以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。本実施例では、遊技機の一例として弾球遊技機の一種であるパチンコ機、特に、第1種パチンコ遊技機を用いて説明する。なお、本発明を第3種パチンコ遊技機や、コイン遊技機、スロットマシン等の他の遊技機に用いることは、当然に可能である。
図1は、本実施例のパチンコ機Pの遊技盤の正面図である。遊技盤1の周囲には、球が入賞することにより5個から15個の球が払い出される複数の入賞口2が設けられている。また、遊技盤1の中央には、複数種類の識別情報としての図柄などを表示する液晶(LCD)ディスプレイ3が設けられている。このLCDディスプレイ3の表示画面は横方向に3分割されており、3分割された各表示領域において、それぞれ右から左へ横方向にスクロールしながら図柄の変動表示が行われる。
LCDディスプレイ3の下方には、図柄作動口(第1種始動口)4が設けられ、球がこの図柄作動口4を通過することにより、前記したLCDディスプレイ3の変動表示が開始される。図柄作動口4の下方には、特定入賞口(大入賞口)5が設けられている。この特定入賞口5は、LCDディスプレイ3の変動後の表示結果が予め定められた図柄の組み合わせの1つと一致する場合に、大当たりとなって、球が入賞しやすいように所定時間(例えば、30秒経過するまで、あるいは、球が10個入賞するまで)開放される。
この特定入賞口5内には、Vゾーン5aが設けられており、特定入賞口5の開放中に、球がVゾーン5a内を通過すると、継続権が成立して、特定入賞口5の閉鎖後、再度、その特定入賞口5が所定時間(又は、特定入賞口5に球が所定個数入賞するまで)開放される。この特定入賞口5の開閉動作は、最高で16回(16ラウンド)繰り返し可能にされており、開閉動作の行われ得る状態が、いわゆる所定の遊技価値の付与された状態(特別遊技状態)である。
図2は、パチンコ機Pの電気的構成を示したブロック図であり、特に、パチンコ機Pの遊技内容の制御を行う主制御基板Cと、有価物体としての賞球や貸し球の払出制御を行う払出制御基板Hとの電気的構成を示したブロック図である。
パチンコ機Pの主制御基板Cは、演算装置であるMPU11と、そのMPU11により実行される各種の制御プログラムや固定値データ等を記憶したROM12と、ワークメモリ等として使用されるRAM13とを備えている。図3から図6のフローチャートに示すプログラムは、制御プログラムの一部としてROM12内に記憶されている。またRAM13には、賞球バッファ13aと、賞球ポインタ13bと、残賞球数カウンタ13cと、不足賞球チェック済フラグ13dと、不足賞球チェックカウンタ13eと、バックアップエリア13fとが設けられると共に、バックアップ用のコンデンサ(電池)13xが接続されてバックアップ可能に構成されている。よって、RAM13の各値は、パチンコ機Pの電源が切断された場合にも保持(バックアップ)される。
賞球バッファ13aは、遊技領域1へ打ち込まれた球が普通入賞口2等へ入賞した場合に、払い出される賞球数を記憶するバッファである。払い出される賞球数は入賞した球毎に賞球バッファ13aへ記憶されるので、賞球バッファ13aは複数バイトで構成されている。賞球バッファ13aに記憶された賞球数のデータは、賞球コマンドとして払出制御基板Hへ送信されると、賞球バッファ13aから消去される。具体的には、0番目の賞球バッファ13aに記憶される賞球数を払出制御基板Hへ送信した後、1番目以降の賞球バッファ13aの値を小さいアドレス側へ順に1バイトずつシフトすることにより、0番目の賞球バッファ13aの値が消去される。
ここで、賞球コマンドとは、払い出される賞球数を払出制御基板Hへ指示するためのコマンドであり、2バイトで構成されている。賞球コマンドの1バイト目のデータは、そのコマンドが賞球コマンドであることを示すためのデータ(例えば「A0H」)とされており、また、2バイト目のデータは払い出される賞球数を示すデータとされている。1回の入賞に対する最大の賞球数は15球であるので、その最大賞球数に対応した「01H」〜「0FH」の15種類のデータが賞球コマンドの2バイト目のデータとされている。
なお、賞球コマンドを1バイトで構成するようにしても良い。前記した通り、1回の入賞に対する最大の賞球数は15球であるので、賞球コマンドを1バイトで構成する場合には、その最大賞球数に対応した「01H」〜「0FH」の15種類のデータを賞球コマンドとする。即ち、1バイトで構成されるコマンドの上位4ビットが「0」の場合に賞球コマンドとするのである。
賞球ポインタ13bは、賞球数を記憶させる賞球バッファ13aの位置を示すポインタであり、払い出される賞球数は、賞球ポインタ13bの値番目の賞球バッファ13aへ記憶される。この賞球ポインタ13bの値は、賞球バッファ13aへ賞球数を書き込むことにより「1」加算され、逆に、0番目の賞球バッファ13aの値が払出制御基板Hへ送信されることにより「1」減算される。
残賞球数カウンタ13cは、未払いの賞球数を記憶するカウンタであり、払出制御基板Hによって払い出される賞球数を主制御基板Cで管理するためのカウンタである。残賞球数カウンタ13cの値は、主制御基板Cが払出制御基板Hへ賞球の払い出しを指示する毎に、その指示した数が加算され、逆に、払出制御基板Hによって賞球の払い出しが行われて、その払い出された賞球を賞球カウントスイッチ22が検出する毎に「1」ずつ減算される。この残賞球数カウンタ13cの値は、後述する不足賞球コマンドの2バイト目のデータとしても使用される。
不足賞球チェック済フラグ13dは、払出制御基板Hによって払い出される賞球が本来払い出されるべき賞球数に対して不足するという「不足賞球」の発生時に、その不足賞球が、停電の発生等により電源が断されその電源が再入されたために生じたものであるのか否かを示すためのフラグである。
パチンコ機Pの電源が切断されるタイミングによっては、払出制御基板Hの残賞球数カウンタ33aの値が主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cの値より小さくなった状態でバックアップされる場合がある。例えば、主制御基板Cから賞球コマンドが送信され、主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cの値が更新された後であって、払出制御基板Hの残賞球数カウンタ33aの値の更新前に、払出制御基板Hの制御が電源断に起因して停止すると、払出制御基板Hの残賞球数カウンタ33aの値は主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cの値より小さくなった状態でバックアップされる。かかる場合に、停電等が解消して電源が再入されると、払出制御基板Hは、自己の残賞球数カウンタ33aに記憶される数の賞球を払い出すが、その数は主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cで記憶する値に対して不足したものとなる。
この場合の不足賞球は、電源断のタイミング等によって生じるものであり、パチンコ機Pの故障など(例えば、賞球払出用モータ21の故障により賞球の払い出しができない場合のような機械的な故障など)に起因して生じるものではない。よって、電源の再入後における遊技を円滑に進めるために、不足賞球チェック済フラグ13dを設けて、不足賞球が電源再入後1回目に発生したものであるか否かを示し、電源の再入に起因して生じる不足賞球により、賞球アンダーエラーを発生させないようにしている。
この不足賞球チェック済フラグ13dがオフされている場合には、電源の再入後における1回目の不足賞球のチェック中であることを示しており、逆に、オンされている場合には該チェックが既に終了していることを示している。よって、不足賞球チェック済フラグ13dは、電源再入時の立ち上げ処理において(図4参照)、残賞球数カウンタ13cの値が「0」でない場合にはオフされ(S26)、「0」である場合にオンされる(S28)。残賞球数カウンタ13cの値が「0」である場合には、電源再入後における1回目の不足賞球のチェックは既に終了しているのと同じだからである。また、立ち上げ処理において主制御基板Cが初期化される場合は(S16)、その初期化処理において不足賞球チェック済フラグ13dはオンされる。残賞球数カウンタ13cの値が「0」クリアされるので、この場合も同様に、電源再入後における1回目の不足賞球のチェックは既に終了しているのと同じだからである。
不足賞球チェック済フラグ13dがオフの状態で不足賞球が生じた場合には、賞球アンダーエラーを発生させず、その不足賞球数を払出制御基板Hへ報せるべく、不足賞球コマンドが主制御基板Cから払出制御基板Hへ送信される(図6のS65)。逆に、不足賞球チェック済フラグ13dがオンの状態で、不足賞球が生じた場合には、賞球アンダーエラーを発生させる(図6のS67)。電源の再入による不足賞球の発生ではないからである。
ここで、不足賞球コマンドとは、電源の再入時において払出制御基板Hにより払い出される賞球数が不足する場合に、その不足分を報せるべく、主制御基板Cから払出制御基板Hへ送信されるコマンドである。不足賞球コマンドは、2バイトで構成されている。1バイト目のデータは、そのコマンドが不足賞球コマンドであることを示すためのデータ(例えば「A2H」)とされており、また、2バイト目のデータは不足賞球数を示すデータとされている。具体的には、この2バイト目のデータとして、残賞球数カウンタ13cの値がセットされる。払出制御基板Hは、この不足賞球コマンドを受信すると、2バイト目のデータを読み出して、これを残賞球数カウンタ33aに書き込む(図7のS78)。これにより、払出制御基板Hによって、不足賞球の払い出しが行われる。
不足賞球チェックカウンタ13eは、不足賞球があるか否かの判断タイミングを決定するカウンタである。不足賞球チェックカウンタ13eには、本実施例では5秒分に相当する値が初期値として設定され、図6の賞球検出処理(S50)において、賞球の払い出しが検出されず且つ残賞球数カウンタ13cの値が「0」でない場合に「1」ずつ減算される。この減算の結果、不足賞球チェックカウンタ13eの値が「0」となるタイミングで、不足賞球があるか否かが判断される。具体的には、不足賞球チェックカウンタ13eの値が「0」となるタイミングで、残賞球数カウンタ13cの値が「0」でなければ、主制御基板Cから指示したにも拘わらず、何らかの理由で払い出されない未払いの賞球(不足賞球)があるものと判断される。前述した通り、その際に、不足賞球チェック済フラグ13dがオフであれば、不足賞球コマンドが主制御基板Cから払出制御基板Hへ送信され(図6のS65)、一方、不足賞球チェック済フラグ13dがオンであれば、賞球アンダーエラー処理が行われる(図6のS67)。
なお、不足賞球チェックカウンタ13eの値は、賞球コマンドを送信する毎に(図5のS46)、或いは、賞球の払い出しが検出される毎に(図6のS52)、それぞれ初期化される。また、不足賞球チェック済フラグ13dがオフされる場合や(図4のS27)、賞球の払い出しが不可能な状態となった場合にも(図6のS60)、それぞれ初期化される。
バックアップエリア13fは、停電などの発生により電源が切断された場合、電源の再入時に、パチンコ機Pの状態を電源切断前の状態に復帰させるため、電源切断時(停電発生時を含む。以下、同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアである。このバックアップエリア13fへの書き込みは、NMI割込処理(図3参照)によって電源切断時に実行され、逆にバックアップエリア13fに書き込まれた各値の復帰は、電源入時(停電解消による電源入を含む。以下、同様)の初期化処理において実行される(図4のS21,S22参照)。
これらMPU11、ROM12、RAM13は、アドレスバス及びデータバスで構成されるバスライン14を介して相互に接続されている。バスライン14は、また、入出力ポート15にも接続されている。入出力ポート15は、入力および出力が固定的なバッファ(インバータゲート)16,37を介して払出制御基板Hと接続されるほか、複数の普通入賞スイッチ17と、第1種始動口スイッチ18と、Vカウントスイッチ19と、10カウントスイッチ20と、賞球カウントスイッチ22と、クリアスイッチ23と、他の入出力装置25と、それぞれ接続されている。
普通入賞スイッチ17は、遊技領域1内の複数の普通入賞口2へ入賞した球をそれぞれ検出するためのスイッチであり、各普通入賞口2の入口近傍に設けられている。第1種始動口スイッチ18は、図柄作動口(第1種始動口)4を通過した球を検出するためのスイッチであり、図柄作動口4の近傍に設けられている。普通入賞スイッチ17のいずれか又は第1種始動口スイッチ18によって球が検出されると、払出制御基板Hによって6個の賞球が払い出される。
Vカウントスイッチ19は、特定入賞口5内のVゾーン5aへ入賞した球を検出するためのスイッチであり、また、10カウントスイッチ20は、特定入賞口5内のVゾーン5a以外へ入賞した球を検出するためのスイッチである。Vカウントスイッチ19又は10カウントスイッチ20により球が検出されると、払出制御基板Hによって15個の賞球が払い出される。
賞球カウントスイッチ22は、賞球払出用モータ21によって払い出された賞球を検出するためのスイッチであり、賞球払出用モータ21と共に賞球払出ユニットSに搭載されている。賞球払出用モータ21は賞球を払い出すためのモータであり、賞球払出用モータ21の駆動は、払出制御基板Hによって制御される。
クリアスイッチ23は、主制御基板Cおよび払出制御基板Hの各RAM13,33にバックアップされるデータをクリアするためのスイッチであり、押しボタンタイプのスイッチで構成されている。このクリアスイッチ23が押下された状態でパチンコ機Pの電源が投入されると(停電解消による電源入を含む)、主制御基板Cおよび払出制御基板Hによって、RAM13,33のデータがそれぞれクリアされる(図4のS13:Yes,S16、図8のS83:Yes,S86参照)。
前記した通り主制御基板Cは、入力および出力が固定的なバッファ(インバータゲート)16,37を介して、払出制御基板Hと接続されている。このため主制御基板Cと払出制御基板Hとの間における賞球コマンド等の送受信は、主制御基板Cから払出制御基板Hへの一方向にのみ行われ、払出制御基板Hから主制御基板Cへ行うことはできない。なお、主制御基板Cと払出制御基板Hとは、8本のデータ線と1本のストローブ線とにより接続されており、ストローブ線のデータがアクティブになった時に、8本のデータ線上に出力されているデータが主制御基板Cから払出制御基板Hへコマンドとして送信される。
払出制御基板Hは賞球や貸し球の払出制御を行うものであり、演算装置であるMPU31と、そのMPU31により実行される制御プログラムや固定値データ等を記憶したROM32と、ワークメモリ等として使用されるRAM33とを備えている。図3及び図7から図9に示すフローチャートのプログラムは、制御プログラムの一部としてROM32内に記憶されている。
払出制御基板HのRAM33には、残賞球数カウンタ33aと、初期化フラグ33bと、賞球払出許可フラグ33cと、バックアップエリア33dとが設けられると共に、バックアップ用のコンデンサ(電池)33xが接続されてバックアップ可能に構成されている。よって、RAM33の各値は、パチンコ機Pの電源が切断された場合にも保持(バックアップ)されるのである。
残賞球数カウンタ33aは、前述した主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cと同様に、未払いの賞球数を記憶するカウンタである。残賞球数カウンタ33aの値は、賞球コマンドによって主制御基板Cから払出制御基板Hへ賞球の払い出しが指示される毎に、その指示された賞球数が加算される。逆に、賞球カウントスイッチ22が払い出された賞球を検出する毎に「1」ずつ減算される。払出制御基板Hは、この残賞球数カウンタ33aの値が「0」になるまで、賞球払出用モータ21を動作させて賞球の払い出しを行うが、前記した通り、この残賞球数カウンタ33aの値はコンデンサ33xによってバックアップされるので、賞球の払い出し途中でパチンコ機Pの電源が切断された場合にも、そのパチンコ機Pの電源を再投入することにより、払出制御基板Hは、残りの賞球(未払い分の賞球)を正確に払い出すことができる。
初期化フラグ33bは、払出制御基板Hが、主制御基板Cから送信される初期化コマンドを受信した場合にオンされるフラグである。初期化コマンドは、主制御基板Cの立ち上げ処理においてバックアップデータがクリアされた場合に送信されるコマンドであり(図4のS18参照)、払出制御基板Hに対して初期化の指示と賞球の払出許可とを与えるコマンドである。払出制御基板Hは、この初期化コマンドを受信すると、初期化フラグ33bをオンし、払出制御基板Hにおいても既に初期化処理(S85)が終了していれば、初期化フラグ33bをオフした後に(S90)、処理を各処理へ移行して、賞球の払い出しの可能な状態とする。一方、払出制御基板Hにおいてデータのバックアップが有効に行われている状態で初期化コマンドを受信した場合には、主制御基板Cに合わせて初期化処理(S97)を実行した後、各処理へ移行して、賞球の払い出しの可能な状態とする。なお、この場合、一旦オンされた初期化フラグ33bは、S97の初期化処理によってオフされる。
賞球払出許可フラグ33cは、払出制御基板Hが、主制御基板Cから送信される賞球払出許可コマンドを受信した場合にオンされるフラグであり、賞球の払い出しの許可を指示するためのフラグである。払出制御基板Hは、賞球払出許可コマンドを受信すると、賞球の払出許可を記憶するべく賞球払出許可フラグ33cをオンする(S74)。賞球払出許可フラグ33cがオンされると、払出制御基板Hは立ち上げ処理を終了して、その賞球払出許可フラグ33cをオフした後に(S90,S98)、処理を各処理へ移行して、賞球の払い出しの可能な状態とする。
ここで、賞球払出許可コマンドとは、バックアップが有効である場合の主制御基板Cの立ち上げ処理の最後に、主制御基板Cから払出制御基板Hへ送信されるコマンドであり、1バイトで構成されている(例えば「A1H」)。この賞球払出許可コマンドにより、立ち上げ処理終了後の払出制御基板Hに対して、賞球の払い出しの許可が指示される。
なお、賞球払出許可コマンドを別個に設けることなく、パチンコ機Pの状態を示す1乃至2以上のコマンドで代用するようにしても良い。この場合、該コマンドにより、パチンコ機Pの状態が払出制御基板Hへ報されるので、払出制御基板Hでは、残賞球数カウンタ33aの値が「0」でない場合に、報されたパチンコ機Pの状態が賞球の払い出しが可能な状態であれば賞球の払い出しを行い、逆に、賞球の払い出しが不可能であれば賞球の払い出しを待機する。
バックアップエリア33dは、前述した主制御基板Cのバックアップエリア13fと同様に、停電などの発生により電源が切断された場合、電源の再入時に、パチンコ機Pの状態を電源切断前の状態に復帰させるため、電源切断時(停電発生時を含む。以下、同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアである。このバックアップエリア33dへの書き込みは、NMI割込処理(図3参照)によって電源切断時に実行され、逆にバックアップエリア33dに書き込まれた各値の復帰は、電源入時(停電解消による電源入を含む。以下、同様)の初期化処理において実行される(図8のS92,S93参照)。
これらMPU31、ROM32及びRAM33は、アドレスバス及びデータバスで構成されるバスライン35により互いに接続されている。バスライン35は、また、入出力ポート36にも接続されている。入出力ポート36は、前述した入力および出力が固定的なバッファ(インバータゲート)16,37を介して主制御基板Cと接続されるほか、賞球払出ユニットSの賞球払出用モータ21および賞球カウントスイッチ22と、クリアスイッチ23と、他の入出力装置40とにそれぞれ接続されている。
次に、図3から図9に示すフローチャートを参照して、主制御基板C及び払出制御基板Hで行われる各処理について説明する。図3は、停電の発生等によるパチンコ機Pの電源断時に、主制御基板C及び払出制御基板Hで、それぞれ別々に実行されるNMI割込処理のフローチャートである。このNMI割込処理により、停電の発生等による電源断時の主制御基板C及び払出制御基板Hの状態がそれぞれのバックアップエリア13f,33dに記憶される。なお、NMI割込処理は、主制御基板CのROM12と払出制御基板HのROM32とに、それぞれ別々に搭載される処理であるが、フローチャートの表記上、同様に表すことができるので、図3にまとめて図示している。
停電の発生等によりパチンコ機Pの電源が断されると、図示しない停電信号が主制御基板C及び払出制御基板HのMPU11,31のNMI(Non Maskable Interrupt)端子へそれぞれ出力される。各MPU11,31は、NMI端子に停電信号が入力されると、それぞれ実行中の制御を中断して、図3のNMI割込処理を開始する。停電信号が出力された後所定時間は、主制御基板C及び払出制御基板Hの処理が実行可能に電力供給されており、この所定時間内に、図3のNMI割込処理が実行される。
NMI割込処理では、まず、スタックポインタの値をバックアップエリア13f,33dへ書き込み(S1)、更に、各レジスタおよびI/O等の値をバックアップエリア13f,33dへ書き込んで(S2)、停電の発生等による電源断時の状態を記憶する。その後、主制御基板C及び払出制御基板Hに応じてそれぞれ異なるその他停電処理を実行し(S3)、その後は、電源が完全に断して処理が実行できなくなるまで、処理をループする。
図4は、パチンコ機Pの電源入時に主制御基板Cで実行される立ち上げ処理のフローチャートである。この処理では、バックアップが有効であれば、バックアップエリア13fに記憶された各データを元の状態に戻し、遊技の制御を電源が断される前の状態から続行する。一方、バックアップが有効でなかったり、或いは、バックアップが有効であっても電源入時にクリアスイッチ23が押下された場合には、初期化処理を実行する。
まず、割込を禁止し(S11)、次に、本来のスタック領域にスタックされているデータを壊さないために、仮のスタックポインタを設定する(S12)。クリアスイッチ23がオンされているか否かを確認し(S13)、オンされていれば(S13:Yes)、処理をS15へ移行して初期化処理を実行する。クリアスイッチ23がオンされていなければ(S13:No)、バックアップが有効であるか否かを確認する(S14)。この確認は、RAM13の所定のエリアに書き込まれたキーワードが正しく記憶されているか否かにより判断する。キーワードが正しく記憶されていればバックアップは有効であり、逆に、キーワードが正しくなければバックアップデータは破壊されているので、そのバックアップは有効ではない。バックアップが有効であれば(S14:Yes)、処理をS21へ移行して、主制御基板Cの各状態を電源の断前の状態に復帰させる。一方、バックアップが有効でなければ(S14:No)、処理をS15へ移行して初期化処理を実行する。
S15の処理からの初期化処理では、まず、正規のスタックポインタを設定し、スタックの内容を整えた後(S15)、RAMクリア及び初期化処理を実行して(S16)、RAM13及びI/O等の各値を初期化する。このとき、不足賞球チェック済フラグ13dはオンされる。
その後、割込を許可し(S17)、その割込を使って初期化コマンドを払出制御基板Hへ送信して(S18)、主制御基板Cで初期化処理が実行されたことを払出制御基板Hへ報せる。払出制御基板Hは、主制御基板Cに比べて処理が軽いので、主制御基板Cより先に立ち上げ処理が終了する。よって、払出制御基板Hは、主制御基板Cから送信される初期化コマンドを確実に受信することができる。主制御基板Cは、初期化コマンドの送信後、その初期化コマンドを受信した払出制御基板Hが初期化処理を完了するために充分な時間をウエイトするためにウエイト処理を実行して(S19)、次の処理への移行を所定時間待機する。ウエイト処理の実行後は、払出制御基板Hも確実に立ち上がっているので、処理をS20の各処理へ移行して、遊技の制御を開始する。
S21からの復帰処理では、まず、バックアップエリア13fへ退避した各レジスタやI/O等のデータをそのバックアップエリア13fから読み出して、これら各データを元のレジスタやI/O等へ書き込む(S21)。更に、バックアップエリア13fからスタックポインタの値を読み出して、これをスタックポインタへ書き込み、電源断前(停電前)の状態、即ちNMI割込発生前の状態に戻す(S22)。その後、割込を許可し(S23)、その許可した割込を使って、賞球払出許可コマンドを払出制御基板Hへ送信する(S24)。払出制御基板Hは、この賞球払出許可コマンドを受信することにより、賞球の払い出しが可能になる。
次に、残賞球数カウンタ13cの値を調べ(S25)、その値が「0」でなければ(S25:No)、立ち上げ処理の後に、払出制御基板Hによって、電源の断前に未払いとなっていた賞球の払い出しが行われるので、かかる場合には、不足賞球チェック済フラグ13dをオフして(S26)、払い出される賞球数に不足分があるか否かをチェックすると共に、そのチェックの判定時間(判定タイミング)を設定するべく、不足賞球チェックカウンタ13eに初期値である5秒分の値をセットする(S27)。
一方、残賞球数カウンタ13cが「0」であれば(S25:Yes)、電源の断前に未払いとなっていた賞球は無く、立ち上げ処理の後に賞球の払い出しが行われることはない。よって、かかる場合には、電源の再入による不足賞球の発生はないので、不足賞球チェック済フラグ13dをオンする(S28)。その後、NMI割込をリターンし、処理を電源断前に実行していたところへ戻して、制御を電源断前の状態から続行する。
図5は、主制御基板Cの各処理(S20)の中で実行される賞球処理のフローチャートである。賞球処理は、普通入賞口2や第1種始動口4或いは大入賞口5へ入賞した打球を検出する入賞検出処理と(S30)、賞球コマンドを払出制御基板Hへ送信する賞球コマンド送信処理と(S40)、払出制御基板Hによって払い出された賞球を検出する賞球検出処理(S50)との3つの処理によって構成されている。
入賞検出処理(S30)では、まず、いずれかの普通入賞スイッチ17又は第1種始動口スイッチ18により、球が検出された否かを確認する(S31)。いずれかのスイッチ17,18によって球が検出された場合には(S31:Yes)、6個の賞球を払い出すために、賞球ポインタ13bの値番目の賞球バッファ13aへ「6」を書き込み(S32)、賞球ポインタ13bの値を「1」加算する(S33)。一方、いずれのスイッチ17,18によっても球が検出されない場合には(S31:No)、S32およびS33の処理をスキップして、S34の処理へ移行する。
S34の処理では、Vカウントスイッチ19又は10カウントスイッチ20により球が検出された否かを確認する(S34)。いずれかのスイッチ19,20によって球が検出された場合には(S34:Yes)、15個の賞球を払い出すために、賞球ポインタ13bの値番目の賞球バッファ13aへ「15」を書き込み(S35)、賞球ポインタ13bの値を「1」加算する(S36)。一方、いずれのスイッチ19,20によっても球が検出されない場合には(S34:No)、S35およびS36の処理をスキップして、入賞検出処理(S30)を終了し、S40の賞球コマンド送信処理へ移行する。
賞球コマンド送信処理(S40)では、まず、賞球ポインタ13bの値が「0」であるか否かを調べる(S41)。賞球ポインタ13bの値が「0」でなければ(S41:No)、払い出すべき賞球数のデータが賞球バッファ13aに記憶されているということなので、0番目の賞球バッファ13aの値を賞球コマンドの2バイト目のデータとしてセットし、その賞球コマンドを払出制御基板Hへ送信する(S42)。
賞球コマンドの送信後は、その賞球コマンドによって送信した賞球数データである、0番目の賞球バッファ13aの値を残賞球数カウンタ13cへ加算する(S43)。そして、1番目以降の賞球バッファ13aの値を小さいアドレス側へ順に1バイトずつシフトして(S44)、賞球バッファ13aの値を更新すると共に、送信した0番目の賞球バッファ13aの値を消去し、更に、賞球ポインタ13bの値を「1」減算すると共に(S45)、不足賞球があるか否かの判断タイミングを決定する不足賞球チェックカウンタ13eに初期値である5秒分の値をセットして(S46)、その判断タイミングを初期化する。
一方、S41の処理において、賞球ポインタ13bの値が「0」であれば(S41:Yes)、払い出すべき賞球数のデータは賞球バッファ13aに記憶されていないので、S42〜S46の各処理をスキップして、賞球コマンド送信処理(S40)を終了し、S50の賞球検出処理へ移行する。
図6は、賞球検出処理(S50)のフローチャートである。賞球検出処理では、払出制御基板Hによって払い出された賞球が検出されると共に、その検出結果に基づいて、賞球オーバーエラー処理(S57)や、賞球アンダーエラー処理(S67)、或いは、不足賞球コマンドの送信処理(S65)が実行される。
賞球検出処理(S50)では、まず、賞球カウントスイッチ22がオンされたか否かを判断する(S51)。賞球カウントスイッチ22のオンが検出された場合には(S51:Yes)、賞球が1個払い出されたということなので、不足賞球があるか否かの判断タイミングを決定する不足賞球チェックカウンタ13eに初期値である5秒分の値をセットして(S52)、その判断タイミングを初期化する。
残賞球数カウンタ13cの値を確認し(S53)、その値が「0」でなければ(S53:No)、払い出された賞球に対応して残賞球数カウンタ13cの値を「1」減算する(S54)。減算の結果、残賞球数カウンタ13cの値が「0」となれば(S55:Yes)、電源再入時における不足賞球のチェックは終了となるので、不足賞球チェック済フラグ13dをオンして(S56)、この賞球検出処理を終了する。S54の処理による減算の結果、残賞球数カウンタ13cの値が「0」でなければ(S55:No)、不足賞球チェック済フラグ13dをオンすることなく、S56の処理をスキップして、この賞球検出処理を終了する。なお、一旦オンされた不足賞球チェック済フラグ13dは、図4のS26の処理が実行されるまでオフされることはない。
一方、賞球カウントスイッチ22のオンが検出されたにも拘わらず(S51:Yes)、残賞球数カウンタ13cの値が「0」であれば(S53:Yes)、本来払い出すべき賞球数を超えて賞球の払い出しが行われたということであるので、その場合には、賞球オーバーエラー処理を実行して(S57)、この賞球検出処理を終了する。
S51の処理において、賞球カウントスイッチ22のオンが検出されない場合には(S51:No)、賞球は払い出されていない。よって、かかる場合には、不足賞球があるか否かをチェックするため、以降のS58〜S67の各処理を実行する。まず、残賞球数カウンタ13cの値を調べ(S58)、その値が「0」であれば(S58:Yes)、未払いの賞球はない。故に、不足賞球のチェックは不要であるので、この賞球検出処理を終了する。なお、残賞球数カウンタ13cの値が「0」である場合には、不足賞球チェック済フラグ13dは必ずオンになっている(S56,図4のS28)。
一方、残賞球数カウンタ13cの値が「0」でなければ(S58:No)、パチンコ機Pが賞球の払い出しの可能な状態であるか否かを調べる(S59)。パチンコ機Pが賞球の払い出しの不可能な状態であれば(S59:No)、不足賞球があるか否かの判断タイミングを初期化するため、不足賞球チェックカウンタ13eに初期値である5秒分の値をセットし(S60)、この賞球検出処理を終了する。これにより、賞球の払い出しが可能となる時点を基準にして、不足賞球があるか否かの判断タイミングを設定することができるので、かかる判断を適切に行うことが可能となる。なお、賞球の払い出しが不可能な状態である場合としては、払い出される賞球を貯留する貯留タンク(図示せず)に、所定量に満たない賞球しか貯留されていない空切れ状態や、賞球が払い出される上皿および下皿が共に満タンである状態などが例示される。
残賞球数カウンタ13cの値が「0」でなく(S58:No)、パチンコ機Pが賞球の払い出しの可能な状態であれば(S59:Yes)、不足賞球チェックカウンタ13eの値を調べる(S61)。不足賞球チェックカウンタ13eの値が「0」でなければ(S61:No)、その値を「1」減算し(S62)、減算の結果、その値が「0」となれば(S63:Yes)、不足賞球があるか否かの判断タイミングの到来である。この処理は、残賞球数カウンタ13cの値が「0」ではない(S58:No)という条件のもとに行われているので、不足賞球があるということである。
かかる場合には、不足賞球チェック済フラグ13dを調べ(S64)、そのフラグ13dがオフであれば(S64:No)、電源入後1回目の不足賞球の発生である。よって、この場合は、通常の賞球アンダーエラーの場合と異なり、停電等の発生タイミングによって、電源断前に主制御基板Cから送信された賞球コマンドが払出制御基板Hによって正常に受信されなかったり、或いは、受信されてはいるものの、受信した値を払出制御基板Hの残賞球数カウンタ33aへ加算する前に電源が断され払出制御基板Hの制御が停止したこと等が想定される。即ち、かかる不足賞球の発生は、賞球払出用モータ21の異常などのパチンコ機Pの故障に起因するものではなく、電源断のタイミングによるものである。よって、この場合には、遊技の円滑な進行を優先するべく、不足分の賞球数を記憶している残賞球数カウンタ13cの値を2バイト目のデータとしてセットして、不足賞球コマンドを払出制御基板Hへ送信する(S65)。この不足賞球コマンドにより、不足賞球の発生とその数を払出制御基板Hへ報せて、払出制御基板Hにより不足賞球の払い出しを行わせるのである。不足賞球コマンドの送信後は、電源再入後1回目の不足賞球のチェックが終了したことを記憶するべく、不足賞球チェック済フラグ13dをオンして(S66)、この賞球検出処理を終了する。
一方、S64の処理において、不足賞球チェック済フラグ13dがオンされていれば(S64:Yes)、電源再入後1回目の不足賞球の発生ではない。即ち、今回の不足賞球の発生は、電源断のタイミングによるものではなく、パチンコ機Pの故障などに起因するものであることが想定される。よって、かかる場合には、賞球アンダーエラー処理を実行して(S67)、この賞球検出処理を終了する。
なお、S61の処理において、不足賞球チェックカウンタ13eの値が「0」であったり(S61:Yes)、或いは、その不足賞球チェックカウンタ13eの値が「0」でなく(S61:No)、且つ、「1」減算後の不足賞球チェックカウンタ13eの値も「0」でない場合には(S63:No)、不足賞球があるか否かの判断タイミングの到来ではないので、これらの場合には、S64〜S67の各処理をスキップして、賞球検出処理を終了する。
次に、図7から図9を参照して、払出制御基板Hで行われる各処理について説明する。図7は、払出制御基板Hの割込処理で実行されるコマンド受信処理のフローチャートである。主制御基板Cから送信されたコマンドを払出制御基板Hが受信すると、その度に割り込みが発生し、このコマンド受信処理が実行される。
コマンド受信処理では、まず、受信したコマンドが初期化コマンドであるか否かを判断する(S71)。そのコマンドが初期化コマンドであれば(S71:Yes)、その初期化コマンドの受信を記憶するべく、初期化フラグ33bをオンして(S72)、このコマンド受信処理を終了する。一方、受信したコマンドが初期化コマンドでなければ(S71:No)、そのコマンドが賞球払出許可コマンドであるか否かを判断する(S73)。受信したコマンドが賞球払出許可コマンドであれば(S73:Yes)、賞球払出許可コマンドの受信を記憶するべく、賞球払出許可フラグ33cをオンして(S74)、このコマンド受信処理を終了する。
また、受信したコマンドが、初期化コマンドでも賞球払出許可コマンドでもなければ(S71:No,S73:No)、そのコマンドが賞球コマンドであるか否かを判断する(S75)。受信したコマンドが賞球コマンドであれば(S75:Yes)、その賞球コマンドの2バイト目のデータとして指示される賞球数を残賞球数カウンタ33aへ加算し(S76)、このコマンド受信処理を終了する。一方、受信したコマンドが賞球コマンドでもなければ(S75:No)、そのコマンドが不足賞球コマンドであるか否かを判断する(S77)。受信したコマンドが不足賞球コマンドであれば(S77:Yes)、その不足賞球コマンドの2バイト目のデータとして指示される値を残賞球数カウンタ33aへ書き込み(S78)、残賞球数カウンタ33aの値を主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cの値と一致させる。これにより、不足賞球コマンドで指示された不足賞球の払い出しが払出制御基板Hによって行われる。
なお、受信したコマンドが上記コマンドのいずれもでなければ(S77:No)、その受信したコマンドに応じた処理を実行して(S79)、このコマンド受信処理を終了する。
図8は、パチンコ機Pの電源入時に払出制御基板Hで実行される立ち上げ処理のフローチャートである。この処理では、バックアップが有効であれば、バックアップエリア33dに記憶された各データを元の状態に戻し、賞球の払出制御を電源が断される前の状態から続行する。一方、バックアップが有効でなかったり、或いは、バックアップが有効であっても電源入時にクリアスイッチ23が押下された場合には、初期化処理を実行する。
まず、割込を禁止し(S81)、次に、本来のスタック領域にスタックされているデータを壊さないために、仮のスタックポインタを設定する(S82)。クリアスイッチ23がオンされているか否かを確認し(S83)、オンされていれば(S83:Yes)、処理をS85へ移行して初期化処理を実行する。クリアスイッチ23がオンされていなければ(S83:No)、バックアップが有効であるか否かを確認する(S84)。この確認は、RAM33の所定のエリアに書き込まれたキーワードが正しく記憶されているか否かにより判断する。キーワードが正しく記憶されていればバックアップは有効であり、逆に、キーワードが正しくなければバックアップデータは破壊されているので、そのバックアップは有効ではない。バックアップが有効であれば(S84:Yes)、処理をS92へ移行して、主制御基板Cの各状態を電源の断前の状態に復帰させる。一方、バックアップが有効でなければ(S84:No)、処理をS85へ移行して初期化処理を実行する。
S85の処理からの初期化処理では、まず、正規のスタックポインタを設定し、スタックの内容を整えた後(S85)、RAMクリア及び初期化処理を実行して(S86)、RAM33及びI/O等の各値を初期化する。その後、割込を許可して(S87)、前述した図7のコマンド受信処理を実行可能とする。割込の許可後は、主制御基板Cからの賞球の払出許可をウエイトするべく、初期化フラグ33b又は賞球払出許可フラグ33cのいずれかがオンされるまで処理をループする(S88:No,S89:No)。初期化フラグ33b又は賞球払出許可フラグ33cのいずれかがオンされれば(S88:Yes又はS89:Yes)、主制御基板Cから賞球の払出許可が出されたということである。よって、かかる場合には、次の電源断に備えて、初期化フラグ33b及び賞球払出許可フラグ33cを共にオフした後(S90)、払出制御基板Hのメイン処理となる各処理を実行する(S91)。図9の賞球払出処理は、この各処理(S91)の中で実行されるので、払出制御基板Hによる賞球の払い出しは、初期化フラグ33bまたは賞球払出許可フラグ33cのいずれかがオンされるまで待機されることになる。
なお、主制御基板Cから送信される初期化コマンドを受信して初期化フラグ33bがオンされた場合であっても(S88:Yes)、処理をS90へ移行するので、RAMクリア及び初期化処理(S86)を重複して実行することがない。
S92からの復帰処理では、まず、バックアップエリア33dへ退避した各レジスタやI/O等のデータをそのバックアップエリア33dから読み出して、これら各データを元のレジスタやI/O等へ書き込む(S92)。更に、バックアップエリア33dからスタックポインタの値を読み出して、これをスタックポインタへ書き込み、電源断前(停電前)の状態、即ちNMI割込発生前の状態に戻す(S93)。その後、割込を許可して(S94)、図7のコマンド受信処理を実行可能とする。割込の許可後は、主制御基板Cからの賞球の払出許可をウエイトするべく、初期化フラグ33b又は賞球払出許可フラグ33cのいずれかがオンされるまで処理をループする(S95:No,S96:No)。
賞球払出許可フラグ33cがオンされれば(S95:Yes)、主制御基板Cから賞球の払出許可が出されたということである。よって、かかる場合には、次の電源断に備えて、賞球払出許可フラグ33cをオフした後(S98)、NMI割込をリターンし、処理を電源断前に実行していたところへ戻して、制御を電源断前の状態から続行する。これにより賞球の払い出しが可能となる。
一方、初期化フラグ33bがオンされれば(S95:No,S96:Yes)、主制御基板Cから初期化コマンドが送信されたということである。よって、かかる場合には、RAMクリア及び初期化処理を実行して(S97)、払出制御基板Hを初期化した後、払出制御基板Hのメイン処理となる各処理を実行する(S91)。図9の賞球払出処理は、この各処理(S91)の中で実行されるので、払出制御基板Hによる賞球の払い出しは、初期化フラグ33bがオンされるまで待機されることになる。
なお、図4で説明した通り、主制御基板Cは、初期化コマンドの送信後、ウエイト処理(S19)を実行しその後の処理の実行を所定時間待機するので、払出制御基板HによるRAMクリア及び初期化処理(S97)の実行中に、主制御基板Cから新たなコマンドが送信されることはない。よって、払出制御基板Hは、かかる場合にも遊技の払出制御を正常に行うことができるのである。
図9は、払出制御基板Hの各処理(S91)の中で実行される賞球払出処理のフローチャートである。この賞球払出処理により、賞球の払い出しと、払い出された賞球の検出とが行われる。賞球払出処理では、まず、残賞球数カウンタ33aの値を調べ(S101)、その値が「0」でなければ(S101:No)、未払いの賞球が残っているので、賞球払出用モータ21を駆動して賞球を1個払い出す(S102)。一方、残賞球数カウンタ33aの値が「0」であれば(S101:Yes)、未払いの賞球は残っていないので、S102の賞球の払い出し処理をスキップする。
S103の処理において、賞球カウントスイッチ22のオンが検出されれば(S103:Yes)、賞球の払い出しが行われたということである。よって、かかる場合には、残賞球数カウンタ33aの値を確認し(S104)、その値が「0」でなければ(S104:No)、払い出された賞球に対応して残賞球数カウンタ33aの値を「1」減算し(S105)、この賞球払出処理を終了する。一方、賞球カウントスイッチ22のオンが検出されない場合や(S103:No)、賞球カウントスイッチ22のオンが検出されても(S103:Yes)、残賞球数カウンタ33aの値が「0」であれば(S104:Yes)、S105の処理をスキップして、この賞球払出処理を終了する。
以上説明したように、本実施例のパチンコ機Pによれば、賞球の払出残数を記憶する主制御基板Cおよび払出制御基板Hの残賞球数カウンタ13c,33aの値は、バックアップ用のコンデンサ13x,33xによって、それぞれパチンコ機Pの電源が切断された後も保持される。よって、停電などの発生によってパチンコ機Pの電源が突然切断された場合にも、未払いの賞球数を記憶して、パチンコ機Pの電源が再投入された後に、それらを確実に払い出すことができる。
しかも、かかる未払い分の賞球の払い出しは、主制御基板Cから払出制御基板Hへ初期化コマンド又は賞球払出許可コマンドのいずれかが送信された後に行われる。よって、主制御基板Cと払出制御基板Hとの立ち上げ処理に要する時間が異なっても、払出制御基板Hによって行われる賞球の払い出しを、主制御基板C及び払出制御基板Hの双方で確実に検出することができる。
また、パチンコ機Pの電源が切断されるタイミングによっては、その電源の再入後に不足賞球が生じる場合があるが、電源断のタイミング等によって生じる不足賞球については、賞球アンダーエラーを発生させることなく、主制御基板Cから払出制御基板Hへ不足賞球コマンドを送信して、払出制御基板Hに、その不足賞球の払い出しを行わせている。よって、電源再入後における不足賞球の発生を補って、遊技を円滑に進めることができるという効果がある。
なお、上記実施例において、請求項1記載の不足分通知手段としては、図6のS65の処理がそれぞれ該当する。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施例では、電源の再入後に不足賞球が生じた場合、賞球アンダーエラーを発生させることなく、必ず、不足賞球コマンドを送信した。しかし、これに代えて、電源の再入後における不足賞球の発生時に、残賞球数カウンタ13cの値を調べ、その値に応じて、不足賞球コマンドを送信するか、或いは、賞球アンダーエラーを発生させるかを決定するようにしても良い。即ち、電源断のタイミングによって生じる不足賞球は、主制御基板Cから送信された賞球コマンドを払出制御基板Hが受信できなかったり、或いは、受信できたとしても払出制御基板Hの残賞球数カウンタ33aへの加算前に電源断によって制御が停止した場合である。よって、電源断のタイミングによって生じる不足賞球の賞球数は、1の賞球コマンドで指示される賞球数の単位となる。従って、電源の再入時において不足賞球が生じた場合の主制御基板Cの残賞球数カウンタ13cの値が、賞球コマンドで指示される数であれば、賞球アンダーエラーを発生させることなく、主制御基板Cから払出制御基板Hへ不足賞球コマンドを送信し、逆に、その残賞球数カウンタ13cの値が賞球コマンドで指示される数でなければ、電源の再入時における不足賞球の発生であっても、賞球アンダーエラーを発生させるのである。
具体的には、本実施例のパチンコ機Pでは、賞球コマンドで指示される賞球数は「6」又は「15」であるので、電源の再入後に不足賞球が発生した場合、残賞球数カウンタ13cの値を調べて、その値が「6」又は「15」のいずれかであれば不足賞球コマンドを送信し、逆に、「6」又は「15」のいずれでもなければ賞球アンダーエラーを発生させる。また、賞球コマンドで指示される賞球数の最大値は「15」であるので、電源の再入後に不足賞球が発生した場合、残賞球数カウンタ13cの値を調べて、その値が「16」以上であれば賞球アンダーエラーを発生させるようにしても良い。
RAM13,33は、いずれも不揮発性のメモリであるスタティックRAMにより構成され、電源の断時には、これらのRAM13,33に、バックアップ用のコンデンサ13x,33xによってバックアップ電圧を供給し、RAM13,33の各内容を保持(バックアップ)するように構成した。しかし、これに代えて、RAM13,33をEEPROMやフラッシュメモリなどのバックアップ電圧を加えなくても内容を保持できるメモリによって構成し、バックアップ用のコンデンサ13x,33xを除くようにしても良い。かかる場合には、RAM13,33自体が、バックアップ手段又は主バックアップ手段を兼用する。
本発明を上記実施例とは異なるタイプのパチンコ機等に実施しても良い。例えば、一度大当たりすると、それを含めて複数回(例えば2回、3回)大当たり状態が発生するまで、大当たり期待値が高められるようなパチンコ機(通称、2回権利物、3回権利物と称される)として実施しても良い。また、大当たり図柄が表示された後に、所定の領域に球を入賞させることを必要条件として特別遊技状態となるパチンコ機として実施しても良い。更に、パチンコ機以外にも、アレパチ、雀球、スロットマシン、いわゆるパチンコ機とスロットマシンとが融合した遊技機などの各種遊技機として実施するようにしても良い。
なお、スロットマシンは、例えばコインを投入して図柄有効ラインを決定させた状態で操作レバーを操作することにより図柄が変動され、ストップボタンを操作することにより図柄が停止されて確定される周知のものである。従って、スロットマシンの基本概念としては、「複数の識別情報からなる識別情報列を変動表示した後に識別情報を確定表示する可変表示手段を備え、始動用操作手段(例えば操作レバー)の操作に起因して識別情報の変動が開始され、停止用操作手段(例えばストップボタン)の操作に起因して、或いは、所定時間経過することにより、識別情報の変動が停止され、その停止時の確定識別情報が特定識別情報であることを必要条件として、遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを備えたスロットマシン」となり、この場合、遊技媒体はコイン、メダル等が代表例として挙げられる。
また、パチンコ機とスロットマシンとが融合した遊技機の具体例としては、複数の図柄からなる図柄列を変動表示した後に図柄を確定表示する可変表示手段を備えており、球打出用のハンドルを備えていないものが挙げられる。この場合、所定の操作(ボタン操作)に基づく所定量の球の投入の後、例えば操作レバーの操作に起因して図柄の変動が開始され、例えばストップボタンの操作に起因して、或いは、所定時間経過することにより、図柄の変動が停止され、その停止時の確定図柄がいわゆる大当たり図柄であることを必要条件として遊技者に有利な大当たり状態が発生させられ、遊技者には、下部の受皿に多量の球が払い出されるものである。
以下に本発明の変形例を示す。請求項1記載の遊技機において、前記不足分通知手段は、電源入時における前記主残数記憶手段に記憶される数の有価物体が前記払出制御手段により払い出されない場合であって、その不足分の有価物体数を記憶する前記主残数記憶手段の値が前記主制御手段から払出制御手段へ指示される有価物体数の1の単位に相当する場合に(或いは、指示される1単位の有価物体数の最大値以下である場合に)、その不足分の有価物体数を前記払出制御手段へ報せるものであることを特徴とする遊技機1。
請求項1記載の遊技機において、前記不足分通知手段は、電源入時における前記主残数記憶手段に記憶される数の有価物体が前記払出制御手段により払い出されない場合に、その不足分の有価物体数を前記払出制御手段へ報せるものであることを特徴とする遊技機2。電源入時の払い出しに限り不足分通知手段を作動させるので、即ち、停電の発生等による停電処理の実行により、払出制御手段で記憶する有価物体の払出残数が、主制御手段で記憶する有価物体の払出残数より小さくなった場合に限り、不足分通知手段を作動させるので、その不足分の通知を、電源断とは無関係に生じる他のエラーと区別して行うことができる。
請求項1記載の遊技機において、前記主制御手段は、電源入時における前記主残数記憶手段に記憶される有価物体の払出残数が0である場合には、前記不足分通知手段の作動を禁止する作動禁止手段を備えていることを特徴とする遊技機3。作動禁止手段としては、上記実施例において「不足賞球チェック済フラグ13d」が例示され、該フラグ13dがオンである場合に、不足分通知手段の作動(即ち、不足賞球コマンドの送信)が禁止される。よって、停電の発生等による停電処理の実行により、払出制御手段で記憶する有価物体の払出残数が、主制御手段で記憶する有価物体の払出残数より小さくなった場合に限り、不足分通知手段を作動させることができる。従って、払い出すべき有価物体数の不足分の通知を、電源断とは無関係に生じる他のエラーと区別して行うことができる。
請求項1記載の遊技機において、前記主制御手段は、前記不足分通知手段の作動を電源入後1回以内に制限する作動制限手段を備えていることを特徴とする遊技機4。作動制限手段としては、上記実施例において「不足賞球チェック済フラグ13d」が例示され、該フラグ13dがオンである場合に、不足分通知手段の作動(即ち、不足賞球コマンドの送信)がそれ以上行われないように制限される。従って、停電の発生等による電源断の後、電源が再入された場合、不足分通知手段は最高1回作動するだけであるので、払い出すべき有価物体数の不足分の通知を、電源断とは無関係に生じる他のエラーと区別して行うことができる。
請求項1記載の遊技機または遊技機1から4のいずれかにおいて、前記払出制御手段は、前記不足分通知手段により払い出すべき有価物体数の不足分の通知を受けた場合には、前記残数記憶手段の値をその不足分の値に書き換える残数書換手段を備えていることを特徴とする遊技機5。遊技機の何らかの装置異常等(払出モータの異常等)により有価物体の払い出しが行われない場合にも、主制御手段と払出制御手段とでそれぞれ記憶する有価物体の払出残数を、不足分通知手段により電源入時に一致させることができる。
請求項1記載の遊技機または遊技機1から5のいずれかにおいて、前記不足分通知手段は、前記主残数記憶手段に記憶される有価物体の払出残数が0でない場合であって前記払出制御手段による有価物体の払い出しが所定時間以上行われない場合に、払い出されるべき不足分の有価物体数をその払出制御手段へ通知するものであることを特徴とする遊技機6。
遊技機6において、前記不足分通知手段は、前記払出制御手段により有価物体の払い出しが行われた場合に、前記所定時間の計時を初期化するものであることを特徴とする遊技機7。不足分の有価物体数の通知は、最後の有価物体の払い出し後所定時間以上経過した場合に行われる。よって、有価物体の払出残数が多く、払い出しが長時間に亘って行われる場合であっても、有価物体の払い出しが継続されている限り、不足分の有価物体数の通知を行うことはない。即ち、不足分の有価物体数の通知を適切なタイミングで行うことができる。
遊技機6または7において、前記払出制御手段が有価物体の払い出しを行い得ない状態である場合、前記不足分通知手段は、前記不足分の通知を待機するものであることを特徴とする遊技機8。払出制御手段が有価物体の払い出しを行い得ない状態としては、払い出される有価物体を貯留する貯留タンクの有価物体の貯留量が所定量に満たず空切れ状態となっている場合などが例示される。
遊技機8において、前記不足分通知手段は、前記払出制御手段による有価物体の払い出しの行われ得ない状態が解消した場合に(或いは、前記払出制御手段による有価物体の払い出しの行われ得ない状態となった場合に)、前記所定時間の計時を初期化するものであることを特徴とする遊技機9。払出制御手段による有価物体の払い出しが可能となってから、その払い出しが所定時間以上行われない場合に、不足分の有価物体数の通知が行われる。よって、かかる場合にも、不足分の有価物体数の通知を適切なタイミングで行うことができる。
請求項1記載の遊技機または遊技機1から9のいずれかにおいて、前記主制御手段と払出制御手段との送受信を、その主制御手段から払出制御手段への一方向にのみ可能とする一方向手段を備えていることを特徴とする遊技機10。
請求項1記載の遊技機または遊技機1から10のいずれかにおいて、前記遊技機はパチンコ機であることを特徴とする遊技機11。中でも、パチンコ機の基本構成としては操作ハンドルを備え、その操作ハンドルの操作に応じて球を所定の遊技領域へ発射し、球が遊技領域内の所定の位置に配設された作動口に入賞(又は作動口を通過)することを必要条件として、表示装置において変動表示されている識別情報が所定時間後に確定停止されるものが挙げられる。また、特別遊技状態の発生時には、遊技領域内の所定の位置に配設された可変入賞装置(特定入賞口)が所定の態様で開放されて球を入賞可能とし、その入賞個数に応じた有価価値(景品球のみならず、磁気カードへ書き込まれるデータ等も含む)が付与されるものが挙げられる。
請求項1記載の遊技機または遊技機1から10のいずれかにおいて、前記遊技機はスロットマシンであることを特徴とする遊技機12。中でも、スロットマシンの基本構成としては、「複数の識別情報からなる識別情報列を変動表示した後に識別情報を確定表示する可変表示手段を備え、始動用操作手段(例えば操作レバー)の操作に起因して、或いは、所定時間経過することにより、識別情報の変動が停止され、その停止時の確定識別情報が特定識別情報であることを必要条件として、遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを備えた遊技機」となる。この場合、遊技媒体はコイン、メダル等が代表例として挙げられる。
請求項1記載の遊技機又は遊技機1から10のいずれかにおいて、前記遊技機はパチンコ機とスロットマシンとを融合させたものであることを特徴とする遊技機13。中でも、融合させた遊技機の基本構成としては、「複数の識別情報からなる識別情報列を変動表示した後に識別情報を確定表示する可変表示手段を備え、始動用操作手段(例えば操作レバー)の操作に起因して識別情報の変動が開始され、停止用操作手段(例えばストップボタン)の操作に起因して、或いは、所定時間経過することにより、識別情報の変動が停止され、その停止時の確定識別情報が特定識別情報であることを必要条件として、遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを備え、遊技媒体として球を使用すると共に、前記識別情報の変動開始に際しては所定数の球を必要とし、特別遊技状態の発生に際しては多くの球が払い出されるように構成されている遊技機」となる。