本発明の第1の態様は、SEQ ID No. 1からSEQ ID No. 49のいずれかまたはそれらの多型によるアミノ酸配列で構成されるペプチドであって、該アミノ酸配列が誘導される完全なヒトのポリペプチド(すなわち、遺伝子座のリンクIDにあげたような全長配列のうちの1つ)ではないペプチドを提供する(Accession数、以下に添付の表1を参照)。
以下に開示するように、本発明の基礎を形成するペプチドは、MHCクラスII担持細胞(RCC)で提示されたものとして全て同定された。そのため、これらの特定のペプチド、さらには、該配列を含むその他のペプチド(即ち、誘導されたペプチド)は、ほぼまちがいなく特定のT細胞応答を全て誘発すると思われるが、そのような応答が誘発される範囲は、個々のペプチドによって変わる可能性がある。例えば、差異は、該ペプチドにおける変異に起因して生じ得る(以下を参照のこと)。当業者であれば、特に、本明細書の例ならびにそれぞれの文献を参照することにより、個々のペプチドによって誘発される応答の及ぶ範囲を決定するための方法は充分に承知している。
好ましくは、本発明によるペプチドは、本質的にSEQ ID No. 1からSEQ ID No. 49またはそれらの多型のうちの1つによるアミノ酸配列からなるものである。
「本質的に〜からなる」とは、本発明によるペプチドが、SEQ ID No. 1からSEQ ID No. 49、またはそれらの多型のいずれかに基づく配列に加えて、結合モチーフからなるペプチドのコア配列として、かつ、免疫原性Tヘルパーエピトープとして機能するペプチド部分を形成する必要のないN-および/またはC末端に位置するアミノ酸残基をさらに含むことを意味する。
それにもかかわらず、これら残基は、本発明のペプチドを細胞内に効率的に誘導するために重要である場合がある。本発明の一実施態様において、本発明のペプチドは、NCBI、GenBankのAccession番号X00497からなる、HLA-DR抗原関連不変鎖(p33、以下における"Ii")の80個のN末端アミノ酸を含んでいる(Strubin, M., Mach, B.とLong, E.O.、HLA-DR関連不変鎖のmRNAの完全な配列は、独特な膜透過極性を有するポリペプチドを示す。EMBO J. 3 (4), 869-872 (1984年))。
所与のアミノ酸配列の「変形」により、本発明者等は、例えば、アミノ酸残基の1つまたは2つの側鎖を、所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じようにペプチドがHLA分子への結合能をそれにもかかわらず有するよう変更する(例えば、別の自然発生的アミノ酸残基またはその他の側鎖と置換することなどにより)ことを意図するものである。例えば、ペプチドは、改善しない場合に、少なくともHLA-Aなどの適当なMHC分子との相互作用能および結合能を維持ように、かつ、改善しない場合に、本発明において定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する細胞を認識して殺すことが可能な活性化されたCTLの生成能を少なくとも維持するよう、改変することができる。以下の開示するようなデータベースから誘導可能なため、HLA-A結合性ペプチドの特定の位置は、通常、コア配列に適合するHLA結合溝の結合モチーフを形成する残基を固定する。
T細胞レセプターと相互作用する必須ではないそれらのアミノ酸残基は、その導入は、実質的にT細胞反応性に影響を与えず、関連MHCへの結合を排除しない、別のアミノ酸と置換することによって改変することができる。そのため、所与の条件とは別に、本発明のペプチドは、提示したようなアミノ酸配列または部分またはそれらの変形を含むいずれのペプチドであってもよい(本発明者等は該用語によりオリゴペプチドまたはポリペプチドが包含する)。
さらに、MHCクラスII提示ペプチドに関して知られていることとは、これらペプチドは、あるHLA特異的アミノ酸モチーフと、任意に、コア配列の機能とは干渉しない(すなわち、ペプチドとT細胞の相互作用に関係ないと思われる)N-および/またはC末端延長を有する「コア配列」からなることである。N-および/またはC末端延長は、それぞれが1〜10アミノ酸長であり得る。したがって、本発明の好ましいペプチドは、全長9〜100、好ましくは9〜30のアミノ酸を呈する。これらペプチドはMHCクラスII分子を直接負荷するために用いられるか、あるいは、該配列が以下で説明のベクター中にクローン可能であることができるかのいずれかである。これらのペプチドが、細胞内で大型のペプチドのプロセッシングの最終生成物を形成するため、より長いペプチドを用いることもできる。本発明のペプチドは、いずれのサイズのものであってよいが、通常は分子量で100,000分子量以下、好ましくは50,000分子量以下、さらに好ましくは10,000分子量以下であり、典型的には約5,000分子量である。アミノ酸残基の数について、本発明のペプチドは、1,000残基より少なく、好ましくは500残基より少なく、より好ましくは100残基より少ない。
約12アミノ酸残基より大きいペプチドがMHC分子に直接結合させるのに用いられる場合、コアHLA結合領域に隣接する残基が、ペプチドの、MHC分子の結合溝に特異的に結合する能力またはペプチドをCTLに提示する能力に実質的に影響を与えないものであることが好ましい。しかしながら、上記ですでに示したように、特に、ポリヌクレオチドによってエンコードされる場合、大型のペプチドが、適当な抗原提示細胞によって断片化され得るため、大型のペプチドを用いることができることは理解されるであろう。
MHCリガンドのペプチド、モチーフ、多型の例、並びにN末端および/またはC末端伸張部のある例は、例えば、http://syfpeithi.bmi-heidelberg.com/のデータベースSYFPEITHIから得られ、(Rammensee H, Bachmann J, Emmerich NP, Bachor OA, Stevanovic S. SYFPEITHI: MHCリガンドとペプチドモチーフのデータベース;Immunogenetics、1999年11月; 50(3-4):213-9.)、本明細書中で参照として引用される。
非限定的な例として、データベース中のHLA-DRに対するペプチドは、Igκ鎖188-203由来のK H K V Y A C E V T H Q G L S S(Kovats等のEur J Immunol.、 1997年4月;27(4):1014-21)、Igκ鎖145-159由来のK V Q W K V D N A L Q S G N S(Kovats等のEur J Immunol.1997年4月;27(4):1014-21)、GAD65 270-283由来のL P R L I A F T S E H S H F(Endl等のJ Clin Invest.1997年5月15日;99(10):2405-15)またはGAD65 556-575 由来のF F R M V I S N P A A T H Q D I D F L I(Endl等のJ Clin Invest.1997年5月15日;99(10):2405-15)である。さらに、ペプチドはまた、bcr-abl 210 kD融合タンパク質由来のA T G F K Q S S K A L Q R P V A S(ten Bosch等のBlood.1996年11月1日;88(9):3522-7)、HCV-1 NS3 28-41由来のG Y K V L V L N P S V A A T(Diepolder等のJ Virol.1997年8月;71(8):6011-9)、または、HIV-1 (HXB2) RT 326-345由来のF R K Q N P D I V I Q Y M D D L Y V G(van der Burg等のJ Immunol.1999年1月1日;162(1):152-60)の場合など、変異配列の抗原からも誘導することができる。全ての「アンカー」アミノ酸(HLA-DR4の例として、Friede 等のBiochim Biophys Acta.1996年6月7日;1316(2):85-101、Sette等のJ Immunol.1993年9月15日;151(6):3163-70、Hammer等のCell.1993年7月16日;74(1):197-203およびHammer等のJ Exp Med.1995年5月1日;181(5):1847-55を参照のこと。)は、太字で示されており(下表A参照)、コア配列は下線部であると見なされている。
上記ペプチドの全ては、所与のアミノ酸配列の「多型」という用語に包含される。
「ペプチド」という語により、本発明者等は、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)結合にのみ結合される分子だけでなく、ペプチド結合が保存される分子をも含むことを意図するものである。そのようなRetro-inverso型ペプチド模倣は、当業界で既知の方法、例えば、参照としてここに記載するMeziere等の1997年のJ. Immunol. 159, 3230-3237に開示されるような方法を用いて作製することができる。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、バックボーンに関連する変化を含む偽ペプチドを作製することを包含する。Meziere等1997年は、少なくともMHCクラスIIとTヘルパー細胞応答のために、これら偽ペプチドが有用であることを示している。Retro-inverse型ペプチドは、CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を有し、タンパク質加水分解に対してより抵抗性を有する。
通常、本発明のペプチドは、抗原提示細胞中で発現した場合、フラグメントが生成されるようにプロセッシングすることができるものであり、適当なMHC分子への結合能を有し、かつ、適当な細胞で提示することができ、それにより適当なT細胞応答を誘引する。ペプチドから生成されたフラグメントもまた、本発明のペプチドであることは理解されるであろう。好都合なことに、本発明のペプチドは、所与のアミノ酸配列を含む部分またはそれらの多型の部分、さらには、望ましい特徴を与えるさらなる部分を含む。例えば、そのさらなる部分は、別のT細胞エピトープ(第1のT細胞エピトープ含有部分として同じポリペプチドから誘導されたかまたはそうでないかのいずれか)を含むか、あるいは、キャリアタンパク質またはペプチドを含み得る。そのため、一実施態様において、本発明のペプチドは、一部欠失ヒトタンパク質か、あるいはタンパク質フラグメントと別のポリペプチド部分の融合タンパク質であるが、ただし、ヒトの部分は1つまたはより多くの本発明のアミノ酸配列を有する。
特に好ましい実施態様において、本発明のペプチドは、本発明のアミノ酸配列と、少なくとも1つのさらなるT細胞エピトープとを含み、該さらなるT細胞エピトープは、腫瘍関連抗原を異常に発現する腫瘍の型に向けたT細胞応答の生成を促進することができる。したがって、本発明のペプチドは、これもワクチンとして使用可能な「ストリング上のビーズ」と呼ばれるポリペプチドを含む。
本発明のペプチドのある用途が、直接用いる(すなわち、患者の細胞、または、患者に与えられた細胞のポリヌクレオチドの発現によって生成されるものではない)ことができ、そのような用途において、ペプチドは、100または50未満の残基を有することが好ましいことが以下から理解されるであろう。本発明の好ましいペプチドは、全長で9〜30アミノ酸を呈する。
本発明のペプチドがHLA-DRへの結合能を有することが好ましい。ペプチドがHLA-DRB1*0101に特異的に結合することが特に好ましい。
本発明の他の態様において、MHCクラスII分子について上記で説明した状況と同様に、本発明のペプチドは、MHCクラスI特異的T細胞応答を誘発するのに用いることができる。本発明の好ましいMHCクラスI特異的ペプチドは、全長9〜16、好ましくは9〜12アミノ酸を呈する。これらのペプチドは、MHCクラスIIペプチドと同様に、(例えばワクチン内で)より長いペプチドとして用いられ得ることは理解すべきである。HLAクラスI分子に対するある一定のHLA特異的アミノ酸モチーフを有するMHCクラスI特異的"コア配列"の同定方法は当業者には周知であるため、例えば、コンピュータプログラムPAProC(http://www.uni-tuebingen.de/uni/kxi/)およびSYFPEITHI(http://www.syfpeithi.de)により予測可能である。
本発明のペプチドは、本発明の発現ペプチドの基礎を形成するポリペプチドを異常に発現させる細胞を標的かつ死滅させる免疫療法において特に有用である。所与のアミノ酸配列からなるこれら特定のペプチドはHLA-DRに結合するため、本発明のペプチドがHLA-DRに結合し、適当な抗原提示細胞の表層上に存在する場合、そのように結合したHLA-DRペプチド複合体が、所与のアミノ酸配列を含むポリペプチドを異常に発現する細胞を認識するCTLの生成を誘発可能であるものであることが好ましい。
本発明の一実施態様において、本発明のペプチドは、NCBI、GeBank Accession番号X00497(以下を参照のこと)由来のHLA-DR抗原関連インバリアント鎖(p33、以下において"Ii")の80のN末端アミノ酸からなる。
「異常に発現した」という語により、本発明者等は、ポリペプチドが、正常なレベルの発現と比較して過剰に発現しているか、あるいは、遺伝子が、腫瘍が誘導される組織内で沈黙しているが、腫瘍内で発現するという意味を含むことを意図するものである。「過剰に発現した」という語により、本発明者等は、ポリペプチドが、正常な組織に存在する場合よりも少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは正常な組織に存在するレベルの少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意図するものである。
ペプチド(少なくとも、アミノ酸残基間にペプチド結合を有するペプチド)は、Lu等の1981年J. Org. Chem. 46,3433および本明細書における参考文献に開示されるような、固相ペプチド合成のFmoc法によるポリアミド型によって合成することができる。一時的なN-アミノ基の保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によって与えられる。この高度に塩基不安定な保護基の反復切断は、N,N-ジメチルフォルムアルデヒド中の20%ピペリジンを用いることで影響を受ける。側鎖の官能性は、それらのブチルエーテルとして(セリンスレオニンおよびチロシンの場合)、ブチルエステルとして(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体として(リシンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体として(システインの場合)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルフォニル誘導体として(アルギニンの場合)保護することができる。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド官能性の保護のため、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル基の作製を利用する。固相支持体は、3つのモノマージメチルアクリルアミド(バックボーンモノマー)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(クロスリンカー)、およびアクリオリルサルコジンメチルエステル(機能化剤)からなるポリジメチル-アクリルアミドポリマーに基づいている。用いられたペプチド-樹脂の切断可能に結合された試薬は、酸不安定な4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。全てのアミノ酸誘導体は、アスパラギンとグルタミンを除いて、それらのプリフォームされた対称的な無水物誘導体として、逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール介在カップリング方法を用いて添加される。全てのカップリングと脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸、すなわち、isotin試験法を用いて監視する。合成が完了すると、ペプチドは、50%スカベンジャー混合物を含む95%のトリフルオロ酢酸で処理することにより、側鎖保護基の除去に伴って樹脂支持体から切断される。共通して用いられるスカベンジャーは、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水であり、正確な選択は、合成されたペプチドのアミノ酸の構成に依存する。また、ペプチド合成のための固相と液相方法論の組み合わせも可能である(例えば、Bruckdorfer T, Marder O, Albericio Fの、研究のためのミリグラム単位から未来の薬剤のための数トン単位のでのペプチドの生成、Curr Pharm Biotechnol. 2004年2月、5(1):29-43ならびにここで引用の参考文献を参照)。
トリフルオロ酢酸は、真空中での蒸発によって除去し、その後、ジエチルエーテルで粉砕することにより、粗ペプチドを得ることができる。スカベンジャーの存在は、水相の凍結乾燥がスカベンジャーの粗ペプチドフリーを与える簡単な抽出法で除去される。ペプチド合成の試薬は、通常、英国ノッティンガムNG7 2QJのCalbiochem-Novabiochem社(英国)から入手可能である。
アセトニトリル/水勾配分離を用いるサイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィおよび(通常の)逆相高速液体クロマトグラフィなどの技術のうちの1つまたはそれらの組み合わせによって精製を達成することができる。
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィ、逆相高速液体クロマトグラフィ、酸分解後のアミノ酸分析および高速原子衝撃(FAB)質量スペクトル分析ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量スペクトル分析を用いて実行することができる。
本発明のさらなる態様によれば、本発明のペプチドをエンコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)が提供される。ポリヌクレオチドは、DNA、cDNA、PNA、CAN、RNAまたはそれらの組み合わせであってよく、本発明のペプチドをコードする限り、イントロンを含んでも含まなくてもよい。当然のことながら、ポリヌクレオチドによってエンコード可能な自然発生的ペプチド結合によって結合される自然発生的アミノ酸残基を含む単なるペプチドである。本発明のさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドを発現可能な発現ベクターが提供される。
例えば、相補型付着末端を介して、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに操作可能に結合させる様々な方法が開発されている。例えば、相補型ホモポリマートラクトは、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに加えることができる。ベクターとDNAセグメントは、次いで、相補型ホモポリマー尾部間の水素結合によって接合され、組み換えDNA分子を形成する。
1つまたはより多くの制限酵素切断部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに接合する別の方法を提供する。上述のようにエンドヌクレアーゼ制限分解によって生成されるDNAセグメントは、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼI、それらの3'-5'-エクソヌクレアーゼ活性を有する突出3'-単鎖末端を排除し、重合活性を有するそれらの陥凹3'-末端を満たす酵素で処理される。
そのため、これら活性の組み合わせは、平滑末端DNAセグメントを生成する。平滑末端セグメントは、次いで、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの、平滑末端DNA分子の連結を触媒可能な酵素の存在下で大過剰モルのリンカー分子で培養される。そのため、反応生成物は、高分子リンカー配列を少なくともそれらの末端で担持するDNAセグメントである。これらDNAセグメントは、次いで、適当な制限酵素によって切断され、これらDNAセグメントとの親和性を有する末端を生成する酵素によってすでに切断された発現ベクターに連結される。
様々な制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、米国コネチカット州ニューヘブンのInternational Biotechnologies社を含む数社から商業的に入手可能である。
本発明のポリペプチドをエンコードするDNAを改質する望ましい方法は、Saiki等の(1988年)Science 239,487-491に開示されるようなポリメラーゼ鎖反応を使用することである。この方法は、例えば、遺伝子操作によって、適当な制限部位における、適当なベクター中にDNAを導入するのに用いることができ、あるいは、DNAを当業界で既知のその他の有用な方法で改質するのに用いることができる。この方法において、酵素によって増幅されるDNAは、それ自体が増幅DNA中に導入される2つの特定プライマーで両脇を固められる。該特定プライマーは、当業界で既知の方法を用いて発現ベクター中にクローニングするのに使用可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
DNA(または、レトロウィルスベクターの場合にはRNA)は、次いで、本発明の化合物からなるポリペプチドを生成するよう適当なホスト中で発現される。そのため、本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNAは、既知の技術に従って使用することができ、発現ベクターを構築するよう、本明細書中の教示に鑑みて適当に改質され、次いで、本発明のポリペプチドを発現して生成するために適当なホスト細胞に形質転換するのに用いられる。そのような技術には、1984年4月3日発効のRutter等の米国特許第4,440,859号明細書、1985年7月23日発効のWeissmanの第4,530,901号明細書、1986年4月15日発効のCrowlの第4,582,800号明細書、1987年6月30日発効のMark等の第4,677,063号明細書、1987年7月7日発効のGoeddelの第4,678,751号明細書、1987年11月3日発効のItakura等の第4,704,362号明細書、1987年12月1日発効のMurrayの第4,710,463号明細書、1988年7月12日発効のToole, Jr.等の第4,757,006号明細書、1988年8月23日発効のGoeddel等の第4,766,075号明細書および1989年3月7日発効のStalkerの第4,810,648号明細書に開示されるような技術が包含され、これらは全て参照としてここに組み入れられる。
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(レトロウィルスベクターの場合はRNA)は、適当なホストに導入するために、広範なその他のDNA配列に接合することができる。随伴DNAは、ホストの性質、DNAのホストへの導入法に依存し、およびエピソームの維持または組込みのいずれかが望ましい。
概して、DNAはプラスミドなどの発現ベクター中に、発現のため、適当な配向で正しい読み枠で挿入される。必要に応じて、所望のホストで認識される適当な転写および翻訳調整制御ヌクレオチド配列に連結することができるが、そのような制御は、概して発現ベクター中で利用可能である。ベクターは、次いで、標準的な技術によってホスト中に導入される。概して、全てのホストがベクターによって形質転換されるわけではない。そのため、形質転換されたホスト細胞を選択する必要がある。一選択技術には、必要な制御因子とともに、抗生物質抵抗性などの、形質転換した細胞中に選択可能な形質をコードするDNA配列を発現ベクター中に導入することが包含される。
あるいはまた、そのような選択可能な形質の遺伝子は、その他のベクター上にある場合があり、所望のホスト細胞を共転換するのに用いられる。
本発明の組み換えDNAによって形質転換されたホスト細胞は、次いで、ポリペプチドの発現を可能にする本明細書で開示の技術を考慮し、当業者等に既知の十分な時間、適当な条件下で培養され、その後回収することができる。
バクテリア(例えば、or example E. coli and Bacillus subtilis)、イースト菌(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えば、Aspergillu)、植物細胞、動物細胞、昆虫細胞を含む多くの発現系が知られている。好ましくは、そのような系はRCCまたはAwells細胞であってよい。
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合を可能にするDNA配列で形成される発現制御因子であり、転写を引き起こす。代表的なバクテリアホストとの親和性を有するプロモーター配列は、通常、本発明のDNAセグメントの導入のための好都合な制限部位を有するプラスミドベクター中に提供される。典型的な原核細胞ベクタープラスミドは、Biorad研究所(米国カリフォルニア州リッチモンド)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322および米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmacia社から入手可能なpBR329、pTrc99AおよびpKK223-3である。
典型的なほ乳類の細胞ベクタープラスミドは、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmacia社から入手可能なpSVLである。このベクターは、クローン遺伝子の発現を発動するのにSV40後期プロモーターを用い、発現の最高レベルはCOS-1細胞などのT抗原産生細胞中で見られる。誘導可能なほ乳類発現ベクターの例はpMSGであり、これもまた、Pharmaciaから入手可能である。このベクターは、クローン化された遺伝子の発現を発動するためにマウスの乳癌ウィルスの末端反復配列のグルココルチコイド誘導プロモーターを用いる。有用なイースト菌プラスミドベクターは、PRS403-406とpRS413-416であり、概して、米国カリフォルニア州92037ラ・ホーヤのStratagene Cloning Systemsから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS404、pRS405およびpRS406はイーストintegrateプラスミド(Yips)であり、イースト選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を導入する。プラスミドpRS413-416は、イーストセントロメアプラスミド(Ycps)である。様々なホスト細胞とともに用いるその他のベクターと発現系は当業界で既知である。
本発明はまた、本発明からなるポリヌクレオチドベクターで形質転換したホスト細胞に関する。ホスト細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかであってよい。バクテリア細胞は、ある環境においては好ましい原核ホスト細胞であり、通常、例えば、米国メリーランド州ベセスダのBethesda Research Laboratories Inc.から入手可能な大腸菌株DH5および米国メリーランド州ロックヴィルのAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手可能なRR1(No ATCC 31343)などの大腸菌株である。好ましい真核ホスト細胞は、イースト菌、昆虫およびほ乳類の細胞を含み、マウス、ラット、サルあるいはヒトの線維芽細胞株および腎臓細胞株由来などの脊椎動物の細胞が好ましい。イースト菌ホスト細胞には、米国カリフォルニア州92037ラ・ホーヤのStratagene Cloning Systemsから入手可能なYPH499、YPH500およびYPH501が包含される。好ましいほ乳類ホスト細胞には、CCL61としてATCCから入手可能なチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CRL 1658として入手可能なNIHスイスマウス胎芽細胞NIH/3T3、CL 1650としてATCCから入手可能なサルの腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児腎臓細胞である293細胞が包含される。好ましい昆虫細胞は、Sf9細胞であり、バキュロウィルス発現ベクターでトランスフェクトすることができる。
本発明のDNAを有する適当な細胞ホストの形質転換は、通常使用するベクターの種類に応じた既知の方法で達成される。原核ホスト細胞の形質転換については、例えば、Cohen等の(1972年)、Proc. Natl. Acad. Sci.USA 69,2110およびSambrook等の(1989年)分子のクローニング、A Laboratory Manual、米国ニューヨーク州コールドスプリングのCold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい。イースト細胞の形質転換については、Sherman等の(1986年)、研究所の手引き、イースト菌遺伝子学における方法、米国ニューヨーク州のCold Spring Harborに開示されている。Beggsの方法(1978年)、Nature 275,104-109もまた有用である。脊椎動物の細胞については、そのような細胞をトランスフェクトするのに有用な試薬は、例えば、Stratagene Cloning Systemsまたは米国メリーランド州20877ガイザーブルクのLife Technologies Incから入手可能な、リン酸カルシウムとDEAEデキストランまたはリポソーム形成因子である。細胞を形質転換および/または遺伝子導入するのに電気穿孔法もまた有用であり、イースト菌細胞、バクテリア細胞、昆虫細胞および脊椎動物細胞を形質転換する技術において当業界において周知である。
うまく形質転換された細胞、すなわち、本発明のDNA構成を含む細胞は、周知の技術によって同定することができる。例えば、本発明の発現構成体を導入して得られた細胞は、本発明のポリペプチドを産生するよう成長させることができる。細胞は回収して溶解させることができ、Southernの(1975年)J. Mol. Biol. 98,503またはBerent等の(1985年)、Biotech. 3,208に開示されるような方法を用いて、DNAの存在についてそれらのDNA含有量を検査することができる。あるいはまた、以下で説明する抗体を用いて上清中のタンパク質の存在を検出することができる。
組み合えDNAの存在を直接アッセイすることに加えて、形質転換の成功は、組み換えDNAがタンパク質の発現を誘導可能であるとき、既知の免疫学的方法によって確認することができる。例えば、発現ベクターで形質転換が成功した細胞により、適当な抗原性を呈するタンパク質が生成される。形質転換されると推測される細胞のサンプルを回収し、適当な抗体を用いてタンパク質について分析する。したがって、形質転換したホスト細胞自体に加えて、本発明はまた、それら細胞の培養、好ましくは、栄養培地におけるモノクローナル(クローン的に均質な)培養かあるいはモノクローナル培養から得られた培養を意図するものである。
本発明の一定のホスト細胞、例えば、イースト菌と昆虫細胞が、本発明のペプチドを調製するのに有用であることは理解されるであろう。しかしながら、その他のホスト細胞は、ある種の治療法においては有用であろう。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、適当なMHC分子中に負荷されるよう本発明のペプチドを発現させるのに有効に用いることができる。
本発明のさらなる態様は、静脈内(i. v.)注射、皮下(s. c.)注射、皮内(i. d.)注射、腹腔内(i. p)注射、筋肉内(i. m.)注射のためのペプチドを作製する方法が提供される。ペプチド注射の好ましい方法は、s. c.、i. d.、i. p.、i. m.、およびi. v.である。DNA注射の好ましい方法は、i. d.、i. m.、s. c.、i. p.、およびi. v.である。ペプチドまたはDNAの投与量は、1〜500 mgであってよい。
本発明のさらなる態様は、本発明による腫瘍関連ペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターの医療における使用に関するものである。
本発明のさらに別の態様は、患者の標的細胞を致死させる方法が提供され、該標的細胞は、本発明のアミノ酸配列からなるポリペプチドを異常に発現し、該方法は、患者に有効量の本発明のペプチドまたは有効量のポリヌクレオチド、あるいは該患者内で抗標的細胞免疫応答を引き起こすのに効果的な発現ベクターを投与することからなる。標的細胞は、通常、腫瘍または癌細胞である。
ペプチドまたはペプチドをエンコードする核酸は、腫瘍または癌のワクチンを構成する。直接患者に、または患部臓器にまたは全身的に投与され、または、患者由来の細胞またはその後患者に投与されるヒト細胞株由来の細胞に生体外で適用され、または患者由来の免疫細胞から副次集団を選択するようin vitroで用いられ、次いで、それらは再び患者に投与される。核酸をin vitroで細胞に投与した場合、インターロイキン-2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるよう、細胞をトランスフェクトすることが有用であろう。ペプチドは実質的に純粋であるか、あるいは、Detoxなどの免疫刺激アジュバントと組み合わせたものであるか、あるいは、免疫刺激サイトカインと組み合わせて用いるか、または適当なデリバリーシステム、例えば、リポソームとともに投与される。ペプチドはまた、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)またはマンナンなどの適当な担体に接合させることもできるWO 95/18145号公報およびLongenecker等の(1993年)Ann. NY Acad. Sci. 690,276-291を参照)。ペプチドはまた標識化することができるか、あるいは融合タンパク質であるか、ハイブリッド分子であり得る。その配列が本発明で与えられるペプチドは、CD4CTLを刺激することが期待される。しかしながら、刺激性はCD4陽性T細胞による協力の存在によって、より効率的になる。そのため、ハイブリッド分子の融合相手または断片は、CD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供するのに適している。CD4陽性刺激性エピトープは当業界で既知であり、破傷風トキソイドにおいて同定されるものを含む。ポリヌクレオチドは実質的に純粋であるか、適当なベクターまたはデリバリーシステムに含まれ得る。
適当なベクターおよびデリバリーシステムには、アデノウィルス、ワクチンウィルス、レトロウィルス、ヘルペスウィルス、アデノ関連ウィルスまたは1種類以上のウィルス成分を含むハイブリッドなどをベースとするウィルスシステムが包含される。非ウィルス性デリバリーシステムは、カチオン性脂質および当業界において周知のDNAデリバリーのカチオン性ポリマーを包含する。「遺伝子銃(gene-gun)」などを介した物理的なデリバリーもまた用いることができる。ペプチドまたは核酸によってエンコード化されたペプチドは、例えばCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを有する融合タンパク質であってよい。
癌ワクチンに用いるペプチドは、適当なペプチドのいずれかであってよい。特に、適当な9アミノ酸長のペプチドまたは適当な7アミノ酸長か8アミノ酸長か10アミノ酸長か11アミノ酸長のペプチドか12アミノ酸長であり得る。より長いペプチドもまた適しているが、添付の表1に開示するように9アミノ酸長か10アミノ酸長のペプチドが好ましい。
適当に、患者に投与した核酸は滅菌されてパイロージェンフリーにする。裸のDNAは、筋肉内か皮内か皮下的に与えることができる。ペプチドは、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内あるいは皮下的に与えることができる(ペプチド作製法に関連する上記も参照)。好ましくは、活性製薬成分としてのペプチドは、例えばIL-2、IL-12、GM-CSF、不完全なフロイントアジュバント、完全なフロイントアジュバント、あるいはリポソーム調製物などのアジュバントと組み合わせて与えることができる。最も好ましいアジュバントは、例えば、Brinkman JA, Fausch SC, Weber JS, Kast WMのExpert Opin Biol Ther.、2004年2月、4(2):181-98において見出すことができる。
ワクチン接種により、プロフェッショナル抗原提示細胞によって刺激されたCTL応答は、CTLをプライム後、腫瘍細胞中でMHC発現の強化に有利である。
ワクチンを、注入する部位、使用する標的ベクターとデリバリーシステム、または患者由来の細胞種の選択的精製、ペプチドまたは核酸の生体外投与、例えば抗原提示細胞などの特異的な細胞種を標的にすることのいずれも有用であろう。(例えば、樹状細胞は、Zhou等の(1995年)Blood 86,3295-3301; Roth等の(1996年)Scand. J. Immunology 43,646-651に開示されるように分類することができる)。例えば、標的ベクターは、適当な場所で抗原を発現させる組織または腫瘍特異的プロモーターからものであってよい。
本発明のさらなる態様により、有効量の本発明のペプチドからなる、あるいは、そのようなペプチドをエンコードする核酸からなる癌、癌細胞または腫瘍細胞に有効なワクチンが提供される。ワクチンが核酸ワクチンであることも好ましい。DNAワクチンなどのポリペプチドをエンコードする核酸ワクチンの接種が、T細胞応答を導くことが知られている。最も好ましいのは、(合成)ペプチドまたはペプチド(すなわち、単体かあるいは1,2,3,4,5または6,11あるいはさらに多くのペプチドの組み合わせ(以下をさらに参照))からなるワクチンである。
好都合なことに、核酸ワクチンは、適当な核酸デリバリー手段を含み得る。核酸、好ましくはDNA、裸の(すなわち、実質的にその他の成分は投与されない)であるか、または、リポソーム中またはウィルス性ベクターデリバリーシステムでデリバリーすることができる。
核酸の摂取および樹状細胞によってエンコード化されたポリペプチドの発現が、免疫応答の刺激のメカニズムであると考えられているが、樹状細胞はトランスフェクトされることはなく、しかし、組織中でトランスフェクトされた細胞から発現したペプチドを採取するために重要である。
DNAワクチンなどのワクチンを、筋肉中に投与することが好ましい。ワクチンを皮膚に投与することもまた好ましい。核酸ワクチンはアジュバントを用いず投与する。核酸ワクチンはまた、BCGまたはミョウバンなどのアジュバントとともに投与することができる。その他の適当なアジュバントには、サポニン、マイコバクテリア抽出物および合成バクテリア細胞壁ミミックから誘導されるAquila's QS21 stimulon(Aquila Biotech, 米国メリーランド州ウースター)、および、Ribi's Detox. Quil A、その他のサポニン誘導アジュバント(デンマークSuperfos)などの特許アジュバントもまた用いることができる。核酸ワクチンを、アジュバントを用いずに投与することが好ましい。フロイントアジュバントなどのその他のアジュバントもまた有用である。ペプチドを、好ましくはアジュバントとともにスカシ貝ヘモシアニンに接合することもまた有用である。
癌のポリヌクレオチド介在免疫治療は、Conry等の(1996年)腫瘍学セミナー 23,135-147;Condon等の(1996年)Nature Medicine 2,1122-1127;Gong等の(1997年)Nature Medicine 3,558-561;Zhai等の(1996年)J. Immunol. 156,700-710;Graham等の(1996年)Int J. Cancer 65,664-670およびBurchell等の(1996年)pp 309-313: 乳ガン、生物学における進歩および治療、Calvo等 (eds), John Libbey Eurotextに開示されており、これらは全て参照のため全体としてここに組み入れられる。
本発明のさらに別の態様は、本発明によるペプチド、ポリヌクレオチドまたはそのようなペプチドをエンコードする発現ベクターの、その標的細胞が本発明のアミノ酸配列からなるポリペプチドを異常に発現する、患者の死滅標的細胞のための薬物の製造における使用を提供する。
本発明のさらなる態様は、ヒトのクラスIIMHC分子をそれらの表層に発現させて、本発明のアミノ酸配列を含むポリヌクレオチドを提示する、充実性腫瘍の細胞に対する免疫応答、特に細胞免疫応答、さらに好ましくはT細胞介在免疫応答を誘引するための薬物を製造するための、本発明によるペプチド、あるいはそのようなペプチドをエンコードするポリヌクレオチドまたは発現ベクターの使用を提供する。驚くべきことに、本発明の状況において、充実性腫瘍の腫瘍細胞が、同じ組織の健康な細胞とは対照的に、ヒトのHLAクラスII分子をそれらの表層上に発現させることがわかった。
そのため、本発明のさらなる態様によれば、活性化細胞傷害性Tリンパ球を in vivoまたはin vitroで作製する方法が提供され、該方法は、in vitroでCTLを、適当な抗原提示細胞の表層上で発現させた抗原負荷ヒトクラスIIMHC分子に、該CTLを活性化させるのに十分な時間、抗原に特異な方法で接触させることを含み、該抗原は本発明のペプチドである。
好ましくは、CTLはCD4陽性ヘルパー細胞、好ましくはTH1型のものである。MHCクラスII分子は、適当な細胞の表層上で発現させることができ、細胞は自然にMHCクラスII分子を発現しないものであるか(この場合、細胞はそのような分子を発現するようトランスフェクトされる)、あるいは、そうでない場合、抗原プロセッシングまたは抗原提示経路中で機能しないものであることが好ましい。このように、MHCクラスII分子を発現する細胞は、実質的に、CTLを活性化させる前に選択したペプチド抗原によって完全に刺激することが可能である。
抗原提示細胞(または刺激細胞)は、通常MHCクラスII分子をその表層上に有し、好ましくは、実質的にそれ自体は、MHCクラスII分子を選択した抗原で負荷することはできない。以下でより詳細に説明するように、MHCクラスII分子は、in vitroで選択した抗原を容易に負荷させることができる。
ほ乳類の細胞は、TAPペプチドトランスポーターの機能が欠如しているか、低減したレベルの該作用を有するか、該作用が低減されていることが好ましい。TAPペプチドトランスポーターが欠如している適当な細胞はT2、RMA-Sおよびショウジョウバエの細胞が含まれる。TAPとはTransporter Associated with antigen Processingである。
ヒトのペプチド負荷欠損細胞株T2は、米国メリーランド州20852ロックヴィルパークローンドライブのAmerican Type Culture Collection, 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USAから、カタログNo. CRL1992で入手可能ある。ショウジョウバエの細胞株Schneider line 2は、the ATCC under Catalogue No CRL 19863で入手できる。マウスRMA-S細胞株は、Karre and Ljunggren(1985) J.Exp.Med.162,1745(非特許文献52)に記載されている。
好都合なことに、トランスフェクトされる前の該ホスト細胞は、実質的にMHCクラスII分子を発現しない。また、好ましいことに、刺激細胞は、T細胞を共に刺激するのに重要な分子を発現し、B7.1、B7.2、ICAM-1およびLFA 3のいずれかなどである。
多数のMHCクラスII分子と副刺激分子の核酸配列は、GenBankとEMBLのデータベースから公共的に入手可能である。
さらなる実施態様において、表1および表2に開示するMHCクラスII分子など、HLA分子の組み合わせも用いることができる。組み換えポリペプチドワクチンの、多数のCD8陽性CTLエピトープのデリバリーのための使用は、Thomson等(1996年)J. Immunol. 157, 822-826およびWO 96/03144号公報に開示されており、いずれも参照としてここに記載する。本発明に関連して、単一のワクチン中に、本発明のアミノ酸配列とその他のCD8陽性T細胞刺激性エピトープとを含むペプチド(またはペプチドをエンコードする核酸)を含むことが望ましい。そのようなワクチンは、癌を治療するのに特に有用である。そのような「ストリングのビーズ」ワクチンは、通常DNAワクチンである。MHCクラスI依存免疫応答と、MHCクラスII依存免疫応答の同時誘発は、これにより、CD4陽性T細胞の局部的なTH1-様T細胞反応を誘導するという利点を有するため、MHCクラスI依存CD8陽性T細胞が支持される。
CTLをin vitroで生成するのにその他多数の方法を用いることができる。例えば、Peoples等の(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 92,432-436およびKawakami等の(1992年)J. Immunol. 148,638643に開示の方法は、自己腫瘍浸潤リンパ球をCTL作製に用いる。Plebanski等(1995年)Eur. J. Immunol. 25,1783-1787は、自己末梢血リンパ球(PLB)をCTLの作製に利用する。Jochmus等の(1997年)J. Gen. Virol. 78,1689-1695は、ペプチドまたはポリペプチドとともにパルス標識する樹状細胞を利用することまたは組み換えウィルスの感染によって自己CTLの作製を開示している。Hill等の(1995年)J. Exp. Med. 181,2221-2228とJerome等の(1993年)J. Immunol. 151,1654-1662は、自己CTLの生成にB細胞を利用している。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス標識した、または組み換えウィルスで感染したマクロファージを、自己CTLの作製に用いることができる。S. Walter等(Walter S, Herrgen L, Schoor O, Jung G, Wernet D, Buhring HJ, Rammensee HG, Stevanovic S. Cutting edge:較正MHC/抗CD28コート微粒子で拡張されたヒトCD8T細胞の所定の親和性、J Immunol. 2003年11月;171(10):4974-8)は、人工の抗原提示細胞を用いることによるT細胞のin vitroでの刺激を開示しており、これは選択したペプチドに対抗してT細胞を生成する適当な方法でもある。
同種の細胞もまたCTLの作製に用いることができ、この方法はWO 97/26328号公報(特許文献12)で詳細に開示されている。例えば、ショウジョウバエ細胞とT2細胞に加えて、CHO細胞、バキュロウィルス感染昆虫細胞、バクテリア、イースト菌、ワクチン感染標的細胞などのその他の細胞も抗原を提示するのに用いることができる。さらに、植物ウィルスも使用可能である(例えば、外部ペプチドの提示のための高効率システムとしてのササゲモザイクウィルスの開発を開示するPorta等の(1994年)Virology 202, 449-955を参照)。
本発明のペプチドに対抗する活性化CTLは治療に有用である。そのため、本発明のさらなる態様によれば、本発明の前述の方法で得られる活性化CTLが提供される。
本発明のさらなる態様によれば、本発明のアミノ酸からなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する活性化CTLが提供される。好ましくは、CTLは該細胞を、HLA/ペプチド複合体と相互作用することによって認識する(例えば結合)。CTLは、本発明のアミノ酸配列からなるポリペプチドを異常に発現する患者の標的細胞を死滅させる方法において有用であり、該患者は有効数の活性化CTLを投与される。患者に投与されるCTLは、患者由来のものであってよく、かつ、上述したように活性化することができる(すなわち、自己CTLである)。あるいはまた、CTLは、患者由来ではなく別の個体由来のものである。当然のことながら、該個体は健常個体であることが好ましい。「健常個体」という語により、本発明者等は、おおむね健康であり、好ましくは適当な免疫系を有し、より好ましくは、容易にテストでき、検出できるいずれの病気でもないことを意図する。
活性化CTLは、ポリペプチドを異常に発現する細胞の認識に関連するT細胞レセプター(TCR)を発現する。TCRをエンコードするcDNAが、活性化CTLからクローニングしたものであり、かつ、発現のために別のCTL中に移動させることが有用である。
本発明によるCD4陽性CTLの標的細胞は、生体内で腫瘍(MHCクラスIIを発現する)および/または腫瘍(腫瘍細胞)を取り巻く間質細胞(MHCクラスIIを発現する場合もある)である。
本発明のペプチド特異的な本発明のCTLクローンのTCRはクローニングされる。CTLクローン中でのTCRの用法は、(i)TCRの異なる領域特異的モノクローナル抗体と、(ii)VaとVp遺伝子ファミリーに特異的なプライマーを用いたRT-PCRを用いるものと定義される。cDNAライブラリは、CTLクローンから抽出されたポリAmRNAから作製される。プライマーにはTCR a鎖のC末端部分とP鎖および同定されたVaセグメントとPセグメントのN末端部分に対する特異性が用いられる。TCR a鎖とp鎖の完全なcDNAは、高度に正確なDNAポリメラーゼで増幅され、増幅された生成物は適当なクローニングベクター中にクローンされる。クローンされたa鎖とP鎖遺伝子は、Chung等の(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91,12654-12658に開示される方法によって、一本鎖TCRに集合させることができる。この一本鎖構成において、VaJセグメントはV DJセグメントから生じ、続いて、Cpセグメントは膜透過とCD3鎖の細胞質セグメントによって生じる。この一本鎖TCRは、次いで、レトロウィルス発現ベクター中に挿入される(ベクターのパネルは、成熟ヒトCD8陽性Tリンパ球に感染させ、遺伝子発現を媒介する能力を基礎とする。レトロウィルスベクターシステムキットは好ましい一例である(Finer等の(1994年)Blood 83,43を参照)。高タイター両性レトロウィルスは、腫瘍の患者の末梢血から分離した、精製されたCD8陽性またはCD4陽性Tリンパ球に感染させるのに用いられる(Roberts等の(1994年) Blood 84,2878-2889によって公開されたプロトコルに従う(参照としてここに組み入れる))。精製されたCD8陽性T細胞の増殖を引き起こすのに抗CD3抗体が用いられ、これにより、レトロウィルスの集積と一本鎖TCRの安定な発現を促進する。レトロウィルス形質導入の効率は、一本鎖TCRに特異的な抗体を感染させたCD8陽性T細胞によって決定される。形質導入されたCD8陽性T細胞のin vitro分析は、それらからTCR鎖が最初にクローン化される同種異系制限されたCTLクローンで見られるように、同じ腫瘍特異的致死性を呈するのを確立する。特異性を期待される形質転換されたCD8陽性T細胞の個体群は、腫瘍患者の養子免疫療法に用いることができる。患者は、108〜1011の自己、形質転換CTLで治療することができる。CD8陽性と類似に、関連構成体を担持する、導入CD4陽性Tヘルパー細胞を生成することができる。
CTLに遺伝子を導入するためのその他の適当な系は、Moritz等の(1994年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91,4318-4322に開示されており、参照としてここに組み入れられる。Eshhar等の(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90,720-724およびHwu等の(1993年)J. Exp. Med. 178, 361-366もまたCTLのトランスフェクションを開示している。したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明のアミノ酸配列を含むポリペプチドを異常に発現する細胞を認識するTCRが提供され、該TCRは活性化CTLから得られる。
本発明には、TCRに加えて、機能的にTCRと同等な分子が包含される。これらには、TCRとして同様に役割を果たすことが可能な、TCRと機能的に同等な分子のいずれも含まれる。特に、そのような分子には、概して、参照としてここに組み入れられ、上記で参照したChung等の(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91,12654-12658に開示される方法によって得られるような遺伝子操作した3ドメインの一本鎖TCRが包含される。本発明はまた、TCRをまたは機能的に同等な分子をエンコードするポリヌクレオチドと、TCRまたは機能的に同等な分子をエンコードする発現ベクターとを含む。本発明のTCRを発現するのに適した発現ベクターには、上記で本発明のペプチドの発現に関して説明したものが包含される。
しかしながら、発現ベクターは、トランスフェクト後のCRT中でTCRを発現可能なものであることが好ましい。
本発明のさらに別の態様によれば、患者の標的細胞を死滅させる方法が提供され、該標的細胞は、本発明のアミノ酸配列からなるポリペプチドを異常に発現し、該方法は、(1)患者からCTLを得るステップと、(2)該細胞に、TCRまたは上記で定義したように機能的に同等な分子をエンコードするポリヌクレオチドを導入するステップと、(3)ステップ(2)で作製された細胞を患者に導入するステップ、とを含んでなる。
本発明のさらなる態様によれば、患者の標的細胞を死滅させる方法が提供され、該標的細胞は本発明の第1、第2または第3の態様で定義したアミノ酸配列を含むポリヌクレオチドを発現し、該方法は、(1)該患者から樹状細胞などの抗原提示細胞を得るステップと、(2)該抗原提示細胞を、本発明の第1、第2または第3の態様で定義したペプチド、またはそのようなペプチドをエンコードするポリヌクレオチドにex vivoで接触させるステップと、(3)そのように処理した抗原提示細胞を患者に再導入するステップ、とを含む。
該抗原提示細胞は樹状細胞であることが好ましい。該樹状細胞は、抗原性ペプチドでパルス化した自己樹状細胞であることが適している。抗原性ペプチドは、適当なT細胞応答を引き起こす抗原性ペプチドのいずれかであってよい。腫瘍関連抗原由来のペプチドでパルス化された自己樹状細胞を用いるT細胞治療は、Murphy等の(1996年)The Prostate 29,371-380とTjua等の(1997年)The Prostate 32, 272-278に開示されている。
さらなる実施態様において、樹状細胞などの抗原提示細胞は、本発明のペプチドをエンコードするポリヌクレオチドに接触させる。ポリヌクレオチドは、いずれの適当なポリヌクレオチドであってよく、樹状細胞を形質転換可能であることにより、ペプチドを提示して免疫性を呈する結果となる。
好都合なことに、ポリヌクレオチドは、ウイルス性ポリヌクレオチドまたはウイルス含まれ得る。例えば、アデノウイルス形質転換樹状細胞は、MUC1に関連して抗原特異的抗腫瘍免疫を誘発することが示されている(Gong等の(1997年)Gene Ther. 4,1023-1028)。同様に、アデノウイルスベース系を用いることができ(例えば、Wan等の(1997年)Hum. Gene Ther. 8,1355-1363)、レトロウイルス系を用いることができ(Specht等の(1997年)J. Exp. Med. 186,1213-1221、およびSzabolcs等の(1997年)樹状細胞への血液粒子介在移転もまた使用可能であり(Tuting等の(1997年)Eur. J. Immunol. 27,2702-2707)、さらには、RNAも用いることができる(Ashley等の(1997年)J. Exp. Med. 186,1177 1182)。
患者の標的細胞を死滅させる方法に関連して、標的細胞が癌細胞、より好ましくは腎癌または結腸癌細胞であることが、特に好ましいことは理解されるであろう。
本発明の方法で治療される患者は、HLA-DRハプロタイプを有することが特に好ましい。そのため、好ましい実施態様において、治療前に患者のHLAハロタイプを確認する。HLAハプロタイプ決定は適当な方法で行うことができ、そのような方法は当業界で周知である。
本発明は、in vivoでのアクティブなワクチン接種のためと、in vitroでの自己樹状細胞の操作と、そのように操作された樹状細胞のin vivoでの、CTL応答を活性化するための導入のためと、自己CTLをin vitroで活性化させ、養子免疫治療する(すなわち、そのように操作したCTLは患者に導入される)ためと、健常ドナー(MHCが適合する、あるいは適合しない)由来CTLをin vitroで活性化して養子免疫療法するために、特に、本発明のペプチド(またはそれらをエンコードするポリヌクレオチド)の使用を包含する。
好ましい実施態様において、本発明のワクチンは、単独または、腫瘍の形成を阻害または抑制するために別の癌治療と組み合わせてホストに投与される。ペプチドワクチンは、アジュバントをともなわずに投与することができる。
ペプチドワクチンはまた、BCGまたはミョウバンなどのアジュバントとともに投与することもできる。その他の適当なアジュバントには、サポニン、マイコバクテリア抽出物および合成バクテリア細胞壁ミミックから誘導されるAquila's QS21 stimulon(Aquila Biotech, 米国メリーランド州ウースター)、および、Ribi's Detox. Quil A、その他のサポニン誘導アジュバント(デンマークSuperfos)などの特許アジュバントもまた用いることができる。その他のCpGオリゴヌクレオチドなどのアジュバント、安定化RNA、Imiquimod(商品名Aldara(商標)で3M Pharma、米国、から市販)、不完全なフロイントのアジュバント(フランス国パリのSeppic S.A.から市販のMontanide ISA-51)、リポソーム調製物またはGM-CSFもまた有用である。ペプチドをスカシ貝ヘモシアニン、好ましくはアジュバントとともに接合することもまた有用である。
本発明によるペプチドは、診断薬としても用いることができる。ペプチドを用いることにより、CTL種中に、CTLをペプチドに直接特異的に提示するか、あるいは治療により誘発させるかを分析することができる。さらに、前駆体T細胞の増大は、定義されたペプチドに対する反応性を有するそれらペプチドでテストすることができる。また、ペプチドは、ペプチドが誘導される抗原を発現する腫瘍の病態の進行を監視するためのマーカーとして使用することができる。
添付の表1において、同定されたペプチドを挙げる。さらに、この表では、ペプチドから誘導されるタンパク質が設計されており、それぞれのタンパク質におけるペプチドのそれぞれの部分を示す。さらに、それぞれのAcc番号を提供し、それらは国立健康研究所(National Institute of Health(http: www.ncbi.nlm.nih.gov参照))の「バイオテクノロジーインフォメーションナショナルセンター(National Centre for Biotechnology Information)」のGenbankに関連する(国立健康研究所(National Institute of Health(http: www.ncbi.nlm.nih.gov参照))。
他の好ましい実施態様において、ペプチドは、白血球、特にTリンパ球を染色するのに用いられる。ペプチドに対するCTL種特性CTLが存在するか否かが証明されればこの使用は特に利点を有するものである。さらには、ペプチドは、腫瘍の病気または疾患における治療の進行を確認するマーカーとして使用可能である。
さらに好ましい実施態様において、ペプチドは、抗体の作製に用いられる。ポリクローナル抗体を、ペプチドを注射し、続いて免疫グロブリンを精製することによる動物免疫法によって標準的な方法で得ることができる。モノクローナル抗体は、例えば、Methods Enzymol、(1986年)、121、ハイブリドーマ技術とモノクローナル抗体に開示されるような方法などの標準的なプロトコルによって作製できる。
本発明は、さらなる態様において製薬組成物に関し、該組成物は、1つまたはより多くの本発明の上記ペプチドを含む。この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与や経口投与に用いることができる。このため、ペプチドは、薬理学的に許容可能な好ましい水性担体中に溶解または懸濁される。さらに、組成物は、緩衝剤、結合剤、爆破剤、希釈剤、香料、潤滑剤などの賦形剤を含んでもよい。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と一緒に投与することができる。そのような組成物に使用可能な賦形剤の指示リストは、例えば、A. Kibbe, Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版、2000年(American Pharmaceutical Association and pharmaceutical press(非特許文献76))から得ることができる。組成物は、腫瘍疾患の防止、予防および/または治療に用いることができる。
SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 49のいずれかを含む本発明のペプチドを少なくとも1つ含む製薬調合物は、それぞれのペプチドまたは抗原に関連する腫瘍疾患を患う患者に投与される。これにより、CTL特異的免疫応答を誘発させることができる。
本発明の別の態様において、本発明による2つまたはいくつかのペプチドの組み合わせをワクチンとして、直接的な組み合わせか、該治療法において用いることができる。さらには、その他のペプチド、例えばMHCクラスII特異的ペプチドとの組み合わせが使用可能である。当業者は、例えば、T細胞のin vitro産生ならびにそれらの有効率および全存在、特定のペプチドに対するある種のT細胞の増殖、親和性および発現、およびT細胞の機能、例えばIFN-γ(以下の例も参照)、IL-12またはパーフォリンの生成を分析することによる試験によって、免疫原生ペプチドの好ましい組み合わせを選択することができるであろう。通常、最も効果的なペプチドは、上述の目的でワクチンとして組み合わせたものである。
適当なワクチンは、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14または15の異なるペプチド、好ましくは、4,5,6または7の異なるペプチド、より好ましくは6の異なるペプチドを含む。
最終的に、ワクチンは、治療される患者が患う癌の特定の型、ならびに、疾患のステータス、初期治療の養生法、患者の免疫状態、さらには患者のHLAハプロタイプに依存する。
Iiの80個のN末端アミノ酸は、タンパク質をクラスIIプロセッシング経路内へ送り込むのに十分であることがわかった(Sanderson, S., Frauwirth, K.およびShastri, N.の、(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 7217-7221(非特許文献77), Wang, R. F., Wang, X., Atwood, A. C., Topalian, S. L. & Rosenberg, S. A.の(1999年)Science 284, 1351-1354)。
腫瘍関連抗原のTヘルパー細胞エピトープの同定は、依然として抗腫瘍免疫療法において重要な作業である。本発明者等はここに、一般的に適用可能な方法ならびに腫瘍関連抗原の自然にプロセスされ提示されたMHCクラスIIリガンドを同定するMS(質量分析)による異なるペプチド分析によって誘導されたペプチドを報告する。このアプローチは、初めてAPC(抗原提示細胞)のトランスフェクション工程を、Ii鎖と対象とするAgとの間の融合タンパク質をエンコードするベクター、HLA結合ペプチドの溶出、非トランスフェクト細胞との比較によるトランスフェクタントで提示した、Ag由来のペプチドのMS同定を組み合わせるものである。さらに、本発明者等は、同定されたペプチドに対して誘引されたT細胞が、同族Agを過剰提示するトランスフェクタントを特異的に認識することを示すことにより該方法を立証することができた。依然として同定されたペプチドは、その免疫原性をin vivoで試験しなければならないが、本発明者等のアプローチにより、自然にプロセスされたMHCクラスIIリガンドの正確な特徴付けが導かれる。そのため、本発明者等は、腫瘍関連抗原の合成オーバーラッピングペプチドまたはクラスIエピトープ予測と比較して正確ではないエピトープ予測により選択したペプチドの広い範囲を試験するのを回避する。in vivo でのT細胞活性の誘引が不可能な潜在性T細胞エピトープの同定(Anderton, S. M., Viner, N. J., Matharu, P., Lowrey, P. A.およびWraith, D. C.の、(2002年)Nat. Immunol. 3, 175-181))を導き得る困難なT細胞アッセイとは対照的に、該作業は、提示されることがわかったわずかなペプチドに焦点を絞ることができる。さらに、この方法を用いる場合、ペプチドが自然にプロセスされることを証明するのに、組換えAgを作製したり、Ag発現腫瘍細胞株をプロセスしたりする必要がない。
本発明者等は、IiのN末端を用いてEBVトランスフォームB細胞の腫瘍関連抗原をクラスIIプロセッシング分画中へ導入した。これを達成するべく、本発明者等は、Iiとの融合タンパク質としていずれの抗原も発現でき、Westernブロッティング分析により、トランスフェクト細胞中タンパク質の発現レベルを確認するのに役立つ多用途のベクターを構築した。IiのN末端が、クラスIIプロセッシング分画中へタンパク質を誘導するのに十分であることはすでに示されている。しかし、このことは、未知のAgを、融合タンパク質エンコードcDNAライブラリーを用いて同定するために(Wang, R. F., Wang, X., Atwood, A. C., Topalian, S. L.およびRosenberg, S. A.の(1999年)Science 284, 1351-1354)、あるいは、既知のT細胞クローンの特異性を確認するために(Chaux, P., Vantomme, V., Stroobant, V., Thielemans, K., Corthals, J., Luiten, R., Eggermont, A. M., Boon, T.およびvan der, B. P.の、(1999年)J. Exp. Med. 189, 767-778)卵白アルブミンを用いた検体においてでのみ説明されている(Sanderson, S., Frauwirth, K.およびShastri, N.の、(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 92, 7217-7221)。本発明者等の知識では、この方法はこれまで、既知の腫瘍関連抗原の自然に提示されたMHCクラスII結合ペプチドを同定するのに用いられることはなかった。MALDI-MS(マトリックス支援レーダー脱離イオン化質量分析)によりトランスフェクト細胞ならびに非トランスフェクト細胞のクラスIIリガンドの層次解析および、ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)により別個に発現されたペプチドのさらなる特徴付けにより、対象とする抗原のクラスIIリガンドを同定する確実な方法が得られる。細胞のケラチン18融合タンパク質によるトランスフェクションは、本発明の方法が対象とする抗原に概ね適用可能であることを証明しており、本発明者等は、外来性遺伝子、ケラチン18由来のHLA-DR提示ペプチドを説明することができた。
TAAのヘルパーT細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫療法において重要な課題を残している。現在までに、TAA由来のクラスIIペプチドを同定するための様々な戦略が実施されており、採用かつプロセスすべき対象の抗原でのAPCの培養から(Chaux, P., V. Vantomme, V. Stroobant, K. Thielemans, J. Corthals, R. Luiten, A.M. Eggermont, T. BoonおよびB.P. van der Bruggen、1999年、CD4陽性Tリンパ球に対するHLA-DR分子によるMAGE-3エピトープの同定J. Exp. Med. 189:767-778)、融合タンパク質による様々なトランスフェクション戦略まで範囲が及び得る(Dengjel,J., P.Decker, O. Schoor, F. Altenberend, T. Weinschenk, H.G. RammenseeおよびS. Stevanovicの2004年、HLAクラスIIターゲッティングと示差質量分析との新規な組み合わせによる、自然にプロセスされたサイクリンD1 Tヘルパーエピトープの同定、Eur.J.Immunol. 34:3644-3651)。これら全ての方法は、非常に時間を要するものであるため、同定されたHLAリガンドが、ヒトの組織によってin vivoで実際に提示される場合、不明確なままであることが多々ある。本発明者等は、充実性腫瘍切片からHLAクラスIIリガンドを直接分離することが可能であることを初めて示すことができた。そのため、in vivoで腫瘍、および、周囲の組織によって提示されるペプチドを同定し、それにより、適当なT細胞レセプターを担持するT細胞によって認識することができ、同時に共刺激リガンドCD4をその細胞表層上に発現させる。内因的にプロセスしたHLAクラスIIリガンドの源として作用するタンパク質のうち、いくつかのハウスキーピングかつ免疫関連タンパク質が同定された。TAA由来のペプチドは検出することができ、そのためTAAの関連クラスIIリガンドをin vivo同定するための確実なアプローチを得ることができる。
本発明者等は、IGFBP3由来の1つのコア配列とMMP7由来の1つのリガンドを説明する3つのリガンドを同定した。本発明者等は、腎細胞癌において過剰発現するこれらのタンパク質を発見し、さらには、腫瘍関連として説明した(Miyamoto, S., K. Yano, S. Sugimoto, G. Ishii, T. Hasebe, Y. Endoh, K. Kodama, M. Goya, T. ChibaとA. Ochiai、2004年、マトリックスメタロプロテイナーゼ7はインスリン様成長因子結合タンパク質3に対するそのプロテナーゼ活性によりインスリン様成長因子の生物学的利用率を促進する、Cancer Res. 64:665-671; Sumi, T., T. Nakatani, H. Yoshida, Y. Hyun, T. Yasui, Y. Matsumoto, E. Nakagawa, K. Sugimura, H. KawashimaおよびO. Ishikoの2003年、ヒトの腎細胞癌におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ7と2の発現;Oncol. Rep. 10:567-570;Cheung, C.W., D.A. Vesey, D.L. NicolおよびD.W. Johnson、2004年、近位尿細管の調節におけるIGF-IとIGFBP-3の役割、および腎細胞癌の細胞増殖;Kidney Int. 65:1272-1279)。これらのタンパク質はHLAクラスII分子に無差別に結合し、異なる健康なドナー由来のCD4陽性T細胞を活性化させることができた。したがって、本発明者等のアプローチは、TAA由来の新たなクラスIIペプチド候補の同定において医療的なワクチン接種プロトコルにおいて有用となるであろう。
本発明は、さらなる態様において、患者の標的細胞を死滅させる方法に関し、該標的細胞は本明細書で与えられるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現し、該方法は、有効量の、本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターを患者に投与することを含み、該ペプチドの量、該核酸の量または該発現ベクターの量は、該患者における抗標的細胞免疫応答を誘発するのに有効である。
本発明は、さらなる態様において、患者の標的細胞を死滅させる方法に関し、該標的細胞は本明細書で与えられるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現し、該方法は、有効数の本発明で定義する細胞障害性Tリンパ球(CTL)を患者に投与することを含んでなる。
本発明は、さらなる態様において、標的細胞が本発明によって与えられるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する、患者の標的細胞を死滅させる方法に関し、該方法は、(1)患者から細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)を得るステップと、(2)該細胞を、TCRまたは上記で定義したように機能的に同等な分子をエンコードするポリヌクレオチド中に導入するステップと、(3)ステップ(2)で作製された細胞を患者に導入するステップ、とからなる。
好ましくは、標的細胞は癌細胞である。さらに好ましくは、該癌は白血病またはリンパ種であり、これは本発明によって与えられるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する。
本発明に関連して、充実性腫瘍の腫瘍細胞が、同じ組織の健康な細胞とは対照的に、ヒトのHLAクラスII分子をその表面に発現することが意外にも判明した。この事実は、Brasanac等においてのみ開示されており(Brasanac D, Markovic-Lipkovski J, Hadzi-Djokic J, Muller GA, Muller CA、HLAクラスII抗原と腫瘍浸潤性腎細胞癌の単核細胞の免疫組織学的分析:臨床的ならびに組織病理学的データとの相関関係、Neoplasma. 1999年;46(3):173-8)、ここで、37個の腎細胞癌(RCC)の凍結切片(25個は明細胞型、10個は顆粒細胞型、2個は嫌色素性型)が、HLAクラスII抗原の分析のために、ならびに腫瘍浸潤単核細胞(TIM)に関しては抗CD14、抗CD3、抗CD4および抗CD8MoAbのトランスフェクト分析のために、モノクローナル抗体(MoAb)をHLA-DR、HLA-DPおよびHLA-DQ抗原に適用する間接的な免疫ペルオキシダーゼ法で研究された。陽性細胞の数は、半定量的に見積もり、免疫組織化学的調査の結果は、RCCの臨床的特徴(患者の年齢ならびに性別、腫瘍のサイズおよびTNMステージ)と組織病理学的(細胞学的、組織学的、等級的)特徴と相関関係を有していた。全てのRCCはHLA-DR抗原、92%HLA-DQ抗原および73%HLA-DP抗原を発現し、その発現レベルはDR>DQ>DPの順であったが、分析した組織病理学的パラメータや臨床的パラメータでは統計的に重要な相関関係は得られなかった。単核球は、Tリンパ球よりも多く、また、CD4陽性T細胞はCD8陽性T細胞より多く、そのため、Tリンパ球優勢であり、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞がほぼ同数の腫瘍は、最大平均径を有していた。Tリンパ球の腫瘍細胞による不適切な活性化(抗原提示能にもかかわらず)は、RCC上での異常性HLAクラスII抗原の発現を伴う、より攻撃的な腫瘍行動を示すパラメータの関連に対する理由となり得た。
本明細書で開示かつ説明する本発明の特徴が、示したようなそれぞれの組み合わせのみならず、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、特異な方法で用いることは理解されるべきである。
本発明を図面、配列表および実施例を参照しながら以下でより詳細に説明する。以下の実施例は例示目的でのみ与えられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
SEQ ID No 1からSEQ ID No 49は、本発明によるMHCクラスIIによって提示されるペプチドを含むT細胞エピトープのペプチド配列を示している。
SEQ ID No 50からSEQ ID No 79は表3のペプチド配列を示している。
図1は、3人の患者のRCCにおけるHLAクラスII分子の発現を示している。患者RCC132の腫瘍において、HLA陽性細胞はマージン(A,B)において好ましく局部に留まったが、より乳頭構造を表す患者RCC190とRCC211由来のHLAクラス2発現パターンは、ずっと均一に広がった(C,E,G)。視覚化した連続組織切片のCD68陽性マクロファージ(B,D,F)は、空間的に近接した関係の腫瘍浸潤単核免疫細胞とHLAII発現腫瘍細胞を図示している。特定の抗体ではなくマウスIgGでの培養は、不変的に陰性染色結果を示した。大文字のTは腫瘍を示す。
図2は、IGFBP3 169-181, MMP7 247-262およびCCND1 198-212に特異なCD4陽性T細胞のFACS分析を示している。CD4-FITCに対する細胞内IFNγ着色の代表的なドットブロットを示している。
図3は、各ドナーで検出された各ペプチドに対する抗原特異的IFNγ生成CD4陽性T細胞の概略図を示している。各ドナーおよび刺激に用いたペプチドのINFγ生成CD4陽性T細胞の割合を示している。細胞は96穴プレートで培養し、各ドナー、各ペプチドに対して7穴が対応している。四角で囲われているのは、陽性と認められる値であり、IFNγ生成CD4陽性T細胞の割合は、ペプチドのない、陰性の対照例と比較して2倍高かった。無関係のタンパク質で刺激した後に検出されたINFγ生成CD4陽性T細胞の割合は、IGFBP3 169-181で3回目に刺激した後のドナーを除いて、ペプチドを用いない刺激後の値と相互に関連した。しかしながら、この効果は、4回目の刺激後にはもはや見られなかった。
図4は、CCA165におけるHLAクラスII分子の発現を示している(結腸の腺癌を適度に分化させた)。正常な結腸粘膜の領域の固有層(アステリスクを付したパネルcと、左側のパネルa)において、通常、いくつかのHLAクラスII陽性マクロファージは観察されるが、上皮内の細胞はHLAクラスII発現に関しては不変的に陰性であった。しかしながら、腫瘍の異なる領域由来の上皮内細胞においては、右側のパネルaとパネルb,dにおいて示すようにHLAクラスIIの著しい発現が顕著であった。
図5aと図5bは、ヒトの原発腫瘍から分離したHLAクラスII分子から溶離したペプチドのペプチド配列の、質量分析による同定を示している。図5aにおいて、自然にプロセスされ提示されたMMP7由来HLAクラスIIリガンドの断片化から派生した断片は、SEQ ID No. 1 (SQDDIKGIQKLYGKRS)のペプチド配列に対応している。注釈付きの断片を表5に示す。図5bにおいて、合成ペプチドの断片化から派生した断片は、SEQ ID No. 1のペプチド配列を有する。合成ペプチドと自然にプロセスされたペプチド両方の断片化により、当量の断片化パターンが生成され、ヒトのMMP7由来HLAクラスIIリガンドの予め特徴付けられなかったペプチド配列(SEQ ID No. 1)の一次アミノ酸配列を演繹して確認することが可能となる。
(表1):HLA-DRB1*0101のモチーフに従って整列したペプチド配列
19より大きいスコアを有するペプチドはDRB1*0101バインダーと見なされた。
材料および方法
MCHクラスII免疫組織学:腫瘍を、4%リン酸溶液で緩衝したホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン-エオシンで染色し、光学顕微鏡で調べた。RCCの診断は、型通りの組織病理学的かつ免疫組織学的調査(Fleming, S.とM. O'Donnell、2000年、腎上皮内新生物の外科病理学:最新の進歩と近況;Histopathology 36:195-202)にしたがって行った。
MHCクラスII分子またはCD68分子の免疫組織学的検出に関して、5μmパラフィン包埋組織切片のそれぞれを、pH6の10mMクエン酸バッファーで予め処理し、次いでマウス抗HLA-DRα鎖mAb(クローンTAL.1B5、1:50)またはCD68Ab(クローンPGM1、1:50)(DAKO、独国のハンブルク)またはマウスIgG1(2μg/ml、米国サンディエゴのBD Biosciences Pharmingen)で培養し、Ventana iView DAB検出キット(Nexes System, Ventana Medical Systems,仏国イルキルシュ)を用いて視覚化した。組織切片は、ヘマトキシリンで対比染色し、最後にエンテラン(Entellan)中に包埋した。
HLA-DR結合ペプチドの溶離と分子分析:凍結した腫瘍試料を、前述したようにプロセスし(Weinschenk, T., C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K.H. Bichler, D. Wernet, S. StevanovicとH.G. Rammensee、2002年、患者個々の抗腫瘍ワクチンの構築のための統合機能的ゲノムアプローチ;Cancer Res. 62:5818-5827)、次いでペプチドを標準プロトコル(Dengjel, J., H.G. RammenseeとS. Stevanovic、2005年、自然に提示されたMHCクラスIIリガンドにおけるグリカン側鎖、J. Mass Spectrom. 40:100-104)に従って、HLA-DR特異的mAb L243(Lampson, L.A.とR. Levy、1980年、ヒトのB細胞系におけるIa状分子の2つの群;J. Immunol. 125:293-299)を用いて分離した。
天然のペプチド混合物を、Q-TOF I質量分析計(独国エシュボルンのWaters)につなげた逆相超高速液体クロマトグラフィー(ultimate HPLC system)(オランダ、アムステルダムのDionex)によって、あるいは前述のQ-TOF Ultima API(Waters)につなげた逆相CapLC高速液体クロマトグラフィによって分析した(Lemmel, C., S. Weik, U. Eberle, J. Dengjel, T. Kratt, H.D. Becker, H.G. RammenseeとS. Stevanovic、2004年、安定したアイソトープラベリングを用いたMHCリガンドの、質量分析による差量分析;Nat.Biotechnol. 22:450-454)。フラグメントのスペクトルを、手動と自動で分析した。
高濃度オリゴヌクレオチドマイクロアレイによる遺伝子発現分析:腫瘍、自己の正常な腎臓試料からRNAを分離ならびAffymetrix Human Genome U133 Plus 2.0オリゴヌクレオチドマイクロアッセイによる遺伝子発現分析(米国カリフォルニア州サンタクララのAffymetrix)を前述の通りに行った(Kruger, T., O. Schoor, C. Lemmel, B. Kraemer, C. Reichle, J. Dengjel, T. Weinschenk, M. Muller, J. Hennenlotter, A. Stenzl, H.G. RammenseeとS. Stevanovic、2004年、原発性腎細胞癌からの学習:免疫療法のための新規な腫瘍抗原とHLAリガンド;Cancer Immunol. Immunother)。データを、GCOSソフトウェア(Affymetrix)で分析した。腫瘍と自己由来の正常な腎臓との組み合わせの対比を、基準として別個のアレイを用いて計算した。RCC149とRCC211に関して、自己由来の正常な腎臓アレイデータは入手できなかった。そのため、市販されているプールされた健康なヒトの腎臓RNAを得て(独国ハイデルベルクのClonetech)これら腫瘍について、基準として用いた。
DCの成熟:健康なドナーからの血液を用いてDCを調整した。すなわち、標準勾配遠心分離を用いてPBMCを分離し(Lymphocyte Separation Medium, PAA Laboratories GmbH, オーストリア、パッシング)、X-Vivo15培地中に7 × 106 個(細胞)/mlの密度でプレートを作製した。37℃で2時間後、非接着細胞を取り除き、接着単核球を6日間、100nm/mlのGM-CSFと40ng/mlのIL-4とを用いたX-Vivo培地で培養した(独国フライゾイテ、AL-ImmunoTools)。7日目に、未成熟DCを、10ngmlのTNF-γ(独国ヴィースバーデンのR&D Systems)と20μg/mlのpoly(IC)(独国シュタインハイムのSigma Aldrich)とで3日間活性化させた。
抗原特異的CD4陽性T細胞の生成:ウェル毎に106 個のPBMCを、2 × 105ペプチドのパルスした(5μm/ml)自己由来DCで刺激した。細胞を、10ng/mlのIL-12の存在下で補助したRPMI1640(独国ハイデルベルクのPromocell)のT細胞培地の96ウェルプレート(ドナー毎、ペプチド毎に7ウェル)で培養した。37℃で3?4日培養後、80U/mlのIL-2(米国カリフォルニア州のProleukin, Chiron Corporation, Emeryville)と5nm/mlのIL-7(Promocell)とを含む新鮮な培地を添加した。自己由来PBMCとペプチドを用いて、6?8日ごとに再刺激を行った。
細胞内IFNγ染色:刺激の3順目と4順目の後、PBMCを解凍し、X-Vivo15培地内で2回洗浄し、T細胞培地内において107 個(細胞)/mlで再懸濁し、一晩培養した。翌日、5μg/mlペプチドでパルスしたPBMCを、比率1:1のエフェクター細胞で6時間培養した。ゴルジストップ(独国ハイデルベルクのBecton Dickinson)を培養の最後の4時間で添加した。
細胞を、サイトフィックス/サイトパームPlusキット(Becton Dickinson)とCD4-FITC-(Immunotools)、IFNγ-PE-とCD8-PerCPクローンSK1抗体(Becton Dickinson)を用いて分析した。陰性の対照例(コントロール)について、7ウェルの細胞をプールし、無関係なペプチドを用いて、あるいはペプチドを用いずにそれぞれ培養した。陽性のコントロールに対してPMA/イオノマイシンによる刺激を用いた。細胞を、3色FACSCalibur(Becton Dickinson)で分析した。
HLAクラスIIのRCCによる発現
正常な、非炎症性条件下において、HLAクラスII分子は、造血系の細胞および胸腺上皮細胞でのみ発現されなければならない(Mach, B., V. Steimle, E. Martinez-SoriaとW. Reith、1996年、MHCクラスII遺伝子の調節:病気からの教訓、Annu.Rev.Immunol. 14:301-331)。炎症中に状況は変化する。HLAクラスIIの発現は、ほとんどの細胞型ならびに組織中でIFNγにより誘導することができる(Leib und Gut-Landmann, S., J. M. Waldburger, M. Krawczyk, L. A. Otten, T. Suter, A. Fontana, H. Acha-OrbeaとW. Reith、2004年、ミニレビュー:CIITAの特異性と発現、MHCクラスII遺伝子のマスター調節、Eur.J.Immunol. 34:1513-1525)。RCCの発生が、炎症の発生に伴う場合が多々あるため(Blay, J. Y., J. F. Rossi, J. Wijdenes, C. Menetrier-Caux, S. Schemann, S. Negrier, T. PhilipとM. Favrot、1997年、腎細胞関連の腫瘍随伴性炎症性症候群におけるインターロイキン6の役割、Int. J. Cancer 72:424-430;Elsasser-Beile, U., M. Rindsfuser, T. Grussenmeyer, W. Schultze-SeemannとU. Wetterauer、2000年、腎細胞癌の患者の末梢リンパ球と比較したCD4陽性またはCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球における、IFNγmRNAの発現の増大、Br. J. Cancer 83:637-641)、報告されているように、クラスII分子が、腫瘍周辺においてまたは腫瘍により確かに発現する。
HLAクラスII分子の免疫組織学的染色
本発明者等は、組織学的に明細胞と、免疫組織学的染色による乳頭腎癌を含む10のRCC試料のHLAクラスII発現を分析し、調査した資料の全てが、クラスII陽性腫瘍細胞に関連していることを発見した。図1Aに例示されるように、顕著なHLAクラスIIの発現は、腫瘍周辺で検出される場合が多かった。この領域において、本発明者等は、連続切片中での組織切片におけるCD68陽性マクロファージの視覚化によって図示したように(図1B)、HLA陽性腫瘍細胞の腫瘍浸潤性免疫細胞との近接した空間における相関関係を観察した。より多くの乳頭アーキテクチャを露出するRCCにおいて、HLAクラスII分子の発現は、腫瘍全体にわたってより均一に分布する(図1C,E,G)。連続組織切片におけるHLAクラスIIとCD68免疫組織学的染色パターンの比較は、マクロファージに加えて、腫瘍細胞もまたHLAクラスIIを発現することを明白に示している(図1C,Dと図E,F)。IFNγ生成CD4陽性TH1細胞ならびにナチュラルキラー(NK)細胞が、RCCに浸潤することが示されている(Cozar, J.M., J. Canton, M. Tallada, A. Concha, T. Cabrera, F. GarridoとO.F. Ruiz-Cabello、2005年、ヒトの腎癌の腫瘍浸潤性CD4Tリンパ球におけるNK細胞とケモカインレセプターの分析;Cancer Immunol. Immunother)。クラスII陽性腫瘍細胞は、切片化した腫瘍の外部部分において主として見つかったため、腫瘍によって誘引される白血球が、隣の悪性細胞に作用するIFNγを生成することを推測することができる。HLAクラスII分子の新生組織における異常な発現は、RCCに限定されず、TCCおよびCCAにおいてもまた検出され得る。図4は、ヒトの結腸の腺癌から抽出した組織の免疫組織学的染色を示している。
IFNγの発現とIFNγによって誘発された遺伝子転写の分析
さらに、本発明者等は、オリゴヌクレオチドマイクロアッセイを用いた比較遺伝子の発現分析によるHLAクラスIIの発現を調査した。この技術により、本発明者等は、発現細胞種とは関連のない切片化した腫瘍中でHLAクラスIIの発現全体を評価することができた。本発明者等は、RCC149、RCC180、RCC190およびRCC211の4つの腫瘍における異なる発現を分析し、正常な標準腎臓と比較した。4つの腫瘍全てにおいて、HLAクラスII分子をエンコードする遺伝子が、過剰発現することがわかった(表2)。考えられる理由の1つは、IFNγによって誘引された発現であり、その理由に対して、本発明者等は、インターフェロンによって増加調節されるその他の既知の遺伝子を探した(Kolchanov, N.A., E.V. Ignatieva, E.A. Ananko, O.A. Podkolodnaya, I.L. Stepanenko, T.I. Merkulova, M.A. Pozdnyakov, N.L. Podkolodny, A.N. NaumochkinとA.G. Romashchenko、2002年、転写調節領域データベース(TRRD):2002年における現状、Nucleic Acids Res. 30:312-317)。興味あることに、著しい数のそのような遺伝子が、1つまたはより多くの腫瘍試料中で過剰発現することがわかった。表2は、本発明者等の初期の発見(Weinschenk, T., C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K.H. Bichler, D. Wernet, S. StevanovicとH.G. Rammensee、2002年、患者固有の抗腫瘍ワクチンへの総合機能的ゲノムによるアプローチ; Cancer Res. 62:5818-5827)に基づく、4つ全ての試料中で再現性よく増加調節されるインターフェロン誘引性遺伝子を示している。それらの中は、細胞質ゾル中に存在する大型タンパク質分解性のホロ酵素の構成サブユニット、プロテアソームに対して、交換して免疫プロテアソームを形成するLMP2タンパク質、LMP7タンパク質とMECL1タンパク質がある。IFNγ誘引性サブユニットに対して、正常に発現したプロテアソームのタンパク質のサブユニットの交換は、インターフェロンリッチな環境における特徴的なプロセスである。さらに、IFNγは、定量的リアルタイム(RT)PCR(TagMan)によって直接評価した。表2に表示された腫瘍は、同じドナー(データは図示せず)からの自己由来の正常なRNA試料と比較して5倍?60倍のIFNγmRNA過剰発現を示した。したがって、本発明者等の結果は、IFNγがRCCにおいて重要な役割を果たし、クラスIIの発現を過剰にする理由となることを示している。
(表2):インターフェロン誘発性遺伝子のmRNAの発現
腫瘍試料中における発現を、自己由来の正常な腎臓(RCC180、RCC190)またはプールされた健康な腎臓(RCC149、RCC211)と比較した。全ての遺伝子は、4つの腫瘍全てに対して、GCOSソフトウエアのchange-callアルゴリズムにおける"増加"を示し、インターフェロン誘発性として説明された。
癌組織から単離したHLA-DRリガンド
公的に入手可能なデータによれば、充実性腫瘍中で発現したHLAクラスII分子により結合されたペプチドは、これまでのところ他方によって単離または同定されていない。本発明者等は、それぞれ異なる10個のRCC、3つのCCAおよび1つのTCCを分析し、全ての試料からHLA-DRリガンドを単離することができ、総計で453個のペプチドをカウントすることができた(データは示さず)。ペプチドのシーケンスを、前述したクロマトグラフィ分離とタンデム質量分光分析(LC-MS/MS)とを組み合わせて確認した(Weinschenk, T., C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K.H. Bichler, D. Wernet, S. StevanovicとH.G. Rammensee、2002年、患者個々の抗腫瘍ワクチンの設計への統合機能的ゲノムアプローチ、 Cancer Res. 62:5818-582; Schirle M, Keilholz W, Weber B, Gouttefangeas C, Dumrese T, Becker HD, Stevanovic S, Rammensee HGの、腫瘍関連MHCクラスIリガンドの新規なT細胞単独アプローチによる同定;Eur J Immunol. 2000年; 30(8):2216-25)。
LC-MS/MSによるペプチドの新規のシーケンスの例を図5aと図5bとに示す。図5aと図5bに注釈された衝突フラグメントの導かれた一次アミノ酸配列は、表5に含まれる。腫瘍試験片は、HLA遺伝子型、重さ、ならびに同定されたHLAリガンドの総数において異なった。表3は、1つの例示的腫瘍試料、RCC190から同定されたペプチドと対応するソースタンパク質の代表的なリストを示す。ペプチドは、前述の細胞のHLAクラスII分子から単離した(Dengjel, J., P. Decker, O. Schoor, F. Altenberend, T. Weinschenk, H.G. RammenseeとS. Stevanovicの、2004年、HLAクラスIIターゲッティングと、示差質量分析との新規な組み合わせによる自然にプロセスされたサイクリンD1 Tヘルパーエピトープの同定 、Eur.J.Immunol. 34:3644-3651)。
(表3):RCC190から単離したHLA-DRリガンドのリスト例
RCC190から単離したHLA-DRリガンドのコア配列を示す(HLA-DRB1*11, DRB1*15, DRB3, DRB5)。
腫瘍の重さと同定されたHLAリガンドの数との間には相関関係はなかった。ペプチド源タンパク質は、2つのグループに分けられた。一方においては、白血球により提示されるべきリガンドが見つかり、そのようなペプチドは、補体成分、例えばC3、C4A、C4結合タンパク質α、および、免疫系の細胞、例えばCD14の特定の機能にリンクするその他のタンパク質、およびIgG結合タンパク質Fcフラグメントなどの由来のペプチドであった。他方においては、本発明者等は、過剰発現TAA、例えばビメンチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ7、真核翻訳延長因子1α1およびニコチンアミドNメチルトランスファーゼなど由来の腫瘍細胞により提示された前記未知のペプチドの性質ならびに特徴を開示することができた。この観察は、免疫組織学データ(図1、図4)にしたがうものであり、HLAクラスII陽性腫瘍細胞と浸潤性白血球が分析した試料中に存在し、抗原由来の溶離ペプチドステムがこれら異なる細胞型において過剰発現することが判明したことを示している。
TAA由来のペプチドを同定するため、本発明者等は、個々のリガンドのためのソースプロテインを、腫瘍のミクロアレイ分析により検出した過剰発現遺伝子と比較した(Weinschenk, T., C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K.H. Bichler, D. Wernet, S. StevanovicとH.G. Rammenseeの、2002年、患者個々の抗腫瘍ワクチンの構築のための統合機能的ゲノムアプローチ;Cancer Res. 62:5818-5827;Kruger, T., O. Schoor, C. Lemmel, B. Kraemer, C. Reichle, J. Dengjel, T. Weinschenk, M. Muller, J. Hennenlotter, A. Stenzl, H.G. RammenseeとS. Stevanovic、2004年、原発性腎細胞癌からの学習:免疫療法のための新規な腫瘍抗原とHLAリガンド;Cancer Immunol.Immunother)。本発明者等は、インスリン様成長因子結合タンパク質3、RCC190上のIGFBP3 166-181由来のペプチドを同定した。さらに、このペプチドの2種の変形である、IGFBP3 169-181とIGFBP3 169-184は、HLA-DRB1*0101に結合させるのに必要かつ十分な同じ配列コアモチーフを含み、TCC108上で見つかった。同じ腫瘍からは、マトリックスメタロプロテイナーゼ7、MMP7 247-262由来のペプチドを分離することができた(表1)。mRNAレベルにおいて、MMP7は、分析したRCC23のうちの13で過剰発現し、IGFBP3は22で過剰発現した(データは示さず)。総計で、当初同定した453のペプチド配列(図示せず)の他、49のペプチド(SEQ ID Nos. 1 - 49)の内在抗原は、本発明者等の実験(本明細書中に含まれるデータ)、あるいは他者の実験(Miyamoto, S., K. Yano, S. Sugimoto, G. Ishii, T. Hasebe, Y. Endoh, K. Kodama, M. Goya, T. ChibaとA. Ochiai、2004年、マトリックスメタロプロテイナーゼ7は、インスリン様成長因子結合タンパク質3上でのそのプロテイナーゼ活性によりインスリン様成長因子生体利用効率を促進する、Cancer Res. 64:665-671;Sumi, T., T. Nakatani, H. Yoshida, Y. Hyun, T. Yasui, Y. Matsumoto, E. Nakagawa, K. Sugimura, H. KawashimaとO. Ishiko、2003年、マトリックスメタロプロテイナーゼ7と2のヒト腎細胞癌における発現、Oncol. Rep. 10:567-570; Cheung, C.W., D.A. Vesey, D.L. NicolとD.W. Johnson、2004年、近位尿細管の調節および腎細胞癌の細胞増殖におけるIGF-IとIGFBP-3の役割、Kidney Int. 65:1272-1279;Hao, X., B. Sun, L. Hu, H. Lahdesmaki, V. Dunmire, Y. Feng, S.W. Zhang, H. Wang, C. Wu, H. Wang, G.N. Fuller, W.F. Symmans, I. ShmulevichとW. Zhang、2004年、cDNAマイクロアッセイと組織マイクロアレイ分析の組み合わせにより明らかにした初期の悪性乳癌とそれらのリンパ節転移における遺伝子毎とタンパク質毎の発現、Cancer 100:1110-1122; Helmke, B.M., M. Polychronidis, A. Benner, M. Thome, J. ArribasとM. Deichmann、2004年、メラノーマ転移はシンテニン遺伝子の発現増加に関連する。Oncol. Rep. 12:221-228; Hofmann, H.S., G. Hansen, G. Richter, C. Taege, A. Simm, R.E. SilberとS. Burdach、2005年、マトリックスメタロプロテナーゼ12の発現は、非小細胞肺癌患者における局所的な再発と転移疾患と相関関係を有する、Clin. Cancer Res. 11:1086-1092;Kamai, T., T. Yamanishi, H. Shirataki, K. Takagi, H. Asami, Y. ItoとK. Yoshida、2004年、RhoA、Rac1とRac1,およびCdc42 GTPアーゼの過剰発現は精巣癌における進行に関連する、Clin. Cancer Res. 10:4799-4805; Koninger, J., N.A. Giese, F.F. di Mola, P. Berberat, T. Giese, I. Esposito, M.G. Bachem, M.W. BuchlerとH. Friess、2004年、膵臓癌における過剰発現decorin:潜在的腫瘍成長阻害と化学療法作用の減衰、Clin. Cancer Res. 10:4776-4783;Mori, M., H. Shimada, Y. Gunji, H. Matsubara, H. Hayashi, Y.Nimura, M.Kato, M. Takiguchi, T. Ochiai,とN. Seki、2004年、胃癌のリンパ節転移の急性指標として院内cDNAマイクロアレイにより同定したS100A11遺伝子、Oncol. Rep. 11:1287-1293;Nagler, D.K., S. Kruger, A. Kellner, E. Ziomek, R. Menard, P. Buhtz, M. Krams, A. RoessnerとU. Kellner、2004年、前立腺癌と前立腺上皮内腫瘍におけるカテプシンXの増加調節、Prostate 60:109-119;Nanda, A., P. Buckhaults, S. Seaman, N. Agrawal, P. Boutin, S. Shankara, M. Nacht, B. Teicher, J. Stampfl, S. Singh, B. Vogelstein, K.W. KinzlerとC.B. St、2004年、内皮細胞表面タンパク質TEM7とTEM7Rのための結合パートナーの同定、Cancer Res. 64:8507-8511;Patel, I.S., P. Madan, S. Getsios, M.A. BertrandとC.D. MacCalman、2003年、子宮癌の進行におけるカドヘリンスイッチ、Int. J. Cancer 106:172-177;Santelli, G., D. Califano, G. Chiappetta, M.T. Vento, P.C. Bartoli, F. Zullo, F. Trapasso, G. VigliettoとA. Fusco、1999年、チモシンβ10遺伝子の過剰発現はヒトの癌遺伝子において通常の事象である、Am. J. Pathol. 155:799-804;Schneider, D., J. Kleeff, P.O. Berberat, Z. Zhu, M. Korc, H. Friess,とM.W. Buchler、2002年、膵臓癌細胞におけるbetaig-h3の誘導と発現、Biochim. Biophys. Acta 1588:1-6;Welsh, J.B., L.M. Sapinoso, S.G. Kern, D.A.Brown, T. Liu, A.R. Bauskin, R.L. Ward, N.J. Hawkins, D.I. Quinn, P.J. Russell, R.L. Sutherland, S.N. Breit, C.A. Moskaluk, H.F. Frierson, Jr.とG.M. Hampton、2003年、癌組織および血清における切片化タンパク質バイオマークの大規模な概要説明、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 100:3410-3415;Xie, D., J.S. Sham, W.F. Zeng, L.H. Che, M. Zhang, H.X. Wu, H.L. Lin, J.M. Wen, S.H. Lau, L.HuとX.Y. Guan、2005年、多段階の大腸腫瘍形成と進行におけるクラステリン過剰発現の腫瘍の役割、World J. Gastroenterol. 11:3285-3289)により腫瘍関連抗原であると同定された。ペプチドが共通のHLA-DRアレルに結合する免疫刺激潜在性の分析例は、IGFBP3 169-181およびMMP7 247-262に対する抗原特異的CD4陽性T細胞の存在を明らかにする。
SEQ ID No. 1例のいくつかのHLA-DRアレルに対する無差別な結合は、いくつかの異なる方法によって明らかにすることができる。一定のMHC/HLA分子のリガンドは、全てのMHC/HLAアレルのペプチドモチーフを画定可能な、それら一次配列のある位置における化学的関連アミノ酸を担持する(Falk K, Rotzschke O, Stevanovic S, Jung G, Rammensee HG、MHC分子から溶離された自己ペプチドのシーケンシングにより明らかにしたアレル特異的モチーフ;Nature. 1991年; 351(6324):290-6)。SYFPEITHIは、エドマン分解法およびタンデム質量分析による天然リガンドの分析にもっぱら基づく精製モチーフ由来のモチーフマトリックスを用いる。これらマトリックスにより、MHCクラスIIまたはクラスII分子上に提示される所与のタンパク質配列由来のペプチドを調製することができる(Rotzschke O, Falk K, Stevanovic S, Jung G, Walden P, Rammensee HG、天然T細胞エピトープの完全な予測;Eur J Immunol. 1991; 21(11):2891-4)。
SYFPEITHIアルゴリズム(Rammensee, H.G., J. BachmannとS. Stevanovic、1997年、MHCリガンドとペプチドモチーフ、独国ハイデルベルクSpringer-Verlag;Rammensee hmann J, Emmerich NP, Bachor OA, Stevanovic S. SYFPEITHI: MHCリガンドとペプチドモチーフのデータベース、Immunogenetics、1999年;50(3-4):213-9)によって作製された予測の原理を前述の例示的ペプチド配列(SEQ ID No. 1)に適用することにより、SEQ ID No. 1の、いくつかの共通HLA-DRアレルへの結合(表7参照)が分類される。アルゴリズムは、様々な抗原、例えば、ヒトのTAATRP2(HLAクラスIリガンドの予測)(34)とSSX2(HLAクラス2リガンドの予測)由来のクラスIとクラスIIエピトープを予測するのに首尾良く用いることができた(Neumann F, Wagner C, Stevanovic S, Kubuschok B, Schormann C, Mischo A, Ertan K, Schmidt W, Pfreundschuh Mの、癌睾丸抗原HOM-MEL-40/SSX2誘導の無差別結合パターンによるHLA-DR制限ペプチドエピトープの同定;Int J Cancer、2004年;112(4):661-8)。相当な結合のための18またはより高いスコアの域値は、これまでに公表された無差別結合HLA-DRペプチドリガンドの結合スコアの分析に基づいて決定した。無差別結合は、ペプチドとSYFPEITHIテストにおけるスコア18またはより高いスコアにより示される良好な結合長または2つまたはより多くの異なる共通HLA-DRアレルとの結合と定義される。最も共通するHLA-DRアレルを表7に示す。HLA-AとHLA-DRの遺伝子座は、他と比較するとより好都合な、HLA-A2と特定のHLA-DRとの組み合わせを生成する不均衡さにリンクしている。いずれのケースにおいても腫瘍源となるHLA-DRの遺伝子型を分析し、HLA-DRB1*11とDRB1*15であることを確認した。最も共通するHLAクラスIIアレル(DRB1*0101, DRB1*0301, DRB1*0401, DRB1*0701, DRB1*1101およびDRB1*1501)に好ましいアンカーアミノ酸残基を表4に示す。例えば、HLAクラスIIアレルDRB1*0301は、所与のペプチドのコア配列のN末端からC末端から1位、4位、6位と9位における特定のアミノ酸残基を特徴付ける、その結合溝においてペプチドを優先的に結合する。具体的には、ペプチドのコア配列が4位にグルタメート残基(D)、ならびに1位にL,I,F,MまたはVのいずれか、ならびに6位にK,R,E,QまたはNのいずれか、さらには9位にY,L,またはFのいずれかを有する場合、DRB1*0301は、良好な結合を示す。
(表4):共通HLA-DRアレルのペプチドモチーフ
1つの文字コードで対応する結合ポケットにおけるアンカーアミノ酸を示している。
www.syfpeithi.deを通じて提供されるHLA分子とペプチド配列との間の相互作用を予測するためのコンピュータアルゴリズムに基づくコンピューターでの分析の結果は、ペプチドMMP7 247-262 SEQ ID No. 1が、いくつかのHLA-DRアレルに無差別に結合することを示している。予測分析の結果によれば、SEQ ID No. 1のペプチドは、DRB1*1101, DRB1*1501, DRB1*0401, DRB1*0301とDRB1*0101との相互作用に対して高い結合スコアである(表7)。ペプチドアミノ酸配列/結合長との相互作用に関するこの試験で分析したHLA-DRアレルは、HLA-A2陽性の白人集団の少なくとも69.6%におよぶ(Mori M, Beatty PG, Graves M, Boucher KM, Milford ELの、北米集団におけるHLA遺伝子とハプロタイプの頻度:the National Marrow Donor Program Donor Registry. Transplantation. 1997年; 64(7):1017-27)。現在、入手可能なHLA-DR15に関する頻度のデータがないため、HLA-A2陽性の白人集団の網羅範囲の結果を計算するのにアレルは考慮しなかった。そのため、SEQ ID No. 1により、集団に及ぶ範囲は69.9%よりずっと高いと思われ、それによりペプチドは、癌患者の多くに対する製薬的調合物の開発に関する候補として作用する良好な見通しを有することを示している。
しかしながら、予測アルゴリズムの適用では、in silico分析によるその結果が、良好なバインダーであると予測されるペプチド配列により誘発された免疫応答を証明していない他者により、以前示されたような無差別的な結合を確認する実験と組み合わされたものである場合、最終的な結果しか得られない(Bohm CM, Hanski ML, Stefanovic S, Rammensee HG, Stein H, Taylor-Papadimitriou J, Riecken EO, Hanski C、ヒト細胞傷害性T細胞により認識される腫瘍関連抗原MUC2のHLA-A2制限エピトープの同定、Int J Cancer. 1998年; 75(5):688-93)。前述の場合と同様のアーティファクトの予測は、予測に用いたアルゴリズムが、ペプチド配列をin vivo環境内(生きた細胞内)で生成させる必要がないことを考慮しないものである場合、原理的に除外することはできない。実験の確認は、生物学的試験、例えば、ペプチドの免疫原性の有無を示すことによる試験からin vitroデータを収集することによって得ることができる。したがって、SEQ ID No. 1の無差別的結合の実験的確認は、そのようなin vitroデータを収集することによって得られた。ペプチドのin vitroでのT細胞刺激実験による免疫刺激許容を試験するため、最も短い多型("コア配列")である、IGFBP3ペプチドのIGFBP3169-181およびMMP7ペプチドのMMP7247-262を用いた。
抗原特異的CD4陽性T細胞を生成し、無差別的結合に関してペプチドを試験するため、異なるHLA-DRアレル(図2)を有する4人の健康なドナーのPBMC、そのうちの1人はDRB1*1101を保有、をペプチドパルス化自己由来DCで刺激した。さらに、既知のT細胞エピトープ(Dengjel, J., P. Decker, O. Schoor, F. Altenberend, T. Weinschenk, H.G. RammenseeとS. Stevanovicの、2004年、HLAクラスIIのターゲッティングと示差質量分析との新規な組み合わせによる自然にプロセスされたサイクリンD1 Tヘルパーエピトープの同定、Eur. J. Immunol. 34:3644-3651)であるペプチドCCND1198-212を、陽性対照例(コントロール)として用いた。抗原特異的CD4陽性T細胞の生成のための読み取りシステムとして、IFNγレベルをフローサイトメトリーにより評価した。特定のT細胞部分母集団におけるIFNγ生成細胞の割合を確認するため、T細胞を、細胞内IFNγ染色法およびCD4-FITCとCD8-PerCP染色法により、刺激後の3週目と4週目に分析した。全ての実験において、無関係なペプチドによる、ならびにペプチドを用いない刺激を陰性のコントロールとして実施した。IFNγ応答は、IFNγ生成CD4陽性T細胞の割合が、陰性コントロールと比較して2倍以上高かった場合、陽性と考えられた(Horton, H., N. Russell, E. Moore, I. Frank, R. Baydo, C. Havenar-Daughton, D. Lee, M. Deers, M. Hudgens, K. WeinholdとM.J. Mc Elrathの、2004年、ウイルス特異的記憶T細胞における、インターフェロンγ分泌と細胞毒性との相関関係、J. Infect. Dis. 190:1692-1696)。
4人のドナーのうち3人において、本発明者等は、いずれのペプチドに対しても特異的CD4陽性T細胞を生成することができた(図2)。T細胞応答は、第4ドナーでは刺激後に観察することができなかった。第1ドナーにおいて、ペプチドIGFBP3 169-181による3回目の刺激後の7回の刺激試行全てにおいて、0.05%〜0.1%(図3)のIFNγ生成CD4陽性T細胞が検知された。これらのT細胞は、ほとんどのケースにおいて、さらなる刺激過程により、0.09%〜0.13%まで拡大可能であった。ペプチドIGFBP3 169-181に特異的なIFNγ生成CD4陽性T細胞もまた、第2ドナーと第3ドナーにおいて観察され、最大頻度は0.5%IFNγ生成CD4陽性T細胞と0.7%IFNγ生成CD4陽性T細胞であった。
第1ドナー、第2ドナーおよび第3ドナーはまた、ペプチドMMP7 247-262に関連するCD4陽性T細胞を示した。MMP7ペプチドに特異的なIFNγ生成CD4陽性T細胞の最も高い頻度は、第1ドナーと第2ドナーのそれぞれに見られた。第1ドナー、第2ドナーおよび第3ドナーは、ペプチドCCND1 198-212に対するIFNγ応答を示し、これはすでにMHCクラスII制限T細胞エピトープとして説明されている(Dengjel, J., P. Decker, O. Schoor, F. Altenberend, T. Weinschenk, H.G. RammenseeとS. Stevanovicの、2004年、HLAクラスIIターゲッティングと示差質量分析との新規な組み合わせによる、自然にプロセスされたサイクリンD1 Tヘルパーエピトープの同定、Eur. J. Immunol. 34:3644-3651)。
したがって、IGFBP3、MMP7およびCCND1由来のペプチドは、異なるHLA-DRアレルを有する4人の健康なドナーのうちの3人において、CD4陽性T細胞応答を誘引可能な無差別的なHLAクラスIIバインダーである。IGFBP3ペプチドとMMP7ペプチドが誘導された2人の腫瘍患者のHLAアレルを、これら4人の健康なドナーと比較した場合、ペプチドがHLA-DRB1*01、HLA-DRB1*04およびHLA-DRB1*11によって提示されることは明らかになる。前述の3つのHLA-DRアロタイプすべては、それらのβ鎖の86位にグリシンアミノ酸残基と、57位にアスパラギン酸をそれぞれ有する(www.anthonynolan.com/HIG参照)。したがって、その結合ポケットP1とP9に対して、それらは非常に類似した結合特徴を有する(Rammensee, H.G., J. BachmannとS. Stevanovic、1997年、MHCリガンドとペプチドモチーフ、独国ハイデルベルクのSpringer-Verlag)。ペプチドCCND1 198-212に関して、HLA-DR*0401とHLA-DR*0408により提示されることが知られているT細胞エピトープ(Dengjel, J., P. Decker, O. Schoor, F. Altenberend, T. Weinschenk, H.G. RammenseeとS. Stevanovic、2004年、HLAクラスIIターゲッティングと示差質量分析との新規な組み合わせによる、自然にプロセスされたサイクリンD1 Tヘルパーエピトープの同定、Eur. J. Immunol. 34:3644-3651)、該エピトープは真性のままである。第4ドナーは、HLA-DRB1*0318とHLA-DRB1*1401を保持しており、それらのβ鎖の一次アミノ酸配列において上述したものとは異なるペプチドモチーフを有するアレルである。これは、このドナーの細胞を用いた2つのペプチドに対するT細胞応答を誘発することが不可能である理由を説明するものである。
興味深いことに、3種のペプチドで刺激した後に、IFNγ生成CD8陽性キラーT細胞が2人のドナー、特に第3ドナーで検出され、第1ドナーではより少なかった(データは示さず)。
(表6):北米白人集団のハロタイプ頻度
血清学的ハロタイプを示している。"n.a."は割り当てがないことを意味する。
(表7):SEQ ID No. 1の共通HLA-DRアレルに対する結合スコア
白人集団における最も共通のHLA-DRB1アレルに対するSEQ ID No. 1とSEQ ID No. 25 SYFPEITHI結合スコアを示している。対応する血清ハロタイプのHLA-A2陽性の白人の頻度は、かっこ内に示す。ペプチドは、スコアが18かあるいは18より大きかった場合にHLAクラスII分子に十分良好に結合すると考えられる。