒可能であった。

Claims (5)

  1. セラミックス母材と、
    前記セラミックス母材中に含まれたセラミックス繊維部材と、
    前記セラミックス繊維部材表面を覆うように設けられた自己治癒性を有する界面層と、
    を備え
    前記界面層が、TiAl、又は、Nb−Al系合金で形成されているセラミックス複合材料。
  2. セラミックス母材と、
    前記セラミックス母材中に含まれたセラミックス繊維部材と、
    前記セラミックス繊維部材表面を覆うように設けられた自己治癒性を有する界面層と、
    を備え、
    前記セラミックス繊維部材は、複数のセラミックス繊維と、前記複数のセラミックス繊維のそれぞれの外側に設けられた前記セラミックス繊維のセラミックスと同じセラミックスとを有し、
    前記界面層が、SiCで形成されているセラミックス複合材料。
  3. 前記セラミックス母材がAl23で形成されている請求項1又は2に記載のセラミックス複合材料。
  4. 前記セラミックス繊維部材がAl23で形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス複合材料。
  5. 前記セラミックス繊維部材の複合率が41〜79%である請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス複合材料。
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