以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて説明する。尚、以下の説明では、無線通信システムの一例として、携帯電話システムを用いて説明を進める。但し、携帯電話システム以外の各種無線通信システムに対して後述する実施形態を適用してもよい。
(1)無線通信システムの全体構成
図1を参照して、本実施形態の無線通信システム1の全体構成の一例について説明する。図1は、本実施形態の無線通信システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局101aと、無線基地局101bと、移動端末300aと、移動端末300bと、移動端末300cと、移動端末300dと、移動端末300eと、移動端末300fと、移動端末300gとを備えている。図1に示す無線基地局101の数及び移動端末300の数は一例であって、無線基地局101の数及び移動端末300の数が図1に示す個数に限定されることはない。以下では、説明の便宜上、無線基地局101a及び無線基地局101bを区別することなく説明する場合には、“無線基地局101”と称して説明を進める。同様に、移動端末300aから300gを区別することなく説明する場合には、“移動端末300”と称して説明を進める。
無線基地局101は、セル半径が概ね数kmから十数kmないしは数十kmとなるセル200をカバーする無線基地局(例えば、eNB:evolved NodeB)である。例えば、図1に示す例では、無線基地局101aは、セル200aをカバーする無線基地局であり、無線基地局101bは、セル200bをカバーする無線基地局である。無線基地局101は、自身がカバーするセル200中に位置する移動端末300との間で無線通信を行う。つまり、無線基地局101は、自身がカバーするセル200中に位置する移動端末300との間で通信コネクションを確立すると共に、移動端末300に対してデータ信号の送受信を行う。各無線基地局101がカバーするセル200は、その一部が他のセル200の一部又は全部と重なるように構成されていてもよいし、その全部が他のセル200と重ならないように構成されていてもよい。
上述の説明では、セル半径が概ね数kmから十数kmないしは数十kmとなるセル(いわゆる、マクロセル)200をカバーする無線基地局101が例示されている。無線基地局101に加えて又は代えて、セル半径が概ね数百mから1kmとなるセル(いわゆる、マイクロセル)をカバーする無線基地局や、セル半径が概ね数mから十数mないしは数十mとなるセル(いわゆる、フェムトセル)をカバーする無線基地局を配置してもよい。セル半径が上述したサイズ以外のセルをカバーする各種無線基地局を配置してもよい。図1に示す例は、1つの無線基地局101に1つのセル200が対応する例を示しているが、1つの無線基地局101に複数のセル200(ないしは、セクタ)が対応するように構成してもよい。
移動端末300は、自身がその内部に位置するセル200に対応する無線基地局101との間でコネクションを確立すると共に、データ信号の送受信を行う移動端末(例えば、UE:User Equipment)である。移動端末300の一例として、携帯電話や、無線通信機能を備える各種情報端末(例えば、PDAや、ミニパソコンや、ノートパソコン等)等があげられる。移動端末300は、無線基地局101(更には、無線基地局101の上位に接続される不図示のコアネットワーク等)を介して、各種サービスないしはアプリケーション(例えば、メールサービスや、音声通話サービスや、WEB閲覧サービスや、パケット通信サービス等)を利用することができる。
無線通信システム1として、例えばLTE(Long Term Evolution)ないしはE−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)に準拠した無線通信システムが一例としてあげられる。無線通信システム1が、LTEないしはE−UTRAN以外の任意の規格に準拠していてもよい。
(2)無線基地局
図2を参照して、本実施形態の無線通信システム1が備える無線基地局101について説明を進める。図2は、本実施形態の無線通信システム1が備える無線基地局101の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、無線基地局101は、アンテナ110と、送信RF(Radio Frequency)部1211及び受信RF部1221を備えるRF処理部120と、D/A(Digital to Analog)変換部1311及びA/D(Analog to Digital)変換部1321を備える変換処理部130と、送信処理部140と、受信処理部150と、「タイミング調整手段」及び「制限手段」の一実施例に相当するスケジューラ部160とを備えている。
送信処理部140は、無線基地局101から移動端末300に対して送信される下りリンク(Downlink)のデータ信号(以降、適宜“DLデータ信号”と称する)に対する送信処理を行う。より具体的には、DLデータ信号の送信時には、スケジューラ部160は、無線基地局101と通信を行う移動端末300を選択する。スケジューラ部160は、使用する復調方式(変調方式)や伝送レート等も合わせて決定する。送信処理部140は、スケジューラ部160から出力される制御信号に基づき、DLデータ信号に対して変調処理等を行う。送信処理部140は、変調処理等が行われたDLデータ信号をD/A変換部1311に対して出力する。D/A変換部1311は、デジタル信号であるDLデータ信号をアナログ信号に変換すると共に、アナログ信号に変換されたDLデータ信号を送信RF部1211に対して出力する。送信RF部1211は、アナログ信号に変換されたDLデータ信号に対して無線送信処理を行う。これにより、送信処理部140から出力されたベースバンド周波数帯域のデジタル信号が無線周波数帯域のアナログ信号に変換される。その後、アンテナ110を介して、無線送信処理が行われたDLデータ信号が移動端末300に対して送信される。
受信処理部150は、移動端末300から無線基地局101に対して送信される上りリンク(Uplink)のデータ信号(以降、適宜“ULデータ信号”と称する)に対する受信処理を行う。より具体的には、ULデータ信号の受信時には、スケジューラ部160は、無線基地局101と通信を行う移動端末300を選択する。スケジューラ部160は、使用する復調方式(変調方式)や伝送レート等も合わせて決定する。受信RF部1221は、アンテナ110を介して受信されたULデータ信号に対して無線受信処理を行うと共に、無線受信処理が行われたULデータ信号をA/D変換部1321に対して出力する。A/D変換部1321は、アナログ信号であるULデータ信号をデジタル信号に変換すると共に、デジタル信号に変換されたULデータ信号を受信処理部150に対して出力する。受信処理部150は、スケジューラ部160から出力される制御信号に基づき、ULデータ信号に対して復調処理等を行う。
スケジューラ部160は、上りリンク及び下りリンクの夫々に対して、複数の移動端末300の中から実際に通信を行う移動端末300を選択することが好ましい。通信を行う移動端末300の選択方法としては、回線品質や伝送レート等に基づき算出される指標値に基づく選択が一例としてあげられる。尚、スケジューラ部160における移動端末300の選択処理については、既存の方式を用いてもよい。従って、説明の簡略化のため、ここでの詳細な説明については省略する。
図3を参照して、DLデータ信号に対する送信処理を行う送信処理部140についてより詳細に説明する。図3は、本実施形態の無線基地局101が備える送信処理部140の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、送信処理部140は、送信側PDCP(Packet Data Convergence Protocol)処理部1401と、送信側RLC(Radio Link Control)処理部1402と、送信側MAC(Medium Access Control)処理部1403と、誤り訂正符号器1411と、データ変調部1412と、データ・パイロット信号多重部1413と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部1414と、CP(Cyclic Prefix:サイクリックプレフィックス)挿入部1415とを備えている。図3に示す送信処理部140は、LTEないしはWiMax(Worldwide Interoperability for Microwave Access)に準拠している無線通信システム1が備える無線基地局101(言い換えれば、下りリンクの変調方式として、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用している無線基地局101)が備える送信処理部140として用いられてよいし、その他の方式に準拠している無線通信システムが備える送信処理部として用いられてもよい。
送信側PDCP処理部1401は、DLデータ信号をPDCP SDU(Service Data Unit)として扱い、PDCP PDU(Protocol Data Unit)に変換後、送信側RLC処理部1402にデータ転送を行う。送信側RLC処理部1402は、受信したデータをRLC SDUとして扱い、RLC PDUに変換後、送信側MAC処理部1403にデータ転送を行う。送信側MAC処理部1403は、受信したデータをMAC SDUとして扱い、MAC PDUに変換後、誤り訂正符号機1411にデータ転送を行う。即ち、送信側PDCP処理部1401、送信側RLC処理部1402及び送信側MAC処理部1403は、各々が扱うレイヤに対してヘッダを付加した後にデータを転送する。
続いて送信処理部140では、スケジューラ部160から出力される各種制御信号に基づいて以下の処理が行われる。誤り訂正符号器1411は、DLデータ信号に対して誤り訂正符号化処理を行うと共に、誤り訂正符号化処理が行われたDLデータ信号をデータ変調部1412に対して出力する。データ変調処理部1412は、誤り訂正符号化処理が行われたDLデータ信号に対して変調処理(例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調処理等)を行うと共に、変調処理が行われたDLデータ信号をデータ・パイロット信号多重部1413に対して出力する。データ・パイロット信号多重部1413は、DLデータ信号に対して既知のパイロット信号を時間多重すると共に、パイロット信号が時間多重されたDLデータ信号をIFFT部1414に対して出力する。IFFT部1414は、パイロット信号が時間多重されたDLデータ信号に対して一定数N(Nは1以上の整数)のサンプル単位でIFFT処理を行う。即ち、IFFT部1414は、一定数Nのデータサンプルをサブキャリア信号成分とみなし且つ該サブキャリア成分に対してIFFT処理を施すことで、DLデータ信号を離散的な時間信号に変換する。IFFT部1414は、離散的な時間信号に変換されたDLデータ信号をCP挿入部1415に対して出力する。CP挿入部1415は、IFFT処理が行われたDLデータ信号(つまり、離散的な時間信号に変換されたDLデータ信号)の一定数Nのサンプルのうちの後部のMサンプル(Mは、M<Nを満たす整数)のコピーであるCPを、上記一定数Nのサンプルの先頭部分に挿入する。CPは巡回的にコピーされているため、CPを挿入した後の(M+N)サンプルの区間では信号が連続している。このため、CPは、隣接パスからの遅延シンボルによる干渉を除去するという役割を果たす。CP挿入部1415は、CPが挿入されたDLデータ信号をD/A変換部1311に対して出力する。DLデータ信号に対して、上述したようにD/A変換部1311におけるD/A変換及び送信RF部1211における送信RF処理が行われる。その後、DLデータ信号は、無線信号としてアンテナ110を介してから移動端末300に対して送信される。これにより、DLデータ信号の送信処理が完了する。
図4を参照して、ULデータ信号に対する受信処理を行う受信処理部150についてより詳細に説明する。図4は、本実施形態の無線基地局101が備える受信処理部150の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、受信処理部150は、受信側PDCP処理部1501と、受信側RLC処理部1502と、受信側MAC処理部1503と、誤り訂正復号器1511と、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)部1516と、データ復調部1512と、データ・パイロット信号分離部1413と、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部1514と、CP除去部1515と、「取得手段」の一実施例に相当するパイロット信号復調部1517と、「算出手段」の一実施例に相当するタイミング検出部1520とを備えている。図4に示す受信処理部150は、LTEに準拠している無線通信システム1が備える無線基地局101(言い換えれば、上りリンクの変調方式の一例としてSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)を採用している無線基地局101)が備える受信処理部150として用いられてよいし、その他の方式に準拠している無線通信システムが備える受信処理部として用いられてもよい。
受信処理部150では、スケジューラ部160から出力される各種制御信号に基づいて以下の処理が行われる。アンテナ110を介して受信されたULデータ信号に対して上述したように受信RF部1221における受信RF処理及びA/D変換部1321におけるA/D変換処理が行われる。その後、ULデータ信号は、CP除去部1515に対して出力される。CP除去部1515は、ULデータ信号中のCPを除去すると共に、CPが除去されたULデータ信号をFFT部1514に対して出力する。FFT部1514は、CPが除去されたULデータ信号に対してFFT処理を行うと共に、FFT処理が行われたULデータ信号をデータ・パイロット信号分離部1513に対して出力する。データ・パイロット信号分離部1513は、ULデータ信号中に含まれるパイロット信号を分離する。データ・パイロット信号分離部1513は、パイロット信号が分離されたULデータ信号をデータ復調部1512に対して出力すると共に、分離したパイロット信号をパイロット信号復調部1517に対して出力する。パイロット信号復調部1517は、パイロット信号に対して復調処理を行うと共に、復調処理が行われたパイロット信号をデータ復調部1512に対して出力する。このとき、パイロット信号復調部1517は、復調処理が行われたパイロット信号をタイミング検出部1520に対しても出力する。データ復調部1512は、ULデータ信号に対してパイロット信号に基づいて復調処理を行うと共に、復調処理が行われたULデータ信号をIDFT部1516に対して出力する。IDFT部1516は、復調処理が行われたULデータ信号に対してIDFT処理を行うと共に、IDFT処理が行われたULデータ信号を誤り訂正復号器1511に対して出力する。誤り訂正復号器1511は、IDFT処理が行われたULデータ信号に対して誤り訂正復号処理を行うと共に、誤り訂正復号処理が行われたULデータ信号を受信側MAC処理部1503に対して出力する。
受信側MAC処理部1503は、ULデータ信号をMAC PDUとして扱い、MAC SDUに変換後、受信側RLC処理部1502にデータ転送を行う。受信側RLC処理部1502は、受信したデータをRLC PDUとして扱い、RLC SDUに変換後、受信側PDCP処理部1501にデータ転送を行う。受信側PDCP処理部1501は、受信したデータをPDCP PDUとして扱い、PDCP SDUに変換後、有線伝送路等にデータ転送を行う。即ち、受信側MAC処理部1503、受信側RLC処理部1502及び受信側MAC処理部1503は、各々が扱うレイヤのヘッダを削除した後にデータを転送する。これにより、ULデータ信号の受信処理が完了する。
受信処理部150は、上述したULデータ信号の受信処理(つまり、復調処理等)と並行して、複数の移動端末300における上りリンク信号の送信レベルの調整制御(即ち、UpLink Power Control制御)を行う。具体的には、パイロット信号復調部1517は、復調したパイロット信号より受信信号レベル及び干渉レベルを算出し、その結果をスケジューラ部160に通知する。スケジューラ部160は、通知された受信信号レベル及び干渉レベルから受信SIR(Signal to Interference Ratio)を算出し、UpLink Power Control制御に用いるδPUSCH、δPUCCH(即ち、移動端末300に通知するTPC(Transmitting Power Control)Command)を決定する。δPUSCH、δPUCCHは、送信処理部140における誤り訂正符号器1411に通知され(図3参照)、制御情報を含んだ物理チャネルであるPDCCH(Physical DownLink Control Channel)によって移動端末300に通知される。δPUSCH、δPUCCHを受信した移動端末300は、受信した値に応じて上りリンクの物理レイヤ信号であるPUSCH(Physical UpLink Shared Channel)、PUCCH(Physical UpLink Control Channel)、SRS(Sounding Reference Signal)等の送信電力を補正する。
ここで図5を参照して、上述したUpLink Power Control制御についてより具体的に説明する。図5は、UpLink Power Control制御における受信SIRの変化の一例を示すグラフである。
図5において、無線基地局101は、例えばPUSCH、PUCCH、SRS等の受信SIRを算出しており、算出される受信SIRの各々には、所望する受信レベル(TargetSIR)がそれぞれ設定されている。受信SIRは無線環境によって変動するため、無線基地局101は、移動端末300に対してUpLink Power Control制御を行い、受信SIRをTargetSIRに収束させようとする。尚、UpLink Power Control制御は2つのモードを有しており、パラメータ“accumulation Enabled”によって、いずれのモードとするかを決定する。具体的には、“accumulation Enabled = enabled”の場合、移動端末300では、受信したδPUSCH、δPUCCHを累積加算する。例えば、δPUSCHが、+1dBm、+3dBm、0dBm、−1dBm、−1dBmの順で通知された場合には、最終的に+2dBmの電力制御となる。一方、“accumulation Enabled =disable”の場合、移動端末300では、受信したδPUSCH、δPUCCHをその都度送信電力制御に適用する。尚、図5では、“accumulation Enabled = enabled”となる場合の制御を例として挙げている。
図5に示す処理タイミング(1)では、受信SIRがTargetSIRに対し+1dBを超えた状態となるため、無線基地局101は移動端末300に対して−1dBmのδPUSCH又はδPUCCHを通知する。δPUSCH又はδPUCCHを受信した移動端末300は、送信電力を−1dBmとする。これにより、無線基地局101における受信SIRがTargetSIRに近づけられる。続く処理タイミング(2)では、受信SIRがTargetSIRに対し−3dBを下回る状態となるため、無線基地局101は移動端末300に対して+3dBm、或いは+1dBm×3回のδPUSCH又はδPUCCHを通知する。δPUSCH又はδPUCCHを受信した移動端末300は、送信電力を計+3dBmとする。これにより、無線基地局101における受信SIRがTargetSIRに近づけられる。
図4に戻り、受信処理部150は更に、複数の移動端末300から送信されるULデータ信号の無線基地局101における受信タイミングが一致するようにタイミング調整処理を行う。本実施形態では、タイミング調整処理の一例として、「3GPP、TS36.213、4.2.3章:Transmission timing adjustments」によって規定されている「timing advance command」を使用するタイミング調整処理について説明する。
タイミング検出部1520は、各移動端末300より送信されるULデータ信号に含まれるパイロット信号に基づいてtiming advance commandを生成する。より具体的には、タイミング検出部1520は、各移動端末300より送信されるULデータ信号に含まれるパイロット信号に基づいて、各移動端末300におけるULデータ信号の送信タイミングを検出する。その後、タイミング検出部1520は、検出された送信タイミングと実際の処理基準タイミングとの差分を埋めるようにtiming advance commandを生成する。生成されたtiming advance commandは、スケジューラ部160を介して送信処理部140における送信側MAC処理部1403へと転送される(図3参照)。送信側MAC処理部1403は、受信したtiming advance commandをMACレイヤで多重化する。これにより、送信処理部140は、timing advance commandを、DLデータ信号の一部として移動端末300に対して送信することができる。timing advance commandを受信した移動端末300は、timing advance commandによって指定された送信タイミングオフセットを適用する(例えば、進める又は遅らせる)。具体的には、受信したtiming advance commandの値に応じて上りリンクの物理レイヤ信号であるPUSCH、PUCCH、SRS等の送信タイミングを補正する。これにより、複数の移動端末300から送信されるULデータ信号の無線基地局101における受信タイミングが一致するように、各移動端末300におけるULデータ信号の送信タイミングの調整処理が行われる。送信タイミングの調整処理は、移動端末300毎に行われることが好ましい。
図6及び図7を参照して、タイミング検出部1520の構成及び処理についてより詳細に説明する。図6は、タイミング検出部1520の構成の一例を示すブロック図である。図7は、タイミング検出部1520によって生成されるタイミングの差分(遅延プロファイル情報)の一例を示すグラフである。
図6に示すように、タイミング検出部1520は、相関検出器1521と、相関検出用信号生成器1522と、電力変換器1523とを備えている。マッチドフィルタ(MF:Matched Filter)等の相関検出器1521は、パイロット信号復調部1517から出力されるパイロット信号と相関検出用信号生成器1522から出力される相関検出用信号(例えば、実際に使用しているパイロット信号と同じ信号)との相関を検出する。相関検出器1521は、得られた相関値を電力変換器1523に対して出力する。電力変換器1523は、相関検出器1521から出力される相関値を2乗して電力変換する。その結果、例えば、図7に示すような遅延プロファイル情報(例えば、縦軸を受信レベルとし、横軸を時間とする相関グラフ)が得られる。タイミング検出部1520は、遅延プロファイル情報に基づいて、移動端末300から送信されているULデータ信号の受信タイミングをサーチする。タイミング検出部1520は、本来希望するタイミング(つまり、無線基地局101における処理基準タイミング)と実際の受信タイミングとの差分(タイミング差)を測定する。例えば、タイミング検出部1520は、本来希望するタイミングと実際の受信タイミング(例えば、一番大きい受信レベルが得られるタイミング)との差分を測定する。その後、タイミング検出部1520は、測定された差分に基づいて、timing advance commandを生成する。
続いて図8から図10を参照して、timing advance commandを用いた送信タイミングの制御についてより具体的に説明する。図8から図10は夫々、無線基地局101及び移動端末300の各々における信号の送受信タイミングの一例を示す概念図である。
図8は、無線基地局101と、停止した移動端末300との間の通信における信号の送受信タイミングを示している。この場合、無線基地局101及び移動端末300間の通信では、無線基地局101と移動端末300との距離に応じた無線区間遅延Aが発生する。このため、無線基地局101から移動端末300へと送信される下りリンクの物理レイヤ信号では、無線基地局101の送信タイミングと移動端末300の受信タイミングとで、無線区間遅延Aのタイミング差が発生する。また、移動端末300から無線基地局101へと送信される上りリンクの物理レイヤ信号では、移動端末300における送信タイミングと無線基地局101における受信タイミングとで、無線区間遅延Aのタイミング差が発生する。
ここで特に、無線基地局101における上りリンクの物理レイヤ信号の受信タイミングは、無線基地局101における下りリンクの物理レイヤ信号の送信タイミングと一致するように決定される。このため、上りリンクにおける移動端末300の送信タイミングは、下りリンクにおける移動端末300の受信タイミングに対して、無線区間遅延Aを考慮した送信補正分Xを適用したものとなる。
図9は、無線基地局101と、図8に示す状態から無線基地局101に対して遠ざかる(より正確には、遠ざかった瞬間の)移動端末300との間の通信における信号の送受信タイミングを示している。移動端末300が遠ざかることにより、無線区間遅延A(図8参照)は、より大きい無線区間遅延Bへと変化する。このため、移動端末300が受信する下りリンクの物理レイヤ信号もB−A分遅延する事になる。移動端末300が送信する上りリンクの物理レイヤ信号は、受信した下りリンクの物理レイヤ信号を基準とするため、この時点で保持されている上りリンクの物理レイヤ信号の送信補正分X(図8参照)では、無線基地局101における上りリンクの物理レイヤ信号の受信タイミングがずれる事になる。このずれ幅は、図中のタイミング補正量Yとなり、補正量Yの値をtiming advance commandによって補正することになる。
図10は、図9に示す状態において無線基地局101からtiming advance commandを送信した後の信号の送受信タイミングを示している。無線基地局101は、相対的な補正量Y(図9参照)を含んだtiming advance commandを移動端末300に送信する。これにより、移動端末300における上りリンクの物理レイヤ信号の送信タイミングオフセットは、送信補正分Xに補正量Yを加えた値となる。従って、無線基地局101における上りリンクの受信タイミングと、下りリンクの送信タイミングが一致する。timing advance commandによれば、例えば0.52μs単位でのタイミング補正が可能である。言い換えれば、timing advance commandを用いたタイミング補正は、タイミングのずれ幅が最小単位である値を超えた場合に実行される。
尚、本実施形態のスケジューリング方法では、上述したtiming advance commandを用いた送信タイミングの補正が、受信タイミングの変動幅に基づいて制限される場合がある。この補正の制限については、後に詳しく説明するものとする。
(3)移動端末
図11を参照して、本実施形態の無線通信システム1が備える移動端末300の構成の一例について説明を進める。図11は、本実施形態の無線通信システム1が備える移動端末300の構成の一例を示すブロック図である。
図11に示すように、移動端末300は、アンテナ310と、送信RF部3211及び受信RF部3221を備えるRF処理部320と、D/A変換部3311及びA/D変換部3321を備える変換処理部330と、送信処理部340と、受信処理部350と、端末制御部360とを備えている。
無線基地局101より送信されるDLデータ信号を受信する際には、受信RF部3221は、アンテナ310を介して受信されたDLデータ信号に対して無線受信処理を行うと共に、無線受信処理が行われたDLデータ信号をA/D変換部3321に対して出力する。A/D変換部3321は、アナログ信号であるDLデータ信号をデジタル信号に変換すると共に、デジタル信号に変換されたDLデータ信号を受信処理部350に対して出力する。受信処理部350は、端末制御部360から出力される制御信号に基づき、DLデータ信号に対して復調処理等を行う。これにより、無線基地局101より送信されるDLデータ信号の受信処理が行われる。
無線基地局101に対して送信するべきULデータ信号を送信する際には、送信処理部340は、端末制御部360から出力される制御信号に基づき、無線基地局101に対して送信されるULデータ信号に対して変調処理等を行う。送信処理部340は、変調処理等が行われたULデータ信号をD/A変換部3311に対して出力する。D/A変換部3311は、デジタル信号であるULデータ信号をアナログ信号に変換すると共に、アナログ信号に変換されたULデータ信号を送信RF部3211に対して出力する。送信RF部3211は、アナログ信号に変換されたULデータ信号に対して無線送信処理を行う。これにより、送信処理部340から出力されたベースバンド周波数帯域のデジタル信号が無線周波数帯域のアナログ信号に変換される。その後、アンテナ310を介して、無線送信処理が行われたULデータ信号が無線基地局101に対して送信される。これにより、無線基地局101に対して送信するべきULデータ信号の送信処理が行われる。
受信処理部350は、復調処理等が行われたDLデータ信号からtiming advance commandを抽出すると共に、抽出したtiming advance commandを端末制御部360に対して出力する。端末制御部360は、timing advance commandに応じて、送信処理部340に対して送信タイミングの制御を実施する。以降は、端末制御部360から指示された送信タイミングに合致するように、送信処理部340における変調処理、D/A変換部3311におけるD/A変換処理及び送信RF部3211における無線送信処理が行われる。これにより、timing advance commandに応じたタイミングで移動端末300からのULデータ信号の送信が行われる。
(4)処理説明
図12を参照して、本実施形態に係るスケジューリング方法の処理(具体的には、無線基地局101におけるタイミング検出部1520及びスケジューラ部160の処理)の流れについて説明する。図12は、本実施形態に係るスケジューリング方法における全体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、説明の便宜上、無線基地局101において実行される処理のうち、スケジューリングについて詳細に説明し、その他の処理については適宜説明を省略している。
図12に示すように、本実施形態に係るスケジューリング方法では、無線基地局101が移動端末300から信号を受信すると、受信した信号に含まれるパイロット信号を用いて、タイミング検出部1520(図4参照)が信号の受信タイミング差を算出する(ステップS101)。即ち、タイミング検出部1520は、本来希望するタイミング(つまり、無線基地局101における処理基準タイミング)と実際の受信タイミングとの変動幅を測定する。タイミング検出部1520は、測定された差分に基づいて、timing advance commandを生成し、スケジューラ部160へ出力する。
スケジューラ部160は、timing advance commandに基づいて、受信タイミングに変動幅が発生しているか否かを判定する(ステップS102)。受信タイミングの変動幅が発生していない場合(ステップS102:NO)、スケジューラ部160は、受信タイミングの変動幅が連続して発生している期間をカウントする変動発生カウンタの値を“0”に(即ち、初期化)する(ステップS103)。この処理は、受信タイミングの変動幅が収束している場合の処理となる。
一方で、受信タイミングの変動幅が発生している場合(ステップS102:YES)、スケジューラ部160は更に、移動端末300において前回送信したtiming advance commandに基づく補正結果が反映されているか否かを判定する(ステップS104)。前回送信したtiming advance commandが未反映である場合(ステップS104:NO)、以降のステップS105及びステップS106が省略される。前回送信したtiming advance commandが反映済の場合(ステップS104:YES)、スケジューラ部160は、変動発生カウンタの値をインクリメントする(ステップS105)。ステップS104の判定処理によれば、timing advance commandが移動端末300において反映済である受信信号の結果のみを使用して、以降の処理が行われることになる。
変動発生カウンタの値をインクリメントした後、スケジューラ部160は、スケジューリングの前処理を実行する(ステップS106)。スケジューリングの前処理は、複数の移動端末300の各々について、スケジューリングの実施機会をそれぞれ設定するための処理であり、本実施形態では管理テーブルを用いて行われる。スケジューリングの前処理の具体的な処理内容については後述する。
以上の処理は、無線基地局101がカバーするセル200(図1参照)に存在する複数の移動端末300に対してそれぞれ実行される。スケジューラ部160は、ステップS106までの処理が完了すると、セル200内の全ての移動端末300について、ステップS106までの処理が実行されたか否かを判定する(ステップS107)。全ての移動端末300について処理が完了していない場合(ステップS107:NO)、スケジューラ部160は、処理対象を他の移動端末300(即ち、処理が完了していない移動端末300)へと変更して(ステップS108)、ステップS101からの処理を再び実行する。
全ての移動端末300について処理が完了している場合(ステップS107:YES)、スケジューラ部160は、複数の移動端末300の各々に対してスケジューリングを実施する(ステップS109)。即ち、スケジューラ部160は、複数の移動端末300の各々にtiming advance commandを送信して、信号の送信タイミングを補正する。本実施形態に係るスケジューリング方法では特に、スケジューリングの前処理においてスケジューリングの実施機会が移動端末300毎に設定される。このため、スケジューリングは、各移動端末300の状況に応じた頻度で実施されることになる。
図13を参照して、上述したスケジューリングの前処理について詳細に説明する。図13は、本実施形態に係るスケジューリング方法におけるスケジューリング低減及び停止の前処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13において、スケジューラ部160は、先ず受信タイミングの変動幅が第1停止閾値より小さいか否かを判定する(ステップS201)。第1停止閾値は、スケジューリングを停止させるか否かを判定するための閾値であり、すぐにでもスケジューリングを停止させた方がよい(言い換えれば、すぐにでもスケジューリングを停止させないと技術的な不具合が発生してしまうおそれがある)と判断される程度に、受信タイミングの変動幅が大きい場合を想定して設定されている。
受信タイミングの変動幅が第1停止閾値より小さい場合(ステップS201:YES)、スケジューラ部160は、受信タイミング差及び変動発生カウンタの値に基づいて、スケジューリング低減の程度を判定するための係数αを算出する。以下では、係数αの算出方法について、図14から図16を参照して詳細に説明する。図14は、信号の受信タイミング差及び変動発生カウンタ値に基づく、スケジューリング低減用の係数αの管理テーブルの一例を示す表である。図15は、信号に挿入されるCPと信号遅延との関係の一例を示す概念図である。図16は、信号の受信タイミング差と、スループット及び受信レベルとの関係の一例を示すグラフである。
図14に示すように、例えば係数αは、受信タイミング差と、受信タイミング差が連続して発生している期間とに基づいて決定される。尚、係数αは、大きいほどスケジューリング実施機会の低減の程度が高くされる。また、受信タイミング差の値は、0x1Fが受信タイミング差のない場合(即ち、適切なタイミングで信号が受信されている場合)に対応しており、0x1E、0x1D、・・・と値が小さくなるほど受信タイミングが先行し、0x20、0x21、・・・となるほど受信タイミングが遅延していることを示している。受信タイミング差が0x1Fから0x28区間は、CP挿入部1415(図3参照)において挿入されるCPの範囲に対応している。
図15において、「重複部分」の一実施例に相当するCPは、上述したようにDLデータ信号の一定数Nのサンプルのうちの後部のMサンプルのコピーとして、一定数Nのサンプルの先頭部分に挿入される。CPを挿入することで、CP範囲内での信号遅延による技術的な不具合を回避できる。しかしながら、CP範囲外での信号遅延や信号先行に対しては、技術的な不具合を回避できない。例えば、図16に示すように、CP範囲外での信号遅延や信号先行が発生した場合、スループット及び受信レベルの推定結果は大幅に低下してしまう。
図14に戻り、以上説明したCPの特性に基づいて、CP区間に対応する0x1Fから0x28間での係数αは、スケジューリングの実施機会の低減を行わない“0”とされる。他方で、CP範囲外での信号遅延が発生した場合(即ち、受信タイミング差が0x29以上の場合)や、信号先行が発生した場合(即ち、受信タイミング差が0x1E以下の場合)には、信号がより遅延するほど、或いはより先行するほど係数αが大きくなる。即ち、信号が先行するほど、或いは遅延するほどスケジューリングの実施機会は低減される。また、係数αは、変動発生カウンタの値が“0”の場合は、受信タイミング差によらず“0”とされ、変動発生カウンタの値が大きくなるほど、係数αも大きくされる。即ち、受信タイミングの変動幅が連続して発生している期間が長いほど、スケジューリングの実施機会は低減される。
図13に戻り、係数αを算出すると、スケジューラ部160は、係数αが“0”以上且つ低減A閾値より小さいか否かを判定する(ステップS203)。低減A閾値は、比較的程度の低いスケジューリング実施機会の低減制御(以下、適宜「低減A制御」と称する)を行うべきか否かを判定するための閾値であり、予め設定されている。係数αが“0”以上且つ低減A閾値より小さい場合(ステップS203:YES)、スケジューラ部160は、処理中の移動端末300を、スケジューリング実施機会を管理するためのテーブル上で、通常テーブルへと移動させる(ステップS204)。通常テーブルへと移動された移動端末300では、スケジューリング実施機会が低減されることなく、予め設定された通常頻度でスケジューリングが実行されることになる。
係数αが低減A閾値以上である場合(ステップS203:NO)、スケジューラ部160は、係数αが低減A閾値以上且つ低減B閾値より小さいか否かを判定する(ステップS205)。低減B閾値は、比較的程度の高いスケジューリング実施機会の低減制御(以下、適宜「低減B制御」と称する)を行うべきか否かを判定するための閾値であり、低減A閾値より大きい値として予め設定されている。係数αが低減A閾値以上且つ低減B閾値より小さい場合(ステップS205:YES)、スケジューラ部160は、処理中の移動端末300を、低減Aテーブルへと移動させる(ステップS206)。低減Aテーブルへと移動された移動端末300では、低減A制御が実施され、通常頻度より低い頻度でスケジューリングが実施されることになる。
係数αが低減B閾値以上である場合(ステップS205:NO)、スケジューラ部160は、係数αが低減B閾値以上且つ第2停止閾値より小さいか否かを判定する(ステップS207)。第2停止閾値は、スケジューリングを停止させるべきか否かを判定するための閾値であり、低減B閾値より大きい値として予め設定されている。係数αが低減B閾値以上且つ第2停止閾値より小さい場合(ステップS207:YES)、スケジューラ部160は、処理中の移動端末300を、低減Bテーブルへと移動させる(ステップS208)。低減Bテーブルへと移動された移動端末300では、低減B制御が実施され、低減A制御が実施される場合より低い頻度でスケジューリングが実施されることになる。
係数αが第2停止閾値以上である場合(ステップS207:NO)、スケジューラ部160は、処理中の移動端末300を、停止テーブルへと移動させる(ステップS209)。尚、ステップS201において、受信タイミングの変動幅が第1停止閾値以上であると判定された場合(ステップS201:NO)も同様に、処理中の移動端末300を停止テーブルへと移動させる。停止テーブルへと移動された移動端末300では、スケジューリングが一時的に停止される。
スケジューラ部160は、通常テーブル以外のテーブル(即ち、低減Aテーブル、低減Bテーブル及び停止テーブル)へと移動された移動端末300に対して、UpLink Power Control制御(図5参照)を停止するよう指示する(ステップS210)。具体的には、無線基地局101からは、移動端末300に対して0dBmのδPUSCH又はδPUCCHが通知される。或いは、δPUSCH又はδPUCCHが0dBmという値をとり得ない場合、+1dBm及び−1dBmのδPUSCH又はδPUCCHが交互に通知される。本処理により、不要な送信電力の増加を防止する事ができる。
図16において示したように、CP範囲外での信号遅延や信号先行が発生した場合、受信レベルの推定結果は大幅に低下してしまう。よって、スケジューリングの実施機会を低減させるべき程度に受信タイミング差の変動が大きい場合には、適切なUpLink Power Control制御を行うことは困難であると考えられる。仮に、不適切なUpLink Power Control制御が行われ続けると、一の移動端末300における送信レベルが急激に増大し、他の移動端末300の通信に対しても悪影響を及ぼしてしまう場合がある。しかるに、UpLink Power Control制御を停止するようにすれば、上述した技術的な不具合を好適に回避することが可能である。
図17から図19を参照して、スケジューリングの管理方法についてより詳細に説明する。図17は、スケジューリング実施機会の状態遷移の一例を示すブロック図である。図18は、複数の移動端末のスケジューリング管理テーブルにおける状態遷移の一例を示す概念図である。図19は、複数の移動端末のスケジューリング実施機会の一例をサブフレーム単位で示す概念図である。
図17において、スケジューリングの管理テーブルは、通常テーブル、低減Aテーブル、低減Bテーブル及び停止テーブルの4つのテーブルを有している。無線基地局101は、上述したスケジューリングの前処理において、複数の移動端末300の各々を、いずれかのテーブルへと移動させる(言い換えれば、割り当てる)。各テーブルからは、図に示すように他の3つのテーブルのいずれにも移動ができる。このようなテーブル間の移動は、図13に示した一連の処理を繰り返し実行することで実現される。
図18において、例えば一の無線基地局101のセル200内に、5つの移動端末300(移動端末#0〜#4)が存在しているとして、テーブル間での遷移及びスケジューリング頻度について具体的に説明する。移動端末#0〜#4は、最初は全て通常テーブルに割り当てられており、そのうち移動端末#0及び移動端末#3が低減Aテーブルへと移動され、移動端末#4が停止テーブルへと移動されたとする。また、低減Aテーブルへと移動された移動端末#0及び移動端末#3のうち、移動端末#3が低減Bテーブルへと移動されたとする。
図19において、通常テーブルのままである移動端末#1及び移動端末#2では、各サブフレームでスケジューリングが実施される。低減Aテーブルへと移動された移動端末#0では、5サブフレーム毎にスケジューリングが実施される。低減Bテーブルへと移動された移動端末#3では、10サブフレーム毎にスケジューリングが実施される。停止テーブルへと移動された移動端末#4では、スケジューリングが実施されない。
以上説明したように、本実施形態に係るスケジューリング方法では、複数の移動端末300の各々について、受信タイミングの変動幅に基づいてスケジューリングの実施機会が制限される。従って、不適切なスケジューリングが実施され続けることによって、無線通信システム全体に技術的な不具合が発生してしまうことを防止することができる。
上述の説明は、LTE(又は、Wimax)方式に準拠した無線通信システムについて説明している。しかしながら、上述した方式はあくまで一例であり、その他の方式(ないしは、規格)に準拠する無線通信システムに対して、上述した無線基地局101を適用してもよい。
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
移動端末(300)より送信される送信信号を受信する受信工程と、前記送信信号中に離散的に含まれるパイロット信号を取得する取得工程と、前記パイロット信号を用いて、前記受信工程における前記送信信号の受信タイミング変動幅を算出する算出工程(S101)と、前記受信タイミング変動幅を小さくするように前記移動端末(300)における前記送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整制御を行うタイミング調整工程(S109)と、前記受信タイミング変動幅に基づいて、データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する又は前記データ転送のためのスケジューリングをを行わないようにする制限工程(S106)とを備えることを特徴とするスケジューリング方法(図12,13)。
(付記2)
前記制限工程(S106)において、前記受信タイミング変動幅が大きくなるほど前記データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する程度を高めることを特徴とする付記1に記載のスケジューリング方法(図14)。
(付記3)
前記受信タイミング変動幅が連続して発生している期間である連続発生期間を検出する検出工程(S105)を更に備え、前記制限工程(S106)において、前記連続発生期間が長くなるほど前記データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する程度を高めることを特徴とする付記1又は2に記載のスケジューリング方法(図14)。
(付記4)
前記制限工程において、前記受信タイミング変動幅が前記送信信号に含まれる情報の重複部分の長さを超えた場合に、前記データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する又は前記データ転送のためのスケジューリングを行わないようにすることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載のスケジューリング方法(図14、15,16)。
(付記5)
前記パイロット信号に基づいて、前記送信信号の出力レベルを調整する出力調整工程(S210)を更に備え、前記制限工程(S106)において、前記データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する又は前記データ転送のためのスケジューリングを行わないようにする場合には、前記出力調整工程(S210)における前記送信信号の出力レベルの調整幅を小さくすることを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載のスケジューリング方法(図5,13)。
(付記6)
移動端末(300)より送信される送信信号を受信する受信手段(1221)と、前記送信信号中に離散的に含まれるパイロット信号を取得する取得手段(1513)と、前記パイロット信号を用いて、前記受信手段における前記送信信号の受信タイミング変動幅を算出する算出手段(1520)と、前記受信タイミング幅を小さくするように前記移動端末(300)における前記送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整制御を行うタイミング調整手段(160)と、前記受信タイミング変動幅に基づいて、データ転送のためのスケジューリングを行う頻度を低減する又は前記データ転送のためのスケジューリングを行わないようにする制限手段(160)とを備えることを特徴とする無線基地局(図2,3,4)。