JP5624976B2 - 様々な範囲にある物体の位置推定 - Google Patents

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Description

本発明は、空間における1以上の物体の移動に対する位置決め、及び/又はその移動の追跡に関する。それに限定されるものではないが、特に、手の移動を追跡すること、及び超音波信号を使用して物体の位置決め/追跡を実行することに関する。
空間内の物体の移動に対する位置決め又は移動を追跡することができることが役に立つ、多くの適用分野が存在する。例えば、室又は建物の中で人々又は物体の移動を追跡すること、あるいはもっと限定された空間(例えば、コンピュータ又は他の電子デバイスの前)で、手及び指の移動を追跡することが挙げられる。
超音波を使用してそのような位置決め/追跡を実行する1つの方法としては、トランスデューサからエネルギーのバースト状超音波を照射し、1以上のセンサを使用して、物体から跳ね返るエコーを受信し、照射と受信との間の時間遅延を計算する方法がある。超音波信号は、スパイク、あるいは周波数が増加する方向へのチャープ信号又は周波数が減少する方向へのチャープ信号であってもよい。また、照射した信号及びエコーを、「伝送路のインパルス応答」を推定するために使用することもできる。なお、「伝送路のインパルス応答」とは、バースト状超音波が直接ぶつかった環境(「伝送路」)により産出されたエコーに関する応答である。もし照射信号が純然たるインパルスであったならば、受信信号はインパルス応答となるであろう。しかしながら、もし照射信号が、そのような理論的パルスでなければ(例えば、むしろチャープであるならば)、伝送路のインパルス応答は、実際の照射信号の知識を使用して受信信号から計算され、もし仮想的な瞬時パルスが使用されたならば応答がどのようなものであったかを導き出すことができる。
上記で参照されたインパルス応答推定方法は、その最も単純な顕示において、「送信−受信−待機」原理のもとで実行される。この名前が示唆するように、意図的な遅延を使用しており(「待機」)、このため、受信側は全ての受信信号が一回の送信から生成されたものであることを確かめることができる。
「送信−受信−待機」原理の欠点は、距離測定プロセスの更新頻度(即ち、フレームレート)が制限されることである。もし単に送信頻度を多くするように試みたならば、(或る一定のエネルギー閾値よりも高い)前の送信からの全エコーを受信する前に、新しい送信が照射されたときに、以下の問題が生じてしまう。すなわち、古いエコー及び新しいエコーから成るぼけが生じて、正しい時間遅延を正確に推定することが困難となる問題である。
さらにまた他方では、更新レートの制限は、追跡システムで検出され得る動きの速度を制限する。
そこで、上記の問題を克服する提案が行われている。
US 5,059,959で説明される1つの提案では、比較的短いパルスの反復列を使用し、基本的なタイム・オブ・フライト原理を使用して手への距離を計算する。ただ、その提案では、固定された物体、例えば、「およそ基準時間」あたりに到達する、壁又は天井からのエコーであって、追跡している手からのエコーと干渉してしまうエコーに伴う問題が認識されている。そこで、上記した提案では、連続パルス間の区間を変換または「ディザリング」するとともに、幾つかのパルスにわたって戻り信号の振幅を平均化することによって、この問題を克服しようとしている。出願人は、この提案が、対象とするエコーと交わり固定された物体から「およそ基準時間」あたりに到着するエコーが「不鮮明」になり、対象とする信号を意味のないものにしてしまうといった影響を認識している。固定された物体から「およそ基準時間」あたりに到着するエコーが、動きを決定すべき物体からのエコーよりも強いときに、特に問題となる。つまり、対象とする物体が指であり、しかしながらその指の背後に、より大きな面を有する、例えば壁又は人の胴が位置する場合、その問題はしばしば起こり得る。また、短いパルスの使用によって、好ましくない一般的な信号対雑音比を更に与えてしまう。というのは、所与の増幅器について、長い信号は短いパルスよりも多くのエネルギーを含み得るからである。
上記の問題を克服する他の提案は、「携帯型ミニロボットの連続的なソナーによる検出」、ロボット工学とオートメーション、2002.会議記録.ICRA ‘02.IEEE 国際会議第1巻 2002;ページ323−328(“Continuous sonar sensing for mobile mini-robots”, Robotics and Automation, 2002. Proceedings, ICRA ’02. IEEE International Conference on, Volume: 1, 2002; pages 323-328)の中で詳細に説明されている。これは、連続送信を使用し、送信信号と受信信号との相互相関を用いる。相互相関の成功には直交符号の採用が必要とされる。これらの符号は、少なくとも理論的に、受信機側で送信符号と相関することによって、異なる符号からのエコーが相互から弁別され得るという特性を有する。しかしながら、このアプローチには問題がある。1つの問題は、十分に異なる符号を生成又は再生することが困難であるという問題である。即ち、完全に直交する符号の連続シーケンスを生成することは実際に不可能であり、従って相互相関の後でも、或る一定のレベルのクロストーク又は残留エネルギーが存在する。このことは、長い距離からのエコーを検出しようとするときに深刻さを増すこととなる。というのは、短距離間にある物体(又は直接音波経路)から受信されたエコーの中の残留クロストークエネルギーは、対象とする物体からのエコーを完全に消してしまう傾向があるからである。
我々の先願となるWO 2006/067436の中で開示した連続反転手法であっても、直交符号の必要性を回避するために使用することができる。それでも、代替方法の方が好適な幾つかの状況が存在しており、そのような代替方法を提供することが、本発明の目的である。
本発明に係る第1の態様では、伝送路のインパルス応答を推定する方法を提供する。この方法では、
初期信号を提供するステップと、
時間シフト関数を初期信号へ適用して、送信信号を生成するステップと、
送信信号を送信するステップと、
受信信号を受信するステップと、
受信信号を前記初期信号から生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算するステップと、
インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別するステップと、を含む。
また、本発明は、伝送路のインパルス応答を推定する装置へと拡張することができる。この装置は、
初期信号を提供する手段と、
時間シフト関数を初期信号へ適用して、送信信号を生成する手段と、
送信信号を送信するように構成された送信機と、
受信信号を受信するように構成された受信機と、
受信信号を初期信号から生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算する手段と、
インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別する手段と、を備える。
さらにまた、本発明は、コンピュータ上で実行したとき、伝送路のインパルス応答を推定するように設定されたコンピュータ・ソフトウェア製品、及びこのソフトウェア製品を有する担体へと更に拡張することができる。ソフトウェア製品は、
信号生成器を制御して、初期信号を与え、時間シフト関数を該初期信号へ適用して送信信号を生成するように配列されたロジックと、
送信機を制御して、送信信号を送信するように配列されたロジックと、
受信信号を受信機から受信するように構成された入力部と、
受信信号を初期信号がら生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算するように適応されたロジックと、
インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別するように適応されたロジックと、を有する。
以上のように、インパルス応答の「従来の」推定とは異なり、送信信号への時間シフト関数の適用によって、インパルス応答は変換されることが当業者において分かるであろう。これらのインパルス応答に対する時間シフト関数の効果は、飛行時間が異なるため、異なる距離範囲からの反射について異なるものとなる。従って、同じ時間に受信機へ到着する反射でも、インパルス応答は弁別することができる。というのは、より遠くから到着する反射は、より近くから到着する反射とは、異なる時間シフト関数部分を適用されているからである。例えば、直交符号を使用するのではなく、時間シフト関数を使用して、異なるエコーを弁別することが有利であることを理解すべきである。というのは、所望されないエコーは、比較的少ないインパルス応答の「タップ」の範囲にとどめたままとし、そのため検出及び無視を比較的容易とするからである。対照的に、大部分の関連符号長について完全には直交でない「直交」符号を使用することは、多数のタップを横切って問題を拡散する、未処理の交差相関のアーチファクトを生じる結果となる。このことは、所望されないエコーが、対象とする物体からのエコーよりも、はるかに大きなエネルギーを有する状況では特に重要となる。例示に限定されるものではないが、指を追跡するとき、指先からの反射は、胴又は近くの壁からの反射、さらには直接路を伝達する信号(反射されていない信号)よりも、10倍弱められる。
受信信号が初期信号によって生成されたかのように、受信信号からインパルス応答を計算することは、時系列に生の信号を単に平均化することとは全く異なり、異なる距離範囲に存在する物体からの反射の正確な弁別を可能にする。平均化に伴う問題は、直交符号に伴う問題と同じである。すなわち、所望されないエコーが結局は不鮮明となり、そのため、明確さや識別可能性を低減させる。短いパルスから生じる生の信号の単純な平均化に伴う他の欠点は、信号の必要な部分を打ち消す危険性があることである。つまり、連続するパルスが相互に関連してシフトされ、その結果、相互に位相が不一致となる信号部分が打ち消される。出願人は、より長い信号を使用してインパルス信号を計算することにより、そのような先行技術の方法よりも良好な信号対雑音比及びエコーの弁別を提供できることを見出した。
好ましくは、対象とする物体までの距離を計算するため、受信信号を使用する。
本発明に係る第2の態様では、対象とする物体に対する位置決め、又は対象とする物体を追跡する方法を提供する。この方法では、
初期信号を提供するステップと、
時間シフト関数を初期信号へ適用して、送信信号を生成するステップと、
送信信号を送信するステップと、
対象とする物体からの送信信号の反射による第1の受信信号、及び対象とする物体からの送信信号の反射から生じたものでなく、この第1の受信信号とは異なる飛行時間(time of flight)を有する第2の受信信号を含む複数の受信信号を受信するステップと、
時間シフト関数を使用して、第1の受信信号と第2の受信信号とを弁別するステップと、
第1の受信信号を使用して、対象とする物体までの距離を計算するこステップと、を含む。
また、本発明は、対象目的物体を位置決め又は追跡する装置へ拡張される。この装置は、
初期信号を与える手段と、
時間シフト関数を初期信号へ適用して、送信信号を生成する手段と、
送信信号を送信するように構成された送信機と、
対象とする物体からの送信信号の反射による第1の受信信号、及び対象とする物体からの送信信号の反射から生じたものではなく、この第1の受信信号とは異なる飛行時間を有する第2の受信信号を含む複数の受信信号を受信するように構成された受信機と、
時間シフト関数を使用して、第1の受信信号と第2の受信信号とを弁別し、第1の受信信号を使用して、対象とする物体までの距離を計算するように構成された処理手段と、を備える。
また、本発明は、コンピュータ上で実行したとき、対象とする物体に対する位置決め、又は対象とする物体を追跡するように設定されたコンピュータ・ソフトウェア製品、及びこのソフトウェア製品を有する担体へ更に拡張することができる。ソフトウェア製品は、信号生成器を制御して初期信号を与え、時間シフト関数を初期信号へ適用して、送信信号を生成するように配列されたロジックと、送信機を制御して、送信信号を送信するように配列されたロジックと、対象とする物体からの送信信号の反射による第1の受信信号、及び対象とする物体からの送信信号の反射から生じたものではなく、この第1の受信信号とは異なる飛行時間を有する第2の受信信号を含む複数の受信信号を受信機から受信するように適応された入力と、時間シフト関数を使用して、第1の受信信号と第2の受信信号とを弁別し、第1の受信信号を使用して、対象とする物体までの距離を計算するように適応されたロジックとを有する。
このような実施形態では、インパルス応答空間(domain)内で処理が排他的に実行されるか、生の信号空間内での処理とともに実行される。実際、本明細書で説明するインパルス応答空間内での処理は、必要に応じて、生の信号空間内で同等の処理を行うことで置き換えてもよいし、あるいは生の信号空間又はインパルス応答空間内での任意の線形変換(例えば、非整数次フーリエ空間、ウェーブレット空間)内で同等の処理を行うことで置き換えてもよい。また、必要に応じて、第1の受信信号と第2の受信信号とを更に良好に弁別するために、非線形変換(例えば、エンベロープの変換又はエンベロープの対数変換など)を用いることができる。そして、これらの変換は、別々に、又は生の信号空間とその線形変換とを組み合わせて用いることができる。
本発明の上記した態様の双方において、方法は、好ましくは、サンプリング窓に対応する複数のタイムフレームを規定するステップと、インパルス応答の行列を更に規定するステップとを含む。なお、ここで、隣接するタイムフレームのインパルス応答は相互に隣接している。このような行列において、物体は、連続するタイムフレームにおいて物体からの反射によるインパルス応答に対応するパターンによって表される。
行列は、メモリ又はコンピューティングデバイスの他の記憶媒体に記録されたデータを含む論理構造体である。同様に、行列は画像として見ることができ、行列の値は画像の中の輝度レベルに対応している。サンプリングスキーム、およびそのような行列は、好ましくは長方形であるが、これは必須ではない。それは例えば六角形などの異なる形状であってもよく、あるいは隣接する列の高さが変動してもよく(即ち、サンプリング窓の長さが変動してもよく)、必ずしも単純な幾何学的パターンに従うものではない。一般的に、行列は、異なる時間におけるインパルス応答のサンプルから作り上げられる。なお、ここで、インパルス応答は、それ自体が時間の関数となっている。
出願人は、インパルス応答を画像として表すことができるように(実際にインパルス応答がそのように表されるかどうかに関わらず)、インパルス応答を組織することにより、画像の強力な解析を採用して物体に関する有用な情報、例えば、存在、移動、及び形状、サイズ、方位などの変化を推論し得ることを実感した。そのような解析をこの後で検討するとき、インパルス応答画像を参照する。しかしながら、データが行列として記憶されているかどうかに関わらず、又はデータが純粋に論理構造体であるかどうかわらず、そのような解析は行列におけるデータを同様に実行することと等しく、実際の画像又は他の表現の生成を要求することへ本発明が固有に限定されるものと本明細書を解釈すべきでないことを、当業者において理解できよう。
幾つかの公知のシステムにおいて、反射した信号の連続する対を比較することによって(例えば、それらの位相を比較することによって)、物体の追跡を実行することができる。これは、「生の信号」空間として考えることができる。しかしながら、出願人は、本発明の幾つかの好ましい実施形態に従って、インパルス応答画像空間中で追跡を実行することによって、著しい利点が実現され得ることを認識した。例えば、「生の信号」空間で動作するときよりも、多数の小さいパルスを分離する必要性、又は波形の前縁を発見する必要性が少なくなる。本発明の好ましい実施形態は、「シーン」の概観を取ることを許し、このことは、いくつかの所定時で「探索」動作を単純に実行することとは反対に、特定の物体及びそれらの移動を有する画像部分の識別について、より良好で適格な推定を可能とする。
物体及びそれらの移動に対応するインパルス応答の「画像」の中のパターンは、典型的には、多数の連続時間区間からのインパルス応答から作り上げられる。これは、画像内の傾向の一層正確で信頼性のある解析を可能とし、そして、物体の信頼できる識別、位置決め、及び/又は追跡を可能とする。本発明の幾つかの実施形態において、インパルス応答画像はマルチフレーム動き推定を許す。即ち、この動き推定は、動きがフレームからフレームへと単純に計算されるものではなく、それゆえ、とうていフレームにわたって平均化されえない。むしろこの動き推定は、最初から幾つかのフレームを使用して動きが計算される動き推定である。
インパルス応答画像は、インパルス応答の対について計算されようと、複数のインパルス応答について計算されようと、複数の物体及び/又は単一物体内の複数の画素について、起こり得る移動を計算する動き推定を更に可能とする。即ち、これは多画素/多候補の動き推定である。そのような動き推定では、2つ以上の連続するタイムフレームからのインパルス応答サンプルを使用する。実際に、我々の研究では、物体表面上の異なる点は、物体のサイズ及び方位に起因して異なる動きパターンを有し得ることを示した。例えば、もし手が受信機/送信機セットアップの前面近くを一定の速度で直線に沿って動いているならば、手における一方の側の反射点又は部分物体は、受信機/送信機セットアップに対して他方の側の点又は部分物体と同じ距離系列を有しない。
本発明によれば、1よりも多い対象とする物体が存在してもよく、対象とする物体が追跡中に変化してもよい。例えば、2つの手の移動を追跡することができる。
これに対して先行技術の方法では、1つのフレームから次のフレームへの信号位相遅延を計算することに基づいている。これは、物体全体を示す単一の「平均」位相遅延が存在することを仮定している。しかしながら、これは、しばしば正確な仮定とはならず、追跡している物体の形状に依存するものであることを出願人は見出した。これは、例えば、追跡曲線上の所望されないアーチファクトなどの曖昧さという結果となり、物体位置の動きに関する混乱を導き、このため不正確な位置推定となる。特に、2D又は3D位置を計算する場合にはそのような結果となり得る。
初期信号は、いくつかの所望な形態を取り得る。初期信号は、周期的に反復するものであることが好適である。反復周期はタイムフレームを規定しており、このタイムフレームは典型的にはインパルス応答サンプル周期、すなわちインパルス応答画像を作成するために使用される「スライス」に対応する。また、各タイムフレーム内の信号は任意の形態を取り得る。単純な実施形態では、その信号は単一のインパルス又はスパイクを有する。即ち、利用可能な帯域幅の制限内でディラックのデルタ関数に近似する。これは、インパルス応答を計算するために要求される「生の信号」の処理が、あるとしても、少ないという点で、幾つかの利点を有する(純粋なインパルスの理論的なケースでは、計算は要求されない)。また、連続するパルス間の相互相関の容易な計算を可能とする。なぜならば、インパルス応答行列は非常に疎(スパース(sparse))であるからである(即ち、主としてゼロである)。しかしながら、狭パルスは、意図的な短い送信のため貧弱な信号対雑音比を与える。
また、他の実施形態において、信号は連続した、すなわち一連のパルスであってもよい。このような信号は、必要な計算量を大きく増加させることなく、単一のパルスよりも良好な信号対雑音比を与える。更にまた、簡単な増幅器の使用を可能とする。なぜならば、高度な線形性が要求とされないからである。他には、一定周期だが信号の位相が循環的に変化するような信号、例えば、各タイムフレームで変わるパターンの信号を使用してもよい。また、他の実施形態では、信号は、1以上のチャープ信号(例えば、周波数が上昇する又は下降する信号)を有している。これらの信号は、良好な信号対雑音比を与え、「生の」受信信号に対して適用される、対応するデチャープ処理によりインパルス応答を計算するのに合理的である。更に一般的には、ランダム信号又は疑似ランダム信号が使用されてもよい。これらの信号は、送信が連続的になるタイムフレームを満たすものであってもよく、もしくは、送信が非連続的となるようにタイムフレームよりも短いものであってもよい。
インパルス応答画像又は行列の中のパターンは、もちろん、送信信号へ適用される時間シフト関数によって影響される。しかしながら、異なる距離範囲にある物体同士の混同を回避するため、時間シフト関数を使用することができる。これを用いる一態様については、以下に説明する。
受信信号に対する時間シフト関数の、距離範囲に依存する影響は、物体間を弁別するためにその影響自身を用いることができる。しかしながら、インパルス応答が計算される好ましい実施形態において、時間シフト関数の逆関数が、計算されたインパルス応答へ適用される。逆関数を適用し、インパルス応答を計算し、インパルス応答画像を作成する順序は、重要というわけではない。例えば、逆関数を、インパルス応答画像の列に、つまり、「画像空間」に適用することができる。すなわち、インパルス応答推定処理の本質部分として適用することができる。
逆関数を適用する場合、送信信号へ適用される時間シフト関数と受信信号へ適用される逆関数との間で、どれくらいの時間遅延を用いるかを決定しなければならない。この時間遅延は、受信信号の飛行時間に関する仮定と同じである。それ故に、この仮定に当てはまる受信信号は、時間シフト関数の効果を実質的に打ち消し、仮定に当てはまらない受信信号は、この効果を打ち消さない。結果は、特定の距離範囲の上に効果的に「焦点を合わせ」、他の距離範囲からのインパルス応答を犠牲にして、焦点を合わせられた距離範囲からのインパルス応答へ、より大きな明瞭度をもたらすことである。
インパルス応答画像との関連で、時間シフト関数は、物体を表す線に対して付加的な仕組みを追加し、逆関数は、その仕組みを再び除去するが、距離範囲の仮定に当てはまる物体についてだけその除去を行う。インパルス応答画像に関連する距離範囲の仮定は、飛行時間が、1つのタイムフレームによって表されるサンプリング窓の中にあるかどうか、あるいは2つのタイムフレーム、3つのタイムフレームなどの中にあるかどうかに関して決定することと同じである。逆関数を適用した後では、「焦点の距離範囲」の中の物体のインパルス応答は、比較的に良好に定義された線、例えば、もし物体が静止していれば直線の水平線である。対照的に、距離範囲外の物体のインパルス応答は、もちろん、適用された時間シフト関数の性質に依存して、なお一層「不鮮明」になる。
こうして、送信信号へ適用される変動パターン、即ち、時間シフト関数の知識は、近い物体からのエコーを、遠い物体からのエコーから分離するために使用され得る。というのは、遠い物体からの対応するエコーパターンは、(そのより長い飛行時間のために)近い物体からのエコーパターンと比較して時間シフトを顕著に表すからである。近い物体及び遠い物体のインパルス応答のパターン間でのこのシフトは、適切な手法を使用して直接解析することができるが、逆関数を適用することによって、そのような解析をずっと容易にすることができる。また、例えば、比較的簡単なフィルタを使用してもよい。
上記で説明した「焦点合わせ」は、対象とする物体、又は複数の対象とする物体のうちの1つについて使用されるだけでなく、背景物体についても使用することができる。これは効果的な背景物体の識別を可能とし、これにより、対象とする物体を追跡しているときに、例えば、減法、加重関数によって背景物体を計上する、あるいは単純にそれを無視するということを可能とする。
任意の適切な変動パターン、例えば、単純な周期パターン、例えば、正弦波、方形波、又は鋸歯状パターンが、時間シフト関数のために使用することができる。規則的なチャープ及び正弦波変動の単純な例を挙げると、本発明に従った方法を適用することなく、各送信をタイムフレーム中の同一点で行う(なお、タイムフレームは等しい長さであるものとする)。しかしながら、本発明の例示的実施形態では、送信はそれぞれのタイムフレームの中の異なる点で行われ、従って送信間の区間は、正弦波パターンの中で時間と共に変動することとなる。
しかしながら、もっと複雑な時間シフト関数、例えば、疑似ランダムシーケンスに基づく時間シフト関数を使用することが好適である。そのようなシーケンスは効果的に反復しないか(任意の実用的なタイムスケールで)、比較的短い周期、例えば5から50フレーム、例えば30フレームごとに反復する。一連の実施形態において、時間シフト関数は、予想される最も遠いエコー(これは、例えば、装置が使用されている室の寸法を使用して計算される)について、往復飛行時間よりも大きいか等しい時間周期の中で反復しない。代替として、(例えば、放射性崩壊の源から引き出される)真のランダムシーケンスが使用されてもよい。しかしながら、この場合、受信信号へ適用されるべき逆シフトは、ランダム時間シフトのシーケンスから計算されなければならない。というのは、対応する逆シフトは、独立に計算できないからである。
もっと複雑な時間シフト関数の使用が有利である。というのは、それは対応するインパルス応答に一般的な雑音特性を与えるからである。しかし、もちろん、「雑音」の正確なパターンが知られるという利点を有する。これは、所望される距離範囲からの物体について、逆関数を適用して「クリーン」なインパルス応答を生成することを可能とするが、距離範囲の外からのインパルス応答は、逆関数を適用した後でも依然として一般的な雑音特性を有している。この一般的な雑音特性は、一般的な雑音低減フィルタなどを使用して、それらの特性を削除することを比較的容易に行うことができる。
時として、遠距離場の物体からの古い反射が、近距離場の物体からの反射とオーバーラップすることがある。これは、物体がタイムフレーム長の正確な倍数で分離されているからである。本発明に係る好ましい実施形態では、例えば、所望の反射を補強し、所望されない反射を「不鮮明にする」ことによって、反射の分離を容易にする。しかしながら、出願人は、このような場合、所望のインパルス応答と所望されないインパルス応答との分離を更に改善し得る有利な手法を案出した。すなわち、一連の好ましい実施形態において、2つの隣接するフレーム間で初期信号のタイムフレーム長を変更するステップを含む。周期的パルスの初期信号の例を取ると、これはパルス間の「基準」時間を変更するステップ、並びに、時間シフト関数に従って、個々のパルスのタイミングを基準に対して変更するステップと同じである。タイムフレーム長の変更は、窓当たりのサンプル数を更に変更し、これによりインパルス応答画像内の列の長さも変更する。
フレーム長を変更する利点は、インパルス応答画像内の所望されないエコーを動かし、所望のエコーを動かさないで残すことである。言い換えれば、それは2つの画像を分離するために働く。このことは、新規の問題の中心、つまり、物体間の分離と正確なフレーム長の倍数との等価性を考慮することによって理解できる。ここでもしフレーム長が変化するならば、物体間の所定の分離に対する等価性が成立たなくなるであろう。
フレーム長の変更は一度だけ起こるか、複数回の変更が適用され得る。複数回の変更は自動的に行われ得るが、幾つかの好ましい実施形態において、フレーム長への変更は、要求されたとき、2つの重畳されたエコーを分解するために行われる。こうして、タイムフレーム長は、2つの画像の満足な分離が達成されるまで、自動的及び累進的に変更され得る。
初期信号が不連続である場合(即ち、信号が各フレームを満たすものでない場合)、フレーム長の変更は間隔を短くするか、あるいは長くするかによって対処される。初期信号が連続である場合、(伸長したものに一致するように、各タイムフレームへ一部を追加するか、短縮したものに一致するように、その一部を除去するなど)フレーム長の変更は初期信号自体の変更を必要とするが、これは、例えば、各フレーム長に1つの符号の符号群を有することによって、容易に対処することができる。
前に概説された「焦点合わせ」手法は、より良好な空間分解を効果的に行うことができる。というのは、それは、サンプリング・タイム・フレームに対応する空間距離範囲の縮小に応じて、更新レートの増加を許すからである。しかしながら、本発明によれば、異なるタイムフレームからの反射は、相互にあいまいに重畳されないで分解され得る。
上記で言及されたように、本発明の実施形態の幾つかによれば、対象とする物体からのエコーを識別する手法は、他の物体からのエコーにも適用できる。対象とする物体からのエコーを含むエコーパターンを解析するとき、他の物体からのエコーを識別することによって、このエコーを効果的に補償したり、無視したりすることができる。この「背景物体」の識別は、別個の段階で、例えば、初期又はセットアップ段階で、又は対象とする物体が追跡されている同じ時間に、実行され得る。
このようにして、本発明の方法に係る幾つかの好ましい実施形態では、対象とする物体ではない物体からの、第2の受信信号への寄与を識別するステップを更に含んでいる。例えば、非対象物体からの反射に対応するインパルス応答を、インパルス応答画像から減じることができる。
減法は、時間シフト関数の逆関数をインパルス応答画像へ適用し、第1の飛行時間距離範囲の中の静的物体からの反射が、画像内の所定の線によって表されるようにするステップと、フィルタを適用し、対象とする物体ではない物体の存在を決定するステップと、非対象物体に関連した寄与をインパルス応答画像から減じるステップとを含む。
またあるいは、時間シフトが規則的に反復する実施形態では、減法を以下のように行うことができる。すなわち、時間シフト反復の周期によって相互から分離されたインパルス応答列の2つのブロックを比較するステップと、双方のブロックの中に存在するパターンを識別するステップと、そのパターンをインパルス応答画像から減じるステップとを含んでいる。このパターンは、時間シフトの反復ごとに画像から減じられる。一連の実施形態において、2つのブロック及びパターンは、時間シフトの反復幅となる。このようにして、静的物体からの反射や、一定の背景雑音などの他の原因を、インパルス応答画像から除去することができる。
さらにまた、インパルス応答列の単純移動平均(ローリング平均)を計算してもよい。そのような列は、インパルス応答タップの2つ以上の列を、相互に関して垂直シフト量だけ垂直方向にシフトし、2つの整列した列の平均を計算することによって、(好ましくは、タイムフレームごとに)周期的に更新され得る。次いで、列の移動平均を、例えば、タイムフレーム又は行列の列ごとに一回、インパルス応答から減じる。垂直シフト量は、好ましくは、逆時間シフト関数から決定される。これによって、対象とする飛行時間距離範囲(距離範囲の「深さ」は時間において1つのタイムフレームに等しい)にある静的物体を、各列の中の同じ垂直位置で表すことができる効果を有する。これは、前段落で説明したアプローチの代替アプローチであるが、同じ結果を得ることができる。
上記で説明した配列において、所望されないエコーに関する信号又はインパルス応答の一部を単に減じる代わりに、所望されないエコーに対応するとして、又は対応する可能性があるとして、識別された部分へ異なる加重を加える加重関数を使用してもよい。
もちろん、実際には、受信信号は或る程度、実際の雑音からの影響にさらされる。そこで、好ましい実施形態では、時間シフト逆関数を適用した後、低域フィルタをインパルス応答画像に適用する。これは、他の物体からの反射及び実際の雑音部分の除去を助けることとなる。もちろん、逆関数を適用し、続いて低域フィルタを適用するのではなく、これと効果的に同等なカスタマイズフィルタを適用することもできる。
実用的な状況において、エコーを反射させる物体の全て、又は幾つかは、動いている可能性がある。したがって、結果は、インパルス応答画像内の線が、(正しい逆関数を適用した後では)水平ではなく、例えば反射方向での速度に依存して水平方向に対して或る角度になる。そのような場合、水平方向での帯域フィルタ、又は一般的な2次元帯域フィルタを採用することができる。これは、水平方向及び/又は直線からの或る程度の逸脱を許容し、同時に物体の追跡を可能とする。しかしながら、幾つかの好ましい実施形態において、動きを検出し、物体の移動方向に整列した適切な線形フィルタを適用することが好適である。動きは、例えば、勾配検出アルゴリズムを使用するか、他の方法、例えば、ドップラーシフトを使用して、受信信号を解析することにより検出することができる。動きの線を検出し、それに関してフィルタリングするプロセスは、或る意味で循環論法的問題である。というのは、直線運動をフィルタリングすることは、直線運動の知識を必要とし、この知識は、おおまかには、曲線をうまく追跡することから生じるからである。それでも、多くの実用的な状況では、主な動きの傾向に関する十分な情報が、先行する知識なしに画像から抽出され得る。
出願人は、時間シフト関数を適切に選択することによって、焦点を置いている距離範囲の中にない反射に対して追加された「雑音」を、反射させている物体の見かけ上の動きと類似させることができる点について察知した。つまり、この見かけ上の動きとは、物理的に不可能なものであるか、あるいは期待された物体に関する所定の境界内にあるかといったものである。例えば、手追跡システムの移動の場合、上限は速度及び加速度に基づき配置される。これらの上限は、もし手の動きの物理特性が与えられた場合、非常に低くなり得る。こうして、幾つかの好ましい実施形態では、特定のインパルス応答によって暗示される動きの特性、例えば、速度又は加速度を決定するステップと、特性を閾値又は期待特性の集合と比較するステップと、決定的な一致が得られない場合に、インパルス応答の対応する一部を無視は除去/フィルタ削除するステップとを含む。
同様に、幾つかの好ましい実施形態では、期待される、一連の実際の動きでは、インパルス応答画像の水平方向に低周波数成分のみを含んでおり、このため、幾つかの好ましい実施形態では、フーリエ変換、例えば、高速フーリエ変換を、時間シフト関数の逆関数を適用した後に取得されたインパルス応答画像に対して適用するステップを含む。その後、インパルス応答画像の調査対象部分の周波数成分に依存してテストを行い、調査対象部分が対象とする物体に関連するかどうかを決定することができる。
物体の位置決め、又は物体に対する追跡と同じように、本発明の手法は、伝送路のインパルス応答を推定するもっと一般的な応用に用いることができる。この応用例としては、音風景の中で音源を追跡すること、例えば、事後処理によって、録音帯から特定のスピーカを隔離させることである。
以上のように、本発明に係る他の態様を見ると、時間シフト信号を送信するステップ、及び受信信号の時間シフトを送信信号と比較することによって、異なる反射の受信エコーを弁別するステップとを含む伝送路インパルス応答推定方法を提供する。
本発明は、時間シフト信号を送信するように配列された送信機、及び受信信号の時間シフトを送信信号と比較することによって、異なる反射の受信エコーを弁別するように配列された処理手段とを備える伝送路インパルス応答推定装置へと拡張することができる。
本発明は、コンピュータ・ソフトウェア製品、及びこのソフトウェアを有する担体へと更に拡張することができる。このソフトウェアは、コンピュータ上で実行されるとき、送信機を制御して時間シフト信号を送信するように構成されている。このソフトウェアは、受信信号の時間シフトを送信信号と比較することによって、異なる反射の受信エコーを弁別するように配列されたロジックを有する。
一連の好ましい実施形態において、本明細書で説明される方法では、人の手又はその一部分の動きを追跡するために使用することができる。好ましくは、これは電子デバイスを制御するために使用することができる。電子デバイスは、可視ディスプレイを有するデバイスを備えるが、このようなデバイスに限定されるものではなく、例えば、コンピューティングデバイス、携帯機器、携帯電話、PDA、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、テレビ、ミュージックシステム、ビデオカメラ、又は、これら又は他の機能の任意の組み合わせを実行する静的又は持ち運び可能な任意のデバイスを備えてもよい。この例に限定されるものではないが、1つの態様としては、ユーザの指の移動を追跡して、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を有するコンピューティングデバイス、又は他のデバイスの上のカーソルを制御することが挙げられる。
特に好ましい一連の実施形態では、本発明に従った方法は、手の仕草を識別するステップを含む。これらの仕草には、以下にていくつか説明するが、多くの展開がありえる。しかしながら、利用可能な代替案が多数存在し、本発明の実施形態に従って達成され得る原理及び利点は、これらの代替案を好適に又は可能とすることが当業者において明らかである。
1つの例において、システムは2つの指を検出するように配列される。これらの指は一緒になるように動いているか、離れるように動いている(即ち、集束又は分離している)。もちろん、特定の仕草を機能の制御へマッピングすることは、特定の応用に従って決定され得る。しかしながら、この仕草は、例えば、スクリーンオブジェクトがそれぞれズームアウト又はズームインされるべきことを表示するために便利に使用され得る。好ましい例において、前記の仕草は、インパルス応答画像のそれぞれの半分又は部分における異なる方向の動きから識別される。本発明のこの実施形態によれば、そのような識別は成功裏に実行され得ることが察知されるであろう。というのは、インパルス応答画像は、比較的粗いレベルの空間分解を有する動き識別を可能とするからである。更に、手の指の正確な位置を決定することは必要でない。その代わりに、(正確には「決定論的追跡」とは対照的に)「確率論的追跡」アプローチを使用して、相対的分離又は集束を決定すればよいだけである。例えば、指の先端の移動に対応する可能性のある高反射エネルギー区域を識別することによって、画像の事前フィルタリングを使用することができる。
本発明の任意の態様に従った送信は、任意のタイプ、例えば、無線波、マイクロ波、赤外線などが挙げられるが、好ましくは、超音波、即ち、好ましくは20kHzよりも大きい周波数、更に好ましくは30kHzよりも大きい周波数(又はMF)を有する音波である。
本明細書の方法の全てにおいて、結果は、好ましくは、揮発性又は不揮発性メモリの中に記憶される。追加的又は代替的に、結果は表示装置上で表示される。こうして、方法は、好ましくは、表示装置用に表示信号を与えるステップを含む。追加的又は代替的に、方法は、外部デバイスを制御するために使用される。こうして、方法は、好ましくは、外部デバイスのために制御信号を提供するステップを備える。
本発明の方法は、好ましくは、コンピューティング手段、コンピューティングマシン、データ処理装置、又は記憶された命令を実行できる任意の他のデバイスを使用して実行される。そのようなデバイスは静的であってもよいが、本発明は携帯機器を用いて同等に使用され得る。実際、異なる動きを分離できる本発明の少なくとも幾つかの実施形態に従って達成され得る利点は、携帯機器での使用を特に適したものにする。それ故に、他の態様から見たとき、本発明は、超音波送信機及び分離/統合された超音波受信機を備える携帯機器を提供する。前記デバイスは、デバイスの少なくとも1つの動作が、これまで記述された方法に従って、ユーザの手の移動を決定することによって制御されるように構成されている。
本明細書では、信号が送信され、物体によって反射され、次いで受信される配列を参照するが、原理は、「能動物体」へ等しく応用される。即ち、検出又は追跡されている物体が送信機を含み、信号は、物体によって反射されるのではなく、物体から生じる。
本発明の或る一定の態様を参照して上記で説明された特徴は、これらの態様のみに限定されるものと理解されてはならない。適切な場合、上記の特徴は本発明の他の態様へ応用されてもよい。
本発明の或る一定の好ましい実施形態は、添付の図面を参照し単なる例として今から説明される。
本発明の方法を用いて使用されるのに適した装置を示す略図である。 先行技術の方法に伴う問題を示す図である。 先行技術の方法に伴う問題を示す図である。 先行技術の方法に伴う問題を示す図である。 先行技術の方法に伴う問題を示す図である。 本発明の実施形態の使用を介して達成される改善を表示する図である。 本発明の実施形態の使用を介して達成される改善を表示する図である。 本発明の実施形態の使用を介して達成される改善を表示する図である。 本発明の実施形態の使用を介して達成される改善を表示する図である。 本発明の実施形態の使用を介して達成される改善を表示する図である。 本発明の実施形態が原理的にどのように働くかを詳細に示す略図である。 本発明の実施形態が原理的にどのように働くかを詳細に示す略図である。
最初に図1を参照して、コンピュータのグラフィカル・ユーザ・インタフェースの非接触制御に対する本発明の原理の例示的実現が説明される。信号生成器2は、周期的に反復する超音波周波数「チャープ」信号を生成する。この信号は、信号プロセッサへ渡され、疑似ランダム時間シフト関数をこの信号に適用する。これにより、信号の或る部分を信号の他の部分に対して時間的にシフトさせる。シフトさせた信号は、次いで超音波送信機4によって超音波へ変換される。これらの超音波は、追跡するべき物体6(例えば手)から跳ね返ってくるとともに、同様に他の遠い妨害物(例えばユーザの胴)からも跳ね返ってくる。反射されたエネルギーは、1以上の超音波受信機8によって受信される。超音波受信機8は、エネルギーをアナログ電気信号へ戻し、このアナログ電気信号はプロセッサ10へ渡される。下記で詳細に説明されるように、プロセッサ10は、インパルス応答を計算し、時間シフト関数の逆関数を適用して、フィルタリングを実行する。そして、最終的には物体6の移動を決定する。物体6の存在及び位置に関する情報は、カーソル14の移動を制御するために、表示装置12へと渡される。表示装置は、別個のシステムに設けられていてもよく、プロセッサ10が設けられているコンピュータの一部分であってもよい。カーソル14は、物体の移動を画面上で再生する。
プロセッサ10は、信号生成器2と結合される。これは、プロセッサ10が時間シフト関数の正確な逆関数を適用できるようにするためである。
超音波受信機8によって出力されたアナログ信号は、超音波送信機4、対象とする物体6を含む撮像視野、及び超音波受信機を備える「伝送路」について「インパルス応答」を計算するため使用される。
伝送路のインパルス応答を推定する1つの方法は、短いインパルスを信号の中へ入力し、受信されたエコーと、受信されている直接経路のエネルギーを聞き取ることである。しかしながら、そのような信号、即ち、インパルス応答推定値が求められる帯域の外側にある周波数成分を含んでいる信号を、送信機へ「ショック」を与えることなしに送信することは困難である。そこで、他の手法、例えば、周波数の漸次の上昇又は減衰を有する疑似ランダム信号又はチャープ信号を送信する方がより適切である。
まず、伝送路上の信号の送信は、次のモデルに従うものと仮定する。
Figure 0005624976
送信される信号は、時系列、即ち、規則的な時間区間における離散的な信号値列として表される。サンプリングした信号であることから、受信信号も時系列で表される。インパルス応答h(t)は、測定が要求されているものである。伝送路のh(t)は、少なくとも使用される実際の時間窓の中では一定であるか、x(t)及びy(t)の変化に対して非常に遅く変化しているものと仮定する。即ち、伝送路の時間変動伝を測定できないというのではなく、少なくとも本発明に係る好ましい実施形態では、実施には、伝送路が時間の経過と共にどのように変動するかに関連している。ただ、伝送路における変動が、信号の変動と比較して遅いということである。
伝送路は、Qタップの有限インパルス応答(FIR)フィルタとして表すことができる。当技術分野で周知のように、これは、伝送路のh(t)を、入力信号の前のQ時間でのサンプリングで適用されるべき加重列としてみなす構成である。信号x(t)が拡声器を介して送信されたと仮定し、それはy(t)としてマイクロホンを介して受信されるものとする。この場合、受信した信号y(t)は、送信した信号x(t)へ次式のように関連づけることができる。
Figure 0005624976
即ち、y(t)のサンプリングは、x(t)のサンプリングを満たすkの線形結合であって、線形の重み付けが、「フィルタ係数」h(0),・・・h(k−1)の中で与えられる。伝送路を推定するためには、これらのフィルタ係数を推定することが必要である。この手法において、信号x(t)は、負の無限から正の無限までの全てのtについて、「白色」であると仮定する。言い換えれば、信号は全ての非ゼロシフトについてそれ自身と無相関であると仮定される。これを式で表すと、
Figure 0005624976
ここで、Pは正の実数であり、x(t)が有限サポートを有するものとする。即ち、tの大きな+/−値についてはゼロとし、それ以外は有限値を有するものとする。信号をそれ自身の時間反転と畳み込むことは、信号それ自体との相関、即ち、信号の自己相関を計算することと同じである。従って、x(t)を実際に白色であると仮定し、x(t)を自身と相関させると、0のタイムラグに関しては正の値Pが生じ、その他の場合にゼロを生じる。
これを他の方法で書けば、
Figure 0005624976
ここで、∂(t)はディラックのデルタ関数である。ここで、式(B)も、N+1のサンプリング及びx(t)の時間窓と共に、時点tの辺りで近似的に成り立つものと仮定する。従って、
Figure 0005624976
の辺りでy(t)をx(−t)と畳み込むと、
Figure 0005624976
和の中の内項を計算すると、
Figure 0005624976
故に、
Figure 0005624976
上記の式(D)から分かるように、式(G)の角括弧の中の項は、l=iであるときにのみ(近似的に)Pであり、それ以外のとき(近似的に)0である。ここで、l=1を選択することによって、畳み込み[y(t)*x(−t)]t(l)は、P掛けるh(l)である。もしl=2であれば、それはP掛けるh(2)であり、以下同様である。このようにして、フィルタ係数h(.)は、或る一定の「中心」時間サンプルtの辺りでx(t)の窓とy(t)の窓とを畳み込むことによって推定することができる。
隣接するタイムスロット列については、例えば、上記で計算されたようなインパルス応答を相互に隣接して配し、インパルス応答画像を形成することができる。簡単なインパルス応答画像の可視表現を、図2dで示す。実用的システムにおいて、そのような可視表現は恐らく実際には必要ではない。というのは、それらのインパルス応答を表示することなく、計算されたインパルス応答の上で、関連する解析を実行するからである。画像内の画素の各垂直列は、1つのサンプリング窓又はタイムスロットを表している。つまり、垂直方向の目盛はフィルタタップ数である。水平方向の目盛はサンプル数となる。そして、インパルス応答画像は、サンプル窓の長さと等しい長さでインパルス応答の連続時間線を刻み、それらの長さを相互の隣に配した結果として考えることができる。
図2aから図2dは、異なる距離範囲にある物体からのエコー間の干渉問題を示している。図2aは、例示的に送信信号20を示す。ここで、各タイムフレーム(それぞれの垂直棒でマークされる)の始めには、照射された規則的な反復パルス22が示されている。図2bは、図2aで示される第1のパルス22に対するシステムのインパルス応答を示している。第1のパルス22は、第1のフレームの中に現れる(近くの物体からの)主なエコー24と、次のフレームの中に現れる(遠い物体からの)弱いエコー26とを生成することが分かる。これは、もしインパルス信号を時間t=0からスタートして生成した場合、1つのエコー24が第1のタイムフレーム(ここでは、50タップのフレーム長Nを有する)の中で受信され、他のエコー26が第2のフレームの中で受信されることを実証している。
しかしながら、図2bは人為的なものである。というのは、それは第1のパルス22からのエコーだけを示しているからである。もちろん、図2aが示すように、実際は、パルスの規則的な列が存在する。そのような反復された送信の結果は図2cで示される。各タイムフレーム内の最初のピークは、近くの物体からの強いエコー24による影響である。第2のピーク30は、前のフレームの送信パルスからの弱いエコー26による影響である。実際には、全フレーム長よりも長い時間tの分だけ、最初のエコー26に対して「遅延」している。送信されるパルス22は、厳密には周期的であるから、所与のパルスの近い反射及び遠い反射間の時間tは一定に維持される。もっとも、それらの反射は異なるタイムフレームの中に現れるのだが。結果を示す信号がN=50サンプリングの長さで差し挟まれ、そのような窓それぞれが行列の中の列として配されたとき、図2dの中で2つの直線32、34を有するパターンが出現する。第1の線32は、近い物体からの第1の強いエコー24に対応しており、その下の弱い線34は、第1の線32を生成したパルスよりも前のパルスからの、大きく遅延した弱いエコー26からのものである。
ここで2つの問題が潜在的に生じる。第1の問題は、線があいまいであることである。つまり、第2の線34は、(図2dで最初に現れるエコーとした)近い物体よりも少しだけ遠い物体に対応したものであるのかどうか、あるいは(実際に、ここで例とした場合のように)はるかに遠い物体からの古いエコーであるのかどうかを決定することが不可能である。
この例において、遠いエコー26は、全フレーム長よりも大きく離れており、少なくとも2つの線32及び34は互いに区別することはできる。しかしながら、近い物体と遠い物体との分離が、超音波の飛行時間がフレーム長の整数倍に近づくようなものである場合、他の問題が生じる。この場合、下方の線34が第1の線の上に重畳されることとなり、どちらの線についても正確な位置を測定することが不可能となる。
図3aから図3eは、本発明の実施形態に従って、事態がどのように改善されるかを示す。図3aは、この実施形態において、パルス38a、38b、38cの位置がフレームの始まりに対してフレームごとに変化することで、送信信号36が先行技術の送信信号20とは異なることを示す。これは、図2aで示されるような初期信号へ時間シフト関数を適用した結果である。図3bから、第1のパルス38aのインパルス応答は、近い物体及び遠い物体からの反射を理由として、図2bと同じように再び2つのタイムフレームにまたがって拡張されることが分かる。
図3cは、パルス38a、38b、38cの修正された列各々からのインパルス応答の総プロットを示す。図2cと同じように、強い近距離場からの反射40及び弱い遠距離場からの反射42が、各タイムフレームの中で見られる。例えば、2番目のタイムフレームを見ると、このフレームには、2番目のパルス38bによる近距離場からの反射40bと、最初のパルス38aからの遠距離場からの反射42aとを含む。しかしながら、1つのタイムフレームから次のタイムフレームへ動くとき、近距離場及び遠距離場からの反射40、42の分離が変動することも分かる。結果を示す信号が、結合されてインパルス応答画像となる信号セグメントに差し挟まれた場合、図3dでこの変動が明瞭に示される。時間シフト関数の影響は、近距離場からのエコー線44及び長距離場からのエコー線46上で見ることができる。しかしながら、この影響は各線44、46上で異なっており、このことは各線が表す異なる飛行時間、すなわち、各線が送信信号に対して有する異なる遅延によって説明される。これらの理由から、線44、46は平行とはならない。
時間シフト関数は、インパルス応答画像の線44、46に影響する。というのは、あたかも送信信号が原初の信号、即ち、時間シフト関数が適用される前の信号であったかのように、インパルス応答が計算されるからである。インパルス応答画像内の平坦線からの移動は、通常、信号を反射した物体の移動に対応するので、時間シフト関数の影響は、問題とする物体へ「人為的移動」を追加することと考えることができるが、所定物体の実際の移動は、送信機及び受信機それぞれからの物体の位置に依存する。
図3eは、1つのタイムフレームに等しい遅延を用いて、時間シフト関数の逆関数をインパルス応答へ適用した結果を示している。これは、飛行時間が単一のタイムフレームの中となるように、物体からの反射が来るという仮定に基づいている。ここで、近くの物体から来る反射は、この仮定と一致し、直線の水平線44’として現れることが分かる。これは、逆時間シフト関数とコヒーレントである反射として考えることができる。他方、非コヒーレントな遠距離場からの反射線46’は変動を維持している(もっとも、逆関数を適用する前とは異なる変動であるが)。このステップの後で、例えば、水平フィルタ又は水平移動平均フィルタを画像へ適用することによって、短距離範囲の(コヒーレントな)反射は強められ、遠距離範囲の(非コヒーレントな)反射は弱められる。こうして、時間シフト関数は、異なる距離における反射からのインパルス応答が、あいまいさを残さず分解することが可能となる。
上記からの類推を継続して、逆関数をインパルス応答画像へ適用することは、類似の「人為的移動」を全体の画像へ適用することと等価である。これは、もちろん、近距離場からの反射については、移動が打ち消されて静止しているように現れるが、遠距離場からの反射については、相対的に「移動」が残ることを意味している。
もちろん、上記の説明では、説明を簡明にするため単純化している。実際には、多くの異なる、もっと複雑な初期信号、例えばチャープ信号又は疑似ランダム信号列が使用され得る。例えば、もしチャープ信号が適用されたならば、このチャープ信号と相互相関することによって、図2c及び図3cで示される信号が再び獲得され得る。もしチャープ信号以外の信号、例えば、疑似ランダム符号が使用される場合は、相互相関又は反転手法、例えば、WO 2006/067436で開示される手法を使用することができる。
送信信号を連続する信号とすることができる。この場合、時間シフト関数による信号の修正は連続修正関数となり、信号の幾つかの部分を時間的に前方へ動かし、幾つかの部分を後方へ動かす。
いずれにせよ、時間シフト関数は、遅く変動する平滑関数である必要はなく、疑似ランダムとすることもできる。実際には、この擬似ランダムとすることが好ましい。というのは、インパルス応答画像内の線の変動が、対象とする物体の真の移動と混同される可能性が小さくなるからである。それ故に、理想的には、時間シフト関数を「非物理的」な移動と対応させるべきである。
他の実施形態(図示されず)では、フレーム長、即ち、初期信号の平均周期性及びサンプリング長を、例えば、N=50からN=47へと変更することによって、所望の反射及び所望されない反射がインパルス応答画像の中で離されるように動かすことができる。これは、下側の遠距離場からの反射線46を動かし、上側の線44を変更しないで残すといった効果を得ることができ、2つの線44、46がオーバーラップする場合などでは、明らかに最大利益を与える。
図4は、インパルス応答画像(IRI)の断片列を介して、シフト及び逆シフトの数学的処理がどのように展開されるかについて示している。単純化するため、図式的な黒及び白のインパルス応答画像を使用し、物体が「等級」を有しない状況の集合、すなわち、もしエコーが存在するならば、インパルス応答の中に0が、もしエコーが存在しなければ、1が存在するように表示する。
図4aは、遅く移動する物体に関する、理想的なインパルス応答画像を示している。つまり、図4aでは、もし焦点がこの距離に定められた場合、その物体が現れ、かつ他のエコーが存在しないような理想的なインパルス応答画像を示す。また、図4bは、静止物体に関連する干渉エコーを示す。この静止物体は、(a)でIRIを生じる、対象とする物体よりも近似的に1フレーム長だけ遠い。
図4cは、送信信号へ時間シフト関数を適用したときの、図4aのインパルス応答画像への効果を示す。図4dは、図4bのIRIへの同じ関数の効果を示す。これらの双方は、図4a及び図4bそれぞれの画像の変換として考えることができる。もし図4aの画像/行列を、Iで表す場合、図4cの変換された画像をT(I)で表すことができる。同様に、もし図4bの画像をIで表す場合、図4dで示される変換された画像を、T(I)で表すことができる。インパルス応答画像の生成処理によって実際に観察されるものは、以下の式で示すように、これらの2つの重畳である。
Figure 0005624976
このことは図4eで示されている。2つの変換T(.)及びT(.)が相互から異なる理由は、次のとおりである。即ち、T(.)は、シフトに使用されるシーケンスパターンに従って、その引数画像の列を効果的にシフトする。この反復シーケンスは、任意のQ及びシーケンス長Nについて、S{1+(Q mod N)}で表され得る。
他方、T(.)は、シーケンスS{1+(Q+1 mod N)}に従って列をシフトする。この理由は、遠い距離のフレームから来るエコーは、1つの時間ステップだけ早く送信された信号に関連するからである。即ち、それらのエコーは、「より早い信号」の反射である。
画像の重畳を観察した後、逆変換T −1(.)及びT −1(.)を適用して、関連する距離範囲上に「焦点を合わせ」ることができる。図4fは、変換T −1(.)を適用した結果を示し、次のような結果の画像を与える。
Figure 0005624976
これは、画像の最上部及び最下部で可能とするクリッピング(ここでは無視するものとする)を別にして、演算子の線形性に従っている。変換した画像の和T(I)+T(I)へT −1(.)を適用することは、I上に効果的に焦点を合わせ、Iの更なる散乱である雑音成分を追加することが分かる。
図4gでは、反対の例が示される。この例では、変換された画像の和へT −1(.)が適用されている。
次に、第1の距離範囲の上に焦点を合わせた音響シーンを研究するとき、第2の距離範囲からのエコーを除去又は低減するフィルタリングが使用され得る。図5aでは、焦点を合わせられた画像T −1{T(I)+T(I)}=E+Iが再び示される(即ち、この画像は図4gと同じである)。なおここで、E=T −1{T(I)}は、(一致しない)逆T演算を、変換されたIへ適用することから来る散乱誤差項である。
次に、この画像へ異常値フィルタF(.)が適用され、2つの隣接画素へ接続されていない画素を除去する。結果は、図5bで示される。これは第2の距離範囲からのエコー画像の推定値である。即ち、
Figure 0005624976
ここで、E=T −1{T(I)}は、フィルタリング演算F(.)によって除去を意図されたものである。この推定値は、図5aの原初の画像から減じられ、次の結果を与える。
Figure 0005624976
この結果は図5cで示される。E=T −1{T(I)}であることを想起すると、最初に近似値Eへ演算Tを適用し、続けてT −1を適用することによって、Iの推定値を取得することは明らかである。この結果は図5dで示される。これは、記号○を使用して変換のシーケンスを表し、次のように書くことによって理解され得る。
Figure 0005624976
図5dは、(散乱された)遠距離場からのエコーが、混合画像から本質的に除去されたことを示す。もちろん、近いエコーに関して、即ち、曲線に関連づけて、同じ演算を実行し、遠距離場からのエコーをもっと明瞭に見る目的で、近いエコーを除去することが可能である。この場合、最も実用的な状況におけるように、異常値除去フィルタよりも進歩したフィルタが使用される。最適にマッチングする水平(best matching horizontal)のラインフィルタ、またはほぼ水平(close to horizontal)のラインフィルタのフィルタバンクが1つの選択肢であり、例えば、ウィナーフィルタ、カルマンフィルタ、又は粒子フィルタなど、適応できる水平方向における画像フィルタもまた他の選択肢である。例えば、画像の高速フーリエ変換(FFT)に続いて、画像の水平方向で緩慢又は連続変化を生じる画像内の成分のみを抽出することによって、予測フィルタリングを用いることができる。
この手順は、十分な分離が取得されるまで反復され、区別されるエコー距離範囲を漸次に分離する。
幾つかの場合、より遠距離場からのエコーを減じることは全く必要ない。というのは、十分に進歩した追跡器は、目的のエコー上に追加された(反復しない)エコーを固有の雑音として取り扱うことができるからである。
いずれにせよ、時間シフト関数を出力信号へ適用し、この影響をインパルス応答空間中で反転することによって、目的のエコーは、「物理的に妥当な移動」に関連する連続線を形成し、目的ではないエコーは、散乱雑音として現れることが分かる。代わって、もしシステムが、遠い物体からの「シフトされた」インパルス応答を、対象とする物体に近い実物体として解釈しようと試みた場合、この物体は「物理的に妥当でない移動」を有するように現れる。こうして、シーン内の物体の移動の妥当性又は非妥当性を、この物体を無視するか又は追跡作業から除去するかの基礎として使用することができる。
動きの連続性が存在し、また多くの場合、信号の限定された帯域幅が存在するので、対象とする物体の動きは、水平方向で遅い、又は比較的遅い変動を有するインパルス応答画像を作り出すこと、即ち、物体が非常に速く動いていない限り、インパルス応答画像の各線は比較的低い周波数成分のみを含むことが、当業者によって更に分かるであろう。こうして、もし明瞭なインパルス応答画像へ「散乱エコー」が追加されないならば、それは水平方向における低周波数画像である。しかしながら、散乱エコーは水平方向に高周波数の内容を追加する。(a)時間シフト関数を適用すること、(b)インパルス応答画像を計算すること、及び(c)インパルス応答空間中で逆フィルタを適用することの影響は、目的のエコーを低周波数の距離範囲中に保持しながら、所望されないエコーを周波数の上方へシフトする効果を有する。この高/低周波数の分離は、エコーを相互から分離する更なる基礎を提供する。

Claims (15)

  1. 伝送路のインパルス応答を推定する方法であって、
    初期信号を与えるステップと、
    前記初期信号部分を他の部分に対して相対的にシフトさせる時間シフト関数を前記初期信号へ適用して、送信信号を生成するステップと、
    前記送信信号を送信するステップと、
    受信信号を受信するステップと、
    前記受信信号を前記初期信号から生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算する、あるいはインパルス応答推定の本質部分として時間シフト関数の逆関数を前記受信信号に適用することによりインパルス応答を計算する、ステップと、
    前記インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別するステップと、を含む方法。
  2. 前記時間シフト関数の逆関数を、前記計算されたインパルス応答へ適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記対象とする物体以外の物体からの前記受信信号に対する寄与を識別するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記受信信号又はこの受信信号から計算された前記インパルス応答における前記寄与を補償するステップを含む、請求項3に記載の方法。
  5. サンプリング窓に対応する複数のタイムフレームを規定するステップと、
    複数の受信信号から計算されたインパルス応答の行列を規定するステップであって、隣接するタイムフレームのインパルス応答が該行列の中で相互に隣接しているステップと、
    方向を有する前記物体のうちの1つの物体の移動を検出するステップと、
    前記移動の方向に整列した線形フィルタを前記インパルス応答の行列へ適用するステップと、を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. サンプリング窓に対応する複数のタイムフレームを規定するステップと、
    複数の受信信号から計算されたインパルス応答の行列を規定するステップであって、隣接するタイムフレームのインパルス応答が該行列の中で相互に隣接しているステップと、
    前記タイムフレームの長さを、2つの隣接するフレームの間で変更するステップと、
    前記行列を分析して、前記物体のうちの1つに関する情報を推論するステップと、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 必要なときに前記タイムフレームの長さを変更して2つの重畳されたエコーを分解するステップを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記受信信号の部分集合から動き特性を決定するステップと、前記動き特性と閾値又は所定の特性の集合とを比較するステップとを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記比較の結果に基づいて前記部分集合を無視、除去、又はフィルタ除去するステップを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記送信信号は超音波信号である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 物体を追跡するステップと、
    前記追跡に応答して電子デバイスを制御するステップと、を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された携帯機器。
  13. 超音波送信機と、別個の又は統合された超音波受信機とを備える携帯機器であって、
    その少なくとも1つの動作が、請求項1から11のいずれか一項に記載される方法に従いユーザの手の移動を決定することによって制御されるように構成された携帯機器。
  14. 伝送路のインパルス応答を推定する装置であって、
    初期信号を与える手段と、
    前記初期信号部分を他の部分に対して相対的にシフトさせる時間シフト関数を前記初期信号へ適用して、送信信号を生成する手段と、
    前記送信信号を送信するように構成された送信機と、
    受信信号を受信するように構成された受信機と、
    前記受信信号を前記初期信号から生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算する、あるいはインパルス応答推定の本質部分として時間シフト関数の逆関数を前記受信信号に適用することによりインパルス応答を計算する手段と、
    前記インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別する手段と、を備える装置。
  15. コンピュータ上で実行したとき、伝送路のインパルス応答を推定するように設定されたコンピュータ・ソフトウェア製品であって、
    信号生成器を制御して、初期信号を与え、前記初期信号部分を他の部分に対して相対的にシフトさせる時間シフト関数を該初期信号へ適用して送信信号を生成するように配列されたロジックと、
    送信機を制御して、前記送信信号を送信するように配列されたロジックと、
    受信信号を受信機から受信するように構成された入力部と、
    前記受信信号を前記初期信号から生成したかのように、該受信信号からインパルス応答を計算する、あるいはインパルス応答推定の本質部分として時間シフト関数の逆関数を前記受信信号に適用することによりインパルス応答を計算するように適応されたロジックと、
    前記インパルス応答を使用して、異なる距離範囲にある物体からの反射により生じる受信信号を弁別するように適応されたロジックと、を有するコンピュータ・ソフトウェア・製品。
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