JP5761131B2 - 蛍光プローブ - Google Patents
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Description
本発明が解決しようとする他の課題は、発光効率が高く、あるいは、複数の生体物質を効率よく検出可能な蛍光プローブを提供することにある。
単層又は多層のグラフェンナノシートからなり、シートの端部にアームチェア型端面部を含むシート部と、前記アームチェア型端面部と1辺のみを共有して結合している末端6員環とを備えたグラフェン構造体と、
ペプチド結合(−CO−NH−)を介して前記シート部及び/又は前記末端6員環に結合している標的指向性リガンドと
を備え、
前記グラフェン構造体は、尿素又はアンモニアを分散させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させ、前記水溶液を60℃以上で加熱することにより得られたものからなることを要旨とする。
(1)従来の有機色素や蛍光蛋白質に比べて光退色しにくいため、一分子蛍光測定や長時間の蛍光測定が可能である。
(2)発光波長の異なる複数のグラフェン構造体を用いたときには、単一波長励起により多色発光を示すため、複数の組織や細胞の同時検出が可能である。
[1. 蛍光プローブ]
本発明に係る蛍光プローブは、
単層又は多層のグラフェンナノシートからなり、シートの端部にアームチェア型端面部を含むシート部と、前記アームチェア型端面部と1辺のみを共有して結合している末端6員環とを備えたグラフェン構造体と、
ペプチド結合(−CO−NH−)を介して前記シート部及び/又は前記末端6員環に結合している標的指向性リガンドと
を備えている。
本発明において、「グラフェン構造体」とは、シート部と、末端6員環とを備えているものをいう。グラフェン構造体は、さらに窒素(特に、窒素含有官能基)を備えているもの(窒素含有グラフェン構造体)であっても良い。
[A. シート部]
本発明において「シート部」とは、単層又は多層のグラフェンナノシートからなり、シートの端部にアームチェア型端面部(図1(a)参照)を含むものをいう。シート部の端部は、アームチェア型端面部のみからなるものが望ましいが、一部にジグザグ型端面部(図1(b)参照)を含んでいても良い。
また、本発明において「シート部」というときは、グラフェンナノシートを構成する6員環の内、1辺を介してアームチェア型端面部に結合している末端6員環(図1(a)中、点線で表示)は含まれない。
シート部は、単層のグラフェンナノシートからなるものでも良く、あるいは、多層のグラフェンナノシートからなるものでも良い。
発光(PL)特性を示すためには、グラフェンナノシートは、sp3型の混成軌道をもつ炭素からなる絶縁性のマトリックス(sp3マトリックス)中に、sp2型の混成軌道をもつ炭素からなる微細なクラスター(sp2クラスター)が埋め込まれた構造を備えている必要があると考えられている。すなわち、PL特性を示すグラフェンナノシートにおいて、sp2クラスターは、発光中心として機能すると考えられている。
本発明において、「窒素が導入されている」とは、
(1)グラフェンナノシートを構成する炭素の一部が窒素で置換されていること、
(2)グラフェンナノシートのエッジ(末端6員環と共有している辺上の原子を含む)及び/又は基底面に窒素含有官能基が結合していること、又は、
(3)グラフェンナノシートの表面又はシート間に窒素含有化合物が吸着していること、
をいう。
グラフェンナノシートに導入された窒素は、置換、結合又は吸着のいずれか1種の形態で存在していても良く、あるいは、2種以上の形態で存在していても良い。
窒素含有官能基及び窒素含有化合物については、後述する。
本発明において「末端6員環」とは、シート部のアームチェア型端面部と1辺のみを共有して結合している炭素6員環をいう。
図1(a)に、アームチェア型端面部に結合している末端6員環を示す。図1(a)中、シート部は実線で表され、末端6員環は破線で表されている。高い発光特性を得るためには、1個のシート部に含まれる末端6員環の数は、多いほど良い。
上述したように、グラフェン構造体は、さらに窒素を含むもの(窒素含有グラフェン構造体)であっても良い。この場合、窒素は、窒素含有官能基がグラフェン構造体を構成する炭素原子(すなわち、シート部及び/又は末端6員環を構成する炭素原子)に結合する形態で含まれているのが好ましい。
すなわち、本発明において、窒素含有グラフェン構造体は、
(a)末端6員環を構成する炭素原子の内、アームチェア型端面部と結合していない炭素原子、及び、
(b)シート部を構成する炭素原子(末端6員環と共有している辺上の炭素原子を含む)
から選ばれるいずれか1以上の炭素原子に結合している窒素含有官能基を備えているものが好ましい。
末端6員環又はシート部は、これらのいずれか1種の窒素含有官能基が結合しているものでも良く、あるいは、2種以上が結合しているものでも良い。また、末端6員環に窒素含有官能基が結合している場合、末端6員環の一部に窒素含有官能基が結合していても良く、あるいは、すべての末端6員環に窒素含有官能基が結合していても良い。
アミン型官能基としては、例えば、アミノ基(−NH2)、アミド基(−CONH2)、アセトアミド基(−CH3CONH2)、ホルムアミド基(−HCONH2)、メチルアミン基(−CH3NH2)などがある。
グラフェン構造体に含まれる窒素含有量は、発光効率及び発光波長に影響を与える。一般に、窒素含有量が多くなるほど、発光波長の変化量が大きくなる。このような効果を得るためには、窒素含有量は、0.5wt%以上が好ましい。窒素含有量は、さらに好ましくは1wt%以上、さらに好ましくは2wt%以上、さらに好ましくは5wt%以上である。
一方、窒素含有量が多くなりすぎると、電子状態が大幅に変化し、PL特性が得られない。従って、窒素含有量は、50wt%以下が好ましい。窒素含有量は、さらに好ましくは40wt%以下、さらに好ましくは30wt%以下、さらに好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは10wt%以下である。
グラフェン構造体の平均質量は、発光効率及び発光波長に影響を与える。
ここで、「平均質量」とは、質量スペクトルを測定することにより得られる単位電荷当たりのグラフェン構造体の質量の平均値をいう。平均質量とグラフェン構造体のサイズには相関があり、平均質量が小さくなるほど、グラフェン構造体のサイズが小さくなることを表す。
一般に、グラフェン構造体のサイズが小さくなるほど、量子サイズ効果により、発光波長は短くなる。可視光領域で発光させるためには、グラフェン構造体の平均質量は、500m/z以上が好ましい。平均質量は、さらに好ましくは、1000m/z以上である。
一方、グラフェン構造体のサイズが大きくなりすぎると、可視光領域で発光しなかったり、あるいは、発光中心からの蛍光がシートに再吸収される、いわゆる「消光」が起こるため、発光効率が低下する。従って、グラフェン構造体の平均質量は、50000m/z以下が好ましい。
グラフェン構造体の厚さ(すなわち、シート部の積層数)は、発光効率及び発光波長に影響を与える。
シート部が単層であっても、蛍光体として機能する。単層のグラフェンナノシートの厚さは、約0.3nmである。すなわち、グラフェン構造体の平均厚さは、0.3nm以上であれば良い。
しかしながら、グラフェン構造体の厚さが厚くなりすぎると、電子構造がバルクに近づくため、効率的な発光が得られない。従って、グラフェン構造体の平均厚さは、50nm以下が好ましい。平均厚さは、さらに好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、10nm以下である。
厚さの測定方法としては、
(1)原子間力顕微鏡(AFM)を用いてシートの厚さを直接測定する方法、
(2)透過電子顕微鏡(TEM)写真や電子線回折像から求められるシート1層分の厚みを考慮して厚さを求める方法、
などがある。いずれの方法を用いても、ほぼ同等の結果が得られる。
グラフェン構造体は、蛍光プローブの発光部を構成する。本発明に係る蛍光プローブは、1%以上の発光効率を示す。平均厚さ(シート部の層数)、平均サイズ、窒素含有量などを最適化すると、発光効率は、さらに増大する。具体的には、これらを最適化することによって、蛍光プローブの発光効率は、7%以上、10%以上、15%以上、あるいは、20%以上となる。
ここで、「発光効率」とは、吸収された光子数に対する蛍光として発光される光子数の割合をいう。
本発明において、「標的指向性分子」とは、特定の組織又は細胞に対するターゲッティング機能を有する分子であって、末端にカルボキシル基(−COOH)(若しくは、活性エステル基(−COOR))及び/又はアミノ基(−NH2)を有するものをいう。
本発明において、「標的指向性リガンド」とは、標的指向性分子から、グラフェン構造体とのペプチド結合(−CO−NH−)の形成に用いられるカルボキシル基(若しくは、活性エステル基)又はアミノ基を除いた部分(化学結合後に残る標的指向性分子の残基)をいう。
(2)標的が糖鎖の場合、標的指向性分子としては、糖鎖と結合性を有するタンパク質(例えば、レクチン)などがある。
(3)その他の標的指向性分子としては、例えば、細胞膜親和性物質、ウィルス細胞認識部位、親油性トレーサー、複製機能のないウィルス粒子、細胞小器官親和性物質(例えば、DNA、ミトコンドリア、細胞骨格分子、ゴルジ体、リソソーム、エンドソーム、オートファゴソームなど)などがある。
本発明に係る蛍光プローブは、1種又は2種以上の標的指向性リガンドを備えている。そのため、これを生体内に投与することによって、特定の疾患組織や細胞に蛍光プローブを蓄積させることができる。また、蛍光プローブを生体に投与した後、生体に光エネルギーを照射すると、蛍光プローブの蓄積部位を蛍光発光させることができる。そのため、疾患部位の位置を検出したり、蛍光強度によってその疾患程度を知ることができる。
本発明に係る蛍光プローブは、種々の方法により製造することができる。蛍光プローブの製造方法としては、具体的には、以下のような方法がある。
なお、以下の説明においては、便宜上、標的指向性分子で修飾する前のグラフェン構造体を「グラフェン構造体(B)」、標的指向性分子で修飾した後のグラフェン構造体を「グラフェン構造体(A)」ともいう。
この場合、グラフェン構造体(B)は、アミン型官能基以外の窒素含有官能基、カルボキシル基、活性エステル基(−COOR)などをさらに備えていても良い。
ここで、「活性エステル基」とは、カルボン酸から誘導される基のなかで高活性なものをいう。
この場合、グラフェン構造体(B)は、必ずしも標的指向性分子を修飾するためのアミン型官能基を備えている必要はないが、アミン型官能基、アミン型官能基以外の窒素含有官能基などをさらに備えていても良い。
シート部と末端6員環とを備えたグラフェン構造体(B)は、
窒素含有化合物を溶解させた水溶液に酸化グラファイト又はグラフェン酸化物を分散させ(分散工程)、
前記水溶液を60℃以上で加熱する(加熱工程)
ことにより製造することができる。
[A. 窒素含有化合物]
「窒素含有化合物」とは、窒素を構成元素として含む化合物であって、水に溶解又は分散可能なものをいう。なお、本発明において、「窒素含有化合物」というときは、上述した標的指向性分子は除かれる。
窒素含有化合物としては、例えば、
(1)尿素、アンモニア、チオ尿素、ヒドラジン、硝酸エステル、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン、ピリジンN−オキシド、N−ヒドロキシルアルキレンイミン、アジ化ナトリウム、ナトリウムアミド、カルボン酸アジド、
(2)メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミンなどのアルキルアミンやそのハロゲン酸塩、
(3)エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビスアミンなどのジアミン類、
などがある。
アミン型官能基を生成可能な窒素含有化合物としては、例えば、尿素、アンモニア、ヒドラジン、エチレンジアミン、ブトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、エタンブトール、フェニレンジアミンなどがある。
出発原料には、いずれか1種の窒素含有化合物を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
「酸化グラファイト」とは、グラファイトを構成するグラフェン層のエッジ及び/又は基底面上に酸素含有官能基(例えば、−COOH基、−OH基、−C−O−C−基など)が結合しているものをいう。酸化グラファイトは、例えば、強酸(濃硫酸)中で酸化剤(過マンガン酸カリウム、硝酸カリウムなど)を用いてグラファイトを酸化させることにより得られる。原料として使用するグラファイトは、ラマンスペクトルにおいてD/G面積比が0.10以上であるものが好ましい。
「グラフェン酸化物」とは、酸化グラファイトの層間を剥離させることにより得られるシート状物質をいう。グラフェン酸化物は、例えば、酸化グラファイトを水溶液中に分散させ、超音波を照射することにより得られる。
本発明において、出発原料には、層間剥離を行う前の酸化グラファイト又は層間剥離させたグラフェン酸化物のいずれか一方を用いても良く、あるいは、双方を用いても良い。
窒素含有化合物を分散させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させた後、水溶液を加熱する。加熱は、反応速度を速くするために行う。加熱温度が水溶液の沸点を超える場合、加熱は、密閉容器内で行う。
加熱温度が低すぎると、現実的な時間内に反応が十分進行しない。従って、加熱温度は、60℃以上である必要がある。加熱温度は、さらに好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上である。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、置換や結合した窒素が脱離するおそれがある。また、高価な耐圧容器が必要となり、製造コストが増大する。従って、加熱温度は、200℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、180℃以下、さらに好ましくは、160℃以下である。
加熱条件を最適化すると、グラフェン構造体(B)の窒素含有量、平均厚さ、及び、平均サイズを制御できる。一般に、加熱温度が高くなるほど、及び/又は、加熱時間が長くなるほど、窒素含有量が減少し、平均厚さが薄くなり、あるいは、平均サイズが小さくなる。
得られたグラフェン構造体(B)は、そのまま次工程に供しても良く、あるいは、必要に応じて、洗浄、ろ過及び/又は透析を行っても良い。
窒素含有化合物として、アミン型官能基を生成可能な化合物を用いると、アミン型官能基を備えたグラフェン構造体(B)を製造することができる。
一方、末端に−COOHを有するグラフェン構造体(B)は、例えば、上述した方法を用いて、シート部及び末端6員環を備えたグラフェン構造体(B)を製造した後、
(a)濃硫酸や濃硝酸などの酸化剤を用いて、グラフェン構造体(B)を酸化処理する方法、
(b)グラフェン構造体(B)をUV/オゾン処理する方法
などにより製造することができる。
(a)末端に−COOHを有するグラフェン構造体(B)と、後述する脱水縮合添加剤とを反応させる方法、
(b)アルコールとのエステル交換反応やアシル化反応を利用する方法
などにより製造することができる。
標的指向性分子の−COOHを−COORに変換する場合も同様である。
−NH2又は−COOH(−COOR)を有するグラフェン構造体(B)を製造し、これと標的指向性分子とを適当な溶媒中に溶解又は分散させる。次いで、混合溶液を所定の温度で所定時間保持すると、グラフェン構造体(B)の−NH2又は−COOH(−COOR)と標的指向性分子の−COOH(−COOR)又は−NH2とが縮合反応する。その結果、両者がペプチド結合(−CO−NH−)を介して結合する。この場合、縮合剤共存下で両者を反応させると、ペプチド結合の形成が容易化する。
(1)塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド系縮合剤、
(2)4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリン塩酸塩などのトリアジン系縮合剤、
(3)アルミニウム系縮合剤、
(4)ホスニウム系縮合剤、
(5)ジヒドロキノン系縮合剤
などがある。
また、これらの反応において、N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾールなどの脱水縮合添加剤を用いても良い。
図2(b)に、グラフェン構造体(B)に導入されたカルボキシル基(−COOH)と標的指向性分子のアミノ基(−NH2)とを縮合反応させることにより得られる蛍光プローブ(すなわち、標的指向性リガンドとグラフェン構造体(A)との間にペプチド結合(−CO−NH−)が形成された蛍光プローブ)の概念図を示す。
図2(a)に示す蛍光プローブは、Y字型の標的指向性リガンドと、コイル型の標的指向性リガンドを備えている。2種類の標的指向性リガンドを備えた蛍光プローブは、2種類の組織又は細胞の同時検出が可能となる。
一方、図2(b)に示す傾向プローブは、Y字型の標的指向性リガンドのみを備えている。1種類の標的指向性リガンドを備えた蛍光プローブは、特定の組織又は細胞の位置を検出することができる。
本発明に係る蛍光プローブを生体内に投与した場合、標的指向性リガンドが標的とする疾患組織、細胞に結合し、蛍光プローブが疾患組織等に蓄積される。蓄積された蛍光プローブにレーザー光等の光エネルギーを照射すると、グラフェン構造体(A)が励起されて蛍光発光する。発光した蛍光は、例えば蛍光顕微鏡を用いてイメージングすることができる。これにより疾患部位の位置を検出することができるとともに、蛍光強度によってその疾患程度も知ることができる。また、発光波長の異なるグラフェン構造体(A)を用いると、複数の疾患組織や細胞を同時に検出することができる。
[1. 蛍光プローブの作製]
[1.1. グラフェン構造体(B)の作製]
0.1gの酸化グラファイトを0.2mol/Lの尿素溶液:5mLに分散させた。得られた水溶液を密閉容器中、90℃×10時間で加熱した。加熱後、十分に洗浄を行い、グラフェン構造体(B)を濃縮分離した。
1mg/mLまで濃縮したグラフェン構造体(B)の水分散液:1mLに、10mMの塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(縮合剤):0.1mL加えた。さらに、10mMのN−ヒドロこはく酸イミド(脱水縮合添加剤):0.4mL加え、混合攪拌した。攪拌後、混合液を遠心分離し、蒸留水:1mLで希釈した。
希釈した混合水溶液に、リン酸緩衝生理食塩水に100μMの濃度で希釈されたポリエチレングリコールアミン(グラフェン構造体(A)の生体適合性を向上させるための添加剤)とトランスフェリン(標的指向性分子)とを、それぞれ0.1mL加えて攪拌した。
[2.1. 質量分析、窒素含有量、発光効率]
グラフェン構造体(B)について、飛行時間型質量分析計を用いた質量分析、X線光電子分光計を用いた窒素含有量の測定、及び、分光蛍光光度計を用いた発光効率の測定を行った。
[2.2. 細胞観察]
ヒト肺胞上皮がん細胞(A549cell)を培養した培地に、蛍光プローブ:0.1mg/mLを添加し、37℃で4時間培養した。培養後、余分な培地を洗い流し、ヒト肺胞上皮がん細胞を蛍光プローブで染色した。細胞観察には、蛍光顕微鏡を使用した。
[3.1. 質量分析、窒素含有量、発光効率]
図3に、実施例1で得られたグラフェン構造体(B)の質量スペクトルを示す。図3より、平均質量1483m/zのグラフェン構造体(B)が生成していることがわかる。スペクトルは質量数74の繰り返しの規則的なパターンであり、グラフェン構造体(B)のアームチェア型端面部に辺を共有して炭素6員環が結合していることを示している。また、グラフェン構造体(B)の窒素含有量は、約14wt%であり、発光効率は、約20%であった。
図4に、蛍光プローブで染色した細胞の写真を示す。図4中の左写真(A)中、赤色は本発明の蛍光プローブからの蛍光を示している。右写真(B)は、明視野像を示し、ヒト肺胞上皮がん細胞を示している。これによれば、ヒト肺胞上皮がん細胞が赤いマーカーと重なることから、本発明の蛍光プローブは、ヒト肺胞上皮がん細胞内に取り込まれており、蛍光プローブとして機能していることがわかった。
Claims (5)
- 単層又は多層のグラフェンナノシートからなり、シートの端部にアームチェア型端面部を含むシート部と、前記アームチェア型端面部と1辺のみを共有して結合している末端6員環とを備えたグラフェン構造体と、
ペプチド結合(−CO−NH−)を介して前記シート部及び/又は前記末端6員環に結合している標的指向性リガンドと、
を備え、
前記グラフェン構造体は、尿素又はアンモニアを分散させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させ、前記水溶液を60℃以上で加熱することにより得られたものからなる蛍光プローブ。 - 前記シート部及び/又は前記末端6員環を構成する炭素原子に結合している窒素含有官能基を備えている請求項1に記載の蛍光プローブ。
- 前記窒素含有官能基は、末端に一級アミン(−NH2)を有する官能基を含む請求項2に記載の蛍光プローブ。
- 前記標的指向性リガンドは、前記シート部及び/又は前記末端6員環の末端に備えられる−NH2又は−COOH若しくは、−COORの全部又は一部と、標的指向性分子に備えられる−COOH若しくは、−COOR又は−NH2とを縮合反応させることにより得られ、
前記標的指向性分子は、抗体又はその親和性物質、細胞膜親和性物質、ウィルス細胞認識部位、親油性トレーサー、複製機能のないウィルス粒子、細胞小器官親和性物質、葉酸、トランスフェリン、トランスフェリン結合型ペプチド、及び、糖鎖と結合性を有するタンパク質からなる群から選ばれるいずれか1以上の分子からなる請求項1から3までのいずれか1項に記載の蛍光プローブ。 - 前記蛍光プローブを生体内に投与することによって特定の疾患組織や細胞に蓄積させ、かつ、光エネルギーの照射によって蓄積部位を蛍光発光させるために用いられる請求項1から4までのいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
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