JP5653788B2 - 基地局送信電力制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
図8は、下りリンクにおける他セルからの干渉の様子を説明するための図である。
この図において、BSは基地局、MSは端末である。ここで、隣接するセルが同一の周波数を利用しているものとする(1セル周波数繰り返し)。図示するように、基地局BSiに所属する端末MSiには、基地局BSiからの希望信号とともに基地局BSkなどの他セルの基地局BSからの干渉信号が受信されることとなる。
SINRは、次式で表される。
周辺からの干渉が大きくなればなるほど式(1)の分母が大きくなるため、SINRが低くなり、伝送品質が悪くなってしまう。
このように、セルラ通信システムでは、端末が基地局と通信を行う際、周辺基地局で送信される同一周波数の電波が干渉となり、端末において十分な伝送品質を得ることができず、システム容量(スループットやユーザの同時接続数)が制限されてしまうという問題がある。
この複数基地局協調送信電力制御方法について説明する。
基地局iの送信電力をPi、基地局kの送信電力をPk、基地局iから該基地局iに属する端末iまでの伝搬利得をzi,i、基地局kから端末iまでの伝搬利得をzi,kとすると、端末iにおける基地局iからの希望信号電力はPizi,i、基地局kからの干渉信号電力はPkzi,kとなる。
基地局数をNc(Ncは2以上の整数)、端末iでの雑音電力をniとすると、端末iにおける受信SINRiが所要伝送品質γiを満足するためには、以下の条件を満たす必要がある。
ただし、この連立方程式の立式に当たっては、各基地局1〜基地局Ncから全端末1〜端末Ncまでの伝搬利得zi,j及び各端末における雑音電力ni(1≦i,j≦Nc)を全て情報として把握していることが必要である。
ただし、各基地局の送信電力Pi(1≦i≦Nc)は、基地局の最大送信電力をPmaxとして、次の式(4)で示される基地局送信電力の制約条件を満たす必要がある。
図9は、基地局数が2の場合に端末が受信する信号について説明するための図である。図示するように、端末1には、自局の所属する基地局1からの希望信号P1z1,1と、隣接する基地局2からの干渉信号P2z1,2が到達し、端末2には、その所属する基地局2からの希望信号P2z2,2と隣接する基地局1からの干渉信号P1z2,1が到達する。
この場合、端末1における受信SINR1が所要通信品質γ1を満足し、端末2における受信SINR2が所要通信品質γ2を満足するように、次の式(5)及び式(6)の連立方程式を立式する。
ここで、n1は端末1における雑音電力、n2は端末2における雑音電力である。
上記式(7)及び式(8)において、送信電力P1、P2以外は既知の変数であるので、P1、P2を変数とした通常の連立方程式として解くことができる。
上記連立方程式の解であるP1及びP2が前記式(4)の基地局送信電力の制約条件を満たしている場合には、基地局1の送信電力がP1となるように制御し、基地局2の送信電力がP2となるように制御することにより、端末1及び端末2はそれぞれの所要の通信品質γ1及びγ2を満足することができる。
通信を許可する端末数を削減する方法には各種の方法があるが、接続率を最大にする方法として、通信を許可する端末の全ての組み合わせについて連立方程式を解き、前記基地局送信電力の制約条件を満たす端末の組み合わせのうち、同時接続端末数が最大となるものを見つける方法(総当り法、Full search)がある。この方法によれば正確な結果を得ることができるが、何らかの条件に合致する端末を優先的に選択するということをせず、ランダムに選択するので、協調制御を行う基地局の数が増加すると計算量が指数関数的に増大するという問題がある。そこで、本発明者らは、少ない計算量でシステム容量を大幅に改善することができるセルラ通信システムにおける基地局送信電力制御方法及び装置を上記特許文献1−3において提案している。
しかしながら、協調する基地局数が多い場合には、次のような問題点が生じる可能性がある。図10は、協調する基地局数が3の場合を示す図である。
図示するように基地局数が3である場合、基地局1のエリアに在圏する端末1は基地局1からの希望信号(P1z1,1)と基地局2及び基地局3からの干渉信号(P2z1,2及びP3z1,3)を受信する。また、基地局2のエリアに在圏する端末2は基地局2からの希望信号(P2z2,2)と基地局1及び基地局3からの干渉信号(P1z2,1及びP3z2,3)を受信し、基地局3のエリアに在圏する端末3は基地局3からの希望信号(P3z3,3)と基地局1及び基地局2からの干渉信号(P1z3,1及びP2z3,2)を受信する。
各基地局は一定の電力でパイロット信号(参照信号)を常時送信しているため、基地局BSj(1≦j≦Nc)から端末MSi(1≦i≦Nc)までの伝搬利得zi,jは、例えば、各端末MS1〜MSNcにおける各基地局BS1〜BSNcからのパイロット信号の受信電力を用いて測定することができる。各端末MS1〜MSNcにおいて、それぞれ基地局BS1〜BSNcからのパイロット信号の受信電力を計測し、その計測値を上りのチャネルを介してその端末iが所属している基地局BSiに通知し、該基地局BSiから基地局送信電力制御装置11に通知する。基地局送信電力制御装置11は、通知された各端末MS1〜MSNcにおける基地局BS1〜BSNcからのパイロット信号の受信電力と各基地局BS1〜BSNcのパイロット信号の送信電力piに基づいて、各基地局BS1〜BSNcから各端末MS1〜MSNcまでの伝搬利得zi,jを測定する。
本発明における基地局jと端末iの間の伝搬利得z〜 i,jの推定の基本的な考え方は、基地局jと端末iの間の伝搬利得の推定値z〜 i,jを、基地局jと端末iの間の距離r〜 i,jを推定し、該推定された距離r〜 i,jに対して距離伝搬特性を適用すること、すなわち、伝搬利得が距離の−β乗(β:距離減衰係数)に比例する(r〜 i,j -β)とすることにより決定するというものである。
ここで、基地局jと端末iの間の距離r〜 i,jは、基地局jと端末iが所属する基地局iとの間の距離ri,jを基本として、これに調整値Δrを加えることにより推定する。
すなわち、伝搬利得の推定値z〜 i,jは次の式(12)により推定される。
この図に示した例は、計算機シミュレーション結果に基づくものであり、(a)基地局iと基地局jが隣接している場合と、(b)基地局iと基地局jが隣接していない場合とで、異なる調整値を用いるようにしている。
(a)基地局iと基地局jが隣接している場合
端末iの存在確率が基地局iのカバーエリア内で一様であるものと仮定すると、基地局jを中心とした円のうち、基地局iのカバーエリアを横断する弧が最も長くなるとき、その弧の上に存在する端末の存在確率の合計が最も高くなる。そこで、そのときの円の半径(ri,j+0.4R)(R=基地局iのカバーエリアの半径)を基地局jと端末iの距離の推定値として用いる。すなわち、Δr=0.4Rとして、伝搬利得の推定値z〜 i,jを次の式(13)により推定する。
基地局間の距離が大きくなればなるほど、その基地局の影響は小さくなるため、粗い近似でよくなる。そこで、基地局jから端末iまでの干渉信号が最も高くなる場合を想定し、伝搬利得の値が常にz〜 i,j≧zi,jとなるように調整値Δrを加える。すなわち、Δr=−Rとして、伝搬利得の推定値z〜 i,jを次の式(14)により推定する。
なお、距離減衰係数βは、基地局が常時送信する参照信号などから推定できる変数であり、ここでは、理想的に3.5としている。
そして、Nc端末からi台取り除く組合せの中の順番を示す変数jに1をセットする(ステップS14)。
次に、前記ステップS13で求めた組合せの中のj番目の組合せに対し、前記式(3)の連立方程式を立式し、その解を求める(ステップS15)。初期状態では、取り除く端末の台数が0であり、前述した基地局送信電力Piを変数とする連立方程式を立式して、その解を求めることとなる。
図4に示す例は、基地局数が3の場合である。基地局1から送信されたパイロットチャネルの信号の端末2及び端末3における受信電力、及び、基地局3から送信されたパイロットチャネルの信号の端末1における受信電力がいずれも雑音電力以下であったとする。このとき、基地局1と端末2との間の伝搬利得z2,1、基地局1と端末3との間の伝搬利得z3,1及び基地局3と端末1との間の伝搬利得z1,3がいずれも測定不可能となる。
この場合には、図中(a)で示す連立方程式において四角で囲まれたz1,3、z2,1及びz3,1の値が不明となるため、この連立方程式を立式することができない。そこで、実際の伝搬利得z1,3、z2,1及びz3,1に代えて、前述した方法により算出された伝搬利得の推定値z〜 1,3、z〜 2,1及びz〜 3,1を用いることで、図中(b)で示す連立方程式を立式することが可能となる。
このように、本発明によれば、伝搬利得が測定不可能な端末が存在する場合であっても、連立方程式を立式することができ、その解を求めることができる。
解が前記基地局電力の制約条件を満たさない場合について、図5を参照して説明する。ここでは、基地局数Nc=4、各端末の所要通信品質γi=10[dB](i=1〜4)であるとしている。また、規格化最大送信電力を1(真値)としている。
図5の(a)に示す例は、前記連立方程式を解いた結果、得られた送信電力P4が負の値「−0.4」となった場合である。また、(b)に示す例は、送信電力P1の値が「1.3」、送信電力P3の値が「1.1」となって、最大送信電力を上回る値となった場合である。
このように、連立方程式の解として得られたPiの値が前記式(4)に示す基地局送信電力の制約条件を満たさない場合がある。
一方、得られた解Piの中に前記制約条件を満たしていないものがある場合は、その組合せがNc端末からi台取り除く組合せNcCiの最後のものであるか否かを判断する(ステップS18)。その結果、最後の組合せではないときには、jをj+1として(ステップS20)、前記ステップS15に進み、次の組合せについて、再度前記連立方程式を立式し、その解を求め、前述した処理を繰り返す。
また、前記ステップS18の判定の結果、その組み合わせが最後のものであったときには、iがNcに等しいか否かを判定し(ステップS19)、i=Ncであるときは、全ての端末を削減したこととなるため、送信電力の割当が不可であるとして、この電力割当制御処理を終了する。
また、iがNcに等しくないときは、ステップS21でiをi+1にして(削減する端末の数を1つ増やして)前記ステップS13に進み、Nc端末からi個取り除く組み合わせの計算から再度前述した処理を繰り返す。
図6の(a)に示すように、全ての基地局のセルにそれぞれ1台の端末が存在する場合に、前記制約条件が満足されないものとする。このとき、4台の端末のうちの1つを選択し、その通信を制限(除外)する。図6の(b)は、4台の端末のうちの1台を除外する組合せを示す図であり、セルの色が濃くなっているセルの端末が除外されることを示している。除外された端末MSjが所属する基地局BSjの送信電力Pjは0とされる。このように、まず1台の端末を除外し、再度前記連立方程式を立式して解くことにより得られた解Piが全て前記制約条件を満たしている場合には、その結果を用いて各基地局の送信電力Piを決定する。一方、(b)に示す4台の端末のうちの1台を除外する全ての組合せにおいても、制約条件が満足されなかった場合には、4台の端末のうち2台の端末を選択し、その通信を除外する。4台の端末のうち2台の端末を除外する6通りの組合せのうち、例えば、図6の(c)に示す組合せの場合に、再度立式した連立方程式を解いた結果得られた解Piが前記制約条件を満たしたとすると、その得られた結果を基地局送信電力Piとして決定する。このときの同時接続率は、2/4=0.5となる。
このように、通信を制限する端末数を最小化して、所要の通信品質を満たすユーザ数を可能な限り多くすることが可能となる。
シミュレーション諸元は、次の通りである。セル構成を19セル六角形正則配置とし、ユーザ発生モデルは各セルに1ユーザ(端末)が存在し、セル内に一様分布するものとした。伝搬特性は、送受信間距離の−β乗に比例する長区間変動を考慮し、伝搬利得は距離rの3.5乗に反比例するものとした。基地局アンテナ特性はオムニセル構成(水平面内指向性は無指向)とし、セル半径、基地局最大送信電力(Pmax)、雑音電力についてはセル端での受信SNRが最大で10dBとした。受信電力が雑音電力以下となる場合、推定値z〜 i,jを用いるものとした。また、ユーザ所要通信品質(所要SINR)γiは全ての端末で同値とし、各端末の雑音電力は等しいものとした。
複数基地局協調を行わない方式として、全基地局が最大電力で送信する“電力制御なし”を比較対象とした。
このシミュレーション結果から、本発明の方式では、ユーザ同時接続率の劣化が、伝搬利得の測定が理想的である場合に対して、10%以下に抑えられている。また、本発明の式では、電力制御を行わない場合と比較して、所要SINRが10dBの場合においても、約2倍と十分高いユーザ同時接続率を維持することができる。
Claims (2)
- 複数の基地局と複数の端末とを有するセルラ通信システムにおいて前記複数の基地局の送信電力を制御する基地局送信電力制御方法であって、
前記基地局と前記端末の間の伝搬利得の測定が可能な場合は該伝搬利得の測定値を用いて、また、前記基地局と前記端末の間の伝搬利得の測定が不可能である場合は、前記伝搬利得の測定値に代えて、前記基地局と前記端末の間の距離の推定値に基づいて算出された伝搬利得の推定値を用いて、前記複数の端末における信号対干渉雑音比が所要値になるように前記複数の基地局の送信電力を変数とする連立方程式を立式し、該連立方程式の解を求める第1のステップと、
前記連立方程式の解が基地局送信電力の制約条件を満たしている場合に、その解を前記複数の基地局の送信電力として設定する第2のステップと、
前記連立方程式の解が前記基地局送信電力の制約条件を満たしていない場合に、前記複数の基地局のうち選択された基地局に所属する端末を削減して前記第1のステップに移行し、端末を削減された基地局の送信電力を遮断した条件で新たに前記連立方程式を立式させる第3のステップとを有し、
前記基地局と前記端末の間の距離の推定値は、前記基地局と当該端末が所属する基地局の間の距離と、前記基地局が当該端末が所属する基地局に隣接する基地局であるか否かに応じて異なる値とされた調整値とに基づいて算出されることを特徴とする基地局送信電力制御方法。 - 複数の基地局と複数の端末とを有するセルラ通信システムにおける前記複数の基地局の送信電力を制御する基地局送信電力制御装置であって、
前記基地局と前記端末の間の伝搬利得の測定が可能な場合は該伝搬利得の測定値を用いて、また、前記基地局と前記端末の間の伝搬利得の測定が不可能である場合は、前記伝搬利得の測定値に代えて、前記基地局と前記端末の間の距離の推定値に基づいて算出された伝搬利得の推定値を用いて、前記複数の端末における信号対干渉雑音比が所要値になるように前記複数の基地局の送信電力を変数とする連立方程式を立式し、該連立方程式の解を求める第1の手段と、
前記連立方程式の解が基地局送信電力の制約条件を満たしている場合に、その解を前記複数の基地局の送信電力として設定する第2の手段と、
前記連立方程式の解が前記基地局送信電力の制約条件を満たしていない場合に、前記複数の基地局のうち選択された基地局に所属する端末を削減して、前記第1の手段に端末を削減された基地局の送信電力を遮断した条件で新たに前記連立方程式を立式する処理を実行させる第3の手段とを有し、
前記基地局と前記端末の間の距離の推定値は、前記基地局と当該端末が所属する基地局の間の距離と、前記基地局が当該端末が所属する基地局に隣接する基地局であるか否かに応じて異なる値とされた調整値とに基づいて算出されることを特徴とする基地局送信電力制御装置。
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