JP5665669B2 - 接地電極における電位上昇の波及抑制方法 - Google Patents
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Description
少なくとも前記起誘導側接地電極と前記被誘導側接地電極との間に存在して両接地電極と隔離された部分の土壌の抵抗値を、当該部分の周囲に存在する大地の抵抗値より相対的に高くすることにより、当該部分を土壌改良部としたことを特徴とする。
また、従来技術のように多数の接地線を相互に接続するような作業が不要になるため、労力やコストの低減も可能である。
まず、図1は、雷撃時における接地電極及びその周囲の電位上昇を解析するために用いた解析空間を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図1において、解析空間10の刻み幅は、x,y,z全ての方向でΔs=0.25mとし、解析空間10の大きさはx方向:76m、y方向:74m、z方向:27.5mとした。なお、解析空間10を囲む6つの境界面は、Liaoの2次吸収境界条件を用いて開空間を模擬している。ここで、Liaoの2次吸収境界条件については、例えば、宇野亨による「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」(1998年3月20日,コロナ社発行)のp.72〜p.80に記載されている。
大地構造は、解析空間10の底部から高さ14.5mまでが、ρ=100Ωm、比誘電率εr=10の物質で満たされているものとする。なお、図1(c)において、11は仮想地表面を示す。
一方の接地電極(起誘導側接地電極)21は、図示されていない電流源(内部抵抗を500Ωとする)から電流注入線23を介して雷電流を注入するためのものであり、他方の接地電極(被誘導側接地電極)22は、接地電極21への雷電流注入時における電位上昇値を測定するための電極である。ここで、接地電極21,22の電位上昇値は、吸収境界面12(図1(b),(c)を参照)から各測定点(接地電極21,22)までの大地面上電界の積分値であり、電圧プローブ24(図1(a)を参照)を用いて測定される。
図2は接地電極21への注入電流波形を示しており、一般的な帰還雷撃の波頭長を表現したものであって、波頭長が約1.0μs、波高値が1.0Aのステップ波電流である。
電位上昇値の計算には、数値電磁界解析の一種であるFDTD法(Finite-Difference Time-Domain Method)を用いた。このFDTD法は、前述した文献「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」の第1章などに記載されている周知の数値電磁解析手法である。
なお、前述したように土壌改良部の抵抗率ρは、周囲の大地の抵抗率よりも十分に大きくしてρ=10kΩmとし、比誘電率はεr=10である。これらの土壌改良部の抵抗率及び比誘電率は、土壌の組成や含有水分量などを調整することで容易に実現可能である。
土壌改良部31〜35の各部の長さは図3に示すとおりであり、接地電極21,22間の距離は2mである。また、図中の長さLについては、表1に示すようにそれぞれ3種類(Case1は0.25m,1m,1.75m、Case2〜5は0.25m,0.5m,1m)に変化させて測定した。
なお、表1におけるCase0は、接地電極21の周囲(接地電極21,22間)に土壌改良を施していないケースであり、Case1〜5の比較対象である。
これらの波形によれば、Case1の土壌改良を行った場合、接地電極21の接地抵抗が土壌改良部31の大きさに依存して増加するため、起誘導側で電位上昇値が増加している。また、接地電極22では電位上昇値は低減されなかった。つまり、起誘導側、被誘導側の両方で、Case0の結果よりも電位上昇が大きくなり、良好な結果は得られなかった。
これらの波形によれば、Case2の土壌改良を行った場合、Case1の場合と同様に起誘導側である接地電極21の接地抵抗が土壌改良部32の大きさに依存して増加している。しかしながら、Case2の土壌改良部32の形状は筒状であり、接地電極21の直近を土壌改良していないため、Case1ほど接地抵抗の増加量は大きくなかった。また、被誘導側である接地電極22の電位上昇は、土壌改良部32の大きさが大きくなるほど低減された。
以上の結果から、起誘導側の接地電極21を囲むように電位上昇を波及させたくない接地電極22が配置されている場合、Case2のように筒状の土壌改良部32によって接地電極21を包囲する方法が有効であると考えられる。しかしながら、起誘導側の接地電極21の電位が土壌改良を行わない場合に比べて若干上昇するので、起誘導側での耐雷対策を強化する必要がある。
これらの波形より、Case3(コ字形)→Case4(L字形)→Case5(I字形)というように土壌改良部33〜35の規模が小さくなるに従って、起誘導側の接地電極21における電位上昇は抑制されている。これは、単純に、接地電極21の接地抵抗が土壌改良部33〜35の規模に依存して変化する(小さくなる)ためである。また、被誘導側の接地電極22の電位上昇低減効果は、Case3〜5でほぼ同程度であった。
具体的には、Case3〜5において、起誘導側の接地電極21における電位上昇は5〜55%程度であるが、被誘導側の接地電極22における電位上昇は、定常値で25〜60%程度、波高値で15〜30%程度低減されることが明らかになった。これらのCase3(コ字形),Case4(L字形),Case5(I字形)については、起誘導側の接地電極21の周囲にある被誘導側の接地電極22(言い換えれば、雷撃地点の周囲に配置されていて電位上昇の波及を抑制したい電気機器等)の数や配置に応じて使い分ければよい。
図10は、Case5における土壌改良部35の形状を示した図であり、(e−1)は正面図、(e−2)は平面図である。ここでは、土壌改良部35の抵抗率及び大きさ(深さ、厚さ、幅)を変化させた場合の電位上昇への影響について検討した。
図10において、土壌改良部35の深さh=2m、厚さL1=0.5m、幅L2=1.0m、抵抗率ρ=10kΩmを基準とし、抵抗率ρを1〜10kΩmの範囲で変化させると共に、深さhを0.5〜3.5m、厚さL1を0.25〜1.0m、幅L2を0.5〜4.0mの範囲でそれぞれ変化させて計算した。
なお、接地電極21への注入電流波形は、図2に示したものと同一であり、波頭長約1.0μs、波高値1.0Aのステップ波電流である。
また、図12より、接地電極22の電位上昇低減効果は、土壌改良部35の抵抗率ρ=5〜10kΩm辺りで飽和している。ただし、これは周囲の大地の抵抗率がρ=100Ωmの場合の結果である。
また、図14は土壌改良部35の深さh[m]を変化させた場合、図16は厚さL1[m]を変化させた場合、図18は幅L2[m]を変化させた場合の、接地電極21の電位上昇定常値(各図の(a))、接地電極22の電位上昇定常値(各図の(c))、及び、接地電極22の電位上昇波高値(各図の(b))を示している。
また、土壌改良部35の抵抗率と同様に、深さ、幅を変化させた場合にも飽和特性があり、今回の条件の場合、それぞれ、深さh=3m、幅L2=4.0m程度で飽和を開始した。厚さL1に関しては飽和特性が確認されていないが、これは、接地電極21,22間の距離(今回のモデルでは2m)が狭いためであり、電極間隔が更に長い条件下では、厚さL1の飽和特性も深さh及び幅L2と同様に現れると考えられる。
つまり、起誘導側の接地電極21と電位上昇を波及させたくない被誘導側の接地電極22との数や配置に応じて筒状、コ字形、L字形、I字形の土壌改良部32〜35を使い分けることにより、雷撃時の起誘導側の電位上昇を抑制しつつ被誘導側の電位上昇を効果的に低減することができる。
これにより、雷撃地点の周囲に存在する各種電気機器や通信機器の接地電位が上昇するのを防ぎ、逆閃絡等による機器の破壊や損傷を未然に防止することができる。
なお、電位上昇の抑制効果は、土壌改良部の抵抗率や大きさ(深さ、厚さ、幅)、接地電極の大きさ、形状、数、位置関係等によって異なるため、土壌改良部の施工に当たっては、事前に解析的な検討を行って費用対効果を考慮しつつ設計することが望ましい。
また、各実施形態では、土壌改良部の抵抗率をその周辺の大地の抵抗率よりも高くしてあるが、周辺の大地の抵抗率を下げることにより土壌改良部の抵抗率が相対的に高くなるようにしてもよい。
11:仮想地表面
12:吸収境界面
21:垂直接地電極(起誘導側接地電極)
22:垂直接地電極(被誘導側接地電極)
23:電流注入線
24:電圧プローブ
Claims (5)
- 大地に埋設されて雷電流が流れる起誘導側接地電極の電位上昇が、前記起誘導側接地電極の周囲に配置された被誘導側接地電極に波及するのを抑制するための電位上昇波及抑制方法において、
少なくとも前記起誘導側接地電極と前記被誘導側接地電極との間に存在して両接地電極と隔離された部分の土壌の抵抗値を、当該部分の周囲に存在する大地の抵抗値より相対的に高くすることにより、当該部分を土壌改良部としたことを特徴とする接地電極における電位上昇の波及抑制方法。 - 請求項1に記載した波及抑制方法において、
前記土壌改良部が、前記起誘導側接地電極と前記被誘導側接地電極との間で地表面とほぼ直交するように埋設された平面ほぼI字形の土壌からなることを特徴とした接地電極における電位上昇の波及抑制方法。 - 請求項1に記載した波及抑制方法において、
前記土壌改良部が、前記起誘導側接地電極を中心にしてその周囲を包囲するように埋設された筒状の土壌からなることを特徴とした接地電極における電位上昇の波及抑制方法。 - 請求項1に記載した波及抑制方法において、
前記土壌改良部が、前記起誘導側接地電極を中心にしてその周囲四方のうち前記被誘導側接地電極の反対側を除く三方に配置された平面ほぼコ字形の土壌からなることを特徴とした接地電極における電位上昇の波及抑制方法。 - 請求項1に記載した波及抑制方法において、
前記土壌改良部が、前記起誘導側接地電極を中心にしてその周囲四方のうち前記被誘導側接地電極の反対側の一方と、前記起誘導側接地電極と前記被誘導側接地電極とを結ぶ線に平行な一方と、を除く二方に配置された平面ほぼL字形の土壌からなることを特徴とした接地電極における電位上昇の波及抑制方法。
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