JP5622189B2 - 単一細胞分離用プレート - Google Patents
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- C12M47/00—Means for after-treatment of the produced biomass or of the fermentation or metabolic products, e.g. storage of biomass
- C12M47/04—Cell isolation or sorting
Description
更に、前記非特許文献1〜3に記載のマイクロウェルアレイは、分離した細胞への栄養養供給や薬剤等の添加などにはウェルの上部を半透膜でシールする構造や、ウェルの底に試薬供給孔を設けなければならないなど、構造の複雑化と製作プロセスの複雑化という問題点があった。従って、液体中に溶けている物質の供給及び循環に優れた構造を備えており、更に大腸菌のような1μm程度の大きさの細菌も単一細胞として分離することのできる、単一細胞分離技術の開発が必要とされていた。
本発明者は、前記細胞分離用プレートについて、鋭意研究した結果、半導体プロセス技術(リソグラフィとエッチング)を用いて、細胞の分析の目的に応じて最適な材料の基板上に、通液可能な開口領域を有する側壁部で包囲されたウェルを作製することによって、単一細胞の分離を効率よく行うことができる細胞分離用プレートを作製することができることを見出した。特に、本発明の単一細胞分離用プレートによれば、大腸菌のような1μm程度の大きさの細菌の単一細胞の分離が効率的に可能であり、更にその分離された細胞に、液体中に溶けている物質の供給及び循環もできる。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
また、本発明は、通液領域を有する側壁部で包囲されたウェルを含む単一細胞分離用プレートであって、前記通液領域はウェルの側方外部からの側壁を通過する通液を可能にし、且つ分離する細胞が通過できないものであり、そして前記ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、分離する細胞を1×105細胞/μLに調整した細胞懸濁液を、前記プレート上に滴下し、ウェル上にカバーガラスを載せた場合に、20%以上のウェルに1個の細胞が分離される条件を満たす最大の内側長である、前記プレートに関する。
本発明の単一細胞分離用プレートの好ましい態様においては、通液領域を有する側壁部が、マイクロピラーからなる側壁部である。
本発明の単一細胞分離用プレートの好ましい態様においては、前記細胞が大腸菌である。
本発明の細胞分離用プレートの好ましい態様においては、通液領域を有する側壁部が、マイクロピラーからなる側壁部である。
更に、本発明は、前記単一細胞分離用プレートを用いた、単一細胞の分離方法であって、(a)細胞懸濁液を調整する工程、及び(b)細胞懸濁液を、前記単一細胞分離用プレートに添加する工程、を含む前記方法に関する。
本発明の単一細胞の分離方法の好ましい態様においては、前記細胞が、大腸菌である。
本発明のプレートは、半導体プロセス技術を用いて製造されることが好ましく、特には、前記半導体プロセス技術は、リソグラフィープロセス及びドライエッチング又はリソグラフィープロセス及びウエットエッチングが好ましい。
更に、この点に関して、例えば、従来の井戸状の構造のマイクロアレイでは、5μm四方以下の微小なウェルに大腸菌のような1μm程度の細菌細胞を、単一細胞として収納することが困難であった。本発明の単一細胞分離用プレートにおいては、それぞれのウェルを、通液可能な開口領域を有する側壁部による囲い構造にすることにより、各ウェルを5μm四方以下の大きさとしても、細胞の収納が可能となった。
本発明の細胞分離用プレートによれば、各ウェルが通液可能な開口領域を有する側壁部による囲い構造であるため、細胞への物質の供給が、その物質を含む溶液を流すことにより側壁部の開口領域を通して行うことができるため、従来の井戸状の構造のマイクロアレイのウェルと比較して、容易に行うことができる。
更に本発明の細胞分離用プレートによれば、各ウェルの間が、通液可能な開口領域を有する側壁部により仕切られているため、各ウェル間の細胞の相互作用を解析することも可能である。
本発明の単一細胞分離用プレートに含まれる、それぞれのウェルは、通液領域を有する側壁部で包囲されている。側壁部は、通液領域を有する限り、特に限定されるものでなく、例えば、ほぼ直立した柱(以下、マイクロピラーと称することがある)を組みあわせたもの(図1、図2、図3、及び図4)、ウェルの周囲を囲む連続した壁部からなるもの(図5)を挙げることができる。
また、マイクロピラーの形状は限定されるものではなく、例えば、円柱、三角柱、四角柱、五角柱、又は六角柱を挙げることができる。
側壁部の高さは、分離される細胞の大きさに応じて、適宜決定することが可能であるが、分離する細胞の長径の長さ以上であることが好ましい。例えば、分離される細胞が大腸菌の場合、長径の長さが2μm〜4μmであるため、側壁部の高さ(例えば、マイクロピラーの高さ)は、4μm以上が好ましい。
側壁部の幅(マイクロピラーの場合、マイクロピラーの径に相当する)も特に限定されるものではなく、ウェルの側壁としての十分な強度を有する幅であればよい。
各ウェルは、通液領域を有する側壁部で包囲されているため、通液領域の大きさ(例えば、間隙の幅、側壁の開口部の大きさ)及び位置によっては、ウェルの内部に細胞の培養液又は緩衝液などを十分に保持することができないことがある。従って、本発明の単一細胞分離用プレートを用いて細胞の培養を行う場合は、培養液又は緩衝液などを保持するために、プレートに配置されたウェルの周囲に通液領域を有しない側壁を、更に有することが好ましい。
下記の表1に、代表的な細胞について、その平均的な長径の長さ及び短径の長さ、及び開口部の内側における最大の内側長を示す。
細胞懸濁液は、分離する細胞を生理食塩水を用いて、1×105細胞/μLに調整する。プレートのウェル上に1μL以上の細胞懸濁液を滴下し、ウェル上部にカバーガラスをかぶせる。少なくとも100のウェルを観察し、1個の細胞が進入したウェルの百分率を計算する。
マスクパターンの形成のための電子線レジストとしては、化学増幅型レジスト、及びPMMA等を挙げることができる。フォトレジストとしては、化学増幅型レジスト、PMMA、架橋型レジスト、エポキシ系レジスト、ノボラック樹脂系レジスト、及びポリイミド等を挙げることができる。
ドライエッチングは、好ましくは反応性イオンエッチング(RIE)である。反応性イオンエッチングとしては、結合型プラズマエッチング(ICP−RIE)、容量結合型プラズマエッチング(CCP−RIE)、及びECR−RIEなどを挙げることができるが、特には結合型プラズマエッチング(ICP−RIE)が、高速エッチング性と面内均一性の点で好ましい。
単一細胞分離用プレートは、本発明の単一細胞の分離方法に用いることができる。
本発明の単一細胞の分離方法は、前記単一細胞分離用プレートを用いるものであり、
(a)細胞懸濁液を調整する工程、及び(b)細胞懸濁液を、前記単一細胞分離用プレートに添加する工程、を含む。
本発明の単一細胞の分離方法に用いることのできる細胞の大きさは、限定されるものではないが、0.1〜100μm程度の長径の長さを有するものが好ましい。
また、工程(a)において調整される細胞懸濁液の細胞濃度は、特に限定されるものではないが、単一細胞の分離の効率を上げるために、1×106〜1×1010細胞/mLが好ましく、1×107〜1×109細胞/mLがより好ましい。
細胞懸濁液に用いる細胞の希釈液も特に限定されないが、それぞれの細胞を培養する時に用いる培養液、又はPBSなどの緩衝液などを、目的に応じて使い分けることができる。
更に、分離した細胞は、公知の技術を用いて、回収することができ、例えば、レーザービームを用いた光ピンセット、又はマイクロマニィピュレーションシステムなどを用いることによって、回収することが可能である。回収した細胞は、更に、試験、検査、又は培養に用いることができる。
従来のマイクロウェル構造のプレートを用いて細胞を分離する方法においては、基板に「穴を掘って、細胞を落とし込む」という方法により、細胞を分離していた。本発明の単一細胞分離用プレート及びそれを用いる単一細胞の分離方法においては、「柵(通液領域を有する側壁部、特にはマイクロピラー)を立てて、細胞を囲う」という方法により細胞を分離するものである。すなわち、本発明は従来技術とは全く異なる発想に基づいた方法である。
本発明の単一細胞分離用プレートにおいては、「柵を立てて、細胞を囲う」という概念を実現するために、半導体などの基板上に半導体プロセス技術を用いてマイクロピラーの格子からなるウェル構造(マイクロ囲い)を作製する。従って、前記ウェル構造の側壁部は、通液領域を有している。後述の実施例で示すように、本発明の単一細胞分離用プレートを用いた場合、従来のマイクロウェル構造のプレートを用いた場合と比較して、単一細胞への分離される比率が高い。この結果は、側壁部の通液領域から、余分な液体が排出されることによって、効率よく単一細胞が分離されるものであると考えられる。
本発明の細胞分離用プレートは、通液領域を有する側壁部で包囲されたウェルを含む細胞分離プレートであって、前記通液領域はウェルの側方外部からの側壁を通過する通液を可能にし、且つ分離する細胞が通過できないものであり、そして前記ウェルの開口部の面積が500μm2以下である。
本発明の細胞分離プレートは、前記単一細胞分離用プレートと、同じ構造を有しており、また同様の方法で作製することができるものであるが、単一の細胞を分離する用途以外に使用することのできるものである。従って、単一細胞を分離するために、それぞれの細胞ごとに規定される、ウェルの開口部の内側における最大の内側長、又は開口部の面積は、細胞ごとに規定されるものではない。
しかしながら、本発明の細胞分離用プレートは、1〜数百個の細胞をそれぞれのウェルに分離して、細胞の相互作用などを調べるために用いることができるために、開口部の面積は、300μm2が好ましく、100μm2以下がより好ましく、50μm2以下が更に好ましく、20μm2以下が最も好ましい。
供給される液体としては、培養液、又は培養液や緩衝液に化合物(例えば、薬剤や成長因子など)を溶解させ、供給することが可能である。従って、ウェルに分離された細胞ごとに、薬剤や成長因子に対する反応を調べることが可能である。更に、隣り合わせのウェルに種類の異なる細胞を配置し、それらの細胞の相互作用(例えば、一方の細胞が分泌する化合物に対する、他方の細胞の反応)を調べることも可能である。
本実施例においては、円柱形のマイクロピラーにより、ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、1.54μmのウェル構造を有するプレートを作製した。
円柱形のマイクロピラーは、半導体プロセス技術により以下のように製作した。GaAs基板上に電子線レジストをスピンコーティングし、電子線リソグラフィープロセスにより、直径0.8μm、ピッチ1μmの円形パターン列を直交させた一辺の長さが3μmの格子状のレジストパターンを製作した。このレジストパターンをマスクとし、塩素ガスを用いたドライエッチング装置(誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング装置)を用いて、高さ3μmの円柱の2次元アレイ構造を製作した。ドライエッチングのプロセス条件は、塩素流量2sccm、プロセス圧力1Pa、ICPパワー300W、基板側のバイアスRFパワー20Wとした。その後、酸素ガスを用いたプラズマエッチングによりレジストを除去し、ウェルの開口部が2.2μm×2.2μm、内側長が3.1μmのウェルを有するプレートを作製した(図6A)。
本実施例においては、円柱形のマイクロピラーにより、ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、2.24μmのウェル構造を有するプレートを作製した。
一辺の長さが3μmの格子状のレジストパターンに代えて、一辺の長さが4μmの格子状のレジストパターンを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返し、ウェルの開口部が3.2μm×3.2μm、内側長が4.5μmのウェルを有するプレートを作製した(図6B)。
本実施例においては、円柱形のマイクロピラーにより、ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、2.94μmのウェル構造を有するプレートを作製した。
一辺の長さが3μmの格子状のレジストパターンに代えて、一辺の長さが5μmの格子状のレジストパターンを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返し、ウェルの開口部が4.2μm×4.2μm、内側長が5.9μmのウェルを有するプレートを作製した(図6C)。
本実施例では、大腸菌K−12株W3110を用いて、細菌細胞の分離を行った。Lennox培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、0.1%グルコース、pH7.0)を用いて培養した静止期の大腸菌細胞を、0.85%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)で1×105細胞/μLに調整し、細胞懸濁液として用いた。本液1μLをウェル上に滴下し、カバーガラスを載せ、分離の様子を光学顕微鏡を用いて観察した。
その結果、実施例2で作製した一辺の長さが4μmのウェルを含むプレート、又は実施例3で作製した一辺の長さが5μmのウェルを含むプレートを用いた場合、大腸菌細胞を分離できることが確認された(図9)。また、ウェルに収納された細胞数を計数することにより分離頻度を算出した結果、一辺の長さが4μmのウェル(内側長4.5μm)においては49%の頻度で単一細胞を分離することが可能であり、一辺の長さが5μmのウェル(内側長5.9μm)を用いた場合では、30%の頻度で単一細胞を分離することが可能であった(図10)。
非特許文献2に記載の従来型のマイクロウェルの配列構造を用いた場合は、12.5%程度のウェルにしか、単一の細胞が分離できないが、本発明のプレートを用いることにより、効率的に単一の細胞を分離することが可能である
11・・・マイクロピラー;
12・・・通液領域;
13・・・側壁部;
14・・・開口部の面積;
21・・・開口部の内側における最大の内側長;
3・・・細胞分離用プレート;
31・・・カバーガラス;
32・・・大腸菌。
Claims (12)
- 通液領域を有する側壁部で包囲されたウェルを含む単一細胞分離用プレートであって、前記通液領域はウェルの側方外部からの側壁を通過する通液を可能にし、且つ分離する細胞が通過できないものであり、そして前記ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、分離する細胞の長径の長さの平均値に対して、1倍を超えて4倍以下である、前記プレート。
- 通液領域を有する側壁部が、マイクロピラーからなる側壁部である、請求項1に記載の、単一細胞分離用プレート。
- 前記細胞が大腸菌である、請求項1又は2に記載の、単一細胞分離用プレート。
- 通液領域を有する側壁部で包囲されたウェルを含む単一細胞分離用プレートであって、前記通液領域はウェルの側方外部からの側壁を通過する通液を可能にし、且つ分離する細胞が通過できないものであり、そして前記ウェルの開口部の内側における最大の内側長が、
分離する細胞を1×105細胞/μLに調整した細胞懸濁液を、前記プレート上に滴下し、ウェル上にカバーガラスを載せた場合に、20%以上のウェルに1個の細胞が分離される条件を満たす最大の内側長である、前記プレート。 - 通液領域を有する側壁部が、マイクロピラーからなる側壁部である、請求項4に記載の、単一細胞分離用プレート。
- 前記細胞が大腸菌である、請求項4又は5に記載の、単一細胞分離用プレート。
- 通液領域を有する側壁部で包囲されたウェルを含む細胞分離プレートであって、前記通液領域はウェルの側方外部からの側壁を通過する通液を可能にし、且つ分離する細胞が通過できないものであり、そして前記ウェルの開口部の面積が500μm2以下である、前記プレート。
- 通液領域を有する側壁部が、マイクロピラーからなる側壁部である、請求項7に記載の、細胞分離プレート。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の単一細胞分離用プレートを用いた、単一細胞の分離方法であって、
(a)細胞懸濁液を調整する工程、及び
(b)細胞懸濁液を、前記単一細胞分離用プレートに添加する工程、
を含む前記方法。 - 前記細胞が、大腸菌である請求項7に記載の単一細胞の分離方法。
- 半導体プロセス技術を用いて製造される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプレート。
- 前記半導体プロセス技術が、リソグラフィープロセス及びドライエッチング又はリソグラフィープロセス及びウエットエッチングである、請求項11に記載の単一細胞分離用プレート。
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