JP5744928B2 - ペースト様骨セメント - Google Patents

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Description

本発明は、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠陥の被覆のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術(femuroplasty)のための、椎体形成術のための、椎骨形成術のための、スペーサの製造のための、または局所的な抗生物質療法のための担体材料の製造のためのペースト、開始剤系、重合性組成物、および成形体を製造するためのキットならびにそのキットの使用に関する。
従来のポリメタクリル酸メチル骨セメント(PMMA骨セメント)は数十年にわたって知られており、Charnley卿の基礎研究(非特許文献1)を基礎としている。そのPMMA骨セメントの基本構造は、そのとき以来同じのままである。PMMA骨セメントは、液体モノマー成分および粉末成分からなる。このモノマー成分は、一般に、(i)モノマーであるメタクリル酸メチル、および(ii)このモノマーに溶解された活性化剤(例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン)を含有する。上記粉末成分は、(i)メタクリル酸メチルおよびコモノマー(スチレン、メタクリル酸エステルまたは類似のモノマー等)に基づいて、重合、好ましくは懸濁重合により製造される1以上のポリマー、(ii)放射線不透過性物質、および(iii)開始剤(例えばジベンゾイルパーオキシド)を含む。この粉末成分が上記モノマー成分と混合されると、メタクリル酸メチルの中でのこの粉末成分のポリマーの膨潤に起因して、塑性変形できる生地が製造される。同時に、活性化剤であるN,N−ジメチル−p−トルイジンはこのジベンゾイルパーオキシドと反応し、このジベンゾイルパーオキシドは、このプロセスで、ラジカルの形成を伴って分解する。形成されたラジカルはメタクリル酸メチルのラジカル重合を開始する。このメタクリル酸メチルの重合の進行に伴って、当該セメント生地の粘度は、このセメント生地が固化しそして硬化するまで、上昇する。
医療関係の使用者にとってのこれまでのPMMA骨セメントの著しい不都合は、使用者は、その液体モノマー成分を、そのセメントの施用の直前に混合システムの中またはるつぼの中で粉末成分と混合しなければならないということにある。このプロセスにおいて、混合のエラーが容易に起こる可能性があり、これが起こるとそのセメントの品質に悪影響を及ぼしかねない。さらに、これらの成分は迅速に混合される必要がある。この場合、セメント粉末全体が集塊の形成なしに当該モノマー成分と混合されること、およびその混合プロセスのあいだに気泡の入り込みが回避されることが重要である。真空混合システムを用いると、手による混合とは対照的に、セメント生地の中での気泡の形成はほぼ防止される。混合システムの例は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている。しかしながら、真空混合システムは付加的な真空ポンプが必要となり、それゆえ相対的に費用がかかる。さらには、そのモノマー成分を粉末成分と混合した後、関与するセメントの種類によっては、そのセメント生地がタックフリー(不粘着性)であり施用することができるようになるまで、ある程度の待ち時間が必要とされる。従来のPMMA骨セメントの混合の際に非常に様々なエラーが起こりうるため、この目的のために適切に訓練された人材も必要とされる。この対応する訓練には、かなりのコストが伴う。さらには、上記液体モノマー成分と上記粉末成分との混合は、モノマー蒸気、および粉末状セメントから放出される粒子に使用者が曝露されることにつながる。
ペースト様ポリメタクリル酸メチル骨セメントが、従来の粉末−液体ポリメタクリル酸メチル骨セメントに代わるものとして、未審査の独国特許出願、特許文献4、特許文献5、および特許文献6に記載されている。この骨セメントは、保存のあいだ安定である予め混合されたペーストの形態で使用者に提供される。このペーストは、各々、1種のラジカル重合用メタクリレートモノマー、このメタクリレートポリマーに可溶性である1種のポリマー、およびこのメタクリレートモノマーに不溶性である1種の微粒子ポリマーを含有する(両方のペーストが不溶性の微粒子ポリマーを含有するので、この種の系は「対称的」と呼ばれる)。加えて、上記ペーストのうちの1つはラジカル重合開始剤を含有し、一方で、他方のペーストは重合活性化剤を含む。選択された組成物の結果として、上記ペーストから製造される骨セメントは、骨セメントが十分に硬化するまで出血からの圧力に耐えるために、十分に高い粘度および凝集を有する。これら2つのペーストが混合されるとき、重合開始剤は促進剤と反応して、メタクリレートモノマーのラジカル重合を開始するラジカルを形成する。
粉末成分およびモノマー液体から構成される従来のPMMA骨セメントと使用されるとき、ジベンゾイルペルオキシドおよびN,N−ジメチル−p−トルイジンの開始剤系は、その価値を一般に証明した(非特許文献2)。これに関して、ジベンゾイルペルオキシドは、当該セメント粉末の中に固体として存在し、N,N−ジメチル−p−トルイジンは、モノマー成分に溶解している。しかしながら、ジベンゾイルペルオキシド/N,N−ジメチル−p−トルイジン開始剤系を使用したセメントペーストを用いた本発明者らの実験は、N,N−ジメチル−p−トルイジンを含有するペーストは、自発的に重合する顕著な傾向を有するということを明らかにした。さらに、促進剤であるN,N−ジメチル−p−トルイジンは、従来の粉末/液体ポリメタクリル酸メチル骨セメントに関してはその価値を証明したが、このN,N−ジメチル−p−トルイジンは、その毒物学的な特性に起因して、一部の批判の的であり続けている。
これらの酸化還元系とは別に、バルビツール酸塩の使用に基づく開始剤系も記載されている。 従って、特許文献5および特許文献6には、バルビツール酸誘導体のアルカリ土類塩、ハロゲン化物イオン供与体および銅化合物を含む開始剤系について記載されている。これに関して、バルビツール酸のアルカリ土類塩および塩基性銅塩がペースト中に含まれる。これらの2つの塩は、メタクリレートモノマー中で不溶性である。弱有機酸(2−エチルヘキサン酸等)は、第2のペースト中に存在する。加えて、塩化物イオン供与体も同様に当該ペースト中に存在し、塩化テトラアルキルアンモニウムは、特許文献6の教示に従い、好ましくは塩化物イオン供与体として使用される。
2つのペーストを混合すると、弱有機酸は、両方のバルビツール酸塩を可溶性の酸形態に、かつ、銅を可溶性の銅塩に、同時に変換する。この系の利点は、特に、他官能性モノマーを含むペーストの場合、他官能性モノマーが使用されると、より迅速な拡散およびイオン交換プロセスによって、さもなければ非常に短い処理時間(通常、秒オーダー)が増加することである。しかしながら、4級アンモニウム塩素塩が、時折、溶解した重金属イオンの存在下で自発的重合を引き起こし得ることは不利である。それゆえ、バルビツール酸、重金属イオン、および塩化物イオンに基づく開始剤系の開発が有利であることが示され、先行技術から公知のテトラアルキル塩化アンモニウムではなく、無機塩の形態である塩化物イオンが使用された。このタイプの開始剤系は、例えば、特許文献7に記載されている。塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムは、骨セメントに使用される通常の疎水性のモノマー(メタクリル酸メチル等)中に溶解しない。塩化リチウムは、ある程度はメタクリル酸メチル中に溶解する。しかしながら、微量の水の存在下で、基本的に再現性のない開始挙動の変化が生じ得る。
米国特許第4,015,945号明細書 欧州特許出願第0 674 888(A)号明細書 特開2003−181270号公報 独国特許出願公開第10 2007 052 116(A)号明細書 独国特許出願公開第10 2007 050 762(A)号明細書 独国特許出願公開第10 2007 050 763(A)号明細書 独国特許出願公開第10 2010 024 653(A)号明細書
Charnley.J.、「Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur」、J.Bone Joint Surg.、1960年、第42巻、28−30頁 K.−D.Kuehn、「Knochenzemente fuer die Endoprothetik: ein aktueller Vergleich der physikalischen und chemischen Eigenschaften handelsueblicher PMMA−Zemente」、Springer−Verlag、Berlin Heidelberg、New York、2001年
本発明は、少なくとも2つのペーストに基づく骨セメント系に関する先行技術の短所を克服するという目的に基づく。
本発明は、特に、2つのペーストに基づくキットを提供するという目的に基づく。これらのペーストは、互いに分離されている一方で、重合に対する想定し得る最も高い安定性を特徴とするものである(すなわち、可能な限り、自発的重合が生じる傾向が少ないことを示すものである)。
本発明はまた、2つのペーストおよび/または開始剤系に基づくキットを提供するという目的に基づく。当該キットにおいては、アルカリ塩化物およびアルカリ土類塩化物は、疎水性のメタクリレートモノマー中で、微量の水の存在下であっても、安全に溶解し得る。当該キットは、可能な限り再現性のある開始挙動によって特徴付けられるものである。
ペーストAおよびペーストBを含むキットが上記の目的に応える解決方法に寄与し、
(a)ペーストAは、
(a1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー;
(a2)重合開始剤としての少なくとも1つのバルビツール酸誘導体;
を含有し、
(b)ペーストBは、
(b1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー;および
(b2)重金属塩および重金属錯体からなる群から選択される、重合促進剤としての少なくとも1つの重金属化合物;
(b4)少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物;および
(b5)アルカリイオンまたはアルカリ土類イオン(b4)のための、少なくとも2つのエーテル基を含有する少なくとも1つの錯化剤;
を含有し、
ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、成分(a3)および/または(b3)として、それぞれ、(a1)および/または(b1)の中で不溶性の少なくとも1つの充填剤を含有する。
さらに、本発明は、ラジカル重合用モノマー(例えばメタクリル酸メチル)に可溶性であるバルビツール酸塩を含有する第1のペーストを使用するという発想に基づく。この第1のペーストが、ラジカル重合用モノマーに加えて、重金属化合物、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物、およびアルカリイオンまたはアルカリ土類イオンのための錯化剤を含有する第2のペーストと混合される際、この可溶性のバルビツール酸塩は、その酸度に起因して、好ましくは塩基性の重金属塩と反応する。驚くべきことに、これにより、好ましくはこのモノマーに可溶性である無機ハロゲン化物イオン供与体の存在下で、上記重合反応を開始することが可能になる、ということが見いだされた。この好ましくは塩基性の重金属塩に対するバルビツール酸塩の作用によって、明らかに、その重金属イオンは、バルビツール酸に対するその重金属イオンの作用を通してメタクリレートモノマーの重合を開始する可溶性の塩形態へと変換される。錯化剤(b5)をペーストB中で使用することにより、十分量のアルカリ/アルカリ土類ハロゲン化物(n4)をペーストBのラジカル重合用モノマー(b1)中にいつでも確実に溶解させることができ、これにより、開始挙動が再現性を有するようになる。
本発明によれば、キットは、少なくとも2つの成分から構成される系であると理解されるものとする。以下では2つの成分(すなわちペーストAおよびペーストB)への言及がなされるが、当該キットは、必要に応じて、2よりも多い成分、例えば3、4、5または5を超える成分を含有することも同様に可能である。個々の成分は、好ましくは、一方のキット成分の構成成分が別のキット成分の構成成分と接触しないように、互いとは別々に包装されて提供される。従って、例えば、それぞれのキット成分を互いに別々に包装し、レザバー容器の中で一緒に保存することが実行可能である。
ペーストAは、成分(a1)として、ラジカル重合用モノマーを含有し、好ましくは、このモノマーは、25℃の温度および1,013hPaの圧力で液体であるモノマーである。
好ましくは、ラジカル重合用モノマー(a1)はメタクリレートモノマー、特にメタクリル酸エステルである。好ましくは、メタクリル酸エステル(a1)は、一官能性のメタクリル酸エステルである。好ましくは、この物質は疎水性である。疎水性の一官能性のメタクリル酸エステル(a1)の使用により、水の吸収に起因して骨セメントの体積がのちに拡大すること、従って骨を損傷することが、防止されるようになる。好ましい実施形態によれば、一官能性のメタクリル酸エステルが、エステル基とは別にさらなる極性基を含有しない場合に、この一官能性のメタクリル酸エステルは疎水性である。この一官能性の疎水性メタクリル酸エステルは、好ましくは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基またはホスホネート基を含まない。
当該エステルは、好ましくは、アルキルエステルである。本発明によれば、シクロアルキルエステルも、アルキルエステルに包含される。好ましい実施形態によれば、このアルキルエステルは、メタクリル酸と、1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルコールとのエステルである。このアルコールは、置換されていてもよいしまたは非置換であってもよいが、好ましくは非置換である。さらに、このアルコールは、飽和であってもよいし、または不飽和であってもよいが、好ましくは飽和である。
特に好ましい実施形態によれば、ラジカル重合用モノマー(a1)は、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステルまたはこれら2つのモノマーの混合物である。
さらなる好ましい実施形態によれば、ラジカル重合用モノマー(a1)は、ビスフェノールA由来のメタクリル酸エステルではない。
本発明に従って使用されるラジカル重合用モノマー(a1)は、好ましくは1,000g/mol未満のモル質量を有する。これは、モノマーの混合物の成分であるラジカル重合用モノマーも含み、この場合、そのモノマーの混合物のラジカル重合用モノマーのうちの少なくとも1つは、1,000g/mol未満のモル質量をもつ明確な構造を有する。
ラジカル重合用モノマー(a1)は、好ましくは、ラジカル重合用モノマー(a1)の水溶液が、5〜9の範囲、好ましくは5.5〜8.5の範囲、さらにより好ましくは6〜8の範囲、特に好ましくは6.5〜7.5の範囲のpHを有するということを特徴とする。
ペーストAは、好ましくは、いずれもペーストAの総質量に対して、15〜85質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらにより好ましくは25〜60質量%、特に好ましくは25〜50質量%の、少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)を含有する。
さらに、ペーストAは、成分(a2)として、重合開始剤としての少なくとも1つのバルビツール酸誘導体を含有し、この場合、このバルビツール酸誘導体は、好ましくは、1−一置換バルビツール酸塩、5−一置換バルビツール酸塩、1,5−二置換バルビツール酸塩、1,3,5−三置換バルビツール酸塩、および1,3,5−四置換バルビツール酸塩からなる群から選択される。これらのうち、血液脳関門をまったく通過できないか、またはせいぜい薬理学的にわずかな量しか通過しないものが好ましい。従って、1−一置換バルビツール酸、5−一置換バルビツール酸、1,5−二置換バルビツール酸、および1,3,5−三置換バルビツール酸が本発明において特に好ましいバルビツール酸誘導体である。1,5−二置換バルビツール酸および1,3,5−四置換バルビツール酸が最も好ましい。
好ましい実施形態によれば、バルビツール酸誘導体(a2)は、ラジカル重合用モノマー(a1)に可溶性である。バルビツール酸誘導体(a2)は、少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも3g/l、さらにより好ましくは少なくとも5g/l、特に好ましくは少なくとも10g/lのバルビツール酸誘導体(a2)が、25℃の温度でラジカル重合用モノマー(a1)に溶解するならば、ラジカル重合用モノマー(a1)に可溶性である。
好ましい実施形態によれば、バルビツール酸誘導体(a2)は、重合性モノマー(a1)中で可溶性である。バルビツール酸誘導体(a2)は、少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも3g/l、さらにより好ましくは少なくとも5g/l、および特に好ましくは少なくとも10g/lのバルビツール酸誘導体(a3)が重合性モノマー(a1)中に25℃の温度で溶解する場合は、重合性モノマー(a1)中で可溶性である。
バルビツール酸上の置換基の種類に関しては、限定はない。この置換基は、例えば、脂肪族置換基または芳香族置換基であることができる。これに関して、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリール置換基が好ましい場合がある。この置換基は、ヘテロ原子をも含むことができる。特に、置換基はチオール置換基であることができる。従って、1,5−二置換チオバルビツール酸塩または1,3,5−三置換チオバルビツール酸塩が好ましい場合がある。
好ましい実施形態によれば、この置換基は、各々、1〜10個の炭素原子の長さ、より好ましくは1〜8個の炭素原子の長さ、特に好ましくは2〜7個の炭素原子の範囲の長さを有する。
1位および5位に各々1つの置換基を有するバルビツール酸塩、1位、3位、および5位に各々1つの置換基を有するバルビツール酸塩、または1位および3位に各々1つの置換基と5位に2つの置換基とを有するバルビツール酸塩が、本発明によれば好ましい。
特に好ましい実施形態によれば、バルビツール酸誘導体(a2)は、1−シクロヘキシル−5−エチル−バルビツール酸、1−フェニル−5−エチル−バルビツール酸、および1,3,5−トリメチル−バルビツール酸からなる群から選択される。
好ましくは、ペーストAは、いずれもペーストAの総質量に対して、0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜8質量%の範囲、さらにより好ましくは1〜5質量%の範囲の量の少なくとも1つのバルビツール酸誘導体(a2)を含有する。
ペーストBも、成分(b1)として、ラジカル重合用モノマーを含有し、これは、好ましくは25℃の温度および1,013hPaの圧力で液体であるモノマーである。キットの中に含有されるラジカル重合用モノマー(b1)は、ラジカル重合用モノマー(a1)と同一であってもよいし、またはラジカル重合用モノマー(a1)とは異なってもよく、ラジカル重合用モノマー(a1)およびラジカル重合用モノマー(b1)が同一であることが好ましい。
ラジカル重合用モノマー(b1)は、好ましくは、メタクリレートモノマー、特にメタクリル酸エステルである。好ましくは、メタクリル酸エステル(b1)は一官能性のメタクリル酸エステルである。好ましくは、この物質は疎水性である。疎水性の一官能性のメタクリル酸エステル(b1)の使用により、水の吸収に起因して骨セメントの体積がのちに拡大すること、従って骨を損傷することが、防止されるようになる。好ましい実施形態によれば、一官能性のメタクリル酸エステルが、エステル基とは別にさらなる極性基を含有しない場合に、この一官能性のメタクリル酸エステルは疎水性である。この一官能性の疎水性メタクリル酸エステルは、好ましくは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基またはホスホネート基を含まない。
当該エステルは、好ましくは、アルキルエステルである。本発明によれば、シクロアルキルエステルも、アルキルエステルに包含される。好ましい実施形態によれば、このアルキルエステルは、メタクリル酸と、1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルコールとのエステルである。このアルコールは、置換されていてもよいしまたは非置換であってもよいが、好ましくは非置換である。さらに、このアルコールは、飽和であってもよいし、または不飽和であってもよいが、好ましくは飽和である。
特に好ましい実施形態によれば、ラジカル重合用モノマー(b1)は、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステルまたはこれら2つのモノマーの混合物である。
さらなる特に好ましい実施形態によれば、ラジカル重合用モノマー(b1)は、ビスフェノールA由来のメタクリル酸エステルではない。
本発明に従って使用されるラジカル重合用モノマー(b1)は、好ましくは1,000g/mol未満のモル質量を有する。これは、モノマーの混合物の成分であるラジカル重合用モノマーも含み、この場合、そのモノマーの混合物のラジカル重合用モノマーのうちの少なくとも1つは、1,000g/mol未満のモル質量をもつ明確な構造を有する。
ラジカル重合用モノマー(b1)は、ラジカル重合用モノマー(b1)の水溶液が、5〜9の範囲、好ましくは5.5〜8.5の範囲、さらにより好ましくは6〜8の範囲、特に好ましくは6.5〜7.5の範囲のpHを有するということを特徴とする。
ペーストBは、好ましくは、いずれもペーストBの総質量に対して、15〜85質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらにより好ましくは25〜60質量%、特に好ましくは25〜50質量%の、少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(b1)を含有する。
さらに、ペーストBは、成分(b2)として、重金属塩および重金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つの重金属化合物を重合促進剤として含有し、この場合、少なくとも1つの重金属化合物(b2)が、ラジカル重合用モノマー(b1)に難溶性、好ましくはさらには不溶性であることが、特に有利であることが判明した。重金属化合物(b2)は、1g/l未満、好ましくは0.1g/l未満、さらにより好ましくは0.01g/l未満、なおより好ましくは0.001g/l未満、さらになおより好ましくは0.0001g/l未満しか、25℃の温度でラジカル重合用モノマー(b1)に溶解しない、最も好ましくは有意な量の重金属化合物(b2)が25℃の温度でラジカル重合用モノマー(b1)に溶解しない(すなわち、重金属化合物(b2)がラジカル重合用モノマー(b1)に不溶性である)場合に、ラジカル重合用モノマー(b1)に難溶性または不溶性であると考えられる。
本発明によれば、重金属化合物は、20℃の温度で、少なくとも3.5g/cm、好ましくは少なくとも5g/cmの密度をもつ金属を意味すると理解されるものとする。
好ましい実施形態によれば、重金属化合物(b2)は、塩基性の重金属化合物である。塩基性の重金属化合物は、水に溶解または懸濁されたときに、少なくとも6.5、好ましくは少なくとも7、さらにより好ましくは少なくとも7.5のpHを有する重金属化合物を意味すると理解されるものとする。
特に好ましい実施形態によれば、重金属化合物(b2)は、酸化状態が変わり得る金属の化合物である。これに関して、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、マンガン(II)、マンガン(III)、コバルト(II)、およびコバルト(III)化合物が、本発明によれば好ましく、銅(II)化合物が特に好ましい。
本発明に係る重金属化合物が、ラジカル重合用モノマー(b1)に難溶性または不溶性である重金属化合物である場合、本発明に係る重金属化合物は、バルビツール酸誘導体(a2)の存在下で、ラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に可溶性である形に変換することができることが好ましい。
本発明によれば、重金属化合物(b2)は重金属塩または重金属錯体である。
重金属塩(b2)は、好ましくは、重金属のハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩またはカルボン酸塩である。銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、マンガン(II)、マンガン(III)、コバルト(II)、およびコバルト(III)の塩が好ましい重金属塩である。
さらに、ハロゲン化物塩は、(b1)中で不溶性の重金属化合物(b2)と考えることができる。このハロゲン化物塩は、好ましくは、重金属の塩化物および臭化物からなる群から選択され得る。特定の実施形態によれば、ハロゲン化物塩は、塩化マンガン(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化コバルト(II)、および塩化コバルト(III)からなる群から選択される化合物である。
特に好ましい実施形態によれば、重金属塩(b2)は、水酸化銅(II)、塩基性炭酸銅(II)またはこれらのうちの少なくとも2つの混合物、特に水酸化銅(II)および塩基性炭酸銅(II)の混合物からなる群から選択される。
好ましくは、ペーストBは、いずれもペーストBの総質量に対して、0.0005〜0.5質量%の範囲、より好ましくは0.001〜0.05質量%の範囲、特に好ましくは0.001〜0.01質量%の範囲の量の重金属化合物(b2)を含有する。
さらに、ペーストBは、成分(b4)として、少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物を含む。原則として、F、Cl、およびBrがハロゲン化物アニオンとして考えられ、Clが特に好ましい。特に好ましいアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、および塩化マグネシウムが挙げられ、塩化リチウムが塩化アルカリ(b4)として最も好ましい。
さらにまた、これに関して、ペーストBは、いずれもペーストBの総質量に対して、0.001〜7.5質量%の範囲の、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲の、さらにより好ましくは0.1〜2.5質量%の範囲の、および最も好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲の量の、少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)を含むことが好ましい。
ペーストBはまた、成分(b5)として、アルカリイオンまたはアルカリ土類イオン(b4)のための、少なくとも2つのエーテル基を含む少なくとも1つの錯化剤を含む。少なくとも1つの錯化剤(b5)は、好ましくは、ポダンド、コロナンド(=クラウンエーテル)、クリプタンドおよびこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
用語「ポダンド」とは、直鎖状もしくは分枝状の鎖中に供与体原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはリン原子等)を有する鎖状化合物を指す。これは、ポダンドが、カチオンのための予め形成された空洞を有さないことを意味する。カチオンとの錯体形成のみによって、これらは、カチオンの周囲に空洞を形成する。用語「コロナンド」とは、酸素原子を介して互いに連結されたエタン架橋を含む環状ポリエーテルを指す。ポダンドと異なり、コロナンドは、所定の寸法の予め形成された空洞を有する。これにより、コロナンドは、そのイオン半径に応じて、カチオンを選択的に錯体化する。対照的に、「クリプタンド」も、予め形成された空洞も有する二環式および多環式のポリエーテルである。
本発明に係る好ましい錯化剤(b5)は、ベンゾ−12−クラウン−4、シクロヘキシル−12−クラウン−4、2,3−ナフト−12−クラウン−4、6,6−ジベンジル−12−クラウン−4、6−ドデシル(14−クラウン−4)−6−エタノール−ジエチル−ホスフェート、ビス[(12−クラウン−4)−メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロネート、およびこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。上記錯化剤は、リチウムイオンの選択的な錯体の形成に特に適している。上記錯化剤の利点は、錯体化したクラウンエーテル構造が、12原子(一例では15原子)の環の大きさを有することである。それゆえ、身体に存在するアルカリイオン(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、およびアルカリ土類イオン(カルシウムイオン等)は錯体化できない。これにより、毒性効果の潜在的リスクが減少する。上記小コロナンドに加えて、18−クラウン−6の疎水性誘導体(ベンゾ−18−クラウン−6、シクロヘキシル−18−クラウン−6等)は、原理上好適である。他の好ましい錯化剤としては、N,N−ジヘプチル−N,N’,5,5−テトラメチル−3,7−ジオキサノンアミドまたは5−ブチル−5−エチル−N,N,−N’,N’−テトラシクロヘキシル−3,7−ジオキサアゼライン酸ジアミドが挙げられる。
さらに、ペーストB中のアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)と錯化剤(b5)とのモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1:1.5、さらにより好ましくは少なくとも1:1.8、およびさらにより好ましくは少なくとも1:2.0であることが本発明において好ましい。
さらに、ペーストBは、さらなる成分(b6)として水を含んでいてもよく、水(b6)とアルカリおよび/またはアルカリ土類ハロゲン化物(b5)とのモル比は、好ましくは少なくとも1:1であり、より好ましくは少なくとも2:1、さらにより好ましくは少なくとも3:1、さらにより好ましくは少なくとも4:1である。ペーストB中に水が存在していると、錯化剤(b5)によってアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)のカチオンの錯体化が促進され、錯体カチオンがラジカル重合用モノマー(b1)に輸送され得る。
本発明に係るキットは、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、成分(a3)または(b3)として、それぞれ、(a1)および/または(b1)に不溶性である少なくとも1つの充填剤を含有することを特徴とする。これらのペーストのうちの1つが不溶性の充填剤を含有し、他方のペーストが、不溶性の充填剤をまったく含有しないか、または他のペーストの中に存在する量と比べてごくわずかの量の不溶性の充填剤しか含有しない場合、このキットは「非対称的」と呼ばれる。対照的に、いわゆる「対称的」キットは、およそ同等量の不溶性の充填剤が両方のペーストの中に存在する。
充填剤(a3)(ペーストAの場合)および/または(b3)(ペーストBの場合)は、室温で固体物質であり、それぞれペーストAおよび/またはペーストBの中に含有される残りの構成成分から構成される混合物の粘度を増大させることができる。充填剤(a3)および/または(b3)は、生体適合性であるべきである。
好ましい実施形態によれば、充填剤(a3)および/または(b3)は、ポリマー、無機塩、無機酸化物、金属、および金属合金から選択される。
好ましくは、充填剤(a3)および/または(b3)は微粒子である。特に好ましい実施形態によれば、充填剤(a3)および/または(b3)は、10nm〜100μmの範囲、特に好ましくは100nm〜10μmの範囲の平均粒径を有する。本願明細書中では、この平均粒径は、その粒子の少なくとも90%に当てはまるサイズの範囲を意味すると理解されたい。
本発明の範囲では、用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を包含するものとする。
充填剤(a3)および/または(b3)として使用できるポリマーは、好ましくは、少なくとも150,000g/molの(質量による)平均モル質量を有するポリマーである。このモル質量の仕様は、粘度測定によって決定されるモル質量を指す。ポリマーは、例えば、メタクリル酸エステルのポリマーまたはコポリマーであることができる。特に好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つのポリマーは、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチルエステル(PMAE)、ポリメタクリル酸プロピルエステル(PMAP)、ポリメタクリル酸イソプロピルエステル、ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、およびポリ(スチレン−co−メタクリル酸メチル)からなる群から選択される。しかしながら、このポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブタジエンからなる群からも同様に選択することできる。さらに、このポリマーは、架橋されていてもよいし、または非架橋であってもよいが、架橋されているポリマーが好ましい。これに関して、架橋は、二官能性の化合物を介して行われる。この二官能性の化合物は、例えば、アルキレングリコールジメタクリレートからなる群から選択することができる。好適な架橋剤は、例えば、エチレングリコールジメタクリレートである。
充填剤(a3)および/または(b3)として使用することができる無機塩は、ラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に可溶性もしくは不溶性である塩であることができる。好ましくは、この無機塩は、元素の周期表の第2主族から選択される元素の塩である。好ましい実施形態によれば、この無機塩は、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの塩である。特に好ましい実施形態によれば、この無機塩は、硫酸カルシウム、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウムである。
充填剤(a3)および/または(b3)として使用することができる無機酸化物は、好ましくは、金属酸化物であることができる。好ましい実施形態によれば、この無機酸化物は遷移金属酸化物である。特に好ましい実施形態によれば、この無機酸化物は二酸化チタンまたは二酸化ジルコニウムである。
充填剤(a3)および/または(b3)として使用することができる金属は、例えば、遷移金属であることができる。好ましい実施形態によれば、この金属はタンタルまたはタングステンである。
充填剤(a3)および/または(b3)として使用することができる金属合金は、少なくとも2つの金属の合金である。好ましくは、この合金は少なくとも1つの遷移金属を含有する。特に好ましい実施形態によれば、この合金は少なくともタンタルまたはタングステンを含む。この合金は、タンタルおよびタングステンの合金であることもできる。
充填剤(a3)および/または(b3)は、それぞれラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に不溶性である。本発明によれば、充填剤(a3)および/または(b3)は、25℃の温度における、それぞれラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に対する充填剤(a3)および/または(b3)の溶解度が、50g/l未満、好ましくは25g/l未満、より好ましくは10g/l未満、さらにより好ましくは5g/l未満である場合、それぞれ少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に不溶性である。
(a1)および/または(b1)に不溶性である少なくとも1つのポリマーが、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、架橋ポリ(メタクリル酸メチル)、およびこれらの2つのポリマーの混合物からなる群から選択されることが、本発明によれば特に好ましい。
さらに、本発明によれば、ペーストA、ペーストB、またはペーストAおよびペーストB(ペーストAおよびペーストBが特に好ましい)は、それぞれ(a1)および/または(b1)に可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)を含有することができる。本発明によれば、当該可溶性ポリマー(a7)および/または(b7)は、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも25g/l、より好ましくは少なくとも50g/l、特に好ましくは少なくとも100g/lのこのポリマーが上記重合性モノマーに溶解する場合には、当該可溶性ポリマーも含有するペーストの中に含有される重合性モノマーに可溶性である。それぞれ重合性モノマー(a1)および/または(b1)に可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)は、ホモポリマーまたはコポリマーであることができる。このポリマー(a7)および/または(b7)は、好ましくは、少なくとも150,000g/molの(質量による)平均モル質量を有するポリマーである。ポリマー(a7)および/または(b7)は、例えば、メタクリル酸エステルのポリマーまたはコポリマーであることができる。特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリマー(a7)および/または(b7)は、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチルエステル(PMAE)、ポリメタクリル酸プロピルエステル(PMAP)、ポリメタクリル酸イソプロピルエステル、ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、およびポリ(スチレン−co−メタクリル酸メチル)からなる群から選択される。
上記ポリマーを含有するペーストの中に存在する、それぞれラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)の量は、対応するペーストが、それぞれラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に不溶性である充填剤(a3)および/または(b3)を含有するか否かによる。通常、それぞれラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)に可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)を含有するペーストの中に存在する、これらの可溶性であるポリマーの量は、当該可溶性ポリマーを含有するペーストの総質量に対して、1〜85質量%の範囲にある。
ペーストAおよびBは、上で説明された成分とは別に、さらなる成分を含有することができる。このさらなる成分は、いずれも、ペーストAの中、ペーストBの中、またはペーストAおよびペーストBの中のいずれに存在してもよい。
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの放射線不透過性物質が、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つの中に存在する。この放射線不透過性物質は、この分野の一般の放射線不透過性物質であることができる。好適な放射線不透過性物質は、ラジカル重合用モノマー(a1)またはラジカル重合用モノマー(b1)に可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい。この放射線不透過性物質は、好ましくは、金属酸化物(例えば、酸化ジルコニウム等)、硫酸バリウム、毒物学的に許容できる重金属粒子(例えば、タンタル等)、フェライト、磁鉄鉱(適宜、超常磁性磁鉄鉱も)、および生体適合性カルシウム塩からなる群から選択される。この放射線不透過性物質は、好ましくは、10nm〜500μmの範囲の平均粒径を有する。さらに、想定できる放射線不透過性物質としては、3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨード安息香酸のエステル、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)のエステルが関与するガドリニウムキレート等のガドリニウム化合物も挙げられる。
別の好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの着色料を含有する。この着色料は、この分野の一般の着色料であってよいが、好ましくは食品着色料であることができる。さらに、この着色料は、少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)または少なくとも1つのラジカル重合モノマー(a2)に可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい。特に好ましい実施形態によれば、この着色料は、E101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン、およびリサミングリーンからなる群から選択される。本発明によれば、用語「着色料」は、色ワニス(例えば、色ワニスグリーン等)、E104およびE132の混合物のアルミニウム塩も包含するものとする。
別の好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの医薬品を含有する。この少なくとも1つの医薬品は、溶解した形態または懸濁した形態で、ペーストAおよびペーストBのうちの少なくとも1つに存在することができる。
この医薬品は、好ましくは、抗生物質、消炎薬、ステロイド、ホルモン、増殖因子、ビスホスホネート類、細胞分裂抑制剤、および遺伝子ベクターからなる群から選択されてもよい。特に好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの医薬品は抗生物質である。
好ましくは、当該少なくとも1つの抗生物質は、アミノグリコシド抗生物質、糖ペプチド抗生物質、リンコサミド抗生物質、ジャイレース阻害剤、カルバペネム、環状リポペプチド、グリシルサイクリン、オキサゾリドン類、およびポリペプチド抗生物質からなる群から選択される。
特に好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの抗生物質は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ダルババンシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、ドリペネム、メロペネム、チゲサイクリン、リネゾリド、エペレゾリド(eperezolid)、ラモプラニン、メトロニダゾール、チニダゾール、オミダゾール(omidazol)、およびコリスチン、ならびにこれらの塩ならびにエステルからなる群から選択される抗生物質である。
従って、この少なくとも1つの抗生物質は、硫酸ゲンタマイシン、塩酸ゲンタマイシン、硫酸アミカシン、塩酸アミカシン、硫酸トブラマイシン、塩酸トブラマイシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン、およびモキシフロキサシンからなる群から選択されてもよい。
当該少なくとも1つの消炎薬は、好ましくは、非ステロイド系消炎薬およびグルココルチコイド類からなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの消炎薬は、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、デキサメサゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、およびフルチカゾンからなる群から選択される。
当該少なくとも1つのホルモンは、好ましくは、セロトニン、ソマトトロピン、テストステロン、およびエストロゲンからなる群から選択される。
好ましくは、当該少なくとも1つの増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、骨形成タンパク質(BMP)、インターロイキン−1B、インターロイキン8、および神経成長因子からなる群から選択される。
当該少なくとも1つの細胞分裂抑制剤は、好ましくは、アルキル化剤、白金類似体、挿入剤、有糸分裂阻害剤、タキサン類、トポイソメラーゼ阻害剤、および代謝拮抗物質からなる群から選択される.
当該少なくとも1つのビスホスホネートは、好ましくは、ゾレドロン酸およびアレンドロン酸からなる群から選択される。
別の好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの生体適合性エラストマーを含有する。好ましくは、生体適合性エラストマーは微粒子である。好ましくは、この生体適合性エラストマーは、少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)または少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(b1)に可溶性である。生体適合性エラストマーとしてのブタジエンの使用が特に好適であるということが判明した。
別の好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、吸着基を有する少なくとも1つのモノマーを含有する。アミド基は、例えば、吸着基であることができる。従って、吸着基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸アミドであることができる。吸着基を有する少なくとも1つのモノマーを使用することで、関節の内部人工器官への当該骨セメントの結合が狙った態様で行われるようになるであろう。
別の好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの安定剤を含有する。この安定剤は、ペーストAおよびBの中に存在する重合用モノマー(a1)および/または(b1)の自発的重合を防止するために好適なものであるべきである。さらに、この安定剤は、当該ペーストの中に含有される他の成分と干渉性の相互作用を起こさないものであるべきである。この種の安定剤は、先行技術によって公知である。好ましい実施形態によれば、当該安定剤は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよび/または2,6−ジ−tert−ブチル−フェノールである。
本発明に係るキットの第1の特定の改変態様によれば、当該キットは「非対照的」キットである。これに関して、ペーストAが、いずれもペーストAの総質量に対して、20〜70質量%、特に好ましくは25〜60質量%、さらにより好ましくは30〜55質量%、最も好ましくは34〜47質量%の、(a1)に不溶性である充填剤(a3)を含有し、ペーストBが、いずれもペーストBの総質量に対して、5質量%未満、特に好ましくは1質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満、なおより好ましくは0.01質量%未満の、(b1)に不溶性である充填剤(b3)を含有することが好ましく、この場合、ペーストBが(b1)に不溶性である充填剤(b3)をまったく含有しないことが最も好ましい。
さらに、本発明に係るキットの上記第1の特定の改変態様に関しては、ペーストAが、いずれもペーストAの総質量に対して、1〜25質量%の範囲、特に好ましくは2〜20質量%の範囲、さらにより好ましくは2〜18質量%の範囲、最も好ましくは3〜16質量%の範囲の量の、(a1)に可溶性であるポリマー(a7)を含有し、ペーストBが、いずれもペーストBの総質量に対して、25〜85質量%の範囲、特に好ましくは35〜85質量%の範囲、さらにより好ましくは40〜80質量%の範囲、最も好ましくは50〜75質量%の範囲の量の、(b1)に可溶性であるポリマー(b7)を含有することが好ましい。
さらに、本発明に係るキットの上記第1の特定の改変態様に関しては、少なくとも1つの(b1)に可溶性であるポリマー(b7)に対する(b1)に不溶性である充填剤(b3)の質量比が、0.2以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以下、さらにより好ましくは0.1以下、なおより好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.02以下であり、さらにより特に好ましくは0に等しい。
本発明に係るキットの第2の特定の改変態様によれば、当該キットは「対称的」キットである。これに関して、ペーストAが、いずれもペーストAの総質量に対して、15〜85質量%、特に好ましくは15〜80質量%、さらにより好ましくは20〜75質量%の、(a1)に不溶性である充填剤(a3)を含有し、ペーストBが、いずれもペーストBの総質量に対して、15〜85質量%、特に好ましくは15〜80質量%、さらにより好ましくは20〜75質量%の、(b1)に不溶性である充填剤(b3)を含有することが好ましい。
さらに、本発明に係るキットの上記第2の特定の改変態様に関しては、ペーストAが、いずれもペーストAの総質量に対して、5〜50質量%の範囲、特に好ましくは10〜40質量%の範囲、さらにより好ましくは20〜30質量%の範囲の量の、(a1)に可溶性であるポリマー(a7)を含有し、かつ/またはペーストBが、いずれもペーストBの総質量に対して、5〜50質量%の範囲、特に好ましくは10〜40質量%の範囲、さらにより好ましくは20〜30質量%の範囲の量の、(b1)に可溶性であるポリマー(b7)を含有することが好ましい。
本発明によれば、少なくともペーストAおよびBを含有するキットの目的は、骨セメントの製造である。
この目的のために、当該少なくとも2つのペーストAおよびBは互いに混合され、このとき、別のペースト、ペーストCが得られる。
混合比は、好ましくは、0.5〜1.5質量部のペーストAおよび0.5〜1.5質量部のペーストBである。特に好ましい実施形態によれば、いずれもペーストAおよびBの総質量に対して、それぞれ、ペーストAの割合は30〜70質量%であり、ペーストBの割合は30〜70質量%である。
混合プロセスには、一般の混合装置、例えばスタティックミキサーまたはダイナミックミキサーが伴ってもよい。
混合プロセスは、真空中で進行してもよい。しかしながら、本発明に係る開始剤系の使用によると、骨セメントの特性に対する悪影響なしに、真空の不存在下でのペーストAおよびBの混合も可能になる。
当該キットのペーストを混合した後に最終的に得られるペーストCは、ISO 5833規格によればタックフリーであり、遅滞なく加工することができる。
硬化によってペーストCから生成される骨セメントは、当該キットに含有されるペーストを混合したおよそ6〜8分後に、高強度を達成する。
好ましい実施形態によれば、本発明に係るキットは、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠陥の被覆のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、椎体形成術のための、椎骨形成術のための、スペーサの製造のための、および局所的な抗生物質療法のための担体材料の製造のために使用することができる。
これに関して、用語「スペーサ」は、腐敗性の再置換(septic revision)手術における人工器官の二期的交換の範囲で一時的に使用することができるインプラントを意味すると理解されるものとする。
局所的な抗生物質療法のための担体材料は、球または球様の物体としてまたは梁形状の物体として提供されてもよい。加えて、本発明に係るキットから作製される骨セメントを含有する棒(ロッド)形状または円板形状の担体材料を製造することも可能である。さらに、この担体材料は、ビーズの様な様式で吸収性または非吸収性の縫合糸材料を通されてもよい。
上記の骨セメントの本発明に係る使用は、文献から公知であり、その中に多くの事例についてすでに文献に記載されている。
本発明によれば、好ましくは、このキットの中に含有されるペーストは互いに混合されて、先行技術から公知のペーストとまさに同様に上記の使用において後で使用されるペーストを製造するという点で、当該キットは、上記の使用のために使用される。
さらに、上記の目的に適合するための寄与は、下記を含む開始剤系によってなされる:
(i1)少なくとも1つのバルビツール酸誘導体;
(i2)少なくとも1つの重金属塩;
(i3)少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物;
(i4)アルカリイオンまたはアルカリ土類イオンのための、少なくとも2つのエーテル基を含有する少なくとも1つの錯化剤;および
(i5)必要に応じて水。
本発明に係るキットに関する上記の化合物について、好ましいバルビツール酸誘導体(a2)、重金属塩(b2)、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)、およびアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物のための錯化剤(b5)は、バルビツール酸誘導体(i1)、重金属塩(i2)、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(i3)、およびアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物のための錯化剤(i4)として好ましい。
上記の目的に適合するための寄与はまた、少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(好ましくはメタクリレートモノマー)を含む重合性組成物、および本発明に係る開始剤系によってなされる。上記の種類の重合性組成物は、例えば、本発明に係るキットのペーストAおよびBを混合することで得られる。
上記の目的に適合するための寄与はまた、本発明に係る重合性組成物の重合によって、または、本発明に係るキットのペーストAおよびペーストBを混合することで得られるペーストの重合によって得られる成形体によってなされる。本発明の範囲の成形体は、任意の3次元物体であってもよく、特に上記の「スペーサ」であってもよい。
本発明は、以下に記載される実施例を通して説明されるものとするが、それらの実施例は本発明の範囲を限定しない。
<実施例1〜4(本発明の範囲内である)>
実施例1〜4のペーストAを、成分を単純混合することで作製した。次いで、生成されたペーストを一晩室温で保存した。
ペーストBを下記の工程によって作製した。まず、塩化リチウム、水、およびMMAを秤量してから、これらを容器に入れた。その混合物を、室温で、水相が目視で検出できなくなるまで撹拌した。次いで、全ての他の成分を加え、混合物を撹拌によってホモジナイズした。次いで、得られたペーストを一晩、室温で保存した。
実施例1〜4それぞれにおけるペーストAおよびBを、質量比1:1で互いに混合した(実施例1のペーストAを実施例1のペーストBと混合、等)。これにより、タックフリーであり、かつ、数分後に硬化するペーストがすぐに得られた。
実施例1〜4のペーストAおよびBから作製した混合ペーストを、曲げ強度および曲げ弾性率の検討のための帯状試験片(寸法:75mm×10mm×3.3mm)、および圧縮強度の検討のための円筒状試験片(直径6mm、高さ12mm)を作製するために使用した。当該試験片を、水中で24時間、37℃で保存した。次いで、試験片の4点曲げ強度、曲げ弾性率、および圧縮強度を、Zwick万能試験機を使用して測定した。さらに、帯状試験片(寸法:20mm×10mm×3.3mm)を作製し、水中で24時間、37℃で保存した。次いで、上記試験片のダインスタット曲げ強度およびダインスタット衝撃強度を、ダインスタット試験装置を使用して検討した。
<実施例5〜11(本発明の範囲内である)>
ペーストBにおいて、錯化剤ベンゾ−12−クラウン−4を、錯化剤シクロヘキシル−12−クラウン−4、2,3−ナフト−12−クラウン−4(実施例5)、6,6−ジベンジル−12−クラウン−4、6−ドデシル(14−クラウン−4)−6−エタノール−ジエチル−ホスフェート(実施例6)、ビス[(12−クラウン−4)−メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロネート(実施例7)、ベンゾ−18−クラウン−6(実施例8)、シクロヘキシル−18−クラウン−6(実施例9)、N,N−ジヘプチル−N,N’,5,5−テトラメチル−3,7−ジオキサノンアミド(実施例10)または5−ブチル−5−エチル−N,N,−N’,N’−テトラシクロヘキシル−3,7−ジオキサアゼライン酸ジアミド(実施例11)に置き換え、実施例1のペーストB中で使用したベンゾ−12−クラウン−4と同モル量で使用し、実施例1のペーストAおよびBを作製した。
上記同様に、実施例5〜11のペーストAおよびBを、質量比1:1でそれぞれ互いに混合した。これにより、タックフリーであり、かつ、数分後に硬化するペーストがすぐに得られた。
<参考例(本発明の範囲内ではない)>
ペーストBが錯化剤を含まないことを除いて、実施例1のペーストAおよびBを作製した。錯化剤を添加せずにメタクリル酸メチル、水、および塩化リチウムを混合すると、2相が生じることは明らかであり、主要量の塩化リチウムが水相中に堆積していた。当該水相は、数日間撹拌した後であっても維持されていた。それに関係なくペーストBを作製した。しかし、ペーストAおよびペーストBの混合後の重合は、非常に遅延し、遅延の程度は、とりわけ、ペーストBの水分含量の関数だった。

Claims (22)

  1. ペーストAおよびペーストBを含むキットであって、
    (a)ペーストAは、
    (a1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー;および
    (a2)重合開始剤としての少なくとも1つのバルビツール酸誘導体;
    を含有し、
    (b)ペーストBは、
    (b1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー;
    (b2)重金属塩および重金属錯体からなる群から選択される、重合促進剤としての少なくとも1つの重金属化合物;
    (b4)少なくともリチウムハロゲン化物を含む、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物;および
    (b5)ベンゾ−12−クラウン−4、シクロヘキシル−12−クラウン−4、2,3−ナフト−12−クラウン−4、6,6−ジベンジル−12−クラウン−4、6−ドデシル(14−クラウン−4)−6−エタノール−ジエチル−ホスフェート、ビス[(12−クラウン−4)−メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロネート、およびこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの錯化剤;
    を含有し、
    ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、成分(a3)および/または(b3)として、それぞれ、(a1)および/または(b1)の中で不溶性の少なくとも1つの充填剤を含有するキット。
  2. 前記少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)は、メタクリレートモノマーである請求項1に記載のキット。
  3. ペーストAおよびペーストBは、前記少なくとも1つのラジカル重合用モノマー(a1)および/または(b1)を、いずれもペーストAおよび/またはペーストBの総質量に対して、それぞれ15〜85質量%の範囲の量で含む請求項1または請求項2に記載のキット。
  4. 前記少なくとも1つのバルビツール酸誘導体(a2)は、1−シクロヘキシル−5−エチル−バルビツール酸、1−フェニル−5−エチル−バルビツール酸および1,3,5−トリメチル−バルビツール酸からなる群から選択される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキット。
  5. ペーストAは、前記少なくとも1つのバルビツール酸誘導体(a2)を、いずれもペーストAの総質量に対して、0.1〜10質量%の範囲の量で含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキット。
  6. 前記少なくとも1つの重金属化合物(b2)は、水酸化銅(II)、水酸化コバルト(II)、および塩基性炭酸銅(II)からなる群から選択される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のキット。
  7. ペーストBは、前記重金属化合物(b2)を、ペーストBの総質量に対して0.0005〜0.5質量%の範囲の量で含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のキット。
  8. 前記少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)は、塩化アルカリ、塩化アルカリ土類またはこれらの少なくとも2つの混合物である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のキット。
  9. 前記リチウムハロゲン化物は塩化リチウムである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のキット。
  10. ペーストBは、前記アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)を、ペーストBの総質量に対して0.001〜7.5質量%の範囲の量で含む請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のキット。
  11. ペーストB中の前記アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)と錯化剤(b5)とのモル比は、少なくとも1:1である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のキット。
  12. (a1)および/または(b1)の中でそれぞれ不溶性である、少なくとも1つの充填剤(a3)および/または(b3)は、微粒子ポリマーである請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のキット。
  13. (a1)および/または(b1)の中でそれぞれ不溶性である、少なくとも1つの充填剤(a3)および/または(b3)は、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、架橋ポリ(メタクリル酸メチル)、およびこれら2つのポリマーの混合物からなる群から選択される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のキット。
  14. ペーストBは、さらなる成分(b6)として水を含む請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のキット。
  15. 水(b6)と、アルカリおよび/またはアルカリ土類ハロゲン化物(b4)との質量比は、少なくとも1:1である請求項14に記載のキット。
  16. ペーストA、ペーストBまたはペーストAおよびペーストBは、(a1)および/または(b1)中で、それぞれ可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)を含む請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のキット。
  17. (a1)および/または(b1)中で、それぞれ可溶性であるポリマー(a7)および/または(b7)は、ポリ(メタクリル酸メチルエステル)、ポリ(メタクリル酸エチルエステル)、ポリ−(メチルメタクリル酸プロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、およびポリ(スチレン−co−メタクリル酸メチル)からなる群から選択される請求項16に記載のキット。
  18. ペーサの製造のための、または局所的な抗生物質療法のための担体材料の製造のためのペーストの製造のための、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のキットの使用。
  19. (i1)少なくとも1つのバルビツール酸誘導体;
    (i2)少なくとも1つの重金属塩;
    (i3)少なくともリチウムハロゲン化物を含む、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物;および
    (i4)ベンゾ−12−クラウン−4、シクロヘキシル−12−クラウン−4、2,3−ナフト−12−クラウン−4、6,6−ジベンジル−12−クラウン−4、6−ドデシル(14−クラウン−4)−6−エタノール−ジエチル−ホスフェート、ビス[(12−クラウン−4)−メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロネート、およびこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される錯化剤、
    を含む開始剤系。
  20. 少なくとも1つのラジカル重合用モノマーおよび請求項19に記載の開始剤系を含む重合性組成物。
  21. 前記ラジカル重合用モノマーはメタクリレートモノマーである請求項20に記載の重合性組成物。
  22. 請求項20または21に記載の重合性組成物の重合によって、または請求項1から17のいずれか1項に記載のキットにおけるペーストAおよびペーストBの混合によって得ることができるペーストの重合によって得られる成形体。
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