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本発明は、新規3,4−ジヒドロ−2H−ピロール化合物及びその用途に関する。
近年、医薬や農薬を指向した、人や動物に対し比較的安全性の高い天然物由来の生理活性成分の探索研究が盛んに行われている。中でも、植物の精油は、例えば、抗菌作用、心理作用及び生体リズムの調節作用を示すことが知られている。
ケシ目ケマンソウ科キケマン属(Papaverales Fumariaceae Corydalis)の植物に属するムラサキケマン(Corydalis incisa)は、殺虫、解毒等の作用を有することが知られている(例えば、非特許文献1)。また、ツルケマン(別名:ツルキケマン)(Corydalis ochotensis)は、解熱、鎮痛、利尿等の作用を有することが知られている(例えば、非特許文献2及び3)。
中薬大辞典 小学館 初版 第二巻 p1017-1018 Arch. Pharm. Res. 23, 459-460, (2000) Lee, T. B., Illustrated Flora of Korea. Hanygmoonsa, Seoul, p.385 (1989)
本発明は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用、殺虫作用、害虫忌避作用等の活性を有する新規な3,4−ジヒドロ−2H−ピロール化合物又は植物の精油を提供することを目的とする。また、該化合物又は植物の精油を有効成分として含む種々の用途を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物に属するツルケマン(Corydalis ochotensis)及びムラサキケマン(Corydalis incisa)から得られる精油、並びに該精油から単離された(E)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール及び/又は(Z)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロールが、アセチルコリンエステラーゼ(以下、AChEとも記載する)阻害作用、殺虫作用、害虫忌避作用等を有することを見出した。かかる知見に基づき、さらに検討を加えて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の化合物又はその塩、及びその用途を提供する。
項1 式(I):
Figure 0005688945
(式中、波線はE体及び/又はZ体の幾何異性体を示す。)
で表される化合物又はその塩。
項2 項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む医薬組成物。
項3 項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
項4 項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む殺虫剤。
項5 項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む害虫忌避剤。
項6 ケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物の精油を有効成分として含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
項7 ケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物の精油を有効成分として含む殺虫剤。
項8 ケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物の精油を有効成分として含む害虫忌避剤。
本発明の3,4−ジヒドロ−2H−ピロール化合物及びケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物の精油は、高いAChE阻害作用、殺虫作用、害虫忌避作用等を有する。
実施例2で評価された、精油(●)、化合物1(■)、化合物2(▲)及び及びプレゴン(▼)における濃度(mM)とAChE阻害率(%)の関係を示すグラフである。
本発明は、高いAChE阻害作用、殺虫作用、害虫忌避作用を有する、新規3,4−ジヒドロ−2H−ピロール化合物及びその用途を提供する。3,4−ジヒドロ−2H−ピロール化合物としては、式(I):
Figure 0005688945
(式中、波線はE体及び/又はZ体の幾何異性体を示す。)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。具体的には、下記の式(I−E)及び/又は式(I−Z):
Figure 0005688945
で表される化合物又はその塩である。つまり、式(I−E)で表される化合物は、(E)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロールであり、式(I−Z)で表される化合物は、(Z)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロールである。両化合物はそれぞれ単離されていてもよく、或いは混合物であってもよい。
本発明は、式(I)で表される化合物の塩をも包含する。式(I)で表される化合物の塩を形成し得る酸としては、特に限定はなく無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硝酸、臭化水素酸、硫酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の低級(例えば、炭素数1〜11)脂肪酸;フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸等の多塩基酸;グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸;安息香酸、アニス酸等の芳香族カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の低級(例えば、炭素数1〜11)脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等が挙げられる。式(I)で表される化合物とこれらの酸との塩は、いずれも公知の方法を用いて製造することができる。
式(I)で表される化合物は、ケシ目ケマンソウ科キケマン属の植物から得られる精油に含まれる成分である。該植物としては、例えば、ツルケマン(Corydalis ochotensis)、ムラサキケマン(Corydalis incisa)、コリダリス アマビリス(Corydalis amabilis)、コリダリス アマビリス チャム エト シュレッヒト(Corydalis amabilis Cham. Et Schlecht.)、コリダリス アマビリス チャム エト シュレッヒト ヴァル アムレンシス マキシム(Corydalis amabilis Cham. Et Schlecht. Var. amurensis Maxim)、コリダリス ボワリ ヘムスル(Corydalis boweri Hemsl.)、コリダリス ブンゲアナ トゥルクズ(Corydalis bungeana Turcz.)、コリダリス デクムベンス(サンブ)パース(Corydalis decumbens (Thunb.) Pers.)、コリダリス エドゥリス マキシム(Corydalis edulis Maxim.)、コリダリス エスキロリ レブル(Corydalis esquirolii Levl.)、コリダリス ハモサ ミゴ(Corydalis hamosa Migo)、コリダリス リナリオイデス マキシム(Corydalis linarioides Maxim.)、コリダリス パリダ(サンブ)パース(Corydalis pallida (Thunb.) Pers.)、コリダリス ラセモサ (サンブ)パース(Corydalis racemosa (Thunb.) Pers.)、コリダリス レモタ フィッシュ エクス マキシム(Corydalis remota Fisch. Ex Maxim.)、コリダリス ステナンサ フランチ(Corydalis stenantha Franch.)、コリダリス スアベオレンス フランチ(Corydalis suaveolens Hance)、コリダリス サリクトリフォリア フランチ(Corydalis thalictrifolia Franch.)、コリダリス トメンテラ フランチ(Corydalis tomentella Franch.)、コリダリス ヤンフスオ ダブリュ ティー ワング(Corydalis yanhusuo W. T. Wang)、ヤマエンゴサ(Corydalis lineariloba)、エゾエンゴサク(Corydalis ambigua)、ジロボウエンゴサク(Corydalis decumbens)等が挙げられる。このうち好ましくはツルケマン及び/又はムラサキケマンである。
式(I)で表される化合物は、上記植物から水蒸気蒸留法、ハイドロディスティレーション(HD)法等を用いて精油を取得することができ、この精油をさらに蒸留、クロマトグラフィー等を用いて精製することにより得ることができる。該植物は、根、茎、葉、花、実、種等いずれの部位を用いてもよい。
従来、例えば、ムラサキケマン等から溶剤を用いた抽出方法を用いて種々のアルカロイドが単離されていたが(例えば、非特許文献1)、今回、水蒸気蒸留法、ハイドロディスティレーション法等を採用することにより、比較的低沸点の新規化合物(式(I)で表される化合物)を効率よく単離することに成功した。
上記植物(特に、ツルケマン及び/又はムラサキケマン)からの精油の取得、及び式(I)で表される化合物の単離及び同定は、具体的には実施例1の記載に従い行うことができる。
本発明の式(I)で表される化合物及び精油は、高いAChE阻害作用、殺虫作用、害虫忌避作用等の活性を有している。
AChE阻害活性に関しては、式(I)で表される化合物及び精油はポジティブコントロールであるプレゴン(pulegone)より高い活性を有している(実施例2を参照)。
殺虫活性に関しては、式(I)で表される化合物はポジティブコントロールであるロテンノン(rotenone)より高い活性を有している(実施例3を参照)。
害虫忌避活性に関しては、式(I)で表される化合物及び精油はポジティブコントロールであるN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)より高い活性を有している(実施例4を参照)。
本発明の式(I)で表される化合物及び精油は上記の活性を有するため、医薬組成物(AChE阻害剤等)、殺虫剤、害虫忌避剤、香料基材等として用いることができる。
本発明の式(I)で表される化合物又は精油を医薬品のAChE阻害剤として用いる場合、例えば、哺乳動物(特に、ヒト)における老人性痴呆患症の予防薬又は治療薬、特にアルツハイマー型認知症の予防薬又は治療薬として用いられる。
AChE阻害剤は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の剤に製剤化することができる。
製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分及び配合量を適宜選択して常法により製剤化される。
製剤を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常用いられる方法であればよく、経口投与でも非経口投与でもよい。本発明にかかる医薬品の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、疾患の具体的な種類等に応じて、製剤学的な有効量を適宜選ぶことができる。
また、AChE阻害剤は、例えば、入浴剤、石鹸、芳香剤、アロマテラピー用エッセンシャルオイル、香水、整髪料等の製品に加えて用いることができる。また、AChE阻害剤は、他の天然植物精油と混合して用いることもできる。
本発明の式(I)で表される化合物又は精油を医薬品(AChE阻害剤)として用いる場合、医薬品全体に対し、該化合物を通常0.01〜100重量%程度(好ましくは、0.1〜5重量%程度)含有していればよい。
本発明の式(I)で表される化合物又は精油を殺虫剤又は害虫忌避剤として用いる場合、通常適当な担体に担持させて、ローション、エアゾール等の液剤、クリームなどの各種形態に調製して用いられる。
本発明の式(I)で表される化合物が有効に忌避できる対象害虫としては、Anopheles albimanus 等のハマダラカ類(Anopheles spp.)、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類(Aedes spp.)、アカイエカ、コガカアカイエカ等のイエカ類(Culex spp.)などで代表される蚊、ブユ、サシバエ、サンドフライ、ヌカカ等の吸血昆虫、Amblyomma、Rhipicephalus、Dermacentor、Ixodes、Haemaphysalis、Boophilus 等のマダニ類などの種々の節足動物が挙げられる。さらに、ネコノミ(Ctenocephalides felis )、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ヒトノミ(Pulex irritans)、ナンキンムシ(Cinex lectularis)、ツツガムシ(Leptotrombidium spp)、イエダニ(Ornithonyssus bacoti)なども挙げられる。
本発明の式(I)で表される化合物又は精油が有効に殺虫できる対象害虫としては、シロアリ、キクイムシ等の木材害虫;ウンカ類、ヨコバイ類、ヨトウ類、ヤガ類、コナガ類、ハマキ類、メイガ類、アブラムシ類、ハダニ類等の農業害虫;ハエ、カ、ゴキブリ、ノミ、南京虫、家ダニ、シラミ等の衛生害虫;コナダニ、コクガ、コクゾウ等の貯穀害虫;マダニ類、ヒウヒダニ、ツメダニ、アリガタバチ、ユスリカ、チュウバエ、ムカデ、ゲジゲジ、ウジ等の不快害虫;及びシバンムシ等の害虫に有効である。特に、本発明の害虫防除剤は、キイロショウジョウバエの幼虫及び/又は成虫に対する殺虫活性に優れている。
式(I)で表される化合物又は精油を殺虫剤又は害虫忌避剤として用いる場合、製品全体に対し、該化合物を通常0.01〜100重量%程度(好ましくは、0.1〜5重量%程度)含有していればよい。
次に、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
実施例1(活性化合物の単離及び同定)
(1)500gのツルケマンをジエチルエーテルを抽出溶媒として用いて、ハイドロディスティレーション(hydrodistillation)法により45mg(0.009%)の精油を得た。得られたツルケマン精油を、プレパラティブキャピラリーガスクロマトグラフィー(preparative capillary gas chromatography (pcGC), preparative GC system connected )で精製することにより、化合物1を30mg及び化合物2を2mg単離した。
(2)500gのムラサキケマンをジエチルエーテルを抽出溶媒として用いて、ハイドロディスティレーション法により165mg(0.033%)の精油を得た。得られたムラサキケマン精油を、ツルケマン精油と同様の精製条件で精製することにより化合物1を140mg及び化合物2を8mg単離した。
なお、上記のpcGCでは、次の装置を用いた。ガスクロマトグラフィー(6890N, Agilent Technologies, Santa Clara, U.S.A. )、水素炎イオン化検出器 Flame ionisation detector (FID, Agilent Technologies)及びガーステル フラクション コレクター Gerstel fraction collector (PFC, Gerstel, Muhlheim, Germany)を用いた。pcGCの分離精製条件は5% phenylmethyl polysiloxane-fused silica capillary カラム(HP-5MS, 30 m x 0.32 mm I.D., 0.5 mm, Agilent Technologies)を使用し、キャリアーガスにヘリウムガス(2 ml/min)を用いて、注入量1 μl、カラムオーブン温度を40℃〜230℃(4℃/min)で昇温し、キャピラリー分取システムで8分18秒〜8分30秒(化合物1)と8分36秒〜8分39秒(化合物2)を分取した。
上記の化合物1及び2は、スペクトルデータより下記の化合物であると同定した。
化合物1:(E)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
HR-EI-MS m/z: 95.1424 (M+, calcd. for C6H9N; 95.1430)
化合物2:(Z)−4−エチリデン−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
HR-EI-MS m/z: 95.1420 (M+, calcd. for C6H9N; 95.1430)
Figure 0005688945
実施例2(アセチルコリンエステラーゼ阻害活性)
AChE阻害活性試験は、Bruhmannらによって以前報告された96ウェルのマイクロプレート法(Bruhmann, C.; Marston, A.; Hosterttmann, K.; Carrupt, P-A.; Testa, B. Screening of Non-Alkaloidal Natural Compounds as Acetylcholinesterase Inhibitors. Chem. Biodiver. 2004, 1, 819-829)を改良した方法で行った。
具体的には以下の通りである。ウェルに20μlのAChE溶液(0.01Mリン酸緩衝液中に0.037unit/mL、pH7.4)、200μlの発色剤(5,5’−ジチオビス(2−ニトロベンゾイックアシッド;DTNB)(0.1Mリン酸緩衝液中に0.15mM、pH7.4)、及び20μlの試料(精油、化合物1,2、及びプレゴン)のメタノール溶液を添加した。コントロールウェルには、試料の代わりにメタノールを加えた。各ウェル中の内容物を混合し、室温で、15分間プレインキュベーションした後、30μlの基質(アセチルチオコリン アイオダイド;ATC)水溶液(最終濃度:0.05−0.25mM)を加え、15分間インキュベーションした。その後、AChEによる基質の加水分解反応により生じる黄色に呈色するアニオン(TNB)の405nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダを用いて測定した。
AChE活性の阻害(パーセント)は式:
I(%)={(Aコントロール−A試料)/Aコントロール}×100
(式中、「A試料」は試料(阻害剤)を含む反応混合物の吸光度であり、「Aコントロール」は反応コントロール混合物の吸光度を示す)を用いて計算した。なお、プレゴン(pulegone)はポジティブコントロールとして用いた。各サンプルについて少なくとも3回測定を行い、その平均値を示した。(図1)
なお、AChEは、シグマ−アルドリッチ社製のヒト赤血球のAChEを用いた。DTNB及びATCは東京化成工業(株)製を用いた。プレゴンは関東化学(株)製を用いた。なお、Miyazawa et al. J. Agric. Food Chem. 1997, 45, 677-679にはプレゴンのAChE阻害活性が示されている。
図1より、精油及び化合物1、2はポジティブコントロールであるプレゴンより高いAChE阻害活性を有していることが確認された。IC50はそれぞれ、0.78mM、0.42mM、0.61mMであった。化合物1は特に高いAChE阻害活性を有している。
実施例3(キイロショウジョウバエに対する殺虫活性)
トピカルアプリケーション法を用いて、30匹の5〜7日目のキイロショウジョウバエ成虫(雄:雌、1:1)に対する殺虫効果の試験を行った。各試験試料はアセトンに溶解させ、得られた試料溶液0.5mlをキイロショウジョウバエに塗布し、30分後のキイロショウジョウバエの死亡率を目視にて確認した。
ポジティブコントロールとしてロテノン(rotenone)を用いた。なお、Miyazawa et al. J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 4401-4405には、ロテノンの殺虫活性が示されている。その結果を表2に示す。
Figure 0005688945
表2より、精油及び化合物1及び2はポジティブコントロールであるロテノンに比べて、高い殺虫効果を有している。
実施例4(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)に対する忌避活性試験)
1×1cmの開口部を設けた金網にてヘアレスマウス((Hos:HR-1) 12週齢雌個体)を固定し、開口部以外の部位をカバーにて覆った。開口部から露出しているヘアレスマウスの皮膚に、薬剤が0.1mg/cm2となるように書く試験試料を処理した。薬剤処理したヘアレスマウスをヒトスジシマカ(累代飼育の未吸血雌個体((株)大阪製薬))20匹が入ったナイロンネットゲージ(25×25×25cm)の中央部に設置した。経過時間ごとに吸血したヒトスジシマカの個体数を目視にてカウントし記録した。薬剤処理のヘアレスマウスと同時に、無処理のヘアレスマウス及びエタノール処理のヘアレスマウスについても同様の手順で試験を行った。ポジティブコントロールとしてN,N−ジエチル−m−トルアミド(N,N-diethyl-meta-toluamide;DEET)を用いた。
試験の観察はヘアレスマウス設置後10分、30分,60分、90分および120分とした。なお、試験の温度は20〜22℃条件にて2回行った。
Figure 0005688945
精油及び化合物1、2の溶液は、ディート(DEET)と同様又はそれ以上のヒトスジシマカに対する忌避効果が確認された。化合物1の溶液はディートよりも高い忌避効果が確認された。
精油及び化合物1の溶液がエタノールにて溶解されているため、忌避効果が溶剤にも由来するものなのかを確認するため、エタノールにて処理したヘアレスマウスで同様の試験を行った。
その結果、エタノールにて処理したヘアレスマウスは、無処理のヘアレスマウスと同程度の吸血が確認され忌避作用が全く無いことから、今回確認された精油及び化合物1、2の忌避効果は、溶剤であるエタノールの相乗作用は無く、精油又は化合物1、2自体の効果であることが立証された。

Claims (5)

  1. 式(I):
    Figure 0005688945
    (式中、波線はE体及び/又はZ体の幾何異性体を示す。)
    で表される化合物又はその塩。
  2. 請求項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む医薬組成物。
  3. 請求項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
  4. 請求項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む殺虫剤。
  5. 請求項1に記載の化合物又はその塩を有効成分として含む害虫忌避剤。
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